光ビーム照射装置
【課題】装置を大型化することなく視認性を高くして多様な情報を表示できる。
【解決手段】レーザの光源4から射出した光ビームを第一ビームスプリッタ5に設けた半透過膜10bで反射光L1と透過光L2に分岐する。透過光L2の進行方向にビームスプリッタ6〜9を順次配列して、透過光を順次同様に反射光L1と透過光L2に分岐する。最後尾のビームスプリッタ9の後に反射ミラー11を設けて反射させる。各半透過膜と反射ミラーで光ビームは同一方向に反射させてガルバノミラー13〜18でそれぞれ偏向させ、外部へ射出する。各ガルバノミラーは制御手段19に電気的に接続して偏向角を予め調整しておく。光源4とビームスプリッタ5との間にビームエキスパンダ20を設けて光ビームを拡径する。
【解決手段】レーザの光源4から射出した光ビームを第一ビームスプリッタ5に設けた半透過膜10bで反射光L1と透過光L2に分岐する。透過光L2の進行方向にビームスプリッタ6〜9を順次配列して、透過光を順次同様に反射光L1と透過光L2に分岐する。最後尾のビームスプリッタ9の後に反射ミラー11を設けて反射させる。各半透過膜と反射ミラーで光ビームは同一方向に反射させてガルバノミラー13〜18でそれぞれ偏向させ、外部へ射出する。各ガルバノミラーは制御手段19に電気的に接続して偏向角を予め調整しておく。光源4とビームスプリッタ5との間にビームエキスパンダ20を設けて光ビームを拡径する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを分割して複数の光ビームとして照射する光ビーム照射装置に関するものであり、例えば自車両の存在を他人や他車に知らしめたり、自車両の進路を自車両の運転者に把握させるために道路等の路面上に光ビームを照射する車両運転支援装置に用いる光ビームの照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の路面上に光ビームを照射して自車両の進路や存在を自車両や他車両の運転者、歩行者等に示す車両運転支援装置として、例えば下記特許文献1に記載したものが開示されている。この車両運転支援装置はビーム照射機を備えており、ビーム照射機は半導体レーザからなるビーム発生器、ビーム整形レンズ、偏向整形器及びスキャンアクチュエータを設けている。そして、ビーム用電子制御ユニットの指令によってスキャンアクチュエータを駆動して光ビームを走査して視認可能な状態で照射する。
車両運転支援装置はビーム照射機を4つ有しており、例えば車両前部の左右側部と車両後部の左右側部にそれぞれ設けられている。ビーム照射機で照射される光ビームのパターンは光ビームと同一の光学特性を有している。そして、車両運転支援装置に搭載した調光手段によって、光ビームと同一の光学特性を有する光を他の光学特性を有する光に比較して透過し易いものにしている。
この装置によれば、車両周囲の道路路面上に所定の光学特性を有する光ビームが照射されると、路面上に光ビームのパターンが形成される。このパターンは、例えば車両が直進する場合には、車幅に沿う両側で進行方向前方側に直線状に照射され、旋回する場合には、車両の最大旋回幅に沿って略円弧状に照射されることになる。
【特許文献1】特開2003−285685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の車両運転支援装置では、スキャンアクチュエータによって1つの光ビームを走査することで路面上を照射するものであるため、路面上のパターンは単純な連続線になり、他車両や歩行者等に与える情報は限られたものになってしまう。しかも、車両走行時に光ビームを走査して路面上にパターンを形成するためには、光ビームをある速度で移動させることになるため、路面に形成されるパターンはその走査速度が速くなるにしたがって視認性が低下するという不具合がある。
この場合、ビーム発生器を複数設けて個別に光ビームを照射すれば表示できる情報を多様にできると共に視認性を向上できるが、装置が大型化するために車両等に搭載するには不向きであった。
本発明は、このような実情に鑑みて、装置を大型化することなく視認性を高くして多様な情報を表示できるようにした光ビーム照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による光ビーム照射装置は、光ビームを照射する光源と、入射する光ビームを反射光と透過光に分岐すると共に透過光の進行方向に配列された複数の光ビーム分割手段と、該光ビーム分割手段で反射された光ビームをそれぞれ偏向させる偏向方向可変の偏向器とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、光源を射出した光ビームが第一の光ビーム分割手段で反射光と透過光に分割され、反射光は偏向器に向かい、透過光は第二の光ビーム分割手段で反射光と透過光に分割されて反射光は偏向器に向かうことになる。そして、複数の反射光は予め所望の偏向角に設定された偏向器で所望の方向に反射されて、外部へ照射されることになる。
なお、複数の光ビーム分割手段のうち、透過光の進行方向の最後尾に設定されたものは、光ビームの透過率を0に設定してもよい。これによって、最後尾の光ビーム分割手段は全反射する反射手段となり、光ビームを無駄なく照射光として利用できる。この光ビーム照射装置によれば、光ビームを複数に分割すると共に個別に制御できて装置を小型にできると共に照射による視認性を高くして多様な情報を表示できる。例えば、各反射光ビームを互いに分離する光スポットとして照射することで連続するものよりも視認性が高くなる。
【0005】
また、本発明の光ビーム照射装置は、偏向器が複数の光ビーム分割手段に対して一方向に配設されているのが好ましい。
複数の光ビーム分割手段で反射した複数の光ビームを、偏向器を介して外部の一方向に照射できる。これによって光スポットパターンを形成できる。
或いは、本発明の光ビーム照射装置は、偏向器が複数の光ビーム分割手段に対して複数の方向に配設されていて、光ビーム分割手段は反射光を複数の方向に配設した偏向器に選択的に反射させ、複数の方向に配設された偏向器でそれぞれ偏向された光ビームが異なる方向に射出されるようにしてもよい。
光源を射出した光ビームが第一の光ビーム分割手段で反射光と透過光に分割され、透過光は第二以降の光ビーム分割手段で順次反射光と透過光に分割されることになり、複数の光ビーム分割手段でそれぞれ反射させられた光ビームを選択的に異なる方向に進行させて偏向器で偏向させることで、複数方向に向けられた光ビームとして外部に照射することになる。
この光ビーム照射装置によれば光源から射出された光ビームを複数方向に向かう光ビームとして分岐してそれぞれを照射できるため、装置1つで複数の装置を設置したのと同等の効果を発揮できる。
この場合、複数の光ビーム分割手段で反射する光ビームは、二つの方向に交互に反射されるようにしてもよい。例えば複数の光ビーム分割手段で奇数番目の反射光と偶数番目の反射光とを異なる方向に反射させ、偏向器を介してそれぞれ光スポットパターンとして照射することができる。
【0006】
また、複数の光ビーム分割手段でそれぞれ反射する光ビームの少なくとも1つは、光ビーム分割手段に入射する光ビームの光軸に対して鋭角で反射するように構成してもよい。
或いは、光ビーム分割手段は、同一方向に反射する複数の光ビームが偏向器に向けて集合するように構成してもよい。
複数の反射光の一部または全部を鋭角で反射させることで光ビームを集合させることができて、狭い領域に設けたMEMSミラー等の小型の偏向器で偏向させることができて光ビーム照射装置を小型化できる。また、反射光全部を鋭角で反射させれば、偏向器を光ビーム分割手段により近づけて配置することができて光ビーム照射装置を小型化できる。
【0007】
複数の光ビーム分割手段はそれぞれ反射率が異なっていてもよく、偏向器を介して射出される光ビーム強度を調整することができる。
特に、複数の光ビーム分割手段は、透過光の進行方向に向けて反射率が漸次増大するように設定することが好ましい。
光源から射出する光ビームを光ビーム分割手段によって反射光と透過光に分割して、透過光を更に反射光と透過光に分割するものであるから、透過する光ビームの進行方向に向けて光ビーム分割手段の反射率が漸次増大するように設定することで、偏向器を介して射出する複数の光ビーム強度を均等に近いものに設定できる。
また、光ビーム分割手段は透過する光ビームの進行方向にN個(N=1,2,…)配列され、n個目(n=1,2,…,N)の光ビーム分割手段における反射率をRn、透過率をTnとすると、次式(1)〜(3)を満たすことが好ましい。
0.5/N≦R1<1.5/N (1)
Tn=1−Rn (2)
0.7×Rn-1/Tn-1<Rn<1.3×Rn-1/Tn-1 (3)
上記(1)〜(3)式の範囲内に制御すれば、光源から射出した光ビームや透過光を分割し、反射光についてのそれぞれの射出光強度をバランスさせることができる。
【0008】
光ビーム分割手段は複数の三角プリズムを貼り合わせてなり、その貼り合わせ面に分割面を設けることが好ましく、分割面で光ビームを反射光と透過光に分割する。そのため、光ビームに対する分割面の角度によって反射光の偏向方向を設定できる。プリズムを貼り合わせて一体化することで構成が簡素化し、調整が容易になる。
また、複数の三角プリズムは交互にずれて向かい合わせに配設された頂角の大きさがそれぞれ異なるようにしてもよい。
各三角プリズムの頂角を形成する斜面に分割面を設けることで、反射光を一方向に向かわせたり、二方向に交互に向かわせたりして、反射光の方向を設定できる。その際、頂角の大きさを異ならせることで、入射光または透過光の光軸に対する分割面の角度が異なり、同一方向の反射光を集合させることができる。これによって複数の偏向器を狭い範囲に設定できて小型化できる。
その際、光ビーム分割手段の縦断面視で貼り合わせ面の長さが異なるようにしてもよい。
また、光ビーム分割手段は平行四辺形プリズムを貼り合わせてなり、その貼り合わせ面に分割面を設けてもよい。
また、光ビーム分割手段は板状のハーフミラーであってもよく、プリズムを用いた場合よりも低廉になる。
【0009】
また、偏光器は、偏向される光ビームを所望の偏向角にそれぞれ制御する制御手段を接続していてもよい。
偏向器の姿勢を制御手段によって2軸制御してもよく、例えば互いに直交するX軸及びY軸回りに回転可能に設定することで、偏向器に入射する光ビームを所望の偏向角に制御することができる。
また、光源と光ビーム分割手段との間に光ビームの光束径を調整する光ビーム整形手段が配設されていることが好ましい。
偏向器を介して光ビームを射出する際に照射距離が長くなると回折の影響を受けて光ビーム径が大きくなるため、光ビーム整形手段で予め拡径して整形をしておくことで回折の影響を抑制できる。
また、光ビーム整形手段はビームエキスパンダであってもよい。
また、光ビーム整形手段を透過した光ビームは収斂光または発散光であってもよく、そのため、光ビーム整形手段の直後にレンズ等のパワーを有する光学素子を配設することで収斂光または発散光に形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による光ビーム照射装置によれば、光ビームを複数に分割すると共に個別に制御できるから、照射による視認性を高くして多様な情報を表示できる。しかも、光ビームを複数に分割して照射することで装置を大型化することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態による光ビーム照射装置を備えた車両運転支援装置について添付図面により説明する。
図1乃至図5は第一の実施の形態による光ビーム照射装置を示すものであり、図1は光ビーム照射装置を搭載した車両の斜視図、図2は光ビーム照射装置の光学系を示す正面図、図3は図2の平面図、図4はビームエキスパンダを示す図、図5はビームスプリッタの透過率、反射率、光強度の関係を示す図である。
図1において、車両1内のフロントガラスの上部両側にそれぞれ光ビーム照射装置2、2が装着されている。図示は省略するが、車両1内のリアガラスの上部両側にも光ビーム照射装置2、2が設けられている。
次に光ビーム照射装置2の光学系について図2乃至図4により説明する。
この光ビーム照射装置2は、例えばYAGレーザの第2高調波からなる光源4と、光源4から射出される光ビームLを反射光L1と透過光L2に分割する第一ビームスプリッタ5(光ビーム分割手段)を備えている。更に、透過光L2の進行方向には第一ビームスプリッタ5に続いて第二、第三、第四、第五ビームスプリッタ6,7,8,9(光ビーム分割手段)が順次配列されている。
各ビームスプリッタ5〜9は2つの三角形柱状プリズム10、10の斜面(底面)10a、10aを接合した略四角形柱状を有している。一方の斜面10aには入射する光ビームLを反射光L1と透過光L2に分割する半透過膜10b(分割面)が形成されている。半透過膜10bは誘電体多層膜または金属膜等からなるハーフミラーコーティングが施されて構成されている。
【0012】
第五ビームスプリッタ9を透過する光ビームL2の進行方向には板状の反射ミラー11が配設されていて、この透過光ビームL2を各ビームスプリッタ5〜9による反射光L1と同一の方向に反射させる。
各ビームスプリッタ5〜9及び反射ミラー11で反射した光ビームL1の進行方向には、任意の方向にチルト駆動させることのできるガルバノミラー13,14,15,16,17,18(偏光器)がそれぞれ対向して設けられている。各ガルバノミラー13〜18はそれぞれ制御回路19(制御手段)に電気的に接続されており、制御回路19の信号を受けて例えば互いに直交するX軸方向とY軸方向の2軸回りに任意の角度で回転可能とされている。
