説明

光パケット交換システムおよび光パケット交換装置

【課題】光パケット交換方式において、クライアント信号の優先度に応じた方路切り替えを行う。
【解決手段】光パケット交換装置12は、宛先情報と優先度情報とを含むヘッダを有する光パケット信号を受信する第1入力部62および第2入力部63と、光パケット信号を分岐する第1分波器70および第2分波器71と、分岐した一方の光パケット信号の方路を切り替える光スイッチ部60と、分岐した他方の光パケット信号のヘッダを解析して、宛先情報および優先度情報を検出する第1解析部76および第2解析部78と、宛先情報に基づいて複数の光パケット信号の時間的な競合を判定し、競合が発生している場合には、優先度情報に基づいて光パケット信号の通過/破棄を判定する出力競合判定部79とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パケット信号に付与された宛先情報に従って光スイッチを切り替えることにより、光パケット単位でのパケット交換を可能とする光パケット交換方式に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を用いた光伝送システムにおいて、波長選択スイッチ(WSS:wavelength selective switch)等を用いることで、波長単位のパス切替を行う技術が実用化されている。その次の技術として、切替を行う単位を例えばIPパケット(10GEther(10 Gigabit Ethernet(登録商標))信号等)一つ一つという細かい単位とし、各々を光パケットという形式に変換して、超高速の光スイッチで方路切り替えを行う光パケット交換方式が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
IPパケットはデータが存在しない間は有意な情報が転送されておらず、その分だけ帯域が無駄になっているが、光パケット交換方式が実現すれば、データが存在しない時間帯を別のパケットが占有できることになる。従って、光パケット交換方式は、伝送路の帯域利用効率を飛躍的に高める可能性があり、将来の技術として有望視されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−235986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光パケット交換装置では、複数の入力部に同じタイミングで受信した複数の光パケット信号が、同じ出力部への出力を要求する場合がある。このような場合、光パケット交換装置は通常、先に受信した光パケット信号を有効としてスイッチングを行い、後に受信した光パケット信号を破棄する。
【0006】
しかしながら、例えばEther信号などのクライアント信号は、データの種類に応じて伝送の優先度が設定されている場合がある。このような場合、優先度の高いクライアント信号を効率的に伝送することが好ましい。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、光パケット交換方式において、優先度の高いクライアント信号の効率的に伝送できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光パケット交換システムは、受信したクライアント信号から宛先情報と、所定の優先度情報とを検出する検出部と、宛先情報と優先度情報とを含むヘッダを生成するヘッダ生成部と、ヘッダをクライアント信号に挿入してパケット信号を生成するヘッダ挿入部と、パケット信号を光パケット信号に変換する電気/光変換部とを備える光パケット送信装置と、光パケット信号を受信する複数の受信部と、光パケット信号を分岐する分岐部と、分岐した一方の光パケット信号の方路を切り替える光スイッチ部と、分岐した他方の光パケット信号のヘッダを解析して、宛先情報および優先度情報を検出する解析部と、宛先情報に基づいて複数の受信部に入力した複数の光パケット信号の時間的な競合を判定し、競合が発生している場合には、優先度情報に基づいて光パケット信号の通過/破棄を判定する出力競合判定部とを備える光パケット交換装置とを備える。
【0009】
出力競合判定部は、複数の光パケット信号に時間的な競合が発生している場合、競合している光パケット信号の優先度を比較し、それらが同等の優先度を有するときには、先に入力された光パケット信号を通過させ、後に入力された光パケット信号を破棄してもよい。
【0010】
出力競合判定部は、複数の光パケット信号に時間的な競合が発生している場合、競合している光パケット信号の優先度を比較し、それらが異なる優先度を有するときには、優先度の高い光パケットを通過させ、優先度の低い光パケットを破棄してもよい。
【0011】
出力競合判定部は、ある第1光パケット信号を通過させているときに、該第1光パケット信号よりも優先度の高い第2光パケット信号が入力された場合、第1光パケット信号の通過を停止させ、第2光パケット信号を通過させてもよい。
