説明

光ディスク再生装置

【課題】光ディスク再生装置において、光ピックアップの傾きなどが原因で、光ピックアップの受光光量にばらつきが生じたり、受光部に漏れ光が入り込んでも、再生信号やエラー信号を適切に生成すると共に、S/N比の低下を抑制する。
【解決手段】トラッキング制御信号生成回路28は、トラッキングアクチュエータ制御装置31が出力した制御値37に応じたオフセットをトラッキングサーボフィルタ27の出力に加えることにより、光ピックアップ20を強制的に傾けた状態でトラッキングサーボ引き込みを行う。光ピックアップ20を強制的に傾ける方向は、例えば位相差オフトラック信号のデューティ比を測定し、その結果から決定する。これにより、光ピックアップ20のチルト機構を有さなくても、再生信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号が正しく生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク再生装置、特に、光ピックアップの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光ディスクなどの光ディスク再生装置のブロック図を図1に示す。同図において、光ピックアップ1から光ディスク2にレーザー光を照射し、反射光を光ピックアップ1で検出する。検出された反射光を再生信号処理回路4に入力し、入力信号に応じてフォーカス制御回路7、トラッキング制御回路10を制御することにより、光ディスク2から信号を読み取ることができる。
【0003】
フォーカス制御回路7では、光ピックアップ1から照射されるレーザー光の焦点を光ディスク2の記録面に合わせるように制御する役割を果たす。この制御をフォーカスオン制御と呼ぶ。また、レーザー光の焦点が光ディスク2の記録面に合うように制御されている状態をフォーカス追従中と呼ぶ。
【0004】
トラッキング制御回路10では、光ピックアップ1から照射されるレーザー光が光ディスク2のトラックを追従できるように光ピックアップ1を傾けて制御する役割を果す。この制御をトラッキングオン制御と呼ぶ。また、レーザー光の焦点が光ディスク2のトラックを追従している状態をトラッキング追従中と呼ぶ。また、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボが両方共に追従中の状態であるときを、総称してサーボ追従中と呼ぶことにする。
【0005】
光ピックアップ1から光ディスク2に照射されたレーザー光を光ピックアップ1で受光するとき、光ディスク2に対して垂直にレーザー光を照射する状態が最も反射光を受光し易く、漏れ光の影響を最小限に抑えられるため、エラー信号や再生信号の信号品質向上を実現することが可能である。しかし、光ディスク2や光ピックアップ1の傾きや製造ばらつきなどの要因によって、光ピックアップ1から光ディスク2に照射されたレーザー光が光ディスク2に対して必ずしも垂直になるとは限らない。光ピックアップ1の傾きなどが原因でレーザー光を垂直に照射できないと、光ピックアップ1の受光光量にばらつきがでてしまったり、受光部に漏れ光が入り込んでしまうため、再生信号やエラー信号のS/N比が低下してしまうことが考えられる。以下に、一般的な位相差法を用いて生成するトラッキングエラー信号が漏れ光などの影響によって正しく生成できない場合を例示して説明する。但し、これはあくまで例であって、位相差法で生成するトラッキングエラー信号に本発明の範囲を限定するものではない。
【0006】
一般的な位相作法を用いてトラッキングエラー信号を生成する回路を図2に示す。受光素子13で検出した反射光をA、受光素子14で検出した反射光をB、受光素子15で検出した反射光をC、受光素子16で検出した反射光をDとしたとき、AとCの加算信号とBとDの加算信号とを求めた上で2値化信号生成回路17、18を用いて2値化し、位相差検出回路19に入力することにより、A+C信号とB+D信号との位相差を検出する。前記手法により検出した位相差出力を位相差トラッキングエラー信号とする。
【0007】
図3に、漏れ光や受光素子のばらつきの影響が全くない場合の位相差トラッキングエラー信号の生成過程を示す。また、図4は、漏れ光や受光素子のばらつきに起因して、受光素子15で検出した反射光Cの検出量が極端に弱くなってしまった場合の位相差トラッキングエラー信号の生成過程を示す。図4では、反射光Cが微弱であるため、図3の場合と比べてA+C信号の演算結果に差が生じる。その結果として、漏れ光の影響がない場合と漏れ光の影響で反射光量に差が生じた場合とでは、出力される位相差出力(位相差トラッキングエラー信号)に差が生じてしまう。
