説明

光ディスク装置

【課題】青色レーザを搭載した光ディスク装置では、レーザ出力を瞬時に切り替える記録開始時に色収差が発生し、光ディスクの色収差はレーザ光の焦点距離が変化しデフォーカス状態となる。新たな光学部品を追加せずに、色収差によるデフォーカスを許容範囲内に抑制する。
【解決手段】任意にレーザ出力を変化させる手段を有する光ディスク装置において、記録開始時にレーザ出力を再生パワーから記録パワーまで段階的に切り替える。また、レーザ出力の切り替えに連動して、光ディスク上を移動するレーザ光スポットの線速度を任意に変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
青色レーザダイオードを用いる光ディスク装置おいて、レーザ出力切り替え時に色収差が発生しレーザ光の焦点距離が変化する問題がある。特許文献1には、この問題対する解決手段として、色収差補正素子を用いて、色収差によるレーザ光の焦点距離変化を抑制可能な光ピックアップ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−319062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ディスク装置では、記録開始時に、レーザ出力を図1(a)に示す様に、記録開始時刻P点にて再生パワーPrから記録パワーPoに瞬時に切り替える。青色レーザを搭載した光ディスク装置では、レーザ出力を瞬時に切り替える記録開始時に色収差が発生し、光ディスクの色収差はレーザ光の焦点距離が変化しデフォーカス状態となる課題がある。
【0005】
光ディスク装置は、デフォーカス量を検出するフォーカスエラー信号を指標に、デフォーカスを図1(b)に示す様な許容範囲内に抑制するフォーカスサーボ制御を行う。図1(b)に示すt1の間の様に、色収差により許容範囲を超えるデフォーカス状態となると、フォーカスサーボが不安定となり、正常に記録動作が行えない恐れがある。
【0006】
本発明の課題は、新たな光学部品を追加することなく、色収差によるデフォーカスを許容範囲内に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、例えば、特許請求の範囲に記載の発明により解決される。
【0008】
本発明は、例えば、任意のレーザ出力に変化させる手段を用いて、記録開始時にレーザ出力を再生パワーから記録パワーに段階的に上昇させ記録を行うことを特徴とする光ディスク装置により実現される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ディスク装置に新たな光学部品を追加することなく、記録開始時の色収差によるデフォーカスを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】再生パワーから記録パワーに瞬時に切り替え記録を行う際の、時刻に応じたレーザ出力の変化と、フォーカスエラー信号の変化を示す
【図2】本発明の光ディスク装置が記録を行う際の、レーザ出力と時刻の関係と、時刻に応じたレーザ出力の変化と、フォーカスエラー信号の変化を示す
【図3】本発明の光ディスク装置が記録を行う際の、レーザ出力の切り替えと同期して、レーザ出力と時刻の関係と、時刻に応じたレーザ出力の変化と、線速度の変化を示す
【図4】本発明の光ディスク装置を実現する構成を示す
【図5】本発明の光ディスク装置が記録するデータの順序を示す
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態では光ディスクに任意のレーザ出力に変化させ記録する手段を搭載した光ディスク装置において、図2(a)に示す様に、記録開始時にレーザ出力を再生パワーPrから記録パワーPoまで段階的に切り替える。色収差によるデフォーカス量はレーザ出力の変化量に比例する為、その際のフォーカスエラー信号は、図2(b)に示す様に、P点からQ点までの間にレーザ出力の変化量に比例するデフォーカス量Δfを検出する。レーザ出力をPrからPoへ瞬時に切り替えた場合と比較し、段階的に上昇させた場合はレーザ出力の変化量が小さく、フォーカスエラー信号の検出するデフォーカス量Δfは、図1(b)の様に瞬時に切り替えた場合に検出するΔf’と比べ小さく許容範囲内のデフォーカス量に抑制できる。上記の通りに記録開始時にレーザ出力を段階的に上昇させることで、一度に発生する色収差によるデフォーカス量を抑制可能となる。
【0012】
上記の動作は、例えば図4に示す構成の光ディスク装置にて実現される。レーザ出力の制御は、システムコントローラ8がレーザダイオードドライバ5に設定するレーザ出力値を、再生パワーから記録パワーへ段階的に変化させることで行う。フォーカスエラー信号は、光ディスク1で反射されたレーザ光を光ピックアップ4にて電気信号へ変換し、プリアンプ6にて信号を増幅し、システムコントローラ8にて検知する。フォーカスサーボ制御は、検知したフォーカスエラー信号に応じてシステムコントローラ8がレンズアクチュエータドライバ7にレンズの移動量を設定し、光ピックアップ4のレンズを動かすことで行う。
【0013】
上記図2に示した例では、再生パワーPrから記録パワーPoへ段階的に変化させるために5段階の中間パワーP1、P2、P3、P4、P5を設けたが、本発明は中間パワーの段数を5つに限定するものではない。中間パワーと段数は、許容範囲内のデフォーカス量に収まる様にレーザ出力の変化量を設定する。例えば、Pr=0.3mW、Po=12.3mWで記録する際に、レーザ出力の変化量が3mWよりも大きい時に許容範囲を超える場合は、3mWよりも小さい2mW毎上昇させるP1=2.3mW、P2=4.3mW、P3=6.3mW、P4=8.3mW、P5=10.3mWの5段階の中間パワーを設ける。
