説明

光スイッチおよび光スイッチを利用した光波形モニタ装置

【課題】高いスイッチング効率で且つ十分に広い波長範囲に渡って高速スイッチングを実現する技術を提供する。
【解決手段】信号光の偏光方向は、偏光制御器11により、偏光子15の偏光主軸と直交するように制御される。制御光パルス生成部12は、信号光と異なる波長を持った制御光で制御光パルスを生成する。非線形光ファイバ14には、信号光および制御光パルスが入力される。非線形光ファイバ14において、制御光パルスと時間的に重複する領域の信号光は、ほぼその制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅される。制御光パルスと時間的に重複する領域の信号光が偏光子15を通過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号の一部を抽出する技術に係わり、特に、光パルス列が時間多重された光信号あるいはその一部を抽出する方法、その方法を利用する光スイッチ、およびその光スイッチを利用する光サンプリングオシロスコープに係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の大容量化および長距離通信の必要性などに伴って、光技術を利用したデバイスあるいはシステムが広く普及してきている。ここで、光パルス列から構成される光信号の一部を抽出する光スイッチは、1つの中核技術として研究および開発が進められている。そして、光パルス列から構成される光信号をスイッチする従来の技術としては、下記の方式が知られている。
【0003】
(1)受信した光信号をいったん電気信号に変換してスイッチし、その後その電気信号を光変調器またはレーザー等を用いて光信号に変換する技術。なお、この構成は、しばしばOE/EO型と呼ばれている。
【0004】
(2)LiNbO3変調器やEA(Electro-Absorption)変調器等の光変調器において、所望のチャネルに同期した電気信号でこれらの変調器を動作させることにより、そのチャネルをスイッチする技術。
【0005】
(3)電気信号を介さずに、すべて光レベルで処理する技術。具体的には、下記の方式が知られている。
(3a)2つのアームを通過する光の位相差がπになるように設定されたマッハツェンダー干渉器を利用する方式
(3b)四光波混合(FWM:Four Wave Mixing)あるいは三光波混合(TWM:Three Wave Mixing )等の非線形光波ミキシングを利用する方式
(3c)自己位相変調(SPM:Self Phase Modulation )あるいは相互位相変調(XPM:Cross Phase Modulation)等の光Kerr効果を利用する技術
(3d)相互利得変調(XGM:Cross Gain Modulation )あるいは相互吸収変調(XAM:Cross Absorption Modulation )等の利得飽和効果を利用する技術。
【0006】
なお、これらの技術に関連する特許文献としては、例えば、下記のものが存在する。また、下記の非特許文献1、2には、入力信号光を電気信号に変換することなく、3R再生を行うための技術が記載されている。この3R技術は、入力信号光およびその入力信号光から再生されたクロック光を、高非線形ファイバを含む光ゲート回路に導くことにより、信号光のジッタ等に依存しない良好な波形を持った再生信号光を出力するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−98464号公報
【特許文献2】特許3494661号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】S. Watanabe, R. Ludwig, F. Futami, C. Schubert, S. Ferber, C. Boerner, C. Schmidt-Langhorst, J. Berger and H. G. Weber, “Ultrafast All-Optical 3R-Regeneration”, IEICE Trans. Election, Vol.E87-C, No.7, July 2004
【非特許文献2】渡辺茂樹、「光領域での信号再生技術」、光学、第32巻、1号、10〜15ページ、2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来の技術には、下記の課題がある。すなわち、OE/EO型は、10Gbpsまでは既に実用化されており、現在、40Gbpsの実用化に向けて研究開発が進められている。しかし、ビットレート毎に電子回路を用意する必要があることに加え、エレクトロニクスの動作速度限界により、さらに高速の信号への適用には限界がある。なお、駆動信号または制御信号として電気信号が使用される上記(2)の技術も、動作速度については同様の問題を有する。
【0010】
上記(3)の技術は、電気信号を利用しないので動作速度の問題は解消されるが、160Gbps以上の超高速信号に適用する場合には、スイッチング時に通常10〜30デシベルのロスが発生する、或いはスイッチング可能な波長帯域が狭い、等の課題がある。ここで、スイッチング効率が低下すると、光S/N比が低下し、信号品質が劣化する。また、動作帯域が狭くなると、波長の異なる信号光に対して個別に光スイッチを設ける必要が生じる。
【0011】
本発明の目的は、光信号を広い波長範囲に渡って高いスイッチング効率でスイッチングする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光スイッチは、信号光の偏光方向を制御する第1の偏光制御器と、上記第1の偏光制御器により偏光方向が制御された信号光が入力される非線形光学媒質と、上記非線形光学媒質の出力側に設けられ、上記非線形光学媒質から出力される信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子、を有する。そして、上記信号光は、上記非線形光学媒質において制御光パルスによりほぼその制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅される。或いは、上記信号光は、上記非線形光学媒質において制御光パルスにより発生する非線形効果によりほぼその制御光パルスの偏光方向に光増幅されるようにしてもよい。
【0013】
制御光パルスが存在しないときは、非線形光学媒質において信号光の偏光方向は変化しない。よって、このとき、信号光は、偏光子により完全に遮断される。一方、制御光パルスが存在するときは、非線形光学媒質において、四光波混合によりその信号光は制御光パルスの偏光とほぼ同じ方向の偏光に光パラメトリック増幅される。また、制御光パルスが存在するときは、非線形光学媒質において相互位相変調により信号光の偏光方向が回転すると共に、四光波混合によりその信号光は光パラメトリック増幅される。よって、光パラメトリック増幅された信号光の少なくとも一部の成分が偏光子を通過する。
【0014】
上述の光スイッチにおいて、信号光の偏光方向と制御光パルスの偏光方向との間の角度は、約45度に設定してもよい。この構成によれば、良好な偏光回転を得ることが出来ると共に、偏光子における損失を抑えることが出来る。
【0015】
また、上記非線形光学媒質として光ファイバを使用し、その平均零分散波長が上記制御光の波長と一致または略一致するようにしてもよい。この構成によれば、四光波混合により光パラメトリック増幅の効率が良好である。
【0016】
さらに、上記第1の偏光制御器の前段に信号光のパルスのピークを平坦化する波形整形器を設けるようにしてもよい。あるいは、制御光パルスの時間幅を信号光のパルスの時間幅よりも短くするようにしてもよい。これらの構成を導入すれば、信号光が伝送する信号が時間的にゆらいでいても、クロック信号として使用される制御光パルスによりその信号のタイミングが再生される。
【0017】
なお、本発明の光スイッチは、強度変調信号光だけでなく、位相変調信号光または周波数変調信号光であっても、増幅しながらスイッチすることができる。この場合、変調信号光は、RZ信号であることが望ましい。
【0018】
また、入力信号光を互いに直交する1組の偏光信号に分離し、それらをそれぞれ本発明に光スイッチでスイッチした後に合成する構成を導入すれば、入力信号の偏光状態を制御する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、使用可能な波長範囲が広く且つ十分に高い効率で光信号のスイッチングが可能になる。さらに、これにより、良好な光S/N比が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の光スイッチの基本構成を示す図である。
【図2】信号光および制御光パルスの一例を示す図である。
【図3】制御光パルスを生成する方法の一例である。
【図4】光Kerrスイッチの動作原理を説明する図である。
【図5】光Kerrスイッチの動作を模式的に示す図である。
【図6】本発明の光スイッチによるスイッチングを説明する図である。
【図7】本発明の光スイッチおよび既存の光Kerrスイッチの動作領域を説明する図である。
【図8】本発明の光スイッチを利用して光2R再生を行う実施例である。
【図9】図8に示す光2R再生について説明する図である。
【図10】光2R再生の他の実施形態である。
【図11】図10に示す光2R再生において生成される制御光パルスについて説明する図である。
【図12】光スイッチが受信装置において使用される実施例を示す図である。
【図13】光スイッチが中継ノードにおいて使用される実施例を示す図である。
【図14】本発明の光スイッチを光中継器において使用する光伝送システムを示す図である。
【図15】消光比が改善される様子を示す図である。
【図16】平坦化された制御光パルスを利用する光スイッチの実施例である。
【図17】光スイッチが光サンプリングオシロスコープにおいて使用される実施例を示す図である。
【図18】光パルスを利用して被測定物を観察する方法を示す図である。
【図19】本発明の光スイッチを利用した材料分析装置の実施例である。
【図20】制御光の波長配置の一例を示す図である。
【図21】信号光および制御光の波長配置の一例を示す図である。
【図22】制御光パルスの波長を変換する機能を備えた光スイッチの構成を示す図である。
【図23】四光波混合による波長変換について説明する図である。
【図24】光ファイバ内の分散補償の一例を示す図である。
【図25】本発明に係る光波形モニタ装置が使用される光通信システムを示す図である。
【図26】本発明を非線形光ループミラーに適用した例を示す図である。
【図27】本発明が適用される干渉計を示す図である。
【図28】位相変調された信号光および周波数変調された信号光を示す図である。
【図29】QPSKについて説明する図である。
【図30】(a)は、DPSK信号光を復調する復調回路の実施例、(b)は、FSK信号光を復調する復調回路の実施例である。
【図31】変調信号光をスイッチする光スイッチの実施例である。
【図32】変調信号光をスイッチする光スイッチの他の実施例である。
【図33】本発明の光スイッチを利用した光DEMUXの実施例である。
【図34】位相変調信号光または周波数変調信号光を強度変調信号に変換した後にスイッチする光スイッチの実施例である。
【図35】位相変調信号光または周波数変調信号光をモニタする光サンプリングオシロスコープの実施例である。
【図36】偏波ダイバーシティを利用した光スイッチの実施例(その1)である。
【図37】図36に示す光スイッチの動作を説明する図である。
【図38】偏波ダイバーシティを利用した光スイッチの実施例(その2)である。
【図39】信号光および制御光の偏光を制御する制御系について説明する図である。
【図40】本発明の光スイッチの特性を調べるためのシステム構成を示す図である。
【図41】制御パルスのパワーを変化させたときのスイッチング利得を示す図である。
【図42】データ信号の波長を変化させたときのスイッチング利得を示す図である。
【図43】分離された信号の受信パワーを変化させたときのBER測定値を示す図である。
【図44】本発明の光スイッチを利用して光サンプリングされた信号のアイパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の光スイッチ1の基本構成を示す図である。図1において、偏光制御器(PC:Polarization Controller )11は、入力される信号光の偏光方向を制御する。すなわち、信号光は、偏光制御器11によって所定の方向に偏光させられる。ここで、信号光の波長は「λs 」であるものとする。また、信号光により伝搬(または、搬送)される信号のビットレートは、特に限定されるものではない。
【0022】
制御光パルス生成部12は、波長λp を有する制御光を使用して制御光パルスを生成する。ここで、信号光の波長λs 及び制御光の波長λp は、適切に分離されている必要があるが、その波長差は特に限定されるものではない。また、波長λp は、波長λs より大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0023】
図2は、信号光および制御光パルスの一例を示す図である。ここでは、信号光は、信号s1、s2、s3、...を搬送するものとする。制御光パルスは、信号光により伝搬される信号と同期して生成される。図2に示す例では、制御光パルスの周波数は、信号光により伝搬される信号のビットレートの4分の一である。そして、信号s1および制御光パルスp1のタイミングが互いに一致しており、また、信号s5および制御光パルスp2のタイミングが互いに一致している。
