説明

光スイッチ、光スイッチの製造方法、画像表示装置及び画像形成装置

【課題】光損傷耐性が高く、大口径の光ビームに対するスイッチ動作をより少ない電力で高速に行う光スイッチを提供する。
【解決手段】電気光学結晶と、同一平面上に配置された複数の電極106からなる電極部107とを有し、電極部107により発生した電界により上記電気光学結晶の一部の屈折率を変化させることによって、上記電気光学結晶に入射した入射光の透過と反射とを切り換える光スイッチであって、上記電気光学結晶は、電極部107を構成する電極の間に、上記平面からの高さが電極106よりも高い側壁を有し、上記電気光学結晶の、少なくとも電極部107からの電界が及ぶ領域が、光学的に均質な材料より形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過する状態と光を反射する状態とを切り替える光スイッチおよびそれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の分野では、電気光学効果を持つ結晶(電気光学結晶)に電界を印加して屈折率変化を発生させることで、光のスイッチングを行う光スイッチが知られている。このような光スイッチとして、方向結合器型光スイッチやマッハツエンダ干渉器型光スイッチなどの導波路型の光スイッチがある。方向結合器型光スイッチは、2本の導波路の近接効果を利用するものである。マッハツエンダ干渉器型光スイッチでは、外部から導波路間に電圧を印加することで、各導波路を伝播する光の間に位相差を発生させ、それら光の干渉を利用する。これらの導波路型の光スイッチは、屈折率変化を発生させるための制御を高速に行えるため、高速なスイッチングが可能である。
【0003】
上記の他、特許文献1には、ブラッグ反射を用いた光スイッチが記載されている。図23に、その光スイッチの構成を示す。
【0004】
図23を参照すると、光スイッチは、電気光学効果を有する光導波路層と、この光導波路層内に設けられた第1および第2の電極群とを有する。第1および第2の電極群のそれぞれは、光導波路層の厚さ方向に延伸する複数の板状の電極からなる。各板電極は、一定の間隔で配置されている。第1および第2の電極群のそれぞれの、光導波路層の厚さ方向と交差する面における断面の形状は、櫛形状とされており、互いの櫛の歯に相当する板電極が、交互に配置されている。
【0005】
上記の光スイッチでは、第1および第2の電極群の間に電圧を印加することで、隣接する板電極間の領域において、屈折率変化が生じる。この結果、光導波路層内に、周期的な屈折率変化が生じる。この周期的な屈折率変化を生じた部分が回折格子として機能し、入射光がブラッグ反射される。一方、第1および第2の電極群への電圧印加を停止すると、回折格子としての機能はなくなるので、入射光は板電極間の領域を透過する。
【0006】
また、特許文献2には、透光性セラミックスを用いた光シャッター素子が記載されている。図24に示すように、光シャッター素子は、透光性セラミックス基板1の所定位置に光透過部となる凸部2を有し、凸部2の側面部を含む透光性セラミックス基板1の表面にアルミ等のスパッタ膜からなる電極3が形成されている。
【0007】
上記の光シャッター素子は、2枚の偏光子の間に設置される。一方の偏光子を透過した偏光方向を有する光が、透光性セラミックス基板の入射面4aから入射され、凸部2の先端の射出面4bから射出される。入射面4aから入射した光が、電極3が形成された領域を通過する。電極3間に電圧を印加すると、入射光の偏光方向が所定の角度だけ回転する。偏光方向が回転した光は、射出面4bから射出された後、他方の偏光子にて遮断される。一方、電極間への電圧印加を停止すると、偏光方向の回転は生じないため、射出面4bから射出された光は他方の偏光子を透過する。
【0008】
また、特許文献3には、導波路型の光スイッチが開示されている。この導波路型の光スイッチは、基板表面に形成された2本の光導波路からなる光方向性結合器と、各導波路上に形成された電極とを有する。各電極は、基板表面に形成された溝内に形成されている。基板表面の、光導波路間の領域に凸部を備える。
【特許文献1】特許2666805号公報(特開平1−214827号公報)
【特許文献2】特許3280106号公報(特開平6−202054号公報)
【特許文献3】特開平1−223432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電気光学結晶に電界を印加して屈折率変化を生じさせることで光スイッチングを行う光スイッチにおいて、消費電力化およびスイッチ動作の高速化の要望がある。消費電力化およびスイッチ動作の高速化を行うためには、電極間容量を低減する必要がある。
【0010】
特許文献1に記載の光スイッチは、面積の大きな複数の板電極が誘電率の高い電気光学結晶中に埋め込まれた構成であるため、その電極間容量は大きい。よって、省電力化および高速動作化を図ることは困難である。
【0011】
特許文献2に記載の光シャッター素子においては、電極3が凸部2の側面部を含む透光性セラミックス基板1の表面に形成されている。電極3の面積は大きく、また、電極3間には誘電率の高い基板が設けられているため、その電極間容量は大きい。よって、特許文献2に記載の光シャッター素子も、省電力化および高速動作化を図ることは困難である。
【0012】
特許文献3に記載の光スイッチは、導波路型とされている。導波路の大きさは一般的に数μmであり、入射光の強度によっては、導波路内の光密度が極めて高くなって、導波路を形成している光学材料物質によって、導波路が損傷してしまう場合がある。このように、特許文献3に記載の光スイッチにおいては、光損傷耐性が低いという問題がある。レーザディスプレイ等の画像表示装置では、例えば100mW以上の高出力光に対する光変調が行われるため、このような画像表示装置の光スイッチは、十分な光損傷耐性を備える必要がある。
【0013】
光損傷耐性を向上するための1つの方法として、大口径(数十〜数百μm径)の光ビームをスイッチングする方法があるが、特許文献3に記載のような導波路型の光スイッチは、そのような大口径の光ビームをスイッチングする光スイッチとして用いることは困難である。
【0014】
本発明の目的は、上記課題を解決し、光損傷耐性が高く、大口径の光ビームに対するスイッチ動作をより少ない電力で高速に行うことができる光スイッチ、その製造方法、それを用いた画像表示装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の光スイッチは、電気光学結晶と、同一平面上に配置された複数の電極からなる電極部とを有し、該電極部により発生した電界により前記電気光学結晶の一部の屈折率を変化させることによって、前記電気光学結晶に入射した入射光の透過と反射とを切り換える光スイッチであって、前記電気光学結晶は、前記電極部を構成する電極の間に、前記平面からの高さが該電極よりも高い側壁を有し、前記電気光学結晶の、少なくとも前記電極部からの電界が及ぶ領域が、光学的に均質な材料より形成されている。
【0016】
本発明の画像表示装置は、光源と、前記光源からの光を変調する上述の光スイッチと、前記光スイッチからの変調された光ビームで外部スクリーン上を走査する走査手段と、外部からの制御信号に応じて前記光スイッチにおける変調動作を制御する制御部とを有する。
【0017】
本発明の画像形成装置は、光源と、感光体と、前記光源からの光を変調する上述の光スイッチと、前記光スイッチからの変調された光ビームで前記感光体上を走査する走査手段と、外部からの制御信号に応じて前記光スイッチにおける変調動作を制御する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電極よりも高い側壁を有する電気光学結晶を用いており、これにより、誘電率の高い電気光学結晶と電極との接触面積を小さくすることが可能となっている。電気光学結晶と電極との接触面積を小さくすることで電極間容量を減少させることができるため、省電力化および高速動作化を図ることができる。
【0019】
また、導波路型とは異なり、光を閉じ込める必要がないため、導波路型の光スイッチと比較して、光損傷耐性を向上することができる。加えて、導波路型の光スイッチに比較して、大口径(数十〜数百μm径)の光ビームに対するスイッチ動作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1Aは、本発明の第1の実施形態である光スイッチの構成を示す模式図、図1Bは、図1Aの光スイッチを出射面側から見た場合の断面図である。
【0022】
図1Aに示すように、光スイッチは、2つの電気光学結晶104、105を高温・高圧下で接合したものである。図1Bに示すように、接合後の電気光学結晶において、電気光学結晶104、105の接合境界面は屈折率がほぼ同等で連続的であるため、光学的に均一な1つの電気光学結晶と見做すことができる。
【0023】
電気光学結晶104、105は、例えばタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)、ニオブ酸リチウム(LN)等の電気光学効果を有する結晶である。
【0024】
接合前の電気光学結晶104の表面(電気光学結晶105と接合される面)には、複数の溝が平行に形成されており、各溝の内部に、電極106が形成されている。電極106は、例えば、電極部材となり得る電子伝導体を溝の底部に蒸着することで形成される。電極106の厚さは、溝の深さより薄い。このため、電気光学結晶104の表面は、電極106が形成されている部分が窪んだ状態となっている。電気光学結晶104の表面の溝以外の部分は、十分に研磨されて平坦な面とされている。
【0025】
接合前の電気光学結晶105の表面は、十分に研磨されて平坦な面とされており、この面が、上記のような電極106が形成された電気光学結晶104の表面と接合される。接合後の状態において、複数の電極106からなる電極部107が電気光学結晶中に形成されており、電気光学結晶104の表面の窪み部分は、電気光学結晶中に形成された空隙部108となる。この空隙部108により、電極106の間の光透過部109は、側壁110を持つ構造となっている。なお、電気光学結晶104、105は、屈折率が同等のバインダなどで接合してもよい。
【0026】
複数の電極106は、同一平面上に平行に配置されており、隣接する電極の極性が異なるように、外部電源111に電気的に接続されている。各電極106は、電気光学結晶105には接触していない。各電極106は、接合された電気光学結晶の一方の端面から他方の端面に向かって延伸するように設けられている。一方の端面が入射面とされ、他方の端面が出射面とされる。
【0027】
なお、ここでいう同一平面とは、幾何学的に完全同一平面には限定されず、製造上の誤差を含み、また、屈折率変化領域を平坦に形成できる程度の範囲の平面であればよい。
【0028】
次に、本実施形態の光スイッチの動作を説明する。
【0029】
電圧が電極部107に印加されていない場合は、図1Bに示すように、電極106の近傍の結晶領域において、屈折率変化は生じない。この状態において、入射光101が電気光学結晶の入射面から入射すると、その入射した光は、光透過部109を透過して、出射面から透過光102として外部へ出射される。
