説明

光ヒューズ

【課題】破断後も交換容易な光ヒューズ
【解決手段】光ヒューズ外套部5は、少なくとも光ファイバ6a、6bのコアと接する部分5a及び5bは透明である(2.A)。コアの形成されていない光ヒューズ100を載置し、光ファイバ6a、6bの両側から光硬化性樹脂1を硬化させうる波長の光を導入する(2.B)。未硬化の光硬化性樹脂1内部に、硬化物から成るコア1cが形成され、未硬化の光硬化性樹脂1との屈折率差により導波路が形成される(2.C)。光ヒューズ150を使用中に、過剰強度の光が入力されると、コア1cからの漏れ光により炭素粉末3が発熱する。この結果、コア1cは未硬化の光硬化性樹脂1に溶融等し、導波路が消失し、光回路は開状態となる。この後、過剰光入力の原因を排除し、混濁の生じた光ヒューズ150をコア未形成の新たな光ヒューズ100と交換し、2.B及び2.Cの手順を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光回路において過剰光が入力された際に回路を開く、光ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
光回路の途中に、TeO2等の低融点ガラスや金属薄膜を配置することで、規定光強度を越える光入力がされた場合に当該低融点ガラスや金属薄膜が溶融し、光回路を開くことで、光ヒューズとすることが提案されている(特許文献1、非特許文献1)。また、MEMSシャッタと光電池とを組み合わせて光ヒューズとすることも提案されている。
【特許文献1】特開平11−281842号公報
【非特許文献1】Jpn. J. Appl. Phys. 43 (2004) L256
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1は光発熱物質膜と熱に応じ光透過率を変化させる膜とから成る光ヒューズを2つの光ファイバ端面で挟む構成である。また、非特許文献1の技術は、2本の光ファイバの端子を直接TeO2等の低融点ガラスで接続するものである。これらは軸合わせが困難であることから、一端破断したのち、復旧させることは容易ではない。MEMSシャッタと光電池とを組み合わせて光ヒューズとする場合は、システムが複雑且つ高価なものとなってしまう。
【0004】
そこで本発明者らは、透明容器等に構成された交換可能な光ヒューズを着想し、本願発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、少なくとも相対する2箇所に、所望の波長光に対して透明な部分を有する筐体と、その内部に、当該2箇所の透明な部分を接続するように、自己形成型光硬化により形成された透明なコア部と、コア部を取り巻く未硬化の光硬化性樹脂と、未硬化の光硬化性樹脂が外部に漏れないように保持する保持材と、光熱変換材とを有することを特徴とする光ヒューズである。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、少なくとも相対する2箇所に、所望の波長光に対して透明な部分を有する筐体と、その内部に、当該2箇所の透明な部分を接続するように、自己形成型光硬化により形成された透明なコア部と、コア部を取り巻く未硬化の光硬化性樹脂とを有し、2箇所の透明な部分以外の部分を光熱変換材で被覆したことを特徴とする光ヒューズである。また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の光ヒューズにおいて、コア部は、150℃以下の融点又はガラス転位点を有することを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載の発明は、少なくとも相対する2箇所に、所望の波長光に対して透明な部分を有する筐体と、その内部に、当該2箇所の透明な部分を接続するように保持された、自己形成型光硬化により硬化可能な未硬化の光硬化性樹脂と、未硬化の光硬化性樹脂が外部に漏れないように保持する保持材と、光熱変換材とを有することを特徴とする光ヒューズである。
【0008】
