説明

光ドロップケーブル

【課題】テンションメンバが1本の構成にあって光ファイバ心線の取り出しが確実に行え、且つマーキングを容易に視認することが可能な光ドロップケーブルを提供する。
【解決手段】光ドロップケーブル1は、吊線10、テンションメンバ11及び光ファイバ心線12が同一平面上に平行配置され、これらが難燃ポリエチレンによる共通シース13によって被覆されている。共通シース13は、吊線10を主体にした吊線部16と、テンションメンバ11及び光ファイバ心線12を主体にした本体部17と、この本体部17に連結させて光ファイバ心線12の近傍の両側に一対のノッチ15,15を斜めに形成するシース部20との3ブロックを形成している。シース部20の両側の平坦面はマーキング領域として利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ドロップケーブルに関し、さらに詳しくは、吊線部から本体部を引き裂いたときに光ファイバ心線が損傷し難く、マーキングの視認性を向上させた光ドロップケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)が急速に普及し、電柱等に架設された架空用ケーブル(幹線ケーブル)からオフィス、一般加入者宅等へ光ファイバを引き込み配線する場合、電柱上の引き落とし用クロージャから光ドロップケーブルを用いてオフィス、一般加入者宅等に引き込まれる。これまで使用されてきた従来の光ドロップケーブルの構成について図3を参照して説明する。
【0003】
従来の光ドロップケーブル100は、図3に示すように、鋼線によって形成された吊線101と、テンションメンバ102と、光ファイバ心線103と、テンションメンバ104とを一直線上(同一平面上)に配置し、これらを難燃ポリエチレンによる共通シース105によって被覆して構成されている。そして、共通シース105は、吊線101とテンションメンバ102との間に狭幅の首部106が設けられ、さらに、光ファイバ心線103の両側面に先端が光ファイバ心線103に向かって延びる断面V字形状のノッチ部107,107がそれぞれ設けられている。ここで、吊線101で当該部分を被覆している共通シース105とで吊線部108を形成し、テンションメンバ102、光ファイバ心線103心線及びテンションメンバ104とこれらを被覆している共通シース105とで本体部109を形成している。
【0004】
このような光ドロップケーブル100は、電柱から加入者宅まで引き込まれた後、首部106の部分から本体部109が吊線部108から引き剥がされ、さらに、本体部109の両側面に設けられた断面V字形状のノッチ部107,107を利用して光ファイバ心線103を本体部109から取り出し、図示しない光キャビネット内でインドア光ファイバ等と接続される。
【0005】
ところで、光ドロップケーブルは低コスト化が望まれており、2本のテンションメンバ102,104のいずれかを除いて1本とすることが有効であるところ、特許文献1では、図3に示したケーブル(特許文献1では近接した2本の光ファイバ心線103を備えている)からテンションメンバ104を除いたケーブルを試作して、首部106を裂いて本体部109と吊線部108の分離作業を行った。その結果、本体部109に曲げ癖が残留し易くなったため本体部109に著しいカールが発生し、その後本体部のノッチ107を裂いて光ファイバ心線103の取り出や、本体部109の機器へ取り付けが不可能になるという不具合が発生したことから、図4に示す光ファイバケーブルを提案している。すなわち、図4に示す光ファイバケーブルは、テンションメンバ104を弾性限界が2%以上の材料によって形成し、テンションメンバ104が光ファイバ心線103心線の位置を基準に吊線部108とは反対側に一本のみ配置すると共に、光ファイバ心線103の位置を基準に吊線部108側の本体部109のシース断面積が、テンションメンバ104を含む側の本体部109のシース断面積よりも小さいことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3659234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4に示す特許文献1の光ファイバケーブルの構成によれば、吊線部108から本体部109を引き裂いて分離した場合、光ファイバ心線103心線は折れることなく保たれるが、本体部109の両側面には大きな断面V字形状のノッチ部107,107が設けられていることから本体部109の側面のうち平面状となっている部分の面積は非常に狭くなっている。本体部109の側面には、インクジェットプリンタ等を使用して長さや製造時期等のマーキング表示を行う必要があるが、マーキングのためのスペースがノッチ部107と重なってしまうため、ノッチ部107の凹み部に印字することになり、著しく視認性が悪くなるという問題がある。特に、光ドロップケーブルの布線工事においては、ケーブル残長管理が必須であり、上記マーキングは光ドロップケーブルの長さ方向に1m毎になされており、このマーキングがノッチ部107の凹み部に印字されてしまった場合、例えば、「8」と「0」の判別がしにくくなるといった問題が生じる。
