説明

光コネクタ

【課題】被覆除去刃による挿入ファイバの被覆除去を容易に実現できる光コネクタの開発。
【解決手段】内蔵ファイバを内挿固定したフェルールの後方に、前記内蔵ファイバと突き合わせるための後方から挿入された挿入ファイバの被覆を除去する被覆除去刃31を有する被覆除去部材30を備え、被覆除去部材30の被覆除去刃31の後側に形成した被覆付き光ファイバ挿通孔34の前端部内周面の周方向に均等の3以上の箇所に、挿入ファイバの位置決め用の突部37を、その後端から前側に行くにしたがって被覆付き光ファイバ挿通孔内周面からの突出寸法が次第に増大するテーパ状に突設した光コネクタを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルールに内挿固定した内蔵ファイバの後端に光ファイバを突き合わせ接続して、前記光ファイバに組み立てられる現場組立形の光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ心線を突き合わせ接続する作業においては、心線先端部の被覆を除去して裸光ファイバを露出させ、裸光ファイバ同士を突き合わせ接続することが広く行われている。また、近年、例えば非特許文献1に示すような外観がテーパ筒状で極小の被覆除去部を光コネクタの内部に搭載して、光コネクタ自体に光ファイバ心線の被覆除去機能を持たせる技術の検討が進められている。
【0003】
光コネクタとしては、予めフェルールに内挿固定した短尺の光ファイバ(以下単に「内蔵ファイバ」という場合がある)を、外部から挿入される光ファイバ(以下単に「挿入ファイバ」という場合がある)と突き合わせ接続した状態を保持するため、両光ファイバの突き合わせ端部同士を半割り部材の間に挟みこんで固定するクランプ部を、フェルール後方に設けたものも知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−208220号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】小山良、中島和秀、高谷雅昭、倉嶋利雄、“被覆付き光ファイバ心線の突合せ接続に関する考察”、2009年電子情報通信学会通信ソサエティ大会、B−13−8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被覆除去部による挿入ファイバの被覆除去を容易に実現できる光コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、内蔵ファイバを内挿固定したフェルールと、前記フェルールの後方に設けられ、前記内蔵ファイバと突き合わせるための後方から挿入された挿入ファイバの被覆を除去する被覆除去部材とを備え、前記被覆除去部材は、挿入ファイバの被覆を除去する被覆除去刃の後側に、前記挿入ファイバを前記被覆除去刃に導く被覆付き光ファイバ挿通孔を備え、前記被覆付き光ファイバ挿通孔の前端部内周面の周方向3箇所以上に、前記挿入ファイバの位置決め用の突部が突設されており、この突部は、その後端から前側に行くにしたがって突出寸法の増大するテーパ状となっている光コネクタを提供する。
第2の発明は、前記突部の前端部の最大突出部が、被覆付き光ファイバ挿通孔の軸線と同軸で前記挿入ファイバの標準外径に比べて小さい仮想円周上に位置する第1の発明の光コネクタを提供する。
第3の発明は、前記突部には、その後端から前端部の最大突出部にわたって傾斜面が延在形成されている第1又は2の発明の光コネクタを提供する。
第4の発明は、前記傾斜面の前端の最大突出部を除く部分が、被覆付き光ファイバ挿通孔の半径よりも大きい湾曲半径を以て湾曲する凹曲面とされている第3の発明の光コネクタを提供する。
第5の発明は、前記突部は、その後端から前端部の最大突出部にわたって稜線が延在する断面三角形状に形成されている第1又は2の発明の光コネクタを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、挿入ファイバとして、裸光ファイバを口出ししていない被覆付き光ファイバを用いた場合に、この挿入ファイバを被覆除去部材の被覆除去刃に向かって前進させるだけで、挿入ファイバ先端の裸光ファイバの口出し、及びこの裸光ファイバの内蔵ファイバ後端に対する突き合わせ接続を簡単に実現できる。
したがって、挿入ファイバ先端部に光コネクタを組み立てる作業において、光コネクタに挿入する被覆付き光ファイバ先端の被覆を除去して裸光ファイバを予め口出しする必要が無く、光コネクタの組み立てを簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る実施例の光コネクタの一例を示す斜視図である。
【図2】図1の光コネクタの分解斜視図である。
【図3】図1の光コネクタの要部を示す断面図である。
【図4】図1の光コネクタのコネクタ本体の分解斜視図である。
【図5】図1の光コネクタのコネクタ本体の分解斜視図であり、図4とは別の方向から示したものである。
【図6】被覆除去部材の一例を示す(a)斜視図、(b)平面図、(c)断面図である。
【図7】介挿部材の一例を示す斜視図である。
【図8】図1の光コネクタを示す断面図である。
【図9】図1の光コネクタを示す断面図である。
【図10】(a)、(b)は、図1の光コネクタの拘束部付き可動ガイドを示す斜視図である。
【図11】(a)、(b)は、図1の光コネクタの後側ハウジング及び引き留めカバーを示す斜視図である。
【図12】図1の光コネクタの後側ハウジング後端部の押圧部材受け部と拘束部付き可動ガイド後端部の可動ガイドとの関係を示す図であって、コネクタ後側から見た断面図である。
【図13】図1の光コネクタの拘束部付き可動ガイドを示す側面図である。
【図14】図1の光コネクタの組立中の状態を示す断面図である。
【図15】図1の光コネクタの組立中の状態を示す断面図である。
【図16】(a)は図15のA−A線に沿う断面図、(b)は図15のB−B線に沿う断面図である。
【図17】図14のC−C線に沿う断面図である。
【図18】図1の光コネクタの組立中の状態を示す断面図である。
【図19】図1の光コネクタの組立中の状態を示す断面図である。
【図20】図19のD−D線に沿う断面図である。
【図21】図1の光コネクタの組立中の状態を示す断面図である。
【図22】図21のE−E線に沿う断面図である。
【図23】図1の光コネクタの組立後の状態を示す断面図である。
【図24】図1の光コネクタの組立後の状態を示す断面図である。
【図25】図1の光コネクタのハウジングの周面に開口する連通孔及び窓を示す図である。
【図26】図1の光コネクタの組み立てに使用可能な光ファイバ把持部(押圧用固定部材、外被把持部材)の一例を示す斜視図である。
【図27】図26の光ファイバ把持部の構造を示す図であって、把持ベースに対して押さえ蓋を開放した状態を示す斜視図である。
【図28】図6の被覆除去部材の被覆付き光ファイバ挿通孔に突設する位置決め用突部の具体例を示す斜視図である。
【図29】図28の位置決め用突部を形成した被覆除去部材の被覆付き光ファイバ挿通孔の前端部の構造を示す拡大断面図である。
【図30】図29のF−F線に沿う断面図である。
【図31】図28の位置決め用突部を突設した被覆付き光ファイバ挿通孔の被覆除去部材の窓孔後側内壁面に開口する前端開口部の窓孔側から見た構造を示す拡大図である。
【図32】図31の被覆付き光ファイバ挿通孔の前端開口部における挿入ファイバの挿入状態の一例を示す図である。
【図33】他の具体例の位置決め用突部を突設した被覆付き光ファイバ挿通孔の前端部の構造を示す斜視図である。
【図34】図33の被覆付き光ファイバ挿通孔の前端部における挿入ファイバの挿入状態の一例を示す図であって、被覆除去部材の窓孔側から見た状態を示す図である。
【図35】別態様の被覆除去部材を示す(a)斜視図、(b)平面図、(c)断面図である。
【図36】(a)、(b)は、板状刃部を3以上有する構成の被覆除去部材の被覆除去部の例を示すモデル図である。
【図37】(a)〜(d)は、本発明の光コネクタ及びその組立方法の概要を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
まず、図37(a)〜(d)を参照して本発明に係る1実施例の概要を説明し、その後、図1〜27を参照してより詳細な実施例を説明する。
なお、図37(a)〜(d)において、左側を前、右側を後として説明する。
【0011】
まず、図37(a)〜(d)に示す実施例の光コネクタ100について説明する。
前記光コネクタ100は、光ファイバ12が内挿固定されたフェルール10を有している。フェルール10に内挿固定された光ファイバ12を、以下、内蔵ファイバとも言う。
前記光コネクタ100は、前記フェルール10先端(前端)の突き合わせ接合用の接合端面11とは反対の後側に、単心の光ファイバ心線、光ファイバ素線といった被覆付き光ファイバ1の被覆2を除去する被覆除去部材30を有する。前記被覆除去部材30は、被覆付き光ファイバ1の被覆2を除去する被覆除去部31(被覆除去刃)を有する。また、被覆除去部材30は、フェルール10の後端部から後側へ延出する後側延出片27に固定して、フェルール10後端から後側に離隔させて設けられている。
また、この光コネクタ1は、フェルール10の後側に、前記被覆除去部材30により被覆2が除去された裸光ファイバ3を内蔵ファイバ12後端に突き合わせた突き合わせ接続部(図37(c)、(d)の符号P。突き合わせ部分。以下、単に接続部とも言う)を把持固定するためのクランプ部20を有する。
【0012】
前記内蔵ファイバ12は、フェルール10を貫通する微細孔10aに内挿固定されており、その先端(前端)の端面を、前記フェルール10の接合端面11に揃えて設けられている。前記微細孔10aは、真っ直ぐな中心軸線を以てフェルール10を前後方向に貫設する貫通孔である。また、前記内蔵ファイバ12は、フェルール10後端から後側に突出する後側突出部12aを有している。内蔵ファイバ12は、その後端(後側突出部12a後端)が被覆除去部材30よりも前側、すなわちフェルール10と被覆除去部材30との間に位置する短尺の光ファイバ(ここでは裸光ファイバ)である。この内蔵ファイバ12は、前記後側突出部12aから前側の部分をフェルール10の微細孔10aに内挿固定して設けられている。
【0013】
前記クランプ部20は、前記後側延出片27と、この後側延出片27にコネクタ前後方向に延在形成された溝25、26に対向して配置された蓋部材22、23と、この蓋部材22、23を後側延出片27に向かって閉じる方向に付勢するクランプばね24とを有する。
クランプばね24としては、特に限定は無いが、例えば図2、図4に示すようなスリーブ状のものを採用できる。スリーブ状のクランプばね24としては、例えば、その断面形状(中心軸線に垂直の断面形状)がC字形のもの(図2、図4参照)であるが、これに限定されず、断面形状がコ字形のもの等も採用できる。本実施例のクランプ部20は、1つのクランプばね24の内側に、後側延出片27と、コネクタ前後方向に配列設置した2つの蓋部材22、23とを収納した構成となっている。
【0014】
前記クランプ部20は、フェルール10と被覆除去部材30との間に配置された蓋部材22(第2蓋部材。以下、前蓋部材とも言う)と後側延出片27との間に、裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12との接続部Pを把持固定する第1クランプ部を有する。また、このクランプ部20は、被覆除去部材30の後側に配置された蓋部材23(以下、後蓋部材とも言う)と後側延出片27との間に被覆付き光ファイバ1(被覆2が除去されていない部分。被覆部)を把持固定する第2クランプ部を有する。
後側延出片27と蓋部材22,23との間には、被覆付き光ファイバ1やその裸光ファイバ3を挿入する隙間22a,23aを確保する介挿部材(図示略)が抜き去り可能に介挿されている。
なお、光コネクタとしては、互いに別体のクランプばねを用いて第1クランプ部(クランプ部)、第2クランプ部をそれぞれ組み立てた構成も採用可能である。
【0015】
前記光コネクタ100は、前記後側延出片27の後側に、前記被覆付き光ファイバ1を挿通可能な貫通孔63が形成された可動ガイド62を有している。この可動ガイド62は、例えば前記後側延出片27を案内部材として、前記後側延出片27から後側に離隔した初期位置からフェルール10に向かって前進可能に設けられている。なお、前記可動ガイド62の前記初期位置からの前進動を案内する案内部材としては前記後側延出片27に限定されず、例えば、不図示のハウジングに設けられた案内部材などを用いても良い。
【0016】
前記後側延出片27は、前記後蓋部材23に対向する部分から後側に延在する案内ベース部51(ベース部材)を有している。また、後側延出片27の前記案内ベース部51から前側の部分21を、以下、クランプベース部とも言う。このクランプベース部21は、クランプ部20の前蓋部材22との間に、被覆除去部材30によって被覆付き光ファイバ1先端部の被覆の除去された裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12との接続部Pを把持固定するベース部材として機能する。
【0017】
前記後側延出片27の前記被覆除去部材30から後側に延出する部分(以下、後側片部とも言う)には、前記可動ガイド62の貫通孔63を介して被覆付き光ファイバ1が挿入されるファイバ収容溝26(以下、単に収容溝とも言う)が、コネクタ前後方向に延在形成されている。収容溝26としては、特に限定されるものではないが、本実施例では、単心の被覆付き光ファイバ1を後述する被覆除去部材30の被覆除去部31の裸光ファイバ挿通孔33と同軸上に位置決めすることに鑑みて、例えばU溝、半円溝、V溝などを採用できる。
また、可動ガイド62の貫通孔63を介して前記収容溝26に挿入する被覆付き光ファイバ1を、以下、挿入ファイバとも言う。
【0018】
前記光コネクタ100は、前記案内ベース部51に形成されている前記収容溝26に対向して配置されたガイド部材50を有している。互いに重ね合わされた案内ベース部51及びガイド部材50は、案内ベース部51後側から前記収容溝26に挿入されて被覆除去部31に向かって前進される挿入ファイバ1の先端部を案内する案内構造(後部ガイド部110)を形成する。前記ガイド部材50は、ガイド部材50に重ね合わせて設けられ、可動ガイド62の貫通孔63から前記収容溝26に挿入されてフェルール10に向かって前進する挿入ファイバ1を前記収容溝26に押さえ込んで、該挿入ファイバ1のたわみ変形を規制する。
【0019】
この光コネクタにおいて、前記ガイド部材50は、後述のように、被覆除去部31への押圧によって被覆除去した裸光ファイバ3先端を、内蔵ファイバ12後端に突き合わせ接続した後に、挿入ファイバ1を収容溝26に押さえ込んでたわみ変形を規制する閉じ位置から挿入ファイバ1のたわみ変形を許可する位置に退避される(図37(d)参照)。つまり、前記ガイド部材50は、裸光ファイバ3先端の内蔵ファイバ12後端に対する突き当て後に、前記閉じ位置から、案内ベース部51の収容溝26から浮き上がるように湾曲変形(たわみ変形)可能な空間を形成する位置(以下、開放位置とも言う)に移動される。前記ガイド部材50を、以下、開放ガイドとも言う。
【0020】
但し、閉じ位置にある開放ガイド50は、挿入ファイバ1をファイバ収容溝26に強く押し付けて案内ベース部51に固定するのではなく、挿入ファイバ1の案内ベース部51に対するコネクタ前後方向への円滑な相対移動を可能として押さえ込むものである。
また、開放ガイド50は、挿入ファイバ1をファイバ収容溝26に押さえ込むことで、挿入ファイバ1を、被覆除去部31を貫通する裸光ファイバ挿通孔33の中心軸線上に位置決めする機能を果たす。
【0021】
挿入ファイバ1は、開放ガイド50と収容溝26溝底との間隔方向において開放ガイド50と収容溝26内面との間に確保されたファイバ収容領域FSに、可動ガイド62の貫通孔63を介して挿入される。
図37(a)に示すように、図示例の開放ガイド50の、収容溝26に対向する部分には、収容溝26に沿って延在する延在凹所50aが形成されている。本実施例の光コネクタ100のファイバ収容領域FSは、後側延出片27の収容溝26(ベース部材の案内部)と前記開放ガイド50の延在凹所50a(開放ガイドの案内部)とによって構成されている。
【0022】
次に、図示例の被覆除去部材30について説明する。
本実施例の被覆除去部材30の被覆除去部31は、その後側から挿入ファイバ1が押圧されることで、挿入ファイバ1の被覆2を除去して裸光ファイバ3を口出しする被覆除去刃である。以下、この被覆除去部31を被覆除去刃とも言う。
図37(a)〜(d)に例示した被覆除去刃31は、裸光ファイバ挿通孔33が貫通する筒状に形成され、該裸光ファイバ挿通孔33の後端開口の縁が刃先とされた環状刃部31aである。図37(a)〜(d)に例示した環状刃部31a(被覆除去部31)は、その前端側から後側に行くに従って先細りのテーパ円筒状に形成されている。
図37(c)に示すように、この光コネクタ100は、収容溝26にその後側から挿入した挿入ファイバ1の先端を環状刃部31a後端に押圧し、前記挿入ファイバ1をフェルール10に向かって前進させることで、環状刃部31aによって挿入ファイバ1の被覆2を除去できる。被覆除去部材30は、挿入ファイバ1の前進によって被覆除去が進行するに伴い、被覆除去によって挿入ファイバ1先端に口出しされた裸光ファイバ3が裸光ファイバ挿通孔33に挿入されていく構成となっている。環状刃部31aは、挿入ファイバ1の裸光ファイバ3の周囲の被覆2を裸光ファイバ3から該環状刃部31aの外周へ分離させる。
【0023】
また、図示例の被覆除去部材30は、その前後方向中央部に、該被覆除去部材30を前後方向に直交する方向に貫通する窓孔32(図37(a)参照)を有している。前記環状刃部31aは、被覆除去部材30の前記窓孔32の前側に位置する壁部から窓孔32内に突設されたテーパ円筒状の突部である。また、図示例の被覆除去部材30は、前記窓孔32から後側の壁部を貫通して該被覆除去部材30の後端に開口する被覆付き光ファイバ挿通孔34を有している。この被覆付き光ファイバ挿通孔34は前記裸光ファイバ挿通孔33と同軸上に形成されている。被覆付き光ファイバ挿通孔34の前端は環状刃部31a後端から若干後側に位置している。コネクタ前後方向における被覆付き光ファイバ挿通孔34前端と被覆除去刃31との間の離隔距離は、被覆除去中に環状刃部31a後端(刃先)に押圧される挿入ファイバ1の直進性維持の点では、出来るだけ小さくすることが好ましい。また、被覆付き光ファイバ挿通孔34の後端は、後側延出片27の収容溝26に対して、該収容溝26から挿入ファイバ1を挿入可能に位置決めされている。
