説明

光ディスク装置

トラッキングディテクタから得られる第1、第2の検出信号のレベルを調整するバランス調整回路(6)と、調整された第1、第2の検出信号の差信号を生成する差動回路(8)と、差信号をデジタル信号に変換するAD変換回路(10)と、デジタル変換差信号からウォブル信号を検出するウォブル信号検出回路(14)と、調整された第1、第2の検出信号の和信号を生成する加算回路(30)と、和信号を2値化信号に変換する2値化回路(32)と、2値化信号をラッチしてタイミング信号に変換するラッチ回路(33)と、タイミング信号およびデジタル変換差信号に基づいて制御信号を生成する制御信号生成回路(34)と、制御信号に基づきデジタル変換差信号中に含まれる残留信号成分を除去してLPP検出信号を出力する残留成分除去回路(18)と、LPP検出信号からアドレス情報を検出するアドレス検出回路(21)とを備える。簡略な構成によりウォブル信号とLPP信号とを確実に検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、デジタル光ディスクに対して、信号の記録あるいは再生を行うための光ディスク装置に関する。
【背景技術】
情報の記録/再生を行う光ディスクの一つのフォーマットとして、DVD−R/RWが用いられている。このDVD−R/RWフォーマットの第1の特徴は、DVD−ROMフォーマットとの互換性を高めるために、アドレス情報が、光ディスクの案内溝(グルーブとも呼ぶ)の間隙部のランドに形成されることである。このアドレスは、「ランドプリピットアドレス」または「LPPアドレス」と称される。
第2の特徴は、案内溝が一定の周期で半径方向に揺動されウォブルが形成されていることである。ウォブルに基づいて得られるウォブル信号は、情報の記録および再生を行うクロックを生成するためのリファレンス信号として利用される。
このようなフォーマットについて、図6を参照して説明する。図6は、光ディスクの溝形状を模式的に示した図であり、情報がマークとして記録される領域であるトラックが、グルーブ101により形成されている。各グルーブ101の間には、ランド102が形成されている。グルーブ101には記録マーク103が形成され、ランド102上にはランドプリピット104が形成されている。図示されるように、グルーブ101は、横方向すなわち光ディスクの半径方向にうねって、ウォブルを形成している。DVD−RディスクやDVD−RWディスクにおいては、ウォブル周期は記録クロック周期の186倍である。また、ランドプリピット104は、アドレス情報がエンコードされているほか、ディスク上の正確な位置を検出するために用いられる。
図6には、トラッキングディテクタ105が示されている。トラッキングディテクタ105は、光ヘッド(図示せず)の要素の一部として設けられ、光ディスクによって反射されたレーザ光を検出して、グルーブ101にレーザ光を追従させるためのトラッキングサーボ用信号を生成する。図6には、トラッキングディテクタ105が、トラックに沿った方向(トラック方向)の分割線106によって、2つのトラッキングディテクタAおよびBに分割されている様子が示される。換言すれば、トラッキングディテクタAおよびBは、光ディスクの半径方向に並んで配置されている。トラッキングディテクタAおよびBは、光ディスクによって反射されたレーザ光の光量をそれぞれ検出する。
トラッキングディテクタ105による検出信号は、トラッキングサーボ用の信号だけでなく、他の信号の検出にも用いられる。LPPアドレス情報は、トラッキングディテクタ105からの複数の光量信号の差をとった差動信号に基づいて検出される。また、記録/再生された情報は、複数の光量信号の和をとった加算信号に基づいて検出される。アドレス情報の検出と同様に、ウォブル信号も、複数の光量信号の差をとった差動信号に基づいて検出される。図6には、ウォブル検出及びLPPアドレス検出のために、ディテクタAおよびBの出力が、所定の処理を施された後、ウォブル検出用差動増幅器107及びLPP検出差動増幅器108に入力され、その差を表す差動信号にそれぞれ変換されることが示されている。
図6に示すように、従来の光ディスク装置では、ウォブル検出用差動増幅器107と、LPP検出差動増幅器108とを別個に設けていた(例えば、特開2002−216363号公報参照。)。その理由は、以下のとおりである。
DVD−R/RWのフォーマットでは、上述のように、情報を記録するための案内溝がウォブルを設けて形成されている。局所的にみれば、光ヘッドの位置は、トラックに対して一定の周波数でトラック中心から変位する。したがって、情報記録時においては、2個のトラッキングディテクタA、Bに入射する光量にアンバランスを生じ、記録信号がアドレス信号へ混入する。
図7の波形(a)〜(d)は、光ディスク装置による記録時の各部波形を示す。波形(a)および(b)は、各々トラッキングディテクタA、Bの出力信号波形を示す。トラッキングディテクタA、Bは、同一の光スポットが反射された光を検出するので、その出力は、一方の光量が増加すれば他方の光量が減少するという関係になる。また、検出レベルは異なるが、トラッキングディテクタA、Bのいずれも、ランドプリピット104を検出する。
図7では、実線で示される記録信号成分S、破線のエンベロープで示されるウォブル信号成分W、LPP信号La、Lbが強調して描かれている。記録信号成分Sは、波形(a)と(b)では同相である。ウォブル信号成分Wは、波形(a)と(b)では逆相である。LPP信号La、Lbは、ウォブル信号成分Wを示すエンベロープの、左右のピークに位置する。左側ピークでは、記録信号がLPPの上に照射された場合(ピークパワー照射)のLPP信号Laが示され、右側ピークでは、LPPが記録信号の照射の谷間に入った場合(ボトムパワー照射)のLPP信号Lbが示される。また、波形(a)における左側のLPP信号Laの位置では、出力信号はエンベロープより大きくなるが、波形(b)における左側のLPP信号Laの位置では、出力信号はエンベロープより小さくなる。右側ピークにおいては、ボトムパワーによる光量に基づいたLPP信号Lbの成分が、下側エンベロープ上においては逆相で検出される。
図7の波形(c)、(d)はいずれも、波形(a)から波形(b)の信号を減算した差信号の波形を示す。波形(c)は、図6におけるウォブル検出用差動増幅器107の出力であって、波形(a)と(b)における記録信号成分Sの平均値が等しい場合に対応する。波形(d)は、LPP検出差動増幅器108の出力であって、波形(a)と(b)におけるLPPが存在するウォブル信号ピーク付近の記録信号成分Sが等しい場合に対応する。いずれの場合も、記録信号成分Sのアンバランス量は、原理的にウォブル信号周期で変動する。
波形(c)では、記録信号成分Sの残留成分(以下残留信号成分と記す)が、差信号の平均値付近で最小となり、LPP信号La、Lbが存在するウォブル信号ピーク付近では最大、ウォブル信号逆相付近では負方向に最大となる。波形(d)では、残留信号成分は、ウォブル信号におけるLPP信号La、Lbが存在するピーク付近では最小となり、その逆相付近では負方向に最大、平均値付近では波形(c)の負のピーク値にほぼ等しい。
左側のLPP信号Laは、波形(a)から(b)を減算する際の両信号のレベルのバランスを適当に設定することにより、波形(c)、(d)のいずれにおいても検出可能である。一方、右側のLPP信号Lbは、波形(c)の場合には、LPP信号が残留信号成分の中に埋もれてしまって、検出できない。