【0008】
図5に、漏れ光や受光素子のばらつきの影響によって、受光素子15で検出した反射光Cにノイズが重畳してしまった場合の位相差トラッキングエラー信号の生成過程を示す。図5では、反射光Cにノイズが重畳しているため、図3の場合と比べてA+C信号の演算結果に差が生じる。結果として、漏れ光の影響がない場合と漏れ光の影響で反射光にノイズが重畳してしまった場合とでは、出力される位相差出力(位相差トラッキングエラー信号)に差が生じてしまう。
【0009】
以上の例により、漏れ光が反射光量や反射光のS/N比に影響する場合に、反射光から生成する信号(エラー信号や再生信号)に差が生じてしまうことが判る。
【0010】
従来の光ディスク再生装置では、図1に示すように、光ピックアップ1にチルト補正機構3を組み込み、光ディスク2に対するレーザー光の照射角度が垂直に近い角度に光ピックアップの角度を調整することにより、漏れ光の影響を軽減して、再生性能やエラー信号のS/N比の低下を防いできた。このようは技術は、例えば、特許文献1において、光ディスクへの光照射が最適な照射角度で行われるように、光ディスクに対する対物レンズの傾きを自動補正する傾き補正手段を備えた光ピックアップとして開示されている。
【特許文献1】特開平10−172162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のチルト補正機構3を搭載している光ピックアップ1を使用すれば、光ピックアップに対する漏れ光の影響を軽減することが可能である。
【0012】
しかしながら、近年は光ピックアップのコスト削減目的のため、チルト補正機構3を搭載しない光ピックアップを利用した光ディスク再生装置が増加してきた。このような光ピックアップを用いて光ディスクを再生させようとすると、漏れ光の影響を無視できないため、光ピックアップがトラッキングサーボ引き込み時やトラッキング追従中に大きく傾いた際に、再生信号のS/N低下やエラー信号の乱れを避けることができなくなり、プレイアビリティ低下やサーボ不安定化を招く可能性がある。
【0013】
本発明の目的は、光ディスク再生装置において、チルト補正機構などの漏れ光対策手段を搭載しなくても、再生信号のS/N低下やエラー信号の乱れを少なくして、プレイアビリティの向上やサーボ安定化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明では、光ディスク再生装置において、チルト補正機構などの漏れ光対策手段を搭載しなくても、漏れ光の影響が軽減される方向に光ピックアップを強制的に傾けながらトラッキングサーボ引き込みやトラッキングサーボ追従を行うこととする。
【0015】
具体的に、請求項1記載の発明の光ディスク再生装置は、光ディスクにレーザーを照射して反射光を受光するための光ピックアップと、前記光ピックアップが受光した信号からトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成回路と、前記トラッキングエラー信号から前記光ピックアップのトラッキングアクチュエータを駆動するための制御信号を生成するためにトラッキングエラー信号を周波数変調させるトラッキングサーボフィルタと、前記トラッキングサーボフィルタの出力にオフセットを加えるための制御値を出力するトラッキングアクチュエータ制御装置と、前記トラッキングサーボフィルタの出力と、前記トラッキングアクチュエータ制御装置の制御値とに基づいて、トラッキングアクチュエータ制御信号を生成するトラッキング制御信号生成回路と、前記トラッキングエラー信号に基づいて位相差法により位相差オフトラック信号を生成する位相差オフトラック信号生成回路と、トラッキングアクチュエータの傾き方向を検知するアクチュエータ傾き検出回路とを有し、前記トラッキング制御信号生成回路が、 前記トラッキングアクチュエータ制御装置が出力した制御値に応じたオフセットを加えて、光ピックアップを傾けた状態で制御し、トラッキングサーボ引き込みを行うことを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記請求項1に記載の光ディスク再生装置において、前記トラッキング制御信号生成回路は、前記トラッキングアクチュエータ制御装置が出力した制御値に応じたオフセットを加えて、光ピックアップを傾けた状態で、トラッキングサーボ追従をも行うことを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の発明は、前記請求項1に記載の光ディスク再生装置において、前記トラッキング制御信号生成回路は、前記トラッキングサーボフィルタの出力に応じた前記トラッキング制御信号生成回路の出力に前記トラッキングアクチュエータ制御装置が出力した制御値に応じたオフセットを加えて、光ピックアップを傾けた状態において、前記位相差オフトラック信号生成回路が生成した位相差オフトラック信号のデューティーを測定し、漏れ光の影響が大きくなる前記光ピックアップの傾き方向を判別することを特徴とする。