【0024】
被覆付き光ファイバ挿通孔34は、その断面(被覆付き光ファイバ挿通孔34の中心軸線に垂直の断面)が、挿入ファイバ1の断面(挿入ファイバ1の長手方向に垂直の断面)と概ね一致している。この被覆付き光ファイバ挿通孔34は、挿入ファイバ1を裸光ファイバ挿通孔33と同軸上に位置決めし、被覆除去のために環状刃部31a後端に向かって押圧した挿入ファイバ1の座屈を防ぎ、除去ムラの発生を防止するとともに、円滑な被覆除去の実現に有効に寄与する。
また、この光コネクタ100は、開放ガイド50が挿入ファイバ1の被覆除去中のたわみ変形を規制するため、被覆除去部31後端に対する挿入ファイバ1の押圧による被覆除去作業を安定に行える。
また、被覆付き光ファイバ挿通孔34の前端部には、環状刃部31a後端の刃先の軸線に挿入ファイバ1を高精度に位置決めするための突部37(図6(a)〜(c)、図28参照)が突設されている。但し、図37ではこの突部の図示を省略している。
【0025】
図37(d)に示すように、この光コネクタ100は、可動ガイド62を前記初期位置から前進限界位置(例えば後側延出片27後端に当接する位置)まで前進させることで、開放ガイド50が、挿入ファイバ1を収容溝26に押さえ込んでたわみ変形を規制する閉じ位置から、光コネクタ内に挿入ファイバ1のたわみ変形を許可する空間を形成する位置に退避(移動)する。この光コネクタ100は、可動ガイド62を初期位置から前進限界位置に前進させることで、可動ガイド62から作用する押圧力によって、開放ガイド50を前記閉じ位置から案内ベース部51に対する開放位置に退避(移動)させる蓋部材移動機構を有している。
【0026】
蓋部材移動機構としては、例えば図4、図5、図18に例示したように、開放ガイド50がスライド移動する案内ベース部51のスライド面51a(図4参照)に、開放ガイド50の斜め前方への移動を案内するレール部52を突設した構成を挙げることができる。図4、図5、図18に例示した蓋部材移動機構は、可動ガイド62によって後側から押圧された開放ガイド50が、前記レール部52に案内されて、前記閉じ位置から、前記スライド面51aに平行な面内で前記収容溝26長手方向からずれた方向にスライド移動する。その結果、案内ベース部51の収容溝26上に挿入ファイバ1のたわみ変形を許可する空間が形成される。
【0027】
蓋部材移動機構としては、初期位置から前進させた可動ガイド62から作用する押圧力によって、開放ガイド50を移動させ、結果、案内ベース部51の収容溝26上に挿入ファイバ1のたわみ変形を許可する空間を形成させるような構成であれば良く、開放ガイド50をレール部52によってスライド面51aに平行な面内でスライド移動させる構成に限定されない。蓋部材移動機構としては、例えば開放ガイド50を前記閉じ位置からコネクタ前後方向に沿う軸線を中心に回動させて、挿入ファイバ1のたわみ変形を許可する位置に退避させる構成等も採用可能である。
【0028】
図37(a)〜(d)は、後述のように可動ガイド62をその後側から押圧して前進させる押圧用固定部材120(光ファイバ把持部)を先端部近傍に固定した挿入ファイバ1を用い、この挿入ファイバ1の先端部に光コネクタ100を組み立てる、光コネクタの組立方法を例示している。本実施例は、より具体的には、挿入ファイバ1と、可撓性を有する線状の抗張力体(図示略)とを互いに並行になるように合成樹脂製の外被6によって一括被覆した光ファイバケーブル5の端末に、光コネクタ100を組み立てる場合を示す。
【0029】
ここでは、前記押圧用固定部材120として、光ファイバケーブル5端末をその両側から把持して光ファイバケーブル5端末に固定される外被把持形のものを用いている。すなわち、この押圧用固定部材120は、光ファイバケーブル5の外被を除去した挿入ファイバ1(被覆付き光ファイバ1)の被覆を把持する光ファイバ把持部としてだけでなく、光ファイバケーブル5の外被6を把持する外被把持部としても機能するものである。
光ファイバケーブル5端末には、光ファイバケーブル5先端の外被6を除去して露出させた(口出しした)挿入ファイバ1が突出されている。挿入ファイバ1は、光ファイバケーブル5端末に固定されている前記押圧用固定部材120から突出されている。
【0030】
光ファイバケーブル5の端末に光コネクタ100を組み立てるには、前記挿入ファイバ1の前記押圧用固定部材120から突出させた部分(突出部)を、光コネクタ100の後側から、可動ガイド62の貫通孔63を介して後部ガイド部110のファイバ収容領域FSに挿入し、フェルール10に向かって押し込んでいく。
このとき、挿入ファイバ1は、突出部先端の被覆除去による裸光ファイバ3の口出しを行うことなく、突出部全長が被覆2によって覆われた被覆付き光ファイバの状態のまま、可動ガイド62の貫通孔63から挿入されていく。
【0031】
図37(b)は挿入ファイバ1先端を環状刃部31a後端に当接させた状態を示す。
図37(b)に示すように、光コネクタ100の可動ガイド62は、収容溝26後端(より具体的にはファイバ収容領域FS後端)から後側に挿入ファイバ1が被覆除去中に座屈しない距離L1で離隔する初期位置から前進可能とされている。収容溝26、ファイバ収容領域FSの後端とは、後部ガイド部110後面から先細りのテーパ状に窪むテーパ状凹部111の前端(奥端)を意味する。
【0032】
押圧用固定部材120の挿入ファイバ1に対する固定位置は、図37(b)に示すように、挿入ファイバ1先端が環状刃部31a後端に当接したときに、可動ガイド62の貫通孔63後端から後側へ、挿入ファイバ1が被覆除去中に座屈しない距離L2で離隔した位置とする。
可動ガイド62の貫通孔63後端は、可動ガイド62の後面から先細りのテーパ状に窪むテーパ状凹部64の前端(奥端)に開口している。可動ガイド62の貫通孔63後端とは、可動ガイド62の後面から先細りのテーパ状に窪むテーパ状凹部64の前端(奥端)を意味する。
【0033】
なお、距離L1および距離L2は、いずれも、挿入ファイバ1の後述するたわみ幅に鑑みて、挿入ファイバ1が被覆除去中に座屈しない範囲(長さ)に設定する必要がある。たわみ幅は挿入ファイバ1の材質や外径等にも依存するが、裸光ファイバに石英系光ファイバを用いた樹脂被覆径が0.25mmの一般的な被覆付き光ファイバの場合、距離L1および距離L2は、2.5mm以下あるいは2.1mm以下とすることが適切である。
また、閉じ位置にある開放ガイド50のコネクタ前後方向における配置位置は、例えば、クランプ部20の後蓋部材23からその後方へ、挿入ファイバ1が被覆除去中に座屈しない範囲(長さ)の距離で離隔する位置とする。
コネクタ前後方向における開放ガイド50の配置位置は、蓋部材移動機構の構成に依っては、閉じ位置にあるときにクランプ部20の後蓋部材23に当接する位置とすることも可能である。すなわち、閉じ位置から開放位置への開放ガイド50の移動が案内ベース部51に対する前進動を伴わない場合は、閉じ位置にある開放ガイド50がクランプ部20の後蓋部材23にその後側から当接する構成を採り得る。
【0034】
可動ガイド62の貫通孔63は、挿入ファイバ1を、被覆除去部材30の被覆除去刃31の裸光ファイバ挿通孔33と同軸上に位置決めして、可動ガイド62後側から後部ガイド部110の収容溝26(より具体的にはファイバ収容領域FS)への挿入ファイバ1の挿入を円滑にする案内部として機能する。
【0035】
図37(b)、(c)に示すように、挿入ファイバ1の突出部を光コネクタ100のファイバ収容領域FSに挿入し、押圧用固定部材120を光コネクタ100のフェルール10に向かって前進させると、被覆除去部31の環状刃部31a後端に当接した挿入ファイバ1の前進に伴い、前記環状刃部31aによって挿入ファイバ1先端の被覆2が除去される。その結果、挿入ファイバ1先端に被覆2が除去された裸光ファイバ3が口出しされていく。
挿入ファイバ1先端に口出しされて被覆除去部材30の裸光ファイバ挿通孔34に挿入された裸光ファイバ3は、被覆除去の進行に伴い被覆除去部材30から前側に突出され、クランプベース部21の被覆除去部材30前側に位置する部分に形成された調心溝25に挿入される。調心溝25に挿入された裸光ファイバ3は、調心溝25によって内蔵ファイバ12後端に対して突き合わせ接続可能に位置決め、調心される。調心溝25としては例えばV溝であるが、これに限定されずU溝、半円溝なども採用可能である。
【0036】
図37(c)、(d)に示すように、押圧用固定部材120は、前進によって可動ガイド62に当接し、可動ガイド62をその後側から押圧しながら可動ガイド62がその前進限界位置(図示例では案内ベース部51後端に当接する位置)に到達(図37(d)参照)するまで前進させる。
挿入ファイバ1の突出部の押圧用固定部材120からの突出長は、内蔵ファイバ12後端から、前進限界位置に位置する可動ガイド62に当接する押圧用固定部材120までの離隔距離よりも若干長く設定する。したがって、図37(c)に示すように、押圧用固定部材120によって後側から押圧されながら前進する可動ガイド62が前進限界位置に達する前に、被覆除去部31によって被覆2が除去された裸光ファイバ3の内蔵ファイバ12後端に対する突き合わせ接続が達成される。挿入ファイバ1先端の裸光ファイバ3が内蔵ファイバ12に突き当たると、内蔵ファイバ12によって裸光ファイバ3の前進が規制され、被覆除去部31による挿入ファイバ1の被覆除去が停止(完了)する。
【0037】
そして、図37(d)に示すように、挿入ファイバ1先端の裸光ファイバ3の内蔵ファイバ12後端に対する突き当ての達成後、押圧用固定部材120によって押圧された可動ガイド62のさらなる前進によって、開放ガイド50が案内ベース部51に対して開放して挿入ファイバ1のたわみ変形を許可する。開放ガイド50の案内ベース部51に対する開放(開放位置への移動)は、挿入ファイバ1先端の裸光ファイバ3の内蔵ファイバ12後端に対する突き当ての達成後、可動ガイド62が前進限界位置に達する前、あるいは前進限界位置に達したときに実現される。閉じ位置から移動した開放ガイド50が開放位置に達すると、挿入ファイバ1に、収容溝26から浮き上がるようにたわみ変形4が生じる。なお、図37(d)中、挿入ファイバ1のたわみ変形した部分(たわみ部)に符号4を付記している。
【0038】
次いで、可動ガイド62が前進限界位置に位置する状態を保ったまま、前蓋部材22及び後蓋部材23とクランプベース部27cとの間に介挿されている介挿部材(図示略)を光コネクタ100のクランプ部20から抜き去る。これにより、クランプ部20の第1クランプ部によって挿入ファイバ1先端の裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12との接続部Pを把持固定するとともに、第2クランプ部によって挿入ファイバ1(被覆付き光ファイバ1)を把持固定する。これにより、光ファイバケーブル5端末(挿入ファイバ1先端部)への光コネクタ100の組み立てが完了する。
【0039】
また、前蓋部材22及び後蓋部材23とクランプベース部27cとの間に介挿されている介挿部材のクランプ部20からの抜き去り後、引き留め手段を用いて、押圧用固定部材120のフェルール10、後側延出片27に対する後退を規制する引き留め作業を行っても良い。
押圧用固定部材120は、例えば、可動ガイド62を前進限界位置に到達させたときの位置を保ったまま、引き留め作業によって後退を規制する。但し、押圧用固定部材120のフェルール10、後側延出片27に対する引き留め位置はこれに限定されず、例えば、挿入ファイバ1のたわみ変形4を縮小あるいは解消するべく、可動ガイド62を前進限界位置に到達させたときの位置から若干後側にずれた位置に引き留めても良い。
【0040】
この光コネクタ100によれば、被覆除去部31により被覆2を除去する間は、後側延出片27の収容溝26に対する閉じ位置に配置された開放ガイド50により、挿入ファイバ1のたわみ変形4を規制することができる。このため、この光コネクタ100は、被覆除去中の挿入ファイバ1の屈曲を抑制して、被覆2の除去に必要な強い押圧力を、確実に被覆除去部31に伝達することができる。
【0041】
被覆2の除去に必要な挿入ファイバ1の被覆除去部31に対する押圧力は、非特許文献1の図1(たわみ幅と最大挿入力との関係)に記載されているように、例えば5〜6N(500〜600g)程度とされる。
また、開放ガイド50の存在により、挿入ファイバ1のたわみ幅が2.5mm以下あるいは2.1mm以下となり、被覆2の除去に必要な押圧力を発生することができる。
なお、上記たわみ幅とは、挿入ファイバにおける押圧力の付与されて撓む可能性がある部分の長さをいう。
【0042】
この場合、挿入ファイバ1の被覆2を除去した裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12との端面同士の間には、被覆2の除去に必要な押圧力に相当する強い荷重が加わり続けることになる。
もし両光ファイバ3,12の間に「軸ズレ」等の突き合わせ不良が生じていた場合には、クランプばね24の付勢力によって、両光ファイバ3,12の光軸が一致するように裸光ファイバ3を変位させることが望ましい。
【0043】
そこで、被覆2を除去した後は、開放ガイド50を収容溝26に対する閉じ位置から退避させる。その結果、挿入ファイバ1自身の弾性によってたわみ変形4(たわみ部)が自発的に形成されるので、裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12との端面同士の間の荷重を、被覆除去部31からの反力などを考慮した突き合わせが維持される程度の適度なレベルまで緩和することができる。
これにより、端面間の荷重を適正にしてクランプ部20の前蓋部材22を閉じることができ、クランプ部20で挟み込んだ後の裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12との突き合わせ接続状態を良好にすることができる。その結果、光学特性の良好な光コネクタの組立が容易になる。
【0044】
また、既述のように、この実施例の光コネクタ100の可動ガイド62は、収容溝26後端(より具体的にはファイバ収容領域FS後端)から後側に挿入ファイバ1が被覆除去中に座屈しない距離L1で離隔する初期位置から前進可能である。このため、図37(b)に示すように、収容溝26に挿入した挿入ファイバ1の先端が被覆除去刃31に当接したときの、可動ガイド62とその後側へ離隔する押圧用固定部材120との間の距離(但し可動ガイド62の貫通孔63後端から押圧用固定部材120までの距離は挿入ファイバ1が被覆除去中に座屈しない距離L2)よりも長い長さで、挿入ファイバ1先端の被覆除去長(裸光ファイバ3の口出し長)を確保できる。
【0045】
次に、図1〜図27に例示した実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。
図1に、本実施例に係る光コネクタ100の斜視図を示す。図2に、前記光コネクタ100の分解斜視図を示す。
なお、光コネクタ100について、図8、図9、図14、図15、図18、図19、図21、図23、図24、図25において、左側を前、右側を後として説明する。
図1に示すように、この光コネクタ100は、フェルール10の後側に被覆除去部材30(後述)等を設けて組み立てたコネクタ本体101をスリーブ状のハウジング100Hに収納した概略構成となっている。
【0046】
図1、図2に示すように、ハウジング100Hは、フェルール10が収容される前側ハウジング14と、前側ハウジング14の外周に組み付けられたカップリング13と、前側ハウジング14に後方から組み付けられた後側ハウジング15とにより構成されている。
本実施例では、一例として、フェルール10、カップリング13及び前側ハウジング14の基本構造は、SC形光コネクタ(SC:Single fiber Coupling、JIS C 5973に規定されるもの等)に従っている。前側ハウジング14はSC形光コネクタのプラグフレームである。
但し、ハウジングとしては、上述の構成に限定されない。ハウジングとしては、例えば上述のハウジングからカップリング13を省略した構成のもの等も採用できる。
【0047】
次に、コネクタ本体101を説明する。
本実施例のコネクタ本体101のフェルール10は、例えば、ジルコニアなどのセラミックスやガラス等の硬質の材料によってキャピラリ状に形成された単心用フェルールである。このフェルール10としては、例えば、SC形光コネクタに用いられるものや、MU形光コネクタ(JIS C 5983に制定されるF14形光コネクタ。MU:Miniature-Unit coupling optical fiber connector)に用いられるものを採用できる。
また、フェルール10としては、その一部又は全部を合成樹脂で成形したものを採用することもできる。
【0048】
図8、図9に示すように、前記フェルール10には内蔵ファイバ12が内挿固定されている。
前記内蔵ファイバ12は、キャピラリ状の前記フェルール10をその軸方向に貫通する微細孔に内挿され、接着剤による接着固定等によってフェルール10に固定されている。
内蔵ファイバ12は、その先端(前端)の端面を、前記フェルール10先端(前端)の突き合わせ接合用の接合端面11に揃えて設けられている。また、内蔵ファイバ12は、フェルール10から後側に突出された後側突出部12aを有する。内蔵ファイバ12の後端(後側突出部12a後端)は、フェルール10とその後側に配置された被覆除去部材30との間に位置する。
【0049】
図2、図8、図9に示すように、前記コネクタ本体101は、前記フェルール10の後側に、挿入ファイバ1の被覆2を除去する被覆除去部31を形成した被覆除去部材30と、前記被覆除去部31により被覆2が除去された裸光ファイバ3を内蔵ファイバ12の後端に突き合わせ接続した突き合わせ接続部を把持固定するためのクランプ部20とを有する。
