説明

光ディスク記録装置及び光ディスク記録方法

【課題】DVD−RWやDVD+RWにデータを記録する動作中に半導体レーザ素子の光出力の変動を抑制することができる光ディスク装置及び光ディスク記録方法を提供する。
【解決手段】光ディスク記録媒体にデータを記録するとき、光ディスク記録媒体がDVD−RW又はDVD+RWであるか否かを判定し、光ディスク記録媒体がDVD−RW又はDVD+RWであると判定されるとき、光ピックアップ部が1回の記録動作で光ディスク記録媒体に記録するデータのデータ長の上限値が予め設定される上限長情報を記憶部から読み出す。そして、光ディスク記録媒体に記録するデータを、上限長情報に設定された上限値以下のデータ長の分割データに分割する。さらに、分割データの記録動作毎に、光ピックアップ部が有する半導体レーザ素子にボトムパワーのレーザ光を出力させるための基底電力の電力値を再設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク記憶媒体にデータを記録する光ディスク記録装置及び光ディスク記録方法に関し、特に、DVD−RWやDVD+RWにデータを記録する光ディスク記録装置及び光ディスク記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DVDレコーダやBDレコーダなどの光ディスク記録装置では、光ピックアップに搭載された半導体レーザ素子から出射されるレーザ光により、DVDやBDなどの光ディスクにデータを記録している。このような光ディスク記録装置では、光ディスクの種類に応じてレーザ光の駆動電力を決定する。
【0003】
たとえば、DVD−RWやDVD+RWにデータを記録するときの駆動電力は、半導体レーザ素子をボトムパワーPbの光出力で発光させるためのボトム電力、イレースパワーPeの光出力で発光させるためのイレース電力、ピークパワーPwの光出力で発光させるためのピーク電力で構成される。これらは、予め定められた値に設定されており、一般に、半導体レーザ素子の駆動電流Iopにより制御される。図6は、従来における駆動電流に対する半導体レーザ素子の光出力特性を示すグラフである。図6のように、ボトムパワーPbはボトム電流(電流値Iread)により制御され、イレースパワーPeはイレース電流(電流値Ie)により制御され、ピークパワーPwはピーク電流(電流値Iw)により制御される。
【0004】
DVD−RWやDVD+RWにデータが記録されるとき、記録動作が開始される前に、たとえば図6のL1に基づいて、ボトム電流Iread1の電流値及びイレース電流Ie1の電流値が設定される。そして、これらの電流値Iread1及びIe1に基づいて、ピーク電流Iw1の電流値が設定される。ピーク電流Iw1の電流値は、たとえば特許文献1〜5のように、イレース電流Ie1の電流値とボトム電流Iread1の電流値との差(Ie1−Iread1)に対してピーク電流Iw1の電流値とボトム電流Iread1の電流値との差(Iw1−Iread1)が予め定められた比率ε(ε>1)となるように設定される。
【0005】
決定されたボトム電流Ireadの電流値は記録処理が終了するまで変更されることはないが、イレース電流Ie1の電流値は、記録動作中にイレースパワーPeが変動しないようにフィードバック制御される。また、ピーク電流Iw1の電流値は、記録動作の開始前に設定されたボトム電流Iread1の電流値、フィードバック制御されるイレース電流Ie1の電流値、及び予め定められた比率εに応じて、上述のように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−245487号公報
【特許文献2】特開2004−342271号公報
【特許文献3】特開2004−326841号公報
【特許文献4】特開2009−87399号公報
【特許文献5】特開2004−199839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、DVD−RWやDVD+RWではデータを1回の記録動作で記録するため、データ長が長いと、記録動作中に半導体レーザ素子の素子温度が上昇して、駆動電力(特に、駆動電流Iop)に対する半導体レーザ素子の光出力特性が変化することがある。その場合、記録動作中に半導体レーザ素子の光出力が変動するため、適正な記録動作ができなくなり、記録処理が続行できなくなったり、記録動作により記録したデータを読み出すことができなくなったりするおそれがある。
【0008】