【0024】
信号光により伝搬される信号に制御光パルスを同期させるためには、特に限定されるものではないが、例えば、図3に示す構成が考えられる。即ち、光分岐デバイス21は、信号光の一部を分岐して制御光パルス生成部12に導く。なお、信号光の大部分は、偏光制御器11に導かれる。制御光パルス生成部12は、クロック再生部22を備え、信号光により伝搬される信号に同期するクロックを再生する。ここで、クロック再生部22は、例えば、PLL回路を含んで構成される。また、入力された信号光をすべて光によりクロックを再生してもよく、再生したクロック信号のパルス幅を拡大してもよい。このように光信号からすべて光を用いてクロックを再生する技術は、例えば、特開2001−249371号公報に記載されている。そして、制御光パルス生成部12は、その再生したクロックを利用して制御光パルスを生成する。このとき、例えば、4クロックに対して1つのパルスを生成すれば、図2に示す制御光パルスp1、p2が得られる。
【0025】
偏光制御器13は、制御光パルスの偏光方向を制御する。ここで、制御光パルスの偏光方向は、信号光の偏光方向に対して所定の角度に設定される。好ましくは、制御光パルスの偏光方向は、信号光の偏光方向と制御光パルスの偏光方向との間の角度が40〜50度(例えば、45度)になるように設定される。
【0026】
非線形光ファイバ14には、信号光および制御光パルスが合波されて入力される。そうすると、非線形光ファイバ14において、相互位相変調により信号光の偏光方向が回転すると共に、四光波混合による光パラメトリック増幅で信号光が増幅される。すなわち、後述する図6(c)に示すように、四光波混合による光パラメトリック増幅で信号光が主に制御光パルスの偏光方向に増幅される。ただし、偏光回転および光パラメトリック増幅は、信号光全体に対して生じるのではなく、制御光パルスと時間的に重複する時間領域でのみ生じる。例えば、図2に示す例では、信号s1およびs5に対してのみ偏光回転および光パラメトリック増幅が生じる。すなわち、信号s2〜s4、s6、s7については、偏光方向は変化しない。
【0027】
なお、光パラメトリック増幅について上述したが、信号光の波長λs 及び制御光の波長λp は、互いに異なっており、その差は非線形効果による光増幅(ラマン増幅やブルリアン増幅)が行われるように波長λp 、波長λs を設定することもできる。そうすれば、非線形効果によるラマン増幅やブルリアン増幅を行うこともできる。また、波長λp とは各々少し異なる波長λp2〜λpnをn個設けることにより広帯域のラマン増幅を行うこともできる。
【0028】
偏光子15は、例えば、偏光ビームスプリッタPBS、複屈折性の光学結晶等であり、その偏光主軸成分の光を通過させる。ここで、偏光子15の偏光主軸は、信号光の偏光方向と直交するように設定される。換言すれば、偏光制御器11は、偏光子15の偏光主軸と直交するように信号光の偏光方向を制御する。
【0029】
光帯域通過フィルタ(BPF)16は、信号光の波長(ここでは、λs )のみを通過させ、他の波長の光を遮断する。即ち、波長λp を持った制御光は遮断される。また、不図示の光アンプ等で発生する自然放出(ASE:Amplified Spontaneous Emission)光のうち、上記光BPFの透過帯域外の成分も除去される。なお、制御光の波長が信号光の波長から大きく離れている場合、或いは、偏光子15を通過する信号光のパワーが自然放出光と比較して十分に大きい場合などには、光帯域通過フィルタ16は設けなくてもよい。
【0030】
上述のように、信号光の偏光方向は、偏光子15の偏光主軸と直交している。よって、制御光パルスが存在しないときは、非線形光ファイバ14において信号光の偏光方向は変化しないので、信号光は偏光子15により完全に遮断される。例えば、図2に示す例では、信号s2〜s4、s6、s7は、偏光子15により遮断される。ところが、非線形光ファイバ14内で信号光および制御光パルスが同時に存在するときは、非線形光ファイバ14において相互位相変調により信号光の偏光方向が回転する。すなわち、信号光は、非線形光ファイバ14において、主に制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅される。そうすると、非線形光ファイバ14から出力される信号光は、偏光子15の偏光主軸方向の成分を有するようになる。この結果、信号光の一部が偏光子15を通過することになる。例えば、図2に示す例では、信号s1、s5は、偏光子15を通過する。
【0031】
このように、光スイッチ1によれば、信号光のうちの制御光パルスと時間的に重複する部分が選択的に抽出されて出力される。このとき、出力される信号光の波長は、入力信号光の波長と同じである。
【0032】
次に、本発明の光スイッチの動作原理を詳細に説明する。ただし、本発明の光スイッチの構成および動作のうち制御パルスの存在しない成分(スイッチ光のゼロ成分)を遮断する原理は、光Kerr効果を利用する光Kerrスイッチの動作と共通する点がある。なお、光Kerrスイッチの動作については、たとえば、下記の文献に詳しく記載されている。
”NONLINEAR FIBER OPTICS” page 180 -184, Govind P. Agrawal, ACADEMIC PRESS, INC.
従来の光Kerrスイッチは、図1に示す光スイッチ1と同様に、非線形光ファイバおよび偏光子を備えており、その非線形光ファイバに信号光および制御光パルスが入力される。また、信号光の偏光方向は、偏光子の偏光主軸と直交するように設定される。
【0033】
光Kerrスイッチにおいて、制御光パルスのパワーがゼロであれば、図4(a)に示すように、非線形光ファイバにおいて信号光の偏光方向は回転しない。すなわち、その非線形光ファイバから出力される信号光の偏光方向は、偏光子の偏光主軸と直交している。よって、この場合、信号光は偏光子により完全に遮断される。
【0034】
ところが、信号光と制御光パルスとが時間的に重複した状態でその制御光パルスのパワーを大きくしていくと、相互位相変調(XPM)により制御光パルスの強度に比例した信号光の位相がシフトし、図4(a)に示すように、信号光の偏光方向が回転する。すなわち、後述する図5に示すように、非線形光ファイバを信号光が進むにつれて偏光状態が変化し、偏光主軸の方向が回転する。これにより、図4(b)に示すように、信号光の一部が偏光子を通過するようになる。そして、制御光パルスのパワーを調整することにより信号光の位相が非線形光ファイバへの入力状態に対してπだけ変化するようになると、その信号光の偏光方向は初期状態から90度回転することになる。すなわち、90度回転した直線偏光となる。そうすると、信号光の偏光方向および偏光子の偏光主軸が互いに一致し、信号光のほぼ100パーセントがその偏光子を通過することになる。このとき、図4(b)に示すように、出力される信号光のパワーが最大になる。なお、制御光パルスのパワーをさらに大きくすると、信号光の偏光方向はさらに回転し、出力される信号光のパワーは徐々に小さくなっていく。すなわち、図5に示すように、信号光の偏光状態はさらに変化し、偏光主軸方向は回転する。このように、光Kerrスイッチにおいては、出力される信号光のパワーは、制御光パルスのパワーに対してサインカーブに近い特性で変化する。
【0035】
したがって、光Kerrスイッチでは、信号光を抽出するための制御光パルスは、一般に、非線形光ファイバにおいて信号光の偏光方向を90度だけ回転させるようなパワーを有するように生成される。ただし、光Kerrスイッチにおいては、その動作原理から明らかなように、信号光の入力パワーよりも大きなパワーの出力光を得ることは出来ない。すなわち、スイッチング効率の改善には、限界があった。このため、光Kerrスイッチは、しばしば、別個に用意された光増幅器と共に使用される。さらに、上記動作原理より明らかなように、従来の光Kerrスイッチにおいては、非線形位相シフトがπになるときにのみ最適なスイッチング動作が得られるため、制御光のパワーをかなり高精度に設定する必要がある。
【0036】
図5は、光Kerrスイッチの動作を模式的に示す図である。信号光の偏光方向は、非線形光ファイバにおいて制御光パルスとの相互位相変調により回転する。制御光パルスのパワーは、信号光の偏光方向が非線形光ファイバにおいて90度だけ回転するように設定される。これにより、制御光パルスと時間的に重複する領域の信号光が、最も効率よく偏光子を通過する。
【0037】
本発明の光スイッチは、上述の相互位相変調による偏光回転も有効利用しつつ、制御光パルスを励起光として使用することにより、図1に示す非線形光ファイバ14において四光波混合により生じる光パラメトリック増幅効果を利用して、高いスイッチング効率を有する光スイッチを実現する。本発明では、従来の光Kerrスイッチにおいて必要とされる制御光のピンポイント制御は不要となる。なお、ここで、四光波混合とは、物質(ここでは、非線形光ファイバ14)がその非線形分極を介して仮想的に2つの光子を吸収し、エネルギーを保存するように2つの光子を放出する現象である。そして、大きなパワーの励起光が供給されている物質にその励起光の波長と異なる波長の信号光を入力すると、上述の放出された光子によってその信号光が増幅(光パラメトリック増幅)される。
【0038】
本発明の光スイッチは、この光パラメトリック増幅を利用することにより、スイッチング効率が飛躍的に向上する。ここで、スイッチング効率とは、入力信号光パワーに対する出力信号光パワーの比を意味する。すなわち、本発明によれば、スイッチ後の信号光成分の出力パワーを飛躍的に増大させることが可能であり、これにより光S/N比の劣化が非常に少ない高性能の光スイッチが実現される。
【0039】
いま、光スイッチ1に用いる非線形光ファイバ14の長さを「L」、その損失を「α」とする。また、非線形光ファイバ14の入力信号光および出力信号光をそれぞれ「Es1」および「Es2」とする。さらに、四光波混合に対する位相整合条件が理想的な状態であるものとすると、スイッチング効率ηs は、下記(1)式で近似できる。
ηs ≡|Es2|2 /|Es1|2 =exp(−αL)・G ・・・(1)
ここで、「G」は光パラメトリック利得であり、下記(2)式で近似できる。

ここで、「Pp 」は、非線形光ファイバ14に入力される制御光パルスのピークパワーである。

は、非線形有効相互作用長であり、「{1−exp(−αL)}/α」で表される。「γ」は、非線形光ファイバの3次非線形係数であり、「ωn2 /cAeff 」で表される。なお、「c」「ω」「n2 」「Aeff 」は、それぞれ、光速、光角周波数、非線形屈折率、有効モード断面積を意味する。
【0040】
上記(1)式および(2)式から明らかなように、非線形光ファイバ14における信号光のスイッチング効率は、

が大きくなるとそれに伴って大きくなる。さらに、非線形光ファイバ14の特性および長さが決まれば、「γ」及び

が固定値となる。そうすると、スイッチング効率は、「Pp 」とともに大きくなることが分かる。すなわち、制御光パルスのピークパワーを大きくすると、光パラメトリック増幅により信号光のスイッチング効率が高くなる。
【0041】
光スイッチ1においては、信号光の偏光方向と制御光パルスの偏光方向との間の角度は、約45度に設定される。なお、信号光および制御光パルスの偏光方向は、それぞれ偏光制御器11、13により適切に設定される。
【0042】
ところで一般に、四光波混合(すなわち、光パラメトリック増幅)は、相互作用する光波の偏光方向が互いに一致しているときに発生効率が最大になり、それらの偏光方向が互いに直交しているときには殆ど発生しない。よって、信号光の偏光方向と制御光パルスの偏光方向との間の角度が約45度に設定されると、それらの方向が互いに一致しているときと比較して発生効率は大きく低下する。しかしながら、制御光パルスと同一方向の偏光成分を制御パルスと同一方向の偏光方向に光パラメトリック増幅し、この偏光方向の信号光成分として光スイッチされる。
【0043】
一方、信号光の偏光方向は、図4(a)を参照しながら説明したように、制御光のパワーが比較的小さい場合には、相互位相変調により制御光パルスのパワーに応じて回転する。そして、信号光の偏光方向の回転量が45度に近づくにつれて光パラメトリック利得による成分が増大してゆく。さらに、その回転量が約45度になると、信号光および制御光パルスの偏光方向が互いに一致し、光パラメトリック利得による成分が最大になる。このように、相互光位相変調による信号光の偏光状態の変化は、制御光パルスの強度に依存するものの、従来の光Kerrスイッチにおいて用いられてきた相互光位相変調についても、本発明の効果を阻害するものではない。
【0044】
ここで、非線形光ファイバ内での四光波混合による信号光の増幅(すなわち、光パラメトリック増幅)は、励起光として供給される制御光パルスによって信号光と同じ波長成分が新たに生成される現象と考えられる。また、本発明の光スイッチ1においては、非常に高いパワーの制御光パルスが非線形光ファイバ14に供給される。このため、非線形光ファイバ14から出力される信号光の大部分は、四光波混合により新たに生成された成分である。ところが、この四光波混合により新たに生成された信号光成分は、相互位相変調の影響を受けることがなく、相互位相変調により偏光方向が変化しない。すなわち、偏光回転を生じない。したがって、制御光パルスのパワーが非常に強い領域では、非線形光ファイバ14において光パラメトリック増幅された信号光の偏光方向は、その制御光パルスの偏光方向とほぼ同じ方向に固定される。したがって、本発明の非線形光ファイバによりスイッチされた信号光は、制御光パルスの偏光方向とほぼ一致した方向の偏光としてその非線形光ファイバから出力される。このスイッチングは、従来の光Kerrスイッチとは大きく異なっている。