【0030】
一方、電圧が電極部107に印加されている場合には、図1Cに示すように、電極106の近傍の結晶領域において、電極106からの電界による屈折率変化が起こる。このため、電極106の近傍の結晶領域に屈折率変化部112が生じる。屈折率変化部112とその周辺の結晶領域との屈折率界面113における、入射光が全反射される条件となる臨界角θmは、屈折率変化部112の屈折率変化量Δnと、電気光学結晶104、105の屈折率n0との関係から、以下の式により算出される。
【0031】
【数1】

【0032】
臨界角θm以上の入射角を持つ入射光は、屈折率界面113で全反射され、出射面から反射光103として外部へ出射される。反射光103の出射方向は、透過光102の出射方向と異なる。
【0033】
上述のように、電極部107への電圧の印加を制御することによって、透過状態と反射状態の切り替えを行うことができ、これにより、光のオンオフ制御が可能となる。透過光102と反射光103は、射出方向が異なるため、容易に分離することができる。
【0034】
図2は、本実施形態の光スイッチにおける、印加電圧に対する屈折率および光パワーの変化を説明するための図である。図2の(a)は、印加電圧の波形を表したグラフであって、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。図2の(b)は、図2の(a)に示す印加電圧に対する電極部近傍の屈折率の変化を表したグラフであって、横軸は時間を示し、縦軸は屈折率を示す。図2の(c)は、図2の(a)に示す印加電圧に対する光パワーの変化を表したグラフであって、横軸は時間を示し、縦軸は光パワーを示す。光パワーの値は、透過光102をフォトディテクタで検出した値である。
【0035】
電圧が電極部107に印加されると、主に電極106の近傍領域の屈折率がその周囲の領域の屈折率よりも小さくなる。このため、臨界角以上の入射角で屈折率界面113に入射した光は、屈折率界面113で全反射されることとなり、フォトディテクタで検出される透過光102のパワー値は低くなる。
【0036】
電極部107への印加電圧値がゼロのとき、電極106の近傍領域における屈折率変化は発生しない。このため、入射光は電極部106間の光透過部109をそのまま通過し、フォトディテクタで検出される透過光102のパワー値は、電圧印加時に比べて高くなる。
【0037】
上述した本実施形態の光スイッチにおいて、電気光学結晶は、電極106間に、電極106の厚さよりも高い側壁110を持つ。この構成によれば、電極106の一部は、側壁110により仕切られた空間(空隙部108)に露出し、その露出面は、電気光学結晶に接触しない。したがって、電極106が電気光学結晶と接触する面積を、露出面の分だけ小さくすることができる。この場合の電極間容量は、電極全体が電気光学結晶と接触する場合の電極間容量の約3/4となる。
【0038】
なお、電極間容量は、電極長、電極の厚さ、電極間隔、電極と接触する材料または空間(真空・空気)の誘電率、電極と側壁の間隔等のパラメータにより決まるので、それらのパラメータを適宜に最適化することで、より電極間容量を低減することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態の光スイッチにおける高速動作時の消費電力P、電極間容量C、最大変調動作周波数fmaxの関係は、以下の式2で表される。
【0040】
【数2】




【0041】
ここで、fは動作周波数、Rは出力抵抗である。
【0042】
式2よれば、高速動作時の消費電力Pは電極間容量Cに比例するので、電極間容量Cを減らすことで、消費電力を低減することができる。また、動作周波数fmaxは電極間容量Cに反比例するので、電極間容量Cを減らすことで、動作周波数の拡大、すなわちスイッチ動作の高速化を行うことができる。
【0043】
図3は、電極間に電圧Vを与えたときの、電極間隔dと電極間に発生する電界強度Eの関係を示す特性図である。この関係によれば、電極間隔dを小さくすると、電界強度Eは指数関数的に増大する。本実施形態の光スイッチにおいては、電極106の間隔は数μm〜数十μm程度とされているので、小さな印加電圧で、電極間の電気光学結晶部分に、より強い電界を生じさせて屈折率変化部を発生させることができる。したがって、電極部に印加する電圧を低くすることが可能となる。
【0044】
以上のように、本実施形態の光スイッチにおいては、低消費電力化およびスイッチ動作の高速化を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態の光スイッチによれば、デバイス単体で光スイッチとして動作させることができるため、偏光子などの外部光学部品が不要となり、その分、小型化と低コスト化を図ることができる。
【0046】
さらに、本実施形態の光スイッチによれば、電極部107に形成された空隙部108により、光が電極部107に照射されたときに発生する熱や、電極部107に電圧が印加された際に発生する歪や熱を効率よく逃がすことができる。これにより、結晶への負荷を軽減し、結晶の損傷を防ぐことができるので、耐久性・信頼性を向上させることが可能である。
【0047】
次に、本実施形態の光スイッチの各部に用いる望ましい材料や、電極長等の望ましい設定条件について説明する。
【0048】
本実施形態の光スイッチにおいて、電気光学結晶には、カー定数やポッケルス定数及び屈折率の高い電気光学結晶、例えば、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、LiTaO3(LT)、KTiOPO4(KTP)などを用いることが望ましい。これは、屈折率変化量Δnが以下の式3で与えられることから、カー定数やポッケルス定数及び屈折率の高い電気光学結晶を用いることで、大きな屈折率変化を得ることができるためである。
【0049】
【数3】

【0050】
電極106の長さを入射光101のビーム径に合わせて最適化することで、電極間容量をさらに減らすことができる。具体的には、電極面(各電極106からなる面)の垂直方向とビームの進行方向とを含む平面内におけるビーム径をr、電極部からの電界により屈折率が変化した領域と、この周辺の領域との屈折率界面における、全反射の条件とされる電気光学結晶内での臨界角をθmとしたとき、電極106の長さが、以下の式4で与えられる電極長Lの値以上であればよい。
【0051】
【数4】

【0052】
また、電極部の幅W(格子状の部分の幅)は電極に対して水平方向のビームの幅w以上であればよい。
【0053】
各電極106の膜厚(高さ)は、可能な限り均等にすることが望ましく、また、各電極106の間隔も、可能な限り均等にすることが望ましい。各電極106の膜厚および間隔を均等にすることにより、比較的平坦な屈折率界面113を形成することができる。屈折率界面113を比較的平坦な面とすることで、反射光103は散乱せずにほぼ同じ方向に進み、その結果、散乱光の影響による消光比の低下を抑制することができる。
【0054】
光の利用効率を上げるために、入射光101の進行方向と電極106の長手方向を互いに平行とすることが望ましい。なお、入射光は臨界角程度の浅い角度で入射させる必要があるため、入射光101の進行方向と電極106の長手方向とが交差する構成では、電極106が形成された溝の部分の厚さによって光が遮光される場合がある。
【0055】
空隙部108内は、真空(減圧状態)としてもよく、また、空気で満された状態であってもよい。例えば、真空チャンバ内において、電気光学結晶104に電極を蒸着したり、電気光学結晶104、105を貼り付けたりするが、その貼り付け工程において、空隙部108を密閉するような処理を行うことで、空隙部108内を真空とすることができる。真空(減圧状態)の誘電率は、空気より低いため、空隙部108内を真空とすることで、電極間容量をさらに低減することができる。加えて、空隙部108内を真空にすると、電極106の露出面の酸化を抑制することができる。
【0056】
誘電率が電気光学結晶より低い物質を空隙部108内に充填してもよい。図4に、図1Bに示した構成において、物質を空隙部内に充填した構造を示す。空隙部内に充填された物質401は、電極106と接触している。物質401の誘電率は、電気光学結晶104、105の誘電率よりも低い。したがって、この場合の電極間容量は、電極106全体が電気光学結晶により覆われる構造のものより小さい。
【0057】
物質401は、誘電率が電気光学結晶よりも小さいものであればよく、絶縁性(低誘電率)を有する材料や、高熱伝導率の材料、もしくは、絶縁性を有する高熱伝導率の材料を物質401に用いてもよい。絶縁性を有する高熱伝導率の物質としては、例えば絶縁性グラファイトシートやシリコーン化合物がある。
【0058】
物質401に絶縁性(低誘電率)を有する物質を用いた場合は、電極間容量の低減に加えて、後述の複数の電極部を有するマルチ電極構造において、物質401が電界をシールドする機能として働く。この電界シールド機能により、電極部間の電界の相互干渉を抑制することができる。
【0059】
物質401に高熱伝導率の物質を用いた場合は、光を照射し、または電圧を印加した際に、電極部106で発生した熱を効率良く逃がすことができる。
【0060】
また、高熱伝導率の物質401を、ペルチェ素子などの外部温度調節装置に接続することで、電気光学結晶の電極部近傍の領域の温度制御を行うことができる。この構成によれば、例えば、結晶の構造が変化する相転移温度以上で透明となり、相転移温度付近で大きな屈折率を得られる電気光学結晶、例えば、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)を用いた場合に、電極部近傍の領域の温度を相転移温度以上で維持することができる。電気光学結晶を透明な状態で維持することで、電気光学結晶を透過する光の光量が増大し、その分、消光比を高くすることができる。
【0061】
また、本実施形態の光スイッチにおいて、変調する光の波長に基づいた設計を行うことで、電極間容量を減らすことができる。ディスプレイ用途としては、特に波長400nm〜700nmの可視光を変調する必要があるが、そのような波長域においては、波長によって電気光学結晶の屈折率及び屈折率変化量がわずかであるが異なる。例えば、電気光学結晶にタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)を用いた場合、2次の電気光学係数g11-g12と真空の誘電率ε0と電気光学結晶の比誘電率εrから、屈折率nとカー定数sは、以下の式5により計算できる。
【0062】
【数5】


【0063】