以上のとおり、平均光量が2つのトラッキングディテクタA、Bに等しく入射されるように差動バランスを調整すると、図7の波形(c)に示したように、差動出力の振幅の中心を利用すればウォブル信号を正確に検出することができる。しかし、波形(c)においては、LPP信号Lbについては、ランドプリピットを検出することが困難な場合がある。その理由は、ランドプリピットは、ウォブル処理のため光ヘッドが相対的にオフトラックした位置に記録されているので、その記録位置において記録信号の混入が最大となり、ボトムパワー照射の場合は、LPP信号が残留信号成分の中に埋もれてしまうからである。そこで、ランドプリピットの記録位置において記録信号の振幅を検出し、その位置において、トラッキングディテクタA、Bの差動バランス出力が等しくなるように調整すれば、図7の波形(d)に示したように、ランドプリピットの記録位置において記録信号成分の混入量を最小に調整することができる。その結果、ランドプリピットの検出率を高めることができる。
但し、図7の波形(d)のように調整された差動バランス出力では、2値化後のウォブル信号においてジッターが増加し、ウォブル信号の2値化に対しては適切ではない。ウォブル信号の2値化は、バンドパスフィルターを通過した後のウォブル信号に対して、一定のスライスレベルによって2値化する方法、または2値化した後の信号のデューティー比が50%になるようなデューティーフィードバックスライス法を採用する方法が一般的である。しかしながら、いずれの方法を採用しても、バンドパスフィルターから出力された後のウォブル信号の振幅の中心付近において2値化すると、2値化後のウォブル信号においてジッターが増加する。その理由は、ランドプリピットの検出率を高めるように差動バランスを出力すると、ランドプリピットの記録位置における記録信号成分の混入は最小になるが、ウォブル信号のスライスレベル付近では逆に記録信号成分の混入量が増えるからである。
以上の事情を考慮すると、ウォブルを検出するための差動バランス調整とランドプリピットを検出するための差動バランス調整とは、最適な調整ポイントが異なることが判る。従って、特開2002−216363号公報に記載された従来例では、2つのトラッキングディテクタA、Bの出力に対して、ウォブル検出のために調整するウォブル検出バランス調整回路と、ランドプリピットを検出するために調整するLPP検出バランス調整回路とを別個に設けている。その結果、2つのバランス調整回路の出力の差動信号を出力するために、2つの差動増幅器、すなわち、ウォブル検出用差動増幅器107とLPP検出差動増幅器108とを別個に設けている。このように構成することにより、ウォブル信号およびランドプリピットの双方を正確に検出することができる。
以上のように、従来の光ディスク装置では、ウォブル検出用とLPP検出用に2個のバランス調整回路、及び差動増幅回路を必要とする。アナログ回路は、回路規模が大きくなると消費電力が大きくなり、回路オフセットや温度特性による動作の不安定さが発生し、そのための対策回路を必要とする。このため、S/Nが悪くなり、種々のパターンを有する信号の微妙な検出には不利である。しかしながら、このようなアナログ回路による処理を、そのままデジタル処理で行おうとすると、2個の高速高精度なアナログ・デジタル変換器が必要になる。高速高精度なアナログ・デジタル変換器は回路の微細化、高速化が進んだ現在でも、他のアナログ回路やデジタル演算回路に比べて相対的に回路規模および消費電力が大きい。従って、高速高精度なAD変換器の使用は、必要最小限に限ることが望ましい。
【発明の開示】
本発明の目的は、ウォブル信号とLPP信号とを簡略な構成によって検出することができる光ディスク装置を提供することである。
本発明の光ディスク装置は、情報が記録されるとともに所定周期のウォブルが形成されたトラックと、前記トラックの間に形成され、位置を特定するアドレス情報が記録されたトラック間隙部とを有する光ディスクから、前記アドレス情報とウォブル情報とを含む所定の情報を読み出すように構成される。
上記課題を解決するために、本発明の第1の構成の光ディスク装置は、前記トラックの長手方向に沿った分割線の両側に配置された第1および第2のディテクタにより、前記光ディスクに照射されたレーザの反射光に基づいて第1および第2の検出信号をそれぞれ検出するトラッキングディテクタを有する光ヘッドと、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号とを受け取り、前記第1の検出信号の信号レベルと前記第2の検出信号の信号レベルとが互いに等しくなるように調整して、各前記検出信号を出力するウォブル検出バランス調整回路と、前記ウォブル検出バランス調整回路によって信号レベルが調整された前記第1の検出信号と前記第2の検出信号の差であるウォブル検出差動信号を生成するウォブル検出差動回路と、前記ウォブル検出差動回路によって生成されたウォブル検出差動信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換回路と、前記アナログ・デジタル変換回路によってデジタル信号に変換されたウォブル検出差動信号に基づいてウォブル信号を検出するウォブル信号検出回路と、前記ウォブル検出バランス調整回路によって信号レベルが調整された前記第1の検出信号と前記第2の検出信号の和である和信号を生成する加算演算回路と、前記加算演算回路によって生成された前記和信号を所定のレベルの信号と比較して2値化信号に変換する2値化回路と、前記2値化回路の出力信号を前記アナログ・デジタル変換回路の変換クロックまたはその整数倍の周波数を有するクロックでラッチして記録タイミング信号に変換するラッチ回路と、前記ラッチ回路の出力信号である記録タイミング信号、およびデジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号に基づいて、前記ウォブル検出差動信号中に含まれる記録信号の残留成分である残留信号成分を除去するための制御信号を生成する制御信号生成回路と、前記制御信号生成回路から供給される前記制御信号に基づき、デジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号中に含まれる前記残留信号成分を除去してランドプリピット検出信号を抽出する残留成分除去回路と、前記残留成分除去回路から出力される前記ランドプリピット検出信号に基づいて、前記アドレス情報を検出するアドレス検出回路とを備える。
