説明

光ケーブル

【課題】ケーブル重量の削減とノンハロゲン化が可能で、取り扱い性がよい防湿機能を備えた安価に製造することができる光ケーブルを提供する。
【解決手段】複数本の光ファイバが収納されたコア部2の外周に押え巻きテープ3を巻き付けて覆い、その外側をシース4で被覆した光ケーブルであって、押え巻きテープ3は、防湿用物質の蒸着薄膜からなる防湿層を有し、JIS K7129Aに基づく感湿センサー法(40℃、90%RH)による透湿度が1.0g/m2・day・atm以下としたものが用いられる。なお、押え巻きテープ3は、不織布層を有し、さらには、吸水層を有するものであってもよい。また、押え巻きテープの防湿層は、プラスチックフィルム上に蒸着したアルミニウム金属薄膜のような金属薄膜で形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバを収納したコア部を押え巻きテープで覆い、その外側をポリエチレン等のシースで被覆した光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは水分に弱く、吸湿することで強度の劣化や伝送特性が悪化してファイバ寿命が短くなる。このため、地中管路内に敷設するような光ケーブルは、雨水等に浸されたような場合でも問題がないように防湿機能を備えていることが求められる。従来、吸水テープ(止水テープとも言う)により、ケーブル内に入り込んだ水が、ケーブル長手方向に走らないようにしている。しかし、シース(通常、ポリエチレン)および吸水テープだけでは、大気中の湿気の浸入を阻止することは難しい。
【0003】
このため、例えば、特許文献1にはシース内面にアルミニウムテープを溶着したLAPシースを用いることが開示されている。また、特許文献2には、シースの内側にポリ塩化ビニリデンからなる防湿層を設けることが開示され、特許文献3には、アルミニウム箔もしくは樹脂フィルムとの積層アルミニウム箔を遮水フィルムとすることが開示されている。また、特許文献4には、二層以上の金属酸化物の蒸着皮膜を有するプラスチックフィルムからなる非透湿性のテープを、押え巻きとは別に巻き付けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−221209号公報
【特許文献2】実開平4−22707号公報
【特許文献3】特開昭62−184411号公報
【特許文献4】特開平4−286809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1または3に開示のように、シースの内側にアルミニウムの金属箔フィルムを配することで、ケーブル内への湿気の浸入を防止することができる。しかしながら、非透湿性シースが要求されるケーブルには、アルミニウムテープが使用されているが、アルミニウム金属の厚さが0.15mm〜0.2mm程度で、その片面または両面に0.05mm厚さの接着性樹脂層をラミネートしたものである。このアルミニウムテープは、10〜50kg/kmの重量があり、金属箔テープとは呼べないようなボリュームを有し、輸送、取り扱いも簡単ではない。
【0006】
また、アルミニウムテープをケーブルに巻き付けるには、特殊なフォーミング装置を用い、ケーブル径に合わせた治工具を準備し、アルミニウムテープには大きな張力をかけ塑性変形させながら加工する必要がある。また、アルミニウムテープを接続する場合には、超音波接続機など特殊な装置を使用して接続部の強度を確保するなどの必要があり、ケーブルの長尺製造が難しいという問題がある。
なお、特許文献4に開示する非透湿性のテープを用いることで、テープの軽量化をはかることはできるが、蒸着皮膜層を二層以上設ける必要があり、さらに押え巻きとは別に巻き付けるので、コスト的には安価とはならない。
【0007】
また、特許文献2に開示されるように、非金属のポリ塩化ビニリデン(PVCD)を用いて防湿層を成形することでケーブル内への湿気の浸入を回避することができる。しかし、PVCDの使用は、環境汚染対策としてのノンハロゲン化を進めることができないという問題がある。また、防湿層を押出し成形により形成する場合は、成形樹脂材の粘着性のため取り扱いにくく、可塑剤を含むため経時安定性が十分でないという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、ケーブル重量の削減とノンハロゲン化が可能で、取り扱い性がよく、防湿機能を備えた安価に製造することができる光ケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光ケーブルは、複数本の光ファイバが収納されたコア部の外周に押え巻きテープを巻き付けて覆い、その外側をシースで被覆した光ケーブルであって、押え巻きテープは、防湿用物質の蒸着薄膜からなる防湿層を有し、JIS K7129Aに基づく感湿センサー法(40℃、90%RH)による透湿度が1.0g/m・day・atm以下としたものが用いられる。