【0012】
光パケット交換装置から出力された光パケット信号を受信する光パケット受信装置をさらに備えてもよい。光パケット受信装置は、出力競合判定部により途中で通過を停止された光パケット信号を受信した場合、該光パケット信号を破棄してもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、光パケット交換装置である。この装置は、宛先情報と優先度情報とを含むヘッダを有する光パケット信号を受信する複数の受信部と、光パケット信号を分岐する分岐部と、分岐した一方の光パケット信号の方路を切り替える光スイッチ部と、分岐した他方の光パケット信号のヘッダを解析して、宛先情報および優先度情報を検出する解析部と、宛先情報に基づいて複数の受信部に入力した複数の光パケット信号の時間的な競合を判定し、競合が発生している場合には、優先度情報に基づいて光パケット信号の通過/破棄を判定する出力競合判定部とを備える。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光パケット交換方式において、優先度の高いクライアント信号の効率的に伝送できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】比較例に係る光パケット交換システムを示す図である。
【図2】比較例に係る光パケット送信装置の構成を示す図である。
【図3】比較例に係る光パケット受信装置の構成を示す図である。
【図4】比較例に係る光パケット交換装置の構成を示す図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、比較例に係る光パケット交換装置における出力競合判定を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に係る光パケット交換システムを示す図である。
【図7】本実施形態に係る光パケット送信装置の構成を示す図である。
【図8】本実施形態に係る光パケット受信装置の構成を示す図である。
【図9】本実施形態に係る光パケット交換装置の構成を示す図である。
【図10】図10(a)〜(c)は、本実施形態に係る光パケット交換装置における出力競合判定を説明するための図である。
【図11】図11(a)〜(c)は、本実施形態に係る光パケット交換装置における出力競合判定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る光パケット交換システムについて説明する。まず、本実施形態に係る光パケット交換システムについて説明する前に、本発明者が従来開発してきた光パケット交換システムを比較例として説明する。
【0018】
図1は、比較例に係る光パケット交換システム110を示す。図1に示すように、光パケット交換システム110は、光パケット送信装置111と、光パケット交換装置112と、光パケット受信装置113と、第1AWG114と、第2AWG115と、第1光増幅器116と、第2光増幅器117と、第1〜第4光伝送路118〜121とを備える。
【0019】
光パケット送信装置111は、クライアント側から受信した10GEtherパケットの転送先を示す経路情報ヘッダ(パケット長、宛先情報、自ノードIDを含む)を生成し、パケットの先頭に付加した後、パケットのデータをn分割する。そして、分割したn個のデータを波長λ1〜λnの光信号に載せ、n波の光パケット信号として出力する。なお、Ether信号のパケット長に関わらず、Etherパケットを分割する数はn(システムの使用できる最大波長数、例えばn=40)に固定されている。
【0020】
光パケット送信装置111から出力されたn波の光パケット信号(波長λ1〜λn)は、第1AWG114で合波された後、第1光増幅器116で増幅され、第2光伝送路119に出力される。
【0021】
第2光伝送路119を伝搬した光パケット信号は、光パケット交換装置112の第2入力部163に入力される。また、光パケット交換装置112の第1入力部162には、WDMネットワークに接続された別の光パケット送信装置からの波長多重された光パケット信号が第1光伝送路118を介して入力される。
【0022】
光パケット交換装置112は、光パケット信号に付与された宛先情報に従って、光パケット信号の方路を切り替える、2入力×2出力の光パケット交換装置である。光パケット交換装置112の第1出力部164には第3光伝送路120が接続され、第2出力部165には第4光伝送路121が接続されている。第3光伝送路120を伝搬した光パケット信号は、WDMネットワークに出力される。一方、第4光伝送路121を伝搬した光パケット信号は、第2光増幅器117で増幅された後、第2AWG115で波長λ1〜λnに分波される。第2AWG115で分波されたn波の光パケット信号は、光パケット受信装置113に入力される。