本発明の第2の構成の光ディスク装置は、前記トラックの長手方向に沿った分割線の両側に配置された第1および第2のディテクタにより、前記光ディスクに照射されたレーザの反射光に基づいて第1および第2の検出信号をそれぞれ検出するトラッキングディテクタを有する光ヘッドと、前記トラックへ情報を記録するための記録信号を生成する記録信号生成回路と、前記記録信号生成回路が出力する前記記録信号に基づき、前記光ヘッドのレーザーを駆動するレーザ駆動回路と、前記トラックに記録された記録信号を検出して再生信号を出力する再生信号生成回路と、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号とを受け取り、前記第1の検出信号の信号レベルと前記第2の検出信号の信号レベルとが互いに等しくなるように調整して、各前記検出信号を出力するウォブル検出バランス調整回路と、前記ウォブル検出バランス調整回路によって信号レベルが調整された前記第1の検出信号と前記第2の検出信号の差であるウォブル検出差動信号を生成するウォブル検出差動回路と、前記ウォブル検出差動回路によって生成されたウォブル検出差動信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換回路と、前記アナログ・デジタル変換回路によってデジタル信号に変換されたウォブル検出差動信号に基づいてウォブル信号を検出するウォブル信号検出回路と、前記記録信号生成回路及び前記再生信号生成回路の少なくとも一方の出力信号に基づいて得られる記録タイミング信号、およびデジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号に基づいて、前記ウォブル検出差動信号中に含まれる記録信号の残留成分である残留信号成分を除去するための制御信号を生成する制御信号生成回路と、前記制御信号生成回路から供給される前記制御信号に基づき、デジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号中に含まれる前記残留信号成分を除去してランドプリピット検出信号を抽出する残留成分除去回路と、前記残留成分除去回路から出力される前記ランドプリピット検出信号に基づいて、前記アドレス情報を検出するアドレス検出回路とを備える。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施の形態1における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図2は、同光ディスク装置の動作を説明する波形図である。
図3は、実施の形態2における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図4は、同光ディスク装置に設けられた最適タイミング検出回路の構成を示すブロック図である。
図5は、実施の形態3における光ディスク装置の動作を説明するための波形図である。
図6は、光ディスクの溝形状及びトラッキングディテクタを模式的に示した平面図である。
図7は、従来の光ディスク装置の動作を示す波形図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の光ディスク装置によれば、ウォブル検出バランス調整回路とウォブル検出差動回路をそれぞれ1個のみ用いて、ウォブル信号とLPP信号の検出に対してそれぞれ最適な条件を得ることができる。従ってウォブル信号とLPP信号を簡略な構成によって検出することが可能である。
本発明の光ディスク装置において、デジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号に含まれるウォブル信号と、前記和信号、記録信号、または再生信号と相関を有する残留信号成分の混合信号の振幅を検出する振幅検出回路を更に備え、前記ウォブル検出バランス調整回路は、前記第1の検出信号のレベルを可変する第1のゲイン可変増幅器と、前記第2の検出信号のレベルを可変する第2のゲイン可変増幅器とを備え、前記ウォブル検出バランス調整回路は、前記第1の検出信号のレベルと前記第2の検出信号のレベルとが等しくなるように、前記第1のゲイン可変増幅器のゲインと前記第2のゲイン可変増幅器のゲインを調整する第1の機能と、前記振幅検出回路の出力に基づき前記混合信号が前記アナログデジタル変換回路に所定のレベルで入力されるように前記第1のゲイン可変増幅器と前記第2のゲイン可変増幅器のゲインを調整する第2の機能と、前記記録信号が記録されていないトラックを再生するときは、前記第1のゲイン可変増幅器と前記第2のゲイン可変増幅器のゲインを一定にする第3の機能とを有する構成とすることができる。
また、前記制御信号生成回路は、前記制御信号として前記残留信号成分に近似する近似残留信号を生成し、前記残留成分除去回路は、前記ランドプリピットと同極性の前記残留信号成分に対して、前記近似残留信号を減算する処理を行う構成とすることができる。
この構成において、好ましくは、前記近似残留信号は、当該光ディスク装置が採用しているライトストラテジーに基づく記録信号波形が、当該光ディスク装置の記録再生及び信号処理系を通過した後の前記ウォブル検出差動信号に近似させて作成された信号である。
また上記の構成において、前記制御信号生成回路は、前記制御信号として前記残留信号成分に近似する近似残留信号を生成し、前記近似残留信号の振幅を前記振幅検出回路の出力に基づき設定し、前記残留成分除去回路は、前記ランドプリピットと同極性の残留信号成分に対して、前記近似残留信号を減算する処理を行う構成とすることができる。
また、上記の構成において、前記残留成分除去回路による減算結果の波形が、所定レベルを越える部分を有する時、前記所定レベルを越えた部分を基準レベル信号で置き換える構成とすることができる。
また、前記残留成分除去回路は、記録タイミング信号に対応する期間において、デジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号に含まれる前記残留信号成分を基準レベル信号に置き換える構成とすることができる。
また、前記基準レベル信号が、デジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号における前記残留信号成分に該当しない部分の低域成分に基づいて生成された信号である構成とすることができる。
また、記録信号が検出される位置に前記ランドプリピット信号が位置する期間については、前記残留信号成分を除去する処理を施さない信号を前記ランドプリピット検出信号とする構成とすることができる。
本発明の第2の構成の光ディスク装置において、前記制御信号生成回路は、前記記録タイミング信号のタイミングをクロック単位でずらした複数の検査タイミング信号を生成し、それぞれの前記検査タイミング信号に対応する期間における、デジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号中の前記残留信号成分のレベルを比較して、前記残留信号成分の絶対値レベルが最も大きい期間に対応する前記検査タイミング信号を選択する最適タイミング検出回路を備え、選択された前記検査タイミング信号を、前記制御信号を生成するための前記記録タイミング信号として用いる構成とすることができる。
この構成において、前記最適タイミング検出回路は、1つの前記検査タイミング信号を任意に選択して、その検査タイミング信号に対応する前記残留信号成分の絶対値レベルを、その前後の前記検査タイミング信号に対応する前記残留信号成分の絶対値レベルから減算した値をそれぞれ累積加算し、いずれかの累積値が所定の正レベルに達したとき、達した側の前記検査タイミング信号を選択して出力信号とするとともに、その選択された検査タイミング信号に関して上記処理を繰り返す構成とすることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。2点鎖線によって囲まれたブロックD1は、主としてデジタル処理によって信号を処理するブロックである。