そして、例えば車両1の進行方向を図2でA方向とすると、各ガルバノミラー13〜18で反射された光ビームL1は照射ビームとしてA方向に射出させられる。図2に示す例では、各ガルバノミラー13〜18で反射して偏向させられた光ビームL1は略平行に走行するが、制御回路19によって互いに拡散する方向または集合する方向に走行させることもできる。
本実施の形態では、各ビームスプリッタ5〜9の半透過膜10b及び反射ミラー11と各ガルバノミラー13〜18とは互いに略平行に配列されている。しかも、各ビームスプリッタ5〜9及び反射ミラー11での反射光は入射光である光ビームL、L2に対して略直角に反射して各ガルバノミラー13〜18に向かうように対向して配設されている。
【0013】
また、光源4と第一ビームスプリッタ5との間には、光源4から射出した光ビームLのビーム径を整形するためのビームエキスパンダ20(ビーム整形手段)が配設されている。光ビーム照射装置2から射出された複数の照射ビームL1は、光源4からのレーザ光を遠方、例えば30m先の道路路面にそのまま照射すると、回折の影響でビーム径が太くなるので、これを避けるためにビームエキスパンダ20によって予めビーム径を拡径しておく。
ビームエキスパンダ20の一例として図4に示すものがある。図4(a)に示すものは、ガリレオ式望遠鏡に採用されているビームエキスパンダ20であり、平凹レンズ21と平凸レンズ22を透過する光ビームLはビームをD2からD1に拡径され平行光束になる。同様の透過式ビームエキスパンダ20として図4(b)に示すケプラー式望遠鏡で採用されているものがある。また、反射型のビームエキスパンダとして図4(c)に示すように凸面鏡で拡径反射させた光ビームを凹面鏡で反射させて平行光束にしたものや、図4(d)に示すように二つの凹面鏡を対向配置させてビーム径を拡径させ、平行光束としたもの等がある。
【0014】
ここで、光ビーム照射装置2において、反射ミラー11を透過率0のビームスプリッタと仮定して、配列された全てのビームスプリッタ5〜9、11が光ビームLまたは透過光L2の進行方向にN個(N=1,2,…)配列されるものとする。そして、n個目(n=1,2,…,N)のビームスプリッタの半透過膜10bにおける反射率をRn、透過率をTnとすると、各ビームスプリッタの反射率Rnと透過率Tnは次式(1)〜(3)を満たすことが好ましい。
0.5/N≦R1<1.5/N (1)
Tn=1−Rn (2)
0.7×Rn-1/Tn-1<Rn<1.3×Rn-1/Tn-1 (3)
反射率Rnについて上記(1)式及び(3)式の範囲内であれば、複数の反射光L2の強度をそれぞれバランスさせることができる。また(3)式の範囲内であれば、回折の影響でビーム径が広がって光スポットの輝度が変化するのをコントロールできる。なお、(3)式には反射ミラー11については含まれない。
【0015】
本実施の形態による光ビーム照射装置2は上述の構成を備えており、次にその作用を説明する。
図2及び図3において、レーザによる光源4を発した光ビームLは、ビームエキスパンダ20によって光ビームLの径を所望の大きさに整形される。ビームエキスパンダ20を通過した光ビームLは平行光束として第一ビームスプリッタ5に入射する。
第一ビームスプリッタ5では、斜面10aに設けた半透過膜10bにより予め設定された比率で光ビームLを反射光L1と透過光L2に分岐させる。反射された光ビームL1は第一ガルバノミラー13に入射する。第一ガルバノミラー13は制御回路19で水平方向(X軸方向)と垂直方向(Y軸方向)に所望の角度に設定されているため、光ビームL1は所望の偏向角で反射させられて光ビーム照射装置2の外部に射出される。光ビームL1は車両1の進行方向であるA方向に射出され、路面の所望の位置に光スポットとして照射される。
一方、第一ビームスプリッタ5を透過した光ビームL2は第二乃至第五ビームスプリッタ6、7,8,9で同様の作用を繰り返し、それぞれ設定された比率で反射光L1と透過光L2に順次分岐される。そして、反射された各光ビームL1はそれぞれガルバノミラー14,15,16,17で所望の反射角で反射されて光ビーム照射装置2の外部のA方向に射出され、路面の所望の位置に光スポットとして照射される。更に第五ビームスプリッタ9を透過した透過光は反射ミラー11に例えば45°の入射角で入射して略直角に全反射し、第六ガルバノミラー18で上述のガルバノミラー13〜17と同様に反射して路面に照射され、光スポットを形成する。
なお、図2において、各ガルバノミラー13〜18で反射した光ビームL1は図に示す進行方向では各ビームスプリッタ5〜9と干渉するおそれがあるが、紙面に直交する方向に光ビームL1をずらすことで干渉を防止できる。
【0016】
このようにして路面に照射された光スポット群は、例えば車両1が直進する場合には、図1に示すように進行方向の前方に車両1の車幅と同様な間隔で直線状の2列の光スポットパターンLa、Laを形成する。1つの光ビーム照射装置2で形成される光スポットパターンLaは各ビームスプリッタ5〜9及び反射ミラー11で反射された光ビームL1によって所定間隔で光スポットが路面に形成される。車両が前進する場合には、車両1のフロントガラス両側に配設した2つの光ビーム照射装置2,2から前方の路面に照射し、後退する場合には、リアガラス両側に配設した2つの光ビーム照射装置2,2から後方の路面に照射する。
また、車両1が旋回する場合には、図1に示すように進行方向の周囲や前方に車両1の旋回最大幅の間隔で曲線状の2列の光スポットパターンLb、Lbを形成する。ここで、車両1が前進する場合には、フロントガラス両側に配設した2つの光ビーム照射装置2,2から前方の路面に照射し、後退する場合には、リアガラス両側に配設した2つの光ビーム照射装置2,2から後方の路面に照射する。
【0017】
ここで、本実施の形態による光ビーム照射装置2における各ビームスプリッタ5〜9及び反射ミラー11について、反射率Rnと透過率Tnと各ビームスプリッタ5〜9及び反射ミラー11での射出光(光ビームL1)強度の一例を、実施例1として設定すると下記表1の通りになる。この場合、反射ミラー11を含めた複数のビームスプリッタの合計をNとすると、N=6である。また、反射ミラー11は、反射率100%で透過率0%のビームスプリッタとする。
表1をグラフで表すと図5のようになる。
なお、射出光強度は各ビームスプリッタに入射する光ビームLまたは透過する光ビームL2の強度を1とした場合の各反射光L1の強度を示す。
下記の表1の設定は、次式(4)、(5)として計算したものである。
R1=1/N、 (4)
Rn=Rn−1/Tn−1 (5)
ただし、nは1、2、…N。
この実施例1によれば、全ての反射する光ビームL1の強度は0.167で略等しいものになる。光の吸収等がない理想状態であれば、表1の通りであるが、実際には光の吸収等があるために若干の補正が必要な場合がある。
【0018】
【表1】
【0019】
上述のように本実施の形態による光ビーム照射装置2は、1個の光源4から6本に分岐した光ビームL1を作り出すことができる。しかもそれぞれ光ビームL1を独立して制御して任意の位置に光ビームL1の強度が同等な光スポットを所望の形状で形成することができる。そのため、照射による視認性を高くして多様な情報を表示できると共に、装置が小型であるから車両1に搭載するのに好適である。また、光ビーム照射装置2で路面に形成される光スポットパターンLa、Lbは連続する線状ではなく、断続的な光スポットで点線状のパターンを形成するため、視認性が高い。
【0020】
なお、上述の実施の形態において、各光ビームL1によって形成される光スポットの形状、大きさをコントロールする必要がある場合には、ビームエキスパンダ20によって射出する光ビームLのビーム広がり角を適切に制御すればよい。
また、レンズのパワーを有する光学素子をビームエキスパンダ20の直後に配設してもよい。或いは、レンズのパワーを有する光学素子を、ビームエキスパンダ20とガルバノミラー13〜18との間にそれぞれの光ビームに作用するように配設することで光ビームL1を収斂光または発散光に制御するようにしてもよい。これらによっても同様な作用を得ることができる。
【0021】
次に本発明の他の実施の形態を説明するが、上述の実施の形態と同一または同様な部材、部分には同一の符号を用いてその説明を省略する。
図6は本発明の第二の実施の形態による光ビーム照射装置22の光学系を示す正面図である。図において、光源4から発せられた光ビームLの反射光の光路において、ビームエキスパンダ20と各ガルバノミラー13〜17との間に、ビームスプリッタ5〜9に代えて板状の第一乃至第四ハーフミラー23、24,25、26が光ビーム分割手段として配列されている。本実施の形態では、ハーフミラー23、24,25、26は四枚配列され、第四ハーフミラー26を透過する光ビームL2の前方に光ビームL2を反射させるための反射ミラー11が設けられている。そのため、ガルバノミラー13〜17も5枚配列されている。
なお、各ガルバノミラー13〜17は第一の実施の形態と同様に制御回路19に接続されていて偏向角を調整可能であるが、以下の実施の形態では制御回路19の説明を省略する。
また、図中、光ビームLに沿って配列されているハーフミラー23〜26及び反射ミラー11に対し、ガルバノミラー13〜17はそれぞれ対向するハーフミラー23〜26及び反射ミラー11との距離が次第に増大するように傾斜する方向に順次配列されている。
【0022】
そして、各ハーフミラー23〜26及び反射ミラー11で反射する光ビームL1はそれぞれ略直角に反射して各ガルバノミラー13〜17に向かい、更に各ガルバノミラー13〜17で反射する光ビームL1は入射側に対して略直角に反射するように設定されている。
本実施の形態による光ビーム照射装置22の光学系によれば、各光学素子は同一平面内に配設され、各光ビームL1、L2もハーフミラー等の各光学素子と干渉のおそれがないため同一平面内を走行するように構成されている。
【0023】
本実施の形態による光ビーム照射装置22は、上述の第一の実施の形態による効果に加えて、キュービックタイプのビームスプリッタ5〜9に代えてハーフミラー23〜26を採用したので、製造コストが低廉になり、重量が軽くなる利点がある。しかも、光学系が同一平面内に収まるために装置の厚みがより薄くなり、より小型化でき、車両1内へ搭載しても邪魔にならない。
【0024】
次に本発明の第三の実施の形態を図7に示す光ビーム照射装置の光学系の正面図により説明する。
図7に示す光ビーム照射装置28において、光源4から発せられた光ビームLの光路において、ビームエキスパンダ20と各ガルバノミラー13〜18との間に、光ビーム分割手段として第一乃至第五ビームスプリッタ29〜33が配列されている。これらは第一ビームスプリッタ29、第二ビームスプリッタ30,第三ビームスプリッタ31、第四ビームスプリッタ32、第五ビームスプリッタ33からなる。各ビームスプリッタ29〜33の光源4から発する光ビームL、透過光L2が入射する側の斜面には半透過膜34a(分割面)として誘電体多層膜または金属膜のハーフミラーコーティングが施されている。
しかも、第一乃至第五ビームスプリッタ29〜33は半透過膜34aが設けられた斜面とこれに対向する斜面とが順次面接合されて略直線状に一体とされてなる光分割素子35を構成している。そして最も後ろ側の第五ビームスプリッタ33の半透過膜34aを有する斜面に対向する斜面は透過率0%の反射面34bとされている。
【0025】
そのため、ビームエキスパンダ20を通過した光ビームLは光分割素子35に入射し、第一ビームスプリッタ29の入射側の斜面に設けた半透過膜34aで反射光L1と透過光L2に分岐される。反射する光ビームL1は第一ガルバノミラー13に向かい、透過する光ビームL2は第一及び第二ビームスプリッタ29,30間の半透過膜34aで反射光L1と透過光L2に分岐される。同様にして透過する光ビームL2は第三〜第五ビームスプリッタ31、32,33の入射側の斜面に設けた半透過膜34aで反射光L1と透過光L2に順次分岐される。そして、第五ビームスプリッタ33の入射側斜面の半透過膜34aを透過する光ビームL2は射出側の斜面に設けた反射面34bで全反射して反射光L1になる。
そして、各ビームスプリッタ29〜33で反射する光ビームL1はそれぞれガルバノミラー13〜18で反射させられて装置28の外部に射出され、路面に光スポットとして照射される。
図7に示す例において、各ビームスプリッタ29〜33の入射側の半透過膜34aと反射面34bは光ビームL、透過光L2に対して45°の傾斜角度に設定されており、各反射光L1は入射側の光ビームL,透過光L2に対して略直角に反射する。
【0026】
本実施の形態による光ビーム照射装置28は、上述の第一の実施の形態による効果に加えて、個別に配列したビームスプリッタ5〜9に代えて一体型の光分割素子35を採用したので、固定するための手段が少なくて済むと共に調整が容易になる。
【0027】
上述の各実施の形態では、1つの光源4から射出する光ビームLを光ビーム分割手段で複数の光ビームに分岐してそれぞれ(例えば同一平面内の)一方向に反射させてガルバノミラーを介して1本の光スポットパターンLaまたはLbを形成するようにしたが、車両1の車幅を表示するには少なくとも2本の光スポットパターンLaまたはLbが必要であるために、各2つの光ビーム照射装置2、22、28を前側や後ろ側に配設する必要がある。
これに対し、以下に説明する実施の形態は1つの光源から発する光ビームLから2本の光スポットパターンLa,LaまたはLb、Lbを形成するようにしたものである。
【0028】
次に第四の実施の形態による光ビーム照射装置について、図8乃至図10により説明する。図8は車両の光ビーム照射装置からの光ビームで形成した光スポットパターンを示す図、図9は光ビーム照射装置の光学系の正面図、図10は光ビームの特性を示すグラフである。