波長440nmの2次の電気光学係数g11-g12を0.206とすると、式5により、屈折率nは2.409となり、カー定数sは4.67×10-15となる。波長640nmの2次の電気光学係数g11-g12を0.154とすると、式5により、屈折率nは2.284となり、カー定数sは3.49×10-15となる。また、5μm間隔の電極間に5Vの電圧を印加した場合、式3に従えば、屈折率変化量Δnは、波長440nmの光の場合で−0.033となり、波長640nmの光の場合で−0.021となる。屈折率界面での臨界角θmは、式1に従えば、波長440nmの光の場合で80.6度となり、波長640nmの光の場合で82.3度となる。これらの計算値から分かるように、使用する波長によって臨界角も変わることとなる。
【0064】
入射光にレーザ光を使用する場合は、使用する光の波長が定まるため、電気光学結晶の屈折率と屈折率変化量から求まる臨界角、レーザビーム径rから、式4を用いて算出される電極長Lを用いて、必要最低限の電極長で、光スイッチを設計することができる。その結果、低消費電力で高速変調可能な光スイッチを実現できる。
【0065】
また、入射光に白色光などブロードな波長の光を使用する場合は、屈折率変化量が少ない長波長側の光に合わせて、入射光の入射角、電極長、印加電圧等の値を設定することが望ましい。
【0066】
次に、本実施形態の光スイッチの電極形成方法について具体的に説明する。
【0067】
図5の(a)〜(j)は、光スイッチの電極形成方法の一手順を示す断面工程図である。
【0068】
まず、電気光学結晶501の表面にレジスト502を塗布する(図5(a)の工程)。次に、電極形成用の第1のパターンが形成されたマスク503を用いて、レジスト502が塗布された面をマスキングし、その塗布面を露光する(図5(b)の工程)。次に、レジスト502の露光された部分を除去する(図5(c)の工程)。
【0069】
次に、露光部分が除去されたレジストをマスクとして用いて、電気光学結晶501の露出した表面をエッチングする(図5(d)の工程)。エッチング材料は、例えばフッ化水素等である。
【0070】
次に、再びレジスト502を塗布し(図5(e)の工程)、電極形成用の第2のパターンが形成されたマスク504を用いて、レジスト502が再塗布された面をマスキングし、その塗布面を露光する(図5(f)の工程)。第2のパターンは、図5(d)の工程で使用したマスク503の第1のパターンよりも一回り小さい。次に、レジスト502の露光された部分を除去する(図5(g)の工程)。これらの図5(e)〜(g)の工程により、電気光学結晶501の表面に溝が形成され、その溝の底部を除く面全体がレジストにより覆われた構造を得る。すなわち、溝の側壁は、レジストにより覆われている。
【0071】
次に、電気光学結晶501の溝が形成された面全体に、蒸着やスパッタリングによって電極材料(金、白金など)を堆積する(図5(h)の工程)。溝の底部に堆積された電極材料により、電極505が形成される。電極505の膜厚は、図5(d)の工程で行った電気光学結晶のエッチング量(深さ)よりも薄くする。次に、レジスト502を除去し、電気光学結晶501の表面を十分に研磨して平坦な面とする(図5(i)の工程)。
【0072】
最後に、高温、高圧の条件下で、電気光学結晶501の電極505が形成された面を、別の電気光学結晶506の、研磨された平坦な面に密着させることで、電気光学結晶501、506を貼り合わせる(図5(j)の工程)。なお、電気光学結晶501、506は、これらと屈折率が同等のバインダなどで接合してもよい。貼り合わせ工程において、電気光学結晶501、506の貼り合わせる面は、十分な平坦度を有する面に加工してあるものとする。
【0073】
上述の図5の(a)〜(j)の工程により、図1Aに示したような電極106および空隙部108の形成や、電気光学結晶104、105の貼り合わせを行うことができる。なお、図5の(a)〜(j)の工程により形成した電極106は、側壁110とは接触しない。電極106が側壁110と接触しない構造における電極間容量は、電極106が側壁110と接触する構造よりも小さい。電極106が側壁110と接触しない構造において、電極106と側壁110の間隔が大きいほど電極間容量が小さくなる。ただし、電極106と側壁110の間隔を大きくすると、透過部109の領域を減少させる必要があり、その結果、光の利用効率が低下する。このため、電極106と側壁110の間隔は、光の利用効率を考慮して決定することが望ましい。
【0074】
次に、別の電極形成手法を説明する。この電極形成手法では、図5(h)の工程で形成した電極505上に、誘電率が電気光学結晶501より小さな物質401をスパッタリングなどで形成、もしくは貼り付ける(図6(a)の工程)。物質401は、絶縁性(低誘電率)の物質もしくは高熱伝導率の物質またはその両方の特性を兼ね備えた物質である。物質401の形成後、レジストを除去し、電気光学結晶501の面を研磨する。そして、高温高圧の条件下で、電気光学結晶501を電気光学結晶506と貼り合わせる(図6(b)の工程)。電気光学結晶501、506は、屈折率が電気光学結晶と同等のバインダを用いて貼り合わせもよい。こうして、図4に示したような光スイッチを作製することができる。
【0075】
次に、さらに別の電極形成手法を説明する。この電極形成手法では、図5(c)の工程の後に、電気光学結晶501の表面に電極507を形成し、レジストを除去する(図7(a)の工程)。次に、図5の(a)〜(d)の工程と同様な工程により、別の電気光学結晶508の表面の、電極507と対応する領域に、電極507の膜厚よりも深い溝を形成する(図7(b)の工程)。そして、電気光学結晶508の溝が形成された面を研磨して平坦な面とし、その面を、電気光学結晶501の電極507が形成された面に貼り付ける(図7(c)の工程)。貼り付け工程において、電極507が溝内に収容されるように、電気光学結晶501、508の位置合せを行う。こうして、図1Aに示したような電極構造を得る。
【0076】
次に、他の電極形成手法を説明する。この電極形成手法では、図5の(a)〜(d)の工程と同様な工程により、電気光学結晶509の表面に、電極を埋め込むための溝を形成し、その溝の深さと同程度の膜厚の電極を形成した後、レジストを除去する。次に、電気光学結晶509の電極が形成された面を研磨して平坦な面とする。次に、図5の(a)〜(d)の工程と同様な工程により、別の電気光学結晶508の表面に溝を形成する。この溝の位置は、電気光学結晶509の電極の位置に対応し、その幅は電極の幅より広い。次に、電気光学結晶508の溝が形成された面およびを研磨して平坦な面とし、その面を、電気光学結晶509の電極が形成された面に貼り付ける。こうして、図8に示すような、電極の一部が電気光学結晶と接触しない構造の光スイッチを得る。
【0077】
なお、本実施形態の光スイッチにおいて、入射光の進行方向に沿って複数の電極部が設けられてもよい。このマルチ電極構造によれば、高い消光比を得ることができる。
【0078】
電気光学結晶端部における光の入射および出射の際に生じる光損失を抑え、高い消光比が得られる小型の光スイッチを実現するためには、マルチ電極構造とすることが望ましい。
【0079】
図9Aは、マルチ電極構造を有する光スイッチの構成を示す模式図、図9Bは、図9Aの光スイッチを出射面側から見た場合の断面図である。
【0080】
図9Aに示すように、光スイッチは、3つの電気光学結晶104、105、603を高温・高圧下で接合したものであって、接合後の電気光学結晶において、電気光学結晶104、105、603のそれぞれの接合境界面は屈折率がほぼ同等で連続的であるため、光学的に均一な1つの電気光学結晶と見做すことができる。電気光学結晶104、105、603は、例えばタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)、ニオブ酸リチウム(LN)等の電気光学効果を有する結晶である。
【0081】
電気光学結晶104は、電極部604を備える。電極部604は、図1Aに示したものと同じ電極構造であって、複数の電極106からなる。各電極106の厚さは、溝の深さより薄い。電気光学結晶105は、電極部605を備える。電極部605も、電極部604と同様な構造である。
【0082】
電気光学結晶104の電極部604が形成された面は、電気光学結晶105の電極部605が形成された面とは反対の面に接合される。電気光学結晶105の電極部605が形成された面は、電気光学結晶603の表面に接合される。電気光学結晶104、105、603の接合は、高温、高圧の条件下で行われるが、これに変えて、電気光学結晶104、105、603を屈折率がそれら電気光学結晶と同等のバインダなどを用いて接合してもよい。
【0083】
図9Bに示すように、接合後において、電極部604、605は、互いに平行に配置されており、入射光101が透過する方向において、電極部604を構成する電極および空隙部は、電極部605を構成する電極および空隙部と重なる。
【0084】
上記のマルチ電極構造を有する光スイッチにおいて、各電極部604、605におけるスイッチ動作は、概ね図1Aに示した光スイッチの電極部と同じである。各電極部604、605に電圧を印加すると、図9Cに示すように、電極部604の近傍の結晶領域に屈折率変化部606が形成され、電極部605の近傍の結晶領域に屈折率変化部607が形成される。
【0085】
各電極部604、605に電圧を印加した状態において、入射光101は、臨界角以上の入射角を維持しながら電気光学結晶104に入射する。入射光101は、屈折率変化部606に到達し、そこで、第1の透過光成分と第1の反射光成分との2つの光成分に分割される。屈折率変化部606を透過した第1の透過光成分は、屈折率変化部606の後方に配置されている屈折率変化部607に到達し、そこで、第2の透過光成分と第2の反射光成分との2つに成分に再び分割される。屈折率変化部606で反射した第1の反射光602は、反射光601として電気光学結晶104の出射面から外部へ出射される。屈折率変化部607で反射した第2の反射光602は、反射光602として電気光学結晶105の出射面から外部へ出射される。
【0086】
一方、各電極部604、605への電圧供給を停止すると、屈折率変化部606、607は形成されないので、入射光102は、電極部604、605を構成する各電極間の領域を透過する。この透過光は、透過光102として、電気光学結晶603の出射面から外部へ出射される。透過光102の出射方向は、反射光601、602の出射方向と異なる。
【0087】
上記のように、各電極部604、605に電圧を印加した状態において、入射光101のうち、前段の屈折率変化部606を透過してしまった光を、後段の屈折率変化部607にて反射することで、消光比を高めることが可能である。
【0088】
なお、入射角やビーム径、電極部604、605の間隔が適切に設定されていない場合、屈折率変化部607からの第2の反射光が電極部604に入射し、それがスイッチング動作に悪影響を及ぼし、消光比を低減させる可能性がある。特に、電極部604、605の間隔が狭いと、電極部604、605で発生した電界の相互干渉により、電極部604、605間に、期待しない屈折率変化部が生じる。この場合は、期待しない光の散乱の影響で、適切な消光比が得られなくなる可能性がある。このため、電極部604、605の間隔は、電界の相互干渉が生じないような間隔とすることが望ましい。実験的には、電極部604、605の間隔は、それぞれの電極部を構成する電極の間隔の3倍以上とすることが望ましい。