【0008】
そこで、発明者らは鋭意検討を行ったところ、本体部109のほぼ中心に配置された光ファイバ心線103を基準として吊線部108側又は吊線部108側とは反対側の本体部の断面積が1.5mm以上であれば吊線部108から本体部109を引き裂いて分離しても光ファイバ心線103心線は折れないこと判明した。
【0009】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、従来光ファイバ心線を挟んで2本のテンションメンバが配置されていた光ドロップケーブルから1本のテンションメンバを除いても吊線部から本体部を分離しても光ファイバ心線が折れることなく光ファイバ心線の取り出しが確実に行え、且つ、光ドロップケーブの側面に設けられたマーキングが容易に視認できる光ドロップケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、平行に配置された光ファイバ心線とテンションメンバとを外被によって被覆した本体部が首部を介して吊線部と一体に連結された光ドロップケーブルにおいて、前記テンションメンバが前記本体部の略中央部に配置された前記光ファイバ心線よりも前記吊線部側に配置され、前記本体部に前記吊線部側の両角部から前記光ファイバ心線に近接するようにして当該光ファイバ心線取り出し用の一対のノッチを形成することにより断面略U字形状でその断面積が1.5mm以上の前記光ファイバ心線及び前記テンションメンバが存在しないシース部を形成し、当該シース部の側面を印刷面としたことを特徴とする光ドロップケーブルを提供する。
【0011】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、平行に配置された光ファイバ心線とテンションメンバとを外被によって被覆した本体部が首部を介して吊線部と一体に連結された光ドロップケーブルにおいて、前記テンションメンバが前記本体部の略中央部に配置された前記光ファイバ心線よりも前記吊線部側とは反対側に配置され、前記本体部に前記吊線部とは反対側の両角部から前記光ファイバ心線に近接するようにして当該光ファイバ心線取り出し用の一対のノッチを形成することにより断面略U字形状でその断面積が1.5mm以上の前記光ファイバ心線及び前記テンションメンバが存在しないシース部を形成し、当該シース部の側面を印刷面としたことを特徴とする光ドロップケーブルを提供する。
【0012】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の光ドロップケーブルにおいて、前記ノッチは、断面が略V字状でその先端が前記光ファイバ心線に向かって屈曲して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光ドロップケーブルによれば、必要な強度を備えつつ小型化を図ることができ、光ファイバ心線を破損することなく光ファイバ心線取り出し作業を確実に行えるという効果がある。
また、本発明に係る光ドロップケーブルによれば、本体部の両側面にノッチの開口が露出しないようにしたので、本体部へのマーキングがノッチになされることがなくなり、作業所におけるマーキングの視認性が極めて向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る光ドロップケーブルの第一の実施形態を示す正面断面図である。
【図2】本発明に係る光ドロップケーブルの第二の実施形態を示す正面断面図である。
【図3】従来の光ドロップケーブルの構成を示す断面図である。
【図4】図3とは別の従来の光ドロップケーブルの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.第一の実施形態
[光ドロップケーブルの構成]