光ディスク1は、ディスクモータ2により回転駆動され、光ヘッド3によりレーザビームが照射されて、反射光に基づき光量信号が検出される。光ディスク1としては、図6に示したようなフォーマットを有する、例えばDVD−R/RWディスクが用いられる。光ヘッド3は、図示しないが、周知の構造のディテクタを有する。ディテクタによって検出された光量信号に基づいて、サーボ信号/再生信号生成回路4により、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号および再生信号が生成される。サーボ信号/再生信号生成回路4からの出力信号に基づいて、フォーカス/トラッキング(Fo/Tr)制御部5は、光ヘッド3を光ディスク1に形成された案内溝に追従させるための制御を行う。
光ヘッド3は、ディテクタの一部として、図6に示したような2個のトラッキングディテクタA、Bを有し、トラッキングディテクタA、Bからの出力は、ウォブル検出バランス調整回路6にも供給される。ウォブル検出バランス調整回路6は、2個のゲイン可変増幅器6a、6bを有し、トラッキングディテクタA、Bからの出力のゲインを各々調整する。ゲイン可変増幅器6a、6bの出力は、ウォブルバランス検出回路7、及びウォブル検出差動増幅器8に供給される。ウォブルバランス検出回路7は、ゲイン可変増幅器6a、6bの出力信号の信号バランスを検出して、ゲインバランスをウォブル検出のために最適化する。ウォブル検出差動増幅器8は、ゲイン可変増幅器6a、6bからの2つの出力信号の差を取って、差信号を出力する。
ウォブル検出差動増幅器8からの出力信号は、ローパスフィルタ(LPF)9により高域成分が遮断されて、アナログ・デジタル変換に適した帯域に制限される。帯域制限された差信号は、アナログデジタル(A/D)変換器10によりデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された差信号は、ハイパスフィルター(HPF)11により、A/D変換に伴うDCオフセットが除去される。HPF11の出力は、振幅検出回路12、制御信号生成回路34、残留成分除去回路18、及びローパスフィルター(LPF)13に供給される。
振幅検出回路12は、デジタル変換された差信号中のウォブル信号成分と、記録再生信号のアンバランスによる残留信号成分との混合成分を検出し、LPP信号成分と所定の比率でA/D変換器10に差信号が入力されるように、ウォブル検出バランス調整回路6のゲインを制御するための信号を生成する。
LPF13は、HPF11からの出力信号からウォブル信号成分を抽出する。LPF13からの出力信号に基づいて、ウォブル信号検出回路14は、2値化されたウォブル信号を検出し、記録再生PLL回路17に供給する。
アナログデジタル変換器15には、サーボ信号/再生信号生成回路4からの出力信号である再生信号が供給され、デジタル信号に変換する。デジタル変換された再生信号に基づいて、再生信号検出回路16は、クロック位相情報および再生信号の有無を検出する。再生信号検出回路16の出力は、一方で、記録再生PLL回路17に供給される。
記録再生PLL回路17は、位相比較器、ループフィルタおよび周波数可変発振器等を有する。記録再生PLL回路17は、記録時においてはウォブル信号検出回路14が出力するウォブル信号のウォブル位相情報に基づき、クロックをウォブル信号に同期させ、再生時においては再生信号検出回路16が出力する再生信号の再生信号位相情報に基づいて、クロックを再生信号に同期させる。
残留成分除去回路18は、HPF11の出力信号から、LPP検出を妨害する残留信号成分を除去する。そのための構成については後述する。アンバランス成分が除去された残留成分除去回路18からの出力信号に基づいて、低域成分抽出用ローパスフィルター(LPF)19は、LPP信号成分を抽出するために不要成分を除去する。LPP2値化回路20は、LPF19からの出力信号を2値化する。LPP2値化回路20からの出力信号と、ウォブル信号検出回路14からの出力信号とに基づいて、LPPアドレス検出回路21は、ランドプリピットアドレス信号を検出する。
復調回路22は、再生信号検出回路16からの出力である再生信号データに基づいて、記録信号を復調する。エラー訂正/付加回路23は、光ディスク装置に接続されるインターフェースを通じて、ユーザの記録データに訂正符号を付加し、また逆にデータ再生時には訂正符号に基づいて、復調回路22から出力される復調データを訂正する。従って、復調回路22から出力される復調データは、変復調制御回路24に供給され、変復調制御回路24は、復調回路22からのデータをエラー訂正/付加回路23に送る。変復調制御回路24は、また、エラー訂正/付加回路23によりエラー訂正符号を付加されたデータを変調回路25に送り、かつ変調回路25及び復調回路22の動作を制御する。
変調回路25は、訂正符号が付加されたユーザデータを変調する。その変調回路25からの出力信号に基づいて、レーザ駆動波形生成回路26はレーザを駆動するための駆動波形を生成し、その駆動波形により、レーザ駆動回路27はレーザを駆動する。
ゲート信号生成回路28は、ウォブル信号検出回路14及びLPPアドレス検出回路21の出力信号に基づき、データを記録/再生するために必要なタイミング信号を生成し、各部に供給する。CPU29は、このディスク装置を構成する各要素の動作を制御する。
ゲイン可変増幅器6a、6bからの2つの出力信号は、加算増幅回路30にも供給される。加算増幅回路30は、ゲイン可変増幅器6a、6bからの2つの出力信号を加算して和信号を出力する。ローパスフィルタ(LPF)31は、和信号の高域成分を、ローパスフィルタ9の帯域に概略等しく遮断して、2値化に適した帯域に制限する。2値化回路32は、和信号の有無のタイミングを検出して2値化する。ラッチ回路33は、2値化回路32からの出力信号を、アナログデジタル変換器10のA/D変換クロック、またはその整数倍の周波数を有するクロックによってラッチして、デジタル処理に供給する。
制御信号生成回路34は、ラッチ回路33及び振幅検出回路12の出力信号に基づいて、残留成分除去回路18においてハイパスフィルタ11の出力信号から残留信号成分を除去するための制御信号を生成する。すなわち制御信号は、ラッチ回路33から出力される残留信号成分に対応するタイミング信号の振幅が、振幅検出回路12の出力信号に基づいて、除去すべき残留信号成分の振幅の大きさに調整されたものである。
この構成の光ディスク装置における、ウォブル信号検出及びLPP信号検出の動作につて、以下に説明する。光ヘッド3に設けられたトラッキングディテクタA、B(図6参照)の出力は、所定の処理を施された後、ウォブル検出バランス調整回路6に入力される。入力信号はゲイン可変増幅器6a、6bにより、ウォブルバランス検出回路7からの信号に基づきゲインバランスが調整され、振幅検出回路12の出力信号に基づきゲインが調整された後、ウォブル検出差動増幅器8で差信号に変換される。
差信号は、LPF9により帯域制限がなされ、アナログデジタル変換器10でデジタル信号に変換され、さらに、HPF11、LPF13により帯域制限がなされ、ウォブル信号検出回路14で、ウォブル信号が検出される。また、アナログデジタル変換器10でデジタル信号に変換された差信号は、残留成分除去回路18で残留信号成分が除去され、さらに、LPF19により帯域制限がなされた後、LPP2値化回路20によりLPP信号が検出される。
次に、制御信号生成回路34からの制御信号により、残留成分除去回路18において残留信号成分を除去する動作について、図2の波形図を参照して説明する。