図8に示す車両1にはフロントガラス内側の中央に光ビーム照射装置38が設けられている。図示は省略するが、後部のリアガラス内側の中央にも光ビーム照射装置38が設けられている。
光ビーム照射装置38の光学系は図9に示されている。即ち、光ビーム照射装置38は、光源4と、光源4から射出される光ビームLについて外径を拡径する等の整形を行うビームエキスパンダ20とを設けている。そして、ビームエキスパンダ20に対して光ビームLの進行方向前方には、光ビームLを順次反射光L1と透過光L2に分岐するための一体型の光分割素子39が配設されている。
【0029】
光分割素子39は、正面視で二つの斜面と底面からなる複数の略直角二等辺三角形状の柱状プリズムを各頂角が互い違いに向かい合う方向に並ぶように斜面で互いに面接合させて略直線状に配列したものである。図に示す例では9個のプリズムを接合しており、これらを光源4側から順に第一ビームスプリッタ42、第二ビームスプリッタ43、第三ビームスプリッタ44、第四ビームスプリッタ45、第五ビームスプリッタ46、第六ビームスプリッタ47、第七ビームスプリッタ48、第八ビームスプリッタ49、第九ビームスプリッタ50(光ビーム分割手段)とする。
そして隣り合う三角形柱状の各ビームスプリッタ42〜50の面接合する斜面の一方、ここでは光源4側の斜面に誘電体多層膜または金属膜によってハーフミラーコーティングが施され、半透過膜40(分割面)をそれぞれ構成している。また第九ビームスプリッタ50において、半透過膜40に対向する斜面は全反射させる反射面41(分割面)を構成する。
【0030】
そのため、第一ビームスプリッタ42に入射する光ビームLはその半透過膜40で反射光L1と透過光L2に分割され、反射光L1は一方側(図では左側)に例えば入射光Lに対して略直角に反射される。透過光L2は第二ビームスプリッタ43の半透過膜40で反射光L1と透過光L2に分割され、反射光L1は一方側とは反対方向の他方側(図では右側)に例えば透過光L2に対して略直角に反射される。
このようにして第一乃至第九ビームスプリッタ42〜50では、光ビームL、透過光L2を半透過膜40で反射光L1と透過光L2に分割する際、反射光L1は交互に一方側と他方側に分かれる。更に第九ビームスプリッタ50の反射面41でも対向する半透過膜40で反射する光ビームL1とは反対側に光ビームL1が反射する。
そのため、図に示す例では、奇数番目の半透過膜40での反射光L1は一方側に反射し、偶数番目の半透過膜40及び反射面41での反射光L1は他方側に反射する。
【0031】
光分割素子39の両側には、それぞれ反射する光ビームL1の数に応じたガルバノミラーが配設されている。図9において、光分割素子39の一方側(左側)には、第一、第三、第五、第七、第九ビームスプリッタ42,44,46,48、50の各半透過膜40に対向して第一、第三、第五、第七、第九ガルバノミラー52,54,56,58、60が配設されている。そして、第一、第三、第五、第七、第九ビームスプリッタ42,44,46,48、50の各半透過膜40で反射した各光ビームL1を例えば直角にそれぞれ反射させてA方向の外部へ射出することになる。
同様に、光分割素子39の他方側(右側)には、第二、第四、第六、第八ビームスプリッタ43,45,47,49の各半透過膜40及び反射面41に対向して第二、第四、第六、第八、第十ガルバノミラー53,55,57,59、61が配設されている。そして、第二、第四、第六、第八ビームスプリッタ43,45,47,49の各半透過膜40、反射面41で反射した各光ビームL1を例えば直角にそれぞれ反射させてA方向の外部へ射出することになる。
しかも一方側の各ガルバノミラー52,54,56,58、60は設置板64に取り付けられている。他方側の各ガルバノミラー53,55,57,59、61は設置板65に取り付けられている。
【0032】
本実施の形態による光ビーム照射装置38は上述の構成を有しているから、図9において、レーザによる光源4を射出した光ビームLはビームエキスパンダ20によって光ビームLの径を所望の大きさに加工される。そして整形された光ビームLは光分割素子39の第一ビームスプリッタ42の半透過膜40に入射する。
第一ビームスプリッタ42では、半透過膜40により予め設定された比率で反射光L1と透過光L2に分岐する。反射光L1は一方側の第一ガルバノミラー52に入射する。第一ビームスプリッタ42を透過した光ビームL2は第二ガルバノミラー43の半透過膜40により予め設定された比率で反射光L1と透過光L2に分岐され、反射光L1は他方側の第二ガルバノミラー53に入射する。
このようにして透過光L2は順次第三乃至第九ビームスプリッタ44〜50で同様の作用を繰り返し、それぞれの反射光L1は交互に一方側と他方側に反射させられる。そして第九ビームスプリッタ50を透過する光ビームL2は反射面41で全反射させられて他方側の第十ガルバノミラー61に向かう。
【0033】
そして、一方側のガルバノミラー52,54,56,58、60では、各反射光L1を例えば略直角に反射してA方向に射出し、路面に光スポットパターンを形成する。同時に他方側のガルバノミラー53,55,57,59、61では、各反射光L1を例えば略直角に反射してA方向に射出し、路面に光スポットパターンを形成する。そのため、両側のガルバノミラー群で反射した各光ビームL1群、L1群は略平行になって照射され、車両1の両側でそれぞれ一対の光スポットパターンLa、LaまたはLb、Lbを形成することができる。
【0034】
ここで、本実施の形態による光ビーム照射装置38における各ビームスプリッタ42〜50の半透過膜40及び反射面41について、反射率Rnと透過率Tnと各半透過膜40及び反射面41での射出光(反射光L1)強度の一例を、実施例2として設定すると下記表2の通りになる。この場合、各ビームスプリッタ42〜50の半透過膜40及び反射面41の合計をNとすると、N=10である。表2をグラフで表すと図10のようになる。
なお、射出光強度は各ビームスプリッタに入射する光ビームLまたは透過光L2の強度を1とした場合の反射光L1の強度を示す。
下記の表2の設定は、上述の式(4)、(5)により計算したものである。ただし、nは1、2、…Nとする。
この実施例2によれば、光の吸収等がない理想状態であれば、全ての反射する光ビームL1の強度は0.1で略等しいものになる。実際には光の吸収等があるために若干の補正が必要な場合がある。
【0035】
【表2】
【0036】
上述のように本実施の形態による光ビーム照射装置38は、1本の光ビームLに基づいて複数本の反射光L1に分割すると共に、これら反射光L1を二方向に分岐して照射することができる。よって、車両1の前方または後方に形成する二つの光スポットパターンLa、LaまたはLb、Lbを1つの光ビーム照射装置38で得られるため、上述の装置2、22、28等よりも一層構成を簡単にできてコストを低廉にできる。
また、光源4、ビームエキスパンダ20、光分割素子39を1つのユニットとし、両側の各5枚のガルバノミラーを設置板64,65でそれぞれユニット化することで、装置全体の構成を3つのユニットに分けて個別に制御することができて、装置全体を簡略化でき、メンテナンスも容易になる。
また、光分割素子39での両側への各複数本の反射光L1,L1はそれぞれ平行に設定したから、両側に設置する各ガルバノミラーのユニット間の間隔を任意に設定してもよく、例えば路面上での二つの光スポットパターンLa、LaまたはLb、Lbを離間させたい場合には、両側のガルバノミラー52,54,56,58,60と53,55,57,59、61の偏向角を変えることなく、ユニットごと平行移動して互いの間隔を広げることで実現することができる。
なお、光分割素子39では反射光L1を交互に二方向に反射させることとしたが、これに限定されることなく、任意の順番で反射光Lを選択的にいずれかの方向に反射させることができる。
【0037】
次に本発明の第五の実施の形態を図11により説明する。
図11に示す光ビーム照射装置68は、光分割素子69の構成と、その両側の各ガルバノミラーの配置において第四の実施の形態と相違する。光分割素子69は、最も光源4側のプリズムが台形柱状とされ、これを第一ビームスプリッタ70とする。そして第一ビームスプリッタ70に続く他のプリズムは、第四の実施の形態と同様に略二等辺三角形柱状のプリズムを各頂角が互い違いに向かい合う方向に並ぶように斜面で互いに面接合させて略直線状に配列している。
図に示す例では第一ビームスプリッタ70の台形の斜面に続けて7個の略二等辺三角形柱状のプリズムを順次面接合しており、これらを光源4側から順に第二ビームスプリッタ71、第三ビームスプリッタ72、第四ビームスプリッタ73、第五ビームスプリッタ74、第六ビームスプリッタ75、第七ビームスプリッタ76、第八ビームスプリッタ77とする。これらは光ビーム分割手段を構成する。しかも、第一ビームスプリッタ70の入射面70aは光ビームLに直交する面とされている。
また、光分割素子69は入射する光ビームL及び透過光L2が同一直線状であるとして、その両側面69a、69bが光ビームL及び透過光L2と平行な略台形柱状に形成されている。
【0038】
そして隣り合う各ビームスプリッタ70〜77の面接合する斜面の一方、ここでは光源4側の斜面に誘電体多層膜または金属膜によってハーフミラーコーティングが施され、これをそれぞれ半透過膜78(分割面)とする。また第八ビームスプリッタ77において、透過光L2の入射する半透過膜78に対向する斜面は反射面79を構成する。
そのため、第一ビームスプリッタ70の入射面70aから入射する光ビームLまたは透過光L2は第二乃至第八ビームスプリッタ71〜77の半透過膜78により予め設定された比率で反射光L1と透過光L2とにそれぞれ分割される。しかも、奇数番目の半透過膜78で反射する反射光L1は一方側(左側)に、偶数番目の半透過膜78で反射する反射光L1は他方側(右側)にそれぞれ反射することになる。
また、略二等辺三角形柱状をなす第二乃至第八ビームスプリッタ71〜77の各頂角θは、各斜面に設けた半透過膜78での反射光L1が光ビームLまたは透過光L2に対して同一の鋭角θaをなすように形成されている。そのため、頂角θは45°未満であることが好ましい。
【0039】
光分割素子69の一方側には、奇数番目の半透過膜78で反射する4本の反射光L1を反射させるための第一ガルバノミラー80、第三ガルバノミラー82、第五ガルバノミラー84、第七ガルバノミラー86がそれぞれ設けられている。光分割素子69の他方側には、偶数番目の半透過膜78で反射する4本の反射光L1を反射させるための第二ガルバノミラー81、第四ガルバノミラー83、第六ガルバノミラー85、第八ガルバノミラー87がそれぞれ設けられている。各ガルバノミラー80〜87は2軸回転可能で任意の角度にチルト駆動できる。そして両側の各四枚のガルバノミラー80,82,84,86は設置板64,65に取り付けられている。
一方の設置板64に設けた各ガルバノミラー80、82、84、86と他方の設置板65に設けた各ガルバノミラー81、83、85、87は、光分割素子6を挟んで略V字をなすように傾斜して配列されている。また、各ガルバノミラー80〜87は入射する反射光L1を反射させて光分割素子69に対して外側に拡散する方向に光ビームL1を射出するようにそれぞれ配設されている。
【0040】
本実施の形態による光ビーム照射装置68は上述の構成有しているから、図11において、光源4を射出した光ビームLはビームエキスパンダ20で整形された後、光分割素子69の第一ビームスプリッタ70の入射面70aから入射して第二ビームスプリッタ71の半透過膜78により予め設定された比率で反射光L1と透過光L2に分割される。反射光L1は光ビームLに対して鋭角θaで反射され一方側の第一ガルバノミラー80に向けて進行する。
一方、透過光L2は第三ビームスプリッタ72で、半透過膜78により予め設定された比率で反射光L1と透過光L2に分岐される。反射光L1は鋭角θaで反射して他方側の第二ガルバノミラー81に入射する。そして透過光L2は同様な作用で順次第四乃至第八ビームスプリッタ73〜77の各半透過膜78でそれぞれ反射光L1と透過光L2に分岐される。そして第八ビームスプリッタ77内に進入する透過光L2は反射面79で反射して他方側の第八ガルバノミラー87に入射する。
そのため、奇数番目の半透過膜78で反射する4本の反射光L1は互いに略平行であり、一方側へ鋭角で反射して、第一、第三、第五、第七ビームスプリッタ80,82、84、86で更に反射して外側へ略平行に射出する。そして路面に一方の光スポットパターンLa(またはLb)を形成する。また、偶数番目の半透過膜78で反射する4つの反射光L1も互いに略平行であり、他方側へ鋭角で反射して、第二、第四、第六、第八ビームスプリッタ81,83、85、87で更に反射して外側へ略平行に射出する。そして路面に他方の光スポットパターンLa(またはLb)を形成する。
【0041】
上述のように本実施の形態によれば、第四の実施の形態による効果に加えて、光分割素子69での両側への各4本の反射光L1が光ビームLや透過光L2の入射光軸に対して鋭角θaで反射する構成であるため、両側の各4枚のガルバノミラーを光分割素子69により近づけて且つ光分割素子69より光源4側に配設することができ、装置を一層小型化できる。
【0042】
次に本発明の第六の実施の形態を図12により説明する。
第六の実施の形態による光ビーム照射装置90は、概略で第五の実施の形態による光ビーム照射装置68と近似する構成を有しており、光分割素子91と、両側のガルバノミラーにおいて相違する。
図12に示す光ビーム照射装置90において、光分割素子91は、頂角の大きさが異なる複数の三角形柱状のプリズムを面接合して構成されている。