本発明に係る光ドロップケーブルの好ましい一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る光ドロップケーブルの第一の実施形態を示す断面図である。光ドロップケーブル1は、概略として、平行に配置された光ファイバ心線12とテンションメンバ11とを外被によって被覆した本体部17が首部14を介して吊線部16と一体に連結されて形成されている。吊線部16は鋼線によって形成された吊線10を有し、本体部17はFRP等によって形成されたテンションメンバ11と光ファイバ心線12を有し、吊線10と光ファイバ心線12とテンションメンバ11が一直線上(同一平面上)に配置されている。すなわち、テンションメンバ11は本体部17の略中央部に配置された光ファイバ心線12よりも吊線部16側とは反対側に配置されている。そして、吊線10とテンションメンバ11及び光ファイバ心線12を難燃ポリエチレンからなる共通シース13によって被覆して形成されている。共通シース13は、光ファイバ心線12を中心としてテンションメンバ11の反対側に断面略U字形状に膨出しており、この部分がシース部20となっている。シース部20には光ファイバ心線12及びテンションメンバ11は存在していない。そして、共通シース13には、吊線10とテンションメンバ11との間に狭い幅及び短い高さの首部14が設けられ、さらに、本体部17の吊線部16側の両角部から光ファイバ心線12に近接するようにして略V字形状のノッチ部15,15が設けられている。
【0016】
上述のように、吊線10とこれを被覆する共通シース13とは吊線部16を形成しており、また、テンションメンバ11、光ファイバ心線12及びテンションメンバ11とこれらを被覆する共通シース13とは本体部(ケーブル部とも言う)17を形成している。本体部17は、テンションメンバ11側から光ファイバ心線12側に向かって次第に幅が狭くなる略台形の断面形状とされ、シース部20の内側に立設したような状態でシース部20と連結されている。
【0017】
そして、本体部17の吊線部16側の両角部に開口を有する断面形状が略V字形状のノッチ部15,15によってシース部20は、断面形状が略U字形状とされ、その両端が吊線部16側に向かうようにして形成されている。シース部20をこのように形成することによってシース部20の両側面はできるだけ広い平面を確保したマーキング領域21になっており、従来の光ドロップケーブル100のように両側面にノッチの凹み部を有しないので印字文字を同一平面上に印字することができる。また、このように形成することでシース部20の断面積を1.5mm以上にすることを可能にしている。よって、このような形状のノッチ部15は本体部17の表面の平面部を大きくすることに寄与している。
【0018】
[光ドロップケーブルの使用法]
次に、上述した光ドロップケーブル1の使用法について説明する。ここでは一般住宅に引き込む場合を例に説明する。光ドロップケーブル1は住宅の近傍の電柱にまで引かれた後、光クロージャ、ケーブル引留具、光配線クリート等(何れも図示せず)を順次介して外壁等に取り付けられた図示しない光キャビネットに引き込まれる。この際、光ドロップケーブル1の端部は首部14の部位から吊線部16と本体部17とに引き裂かれ、吊線部16は上記ケーブル引留具に引き留められ、さらに、本体部17が上記光キャビネット内に引き込まれるが、光ドロップケーブル1の種類や線長等の情報は平面状のシース部20のマーキング領域21に印字されていることから視認性が良く、作業者の誤読を防止する。光キャビネットでは本体部17の光ファイバ心線12に図示しないインドア光ファイバ心線が光結合され、このインドア光ファイバ心線が住宅内に引き込まれる。インドア光ファイバ心線の終端には光コネクタが取り付けられ、この光コネクタが住宅の室内に設置されているパーソナルコンピュータ(PC)用等のネットワーク端末装置に接続される。
【0019】
本体部17から光ファイバ心線12を引き出す場合、ノッチ部15の根元部分から本体部17とシース部20とを互いに反対方向へ捩じるようにするとシース部20が本体部17から分離すると、光ファイバ心線12が引き出されて露出する。光ファイバ心線12を所望の長さにし、これを上記光キャビネット内においてコネクタ等を介してインドア光ファイバ心線の心線に光接続する。以上により光ドロップケーブル1の布設作業が終了する。
【0020】
[第一の実施形態の効果]
第一の実施形態の光ドロップケーブルによれば、本体部17の吊線部16側の両角部から光ファイバ心線12に向かって一対のノッチ部15,15を形成したので、断面形状が略U字形状のシース部20の両側面に大きな平面部を形成することができ、この部分をマーキング領域21として利用することによって印字文字等の視認性を高めることができるという効果がある。
【0021】
また、本体部17の形状を上述のように形成することによりシース部20の断面積を1.5mm以上にすることができ、これによって吊線部16から本体部17を分離する際、本体部17に加わる歪みを4%以下にでき、テンションメンバ11及び光ファイバ心線12を損傷することなく本体部17を吊線部16から分離することができると共に、光ファイバ心線12の取り出しが容易になるという効果がある。