【0045】
図6は、本発明の光スイッチによるスイッチングを説明する図である。尚、図6(a)および図6(b)に示す信号光に対応する矢印の方向および大きさは、その信号光の偏光方向および振幅を表している。また、信号光の偏光方向は、図6(a)に示すように、偏光子15の偏光主軸方向に対して直交している。さらに、図6(c)は、本発明の光スイッチによるスイッチング動作を模式的に示している。
【0046】
本発明では、制御光パルスによる光パラメトリック増幅により、非線形光ファイバの出力端において、信号光は、ほぼ制御光パルスの偏光方向に向いた直線偏光として出力される。
【0047】
制御光パルスがない期間は、非線形光ファイバ14において光パラメトリック増幅および相互位相変調は生じない。このため、非線形光ファイバ14から出力される信号光の偏光方向は、その入力端における偏光方向と同じである。すなわち、出力信号光の偏光方向は、偏光子15の偏光主軸方向に対して直交している。したがって、この場合、信号光は、偏光子15により完全に遮断される。
【0048】
一方、制御光パルスが与えられると、信号光は光パラメトリック増幅されるとともに、図4(a)を参照しながら説明したように、相互位相変調により信号光の偏光方向は回転する。ところが、本発明の光スイッチ1において使用する制御光パルスのパワーは非常に大きい(たとえば、制御光パルスのピークパワーは、数ワット程度)。このため、信号光は、四光波混合に起因する光パラメトリック増幅により増幅される。そして、上述したように、この光パラメトリック増幅の効率は、制御光パルスの偏光方向と信号光の偏光方向とが互いに一致したときに最大となる。また、特に制御光の偏光状態と一致した偏光状態の信号光に対して、四光波混合により新たに生成された信号光成分は、相互位相変調の影響を受けず、相互位相変調により偏光方向が変化しない。したがって、非線形光ファイバ14において光パラメトリック増幅された信号光の偏光方向は、図6(b)に示すように、制御光パルスの偏光方向とほぼ同じ方向に固定され、従来の光Kerrスイッチにように偏光方向が90度を超える角度まで回転することはない。
【0049】
ここで、非線形光ファイバ14の入力端における信号光の偏光方向と制御光パルスの偏光方向との間の角度は、約45度に設定されている。また、出力信号光の偏光方向と偏光子15の偏光主軸方向との間の角度も、約45度である。したがって、非線形光ファイバ14から出力される信号光のパワーの約50パーセント(=(1/√2)2 )が偏光子15を通過する。
【0050】
このように、本発明の光スイッチ1においては、信号光のパワーは、偏光子15を通過する際に約半分になる。しかし、信号光のパワーは、非線形光ファイバ14における光パラメトリック増幅により、偏光子における損失を十分に補償できるように増幅することが可能である。したがって、光スイッチ1から出力される信号光のパワーは、偏光子15において損失が発生するものの、入力信号光のパワーと比べて十分に大きく、スイッチング効率は大幅に改善される。ここで、従来の光Kerrスイッチのスイッチング効率は最大でも1であるので、本発明による効率の改善効果は顕著である。また、従来の四光波混合スイッチの場合のスイッチング効率は

であり、本発明の光スイッチはこれをも上回る。さらに、効率の改善以外にも、本発明は波長シフトを伴わないという点で、従来の四光波混合スイッチにない特性を有している。
【0051】
図7は、本発明の光スイッチおよび既存の光Kerrスイッチの動作領域を説明する図である。既存のKerrスイッチにおいては、入力信号光の偏光方向を90度回転させる程度の小さな制御光パルスが使用される。このため、光パラメトリック増幅は生じることはなく(或いは、ほとんど生じない)、信号光の偏光状態および偏光主軸方向は制御光パワーに依存して変化していく。また、出力信号光の最大パワーは入力信号光のパワーを超えることはない。すなわち、既存のKerrスイッチのスイッチング効率は、1以下である。
【0052】
これに対して、本発明の光スイッチ1においては、既存のKerrスイッチと比べて遥かに強いパワーの制御光パルスが使用される。このため、非線形光ファイバ14においては、四光波混合による光パラメトリック増幅が制御光パルスの偏光方向に生じ、制御光のパワーが比較的小さい領域では、相互位相変調による信号光の偏光が回転し、信号光の偏光方向が次第に制御光のそれに近づいていくにつれて、四光波混合による光パラメトリック増幅が生じ、信号光の偏光方向が制御光の偏光方向に近い状態で固定されると共に、出力信号光のパワーは制御光のパワーのおよそ二乗に比例して増加していき、入力信号光のパワーよりも大きくなる。すなわち、制御光パルスのピークパワーを適切に選択することにより、1以上のスイッチング効率が得られる。換言すれば、本発明の光スイッチ1は、光増幅器の機能を持つ光スイッチである。なお、従来の技術では、波長シフトを伴わない状態での光スイッチにおいて、光アンプ機能を持つものは存在しなかった。
【0053】
また、本発明の光スイッチ1においては、初期設定時の信号光の偏光状態が偏光子と直交している。このため、通常のスイッチでは波長変換なしでは実現できないが、本発明の光スイッチ1では、オフ信号(ゼロレベル)を非常に高い消光比で抑圧できる。即ち、光スイッチ1によれば、オン信号(1レベル)に対しては、光パラメトリック利得により入力信号光よりも高いレベルの信号を出力でき、オフ信号(ゼロレベル)に対しては、常に偏光子の消光比を用いた良好な抑圧効果を実現できる。よって、スイッチング後の信号光は、良好な消光比およびS/N比(あるいは、良好な信号再生効果)が得られる。
【0054】
さらに、本発明の光スイッチ1では、非線形光ファイバ内の相互位相変調および四光波混合を含む光Kerr(3次非線形光学)効果を利用するが、これらの非線形効果は、いずれもフェムト秒オーダーの応答速度を有する極めて高速な現象である。したがって、本発明は、ビットレートやパルス形状に依存しないトランスペアレントなスイッチング特性を有するとともに、テラbps レベルの超高速信号への適用が可能である。
【0055】
なお、上述の実施例では、信号光の偏光方向と制御光パルスの偏光方向との間の角度を約45度としたが、諸々の設定条件に応じて最も効率の高い他の角度で適宜調整することも可能である。ただし、上記角度は、実験およびシミュレーションにより、非線形光ファイバの入力端において約40度〜約50度であることが好適である。この角度が大きすぎると、四光波混合による光パラメトリック増幅や相互位相変調による信号光の偏光回転が起こりにくくなり好ましくない。また、この角度が小さすぎると、偏光子15における損失が大きくなり好ましくない。
【0056】
次に、光スイッチ1の実施形態について説明する。
図8は、本発明の光スイッチを利用して光2R再生を行う実施形態である。なお、ここで「光2R」とは、タイミング再生(Re-timing)および振幅再生(Re-amplification)をいう。
【0057】
図8において、主回路100は、図1に示す偏光制御器11、13、非線形光ファイバ14、偏光子15、光帯域通過フィルタ16に相当する。また、制御光パルス生成部12は、図3に示すクロック再生部22を備え、入力信号光から再生したクロックを利用して制御光パルスを生成する。
【0058】
入力信号光は、2分岐されて波形整形器101および制御光パルス生成部12に与えられる。波形整形器101は、図9(a)に示す信号光の波形を、図9(b)に示すようにそのピークが平坦な光パルスに変換する。そして、その光パルスが主回路100に入力される。一方、制御光パルス生成部12は、信号光が伝播する信号のビットレートに相当する基準周波数(あるいは、その基準周波数の整数倍または整数分の1)の制御光パルスを生成する。そして、主回路100は、この制御光パルスを利用して、波形整形器101によりその波形が整形された信号光パルスから信号を再生(光2R再生)する。
【0059】
ところが、信号のビットレートが高くなると(例えば、160Gb/s)、偏波分散や光増幅器により付加されるノイズ等の影響により、データパルスのタイミングゆらぎ(すなわち、ジッタ)が発生する。例えば、図9(a)に示す例では、周期T1、T2、T3が互いに異なっている。しかし、図8に示す光2R再生においては、このジッタが信号パルスの平坦領域の範囲内であれば、制御光パルスで再生されることによりジッタが抑圧される。即ち、図9(c)に示すように、周期T1、T2、T3はほぼ一定となる。また、主回路100における光パラメトリック増幅により、再生された信号光の振幅は十分に大きい。さらに、主回路100から出力される信号光の周波数(波長)は、入力信号光の周波数(波長)と同一である。
【0060】
なお、波形整形器101による波形整形は、例えば、非線形チャープを利用する方法、定偏波ファイバ中の2つの偏光主軸方向の群速度分散の差を利用する方法(上述した非特許文献1および2参照)、利得飽和アンプを利用する方法、光変調器を利用する方法、信号光をO/E変換した後に電気的な信号処理をする際にその信号処理を用いて光変調する方法などにより実現可能である。
【0061】
このように、本発明の光スイッチを利用して図8に示す光2R再生を行えば、時間軸方向のゆらぎが抑圧されるので、受信装置において偏波分散補償器などを不要とすることが可能である。
【0062】
図10は、光2R再生の他の実施形態である。図10において、制御光パルス生成部102は、基本的には、図1または図3に示した制御光パルス生成部12と同じである。ただし、制御光パルス生成部102は、図11に示すように、パルス幅の十分に小さな制御光パルスを生成する。すなわち、制御光パルス生成部102により生成される制御光パルスのパルス幅Wc は、ジッタの影響を受けない信号光パルスの半値幅Ws よりも小さい。
【0063】
このような制御光パルスを利用して光2R再生を行えば、図8〜図9を参照しながら説明した構成と同様に、時間方向のゆらぎを抑圧可能である。すなわち、光ファイバ伝送等において信号光に付加された時間ゆらぎ(例えば、偏波モード分散等によるゆらぎ)を抑圧可能である。よって、受信機あるいは光中継装置において上述の光2R再生を行うようにすれば、複雑な偏波モード分散補償器を利用することなく、偏波モード分散を抑圧して受信特性や伝送特性を向上させることができる。
【0064】
なお、信号光パルスよりも時間幅の狭い制御光パルスを生成する際に、制御光パルス生成部102において信号光のビットレートよりも低速の光クロックパルスを生成した後、この光クロックパルスを時間多重(OTDM)することにより所望の周波数の制御光パルスを生成するようにしてもよい。例えば、信号光のビットレートが160Gb/sであったときに、10GHzまたは40GHzの光クロックパルスを生成した後、これを多重化して160GHzの制御光パルスを生成するようにしてもよい。
【0065】
また、極めて狭いパルス幅のパルスを生成する技術は、モードロックレーザを利用する方法、EA(Electro-Absorption)変調器またはLN(LiNbO3)強度/位相変調器において再生光クロック信号を利用して変調を行う方法、再生した光パルスを線形チャープさせた後に光ファイバを用いてパルス圧縮する方法、ソリトン断熱圧縮効果を用いる方法、線形チャープした光パルスのスペクトルの一部を帯域光フィルタで抽出する方法、2次および3次非線形光学効果を利用する光スイッチを用いる方法、干渉器型光スイッチを用いる方法などにより実現される。
【0066】
図12は、光スイッチが通信システムの受信装置において使用される実施例を示す図である。ここでは、送信機31から送信される信号光は、時分割多重された複数のチャネルを搬送するものとする。たとえば、信号光によって伝搬される信号のビットレートは160Gbpsであり、4本の40Gbpsのチャネルが時分割多重されている。一方、受信機32は、信号光から所定のチャネルの信号を受信する。
【0067】
光スイッチ1は、信号光により伝搬される信号から、受信機32が受信すべきチャネルの信号を抽出する。すなわち、光スイッチ1はDEMUX装置として動作する。例えば、図2において、信号光により信号s1、s2、s3...が伝搬されており、受信機32が受信すべきチャネルとして信号s1、s5...が送信されているときは、光スイッチ1は、制御光パルスp1、p2...を非線形光ファイバ14に供給する。この結果、信号光から信号s1、s5...が抽出される。このとき、この抽出される信号は、光パラメトリック増幅されている。また、制御光パルスが生成されない期間は、光スイッチ1の出力は消光状態である。したがって、良好な消光比およびS/N比が実現される。
【0068】
図13(a)は、光スイッチが通信システムの中継ノードにおいて使用される実施例を示す図である。ここで、送信機31から送信される信号光は、図12で説明した信号光と同じであるものとする。光中継ノード41は、光分岐デバイス42を備え、光伝送路1を介して受信した信号光をそのまま光伝送路2に出力すると共に、その分岐光を光スイッチ1に導く。光スイッチ1は、信号光が伝搬する複数のチャネルの中の所定のチャネルを抽出して光伝送路3に導く。すなわち、光中継ノード41は、時分割多重されている複数のチャネルの中の所定のチャネルをドロップする。
【0069】
同様に、本発明により2つの光信号を時分割多重(OTDM)、或いは時間的な光ADD回路も実現可能である。この構成を図13(b)に示す。
