光ピックアップ、光ディスク装置、光ピックアップ製造方法及び光ピックアップ制御方法
【課題】 量産性や軽量化を向上させるために対物レンズをプラスチック製とするとともに、環境温度変化があったときのコマ収差を低減する。
【解決手段】 第1及び第2の対物レンズ33,34と、第1及び第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部としての対物レンズ駆動部51と、通過する光ビームの発散角を変換する第1のコリメータレンズ36と、球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部48とを備え、第1の対物レンズ33は、プラスチック製であり、第1の導光光学系28により導かれた光ビームの光軸と、第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、当該光ピックアップは、第1の対物レンズによる初期コマ収差を最適に補正するような角度で、傾斜するように調整され、第1の光ディスク再生時には、チルト補正機構は使用せず、第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記チルト補正機構を使用する。
【解決手段】 第1及び第2の対物レンズ33,34と、第1及び第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部としての対物レンズ駆動部51と、通過する光ビームの発散角を変換する第1のコリメータレンズ36と、球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部48とを備え、第1の対物レンズ33は、プラスチック製であり、第1の導光光学系28により導かれた光ビームの光軸と、第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、当該光ピックアップは、第1の対物レンズによる初期コマ収差を最適に補正するような角度で、傾斜するように調整され、第1の光ディスク再生時には、チルト補正機構は使用せず、第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記チルト補正機構を使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の光記録媒体に対して、情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ、この光ピックアップを用いた光ディスク装置、光ピックアップ製造方法及び光ピックアップ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、情報信号の記録媒体として、波長785nm程度の光ビームを用いるCD(Compact Disc)がある。また、光ディスクには、CDより高密度記録を実現した波長660nm程度の波長の光ビームを用いるDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクがある。さらに、光ディスクには、DVDより高密度記録が実現された青紫色半導体レーザによる波長405nm程度の光ビームを用いて信号の記録再生を行う高密度記録が可能な光ディスク(以下、「高密度記録光ディスク」という。)がある。この高密度記録光ディスクとして、例えばBD(Blu-ray Disc(登録商標))のような、信号を記録する記録層を保護する保護層(カバー層)の厚さを薄くした構造のものが提案されている。
【0003】
上述のBD等の光ディスクに情報信号の記録を行い、あるいは光ディスクに記録された情報信号の再生を行うための光ピックアップに用いられる対物レンズとして、プラスチック製の対物レンズを用いることが検討されている。これは、プラスチック製の対物レンズは、ガラス製の対物レンズに比べて、量産性向上や軽量化に対して有利であるからである。
【0004】
プラスチック製対物レンズは、その材料特性上、熱による屈折率変化が大きく、使用される環境下によっては、不要な収差が多く発生する。特に、プラスチック製対物レンズにおいて、環境温度変化による球面収差の変化は従来のガラス製の対物レンズに比べ変化が大きく、そのままでは読み取り性能の悪化に繋がってしまう。
【0005】
このため、プラスチック製対物レンズを使用する際には、一般的にコリメータレンズを光軸方向に移動させることで倍率球面収差を発生させ、温度変化により発生する球面収差を補正する手法が用いられている。
【0006】
しかし、かかるコリメータレンズ駆動による球面収差補正を行う場合に、倍率変化による副作用としてレンズチルトによるコマ収差感度(以下、「レンズチルトコマ収差感度」という。)が大きく変化するという問題があった。
【0007】
その一方で、従来の光ピックアップにおいて、対物レンズやそれ以外の光学部品自体が有するコマ収差、及びこれらの組み立て精度によって発生するコマ収差を、対物レンズの傾きを静的又は動的に調整することで補正する手法が採用されていた。具体的には、対物レンズを保持するアクチュエータのチルト方向の傾きを静的又は動的に調整するといったことでかかる初期コマ収差等の補正が行われていた。
【0008】
プラスチック製対物レンズは、使用環境温度範囲において、その構成材料や形状により、上述の様にレンズチルトコマ収差感度が大きく変動し、条件によっては0から常温時の2倍程度まで変動する場合がある。そして、高低温環境下において、アクチュエータ駆動による傾き調整によるコマ収差補正が困難になるという問題や、これに伴いディスク読み取り性能が悪化するおそれがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−112575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、光ピックアップを構成する対物レンズをプラスチック製とすることによる量産性や軽量化を向上させるとともに、環境温度が変化した場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する光ピックアップ、光ディスク装置、光ピックアップ製造方法及び光ピックアップ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明に係る光ピックアップは、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記第1の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記第1の対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記第1の対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記第1の対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、当該光ピックアップは、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜され、上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する。
【0012】
また、本発明に係る光ディスク装置は、回転駆動される光ディスクに対して光ビームを照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップを備え、上記光ピックアップは、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記第1及び第2の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記第1の対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記第1の対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、上記光ピックアップ及び上記光ディスクを装着するディスク装着部は、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップと上記ディスク装着部に装着される光ディスクとが相対的に傾斜するように、少なくともいずれか一方が傾斜され、上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する。
【0013】
また、本発明に係る光ピックアップ製造方法は、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記第1の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記第1の対物レンズは、プラスチック製である光ピックアップを製造するに際し、光ビームを上記第1の対物レンズに導く導光光学系をベース部材に取り付ける導光光学系取付ステップと、上記導光光学系により上記第1の対物レンズに導かれる光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように、上記第1の対物レンズを上記レンズホルダに固定する対物レンズ調整ステップと、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップを上記光ディスクに対して相対的に傾斜するように、調整する光ピックアップ取付角度調整ステップと、上記光ピックアップが上記ピックアップ取付角度調整ステップで傾斜された状態で、上記第2の対物レンズによる上記第2の光ディスクに対する初期コマ収差を上記コマ収差発生部を用いて最適に補正するようなコマ収差補正量を算出し記憶部に記憶させる最適状態記憶ステップとを有する。
【0014】
さらに、本発明に係る光ピックアップ制御方法は、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記第1の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記第1の対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記第1、第2の対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、当該光ピックアップは、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜される光ピックアップを制御するに際し、装着された光ディスクの種類を判別する光ディスク判別ステップと、上記光ディスク判別ステップにより第1の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用しない状態で上記第1の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第1の光ディスク再生ステップと、上記光ディスク判別ステップにより第2の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用して上記第2の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第2の光ディスク再生ステップとを有する。
【0015】
また、本発明に係る光ピックアップは、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、当該光ピックアップは、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜され、上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する。
【0016】
また、本発明に係る光ディスク装置は、回転駆動される光ディスクに対して光ビームを照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップを備え、上記光ピックアップは、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、上記光ピックアップ及び上記光ディスクを装着するディスク装着部は、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップと上記ディスク装着部に装着される光ディスクとが相対的に傾斜するように、少なくともいずれか一方が傾斜され、上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する。
【0017】
また、本発明に係る光ピックアップ製造方法は、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記対物レンズは、プラスチック製である光ピックアップを製造するに際し、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系をベース部材に取り付ける導光光学系取付ステップと、上記導光光学系により上記対物レンズに導かれる光ビームの光軸と、上記対物レンズとが略一致するように、上記対物レンズを上記レンズホルダに固定する対物レンズ調整ステップと、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップを上記光ディスクに対して相対的に傾斜するように、調整する光ピックアップ取付角度調整ステップと、上記光ピックアップが上記ピックアップ取付角度調整ステップで傾斜された状態で、上記対物レンズによる上記第2の光ディスクに対する初期コマ収差を上記コマ収差発生部を用いて最適に補正するようなコマ収差補正量を算出し記憶部に記憶させる最適状態記憶ステップとを有する。