図において、光分割素子91の第一ビームスプリッタ92は略直角三角形状をなしており、ビームエキスパンダ20を通過する光ビームLに直交する入射面92aを有している。第一ビームスプリッタ92の底面に続けて、5個の略三角形柱状の三角プリズムをその頂角α1、α2、α3,α4、α5を互いに違いに対向させて斜面を順次面接合している。これらの略三角形柱状の三角プリズムを光源4側から順に第二ビームスプリッタ93、第三ビームスプリッタ94、第四ビームスプリッタ95、第五ビームスプリッタ96、第六ビームスプリッタ97とする。これらは光ビーム分割手段を構成する。
また、第二乃至第六ビームスプリッタ93〜97は図12に示すように柱状の端面である各三角形の頂角α1、α2,α3、α4、α5を挟む二つの斜辺の長さが両側に隣接する他の三角形の斜辺の長さとそれぞれ一致するものとする。各頂角α1〜α5は互いに相違するため、各三角形の上記二つの斜辺は長さが相違する。しかも、光分割素子91は入射する光ビームL及び透過光L2の光軸が同一直線状であるとして、その両側面91a、91bが光ビームL及び透過光L2と平行であり、全体として略台形の柱状に形成されている。
【0043】
そして隣り合う各ビームスプリッタ92〜97の面接合する底面または斜面の一方、ここでは第二乃至第六ビームスプリッタ93〜97の光源4側の斜面に誘電体多層膜または金属膜によってハーフミラーコーティングが施され、これをそれぞれ半透過膜98(分割面)とする。また第六ビームスプリッタ97において、透過光L2の入射する半透過膜98に対向する斜面は反射面99を構成する。
そのため、第一ビームスプリッタ92の入射面92aから入射する光ビームLまたは透過光L2は第二乃至第六ビームスプリッタ93〜97の半透過膜98により予め設定された比率で反射光L1と透過光L2とにそれぞれ分割される。しかも、奇数番目の半透過膜98で反射する反射光L1は一方側(左側)に、偶数番目の半透過膜98及び反射面99で反射する反射光L1は他方側(右側)にそれぞれ反射することになる。
また、第二乃至第六ビームスプリッタ93〜97の各頂角α1、α2,α3、α4、α5は、光源4に近いものが最大で、光源4から離れるに従って順次小さくなるように設定されている。そのため、入射する光ビームL及び透過光L2に対する各半透過膜98での反射光L1の角度β1、β2、β3、β4、β5、β6は、光源4から遠ざかるに従って順次小さくなるように形成されている。そのため、両側の複数本の反射光L1、L1はそれぞれ集合する方向に反射する。
【0044】
光分割素子91の一方側には、奇数番目の半透過膜98で反射する3本の反射光L1を反射させるための第一ガルバノミラー101、第三ガルバノミラー103、第五ガルバノミラー105がそれぞれ設けられている。光分割素子98の他方側には、偶数番目の半透過膜98と反射面99で反射する3本の反射光L1を反射させるための第二ガルバノミラー102、第四ガルバノミラー104、第六ガルバノミラー106がそれぞれ設けられている。各ガルバノミラー101〜106は任意の方向に回動可能であり、MEMSミラー等の非常に小型の可動ミラーで構成されている。
一方側の3枚のガルバノミラー101,103,105は小型の設置板108に取り付けられ、互いに微少な間隔で並べられている。他方側の3枚のガルバノミラー102,104,106も同様に小型の設置板109に取り付けられ、互いに微少な間隔で並べられている。これによって各ガルバノミラー101,103,105と102,104,106で反射した各3本の反射光L1、L1は互いに平行な方向に射出できる。
本実施の形態では、光分割素子91によって両方向へ反射する各複数本の反射光L1、L1の反射角β1〜β6をそれぞれ変えることで、一方側のガルバノミラー101,103,105と他方側のガルバノミラー102,104,106の近傍で集合できるために、小型のガルバノミラー101〜106を採用できる。特に光源4に近い側の反射光L1の反射角β1、β2を比較的大きく設定して光源4から遠ざかるに従って反射光L1の反射角β3〜β6を順次小さく設定したために、光源4に近い側で各3本の反射光L1を集合できる。そのため、光源4に近い位置に各ガルバノミラー101,103,105と102,104,106の設置板108,109を略対称に設けることができる。
【0045】
本実施の形態による光ビーム照射装置90は上述の構成を有しているから、光源4からビームエキスパンダ20を介して光分割素子91に入射する光ビームLは第二ビームスプリッタ93の半透過膜98によって予め定められた比率で反射光L1と透過光L2に分割される。更に透過光L2は、各ビームスプリッタ93〜97間の各半透過膜98によって同様の作用で順次反射光L1と透過光L2に分割され、各反射光L1は交互に一方側と他方側に反射される。そして、反射面99では透過光L2は全反射される。
しかも、両側の反射光L1はそれぞれ集光する方向に偏向されることで、小型のガルバノミラー101,103,105とガルバノミラー102,104,106でそれぞれ偏向させられて互いに平行な反射光L1,L1として外部へ射出され、路面に光スポットパターンを形成する。
【0046】
本実施の形態によれば、上述の効果に加えて、光分割素子91の各ビームスプリッタ93〜97の頂角α1〜α5を適宜選択することで、射出する反射光L1の射出角を自由に設定することができる。特に、光源4に近い側の反射光L1の反射角β1、β2を比較的大きく設定して光源4から遠ざかるに従って反射光L1の反射角β3〜β6を順次小さく設定したために、光源4に近い側に各ガルバノミラー101〜106を配置できて、装置90の小型化や多機能化に有利である。
【0047】
なお、上述の各実施の形態において、各ビームスプリッタの数やガルバノミラーの数は自由に設定できる。
なお、第五の実施の形態による光ビーム照射装置68において、光分割素子69での反射光を入射する光ビームLまた透過光L2の光軸に対して鋭角の反射角で反射させる構成は、第一乃至第三の実施形態における一方向に複数のガルバノミラー13乃至18を配設した光ビーム照射装置に採用してもよい。
同様に、第六の実施形態による光ビーム照射装置90の光分割素子98での反射光を集光させてMEMSミラー等の小型のガルバノミラー101〜106で偏向させる構成は、第一乃至第三の実施形態における一方向に複数のガルバノミラー13乃至18を配設した光ビーム照射装置に採用してもよい。
また、第二の実施の形態による光ビーム照射装置22における反射ミラー23〜26は第四乃至第六の実施の形態においても光分割素子39,69,91に代えて採用しても良い。この場合、各反射ミラー23〜26は光ビームLまたは透過光L2の光軸に対する傾斜角度を適宜調整すればよい。
なお、光ビーム分割手段として偏向ビームスプリッタを採用してもよい。これによって、入射する光ビームや透過光についてP波とS波に分割して一方を反射光とし、他方を透過光とすることができる。
【0048】
なお、上述の各実施の形態では、光ビーム照射装置を車両運転支援装置に搭載するに際し、光ビームを複数の光ビーム分割手段で一方向に反射させる場合には、フロントガラス及びリアガラス内の両側に配設し、両側に反射させる場合にはフロントガラス及びリアガラス内の中央に配設することとしたが、本発明はこのような構成に限定されず、任意の位置に取り付けできる。例えば、前部及び後部のバンパ近傍や車両の屋根等の車両外部に採用してもよい。このような位置に光ビーム照射装置を設置すれば、光ビームがフロントガラスやリアガラスを通過する際に受ける悪影響を防止できる。
また、本発明による光ビーム照射装置2、22,28,38,68、90は車両運転支援装置に限定されることなく、ディスプレイ用、舞台照明用等、任意の用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第一の実施の形態による光ビーム照射装置を車両運転支援装置に用いた斜視図である。
【図2】第一の実施の形態による光ビーム照射装置を示す光学系の正面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】(a)、(b)、(c)、(d)はビームエキスパンダの例を示す図である。
【図5】ビームスプリッタでの反射率と透過率と射出光強度を示すグラフである。
【図6】第二の実施の形態による光ビーム照射装置を示す光学系の正面図である。
【図7】第三の実施の形態による光ビーム照射装置を示す光学系の正面図である。
【図8】第四の実施の形態による光ビーム照射装置を車両運転支援装置に用いた斜視図である。。
【図9】第四の実施の形態による光ビーム照射装置を示す光学系の正面図である。
【図10】ビームスプリッタでの反射率と透過率と射出光強度を示すグラフである。
【図11】第五の実施の形態による光ビーム照射装置を示す光学系の正面図である。
【図12】第六の実施の形態による光ビーム照射装置を示す光学系の正面図である。
【符号の説明】
【0050】
2、22、28、38、68、90 光ビーム照射装置
4 光源
5、6,7,8,9、29,30,31,32,33,42,43,44,45,46,47,48,49,50,70,71,72,73,74,75,76,77、92,93,94,95,96,97 ビームスプリッタ(光ビーム分割手段)
10b、34a、40、78、98 半透過膜(分割面)
11 反射ミラー(光ビーム分割手段)
13,14、15,16,17,18、52,53,54,55,56,57,58,59,60,61、80,81,82,83,84,85,86,87、101,102,103,104,105 ガルバノミラー(偏向器)
20 ビームエキスパンダ(ビーム整形手段)
23、24,25,26 ハーフミラー(光ビーム分割手段)
34b、41,79,99 反射面(光ビーム分割手段)
35、39,69、91 光分割素子
L1、反射光(光ビーム)
L2 透過光(光ビーム)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを分割して複数の光ビームとして照射する光ビーム照射装置に関するものであり、例えば自車両の存在を他人や他車に知らしめたり、自車両の進路を自車両の運転者に把握させるために道路等の路面上に光ビームを照射する車両運転支援装置に用いる光ビームの照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の路面上に光ビームを照射して自車両の進路や存在を自車両や他車両の運転者、歩行者等に示す車両運転支援装置として、例えば下記特許文献1に記載したものが開示されている。この車両運転支援装置はビーム照射機を備えており、ビーム照射機は半導体レーザからなるビーム発生器、ビーム整形レンズ、偏向整形器及びスキャンアクチュエータを設けている。そして、ビーム用電子制御ユニットの指令によってスキャンアクチュエータを駆動して光ビームを走査して視認可能な状態で照射する。
車両運転支援装置はビーム照射機を4つ有しており、例えば車両前部の左右側部と車両後部の左右側部にそれぞれ設けられている。ビーム照射機で照射される光ビームのパターンは光ビームと同一の光学特性を有している。そして、車両運転支援装置に搭載した調光手段によって、光ビームと同一の光学特性を有する光を他の光学特性を有する光に比較して透過し易いものにしている。
この装置によれば、車両周囲の道路路面上に所定の光学特性を有する光ビームが照射されると、路面上に光ビームのパターンが形成される。このパターンは、例えば車両が直進する場合には、車幅に沿う両側で進行方向前方側に直線状に照射され、旋回する場合には、車両の最大旋回幅に沿って略円弧状に照射されることになる。
【特許文献1】特開2003−285685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の車両運転支援装置では、スキャンアクチュエータによって1つの光ビームを走査することで路面上を照射するものであるため、路面上のパターンは単純な連続線になり、他車両や歩行者等に与える情報は限られたものになってしまう。しかも、車両走行時に光ビームを走査して路面上にパターンを形成するためには、光ビームをある速度で移動させることになるため、路面に形成されるパターンはその走査速度が速くなるにしたがって視認性が低下するという不具合がある。
この場合、ビーム発生器を複数設けて個別に光ビームを照射すれば表示できる情報を多様にできると共に視認性を向上できるが、装置が大型化するために車両等に搭載するには不向きであった。
本発明は、このような実情に鑑みて、装置を大型化することなく視認性を高くして多様な情報を表示できるようにした光ビーム照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による光ビーム照射装置は、光ビームを照射する光源と、入射する光ビームを反射光と透過光に分岐すると共に透過光の進行方向に配列された複数の光ビーム分割手段と、該光ビーム分割手段で反射された光ビームをそれぞれ偏向させる偏向方向可変の偏向器とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、光源を射出した光ビームが第一の光ビーム分割手段で反射光と透過光に分割され、反射光は偏向器に向かい、透過光は第二の光ビーム分割手段で反射光と透過光に分割されて反射光は偏向器に向かうことになる。そして、複数の反射光は予め所望の偏向角に設定された偏向器で所望の方向に反射されて、外部へ照射されることになる。