【0089】
また、図10Aおよび図10Bに示すように、入射光101の光路上にのみ、式1で示された電極長L以上の長さの電極で構成される複数の電極部604、605を配置してもよい。この場合も、各電極部604、605に電圧を印加した状態において、入射光101のうち、前段の電極部604で反射せずに透過してきた光を、後段の電極部605で反射させることで、消光比を高めることが可能である。電極の形成領域を光の透過する領域に限定することで、電極の面積をさらに小さくすることができる。この結果、図9Aに示した構造よりも、電極間容量を低下させることができ、低消費電力化および高速動作化のさらなる改善を図ることができる。また、高価な電極材料の使用量を少なくすることができ、低コスト化を図ることができる。
【0090】
図9Aや図10Aに示したマルチ電極構造の光スイッチにおいて、電極部604、605に電圧を印加した際に、各屈折率変化部で光が散乱するため、迷光が発生し易い。発生した迷光による影響で、適切な消光比が得られなくなる場合がある。このため、マルチ電極構造の光スイッチでは、屈折率界面での光の散乱を極力抑える必要がある。平坦な屈折率界面を形成するためには、1段の電極構造の光スイッチの場合と同様に、電極部を形成する複数の電極は、高さ、膜厚、電極間隔がそろっている構造であることが望ましい。
【0091】
図9Bに示したように、各電極部の電極の位置を作製時あわせて構成すると、光が電極部で反射されてしまうことを極力防ぐことができるようになり、その結果、光の利用効率を上げることができる。
【0092】
また、電気光学結晶に接していない電極部周辺部(空隙部)は、空気で満たす構造としてもよく、絶縁性(低誘電率)・高熱伝導率の物質(例えば、絶縁性グラファイトシートやシリコーン化合物)を形成してもよい。
【0093】
次に、上述のマルチ電極構造の光スイッチの製造方法について説明する。まず、図5の(a)〜(i)の工程により、複数の電極505からなる電極部を備えた電気光学結晶501を複数作成し、それらを貼り合わせる。この貼り合わせにおいて、一方の電気光学結晶の電極部が形成された面を、他方の電気光学結晶の電極部が形成された面とは反対の面に貼り合わせる。最後に、図11Aに示すように、複数の電気光学結晶501を貼り合わせたものを、別の電気光学結晶506の研磨された平坦な面に貼り付ける。
【0094】
次に、マルチ電極構造の光スイッチの別の製造方法について説明する。まず、図5の(a)〜(i)の工程により、複数の電極505からなる電極部を備えた2つの電気光学結晶501を作成し、それらを貼り合わせる。この貼り合わせにおいて、一方の電気光学結晶の電極部が形成された面を、他方の電気光学結晶の電極部が形成された面に貼り合わせる。これにより、図11Bに示すようなマルチ電極構造を得る。このマルチ電極構造においては、一方の電気光学結晶に形成された電極と他方の電気光学結晶に形成された電極とが対向して配置され、これら電極間は空隙部とされている。この構造によれば、電極間容量を削減できるとともに、図11Aに示した別の電気光学結晶506を貼り付ける必要がないので、その分、低コスト化を図ることができる。この場合も、電極部の間隔は、電極106の間隔の3倍以上とすることが望ましい。
【0095】
次に、本実施形態の光スイッチを実際に設計した場合の配置例について説明する。ここでは、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)を用いた場合の配置例と、ニオブ酸リチウム(LN)を用いた場合の配置例について説明する。
【0096】
まず、電気光学結晶にタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)を用いた場合について説明する。
【0097】
入射光のビームの、電極面(各電極106からなる面)の垂線方向における幅は20μmとされ、電極面に対して平行方向における幅は50μmとされている。入射光の波長λは640nmであり、その場合のタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)の屈折率nは2.284である。
【0098】
電極部は、幅wが1μmの10本の電極106からなり、各電極106の間隔xは5μmである。各電極106は、深さ1μmの空隙部108と接している。
【0099】
電極部に外部電源111から5Vの電圧を印加した場合の屈折率変化量Δnは−0.0065となる。この条件において、電界印加によって生じる屈折率変化部の屈折率界面によって入射光が全反射するときの臨界角θmは、85.7°である。このときの電気光学結晶への入射光の入射角は9.9°である。
【0100】
直径20μmの入射光を、全て屈折率変化部の屈折率界面によって反射するためには、電極106の長さを265μm以上にする必要がある。このときの電極部の総電極間容量はおよそ325pFである。一方、空隙部を有しない比較構造において、電極106と同じ形状および大きさの電極を形成した場合は、およそ405pFである。このことから、本例によれば、電極間容量に関して、比較構造に対して、約8割に低容量化が可能であることがわかる。
【0101】
なお、2段の電極構造の光スイッチを実現する場合、電気光学結晶105の厚さを20μmとすると、電極部の間隔を265μm程度とする必要がある。このため、電気光学結晶の全長は795μm以上となり、電気光学結晶の高さは60μm以上となる。
【0102】
次に、電気光学結晶にニオブ酸リチウム(LN)を用いた場合について説明する。
【0103】
入射光のビームの、電極面の垂線方向における幅は20μmとされ、電極面に対して平行方向における幅は50μmとされる。入射光の波長λは640nmであり、その場合のニオブ酸リチウム(LN)の屈折率nは2.284である。
【0104】
電極部は、幅wが1μmの14本の電極106からなり、各電極106の間隔xは3μmである。各電極106は、深さ1μmの空隙部108と接している。
【0105】
電極部に外部電源111から200Vの電圧を印加した場合の屈折率変化量Δnは−0.0067である。この条件において、電界印加によって生じる屈折率変化部の屈折率界面によって入射光が全反射するときの臨界角θmは85.6°である。このときの電気光学結晶への入射光の入射角は10.1°である。
【0106】
直径20μmの入射光を、全て屈折率変化部の屈折率界面によって反射するためには、電極106の長さを261μm以上にする必要がある。このときの電極部の総電極間容量はおよそ1.34pFである。一方、空隙部を有しない比較構造において、電極106と同じ形状および大きさの電極を形成した場合は、およそ1.63pFである。このことから、本例によれば、電極間容量に関して、比較構造に対して、約8割に低容量化が可能であることがわかる。
【0107】
なお、2段の電極構造の光スイッチを実現する場合、電気光学結晶105の厚さを20μmとすると、電極部の間隔を261μm程度とする必要がある。このため、電気光学結晶の全長は783μm以上となり、電気光学結晶の高さは60μm以上となる。
【0108】
上述した図9Aおよび図10Aに示した例では、入射光の進行方向に沿って平行に配置された2つの電極部を備える光スイッチについて説明したが、電極部の数はこれに限定されず、3つ以上であってもよい。入射光の進行方向に沿って平行に配置される電極部の数が増えるほど、高い消光比を得ることが可能である。
【0109】
(第2の実施形態)
図12Aは、本発明の第2の実施形態である光スイッチの構成を示す模式図、図12Bは、図12Aの光スイッチを出射面側から見た場合の断面図である。
【0110】
図12Aに示すように、光スイッチは、複数の電極106からなる電極部107が形成された電気光学結晶104を有する。電気光学結晶104は、例えばタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)、ニオブ酸リチウム(LN)等の電気光学効果を有する結晶である。
【0111】
電気光学結晶104の表面には、入射光101の進行方向に沿って複数の溝が平行に形成されており、各溝の底部に、電極106が形成されている。電極106は、例えば、電極部材となり得る電子伝導体を溝の底部に蒸着することで形成される。電極106の厚さは、溝の深さより薄い。溝の深さは、入射光の電極面(各電極106からなる面)の垂線方向におけるビームの長さ以上である。
【0112】
複数の電極106は、同一平面上に平行に配置されており、隣接する電極の極性が異なるように、外部電源111に電気的に接続されている。各電極106は、電気光学結晶104の一方の端面から他方の端面に向かって延伸するように設けられている。一方の端面が入射面とされ、他方の端面が出射面とされる。
【0113】
なお、ここでいう同一平面とは、幾何学的に完全同一平面には限定されず、製造上の誤差を含み、また、屈折率変化領域を平坦に形成できる程度の範囲の平面であればよい。
【0114】
次に、本実施形態の光スイッチの動作を説明する。
【0115】
電圧が電極部107に印加されると、図12Cに示すように、電極106の近傍の結晶領域において、電極106からの電界による屈折率変化が起こる。このため、電極106の近傍の結晶領域に屈折率変化部112が生じる。一方、電圧が電極部107に印加されていない場合は、屈折率変化部112は生じない。
【0116】
図13Aは、電極部107への電圧供給を停止した場合の光スイッチの状態を側面から見た模式図である。電圧が電極部107に印加されていない場合は、屈折率変化部112は生じないため、入射光101は、電極106間の光透過部109を透過して、出射面から透過光102として外部へ出射される。
【0117】
図13Bは、電圧が電極部107に印加された場合の光スイッチの状態を側面から見た模式図である。電圧が電極部107に印加された場合は、入射光101は、屈折率変化部112とその周辺の結晶領域との屈折率界面113にて全反射される。屈折率界面113からの反射光は、出射面から反射光103として外部へ出射される。なお、入射光101の屈折率界面113に対する入射角は臨界角以上である。
【0118】
本実施形態の光スイッチも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0119】
透過光102の出射方向は反射光103の出射方向と異なるため、容易にそれらを分離することができる。
【0120】
本実施形態の光スイッチにおいては、電極部107を透過した光は、電気光学結晶104の電極部107よりも下部の格子状の結晶領域801を通って出射面から射出される。このため、光射出用(もしくは光入射用)の別の電気光学結晶(例えば、図1Aに示した電気光学結晶105)を設ける必要がない。よって、電気光学結晶の貼り付け工程が不要となり、その結果、製造の簡略化と低コスト化を図ることができる。
【0121】
