説明

光ディスク装置

【課題】収差補正手段を備えた光ディスク装置において、収差補正手段を構成する補正レンズに位置ずれが生じた場合でも、確実にリカバリ処理を行うことが出来る。
【解決手段】球面収差調整機構を備えた光ディスク装置において、記録再生準備完了状態に遷移したあと、任意の契機で収差補正手段の駆動手段を駆動させて収差補正レンズの再位置づけ処理を行うことで、補正レンズに位置ずれが生じた場合でも、確実にリカバリ処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は収差補正を行なう光ディスク装置に関するものであり、特に収差補正レンズの位置ずれリカバリ処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の光ディスク装置における高密度記録を行う手段の一つとして対物レンズの高NA化が上げられる。しかし、高NA化は光ディスクの保護層の厚み誤差によって生じる球面収差が増大するため、球面収差を補正する補正手段が必要である。
球面収差補正手段としては特許文献1が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−344274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ディスク装置は一般に、光ディスクをローディングしてサーボ、信号処理等の調整を行った後に記録再生準備完了状態に遷移し、以降光ディスクに対して記録または再生可能となる。収差補正手段は、ディスク毎にばらつく光ディスクの保護層の厚み誤差によって発生する球面収差を補正するため、サーボ、信号処理等の調整の一つとして行う必要がある。そして、一度収差補正調整を行えば、光ディスクがイジェクトされるまで再調整する必要はなく、通常であれば収差補正手段の駆動手段を動作させる必要はない。
【0005】
しかし、収差補正手段の駆動手段として、特許文献1に挙げられるような圧電素子を用いた駆動手段やモータを用いた駆動手段を使用した場合、以下のような点について考慮されていなかった。
【0006】
圧電素子を用いた駆動手段の場合、移動後の収差補正レンズの自己保持力は摩擦力を利用している。またモータを用いた駆動手段の場合、移動後の自己保持力は、リードスクリューとラックとのかみ合いで行っている。このように自己保持力で収差補正レンズを保持している場合、収差補正レンズに自己保持力を超える振動、衝撃が加わると収差補正レンズに位置ずれが発生する可能性がある。収差補正レンズに位置ずれが発生すると、光ディスク上のスポットに球面収差が生じるため記録、再生品質が劣化することになる。
【0007】
光ディスク装置は、ディスクカメラなどモバイル用途に使用されることもあり、振動や衝撃が光ディスクに印加される契機は増加している。よって収差補正レンズの位置ずれに対する対策が重要になっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、光ディスク装置が記録再生準備完了状態に遷移したあと、任意の契機で収差補正手段の駆動手段により収差補正レンズを駆動し再位置づけ処理を行う。
【0009】
収差補正レンズを再位置づけ処理する一契機として、光ディスク上の現在アドレスから、他のアドレスに移動するシーク処理を行った後がある。
【0010】
また、再位置づけ処理する他の一契機として、光ディスク装置に対し外部から振動または衝撃が加わった後に再位置づけ処理がある。このとき、光ディスク装置に加速度検出手段を設け、加速度検出手段があらかじめ設定した閾値以上の加速度を検出した場合に収差補正レンズの再位置づけ処理を行うことより効率よく処理を行う。
【0011】
また、光ディスク装置を制御するコントローラから一定時間アクセスがない場合に装置内の一部機能を休止するスタンバイモードに遷移し、コントローラからアクセスがあった時点でスタンバイモードから復帰して要求された動作を行う構成とし、収差補正レンズを再位置づけ処理する一契機としてスタンバイモードから復帰した際とする。
【0012】