【0018】
請求項4記載の発明は、前記請求項1に記載の光ディスク再生装置において、前記光ピックアップが受光した信号からフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成回路を有し、前記フォーカスエラー信号生成回路で生成したフォーカスエラー信号を用いてサーボ引き込みを行うことを特徴とする。
【0019】
請求項5記載の発明は、前記請求項1に記載の光ディスク再生装置において、前記トラッキングエラー信号生成回路で生成したトラッキングエラー信号を用いてサーボ引き込みを行うことを特徴とする。
【0020】
請求項6記載の発明は、前記請求項2に記載の光ディスク再生装置において、前記光ピックアップが受光した信号からフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成回路を有し、前記フォーカスエラー信号生成回路で生成したフォーカスエラー信号を用いてサーボ追従を行うことを特徴とする。
【0021】
請求項7記載の発明は、前記請求項2に記載の光ディスク再生装置において、前記トラッキングエラー信号生成回路で生成したトラッキングエラー信号を用いてサーボ追従を行うことを特徴とする。
【0022】
請求項8記載の発明は、前記請求項2に記載の光ディスク再生装置において、前記光ピックアップが受光した信号から再生信号を生成する再生信号処理回路を有し、前記再生信号処理回路で生成した再生信号を用いてサーボ追従を行うことを特徴とする。
【0023】
以上により、請求項1〜8記載の発明では、チルト補正機構などの漏れ光対策手段を有さず且つ漏れ光の影響が無視できない光ピックアップを使用する光ディスク再生装置においても、トラッキングアクチュエータ制御装置が漏れ光の影響が軽減される方向に光ピックアップを傾けながらトラッキングサーボ引き込みやトラッキングサーボ追従を行うので、サーボ引き込み中のフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を正しく生成できて、トラッキングサーボ引き込み時のフォーカスドライブ追従やトラッキングサーボ引き込み動作の安定化を図ることが可能となると共に、トラッキングサーボ追従中のフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、再生信号(RF信号)の安定化を図ることができて、トラッキングサーボ追従中のフォーカスサーボ追従、トラッキングサーボ追従の安定化や、再生信号のジッタ向上、S/N向上を図ることが可能となり、光ディスク再生装置の再生能力向上が実現できる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、請求項1〜8記載の発明の光ディスク再生装置によれば、漏れ光の影響が軽減される方向に光ピックアップを強制的に傾けてトラッキングサーボ引き込みやトラッキングサーボ追従を行ったので、チルト補正機構などの漏れ光対策手段を有しなくても、再生信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号を正しく生成できて、サーボ引き込みの安定化、サーボ追従の安定化、光ディスクのデータ再生性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
本発明の実施形態のブロック図を図6に示す。図6において、光ピックアップ20から光ディスク21にレーザー光を照射し、反射光32を光ピックアップ20で検出する。検出された反射光32を再生信号処理回路22に入力して解析することにより、光ディスク21から再生データを読み取ることができる。
【0027】