光伝送路1を介して入力される信号光1は、本発明の光スイッチ1aに導かれる。光スイッチ1aには、信号光1により伝送される信号のビットレートと同じレートで且つオール1パターンの制御光パルスが与えられる。これにより、光スイッチ1aは、信号光1をそのまま増幅して出力する。一方、光伝送路2を介して入力される信号光2は、本発明の光スイッチ1bに導かれる。光スイッチ1bには、信号光2により伝送される信号の一部または全部を選択するための制御光パルスが与えられる。これにより、光スイッチ1bは、信号光2の一部または全部を増幅しながら選択して出力する。
【0070】
光スイッチ1a、1bの出力は、光カプラにより多重化されて光伝送路3に導かれる。これにより、信号光1および信号光2(または、その一部)を時分割多重した信号光3が得られる。なお、光スイッチ1a、1bと光カプラとの間に、信号光1、2の位相を合わせるための制御系を設けるようにしてもよい。
【0071】
図14は、本発明の光スイッチを光中継器において使用する光伝送システムを示す図である。ここでは、送信機31から送信される信号光が、光中継器33に設けられている光スイッチ1により増幅されて受信機32まで伝送されるものとする。なお、第1および第2の伝送路は、光ファイバであってもよいし、無線伝送路であってもよい。
【0072】
伝送路を介して伝播する光信号は、その伝送距離に応じて減衰し、図15(a)に示すように消光比が劣化している。また、信号光パルスはジッタを有している。
図14に示すシステムにおいて、光スイッチ1が図8または図10に示した光2R再生を行うようにすれば、上述したように、ジッタや偏波モード分散の影響を抑圧できる。また、光スイッチ1においては、制御光パルスが存在しない期間は、信号光はすべて遮断される。このため、伝送等による雑音付加や波形劣化により信号光が「OFF」であるときの光パワーが上昇してしまった場合であっても(図15(a)参照)、消光比の改善された信号光を再生することができる(図15(b)参照)。
【0073】
また、図8に示した光2R再生では、信号光パルスのピークを平坦化したが、図16に示すように、制御光パルスのピークを平坦化してもよい。このような構成とすれば、信号光のパルス幅や位相情報に影響を与えない増幅中継が可能である。また、この構成は、図12に示した光DEMUX、図13に示した光ADM、あるいは位相変調や周波数変調された信号光をスイッチする装置に有効である。ただし、制御光パルスは、図3に示すクロック再生部22により入力信号光から再生された光クロックを利用することにより、信号光と制御光パルスとが互いに同期していることが望ましい。
【0074】
図17は、光スイッチが光サンプリングオシロスコープにおいて使用される実施例を示す図である。ここで、観測対象の信号光により伝搬される信号のビットレートは「fs 」である。そして、この信号光が光スイッチ1に入力される。
【0075】
サンプリングパルス発生器51は、クロック再生器を備え、入力信号光の分岐光から基準クロック信号を再生する。この基準クロック信号の周波数(すなわち、サンプリングレート)は、「f’s 」である。そして、この基準クロック周波数とわずかに異なる周波数「f’s +Δfs (ただし、Δfs ≪f’s )」に同期した光パルス列を、パルス光源を用いて生成する。この光パルス列は、図1等を参照しながら説明した制御光パルスとして光スイッチ1に供給される。なお、光サンプリングオシロスコープにおいては、通常、電気回路を簡単にするために、低速のサンプリングレート「例えば、f’s =fs /N(N=1,2,...)」が使用される。このときN≧2の場合にはf’s である光信号の周波数をN分の1にすることができる。すなわち電気回路の処理速度を低速化することができ、電気回路の設計や製造を簡単にすることができる。またN=1に近づくほどサンプリング信号数が増えるのでより鮮明な波形情報を得ることができるが、高速の電気回路を必要とする。
【0076】
光スイッチ1は、制御光パルスのピークタイミング毎に、信号光の光強度に比例した光パルスを出力する。また、受光器52は、光スイッチ1からの出力される光パルスを順次電気信号に変換する。オシロスコープ53は、受光器52により得られる電気信号を時間方向にトレースすることにより、信号光により伝搬される信号の波形を検出する。このとき、入力信号と「N×f’s 」との周波数差が「Δfs 」なので、入力信号の変調速度よりも十分に遅いサンプリングレート「fs /N」を設定することにより、信号波形は、信号光によって伝搬される信号のビットレートに対して十分に遅い周期Δfs で検出される。オシロスコープの電子回路の動作速度限界を超える超高速パルスであっても、その波形を観測できる。また、光スィッチの利得により、信号光をより高い光強度で出力することが可能であり、感度の高い光サンプリングオシロスコープを実現可能である。なお、光サンプリングオシロスコープの動作については、例えば、特開2003−65857号公報または特開2004−214982号公報に記載されている。
【0077】
上述の光サンプリングオシロスコープは、超微細加工された素子の表面または内部構成を調べたり、各種材料を分析するために利用することができる。すなわち、図18に示すように、信号光パルスを被測定物に入力し、その反射光または透過光を観測すると、被測定物の内部状態の非一様性あるいは表面形状の歪に応じて、反射光または透過光のパルス波形が崩れることとなる。このとき、信号光パルスの時間幅が短いほど、反射光または透過光のパルス波形は崩れやすくなり、その結果、被測定物の非一様性または歪等が観測しやすくなる。
【0078】
図19は、本発明の光スイッチを利用した材料分析装置の実施例である。図19において、主回路61は、図17に示す光スイッチ1およびサンプリングパルス発生器51に相当する。また、O/E変換器62および解析装置63は、それぞれ図17に示す受光器52およびオシロスコープ53に相当する。
【0079】
この材料分析装置においては、上述した信号光として短パルスのプローブ光が使用される。そして、まず、このプローブ光を直接的に主回路61に入力することにより、その波形を観測する。続いて、このプローブ光を被測定物に入力し、そこから出力される測定光(反射光または透過光)を主回路61に入力することにより、その測定光の波形を観測する。そして、2つの波形を比較することで被測定物の表面または内部の状態を調べることができる。
【0080】
測定光は、反射光または透過光に限定されるものではなく、プローブ光を入力することにより被測定物が発光する場合には、その光を観測するようにしてもよい。この場合、非常に短時間に微弱な光を発光するような現象においても、光スイッチ1が提供する高い時間分解能および良好な光増幅特性により、この発光を高精度に観測できる。よって、本発明に係る材料分析装置は、被測定物の物理的特性の解析に大いに寄与する。
【0081】
なお、本発明を適用可能な波長は、光通信用の1.55μm帯はもとより、本発明に必要となる非線形光学効果が実現可能なすべての波長帯域から任意に使用できる。ここで、非線形媒質として光ファイバを用いる場合には、例えば、実現可能な波長帯域において単一モードファイバが使用される。また、光ファイバとしては、シリカ系ファイバに限定されるものではなく、フォトニック結晶ファイバまたはビスマス置換ファイバ等の非線形効果を高めた光ファイバが有効である。特に、フォトニック結晶ファイバを用いれば、波長分散の柔軟な設計が可能であり、可視光領域から0.8μm程度までの波長領域で非線形光ファイバが実現可能との報告例(M. Nakazawa et al., Technical Degest in CLEO2001)もあり、さらに、より短い波長領域も利用可能性がある。
【0082】
次に、本発明の光スイッチにおける波長配置、およびスイッチング波長の広帯域化について説明する。
本発明の光スイッチ1は、非線形光ファイバ内の相互位相変調による偏光回転および四光波混合による光パラメトリック増幅の双方を利用する。ここで、これらの非線形光学効果は、極めて高速かつ極めて広帯域に渡って得られる。よって、本発明によれば、光通信システム等で利用される波長帯域に配置されるすべての信号光に対してスイッチングを行うことができる。
【0083】
光スイッチ1の特性を向上させるためには、四光波混合の発生に有利な構成が必要である。ここで、四光波混合の発生は、非線形光ファイバの波長分散特性に強く依存する。また、非線形光ファイバに信号光および制御(励起)光が入射されると、四光波混合光(アイドラ光)が発生する。ここで、信号光および制御光の周波数をそれぞれ「fs 」および「fp 」とすると、アイドラ光の周波数は「2fp −fs 」になる。そして、四光波混合を効率よく発生させるためには、信号光とアイドラ光との間で位相整合がとれている必要がある。
【0084】
一般に、四光波混合による光パラメトリック増幅を効率的に発生させるためには、例えば、図20に示すように、制御(励起)光の波長を非線形光ファイバの零分散波長λ0 に一致させればよい。また、非線形光ファイバとして分散フラットファイバ(あるいは、波長分散の十分に小さいファイバ)を使用するようにしてもよい。ただし、非線形光ファイバの長さ、及び信号光と制御光との波長差によっては、これらの要件を緩和することも可能である。
【0085】
また、一般に、制御光の中心波長付近の波長分散をb2とすると、信号光と制御光の波長差による位相不整合の量は、「b2 ×(2pfp −2pfs)2」と見積もることができる。したがって、制御(励起)光の波長を非線形ファイバの零分散波長に一致させた場合(b2 = 0)には、この波長分散による位相不整合量をほぼゼロにすることが可能である。しかし、本発明のように、制御光の強度が高い場合には、SPMやXPM等の非線形効果による非線形位相変調による位相不整合分を考慮して、全体の波長配置を最適化することも有効である。非線形分を考慮する場合の位相不整合量は、およそ「b2 ×(2pfp −2pfs)2+2γPp」と見積もることができるので、この値を最小にするように設定するのがよい。励起光の波長を非線形ファイバの異常分散側に配置し、「b2<0」となるようにする方法が考えられる。
【0086】
図21は、信号光および制御光の波長配置の一例を示す図である。ここでは、利用可能な2つの波長帯域が存在する場合を考える。2つの波長帯域とは、例えば、可視光帯域と赤外帯域、あるいは、光通信用のCバンド(1530nm〜1565nm)とLバンド(1568nm〜1610nm)に相当する。
【0087】
このような2つの波長帯域が存在する場合、図21(a)に示すように、信号光は一方の帯域(帯域1)に配置され、制御光パルスは他方の帯域(帯域2)に配置される。本発明の光スイッチ1は、信号光をスイッチングする際に波長変換を伴わない。よって、図21(b)に示すように、出力される信号光の波長は入力信号光の波長と同じであり、帯域1に配置される。
【0088】
ところで一般に、光通信システムにおいては、光アンプ、光フィルタ、受光器、光電変換された信号を増幅するための電子回路等が設けられているが、特に、光学的な測定ツールは高価であり、それらを波長帯域毎に用意することはコストを上昇させる要因となる。しかし、上述の波長配置を導入すれば、スイッチング処理を行いたい波長帯域内に配置されるすべての信号光を1組のツールでスイッチすることができる。また、一般に、スイッチング処理後の信号光を制御光または他の光から分離して抽出するためには、光フィルタ(例えば、図1に示す光帯域通過フィルタ16)が使用される。このとき、上記波長配置を導入し、たとえば、Cバンド/Lバンドのそれぞれの帯域で動作する光アンプを用いれば、信号光が配置される一方の帯域内の光を線形増幅できると共に、制御光パルスが配置される他方の帯域の光をカットすることが出来る。
【0089】
また、本発明の光スイッチ1において、制御光パルスの波長は、信号光の波長と異なっている必要がある。ところが、ユーザによっては、制御光パルスを得るための制御光の波長を用意することが困難な場合もある。例えば、光通信において最も一般的なCハンドに配置されている信号光をスイッチングする際に、Lバンドに配置される制御光パルスを用意できない場合が考えられる。このような場合には、例えば、Cバンド内の光をLバンド内の光に変換することによりLバンドに配置される制御光パルスを生成する構成が有効である。
【0090】
図22は、制御光パルスの波長を変換する機能を備えた光スイッチの構成を示す図である。ここでは、四光波混合を利用した波長変換機能を有する構成について説明する。
図22において、制御光パルス生成部71は、Cバンド内の波長λc1を持った制御光パルス1を生成する。波長変換器72は、光源73および非線形光ファイバ74を備える。光源73は、Lバンド内の波長λp を持ったプローブ光を生成する。プローブ光は、連続発振光または光パルス列である。そして、図23(a)に示すように、制御光パルス1およびプローブ光が非線形光ファイバ74に入力される。そうすると、図23(b)に示すように、非線形光ファイバ74において四光波混合により制御光パルス2が生成される。ここで、制御光パルス2の波長λc2は、「λc2−λc1〜λc1−λp」を満たすような波長である。よって、プローブ光の波長を適切に設定すれば、Cバンド内の制御光パルス1からLバンド内の制御光パルス2を得ることができる。
【0091】
バンドパスフィルタ75は、波長λc2を通過させる。よって、図23(c)に示すように、Lバンド内の波長を持った制御光パルスを生成することができる。なお、必要に応じて、非線形光ファイバ74の出力を増幅するための光アンプを備えるようにしてもよい。