【0014】
また、レーザ出力を再生パワーPrから中間パワーを経て段階的に記録パワーPoまで上昇させる時間(図2のΔt)は、フォーカスサーボ制御がデフォーカスを収束させるのに十分な時間を設定する。例えば、再生パワーPr=0.3mWから5段階の2mW間隔上昇させる中間パワーを経て記録パワーPo=12.3mWまで段階的に切り替えて記録を行うとする。その際に2mWのレーザ出力変化は色収差によりデフォーカス量Δfを発生させ、デフォーカス量Δfの収束時間をt1として、レーザ出力の段階的な切り替えはt1の6倍以上の時間を掛けて行う。
【0015】
また本実施形態の光ディスク装置は、光ディスク上を移動するレーザ光スポットの線速度が遅ければ、記録の必要とするレーザ出力が低くなるのを利用して、記録開始時に再生パワーから記録パワーまで段階的にレーザ出力を切り替える間の線速度を所望の記録速度よりも低速にして記録を行っても良い。段階的に切り替えるそれぞれのレーザ出力が、記録の必要とするレーザ出力となる様に線速度を制御する。例えば、図3(a)の様な記録開始時にPrからP1に瞬時に切り替え、その後P1かPoまで無限の段階を経てレーザ出力を切り替えて記録を行うとする。その際にP1が記録の必要とするレーザ出力となる線速度をS1として、図3(b)の様に線速度をS1からSoまで段階的に切り替えて記録を行う。
【0016】
上記の動作は、例えば図4に示す構成の光ディスク装置にて実現される。レーザ出力制御は前述の任意のレーザ出力に切り替える手段を用いて行い、レーザ出力制御と同期して、システムコントローラ8がスピンドルモータドライバ3に設定する回転速度を変更し、スピンドルモータ2により光ディスク1を任意の速度で回転させることで線速度の切り替えを行う。
【0017】
本実施形態の光ディスク装置は、上記の図2に示した様なレーザ出力を再生パワーから記録パワーまで段階的に切り替える間に記録されるべきデータを、記録パワーに切替った後の時刻に記録しても良い。例えば図5(a)に示す様に、記録されるべきデータは記録開始時刻P点から順にデータA、データB、データC、データDであるとする。図5のQ点を図2 のQ点と同じ時点として、P点からQ点はまでのレーザ出力は記録の必要とするレーザ出力のため、適切にデータAが記録されない恐れがある。そこでデータAを記録パワーに切替った後の時点である図5(b)に示す様にR点から記録する。或いは図5(c)に示す様に記録するデータの順序は変更せずに、Q点から順にデータA、データB、データC、データDを記録する。
【0018】
また本実施形態の光ディスク装置は、上記の図2に示した様なレーザ出力を再生パワーから記録パワーまで段階的に切り替える間に光スポットが移動する領域をディフェクト領域として扱っても良い。例えば図5(b)に示すP点からQ点までの領域をディフェクト領域として管理領域に記録する。
【0019】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 光ディスク
2 スピンドルモータ
3 スピンドルモータドライバ
4 光ピックアップ (OPU)
5 レーザダイオードドライバ (LDD)
6 プリアンプ
7 レンズアクチュエータドライバ
8 システムコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク装置において、
任意のレーザ出力に変化させる手段を有し、
記録開始時にレーザ出力を、再生を行うレーザ出力である再生パワーから記録を行うレーザ出力である記録パワーまで段階的に切り替えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ディスク装置において、
レーザ出力の切り替えに連動して、光ディスク上を移動するレーザ光スポットの線速度を、任意に変化させる手段を有し、
レーザ出力を再生パワーから記録パワーまで段階的に切り替える時のレーザ出力が、記録に必要となるレーザ出力となる様に、
レーザ出力の切り替えと連動して、所望の記録速度よりも低速から所望の記録速度まで、線速度を段階的に切り替えて記録を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1記載の光ディスク装置において、
レーザ出力を再生パワーから記録パワーまで段階的に切り替える間に記録すべきデータを、記録パワーに切替った後の時刻に記録することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1記載の光ディスク装置において、
レーザ出力を再生パワーから記録パワーまで段階的に切り替える間にレーザ光スポットが移動した領域を、ディフェクト領域として扱うことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−100513(P2011−100513A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254554(P2009−254554)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】