また、このコネクタ本体101は、図4、図9に示すように、フェルール10先端(前端)の突き合わせ接合用の接合端面11とは反対の後端部から後側へ延出する後側延出片27を有する。この後側延出片27は、フェルール10の中心軸線(及びその延長)に沿う前後方向を長手方向とする細長形状に形成されている。前記被覆除去部材30は、前記後側延出片27に設けられている。
【0050】
図2、図4に示すように、前記クランプ部20は、前記後側延出片27と、この後側延出片27にコネクタ前後方向に延在形成された溝25、26に対向して配置された蓋部材22、23と、この蓋部材22、23を後側延出片27に向かって閉じる方向に付勢するクランプばね24とを有する。
クランプばね24としては、特に限定は無いが、例えば図2、図4に示すようなスリーブ状のものを採用できる。スリーブ状のクランプばね24としては、例えば、その断面形状(中心軸線に垂直の断面形状)がC字形のもの(図2、図4参照)であるが、これに限定されず、断面形状がコ字形のもの等も採用できる。本実施例のクランプ部20は、1つのクランプばね24の内側に、後側延出片27と、コネクタ前後方向に配列設置した2つの蓋部材22、23とを収納した構成となっている。
【0051】
前記クランプ部20は、フェルール10と被覆除去部材30との間に配置された蓋部材22(第2蓋部材。以下、前蓋部材とも言う)と後側延出片27との間に、裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12との接続部Pを把持固定する第1クランプ部を有する。また、このクランプ部20は、被覆除去部材30の後側に配置された蓋部材23(以下、後蓋部材とも言う)と後側延出片27との間に挿入ファイバ1(被覆2が除去されていない部分。被覆部)を把持固定する第2クランプ部を有する。
後側延出片27と蓋部材22,23との間には、挿入ファイバ1やその裸光ファイバ3を挿入する隙間22a,23a(図37(a)参照)を確保する、介挿片41が抜き去り可能に介挿されている。前記介挿片41は組立部材40に突設された板状突片(第1突起部)である。
なお、コネクタ本体101としては、互いに別体のクランプばねを用いて第1クランプ部(クランプ部)、第2クランプ部をそれぞれ組み立てた構成も採用可能である。
【0052】
図4に示すように、前記後側延出片27は、前記後蓋部材23に対向する部分から後側に延在する案内ベース部51を有している。後側延出片27の前記案内ベース部51から前側の部分21を、以下、クランプベース部とも言う。このクランプベース部21は、クランプ部20の前蓋部材22との間に、被覆除去部材30によって挿入ファイバ1先端部に口出しされた裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12との接続部Pを把持固定する第2ベース部材として機能する。前記第2クランプ部は、後蓋部材23とクランプベース21との間に挿入ファイバ1を把持固定する。
【0053】
前記後側延出片27の前記被覆除去部材30から後側に延出する部分(後側片部)には、その後側から挿入ファイバ1が挿入されるファイバ収容溝26が、コネクタ前後方向に延在形成されている。収容溝26としては、特に限定されるものではないが、本実施例では、単心の被覆付き光ファイバである挿入ファイバ1を被覆除去部材30の被覆除去部31の裸光ファイバ挿通孔33と同軸上に位置決めすることに鑑みて、例えばU溝、半円溝、V溝などを採用できる。
【0054】
図2、図4に示すように、前記コネクタ本体101は、クランプ部20の蓋部材22,23の後方において、収容溝26に挿入された挿入ファイバ1のたわみ変形を規制する第1蓋部材58を有している。
この第1蓋部材58は、被覆除去部30により挿入ファイバ1の被覆2を除去する間、挿入ファイバ1がたわみ変形しないように、クランプ部20の後方において挿入ファイバ1の上方へのたわみ変形を規制する開放ガイド50と、開放ガイド50が閉じ位置から開放位置へ退避したときに挿入ファイバ1の第1たわみ幅4a(図19参照)のたわみ変形4が可能なように、所定の距離G(図19参照。以下、間隔とも言う)を介して前後方向に互いに離隔して配される第1蓋部材58の案内構造の他部である光ファイバ押さえ部59を有して構成されている。
【0055】
図16(b)に示すように、前記開放ガイド50は細長形状の部材であり、案内ベース部51に形成されている前記収容溝26に対向して該収容溝26の長手方向に沿って延在配置されている。そして、この開放ガイド50は、前記収容溝26にその後側から挿入されてフェルール10に向かって前進する挿入ファイバ1を収容溝26に押さえ込んで、該挿入ファイバ1のたわみ変形を規制する。
この開放ガイド50は、被覆除去部材30の被覆除去部31により被覆2を除去する間は、図16(b)に示す閉じ位置に配置されて、挿入ファイバ1のたわみ変形を規制する。
【0056】
コネクタ前後方向を長手方向とする細長形状の前記案内ベース部51と前記開放ガイド50とは、後述する拘束部付き可動ガイド60の可動ガイド62からフェルール10に向かう挿入ファイバ1の前進を案内する後部ガイド部110(案内構造)を構成する。コネクタ本体101は、クランプ部20の後側に、前記案内ベース部51と開放ガイド50とからなる前記後部ガイド部110を有している。
【0057】
図2、図4に示すように、前記コネクタ本体101は、前記後部ガイド部110の後側に、拘束部付き可動ガイド60を有している。この拘束部付き可動ガイド60は、案内ベース部51と開放ガイド50とを収納する拘束スリーブ部61の後端に、挿入ファイバ1を挿通可能な貫通孔63が形成された可動ガイド62を一体化した構成となっている。
図8、図9に示すように、拘束部付き可動ガイド60は、後側ハウジング15の内側に前後にスライド可能に設けられている。また、拘束部付き可動ガイド60は、前記可動ガイド62が前記後部ガイド部110から後側へ離隔して配置される初期位置(図8、図9に示す位置)に配置されており、該初期位置からフェルール10に向かって前進可能とされている。
【0058】
図8、図9、図10(a)、(b)に示すように、拘束部付き可動ガイド60の可動ガイド62は、前記貫通孔63が形成された外観角形ブロック状のガイド本体65を有する。ガイド本体65は、その貫通孔63の軸線に直交する断面の外周形状が概ね矩形になっている。
可動ガイド62のガイド本体65には、その後側から貫通孔63への挿入ファイバ1の挿入を容易にするために、テーパ状凹部64が形成されている。可動ガイド62の貫通孔63は、テーパ状凹部64の前端(奥端)に開口する後端から前側に延在形成され、ガイド本体65前面に開口している。前記拘束スリーブ部61は、ガイド本体65前面から前側へ突出されている。
【0059】
図8、図9等に示すように、ここで例示する光コネクタ100は、挿入ファイバ1と、可撓性を有する線状の抗張力体とを互いに並行になるように合成樹脂製の外被6によって一括被覆した光ファイバケーブル5の端末に組み立てられる。抗張力体としては、例えばアラミド繊維等の抗張力繊維からなるもの、鋼線等を挙げることができる。光ファイバケーブル5としては、インドアケーブル、ドロップケーブル等が挙げられる。挿入ファイバ1は、この光ファイバケーブル5端末に口出しした部分をコネクタ本体101への挿入に用いる。
【0060】
挿入ファイバ1は、裸光ファイバ3の外周面(側面)を被覆2で覆った構成の被覆付き光ファイバであり、例えば光ファイバ心線や光ファイバ素線等が挙げられる。裸光ファイバ3は、例えば石英系光ファイバである。また、被覆2は、例えば紫外線硬化性樹脂やポリアミド樹脂などを1層または複数層、ほぼ同心円状に被覆した樹脂被覆である。
【0061】
可動ガイド62は、光ファイバケーブル5端末に固定した押圧用固定部材120と連結可能である。
図26、図27に示すように、押圧用固定部材120は、光ファイバケーブル5端末を把持して光ファイバケーブル5に固定して取り付けられる外被把持部材である。この押圧用固定部材120は、光ファイバケーブル5を嵌め込むケーブル嵌合溝122が形成された断面コ字形の把持ベース123と、前記把持ベース123のケーブル嵌合溝122の溝幅方向両側の側壁部125の一方に枢着された押さえ蓋127とを有する。
【0062】
この押圧用固定部材120は、把持ベース123の一対の側壁部125の互いに対向する面に複数突設した把持用突起125aを、ケーブル嵌合溝122に嵌め込まれた光ファイバケーブル5の外被6に食い込ませて、一対の側壁部125の間に光ファイバケーブル5を把持固定できる。把持ベース123は、底壁部126の片面側に突設された一対の側壁部125の間に前記ケーブル嵌合溝122が確保された断面コ字形の部材である。ケーブル嵌合溝122の溝幅方向は、該ケーブル嵌合溝122を介して両側の側壁部125の間隔方向を指す。なお、図示例の押圧用固定部材120の把持用突起125aは、ケーブル嵌合溝122の深さ方向(図27上下)に延在する断面三角形状の突条に形成されている。
そして、この押圧用固定部材120は、前記押さえ蓋127が他方の側壁部125から離隔する開放状態にて把持ベース123を光ファイバケーブル5端末に外嵌めして固定し、押さえ蓋127を把持ベース123の一対の側壁部125の底壁部126とは反対側の端部間におけるケーブル嵌合溝122の開口部を閉じる閉位置に回動し、該押さえ蓋127を他方の側壁部125に係止して、光ファイバケーブル5端末に取り付けられる。
【0063】
この押圧用固定部材120は、把持ベース123のケーブル嵌合溝122の長手方向に沿う延在方向片端から、前記ケーブル嵌合溝122の仮想延長に沿って互いに並行に延出する一対の弾性係止片124を有する。一対の弾性係止片124は、前記把持ベース123のケーブル嵌合溝122の溝幅方向両側の側壁部125に突設されている。
【0064】
図1、図3、図11(a)、(b)に示すように、コネクタ本体101の拘束部付き可動ガイド60後端の可動ガイド62は、後側ハウジング15後端の断面コ字形(コネクタ前後方向に垂直の断面がコ字形)の押圧部材受け部16の内側に前後移動可能に収納されている。
図11(a)、(b)、図12に示すように、押圧部材受け部16は、底板部16aの片面側に一対の側板部16bが立設された断面コ字形に形成されている。押圧部材受け部16の一対の側板部16bの互いに対向する面には、前記押圧用固定部材120の一対の弾性係止片124が挿入される係止片案内溝16cが前後方向に延在形成されている。
図9、図11(a)、(b)、図12に示すように、前記押圧用固定部材120は、一対の弾性係止片124を、前記可動ガイド62のガイド本体65の後側から前記係止片案内溝16cに挿入して押圧部材受け部16の両側の側板部16bと可動ガイド62との間に通し、各弾性係止片124の先端を可動ガイド62の前側まで送り込むことができる。そして、押圧用固定部材120は、図15に示すように、一対の弾性係止片124先端の互いに対向する相手側の弾性係止片124に臨む側に突設された係止爪128を、可動ガイド62のガイド本体65前面に係合させることで可動ガイド62に連結される。
【0065】
なお、図9、図10(a)、(b)、図12に示すように、本実施例にあっては、可動ガイド62のガイド本体65の、押圧部材受け部16の一対の側板部16bに対面する側面にも係止片案内溝66が形成されている。ガイド本体65の係止片案内溝66は、押圧部材受け部16の側板部16bの係止片案内溝16cに対面する位置に形成されている。押圧用固定部材120は、弾性係止片124を、可動ガイド62のガイド本体65及び押圧部材受け部16の側板部16bに形成された係止片案内溝16c、66に挿入してガイド本体65に係合させることができる。
【0066】
コネクタ本体101は、拘束部付き可動ガイド60の初期位置からの前進の規制と規制解除とを切り換える前進規制手段67(図9参照)と、拘束部付き可動ガイド60の初期位置から後側への移動を規制するガイド後退規制手段とを有している。
前進規制手段は、押圧用固定部材120によって後側から押圧されることで、拘束部付き可動ガイド60の初期位置からの前進を規制した状態から前進の規制を解除した状態となる。
【0067】
図9に示すように、図示例のコネクタ本体101の拘束部付き可動ガイド60は、前記前進規制手段として、可動ガイド62のガイド本体65に突設された前進規制用突片67を有している。この前進規制用突片67は、前記ガイド本体65の、押圧部材受け部16の一対の側板部16bに対面する両側のうちの片方から斜め前方に突出されている。図9、図12に示すように、前進規制用突片67の先端(前端)は、押圧部材受け部16の一対の側板部16bの片方の係止片案内溝16cの溝底に形成された突片先端挿入溝16dに挿入され、該突片先端挿入溝16dの前端16e(図9、図11(a)参照)にその後側から突き当てられている。前進規制用突片67は、前記ガイド本体65の、押圧部材受け部16の一対の側板部16bに対面する両側の側部のうち、突片先端挿入溝16dに対面する側部から突出している。図示例の可動ガイド62において、前記前進規制用突片67は、突片先端挿入溝16dに対面する係止片案内溝66の溝底から突出している。
前進規制用突片67は、前側に行くにしたがって、ガイド本体65から離隔し、突片先端挿入溝16dの溝底に接近するように、貫通孔63の軸線に対して傾斜されている。
【0068】
突片先端挿入溝16dは、係止片案内溝16cに比べて狭い溝幅で、コネクタ前後方向に延在形成されている。また、突片先端挿入溝16dは、後側ハウジング15後端部を構成する押圧部材受け部16のみに形成されている。
拘束部付き可動ガイド60は、突片先端挿入溝16dの前端16eに前進規制用突片67先端が突き当てられて前進が規制された位置が初期位置となっている。
【0069】
図9、図10(a)、(b)に示すように、拘束部付き可動ガイド60は、後側延出片27における閉じ位置の開放ガイド50とは反対側の周面から突出する係止突起27a(図5、図9参照)が、拘束スリーブ部61の前端部に形成された係止用窓孔61bに入り込んで、初期位置から後側への移動が規制されている。
図9に示すように、初期位置の拘束部付き可動ガイド60は、拘束スリーブ部61の前記係止用窓孔61b前側に位置する部分が、係止突起27a前端のコネクタ前後方向に垂直に形成された前端面に当接することで初期位置から後側への移動が規制されている。
前記係止突起27aは、拘束部付き可動ガイド60の初期位置から後側への移動を規制するガイド後退規制手段として機能する。
【0070】
図15に示すように、可動ガイド62の前進規制用突片67は、押圧用固定部材120を可動ガイド62のガイド本体65に連結する際に、係止片案内溝16c、66に挿入して前進させた弾性係止片124先端によって押圧される。そして、弾性係止片124によって後側から押圧された前進規制用突片67は、弾性係止片124先端の前進によって、その先端が前記突片先端挿入溝16dから押圧部材受け部16内側に移動されて、突片先端挿入溝16dの前端16eに対する突き当てが解除される。
前記可動ガイド62はプラスチック製の一体成形品である。前進規制用突片67は、押圧用固定部材120の弾性係止片124先端によって後側から押圧されたときに、該前進規制用突片67とガイド本体65との境界部の弾性変形により、該境界部をヒンジ部として、その先端がガイド本体65の側面68に接近するように貫通孔63の軸線に対する向きが変わる。なお、図示例の可動ガイド62の前進規制用突片67とガイド本体65とは、板状の前進規制用突片67の板厚に比べて薄肉に形成された薄肉部69をヒンジ部(境界部)としており、該薄肉部69を介して繋がっている。
【0071】
押圧用固定部材120の弾性係止片124の係止爪128を含む先端部は、係止片案内溝16c、66の溝幅のほぼ全体に収納されるサイズに形成されており、突片先端挿入溝16dには入り込まない。弾性係止片124は、その先端によって、前進規制用突片67の先端からガイド本体65近傍に位置する前進規制用突片67根元側にずれた位置を前方に押圧して、前進規制用突片67先端を前記突片先端挿入溝16dから押圧部材受け部16内側に向かって移動し、突片先端挿入溝16dの前端16eに対する前進規制用突片67先端の突き当てを解除する。また、弾性係止片124は、突片先端挿入溝16dの前端16eに対する前進規制用突片67先端の突き当てを解除するとともに、その先端の係止爪128がガイド本体65に係合する。
拘束部付き可動ガイド60は、突片先端挿入溝16dの前端16eに対する前進規制用突片67先端の突き当てが解除されることで、初期位置から前進可能となる。
なお、光コネクタとしては、可動ガイド62のガイド本体65の係止片案内溝66を省略した構成も採用可能である。
【0072】
図9に示すように、ガイド後退規制手段として機能する前記係止突起27aは、コネクタ後側から前側に行くにしたがって後側延出片27周面からの突出寸法が増大するテーパ状に形成されている。
拘束部付き可動ガイド60の前記係止用窓孔61bの後側には前後方向に延在する長孔61cが形成されている。
図15に示すように、拘束部付き可動ガイド60は、突片先端挿入溝16dの前端16eに対する前進規制用突片67先端の突き当てが解除された状態で、初期位置から前方に押圧されると、拘束スリーブ部61における前記係止用窓孔61bと長孔61cとの間の部分である孔間壁部61dが、拘束スリーブ部61の若干の弾性変形によって前記係止突起27aを乗り越え、図19に示すように係止突起27aを長孔61cに収納できる。
拘束部付き可動ガイド60は、係止突起27aが長孔61cに入り込むと、孔間壁部61dが係止突起27aに当接する位置から後側延出片27に対する後側への相対的な移動が規制される。また、この光コネクタ100では、可動ガイド62が前進限界位置に到達したときに、係止突起27aが長孔61cに入り込み、拘束部付き可動ガイド60の後側延出片27に対するコネクタ前後方向の変位が規制される。
【0073】