また、光ピックアップ20で検出されたエラー信号生成用の反射光32をフォーカスエラー信号生成回路23及びトラッキングエラー信号生成回路26に入力し、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号33を生成する。フォーカスエラー信号はフォーカスサーボフィルタ24に入力されてフォーカスアクチュエータ制御信号に変換され、フォーカス制御信号生成回路25を通して光ピックアップ20のフォーカスアクチュエータに伝えることにより、フォーカスアクチュエータを制御している。トラッキング系も同様に、トラッキングエラー信号33をトラッキングサーボフィルタ27で周波数変調してトラッキングサーボフィルタ出力34とし、トラッキング制御信号生成回路28がトラッキングアクチュエータ制御装置31が出力したオフセット印加のための制御値37に基づいてこのトラッキングサーボフィルタ出力34にオフセットを加えることにより、トラッキングアクチュエータ制御信号38に変換して、光ピックアップ20のトラッキングアクチュエータに伝えることにより、光ピックアップ20のトラッキングアクチュエータを駆動制御している。また、トラッキングエラー信号33を位相差オフトラック信号生成回路29に入力することにより、位相差オフトラック信号を生成する。
【0028】
光ディスク21の起動動作の1つにトラッキングサーボを引き込む動作がある。図7は、一般的なトラッキングサーボ引き込み時の動作を示している。同図において、サーボ引き込み中ではトラッキングエラー信号39の周期が遅くなるように、つまり、トラック横断速度が遅くなるように、トラッキングアクチュエータ制御信号40を制御して、トラッキング追従し易いトラック横断速度にすることにより、トラッキングアクチュエータが追従可能な状態にし、トラッキングサーボをトラッキングエラー信号39に追従させる。
【0029】
また、偏芯ディスクに追従しているときのトラッキングエラー信号とトラッキングアクチュエータ制御信号の様子を図8に示す。同図において、トラッキングサーボ追従中のトラッキングエラー信号41の振幅は、偏芯のない標準的なディスクと比べて、偏芯があるディスクの方が、トラッキングサーボを偏芯に追従させる分だけ大きくなる。従って、偏芯追従中のトラッキングアクチュエータ制御信号42も、同様に偏芯に追従させる分だけ制御信号の振幅が大きくなる。また、シーク動作直後などのトラッキング引き込み動作時には、光ピックアップ20が傾き易い状態にあるため、光ピックアップ20が傾いた状態でトラッキングサーボ引き込みしてしまうことがある。
【0030】
図9は光ピックアップ20が傾いた状態でトラッキングサーボ引き込みしたときのトラッキングエラー信号43とトラッキングアクチュエータ制御信号44とを示している。光ピックアップ20が傾いた状態でサーボ引き込みをしてしまっているため、サーボ追従中のトラッキングエラー信号43及びトラッキングアクチュエータ制御信号44が中心から大きくはずれてしまったままサーボ追従してしまい、中心位置に戻るのに時間を要することがある。
【0031】
コスト削減のためにチルト補正機構を搭載していない光ピックアップの場合には、前述したような偏芯の影響やトラッキング引き込み時の状態によって光ピックアップ20が傾いてしまったときに、漏れ光の影響を大きく受けてしまい、エラー信号や再生信号にノイズが重畳してしまったり、S/Nの低下を招いてしまう。
【0032】
図10に、特に内周方向に傾いたときに漏れ光の影響が無視できなくなる光ピックアップを使用した光ディスク再生装置において、偏芯ディスクでトラッキング引き込みを行ったときのトラッキングエラー信号45とトラッキングアクチュエータ制御信号46との様子を示す。トラッキング引き込み時に光ピックアップが内周方向に傾いた状態でトラッキングサーボ引き込みをしてしまっているため、その後トラッキングサーボ追従中に光ピックアップが内周方向に傾く度に、漏れ光の影響でトラッキングエラー信号45にノイズが重畳してしまう。このため、トラッキングアクチュエータ制御信号46が、前記ノイズが重畳したトラッキングエラー信号45に追従してしまい、結果として、トラッキングアクチュエータ制御信号46にもノイズが重畳してしまい、トラッキングサーボ引き込みやフォーカス・トラッキングサーボ追従の安定性が低下してしまう。
【0033】
本課題の回避方法を図11に示す。例えば、前記のように光ピックアップが極端に内周方向に傾いた場合に漏れ光の影響を無視できなくなるような光ピックアップを用いたときの回避方法を以下に示す。この場合には、トラッキングアクチュエータ制御信号48に予めオフセット49を印加することにより、図1に示したトラッキングアクチュエータ制御装置31が、光ピックアップ20を強制的に外周方向に傾ける状態でトラッキングサーボ引き込みを行う。
【0034】
トラッキングアクチュエータ制御装置31が出力する制御値37とオフセット49との関係の一例を図12に示す。トラッキングアクチュエータ制御装置31が出力した制御値(パラメータ)に応じて、トラッキング制御信号生成回路28が前記制御値37をオフセット(電圧)49に変換する。前記制御値37のオフセット49への変換は制御値をM、オフセットをN(V)としたときに係数αを用いて次のように求めることができる。