【0023】
光パケット受信装置113は、受信したn波の光パケット信号を元のEtherパケットに復元して、クライアント側に出力する。
【0024】
図2は、比較例に係る光パケット送信装置111の構成を示す。図2に示すように、光パケット送信装置111は、光/電気変換部130と、受信処理部132と、経路情報抽出部133と、シリアル/パラレル変換部134と、フレームメモリ135と、送信処理部136と、パケット長検出部137と、ルックアップテーブル138と、ヘッダ生成部139と、ヘッダ挿入部140と、第1〜第n電気/光変換部141−1〜141−nとを備える。
【0025】
光パケット送信装置111では、クライアント側から入力された10GEther信号は光/電気変換部130で電気信号に変換される。この電気のEther信号のデータフォーマットはMACフレームである。その後、Ether信号は、受信処理部132にて所定の受信処理が行われる。その後、経路情報抽出部133は、Ehter信号から経路情報を抽出する。この経路情報は、ルックアップテーブル138を参照することにより宛先情報に変換され、ヘッダ生成部139に入力される。また、パケット長検出部137は、受信したEhter信号のパケット長を抽出し、ヘッダ生成部139に出力する。
【0026】
経路情報抽出部133から出力されたEhter信号は、シリアル/パラレル変換部134にてパラレル信号に変換された後、フレームメモリ135に記憶される。その後、Ehter信号は、送信処理部136にてn等分に分割され、n個のパケット信号が生成される。また送信処理部136からは、光パケットID/コピー情報がヘッダ生成部139に出力される。
【0027】
ヘッダ生成部139は、パケット長、宛先情報、自ノードID、光パケットID/コピー情報に基づいて、経路情報ヘッダを生成する。生成された経路情報ヘッダは、ヘッダ挿入部140により、分割されたn個のパケット信号のうち一つのパケット信号に挿入される。そして、n個のパケット信号は、それぞれ第1〜第n電気/光変換部141−1〜141−nにより光信号に変換され、n波(λ1〜λn)の光パケット信号として出力される。経路情報ヘッダが挿入された光パケット信号の波長を「ヘッダ波長」と呼ぶ。ここでは、ヘッダ波長=λ1とする。
【0028】
図3は、比較例に係る光パケット受信装置113の構成を示す。図3に示すように、光パケット受信装置113は、第1〜第n光/電気変換部150−1〜150−nと、第1〜第nフレームメモリ151−1〜151−nと、ヘッダ処理部152と、パケット組立部153と、パケット識別部154と、MACテーブル155と、出力制御部156と、電気/光変換部158とを備える。
【0029】
光パケット受信装置113では、入力されたn波(λ1〜λn)の光パケット信号がそれぞれ第1〜第n光/電気変換部150−1〜150−nにより電気のパケット信号に変換される。また、ヘッダ処理部152は、ヘッダ波長λ1の光パケット信号に対応するパケット信号の経路情報ヘッダから、パケット情報、パケット長、ECC(Error Check Code)エラーを抽出し、パケット信号の正常性判断を行う。
【0030】
第1〜第n光/電気変換部150−1〜150−nから出力されたn個のパケット信号は、それぞれ第1〜第nフレームメモリ151−1〜151−nに蓄えられる。パケット組立部153は、ヘッダ処理部152からのパケット情報、パケット長、ECCエラーを参照して、パケット組み立てを行う。パケット識別部154は、パケット組立部153の出力からEtherパケットを識別し、Etherパケットを抜き取る。出力制御部156は、MACテーブル155を参照して、パケット識別部154から出力されたEtherパケット内の宛先MACアドレスを、MACテーブル155に登録されているMACアドレスに付け替える。その後、Etherパケットは電気/光変換部158に入力される。電気/光変換部158に入力されるEther信号のデータフォーマットは、MACフレームである。電気/光変換部158は、Etherパケットを光信号に変換し、クライアント側に出力する。
【0031】
図4は、比較例に係る光パケット交換装置112の構成を示す。図4に示すように、光パケット交換装置112は、光スイッチ部160と、光スイッチ制御部161と、第1入力部162と、第2入力部163と、第1入力側光増幅器166と、第2入力側光増幅器167と、第1分波器170と、第2分波器171と、第1光遅延線172と、第2光遅延線173と、第1出力側光増幅器168と、第2出力側光増幅器169と、第1出力部164と、第2出力部165とを備える。また、光スイッチ制御部161は、第1光/電気変換部174と、第2光/電気変換部175と、第1解析部176と、第2解析部178と、出力競合判定部179とを備える。
【0032】