【0018】
また、本発明に係る光ピックアップ制御方法は、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、当該光ピックアップは、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜される光ピックアップを制御するに際し、装着された光ディスクの種類を判別する光ディスク判別ステップと、上記光ディスク判別ステップにより第1の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用しない状態で上記第1の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第1の光ディスク再生ステップと、上記光ディスク判別ステップにより第2の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用して上記第2の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第2の光ディスク再生ステップとを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、対物レンズをプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。すなわち、本発明は、量産性や軽量化を実現させるとともに、良好な記録再生特性を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した光ディスク装置を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した光ピックアップの斜視図である。
【図3】本発明を適用した光ピックアップを構成する対物レンズを保持するレンズホルダと、これを支持する支持体とを示す平面図である。
【図4】本発明を適用した光ピックアップを構成する光学系を示す平面図である。
【図5】本発明を適用した光ピックアップを構成する第1の光学系の一部を模式的に示すための図であり、光ピックアップの断面図である。
【図6】本発明を適用した光ピックアップを構成する第1の対物レンズ及び第1の導光光学系との関係を説明するための図である。(a)は、当該第1の対物レンズの光軸と第1の導光光学系の光軸とが一致するように配置されていることを示す図である。(b)は、本発明の適用例と比較するための比較例における対物レンズの光軸と導光光学系の光軸とが傾斜して配置されていることを示す図である。
【図7】本発明を適用した光ピックアップが、光ディスクに対して相対的な角度が調整されていることを示す図である。
【図8】本発明を適用した光ピックアップが、図6(a)及び図7に示す構成とされた場合において、第2の対物レンズを使用する場合に、対物レンズ駆動部により第2の対物レンズをチルト方向に駆動することを示す図である。
【図9】本発明を適用した光ピックアップを構成する第1及び第2の対物レンズが、レンズホルダに組み付けられる際に、コマ収差の方向をラジアル方向に向けて配置されていることを示す平面図である。
【図10】レンズチルトコマ収差感度が環境温度変化により変化することを示す図であり、常温及び高低温環境におけるレンズチルト量に対する発生するコマ収差量の関係を示す図である。
【図11】光ピックアップと光ディスクとの相対的な傾斜角度が変化することによりコマ収差量が変化することを示す図であり、ディスクチルト量に対する発生するコマ収差量の関係を示す図である。
【図12】本発明を適用した光ピックアップのスキュー調整を行うスキュー調整機構を説明するための光ディスク装置の斜視図である。
【図13】本発明を適用した光ピックアップと、図6(b)に示すように調整された従来の光ピックアップとの温度変化に対するコマ収差変動量を比較するための図で、温度変化に対する最適ディスクチルト量変化を示す図である。
【図14】光ピックアップを構成する第1及び第2の対物レンズの光ビーム通過領域内で発生する温度勾配について説明するための図である。(a)は、対物レンズ及びレンズホルダ部分の温度分布を示す斜視図である。(b)は、対物レンズ及びレンズホルダ部分の温度分布を示す平面図である。(c)は、レンズホルダ部分の断面位置における温度変化を示す図であり、横軸は第1及び第2の対物レンズの光軸を通る直線上のラジアル方向の位置、縦軸は、温度を示す。
【図15】コイル電流量とコマ収差の関係を説明するための図である。(a)は、コイル電流量とその頻度を示す。(b)は、コイル電流量とコマ収差の関係を示す。(c)は、コマ収差とその頻度を示す。
【図16】本発明を適用した光ピックアップにおいて各対物レンズの取付方向について説明するための図である。(a)は、各対物レンズに発生する様々なコマ収差の向きを半径方向に向けて取り付けられていることを示す図である。(b)は、光ピックアップ及び光ディスクの相対角度調整により、第1の光ディスクの電流コマ収差及び第3の光ディスクの軸外コマ収差が低減されることを示す図である。
【図17】本発明を適用した光ピックアップの第1及び第2の対物レンズを用いた場合のそれぞれにコマ収差を低減した最適相対角を算出するための手法を説明するための図である。(a)は、(b)に示す計測器で得られる分布を示し、(b)は、干渉計又は波面センサからなる計測器を示し、(c)は、(d)に示す計測器で得られる分布を示し、(d)は、スポット観察を行う計測器を示す。
【図18】本発明を適用した光ピックアップの第1及び第2の対物レンズを用いた場合のそれぞれにコマ収差を低減した最適相対角を算出する他の手法を説明するための図である。そして、光ディスク及び光ピックアップの相対角度を変化させた場合のジッター、RF振幅、TE振幅、エラーレートの変化を示す図である。
【図19】本発明を適用した光ピックアップの製造方法を示す工程図である。
【図20】本発明を適用した光ピックアップの制御方法を説明するための記録再生方法のフローチャートである。
【図21】本発明を適用した光ピックアップの他の例の光学系を示す平面図である。
【図22】図21に示す光ピックアップを構成する対物レンズの一例を示す断面図である。
【図23】図21に示す光ピックアップを構成する対物レンズと導光光学系との関係を説明するための図である。(a)は、当該対物レンズの光軸と、導光光学系の光軸とが一致するように配置されていることを示す図である。(b)は、当該光ピックアップが、光ディスクに対して相対的な角度が調整されていることを示す図である。(c)は、第1の波長に対して(a)及び(b)に示すよう構成された場合に、第2の波長等を使用する場合に、対物レンズ駆動部により対物レンズをチルト方向に駆動することを示す図である。
【図24】本発明を適用した光ピックアップの更に他の例の光学系を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明を実施するための最良の形態を以下の順で説明する。
1.光ディスク装置の全体構成
2.光ピックアップの全体構成(第1の実施の形態)
3.対物レンズのレンズチルトコマ収差感度の温度特性について
4.初期コマ収差の補正について
5.光ピックアップの光ディスクに対する相対角度調整
6.光ピックアップの作用・効果
7.対物レンズのコマ収差の方向と取付方向
8.光ピックアップの製造方法
9.光ピックアップの制御方法
10.光ピックアップの他の例について(第2の実施の形態)
11.光ピックアップの更に他の例について(第3の実施の形態)
12.光ディスク装置の効果
【0022】
〔1.光ディスク装置の全体構成〕
以下、本発明を適用した光ピックアップを用いた光ディスク装置について、図面を参照して説明する。
【0023】
本発明が適用された光ディスク装置1は、図1に示すように、光ディスク2から情報記録再生を行う光ピックアップ3と、光ディスク2を回転操作する駆動手段としてのスピンドルモータ4とを備える。また、光ディスク装置1は、光ピックアップ3を光ディスク2の径方向に移動させる送りモータ5を備えている。この光ディスク装置1は、フォーマットの異なる3種類の光ディスク及び記録層が積層化された光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行うことができる3規格間互換性を実現した光ディスク装置である。
【0024】
ここで用いられる光ディスク2は、例えば、発光波長が短い405nm程度(青紫色)の半導体レーザを光源に用いた高密度記録が可能なBD(Blu-ray Disc(登録商標))等の高密度記録型の第1の光ディスク11である。この第1の光ディスク11は、100μmm程度のカバー層(「保護層」ともいう。)を有し波長400〜410nm程度の第1の波長の光ビームがカバー層側から照射される。なお、この第1の光ディスクには、記録層が単層である光ディスク(カバー層厚さ:100μm)や、記録層が2層である所謂2層光ディスクがあるが、更に、多くの記録層を有していても良い。2層光ディスクの場合は、記録層L0のカバー層厚さが100μm程度とされ、記録層L1のカバー層厚さが75μm程度とされている。
【0025】
また、ここで用いられる光ディスク2は、例えば、発光波長を655nm程度の半導体レーザを光源に用いたDVD(Digital Versatile Disc)、DVD−R(Recordable)、DVD−RW(ReWritable)、DVD+RW(ReWritable)等の第2の光ディスク12である。第2の光ディスク12は、0.6mm程度のカバー層を有し、波長650〜660nm程度の第2の波長の光ビームがカバー層側から照射される。なお、この第2の光ディスク12においても、複数の記録層を設けても良い。
【0026】
更に、ここで用いられる光ディスク2は、例えば、発光波長が785nm程度の半導体レーザを光源に用いたCD(Compact Disc)、CD−R(Recordable)、CD−RW(ReWritable)等の第3の光ディスク13である。第3の光ディスク13は、1.2mm程度のカバー層を有し、波長760〜800nm程度の第3の波長の光ビームがカバー層側から照射される。
【0027】
なお、以下、特に第1乃至第3の光ディスク11,12,13を区別しないときは、単に光ディスク2ともいう。
【0028】
光ディスク装置1において、スピンドルモータ4及び送りモータ5は、ディスク種類判別手段ともなるシステムコントローラ7からの指令に基づいて制御されるサーボ制御部9によりディスク種類に応じて駆動制御されている。スピンドルモータ4及び送りモータ5は、例えば、第1の光ディスク11、第2の光ディスク12、第3の光ディスク13に応じて所定の回転数で駆動される。
【0029】
光ピックアップ3は、3波長互換光学系を有する光ピックアップであり、規格の異なる光ディスクの記録層に対して異なる波長の光ビームを保護層側から照射するとともに、この光ビームの記録層における反射光を検出する。光ピックアップ3は、検出した反射光から各光ビームに対応する信号を出力する。
【0030】
光ディスク装置1は、光ピックアップ3から出力された信号に基づいてフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、RF信号等を生成するプリアンプ14を備える。また、光ディスク装置1は、プリアンプ14からの信号を復調し又は外部コンピュータ17等からの信号を変調するための信号変復調器及びエラー訂正符号ブロック(以下、信号変復調器&ECCブロックと記す。)15を備える。また、光ディスク装置1は、インターフェース16と、D/A,A/D変換器18と、オーディオ・ビジュアル処理部19と、オーディオ・ビジュアル信号入出力部20とを備える。
【0031】
このプリアンプ14は、光検出器からの出力に基づいて、非点収差法等によってフォーカスエラー信号を生成し、また、3ビーム法、DPD法、DPP法等によってトラッキングエラー信号を生成する。また、プリアンプ14は、更にRF信号を生成し、RF信号を、信号変復調器&ECCブロック15に出力する。また、プリアンプ14は、フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号とをサーボ制御部9に出力する。
【0032】
信号変復調器&ECCブロック15は、第1の光ディスク11に対して、データの記録を行うとき、インターフェース16又はD/A,A/D変換器18から入力されたディジタル信号に対して、以下の処理を行う。すなわち、信号変復調器&ECCブロック15は、第1の光ディスク11に対してデータを記録するとき、入力されたディジタル信号に対して、LDC−ECC及びBIS等のエラー訂正方式によってエラー訂正処理を行う。信号変復調器&ECCブロック15は、次いで、1−7PP方式等の変調処理を行う。また、信号変復調器&ECCブロック15は、第2の光ディスク12に対してデータを記録するとき、PC(Product Code)等のエラー訂正方式に従ってエラー訂正処理を行い、次いで、8−16変調等の変調処理を行う。更に、信号変復調器&ECCブロック15は、第3の光ディスク13に対してデータを記録するとき、CIRC等のエラー訂正方式によってエラー訂正処理を行い、次いで、8−14変調処理等の変調処理を行う。そして、信号変復調器&ECCブロック15は、変調されたデータをレーザ制御部21に出力する。更に、信号変復調器&ECCブロック15は、各光ディスクの再生を行うとき、プリアンプ14から入力されたRF信号に基づいて、変調方式に応じた復調処理を行う。更に、信号変復調器&ECCブロック15は、エラー訂正処理を行って、インターフェース16又はデータをD/A,A/D変換器18に出力する。