たとえば、図6において、記録動作中に素子温度が上昇して半導体レーザ素子の光出力特性がL1からL2に変化すると、レーザ光をボトムパワーPbで光出力するために必要なボトム電流Ireadの電流値が変化する。このとき、イレースパワーPeはレーザ光の光出力に応じてフィードバック制御されるので変動しないが、イレースパワーPeで光出力するために必要なイレース電流IeはIe1からIe2に変化するので、その電流値は特性曲線L2に基づいてΔIeだけ変動する。一方、ピーク電流IもIw1からIw2に変化するが、ピーク電流Iwの電流値はイレース電流Ieの電流値の変化量ΔIeに応じて(ε・ΔIe)だけ変動した値に設定される。そのため、半導体レーザ素子の光出力(発光パワー)はピークパワーPwからΔPだけ変動することになる。
【0009】
これに対して、特許文献1では、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光のモニタ値と駆動電力との関係を表す感度係数に基づいて、比率εを補正することにより、駆動電力の変動を抑制している。また、特許文献2では、イレース電流の電流値での発光期間中にサンプルホールドした半導体レーザ素子の発光パワーの平均値を求め、求めた平均値及びイレース電流の電流値を用いて、半導体レーザ素子の電流値対発光パワー比からデータを記録するためのピークパワーを得るためのピーク電流の電流値を求めている。また、特許文献3では、半導体レーザ素子をボトムパワー及びイレースパワーで発光させる状態において、ボトムパワーでの電流値及びイレースパワーでの電流値間で変化する制御信号のパルス波形の振幅を測定し、その振幅から求めるイレース電流の電流値と、記録速度により決定されるε値とにより、ピーク電流の電流値を求めている。また、特許文献4では、イレース電流の電流値を変化させたときの消去率から理想のイレース電流の電流値を求め、理想のイレース電流の電流値及び比率εからピーク電流の電流値を求めている。また、特許文献5では、ピーク電流の電流値にイレース電流の電流値の変化分を加減算することにより、ピーク電流の電流値を一定に保っている。しかしながら、特許文献1〜4では、レーザ光の発光パワーや、DCイレースの消去率、制御信号のパルス波形をモニタしてフィードバック制御する必要があり、特許文献5では加算回路や減算回路が必要となる。そのため、装置の構成が複雑化し、製造コストも増加するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、DVD−RWやDVD+RWにデータを記録する動作中における半導体レーザ素子の光出力の変動を抑制することができる光ディスク装置及び光ディスク記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の光ディスク記録装置は、半導体レーザ素子を有し、光ディスク記録媒体にデータを記録する光ピックアップ部と、1回の記録動作でDVD−RW又はDVD+RWに記録するデータのデータ長の上限値が予め設定される上限長情報を格納する記憶部と、前記光ディスク記録媒体がDVD−RW又はDVD+RWであるか否かを判定する判定回路部と、前記光ディスク記録媒体がDVD−RW又はDVD+RWであると判定されるとき、前記光ディスク記録媒体に記録するデータを、前記上限長情報に設定された前記上限値以下のデータ長の分割データに分割するデータ分割回路部と、前記分割データの記録動作毎に、前記半導体レーザ素子にボトムパワーのレーザ光を出力させるための基底電力の電力値を再設定する駆動電力設定回路部と、を備える。
【0012】
上記構成によれば、DVD−RW又はDVD+RWの光ディスク記録媒体にデータを記録するとき、記録するデータが上限長情報に設定された上限値以下のデータ長の分割データに分割される。そして、分割データの記録動作毎に、半導体レーザ素子をボトムパワーで発光させるための基底電力の電力値が再設定される。そのため、DVD−RW又はDVD+RWに記録するデータのデータ長が記録動作中に半導体レーザ素子の素子温度が上昇するほどに長い場合であっても、データの記録処理中に基底電力の電力値が再設定されるので、半導体レーザ素子に供給される駆動電力がずれることがない。従って、DVD−RWやDVD+RWにデータを記録する動作中における半導体レーザ素子の光出力の変動を抑制することができる。
【0013】
また、上記構成において、前記半導体レーザ素子の光出力を制御する駆動制御回路部をさらに備え、前記駆動制御回路部は、前記分割データの記録動作毎に、前記駆動電力設定回路部が再設定する前記基底電力の電力値に応じた基底電流の電流値を前記半導体レーザ素子に供給してもよいし、さらに、前記半導体レーザ素子にピークパワーのレーザ光を出力させるためのイレース電力の電力値と前記基底電力の電力値との差に対して、前記半導体レーザ素子にピークパワーのレーザ光を出力させるための前記ピーク電力の電力値と前記基底電力の電力値との差が予め定められた比率となるように、前記ピーク電力の電力値が設定されてもよい。