【0092】
上述の実施例では、四光波混合を利用して波長変換機能が提供されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、三光波混合を利用する方法、相互位相変調を利用する方法、自己位相変調を利用する方法、擬似位相整合構造のLiNb3変調器を利用する方法、半導体光増幅器を利用する方法、過飽和吸収型変調器を利用する方法、干渉型光スイッチを利用する方法、フォトニック結晶等のデバイスを利用する方法、受光素子を用いて光信号を電気信号に変換しながらその電気信号で光変調器を変調する方法により波長変換を行うようにしてもよい。
【0093】
なお、本発明は、同一帯域内に信号光および制御光パルスの双方が配置される構成にも適用可能である。ただし、2つのパルスの光スペクトルが互いに十分に離れており、それらが互いに不適切な干渉をしないような波長配置にする必要がある。信号光および制御光が同一波長帯域内に配置される場合、位相整合が容易であり、パルスのWalk-offの影響も小さくなるので、より効率の高い光スイッチングが可能になる。
【0094】
また、本発明の光スイッチは、複数の波長が多重化されたWDM光を一括してスイッチングすることも可能である。ただし、WDM光を一括してスイッチングするためには、WDM光の各チャネルの信号が互いに同期している必要がある。各波長の信号光のタイミングを比較した後、遅延回路等を用いた光バッファリングにより、時間調整する方法による同期法を利用できる。もっとも、本発明の光スイッチを利用したオシロスコープ(図17参照)でWDM光を各チャネルの信号波形をモニタする際には、各チャネルの信号は互いに同期している必要はない。
【0095】
次に、光スイッチ1において使用される非線形光ファイバ14の実施例について説明する。
非線形光ファイバ14は、全長さ範囲に渡って波長分散のばらつきが一定値以下であることが好ましい。また、非線形光ファイバ14としては、例えば、フォトニック結晶ファイバ、ビスマス置換ファイバ(コアにビスマスがドープされた非線形光ファイバ)、ゲルマニウム置換ファイバ(コアにゲルマニウムがドープされた非線形光ファイバ)などの非線形効果を高めた光ファイバが有効である。なお、ゲルマニウム置換ファイバは、コアとクラッドの屈折率比を適切に調整して単位長さ当たりの3次非線形光学効果の発生効率を高めた構造のものが現在のところ最適である。
【0096】
非線形光ファイバを用いる場合、例えば、2つの帯域(たとえば、Cバンド及びLバンド)をカバーする十分に広い帯域に渡って四光波混合を実現するためには、上述したように、信号光(波長λs )とアイドラ光(波長λc )との位相整合をとる必要がある。位相整合をとるための条件は、例えば、特開平7−98464号公報または特許3494661号に記載されている。
【0097】
一例としては、図24に示すように、波長分散が正の光ファイバと波長分散が負の光ファイバを交互に配置することによって、全体として平均分散が零となる非線形光ファイバを得るようにしてもよい。また、非線形効果の十分に大きな光ファイバ(例えば、ビスマス置換ファイバ)を使用する場合には、そのファイバ長が短くても十分な効率の四光波混合を発生させることができる。ただし、このような光ファイバは、一般に、波長分散が大きい。よって、この場合、分散補償ファイバ等を用いてその分散を補償することが好適である。例えば、図24において、N=1、3、5、...の部分に非線形効果の大きな光ファイバを配置し、N=2、4、6、...の部分に対応する非線形光ファイバの分散を補償するためのファイバを配置するようにしてもよい。
【0098】
なお、本発明の光スイッチ1において、非線形光ファイバの代わりに他の非線形光学媒質を使用してもよい。他の非線形光学媒質としては、たとえば、四光波混合用の半導体光アンプ、量子ドット光アンプ、あるいは三光波混合用の疑似位相整合構造を有するLiNbO3導波路(Periodically Poled LN)を使用することができる。
【0099】
また、制御光パルスは、特に限定されるものではないが、たとえば、半導体レーザ、ファイバモードロックレーザ、過飽和吸収型光変調器、LiNbO3等の導波路型変調器などを使用して生成することが出来る。
【0100】
さらに、図1に示す光スイッチ1の入力側に、信号光を増幅する光増幅器およびその光増幅器の出力光から自然放出(ASE)光を除去する光フィルタをさらに設けるようにしてもよい。
【0101】
次に、本発明を光通信システムに適用した実施例について説明する。以下では、送信機31から送信される光信号が光中継器(または、光増幅中継器)81を経由して受信機32に伝送されるものとする。そして、光中継器81において光信号の波形をモニタすることにより、光通信システムの運用状況を監視または制御する。
【0102】
この場合、図25(a)に示すように、光中継器81にモニタ装置82が接続され、第1の伝送路を介して伝播してきた信号光の一部がモニタ装置82に導かれる。なお、モニタ装置82は、光中継器81の中に設けられてもよい。モニタ装置82は、例えば、図17に示した光サンプリングオシロスコープと同等のモニタ機能を有しており、信号光の波形をモニタすることができる。また、モニタ装置82は、信号光の波形を評価し、その評価結果を必要に応じて送信機31、受信機32、他の中継器、及びネットワーク管理システム(Network Management System)など(以降、まとめて通信装置と呼ぶこがある)の少なくともいずれか一つに通知する。なお、波形の評価は、例えば、アイパターンの開口を数値化することにより得られる。これにより、少なくとも1つの通信装置において、通信を制御することができる。
【0103】
また、図25(b)に示すように、モニタ装置82においてサンプリングしたモニタ光信号(図17に示す光スイッチ1から出力される光パルス列)を少なくとも1つの通信装置に送信し、その少なくとも1つの通信装置において波形を評価するようにしてもよい。このとき、サンプリングされたモニタ光信号は、例えば、信号光に重畳されて伝送される。そして、この場合、信号光およびモニタ光信号が多重化された光を受光器で電気信号に変換した後、帯域通過フィルタでモニタ光信号のみを抽出して波形をモニタする。あるいは、光中継器81において信号光をいったん停止し、モニタ光信号のみを少なくとも1つの通信装置に送信するようにしてもよい。なお、サンプリングされたモニタ光信号は、制御光パルスと同等の短パルスであるが、その繰返し周期は、例えば数MHz〜数100MHzであり、光伝送において光ファイバの波長分散等による劣化が生じるものの、波形をモニタするために必要な補償は容易である。
【0104】
なお、上述の例では、信号波形の評価結果を表す情報およびモニタ光信号が送信機および/または受信機に転送されるが、他の装置(例えば、通信システム全体を管理する管理サーバ等)に転送するようにしてもよい。
【0105】
図26は、本発明を非線形光ループミラー(NOLM:Nonlinear Optical Loop Mirror)に適用した例を示す図である。
図26において、信号光は、分岐比が1:1の光カプラ91により、互いに等しいパワーを有する1組の分岐信号光に分岐される。そして、一方の分岐信号光は、非線形光ループミラーのループを時計回りに伝搬され、他方の分岐信号光は、そのループを反時計回りに伝搬される。また、制御光パルスは、ループの途中に設けられている光カプラ92によりそのループに供給され、一方向(この例では、時計回り方向)に伝搬される。ここで、制御光パルスは、非線形光ファイバにおいて光パラメトリック増幅が生じるのに十分なパワーを有する。したがって、制御光パルスが存在する時間領域では、時計回り方向に伝搬される分岐信号はパラメトリック増幅されて出力される。一方、制御光パルスが存在しない時間領域では、時計回りに伝搬される分岐信号光および反時計回りに伝搬される分岐信号光が相殺され、出力は概ねゼロになる。
【0106】
非線形光ループミラーは、光Kerrスイッチと同様に、制御光パルスによる相互位相変調により同期した信号光をスイッチすることが可能である。ただし、制御光パルスが無い場合の信号光の遮断は、互いに同じパワーで時計回り方向および反時計回り方向にループを伝搬する信号光が、互いに等しい偏光状態で光カプラ91に戻ってきた場合の干渉に起因する全反射により実現される。一般に、制御光パルスによる相互位相変調によってπの位相シフトが一方向の信号光に与えられたときに100パーセント透過(すなわち、スイッチ)となる。本発明においては、上述したように、はるかに高いパワーの制御光パルスを用い、信号光をパラメトリック増幅する。これにより、光カプラによる反射光は増加するものの、より高いパワーの信号光をスイッチすることが可能になる。
【0107】
このように、本発明は、図1に示すような偏光制御器、非線形光ファイバ、偏光子を含む構成に限定されるものではなく、非線形光ループミラーにも適用可能である。
さらに、本発明は、図27に示すような干渉計にも適用可能である。干渉計(例えば、マッハツェンダ干渉計)は、非線形光学媒質93の相互位相変調を制御することにより、出力ポート1を介して信号光と同じ信号を出力すると共に出力ポート2を介して信号光の反転信号を出力する状態、および出力ポート2を介して信号光と同じ信号を出力すると共に出力ポート1を介して信号光の反転信号を出力する状態を得る。
【0108】
この干渉計に本発明を適用する場合には、上述の制御光パルスを利用して非線形光学媒質93の状態を制御する。また、制御光パルスの光パワーは、非線形光学媒質93において信号光が光パラメトリック増幅される程度に十分に強いものとする。そうすると、制御光パルスが存在する時間領域では、光パラメトリック増幅された信号光が、例えば出力ポート1から出力される。この場合、制御光パルスが存在しない時間領域では、その出力ポート1は消光状態となる。すなわち、干渉計であっても、図1に示す構成と同等の光増幅スイッチングが期待される。
【0109】
このように、本発明は、非線形光学媒質を含む光スイッチであってその非線形光学媒質に信号光および制御光パルスを入力することにより信号光を光パラメトリック増幅することを1つの特徴としており、本発明は、そのような動作を実現するすべての構成を含む。
【0110】
なお、本発明に用いる増幅効果としては、制御光パルスで励起可能なあらゆる非線形増幅効果も、光パラメトリック増幅と同様に利用可能である。例えば、非線形媒質として光ファイバを用いてラマン効果による非線形光増幅(ラマン増幅)を発生させる場合、信号光よりも約12THz 高周波(約100nm短波長)の光パルスを制御光とすることによって、これまで述べてきた実施例を実現可能である。ただし、相互位相変調とラマン増幅を効率よく発生させるためには、信号光パルスと制御光パルスとの間のWalk-offを小さくする必用がある。Walk-offを小さくするためには、非線形光ファイバの波長分散を小さくするとともに、波長分散のスロープを極めて小さくする(分散フラットファイバ化)方法や、信号光パルスと制御光パルスの波長を、非線形光ファイバの零分散波長に対して対称に配置する方法などが有効である。
【0111】
次に、位相変調信号光または周波数変調信号光を増幅しながらスイッチする光スイッチについて説明する。なお、上述の実施例では、強度変調された信号光をスイッチする光スイッチについて説明したが、本発明の光スイッチは、位相変調信号光または周波数変調信号光をスイッチすることもできる。
【0112】
図28は、位相変調された信号光および周波数変調された信号光を示す図である。ここでは、1シンボルが1ビットのデータを搬送するものとする。
位相変調信号光は、RZ(Return-to-Zero)−PSK(Phase Shift Keying)信号光であり、データ信号に従ってRZパルス列を光位相変調することにより得られる。ここで、RZパルス列は、各シンボル間において光パワーが実質的にゼロなる。そして、図28に示す例では、データ信号「11001...」に従って、信号光の位相が「ππ00π...」と変化する位相変調信号光が得られている。すなわち、データが「0」である場合と「1」である場合との間で、信号光の位相が相対的に「π」だけずれるように変調が行われる。あるいは、データが「1」であるときに直前のビットと同じ位相を割り当て、データが「0」であるときに直前のビットに「π」を加えた位相を割り当てるようにしてもよい。いずれにしても、これらの位相変調は、例えば、LiNbO3 変調器、あるいは非線形媒質内の相互位相変調(XPM)を利用する方式により実現される。
【0113】
なお、図28では、位相変調方式として、1シンボルが1ビットのデータを搬送するBPSKが示されているが、本発明は、MPSK(M=2、4、8、16...)に適用可能である。例えば、1シンボルが2ビットのデータを搬送するQPSKは、図29に示すように、「00」「10」「11」「01」に対してそれぞれ「π/4」「3π/4」「5π/4」「7π/4」が割り当てられる。また、CS(Carrier Suppress)RZ−DPSK信号にも適用可能である。
【0114】
周波数変調信号光は、RZ−FSK(Frequency Shift Keying)信号光であり、データ信号に従ってRZパルス列を光周波数変調することにより得られる。図28に示す例では、データ信号「11001...」に従って、信号光の周波数が「f2、f2、f1、f1、f2...」と変化する周波数変調信号光が得られている。このような周波数変調は、例えば、周波数変換効率に優れた半導体レーザ等を利用して行われる。なお、位相変調信号光および周波数変調信号光は、例えば、光ヘテロダイン検波方式あるいは光ホモダイン検波方式で受信される。