【0033】
なお、データ圧縮してデータ記録するときには、圧縮伸長部を信号変復調器&ECCブロック15とインターフェース16又はD/A,A/D変換器18との間に設けても良い。この場合、データは、MPEG2やMPEG4といった方式でデータが圧縮される。
【0034】
サーボ制御部9は、プリアンプ14からフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号が入力される。サーボ制御部9は、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号が0となるようなフォーカスサーボ信号やトラッキングサーボ信号を生成し、これらのサーボ信号に基づいて、対物レンズを駆動する2軸アクチュエータ等の対物レンズ駆動部を駆動制御する。また、プリアンプ14からの出力より、同期信号等を検出して、CLV(Constant Linear Velocity)やCAV(Constant Angular Velocity)、更にはこれらの組み合わせの方式等で、スピンドルモータをサーボ制御する。
【0035】
レーザ制御部21は、光ピックアップ3のレーザ光源を制御する。特に、この具体例では、レーザ制御部21は、記録モード時と再生モード時とでレーザ光源の出力パワーを異ならせる制御を行っている。また、光ディスク2の種類に応じてもレーザ光源の出力パワーを異ならせる制御を行っている。レーザ制御部21は、ディスク種類判別部22によって検出された光ディスク2の種類に応じて光ピックアップ3のレーザ光源を切り換えている。
【0036】
ディスク種類判別部22は、第1〜第3の光ディスク11,12,13の間の表面反射率、形状的及び外形的な違い等から反射光量の変化を検出し光ディスク2の異なるフォーマットを検出することができる。
【0037】
光ディスク装置1を構成する各ブロックは、ディスク種類判別部22における検出結果に応じて、装着される光ディスク2の仕様に基づく信号処理ができるように構成されている。
【0038】
システムコントローラ7は、ディスク種類判別部22で判別された光ディスク2の種類に応じて装置全体を制御する。また、システムコントローラ7は、ユーザからの操作入力に応じて、光ディスク最内周にあるプリマスタードピットやグルーブ等に記録されたアドレス情報や目録情報(Table Of Contents;TOC)に基づいて、各部を制御する。すなわち、システムコントローラ7は、上述の情報に基づいて、記録再生を行う光ディスクの記録位置や再生位置を特定し、特定した位置に基づいて、各部を制御する。
【0039】
以上のように構成された光ディスク装置1は、スピンドルモータ4によって、光ディスク2を回転操作する。そして、光ディスク装置1は、サーボ制御部9からの制御信号に応じて送りモータ5を駆動制御し、光ピックアップ3を光ディスク2の所望の記録トラックに対応する位置に移動することで、光ディスク2に対して情報の記録再生を行う。
【0040】
具体的には、光ディスク装置1により記録再生するときには、サーボ制御部9は、CAVやCLVやこれらの組み合わせで光ディスク2を回転する。光ピックアップ3は、光源から光ビームを照射して光検出器により光ディスク2からの戻りの光ビームを検出し、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成する。また、光ピックアップ3は、これらフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号に基づいて対物レンズ駆動機構により対物レンズを駆動してフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行う。
【0041】
また、光ディスク装置1により記録する際には、外部コンピュータ17からの信号がインターフェース16を介して信号変復調器&ECCブロック15に入力される。信号変復調器&ECCブロック15は、インターフェース16又はA/D変換器18から入力されたディジタルデータに対して上述したような所定のエラー訂正符号を付加し、更に所定の変調処理を行った後に記録信号を生成する。レーザ制御部21は、信号変復調器&ECCブロック15で生成された記録信号に基づいて、光ピックアップ3のレーザ光源を制御して、所定の光ディスクに記録する。
【0042】
また、光ディスク2に記録された情報を光ディスク装置1により再生する際には、光検出器で検出された信号に対して、信号変復調器&ECCブロック15が復調処理を行う。信号変復調器&ECCブロック15により復調された記録信号がコンピュータのデータストレージ用であれば、インターフェース16を介して外部コンピュータ17に出力される。これにより、外部コンピュータ17は、光ディスク2に記録された信号に基づいて動作することができる。また、信号変復調器&ECCブロック15により復調された記録信号がオーディオビジュアル用であれば、D/A変換器18でデジタルアナログ変換され、オーディオ・ビジュアル処理部19に供給される。そしてオーディオ・ビジュアル処理部19でオーディオビジュアル処理が行われ、オーディオ・ビジュアル信号入出力部20を介して、図示しない外部のスピーカやモニターに出力される。
【0043】
〔2.光ピックアップの全体構成(第1の実施の形態)〕
次に、本発明が適用された光ピックアップ3について詳細に説明する。尚、以下では、光ピックアップ3を異なる3種類の光ディスク11,12,13に対して、情報信号の記録及び/又は再生を行うものとして説明するが、これに限られるものではない。例えば、異なる2種類の光ディスク11,12に対して記録・再生を行うものとしてもよい。
【0044】
本発明が適用された光ピックアップ3は、上述した異なる波長の複数種類の光ビームを出射する半導体レーザ等からなる第1及び第2の光源31,32を有する。また、光ピックアップ3は、光ディスク2の信号記録面から反射される反射光ビームを検出する光検出素子としてのフォトダイオードを有する。また、光ピックアップ3は、第1及び第2の光源31,32からの光ビームを光ディスク2に導くとともに、光ディスク2で反射した光ビームを光検出素子に導く光学系とを有している。
【0045】
ここで、第1の光源31は、第1の光ディスク11に対応すべく設計波長が405nm程度とする第1の波長の光ビームを出射させる発光部(出射部)を有している。第2の光源32は、第2の光ディスク12に対応すべく設計波長が655nm程度とする第2の波長の光ビームを出射させる発光部(出射部)を有する。また、この第2の光源32は、第3の光ディスク13に対応すべく設計波長が785nm程度とする第3の波長の光ビームを出射させる発光部(出射部)とを有している。尚、第2の光源32において、第2の波長用の発光部と、第3の波長用の発光部とは、後述の第2の対物レンズ34のコマ収差の方向に対応する方向に並べて配置されている。
【0046】
この光ピックアップ3は、図2に示すように、光ディスク装置1の筐体内で光ディスク2の半径方向R(以下、「ラジアル方向」ともいう。)に移動可能に設けられた各種構成部品の取り付け基台となるピックアップベース50上に設けられている。このピックアップベース50は、所謂スライドベースとして機能し、光ディスク装置1のシャーシに取り付けられたガイド軸としての主軸62及び副軸63が挿通され、主軸62及び副軸63に半径方向に移動自在に支持されている。尚、図2及び後述の図中矢印RIは、ラジアル方向のうち内周側に向けた方向を示し、矢印ROは、ラジアル方向のうち外周側に向けた方向を示すものである。
【0047】
また、光ピックアップ3は、図3に示すように光源から出射された光ビームを集光して光ディスクに照射する複数の対物レンズ33,34を保持するレンズホルダ52を有している。このレンズホルダ52は、アクチュエータ可動部として機能するものであり、アクチュエータ固定部として機能する支持体53に、支持アームとして機能する複数のサスペンション54を介して、トラッキング方向やフォーカス方向に変位可能に支持されている。ここで、支持体53は、レンズホルダ52からタンジェンシャル方向Tzに間隔をおいて配置され、ピックアップベース50上に取り付けられている。また、支持アームとしてのサスペンション54は、支持体53に対してレンズホルダ52をフォーカス方向F及びトラッキング方向Tに移動可能に支持する。
【0048】
このレンズホルダ52、支持体53及びサスペンション54は、後述の各コイル56,57a〜57d及びマグネット58とともに、対物レンズ駆動部51を構成する。かかる対物レンズ駆動部51は、対物レンズ33,34をフォーカス方向F及びトラッキング方向Tに駆動する。さらに、対物レンズ駆動部51は、第1及び第2の対物レンズ33,34を保持するレンズホルダ52をチルト方向Tirに駆動して傾斜させるチルト補正機構としても機能する。このように、対物レンズ駆動部51は、フォーカス方向、トラッキング方向及びチルト方向にレンズホルダ52及びこれに保持される対物レンズを駆動可能なものであり、所謂3軸アクチュエータである。
【0049】
また、この第1及び第2の対物レンズ33,34は、光ピックアップ3の光学系の一部を構成している。この第1の対物レンズ33は、開口数(NA)が0.85程度とされたプラスチック製の単玉対物レンズである。第2の対物レンズ34は、第2の波長に対し開口数(NA)が0.6〜0.65程度で、第3の波長に対し開口数(NA)が0.45〜0.53程度とされた、プラスチック製の単玉対物レンズである。第1及び第2の対物レンズ33,34は、プラスチック製であることにより、従来のガラス製に比べて量産性や軽量化を可能とする。以下で説明する光ピックアップ3の各構成は、BD等の高密度記録光ディスクに対応する第1の対物レンズ33をプラスチック製とする場合の問題点を克服するものである。よって、第2の対物レンズ34については、プラスチック製に限られるものでなく、例えばガラスにより形成されるように構成しても良い。
【0050】
尚、光ピックアップ3では、ラジアル方向R(トラッキング方向T)に並んで配置される複数の対物レンズ33,34を備えるように構成したが、対物レンズの数及び配置はこれに限られるものではない。例えば複数の対物レンズをタンジェンシャル方向Tzに配置するように構成してもよい。
【0051】
第1及び第2の光源31,32から出射された光ビームを光ディスク2に導く光学系としては、第1及び第2の光学系がある。第1の光学系は、第1の光源31から出射された第1の波長の光ビームを第1の対物レンズ33を介して第1の光ディスク11である光ディスク2に導くものである。かかる第1の光学系は、図4に示すように、第1の波長の光ビームを第1の対物レンズ33に導く第1の導光光学系28と、第1の対物レンズ33とから構成される。第2の光学系は、第2の光源32から出射された光ビームを第2の対物レンズ34を介して第2又は第3の光ディスク12,13である光ディスク2に導くものである。かかる第2の光学系は、図4に示すように、第2及び第3の波長の光ビームを第2の対物レンズ34に導く第2の導光光学系29と、第2の対物レンズ34とから構成される。
【0052】
まず、第1の光学系を構成する第1の導光光学系28について図4を用いて説明する。第1の導光光学系28は、第1の光源31から出射された第1の波長の光ビームを回折してトラッキングエラー信号等の検出のために少なくとも3ビームに分割する第1のグレーティング35を有する。また、第1の導光光学系28は、第1のグレーティング35で回折された光ビームの発散角を変換して略平行光等の所望の角度とする発散角変換素子として第1のコリメータレンズ36を有する。また、第1の導光光学系28は、第1のコリメータレンズ36で略平行光とされた光ビームを反射して第1の対物レンズ33及び光ディスク2側に導く第1の立ち上げミラー41を有する。また、第1の導光光学系28は、第1の立ち上げミラー41と第1の対物レンズ33との間に設けられ、入射した光ビームに1/4波長の位相差を与える1/4波長板49を備える(図5参照)。尚、図4は、各光学部品と対物レンズの位置関係を説明するための平面図であり、当該図の見易さを考慮して1/4波長板49が図4には図示されていないが、後述の図5のように配置されているものとして説明する。そして、第1の光学系を構成する第1の対物レンズ33は、第1の立ち上げミラー41により立ち上げられ1/4波長板49を通過した光ビームを光ディスクの信号記録面に集光する。また、第1の導光光学系28は、第1のグレーティング35と第1のコリメータレンズ36との間に設けられる偏光ビームスプリッタ38を有する。第1の導光光学系28の偏光ビームスプリッタ38は、第1の対物レンズ33により集光され光ディスクで反射された戻りの光ビームの光路を、第1の光源31から出射された往路の光ビームの光路から分離する機能を有する。また、第1の導光光学系28は、偏光ビームスプリッタ38で分離された戻りの光ビームを受光して検出する第1の光検出器39を有する。また、第1の導光光学系28は、偏光ビームスプリッタ38と第1の光検出器39との間に設けられ、偏光ビームスプリッタ38で分離された戻りの光ビームを第1の光検出器39の受光面に集光させるマルチレンズ40を有する。第1の光検出器39は、受光面でマルチレンズ40で集光された光ビームを受光し、情報信号(RF信号)をプリアンプ14に出力するとともに、トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号等の各種信号を検出し、サーボ制御部9に出力する。