【0014】
また、上記目的を達成するために本発明の光ディスク記録方法は、前記光ディスク記録媒体がDVD−RW又はDVD+RWであるか否かを判定するステップと、前記光ディスク記録媒体がDVD−RW又はDVD+RWであると判定されるとき、光ピックアップ部が1回の記録動作で前記光ディスク記録媒体に記録するデータのデータ長の上限値が予め設定される上限長情報を記憶部から読み出すステップと、前記光ディスク記録媒体がDVD−RW又はDVD+RWであると判定されるとき、前記光ディスク記録媒体に記録するデータを、前記上限長情報に設定された前記上限値以下のデータ長の分割データに分割するステップと、前記分割データの記録動作毎に、前記光ピックアップ部が有する半導体レーザ素子にボトムパワーのレーザ光を出力させるための基底電力の電力値を再設定するステップと、を備える。
【0015】
上記構成によれば、DVD−RW又はDVD+RWの光ディスク記録媒体にデータを記録するとき、記録するデータが上限長情報に設定された上限値以下のデータ長の分割データに分割される。そして、分割データの記録動作毎に、半導体レーザ素子をボトムパワーで発光させるための基底電力の電力値が再設定される。そのため、DVD−RW又はDVD+RWに記録するデータのデータ長が記録動作中に半導体レーザ素子の素子温度が上昇するほどに長い場合であっても、データの記録処理中に基底電力の電力値が再設定されるので、半導体レーザ素子に供給される駆動電力がずれることがない。従って、DVD−RWやDVD+RWにデータを記録する動作中における半導体レーザ素子の光出力の変動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、DVD−RW又はDVD+RWの光ディスク記録媒体にデータを記録するとき、記録するデータが上限長情報に設定された上限値以下のデータ長の分割データに分割される。そして、分割データの記録動作毎に、半導体レーザ素子をボトムパワーで発光させるための基底電力の電力値が再設定される。そのため、DVD−RW又はDVD+RWに記録するデータのデータ長が記録動作中に半導体レーザ素子の素子温度が上昇するほどに長い場合であっても、データの記録処理中に基底電力の電力値が再設定されるので、半導体レーザ素子に供給される駆動電力がずれることがない。従って、DVD−RWやDVD+RWにデータを記録する動作中における半導体レーザ素子の光出力の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る光ディスク記録装置の構成図である。
【図2】DVD−RW又はDVD+RWにデータを記録するときにレーザダイオードが出力する光出力波形の一例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る光ディスク記録装置に光ディスクをマウントしたときの動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る光ディスク記録装置がDVDにデータを記録するときの動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本実施形態における駆動電流に対するレーザダイオードの光出力特性を示すグラフである。
【図6】従来における駆動電流に対する半導体レーザ素子の光出力特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
まず、本実施形態に係る光ディスク記録装置1について説明する。光ディスク記録装置1は、たとえばDVDプレイヤーやBDプレイヤーであり、たとえば、DVD(Digital Versatile Disc)などの着脱可能な光ディスク2(光ディスク記録媒体)に対してデータの書き込み(記録)や読み出しを行う。この光ディスク2は少なくともDVD−RW又はDVD+RWであればよい。そのほかに、たとえばBD(Blue-ray Disc)や、DVD−RWやDVD+RW以外のDVD、CD(Compact Disc)などの光ディスク記録媒体が該当するが、特に限定しない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る光ディスク記録装置の構成図である。光ディスク記録装置1は、光ピックアップ部10と、メモリ20(記憶部)と、制御回路部30と、LDドライバ40(駆動制御回路部)と、サーボ回路部50と、スピンドルモータ60と、映像音声処理回路部70と、出力回路部80と、を備えている。この他、光ディスク記録装置1は、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置を備えていてもよい。