拘束部付き可動ガイド60は、詳細を後述するように、開放ガイド50を収容溝26に対して挿入ファイバ1のたわみ変形を規制する閉じ位置に拘束する。また、拘束部付き可動ガイド60は、押圧用固定部材120の押し込みによって初期位置から前進し、開放ガイド50を前方へと駆動して、ファイバ収容溝26の外へ移動(閉じ位置から退避)させる機能を有する。拘束部付き可動ガイド60の拘束スリーブ部61は、被覆除去部材30の被覆除去部31による挿入ファイバ1の被覆除去中に、開放ガイド50を案内ベース部51から離間しないように押さえ込むとともに、開放ガイド50が案内ベース部51から離間する前に、押圧用固定部材120の前進に基づき前記押さえ込みを解除する押さえ込み部として機能する。
この拘束部付き可動ガイド60は、前記拘束スリーブ部61の内側に案内ベース部51と開放ガイド50とを収納した状態を維持したまま、前記初期位置から前進可能である。拘束部付き可動ガイド60は、前記初期位置から前進するとき、拘束スリーブ部61が後側延出片27に対してスライド移動する。
【0074】
ここで、この実施例の光コネクタの蓋部材移動機構について具体的に説明する。
図4、図5、図8、図9に示すように、開放ガイド50がスライド移動する案内ベース部51のスライド面51aには、開放ガイド50の斜め前方への移動を案内するレール部52が突設されている。このレール部52は、収容溝26側の端部から前側にいくにしたがって収容溝26から離隔するように、収容溝26に対して傾斜してスライド面51a上に突設された突条である。
また、図示例の光コネクタにおいて、前記レール部52は、スライド面51a上に前後方向に互いに間隔を開けて複数突設されている。複数のレール部52は、全て、収容溝26に対する傾斜方向及び傾斜角度が同じに揃えられている。
なお、図4に示すように、図示例の光コネクタの後側延出片27の前記スライド面51aは、後側延出片27の調心溝25及び収容溝26が形成された溝形成面51bの一部であり、収容溝26を介して該収容溝26の溝幅方向片側のみに形成されている。収容溝26を介してスライド面51aとは反対の側には、ファイバ収容溝26の横に突出した突条部54と切欠部55(後述)とが形成されている。
【0075】
可動ガイド62が初期位置にあるとき、開放ガイド50は、収容溝26に対する閉じ位置にある。図4、図5、図9に示すように、開放ガイド50は、案内ベース部51のスライド面51aに対面する対向面50bに形成されたレール収納溝50cに、案内ベース部51のレール部52を収納して、図16(b)に示すように前記対向面50bをスライド面51aに重ね合わせて閉じ位置に配置される。
図4、図5、図8に示すように、前記レール収納溝50cは、収容溝26に対して、案内ベース部51のレール部52の収容溝26に対する傾斜角度と同じ角度で傾斜して形成されている。
【0076】
開放ガイド50は、後側延出片27に対して前進方向に押圧されることで、レール収納溝50cの後側の内面が該レール収納溝26に収納されているレール部52に摺動しながら、閉じ位置から斜め前方へ移動する。
これにより、図20に示すように、突条部54と開放ガイド50との間にたわみ変形4を形成する隙間53(空間)が形成される。図16(b)に示すように、可動ガイド62が初期位置にあるとき、開放ガイド50は前記突条部54に対して閉じ合わされ(重ね合わされ)ている。本実施例においては、開放ガイド50が突条部54に当接する位置が、開放ガイド50の閉じ位置である。
【0077】
図8に示すように、可動ガイド62が初期位置にあるとき、拘束部付き可動ガイド60は、拘束スリーブ部61内面に、開放ガイド50に突設された拘束用突部50d(図4、図8参照)が当接されて、開放ガイド50を閉じ位置に拘束する。これにより、拘束スリーブ部61は、開放ガイド50を、収容溝26上に挿入ファイバがたわみ変形可能な空間を形成するように移動することのない(すなわち、閉じ位置から開放位置への開放ガイド60の移動を生じさせない)ように押さえ込む。
図4等に示すように、前記拘束用突部50dは、開放ガイド50の前記突条部54に対面する端部とは反対の側の端部に突設されている。
【0078】
図8、図9に示すように、開放ガイド50の後端部50eは、案内ベース部51後端から後側に突出されている。
拘束部付き可動ガイド60は、初期位置から前進させたとき、開放ガイド50を案内ベース部51に対して閉じ位置に拘束した状態を保ったまま、後側延出片27及び開放ガイド50に対してスライド移動した後、拘束スリーブ部61に形成されている開放用開口部61eに開放ガイド50の拘束用突部50dを収納(図18参照)する。これにより、開放ガイド50の案内ベース部51に対する閉じ位置への拘束が解除される。また、拘束部付き可動ガイド60は、開放用開口部61eに開放ガイド50の拘束用突部50dを収納する位置に達したとき、あるいは該位置に達した後に、可動ガイド62が開放ガイド50後端の前方向への押圧を開始して前進限界位置に至る。
【0079】
開放ガイド50は、閉じ位置への拘束解除後の可動ガイド62の前進に伴い、レール部52に案内されて案内ベース部51のスライド面51aに摺動しながら案内ベース部51に対して斜め前方にスライド移動する。
そして、この光コネクタは、可動ガイド62が後側延出片27後端に当接すると、開放ガイド50が挿入ファイバ1のたわみ変形を許容する位置に配置される。その結果、図20に示すように、突条部54と開放ガイド50との間にたわみ変形4を形成する隙間53が形成される。
【0080】
この光コネクタの構成であれば、拘束部付き可動ガイド60の前進動のみによって、拘束部付き可動ガイド60による開放ガイド50の閉じ位置への拘束を解除できる。この構成によれば、拘束状態と拘束解除状態との切り換えを実現するための構造が単純で、小型化も容易であるため、光コネクタの小型化に有利である。
前記レール部52は、光ファイバ把持部の前進に基づき前記開放ガイドが前進した際に前記開放ガイドを前記ベース部材から離間させる離間構造として機能する。
なお、前記離間構造としては、レール部とレール収納溝の配置を逆にした構成、すなわち開放ガイドに突設したレール部を、案内ベース部に形成したレール収納溝に収納し、光ファイバ把持部の前進に基づき前記開放ガイドが前進した際に前記開放ガイドの斜め前方への移動を案内する構成としても良い。
【0081】
図8、図13に示すように、拘束部付き可動ガイド60の拘束スリーブ部61には、組立部材40の光ファイバ押さえ片42が挿通される窓61aが形成されている。窓61aは、拘束スリーブ部61の肉厚を貫通して、該拘束スリーブ部61の外周面及び内周面に開口する開口部である。
【0082】
図14、図15に示すように、コネクタ本体101の前記案内ベース部51と前記開放ガイド50との間には、複数の光ファイバ押さえ片42,42が介挿されている。各光ファイバ押さえ片42は、その先端の、光ファイバ押さえ部59によって、収容溝26に挿入ファイバ1を押さえ込むことができる。
複数の光ファイバ押さえ片42,42は、前記開放ガイド50が閉じ位置から開放位置に移動(退避)されたときに、裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12との端面同士の間に突き合わせが維持される程度の荷重を残して、挿入ファイバ1のたわみ変形が可能なように、前後方向に所定の間隔G(図19参照)を介して配される。
【0083】
クランプ部20は、図3に示すように、後側ハウジング15の押圧部材受け部16から前側部分を構成する筒状部15a内に収容される。筒状部15aには、組立部材40(詳しくは後述)の介挿片41が挿入される窓15bと、光ファイバ押さえ片42が挿入される窓15cが形成されている。これら窓15b、15cは筒状部15aの肉厚を貫通して形成されている。
また、図17、図22、図25に示すように、ハウジング100Hには、スリーブ状のカップリング13の肉厚及びスリーブ状の前側ハウジング14の肉厚を貫通して、前記前側ハウジング14に内挿嵌合されている前記筒状部15aの窓15bに連通し、前記介挿片41が挿入される連通孔15dが形成されている。
なお、後側ハウジング15の筒状部15aの、光ファイバ押さえ片42が挿入される窓15cは、カップリング13及び前側ハウジング14の後側に位置しており、カップリング13及び前側ハウジング14によって覆われることなく、筒状部15aの周面に開口している。
【0084】
図4に示すように、クランプベース部21の前蓋部材22が重ね合わされる合わせ面には、調心機構として、裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12とを位置決めして調心する調心溝25が形成されている。調心溝25はフェルール10の微細孔の軸線(軸線のフェルール後側への仮想延長)に沿ってクランプベース部21の長手方向に延びている。調心溝25の断面形状は、例えばV溝であるが、U溝、丸溝(断面半円形の溝)などであってもよい。調心溝25は、接続される裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12との対ごとに(心数分:ここでは1本)設けられる。
【0085】
また、図2、図3に示すように、この光コネクタ100は、フェルール10をコネクタ前側へ弾性付勢して、他の光コネクタとの突き合わせ接続時の突き当て力を与えるスプリング18を有する。
このスプリング18は、具体的にはコイルスプリングであり、フェルール10後端部の外周に突設されたフランジ部10bの後側にてコネクタ本体101に外挿され、前記フランジ部10bと後側ハウジング15前端との間に介挿されている。
フェルール10は、このスプリング18によってコネクタ前側に弾性付勢されて、前記フランジ部10bが、ハウジング100H(具体的には前側ハウジング14内側)の前端部内側に突設されているストッパ壁部14aにその後側から当接する前側移動限界位置に配置されている。コネクタ本体101は、フェルール10にその前方から後方への押圧力(押し込み力)を作用させたときに、スプリング18を押し縮めながら、ハウジング100Hに対してコネクタ後側へ押し込み可能である。
【0086】
収容溝26は、調心溝25の延長上に設けられている。このファイバ収容溝26は、クランプベース部21の後蓋部材23が重ね合わされる部分に形成されているとともに、該部分からさらに後方に延在している。ファイバ収容溝26は、挿入ファイバ1の先端部を収納し、かつ、後蓋部材23がクランプばね24でクランプされたときに、挿入ファイバ1をしっかりとクランプ固定できる形状になっている。
挿入ファイバ1をファイバ収容溝26に沿ってクランプ部20に挿入すると、ファイバ収容溝26を経て被覆除去部材30に誘導される。図37(b)に示すように、被覆除去部材30の被覆除去部31により被覆2を除去して、裸光ファイバ3を内蔵ファイバ12と突き合わせることができる。
【0087】
図6(a)〜(c)は、図37(a)〜(d)に例示した被覆除去部材30の具体例を示す。この被覆除去部材30は、図6(b)、(c)において左側を前、右側を後とするように光コネクタ100内に配置されている。
図6(a)〜(c)に示すように、被覆除去部材30は、前方側に裸光ファイバ挿通孔33を、後方側に被覆付き光ファイバ挿通孔34を有する。裸光ファイバ挿通孔33及び被覆付き光ファイバ挿通孔34は、コネクタ前後方向に沿って同軸上に形成された円形孔である。裸光ファイバ挿通孔33と被覆付き光ファイバ挿通孔34との間には、裸光ファイバ挿通孔33及び被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線に交差する方向に被覆除去部材30を貫通する窓孔32が形成されている。被覆除去部31(被覆除去刃)は、被覆除去部材30の窓孔32を形成する前後方向の壁部のうちの裸光ファイバ挿通孔33の形成されている側の壁部に形成されている。
【0088】
被覆除去部材30は、例えば金属等の硬質材料や樹脂からなるボディ30aに、裸光ファイバ挿通孔33、被覆付き光ファイバ挿通孔34、窓孔32、被覆除去刃31が形成された構成となっている。また、被覆除去部材30(詳細にはそのボディ30a)は、外観矩形板状に形成されている。この被覆除去部材30のボディ30aは、より具体的には長方形板状に形成されており、被覆除去部材30は前記ボディ30aの長手方向をコネクタ前後方向に揃えて前記クランプベース部21に取り付けられている。
前記窓孔32は前記ボディ30aの板厚を貫通する貫通孔となっている。裸光ファイバ挿通孔33及び被覆付き光ファイバ挿通孔34は、窓孔32の軸線に直交する方向の軸線を以て形成されている。前記ボディ30aは、前記裸光ファイバ挿通孔33の前端が開口する前端面35aと、被覆付き光ファイバ挿通孔34の後端が開口する後端面35bとを有する。前記前端面35aは前記ボディ30aの4面の外周面のうちの1面である。前記後端面35bは前記ボディ30aの4面の外周面のうち、前記前端面35aとは反対側に位置する1面である。
【0089】
図示例の被覆除去部材30の被覆除去刃31は、裸光ファイバ挿通孔33が貫通するテーパ円筒状の既述の環状刃部31aと、この環状刃部31aの外周面からその軸線に垂直の方向(環状刃部31aの径方向)に突出する板状刃部31bを有する。
環状刃部31aは、被覆除去部材30の前後方向において、裸光ファイバ挿通孔33が形成されている側の壁部(前壁部)から後側に向かって窓孔32内に突出する筒形の突起状に形成されている。環状刃部31aは、前記前壁部の前記窓孔32に臨む面(窓孔前側内壁面32a)から後側に突出している。この環状刃部31aは、その外周面が、前端側から後側に行くに従って先細りのテーパ円筒状に形成されている。裸光ファイバ挿通孔33は、環状刃部31a及び前壁部を貫通しており、その前端が被覆除去部材30のボディ30a前端面35aに開口している。この裸光ファイバ挿通孔33には、被覆除去によって挿入ファイバ1先端に口出しされた裸光ファイバ3が挿入される。また、裸光ファイバ挿通孔33は、前記裸光ファイバ3をクランプ部20の調心溝25へ案内する微細孔である。
【0090】
図示例の被覆除去部材30において、前記板状刃部31bは、窓孔32の形成方向(窓孔32の軸線方向)に垂直の板状に形成されている。また、図示例の被覆除去部材30において、前記板状刃部31bは、環状刃部31aからその径方向両側に張り出している。
【0091】
図示例の被覆除去部材30において、前記板状刃部31bは、環状刃部31aと、窓孔32を挟んでボディ30a幅方向両側に位置する壁部36(以下、横壁部とも言う)とを橋絡している。窓孔32の両側の横壁部36は、環状刃部31aを介して両側に該環状刃部31aから離隔して位置する。
【0092】
図示例の被覆除去部材30のボディ30aは金属や樹脂製の一体成形品であり、前記板状刃部31bは、被覆除去部材30の横壁部36及び環状刃部31aと一体に形成されている。この板状刃部31bは、環状刃部31aの窓孔前側内壁面32aからの突出寸法全体にわたって、環状刃部31aと横壁部36との間に形成されている。
なお、被覆除去部材30のボディ30aは必ずしも一体成形品である必要は無く、複数部材によって組み立てた構成のものであっても良い。
【0093】
また、図6(c)に示すように、前記板状刃部31bは、窓孔前側内壁面32aから後側へ向かって板厚が次第に縮小するテーパ状(テーパ板状)に形成されている。図示例の板状刃部31bは、その後端の刃先の稜線が、環状刃部31a後端(後端の稜線)から環状刃部31aの軸線に垂直に真っ直ぐに延在形成されている。環状刃部31aを介して両側の板状刃部31b後端の稜線は、環状刃部31aの軸線に垂直の同一直線上に位置している。
板状刃部31bの板厚方向両側の面間の刃先角度θは、例えば20〜40度に設定できる。但し、この刃先角度θは、被覆付き光ファイバ挿通孔34から被覆除去部材30に対して前方へ向かって押し込む挿入ファイバ1の押し込み力(作業者の手作業による押し込み力)等に鑑みて、被覆除去を実現できる角度であれば良く、20〜40度の範囲に限定されるものでは無い。
【0094】
図37(a)及び図37(b)に示すように、この光コネクタ100は、収容溝26に挿入した挿入ファイバ1を該光コネクタ100に対してその前方に向かって前進させると、挿入ファイバ1先端が被覆付き光ファイバ挿通孔34に挿入される。図6(a)〜(c)に示すように、被覆付き光ファイバ挿通孔34は、コネクタ前後方向の軸線に沿って真っ直ぐに延在形成されている。この被覆付き光ファイバ挿通孔34は、被覆除去部材30において窓孔32から後側の後壁部を前後方向に貫通している。被覆付き光ファイバ挿通孔34の前端は、前記後壁部の窓孔32に臨む面、すなわち窓孔32の窓孔前側内壁面32aに対面する窓孔後側内壁面32bに開口している。被覆付き光ファイバ挿通孔34は、挿入ファイバ1を環状刃部31aの軸線上に真っ直ぐに延在する状態に位置決めすることができる。
【0095】
挿入ファイバ1は、光コネクタ100に対する前進によって、被覆付き光ファイバ挿通孔34から前側へ突出させた先端を被覆除去刃31に押圧する(図37(b)参照)ことができる。そして、挿入ファイバ1は、その先端が被覆除去刃31に向けて押圧されることにより、被覆2が除去されて、裸光ファイバ3が裸光ファイバ挿通孔33に挿入される。
このとき、被覆除去刃31は、裸光ファイバ3と被覆2との間に環状刃部31aが差し込まれることにより、被覆2を裸光ファイバ3から容易に剥離することができる。また、被覆除去刃31は、裸光ファイバ3の周囲の被覆2を板状刃部31bで2つに分断することにより、裸光ファイバ3から分離された不要な被覆2の、環状刃部31aからの分離、除去を円滑に進行させることができる。
【0096】
環状刃部31a後端の円形の稜線(刃先)の径は、挿入ファイバ1の裸光ファイバ3外径と同等、あるいは裸光ファイバ3外径に比べて僅かに径大とされる。環状刃部31a後端の稜線(刃先)の径は、例えば、挿入光ファイバ1の裸光ファイバ3外径に、挿入ファイバ1の被覆2の肉厚(被覆厚)の半分以下、あるいは3分の1以下の寸法を加えた大きさとすることができる。
また、裸光ファイバ挿通孔33後端部の入口(ファイバ入口)を、後側に行くほど径(内径)が大きくなる末広がりのテーパ状に形成し、環状刃部31a後端の円形の刃先の径を、前記ファイバ入口の前側の内径に比べて僅かに径大としても良い。
【0097】
被覆付き光ファイバ挿通孔34後端の入口(ファイバ入口)には、外から内へ向けて径が縮小するテーパ穴34aが設けられている。被覆付き光ファイバ1の先端がテーパ穴34aに案内されることにより、被覆付き光ファイバ挿通孔34への差込みがより確実になる。