なお、押え巻きテープは、不織布層を有し、さらには、吸水層を有するものであってもよい。また、押え巻きテープの防湿層は、プラスチックフィルム上に蒸着したアルミニウム金属薄膜のような金属薄膜で形成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光ケーブルの押え巻きテープに蒸着により形成された防湿コート層を有しているので、他に防湿層を設けなくてもシースを透過してケーブル内に浸入する水分を抑制することができる。この結果、アルミニウム金属箔の使用が削減でき、ケーブル重量の低減が可能となる。また、押え巻きテープに防湿機能を持たせているので、取り扱いが容易であり、光ケーブルの製造段階での工程増加がなく、コスト的にも安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による光ケーブルの概略を説明する図である。
【図2】本発明に用いる押え巻きテープの構造例を説明する図である。
【図3】本発明における押え巻きテープの形態を説明する図である。
【図4】本発明による光ケーブル内への湿気の浸入状態の調査結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1により本発明の実施の形態を説明する。図1(A)は光ケーブルの概略を示し、図1(B)はスロット形光ケーブルへの適用例を説明する図である。図中、1,1’は光ケーブル、2はコア部、3は押え巻きテープ、4はシース、5はスロットロッド、5aはスロット溝、6はテンションメンバ、7は光ファイバ心線、8は粗巻き紐を示す。
【0013】
本発明による光ケーブル1は、図1(A)に示すように、複数本の光ファイバが収納され束ねられた状態のコア部2の外側を押え巻きテープ3で覆い、その外周をシース(外被とも言う)4で被覆した構造の光ケーブルを対象とする。本発明におけるコア部2とは、複数本の光ファイバ心線を介在等を介して集合させ束ねた状態のもの、または、次に説明する図1(B)に示すように、スロットロッドに複数枚の光ファイバテープ心線を収納し、粗巻き紐等により収納保持した状態のものを言うものとする。
【0014】
図1(B)は、地下管路等に敷設される幹線用の光ケーブルとして多用されているスロット形の光ケーブル1’である。この光ケーブル1’は、中心にテンションメンバ(抗張力体とも言う)6を埋設一体化し、複数のスロット溝5aを設けたプラスチック材からなるスロットロッド(スペーサロッドとも言う)5により構成される。スロットロッド5のスロット溝5aは、螺旋状またはSZ状に形成され、スロット溝5a内には複数本の光ファイバ心線またはテープ状の光ファイバ心線7(以下、テープ心線を含めて光ファイバ心線と言う)が収納される。
【0015】
光ファイバ心線7がスロット溝5a内に収納された状態で、スロットロッド5の外周に、例えば、粗巻き紐8が巻かれ(螺旋状スロット溝の場合は巻かれない)光ファイバ心線7が飛び出さないように仮保持され、その上に押え巻きテープ3が巻き付けられる。
押え巻きテープ3は、スロット溝5aに収納された光ファイバ心線7をスロット溝内に収納保持すると共に、シース4の成形時の熱絶縁層、あるいは、光ケーブル内への止水のため吸水剤を付与して吸水層として機能させることもできる。また、押え巻きテープ3は、螺旋状に巻き付ける横巻き、または、長手方向の縦添えして巻き付けるかのいずれかの形態とされる。
【0016】
シース4は、ポリエチレンまたは難燃ポリエチレン樹脂の押出し成形で形成されるが、このシース4により浸水を抑制することはできても、表面からの湿気の浸入を完全に阻止することまでは難しい。このため、長期間の間には湿気がシースを透過してケーブル内に浸入する。また、押え巻きテープに吸水テープを使用するとしても、ケーブル長手方向の走水は阻止することはできても、径方向からの浸入してくる湿気を防止するには十分でない。
【0017】
本発明の特徴とするところは、コア部2の外周に巻き付けられる押え巻きテープ3の構成にあり、光ケーブルの押え巻きの機能以外に、他に防湿のためのテープ等を用いることなく、外部の湿気がシース4を透過してケーブル内に浸入するのを抑制する防湿性を有していることにある。また、本発明においては、種々調査の結果、防湿層3の透湿度は、JIS K7129Aに基づく感湿センサー法(40℃、90%RH)で、1.0g/m2・day・atm以下であれば、光ファイバに対して実質的に問題ない状態とすることが確認されている。
【0018】
この光ケーブルの防湿性および上記透湿度の確保は、アルミニウムテープ等の金属テープを用いることにより容易に実現することができるが、金属テープの使用はケーブル重量が増加する。このため、本発明は、金属あるいは非金属の防湿用物質のPVDあるいはCVDによる蒸着、イオンプレーティング等の薄膜形成手段により実現することにある。また、ノンハロゲンの光ケーブルを実現するために、非ハロゲン材で形成する。