【0021】
光ピックアップ部10は、光ディスク記録装置1にマウントされた光ディスク2に対して、データの書き込み(記録)や読み出しを行う。光ピックアップ部10は、対物レンズ103と、アクチュエータ104と、ビームスプリッタ102と、レーザダイオード101(半導体レーザ素子)と、フォトダイオード105と、を有している。なお、以下では、レーザダイオードをLDと呼び、フォトダイオードをPDと呼ぶ。
【0022】
LD101は、LDドライバ40から供給される駆動電力に応じた強さのレーザ光を出射する。たとえば、光ディスク2がDVD−RW又はDVD+RWであるとき、データを記録する際、LD101は3つの発光パワー(すなわち、ボトムパワーPb、イレースパワーPe、及びピークパワーPw)で構成されるマルチパルス状の光出力を行う。図2は、DVD−RW又はDVD+RWにデータを記録するときにレーザダイオードが出力する光出力波形の一例を示す図である。光ディスク2の記録層において、ボトムパワーPb及びピークパワーPwで構成されるマルチパルス状の光出力のレーザ光が照射される領域Cは液晶状態に変化し、イレースパワーPeの光出力のレーザ光が照射される領域Aは非結晶状態に変化する。DVD−RW又はDVD+RWの光ディスク2では、液晶領域C及び非結晶領域Aを予め定められた組み合わせで形成することにより、データが記録される。なお、LD101には一定の定格電圧が印加されている。そのため、実際には、LD101のレーザ光の光出力はLDドライバ40から供給される駆動電流Iopにより制御される。
【0023】
ビームスプリッタ102は、LD101から出射されるレーザ光を、光ディスク記録装置1にマウントされている光ディスク2の記録面へと導く。また、ビームスプリッタ102は、光ディスク2の記録面にて反射されたレーザ光(以下、反射光と呼ぶ。)を、PD105に導く。
【0024】
対物レンズ103は、光ディスク2の記録面に入射するレーザ光を集光して、レーザ光による光スポットを光ディスク2の記録面上に形成する。
【0025】
アクチュエータ104は、フォーカスサーチやトラッキング調整などを行うために、サーボ回路部50から出力される制御信号に基づいて、対物レンズ103をフォーカス方向(光ディスク2の面に垂直な方向)やトラッキング方向(光ディスク2の半径方向)に駆動する。
【0026】
PD105は、受光する反射光を光電変換し、この反射光の強さに応じた大きさの電流信号を生成する。なお、PD105において生成された電流信号は、所定の変換回路によって、当該電流信号の大きさに対応した電圧信号に変換されるようになっていてもよい。いずれにしても、光ピックアップ部10によって、反射光の強さに応じた大きさの光電変換信号(電流信号あるいは電圧信号)が生成されることになる。また、この光電変換信号は、反射光の強さを反映しているため、光ディスク2に対して記録又は読み取ったデータを含むとともに、LD101から出射されたレーザ光の光出力(発光パワー)の情報をも含んでいる。そこで光ディスク記録装置は、この光電変換信号をLD101が発するレーザ光の光出力をフィードバック制御するための制御信号としても利用する。そのため、PD105から出力される光電変換信号は、LDドライバ40及び映像音声処理回路部70に出力される。
【0027】
メモリ20は、不揮発性の記憶媒体であり、制御回路部30により利用される制御情報及びプログラムを格納している。この制御情報は、上限長情報や光出力データテーブルなどを含んでいる。なお、上限長情報には、光ピックアップ部10が1回の記録動作でDVD−RW又はDVD+RWに記録するデータのデータ長の上限値が予め設定されている。また、光出力データテーブルには、光ディスク2の種類と、LD101のレーザ光の光出力の設定値と、LD101に供給する駆動電力(印加電圧及び駆動電流Iop)の設定値と、ピーク電力の電力値やピーク電流の電流値Iwの算出に利用される比率εと、が互いに関連付けられて予め設定されている。そのほか、メモリ20は、映像音声処理回路部70にて生成されるコンテンツデータや、映像音声出力回路部80に対して入出力されるデータなどを格納している。
【0028】