光パケット交換装置112は、クライアント側またはネットワーク側からWDM信号として入力した光パケット信号から経路情報ヘッダを抽出する。そして、該経路情報ヘッダを基に出力先を決定し、光スイッチ部160にて出力先を切り替える。
【0033】
第1入力部162および第2入力部163には、波長多重されたn波の光パケット信号が入力される。入力される光パケット信号は、自ノードのクライアント部または別ノードのクライアント部からのEhter信号が、図2に示すような光パケット送信装置で変換されたものである。
【0034】
入力された光パケット信号は、光レベル調整用の第1入力側光増幅器166、第2入力側光増幅器167で増幅された後、ヘッダ波長の光パケット信号のみが第1分波器170、第2分波器171で光分岐される。分岐したヘッダ波長の光パケット信号は、光スイッチ制御部161に入力される。一方、波長多重光パケット信号は、第1光遅延線172、第2光遅延線173を介して光スイッチ部160に入力される。
【0035】
分岐したヘッダ波長の光パケット信号は、第1光/電気変換部174、第2光/電気変換部175でそれぞれ電気のパケット信号に変換された後、第1解析部176、第2解析部178にて経路情報ヘッダが解析され、宛先情報が検出される。
【0036】
出力競合判定部179は、検出された宛先情報に基づいて光パケット信号の通過/破棄を判定し、該判定結果に基づいて光スイッチ部160に光スイッチ制御信号を出力する。
【0037】
第1光遅延線172、第2光遅延線173は、光スイッチ制御部161が光スイッチ制御信号を生成するのに要する時間だけ、波長多重光パケット信号を遅延させる。第1光遅延線172、第2光遅延線173を設けることにより、光パケット信号が光スイッチ部160に到着するタイミングに合わせて、光スイッチ部160のオン/オフを制御できる。
【0038】
光スイッチ部160は、2×2の光スイッチであり、第1〜第4光ゲートスイッチ180〜183と、4つの光カプラ184〜187とを備える。光ゲートスイッチとしては、半導体光増幅器(SOA)を用いたものを利用できる。第1〜第4光ゲートスイッチ180〜183は、光スイッチ制御部161からの光スイッチ制御信号によりオン/オフが制御される。光パケット交換装置112では、1つのヘッダ波長の光パケット信号から抽出された宛先情報を基に、波長多重されたn波の光パケット信号の全てが一度に方路切替される。
【0039】
図5(a)〜(c)は、光パケット交換装置112における出力競合判定を説明するための図である。図5(a)は、第1入力部162に入力した光パケット信号を示し、図5(b)は、第2入力部163に入力した光パケット信号を示し、図5(c)は、第1出力部164から出力された光パケット信号を示す。入力した光パケット信号1−1、1−2、および2−1は、いずれも第1出力部164を出力先としているとする。
【0040】
図5に示すように、まず第1入力部162に光パケット信号1−1が入力され、次に第2入力部163に光パケット信号2−1が入力され、最後に第1入力部162に光パケット信号1−2が入力されている。光パケット信号1−1は先着の信号であるので、出力競合判定部179は、光パケット信号1−1を第1出力部164に出力する。言い換えると、出力競合判定部179は、光スイッチ部160の光ゲートスイッチ180をオンとし、第1入力部162から第1出力部164へのパスを開放する。
【0041】
しかしながら、第2入力部163に入力した光パケット信号2−1は、第1入力部162に入力された光パケット信号1−1と時間的に競合している。つまり、時間的に重なっている。この場合、出力競合判定部179は、光パケット信号2−1を破棄する。言い換えると、出力競合判定部179は、光パケット信号2−1が入力する光ゲートスイッチ182と183をオフのままとする。
【0042】
次に第1入力部162に入力した光パケット信号1−2は、光パケット信号2−1とデータ部分が重なっているが、光パケット信号2−1が既に破棄されているので、出力競合判定部179は、光パケット信号1−2を第1出力部164に出力する。
【0043】
このように、比較例に係る光パケット交換装置では、複数の入力部から同じタイミングで光パケット信号を受信し、同じ出力方路への出力要求を受けた場合に、光パケット信号の一部での輻輳するときは、先に受信した光パケット信号を通過させ、後に受信した光パケット信号を破棄する処理を行っている。
【0044】
ところで、Ether信号などのクライアント信号は、データの種類(メール、電話、映像など)に応じて伝送の優先度が設定されている場合がある。このような場合、クライアント信号の優先度を考慮した方路切替が行われることが好ましい。以下、クライアント信号の優先度に応じた方路切り替えを行うことのできる光パケット交換システムについて説明する。
【0045】