また、請求項5に記載の発明は、少なくとも相対する2箇所に、所望の波長光に対して透明な部分を有する筐体と、その内部に、当該2箇所の透明な部分を接続するように保持された、自己形成型光硬化により硬化可能な未硬化の光硬化性樹脂を有し、2箇所の透明な部分以外の部分を光熱変換材で被覆したことを特徴とする光ヒューズである。また、請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の光ヒューズにおいて、光硬化性樹脂は、硬化物が150℃以下の融点又はガラス転位点を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願出願人らにより、自己形成型の光導波路が種々提案されている。例えば特開2002−365459、特開2002−169038、特開2004−149579である。これらに記載された光硬化性樹脂を用いると、軸合わせが極めて容易である。このように軸合わせが自己形成的に実施されたコアとして、熱に弱いものを用いれば、光ヒューズとして働く。
【0010】
これは未硬化の光硬化性樹脂に囲まれたコアに、所定量を越える光入力がされると、コア外部に漏れる漏れ光が、外周の光熱変換材で熱に変わり、ヒューズを150℃程度に昇温させるためである。これにより、コアが溶融すればコアが消滅し、光損失が増大して過剰の光出力をしないようにすることができる。この際、保持材も溶融して未硬化の光硬化性樹脂と混濁すれば、光損失は大きくなる。
【0011】
本発明の際立った特徴は、光ヒューズとして破断したものは、筐体ごと交換が可能であることである。請求項4乃至6に記載の光ヒューズに交換後、ヒューズの両側の光ファイバ等からコア形成波長の光を導入することで、コアを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
光硬化性樹脂としては、例えば特開2002−365459、特開2002−169038、特開2004−149579に記載された、任意の光硬化性樹脂のうち、融点又はガラス転位点が低いものを用いると良い。この点で(メタ)アクリル系又はエポキシ系の樹脂を用いることが望ましい。また、特開2002−169038、特開2004−149579に記載された、硬化機構と屈折率の異なる2種類の樹脂を用いて、高屈折率である光硬化性樹脂のみを硬化させる波長で硬化させても良い。この場合、残余の未硬化の樹脂混合物は、例えば熱硬化させても良い。
【0013】
保持材は、任意の材料を用いることができる。融点又はガラス転位点が低い合成樹脂をもちいると、コア溶融と共に保持材も溶融して光硬化性樹脂と混濁可能となって、光損失を大きくすることができる。
【0014】
光熱変換材としては、任意の材料を用いることができる。特に炭素粉末(グラファイト)が安価で好適である。光熱変換材は、保持材外周部に配置しても、保持材内部に分散させても良い。融点又はガラス転位点が低い合成樹脂から成る保持材を用いると、コア溶融と共に保持材も溶融し、且つ光熱変換材も光硬化性樹脂と混濁可能となるので、光損失を更に大きくすることができる。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明に係る光ヒューズ100の具体的な一実施例の構成を示す断面図である。図1.Aは光路に平行な断面図、図1.Bは光路に垂直な断面図である。
【0016】
図1.A及びBのように、透明な矩形状の耐熱ガラスから成る光ヒューズ筐体4内部に、光路に平行な円柱状に未硬化の光硬化性樹脂1が筒状の樹脂硬化物から成る保持材2により保持されており、その外部に炭素粉末(グラファイト)から成る光熱変換材3が充填されている。未硬化の光硬化性樹脂1と筒状の樹脂硬化物から成る保持材2は、光ヒューズ筐体4の相対する2面を接続するように構成されており、未硬化の光硬化性樹脂1部分においては光を光ヒューズ筐体4の片面から反対面に透過させることができる。
【0017】
図2は本発明に係る光ヒューズ100の具体的な一実施例の使用方法を示す断面図である。図2.Aは、図1の光ヒューズ100を載置するための光ヒューズ外套部5と、それに接続された光ファイバ6a、6bとを示す断面図である。光ヒューズ外套部5は、上面の無い矩形の箱型に構成され、少なくとも光ファイバ6a、6bのコアと接する部分5a及び5bは透明である。
【0018】
図2.Bのように、コアの形成されていない光ヒューズ100を光ファイバ6a、6bの接続された光ヒューズ外套部5に載置し、光ファイバ6a、6bの両側から光硬化性樹脂1を硬化させうる波長の光を導入する。光硬化性樹脂1に内在させる光重合開始剤の吸収端に合わせて、例えば近紫外乃至紫又は青色レーザを用いると良い。すると、光ヒューズ100の未硬化の光硬化性樹脂1内部に、当該光路に合わせて光硬化性樹脂硬化物から成るコア1cが形成され、未硬化の光硬化性樹脂1との屈折率差により導波路が形成される(図2.C)。光導波路の形成されたものを光ヒューズ150とする。光ヒューズ150は、上記本願出願人の特許公開公報記載の通り、光損失の少ない導波路が形成され、光ファイバ6a、6bと共に光回路の一部として使用できる。