なお、電極106が形成される溝の深さが、入射光の電極面の垂線方向におけるビームの長さ未満である場合は、ビームの一部が電気光学結晶端面で反射されてしまうため、透過光の出射方向が本来の方向と異なってしまう。図14は、溝の深さが垂線方向のビームの長さ未満である光スイッチの、電極部への電圧供給を停止した場合の状態を側面から見た模式図である。光透過部109を透過した光の一部は、電気光学結晶104の電極部107が形成された側の表面にて、図13Bに示した反射光103と同じ方向に反射される。このため、出射面からは、図13Aに示した透過光102と同じ方向に向かう透過光901と、反射光103と同じ方向に向かう反射光902がそれぞれ出射され、射出光の方向が定まらない。
【0122】
上記から、入射光の電極面の垂線方向におけるビームの長さ以上の深い溝が必要である。
【0123】
また、電気光学結晶に接していない電極部周辺部(空隙部)は、空気で満たす構造としてもよく、絶縁性(低誘電率)・高熱伝導率の物質(例えば、絶縁性グラファイトシートやシリコーン化合物)を形成してもよい。
【0124】
また、図15に示すように、光の入射と射出の方向が図12Aに示したものと逆の方向とされた構造としてもよい。この場合は、電気光学結晶の溝が形成された側とは反対の面から電極部107までの距離を、入射光の電極面の垂線方向におけるビームの長さ以上とする。
【0125】
外部電源111から電極部107へ電圧が供給された状態において、臨界角以上の入射角を持つ入射光101は、屈折率変化界面113で全反射し、電気光学結晶104の上部端面から反射光103として外部へ出射される。電極部107への電圧供給が停止した場合は、入射光101は、電気光学結晶104の下部領域(電極部107の下部の結晶領域)を通って、電気光学結晶104の下部端面から透過光102として外部へ出射される。透過光102と反射光103は、それぞれの射出方向が異なるため、それらを容易に分離することができる。
【0126】
本実施形態の光スイッチによれば、第1の実施形態の光スイッチに比べて、電気光学結晶105が不要であり、研磨・張り合わせなどの工程も必要ないため、その分、製造の簡略化と低コスト化を図ることができ、小型で薄型の光スイッチを実現することができる。
【0127】
また、本実施形態の光スイッチにおいても、入射光の進行方向に沿って複数の電極部が設けられてもよい。このマルチ電極構造によれば、高い消光比を得ることができる。
【0128】
図16Aは、第2の実施形態を適用したマルチ電極構造を有する光スイッチの構成を示す模式図、図16Bは、図16Aの光スイッチを出射面側から見た場合の断面図である。
【0129】
図16Aに示すように、光スイッチは、2つの電気光学結晶104、105を高温・高圧下で接合したものであって、接合後の電気光学結晶において、電気光学結晶104、105の接合境界面は屈折率がほぼ同等で連続的であるため、光学的に均一な1つの電気光学結晶と見做すことができる。電気光学結晶104、105は、例えばタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)、ニオブ酸リチウム(LN)等の電気光学効果を有する結晶である。
【0130】
電気光学結晶104は、同一平面に平行に配置された複数の電極からなる電極部604を有する。電極部604は、図1Aに示したものと同じ電極構造である。電極部604を構成する各電極の厚さは、溝の深さより薄い。
【0131】
電気光学結晶105は、同一平面に平行に配置された複数の電極からなる電極部605を有する。電極部605は、図12Aに示した電極部107と同じ電極構造である。電極部605を構成する各電極の厚さは、溝の深さより薄い。溝の深さは、電極部605に入射する光の、電極面に対する垂線方向におけるビームの長さ以上である。
【0132】
電気光学結晶104の電極部604が形成された面は、電気光学結晶105の電極部605が形成された面とは反対の面に接合される。電気光学結晶104、105の接合は、高温、高圧の条件下で行われるが、これに変えて、電気光学結晶104、105を屈折率がそれら電気光学結晶と同等のバインダなどを用いて接合してもよい。
【0133】
図16Bに示すように、接合後において、電極部604、605は、入射光101が透過する方向に沿って互いに平行に配置されている。入射光101が透過する方向において、電極部604を構成する電極および空隙部は、電極部605を構成する電極および空隙部と重なる。
【0134】
第1の実施形態におけるマルチ電極構造の光スイッチにおいては、3枚の電気光学結晶を貼り合わせた構造であるのに対して、本実施形態におけるマルチ電極構造の光スイッチは、2枚の電気光学結晶を貼り合わせた構造とされており、電気光学結晶の数が、第1の実施形態のものよりも1枚少ない。よって、本実施形態におけるマルチ電極構造の光スイッチによれば、製造の簡略化が可能であり、電気光学結晶の数が少ない分、低コスト化を図ることができ、小型で、薄型の光スイッチを実現することができる。
【0135】
図17Aは、第2の実施形態を適用した別のマルチ電極構造を有する光スイッチの構成を示す模式図、図17Bは、図17Aの光スイッチを出射面側から見た場合の断面図である。
【0136】
図17Aに示す光スイッチは、1枚の電気光学結晶104よりなり、電気光学結晶104の上面および下面のそれぞれに、平行な複数の深い溝が形成されている。各溝には、電極106が形成されている。図17Bに示すように、上面側の各溝に形成された複数の電極106により電極部604が形成され、下面側の各溝に形成された複数の電極106により電極部605が形成されている。
【0137】
上面に形成された溝の深さは、電極部604に入射する光の、電極面に対する垂線方向におけるビームの長さ以上である。下面に形成された溝の深さは、電極部605に入射する光の、電極面に対する垂線方向におけるビームの長さ以上である。
【0138】
上記の別のマルチ電極構造を有する光スイッチによれば、1枚の電気光学結晶により形成することができるので、図16Aに示したものに比較して、さらに製造の簡略化と低コスト化、小型化を行うことが可能である。
【0139】
次に、本実施形態の光スイッチの電極形成方法について具体的に説明する。
【0140】
図18の(a)〜(h)は、本実施形態の光スイッチの電極形成方法の一手順を示す断面工程図である。
【0141】
まず、電気光学結晶501の表面にレジスト502を塗布する(図18(a)の工程)。次に、電極形成用の第1のパターンが形成されたマスク503を用いて、レジスト502が塗布された面をマスキングし、その塗布面を露光する(図18(b)の工程)。次に、レジスト502の露光された部分を除去する(図18(c)の工程)。
【0142】
次に、露光部分が除去されたレジストをマスクとして用いて、電気光学結晶501の露出した表面をエッチングする(図18(d)の工程)。エッチング材料は、例えばフッ化水素等である。
【0143】
次に、再びレジスト502を塗布し(図18(e)の工程)、電極形成用の第2のパターンが形成されたマスク504を用いて、レジスト502が再塗布された面をマスキングし、その塗布面を露光する(図18(f)の工程)。第2のパターンは、図18(d)の工程で使用したマスク503の第1のパターンよりも一回り小さい。次に、レジスト502の露光された部分を除去する(図18(g)の工程)。これらの図18の(e)〜(g)の工程は、基本的には、前述した図5の(e)〜(g)の工程と同じである。これらの工程により、電気光学結晶501の表面に溝が形成され、その溝の底部を除く面全体がレジストにより覆われた構造を得る。すなわち、溝の側壁は、レジストにより覆われている。
【0144】
最後に、電気光学結晶501のエッチングされた部分に、蒸着やスパッタリングによって電極材料(金、白金など)を堆積して電極505を形成した後、レジスト502を除去する(図18(h)の工程)。こうして、本実施形態の光スイッチを得る。
【0145】
図16Aに示したマルチ電極構造の光スイッチの場合は、図18の(a)〜(h)の工程により、電極505が形成された電気光学結晶を2枚分作成する。一方の電気光学結晶の溝は、電極の厚さより深いが、他方の電気光学結晶の溝より浅いものとされる。他方の電気光学結晶の溝の深さは、入射光の電極面の垂線方向のビームの長さ以上とされる。これら2枚の電気光学結晶を貼り合わせる。
【0146】
図17Aに示したマルチ電極構造の光スイッチの場合は、図18の(a)〜(h)の工程により、上面および下面のそれぞれに電極505が形成された電気光学結晶を作成する。上面および下面の溝は、電極の厚さより深く、かつ、入射光の電極面の垂線方向のビームの長さ以上の深さとされる。
【0147】
図16Aに示したマルチ電極構造の光スイッチは、図17Aに示したマルチ電極構造の光スイッチに比べて、一段目の電極部に入射する領域が、格子状の結晶領域とされていないので、その分、光の利用効率が向上し、高い消光比が得られる。加えて、図16Aに示したマルチ電極構造の光スイッチは、図17Aに示したマルチ電極構造よりも薄くなることから、小型で、薄型の光スイッチを実現することができる。
【0148】
他方、図17Aに示したマルチ電極構造の光スイッチにおいては、1枚の電気光学結晶で構成することができるので、低コスト化を図ることができる。
【0149】
本実施形態の光スイッチにおいても、ビームの入射角度は、前述の式1により与えられる臨界角θm以上とされる。また、電極長(溝長に同じ)は、前述の式4により与えられる電極長L以上とされる。式4のrは電極面の垂線方向とビームの進行方向とを含む平面内のビーム径である。電極部の幅(格子状の部分の幅)は電極に対して水平方向のビームの幅以上である。
【0150】
次に、本実施形態の光スイッチを実際に設計した場合の配置例について説明する。ここでは、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)を用いた場合の配置例と、ニオブ酸リチウム(LN)を用いた場合の配置例について説明する。
【0151】
まず、電気光学結晶にタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)を用いた場合について説明する。
【0152】
入射光のビームの、電極面の垂線方向における幅は20μmとされ、電極面に対して平行方向における幅は50μmとされている。入射光の波長λは640nmであり、その場合のタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)の屈折率nは2.284である。
【0153】
電極部は、幅wが1μmの10本の電極106からなり、各電極106の間隔xは5μmである。各電極106は、深さ1μmの空隙部108と接している。
【0154】
電極部に外部電源111から5Vの電圧を印加した場合の屈折率変化量Δnは−0.0065となる。この条件において、電界印加によって生じる屈折率変化部の屈折率界面によって入射光が全反射するときの臨界角θmは、86.1°である。このときの電気光学結晶への入射光の入射角は9.0°である。
【0155】
直径20μmの入射光を、全て屈折率変化部の屈折率界面によって反射するためには、電極106の長さを291μm以上にする必要がある。このときの電極部の総電極間容量はおよそ329pFである。一方、空隙部を有しない比較構造において、電極106と同じ形状および大きさの電極を形成した場合は、およそ432pFである。このことから、本例によれば、電極間容量に関して、比較構造に対して、約8割に低容量化が可能であることがわかる。