図6は、本発明の実施形態に係る光パケット交換システム10を示す。図6に示すように、光パケット交換システム10は、光パケット送信装置11と、光パケット交換装置12と、光パケット受信装置13と、第1AWG14と、第2AWG15と、第1光増幅器16と、第2光増幅器17と、第1〜第4光伝送路18〜21とを備える。光パケット交換システム10の基本的な構成は図1に示す光パケット交換システム110と類似するので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0046】
図7は、本実施形態に係る光パケット送信装置11の構成を示す。図7に示すように、光パケット送信装置11は、光/電気変換部30と、受信処理部32と、経路情報抽出部33と、シリアル/パラレル変換部34と、フレームメモリ35と、送信処理部36と、検出部37と、ルックアップテーブル38と、ヘッダ生成部39と、ヘッダ挿入部40と、第1〜第n電気/光変換部41−1〜41−nとを備える。光パケット送信装置11は、Ether信号/光パケット変換装置として機能する。
【0047】
光パケット送信装置11にはクライアント側から10GEther信号が入力される。このEther信号には、データの種類に応じて該データを管理するクライアントにより決定された優先度情報が含まれている。この優先度情報は、Ether信号の重要度を表しており、優先度の高いEther信号は、優先度の低い信号よりも優先的に伝送される。優先度の高いデータの例としては、例えば大容量の映像データを継続的に送信するVideo On Demand用のデータなどが挙げられる。
【0048】
クライアント側から入力された10GEther信号は、光/電気変換部30で電気信号に変換される。この電気のEther信号のデータフォーマットはMACフレームである。その後、Ether信号は、受信処理部32にて所定の受信処理が行われる。その後、経路情報抽出部33は、Ehter信号から経路情報を抽出する。この経路情報は、ルックアップテーブル38を参照することにより宛先情報に変換され、ヘッダ生成部39に入力される。また、検出部37は、受信したEther信号から、パケット長情報と優先度情報を検出し、ヘッダ生成部39に出力する。
【0049】
経路情報抽出部33から出力されたEhter信号は、シリアル/パラレル変換部34にてパラレル信号に変換された後、フレームメモリ35に記憶される。その後、Ehter信号は、送信処理部36にてn等分に分割され、n個のパケット信号が生成される。また送信処理部36からは、光パケットID/コピー情報がヘッダ生成部39に出力される。
【0050】
ヘッダ生成部39は、パケット長、宛先情報、優先度情報、自ノードID、および光パケットID/コピー情報に基づいて、経路情報ヘッダを生成する。生成された経路情報ヘッダは、ヘッダ挿入部40により、分割されたn個のパケット信号のうち一つのパケット信号に挿入される。そして、n個のパケット信号は、それぞれ第1〜第n電気/光変換部41−1〜41−nにより光信号に変換され、n波(λ1〜λn)の光パケット信号として出力される。経路情報ヘッダが挿入された光パケット信号の波長を「ヘッダ波長」と呼ぶ。ここでは、ヘッダ波長=λ1とする。
【0051】
図8は、本実施形態に係る光パケット受信装置13の構成を示す。図8に示すように、光パケット受信装置13は、第1〜第n光/電気変換部50−1〜50−nと、第1〜第nフレームメモリ51−1〜51−nと、ヘッダ処理部52と、パケット組立部53と、パケット識別部54と、MACテーブル55と、出力制御部56と、電気/光変換部58とを備える。光パケット受信装置13は、光パケット/Ether信号変換装置として機能する。
【0052】
光パケット受信装置13では、入力されたn波(λ1〜λn)の光パケット信号がそれぞれ第1〜第n光/電気変換部50−1〜50−nにより電気のパケット信号に変換される。
【0053】
ヘッダ処理部52は、ヘッダ波長λ1の光パケット信号から変換されたパケット信号の経路情報ヘッダから、使用波長、パケット情報、パケット長、ECC(Error Check Code)エラーを抽出し、パケット組立部53に送信する。
【0054】
第1〜第n光/電気変換部50−1〜50−nから出力されたn個のパケット信号は、それぞれ第1〜第nフレームメモリ51−1〜51−nに蓄えられる。パケット組立部53は、ヘッダ処理部52からのパケット情報、パケット長、ECCエラーを参照して、パケット組み立てを行う。
【0055】
パケット識別部54は、パケット組立部53の出力からEtherパケットを識別し、Etherパケットを抜き取る。パケット識別部54は、Ether信号の宛先アドレス、送信元アドレス、長さ/タイプ、データの各フィールドから計算したCRC(Cyclic Redundancy Check)値であるFCS(Frame Check Sequence)の読み出しと自局で計算したCRC値の比較を行うことにより、パケット異常検出を行い、異常の場合はデータを破棄する。