なお、複数の光ビーム分割手段のうち、透過光の進行方向の最後尾に設定されたものは、光ビームの透過率を0に設定してもよい。これによって、最後尾の光ビーム分割手段は全反射する反射手段となり、光ビームを無駄なく照射光として利用できる。この光ビーム照射装置によれば、光ビームを複数に分割すると共に個別に制御できて装置を小型にできると共に照射による視認性を高くして多様な情報を表示できる。例えば、各反射光ビームを互いに分離する光スポットとして照射することで連続するものよりも視認性が高くなる。
【0005】
また、本発明の光ビーム照射装置は、偏向器が複数の光ビーム分割手段に対して一方向に配設されているのが好ましい。
複数の光ビーム分割手段で反射した複数の光ビームを、偏向器を介して外部の一方向に照射できる。これによって光スポットパターンを形成できる。
或いは、本発明の光ビーム照射装置は、偏向器が複数の光ビーム分割手段に対して複数の方向に配設されていて、光ビーム分割手段は反射光を複数の方向に配設した偏向器に選択的に反射させ、複数の方向に配設された偏向器でそれぞれ偏向された光ビームが異なる方向に射出されるようにしてもよい。
光源を射出した光ビームが第一の光ビーム分割手段で反射光と透過光に分割され、透過光は第二以降の光ビーム分割手段で順次反射光と透過光に分割されることになり、複数の光ビーム分割手段でそれぞれ反射させられた光ビームを選択的に異なる方向に進行させて偏向器で偏向させることで、複数方向に向けられた光ビームとして外部に照射することになる。
この光ビーム照射装置によれば光源から射出された光ビームを複数方向に向かう光ビームとして分岐してそれぞれを照射できるため、装置1つで複数の装置を設置したのと同等の効果を発揮できる。
この場合、複数の光ビーム分割手段で反射する光ビームは、二つの方向に交互に反射されるようにしてもよい。例えば複数の光ビーム分割手段で奇数番目の反射光と偶数番目の反射光とを異なる方向に反射させ、偏向器を介してそれぞれ光スポットパターンとして照射することができる。
【0006】
また、複数の光ビーム分割手段でそれぞれ反射する光ビームの少なくとも1つは、光ビーム分割手段に入射する光ビームの光軸に対して鋭角で反射するように構成してもよい。
或いは、光ビーム分割手段は、同一方向に反射する複数の光ビームが偏向器に向けて集合するように構成してもよい。
複数の反射光の一部または全部を鋭角で反射させることで光ビームを集合させることができて、狭い領域に設けたMEMSミラー等の小型の偏向器で偏向させることができて光ビーム照射装置を小型化できる。また、反射光全部を鋭角で反射させれば、偏向器を光ビーム分割手段により近づけて配置することができて光ビーム照射装置を小型化できる。
【0007】
複数の光ビーム分割手段はそれぞれ反射率が異なっていてもよく、偏向器を介して射出される光ビーム強度を調整することができる。
特に、複数の光ビーム分割手段は、透過光の進行方向に向けて反射率が漸次増大するように設定することが好ましい。
光源から射出する光ビームを光ビーム分割手段によって反射光と透過光に分割して、透過光を更に反射光と透過光に分割するものであるから、透過する光ビームの進行方向に向けて光ビーム分割手段の反射率が漸次増大するように設定することで、偏向器を介して射出する複数の光ビーム強度を均等に近いものに設定できる。
また、光ビーム分割手段は透過する光ビームの進行方向にN個(N=1,2,…)配列され、n個目(n=1,2,…,N)の光ビーム分割手段における反射率をRn、透過率をTnとすると、次式(1)〜(3)を満たすことが好ましい。
0.5/N≦R1<1.5/N (1)
Tn=1−Rn (2)
0.7×Rn-1/Tn-1<Rn<1.3×Rn-1/Tn-1 (3)
上記(1)〜(3)式の範囲内に制御すれば、光源から射出した光ビームや透過光を分割し、反射光についてのそれぞれの射出光強度をバランスさせることができる。
【0008】
光ビーム分割手段は複数の三角プリズムを貼り合わせてなり、その貼り合わせ面に分割面を設けることが好ましく、分割面で光ビームを反射光と透過光に分割する。そのため、光ビームに対する分割面の角度によって反射光の偏向方向を設定できる。プリズムを貼り合わせて一体化することで構成が簡素化し、調整が容易になる。
また、複数の三角プリズムは交互にずれて向かい合わせに配設された頂角の大きさがそれぞれ異なるようにしてもよい。
各三角プリズムの頂角を形成する斜面に分割面を設けることで、反射光を一方向に向かわせたり、二方向に交互に向かわせたりして、反射光の方向を設定できる。その際、頂角の大きさを異ならせることで、入射光または透過光の光軸に対する分割面の角度が異なり、同一方向の反射光を集合させることができる。これによって複数の偏向器を狭い範囲に設定できて小型化できる。
その際、光ビーム分割手段の縦断面視で貼り合わせ面の長さが異なるようにしてもよい。
また、光ビーム分割手段は平行四辺形プリズムを貼り合わせてなり、その貼り合わせ面に分割面を設けてもよい。
また、光ビーム分割手段は板状のハーフミラーであってもよく、プリズムを用いた場合よりも低廉になる。
【0009】
また、偏光器は、偏向される光ビームを所望の偏向角にそれぞれ制御する制御手段を接続していてもよい。
偏向器の姿勢を制御手段によって2軸制御してもよく、例えば互いに直交するX軸及びY軸回りに回転可能に設定することで、偏向器に入射する光ビームを所望の偏向角に制御することができる。
また、光源と光ビーム分割手段との間に光ビームの光束径を調整する光ビーム整形手段が配設されていることが好ましい。
偏向器を介して光ビームを射出する際に照射距離が長くなると回折の影響を受けて光ビーム径が大きくなるため、光ビーム整形手段で予め拡径して整形をしておくことで回折の影響を抑制できる。
また、光ビーム整形手段はビームエキスパンダであってもよい。
また、光ビーム整形手段を透過した光ビームは収斂光または発散光であってもよく、そのため、光ビーム整形手段の直後にレンズ等のパワーを有する光学素子を配設することで収斂光または発散光に形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による光ビーム照射装置によれば、光ビームを複数に分割すると共に個別に制御できるから、照射による視認性を高くして多様な情報を表示できる。しかも、光ビームを複数に分割して照射することで装置を大型化することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態による光ビーム照射装置を備えた車両運転支援装置について添付図面により説明する。
図1乃至図5は第一の実施の形態による光ビーム照射装置を示すものであり、図1は光ビーム照射装置を搭載した車両の斜視図、図2は光ビーム照射装置の光学系を示す正面図、図3は図2の平面図、図4はビームエキスパンダを示す図、図5はビームスプリッタの透過率、反射率、光強度の関係を示す図である。
図1において、車両1内のフロントガラスの上部両側にそれぞれ光ビーム照射装置2、2が装着されている。図示は省略するが、車両1内のリアガラスの上部両側にも光ビーム照射装置2、2が設けられている。
次に光ビーム照射装置2の光学系について図2乃至図4により説明する。
この光ビーム照射装置2は、例えばYAGレーザの第2高調波からなる光源4と、光源4から射出される光ビームLを反射光L1と透過光L2に分割する第一ビームスプリッタ5(光ビーム分割手段)を備えている。更に、透過光L2の進行方向には第一ビームスプリッタ5に続いて第二、第三、第四、第五ビームスプリッタ6,7,8,9(光ビーム分割手段)が順次配列されている。
各ビームスプリッタ5〜9は2つの三角形柱状プリズム10、10の斜面(底面)10a、10aを接合した略四角形柱状を有している。一方の斜面10aには入射する光ビームLを反射光L1と透過光L2に分割する半透過膜10b(分割面)が形成されている。半透過膜10bは誘電体多層膜または金属膜等からなるハーフミラーコーティングが施されて構成されている。
【0012】
第五ビームスプリッタ9を透過する光ビームL2の進行方向には板状の反射ミラー11が配設されていて、この透過光ビームL2を各ビームスプリッタ5〜9による反射光L1と同一の方向に反射させる。
各ビームスプリッタ5〜9及び反射ミラー11で反射した光ビームL1の進行方向には、任意の方向にチルト駆動させることのできるガルバノミラー13,14,15,16,17,18(偏光器)がそれぞれ対向して設けられている。各ガルバノミラー13〜18はそれぞれ制御回路19(制御手段)に電気的に接続されており、制御回路19の信号を受けて例えば互いに直交するX軸方向とY軸方向の2軸回りに任意の角度で回転可能とされている。
そして、例えば車両1の進行方向を図2でA方向とすると、各ガルバノミラー13〜18で反射された光ビームL1は照射ビームとしてA方向に射出させられる。図2に示す例では、各ガルバノミラー13〜18で反射して偏向させられた光ビームL1は略平行に走行するが、制御回路19によって互いに拡散する方向または集合する方向に走行させることもできる。
本実施の形態では、各ビームスプリッタ5〜9の半透過膜10b及び反射ミラー11と各ガルバノミラー13〜18とは互いに略平行に配列されている。しかも、各ビームスプリッタ5〜9及び反射ミラー11での反射光は入射光である光ビームL、L2に対して略直角に反射して各ガルバノミラー13〜18に向かうように対向して配設されている。
【0013】
また、光源4と第一ビームスプリッタ5との間には、光源4から射出した光ビームLのビーム径を整形するためのビームエキスパンダ20(ビーム整形手段)が配設されている。光ビーム照射装置2から射出された複数の照射ビームL1は、光源4からのレーザ光を遠方、例えば30m先の道路路面にそのまま照射すると、回折の影響でビーム径が太くなるので、これを避けるためにビームエキスパンダ20によって予めビーム径を拡径しておく。
ビームエキスパンダ20の一例として図4に示すものがある。図4(a)に示すものは、ガリレオ式望遠鏡に採用されているビームエキスパンダ20であり、平凹レンズ21と平凸レンズ22を透過する光ビームLはビームをD2からD1に拡径され平行光束になる。同様の透過式ビームエキスパンダ20として図4(b)に示すケプラー式望遠鏡で採用されているものがある。また、反射型のビームエキスパンダとして図4(c)に示すように凸面鏡で拡径反射させた光ビームを凹面鏡で反射させて平行光束にしたものや、図4(d)に示すように二つの凹面鏡を対向配置させてビーム径を拡径させ、平行光束としたもの等がある。
【0014】
ここで、光ビーム照射装置2において、反射ミラー11を透過率0のビームスプリッタと仮定して、配列された全てのビームスプリッタ5〜9、11が光ビームLまたは透過光L2の進行方向にN個(N=1,2,…)配列されるものとする。そして、n個目(n=1,2,…,N)のビームスプリッタの半透過膜10bにおける反射率をRn、透過率をTnとすると、各ビームスプリッタの反射率Rnと透過率Tnは次式(1)〜(3)を満たすことが好ましい。
0.5/N≦R1<1.5/N (1)
Tn=1−Rn (2)
0.7×Rn-1/Tn-1<Rn<1.3×Rn-1/Tn-1 (3)
反射率Rnについて上記(1)式及び(3)式の範囲内であれば、複数の反射光L2の強度をそれぞれバランスさせることができる。また(3)式の範囲内であれば、回折の影響でビーム径が広がって光スポットの輝度が変化するのをコントロールできる。なお、(3)式には反射ミラー11については含まれない。
【0015】
本実施の形態による光ビーム照射装置2は上述の構成を備えており、次にその作用を説明する。
図2及び図3において、レーザによる光源4を発した光ビームLは、ビームエキスパンダ20によって光ビームLの径を所望の大きさに整形される。ビームエキスパンダ20を通過した光ビームLは平行光束として第一ビームスプリッタ5に入射する。
第一ビームスプリッタ5では、斜面10aに設けた半透過膜10bにより予め設定された比率で光ビームLを反射光L1と透過光L2に分岐させる。反射された光ビームL1は第一ガルバノミラー13に入射する。第一ガルバノミラー13は制御回路19で水平方向(X軸方向)と垂直方向(Y軸方向)に所望の角度に設定されているため、光ビームL1は所望の偏向角で反射させられて光ビーム照射装置2の外部に射出される。光ビームL1は車両1の進行方向であるA方向に射出され、路面の所望の位置に光スポットとして照射される。
一方、第一ビームスプリッタ5を透過した光ビームL2は第二乃至第五ビームスプリッタ6、7,8,9で同様の作用を繰り返し、それぞれ設定された比率で反射光L1と透過光L2に順次分岐される。そして、反射された各光ビームL1はそれぞれガルバノミラー14,15,16,17で所望の反射角で反射されて光ビーム照射装置2の外部のA方向に射出され、路面の所望の位置に光スポットとして照射される。更に第五ビームスプリッタ9を透過した透過光は反射ミラー11に例えば45°の入射角で入射して略直角に全反射し、第六ガルバノミラー18で上述のガルバノミラー13〜17と同様に反射して路面に照射され、光スポットを形成する。
なお、図2において、各ガルバノミラー13〜18で反射した光ビームL1は図に示す進行方向では各ビームスプリッタ5〜9と干渉するおそれがあるが、紙面に直交する方向に光ビームL1をずらすことで干渉を防止できる。
【0016】
このようにして路面に照射された光スポット群は、例えば車両1が直進する場合には、図1に示すように進行方向の前方に車両1の車幅と同様な間隔で直線状の2列の光スポットパターンLa、Laを形成する。1つの光ビーム照射装置2で形成される光スポットパターンLaは各ビームスプリッタ5〜9及び反射ミラー11で反射された光ビームL1によって所定間隔で光スポットが路面に形成される。車両が前進する場合には、車両1のフロントガラス両側に配設した2つの光ビーム照射装置2,2から前方の路面に照射し、後退する場合には、リアガラス両側に配設した2つの光ビーム照射装置2,2から後方の路面に照射する。