【0156】
なお、2段の電極構造の光スイッチを実現する場合、電気光学結晶105の厚さを20μmとすると、電極部の間隔を291μm程度とする必要がある。このため、電気光学結晶の全長は873μm以上となり、電気光学結晶の高さは60μm以上となる。
【0157】
次に、電気光学結晶にニオブ酸リチウム(LN)を用いた場合について説明する。
【0158】
入射光のビームの、電極面の垂線方向における幅は20μmとされ、電極面に対して平行方向における幅は50μmとされる。入射光の波長λは640nmであり、その場合のニオブ酸リチウム(LN)の屈折率nは2.284である。
【0159】
電極部は、幅wが1μmの14本の電極106からなり、各電極106の間隔xは3μmである。電極は、深さ20μmの深い溝内に形成されている。
【0160】
電極部に外部電源111から200Vの電圧を印加した場合の屈折率変化量Δnは−0.0070である。この条件において、電界印加によって生じる屈折率変化部の屈折率界面によって入射光が全反射するときの臨界角θmは85.5°である。このときの電気光学結晶への入射光の入射角は10.3°である。
【0161】
直径20μmの入射光を、全て屈折率変化部の屈折率界面によって反射するためには、電極106の長さを256μm以上にする必要がある。このときの電極部の総電極間容量はおよそ1.26pFである。一方、空隙部を有しない比較構造において、電極106と同じ形状および大きさの電極を形成した場合は、およそ1.59pFである。このことから、本例によれば、電極間容量に関して、比較構造に対して、約8割に低容量化が可能であることがわかる。
【0162】
なお、2段の電極構造の光スイッチを実現する場合、電気光学結晶105の厚さを20μmとすると、電極部の間隔を256μm程度とする必要がある。このため、電気光学結晶の全長は768μm以上となり、電気光学結晶の高さは60μm以上となる。
【0163】
(第3の実施形態)
図19Aは、本発明の第3の実施形態である光スイッチの構成を示す模式図、図19Bは、図19Aの光スイッチを出射面側から見た場合の断面図である。
【0164】
図19Aに示すように、光スイッチは、複数の電極106からなる電極部107が形成された電気光学結晶104を有する。電気光学結晶104は、例えばタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)、ニオブ酸リチウム(LN)等の電気光学効果を有する結晶である。
【0165】
電気光学結晶104の表面には、入射光101の進行方向に沿って複数の溝が平行に形成されており、各溝の底部に、電極106が形成されている。電極106は、例えば、電極部材となり得る電子伝導体を溝の底部に蒸着することで形成される。電極106の厚さは、溝の深さより薄い。溝の深さは、入射光の電極面(各電極106からなる面)の垂線方向におけるビームの長さの半分以上である。
【0166】
なお、ここでいう同一平面とは、幾何学的に完全同一平面には限定されず、製造上の誤差を含み、また、屈折率変化領域を平坦に形成できる程度の範囲の平面であればよい。
【0167】
複数の電極106は、同一平面上に平行に配置されており、隣接する電極の極性が異なるように、外部電源111に電気的に接続されている。各電極106は、電気光学結晶104の一方の端面から他方の端面に向かって延伸するように設けられている。一方の端面が入射面とされ、他方の端面が出射面(出射端面1305)とされる。
【0168】
電気光学結晶104の出射面が形成される側の端部は、電極部107より上の部分(上部端部)が出射端面1305よりさらに電極の延伸方向に伸びており、該延伸端部の下面1302を含む平面は、出射端面1305を含む平面と直交する。電気光学結晶104の側面から見た場合の端部の断面形状は、鉤状である。延伸端部の下面1302には、ミラー面1301が形成されている。ミラー面1301は、反射率が高い金属や、使用する波長の光を反射するように設計された光学薄膜である。端部の下面1302およびミラー面1301は、電気光学結晶4の下面1304と平行である。
【0169】
本実施形態においても、電気光学結晶に接していない電極部周辺部(空隙部)は、空気で満たす構造としてもよく、絶縁性(低誘電率)・高熱伝導率の物質(例えば、絶縁性グラファイトシートやシリコーン化合物)を形成してもよい。
【0170】
次に、本実施形態の光スイッチの動作を説明する。
【0171】
電圧が電極部107に印加されると、図19Cに示すように、電極106の近傍の結晶領域において、電極106からの電界による屈折率変化が起こる。このため、電極106の近傍の結晶領域に屈折率変化部112が生じる。一方、電圧が電極部107に印加されていない場合は、屈折率変化部112は生じない。
【0172】
図20Aは、電極部107への電圧供給を停止した場合の光スイッチの状態を側面から見た模式図である。電圧が電極部107に印加されていない場合は、屈折率変化部112は生じないため、入射光101は、電極106間の光透過部109(電極間の格子状の結晶領域1303)を透過する。
【0173】
光透過部109を透過した光の進行方向には、出射端面1305および下面1304が配置している。電気光学結晶と雰囲気の屈折率差が大きいため、光透過部109を透過した光のうち、下面1304に向かった光は、下面1304にて全反射される。この反射光の進行方向には、出射端面1305が配置されている。
【0174】
光透過部109を透過した光のうち、出射端面1305に向かった光は、出射端面1305から透過光102として出射される。一方、下面1304からの反射光は、出射端面1305からミラー面1301に向かって出射される。ミラー面1301は、電極部107と同じ高さに、下面1304と平行に形成されており、下面1304からの反射光はミラー面1301によって反射される。ミラー面1301からの反射光1302は、透過光102の出射方向と同じ方向に向かう。
【0175】
図20Bは、電圧が電極部107に印加された場合の光スイッチの状態を側面から見た模式図である。電圧が電極部107に印加された場合は、入射光101は、屈折率変化部とその周辺の結晶領域との屈折率界面にて全反射される。屈折率界面からの反射光は、延伸端部の端面から反射光103として外部へ出射される。なお、入射光の屈折率界面に対する入射角は臨界角以上である。
【0176】
透過光102の出射方向は反射光103の出射方向と異なるため、容易にそれらを分離することができる。この透過光102および反射光103の分離を利用して光スイッチ動作を実現する。
【0177】
本実施形態の光スイッチも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0178】
また、第2の実施形態と同様、電極部107を透過した光は、電気光学結晶104の電極部107よりも下部の格子状の結晶領域1303を通って出射面から射出される。このため、光射出用(もしくは光入射用)の別の電気光学結晶(例えば、図1Aに示した電気光学結晶105)を設ける必要がない。よって、電気光学結晶の貼り付け工程が不要となり、その結果、製造の簡略化と低コスト化を図ることができる。
【0179】
また、第2の実施形態の光スイッチにおいては、入射する光の電極面の垂線方向のビームの長さ以上の深い溝を形成する必要があったが、本実施形態の光スイッチにおいては、溝の深さを、第2の実施形態のものの約1/2まで減らすことができる。よって、本実施形態によれば、第2の実施形態のものよりもさらに薄い電気光学結晶で光スイッチを構成することができるため、小型で、薄型の光スイッチを提供することができる。
【0180】
また、第1の実施形態の光スイッチに必要であった電気光学結晶105が不要であること、第2の実施形態の光スイッチに比較して、電気光学結晶のエッチング量を半分程度に減らせること、研磨・張り合わせなどの工程が不要であること、といった点から、加工が容易であるため、製造の簡略化と低コスト化を図ることができる。
【0181】
本実施形態の光スイッチは、第1の実施形態の光スイッチの製造方法(図5の(a)〜(i)の工程)を適用することで作成することができる。ただし、電極を形成するための溝を形成する工程において、電気光学結晶のレジスト未塗布部をエッチング材料(フッ化水素など)でエッチングを行うときに、溝の深さが電極の垂線方向のビームの長さの半分程度となるようにエッチングを行う。この段階で、同時に、ミラー面を形成する部分をエッチングにより形成する。そして、電極を形成する蒸着工程において、同時に、ミラー面を形成する。これにより、少ない工程で電極およびミラー面を形成することができるため、製造の簡略化と低コスト化を図ることができる。
【0182】
また、第1の実施形態、もしくは第2の実施形態の光スイッチを製造した後、ミラー面を電極位置と同じ高さに取り付けることでも、本実施形態の光スイッチを作製することができる。
【0183】
なお、本実施形態の光スイッチにおいては、電極部とミラー面は、必ずしも同じ高さに形成されている必要はなく、電極部とミラー面が平行であり、電気光学結晶の入射光の射出面側の端部から電極部の射出面側の端部までの長さをl、電極部が形成されている面から、ミラー面が形成されている面までの高さをH、屈折率境界面での臨界角をθmとするとき、電極部とミラー面は、
H≧l/tanθm
を満たすように形成されていればよい。この条件式を満たすような高さにミラー面を電極部と平行に形成すれば、電極部で反射した光と電極部を透過した光を分離することができるため、光スイッチとして使用することが可能となる。なお、lが0、すなわち電極部と電気光学結晶の端部との距離が離れていない場合は、Hが0となる。この場合は、上述したような電極部とミラー面を同じ高さに形成したときと同等の条件となる。
【0184】
次に、本実施形態の光スイッチを実際に設計した場合の配置例について説明する。ここでは、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)を用いた場合の配置例と、ニオブ酸リチウム(LN)を用いた場合の配置例について説明する。
【0185】
まず、電気光学結晶にタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)を用いた場合について説明する。
【0186】
入射光のビームの、電極面の垂線方向における幅は20μmとされ、電極面に対して平行方向における幅は50μmとされている。入射光の波長λは640nmであり、その場合のタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)の屈折率nは2.284である。
【0187】
電極部は、幅wが1μmの10本の電極106からなり、各電極106の間隔は5μmである。電極は、深さ10μmの溝内に形成されている。
【0188】