【0019】
光ヒューズ150に、光ファイバ6a及び6bの少なくとも一方から過剰強度の光が入力されると、コア1cからの漏れ光が多量となる。当該漏れ光はコア1c外周の未硬化の光硬化性樹脂1を硬化させる場合もあるが、いずれにせよコア1cから漏れ出た光は外周の炭素粉末3に到達し、発熱させる。すると、例えばコア1cが(メタ)アクリレート系の樹脂であって融点又はガラス転位点が150℃以下であれば、150℃でコア1cは未硬化の光硬化性樹脂1に溶融等し、導波路が消失する。この際、保持剤2も溶融等すれば、その外部の炭素粉末も混濁することとなる。このような、光ヒューズ150の内部での導波路の消失と炭素粉末の混濁により光回路は開状態となる。
【0020】
この後、過剰光入力の原因を排除し、混濁の生じた光ヒューズ150を、コア未形成の新たな光ヒューズ100と交換し、図2.B及び2.Cの手順を繰り返せば、光回路を閉じることができる。このように、本実施例によれば、軸合わせが不要で、破断後に容易に交換可能な光ヒューズを提供することができる。
【0021】
上記実施例における光ヒューズ150が請求項1及び3の具体例に、光ヒューズ100が請求項4及び6の具体例に対応する。
【0022】
容易に考えられるように、上記実施例における保持材を筐体として、筐体外周に光熱変換材を被覆することでも、上記実施例と同様の効果が得られる。これは請求項2及び5の具体例に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る光ヒューズの具体的な一実施例の構成を示す断面図。
【図2】本発明に係る光ヒューズの具体的な一実施例の使用方法を示す断面図。
【符号の説明】
【0024】
1:未硬化の光硬化性樹脂
1c:光硬化性樹脂硬化物から成るコア
2:保持材
3:光熱変換材
4:光ヒューズ筐体
5:光ヒューズ外套部
6a、6b:光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも相対する2箇所に、所望の波長光に対して透明な部分を有する筐体と、
その内部に、
当該2箇所の透明な部分を接続するように、自己形成型光硬化により形成された透明なコア部と、
コア部を取り巻く未硬化の光硬化性樹脂と、
未硬化の光硬化性樹脂が外部に漏れないように保持する保持材と、
光熱変換材と
を有することを特徴とする光ヒューズ。
【請求項2】
少なくとも相対する2箇所に、所望の波長光に対して透明な部分を有する筐体と、
その内部に、
当該2箇所の透明な部分を接続するように、自己形成型光硬化により形成された透明なコア部と、
コア部を取り巻く未硬化の光硬化性樹脂とを有し、
前記2箇所の透明な部分以外の部分を光熱変換材で被覆したことを特徴とする光ヒューズ。
【請求項3】
前記コア部は、150℃以下の融点又はガラス転位点を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ヒューズ。
【請求項4】
少なくとも相対する2箇所に、所望の波長光に対して透明な部分を有する筐体と、
その内部に、
当該2箇所の透明な部分を接続するように保持された、自己形成型光硬化により硬化可能な未硬化の光硬化性樹脂と、
未硬化の光硬化性樹脂が外部に漏れないように保持する保持材と、
光熱変換材と
を有することを特徴とする光ヒューズ。
【請求項5】
少なくとも相対する2箇所に、所望の波長光に対して透明な部分を有する筐体と、
その内部に、当該2箇所の透明な部分を接続するように保持された、自己形成型光硬化により硬化可能な未硬化の光硬化性樹脂を有し、
前記2箇所の透明な部分以外の部分を光熱変換材で被覆したことを特徴とする光ヒューズ。
【請求項6】
前記光硬化性樹脂は、硬化物が150℃以下の融点又はガラス転位点を有することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の光ヒューズ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−276461(P2006−276461A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95567(P2005−95567)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】