また、車両1が旋回する場合には、図1に示すように進行方向の周囲や前方に車両1の旋回最大幅の間隔で曲線状の2列の光スポットパターンLb、Lbを形成する。ここで、車両1が前進する場合には、フロントガラス両側に配設した2つの光ビーム照射装置2,2から前方の路面に照射し、後退する場合には、リアガラス両側に配設した2つの光ビーム照射装置2,2から後方の路面に照射する。
【0017】
ここで、本実施の形態による光ビーム照射装置2における各ビームスプリッタ5〜9及び反射ミラー11について、反射率Rnと透過率Tnと各ビームスプリッタ5〜9及び反射ミラー11での射出光(光ビームL1)強度の一例を、実施例1として設定すると下記表1の通りになる。この場合、反射ミラー11を含めた複数のビームスプリッタの合計をNとすると、N=6である。また、反射ミラー11は、反射率100%で透過率0%のビームスプリッタとする。
表1をグラフで表すと図5のようになる。
なお、射出光強度は各ビームスプリッタに入射する光ビームLまたは透過する光ビームL2の強度を1とした場合の各反射光L1の強度を示す。
下記の表1の設定は、次式(4)、(5)として計算したものである。
R1=1/N、 (4)
Rn=Rn−1/Tn−1 (5)
ただし、nは1、2、…N。
この実施例1によれば、全ての反射する光ビームL1の強度は0.167で略等しいものになる。光の吸収等がない理想状態であれば、表1の通りであるが、実際には光の吸収等があるために若干の補正が必要な場合がある。
【0018】
【表1】
【0019】
上述のように本実施の形態による光ビーム照射装置2は、1個の光源4から6本に分岐した光ビームL1を作り出すことができる。しかもそれぞれ光ビームL1を独立して制御して任意の位置に光ビームL1の強度が同等な光スポットを所望の形状で形成することができる。そのため、照射による視認性を高くして多様な情報を表示できると共に、装置が小型であるから車両1に搭載するのに好適である。また、光ビーム照射装置2で路面に形成される光スポットパターンLa、Lbは連続する線状ではなく、断続的な光スポットで点線状のパターンを形成するため、視認性が高い。
【0020】
なお、上述の実施の形態において、各光ビームL1によって形成される光スポットの形状、大きさをコントロールする必要がある場合には、ビームエキスパンダ20によって射出する光ビームLのビーム広がり角を適切に制御すればよい。
また、レンズのパワーを有する光学素子をビームエキスパンダ20の直後に配設してもよい。或いは、レンズのパワーを有する光学素子を、ビームエキスパンダ20とガルバノミラー13〜18との間にそれぞれの光ビームに作用するように配設することで光ビームL1を収斂光または発散光に制御するようにしてもよい。これらによっても同様な作用を得ることができる。
【0021】
次に本発明の他の実施の形態を説明するが、上述の実施の形態と同一または同様な部材、部分には同一の符号を用いてその説明を省略する。
図6は本発明の第二の実施の形態による光ビーム照射装置22の光学系を示す正面図である。図において、光源4から発せられた光ビームLの反射光の光路において、ビームエキスパンダ20と各ガルバノミラー13〜17との間に、ビームスプリッタ5〜9に代えて板状の第一乃至第四ハーフミラー23、24,25、26が光ビーム分割手段として配列されている。本実施の形態では、ハーフミラー23、24,25、26は四枚配列され、第四ハーフミラー26を透過する光ビームL2の前方に光ビームL2を反射させるための反射ミラー11が設けられている。そのため、ガルバノミラー13〜17も5枚配列されている。
なお、各ガルバノミラー13〜17は第一の実施の形態と同様に制御回路19に接続されていて偏向角を調整可能であるが、以下の実施の形態では制御回路19の説明を省略する。
また、図中、光ビームLに沿って配列されているハーフミラー23〜26及び反射ミラー11に対し、ガルバノミラー13〜17はそれぞれ対向するハーフミラー23〜26及び反射ミラー11との距離が次第に増大するように傾斜する方向に順次配列されている。
【0022】
そして、各ハーフミラー23〜26及び反射ミラー11で反射する光ビームL1はそれぞれ略直角に反射して各ガルバノミラー13〜17に向かい、更に各ガルバノミラー13〜17で反射する光ビームL1は入射側に対して略直角に反射するように設定されている。
本実施の形態による光ビーム照射装置22の光学系によれば、各光学素子は同一平面内に配設され、各光ビームL1、L2もハーフミラー等の各光学素子と干渉のおそれがないため同一平面内を走行するように構成されている。
【0023】
本実施の形態による光ビーム照射装置22は、上述の第一の実施の形態による効果に加えて、キュービックタイプのビームスプリッタ5〜9に代えてハーフミラー23〜26を採用したので、製造コストが低廉になり、重量が軽くなる利点がある。しかも、光学系が同一平面内に収まるために装置の厚みがより薄くなり、より小型化でき、車両1内へ搭載しても邪魔にならない。
【0024】
次に本発明の第三の実施の形態を図7に示す光ビーム照射装置の光学系の正面図により説明する。
図7に示す光ビーム照射装置28において、光源4から発せられた光ビームLの光路において、ビームエキスパンダ20と各ガルバノミラー13〜18との間に、光ビーム分割手段として第一乃至第五ビームスプリッタ29〜33が配列されている。これらは第一ビームスプリッタ29、第二ビームスプリッタ30,第三ビームスプリッタ31、第四ビームスプリッタ32、第五ビームスプリッタ33からなる。各ビームスプリッタ29〜33の光源4から発する光ビームL、透過光L2が入射する側の斜面には半透過膜34a(分割面)として誘電体多層膜または金属膜のハーフミラーコーティングが施されている。
しかも、第一乃至第五ビームスプリッタ29〜33は半透過膜34aが設けられた斜面とこれに対向する斜面とが順次面接合されて略直線状に一体とされてなる光分割素子35を構成している。そして最も後ろ側の第五ビームスプリッタ33の半透過膜34aを有する斜面に対向する斜面は透過率0%の反射面34bとされている。
【0025】
そのため、ビームエキスパンダ20を通過した光ビームLは光分割素子35に入射し、第一ビームスプリッタ29の入射側の斜面に設けた半透過膜34aで反射光L1と透過光L2に分岐される。反射する光ビームL1は第一ガルバノミラー13に向かい、透過する光ビームL2は第一及び第二ビームスプリッタ29,30間の半透過膜34aで反射光L1と透過光L2に分岐される。同様にして透過する光ビームL2は第三〜第五ビームスプリッタ31、32,33の入射側の斜面に設けた半透過膜34aで反射光L1と透過光L2に順次分岐される。そして、第五ビームスプリッタ33の入射側斜面の半透過膜34aを透過する光ビームL2は射出側の斜面に設けた反射面34bで全反射して反射光L1になる。
そして、各ビームスプリッタ29〜33で反射する光ビームL1はそれぞれガルバノミラー13〜18で反射させられて装置28の外部に射出され、路面に光スポットとして照射される。
図7に示す例において、各ビームスプリッタ29〜33の入射側の半透過膜34aと反射面34bは光ビームL、透過光L2に対して45°の傾斜角度に設定されており、各反射光L1は入射側の光ビームL,透過光L2に対して略直角に反射する。
【0026】
本実施の形態による光ビーム照射装置28は、上述の第一の実施の形態による効果に加えて、個別に配列したビームスプリッタ5〜9に代えて一体型の光分割素子35を採用したので、固定するための手段が少なくて済むと共に調整が容易になる。
【0027】
上述の各実施の形態では、1つの光源4から射出する光ビームLを光ビーム分割手段で複数の光ビームに分岐してそれぞれ(例えば同一平面内の)一方向に反射させてガルバノミラーを介して1本の光スポットパターンLaまたはLbを形成するようにしたが、車両1の車幅を表示するには少なくとも2本の光スポットパターンLaまたはLbが必要であるために、各2つの光ビーム照射装置2、22、28を前側や後ろ側に配設する必要がある。
これに対し、以下に説明する実施の形態は1つの光源から発する光ビームLから2本の光スポットパターンLa,LaまたはLb、Lbを形成するようにしたものである。
【0028】
次に第四の実施の形態による光ビーム照射装置について、図8乃至図10により説明する。図8は車両の光ビーム照射装置からの光ビームで形成した光スポットパターンを示す図、図9は光ビーム照射装置の光学系の正面図、図10は光ビームの特性を示すグラフである。
図8に示す車両1にはフロントガラス内側の中央に光ビーム照射装置38が設けられている。図示は省略するが、後部のリアガラス内側の中央にも光ビーム照射装置38が設けられている。
光ビーム照射装置38の光学系は図9に示されている。即ち、光ビーム照射装置38は、光源4と、光源4から射出される光ビームLについて外径を拡径する等の整形を行うビームエキスパンダ20とを設けている。そして、ビームエキスパンダ20に対して光ビームLの進行方向前方には、光ビームLを順次反射光L1と透過光L2に分岐するための一体型の光分割素子39が配設されている。
【0029】
光分割素子39は、正面視で二つの斜面と底面からなる複数の略直角二等辺三角形状の柱状プリズムを各頂角が互い違いに向かい合う方向に並ぶように斜面で互いに面接合させて略直線状に配列したものである。図に示す例では9個のプリズムを接合しており、これらを光源4側から順に第一ビームスプリッタ42、第二ビームスプリッタ43、第三ビームスプリッタ44、第四ビームスプリッタ45、第五ビームスプリッタ46、第六ビームスプリッタ47、第七ビームスプリッタ48、第八ビームスプリッタ49、第九ビームスプリッタ50(光ビーム分割手段)とする。
そして隣り合う三角形柱状の各ビームスプリッタ42〜50の面接合する斜面の一方、ここでは光源4側の斜面に誘電体多層膜または金属膜によってハーフミラーコーティングが施され、半透過膜40(分割面)をそれぞれ構成している。また第九ビームスプリッタ50において、半透過膜40に対向する斜面は全反射させる反射面41(分割面)を構成する。
【0030】
そのため、第一ビームスプリッタ42に入射する光ビームLはその半透過膜40で反射光L1と透過光L2に分割され、反射光L1は一方側(図では左側)に例えば入射光Lに対して略直角に反射される。透過光L2は第二ビームスプリッタ43の半透過膜40で反射光L1と透過光L2に分割され、反射光L1は一方側とは反対方向の他方側(図では右側)に例えば透過光L2に対して略直角に反射される。
このようにして第一乃至第九ビームスプリッタ42〜50では、光ビームL、透過光L2を半透過膜40で反射光L1と透過光L2に分割する際、反射光L1は交互に一方側と他方側に分かれる。更に第九ビームスプリッタ50の反射面41でも対向する半透過膜40で反射する光ビームL1とは反対側に光ビームL1が反射する。
そのため、図に示す例では、奇数番目の半透過膜40での反射光L1は一方側に反射し、偶数番目の半透過膜40及び反射面41での反射光L1は他方側に反射する。
【0031】
光分割素子39の両側には、それぞれ反射する光ビームL1の数に応じたガルバノミラーが配設されている。図9において、光分割素子39の一方側(左側)には、第一、第三、第五、第七、第九ビームスプリッタ42,44,46,48、50の各半透過膜40に対向して第一、第三、第五、第七、第九ガルバノミラー52,54,56,58、60が配設されている。そして、第一、第三、第五、第七、第九ビームスプリッタ42,44,46,48、50の各半透過膜40で反射した各光ビームL1を例えば直角にそれぞれ反射させてA方向の外部へ射出することになる。
同様に、光分割素子39の他方側(右側)には、第二、第四、第六、第八ビームスプリッタ43,45,47,49の各半透過膜40及び反射面41に対向して第二、第四、第六、第八、第十ガルバノミラー53,55,57,59、61が配設されている。そして、第二、第四、第六、第八ビームスプリッタ43,45,47,49の各半透過膜40、反射面41で反射した各光ビームL1を例えば直角にそれぞれ反射させてA方向の外部へ射出することになる。
しかも一方側の各ガルバノミラー52,54,56,58、60は設置板64に取り付けられている。他方側の各ガルバノミラー53,55,57,59、61は設置板65に取り付けられている。
【0032】
本実施の形態による光ビーム照射装置38は上述の構成を有しているから、図9において、レーザによる光源4を射出した光ビームLはビームエキスパンダ20によって光ビームLの径を所望の大きさに加工される。そして整形された光ビームLは光分割素子39の第一ビームスプリッタ42の半透過膜40に入射する。
第一ビームスプリッタ42では、半透過膜40により予め設定された比率で反射光L1と透過光L2に分岐する。反射光L1は一方側の第一ガルバノミラー52に入射する。第一ビームスプリッタ42を透過した光ビームL2は第二ガルバノミラー43の半透過膜40により予め設定された比率で反射光L1と透過光L2に分岐され、反射光L1は他方側の第二ガルバノミラー53に入射する。
このようにして透過光L2は順次第三乃至第九ビームスプリッタ44〜50で同様の作用を繰り返し、それぞれの反射光L1は交互に一方側と他方側に反射させられる。そして第九ビームスプリッタ50を透過する光ビームL2は反射面41で全反射させられて他方側の第十ガルバノミラー61に向かう。
【0033】