また、収差補正手段は、収差補正レンズの位置を検出する位置検出手段を有しており、収差補正調整時の収差補正レンズの位置情報を記憶する構成とし、収差補正レンズを再位置づけ処理する一契機として位置検出手段から得られる位置情報と、収差補正調整時の位置情報の差があらかじめ設定した閾値を超えたことを検出した場合とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、収差補正手段を備えた光ディスク装置において、収差補正手段を構成する補正レンズに位置ずれが生じた場合でも、確実にリカバリ処理を行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施例について図1〜図5を用いて説明する。図5に本発明の一実施例の光ディスク装置10の概略構成図を示す。図5に示される光ディスク装置10は、光ディスク11を回転駆動するためのディスクモータ12、光ピックアップユニット13、モータドライバ18、信号処理とサーボ回路19、インターフェイス20、コントローラ21、加速度検出手段22を含んでいる。光ピックアップユニット13は、収差補正レンズ1、駆動手段16、位置検出手段17を含む収差補正手段14を含んでいる。なお、光ピックアップユニット13は、収差補正手段14以外に、光源としての半導体レーザ、半導体レーザから発せられた光束を光ディスク11まで導くとともに、光ディスク11で反射された戻りの光束を所定の受光位置まで導く光学系、戻りの光束を受光する受光手段、アクチュエータ、シークモータ等の駆動系などを含んでいるが、図5では省略されている。
【0015】
図1は本発明の1実施例を示す光ディスク装置10の動作処理を説明した図である。光ディスク装置10に光ディスク11を挿入すると(101)、光ディスク装置10は挿入された光ディスク11を認識し、光ディスク11に合わせたサーボ、信号処理等の調整処理を行い、光ディスク11にあらかじめ読み出しておく必要があるデータが存在する場合はそのデータの読み出した後(102)、記録、再生準備完了状態に遷移する(104)。以降、光ディスク装置10を制御するコントローラ21は光ディスクに対して、記録または再生を行うことが出来る。収差補正手段14を用いた球面収差調整は、サーボ、信号処理等の調整の一つとして行われ、挿入された光ディスク11に対して適切な位置に収差補正レンズ1を位置づけする(103)。
【0016】
収差補正手段14は収差補正レンズ1と駆動手段16を備え、駆動手段16を動作させて収差補正レンズ1を駆動し、駆動手段16を停止させると、収差補正レンズ1は自己保持力によってその位置に留まる。球面収差調整は、記録、再生準備完了状態に遷移する前に行われるが、記録、再生準備完了状態に遷移した後でも任意の契機で収差補正手段の駆動手段を動作させて、収差補正レンズ1を適切な位置へ再位置づけする処理を行う(105)。これにより、記録、再生準備完了以降、外部から衝撃を受ける等により収差補正レンズ1に位置ずれが生じた場合でも、適切な位置に修正することができる。
【0017】
図2に収差補正手段14の構造について説明する。図2(a)は、収差補正手段14の収差補正レンズ1近傍の概観図である。収差補正レンズ1は、収差補正レンズホルダ2によって保持され、ガイドバー3a、3bによって、図中の矢印方向に移動可能な構造になっている。そして矢印方向への移動は、駆動手段16により行う。図2(b)に圧電素子方式のアクチュエータを駆動手段16に用いた構造を示す。圧電素子方式アクチュエータ4はガイドバー3aを兼用した構造になっており、圧電素子方式アクチュエータ4の伸縮を利用して収差補正レンズ1、収差補正レンズホルダ2を駆動する。
【0018】
収差補正レンズホルダ2と圧電素子方式アクチュエータ4の間には摩擦力が働き、圧電素子方式アクチュエータ4を駆動していないときには摩擦力による自己保持力で収差補正レンズ1、収差補正レンズホルダ2はその位置に留まる。図2(c)は駆動手段16にリードスクリュー6を備えたモータ7を駆動手段16に用いた構造を示す。
【0019】
モータ7に取り付けられたリードスクリュー6と収差補正レンズホルダ2に取り付けられたラック5がかみ合った状態になっており、モータ7を回転させると収差補正レンズ1、収差補正レンズホルダ2を駆動することが出来る。またモータ7が停止しているときには、リードスクリュー6も回転していないのでかみ合ったラック5もその位置に留まり続ける。
【0020】
次に図3により収差補正レンズ1の位置ずれ発生要因について説明する。球面収差調整を行った後、収差補正レンズ1は適切な位置に位置づけされた状態にある(103)。この状態で収差補正手段14は自己保持力により収差補正レンズ1が動かない構造になっている。
【0021】
しかし、外部から外力が収差補正手段14に加わり(106)、それが自己保持力を超えた場合、収差補正レンズ1は球面収差調整した位置から動いてしまい、適切なレンズ位置に対して位置ずれを発生する(107)。位置ずれを発生させる外力の限界は、圧電素子を使用した駆動手段16のときは摩擦力を超えた場合であり、モータ7を使用した駆動手段16のときはリードスクリュー6とラックの5かみ合わせがはずれ、いわゆる歯飛びが発生した場合である。