【0035】
N(V) = α × M
尚、係数αの決定方法に関しては、トラッキングエラー信号の生成方式やシステム構成、制御パラメータに大きく依存するため、システムに最適な値を予め求めておく。
【0036】
前記手法によりトラッキング制御信号生成回路28はトラッキングアクチュエータ制御装置31が出力した制御値37をオフセット49へ変換し、このオフセット49をトラッキングサーボフィルタ27の出力に印加する。トラッキング制御信号生成回路28が印加するオフセット量、つまりトラッキングアクチュエータ制御装置31が出力する制御値37によって、光ピックアップ20を内周方向や外周方向に強制的に傾けて制御することが可能となる。
【0037】
光ピックアップ20が外周方向に傾いた状態でトラッキングサーボ引き込み動作を始めるので、トラッキングサーボ引き込み時に光ピックアップ20が内周方向に傾き難くなって、トラッキングサーボ引き込み時やその引き込み直後に光ピックアップ20が内周方向に傾くことによる漏れ光の影響を軽減することが可能である。
【0038】
また、サーボ追従中も光ピックアップ20を内周方向に傾けないようにトラッキングサーボにオフセット49を印加し続けたり、トラッキング追従に関するパラメータを変更することにより、光ピックアップ20を内周方向へ傾けないように制御することが可能であって、サーボ追従中の漏れ光の影響を軽減することが可能である。
【0039】
前述の例は、光ピックアップ20が極端に内周方向に傾いたときに漏れ光の影響が無視できなくなる場合を想定していたが、極端に外周方向に傾いたときに漏れ光の影響が無視できなくなる光ピックアップの場合も同様であって、このときは、光ピックアップ20が外周方向に傾かないようにオフセットを印加したり、サーボ追従のパラメータを変更してサーボ追従中に外周方向に傾き難くすることにより、漏れ光の影響を軽減することが可能である。
【0040】
光ピックアップ20が内周と外周のどちら方向に傾いたときに漏れ光の影響が大きくなるのかについては、以下に解説する方法を用いて検出することが可能である。
【0041】
図13は、光ピックアップ20が傾いていない状態での位相差オフトラック信号の生成の方法を示す。位相差法で生成されるトラッキングエラー信号を2乗したものが図中の位相差オフトラック信号2値化前信号50であり、図6に示した位相差オフトラック信号生成回路29は前記位相差オフトラック信号2値化前信号50をオフトラック生成閾値51で2値化することにより、位相差オフトラック信号52を生成する。
【0042】
図14は、光ピックアップ20が内周又は外周方向に傾いた状態での位相差オフトラック信号の生成の様子を示す。光ピックアップ20が内周又は外周方向に傾くことにより、漏れ光の影響により、エラー信号生成に使用する反射光32のS/N比が低下したり、受光素子のばらつきにより複数あるエラー信号生成用信号間の信号振幅に差が出ることが原因で位相差が正しく検出できず、オフセット56が位相差オフトラック信号2値化前信号53に重畳してしまう。
【0043】
そのような状態で、光ピックアップ20が傾いていないときに位相差オフトラック信号を生成したときと同じレベルのオフトラック生成閾値54で位相差オフトラック信号55を生成すると、光ピックアップ20が傾いていないときの位相差オフトラック信号52と光ピックアップ20が傾いているときの位相差オフトラック信号55との両デューティー(High/Low比)に差が生じてしまう。つまり、光ピックアップ20を傾けていない状態、光ピックアップ20を内周方向及び外周方向に傾けた状態のそれぞれの位相差オフトラック信号55のデューティーを測定し、光ピックアップ20をどちら方向に傾けたときにデューティーが悪化するかを調べることにより、漏れ光の影響がより大きい方の光ピックアップの傾き方向を調べることが可能である。
【0044】
また、光ピックアップ20を傾けるためにトラッキング制御信号生成回路28に印加するオフセット49を決める手段の一例として、前記手法により測定した位相差オフトラック信号55のデューティー35を利用する方法を挙げる。
【0045】
前記デューティー35のずれ量をX(デューティーが50%のときのずれ量を0、デューティー0%のときのずれ量を−50、デューティー100%のときのずれ量を+50とする)、トラッキングアクチュエータ制御装置31が出力する制御値37の値をYとしたときに、係数βを用いて次のように求めることができる。