そして、一方側のガルバノミラー52,54,56,58、60では、各反射光L1を例えば略直角に反射してA方向に射出し、路面に光スポットパターンを形成する。同時に他方側のガルバノミラー53,55,57,59、61では、各反射光L1を例えば略直角に反射してA方向に射出し、路面に光スポットパターンを形成する。そのため、両側のガルバノミラー群で反射した各光ビームL1群、L1群は略平行になって照射され、車両1の両側でそれぞれ一対の光スポットパターンLa、LaまたはLb、Lbを形成することができる。
【0034】
ここで、本実施の形態による光ビーム照射装置38における各ビームスプリッタ42〜50の半透過膜40及び反射面41について、反射率Rnと透過率Tnと各半透過膜40及び反射面41での射出光(反射光L1)強度の一例を、実施例2として設定すると下記表2の通りになる。この場合、各ビームスプリッタ42〜50の半透過膜40及び反射面41の合計をNとすると、N=10である。表2をグラフで表すと図10のようになる。
なお、射出光強度は各ビームスプリッタに入射する光ビームLまたは透過光L2の強度を1とした場合の反射光L1の強度を示す。
下記の表2の設定は、上述の式(4)、(5)により計算したものである。ただし、nは1、2、…Nとする。
この実施例2によれば、光の吸収等がない理想状態であれば、全ての反射する光ビームL1の強度は0.1で略等しいものになる。実際には光の吸収等があるために若干の補正が必要な場合がある。
【0035】
【表2】
【0036】
上述のように本実施の形態による光ビーム照射装置38は、1本の光ビームLに基づいて複数本の反射光L1に分割すると共に、これら反射光L1を二方向に分岐して照射することができる。よって、車両1の前方または後方に形成する二つの光スポットパターンLa、LaまたはLb、Lbを1つの光ビーム照射装置38で得られるため、上述の装置2、22、28等よりも一層構成を簡単にできてコストを低廉にできる。
また、光源4、ビームエキスパンダ20、光分割素子39を1つのユニットとし、両側の各5枚のガルバノミラーを設置板64,65でそれぞれユニット化することで、装置全体の構成を3つのユニットに分けて個別に制御することができて、装置全体を簡略化でき、メンテナンスも容易になる。
また、光分割素子39での両側への各複数本の反射光L1,L1はそれぞれ平行に設定したから、両側に設置する各ガルバノミラーのユニット間の間隔を任意に設定してもよく、例えば路面上での二つの光スポットパターンLa、LaまたはLb、Lbを離間させたい場合には、両側のガルバノミラー52,54,56,58,60と53,55,57,59、61の偏向角を変えることなく、ユニットごと平行移動して互いの間隔を広げることで実現することができる。
なお、光分割素子39では反射光L1を交互に二方向に反射させることとしたが、これに限定されることなく、任意の順番で反射光Lを選択的にいずれかの方向に反射させることができる。
【0037】
次に本発明の第五の実施の形態を図11により説明する。
図11に示す光ビーム照射装置68は、光分割素子69の構成と、その両側の各ガルバノミラーの配置において第四の実施の形態と相違する。光分割素子69は、最も光源4側のプリズムが台形柱状とされ、これを第一ビームスプリッタ70とする。そして第一ビームスプリッタ70に続く他のプリズムは、第四の実施の形態と同様に略二等辺三角形柱状のプリズムを各頂角が互い違いに向かい合う方向に並ぶように斜面で互いに面接合させて略直線状に配列している。
図に示す例では第一ビームスプリッタ70の台形の斜面に続けて7個の略二等辺三角形柱状のプリズムを順次面接合しており、これらを光源4側から順に第二ビームスプリッタ71、第三ビームスプリッタ72、第四ビームスプリッタ73、第五ビームスプリッタ74、第六ビームスプリッタ75、第七ビームスプリッタ76、第八ビームスプリッタ77とする。これらは光ビーム分割手段を構成する。しかも、第一ビームスプリッタ70の入射面70aは光ビームLに直交する面とされている。
また、光分割素子69は入射する光ビームL及び透過光L2が同一直線状であるとして、その両側面69a、69bが光ビームL及び透過光L2と平行な略台形柱状に形成されている。
【0038】
そして隣り合う各ビームスプリッタ70〜77の面接合する斜面の一方、ここでは光源4側の斜面に誘電体多層膜または金属膜によってハーフミラーコーティングが施され、これをそれぞれ半透過膜78(分割面)とする。また第八ビームスプリッタ77において、透過光L2の入射する半透過膜78に対向する斜面は反射面79を構成する。
そのため、第一ビームスプリッタ70の入射面70aから入射する光ビームLまたは透過光L2は第二乃至第八ビームスプリッタ71〜77の半透過膜78により予め設定された比率で反射光L1と透過光L2とにそれぞれ分割される。しかも、奇数番目の半透過膜78で反射する反射光L1は一方側(左側)に、偶数番目の半透過膜78で反射する反射光L1は他方側(右側)にそれぞれ反射することになる。
また、略二等辺三角形柱状をなす第二乃至第八ビームスプリッタ71〜77の各頂角θは、各斜面に設けた半透過膜78での反射光L1が光ビームLまたは透過光L2に対して同一の鋭角θaをなすように形成されている。そのため、頂角θは45°未満であることが好ましい。
【0039】
光分割素子69の一方側には、奇数番目の半透過膜78で反射する4本の反射光L1を反射させるための第一ガルバノミラー80、第三ガルバノミラー82、第五ガルバノミラー84、第七ガルバノミラー86がそれぞれ設けられている。光分割素子69の他方側には、偶数番目の半透過膜78で反射する4本の反射光L1を反射させるための第二ガルバノミラー81、第四ガルバノミラー83、第六ガルバノミラー85、第八ガルバノミラー87がそれぞれ設けられている。各ガルバノミラー80〜87は2軸回転可能で任意の角度にチルト駆動できる。そして両側の各四枚のガルバノミラー80,82,84,86は設置板64,65に取り付けられている。
一方の設置板64に設けた各ガルバノミラー80、82、84、86と他方の設置板65に設けた各ガルバノミラー81、83、85、87は、光分割素子6を挟んで略V字をなすように傾斜して配列されている。また、各ガルバノミラー80〜87は入射する反射光L1を反射させて光分割素子69に対して外側に拡散する方向に光ビームL1を射出するようにそれぞれ配設されている。
【0040】
本実施の形態による光ビーム照射装置68は上述の構成有しているから、図11において、光源4を射出した光ビームLはビームエキスパンダ20で整形された後、光分割素子69の第一ビームスプリッタ70の入射面70aから入射して第二ビームスプリッタ71の半透過膜78により予め設定された比率で反射光L1と透過光L2に分割される。反射光L1は光ビームLに対して鋭角θaで反射され一方側の第一ガルバノミラー80に向けて進行する。
一方、透過光L2は第三ビームスプリッタ72で、半透過膜78により予め設定された比率で反射光L1と透過光L2に分岐される。反射光L1は鋭角θaで反射して他方側の第二ガルバノミラー81に入射する。そして透過光L2は同様な作用で順次第四乃至第八ビームスプリッタ73〜77の各半透過膜78でそれぞれ反射光L1と透過光L2に分岐される。そして第八ビームスプリッタ77内に進入する透過光L2は反射面79で反射して他方側の第八ガルバノミラー87に入射する。
そのため、奇数番目の半透過膜78で反射する4本の反射光L1は互いに略平行であり、一方側へ鋭角で反射して、第一、第三、第五、第七ビームスプリッタ80,82、84、86で更に反射して外側へ略平行に射出する。そして路面に一方の光スポットパターンLa(またはLb)を形成する。また、偶数番目の半透過膜78で反射する4つの反射光L1も互いに略平行であり、他方側へ鋭角で反射して、第二、第四、第六、第八ビームスプリッタ81,83、85、87で更に反射して外側へ略平行に射出する。そして路面に他方の光スポットパターンLa(またはLb)を形成する。
【0041】
上述のように本実施の形態によれば、第四の実施の形態による効果に加えて、光分割素子69での両側への各4本の反射光L1が光ビームLや透過光L2の入射光軸に対して鋭角θaで反射する構成であるため、両側の各4枚のガルバノミラーを光分割素子69により近づけて且つ光分割素子69より光源4側に配設することができ、装置を一層小型化できる。
【0042】
次に本発明の第六の実施の形態を図12により説明する。
第六の実施の形態による光ビーム照射装置90は、概略で第五の実施の形態による光ビーム照射装置68と近似する構成を有しており、光分割素子91と、両側のガルバノミラーにおいて相違する。
図12に示す光ビーム照射装置90において、光分割素子91は、頂角の大きさが異なる複数の三角形柱状のプリズムを面接合して構成されている。
図において、光分割素子91の第一ビームスプリッタ92は略直角三角形状をなしており、ビームエキスパンダ20を通過する光ビームLに直交する入射面92aを有している。第一ビームスプリッタ92の底面に続けて、5個の略三角形柱状の三角プリズムをその頂角α1、α2、α3,α4、α5を互いに違いに対向させて斜面を順次面接合している。これらの略三角形柱状の三角プリズムを光源4側から順に第二ビームスプリッタ93、第三ビームスプリッタ94、第四ビームスプリッタ95、第五ビームスプリッタ96、第六ビームスプリッタ97とする。これらは光ビーム分割手段を構成する。
また、第二乃至第六ビームスプリッタ93〜97は図12に示すように柱状の端面である各三角形の頂角α1、α2,α3、α4、α5を挟む二つの斜辺の長さが両側に隣接する他の三角形の斜辺の長さとそれぞれ一致するものとする。各頂角α1〜α5は互いに相違するため、各三角形の上記二つの斜辺は長さが相違する。しかも、光分割素子91は入射する光ビームL及び透過光L2の光軸が同一直線状であるとして、その両側面91a、91bが光ビームL及び透過光L2と平行であり、全体として略台形の柱状に形成されている。
【0043】
そして隣り合う各ビームスプリッタ92〜97の面接合する底面または斜面の一方、ここでは第二乃至第六ビームスプリッタ93〜97の光源4側の斜面に誘電体多層膜または金属膜によってハーフミラーコーティングが施され、これをそれぞれ半透過膜98(分割面)とする。また第六ビームスプリッタ97において、透過光L2の入射する半透過膜98に対向する斜面は反射面99を構成する。
そのため、第一ビームスプリッタ92の入射面92aから入射する光ビームLまたは透過光L2は第二乃至第六ビームスプリッタ93〜97の半透過膜98により予め設定された比率で反射光L1と透過光L2とにそれぞれ分割される。しかも、奇数番目の半透過膜98で反射する反射光L1は一方側(左側)に、偶数番目の半透過膜98及び反射面99で反射する反射光L1は他方側(右側)にそれぞれ反射することになる。
また、第二乃至第六ビームスプリッタ93〜97の各頂角α1、α2,α3、α4、α5は、光源4に近いものが最大で、光源4から離れるに従って順次小さくなるように設定されている。そのため、入射する光ビームL及び透過光L2に対する各半透過膜98での反射光L1の角度β1、β2、β3、β4、β5、β6は、光源4から遠ざかるに従って順次小さくなるように形成されている。そのため、両側の複数本の反射光L1、L1はそれぞれ集合する方向に反射する。
【0044】
光分割素子91の一方側には、奇数番目の半透過膜98で反射する3本の反射光L1を反射させるための第一ガルバノミラー101、第三ガルバノミラー103、第五ガルバノミラー105がそれぞれ設けられている。光分割素子98の他方側には、偶数番目の半透過膜98と反射面99で反射する3本の反射光L1を反射させるための第二ガルバノミラー102、第四ガルバノミラー104、第六ガルバノミラー106がそれぞれ設けられている。各ガルバノミラー101〜106は任意の方向に回動可能であり、MEMSミラー等の非常に小型の可動ミラーで構成されている。
一方側の3枚のガルバノミラー101,103,105は小型の設置板108に取り付けられ、互いに微少な間隔で並べられている。他方側の3枚のガルバノミラー102,104,106も同様に小型の設置板109に取り付けられ、互いに微少な間隔で並べられている。これによって各ガルバノミラー101,103,105と102,104,106で反射した各3本の反射光L1、L1は互いに平行な方向に射出できる。
本実施の形態では、光分割素子91によって両方向へ反射する各複数本の反射光L1、L1の反射角β1〜β6をそれぞれ変えることで、一方側のガルバノミラー101,103,105と他方側のガルバノミラー102,104,106の近傍で集合できるために、小型のガルバノミラー101〜106を採用できる。特に光源4に近い側の反射光L1の反射角β1、β2を比較的大きく設定して光源4から遠ざかるに従って反射光L1の反射角β3〜β6を順次小さく設定したために、光源4に近い側で各3本の反射光L1を集合できる。そのため、光源4に近い位置に各ガルバノミラー101,103,105と102,104,106の設置板108,109を略対称に設けることができる。
【0045】
本実施の形態による光ビーム照射装置90は上述の構成を有しているから、光源4からビームエキスパンダ20を介して光分割素子91に入射する光ビームLは第二ビームスプリッタ93の半透過膜98によって予め定められた比率で反射光L1と透過光L2に分割される。更に透過光L2は、各ビームスプリッタ93〜97間の各半透過膜98によって同様の作用で順次反射光L1と透過光L2に分割され、各反射光L1は交互に一方側と他方側に反射される。そして、反射面99では透過光L2は全反射される。
しかも、両側の反射光L1はそれぞれ集光する方向に偏向されることで、小型のガルバノミラー101,103,105とガルバノミラー102,104,106でそれぞれ偏向させられて互いに平行な反射光L1,L1として外部へ射出され、路面に光スポットパターンを形成する。