図2の波形(a)は、ウォブル検出差動増幅器8の出力であって、ゲイン可変増幅器6a、6bの出力の差信号であり、図7の波形(c)と同様の波形を示す。波形(b)は、加算増幅回路30の出力であって、ゲイン可変増幅器6a、6bの出力の和信号を示す。和信号は記録信号であって、ウォブル信号、LPP信号はキャンセルされ、ノイズ等による若干の変動はあるものの振幅は安定している。波形(c)は、2値化回路32により、波形(b)に示す比較レベルhで2値化された信号である。
波形(d)は、波形(a)に示される差信号から、適当なレベルに設定した波形(c)の2値化信号を減算した波形を示す。波形(a)に含まれる残留信号成分と波形(c)の2値化信号の位相、幅が一致し、2値化信号の振幅が、波形(a)におけるLPP信号側の残留信号成分の最大値以上であれば、波形(d)における残留信号成分はすべて、ボトムパワー照射の場合におけるベース側のエンベロープ以下となる。この減算処理は、残留成分除去回路18の動作に相当するが、実際にはディジタル処理により行われる。すなわち、波形(c)の2値化信号をラッチ回路33によりラッチした出力信号を、振幅検出回路12の出力信号に基づき制御信号生成回路34により振幅を調整して、残留成分除去回路18に供給し減算処理を行う。
波形(d)に示す減算により、記録信号の間(スペース部分)に位置するLPP信号Lbは、影響を受けることはない。また、記録信号の上(マーク部分)にあるLPP信号Laは、2値化信号レベルだけ減算されるが、一般的には検出に必要なレベルは残る。
波形(e)は、波形(d)に示す減算結果の信号が所定レベルを超える(負の向きに)時、2値化信号期間を基準レベル信号により置き換えた場合を示している。これについては、実施の形態3において説明する。
以上のように、本実施の形態の構成によれば、差動バランスおよびゲインの配分は、ウォブル検出に対して最適化され、ランドプリピットを検出するために追加されるアナログ回路は、加算増幅回路30、LPF31、および2値化回路32のみである。
なお、LPP信号を検出するための差動バランスは、再生時においても、LPPアドレス信号の記録位置付近における高周波信号成分の振幅が等しくなるように調整される。しかし、この調整位置は、記録時における調整位置とは異なる。その理由は、記録時においては、光ヘッドの光源であるレーザのパワーが高出力となり、この変調光がディスクによって反射されてLPPアドレス信号に混入するのに対して、再生時においては、ディスクのグルーブに記録されたマークが再生信号として混入されるからである。
なお、再生時においては、反射率の関係から、マークとスペースの関係が逆になる。すなわち、マーク部分の方が反射率が小さいので、マーク部分にあるランドプリピット信号が小さく、スペース部分にあるランドプリピット信号が大きく検出される。しかし、再生信号とランドプリピット信号の大小関係は記録時と同じであるので、回路構成に変更は不要である。
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。図1に示した実施の形態1における光ディスク装置の構成要素と同一の要素には、同一の参照符号を付して説明の繰り返しを省略する。本実施の形態の光ディスク装置は、図1における加算増幅回路30からラッチ回路33に至る回路を持たない点が、実施の形態1の場合と相違する。そのため、主としてデジタル処理を行うブロックD2の構成が、図1の構成と相違する。
具体的な相違は、実施の形態1においてラッチ回路33から出力されるタイミング信号の代わりに、記録再生切換回路35を介して制御信号生成回路34Aに供給される信号に基づいて記録タイミング信号を得ることである。そのために、記録再生切換回路35は、記録時においては変調回路25から出力される記録信号を、再生時においては再生信号検出回路16から出力される再生信号を、それぞれ切り換えて、制御信号生成回路34Aに供給する。
制御信号生成回路34Aは、記録信号または再生信号の波形における記録タイミングを示す記録タイミング信号を検出する。記録タイミング信号は、図1における2値化回路32の出力と同様に、残留信号成分が発生する期間に対応する信号である。制御信号生成回路34Aは、記録タイミング信号を用いて、残留信号成分を除去するための制御信号を生成する。記録タイミング信号を用いる以外は、制御信号生成回路34Aの基本的な構成および動作は、実施の形態1における制御信号生成回路34と同様に構成することができる。
上記の構成により得られる記録タイミング信号を用いるに当たり、制御信号生成回路34Aは、HPF11から供給されるデジタル変換された差信号及び記録タイミング信号を用いて、記録タイミング信号と差信号中の残留信号成分の位相合わせを行う最適タイミング検出回路を備えることが望ましい。
最適タイミング検出回路の一例を、図4に示す。この回路は、入力部として、絶対値回路40と、シフト回路41を有する。シフト回路41には、記録タイミング信号が入力される。シフト回路41を通過した記録タイミング信号は、2つの遅延回路42、43を順次通過し、その結果、連続した3つのタイミングの記録タイミング信号a,b,cが得られる。記録タイミング信号a,b,cはそれぞれ、3つのゲート回路44、45、46のゲート信号として供給される。
絶対値回路40には、HPF11の出力であるウォブル検出差動信号が入力される。ウォブル検出差動信号は、絶対値回路40により処理された後、ゲート回路44、45、46に供給される。減算器47にはゲート回路44、45の出力が入力され、減算器47の出力信号は、積算器48、及びオーバーフロー検出器49により処理される。減算器50にはゲート回路45、46の出力が入力され、減算器50の出力信号は、積算器51、及びオーバーフロー検出器52により処理される。
記録タイミング信号a,b,cの中で、タイミング信号aにより抽出されるウォブル検出差動信号が一番大きいときは、a−bが正、タイミング信号cにより抽出されるウォブル検出差動信号が一番大きい時は、c−bが正、タイミング信号bにより抽出されるウォブル検出差動信号が一番大きい時は両方とも負となる。すなわち、タイミング信号bが最適の時、積算器48、51の出力は両方とも負方向に変化し、タイミング信号bが最適でない時、いずれかが正方向に変化する。従って、積算器48、51のいずれか一方の出力が一定値以上になったときにシフト回路41を変化させて、抽出されるウォブル検出差動信号がタイミング信号bによる場合よりも大きいタイミング信号をタイミング信号bにすれば、タイミング信号bは最適タイミングに近づく。これを繰り返せば、タイミング信号bは最適タイミングとなる。
ここで、積算器48、51を適当なビット数に制限し、正方向にはオーバーフロー検出、負方向にはリミッタを設けると、オーバーフロー検出に基づくシフト回路41の制御が出来る。それにより、タイミング信号bが最適タイミングの時は、積算器48、51の出力は常に負方向のリミッタ値付近の値となるので、検出が安定して、少々の変動に影響されなくなる。
このように最適タイミング検出回路は、デジタル信号に変換されたウォブル検出差動信号に対する記録タイミング信号のタイミングばらつきをカバーする範囲において、記録タイミング信号のタイミングをクロック単位でずらした複数のタイミング信号を生成し、それぞれのタイミング信号に対応するデジタル信号に変換されたウォブル検出差動信号中の残留信号レベルを比較して、最も残留信号レベルが大きいタイミング信号を選択する。