制御回路部30は、メモリ20に格納された制御情報やプログラムを利用して光ディスク記録装置1の各部を制御している。また、制御回路部30は、判定回路部301と、データ分割回路部302と、駆動電力設定回路部303と、を有している。
【0029】
判定回路部301は、光ピックアップ部10が光ディスク2の内周領域(たとえば、DVDのリードイン領域)から読み出す物理情報に基づいて、光ディスク記録装置1にマウントされている光ディスク2の種類を判別する。
【0030】
データ分割回路部302は、1回の動作で光ディスク2に記録するデータのデータ長の上限値を設定し、さらに、設定した上限値に応じて光ディスク2に記録するデータを分割して、生成した分割データ毎に光ディスク2への記録動作を行う。たとえば、データ分割回路部302は、光ディスク2がDVD−RW又はDVD+RWであると判定されると、光ピックアップ部10が光ディスク2に記録するデータを、メモリ20に格納されている上限長情報に設定された上限値以下のデータ長の分割データに分割する。
【0031】
駆動電力設定回路部303は、光ディスク2の種類に応じて、LDドライバ40がLD101に供給する駆動電力の電力値を設定するとともに、設定した駆動電力の電力値に応じたLD101の光出力の制御、及びLD101の発光/停止(すなわち、LD101に駆動電力を供給するか否か)の制御をするための発光制御信号をLDドライバ40に出力する。たとえば、DVD−RW又はDVD+RWの光ディスク2にデータを記録するとき、駆動電力設定回路部303は、メモリ20に格納された光特性データテーブルに基づいて、LD101をボトムパワーPbの光出力で発光させるためのボトム電力(基底電力)の値、LD101をイレースパワーPeの光出力で発光させるためのイレース電力の電力値、LD101をピークパワーPwの光出力で発光させるためのピーク電力の電力値を設定する。また、駆動電力設定回路部303は、これらの駆動電力の電力値に応じたLD101の光出力の制御、及びLD101の発光/停止(すなわち、LD11に駆動電力を供給するか否か)の制御をするための発光制御信号をLDドライバ40に出力する。
【0032】
なお、実際には、LD101に一定の定格電圧が印加されるため、LD101の光出力はLD101に供給する駆動電流Iopにより制御される。従って、駆動電力設定回路部303は、光ディスク2の種類に応じて、LDドライバ40がLD101に供給する駆動電流Iopの電流値を設定する。たとえば、光ディスク2がDVD−RW又はDVD+RWであると判定されるとき、駆動電力設定回路部303は、ボトム電流Iread(基底電流)の電流値、イレース電流Ieの電流値、及びピーク電流Iwの電流値を設定する。なお、ボトム電流IreadはLD101をボトムパワーPbの光出力で発光させるときの駆動電流であり、イレース電流IeはLD101をイレースパワーPeの光出力で発光させるときの駆動電流であり、ピーク電流IwはLD101をピークパワーPwの光出力で発光させるときの駆動電流である。さらに、駆動電力設定回路部303は、これらの電流値Iread、Ie、Iwに応じたLD101の光出力の制御、及びLD101の発光/停止(すなわち、LD11に駆動電力を供給するか否か)の制御をするための発光制御信号をLDドライバ40に出力する。
【0033】
また、駆動電力設定回路部303は、光ディスク2がDVD−RW又はDVD+RWであると判定されるとき、分割データの記録動作毎に、ボトム電力の電力値(又はボトム電流Ireadの電流値)を再設定する。なお、ボトム電力の電力値(又はボトム電流Ireadの電流値)を再設定する方法は特に限定しないが、たとえば、図示しない温度センサによりLD101の素子温度を検知し、メモリ20に格納された素子温度毎の光出力データテーブルからボトム電力の電力値を算出する方法や、ボトム電力の電力値を少しずつ変化させてLD101が発光するときの駆動電力の電力値を求める方法などを利用することができる。
【0034】
LDドライバ40は、駆動電力設定回路部303から入力される発光制御信号に基づいて、LD101の発光/停止を制御する。また、LDドライバ40は、LD101に一定の駆動電圧を印加するとともに、図2のようなLD101の光出力制御を行うために、LD101に供給する駆動電流Iopの電流値を制御している。また、LDドライバ40は、LD101の光出力をフィードバック制御するAPC(Automatic Power Control)機能を有している。LDドライバ40は、LD101から出射されるレーザ光の光出力(発光パワー)が変動しないように、PD105から入力される光電変換信号に基づいて、LD101に供給する駆動電流Iopの電流値をフィードバック制御している。