【0019】
図2は、本発明の光ケーブルに用いる押え巻きテープの構成例を説明する図で、図2(A)は防湿層の積層形態の一例を示す図、図2(B)は不織布層を有する例を示す図である。図3(C)は吸水層を有する例を示す図である。図中、3a〜3cは押え巻きテープ、10aはベースフィルム層、10bは防湿層、10c、10dはコーティング層、11は不織布層、12は吸水層を示す。
【0020】
図2(A)に示す押え巻きテープ3aは、例えば、ベースフィルム層10a、単一の防湿層10b、コーティング層10cの順で3層により構成され、さらに、ベースフィルム層10aの露出面側にコーティング層10dを形成するようにしてもよい。なお、この押え巻きテープの幅は、15mm〜60mm程度とされる。ベースフィルム層10aは、押え巻きテープの基材とされるもので、厚さが50μm程度のプラスチックフィルムからなり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、非晶質ポリオレフィン(APO)などが用いられる。
【0021】
防湿層10bは、湿気の透過を抑制する層となるもので、ベースフィルム層10a上に、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)などの非金属で非ハロゲンの防湿用物質、あるいは、アルミニウムなどの金属を蒸着して形成される。なお、2種類以上のものを多層に蒸着した多元蒸着層としてもよい。これらの物質の蒸着(コーティング)には、PVDやCVDによる蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの方法が用いられる。
【0022】
また、防湿層10bは、上記の防湿用物質を予め薄いプラスチックフィルムにコーティングしてフィルム状(例えば、厚さ12〜20μm位)にしたものを、ベースフィルム層10a上に接着積層して形成することができる。この場合の防湿層10bの形成は、ベースフィルム層と接着される側であっても、反対側の接着されない側であってもよい。なお、防湿層10bは、単一の層のみで透湿度が、JIS K7129Aに基づく感湿センサー法(40℃、90%RH)で、1.0g/m2・day・atm以下となるように、防湿用物質とその蒸着厚さが選定されていることが好ましい。
【0023】
防湿層10bの露出面に形成されるコーティング層10c、および、ベースフィルム層10aの露出面に形成されるコーティング層10dは、必ずしも必要とするものではないが、防湿層10bの保護や防湿性向上、ヒートシールやシースとの接着のために設けるようにしてもよい。このコーティング層10c,10dは、ベースフィルム層10aと同様な樹脂剤をコーティングして形成することができ、厚さは10μm〜20μm程度とされる。また、コーティング層10c,10dは、予めフィルム状にしたものを防湿コート層3b上に接着積層するようにしてもよい。
【0024】
図2(B)に示す押え巻きテープ3bは、図2(A)の押え巻きテープに、不織布層11を接着積層したものである。この不織布層11は、PETの長繊維などで形成され、シース成形時の光ファイバに対する遮熱体としての機能をもたせることができる。なお、不織布層11は、防湿層10bの露出面側に、コーティング層10cに代えて接着積層させることができる。
【0025】
また、図2(C)に示す押え巻きテープ3cは、吸水層12を有する例を示すものである。この吸水層12は、吸水性樹脂にバインダーを加えて、不織布層11に含浸ないしは塗布して吸水機能をもたせたもので、光ケーブルの長手方向に水が浸水するのを防止することができる。
【0026】
図3は、上述した押え巻きテープ3を、コア部2の外側に巻き付ける形態を説明する図で、図3(A)は横巻きで重ね巻きする例を示し、図3(B)は縦添えで重ね巻きする例を示す。
光ケーブルのコア部2上に巻き付けられた押え巻きテープ3は、ある程度の重なり幅Dをもたせることにより重ね部分の隙間を通しての湿気の浸入を抑制する。この重なり幅Dは、フィルムテープ幅の1/5〜1/2幅の重ねピッチで、少なくとも2mm以上の重なり幅が得られるように巻き付けられていることが好ましい。
【0027】
また、図3(B)に示すように、光ケーブル1のコア部2上に押え巻きテープ3を縦添えで巻き付けるようにしてもよく、横巻きと同様に重なり幅Dを持たせて縦添えする。しかし、光ケーブルを小径で曲げたときに防湿層が開くことがあり、実用上は図3(A)に示す横巻きの形態が好ましい。
【0028】
また、押え巻きテープ3を上記のようにして巻き付けた場合、重なり部分を互いに溶着させることによりこの部分の密封性を高め、また、ケーブルの曲げにより隙間が生じるのを防止することができる。この、重なり部分の溶着は、防湿用フィルムのベースフィルム層または最上層のコーティング層に、熱可塑性樹脂を用い、シースの押出し成形時の熱により溶着させることができる。