【0046】
Y = β × X
尚、係数βの決定方法に関しては、トラッキングエラー信号の生成方式やシステム構成、制御パラメータに大きく依存するため、システムに最適な値を予め求めておく。
【0047】
前記方法により検出した制御値YをオフセットN(V)に変換して、トラッキングサーボフィルタ出力34にオフセットを印加したものをトラッキングアクチュエータ制御信号38としてトラッキングアクチュエータを制御することにより、漏れ光の影響をより大きく受ける方の傾き方向とは反対方向にトラッキングアクチュエータ制御装置31が光ピックアップ20を傾けながら、トラッキング引き込み動作を実施することにより、漏れ光の影響を軽減できるので、トラッキング引き込み時のエラー信号が正しく生成できるようになり、トラッキング引き込み時のトラッキングサーボ動作を安定化させることが可能である。
【0048】
図15は、漏れ光の影響が無視できない光ピックアップ20を使用する光ディスク再生装置において、漏れ光の影響が少なくなる方向に光ピックアップ20を傾けながら、トラッキング引き込み動作を実施することにより、漏れ光の影響を軽減したときのフォーカスエラー信号57とフォーカスアクチュエータ制御信号58とを示している。前記手法により漏れ光の影響を軽減することができているので、トラッキング引き込み時のフォーカスエラー信号57が正しく生成できるようになり、フォーカスアクチュエータ制御信号58を安定化させることが可能になり、トラッキング引きこみ時のフォーカスサーボ動作を安定化させることが可能である。
【0049】
前記漏れ光対策を施した光ディスク再生装置におけるトラッキングエラー信号62とトラッキングアクチュエータ制御信号63との様子を図16に示す。トラッキングサーボ引き込みが終了し、トラッキングサーボ追従状態に入ったときに、前記方法により検出した、漏れ光の影響を大きく受ける方の傾き方向とは反対方向に光ピックアップ20を傾けながら、トラッキングサーボ追従が行えるように、トラッキングアクチュエータ制御装置31がトラッキングサーボ追従のパラメータを変更したり、トラッキングサーボにオフセットを印加するための制御値37を出力し続けることにより、トラッキングサーボ追従中のトラッキングエラー信号62を正しく生成することが可能となり、トラッキングアクチュエータ制御信号63を安定化させることが可能になり、トラッキングサーボ追従性能の安定化を実現できる。
【0050】
また、前記漏れ光対策を施した光ディスク再生装置におけるフォーカスエラー信号64とフォーカスアクチュエータ制御信号65との様子を図17に示す。トラッキングサーボ引き込みが終了し、トラッキングサーボ追従状態に入ったときに、前記方法により検出した、漏れ光の影響を大きく受ける方の傾き方向とは反対方向に光ピックアップ20を傾けながら、トラッキングサーボ追従が行えるように、トラッキングアクチュエータ制御装置31がトラッキングサーボ追従のパラメータを変更したり、トラッキングサーボにオフセットを印加するための制御値37を出力し続けることにより、トラッキングサーボ追従中のフォーカスラー信号64を正しく生成することが可能となり、フォーカスアクチュエータ制御信号65を安定化させることが可能になり、フォーカスサーボ追従性能の安定化を実現できる。
【0051】
漏れ光の影響を無視できない光ピックアップを有する光ディスク再生装置において、漏れ光の影響により、再生信号(RF信号)66にノイズが重畳している様子を図18に示す。漏れ光の影響が再生信号に重畳してしまっているため、ジッタ悪化、エラーレート悪化という症状が現れる結果、光ディスク装置の再生性能の悪化につながってしまう。
【0052】
前記漏れ光対策を施した光ディスク再生装置における再生信号(RF信号)69の様子を図19に示す。前記漏れ光対策を施すことにより、トラッキングサーボが追従状態に入ったときに、トラッキングサーボ追従中の再生信号(RF信号)69を正しく生成することが可能となり、トラッキングサーボ追従中の再生信号(RF信号)69のジッタ向上、S/N比向上につなげることができ、光ディスク再生装置の再生能力の向上を実現できる。
【0053】