【0035】
サーボ回路部50は、スピンドルモータ60の回転速度や光ピックアップ部10内のアクチュエータ104を制御し、光ディスク2の記録面上にデータを記録する書き込み位置や読み込み位置を制御している。
【0036】
スピンドルモータ60は、サーボ回路部50から出力される制御信号に基づいて、光ディスク2を回転させる駆動部である。
【0037】
映像音声処理回路部70は、光電変換信号に対して各種の処理(復調処理など)を施し、光電変換信号に基づいて様々なコンテンツデータ(たとえば、映像データや、音声データ、文字データなど)を生成し、たとえば映像信号や音声信号として出力回路部80に出力する。出力回路部80は、外部接続端子を有し、外部の機器に対して映像信号や音声信号、制御信号を入出力するインターフェースである。
【0038】
次に、光ディスク記録装置1に光ディスク2がマウントされるときの動作について説明する。図3は、本実施形態に係る光ディスク記録装置に光ディスクをマウントしたときの動作を説明するためのフローチャートである。
【0039】
光ディスク記録装置1に光ディスク2がマウントされると、光ピックアップ部10が光ディスク2のフォーカスサーチ及びトラッキング調整などを行う。(ステップS101)そして、光ピックアップ部10は光ディスク2の内周領域(たとえば、DVDのリードイン領域)から物理情報を読み出す。(ステップS102)この物理情報は、光ディスク2の種類やデータ領域内の記録可能なセクタ長(データ長)などの情報を有している。この物理情報に基づいて、判定回路部301は光ディスク2の種類を判別する。(ステップS103)制御回路部30は、判定回路部301が判定した光ディスク2の種類に応じて、各制御信号の調整を行う。(ステップS104)
【0040】
次に、光ディスク2がDVD2aであると判定されたとき、光ディスク記録装置1がDVD2aにデータを記録する動作について説明する。図4は、本実施形態に係る光ディスク記録装置がDVDにデータを記録するときの動作を説明するためのフローチャートである。
【0041】
先ず、制御回路部30は、DVD2aのリードイン領域から読み出した物理情報を参照して、DVD2aのデータ領域のうちの書き込み可能なセクタ長(データ長)を確認する。(ステップS201)制御回路部30は、データをDVD2aに記録するときに必要なデータ長が、DVD2aに書き込み可能なセクタ長以下であるか否かを判定する。(ステップS202)データの記録に要するデータ長が書き込み可能なセクタ長よりも長い場合(ステップS202でNO)、制御回路部30は記録処理を終了する。
【0042】
また、データの記録に要するデータ長が書き込み可能なセクタ長以下である場合(ステップS202でYES)、判定回路部301は、このDVD2aがDVD−RW又はDVD+RWであるか否かを判定する。(ステップS203)
【0043】
光ディスク記録装置1にマウントされているDVD2aがDVD−RW又はDVD+RWではない場合(ステップS203でNO)、データ分割回路部302は、DVD2aに記録するデータを、DVD2aのデータ領域におけるデータを記録するアドレスや記録速度(たとえば、倍速)に応じたデータ長(たとえば、1000[h])毎に分割する。(ステップS204)次に、駆動電力設定回路部303は、メモリ20に格納されている光出力データテーブルを参照し、判定回路部301が判定したDVD2aの種類(たとえば、DVD−RやDVD−ROMなど)に応じて、LD101の光出力制御に必要なパラメータ(記録動作時のLD101の駆動電力の電力値や駆動電流Iopの電流値など)を設定する。(ステップS205)そして、光ピックアップ部10が各分割データをDVD2aに記録し(ステップS206)、処理が終了する。
【0044】
一方、光ディスク記録装置1にマウントされているDVD2aがDVD−RW又はDVD+RWである場合(ステップS203でYES)には、データ分割回路部302は、メモリ20から上限長情報を読み出す。(ステップS207)そして、データ分割回路部302は、光ピックアップ部10が1回の動作で記録するデータのデータ長の上限値を上限長情報に設定されている値(たとえば、10000[h])に設定する。(ステップS208)さらに、データ分割回路部302は、DVD2aに記録するデータをその上限値以下のデータ長の分割データに分割し、m(mは1以上の整数)個の分割データを生成する。(ステップS209)このとき、データ分割回路部302は、各分割データのデータ長が上限値を越えないように、DVD2aに記録するデータを分割する。言い換えると、各分割データのデータ長はいずれもステップS208で設定した上限値以下となっている。