【0053】
第1の導光光学系28を構成する第1のコリメータレンズ36は、例えば、温度変化やカバー層厚の誤差等の要因により発生する球面収差を補正するために移動され、位置に応じて、第1の対物レンズ33に入射する光ビームの発散角を変換する。すなわち、第1のコリメータレンズ36は、光軸方向に移動可能とされ、光ピックアップ3には、この第1のコリメータレンズ36を光軸方向に駆動して移動させるコリメータレンズ駆動部48が設けられている。コリメータレンズ駆動部48は、例えば送りモータによってリードスクリューを回転させて第1のコリメータレンズ36を移動させてもよい。また、コリメータレンズ駆動部48は、対物レンズ駆動部のように、マグネットとコイルに流れる電流との作用により、第1のコリメータレンズ36を移動させてもよい。さらに、リニアモータ等を用いてもよい。そして、第1のコリメータレンズ36は、移動されることにより、平行光より僅かに収束された状態である収束光の状態で、又は僅かに発散された状態である発散光の状態で第1の対物レンズ33に入射させることで、発生する球面収差を低減する。このように、コリメータレンズ駆動部48は、第1のコリメータレンズ36を光軸方向に移動させ、第1の対物レンズ33に入射する光ビームの角度を変化させ、入射倍率を変化させることで球面収差を補正する。
【0054】
光ピックアップ3には、温度変化やカバー層厚さ誤差に伴い第1のコリメータレンズ36の位置を調整するための演算を行う制御部27が設けられている。この制御部27には、第1の光検出器39よりRF信号が入力される。制御部27は、入力されたRF信号のジッタ量を監視し、コリメータレンズ駆動部48を駆動し、第1のコリメータレンズ36を光軸方向に移動し球面収差補正を行う。尚、温度変化に伴う第1のコリメータレンズ36の位置調整を行うために、対物レンズ近傍に温度検出素子を設けるようにしてもよい。かかる場合には、制御部27には温度検出素子より温度の温度信号が入力される。この場合、制御部27は、温度信号や温度信号及びRF信号のジッタ量に基づいて、コリメータレンズ駆動部48を駆動し、球面収差補正を行う。
【0055】
また、第1のコリメータレンズ36は、光ピックアップが記録層が複数設けられている光ディスクに対して情報信号の記録再生を行う場合、記録層毎に適切な位置に移動される。このとき、第1のコリメータレンズ36は、フォーカスサーチによって表面反射率の変化が検出され又識別信号が読み出されることにより、記録層毎に適切な位置に移動される。この際、第1のコリメータレンズ36は、各記録層に応じた位置に移動されることで、各記録層から光ディスクの光入射側の表面までの厚さ(「カバー層厚さ」ともいう。)の違いに起因する球面収差を低減する。すなわち、第1のコリメータレンズ36及びコリメータレンズ駆動部48は、複数の記録層のそれぞれに対して適切に光ビームのビームスポットを形成することができる。このように、第1のコリメータレンズ36等は、光軸方向に駆動されることで第1の対物レンズ33への光ビームの入射倍率を変化させることで、温度変化やカバー層厚さ変化により発生する球面収差を低減でき、適切なビームスポットを形成することを可能とする。
【0056】
以上のように、第1のコリメータレンズ36及びコリメータレンズ駆動部48は、第1の対物レンズ33への光ビームの入射倍率を変換する入射倍率可変部として機能する。ここで、本発明を適用した光ピックアップ3を構成する入射倍率可変部は、これに限られるものではなく、所謂ビームエキスパンダや液晶素子等であってもよい。
【0057】
また、第1の光学系を構成する第1の対物レンズ33は、上述したように、光ピックアップ3に設けられる対物レンズ駆動部51により移動自在に保持されている。この第1の対物レンズ33は、第1の光検出器39で検出された光ディスク2からの戻り光により生成されたトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号に基づいて、対物レンズ駆動部51により変位される。これにより、第1の対物レンズ33は、光ディスク2に近接離間する方向(フォーカス方向)及び光ディスク2の径方向(トラッキング方向)の2軸方向へ変位される。第1の対物レンズ33は、第1の発光部からの光ビームが光ディスク2の記録面上で常に焦点が合うように、この光ビームを集束すると共に、この集束された光ビームを光ディスク2の記録面上に形成された記録トラックに追従させる。尚、対物レンズ駆動部51は、レンズホルダ52をチルト方向に傾斜させるチルト補正機構としての機能も有しているが、第1の対物レンズ33を用いる場合にはチルト方向への傾斜は行わない。換言すると、第1の光ディスクへの記録及び再生時には、チルト補正機構は使用されず、対物レンズ及びその周辺の温度環境が変化してもその状態を維持し、すなわち、対物レンズ駆動部51は、レンズホルダ52のチルト方向への傾斜を行わない。
【0058】
また、第1の対物レンズ33には、記録層の切換や製造誤差により光ディスク2のカバー層厚さ変化があったときや、環境温度変化があったとき、コリメータレンズ35を光軸方向に移動させ入射倍率が変化された光ビームが入射される。第1の対物レンズ33は、入射倍率が変化されることで、常に球面収差を補正、すなわち低減する。
【0059】
また、第1の対物レンズ33は、図5及び図6(a)に示すように、第1の導光光学系28により導かれた光ビームの光軸L28と、第1の対物レンズ33の光軸L33とが略一致するように取り付けられている。ここで、第1の導光光学系28とは、上述したように、第1の光ディスクに対応する第1の光学系のうち、対物レンズ駆動部51に可動自在に取り付けられる第1の対物レンズ33以外の光学部品を意味する。第1の対物レンズ33の光軸とは、第1の対物レンズ33を形成する入射側・出射側の光学面を結ぶ軸を意味するものとする。そして、第1の対物レンズ33は、レンズホルダ52に取り付けられる際に、従来のように導光光学系や対物レンズ自体等の初期コマ収差を考慮して傾斜調整させて取り付けられるのではなく、第1の導光光学系28の光軸に一致するように取り付けられる。これに対し、従来の「対物レンズの組立調整」においては、図6(b)に示す比較例のように、調整されていた。図6(b)に示す比較例の場合、対物レンズ133の光軸L133が、導光光学系128の光軸L128に対して初期コマ収差分だけ傾斜させてレンズホルダ152に組み立てられていた。一方図6(a)に示すように光ピックアップ3では、第1の対物レンズ33は、変位していない基準状態のレンズホルダ52に、光軸調整されて取り付けられる。具体的に第1の対物レンズ33は、導光光学系28により導かれ第1の対物レンズ33に入射する光ビームの光軸と、第1の対物レンズ33の光軸とが略一致するように取り付けられている。ここで、略一致とは、取付誤差の範囲程度であれば許容でき、第1の導光光学系28により導かれ第1の対物レンズ33に入射する光ビームの光軸と、第1の対物レンズ33の光軸との角度が、0±0.25°以内であれば十分後述の効果が得られる。尚、導光光学系の各種光学部品や対物レンズ33自体が有する所謂初期コマ収差については、後述のように、光ピックアップ3自体を光ディスクに対して相対的にチルト方向に傾斜させることにより、取り除くことが可能である。
【0060】
このように、かかる第1の光学系を有する光ピックアップ3は、光ディスク装置1を構成するに際し、図7に示すように光ピックアップ3自体のチルト角度の調整を行うことにより、第1の対物レンズ33を用いる場合に発生する初期コマ収差を抑えるものである。具体的な光ピックアップ3自体のチルト角度の調整は、後述の〔5.光ピックアップの光ディスクに対する相対角度調整〕で詳細に説明する。そして、対物レンズ駆動部51は、第1の対物レンズ33を用いてカバー層厚さt1の光ディスク再生時には、チルト補正機構としての機能を発揮されない。そして、かかる場合、光ピックアップ3は、第1の対物レンズ33やその周辺の温度環境が変化してもその状態を維持して記録再生を行う。
【0061】
次に、第2の光学系を構成する第2の導光光学系29について図4を用いて説明する。第2の導光光学系29は、少なくとも、第2の光源32から出射された第2及び第3の波長の光ビームを回折して少なくとも3ビームに分割する第2のグレーティング43を有する。また、第2の導光光学系29は、第2のグレーティング43で回折された光ビームの発散角を変換して略平行光とする第2のコリメータレンズ44を有する。また、第2の導光光学系29は、第2のコリメータレンズ44で略平行光とされた光ビームを反射してフォーカス方向Fに略直交する面内において光ビームの光路を変更する折り曲げミラー45を有する。また、第2の導光光学系29は、折り曲げミラー45から出射された光ビームを反射して第2の対物レンズ34及び光ディスク2側に導く第2の立ち上げミラー42を有する。尚、第2の導光光学系29において、第2の立ち上げミラー42と第2の対物レンズ34との間に、上述した第1の導光光学系と同様に1/4波長板を設けるように構成しても良い。そして、第2の光学系を構成する第2の対物レンズ34は、第2の立ち上げミラー42により立ち上げられた光ビームを光ディスクの信号記録面に集光する。また、第2の導光光学系29は、第2のグレーティング43と第2のコリメータレンズ44との間の光路上に設けられるビームスプリッタ46を有する。第2の導光光学系29のビームスプリッタ46は、第2の対物レンズ34により集光され光ディスクで反射された戻りの光ビームの光路を、第2の光源32から出射された往路の光ビームの光路から分離する。また、第2の導光光学系29は、ビームスプリッタ46で分離された戻りの光ビームを受光して検出する第2の光検出器47を有する。第2の光検出器47は、受光面で光ビームを受光し、情報信号(RF信号)をプリアンプ14に出力するとともに、トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号等の各種信号を検出し、サーボ制御部9に出力する。
【0062】
第2の光学系を有する第2の対物レンズ34は、上述したように、光ピックアップ3に設けられる対物レンズ駆動部51により移動自在に保持されている。この第2の対物レンズ34は、第2の光検出器47で検出された光ディスク2からの戻り光により生成されたトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号に基づいて、対物レンズ駆動部51により変位される。これにより、第2の対物レンズ34は、フォーカス方向及びトラッキング方向の2軸方向へ変位される。第2の対物レンズ34は、第2及び第3の発光部からの光ビームが光ディスク2の記録面上で常に焦点が合うように、この光ビームを集束すると共に、この集束された光ビームを光ディスク2の記録面上に形成された記録トラックに追従させる。また、第2の対物レンズ34は、上述の2軸方向のみならず、対物レンズ34のチルト方向に傾斜可能とされ、図8に示すように、当該チルト方向Tirに対物レンズ駆動部51により傾けられる。すなわち、第2の対物レンズ34は、後述のようにコマ収差が最も低減されるように予め決められた所定の最適角度だけ、当該チルト方向に対物レンズ駆動部51により傾けられる。このようにチルト方向に傾斜可能とされた第2の対物レンズ34は、共通のレンズホルダ52に2つの対物レンズを取り付ける構成において、図7に示すように第1の対物レンズ33を最適な状態となるように光ピックアップ3を設定することを可能とする。すなわち、かかる第2の対物レンズ34は、図7に示すように光ピックアップ3をこのように設定した場合にも、第2の対物レンズ34を利用する場合にもチルト駆動されることで最適な状態で記録・再生を可能とする。尚、ここでは、第2の対物レンズ34は、当該レンズを用いる場合に静的にチルト駆動するものとして説明したが、所謂動的にチルト駆動するように構成しても良い。例えば、第2の対物レンズ34は、第2の光検出器47で検出されたRF信号等に基づいて当該チルト方向に対物レンズ駆動部51により傾けられるようにしてもよい。かかる構成とすることにより、第2の対物レンズ34は、さらにコマ収差を低減することを可能とする。また、ここで説明したチルト補正機構としての対物レンズ駆動部51は、第2の対物レンズ34に入射する光ビームに相殺すべきコマ収差を発生させることでコマ収差を低減させる。すなわち、対物レンズ駆動部51にコマ収差発生部としての機能を持たせているが、これに換えて後述のように液晶素子等を設けコマ収差を調整するようにしてもよい。
【0063】
このように、対物レンズ駆動部51は、第1の対物レンズ33を用いる場合にはチルト方向への傾斜は行わないが、第2の対物レンズ34を用いる場合にはチルト方向への傾斜を行う。換言すると、第2の光ディスクへの記録及び再生時には、最適な再生環境を得るためにチルト補正機構としての対物レンズ駆動部51を使用してレンズホルダ52を傾斜させる。
【0064】
ここで、チルト方向としては、図2に示すように、上述のフォーカス方向F及びトラッキング方向Tに直交するタンジェンシャル方向Tzを軸とした軸回り方向である所謂ラジアルチルト方向Tirを意味するが、これに限られるものではない。すなわち、当該第2の対物レンズ34は、トラッキング方向を軸とした軸回り方向である所謂タンジェンシャルチルト方向に駆動可能なように構成しても良い。但し、ここで説明する光ピックアップ3では、対物レンズ33,34のコマ収差を後述のようにラジアル方向に向けて配置しているため、ラジアルチルト方向Tirへの駆動する必要がある。また、動的にチルト補正を行う場合には、ラジアルチルト方向及びタンジェンシャルチルト方向に駆動可能とした4軸方向に駆動可能なように構成しても良い。