【0022】
2.第二の実施形態
次に、本発明に係る光ドロップケーブルの第二の実施形態について説明する。図2は発明に係る光ドロップケーブルの第二の実施形態を示す正面断面図である。本実施形態は概略として第一の実施形態における本体部17とシース部20の配置を入れ替えたものであり、その他の構成は第一の実施形態と同様である。本実施形態の場合は、一直線上(同一平面上)に配置されるのは、吊線10、光ファイバ心線12、テンションメンバ11の順となる。
【0023】
具体的には、テンションメンバ11が本体部17の略中央部に配置された光ファイバ心線12よりも吊線部16側とは反対側に配置され、本体部17に吊線部16とは反対側の両角部から光ファイバ心線12に近接するようにして一対のノッチ15,15が形成されている。これにより、断面略U字形状でその断面積が1.5mm以上のシース部20が形成され、シース部20の両側面が印刷面となっている。
【0024】
[第二の実施形態の効果]
第二の実施形態の光ドロップケーブルによっても第一の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、ノッチ部15の開口が図2に示すように下方向を向いているため、ノッチ部15内に雨水や埃等が堆積するのが防止される。
【0025】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。例えば、吊線10は鋼線を用いたが、金属は落雷を誘導する可能性が高い。そこで、落雷が頻発するような地域向けの光ドロップケーブル1は、吊線10を繊維強化プラスチック(FRP)などの無誘導材料にした構成にすることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 光ドロップケーブル
10 吊線
11 テンションメンバ
12 光ファイバ心線
13 共通シース
14 首部
15 ノッチ部
16 吊線部
17 本体部
20 シース部
21 マーキング領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置された光ファイバ心線とテンションメンバとを外被によって被覆した本体部が首部を介して吊線部と一体に連結された光ドロップケーブルにおいて、
前記テンションメンバが前記本体部の略中央部に配置された前記光ファイバ心線よりも前記吊線部側に配置され、
前記本体部に前記吊線部側の両角部から前記光ファイバ心線に近接するようにして当該光ファイバ心線取り出し用の一対のノッチを形成することにより断面略U字形状でその断面積が1.5mm以上の前記光ファイバ心線及び前記テンションメンバが存在しないシース部を形成し、当該シース部の側面を印刷面としたことを特徴とする光ドロップケーブル。
【請求項2】
平行に配置された光ファイバ心線とテンションメンバとを外被によって被覆した本体部が首部を介して吊線部と一体に連結された光ドロップケーブルにおいて、
前記テンションメンバが前記本体部の略中央部に配置された前記光ファイバ心線よりも前記吊線部側とは反対側に配置され、
前記本体部に前記吊線部とは反対側の両角部から前記光ファイバ心線に近接するようにして当該光ファイバ心線取り出し用の一対のノッチを形成することにより断面略U字形状でその断面積が1.5mm以上の前記光ファイバ心線及び前記テンションメンバが存在しないシース部を形成し、当該シース部の側面を印刷面としたことを特徴とする光ドロップケーブル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光ドロップケーブルにおいて、
前記ノッチは、断面が略V字状でその先端が前記光ファイバ心線に向かって屈曲して形成されていることを特徴とする光ドロップケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−20097(P2013−20097A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153425(P2011−153425)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【特許番号】特許第4881486号(P4881486)
【特許公報発行日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(591160268)北日本電線株式会社 (41)
【Fターム(参考)】