【0045】
次に、駆動電力設定回路部303は、メモリ20に格納されている光出力データテーブルを参照し、判定回路部301が判定したDVD2aの種類(DVD−RW又はDVD+RW)に応じてLD101の光出力制御に必要なパラメータ(記録動作時のLD101の駆動電力の電力値や駆動電流Iopの電流値など)を設定するとともに、初期発光制御信号をLDドライバ40に出力する。(ステップS210)たとえば、駆動電力設定回路部303は、光出力データテーブルを参照して、ボトム電流Iread(基底電流)の電流値、イレース電流Ieの電流値と、ピーク電流Iwの電流値と、を設定する。そして、駆動電力設定回路部303は、これらの電流値Iread、Ie、Iwに応じたLD101の光出力の制御、及びLD101を発光させるための初期発光制御信号をLDドライバ40に出力する。なお、記録動作開始時のボトム電流Ireadの電流値及びイレース電流値Ieの電流値はメモリ20に格納された光特性データテーブルに設定されているが、ピーク電流Iwの電流値は、イレース電流Ieの電流値とボトム電流Iwの電流値との差(Ie−Iread)に対するピーク電流Iwの電流値とボトム電流Ireadの電流値との差(Iw−Iread)が予め定められた比率ε(ε>1)となるように設定される。この比率εは、メモリ20に格納された光特性データテーブルに設定されている。
【0046】
次に、制御回路部30は記録回数nを1に設定する。(ステップS211)そして、光ピックアップ部10が、m個の分割データのうちのn番目の分割データをDVD2aのデータ領域に記録する。(ステップS212)このとき、イレース電流Ieの電流値は、LDドライバ40により、PD105から入力される光電変換信号に応じてフィードバック制御される。また、LDドライバ20は、駆動電力設定回路部303から入力される発光制御信号に基づいて、駆動電力設定回路部303が設定した直近のボトム電流Ireadの電流値をLD101に供給する。また、LDドライバ20は、直近のボトム電流Ireadの電流値と、フィードバック制御されたイレース電流Ieの電流値と、光出力データテーブルに予め設定された比率εと、に応じた電流値となるようにピーク電流Iwの電流値を制御する。
【0047】
n番目の分割データの記録動作が終了すると、制御回路部30は記録回数nがmに等しいか否かを判定する。(ステップS213)する。記録回数nがmに等しい場合(ステップS213でYes)、制御回路部30は処理を終了する。
【0048】
一方、記録回数nがmに等しくない場合(ステップS213でNo)には、駆動電力設定回路部303がボトム電流Ireadの電流値を再設定するとともに、制御回路部30が記録回数nに1を加算して処理をステップS212に戻す(ステップS214)。
【0049】
以上により、DVD−RW又はDVD+RWの光ディスク2にデータを記録するとき、記録するデータが上限長情報に設定された上限値以下のデータ長の分割データに分割される。そして、分割データの記録動作毎に、LD101をボトムパワーPbで発光させるためのボトム電流Ireadの電流値が再設定される。そのため、DVD−RW又はDVD+RWの光ディスク2に記録するデータのデータ長が記録動作中にLD101の素子温度が上昇ほどに長い場合であっても、データの記録処理中にボトム電流Ireadの電流値が再設定されるので、LD101に供給されるピーク電流Iwの電流値を最適値に設定することができる。図5は、本実施形態における駆動電流の電流値に対するレーザダイオードの光出力特性を示すグラフである。
【0050】
図5において、DVD−RW又はDVD+RWの光ディスク2にデータを記録する動作中に素子温度が上昇してLD101の光出力特性がL1からL2に変化すると、レーザ光をボトムパワーPbで光出力するために必要なボトム電流Ireadの電流値が変化する。このとき、イレースパワーPeはレーザ光の光出力に応じてフィードバック制御されるので変動しないが、イレースパワーPeで光出力するために必要なイレース電流Ieが特性曲線L2に基づいてIe1からIe2に変化するため、イレース電流Ieの電流値がΔIeだけ変動する。また、ピーク電流IwもIw1からIw2に変化するため、ピーク電流Iwの電流値が、フィードバック制御されたイレース電流Ie2の電流値と再設定された直近のボトム電流Iread2の電流値との差(Ie2−Iread2)に対して変化後のピーク電流Iw2の電流値と直近のボトム電流Iread2の電流値との差(Iw2−Iread2)が光出力特性データテーブルに予め定められた比率ε(ε>1)となるように設定される。そのため、ピークパワーPwが変動することがない。従って、DVD−RWやDVD+RWの光ディスク2にデータを記録する動作中におけるLD101の光出力の変動を抑制することができる。