【0065】
かかる第2の光学系においても、上述した第1の光学系と同様に、コリメータレンズを駆動するように構成して、温度変化の際などの球面収差を補正するように構成しても良い。かかる構成と併せて、環境温度変化に伴い入射倍率の変化があったときには、対物レンズ駆動部51によって、第2の対物レンズ34がチルト方向に傾けられることにより、コマ収差を打ち消すようにしてもよい。
【0066】
また、第2の対物レンズ34は、第2の導光光学系29により導かれた光ビームの光軸と、第2の対物レンズ34の光軸とが略一致するように取り付けられることが望ましい。ここで、後述のように、2つの対物レンズを共通のレンズホルダ52に取り付ける構成とされていることから、上述した第1の対物レンズ33側の光軸調整が優先されている。
【0067】
尚、上述では、第1の光ディスクに対応する第1の光学系28と、第2及び第3の光ディスクに対応する第2の光学系29とのそれぞれに専用の光学部品を設けるように構成したがこれに限られるものではない。すなわち、第1及び第2の光学系として共通化可能な光学部品を共通とするような構成としても良い。
【0068】
ところで、上述した第1及び第2の対物レンズ33,34は、コマ収差の方向が略一定になるようにレンズホルダ52に組み付けられている。このように、2つ以上の対物レンズを搭載する光ピックアップ3において、各々の対物レンズ33,34が有するコマ収差の方向を略同一の方向になるよう揃えてアクチュエータとしての対物レンズ駆動部51に組み込む点にも特徴を有している。かかる構成により、後述の第1の対物レンズ33を最適な状態とするために光ピックアップ3を図7に示すように傾斜させることにより第2の対物レンズ34に対しても有利に作用させることができる(図16(b)参照)。換言すると、両対物レンズの傾き最良位置からの誤差バラツキを極力低減することを可能とする。
【0069】
また、特にここで説明する光ピックアップ3においては、第1及び第2の対物レンズ33,34は、図9に示すように、それぞれのコマ収差の方向が、ラジアル方向であって例えば外側ROに向けて配置されてレンズホルダ52に組み付けられる。尚、内側RIに向けて配置されるように構成しても良い。
【0070】
ここで、具体的な取付手法について説明する。第1及び第2の対物レンズ33,34は、それぞれ円周方向に所定の分割数で分割された領域のいずれかの領域にコマ収差の方向が向いているかを検出される。例えば、その光軸に直交する平面内における等分された領域のいずれの領域内にコマ収差の方向が向いているかを検出され、その領域の中間位置の方向がコマ収差が向いている方向と認識される。第1及び第2の対物レンズ33,34には、光ビームが通過する有効領域外に、例えばゲートカット(Gate−Cut)等の、コマ収差の方向を示す認識部N1,N2が設けられる。図中領域R1は、第1の対物レンズ33の第1の波長の光ビームに対する有効領域を示し、領域R2,R3は、それぞれ第2の対物レンズ34の第2、第3の波長の光ビームに対する有効領域を示す。プラスチック製の対物レンズを用いる場合は、その製造上の要因としてキャビティが一定であることから、ロット毎にコマ収差の方向が略一定であるため、製造されたレンズのロット中の複数個のコマ収差の方向を計測することが考えられる。この場合、ゲートカットN1,N2が設けられた方向に対してその領域の中間位置の方向C1,C2との角度θ1,θ2が検出される。そして、このゲートカットN1,N2に対して所定の角度θ1,θ2だけ離れた方向にコマ収差が向いていると認識して、これに基づきレンズホルダ52に組み付けられる。尚、かかるコマ収差の方向を示す認識部は、ゲートカットに限られるものではなく、ケガキ線を設けるようにしてもよい。さらに、認識部は、ゲートカットとケガキ線の両方からなるようにしてもよく、かかる場合にはさらに精度良い取付を可能とする。そして、この認識部N1,N2に基づいて、コマ収差の方向C1,C2が認識された第1及び第2の対物レンズ33,34は、そのコマ収差の方向がラジアル方向に向くようにレンズホルダ52に組み付けられる。
【0071】
ところで、上述した対物レンズ33,34が保持されたレンズホルダ52には、図3及び図5に示すように光ディスク2の略半径方向であるトラッキング方向Tに駆動力を発生させるトラッキングコイル56が設けられる。また、レンズホルダ52には、光ディスクに近接及び離間する方向であるフォーカス方向Fに駆動力を発生させるフォーカスコイル57a〜57dとが取り付けられている。ピックアップベース50には、このトラッキングコイル56及びフォーカスコイル57a〜57dに対向するように配置され、このトラッキングコイル56及びフォーカスコイル57a〜57dに所定の磁界を与えるマグネット58が設けられている。
【0072】
そして、このトラッキングコイル56及びフォーカスコイル57a〜57dには、駆動用の電流が供給される。対物レンズ駆動部51は、各コイルに電流が供給されると、各コイルに供給された電流と、マグネットからの磁界との相互作用によって、レンズホルダ52をトラッキング方向T及びフォーカス方向Fに駆動変位させる。
【0073】
その結果、レンズホルダ52に支持された第1及び第2の対物レンズ33,34は、フォーカス方向F及び/又はトラッキング方向Tに駆動変位される。すなわち、第1及び第2の対物レンズ33,34を介して光ディスクに照射される光ビームが光ディスクの信号記録面に合焦するように制御されるフォーカス制御が行われる。また、第1及び第2の対物レンズ33,34を介して照射される光ビームが光ディスクに形成された記録トラックを追従するように制御されるトラッキング制御が行われる。
【0074】
また、対物レンズ駆動部51は、トラッキング方向Tに並んで配置されるフォーカスコイル57a,57dとフォーカスコイル57b,57cとの駆動力に差異を設けることにより、レンズホルダ52をラジアルチルト方向Tirに駆動変位させる。
【0075】
その結果、レンズホルダ52に支持された第2の対物レンズ34がチルト方向に駆動変位され、第2の対物レンズ34を用いて光ビームを集光する場合のコマ収差を低減することができる。すなわち、第2の対物レンズ34を介して光ディスクに照射される光ビームによるスポット形状を最適な状態となるように調整することができる。
【0076】
尚、ここでは、フォーカスコイル57a〜57dの駆動力に差異を設けるようにしてチルト駆動を行うようにしたが、これに限られるものではなく、チルトコイル及びチルトコイル用のマグネットを設けるように構成し、各種チルト制御を行うように構成してもよい。
【0077】
以上のように構成された光ピックアップ3は、装着された光ディスクの種類に応じて、第1及び第2の光源31,32に設けられた出射部から第1乃至第3の波長の光ビームのうち光ディスクの種類に対応した波長の光ビームを出射させる。そして、光ピックアップ3は、第1及び第2の光検出器39,47により検出された戻り光により生成されたフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号に基づいて、第1又は第2の対物レンズ33,34を駆動変位する。これにより、光ピックアップ3は、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行う。光ピックアップ3において、第1及び第2の対物レンズ33,34が駆動変位されることにより、光ディスク2の信号記録面に対して合焦する合焦位置に移動される。これにより、光ピックアップ3は、かかる光ビームが光ディスク2の記録トラック上に合焦されて、光ディスク2に対して情報信号の記録又は再生を行う。
【0078】
そして、この光ピックアップ3は、構成部品である第1の対物レンズ33をプラスチック製とすることによる量産性や軽量化を向上させる。また、光ピックアップ3は、BD等の高密度記録光ディスクに対応する第1の対物レンズ33をプラスチック製とすることにより温度変化に応じてレンズチルトコマ収差感度が変動することに起因する問題点を解消する。この点について、次の〔3.対物レンズのレンズチルトコマ収差感度の温度特性について〕で詳細に説明する。
【0079】
〔3.対物レンズのレンズチルトコマ収差感度の温度特性について〕
次に、本発明を適用した光ピックアップ3等を構成する第1の対物レンズ33のレンズチルトコマ収差感度の温度特性について説明する。
【0080】
上述したように、プラスチック製対物レンズは、環境温度変化による球面収差の変化がガラス製のものに比べて大きく、そのままでは記録再生特性の劣化を招くという問題がある。特に高開口数で高密度記録可能な光ディスクでは、かかる特性劣化が深刻な問題となる可能性がある。これに対し、上述したように、第1のコリメータレンズ36を駆動して当該第1の対物レンズ33へ入射する光ビームの入射角度を変化させ、すなわち入射倍率を変化させることによりこの球面収差を補正できる。このとき、第1の対物レンズ33への光ビームの入射角度を変化させることにより、対物レンズを傾斜させた(「レンズチルト」ともいう。)際のコマ収差の発生量が変化することを見出した。
【0081】
具体的には、図10に示すように、35℃程度の常温におけるレンズチルトコマ収差感度がLNで示される状態であるとすると、70℃程度の高温環境下では、LHで示されるようにレンズチルトコマ収差感度が低下する。その一方で、0℃程度の低温環境下では、LCで示されるようにレンズチルトコマ収差感度が上昇することとなる。このように、図10は、同一のレンズチルト角度で発生するコマ収差がコリメータレンズ駆動による入射倍率の変化に対応して大きく変化することを意味している。換言すると、レンズチルト角度に対するコマ収差が、環境温度変化に伴い大きく変化することを見出した。
【0082】
そして、かかるプラスチック製対物レンズを、従来のガラスレンズと同様にコマ収差を補正するため対物レンズを傾斜した状態でアクチュエータのレンズホルダに取り付けると以下のような問題が発生する。すなわち、従来の対物レンズの取付においては、対物レンズ自体や導光光学系を構成する部品自体や、これらの部品の組み立て精度により発生するコマ収差を打ち消すように、対物レンズを傾斜させてレンズホルダに取り付ける手法が良く用いられる。これは、図6(b)を用いて説明した通りである。これにより、常温においては、コマ収差をほとんどゼロにすることができる。すなわち、常温時においては、補正すべきコマ収差の量と、対物レンズの傾斜調整により発生するコマ収差の量とが等しくなっている。
【0083】
しかし、上述した図10に示すように、温度変化に伴う入射倍率変化により、レンズチルトコマ収差感度が変化するため、高低温環境下では、実線LH、LCで示すように、対物レンズの傾斜調整により発生するコマ収差の量が変化することとなる。そして、高低温環境下のようにレンズチルトコマ収差感度が変化した場合には、結果としてコマ収差が残留するか、さらに大きなコマ収差が発生するといった問題がある。
【0084】
この点について、詳細に説明すると、光ピックアップを構成する光学部品や部品の組み立て誤差によって発生するコマ収差がYであったとする。この場合、常温感度であるβ1/αを用いてY=β1となるレンズチルト量αだけ、コマ収差を相殺する方向に対物レンズを傾けてレンズホルダに取り付ける。かかる場合、温度変化により高温となったとき、(β1’−β1)分だけコマ収差が補正不足となる。また、温度変化により低温となったとき、(β1’’−β1)分だけコマ収差が補正過剰となってしまう。そして、この過不足分が大きくなった場合には、光ディスクの記録再生特性が悪化することになる。
【0085】
本発明を適用した光ピックアップ3では、図6(a)に示すように、第1の導光光学系28により第1の対物レンズ33に導かれる光ビームの光軸と、第1の対物レンズ33の光軸が一致するように、レンズホルダ52に配置されている。すなわち、レンズホルダ52に対して第1の対物レンズ33を傾斜させることなく正対するように、配置されている。よって、上述で説明した温度変化によるレンズチルトコマ収差感度の影響を受けることがなく、温度変化に伴うコマ収差の変動を防止できる。次に、図6(a)のように構成する場合において、従来では図6(b)に示すような対物レンズを傾斜させることにより低減していた初期コマ収差の低減手法について〔4.〕で説明する。
【0086】
〔4.初期コマ収差の補正について〕
この光ピックアップ3において、初期コマ収差の補正は、光ディスク装置1を構成するに際し、光ディスク2と光ピックアップ3との相対的な傾きを調整することによって行われる。具体的に、光ピックアップ3は、光ディスク装置1を構成するに際して、図7に示すように光ピックアップ3自体のスキュー方向Skへのスキュー調整を行うことにより、光ディスク2と光ピックアップ3との相対的な傾きを調整し、初期コマ収差を抑えるものである。ここで、スキュー方向Skは、上述したチルト方向Tirに対応する方向であり、チルト方向Tirと同様に、タンジェンシャル方向Tzの軸回り方向への傾斜方向である。すなわち、光ディスク2と光ピックアップ3とが相対的に傾斜するとコマ収差が発生するからであり、傾斜角度とコマ収差量との間には一定の関係がある。光ピックアップ3自体のチルト方向へのスキュー角度の調整については、〔5.〕で説明する。
【0087】
また、かかる相対的な傾きを調整するためには、光ディスク2を装着するディスク装着部側がスキュー調整可能なように構成されていてもよい。換言するとディスク装着部67のディスク取付基準面67aが光ピックアップ3に対して傾斜させるように構成されていてもよい。かかる場合には、ディスク装着部側が傾斜されることにより、コマ収差を最適に補正するような角度で、光ピックアップ3とディスク装着部67に装着される光ディスクとが相対的に傾斜されることとなる。