近似残留信号のタイミングに影響する要因としては、アナログ回路部の遅延差、A/D変換器とラッチ回路との時間差が考えられる。差信号と和信号とはアナログ部では相対的に一致させ、A/D変換器以降の遅延時間は補正することができるので、この場合は1クロック以内の遅延差に納めることは不可能ではない。ただし、2値信号をクロックによってラッチする場合は、原理的に1クロック分の誤差が確率的に必ず発生する。
一方、変調信号や再生信号を使用する場合は、1クロック以上の遅延差のばらつきが発生する可能性は大である。特に記録時においては、レーザー、光学系および受光系等多くの系を通過するので、ばらつきは大きい。
この問題を解決するために、1クロックを越える遅延差のばらつきについては、上述のように、記録タイミング信号パルス区間における差信号の絶対値の累積値を比較することによって、最適なタイミングを検出し、1クロック以下のタイミングずれに合わせ込むことが出来る。差信号中にはウォブル信号、ランドプリピット信号、ノイズが含まれるが、残留信号成分が最も大きいので、残留信号成分と記録タイミング信号の位相が一致して、すべての残留信号成分が抽出されるとき、絶対値の累積値に最も大きな出力が得られる。なお、残留信号成分は正負いずれの値も取るので、ノイズ検出と同様、正確には2乗和の平方を用いるが、簡易的に絶対値を用いても十分な性能が得られる。
以上のように本実施の形態の構成によれば、差動バランスおよびゲイン配分はウォブル検出に対して最適化され、ランドプリピットを検出するために追加されるアナログ回路は不要となる。
(実施の形態3)
実施の形態3における光ディスク装置について、図5の波形図を参照して説明する。本実施の形態における光ディスク装置の構成は、基本的には、図1に示した実施の形態1、あるいは図3に示した実施の形態2における光ディスク装置と同様である。本実施の形態では、図1(図3)の制御信号生成回路34(34A)が、以下の動作を行うように構成される点が、上述の実施の形態と相違する。
すなわち、本実施の形態の光ディスク装置は、図1(図3)の制御信号生成回路34(34A)が、近似残留信号生成回路を有するように構成されたものである。近似残留信号生成回路は、記録タイミング信号と振幅との対応データを記録したテーブルを持ち、その対応データを用いて、記録タイミング信号に基づき、近似残留信号を生成する。近似残留信号は、記録タイミング信号がウォブル検出差動増幅器8の出力信号と同帯域に制限された信号波形に近似させた信号である。
ここで、近似残留信号の意味を説明するために、まず、図2の波形図に示された、図1(図3)の残留成分除去回路18と、制御信号生成回路34(34A)の機能について、より詳細に説明する。
トラッキングディテクタAおよびBからの出力が、ウォブル検出バランス調整回路6によりウォブル検出のために最適化された2つの信号をvaとvbとする。この時の差信号は、(va−vb)である。
次に、LPP検出のために最適なバランスを、
(1−k)×va、及び
(1+k)×vb
とする。その差信号は
(va−vb)−k×(va+vb) ・・・(1)
となる。
すなわち、LPPを検出するために最適なバランスは、ウォブルを検出するために最適な差信号から、和信号に適当な係数を乗じた信号を減算することによって得られる。
ところで前述したように、LPP信号と記録信号とが重なると、差信号の中に検出されるLPP信号の振幅が大きな影響を受け、ディテクタによって検出される記録信号レベルのアンバランスが大きくなる。すなわち、差信号には大振幅のLPP信号が発生する。
一方、記録信号とLPP信号とが重ならないときには、LPP信号は記録信号がないときと同じレベルで検出される。LPP信号の検出を困難にしていた原因は、記録信号とLPP信号とのタイミングが重ならないときに、検出されたLPP信号成分よりその周辺の記録信号のアンバランス成分が大きく、しかもこの2つの信号の帯域がほとんど一致しているため、そのままでは検出が不可能であったことである。
ここで、LPP信号と記録信号とが重なっていないときに注目すると、上述の式(1)における定数kの値を大きくしたとき、記録信号部分は逆極性方向にどんどん大きくなるが、LPP信号はこの部分に存在しないので、LPP信号レベルは全く影響を受けない。逆に、LPP信号と記録信号とが重なっているときは、LPP信号成分は増幅されているので、和信号を引く割合が多少増大しても、大勢に影響はない。
すなわち、最適なkの値の下限値は、LPP信号と同極性にある記録信号の残留信号成分の最大のものをゼロにする値である。上限値は、LPP信号と記録信号とが重なった部分で、和信号を減じることによりLPP信号が極端に小さくなり、残留信号成分以外のノイズによってLPP信号の検出が不能となるレベルである。例えばLPP信号成分が残留信号成分の2倍あるとき、残留信号成分と同じレベルを減算すると、LPP信号は半分になるが残留信号成分はゼロとなる。この時の残留信号成分以外のノイズは、このレベルよりも遙かに小さいのでLPP検出においては全く問題とならない。
ここで見方を変えると、減じる和信号のレベルには、高い精度は不要である。すなわち、2値信号(1ビット信号)に置き換えることも可能である。そして、そのレベルを最大残留信号振幅に一致させるか、または若干大きくして全ての残留信号を除去する設定とすることも可能である。この2値信号を得る方法して、和信号を使用する以外に、記録再生信号を使用する方法がある。記録時の和信号はレーザー波形そのものによって発生しているものであり、2値信号の周期は、記録時には変調信号の周期に等しく、再生時においては情報の再生信号を2値化したものの周期に等しい。
上述の実施の形態においては、和信号を差信号から減じる方式を用い、和信号としては2値化信号を使用する。その振幅には精度が不要である故、和信号を直接2値化したものだけでなく、記録時においてはレーザー駆動波形を生成するための変調信号を使用し、再生時においては再生信号を使用することも可能である。
2値化信号を使用するために重要な技術は、残留信号成分を除去するために作成される近似残留信号のタイミングとレベルである。近似残留信号のレベルは、ウォブル検出バランス調整回路6によって決定される。
ここで、ウォブル検出バランス調整回路6は、3つの機能を有していることを注記する。第1番目の機能は、トラッキングディテクタA、Bからの検出信号の間の振幅バランスを、ウォブル検出のために最適なバランスに保つ機能である。第2番目の機能は、ウォブル検出差動増幅回路8の出力信号に含まれるウォブル信号成分と、記録再生信号のアンバランス残留信号レベルと、LPP信号レベルとの比を一定に保って、ウォブル検出とLPP検出とをデジタル処理側で効率よく行える様にする機能である。第3番目の機能は、再生信号検出回路15が検出した記録信号の有無に基づいて動作し、未記録トラックの部分では固定ゲインアンプとして動作する機能である。
近似残留信号のレベルは、差信号中のLPP信号成分と同極性の残留信号成分の最大値を検出することによって得られる。ウォブル検出バランス調整回路6によって振幅が一定になるように制御されている時は、その目標レベルで代用することができる。
近似残留信号として、上記レベルの2値信号を使用することは可能であるが、周期の長い記録信号の一部とLPP信号とが重なる場合においては、若干の検出率の悪化が見られる。これに対して、近似残留信号として3値信号、または4値信号を使用することによって改善が可能となる。ちなみに、特定のLPP信号の上に、最も幅の広いパルスを配置することが規格で決められているので、そのような対策は有用である。