電極部に外部電源111から5Vの電圧を印加した場合の屈折率変化量Δnは−0.0065となる。この条件において、電界印加によって生じる屈折率変化部の屈折率界面によって入射光が全反射するときの臨界角θmは、85.9°である。このときの電気光学結晶への入射光の入射角は9.3°である。
【0189】
直径20μmの入射光を、全て屈折率変化部の屈折率界面によって反射するためには、電極106の長さを283μm以上にする必要がある。このときの電極部の総電極間容量はおよそ319pFである。一方、空隙部を有しない比較構造において、電極106と同じ形状および大きさの電極を形成した場合は、およそ419pFである。このことから、本例によれば、電極間容量に関して、比較構造に対して、約8割に低容量化が可能であることがわかる。
【0190】
ミラー面は、一辺が約61μm程度の大きさとされ、電極と同じ高さで、透過光が出射される側に向けて形成される。
【0191】
次に、電気光学結晶にニオブ酸リチウム(LN)を用いた場合について説明する。
【0192】
入射光のビームの、電極面の垂線方向における幅は20μmとされ、電極面に対して平行方向における幅は50μmとされる。入射光の波長λは640nmであり、その場合のニオブ酸リチウム(LN)の屈折率nは2.284である。
【0193】
電極部は、幅wが1μmの14本の電極106からなり、各電極106の間隔は3μmである。電極は、深さ10μmの深い溝内に形成されている。
【0194】
電極部に外部電源111から200Vの電圧を印加した場合の屈折率変化量Δnは−0.0070である。この条件において、電界印加によって生じる屈折率変化部の屈折率界面によって入射光が全反射するときの臨界角θmは85.5°である。このときの電気光学結晶への入射光の入射角は10.3°である。
【0195】
直径20μmの入射光を、全て屈折率変化部の屈折率界面によって反射するためには、電極106の長さを256μm以上にする必要がある。このときの電極部の総電極間容量はおよそ1.25pFである。一方、空隙部を有しない比較構造において、電極106と同じ形状および大きさの電極を形成した場合は、およそ1.59pFである。このことから、本例によれば、電極間容量に関して、比較構造に対して、約8割に低容量化が可能であることがわかる。
【0196】
ミラー面は、一辺が約55μm程度の大きさとされ、電極と同じ高さで、透過光が出射される側に向けて形成される。
【0197】
上述した各実施形態の光スイッチにおいて、側壁と電極の間に、誘電率が電気光学結晶より小さい膜(例えば絶縁膜)を設けても良い。このような絶縁膜は、例えば次のようにして形成する。まず、図5の(a)〜(i)の工程を行った後、電極が形成された面全体を絶縁膜で覆う。そして、この絶縁膜で覆われた面を研磨して、電極の表面を露出させる。これにより、側壁と電極の間に絶縁膜を有する構造を得る。
【0198】
本発明の光スイッチは、光通信装置、画像表示装置や画像形成装置等に適用することができる。以下に、光スイッチの適用例として、画像表示装置および画像形成装置を説明する。
【0199】
[画像表示装置]
図21は、本発明の光スイッチを装備した画像表示装置の一例を示す模式図である。この画像表示装置1401は、レーザ光源1402〜1404、コリメータレンズ1405〜1407、反射ミラー1408、ダイクロイックミラー1409、1410、水平走査ミラー1411、垂直走査ミラー1412、および光スイッチ1414〜1416を有する。光スイッチ1414〜1416は、本発明の光スイッチである。
【0200】
レーザ光源1402からのレーザ光の進行方向に、コリメータレンズ1407、光スイッチ1416、および反射ミラー1408が順に配置されている。コリメータレンズ1407からの平行光束が光スイッチ1416に入射する。光スイッチ1416は、不図示の制御部から供給される制御信号に応じて動作する。制御信号がオンの期間(電圧供給期間)は、光スイッチ1416の電極部に電圧が印加され、屈折率変化領域が形成されるため、その屈折率変化領域にて入射光が反射される。この反射光は、反射ミラー1408へ向かう光路から外れる。制御信号がオフの期間(電圧供給停止期間)は、入射光は光スイッチ1416を透過して反射ミラー108へ向かう。
【0201】
レーザ光源1403からのレーザ光の進行方向に、コリメータレンズ1406、光スイッチ1415、およびダイクロイックミラー1410が順に配置されている。コリメータレンズ1406からの平行光束が光スイッチ1415に入射する。光スイッチ1415においても、光スイッチ1416と同様な動作が行われる。制御信号がオンの期間(電圧供給期間)は、屈折率変化領域にて入射光が反射され、その反射光は、ダイクロイックミラー1410へ向かう光路から外れる。制御信号がオフの期間(電圧供給停止期間)は、入射光は光スイッチ1415を透過してダイクロイックミラー1410へ向かう。
【0202】
レーザ光源1404からのレーザ光の進行方向に、コリメータレンズ1405、光スイッチ1414、およびダイクロイックミラー1409が順に配置されている。コリメータレンズ1405からの平行光束が光スイッチ1414に入射する。光スイッチ1414においても、光スイッチ1416と同様な動作が行われる。制御信号がオンの期間(電圧供給期間)は、屈折率変化領域にて入射光が反射され、その反射光は、ダイクロイックミラー1409へ向かう光路から外れる。制御信号がオフの期間(電圧供給停止期間)は、入射光は光スイッチ1414を透過してダイクロイックミラー1409へ向かう。
【0203】
ダイクロイックミラー1410は、光スイッチ1415からの光束と、反射ミラー1408にて反射された光束とが交差する位置に設けられている。ダイクロイックミラー1410は、光スイッチ1415からの光を反射し、反射ミラー1408からの光を透過するような波長選択特性を有している。
【0204】
ダイクロイックミラー1409は、光スイッチ1414からの光束とダイクロイックミラー1410からの光束とが交差する位置に設けられている。ダイクロイックミラー1409は、光スイッチ1414からの光を反射し、ダイクロイックミラー1410からの光を透過するような波長選択特性を有している。
【0205】
水平走査ミラー1411は、ダイクロイックミラー1409からの光束の進行方向に配置されており、不図示の制御部からの水平走査制御信号によりその動作が制御される。垂直走査ミラー1412は、水平走査ミラー1411からの光束の進行方向に配置されており、不図示の制御部からの垂直走査制御信号によりその動作が制御される。
【0206】
レーザ光源1402、1403、1404として、R、G、Bの3原色に対応する色のレーザ光を出射する光源を用いる。光スイッチ1414、1415、1416をオンオフ制御し、かつ、水平走査ミラー1411および垂直走査ミラー1412を制御することで、スクリーン1413上に、カラー画像を表示することができる。
【0207】
[画像形成装置]
次に、本発明の光スイッチを備える画像形成装置の構成について説明する。
【0208】
図22は、本発明の光スイッチを装備した画像形成装置の一例を示す模式図である。この画像形成装置1501は、レーザ光源1502、コリメータレンズ1503、反射ミラー1504、走査ミラー1505、および光スイッチ1506と、fθレンズ1507および感光体1508を有する。光スイッチ1506は、本発明の光スイッチである。
【0209】
レーザ光源1502からのレーザ光の進行方向に、コリメータレンズ1503、光スイッチ1506、および反射ミラー1504が順に配置されている。コリメータレンズ1503からの平行光束が光スイッチ1506に入射する。光スイッチ1506は、不図示の制御部から供給される制御信号に応じて動作する。制御信号がオンの期間(電圧供給期間)は、光スイッチ1506の電極部に電圧が印加され、屈折率変化領域が形成されるため、その屈折率変化領域にて入射光が反射される。この反射光は、反射ミラー1505へ向かう光路から外れる。制御信号がオフの期間(電圧供給停止期間)は、入射光は光スイッチ1506を透過して反射ミラー1505へ向かう。
【0210】
走査ミラー1505は、反射ミラー1505からの光束の進行方向に配置されており、不図示の制御部からの走査制御信号によりその動作が制御される。走査ミラー1505からの光は、fθレンズ1507を介して感光体1508に照射される。
【0211】
光スイッチ1506をオンオフ制御し、かつ、走査ミラー1505を制御することで、感光体1508上に画像を形成するができる。
【0212】
また、感光体1508の直前に挿入したfθレンズ1507を使用せずに、スキャンした画像をそのまま感光体1508に投影させる装置として利用することも可能である。
【0213】
以上説明した第1から第3の実施形態の光スイッチおよびその光スイッチを利用したシステムは、本発明の一例であり、その構成や光スイッチの製造手順は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更することができる。
【0214】
本発明の一態様によれば、電気光学結晶と、同一平面上に配置された複数の電極からなる電極部とを有し、該電極部により発生した電界により上記電気光学結晶の一部の屈折率を変化させることによって、上記電気光学結晶に入射した入射光の透過と反射とを切り換える光スイッチであって、上記電気光学結晶は、上記電極部を構成する電極の間に、上記平面からの高さが該電極よりも高い側壁を有し、上記電気光学結晶の、少なくとも上記電極部からの電界が及ぶ領域が、光学的に均質な材料より形成されている。
【0215】
上記の光スイッチにおいて、上記電極部は、面積最大となる主断面が同一平面内に配置された複数の線状電極からなり、各線状電極の間に、上記側壁が形成されていてもよい。
【0216】
また、上記複数の線状電極は、同じ膜厚を有し、平行かつ等間隔に配置されてもよい。
【0217】
さらに、上記電気光学結晶は、上記側壁により仕切られた複数の溝を有し、各溝に上記電極部を構成する電極がそれぞれ形成されてもよい。
【0218】
さらに、上記電気光学結晶中の、上記電極部からの電界により屈折率が変化した領域と該領域の周辺の領域との屈折率界面における、全反射の条件とされる臨界角をθm、上記入射光の上記平面の垂線方向とビームの進行方向とを含む平面内におけるビーム径をr、上記入射光の電極の水平方向における径をwとするとき、上記電極部を構成する電極の長さLと電極部の幅Wが
L≧r/cosθm
W≧w
で与えられてもよい。
【0219】
さらに、上記電気光学結晶は、上記側壁により仕切られた空隙部を有し、該空隙部毎に、上記電極部を構成する電極が形成されており、該電極の一部が上記空隙部内に露出してもよい。
【0220】
さらに、上記空隙部内が、減圧された状態または空気で満された状態であってもよい。
【0221】
さらに、上記電極部を構成する電極は、誘電率が上記電気光学結晶よりも小さな物質に接触していてもよい。
【0222】
さらに、上記物質の熱伝導率が上記電気光学結晶よりも高くてもよい。
【0223】
さらに、上記電極部は、上記電気光学結晶中の、上記入射光が透過する光路上に複数配置されてもよい。
【0224】