【0115】
図30(a)は、DPSK(Differential PSK)信号光を復調する復調回路の実施例である。DPSK方式では、互いに隣接するビット間の位相差は「0」または「π」である。よって、DPSK信号光は、1ビット遅延光回路111を利用して復調することができる。すなわち、互いに隣接するビット間の位相差が「0」であれば、入力信号光と1ビット遅延信号光とを合成することにより得られる信号は「1(光パワー有り)」である。一方、互いに隣接するビット間の位相差が「π」であれば、入力信号光と1ビット遅延信号光とを合成することにより得られる信号は「0(光パワー無し)」である。これにより、位相変調信号光が強度変調信号光に変換される。なお、現在、光導波路技術の進歩により高精度の1ビット遅延光回路が実用化されている。そして、そのような1ビット遅延光回路を利用して位相変調信号光を強度変調信号光に変換して搬送されてきた信号を検出する受信機が開発されている。
【0116】
図30(b)は、周波数変調信号光を復調する復調回路の実施例である。ここでは、周波数変調信号光は、2つの周波数f1、f2を含んでいるものとする。この場合、周波数f1を透過する光バンドパスフィルタ112−1または周波数f2を透過する光バンドパスフィルタ112−2を利用することにより、周波数変調信号光を強度変調光に変換できる。なお、周波数変調信号光は、ファブリー・ペロー共振器または干渉計などを利用して強度変調信号に変換することもできる。
【0117】
図31(a)は、変調信号光を増幅しながらスイッチする光スイッチの実施例である。ここで、光スイッチ200は、図1に示す偏光制御器11、13、非線形光ファイバ14、偏光子15を含むものとする。また、変調信号光は、RZ位相変調信号光またはRZ周波数変調信号光である。さらに、制御光パルスは、変調信号光から再生されるクロックを利用して、変調信号光と異なる波長を持った制御光から生成される。そして、光スイッチ200において、制御光パルスの偏光状態(偏光方向)は、変調信号光の偏光状態(偏光方向)に対して所定の状態(例えば、約45度)に設定される。なお、光スイッチ200の動作は、基本的に、図1〜図7を参照しながら説明した通りである。
【0118】
この実施例では、制御光パルスは、図31(b)に示すように、変調信号光の光パワーが所定値以上である時間領域に渡って一定の強度を有する平坦形状のパルスである。ここで、所定値は、例えば、ゼロ(実質的にゼロ)であるが、他の値(例えば、変調信号光の光パワーのピークの1/2)であってもよい。ここで、制御光パルスの光パワーが一定であれば、非線形光ファイバ14における3次非線形光学効果も一定になる。よって、上述のような制御光パルスを使用すると、変調信号光は、均一にパラメトリック増幅される。すなわち、変調信号光の各パルスの波形が崩れることはない。
【0119】
図32は、変調信号光をスイッチする光スイッチの他の実施例である。この実施例においては、制御光パルスの時間幅は、変調信号光の光パワーが所定値以上である時間幅よりも短い。なお、このような制御光パルスを生成する方法、およびその効果については、図10および図11を参照しながら説明した通りである。すなわち、この光スイッチによれば、偏波モード分散(PMD)等に起因する変調信号光の時間ゆらぎが抑圧されるので、PMD補償器を設けることなく、受信特性を改善することができる。
【0120】
このように、図31または図32においては、光スイッチ200は、位相変調信号光または周波数変調信号光を、強度変調信号に変換する前に、増幅しながらスイッチする。そして、光スイッチ200の出力は、図30(a)または図30(b)に示す復調器へ与えられる。
【0121】
図33は、本発明の光スイッチを利用した光DEMUXの実施例である。ここでは、RZ−DPSK信号光またはRZ−FSK信号光を時間分割多重することにより得られる信号光が光スイッチ200に入力される。一例としては、4チャネルの40Gbps信号光が多重化された160Gbpsの多重信号光が光スイッチ200に入力される。そして、制御光パルスは、この信号光からクロック再生することにより得られ、光スイッチ200が備える非線形光ファイバに与えられる。このとき、制御光パルスのビットレートは、抽出すべきチャネルのビットレートとする。これにより、多重信号光から所望のチャネルの信号光が抽出される。
【0122】
なお、図31〜図32に示す実施例では、本発明に係る光スイッチは、変調信号光を復調する復調器の前段に設けられているが、本発明の光スイッチは、位相変調信号光または周波数変調信号光を強度変調信号に変換する変換器の後段に設けられて使用されるようにしてもよい。
【0123】
図34(a)は、DPSK信号光を強度変調信号光に変換した後にスイッチする実施例である。この場合、DPSK信号光は、図30(a)を参照しながら説明したように、1ビット遅延光回路111を利用して強度変調信号光に変換される。図34(b)は、FSK信号光を強度変調信号光に変換した後にスイッチする実施例である。この場合、FSK信号光は、図30(b)を参照しながら説明したように、光バンドパスフィルタ112−1を利用して強度変調信号光に変換される。これらの構成を導入すれば、伝搬路において信号光に付加されたジッターやPMDが抑圧されるとともに増幅されるので、受信特性が向上する。
【0124】
本発明の光スイッチは、図17を参照しながら説明したように、光サンプリングオシロスコープの主要部品として利用することができる。ここで、本発明の光スイッチを図34に示す構成に適用することにより、強度変調信号変換されたデータ信号光波形を観測可能である。また、この場合、この光サンプリングオシロスコープは、図35に示すように、位相変調光または周波数変調光の波形を観測してもよい。この場合、アイパターンを観測することは出来ないが、信号光のS/N比や雑音分布といった信号光の品質を測定することが可能である。
【0125】
次に、偏波ダイバーシティを利用した光スイッチについて説明する。
上述した実施例の光スイッチ1においては、非線形光ファイバ14の前段に偏光制御器11を設け、信号光の偏光状態(偏光方向)を偏光子15の偏光主軸に直交させるように制御している。これに対して、以下に示す光スイッチでは、入力信号光の偏光状態を制御するための偏光制御器を備える必要はない。
【0126】
図36は、偏波ダイバーシティを利用した光スイッチの構成を示す図である。図36において、偏光分離器301は、入力信号光を互いに直交する第1の偏光信号(P偏波成分)および第2の偏光信号(S偏波成分)に分離する。1組の光スイッチ302−1、302−2は、それぞれ、図1に示す非線形光ファイバ14、偏光子15を含んで構成され、その動作は上述した通りである。本実施例では、各光スイッチ302−1、302−2には偏光分離器301により所定の偏光信号がそれぞれ入力されるので、偏光制御器13を省略してもよい。制御光パルス生成部303は、入力信号光の波長と異なる波長を持った制御光を生成する光源、および入力信号光からクロックを再生するクロック再生器を備え、その制御光から制御光パルス1および制御光パルス2を生成する。
【0127】
光スイッチ302−1において、第1の偏光信号および制御光パルス1が非線形光ファイバ14に入力され、第1の偏光信号は、制御光パルス1によりパラメトリック増幅される。同様に、光スイッチ302−2においては、第2の偏光信号は、制御光パルス2によりパラメトリック増幅される。そして、光スイッチ302−1、302−2の出力は、偏光多重器304により結合される。これにより、入力信号光の偏光状態を制御することなく、その信号光をスイッチできる。
【0128】
なお、光スイッチ302−1、302−2における光利得は、互いに一致している必要がある。ここで、光スイッチ302−1、302−2における光利得は、それぞれ、非線形光ファイバ14の長さ、非線形光ファイバ14の非線形特性、制御光パルスの光パワーの積に比例する。また、偏光分離器301から光スイッチ302−1を経由して偏光多重器304に至る経路の伝播遅延、および偏光分離器301から光スイッチ302−2を経由して偏光多重器304に至る経路の伝播遅延を互いに一致させる必要がある。この場合、伝播遅延は、光遅延回路を設けることにより調整可能である。
【0129】
図37は、図36に示す光スイッチの動作を説明する図である。図37(a)は、光スイッチ302−1の状態を示し、図37(b)は、光スイッチ302−2の状態を示している。
【0130】
第1の偏光信号および第2の偏光信号は、上述したように、互いに直交している。そして、図37(a)に示すように、制御光パルス1の偏光状態は、第1の偏光信号の偏光状態に対して45度回転させた状態に設定される。また、光スイッチ302−1の偏光子15の偏光主軸は、第1の偏光信号の偏光状態に直交するように設定される。この結果、第1の偏光信号の一部(光スイッチ302−1の非線形光ファイバ14において制御光パルス1と重複する部分)が増幅されて偏光子15を通過する。
【0131】
同様に、図37(b)に示すように、制御光パルス2の偏光状態は、第2の偏光信号の偏光状態に対して45度を回転させた状態に設定される。また、光スイッチ302−2の偏光子15の偏光主軸は、第2の偏光信号の偏光状態に直交するように設定される。そして、第2の偏光信号の一部(光スイッチ302−2の非線形光ファイバ14において制御光パルス2と重複する部分)が増幅されて偏光子15を通過する。
【0132】
図38は、図36に示す光スイッチの変形例である。図36に示す構成では、光スイッチ302−1、302−2の出力を光信号のまま結合することにより出力スイッチ光を得ている。これに対して図38に示す構成では、光スイッチ302−1、302−2から出力される光信号をそれぞれ受光器305−1、305−2を用いて電気信号に変換し、信号多重器306でそれらの電気信号を合成する。なお、この構成においては、可変長電気回路を利用して2つの経路の信号のタイミングを調整することができる。
【0133】
なお、本発明の実施に際しては、非線形光ファイバ14に入力する信号光および制御光パルスの偏光状態を所定(例えば、互いに45度傾いた)の直線偏光に設定する必要がある。そして、この設定は、例えば、図39に示すように、受光素子(PD)401を利用して偏光子15から出力される信号の光パワーをモニタし、その光パワーが最適になるように制御回路402、403がそれぞれ偏光制御器11、13を調整することにより実現される。ここで、特に制御光パルスは、繰返し周波数fが一定であることが多い。このため、制御光パルスの偏光を制御するフィードバック系においては、周波数fを中心周波数として透過する電気帯域フィルタ404を利用して受光素子401により得られる電気信号から他の周波数成分(すなわち、雑音)を除去することが望ましい。このフィルタを設けることにより、検出感度が向上する。
【0134】
また、図39においては、光スイッチの出力側に設けられる偏光子15の出力をモニタする構成を示したが、非線形光ファイバ14に入力する信号光および制御光パルスを各々モニタし、そのモニタ結果に応じて偏光制御器11、13を調整するようにしてもよい。
【実施例1】
【0135】
図40は、本発明の光スイッチの特性をテストするためのシステムの構成を示す図である。テスト環境は、下記の通りである。
高非線形ファイバHNLFは、図1に示した非線形光ファイバ14に相当し、長さが20m、3次の非線形係数γが20.4W-1km-1、零分散波長λ0が1579nm、そして分散スロープが0,03ps/nm2/kmである。第1のモードロックファイバレーザ(MLFL1)は、Cバンド内の波長λs において10GHzの光パルス列を生成し、その光パルス列はLiNbO3強度変調器(LN, 10Gbps, PRBS:223-1)により変調され、さらにその変調光が光時分割多重(OTDM)されて160〜640Gbpsのデータ信号Esが生成される。データ信号Esは、第2のモードロックファイバレーザ(MLFL2)により生成される制御パルスEpと共に高非線形ファイバHNLFに入力される。制御パルスEpの波長は、高非線形ファイバHNLF零分散波長λ0とほぼ同じであり、Lバンド内に配置されている。また、制御パルスEpの偏光方向は、45度である。
【0136】
図41は、制御パルスEpのピークパワーを変化させたときのスイッチング利得を示す図である。制御パルスEpのレートは10GHzであり、データ信号Esの波長λs は1550nmである。また、データ信号Esおよび制御パルスEpのパルス幅(FWHM)は、それぞれ1.6ps、0.9psである。
【0137】
スイッチング利得は、高非線形ファイバHNLFの入力におけるデータ信号Esのパワーに対する偏光子(Pol)から出力されるデータ信号Esのパワーとして定義される。データ信号Esのパワーは、光パラメトリック増幅により、制御パルスEpのピークパワーの二乗に概ね比例して増加する。そして、制御パルスEpのピークパワーが15Wであるときに、最大スイッチング利得として7.6dBが得られている。
【0138】
図42は、データ信号Esの波長を変化させたときのスイッチング利得を示す図である。なお、制御パルスEpのピークパワーは15Wである。スイッチング利得は、20mの高非線形ファイバHNLFにおける良好な位相整合および小さなウォークオフのおかげで、Cバンドの全波長領域に渡ってほぼフラットである。なお、制御パルスEpの波長をCバンド内に配置することにより、Lバンド全域に渡って動作する光スイッチを実現することができる。
【実施例2】
【0139】