【0022】
外力が発生する要因としては、光ディスク装置10に外部から振動や衝撃が加わったときや、光ディスク装置10内部の駆動系の動作が収差補正手段14に影響を与えたときなどが考えられる。よって、収差補正レンズ1に位置ずれが発生した場合に、元の位置に再位置づけする処理を行う(105)必要がある。
【0023】
上記を達成するためには、再位置づけ処理を行う契機を設ける必要がある。それらの契機について図4により説明する。
【0024】
収差補正手段14が外力を受ける要因の一つとして、シーク処理が挙げられる。シーク処理は光ディスク11上の現在アドレスから他のアドレスに移動することであり、光学部品を搭載した光ピックアップユニット13を移動させる処理を行う。収差補正手段14はこの光ピックアップユニット13に搭載されるため、シーク処理を行った場合その加減速に伴い収差補正手段は外力を受けることになる。よって、シーク処理実行後に(108)、再位置づけ処理を行う契機を設ける。
【0025】
また、他の外力を受ける要因の一つとして、光ディスク装置10自体に外部から振動、衝撃が印加されることが挙げられる。これは特に光ディスク装置10をディスクカメラ等のモバイル用途に用いた場合に多い。つまり、モバイル用途で使用している光ディスク装置10に対し、使用中に振り回したり、ぶつけたりしてしまうことで振動や衝撃を印加してしまう場合である。
【0026】
よって、光ディスク装置10に振動や衝撃が印加された後に(109)、収差補正レンズ1の再位置づけ処理を行う契機を設けておく。ここで、光ディスク装置10に加速度を検出する加速度検出手段22を設け加速度検出手段22があらかじめ設定した閾値以上の加速度を検出した場合に再位置づけ処理を行うと効率よく処理を行うことが出来る。加速度検出手段22としては、例えば半導体加速度センサなどが挙げられる。
【0027】
また、収差補正レンズ1の再位置づけ処理契機として、光ディスク装置10がスタンバイモードから復帰した後に行うことも有効である。光ディスク装置10は、光ディスク装置10を制御するコントローラ21から一定時間アクセスがない場合に装置内の一部機能を休止するスタンバイモードに遷移し、省電力化を行う。スタンバイモードからはコントローラ21からアクセスがあった時点で通常モードに復帰して、コントローラ21から要求された動作を行う。
【0028】
ところでスタンバイモード中に光ディスク装置10に振動や衝撃が印加され、収差補正レンズ1に位置ずれが発生している可能性がある。しかし光ディスク装置10は、スタンバイモード中には機能を停止しているため収差補正レンズ1に位置ずれが発生するような事象が発生したかどうか検出することが出来ない。よって、スタンバイモードから通常モードに復帰した後に(110)、再位置づけ処理を行うことで収差補正レンズ1の位置を補償することが出来る。
【0029】
また、収差補正手段14に収差補正レンズ1の位置を検出する位置検出手段17を設けることで効率よく再位置づけ処理を行うことが出来る。まず球面収差調整を行った際、調整後の収差補正レンズ1の位置を検出して記憶する。次に、光ディスク装置10が記録再生準備完了状態に遷移したあと随時、位置検出手段17により収差補正レンズ1の位置を検出する。球面収差調整後の位置と、現在の収差補正レンズ1の位置との差があらかじめ設定した閾値を越えていた場合(111)、再位置づけ処理を行い収差補正レンズ1の位置を適切な位置に移動する。この方法により収差補正レンズ1に位置ずれが発生したときのみ収差補正手段14により再位置づけ処理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例を示した図で、収差補正手段の再位置づけ処理を説明した図である。
【図2】収差補正手段の構造について説明した図である。
【図3】収差補正手段の位置ずれ発生要因について説明した図である。
【図4】本発明の実施例を示した図で、収差補正手段の再位置づけ処理の契機を説明した図である。
【図5】本発明の実施例の光ディスク装置の概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0031】
1…収差補正レンズ
2…収差補正レンズホルダ
3a、3b…ガイドバー
4…圧電素子方式アクチュエータ
5…ラック
6…リードスクリュー
7…モータ
10…光ディスク装置
11…光ディスク
12…ディスクモータ
13…光ピックアップユニット