また、裸光ファイバ挿通孔33の前端の出口には、内から外へ向けて径が拡大するテーパ穴33aが設けられている。裸光ファイバ3が裸光ファイバ挿通孔33から出る方向に若干の余裕があることにより、裸光ファイバ挿通孔33から調心溝25へ裸光ファイバ3を円滑に誘導することができる。
【0098】
被覆除去部材30の板状刃部31bは、その後端の刃先の稜線が、環状刃部31a後端の稜線から環状刃部31aの軸線に垂直に真っ直ぐに延在する構成(図6(a)〜(c)参照)に限定されない。板状刃部31bとしては、その後端の刃先の稜線が、環状刃部31a後端の稜線から僅かに前側にずれた位置にて、環状刃部31aの軸線に垂直に真っ直ぐに延在する構成も採用可能である。但し、この場合の板状刃部31b後端の刃先(稜線)は、環状刃部31aによって裸光ファイバ3から円筒状に剥離された被覆2を2つに分断して、環状刃部31a外周からの被覆2の分離、除去を円滑に進行させる点で、コネクタ前後方向における位置が環状刃部31a後端に接近した位置であることが好ましい。
また、板状刃部31bは、環状刃部31a後端からコネクタ前後方向前側へ行くにしたがって、その刃先の環状刃部31a外周面からの距離が増大する形状としても良い。
【0099】
図6(a)〜(c)、図28に示すように、被覆付き光ファイバ挿通孔34の前端部には、挿入ファイバ1を、被覆付き光ファイバ挿通孔34及び裸光ファイバ挿通孔33の軸線上に高精度に位置決めするための突部37が突設されている。この突部37を、以下、位置決め用突部とも言う。
図6(a)〜(c)に例示した被覆除去部材30において、位置決め用突部37は、被覆付き光ファイバ挿通孔34の内周面34bの周方向に均等の4箇所に突設されている。
【0100】
位置決め用突部37は、その後端から前側に行くにしたがって、被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bからの突出寸法が次第に増大するテーパ状(スロープ状)に形成されている。
被覆付き光ファイバ挿通孔34の前端部内周面34bの周方向の4箇所に突設された位置決め用突部37は、挿入ファイバ1外周(被覆2外周)に当接して挿入ファイバ1を環状刃部31a後端の刃先の軸線と同軸に高精度に位置決めする。
なお、図示例の被覆除去部材30にあっては、環状刃部31a後端の刃先の軸線と、裸光ファイバ挿通孔33の軸線とは、互いに一致されている。
【0101】
前記位置決め用突部37は、被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bの周方向に均等の3以上の箇所に突設されていれば良く、被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bの周方向の4箇所に均等配置した構成に限定されない。
被覆付き光ファイバ挿通孔34の前端部内周面34bに突設された3以上の位置決め用突部37は、挿入ファイバ1外周(被覆2外周)に当接して挿入ファイバ1を環状刃部31a後端の刃先の軸線と同軸に高精度に位置決めする。
被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部にて挿入ファイバ1を環状刃部31a後端の刃先の軸線に対して高精度に位置決めすることは、被覆除去に要する挿入ファイバ1の被覆除去刃31に対する押圧力(コネクタ後側からの押し込み力)の低減、除去ムラの発生抑制等に有効に寄与する。
【0102】
被覆付き光ファイバ挿通孔34は、その内径が挿入ファイバ1外径に比べて僅かに大きい丸孔である。被覆付き光ファイバ挿通孔34は、挿入ファイバ1として外径が250μmのものを使用する場合に、挿入ファイバ1外径に比べて例えば10〜20μm程度大きい内径で形成できる。
【0103】
光ファイバ素線等の被覆付き光ファイバには、厳密には、径(外径)にばらつきが存在する。この外径のばらつきは、標準的な外径(本明細書においては、標準外径とも言う)に対する分布として把握できる。被覆付き光ファイバ挿通孔34では、挿入ファイバ1の標準外径に比べて大きい内径が採用されることで、ばらつきの範囲内で標準外径に比べて大きい挿入ファイバの挿入が可能となっている。
なお、本明細書において、特に断らない場合は、挿入ファイバ1の径(外径)とは標準外径を指す。
【0104】
各位置決め用突部37には、その後端から前側に行くにしたがって被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線に次第に接近する傾斜面(一例として図28〜図32の傾斜面371aを参照)、あるいは稜線(一例として図33の稜線372aを参照)であるファイバ当接案内部37aが延在形成されている。
位置決め用突部37は、ファイバ当接案内部37a前端に、被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bからの突出寸法が最大の最大突出部37bを有する。ファイバ当接案内部37a前端の最大突出部37bは、換言すれば、位置決め用突部37において、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線からの距離が最短の部位である。
【0105】
また、位置決め用突部37の前記最大突出部37bから後側の部分は、その前後方向に垂直の断面における、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線34Pからの距離が最短の部位が前記ファイバ当接案内部37aに存在する。前記ファイバ当接案内部37aには、その前後方向全体にわたって、前後方向に垂直の断面における被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線からの距離が最短の部位が連続して存在している。
なお、ファイバ当接案内部37aについて、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線からの距離とは、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線に垂直の断面における被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線からの距離を指す。
【0106】
位置決め用突部37の傾斜面としては、例えば、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線に対して60度以下あるいは45度以下の傾斜角度を以て傾斜する平坦面(以下、傾斜平坦面とも言う)を挙げることができる。また、傾斜面としては、例えば、その全長あるいはほぼ全長を、その延在方向に垂直の断面が円弧をなす凹曲面(以下、凹曲傾斜面とも言う。)としたものも採用可能である。以下、この傾斜面を、溝案内形傾斜面とも言う(一例として図28〜図32の傾斜面371a(溝案内形傾斜面)を参照)。
溝案内形傾斜面の凹曲傾斜面は、例えば図28〜図30に例示する凹溝371dのように、位置決め用突部37に凹溝を形成する。
【0107】
図6(a)〜(c)に例示した被覆除去部材30の位置決め用突部37は、具体的には、ファイバ当接案内部37aとして溝案内形傾斜面371aを形成した位置決め用突部37の一例である。この位置決め用突部37に図中符号371を付記する。
ここで、図28〜図32を参照して、前記位置決め用突部371、及び該位置決め用突部371を形成した被覆除去部材30について説明する。
なお、図6(a)〜(c)においては、位置決め用突部371の被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bからの突出寸法を図28〜図32に比べて誇張して大きく図示している。
【0108】
図28〜図32に例示した位置決め用突部371の溝案内形傾斜面371aは、その後端から前側へ行くにしたがって被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線34Pに接近するとともに湾曲半径が次第に大きくなる凹曲傾斜面371eを有する。また、溝案内形傾斜面371aは、凹曲傾斜面371eの前側に、該凹曲傾斜面371eが形成する凹溝371dの溝幅方向に延在する直線状に形成された前端(直線部371f)を有する。
位置決め用突部371の最大突出部37b(後述)は前記直線部371fに存在する。図28、図29に示すように、位置決め用突部371は、その前端を、被覆除去部材30の窓孔後側内壁面32bに一致させて形成されている。前記直線部371fは、位置決め用突部371の前端に位置しており、窓孔後側内壁面32bと溝案内形傾斜面371aとの境界線を形成している。
【0109】
図28〜図30に示すように、図示例の位置決め用突部371の溝案内形傾斜面371aの後端は、凹曲傾斜面371e後端によって形成されている。凹曲傾斜面371e後端は、溝案内形傾斜面371a後端と被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bとの間の段差の発生を回避するべく、被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bと一致する湾曲半径を以て湾曲する曲線371gとされている。前記曲線371gは、溝案内形傾斜面371a後端部と被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bとの境界線となっている。この構成は、被覆付き光ファイバ挿通孔34にその後側から挿入して前進させる挿入ファイバ1の先端の位置決め用突部37(詳細には溝案内形傾斜面371a)への乗り上げを円滑にする点で有利である。
【0110】
図28〜図30に示すように、凹曲傾斜面371eの、その後端の前記曲線371gから前側の部分は、前後方向に垂直の断面において前記軸線34Pからの距離に比べて大きい湾曲半径を以て緩やかに湾曲する凹曲面となっている。
凹曲傾斜面371eは、位置決め用突部37の、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線34Pに臨む側に、前後方向に垂直の断面において円弧状に窪む溝底面を有する凹溝371dを形成する。この凹溝371dは凹曲傾斜面371eを溝底面とするものである。また、この凹溝371dは、凹曲傾斜面371eが形成する溝底面のうち、前後方向に垂直の断面において前記軸線34Pからの距離が最短の部位を溝底とするものである。
この凹溝371dには、その延在方向全長にわたって、前後方向に垂直の断面における前記軸線34Pからの距離が最短の部位が連続して線状をなす線状主案内部371cが存在する。凹溝371dは、その延在方向全長にわたって、前記線状主案内部371cを溝底とする構成となっている。
【0111】
図28〜図30に示すように、溝案内形傾斜面371aの凹曲傾斜面371eは、その後端から前側に行くにしたがって、前記線状主案内部371cの被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線34Pからの距離が短くなるように形成されている。位置決め用突部371は、線状主案内部371c前端が、被覆付き光ファイバ挿通孔34軸線からの距離が最短(被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bからの突出寸法が最大)の最大突出点371bとなっている。この最大突出点371bは位置決め用突部371における最大突出部37bとして機能する。
また、図示例の位置決め用突部371において、前記最大突出点371bは、凹曲傾斜面371e前端の直線部371fと線状主案内部371cとの交点に位置する。この点、前記溝案内形傾斜面371aは、実質的に、その延在方向全長にわたって延在する前記線状主案内部371cが、該溝案内形傾斜面371aの後端から前側に行くにしたがって被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線34Pに次第に接近する構成となっている。
【0112】
図28〜図32に示すように、図示例の位置決め用突部371は、溝案内形傾斜面371aの凹曲傾斜面371eの湾曲半径の調整によって、前記凹溝371dがその延在方向全長にわたって一定溝幅で延在する構成となっている。位置決め用突部371の凹溝371dの溝幅方向両側には、凹曲傾斜面371eと被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bとの境界線371hが、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線34Pに平行に延在している。
溝案内形傾斜面371a前端の直線部371fは、凹溝371dの溝幅方向に一致する向きで、凹溝371dの溝幅方向両側の境界線371h間の距離に一致する長さに形成されている。
【0113】
なお、位置決め用突部の溝案内形傾斜面としては、例えば、その前端を含む延在方向全長を、後端から前側へ行くにしたがって湾曲半径が増大する凹曲傾斜面とした構成も採用可能である。また、溝案内形傾斜面としては、延在方向全長を後端から前側へ行くにしたがって湾曲半径が次第に小さくなる凹曲傾斜面とした構成も採用可能である。
但し、この実施形態にて説明する凹曲傾斜面は、その前端においても被覆付き光ファイバ挿通孔の軸線からの距離に比べて同等以上の湾曲半径を確保する。また、この凹曲傾斜面は、その延在方向の全長、あるいは被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bと湾曲半径を一致させた後端を除く全体が、前後方向に垂直の断面において、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線からの距離に比べて大きい湾曲半径を以て緩やかに湾曲する構成とする。
この凹曲傾斜面は、その延在方向全長にわたって、位置決め用突部に線状主案内部を溝底とする凹溝を形成する。また、この凹曲傾斜面を形成した位置決め用突部は、線状主案内部前端を最大突出点(最大突出部)とする構成とする。
【0114】
位置決め用突部に形成する既述の傾斜平坦面も、その延在方向に沿って、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線からの距離が最短の部位が連続してなる線状主案内部が存在する構成である。この傾斜平坦面を形成した位置決め用突部は、線状主案内部前端を最大突出点(最大突出部)とする構成とする。
【0115】
図33に示す位置決め用突部37(図33中、符号372を付記する)は、前後方向に垂直の断面形状が三角形状で、被覆付き光ファイバ挿通孔34の前端部内周面34bにコネクタ前後方向に延在させて突設した突起である。この位置決め用突部372は、その後端から前側へ行くにしたがって、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線に接近(被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bからの突出寸法が増大)するテーパ状に形成されている。また、この位置決め用突部372には、ファイバ当接案内部37aとして、位置決め用突部372後端から前側に行くにしたがって被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線に接近する稜線372aが形成されている。
【0116】
前記稜線372aは、位置決め用突部372の前後方向に垂直の断面における被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線からの距離が最短の部位が、前後方向に連続して線状になったもの(線状主案内部)である。
この位置決め用突部372は、稜線372a前端を、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線からの距離が最短(被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bからの突出寸法が最大)の最大突出点372b(頂点)としている。この位置決め用突部372においては、稜線372a前端の最大突出点372bが最大突出部37bとして機能する。
【0117】
図33、図34に例示する位置決め用突部372は、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線に垂直の断面形状が、稜線372bを頂点とする二等辺三角形をなしている。この位置決め用突部372の、前後方向に垂直の断面は、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線34Pに垂直で前記稜線372bを通る仮想直線を介して両側が対称の形状、すなわち前記仮想直線を中心とする線対称の形状となっている。
この位置決め用突部372の稜線372bと被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bとの間に延在する両側の斜面372cは、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線及び前記稜線372bと重なる仮想平面を介して両側に同様の形状、寸法で形成されている。
【0118】
ここで説明する実施形態において、被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bに突設した3以上の位置決め用突部37は、その後端からファイバ当接案内部37a前端までの部分の形状及び寸法、さらに該部分の被覆付き光ファイバ挿通孔34の内周面34bにおける前後方向の形成位置が互いに同じに揃えられている。したがって、各位置決め用突部37のファイバ当接案内部37aの線状主案内部は、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線を中心とし後側から前側に行くにしたがって次第に径が縮小する仮想テーパ円筒面に重なる位置にある。
【0119】