【0088】
ここで、光ディスク2と光ピックアップ3との相対的な傾きを調整し、初期コマ収差を補正する点について上述した図10と比較しながら、図11を用いて具体的に説明する。尚、相対的な傾きに対して発生するコマ収差量の割合をディスクチルト感度ともいう。ここで、図10及び図11は、第1の光ディスクのカバー層厚さt1が、t1=100μmであった場合の球面収差補正後のコマ収差量を示している。また、図10は、レンズチルトコマ収差感度を示し、図11は、ディスクチルトコマ収差感度を示している。
【0089】
光ピックアップ3を構成する光学部品や部品の組み立て誤差によって発生するコマ収差が上述と同様にYであったとする。この場合に、レンズチルト量αはゼロとし、光ピックアップの組み立て時に、次の調整を行う。すなわち、図11の実線LDに示すようなディスクチルト感度β2/δを用いてY=β2となるディスクチルト量δだけ、コマ収差を相殺する方向に光ピックアップ3はラジアルチルト方向Tirに傾斜される。この際、上述したように光ディスク取付基準面を傾斜させることで光ディスク側を傾斜させる構成であってもよい。かかる場合α≒0であるので、(β1’−β1)≒0、(β1’’−β1)≒0となる。また、ディスクチルト感度は温度によってほぼ一定であることが知られている。このことから、図7に示すような手法を取り入れることにより、温度変化が発生してもコマ収差が大きく変動することがなく、光ディスクに対する記録再生特性を良好に保つことができる。
【0090】
ところで、光ピックアップ3は、図7に示すように、第1の対物レンズ33による第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスク2に対して相対的に傾斜するように、約±0.5°の範囲でチルト調整されている。具体的には、第1の対物レンズ33の中心軸と、光ディスク取付基準面とのなす角度が約90±0.5°の範囲でコマ収差を最適に補正するように配置されることとなる。ここで、約±0.5°の範囲でコマ収差を最適に補正することができることについて説明する。
【0091】
第1の波長λ1、カバー層厚さt1の第1の光ディスクに対応する第1の対物レンズにおいて、実際に光ピックアップ3が有するコマ収差が0.05λrmsであり、それぞれのチルト感度が以下であった場合について検討する。他の条件としては、高温レンズチルト感度:0.01λrms/°であり、常温レンズチルト感度:0.08λrms/°であり、低温レンズチルト感度:0.15λrms/°であり、ディスクチルト感度:0.10λrms/°であるとする。従来例では、常温状態において図6(b)に示すようにレンズを0.05/0.08=0.625°傾けてコマ収差を補正する。この場合、高温時には、0.625×0.01=0.006λrms程度のコマ収差を補正することになるため、差し引き0.044λrmsこのコマ収差補正不足が発生する。また、低温時には、0.625×0.15=0.094λrms程度のコマ収差を補正することになるため、差し引き0.044λrmsのコマ収差過補正が発生する。
【0092】
ここで、規格化されている光ディスク自身の傾き0±0.35°をディスクチルト感度に置き換えると0.035λrmsとなる。そして、一般的なマレシャル限界0.07λrmsに対し、光ディスクへの影響を考慮すると光ピックアップの収差はマレシャル限界の半分以下にする必要がある。しかし、従来例では6割以上の収差が発生するため、マレシャル限界を超えてディスク読み取り性能に支障を来す場合が出てくる。尚、光ディスク読み取りに支障が発生した場合、チルト補正機構としての対物レンズ駆動部51を用いて動的にコマ収差を補正することも考えられる。しかし、高温時においてはレンズチルト感度が低いため、チルト補正機構を動的に動作させてもコマ収差を補正することが事実上困難である。
【0093】
光ピックアップ3では,図6(a)に示すように、第1の対物レンズ33を傾斜させずに、図7に示すように光ディスクの光ディスク取付基準面と光ピックアップとの相対的な角度をコマ収差/ディスクチルト感度=0.05/0.1=0.5°傾ける。かかる構成とすることで、光ピックアップ3の有するコマ収差を補正する。
【0094】
尚、この場合、第2の波長λ2、カバー層厚さt2の第2の光ディスクに対応する第2の対物レンズにおいては光ピックアップ3の有するコマ収差と、光ディスク取付基準面と光ピックアップとの相対的な傾け量で発生するコマ収差との関係が一致しない場合がある。この場合、チルト補正機構としての対物レンズ駆動部51を使用し、最適な再生条件の下で光ディスク読み取り性能を良好に保つことができる。
【0095】
〔5.光ピックアップの光ディスクに対する相対角度調整〕
次に、光ピックアップと光ディスクとの相対角度を調整する手法について図12を用いて説明する。具体的には、光ディスク装置1には、図12に示すように、光ピックアップ3が設けられるピックアップベース50に挿通されピックアップベース50の光ディスクの径方向への移動を支持するガイド軸となる主軸62及び副軸63が設けられている。また、光ディスク装置1は、主軸62及び副軸63のそれぞれの両端部に設けられるスキュー調整機構64を備える。このスキュー調整機構64は、例えば、主軸62及び副軸63をフォーカス方向Fの上側から支持するスプリング65と、主軸62及び副軸63の下部に当接されガイド軸を押圧することで主軸62及び副軸63の上下方向の高さを調節する調節ネジ66とからなる。そして、光ピックアップ3は、スキュー調整機構64により主軸62及び副軸63の両端部の上下方向の高さが調整されることにより、上述のラジアルチルト方向のチルト角度の調整とともに、所望の取付高さで光ディスク装置1に取り付けられる。例えば、光ピックアップ3の出力を見ながら、スキュー調整機構64の調整ネジを回してガイド軸としての主軸62及び副軸63の両端部の高さ方向の調整が行われることで、光ピックアップ3が調整される。尚、スキュー量を決定するための手法については、これに限られるものでなく、図17及び図18を用いて後述する。すなわち、光ピックアップ3は、スキュー調整機構64によりラジアルチルト方向のスキュー角度の調整が行われることにより上述の初期コマ収差を抑えた状態で光ディスク装置1に取り付けられる。尚、スキュー調整機構の構成は上述の形式に限定されるものではなく、光ピックアップ3自体のスキュー調整が可能な構成であればよい。また、光ディスクを装着するディスク装着部側がスキュー調整可能なように構成されていてもよい。換言するとディスク装着部67のディスク取付基準面67aが光ピックアップ3に対して傾斜されるように構成されていてもよい。
【0096】
〔6.光ピックアップの作用・効果〕
以上のように、本発明を適用した光ピックアップ3は、例えばBD等の高密度記録に対応するとともにプラスチック製の第1の対物レンズ33と第1の導光光学系28の光軸を一致させた状態でレンズホルダ52に取り付けられている点に特徴を有する。ここで第1の導光光学系28の光軸とは、第1の導光光学系28により導かれ第1の対物レンズ33に入射する光ビームの光軸を意味するものとする。また、光ピックアップ3は、ディスク取付基準面67aとの関係で、第1の対物レンズ33の初期コマ収差を補正するように傾斜調整される点に特徴を有する。このように、光ピックアップ3は、第1の対物レンズ33のレンズチルトコマ収差感度の温度特性に鑑みて構成されている。光ピックアップ3は、かかる構成により、環境温度変化があったときにもコマ収差の変動を低減し、すなわちコマ収差を低減した状態で記録再生を行うことを可能とする。よって、光ピックアップ3は、第1の対物レンズ33をプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、レンズチルトコマ収差感度の変動を考慮した構成とすることにより、環境温度変化があったときにも良好な記録再生特性を実現する。
【0097】
かかる構成によりコマ収差の変動が低減されることについて、図13を用いて説明する。図13は、上述の図6(a)を用いて説明したように構成された第1の対物レンズ33と、比較例として図6(b)を用いて説明したように構成された対物レンズ133との温度変化に伴うディスクチルト量の変動を示す図である。横軸は、温度変化を示し、縦軸は、コマ収差の取れ残り量をディスクチルト量に換算したものである。換言すると、取れ残ったコマ収差を相殺するディスクチルト量を縦軸に示した。LT133は、比較例の場合のチルト変化を示し、かかる比較例では温度によるチルト変化が大きい。これは、比較例の構成では、高温ではより大きくチルト補正が必要なことを示し、対物レンズ駆動部の構成によっては、必要なチルト角を超えてしまう場合があることを意味する。また、低温では、チルト補正角度は小さくてもよいが、感度が大きくなるため微妙な調整ができなくなることや、衝撃等によりチルト角度が変動した場合にかなり大きなコマ収差が発生してしまうことを意味している。また、図中LT33は、上述した光ピックアップ3を構成する第1の対物レンズ33のような構成の場合のチルト変化を示し、かかる本発明の適用例では温度によるチルト変化が小さいことを示している。これは、かかる適用例の場合では、チルト感度の変化が少ないことを示す。ここで図中ZTiに示すように常温時においても0°からのズレがあるが、このズレ量を図7で説明したように光ピックアップ3及び光ディスク取付基準面の相対角度調整することで対応できる。換言すると図6(a)及び図7の構成により、常温時のコマ収差の取れ残り量も少なく、かつ温度変化によるコマ収差の変動量を少なくすることができる。
【0098】
すなわち、光ピックアップ3は、第1の対物レンズ33へ入射する光ビームが、第1の対物レンズ33を形成する入射側及び出射側の光学面の中心を結ぶ軸と平行になるように配置され、且つ動作状態においてもその関係を維持する点に特徴を有する。かかる光ピックアップ3は、環境温度下におけるコマ収差の変化を抑制できる。これにより光ピックアップ3は、高密度記録光ディスクに対応した第1の対物レンズ33を使用する際の、高低温環境下における記録再生性能の悪化を抑制できる。
【0099】
そして、光ピックアップ3は、第1の光ディスク再生時には、環境温度が変化してもチルト補正機構としての対物レンズ駆動部51は使用せず、第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るためにチルト補正機構を駆動してレンズホルダ52を傾斜する。
【0100】
また、光ピックアップ3の第1の対物レンズ33が、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、所定の感度を満足する。かかる条件において、発生する球面収差を第1のコリメータレンズ36を移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズ33が傾斜することで対応する第1の波長λ1の光ビームに発生するコマ収差の割合の範囲にも特徴を有する。具体的に、この条件下かかるレンズチルトに対するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足している点にも特徴を有する。これは、上述の条件下でレンズチルトコマ収差感度が0.3[λrms/°]を超えるようなレンズの場合は、光ビームの光軸とレンズ光軸とを一致させる際の製造誤差等が無視できなくなるからである。また、かかるレンズは、経時変化や環境変化による光ビームの光軸とレンズ光軸の相対変化についても無視できなくなるからである。さらに、かかるレンズは、レンズホルダをフォーカス方向及びトラッキング方向に変位させた際のレンズホルダの姿勢変化による光ビームの光軸とレンズ光軸との相対変化についても無視できなくなるからである。このように、上述の条件下でレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]であることが望ましい条件といえる。そして、上述の条件下のレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3の範囲である対物レンズは、上述した図6(a)及び図7で説明した構成とすることにより、上述の様な効果を得ることができるものである。
【0101】
〔7.対物レンズのコマ収差の方向と取付方向〕
次に、光ピックアップ3において、図9を用いて上述したように第1及び第2の対物レンズ33,34のコマ収差をラジアル方向に向けることの利点について説明する。光ピックアップ3で発生するコマ収差は、上述したように、対物レンズ自体が持つコマ収差と、コリメータレンズやその他の光学部品が持つコマ収差と、各光学部品の組み立て誤差によるコマ収差とが存在する。それに加えて、プラスチック製対物レンズにおいては、光ビーム通過領域内で温度勾配を有することとなった場合に発生するコマ収差を考慮する必要がある。すなわち、通過領域内で温度勾配を有するとき領域毎に屈折率が異なることとなり、これに起因してコマ収差が発生することを意味する。また、温度勾配は、主にレンズアクチュエータを駆動するためのコイルの発熱と、光ディスクの回転で起こる風損により発生する。
【0102】