【0029】
また、光ケーブルの中間分岐等でケーブル内の光ファイバ心線を取り出す場合がある。この場合は、シース4を部分的に除去(ケーブル長で30cm〜50cm位)すると共に、上述した押え巻きテープ3も部分的に除去される。このため、押え巻きテープ3のテープエッジ部分に切裂きの始端となるマジックカットあるいは切れ目を入れておくと引き剥がし易く、中間分岐の作業性をよくすることができる。
【0030】
上述した種々の防湿性を備えた押え巻きテープを巻き付けた光ケーブルの試料1〜11について、その押え巻きテープの透湿度とケーブル内への水分の浸入状態の調査結果を示したものである。試料とした光ケーブルは、図1(B)に示したスロット形光ケーブルで、スロットロッドの外周に押え巻きテープを巻き付けた状態の外径が15mmで、シースをポリエチレン樹脂により厚さ1.8mm〜2.0mmで成形した。
【0031】
試料とされた光ケーブルは、それぞれ80cmの長さに切断し、その両端を封止したうえで、U字状に折り曲げて中央部50cm以上を1週間60℃の水槽に浸漬し、その後解体して、中央部30cmの領域のケーブル内に水泡が有るか無いか(顕微鏡観察)を調べた。
なお、透湿度(*1)は、JIS K7129Aに基づく感湿センサー法(40℃、90%RH)による測定値で、単位は(g/m・day・atm)である。
【0032】
試料1は、アルミナを20nmの厚さでPVDコーティングした厚さ12μmのPETフィルムを、厚さ50μmのLLDPEフィルムに接着積層した押え巻きテープを使用した。この押え巻きテープの透湿度は、1.0g/m・day・atmであった。LLDPEフィルムを外側にして集合コアに巻き付け、シースを押出し成形して光ケーブルを形成した。この光ケーブルは、水槽浸漬後の集合コア内に、水泡は認められなかった。
【0033】
試料2は、アルミナを20nmの厚さでPVDコーティングした厚さ12μmのPETフィルムを、厚さ20μmのOPPフィルムに接着積層し、さらに前記PETフィルムのOPPフィルムを接着していない面に、厚さ20μmのLLDPEフィルムを積層接着した押え巻きテープを使用した。この押え巻きテープの透湿度は、1.0g/m・day・atmであった。LLDPEフィルムを外側にして集合コアに巻き付け、シースを押出し成形して光ケーブルを形成した。この光ケーブルは、水槽浸漬後の集合コア内に、水泡は認められなかった。
【0034】
試料3は、アルミニウム金属を20nmの厚さでPVDコーティングした厚さ12μmのPETフィルムを、厚さ50μmのLLDPEフィルムに接着積層した押え巻きテープを使用した。この押え巻きテープの透湿度は、0.2g/m・day・atmであった。LLDPEフィルムを外側にして集合コアに巻き付け、シースを押出し成形して光ケーブルを形成した。この光ケーブルは、水槽浸漬後の集合コア内に、水泡は認められなかった。
【0035】
試料4は、シリカを20nmの厚さでPVDコーティングした厚さ12μmのPETフィルムを、厚さ50μmのLLDPEフィルムに接着積層し、さらに前記PETフィルムのLLDPEフィルムを接着していない面に、PET繊維製の不織布を接着積層した押え巻きテープを使用した。この押え巻きテープの透湿度は、0.5g/m・day・atmであった。LLDPEフィルムを外側にして集合コアに巻き付け、シースを押出し成形して光ケーブルを形成した。この光ケーブルは、水槽浸漬後の集合コア内に、水泡は認められなかった。
【0036】
試料5は、シリカとアルミナを20nmの厚さで2元蒸着した厚さ12μmのPETフィルムを、厚さ50μmのLLDPEフィルムに接着積層し、さらに前記PETフィルムのLLDPEフィルムを接着していない面に、PET繊維製の不織布を接着積層した押え巻きテープを使用した。この押え巻きテープの透湿度は、0.3g/m・day・atmであった。LLDPEフィルムを外側にして集合コアに巻き付け、シースを押出し成形して光ケーブルを形成した。この光ケーブルは、水槽浸漬後の集合コア内に、水泡は認められなかった。
【0037】
試料6は、シリカとアルミナを20nmの厚さで2元蒸着した厚さ12μmのNy(ナイロン)フィルムを、厚さ50μmのPETフィルムに接着積層し、さらに前記NyフィルムのPETフィルムを接着していない面に、PET繊維製の不織布を接着積層した押え巻きテープを使用した。この押え巻きテープの透湿度は、0.3g/m・day・atmであった。PETフィルムを外側にして集合コアに巻き付け、シースを押出し成形して光ケーブルを形成した。この光ケーブルは、水槽浸漬後の集合コア内に、水泡は認められなかった。
【0038】