図5は、代表的な記録モードにおけるライトステラレジーと、近似残留信号の信号レベルの関係を説明するための波形図である。波形(a)は、8T幅と3T幅の記録信号、波形(b)は、1倍速記録時のレーザー発光波形、波形(c)は、そのときの近似残留信号波形である。また、波形(d)は、4倍速記録時のレーザー発光波形、波形(e)は、そのときの近似残留信号波形である。波形(c),(e)はともに、3値近似したときの振幅波形を示しており、一般に立ち上がり部分にオーバーシュートが見られるので、立ち上がり部分のレベルが大きくされている。また、帯域が制限されることにより、幅が広がる傾向にあるので、破線部分に示すように、近似信号の幅を広げる。
なお、高倍速記録では、クーリングパルスとして、記録パルスの後ろに発光レベル零の期間が設けられる。この部分は、ノイズと差動バランスずれによるオフセットだけであるので、この部分の不要成分を除去するよう、光ディスク装置が採用した規格に従って、幅を広げることは有効である。
ところで、残留信号成分と近似残留信号の極性とは、ウォブル信号のランドプリピット側周辺では同相になっており、ランドプリピットのないピーク側では逆相である。従って、残留信号成分を有する差信号から近似残留信号を減算すると、同相側ではキャンセルされ、逆相側では加算されて、逆相側に大きな値を示す。このままでも、ランドプリピットの検出には問題が無い場合がほとんどであるが、ローパスフィルタ19を通過させると、ランドプリピット付近が大きく逆相側に振れていたとき、ランドプリピットのレベルが影響を受け、検出率が低下する場合がある。このため、残留成分除去回路18からの出力波形におけるランドプリピットと逆相である期間については、ゼロまたはその付近の値によってリミットしても良い。また逆相の残留信号成分に対しては、減算しないでそのまま出力しても良い。
さらには、波形の対称性から、同相部分に対しては減算し、ゼロ以下の部分はゼロでクリップし、逆相部分に対しては近似残留信号を加算して、ゼロ以上になるものはゼロでクリップしてもよい。さらには、減算するのではなく、近似残留信号(2値でも良い)に応じて、所定レベルをこえるものを除いて、信号をゼロ(基準レベル)方向に向かって圧縮し(基準レベルへ置き換え)ても良い。言い換えれば、2値信号が存在する期間について、差信号を基準レベルに置き換えて、残留信号に埋もれたランドプリピット信号を検出すると同時に、差信号中の残留信号より高いレベルを基準として、増幅されたランドプリピット信号を検出するようにしても良い。
以上の説明は、差信号をデジタル信号に変換して処理する場合に言及したが、和信号を2値化し、2値化信号に応じて差信号を基準レベルに置き換え、残留信号に埋もれたランドプリピット信号を純粋にアナログ処理で検出することも出来る(図2の波形(e)参照)。
以上のように本発明の実施の形態によれば、変調信号とLPPアドレスを検出するための差動増幅回路を共通にし、差動増幅回路からの出力である差信号をデジタル信号に変換して、デジタル演算で変調信号とLPPアドレスとを検出する系において、差動増幅回路に入力されるトラッキングディテクタA、Bによる2つの検出信号の振幅バランスをウォブル信号の検出のために最適化しても、2つの検出信号の和信号を2値化した信号に基づいて、差信号に残留しているLPPアドレスの検出に妨害となる残留信号成分を簡単な回路構成によって除去することが出来る。
従って、情報の記録を行うトラック上に記録を行うためのアドレス情報が形成されていない光ディスク(DVD−R/RW等)において、光ディスク装置の記録/再生状態に関わらず、アドレス情報の検出率を高めることが出来ると同時に、特性ばらつきが大きく不安定なアナログ回路を削減することができる。
なお、トラッキングディテクタ5としては、2個のトラッキングディテクタA、Bだけでなく、さらに多くの数(例えば、4個、6個)のディテクタに分割された構造にしてもよい。その場合には、トラックに沿った分割線により分割された複数のディテクタの和を、上述した2つのトラッキングディテクタAおよびBとして扱えばよい。すなわち差動信号は、分割線の一方の側に配置されたディテクタからの出力の平均値と、他方の側に配置されたディテクタからの出力の平均値との間の差とする。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、ウォブル信号とLPP信号とを簡略な構成によって検出することが可能な光ディスク装置を提供することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報が記録されるとともに所定周期のウォブルが形成されたトラックと、前記トラックの間に形成され、位置を特定するアドレス情報が記録されたトラック間隙部とを有する光ディスクから、前記アドレス情報とウォブル情報とを含む所定の情報を読み出す光ディスク装置において、
前記トラックの長手方向に沿った分割線の両側に配置された第1および第2のディテクタにより、前記光ディスクに照射されたレーザの反射光に基づいて第1および第2の検出信号をそれぞれ検出するトラッキングディテクタを有する光ヘッドと、
前記第1の検出信号と前記第2の検出信号とを受け取り、前記第1の検出信号の信号レベルと前記第2の検出信号の信号レベルとが互いに等しくなるように調整して、各前記検出信号を出力するウォブル検出バランス調整回路と、
前記ウォブル検出バランス調整回路によって信号レベルが調整された前記第1の検出信号と前記第2の検出信号の差であるウォブル検出差動信号を生成するウォブル検出差動回路と、
前記ウォブル検出差動回路によって生成されたウォブル検出差動信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換回路と、
前記アナログ・デジタル変換回路によってデジタル信号に変換されたウォブル検出差動信号に基づいてウォブル信号を検出するウォブル信号検出回路と、
前記ウォブル検出バランス調整回路によって信号レベルが調整された前記第1の検出信号と前記第2の検出信号の和である和信号を生成する加算演算回路と、
前記加算演算回路によって生成された前記和信号を所定のレベルの信号と比較して2値化信号に変換する2値化回路と、
前記2値化回路の出力信号を前記アナログ・デジタル変換回路の変換クロックまたはその整数倍の周波数を有するクロックでラッチして記録タイミング信号に変換するラッチ回路と、
前記ラッチ回路の出力信号である記録タイミング信号、およびデジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号に基づいて、前記ウォブル検出差動信号中に含まれる記録信号の残留成分である残留信号成分を除去するための制御信号を生成する制御信号生成回路と、
前記制御信号生成回路から供給される前記制御信号に基づき、デジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号中に含まれる前記残留信号成分を除去してランドプリピット検出信号を抽出する残留成分除去回路と、
前記残留成分除去回路から出力される前記ランドプリピット検出信号に基づいて、前記アドレス情報を検出するアドレス検出回路とを備えた光ディスク装置。
【請求項2】
情報が記録されるとともに所定周期のウォブルが形成されたトラックと、前記トラックの間に形成され、位置を特定するアドレス情報が記録されたトラック間隙部とを有する光ディスクから、前記アドレス情報とウォブル情報とを含む所定の情報を読み出す光ディスク装置において、