【0056】
出力制御部56は、MACテーブル55を参照して、パケット識別部54から出力されたEtherパケット内の宛先MACアドレスを、MACテーブル55に登録されているMACアドレスに付け替える。その後、Etherパケットは電気/光変換部58に入力される。電気/光変換部58に入力されるEther信号のデータフォーマットは、MACフレームである。電気/光変換部58は、Etherパケットを光信号に変換し、クライアント側に出力する。
【0057】
図9は、本実施形態に係る光パケット交換装置12の構成を示す。図9に示すように、光パケット交換装置12は、光スイッチ部60と、光スイッチ制御部61と、第1入力部62と、第2入力部63と、第1入力側光増幅器66と、第2入力側光増幅器67と、第1分波器70と、第2分波器71と、第1光遅延線72と、第2光遅延線73と、第1出力側光増幅器68と、第2出力側光増幅器69と、第1出力部64と、第2出力部65とを備える。また、光スイッチ制御部61は、第1光/電気変換部74と、第2光/電気変換部75と、第1解析部76と、第2解析部78と、出力競合判定部79とを備える。
【0058】
光パケット交換装置12は、クライアント側またはネットワーク側からWDM信号として入力した光パケット信号から経路情報ヘッダを抽出する。そして、該経路情報ヘッダを基に出力先を決定し、光スイッチ部60にて出力先を切り替える。
【0059】
第1入力部62および第2入力部63には、波長多重された光パケット信号が入力される。入力される光パケット信号は、自ノードのクライアント部または別ノードのクライアント部からのEhter信号が、図7に示すような光パケット送信装置で変換されたものである。
【0060】
第1入力部62、第2入力部63に入力された光パケット信号は、光レベル調整用の第1入力側光増幅器66、第2入力側光増幅器67で増幅された後、ヘッダ波長の光パケット信号のみが第1分波器70、第2分波器71で光分岐される。分岐したヘッダ波長の光パケット信号は、光スイッチ制御部61に入力される。その後、ヘッダ波長の光パケット信号は、それぞれ第1光/電気変換部74、第2光/電気変換部75で電気信号に変換された後、第1解析部76、第2解析部78にて経路情報ヘッダが解析され、宛先情報、優先度情報、およびパケット長情報が検出される。一方、第1分波器70、第2分波器71を通過した波長多重光パケット信号は、第1光遅延線72、第2光遅延線73を介して光スイッチ部60に入力される。
【0061】
出力競合判定部79は、第1解析部76、第2解析部78にて検出された宛先情報およびパケット長情報に基づいて、第1入力部62、第2入力部63に入力した光パケット信号の時間的な競合を判定し、競合が発生している場合には、優先度情報に基づいて光パケット信号の通過/破棄を判定する。そして、出力競合判定部79は、該判定結果に基づいて光スイッチ部60に光スイッチ制御信号を出力する。
【0062】
第1光遅延線72、第2光遅延線73は、光スイッチ制御部61が光スイッチ制御信号を生成するのに要する時間だけ、波長多重光パケット信号を遅延させる。第1光遅延線72、第2光遅延線73を設けることにより、光パケット信号が光スイッチ部60に到着するタイミングに合わせて、光スイッチ部60のオン/オフを制御できる。
【0063】
光スイッチ部60は、2×2の光スイッチであり、第1〜第4光ゲートスイッチ80〜83と、4つの光カプラ84〜87とを備える。光ゲートスイッチとしては、半導体光増幅器(SOA)を用いたものを利用できる。第1〜第4光ゲートスイッチ80〜83は、光スイッチ制御部61からの光スイッチ制御信号によりオン/オフが制御される。
【0064】
図10(a)〜(c)は、光パケット交換装置12における出力競合判定を説明するための図である。図10(a)は、第1入力部62に入力した第1光パケット信号P1を示し、図10(b)は、第2入力部63に入力した第2光パケット信号P2を示し、図10(c)は、第1出力部64から出力された光パケット信号を示す。
【0065】
図10(a)(b)に示すように、ここではまず第1入力部62に第1光パケット信号P1が入力され、次に第2入力部63に第2光パケット信号P2が入力されている。光パケット信号P1およびP2は、いずれも第1出力部64を出力先としている。また、第1光パケット信号P1および第2光パケット信号P2は、共に優先度が同レベル(ここでは両方とも優先度:低)の光パケット信号である。
【0066】