各位置決め用突部37の最大突出部(最大突出点)は、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線34Pを中心(軸線34Pと同軸)とする同一の仮想円周に重なる位置にある。但し、各位置決め用突部37の最大突出部の被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線からの距離は、挿入ファイバ1の半径(外径の半分)に比べて僅かに小さくする。すなわち、各位置決め用突部37の最大突出部(最大突出点)は、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線と同軸で、挿入ファイバ1外径に比べて僅かに径が小さい仮想円周に重なる位置にある。
各位置決め用突部37の最大突出部が重なる仮想円周(以下、最大突出部仮想円周とも言う)の径は、挿入ファイバ1(被覆付き光ファイバ)として裸光ファイバ3外径が125μm、被覆外径(標準外径)が250μmのものを使用する場合に、挿入ファイバ1外径に比べて例えば5〜10μm程度小さくする。
最大突出部仮想円周の一例について、図31に符号C1、図34に符号C2を付記して図示した。
【0120】
コネクタ前後方向における位置決め用突部37の後端から最大突出部までの延在寸法(前後方向延在長)は、例えば0.1〜0.3mmとすることができる。但し、前記前後方向延在寸法は上述の範囲に限定されず、適宜設定し得る。
位置決め用突部37のファイバ当接案内部37aは、位置決めコネクタ37における前記前後方向延在寸法の範囲に形成される。
【0121】
被覆除去部材の被覆付き光ファイバ挿通孔34にその後側から挿入してコネクタ前方へ向かって前進させた挿入ファイバ1の先端は、位置決め用突部37のファイバ当接案内部37aに案内されながら、位置決め用突部37が突設されている被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部を通過して、被覆除去刃31に押圧される。挿入ファイバ1の先端は、挿入光ファイバ1の被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部内に位置する部分の位置決め用突部37との当接によって、被覆除去刃31後端の刃先の軸線に高精度に位置決めされた状態で、被覆除去刃31に押圧される。
位置決め用突部37のファイバ当接案内部37aは、位置決め用突部37の後端から前側へ行くにしたがって被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線34Pに次第に接近するように前記軸線34Pに対して傾斜している。このため、各位置決め用突部37のファイバ当接案内部37aは、被覆付き光ファイバ挿通孔34後端から前進させた挿入ファイバ1の先端を、被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部の位置決め用突部37の最大突出部(最大突出点)が位置する領域へ円滑に案内できる。
【0122】
既述のように、最大突出部仮想円周の径は、挿入ファイバ1外径に比べて僅かに径小である。このため、被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部内側に挿入した挿入ファイバ1は、その被覆2外周を、被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部の内周面34bに突設されている各位置決め用突部37の最大突出点に確実に押圧できる。
また、被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部内側に挿入された挿入ファイバ1は、その周方向に均等の3以上の箇所が、被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部内側の位置決め用突部37に押圧される。被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部の周方向に均等の3以上の箇所に突設された位置決め用突部37は、挿入ファイバ1を被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線及び環状刃部31a後端の刃先の軸線と同軸に高精度に位置決めできる。
【0123】
図33に例示した位置決め用突部372は、図34に示すように、被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部内側に挿入された挿入ファイバ1の被覆2外周が押圧された最大突出点372b(最大突出部)が、挿入ファイバ1の被覆2外周部を局所的に弾性変形させる。これにより、各位置決め用突部372の最大突出点372に、挿入ファイバ1の被覆2外周が確実に当接される。その結果、被覆除去部材30は、被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部の周方向に均等の3以上の箇所に突設された位置決め用突部372によって、挿入ファイバ1を被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線及び環状刃部31a後端の刃先の軸線と同軸に高精度に位置決めできる。
【0124】
また、挿入ファイバ1の被覆2外周部の、位置決め用突部372の最大突出点372bに押圧されて局所的に弾性変形された箇所以外の部分は、被覆付き光ファイバ挿通孔34周方向に互いに離隔して突設されている位置決め用突部372間に確保されている空間に入り込む。これにより、挿入ファイバ1の被覆2外周部のうち、位置決め用突部372の最大突出点372bに押圧された箇所以外の部分が、位置決め用突部372の最大突出点372bによる挿入ファイバ1の位置決め精度に影響を与えることを抑えることができる。また、前記空間が確保されていることにより、挿入ファイバ1の被覆2外周部の位置決め用突部372に押圧された部位の変形が円滑になされ、位置決め用突部372への押圧による挿入ファイバ1の位置決め精度に影響を与えることを抑えることができる。その結果、環状刃部31a後端の刃先の軸線に対する挿入ファイバ1の位置決め精度を安定に確保できる。
【0125】
一方、図28〜図32に示すように、位置決め用突部37として例えば溝案内形傾斜面371a等の傾斜面を形成した位置決め用突部を採用した構成の場合は、被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部に挿入された挿入ファイバ1の被覆2外周が、傾斜面前端の最大突出点に押圧される結果、挿入ファイバ1を環状刃部31a後端の刃先の軸線に対して高精度に位置決めできる。
溝案内形傾斜面371aの前端は、最大突出点(最大突出部)から、該溝案内形傾斜面371aの延在方向に直交する幅方向へ離隔するにしたがって、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線34Pからの距離が増大する構造になっている。なお、溝案内形傾斜面371aの幅方向は、該溝案内形傾斜面371a凹曲傾斜面が形成する凹溝の溝幅方向と一致する。
このため、挿入ファイバ1の被覆2外周部のうち、位置決め用突部の最大突出点(最大突出部)に押圧された箇所以外の部分が、位置決め用突部37の最大突出点37bによる挿入ファイバ1の位置決め精度に影響を与えることを抑えることができ、挿入ファイバ1の位置決め精度を安定に確保できる。
また、ファイバ当接案内部として傾斜面を形成した位置決め用突部37は、該傾斜面に被覆付き光ファイバ挿通孔34内を前進する挿入ファイバ1が接触しても、挿入ファイバ1の被覆2を傷めにくい(傷付き等を生じにくい)といった利点がある。
【0126】
図7に示すように、組立部材40は、クランプベース部21と蓋部材22,23との間に隙間22a,23aを確保する楔状の介挿片41,41を有する。また、組立部材40においては、上述した複数の光ファイバ押さえ片42,42が、介挿片41,41と並列して形成された突起部(第2突起部、第3突起部)であることができる。これにより、光コネクタの組立後に不要となる光ファイバ押さえ片42,42を組立部材40に一体化して、廃棄物の個数を減少することができ、作業性が向上する。
なお、光ファイバ押さえ片42,42を組立部材40とは別体で構成できることは言うまでもない。
【0127】
図14に示すように、クランプベース部21及び蓋部材22,23が重ね合わされる合わせ面の一側縁部には、クランプベース部21と蓋部材22,23との間に隙間22a,23a(図37(a)参照)を確保する介挿片41,41が挿入されている。図17に、クランプベース部21と前蓋部材22との間の隙間22aが介挿片41によって確保されている様子を示す。介挿片41,41を抜くと、クランプベース部21と蓋部材22,23との間を閉じて、クランプばね24のクランプ力によって閉じた状態とすることができる。
なお、光コネクタ100は、組立部材40の介挿片41をクランプ部20に予め挿入しておくことにより、組立部材40をコネクタ本体101に取り付けた状態(組立部材付き光コネクタの状態)で、販売、携帯等を行うことが可能である。この場合、配線現場における作業時に、光コネクタに合った楔を用意したり、介挿片41をクランプ部20に割り入れたりする手間が省略できる。
【0128】
本実施例の光コネクタ100の組立方法は、まず、図26に示すように、先端側に挿入ファイバ1となる被覆付き光ファイバを露出させた光ファイバケーブル5に、押圧用固定部材120(把持部材)を取り付けたものを用意する。
そして、図14及び図15に示すように、挿入ファイバ1に取り付けた押圧用固定部材120を、光コネクタ100のハウジング100Hの後側ハウジング15後端の押圧部材受け部16に向かってその後側から前進させる。これにより、図1に示すように押圧用固定部材120の前側(弾性係止片124が突出している側)に突出させた挿入ファイバ1の突出部を、可動ガイド62の貫通孔63から収容溝26に挿入していく。そして、押圧用固定部材120の前進の継続によって、挿入ファイバ1の先端が被覆除去部材30に到達して被覆2を除去(除去を開始)し、裸光ファイバ3を内蔵ファイバ12に突き合わせることができる。
また、押圧用固定部材120は、前進によって、後側ハウジング15後端の押圧部材受け部16に押し込むことで、コネクタ本体101後部の拘束部付き可動ガイド60後端の可動ガイド62に連結できる。
【0129】
挿入ファイバ1は、開放ガイド50と収容溝26溝底との間隔方向において開放ガイド50と収容溝26内面との間に確保されたファイバ収容領域FSに、可動ガイド62の貫通孔63から挿入される。
開放ガイド50は、挿入ファイバ1をファイバ収容溝26に強く押し付けて案内ベース部51に固定するのではなく、挿入ファイバ1の案内ベース部51に対するコネクタ前後方向への円滑な相対移動を可能として押さえ込み挿入ファイバ1のたわみ変形を規制する。
また、開放ガイド50は、挿入ファイバ1をファイバ収容溝26に押さえ込むことで、挿入ファイバ1を、被覆除去部31の裸光ファイバ挿通孔33の中心軸線上に位置決めする機能を果たす。
【0130】
図16(b)、図20に示すように、閉じ位置にある開放ガイド50の、収容溝26に対向する部分には、収容溝26に沿って延在する延在凹所50aが形成されている。本実施例に係るコネクタ本体101のファイバ収容領域FSは、後側延出片27の収容溝26と前記開放ガイド50の延在凹所50aとによって構成されている。
【0131】
図1に示すように、この光コネクタ100は、後側ハウジング15後端の押圧部材受け部16に押し込む押圧用固定部材120を案内するための案内レール130を着脱可能に取り付けることができる。
案内レール130は、細長形状のレール部131の長手方向片端の取付部132を、光コネクタ100のハウジング100Hの後端部(具体的には押圧部材受け部16)に取り付けることで、レール部131を押圧部材受け部16の底板部16aの後側に該底板部16aを延長する如く配置した状態に取り付けられる。図1、図2に示すように、図示例の案内レール130の前記取付部132は、光コネクタ100の押圧部材受け部16の底板部16aにその下側から当接される当接板133に突設された一対の弾性係合爪134の突端の突爪135を、押圧部材受け部16における一対の側板部16bの互いに対面する内面側とは反対の外面側に突設されたレール係合壁16f(図2、図11(a)、(b)参照)の上端に係合させることで、前記当接板133を押圧部材受け部16の底板部16aに押し付けて押圧部材受け部16にしっかりと固定して取り付けられる。
なお、取付部132としては、光コネクタ100のハウジング100H後端部に案内レール130を着脱可能に取り付け可能な構成であれば良く、図示例の構造に限定されない。
【0132】
案内レール130は、光コネクタ100に取り付けたときに、押圧用固定部材120が載置されるレール部131上の押圧部材ガイド面136が、光コネクタ100の押圧部材受け部16の前記底板部16a上面(図1〜図3において底板部16a上側の面)の後側に連続する位置に配置される。光コネクタ100に案内レール130を取り付けた場合、押圧用固定部材120は、レール部131の押圧部材ガイド面136上にて光コネクタ100の押圧部材受け部16の後側に離隔した位置からスライド移動させて前進させることで、押圧部材ガイド面132から前記底板部16a上面上に移動させて押圧部材受け部16内側に押し込むことができる。
このとき、押圧用固定部材120は、挿入ファイバ1自体の剛性によって該押圧用固定部材120からその前側に真っ直ぐに突出する突出部が光コネクタ100の可動ガイド62の貫通孔63の中心軸線に沿う向きで該貫通孔63の後方延長上にある状態のまま、案内レール130のレール部131上を前進させることができる。その結果、押圧用固定部材120の前進によって、挿入ファイバ1の突出部を可動ガイド62の貫通孔63から収容溝26に挿入していく作業を円滑に行うことができ、挿入途中での突出部の座屈を防止に有効に寄与する。
【0133】
なお、押圧部材受け部16に取り付けた案内レール130は、前記取付部132の弾性係合爪134を弾性変形させて前記突爪135の押圧部材受け部16のレール係合壁16f上端に対する係合を解除することで、光コネクタ100から取り外すことができる。押圧部材受け部16に取り付けた案内レール130は、押圧用固定部材120が光コネクタ100の押圧部材受け部16に入り込み、押圧用固定部材120の案内が不要となれば、適宜のタイミングで光コネクタ100から取り外す。
また、光コネクタ100の押圧部材受け部16への押圧用固定部材120の押し込みは、必ずしも案内レール130を使用して行う必要は無く、案内レール130を使用しないで行っても良い。
【0134】
図37(b)等を参照して説明したように、光コネクタ100の拘束部付き可動ガイド60の可動ガイド62は、収容溝26後端(より具体的にはファイバ収容領域FS後端)から後側に挿入ファイバ1が被覆除去中に座屈しない距離L1で離隔する初期位置から前進可能とされている。挿入ファイバ1の突出部の突出長は、挿入ファイバ1先端が被覆除去部31後端に当接したときに、押圧用固定部材120を、可動ガイド62の貫通孔63後端から後側へ挿入ファイバ1が被覆除去中に座屈しない距離L2で離隔させて配置できる長さとする。
【0135】
この実施例では、押圧用固定部材120の前進によって可動ガイド62を前進限界位置に到達させる。挿入ファイバ1の突出部の長さ(突出長)は、可動ガイド62を前進限界位置に移動したときの押圧用固定部材120から内蔵ファイバ12後端までの距離(詳細には光ファイバ支持部129から内蔵ファイバ12後端までの距離)よりも長く設定する。これにより、被覆除去部材30によって被覆2が除去された裸光ファイバ3が内蔵ファイバ12後端に突き当たった後に、開放ガイド50の移動による収容溝26の開放(挿入ファイバ1のたわみ変形4を形成する隙間53の確保)が完了し、挿入ファイバ1のたわみ変形が許可される。
【0136】
挿入ファイバ1の突出部の長さは、例えば、押圧用固定部材120によって押圧されながら前進する可動ガイド62が開放ガイド50後端(後端突出部50a)にその後側から当接したときの、押圧用固定部材120から内蔵ファイバ12後端までの距離(詳細には光ファイバ支持部129から内蔵ファイバ12後端までの距離)と同じに設定できる。この場合は、被覆2が除去された裸光ファイバ3が内蔵ファイバ12後端に突き当たったときに、押圧用固定部材120によって押圧されながら前進する可動ガイド62が開放ガイド50後端(後端突出部50a)にその後側から当接して開放ガイド50の押圧を開始する。
また、挿入ファイバ1の突出部の長さは、押圧用固定部材120によって押圧されながら前進する可動ガイド62が開放ガイド50後端(後端突出部50a)にその後側から当接したときの、押圧用固定部材120から内蔵ファイバ12後端までの距離(詳細には光ファイバ支持部129から内蔵ファイバ12後端までの距離)に比べて若干長く設定することも可能である。この場合は、被覆2が除去された裸光ファイバ3が内蔵ファイバ12後端に突き当たった後に、押圧用固定部材120によって押圧されながら前進する可動ガイド62が開放ガイド50後端(後端突出部50a)にその後側から当接する。
【0137】
また、挿入ファイバ1の突出部の長さは、挿入ファイバ1の材質や外径等に鑑みて、押圧用固定部材120の前進によって可動ガイド62を前進限界位置に到達させたときに、突き合わせ状態の裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12との間に所期の突き合わせ力(突き当て力)を確保できる大きさのたわみ変形を形成できる長さに設定する。
【0138】
また、図8、図26等に示すように、この実施例において、挿入ファイバ1の突出部は、押圧用固定部材120前側に設けられている先細りのテーパ状の前側ファイバ支持部129から突出する部分を指す。挿入ファイバ1先端が被覆除去刃31に当接したときの可動ガイド62の貫通孔63後端と押圧用固定部材120との間の距離L1は、可動ガイド62の貫通孔63後端と前側ファイバ支持部129前端との間を距離を指す。
前記前側ファイバ支持部129は、可動ガイド62後側のテーパ状凹部64内面に面接触可能なテーパ状の外周面を有する。押圧用固定部材120は、可動ガイド62に連結したとき、可動ガイド62のテーパ状凹部64に収納された前側ファイバ支持部129外周面がテーパ状凹部64に面接触する。