尚、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ追従中に光ピックアップ20を傾けながら追従させる手段として、トラッキング制御信号生成回路28にオフセットを印加する方法と、トラッキングサーボ追従のパラメータを変更する方法とを、実施形態として挙げたが、本発明は光ピックアップを傾けながら追従させる手段を前記2種類のものに限定するものではなく、要は、トラッキングアクチュエータ制御装置31がトラッキングサーボフィルタ27の出力にオフセットを加えるための制御値37を出力して、トラッキング制御信号生成回路28が前記トラッキングサーボフィルタ27の出力と、前記トラッキングアクチュエータ制御装置31の制御値37とに基づいて、トラッキングアクチュエータ制御信号を生成する構成とすれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明は、従来漏れ光対策で使用していた装置である光ピックアップのチルト補正機構を必要とせず、トラッキングアクチュエータ制御装置やトラッキングアクチュエータ傾き検出回路などの一般的な光ディスク再生装置に搭載されている装置や回路を利用して、光ピックアップに対する漏れ光の影響を最小限に抑えることが可能となるので、光ピックアップのコスト削減効果が期待できると共に、トラッキングサーボ引き込み能力の向上、再生中のサーボ安定性の向上、再生能力の向上を図った光ディスク再生装置として、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来の光ディスク再生装置の全体ブロック図である。
【図2】同従来の光ディスク再生装置に備える位相差トラッキングエラー信号生成回路の構成を示す図である。
【図3】同従来の光ディスク再生装置において位相差トラッキングエラーが生成される過程を示す図である。
【図4】4つの信号のうち1つの信号の検出レベルが低下した場合に位相差トラッキングエラーが生成される過程を示す図である。
【図5】4つの信号のうち1つの信号にノイズが重畳した場合に位相差トラッキングエラーが生成される過程を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の光ディスク再生装置の全体ブロック構成を示す図である。
【図7】トラッキングサーボの引き込み動作を説明する図である。
【図8】偏芯ディスクに追従するときのトラッキングエラー信号とトラッキングアクチュエータ制御信号との様子を示す図である。
【図9】光ピックアップが内周方向に傾きながらサーボ引き込みする際のトラッキングエラー信号とトラッキングアクチュエータ制御信号との様子を示す図である。
【図10】漏れ光の影響でノイズが重畳した場合のトラッキングエラー信号とトラッキングアクチュエータ制御信号との様子を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施形態の光ディスク再生装置において漏れ光の影響を軽減した場合のトラッキング信号とトラッキングアクチュエータ制御信号との様子を示す図である。
【図12】トラッキングアクチュエータ制御装置が出力する制御値とオフセットとの関係を示す図である。
【図13】漏れ光の影響がないときの位相差オフトラック信号を示す図である。
【図14】漏れ光の影響がある場合の位相差オフトラック信号を示す図である。
【図15】本発明の第1の実施形態の光ディスク再生装置において漏れ光対策を施したときのフォーカスエラー信号などを示す図である。
【図16】同光ディスク再生装置において漏れ光対策を施したときのサーボ追従中でのトラッキングエラー信号とトラッキングアクチュエータ制御信号とを示す図である。
【図17】同光ディスク再生装置において漏れ光対策を施したときのサーボ追従中でのフォーカスエラー信号とトラッキングアクチュエータ制御信号とを示す図である。
【図18】漏れ光の影響によってノイズが重畳した再生信号(RF信号)などを示す図である。
【図19】本発明の第1の実施形態の光ディスク再生装置において漏れ光対策によって正常に生成された再生信号(RF信号)などを示す図である。
【符号の説明】
【0056】
21 光ディスク
20 光ピックアップ
22 再生信号処理回路
23 フォーカスエラー信号生成回路
24 フォーカスサーボフィルタ
25 フォーカス制御信号生成回路
26 トラッキングエラー信号生成回路
27 トラッキングサーボフィルタ
28 トラッキング制御信号生成回路
29 位相差オフセット信号生成回路
30 アクチュエータ傾き検出回路
31 トラッキングアクチュエータ制御装置
32 トラッキングエラー信号
33 トラッキングアクチュエータ制御信号
49 オフセット
50 位相差オフトラック2値化前信号
51 オフトラック生成閾値
52 オフトラック信号
57 フォーカスエラー信号
59 フォーカスアクチュエータ制御信号
66 RF信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクにレーザーを照射して反射光を受光するための光ピックアップと、