図10(a)(b)に示すように、第1光パケット信号P1と第2光パケット信号P2は、時間的に競合している(つまり時間的な重複が生じている)。この時間的な競合は、第1光パケット信号P1および第2光パケット信号P2に関する宛先情報およびパケット長情報に基づき判定できる。本実施形態に係る光パケット交換装置12においては、このように複数の光パケット信号が時間的に競合している場合、出力競合判定部79は、競合している光パケット信号の優先度を比較する。そして、それらが同等の優先度を有するときには、先に入力された光パケット信号を通過させ、後に入力された光パケット信号を破棄する判定をする。具体的に図10(a)〜(c)の例では、競合している第1光パケット信号P1と第2光パケット信号P2の優先度が共に「低」であるので、出力競合判定部79は、先に入力された第1光パケット信号P1を通過させ、後に入力された第2光パケット信号P2を破棄する。図10(a)〜(c)の例では、2つの光パケット信号の優先度が「低」である場合について説明したが、例えば優先度が共に「高」である場合も同様である。
【0067】
図11(a)〜(c)もまた、光パケット交換装置12における出力競合判定を説明するための図である。図11(a)は、第1入力部62に入力した第1光パケット信号P1および第3光パケット信号P3を示し、図11(b)は、第2入力部63に入力した第2光パケット信号P2を示し、図11(c)は、第1出力部64から出力された光パケット信号を示す。
【0068】
図11(a)(b)に示すように、ここではまず第1入力部62に第1光パケット信号P1が入力され、次に第2入力部63に第2光パケット信号P2が入力され、次に第1入力部62に第3光パケット信号P3が入力されている。第1〜第3光パケット信号P1〜P3は、いずれも第1出力部64を出力先としている。また、第1光パケット信号P1および第3光パケット信号P3は、共に優先度が「低」であり、第2光パケット信号P2は、優先度が「高」である。
【0069】
本実施形態に係る光パケット交換装置12においては、出力競合判定部79は、複数の光パケット信号に時間的な競合が発生している場合、競合している光パケット信号の優先度を比較し、それらが異なる優先度を有するときには、優先度の高い光パケットを通過させ、優先度の低い光パケットを破棄する処理を行う。
【0070】
図11(a)〜(c)を参照して上記の処理を具体的に説明する。第1光パケット信号P1は、入力タイミングが一番早いため、第1出力部64に出力されている。そして、第1光パケット信号を通過させているときに、第1光パケット信号P1よりも優先度の高い第2光パケット信号P2が第2入力部63に入力されたとする。この場合、出力競合判定部79は、優先度の低い第1光パケット信号P1の通過を停止させ、優先度の高い第2光パケット信号P2を通過させる。すなわち、第1光パケット信号P1が第1出力部64に出力されている途中で光スイッチ部60の第3光ゲートスイッチ82をオフとし、その後第1光ゲートスイッチ80をオンにする。なお、第3光ゲートスイッチ82をオフにするタイミングと第1光ゲートスイッチ80をオンにするタイミングの間には、所定の「ガードタイム」と呼ばれる無信号期間が設けられる。このガードタイムは、後段の受信器において、第2光パケット信号P2が正常なデータとして認識できるようにするためのものである。その後、第1入力部62には優先度の低い第3光パケット信号P3が入力されている。この第3光パケット信号P3は、第2光パケット信号P2と時間的に重複しているが、優先度が第2光パケット信号P2よりも低いため、破棄される。
【0071】
図11(a)〜(c)の例では、第1出力部64から第1光パケット信号P1が一部のデータが欠落した状態で出力される。この第1光パケット信号P1は、図8に示す光パケット受信装置13に入力される。光パケット受信装置13では、上述したようにパケット識別部54により受信パケットの異常検出が行われるので、第1光パケット信号P1のような一部データが欠落したパケット信号は破棄される。従って、優先度の低い光パケット信号の出力を途中で停止したとしても、光パケット受信装置13は影響を受けない。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係る光パケット交換システム10によれば、出力競合判定において優先度情報を利用することにより、優先度の高い信号を効率的に伝送することができる。
【0073】
上述の実施形態では、優先度を「高」と「低」の2段階としたが、これに限定されず、優先度には複数の段階が設定されてもよい。この場合、出力競合判定においては、最も優先度の高い光パケット信号が優先的に出力される。
【0074】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せによりいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0075】