【0051】
以上、本発明について実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせに色々な変形例が可能であり、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、少なくともDVD−RWやDVD+RWに対して記録動作が可能なDVDレコーダやBDレコーダなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 光ディスク記録装置
10 光ピックアップ部
101 レーザダイオード、LD(半導体レーザ素子)
102 ビームスプリッタ
103 対物レンズ
104 アクチュエータ
105 フォトダイオード、PD
20 メモリ(記憶部)
30 制御回路部
301 判定回路部
302 データ分割回路部
303 駆動電力設定回路部
40 LDドライバ(駆動制御回路部)
50 サーボ回路部
60 スピンドルモータ
70 映像音声処理回路部
80 出力回路部
2 光ディスク(光ディスク記録媒体)
2a DVD(光ディスク記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ素子を有し、光ディスク記録媒体にデータを記録する光ピックアップ部と、
1回の記録動作でDVD−RW又はDVD+RWに記録するデータのデータ長の上限値が予め設定される上限長情報を格納する記憶部と、
前記光ディスク記録媒体がDVD−RW又はDVD+RWであるか否かを判定する判定回路部と、
前記光ディスク記録媒体がDVD−RW又はDVD+RWであると判定されるとき、前記光ディスク記録媒体に記録するデータを、前記上限長情報に設定された前記上限値以下のデータ長の分割データに分割するデータ分割回路部と、
前記分割データの記録動作毎に、前記半導体レーザ素子にボトムパワーのレーザ光を出力させるための基底電力の電力値を再設定する駆動電力設定回路部と、
を備えることを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項2】
前記半導体レーザ素子の光出力を制御する駆動制御回路部をさらに備え、
前記駆動制御回路部は、前記分割データの記録動作毎に、前記駆動電力設定回路部が再設定する前記基底電力の電力値に応じた基底電流の電流値を前記半導体レーザ素子に供給することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク記録装置。
【請求項3】
前記半導体レーザ素子にピークパワーのレーザ光を出力させるためのイレース電力の電力値と前記基底電力の電力値との差に対して、前記半導体レーザ素子にピークパワーのレーザ光を出力させるための前記ピーク電力の電力値と前記基底電力の電力値との差が予め定められた比率となるように、前記ピーク電力の電力値が設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ディスク記録装置。
【請求項4】
前記光ディスク記録媒体がDVD−RW又はDVD+RWであるか否かを判定するステップと、
前記光ディスク記録媒体がDVD−RW又はDVD+RWであると判定されるとき、光ピックアップ部が1回の記録動作で前記光ディスク記録媒体に記録するデータのデータ長の上限値が予め設定される上限長情報を記憶部から読み出すステップと、
前記光ディスク記録媒体がDVD−RW又はDVD+RWであると判定されるとき、前記光ディスク記録媒体に記録するデータを、前記上限長情報に設定された前記上限値以下のデータ長の分割データに分割するステップと、
前記分割データの記録動作毎に、前記光ピックアップ部が有する半導体レーザ素子にボトムパワーのレーザ光を出力させるための基底電力の電力値を再設定するステップと、
を備えることを特徴とする光ディスク記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−243365(P2012−243365A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113936(P2011−113936)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】