前記光ピックアップが受光した信号からトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成回路と、
前記トラッキングエラー信号から前記光ピックアップのトラッキングアクチュエータを駆動するための制御信号を生成するためにトラッキングエラー信号を周波数変調させるトラッキングサーボフィルタと、
前記トラッキングサーボフィルタの出力にオフセットを加えるための制御値を出力するトラッキングアクチュエータ制御装置と、
前記トラッキングサーボフィルタの出力と、前記トラッキングアクチュエータ制御装置の制御値とに基づいて、トラッキングアクチュエータ制御信号を生成するトラッキング制御信号生成回路と、
前記トラッキングエラー信号に基づいて位相差法により位相差オフトラック信号を生成する位相差オフトラック信号生成回路と、
トラッキングアクチュエータの傾き方向を検知するアクチュエータ傾き検出回路とを有し、
前記トラッキング制御信号生成回路が、
前記トラッキングアクチュエータ制御装置が出力した制御値に応じたオフセットを加えて、光ピックアップを傾けた状態で制御し、トラッキングサーボ引き込みを行う
ことを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の光ディスク再生装置において、
前記トラッキング制御信号生成回路は、
前記トラッキングアクチュエータ制御装置が出力した制御値に応じたオフセットを加えて、光ピックアップを傾けた状態で、トラッキングサーボ追従をも行う
ことを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載の光ディスク再生装置において、
前記トラッキング制御信号生成回路は、
前記トラッキングサーボフィルタの出力に応じた前記トラッキング制御信号生成回路の出力に前記トラッキングアクチュエータ制御装置が出力した制御値に応じたオフセットを加えて、光ピックアップを傾けた状態において、前記位相差オフトラック信号生成回路が生成した位相差オフトラック信号のデューティーを測定し、漏れ光の影響が大きくなる前記光ピックアップの傾き方向を判別する
ことを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項4】
前記請求項1に記載の光ディスク再生装置において、
前記光ピックアップが受光した信号からフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成回路を有し、
前記フォーカスエラー信号生成回路で生成したフォーカスエラー信号を用いてサーボ引き込みを行う
ことを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項5】
前記請求項1に記載の光ディスク再生装置において、
前記トラッキングエラー信号生成回路で生成したトラッキングエラー信号を用いてサーボ引き込みを行う
ことを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項6】
前記請求項2に記載の光ディスク再生装置において、
前記光ピックアップが受光した信号からフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成回路を有し、
前記フォーカスエラー信号生成回路で生成したフォーカスエラー信号を用いてサーボ追従を行う
ことを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項7】
前記請求項2に記載の光ディスク再生装置において、
前記トラッキングエラー信号生成回路で生成したトラッキングエラー信号を用いてサーボ追従を行う
ことを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項8】
前記請求項2に記載の光ディスク再生装置において、
前記光ピックアップが受光した信号から再生信号を生成する再生信号処理回路を有し、
前記再生信号処理回路で生成した再生信号を用いてサーボ追従を行う
ことを特徴とする光ディスク再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2009−158078(P2009−158078A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215277(P2008−215277)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】