さらに、上記電気光学結晶の一方の端部に入射面が形成され、上記一方の端部と対向する他方の端部に出射面が形成され、上記入射面および出射面はそれぞれ上記平面と直交し、上記入射面の上記入射光が入射される領域および上記出射面の上記電極部を透過した光が出射される領域の、上記平面の垂線方向における長さがそれぞれ、上記入射光の上記垂線方向における長さ以上であってもよい。
【0225】
さらに、上記電気光学結晶の一方の端部に入射面が形成され、上記一方の端部と対向する他方の端部に出射面が形成され、上記入射面および出射面はそれぞれ、上記平面と直交し、上記入射面の上記入射光が入射される領域の、上記平面に垂線方向における長さが上記入射光の上記垂線方向における長さの半分以上とされ、上記他方の端部に、上記平面と平行にミラー面が形成されてもよい。
【0226】
さらに、上記電気光学結晶の入射光の射出面側の端部から電極部の射出面側の端部までの長さをl、電極部が形成されている面から、前記ミラー面が形成されている面までの高さをH、屈折率界面での臨界角をθmとするとき、
H≧l/tanθm
の条件を満たすように構成してもよい。
【0227】
本発明の一態様である光スイッチの製造方法においては、光スイッチを構成する複数の溝、複数の電極およびミラー面を同一工程で基板に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0228】
【図1A】本発明の第1の実施形態である光スイッチの構成を示す模式図である。
【図1B】図1Aに示す光スイッチを出射面側から見た場合の断面図である。
【図1C】図1Aに示す光スイッチにおける屈折率変化を説明するための模式図である。
【図2】図1Aに示す光スイッチにおける、印加電圧に対する屈折率および光パワーの変化を説明するための図である。
【図3】図1Aに示す光スイッチにおける電極間隔と電極間に発生する電界強度の関係を示す特性図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の光スイッチの変形例を示す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の光スイッチの電極形成方法を説明するための図であって、(a)〜(j)は断面工程図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の光スイッチの別の電極形成方法を説明するための図であって、(a)および(b)は断面工程図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の光スイッチのさらに別の電極形成方法を説明するための図であって、(a)〜(c)は断面工程図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の光スイッチの他の電極形成方法を説明するための図である。
【図9A】本発明の第1の実施形態の光スイッチの変形例であるマルチ電極構造を示す模式図である。
【図9B】図9Aに示す光スイッチを出射面側から見た場合の断面図である。
【図9C】図9Aに示す光スイッチにおける屈折率変化を説明するための模式図である。
【図10A】本発明の第1の実施形態の光スイッチの変形例である別のマルチ電極構造を示す模式図である。
【図10B】図10Aに示す光スイッチを側面から見た場合の断面図である。
【図11A】本発明の第1の実施形態の光スイッチの変形例であるマルチ電極構造を製造する方法を説明するための図である。
【図11B】本発明の第1の実施形態の光スイッチの変形例である他のマルチ電極構造を製造する方法を説明するための図である。
【図12A】本発明の第2の実施形態である光スイッチの構成を示す模式図である。
【図12B】図12Aに示す光スイッチを出射面側から見た場合の断面図である。
【図12C】図12Aに示す光スイッチにおける屈折率変化を説明するための模式図である。
【図13A】図12Aに示す光スイッチの動作を説明するための模式図である。
【図13B】図12Aに示す光スイッチの動作を説明するための模式図である。
【図14】図12Aに示す光スイッチの比較例を示す模式図である。
【図15】本発明の第2の実施形態である光スイッチの変形例を示す模式図である。
【図16A】本発明の第2の実施形態の光スイッチの変形例であるマルチ電極構造を示す模式図である。
【図16B】図16Aに示すマルチ電極構造の光スイッチを出射面側から見た場合の断面図である。
【図17A】本発明の第2の実施形態の光スイッチの変形例である他のマルチ電極構造を示す模式図である。
【図17B】図17Aに示すマルチ電極構造の光スイッチを出射面側から見た場合の断面図である。
【図18】本発明の第2の実施形態の光スイッチの電極形成方法を説明するための図であって、(a)〜(h)は断面工程図である。
【図19A】本発明の第3の実施形態である光スイッチの構成を示す模式図である。
【図19B】図19Aに示す光スイッチを出射面側から見た場合の断面図である。
【図19C】図19Aに示す光スイッチにおける屈折率変化を説明するための模式図である。
【図20A】図19Aに示す光スイッチの動作を説明するための模式図である。
【図20B】図19Aに示す光スイッチの動作を説明するための模式図である。
【図21】本発明の光スイッチを装備した画像表示装置の一例を示す模式図である。
【図22】本発明の光スイッチを装備した画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図23】特許文献1に記載の光スイッチの構成を示す模式図である。
【図24】特許文献2に記載の光スイッチの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0229】
101 入射光
102 透過光
103 反射光
104、105 電気光学結晶
106 電極
107 電極部
108 空隙部
109 光透過部
110 側壁
111 外部電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学結晶と、同一平面上に配置された複数の電極からなる電極部とを有し、該電極部により発生した電界により前記電気光学結晶の一部の屈折率を変化させることによって、前記電気光学結晶に入射した入射光の透過と反射とを切り換える光スイッチであって、
前記電気光学結晶は、前記電極部を構成する電極の間に、前記平面からの高さが該電極よりも高い側壁を有し、前記電気光学結晶の、少なくとも前記電極部からの電界が及ぶ領域が、光学的に均質な材料より形成されている、光スイッチ。
【請求項2】
前記電極部は、面積最大となる主断面が同一平面内に配置された複数の線状電極からなり、各線状電極の間に、前記側壁が形成されている、請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項3】
前記複数の線状電極は、同じ膜厚を有し、平行かつ等間隔に配置されている、請求項2に記載の光スイッチ。
【請求項4】
前記電気光学結晶は、前記側壁により仕切られた複数の溝を有し、各溝に前記電極部を構成する電極がそれぞれ形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の光スイッチ。
【請求項5】
前記電気光学結晶中の、前記電極部からの電界により屈折率が変化した領域と該領域の周辺の領域との屈折率界面における、全反射の条件とされる臨界角をθm、前記入射光の前記平面の垂線方向と前記入射光の進行方向とを含む平面内における径をr、前記入射光の前記電極の水平方向における径をwとするとき、前記電極部を構成する電極の長さLと電極部の幅Wが
L≧r/cosθm
W≧w
で与えられる、請求項1から4のいずれか1項に記載の光スイッチ。
【請求項6】
前記電気光学結晶は、前記側壁により仕切られた空隙部を有し、該空隙部毎に、前記電極部を構成する電極が形成されており、該電極の一部が前記空隙部内に露出している、請求項1から5のいずれか1項に記載の光スイッチ。
【請求項7】
前記空隙部内が、減圧された状態または空気で満された状態である、請求項6に記載の光スイッチ。
【請求項8】
前記電極部を構成する電極は、誘電率が前記電気光学結晶よりも小さな物質に接触している、請求項1から6のいずれか1項に記載の光スイッチ。
【請求項9】
前記物質の熱伝導率が前記電気光学結晶よりも高い、請求項8に記載の光スイッチ。
【請求項10】
前記電極部は、前記電気光学結晶中の、前記入射光が透過する光路上に複数配置されている、請求項1から9のいずれか1項に記載の光スイッチ。
【請求項11】
前記電気光学結晶の一方の端部に入射面が形成され、前記一方の端部と対向する他方の端部に出射面が形成され、前記入射面および出射面はそれぞれ前記平面と直交し、前記入射面の前記入射光が入射される領域および前記出射面の前記電極部を透過した光が出射される領域の、前記平面の垂線方向における長さがそれぞれ、前記入射光の前記垂線方向における長さ以上である、請求項1から10のいずれか1項に記載の光スイッチ。
【請求項12】
前記電気光学結晶の一方の端部に入射面が形成され、前記一方の端部と対向する他方の端部に出射面が形成され、前記入射面および出射面はそれぞれ、前記平面と直交し、前記入射面の前記入射光が入射される領域の、前記平面に垂線方向における長さが前記入射光の前記垂線方向における長さの半分以上とされ、前記他方の端部に、前記平面に平行にミラー面が形成されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の光スイッチ。
【請求項13】
前記電気光学結晶の入射光の射出面側の端部から電極部の射出面側の端部までの長さをl、電極部が形成されている面から、前記ミラー面が形成されている面までの高さをH、屈折率界面での臨界角をθmとするとき、
H≧l/tanθm
の条件を満たす請求項12に記載の光スイッチ。
【請求項14】
請求項12または13に記載の光スイッチの製造方法であって、
前記光スイッチを構成する前記複数の溝、複数の電極およびミラー面を同一工程で基板に形成する光スイッチの製造方法。
【請求項15】
光源と、
前記光源からの光を変調する請求項1から13のいずれかに記載の光スイッチと、
前記光スイッチからの変調された光ビームで外部スクリーン上を走査する走査手段と、
外部からの制御信号に応じて前記光スイッチにおける変調動作を制御する制御部とを有する、画像表示装置。
【請求項16】
光源と、
感光体と、
前記光源からの光を変調する請求項1から13のいずれかに記載の光スイッチと、
前記光スイッチからの変調された光ビームで前記感光体上を走査する走査手段と、
外部からの制御信号に応じて前記光スイッチにおける変調動作を制御する制御部とを有する、画像形成装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−96989(P2010−96989A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267686(P2008−267686)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】