10 光パケット交換システム、 11 光パケット送信装置、 12 光パケット交換装置、 13 光パケット受信装置、 30 光/電気変換部、 32 受信処理部、 33 経路情報抽出部、 34 シリアル/パラレル変換部、 36 送信処理部、 37 検出部、 39 ヘッダ生成部、 40 ヘッダ挿入部、 52 ヘッダ処理部、 53 パケット組立部、 54 パケット識別部、 56 出力制御部、 58 電気/光変換部、 60 光スイッチ部、 61 光スイッチ制御部、 62 第1入力部、 63 第2入力部、 64 第1出力部、 65 第2出力部、 70 第1分波器、 71 第2分波器、 72 第1光遅延線、 73 第2光遅延線、 74 第1光/電気変換部、 75 第2光/電気変換部、 76 第1解析部、 78 第2解析部、 79 出力競合判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信したクライアント信号から宛先情報と、所定の優先度情報とを検出する検出部と、
宛先情報と優先度情報とを含むヘッダを生成するヘッダ生成部と、
ヘッダをクライアント信号に挿入してパケット信号を生成するヘッダ挿入部と、
パケット信号を光パケット信号に変換する電気/光変換部と、を備える光パケット送信装置と、
光パケット信号を受信する複数の受信部と、
光パケット信号を分岐する分岐部と、
分岐した一方の光パケット信号の方路を切り替える光スイッチ部と、
分岐した他方の光パケット信号のヘッダを解析して、宛先情報および優先度情報を検出する解析部と、
宛先情報に基づいて複数の前記受信部に入力した複数の光パケット信号の時間的な競合を判定し、競合が発生している場合には、優先度情報に基づいて光パケット信号の通過/破棄を判定する出力競合判定部と、を備える光パケット交換装置と、
を備えることを特徴とする光パケット交換システム。
【請求項2】
前記出力競合判定部は、複数の光パケット信号に時間的な競合が発生している場合、競合している光パケット信号の優先度を比較し、それらが同等の優先度を有するときには、先に入力された光パケット信号を通過させ、後に入力された光パケット信号を破棄することを特徴とする請求項1に記載の光パケット交換システム。
【請求項3】
前記出力競合判定部は、複数の光パケット信号に時間的な競合が発生している場合、競合している光パケット信号の優先度を比較し、それらが異なる優先度を有するときには、優先度の高い光パケットを通過させ、優先度の低い光パケットを破棄することを特徴とする請求項1または2に記載の光パケット交換システム。
【請求項4】
前記出力競合判定部は、ある第1光パケット信号を通過させているときに、該第1光パケット信号よりも優先度の高い第2光パケット信号が入力された場合、第1光パケット信号の通過を停止させ、第2光パケット信号を通過させることを特徴とする請求項3に記載の光パケット交換システム。
【請求項5】
前記光パケット交換装置から出力された光パケット信号を受信する光パケット受信装置をさらに備え、
前記光パケット受信装置は、前記出力競合判定部により途中で通過を停止された光パケット信号を受信した場合、該光パケット信号を破棄することを特徴とする請求項4に記載の光パケット交換システム。
【請求項6】
宛先情報と優先度情報とを含むヘッダを有する光パケット信号を受信する複数の受信部と、
光パケット信号を分岐する分岐部と、
分岐した一方の光パケット信号の方路を切り替える光スイッチ部と、
分岐した他方の光パケット信号のヘッダを解析して、宛先情報および優先度情報を検出する解析部と、
宛先情報に基づいて複数の前記受信部に入力した複数の光パケット信号の時間的な競合を判定し、競合が発生している場合には、優先度情報に基づいて光パケット信号の通過/破棄を判定する出力競合判定部と、
を備えることを特徴とする光パケット交換装置。
【請求項7】
前記出力競合判定部は、複数の光パケット信号に時間的な競合が発生している場合、競合している光パケット信号の優先度を比較し、それらが同等の優先度を有するときには、先に入力された光パケット信号を通過させ、後に入力された光パケット信号を破棄することを特徴とする請求項6に記載の光パケット交換装置。
【請求項8】
前記出力競合判定部は、複数の光パケット信号に時間的な競合が発生している場合、競合している光パケット信号の優先度を比較し、それらが異なる優先度を有するときには、優先度の高い光パケットを通過させ、優先度の低い光パケットを破棄することを特徴とする請求項6または7に記載の光パケット交換装置。
【請求項9】
前記出力競合判定部は、ある第1光パケット信号を通過させているときに、該第1光パケット信号よりも優先度の高い第2光パケット信号が入力された場合、第1光パケット信号の通過を停止させ、第2光パケット信号を通過させることを特徴とする請求項8に記載の光パケット交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−165267(P2012−165267A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25243(P2011−25243)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】