試料7は、アルミニウム金属を15nmの厚さでPVDコーティングした厚さ12μmのPETフィルムを、厚さ50μmのLLDPEフィルムに接着積層し、さらに前記PETフィルムのLLDPEフィルムを接着していない面に、PET繊維製の不織布を接着積層した押え巻きテープを使用した。この押え巻きテープの透湿度は、0.2g/m・day・atmであった。LLDPEフィルムを外側にして集合コアに巻き付け、シースを押出し成形して光ケーブルを形成した。この光ケーブルは、水槽浸漬後の集合コア内に、水泡は認められなかった。
【0039】
試料8は、シリカを20nmの厚さでPVDコーティングした厚さ12μmのPETフィルムを、厚さ20μmのOPPフィルムに接着積層し、さらに前記PETフィルムのOPPフィルムを接着していない面にPET繊維製の不織布を接着積層し、この不織布に粉末状の吸水樹脂と樹脂バインダーを混合した塗料を塗布して吸水性をもたせた押え巻きテープを使用した。この押え巻きテープの透湿度は、0.5g/m・day・atmであった。OPPフィルムを外側にして集合コアに巻き付け、シースを押出し成形して光ケーブルを形成した。この光ケーブルは、水槽浸漬後の集合コア内に、水泡は認められなかった。
【0040】
試料9は、アルミニウム金属を15nmの厚さでPVDコーティングした厚さ12μmのPETフィルムを、厚さ50μmのLLDPEフィルムに接着積層し、さらに前記PETフィルムのLLDPEフィルムを接着していない面に、PET繊維製の不織布を接着積層し、この不織布に粉末状の吸水樹脂と樹脂バインダーを混合した塗料を塗布して吸水性をもたせた押え巻きテープを使用した。この押え巻きテープの透湿度は、0.2g/m・day・atmであった。LLDPEフィルムを外側にして集合コアに巻き付け、シースを押出し成形して光ケーブルを形成した。この光ケーブルは、水槽浸漬後の集合コア内に、水泡は認められなかった。
【0041】
試料10は、アルミナを10nmの厚さでPVDコーティングした厚さ12μmのPETフィルムを、厚さ50μmのLLDPEフィルムに接着積層した押え巻きテープを使用した。この押え巻きテープの透湿度は、2.0g/m・day・atmであった。LLDPEフィルムを外側にして集合コアに巻き付け、シースを押出し成形して光ケーブルを形成した。この光ケーブルは、水槽浸漬後の集合コア内に水泡が存在していることが認められた。
【0042】
試料11は、蒸着物質無しの厚さ20μmのOPPフィルムを押え巻きテープに使用した。この押え巻きテープの透湿度は、7.5g/m・day・atmで、これを用いた光ケーブルは、水槽浸漬後の集合コア内に水泡が存在していることが認められた。
【0043】
図4の調査結果によれば、試料1〜8は、コア部に巻き付けられた押え巻きテープの透湿度がいずれも、JIS K7129Aに基づく感湿センサー法(40℃、90%RH)による測定値で、1.0g/m・day・atm以下で、水槽浸漬後のケーブル内への水分の透湿は認められなかった。試料10〜11は、防湿性が認められるが、ケーブル内への水分の透湿が生じ、本発明としては、押え巻きテープの透湿度が、1.0g/m・day・atm以下のものを使用するのが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1,1’…光ケーブル、2…コア部、3、3a、3b、3c…押え巻きテープ、4…シース、5…スロットロッド、5a…スロット溝、6…テンションメンバ、7…光ファイバ心線、8…粗巻き紐、10a…ベースフィルム層、10b…防湿層、10c,10d…コーティング層、11…不織布層、12…吸水層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバが収納されたコア部の外周に押え巻きテープを巻き付けて覆い、その外側をシースで被覆した光ケーブルであって、
前記押え巻きテープは、防湿用物質の蒸着薄膜からなる防湿層を有し、JIS K7129Aに基づく感湿センサー法(40℃、90%RH)による透湿度が1.0g/m2・day・atm以下であることを特徴とする光ケーブル。
【請求項2】
前記押え巻きテープは、不織布層を有することを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル。
【請求項3】
前記押え巻きテープは、吸水層を有することを特徴とする請求項2に記載の光ケーブル。
【請求項4】
前記防湿層は、プラスチックフィルム上に蒸着された金属薄膜で形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ケーブル。
【請求項5】
前記金属薄膜がアルミニウム金属であることを特徴とする請求項4に記載の光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−107232(P2011−107232A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259569(P2009−259569)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】