160Gbps、320Gbps、640Gbpsの光時分割多重信号Esから10Gbpsの信号を分離する光デマルチプレクサについての実験結果を示す。信号Esのパルス幅は、160Gbpsのときは1.6ps、320Gbpsのときは0.75ps、640Gbpsのときは0.65psである。また、制御パルスEpのパルス幅は、0.9psである。
【0140】
図43は、分離された信号の受信パワーPを変化させたときのBER測定値を示す図である。なお、制御パルスの平均パワーは、+21.8dBm(ピークパワー=15Wに相当)である。また、光スイッチに入力される160Gbpsの信号Esの平均パワーは、−5dBmである。
【0141】
160Gbpsにおいて、信号波長λs=1535nm、1540nm、1550nm、1560nmについてそれぞれビット誤り率を測定した。その結果、Cバンドの全波長領域に渡って0.2dBよりも小さいパワーペナルティでの無誤り動作(BER=10-9)が実現された。320Gbpsおよび640Gbpsの信号においても、それぞれ1.1dBおよび2.5dBといったわずかなパワーペナルティの増加で無誤り動作が実現された。なお、このパワーペナルティの増加は、主に、パルス幅が十分に狭くないことに起因する残留クロストークによるものである。
【実施例3】
【0142】
本発明の光スイッチを利用してサンプリングされた後にオシロスコープで観測された信号波形を示す。図44(a)〜図44(e)は、パルス幅の条件が上述の実施例2と同じである場合に観測されたアイパターンを示している。サンプリングレートは、311MHzである。160Gbps〜640Gbpsに渡って良好なアイパターンが得られている。このような優れた時間分解能は、Cバンド全域に渡る高いコントラストの光サンプリングの実現に寄与する。
【0143】
なお、上述の実施例1〜3については、下記の論文に記載がある。
S. Watanabe, et. al. “Novel Fiber Kerr-Switch with Parametric Gain: Demonstration of Optical Demultiplexing and Sampling up to 640 Gb/s”, 30th European Conference on Optical Communication (ECOC), Stockholm, Sweden, September 2004, Post-deadline paper Th4.1.6, pp 12-13
<その他>
上述した実施例1〜3を含む実施形態は、次の発明を開示する。
【0144】
(付記1)信号光の偏光方向を制御する第1の偏光制御器と、
上記第1の偏光制御器により偏光方向が制御された信号光が入力される非線形光学媒質と、
上記非線形光学媒質の出力側に設けられ、上記非線形光学媒質から出力される信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子、を有し、
上記信号光は、上記非線形光学媒質において制御光パルスによりほぼその制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅される
ことを特徴とする光スイッチ。
【0145】
(付記2)付記1に記載の光スイッチであって、
上記信号光と異なる波長を有する制御光で上記制御光パルスを生成して上記非線形光学媒質に供給する光パルス生成手段、をさらに有する。
【0146】
(付記3)付記1に記載の光スイッチであって、
上記光パルス生成手段と上記非線形光学媒質との間に設けられ、上記制御光パルスの偏光方向を上記信号光の偏光方向に対して所定の角度に設定する第2の偏光制御器、をさらに有する。
【0147】
(付記4)付記3に記載の光スイッチであって、
上記信号光の偏光方向と上記制御光パルスの偏光方向との間の角度は、40〜50度である。
【0148】
(付記5)付記3に記載の光スイッチであって、
上記信号光の偏光方向と上記制御光パルスの偏光方向との間の角度は、約45度である。
【0149】
(付記6)付記1に記載の光スイッチであって、
上記偏光子から出力される信号光のパワーは、上記非線形光学媒質に入力される信号光のパワーよりも大きい。
【0150】
(付記7)付記1に記載の光スイッチであって、
上記非線形光学媒質に入力される前記信号光の波長と前記偏光子から出力される信号光の波長は一致している。
【0151】
(付記8)付記1に記載の光スイッチであって、
上記非線形光学媒質は、全長さ範囲に渡って波長分散のばらつきが一定値以下の光ファイバである。
【0152】
(付記9)付記1に記載の光スイッチであって、
上記非線形光学媒質は光ファイバであり、その平均零分散波長は上記制御光の波長と一致または略一致する。
【0153】
(付記10)付記1に記載の光スイッチであって、
上記非線形光学媒質は、全長さ範囲に渡って波長分散が零となる分散フラットファイバである。
【0154】
(付記11)付記8または9に記載の光スイッチであって、
上記光ファイバは、そのコアにゲルマニウムまたはビスマスがドープされた高非線形光ファイバである。
【0155】
(付記12)付記8〜11のいずれか1つに記載の光スイッチであって、
上記光ファイバは、フォトニック結晶ファイバである。
【0156】
(付記13)付記1に記載の光スイッチであって、
上記非線形光学媒質は、疑似位相整合構造を有するLiNbO3導波路である。
【0157】
(付記14)付記1に記載の光スイッチであって、
上記光パルス生成手段は、上記信号光の分岐光からクロックを再生し、その再生したクロックを利用して上記信号光により伝搬される信号と同期する制御光パルスを生成する。
【0158】
(付記15)付記1に記載の光スイッチであって、
上記制御光は、上記信号光が配置されている波長帯域とは異なる波長帯域内に配置される。
【0159】
(付記16)付記1に記載の光スイッチであって、
上記偏光子の出力側に設けられた自然放出光を除去する光フィルタ、をさらに有する。
【0160】
(付記17)付記1に記載の光スイッチであって、
信号光を増幅する光増幅器およびその光増幅器の出力光から自然放出光を除去する光フィルタをさらに備え、
上記光フィルタの出力が上記第1の偏光制御器に与えられる。
【0161】
(付記18)付記1に記載の光スイッチであって、
上記第1の偏光制御器の前段に、上記信号光のパルスのピークを平坦化する波形整形器をさらに有する。
【0162】
(付記19)付記1に記載の光スイッチであって、
上記制御光パルスの時間幅は、上記信号光のパルスの時間幅よりも短い。
【0163】
(付記20)付記1〜19の中のいずれか1つの付記に記載の光スイッチであって、
第1の波長の光を第2の波長の光に変換する波長変換器をさらに有し、
上記制御光パルスは、上記波長変換器により得られる第2の波長の光から生成される。
【0164】
(付記21)付記3に記載の光スイッチであって、
上記偏光子の出力を電気信号に変換する受光素子と、
上記制御光パルスの繰返し周波数を中心通過周波数として有し、上記受光素子から出力される信号をフィルタリングするフィルタと、
上記フィルタの出力に基づいて上記第2の偏光制御器による上記制御光パルスの偏光状態を調整する制御回路、をさらに備える。
【0165】
(付記22)所定の偏光方向を持った信号光およびその信号光と異なる波長且つ異なる偏光方向を有する制御光で生成された制御光パルスが入力され、相互位相変調により上記制御光パルスと時間的に重複する領域の上記信号光の偏光状態を変化させると共に、その領域の信号光をほぼ上記制御光の偏光方向の偏光成分に光パラメトリック増幅する非線形光学媒質と、
上記非線形光学媒質の出力側に設けられ、その非線形光学媒質から出力される信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子、
を有する光スイッチ。
【0166】
(付記23)偏光制御器により偏光方向が制御された信号光が非線形光学媒質に入力されると共に、
上記信号光と異なる波長および異なる偏光成分を有する制御光パルスが無い場合におけるその信号光の偏光を、上記偏光制御器により上記非線形光学媒質の出力側に設けられた偏光子の偏光主軸と直交するように設定し、
上記制御光パルスを上記非線形光学媒質に供給することにより、上記信号光は、上記非線形光学媒質においてほぼ上記制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅される、ことを特徴とする光スイッチ。
【0167】
(付記24)信号光の偏光方向を制御する偏光制御器と、
上記偏光制御器により偏光方向が制御された信号光が入力される非線形光学媒質と、
上記非線形光学媒質の出力側に設けられ、上記非線形光学媒質から出力される信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子と、
上記偏光子の出力を電気信号に変換する受光器と、
上記電気信号を時間方向にトレースすることにより上記信号光の波形をモニタするモニタ手段、を有し、
上記信号光は、上記非線形光学媒質において、上記信号光により伝搬される信号のビットレートと異なる周波数の制御光パルスによりほぼその制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅される、
ことを特徴とする光波形モニタ装置。
【0168】
(付記25)信号光の偏光方向を制御する偏光制御器と、
上記偏光制御器により偏光方向が制御された信号光が入力される非線形光学媒質と、
上記非線形光学媒質の出力側に設けられた偏光子と、
上記偏光子の出力を電気信号に変換する受光器と、
上記電気信号を時間方向にトレースすることにより上記信号光の波形をモニタするモニタ手段、を有し、
上記信号光は、上記非線形光学媒質において、上記信号光により伝搬される信号のビットレートと異なる周波数の制御光パルスによりほぼその制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅され、
上記制御光が無い場合の上記信号光の偏光方向は、上記偏光制御器により上記偏光子の偏光主軸に直交するように設定される、
ことを特徴とする光波形モニタ装置。
【0169】
(付記26)伝送路上に光中継器を有する光通信システムであって、
上記光中継器は、付記24に記載の光波形モニタ装置を備え、
その光波形モニタ装置は、上記伝送路を伝播する信号光の波形についての評価結果を予め決められた装置に送信する。
【0170】
(付記27)伝送路上に光中継器を有する光通信システムであって、
上記光中継器は、付記24に記載の光波形モニタ装置を備え、
その光波形モニタ装置は、上記伝送路を伝播する信号光が上記非線形光学媒質に入力されたときに上記偏光子から出力される光パルス列を、予め決められた装置に送信し、
その予め決められた装置においてその光パルス列に基づいて上記信号光の波形をモニタする。
【0171】
(付記28)信号光の偏光方向を制御し、
上記信号光と異なる波長を有する制御光で制御光パルスを生成し、
上記制御光パルスの偏光方向を上記信号光の偏光方向に対して所定の角度に設定し、
上記信号光および制御光パルスを非線形光学媒質に入力し、
上記非線形光学媒質において上記制御光パルスと時間的に重複する領域においてほぼその制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅された信号光を、上記制御光パルスが存在しない領域の上記信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子を通過させることにより上記信号光のうち上記制御光パルスと時間的に重複する部分を抽出する
ことを特徴とする光スイッチ方法。
【0172】
(付記29)第1の信号光の偏光方向を制御し、
上記第1の信号光と異なる波長を有する制御光で制御光パルスを生成し、
上記制御光パルスの偏光方向を上記第1の信号光の偏光方向に対して所定の角度に設定し、
上記第1の信号光および制御光パルスを非線形光学媒質に入力し、
上記制御光パルスと時間的に重複する領域において相互位相変調により偏光方向が変化させられ且つほぼ上記制御光の偏光方向の偏光成分に光パラメトリック増幅される第1の信号光を、上記制御光が無い場合の上記第1の信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子を通過させることにより、上記第1の信号光と時間的に重複しない第2の信号光とを時間多重する、
ことを特徴とする光スイッチ方法。
【0173】
(付記30)付記29に記載の光スイッチ方法であって、
上記光スイッチは非線形光ループミラー構成であり、
そのループミラーを構成する第1の光カプラに上記第1の信号光を入力することによりループの両方向に等パワーで上記第1の信号光の分岐光を伝搬させ、ループの途中に配置した第2の光カプラから前記制御光パルスをループの1方向に入力し、前記制御光パルスと同じ方向に伝搬する第1の信号光の成分を光パラメトリック増幅することを特徴とする光スイッチ方法。
【0174】
(付記31)信号光の光パルスのピークが平坦となるように波形整形した後にその信号光の偏光方向を制御し、
上記信号光と異なる波長を有する制御光で制御光パルスを生成し、
上記制御光パルスの偏光方向を上記信号光の偏光方向に対して所定の角度に設定し、
上記信号光および制御光パルスを非線形光学媒質に入力し、
上記非線形光学媒質において上記制御光パルスと時間的に重複する時間領域においてほぼ上記制御光パルスの偏光方向の偏光成分に光パラメトリック増幅された上記信号光を、上記制御光パルスがない場合の上記信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子を通過させることにより、上記制御光パルスと重複する時間領域の上記信号光を抽出する、ことを特徴とする光スイッチ方法。