ここで、光ピックアップ3を構成する第1及び第2の対物レンズ33,34の光ビーム通過領域内で発生する温度勾配について図14を用いて説明する。図14(a)及び図14(b)では、例えばBD等に対応した第1の対物レンズ33には例えばDVD等に対応した第2の対物レンズ34に比較して、非対称な温度分布が発生していることを示す。対物レンズ内に非対称な温度分布が発生した場合は、分布位置毎に屈折率が異なることとなり、図14(a)及び図14(b)に示すような分布を有する場合にはラジアル方向にコマ収差が発生することとなる。尚、図3に示すようにコイルが配置されている場合に、図14(a)及び図14(b)に示すような温度分布が発生する。尚、図14(a)において、AT01〜AT05は、それぞれ、所定の温度範囲となっている領域を示し、AT05が最も高い温度で、次いでAT04、AT03、AT02の順となっており、AT01が最も低い温度であることを示している。また、図14(b)においても、AT11〜AT15は、それぞれ、所定の温度範囲となっている領域を示し、AT15が最も高い温度で、次いでAT14、AT13、AT12の順となっており、AT11が最も低い温度であることを示している。また、図14(c)は、半径方向の断面における対物レンズ温度分布断面を示すものである。図14(c)中横軸は、断面位置を、縦軸は温度を示すものである。図14(c)によっても、第1の対物レンズ33に相当する断面位置において、急峻な温度差を有した温度分布が生じていることが示されている。
【0103】
対物レンズに発生する温度差は一般的に、次の4つの要因により決定する。第1の要因は、対物レンズを取り付けるレンズホルダの形状である。第2の要因は、各コイルと対物レンズとの相対位置関係である。第3の要因は、コイルに流れる電流量である。第4の要因は、光ディスクの回転で発生させられる風損である。ここで、第3、第4の要因は、その動作状態によって大きく変動するため、対物レンズの温度差によるコマ収差の発生量は一定の値を取り得ない。
【0104】
しかしながら、そのコマ収差の発生する方向については、主に第1及び第2の要因により決定される。そのため、第3及び第4の要因から経験的に推測される平均的な電流量と風損から求まるコマ収差の発生量の分だけ、スピンドルモータの光ディスク取付基準面と光ピックアップ主軸副軸基準面との相対角度に上乗せすればよい。これにより、レンズ温度差によるコマ収差の影響を低減することができる。
【0105】
この点を図15を用いて説明する。図15は、コイル電流量とコマ収差の関係と想定されるコマ収差分布を示すものである。図15(a)は、横軸に示されるコイル電流量と、縦軸に示されるその頻度の分布を示す。図15(b)は、コイル電流量とコマ収差の関係を示し、横軸は、コイル電流量の2乗を示し、縦軸はコマ収差を示している。尚、コイル電流量の2乗は、発熱量に比例し、コマ収差は、ディスクチルトに比例する。図15(c)は、図15(a)及び図15(b)の関係から導かれる分布を示し、横軸は、風損を込みにしたコマ収差量を示し、縦軸は、頻度を示す。図中の破線は、平均的なコマ収差量を示す。
【0106】
本発明を適用した光ピックアップ3は、第1及び第2の対物レンズ33,34のコマ収差の方向が同一方向で且つラジアル方向に向くようにレンズホルダ52に組み付けられていることに特徴を有する。かかる構成により、図7で説明したように、第1の対物レンズ33の初期コマ収差を低減する方向θPへの相対傾斜により、第2の対物レンズ34の初期コマ収差についてもある程度は低減できる。すなわち、第2の対物レンズ34を用いる場合の図8で説明したチルト角度を小さくした状態で良好な記録再生特性を実現する。
【0107】
また、光ピックアップ3は、第1及び第2の対物レンズ33,34の温度差によるコマ収差の方向を光ディスクの内外周方向(ラジアル方向)に設定する点に特徴を有する。具体的には、第1及び第2の対物レンズ33,34をラジアル方向に並べて、且つコイルを第1及び第2の対物レンズ33,34のタンジェンシャル方向の両側に配置するように構成されている。かかる構成により、第1及び第2の対物レンズ33,34の温度差によるコマ収差の方向を概ねラジアル方向に設定することが可能である。よって、光ピックアップ3は、温度差によるコマ収差を平均的にオフセットさせて、その影響を低減させることができる。換言すると、光ピックアップと光ディスクの相対角度は、実動作状態において対物レンズ近傍に発生する熱量や温度分布により生じるコマ収差を予測し、かかる使用状態におけるコマ収差が最も低減するようにオフセットさせて決定される。これにより、光ピックアップ3は、高密度記録光ディスクに対応した第1の対物レンズ33を使用する際の、レンズ近傍のコイル等の熱源による、記録再生性能の悪化を抑制できる。そして、光ピックアップ3では、かかる構成と上述のような対物レンズ自体のコマ収差を内外周方向に一致させる構成とを兼ね備える。よって、光ピックアップ3は、第1の対物レンズ33については、図7で示した相対角度調整により、第2の対物レンズ34については、図8で示した対物レンズ駆動部51によるチルト調整によりかかるコマ収差を補正することが可能となる。
【0108】
さらに、光ピックアップ3は、第2の光源32の第2の波長λ2用の発光部と、第3の波長λ3用の発光部とが、第2の対物レンズ34のコマ収差の方向に対応する方向に並べて配置されている点に特徴を有する。具体的に、DVD等に用いられる第2の波長用の発光部が、第2の光学系の光軸上に配置され、CD等に用いられる第3の波長用の発光部が、第2の光学系の軸外配置となるように構成されている。そして、かかる発光点が軸外配置となる発光部に対しても、第2の対物レンズ34に対して斜め入射することで発生する軸外コマ収差の向きを光ディスク内外周方向(半径方向)に向けて配置されている。換言すると、DVDやCD用として2波長レーザとして第2の光源32を構成するに際し、軸外配置で使用される発光点は、次の観点で配置されている。すなわち、軸外コマ収差が第1の対物レンズ33における光ピックアップの相対角度のスキュー調整方向により発生するコマ収差により相殺される方向に配置されている。よって、光ピックアップ3は、第3の波長及び第2の対物レンズ34を用いる場合に、軸外配置の影響によるコマ収差についても、図7で示した調整により低減し、さらに図8で示した対物レンズ駆動部51によるチルト調整により補正することが可能となる。光ピックアップ3は、対物レンズ自体のコマ収差の方向と、温度変化によるコマ収差の方向と、軸外コマ収差の方向とを概ねラジアル方向に一致させる構成により、上述の効果とともに、軸外配置された光路における軸外コマ収差の影響も同時に補正することができる。すなわち、光ピックアップ3は、第1の対物レンズ33に対する最適化を行うために光ピックアップ3をスキュー調整することにより、第2の光源32の第2及び第3波長用のそれぞれの発光点の軸外配置による影響として発生するコマ収差も低減できる。
【0109】
上述の点を、図16を用いてさらに説明する。図16(a)に示すように、第1の対物レンズ33及び第2の対物レンズ34には、次の(D1)〜(D5)の収差が考えられるが、光ピックアップ3では、かかる各収差の方向を全てラジアル方向に向けている。すなわち、まず、(D1)のコマ収差は、第1の波長λ1の光ビームが第1の対物レンズ33を通過することにより発生するコマ収差である。(D2)のコマ収差は、第1の対物レンズ33におけるレンズ温度差により発生するコマ収差平均値(以下、「電流コマ収差」ともいう。)である。(D3)のコマ収差は、第2の波長λ2の光ビームが第2の対物レンズ34を通過することにより発生するコマ収差である。(D4)のコマ収差は、第3の波長λ3の光ビームが第2の対物レンズ34を通過することにより発生するコマ収差である。(D5)のコマ収差は、第2の光学系における第2の光源32の第3の波長用の発光部34bが、軸外配置されることにより第3の波長の光ビームに発生する軸外コマ収差である。
【0110】
光ピックアップ3において、上述の(D2)及び(D5)のコマ収差の方向をそろえるように第2の光源32の第3の波長用の発光部34bを配置することで、次の効果が得られる。すなわち、かかる構成により、第1の波長の光ビームに発生するコマ収差と第3の波長の光ビームに発生するコマ収差とが相対的に小さくなる。そして、かかる構成は、第1の波長を用いる場合と、第3の波長を用いる場合の相対ディスクチルトが小さくなることを示す。光ピックアップ3は、かかる構成と、上述の図7で説明した第1の対物レンズ33に最適な相対角度調整を行う構成とにより、以下の効果を奏する。すなわち、光ピックアップ3は、図16(b)に示すように、(D1)及び(D2)のコマ収差を打ち消すようにディスク取付基準面と光ピックアップとの相対角度θPが調整される。これにより、光ピックアップ3は、第2の対物レンズ34の第3の波長の光ビームに発生するチルト取れ残り量を低減させることができる。換言すると、光ピックアップ3は、第3の波長の光ビームを使用する場合の対物レンズ駆動部51によるチルト角度を小さくすることができる。
【0111】
〔8.光ピックアップの製造方法〕
次に、本発明を適用した光ピックアップ3の製造方法について説明する。
【0112】
光ピックアップ3の製造方法は、主に、図19に示すような工程図に示されるステップS1〜ステップS6を有する。
【0113】
ステップS1において、第1及び第2の導光光学系28,29がベース部材としてのピックアップベース50に取り付けられる。換言すると、ステップS1において、第1及び第2の導光光学系28,29を構成する光学部品が取り付けられる。
【0114】
具体的に、かかるステップS1においては、光ピックアップ3の主軸副軸基準面に対して第1及び第2の波長の光ビームの光軸が垂直に立ち上がるように第1及び第2の光源31,32や第1及び第2の立ち上げミラー41,42が調整設置される。また、その他の光学部品についても同様の観点から調整、設置される。主軸副軸基準面とは、光ピックアップ3をガイドする主軸62及び副軸63の中心線を含む平面である。
【0115】
このステップS1において、第1の光源31の第1の波長用の発光点は、第1の導光光学系28の光軸上に位置するよう調整される。そして、第1の光源31の第1の波長用の発光点は、各光学部品の光軸を経由した後に第1の立ち上げミラー41で反射された光ビームが、主軸副軸基準面に対して垂直に立ち上がる位置となるように調整される。また、第2の光源32の第2の波長用の発光点34aは、第2の導光光学系29の光軸上に位置するよう調整される。そして第2の光源32の第2の波長用の発光点34aは、各光学部品の光軸を経由した後に第2の立ち上げミラー42で反射された光ビームが、主軸副軸基準面に対して垂直に立ち上がる位置となるように調整される。ところで、第2の光源32の第3の波長用の発光点34bは、軸上に配置される第2の波長用の発光点に対して、軸外に配置されることとなるが、第2の対物レンズ34のコマ収差の方向である概ねラジアル方向に対応する方向に位置するように配置調整される。(図16参照)。そして、第1及び第2の導光光学系28,29を構成する他の部品は、第1及び第2の光源31,32から出射された光ビームが中心を通るよう配置される。
【0116】
ステップS2において、第1及び第2の対物レンズ33,34が対物レンズ駆動部51のレンズホルダ52に固定される。
【0117】
具体的にこのステップS2において、第1及び第2の対物レンズ33,34は、それぞれのコマ収差の方向がラジアル方向の例えば外側に向けて一致するように配置され、対物レンズ駆動部51のレンズホルダ52に固定される。また、このとき、第1及び第2の対物レンズ33,34の光軸は、なるべく平行となるように取付固定される。これにより、後述のように第1の対物レンズ33の光軸を調整することにより第2の対物レンズ34の光軸も所望の状態に近くすることができる。
【0118】
ステップS3において、図6(a)に示すように第1の対物レンズ33の光軸が第1の導光光学系28の光軸と一致するように対物レンズ駆動部51が光ピックアップ3に取り付けられる。すなわち、対物レンズの光軸が調整される。
【0119】
このステップS3では、アクチュエータ固定部としての支持体53を光ピックアップ3のピックアップベース50に固定することで対物レンズ駆動部51を光ピックアップ3に取り付ける。この対物レンズ駆動部51取付時において、チルト補正機構はオフとされている。対物レンズ駆動部51は、アクチュエータ可動部としてのレンズホルダ52が支持体53に対してチルト方向には変位していない状態で、第1の対物レンズ33の光軸が第1の導光光学系28から導かれる光ビームの光軸と一致するように調整される。チルト方向には変位していない状態とは、第1の対物レンズ33を用いる場合のレンズホルダ52及び支持体53の基準となる位置関係であることを意味する。例えば、かかる状態とは、レンズホルダ52が支持体53に対して変位していない状態に対して、レンズホルダ52が光軸方向に変位された状態を意味するものとする。また、これにより、第2の対物レンズ34の光軸も、第2の導光光学系29の光軸と一致する状態に近くなるが、ここでは、高密度記録再生を行う第1の対物レンズ33の光軸を最適な状態となるように優先して調整する。具体的には、光ピックアップ3の主軸副軸基準面に対し、第1の対物レンズ33の光軸が垂直になるように調整が行われる。このことは、換言すると、レンズ光軸と垂直な面をもつレンズ外周部と主軸副軸基準面とが平行となるように調整されていることを示す。
【0120】
尚、このステップS2及びステップS3において、対物レンズが調整されることとなる。かかるステップにおいて、第1の導光光学系28により第1の対物レンズ33に導かれる光ビームの光軸と、第1の対物レンズ33の光軸とが略一致するように、第1の対物レンズ33が光ピックアップ3のレンズホルダ52に固定される。
【0121】
ステップS4において、光ピックアップの取付角度が測定される。ここで、取付角度とは、光ピックアップ3と光ディスク取付基準面との相対角度を調整するための取付角度、すなわちスキュー量を意味する。かかるステップS4においては、第1の対物レンズ33を用いる場合の光ピックアップ3とディスク基準面との相対角度の最適値を測定する。