前記トラックの長手方向に沿った分割線の両側に配置された第1および第2のディテクタにより、前記光ディスクに照射されたレーザの反射光に基づいて第1および第2の検出信号をそれぞれ検出するトラッキングディテクタを有する光ヘッドと、
前記トラックへ情報を記録するための記録信号を生成する記録信号生成回路と、
前記記録信号生成回路が出力する前記記録信号に基づき、前記光ヘッドのレーザーを駆動するレーザ駆動回路と、
前記トラックに記録された記録信号を検出して再生信号を出力する再生信号生成回路と、
前記第1の検出信号と前記第2の検出信号とを受け取り、前記第1の検出信号の信号レベルと前記第2の検出信号の信号レベルとが互いに等しくなるように調整して、各前記検出信号を出力するウォブル検出バランス調整回路と、
前記ウォブル検出バランス調整回路によって信号レベルが調整された前記第1の検出信号と前記第2の検出信号の差であるウォブル検出差動信号を生成するウォブル検出差動回路と、
前記ウォブル検出差動回路によって生成されたウォブル検出差動信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換回路と、
前記アナログ・デジタル変換回路によってデジタル信号に変換されたウォブル検出差動信号に基づいてウォブル信号を検出するウォブル信号検出回路と、
前記記録信号生成回路及び前記再生信号生成回路の少なくとも一方の出力信号に基づいて得られる記録タイミング信号、およびデジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号に基づいて、前記ウォブル検出差動信号中に含まれる記録信号の残留成分である残留信号成分を除去するための制御信号を生成する制御信号生成回路と、
前記制御信号生成回路から供給される前記制御信号に基づき、デジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号中に含まれる前記残留信号成分を除去してランドプリピット検出信号を抽出する残留成分除去回路と、
前記残留成分除去回路から出力される前記ランドプリピット検出信号に基づいて、前記アドレス情報を検出するアドレス検出回路とを備えた光ディスク装置。
【請求項3】
デジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号に含まれるウォブル信号と、前記和信号、記録信号、または再生信号と相関を有する残留信号成分の混合信号の振幅を検出する振幅検出回路を更に備え、
前記ウォブル検出バランス調整回路は、前記第1の検出信号のレベルを可変する第1のゲイン可変増幅器と、前記第2の検出信号のレベルを可変する第2のゲイン可変増幅器とを備え、
前記ウォブル検出バランス調整回路は、前記第1の検出信号のレベルと前記第2の検出信号のレベルとが等しくなるように、前記第1のゲイン可変増幅器のゲインと前記第2のゲイン可変増幅器のゲインを調整する第1の機能と、前記振幅検出回路の出力に基づき前記混合信号が前記アナログデジタル変換回路に所定のレベルで入力されるように前記第1のゲイン可変増幅器と前記第2のゲイン可変増幅器のゲインを調整する第2の機能と、前記記録信号が記録されていないトラックを再生するときは、前記第1のゲイン可変増幅器と前記第2のゲイン可変増幅器のゲインを一定にする第3の機能とを有する請求項1または2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記制御信号生成回路は、前記制御信号として前記残留信号成分に近似する近似残留信号を生成し、
前記残留成分除去回路は、前記ランドプリピットと同極性の前記残留信号成分に対して、前記近似残留信号を減算する処理を行う請求項1または2に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記近似残留信号は、当該光ディスク装置が採用しているライトストラテジーに基づく記録信号波形が、当該光ディスク装置の記録再生及び信号処理系を通過した後の前記ウォブル検出差動信号に近似させて作成された信号である請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記制御信号生成回路は、前記制御信号として前記残留信号成分に近似する近似残留信号を生成し、前記近似残留信号の振幅を前記振幅検出回路の出力に基づき設定し、
前記残留成分除去回路は、前記ランドプリピットと同極性の残留信号成分に対して、前記近似残留信号を減算する処理を行う請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項7】
前記残留成分除去回路による減算結果の波形が、所定レベルを越える部分を有する時、前記所定レベルを越えた部分を基準レベル信号で置き換える請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項8】
前記残留成分除去回路は、記録タイミング信号に対応する期間において、デジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号に含まれる前記残留信号成分を基準レベル信号に置き換える請求項1または2に記載の光ディスク装置。
【請求項9】
前記基準レベル信号が、デジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号における前記残留信号成分に該当しない部分の低域成分に基づいて生成された信号である請求項7または8に記載の光ディスク装置。
【請求項10】
記録信号が検出される位置に前記ランドプリピット信号が位置する期間については、前記残留信号成分を除去する処理を施さない信号を前記ランドプリピット検出信号とする請求項1または2に記載の光ディスク装置。
【請求項11】
前記制御信号生成回路は、前記記録タイミング信号のタイミングをクロック単位でずらした複数の検査タイミング信号を生成し、それぞれの前記検査タイミング信号に対応する期間における、デジタル信号に変換された前記ウォブル検出差動信号中の前記残留信号成分のレベルを比較して、前記残留信号成分の絶対値レベルが最も大きい期間に対応する前記検査タイミング信号を選択する最適タイミング検出回路を備え、選択された前記検査タイミング信号を、前記制御信号を生成するための前記記録タイミング信号として用いる請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項12】
前記最適タイミング検出回路は、1つの前記検査タイミシグ信号を任意に選択して、その検査タイミング信号に対応する前記残留信号成分の絶対値レベルを、その前後の前記検査タイミング信号に対応する前記残留信号成分の絶対値レベルから減算した値をそれぞれ累積加算し、いずれかの累積値が所定の正レベルに達したとき、達した側の前記検査タイミング信号を選択して出力信号とするとともに、その選択された検査タイミング信号に関して上記処理を繰り返す請求項11に記載の光ディスク装置。

【国際公開番号】WO2005/015548
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513015(P2005−513015)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011584
【国際出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】