【0175】
(付記32)信号光と異なる波長を有する制御光でその信号光の光パルスよりも短い時間幅の制御光パルスを生成し、
上記制御光パルスの偏光方向を上記信号光の偏光方向に対して所定の角度に設定し、
上記信号光および制御光パルスを非線形光学媒質に入力し、
上記非線形光学媒質において上記制御光パルスと時間的に重複する時間領域においてほぼ上記制御光パルスの偏光方向の偏光成分に光パラメトリック増幅された上記信号光を、上記制御光パルスがない場合の上記信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子を通過させることにより、上記制御光パルスと重複する時間領域の上記信号光を抽出する、ことを特徴とする光スイッチ方法。
【0176】
(付記33)プローブ光を被測定物に入力することにより得られる反射光、透過光、またはその被測定物からの発光を信号光として、付記24に記載の光波形モニタ装置でその信号光の波形をモニタする測定方法。
【0177】
(付記34)信号光および制御光パルスが入力される非線形光学媒質と、
上記非線形光学媒質において上記制御光パルスと重複する時間領域の上記信号光を出力し、上記非線形光学媒質において上記制御光パルスが存在しない時間領域の上記信号光を遮断する光学手段、を有し、
上記信号光は、上記非線形光学媒質において上記制御光パルスによりほぼその制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅される
ことを特徴とする光スイッチ。
【0178】
(付記35)信号光および制御光パルスが入力される非線形光学媒質と、
上記非線形光学媒質において上記制御光パルスと重複する時間領域の上記信号光を出力し、上記非線形光学媒質において上記制御光パルスが存在しない時間領域の上記信号光を遮断する光学手段、を有し、
上記信号光は、上記非線形光学媒質において上記制御光パルスによりほぼその制御光パルスの偏光方向に非線形増幅される、
ことを特徴とする光スイッチ。
【0179】
(付記36)信号光の偏光方向を制御する偏光制御器と、
上記偏光制御器により偏光方向が制御された信号光が入力される非線形光学媒質と、
上記非線形光学媒質の出力側に設けられ、上記非線形光学媒質から出力される信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子、を有し、
上記信号光は、上記非線形光学媒質において制御光パルスにより発生する非線形効果によりほぼその制御光パルスの偏光方向に光増幅される
ことを特徴とする光スイッチ。
【0180】
(付記37)付記36に記載の光スイッチであって、
上記信号光は、上記非線形光学媒質において上記制御光パルスにより光ラマン増幅される。
【0181】
(付記38)位相変調信号光または周波数変調信号光の偏光方向を制御する偏光制御器と、
上記偏光制御器により偏光方向が制御された信号光が入力される非線形光学媒質と、
上記非線形光学媒質の出力側に設けられ、上記非線形光学媒質から出力される信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子、を有し、
上記信号光は、上記非線形光学媒質において上記制御光パルスによりほぼその制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅される、
ことを特徴とする光スイッチ。
【0182】
(付記39)付記38に記載の光スイッチであって、
上記信号光は、RZ位相変調信号光またはRZ周波数変調信号光である。
【0183】
(付記40)付記39に記載の光スイッチであって、
上記制御光パルスは、上記信号光の光パワーが所定値以上である時間領域に渡って一定の強度を有する。
【0184】
(付記41)付記39に記載の光スイッチであって、
上記制御光パルスの時間幅は、上記信号光の光パワーが所定値以上である時間幅よりも短い。
【0185】
(付記42)所定の偏光方向を持った位相変調信号光または周波数変調信号光、およびその信号光と異なる波長且つ異なる偏光方向を有する制御光で生成された制御光パルスが入力され、相互位相変調により上記制御光パルスと時間的に重複する領域の上記信号光の偏光状態を変化させると共に、その領域の信号光をほぼ上記制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅する非線形光学媒質と、
上記非線形光学媒質の出力側に設けられ、その非線形光学媒質から出力される信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子、
を有する光スイッチ。
【0186】
(付記43)位相変調信号光または周波数変調信号光の偏光方向を制御する偏光制御器と、
上記偏光制御器により偏光方向が制御された信号光が入力される非線形光学媒質と、
上記非線形光学媒質の出力側に設けられ、上記非線形光学媒質から出力される信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子と、
上記偏光子の出力を電気信号に変換する受光器と、
上記電気信号を時間方向にトレースすることにより上記信号光の波形をモニタするモニタ手段、を有し、
上記信号光は、上記非線形光学媒質において、上記信号光により伝搬される信号のビットレートと異なる周波数の制御光パルスによりほぼその制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅される、
ことを特徴とする光波形モニタ装置。
【0187】
(付記44)位相変調信号光または周波数変調信号光の偏光方向を制御し、
上記信号光と異なる波長を有する制御光で制御光パルスを生成し、
上記制御光パルスの偏光方向を上記信号光の偏光方向に対して所定の角度に設定し、
上記信号光および制御光パルスを非線形光学媒質に入力し、
上記非線形光学媒質において上記制御光パルスと時間的に重複する領域においてほぼその制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅された信号光を、上記制御光パルスが存在しない領域の上記信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子を通過させることにより上記信号光のうち上記制御光パルスと時間的に重複する部分を抽出する
ことを特徴とする光スイッチ方法。
【0188】
(付記45)位相変調信号光または周波数変調信号光を時間分割多重することにより得られた信号光の偏光方向に対して、その信号光と異なる波長を有する制御光から生成された制御光パルスの偏光方向を所定の角度に設定し、
上記信号光および制御光パルスを非線形光学媒質に入力し、
上記非線形光学媒質において上記制御光パルスと時間的に重複する領域においてほぼその制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅された信号光を、上記制御光パルスが存在しない領域の上記信号光の偏光方向と直交する偏光主軸を有する偏光子を通過させることにより上記信号光のうち上記制御光パルスと時間的に重複する部分を抽出する
ことを特徴とする光スイッチ方法。
【0189】
(付記46)付記1に記載の光スイッチであって、
位相変調信号光または周波数変調信号光を強度変調信号光に変換する光変換器をさらに備え、
上記信号光は、上記光変換器により得られる強度変調信号光である。
【0190】
(付記47)付記46に記載の光スイッチであって、
上記光変換器は、位相変調信号光を強度変調信号光に変換するための1ビット遅延光回路を備える。
【0191】
(付記48)付記46に記載の光スイッチであって、
上記光変換器は、周波数変調信号光を強度変調信号光に変換するための光フィルタを備える。
【0192】
(付記49)付記1に記載の光スイッチであって、
上記信号光は、RZ位相変調信号光またはRZ周波数変調信号光である。
【0193】
(付記50)信号光を互いに直交する第1および第2の偏光信号に分離する偏光分離器と、
上記第1および第2の偏光信号がそれぞれ入力される第1および第2の非線形光学媒質と、
上記第1および第2の非線形光学媒質の出力側にそれぞれ設けられ、上記第1および第2の偏光信号の偏光方向と直交する偏光主軸を有する第1および第2の偏光子と、
上記第1および第2の偏光子の出力を合成する合成手段、を有し、
上記第1偏光信号は、上記第1の非線形光学媒質において上記第1制御光パルスによりほぼその第1の制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅され、上記第2偏光信号は、上記第2の非線形光学媒質において上記第2制御光パルスによりほぼその第2の制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅される、
ことを特徴とする光スイッチ。
【符号の説明】
【0194】
1 光スイッチ
11、13 偏光制御器
12 制御光パルス生成部
14 非線形光ファイバ
15 偏光子
16 光帯域通過フィルタ
21 光分岐デバイス
22 クロック再生部
31 送信機
32 受信機
33 光中継器
41 光中継ノード
42 光分岐デバイス
51 サンプリングパルス発生器
52 受光器
53 オシロスコープ
61 主回路
62 O/E変換器
63 解析装置
71 制御光パルス生成部
72 波長変換器
73 光源
74 非線形光ファイバ
81 光中継器
82 モニタ装置
91、92 光カプラ
93 非線形光学媒質
100 主回路
101 波形整形器
102 制御光パルス生成部
111 1ビット遅延光回路
112―1、112−2 光バンドパスフィルタ
200 光スイッチ
301 偏光分離器
302−1、302−2 光スイッチ
303 制御光パルス生成部
304 偏光多重器
305−1、305−2 受光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非線形光ループミラーを構成する第1の光カプラに信号光を入力することによりループの両方向に互いに等しいパワーでその信号光の分岐光を伝搬させ、
ループの途中に配置した第2の光カプラから前記信号光と異なる波長の制御光で生成した制御光パルスをループの1方向に入力し、
前記非線形光ループミラーを構成する光ファイバにおいて、前記制御光パルスと同じ方向に伝搬する信号光の成分を光パラメトリック増幅する
ことを特徴とする光スイッチ方法。
【請求項2】
信号光、およびその信号光と異なる波長を有する制御光パルスが入力される非線形光学媒質と、
上記非線形光学媒質において上記制御光パルスと重複する時間領域の上記信号光を出力し、
上記非線形光学媒質において上記制御光パルスが存在しない時間領域 の上記信号光を遮断する光学手段、を有し、
上記非線形光学媒質は、1組のアームを備える干渉計の一方のアームに設けられ、
上記信号光は、上記非線形光学媒質において上記制御光パルスによりほぼその制御光パルスの偏光方向に光パラメトリック増幅される
ことを特徴とする光スイッチ。
【請求項3】
信号光、およびその信号光と異なる波長を有する制御光パルスが入力される非線形光学媒質と、
上記非線形光学媒質において上記制御光パルスと重複する時間領域の上記信号光を出力し、
上記非線形光学媒質において上記制御光パルスが存在しない時間領域 の上記信号光を遮断する光学手段、を有し、
上記非線形光学媒質は、1組のアームを備える干渉計の一方のアームに設けられ、
上記信号光は、上記非線形光学媒質において上記制御光パルスによりほぼその制御光パルスの偏光方向に非線形増幅される
ことを特徴とする光スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図5】
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【図6】
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【図17】
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【図20】
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【図21】
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【図26】
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【図35】
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【図39】
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【図44】
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【公開番号】特開2010−250350(P2010−250350A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167098(P2010−167098)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【分割の表示】特願2006−294943(P2006−294943)の分割
【原出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】