【0139】
図27に示すように、前側ファイバ支持部129は、一対の支持部半体129a、129bからなる半割り構造となっている。この前側ファイバ支持部129は、把持ベース123前端に突設された支持部半体129aに、押さえ蓋127前端に突設された支持部半体129bを閉じ合わせて、把持ベース123の支持部半体129aに前後方向に延在形成されたファイバ溝129cに配置した挿入ファイバ1を、押さえ蓋127の支持部半体129bによってファイバ溝129cに押さえ込む。
【0140】
図15は、図37(c)に対応する同じ時点、すなわち、被覆除去された裸光ファイバ3の先端が内蔵ファイバ12後端に突き当たった時点であり、ファイバ収容溝26上の閉じ位置に開放ガイド50が存在して、開放ガイド50が、挿入ファイバ1のたわみ変形を規制する状態を示している。被覆除去刃31による挿入ファイバ1の被覆除去中は、図16(a)、(b)に示すように、挿入ファイバ1の長手方向に沿って、光ファイバ押さえ片42と開放ガイド50とが交互に存在し、両者が挿入ファイバ1にかぶさることで、挿入ファイバ1のたわみ変形を規制することができる。
【0141】
図14、図15に示すように、開放ガイド50では、突条部54に対面する部分(以下、押さえ側部)に、挿入ファイバ1にかぶさる部分(ガイド側ファイバ押さえ部50f)が形成されている。光ファイバ押さえ片42先端の光ファイバ押さえ部59は、開放ガイド50のコネクタ前後方向に延在する前記押さえ側部に切り欠き状に形成された押さえ部収容凹所50gに収容されている。
【0142】
後側延出片27の溝形成面51bに突設されて収容溝26に沿って延在する前記突条部54には、その前後方向2箇所に、光ファイバ押さえ片42を挿通可能な切欠部55が形成されている。開放ガイド50の押さえ部収容凹所50gは、突条部54の2箇所の切欠部55に対応して、前記押さえ側部の前後方向に互いに離隔した2箇所に形成されている。図8、図14に示すように、光ファイバ押さえ片42は、後側ハウジング15の窓15cと、拘束部付き可動ガイド60の拘束スリーブ部61の窓61aと、前記切欠部55とを貫通して設けられている。後側ハウジング15の窓15c、及び拘束部付き可動ガイド60の拘束スリーブ部61の窓61aは、前記突条部54の2つの切欠部55に対応する位置に2つずつ形成されている。
【0143】
図示例の光コネクタには、開放ガイド50の2箇所の押さえ部収容凹所50g及び2つの切欠部55に対応して2つの光ファイバ押さえ片42が設けられている。この光コネクタ100は、開放ガイド50が閉じ位置にあるとき、図8、図9、図14、図15に示すように、各押さえ部収容凹所50gに収容された光ファイバ押さえ部59と、開放ガイド50の押さえ側部の押さえ部収容凹所50gが形成されていない部分であるガイド側ファイバ押さえ部50fとが前後方向(収容溝26長手方向)において交互に配置された状態が保たれる。
【0144】
この光コネクタは、ファイバ収容溝26に対する閉じ位置に開放ガイド50が存在することにより、開放ガイド50の前端とクランプ部20の後蓋部材23との間の隙間56や、収容溝26後端と可動ガイド62との間の隙間57(収容溝26後端と可動ガイド62の貫通孔63前端との間の距離)が、光ファイバ1の座屈のない間隔(例えば2.1mm以下)に制限されている。
【0145】
図18及び図19は、図37(d)に対応する時点、すなわち、被覆2の除去が完了した後、開放ガイド50による挿入ファイバ1のたわみ規制を解除した状態を示す。
図20に示すように、本実施例においては、開放ガイド50がファイバ収容溝26の横へ移動することにより、ファイバ収容溝26の上方(後側延出片27の溝形成面51bに対して垂直に収容溝26から離間する方向)に挿入ファイバ1がたわみ変形4を形成する隙間53が確保される。
図4に示すように、開放ガイド50に対する案内ベース部51は、挿入ファイバ1の長手方向において光ファイバ押さえ片42を有しない範囲では、ファイバ収容溝26の横に突出した突条部54を有し、たわみ変形4を形成する隙間53は、突条部54と開放ガイド50との間に形成される。
【0146】
たわみ変形4した後における裸光ファイバ3と内蔵ファイバ12との端面同士の間に作用する荷重は、被覆除去部から被覆への反力やクランプばね24の付勢力の強さ等にも依存して、適宜変更可能であるが、例えば0.3N〜1N(30g〜100g)の範囲内であることができる。
複数の光ファイバ押さえ片42,42の間隔G(第1たわみ幅)は、挿入ファイバ1の材質や外径等にも依存するが、一般的な樹脂被覆径が0.25mmの石英系光ファイバの場合、5〜10mm程度が挙げられる。挿入ファイバ1の端面に加わる押圧力に対して、どの程度の間隔Gでたわみ変形4が発生するかは、挿入ファイバ1の材質や外径等に依存して決まる弾性率などのパラメータに応じて推定することもできる。また、実験的に好適な間隔Gを決定することもできる。
【0147】
なお、前後方向に互いに離隔して配置された光ファイバ押さえ片42、42のうち前側(クランプ部20に近い側)の光ファイバ押さえ片42とクランプ部20の後蓋部材23との間隔H(図19参照)は、光ファイバ押さえ片42,42の間隔Gより小さいので、間隔Hには光ファイバの座屈やたわみは発生しない。また、後側のファイバ押さえ片42と可動ガイド62の貫通孔63前端との間の離隔距離も、前後の光ファイバ押さえ片42、42の間隔Gよりも小さいため、光ファイバの座屈やたわみは発生しない。すなわち、クランプ部20の後蓋部材23と可動ガイド62の貫通孔63前端との間において、前後の光ファイバ押さえ片42、42間のみに光ファイバの撓みが発生する。
収容溝26を有する案内ベース部51は、クランプ部20のクランプベース部21と一体化されていると、収容溝26が途切れることなく形成することができるので、好ましい。
【0148】
図21は、クランプベース部21と蓋部材22,23とにより、挿入ファイバ1及び内蔵ファイバ12を挟み込んで、突き合わせ接続を維持した状態を示す。図7に示すように、組立部材40は、光ファイバ押さえ片42、42を組立部材ベース部材45(以下、単にベース部材45という)に突設した主ユニット部40Aと、ベース部材45から延出された突起支持部43に介挿片41を突設した可動ユニット部40Bとを有する。各光ファイバ押さえ片42の突端には光ファイバ押さえ部59が設けられている。
また、前記主ユニット部40Aは、前記ベース部材45から延出され前記突起支持部43の両側に配置された一対の弾性操作片44,44を有する。そして、この組立部材40は、図22に示すように、弾性操作片44,44を互いに接近させる方向に操作することにより、突起支持部43のベース部材45側の端部に形成された薄肉部46が弾性変形して、可動ユニット部40Bをクランプ部20から遠ざかる方向へと変位させることができる。これにより、別の工具を用意することなく、組立部材40に一体に設けられた弾性操作片44の操作によって介挿片41の抜き出しを実施することができる。
【0149】
すなわち、突起支持部43の弾性操作片44に臨む両側には、該突起支持部43の前記介挿片41が突設されている突起側からその反対の裏面側に行くにしたがって弾性操作片44側に張り出す傾斜面43aが形成されている。したがって、互いに接近させた一対の弾性操作片44,44によって突起支持部43を両側から押圧することで、可動ユニット部40Bをクランプ部20から遠ざかる方向へと変位させることができる。
また、図示例の組立部材40の弾性操作片44は、突起支持部43の傾斜面43aに対面する部分が、該傾斜面43aに平行に延在する傾斜面44aとされており、突起支持部43を押圧するときに、傾斜面43a、44a同士の当接によって、可動ユニット部40Bをクランプ部20から遠ざかる方向へと確実に変位させることができる。
【0150】
図示例の組立部材40は、プラスチック製の一体成形品である。図示例の組立部材40の前記突起支持部43は、平板状のベース部材45に垂直の板状に形成されている。前記薄肉部46は、ベース部材45側の端部に形成された溝47によって、突起支持部43が局所的に薄肉とされた部位を指す。
突起支持部43は、細長板状の前記ベース部材45の長手方向片端から該ベース部材45の長手方向の仮想延長に沿って延出している。介挿片41及び光ファイバ押さえ片42は、突起支持部43とベース部材45とが構成する細長形状の部材本体の長手方向の複数箇所から互いに同じ方向に突出している。
【0151】
また、この組立部材40は、互いに接近させた一対の弾性操作片44,44によって突起支持部43を両側から押圧したときに、突起支持部43のベース部材45側の端部に形成された薄肉部46がヒンジ部となって突起支持部43がベース部材45に対して傾動し、可動ユニット部40Bをクランプ部20から遠ざかる方向へと変位させることができる。
その結果、この組立部材40は、裸光ファイバ3及び内蔵ファイバ12を挟み込む前蓋部材22が閉じた後、若干の時間差を経て、被覆光ファイバ1を挟み込む後蓋部材23を閉じることができる。これにより、裸光ファイバ3及び内蔵ファイバ12の突き合わせ接続をより良好にすることができる。
弾性操作片44の操作は、片手で「つまむ」といった簡単な操作であり、作業性に優れる。
【0152】
図23及び図24は、挿入ファイバ1の固定後、光ファイバ押さえ片42,42を収容溝26の上から外した状態を示す。これにより、ファイバ収容溝26に収容された挿入ファイバ1に、曲げ半径R=10mm程度の大きな(緩やかに湾曲する)たわみ変形7が形成されるので、挿入ファイバ1のたわみによる損失を低減することができる。このときのたわみ変形7は、光コネクタにおけるクランプ部20(具体的には挿入ファイバ1を把持固定した第2クランプ部の後蓋部材23)と可動ガイド62との間の離隔距離をたわみ幅(第2たわみ幅7a)とする湾曲(曲げ)変形である。光ファイバ押さえ片42,42を収容溝26の上から外したときには、光ファイバ押さえ片42,42の間隔G(第1たわみ幅4a)に比べて格段に大きいたわみ幅を以て、挿入ファイバ1の曲げ変形を緩やかにすることができる。
以上の手順により、本実施例の光コネクタ100を組み立てることができる。
【0153】
なお、既述のように、たわみ幅とは、挿入ファイバにおける押圧力の付与されて撓む可能性がある部分の長さをいう。
図19、図24等の図示例では、第1たわみ幅4aは間隔Gと同じであり、第2たわみ幅7aは、クランプ部20の後蓋部材23と可動ガイド62(詳細には貫通孔63前端)との間の離隔距離と同じである。
【0154】
図1、図3に示すように、図示例の光コネクタ100は、押圧用固定部材120の引き留め手段として、後側ハウジング15に枢着された引き留めカバー17を有している。図1、図11(a)、(b)に示すように、この引き留めカバー17は、後側ハウジング15後端部の押圧部材受け部16に収納された押圧用固定部材120に上(図1、図3、図11(a)、(b)において上側)から被せるカバー板17dの両側に細長形状の回動アーム17eが互いに平行に設けられた構成のカバー本体17Hを有している。この引き留めカバー17は、一対の回動アーム17eの前記カバー板17dから突出された先端を、回転軸17a(図3参照)によって、後側ハウジング15に該後側ハウジング15の左右方向(押圧部材受け部16の一対の側板部16bの間隔方向)の回転軸線を以て回動可能に枢着してハウジング100Hに設けられている。
【0155】
この引き留めカバー17は、前記回転軸17aを中心に回動させることで、前記カバー板17dを、押圧部材受け部16に収納された押圧用固定部材120上に被せることができる(図23、図24参照)。このときの押圧部材受け部16に対する位置を被せ位置とも言う。また、この引き留めカバー17は、押圧部材受け部16に対して被せ位置に配置したときに、カバー板17dが押圧部材受け部16の底板部16aに沿う向きとなる。また、引き留めカバー17は、カバー板17dの、被せ位置に配置したときに押圧部材受け部16の底板部16aに対面する側(以下、裏面側とも言う)にリブ状に張り出す一対の回動アーム17eの間に、押圧部材受け部16の底板部16aから突出する一対の側板部16bの突端部(上端部)を収納する。
【0156】
図1等に示すように、この引き留めカバー17のカバー本体17Hには、押圧部材受け部16との係合によって、引き留めカバー17を被せ位置に配置した状態を保つラッチ17fが突設されている。図11(a)、(b)に示すように、図示例の光コネクタ100の押圧部材受け部16は、一対の側板部16bの後端部下側に、押圧部材受け部16の左右両側の側面から窪む係合凹所16gを有している。引き留めカバー17は、カバー本体17Hの、前記押圧部材受け部16の左右方向に一致する左右方向両側から裏面側に突出されている前記ラッチ17fの先端の突爪17gを、押圧部材受け部16の左右両側から前記係合凹所16gに入り込ませて押圧部材受け部16に係合させることで押圧部材受け部16に対する開放が規制され、被せ位置に配置された状態を安定に保てる。
【0157】
図23、図24に示すように、引き留めカバー17は、前記被せ位置に配置したときに、カバー本体17Hの回転軸17aとは反対側の端部から裏面側に突設されている後退規制片17bを、押圧用固定部材120の後側に配置できる。
後退規制片17bは、押圧用固定部材120から後方に延出する光ファイバケーブル5を避けて、押圧部材受け部16の左右方向に一致する押圧用固定部材120の左右両側の壁部の後側に配置される。また、この後退規制片17bは、図3に示すようにコネクタ本体101のフェルール10後端部のフランジ部10bがハウジング100H前端部内側のストッパ壁部14aにその後側から当接しているとき(すなわち、コネクタ本体101がハウジング100Hに対する前側移動限界位置にあるとき)に、押圧用固定部材120から後方に離隔した位置に配置される。
コネクタ本体101がハウジング100Hに対する前側移動限界位置にあるときの後退規制片17bの押圧用固定部材120から後方への離隔距離は、例えば、コネクタ本体101のハウジング100Hに対する前側移動限界位置から後側への可動距離(ハウジング100H後側への押し込み可能量)と同じか、それよりも短く設定する。これにより、押圧用固定部材120が後退規制片17bに当接する位置を、ハウジング100Hに対するコネクタ本体101の後側移動限界位置とする。
【0158】
さらに、図24に示すように、前記引き留めカバー17は、前記被せ位置に配置したときに、可動ガイド62のガイド本体65に係合している押圧用固定部材120の弾性係止片124と、該弾性係止片124を介してガイド本体65とは反対側の押圧部材受け部16の側壁部16bとの間の隙間に挿入されて、弾性係止片124の前記ガイド本体65に対する係合解除を防止する係合ロック片17cを有している。この係合ロック片17cは、カバー本体17Hの左右両側から裏面側に突出されており、前記隙間に挿入されることで、前記ガイド本体65から離隔する方向への弾性係止片124の弾性変形を防ぎ、前記ガイド本体65に対する弾性係止片124の係合状態を安定に保つ。
【0159】
なお、引き留めカバー17を被せ位置に配置するのは、押圧用固定部材120の前進によって可動ガイド62を前進限界位置に到達させた後であれば、いつでも可能である。
【0160】
被覆除去部材の被覆除去刃の板状刃部は、図6(a)〜(c)に例示した構成に限定されない。
例えば図35(a)〜(c)に示す被覆除去部材30(図中符号30Aを付記する)は、図6(a)〜(c)に例示した被覆除去部材30について板状刃部の構成を変更したものである。この被覆除去部材30Aの被覆除去刃31(図中符号31Aを付記する)の板状刃部に図中31cを付記する。この被覆除去部材30Aの被覆除去刃31Aの板状刃部31cは、図6(a)〜(c)に例示した被覆除去部材30の板状刃部31bの環状刃部31a外周からの突出寸法を小さくし、その延在方向(前後方向)ほぼ全長にわたって横壁部36から離隔させた構成となっている。環状刃部31a外周面から突出する板状刃部31cの突端と横壁部36との間にはクリアランスが確保されている。
前記板状刃部31cは、環状刃部31a外周に該環状刃部31aの軸線方向(前後方向)全長にわたって、環状刃部31a外周面からの突出寸法一定で延在突出するリブ状の突片とされている。
【0161】
図示例の被覆除去部材30Aの板状刃部31cは、窓孔前側内壁面32a付近に位置する前端部のみが横壁部36と繋がって(一体に形成されている)いる。この板状刃部31cは、該前端部を除く延在方向のほぼ全長が横壁部36から離隔している。
なお、被覆除去刃31Aとしては、板状刃部31cの延在方向全長が横壁部36から離隔する構成としても良い。
【0162】
この被覆除去部材30Aは、環状刃部31aによって挿入ファイバ1の裸光ファイバ3から円筒状に剥離され板状刃部31cによって2つに分断された被覆2が、板状刃部31cと横壁部36との間に確保されたクリアランスを移動できる。このため、この被覆除去部材30Aは、板状刃部31cによって分断された被覆2の環状刃部31a付近からの移動を円滑にでき、分断された被覆2が環状刃部31a付近に滞留することを防ぐことができる。
【0163】
一方、図6(a)〜(c)に例示した被覆除去部材30の板状刃部31bは、既述のように被覆除去部材30の横壁部36と環状刃部31aとに一体に形成されている。この板状刃部31bは、環状刃部31a外周面から突出する突端の前後方向全体が横壁部36と一体化されている構成となっている。
この板状刃部31bは、かかる構成により、被覆除去刃31にその後方から押圧される挿入ファイバ1の押圧力に対する機械的強度を容易に確保できるといった利点がある。このように、板状刃部31bの機械的強度を確保しやすい構成は、特に、板状刃部31bの板厚の縮小、換言すれば図6(c)に示す刃先角度θの縮小に有利である。
【0164】
被覆除去部材の被覆除去刃は、環状刃部31aの径方向両側にひとつづつ、計2つの板状刃部を突設した構成に限定されない。環状刃部31a外周に突設する板状刃部は3以上であっても良い。
被覆除去刃としては、例えば図36(a)に示すように、環状刃部31a外周の3箇所に板状刃部31cを突設した構成や、図36(b)に示すように、環状刃部31a外周の4箇所に板状刃部31cを突設した構成も採用可能である。