14…収差補正手段
16…駆動手段
17…位置検出手段
18…モータドライバ
19…信号処理とサーボ回路
20…インターフェイス
21…コントローラ
22…加速度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに記録、または再生を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスク装置にローディングした前記光ディスクに対して、サーボ、信号処理を含む調整を行った後に、記録再生準備完了状態に遷移し、以降光ディスクに対して記録または再生可能となり、
収差補正レンズと前記収差補正レンズを駆動する駆動手段を有する収差補正手段を備え、
前記収差補正レンズは、前記駆動手段により駆動されていないときには、自己保持力により停止しており、
前記収差補正手段は、前記調整時に前記駆動手段により前記収差補正レンズを移動させる収差補正調整を行い、前記収差補正調整終了後前記駆動手段による前記収差補正レンズの駆動を停止し、前記記録再生準備完了状態に遷移したあと、前記駆動手段により前記収差補正レンズを再位置づけ処理することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ディスク装置において、前記駆動手段は圧電素子を使用した構成であり、圧電素子の伸縮を利用して前記収差補正レンズを駆動し、
前記圧電素子が伸縮していないときには前記収差補正レンズは、摩擦力を利用して停止位置を保持することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1記載の光ディスク装置において、前記駆動手段はリードスクリューと前記リードスクリューを回転するモータからなり、前記収差補正レンズに設けられたラックと前記リードスクリューとをかみ合わせ、前記モータを回転させることにより前記収差補正レンズを駆動し、
前記モータが回転していないときには前記収差補正レンズは、前記リードスクリューと前記ラックのかみ合わせによって停止位置を保持することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1記載の光ディスク装置において、光ディスク上の現在アドレスから、他のアドレスに移動するシーク処理を行った後、前記駆動手段により前記収差補正レンズを駆動し再位置づけ処理することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1記載の光ディスク装置において、光ディスク装置に対し外部から振動または衝撃が加わった後、前記駆動手段により前記収差補正レンズを駆動し再位置づけ処理することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
請求項5記載の光ディスク装置において、加速度検出手段を設け、前記加速度検出手段があらかじめ設定した閾値以上の加速度を検出した場合、前記駆動手段により前記収差補正レンズを駆動し再位置づけ処理することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項7】
請求項1記載の光ディスク装置において、前記光ディスク装置を制御するコントローラを備え、前記コントローラから一定時間アクセスがない場合に一部機能を休止するスタンバイモードに遷移し、前記コントローラからアクセスがあった時点で前記スタンバイモードから復帰して要求された動作を行い、
前記スタンバイモードから復帰した際に、前記駆動手段により前記収差補正レンズを駆動し再位置づけ処理することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
請求項1記載の光ディスク装置において、前記収差補正手段は、前記収差補正レンズの位置を検出する位置検出手段を有しており、前記収差補正調整後の収差補正レンズの位置情報を記憶し、
前記位置検出手段から得られる位置情報と、前記記憶された位置情報の差があらかじめ設定した閾値を超えたことを検出した場合、前記駆動手段により前記収差補正レンズを駆動し再位置づけ処理することを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−204516(P2008−204516A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37291(P2007−37291)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】