【0046】
本実施の形態によれば、上述の効果に加えて、光分割素子91の各ビームスプリッタ93〜97の頂角α1〜α5を適宜選択することで、射出する反射光L1の射出角を自由に設定することができる。特に、光源4に近い側の反射光L1の反射角β1、β2を比較的大きく設定して光源4から遠ざかるに従って反射光L1の反射角β3〜β6を順次小さく設定したために、光源4に近い側に各ガルバノミラー101〜106を配置できて、装置90の小型化や多機能化に有利である。
【0047】
なお、上述の各実施の形態において、各ビームスプリッタの数やガルバノミラーの数は自由に設定できる。
なお、第五の実施の形態による光ビーム照射装置68において、光分割素子69での反射光を入射する光ビームLまた透過光L2の光軸に対して鋭角の反射角で反射させる構成は、第一乃至第三の実施形態における一方向に複数のガルバノミラー13乃至18を配設した光ビーム照射装置に採用してもよい。
同様に、第六の実施形態による光ビーム照射装置90の光分割素子98での反射光を集光させてMEMSミラー等の小型のガルバノミラー101〜106で偏向させる構成は、第一乃至第三の実施形態における一方向に複数のガルバノミラー13乃至18を配設した光ビーム照射装置に採用してもよい。
また、第二の実施の形態による光ビーム照射装置22における反射ミラー23〜26は第四乃至第六の実施の形態においても光分割素子39,69,91に代えて採用しても良い。この場合、各反射ミラー23〜26は光ビームLまたは透過光L2の光軸に対する傾斜角度を適宜調整すればよい。
なお、光ビーム分割手段として偏向ビームスプリッタを採用してもよい。これによって、入射する光ビームや透過光についてP波とS波に分割して一方を反射光とし、他方を透過光とすることができる。
【0048】
なお、上述の各実施の形態では、光ビーム照射装置を車両運転支援装置に搭載するに際し、光ビームを複数の光ビーム分割手段で一方向に反射させる場合には、フロントガラス及びリアガラス内の両側に配設し、両側に反射させる場合にはフロントガラス及びリアガラス内の中央に配設することとしたが、本発明はこのような構成に限定されず、任意の位置に取り付けできる。例えば、前部及び後部のバンパ近傍や車両の屋根等の車両外部に採用してもよい。このような位置に光ビーム照射装置を設置すれば、光ビームがフロントガラスやリアガラスを通過する際に受ける悪影響を防止できる。
また、本発明による光ビーム照射装置2、22,28,38,68、90は車両運転支援装置に限定されることなく、ディスプレイ用、舞台照明用等、任意の用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第一の実施の形態による光ビーム照射装置を車両運転支援装置に用いた斜視図である。
【図2】第一の実施の形態による光ビーム照射装置を示す光学系の正面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】(a)、(b)、(c)、(d)はビームエキスパンダの例を示す図である。
【図5】ビームスプリッタでの反射率と透過率と射出光強度を示すグラフである。
【図6】第二の実施の形態による光ビーム照射装置を示す光学系の正面図である。
【図7】第三の実施の形態による光ビーム照射装置を示す光学系の正面図である。
【図8】第四の実施の形態による光ビーム照射装置を車両運転支援装置に用いた斜視図である。。
【図9】第四の実施の形態による光ビーム照射装置を示す光学系の正面図である。
【図10】ビームスプリッタでの反射率と透過率と射出光強度を示すグラフである。
【図11】第五の実施の形態による光ビーム照射装置を示す光学系の正面図である。
【図12】第六の実施の形態による光ビーム照射装置を示す光学系の正面図である。
【符号の説明】
【0050】
2、22、28、38、68、90 光ビーム照射装置
4 光源
5、6,7,8,9、29,30,31,32,33,42,43,44,45,46,47,48,49,50,70,71,72,73,74,75,76,77、92,93,94,95,96,97 ビームスプリッタ(光ビーム分割手段)
10b、34a、40、78、98 半透過膜(分割面)
11 反射ミラー(光ビーム分割手段)
13,14、15,16,17,18、52,53,54,55,56,57,58,59,60,61、80,81,82,83,84,85,86,87、101,102,103,104,105 ガルバノミラー(偏向器)
20 ビームエキスパンダ(ビーム整形手段)
23、24,25,26 ハーフミラー(光ビーム分割手段)
34b、41,79,99 反射面(光ビーム分割手段)
35、39,69、91 光分割素子
L1、反射光(光ビーム)
L2 透過光(光ビーム)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを射出する光源と、入射する光ビームを反射光と透過光に分岐すると共に透過光の進行方向に配列された複数の光ビーム分割手段と、該光ビーム分割手段で反射された光ビームをそれぞれ偏向させる偏向方向可変の偏向器とを備えたことを特徴とする光ビーム照射装置。
【請求項2】
前記偏向器は前記複数の光ビーム分割手段に対して一方向に配設されている請求項1に記載の光ビーム照射装置。
【請求項3】
前記偏向器は前記複数の光ビーム分割手段に対して複数の方向に配設されていて、前記光ビーム分割手段は反射光を複数の方向に配設した前記偏向器に選択的に反射させ、前記複数の方向に配設された偏向器でそれぞれ偏向された光ビームは異なる方向に射出する請求項1に記載の光ビーム照射装置。
【請求項4】
前記複数の光ビーム分割手段で反射する光ビームは、二つの方向に交互に反射するようにした請求項3に記載の光ビーム照射装置。
【請求項5】
前記複数の光ビーム分割手段でそれぞれ反射する光ビームの少なくとも1つは、光ビーム分割手段に入射する光ビームの光軸に対して鋭角で反射するように構成した請求項1乃至4のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項6】
前記光ビーム分割手段は、同一方向に反射する複数の光ビームが前記偏向器に向けて集合するように構成した請求項1乃至5のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項7】
前記複数の光ビーム分割手段はそれぞれ反射率が異なる請求項1乃至6のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項8】
前記複数の光ビーム分割手段は、透過光の進行方向に向けて反射率が漸次増大するように設定してなる請求項7に記載の光ビーム照射装置。
【請求項9】
前記光ビーム分割手段は透過する光ビームの進行方向にN個配列され、n個目(n=1,2,…,N)の光ビーム分割手段における反射率をRn、透過率をTnとすると、次式(1)〜(3)を満たすようにした請求項1乃至8のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
0.5/N≦R1<1.5/N (1)
Tn=1−Rn (2)
0.7×Rn-1/Tn-1<Rn<1.3×Rn-1/Tn-1 (3)
【請求項10】
前記複数の光ビーム分割手段は複数の三角プリズムを貼り合わせてなり、その貼り合わせ面に分割面を設けてなる請求項1乃至9のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項11】
前記複数の三角プリズムは交互にずれて向かい合わせに配設された頂角の大きさがそれぞれ異なる請求項10に記載の光ビーム照射装置。
【請求項12】
前記光ビーム分割手段の縦断面視で前記貼り合わせ面の長さが異なる請求項10または11に記載の光ビーム照射装置。
【請求項13】
前記光ビーム分割手段は平行四辺形プリズムを貼り合わせてなり、その貼り合わせ面に分割面を設けてなる請求項1、2、5乃至9のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項14】
前記光ビーム分割手段は板状のハーフミラーである請求項1乃至9のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項15】
前記偏光器は、偏向される光ビームを所望の偏向角にそれぞれ制御する制御手段を接続してなる請求項1乃至14のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項16】
前記光源と光ビーム分割手段との間に光ビームの光束径を調整する光ビーム整形手段が配設されている請求項1乃至15のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項17】
前記光ビーム整形手段はビームエキスパンダである請求項16に記載の光ビーム照射装置。
【請求項18】
前記光ビーム整形手段を透過した光ビームは収斂光または発散光である請求項16または17に記載の光ビーム照射装置。
【請求項1】
光ビームを射出する光源と、入射する光ビームを反射光と透過光に分岐すると共に透過光の進行方向に配列された複数の光ビーム分割手段と、該光ビーム分割手段で反射された光ビームをそれぞれ偏向させる偏向方向可変の偏向器とを備えたことを特徴とする光ビーム照射装置。
【請求項2】
前記偏向器は前記複数の光ビーム分割手段に対して一方向に配設されている請求項1に記載の光ビーム照射装置。
【請求項3】
前記偏向器は前記複数の光ビーム分割手段に対して複数の方向に配設されていて、前記光ビーム分割手段は反射光を複数の方向に配設した前記偏向器に選択的に反射させ、前記複数の方向に配設された偏向器でそれぞれ偏向された光ビームは異なる方向に射出する請求項1に記載の光ビーム照射装置。
【請求項4】
前記複数の光ビーム分割手段で反射する光ビームは、二つの方向に交互に反射するようにした請求項3に記載の光ビーム照射装置。
【請求項5】
前記複数の光ビーム分割手段でそれぞれ反射する光ビームの少なくとも1つは、光ビーム分割手段に入射する光ビームの光軸に対して鋭角で反射するように構成した請求項1乃至4のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項6】
前記光ビーム分割手段は、同一方向に反射する複数の光ビームが前記偏向器に向けて集合するように構成した請求項1乃至5のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項7】
前記複数の光ビーム分割手段はそれぞれ反射率が異なる請求項1乃至6のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項8】
前記複数の光ビーム分割手段は、透過光の進行方向に向けて反射率が漸次増大するように設定してなる請求項7に記載の光ビーム照射装置。
【請求項9】
前記光ビーム分割手段は透過する光ビームの進行方向にN個配列され、n個目(n=1,2,…,N)の光ビーム分割手段における反射率をRn、透過率をTnとすると、次式(1)〜(3)を満たすようにした請求項1乃至8のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
0.5/N≦R1<1.5/N (1)
Tn=1−Rn (2)
0.7×Rn-1/Tn-1<Rn<1.3×Rn-1/Tn-1 (3)
【請求項10】
前記複数の光ビーム分割手段は複数の三角プリズムを貼り合わせてなり、その貼り合わせ面に分割面を設けてなる請求項1乃至9のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項11】
前記複数の三角プリズムは交互にずれて向かい合わせに配設された頂角の大きさがそれぞれ異なる請求項10に記載の光ビーム照射装置。
【請求項12】
前記光ビーム分割手段の縦断面視で前記貼り合わせ面の長さが異なる請求項10または11に記載の光ビーム照射装置。
【請求項13】
前記光ビーム分割手段は平行四辺形プリズムを貼り合わせてなり、その貼り合わせ面に分割面を設けてなる請求項1、2、5乃至9のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項14】
前記光ビーム分割手段は板状のハーフミラーである請求項1乃至9のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項15】
前記偏光器は、偏向される光ビームを所望の偏向角にそれぞれ制御する制御手段を接続してなる請求項1乃至14のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項16】
前記光源と光ビーム分割手段との間に光ビームの光束径を調整する光ビーム整形手段が配設されている請求項1乃至15のいずれかに記載の光ビーム照射装置。
【請求項17】
前記光ビーム整形手段はビームエキスパンダである請求項16に記載の光ビーム照射装置。
【請求項18】
前記光ビーム整形手段を透過した光ビームは収斂光または発散光である請求項16または17に記載の光ビーム照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−40707(P2006−40707A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218862(P2004−218862)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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