なお、図示例では、環状刃部31aの軸線方向全長にわたって該環状刃部31a外周からリブ状に突出する板状刃部31cを採用した構成を例示したが、この板状刃部31cを、適宜、横壁部36と環状刃部31aとを橋絡する構成の板状刃部31bに変更しても良い。
【0165】
被覆除去刃において複数の板状刃部は、環状刃部31a外周の周方向に均等配置する。
板状刃部が2つの場合は、既述のように、板状刃部を環状刃部31aの径方向両側にひとつづつ配置する。3以上の板状刃部は、環状刃部31a外周の周方向に均等配置する。複数の板状刃部を環状刃部31a外周の周方向に均等配置した構成であれば、被覆除去部材の被覆除去刃に向かって挿入ファイバ1を前進、押圧して挿入ファイバ1先端の被覆除去を行う際に、挿入ファイバ1周方向(外周方向)において被覆除去を均等に進行させることができる。
【0166】
板状刃部は、環状刃部31a後端からコネクタ前後方向前側へ行くにしたがって、環状刃部31a外周面からの突出寸法が増大する形状としても良い。この場合も、板状刃部は、その前端側から後端側へ行くにしたがって板厚が次第に小さくなるテーパ状(テーパ板状)に形成される。この板状刃部は、環状刃部31aとは反対の突端側の、該板状刃部の後端から窓孔前側内壁面32a付近までの範囲あるいは全長が刃先(稜線)とされた構成とする。
【0167】
以上、本発明を最良の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の最良の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば光コネクタの具体的構成は、本発明の技術的思想に適合する限り、なんら限定されるものではない。光コネクタを組み立てる具体的手順も、光コネクタの具体的構成に応じて改変可能である。
【0168】
本発明に係る実施形態の光コネクタとしては、内蔵ファイバを内挿固定したフェルールの後方に、前記内蔵ファイバと突き合わせるための後方から挿入された挿入ファイバの被覆を除去する被覆除去部材(本発明に係る被覆除去部材)を備えるものであれば良く、上述の最良の形態に限定されるものではない。
被覆除去部材としては、挿入ファイバの被覆を除去する被覆除去刃の後側に、前記挿入ファイバを該被覆除去部材後側から前記被覆除去刃に導く被覆付き光ファイバ挿通孔が形成され、前記被覆付き光ファイバ挿通孔の前端部内周面の周方向に均等の3以上の箇所に、前記挿入ファイバの位置決め用の突部が、その後端から前側に行くにしたがって被覆付き光ファイバ挿通孔内周面からの突出寸法が増大するテーパ状に突設されているものであれば良く、その具体的構成は上述の実施の形態に限定されるものではない。
【0169】
上述の実施形態では、被覆除去部材の被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部のみに位置決め用突部が存在する構成を例示したが、被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bに突設する位置決め用突部としてはこの構成に限定されない。位置決め用突部としては、そのファイバ当接案内部の、被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部に位置する前端から後側の部分が、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線方向中央部あるいは後端部まで延在する構成、すなわち位置決め用突部自体が被覆付き光ファイバ挿通孔34の前端部から軸線方向中央部あるいは後端部まで延在する突条をなす構成としても良い。
【0170】
また、被覆除去部材としては、被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bの周方向の3以上の箇所に、挿入ファイバの案内用の突条(以下、ファイバ案内用突条とも言う)を、被覆付き光ファイバ挿通孔34の軸線方向に沿って一定突出寸法で突設し、被覆付き光ファイバ挿通孔34前端部に位置するファイバ案内用突条前端部に位置決め用突部を突設した構成も採用可能である。
被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bの周方向におけるファイバ案内用突条の突設数は、被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bの周方向における位置決め用突部の突設数と同数あるいはそれよりも多くする。ファイバ案内用突条のうち、前端部に位置決め用突部を突設したファイバ案内用突条は、被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bの周方向に均等に設けられる。位置決め用突部は、ファイバ案内用突条の被覆付き光ファイバ挿通孔の軸線に臨む側に、後側から前側に行くにしたがって突出寸法が増大するテーパ状に突設する。
【0171】
被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bの周方向の3以上の箇所にファイバ案内用突条を突設した構成は、被覆付き光ファイバ挿通孔34内においてファイバ案内用突条が設定する挿入ファイバ1の収納範囲(ファイバ収納範囲)を被覆付き光ファイバ挿通孔、前記収納範囲の外周を被覆付き光ファイバ挿通孔内周面とみなすことができる。被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bに突設されたファイバ案内用突条が設定するファイバ収納範囲(被覆付き光ファイバ挿通孔)は、挿入ファイバ1外径に比べて僅かに大きい径の仮想円筒面の範囲とする。このファイバ収納範囲は、前記仮想円筒面が、該ファイバ収納範囲の内周面(仮想内周面)として機能し、該内周面を被覆付き光ファイバ挿通孔内周面とみなすことができる。ファイバ案内用突条を突設する被覆付き光ファイバ挿通孔内周面は、ファイバ収納範囲の仮想内周面に比べて径大とする。
被覆付き光ファイバ挿通孔内周面34bに突設されたファイバ案内用突条が設定するファイバ収納範囲は、その後側から挿入した挿入ファイバ1外周にファイバ案内用突条のみが接触して挿入ファイバ1の前進を案内する構成である。ファイバ収納範囲は、丸孔状の被覆付き光ファイバ挿通孔34に比べて、挿入ファイバ1外周との接触部分が少ないため、挿入ファイバ1の前進抵抗を軽減でき、コネクタ後側からの挿入ファイバ1の押し込み力の低減に有効に寄与する。
【0172】
クランプ部の構成は、光ファイバを調心して端面同士の突き合わせ接続をクランプ保持する構成のものであれば、構造や形状は特に限定されるものではない。例えば、ベース部(図示例では後側延出片のクランプベース部)との間に光ファイバを挟み込む蓋部材の個数は2個に限定されず、1個でも3以上の複数個でもよい。
本発明は、フェルールに複数の内蔵ファイバが内挿固定された光コネクタに適用することもできる。この場合、クランプ部に設けられる位置決め溝などの調心機構は、少なくとも、内蔵ファイバの本数分設ければ、該光コネクタによってコネクタ成端される光ファイバのそれぞれを、調心機構によって内蔵ファイバと光接続させることができる。
挿入ファイバに固定する押圧用固定部材としては、光ファイバケーブル端末を把持して該光ファイバケーブル端末に取り付けられる外被把持部材に限定されない。押圧用固定部材としては、挿入ファイバとして用いる被覆付き光ファイバを直接把持して該被覆付き光ファイバに取り付けることができる構成のものも採用可能である。
光コネクタとしては、フェルールを収納するハウジングを有していないものも採用可能である。例えば、上述の実施形態の光コネクタ100のコネクタ本体101自体を光コネクタとして用いることも可能である。
【0173】
また、上述の実施形態では、可動ガイドを具備する構成の光コネクタを例示したが、本発明に係る光コネクタとしては、可動ガイドを具備していないものも採用可能である。
すなわち、本発明に係る組立方法を適用する光コネクタとしては、被覆除去部によって被覆除去された裸光ファイバと内蔵ファイバとが突き合わされた状態で、開放ガイドを、例えばベース部材(上記実施形態では案内ベース部)に対するスライド移動、ベース部材からの離間等によって、ベース部材の案内部上に空間を形成するように移動させることが可能な構成のものであれば良い。
そして、光コネクタは、かかる構成により、ベース部材からの離間前は閉じ位置に開放ガイドが配置された状態で被覆除去を円滑に行った後に、挿入ファイバのたわみ変形を許容して、挿入ファイバ先端の裸光ファイバと内蔵ファイバとの突き合わせ接続をより良好にすることができる。
【0174】
開放ガイドの前進は、可動ガイドを介することなく、光ファイバ把持部(上記実施形態では押圧用固定部材)によって直接行っても良い。光ファイバ把持部の前進に基づき前記ベース部材から開放ガイドを離間させる構造としては、開放ガイドを光ファイバ把持部に押圧されて前進する可動ガイドによって押圧することで、開放ガイドを例えば斜め前方への移動等によってベース部材から離隔(離間)させる構成に限定されない。この構造としては、例えば、光ファイバ把持部によって直接、開放ガイドを押圧することで、開放ガイドをベース部材から離隔(離間)させることができる構成であっても良い。
また、挿入ファイバは、必ずしも光ファイバ把持部を固定したものである必要は無く、光ファイバ把持部を取り付けていない挿入ファイバを使用しても良い。
光ファイバ把持部としては、光ファイバに着脱可能に固定できる構成のものも採用可能である。この点、挿入ファイバの先端部に組み立てた光コネクタとしては、光ファイバ把持部を具備する構成のものの他、光ファイバ把持部を具備していない構成も採り得る。すなわち、光ファイバ把持部は、挿入ファイバの先端部に組み立てた光コネクタの構成要件に含まれる場合と、含まれない場合とがある。
【0175】
上述の実施形態では、可動ガイドを、光ファイバ把持部によって後側から押して、ベース部材(上述の実施形態では案内ベース部51)及び開放ガイドとの間の隙間を短縮しつつ前進させる構成を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、光ファイバ把持部の前進に基づいて、ベース部材及び/又は開放ガイドを移動して、ベース部材の案内部上に空間(たわみ形成空間)を形成する構成を採用可能である。ここで、可動ガイドは、ベース部材後端及び/又は開放ガイド後端に当接する位置に設定した初期位置から光ファイバ把持部によって押して、ベース部材及び/又は開放ガイドとの間の隙間を短縮しつつ前進させることができる。
挿入ファイバ1先端部への光コネクタ100の組立作業にあっては、挿入ファイバのたわみ変形を規制する閉じ位置から移動された開放ガイドが開放位置に配置されるのが、被覆除去部によって被覆を除去した裸光ファイバ3先端の内蔵ファイバ後端に対する突き当て(突き合わせ)の実現後であれば良く、光ファイバ把持部の前進に基づく開放ガイドの前進開始は、内蔵ファイバに対する裸光ファイバの突き当て前であっても良い。
【0176】
図1〜図27に例示した光コネクタは、開放ガイドが挿入ファイバのたわみ変形を規制する閉じ位置からたわみ変形を許可する位置(開放位置)に待避したときに、第1たわみ幅を確保する一対の光ファイバ押さえ片42、42を有している。そして、上述の実施形態では、光コネクタにその後側から押し込んだ挿入ファイバ先端に被覆除去によって口出しした裸光ファイバを内蔵ファイバに突き合わせ接続し、開放ガイドを閉じ位置から開放位置に待避させたときに、一対の光ファイバ押さえ片42、42の間に確保される第1たわみ幅で挿入ファイバをたわませた後、光ファイバ押さえ片42、42を収容溝に挿入ファイバを押さえ込む位置(ファイバ押さえ位置)から待避させて第2たわみ幅を以て挿入ファイバをたわませる構成を例示した。しかしながら、本発明に係る実施形態の光コネクタとしては一対の光ファイバ押さえ片42、42を有していない構成も採用可能である。この場合、挿入ファイバ先端に被覆除去によって口出しした裸光ファイバを内蔵ファイバに突き合わせ接続し、開放ガイドを閉じ位置から開放位置に待避させたときに、挿入ファイバを第1たわみ幅でのたわみ変形を経ることなく、第2たわみ幅で変形させることができる。
この場合は、例えば、光コネクタにその後側から挿入する挿入ファイバの押圧用固定部材からの突出寸法の調整によって、第2たわみ幅でたわみ変形させた挿入ファイバ先端の裸光ファイバと内蔵ファイバとの端面同士の間に作用する荷重(突き当て力)を例えば0.3N〜1Nの範囲内としても良い。
【0177】
挿入ファイバとしては、光ファイバケーブル端末に露出させた被覆付き光ファイバに限定されず、その全長にわたって被覆外周面が露出している光ファイバ心線、光ファイバ素線といった被覆付き光ファイバであっても良い。
押圧用固定部材(光ファイバ把持部)としては、挿入ファイバに対して、光ファイバケーブルの外被を介することなく、挿入ファイバである被覆付き光ファイバに、直接、固定できる構成のものも採用可能である。
【0178】
また、押圧用固定部材としては、挿入ファイバに対して脱着可能な構成のものを用いることも可能である。この場合は、例えば、押圧用固定部材を固定した挿入ファイバの突出部を光コネクタにその後側から挿入して先端の裸光ファイバを内蔵ファイバに突き合わせ接続し、この挿入ファイバを第2たわみ幅で変形させた状態で、クランプ部のベース部(図示例では後側延出片のクランプベース部)と蓋部材との間に介挿されている介挿片をクランプ部から抜き去っ(抜き出し)てクランプ部に挿入ファイバを把持固定した後に、押圧用固定部材の挿入ファイバに対する固定を解いて、挿入ファイバのたわみ変形を解消しても良い。押圧用固定部材は、光コネクタのハウジングに対して引き留める必要は無い。このため、押圧用固定部材は、挿入ファイバに対する固定を解いた後に、挿入ファイバから撤去しても良い。
挿入ファイバに対して脱着可能な構成の押圧用固定部材は、先端に口出しした裸光ファイバを内蔵ファイバに突き合わせ接続(例えば0.3N〜1Nの範囲の突き当て力を以て突き合わせ接続する)した挿入ファイバを第1たわみ幅でたわみ変形させた後に第2たわみ幅で変形させる場合のみならず、一対の光ファイバ押さえ片42、42を用いず、挿入ファイバを第1たわみ幅でのたわみ変形を経ることなく第2たわみ幅で変形させる場合にも好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0179】
1…被覆付き光ファイバ(挿入ファイバ)、2…被覆、3…裸光ファイバ、4…たわみ変形、10…フェルール、12…内蔵ファイバ、20…クランプ部、21…第2ベース部材(クランプベース部)、25…調心溝(V溝)、26…(ベース部材の)案内部(光ファイバ収容溝)、30、30A…被覆除去部材、31、31A…被覆除去部(被覆除去刃)、31a…環状刃部、31b、31c…板状刃部、32…窓孔、32a…窓孔の前側の内壁面(窓孔前側内壁面)、32b…窓孔後側内壁面、33…裸光ファイバ挿通孔、34…被覆付き光ファイバ挿通孔、34b…(被覆付き光ファイバ挿通孔の)内周面、34P…被覆付き光ファイバ挿通孔の軸線、36…窓孔を介して前後方向に直交する両側に位置する壁部(横壁部)、37…位置決め用の突部(位置決め用突部)、37b…最大突出部(最大突出点)、371…位置決め用の突部(位置決め用突部)、371b…最大突出部(最大突出点)、371e…傾斜面、凹曲面(凹曲傾斜面)、372…位置決め用の突部(位置決め用突部)、372a…稜線、372b…最大突出部(最大突出点)、50…開放ガイド、51…ベース部材(案内ベース部)、52…離間構造(レール部)、53…空間(隙間)、60…押さえ込み部、可動ガイド(拘束部付き可動ガイド)、61…押さえ込み部(拘束スリーブ)、62…可動ガイド、63…(可動ガイドの)案内構造(貫通孔)、100…光コネクタ、101…光コネクタ(コネクタ本体)、110…案内構造(後部ガイド部)、120…光ファイバ把持部(押圧用固定部材)、P…突き合わせ部(突き合わせ接続部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵ファイバを内挿固定したフェルールと、前記フェルールの後方に設けられ、前記内蔵ファイバと突き合わせるための後方から挿入された挿入ファイバの被覆を除去する被覆除去部材とを備え、
前記被覆除去部材は、挿入ファイバの被覆を除去する被覆除去刃の後側に、前記挿入ファイバを前記被覆除去刃に導く被覆付き光ファイバ挿通孔を備え、
前記被覆付き光ファイバ挿通孔の前端部内周面の周方向3箇所以上に、前記挿入ファイバの位置決め用の突部が突設されており、この突部は、その後端から前側に行くにしたがって突出寸法の増大するテーパ状となっている光コネクタ。
【請求項2】
前記突部の前端部の最大突出部が、被覆付き光ファイバ挿通孔の軸線と同軸で前記挿入ファイバの標準外径に比べて小さい仮想円周上に位置する請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記突部には、その後端から前端部の最大突出部にわたって傾斜面が延在形成されている請求項1又は2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記傾斜面の前端の最大突出部を除く部分が、被覆付き光ファイバ挿通孔の半径よりも大きい湾曲半径を以て湾曲する凹曲面とされている請求項3に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記突部は、その後端から前端部の最大突出部にわたって稜線が延在する断面三角形状に形成されている請求項1又は2に記載の光コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2013−15791(P2013−15791A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150452(P2011−150452)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591044647)株式会社 スズキ技研 (36)
【Fターム(参考)】