【0122】
ここで、この必要スキュー量を算出する手法について図17を用いて説明する。例えば、ステップS4では、図17(a)に示すような出力を得る図17(b)に示す干渉計又は波面センサからなる計測器71が用いられる。かかる計測器71は、上述のように第1の対物レンズ33が取り付けられた光ピックアップ3の第1の対物レンズ33を通過した光ビームのコマ収差(λrms)を計測する。そして、計測器71は、コマ収差と、ディスクチルト感度とから、最適相対角を算出する。ここで、最適相対角(°)=コマ収差(λrms)/ディスクチルト感度(λrms/°)の関係が成立している。
【0123】
また、必要スキュー量を算出する他の手法について図17(c)及び図17(d)を用いて説明する。この手法では、図17(c)に示すような出力を得る図17(d)に示すスポット観察が可能な計測器72が用いられる。かかる計測器72は、上述の様に第1の対物レンズ33が取り付けられた光ピックアップ3を傾斜させながら、第1の対物レンズ33を通過した光ビームのスポット形状を図17(c)のように計測する。そして、計測器72は、1次リング72aの強度がバランスする角度を最適相対角として計測する。
【0124】
また、必要スキュー量を算出するさらに他の手法について図18を用いて説明する。この手法では、OPU評価機上で、光ピックアップと光ディスク取付基準面との相対角度を変化させながら、ジッター(Jitter)等を測定する。そして、ジッターが最も小さく最適となる相対角度を最適相対角θPとして算出する。尚、図18に示す場合は、ジッター以外の信号を検出してもよく、例えば、RF信号又はトラッキングエラー信号の振幅が最大となる場合の相対角度を最適相対角として算出してもよい。また、エラーレートが小さくなるときを最適な角度として検出しても良い。
【0125】
尚、このステップS4では、いずれの手法をとる場合にも、第1の対物レンズ33を用いた場合の最適角度を算出しているが、さらに、第2の対物レンズ34を用いた場合の最適角度についてもステップS6のために測定検出する。
【0126】
ステップS5においては、光ピックアップが取り付けられる。かかるステップS5においては、スキュー調整機構64は、光ピックアップ3を支持する主軸62及び副軸63のシャフト高さを調整し、ディスク取付基準面67aと光ピックアップ3との相対角度がステップS4で算出された最適相対角となるように調整する。そして、光ピックアップ3は、最適相対角の状態で光ディスク装置1に取付固定される。
【0127】
尚、このステップS4及びステップS5において、光ピックアップの取付角度が調整されることとなる。かかるステップにおいて、光ピックアップ3は、光ディスクに対して最適相対角となるように調整される。ここで、光ピックアップ3は、第1の対物レンズを用いた場合に最適相対角となるように調整される。ここで、このステップS4とステップS5とを同じステップにて行うように構成しても良い。この場合、具体的には例えば、光ピックアップ3とディスク基準面との相対角度を変化させながら、直接光ピックアップの収差を測定し、収差が最適となる相対角度となるように調整するというものである。
【0128】
ステップS6においては、第2の対物レンズ34を用いる場合の最適チルト角度を算出して記憶させる最適状態算出記憶ステップである。ステップS6において、計測器71,72等は、ステップS4で測定された結果に基づいて第2の対物レンズ34を用いる場合の最適チルト角度を算出する。すなわち、ステップS4では、第1の対物レンズ33を用いる場合の光ピックアップ3の最適相対角と、第2の対物レンズ34を用いる場合の光ピックアップ3の最適相対角とが算出されている。計測器71,72等は、この2つの最適相対角に基づいて、図7のように相対角度θPで傾斜された光ピックアップ3において、第2の対物レンズ34を用いる場合の図8に示す最適のチルト角θAを算出する。このように算出された最適のチルト角θAとは、第2の対物レンズ34による第2、第3の光ディスクに対する初期コマ収差をチルト補正機構としての対物レンズ駆動部51を用いて最適に補正するようなチルト角度である。そして、当該ステップにおいて、記憶部としての光ピックアップ3の内部メモリ26は、当該チルト角度θAを記憶する。尚、記録再生時においては、光ピックアップ3は、第2の対物レンズ34を用いる場合には、内部メモリ26に記憶されたチルト角度θAに基づいて、対物レンズ駆動部51により第2の対物レンズ34を図8に示すように傾斜させる。尚、ここでは、ステップS4で算出された第2の対物レンズ34の最適チルト角度を算出し、これに基づき、チルト角度θAを算出するように構成したが、これに限られるものではない。すなわち、実際に図7のように取り付けられた光ピックアップ3において、図8に示すようにチルトを変動させ、第2の対物レンズ34により集光される光ビームの収差が一番小さなときの角度をチルト角度θAとしてもよい。尚、ここでは、当該チルト角度θAについての情報を光ピックアップ3の内部メモリ26に記憶するものとして説明したがこれに限られるものではない。すなわち、当該チルト角度θAを記憶する記憶部として、光ディスク装置1のシステムコントローラ7に含まれるメモリやシステムコントローラ7に接続されるメモリを用いるよう構成してもよい。このように、光ピックアップ3自体がメモリを有さない場合には、かかるステップS4で算出された最適のチルト角θAは、例えば2次元バーコード等を情報伝達用の記憶部として用いて記憶される。具体的には、製造装置により、かかるチルト角θAを含めた情報を光学的に読み取り可能な2次元バーコード等を作成して例えば光ピックアップ3の筐体表面上に貼り付ける。そして、光ピックアップ3を光ディスク装置1に組み込む際に製造装置によりこのバーコードを読み取り、かかる情報を光ディスク装置1内部の記憶部(メモリ)に格納するように構成しても良い。
【0129】
以上のような光ピックアップ製造方法は、上述したような高密度記録光ディスク用の対物レンズとしてプラスチック製のものを用いる場合の温度変化時のコマ収差の変動を低減するという効果を有する光ピックアップ3を製造することができる。当該製造方法は、特に、ステップS3を備えることにより、第1の対物レンズ33を使用する場合の温度変化時のコマ収差の変動を低減することを実現する。また、当該製造方法は、特にステップS6を備えることにより、上述の様に第1の対物レンズ33用の最適化を行った光ピックアップにより、第2の対物レンズを用いて第2及び第3の光ディスクに対してもコマ収差を低減した状態とすることを実現する。
【0130】
〔9.光ピックアップの制御方法〕
次に光ピックアップ3の制御方法について、図20を用いて説明する。具体的に、上述した光ピックアップ3を有する光ディスク装置1は、図20のフローチャートに示すような記録再生方法を行い、この記録再生において所定の光ピックアップ3の制御を行う。記録再生方法は、ステップS11〜S17を有する。
【0131】
ステップS11において、光ディスク装置1のディスク装着部に光ディスク2が装着され、記録又は再生の開始釦が操作されると、システムコントローラ7は、レーザ制御部21を駆動し、第1又は第2の光源部31,32より光ビームを出射させる。また、このステップS11においてシステムコントローラ7は、サーボ制御部9でスピンドルモータ4を駆動してディスク装着部に装着された光ディスク2を回転操作する。
【0132】
次に、ステップS12において、光ピックアップ3及びディスク種類判別部22は、表面反射率、形状的及び外形的な違い等から反射光量の変化を検出し、光ディスク2を検知して判別する。尚、この光ディスク判別ステップの結果により、第1の波長の光ビームを用いる場合には、対物レンズ駆動部51のチルト補正機能を用いず、第2及び第3の波長の光ビームを用いる場合には、対物レンズ駆動部51のチルト補正機能を用いることとなる。また、このステップS12において、装着された光ディスクが第1の光ディスク11と判別された場合には、ステップS13に進む。また、このステップS12において、装着された光ディスクが第1の光ディスク11でないと判別された場合には、ステップS15に進む。装着された光ディスクが第1の光ディスク11でない場合は、第2及び第3の光ディスクであった場合である。また、ここで、第2及び第3の光ディスク12,13のいずれかであることも判別されるように構成してもよい。
【0133】
ステップS13において、第1の対物レンズ33を用いて第1の光ディスクに記録再生を行うために光ピックアップ3の各部を調整(第1の最適化調整)する。ステップS13において、制御部27は、第1の光源31から記録又は再生に応じた強さで第1の波長の光ビームを出射させる。また、制御部27は、システムコントローラ7の制御に応じてコリメータレンズ駆動部48を制御して、第1のコリメータレンズ36を所定の位置に移動させる。このとき、第1のコリメータレンズ36は、ディスク種類判別部22で検出された光ディスク2の種類に応じた基準位置に移動される。また、制御部27は、コリメータレンズ駆動部48で第1のコリメータレンズ36を光軸方向に微動して球面収差の補正も行う。具体的に制御部27は、光検出器39により検出されるRF信号の品位が良くなる方向に、すなわち光検出器39により検出されるRF信号のジッタ量を検出し、このジッタ量が最小となる方向に、第1のコリメータレンズ36を移動する。このステップにおいて、サーボ制御部9は、フォーカスエラー信号に基づいて対物レンズ駆動部51を駆動して第1の対物レンズ33をフォーカス方向に移動させてフォーカス制御を行う。尚、このステップにおいて、制御部27は、対物レンズ駆動部51のチルト補正機能を、使用させない。換言すると対物レンズ駆動部51は、チルト方向にレンズホルダ52及び第1の対物レンズ33を駆動させない。そしてステップS14に進む。
【0134】
ステップS14において、制御部27は、光ディスク2に対する情報信号の記録又は再生を開始する。この際、光ピックアップ3は、チルト補正機構を使用しない状態で第1の光ディスクに対して情報信号の記録再生を行う。また、このステップにおいて、サーボ制御部9は、トラッキングエラー信号に基づいて対物レンズ駆動部51を駆動して第1の対物レンズ33をトラッキング方向に移動させてトラッキング制御を行う。そして、システムコントローラ7より記録再生動作が終了であると判断された場合にはステップS17に進む。
【0135】
ステップS15において、第2の対物レンズ34を用いて第2又は第3の光ディスクに記録再生を行うために光ピックアップ3の各部を調整(第2の最適化調整)する。以下では、第2の光ディスクに記録再生を行う場合について説明する。尚、第3の光ディスクに記録再生を行う場合についても、以下で説明する場合と同様に、第3の光ディスクに対応した最適化調整がされ、チルト補正機構を用いて記録再生が行われる。ステップS15において、制御部27は、第2の光源32の第2の波長用の発光部から記録又は再生に応じた強さで第2の波長の光ビームを出射させる。
【0136】
このステップS15において、制御部27は、例えば内部メモリ26に記憶された図8に示す最適チルト角度に基づいて対物レンズ駆動部51を駆動して、チルト方向にレンズホルダ52及び第2の対物レンズ34を駆動させる。そして、第2の対物レンズ34は、上述したようにコマ収差が低減された状態で、図8に示すような状態で傾斜されている。また、このステップにおいて、サーボ制御部9は、フォーカスエラー信号に基づいて対物レンズ駆動部51を駆動して第2の対物レンズ34をフォーカス方向に移動させてフォーカス制御を行う。そしてステップS16に進む。
【0137】
ステップS16において、光ピックアップ3は、光ディスク2に対する情報信号の記録又は再生を開始する。この際、光ピックアップ3は、チルト補正機構としての対物レンズ駆動部51を使用して第2の光ディスクに対して情報信号の記録又は再生を行う。さらに、動的にチルト補正を行う場合には、サーボ制御部9は、光ディスク2の反りに対してコマ収差を低減できるようレンズチルト補正量を決定し、対物レンズ駆動部51を駆動して第2の対物レンズ34をチルト方向に変位させる。また、このステップにおいて、サーボ制御部9は、トラッキングエラー信号に基づいて対物レンズ駆動部51を駆動して第2の対物レンズ34をトラッキング方向に移動させてトラッキング制御を行う。そして、システムコントローラ7より記録再生動作が終了であると判断された場合にはステップS17に進む。
【0138】
ステップS17において、レーザ制御部21は、第1又は第2の光源31、32から光ビームの出射を停止させ、サーボ制御部9は、スピンドルモータ4の駆動を停止させる。
【0139】
以上のような図20に示した処理によれば、光ディスクの種類に応じて、用いる対物レンズ毎にそれぞれの最適なコマ収差で記録再生を行うことができ、良好な記録再生特性を実現する。
【0140】
すなわち、ステップS12〜ステップS16を備える光ピックアップ制御方法は、第1の対物レンズを用いる場合と第2の対物レンズを用いる場合とで、対物レンズ駆動部51のチルト補正機構を使用するかしないかを決定している点に特徴を有する。すなわち、光ピックアップ3は、第1の光ディスクに対して記録又は再生が行われる場合には、図7に示すように、チルト補正機構を使用しない状態で第1の光ディスクに対して情報信号の記録又は再生を行う。一方、この光ピックアップ3は、第2、第3の光ディスクに対して記録又は再生が行われる場合には、図8に示すように、チルト補正機構を使用して第2、第3の光ディスクに対して情報信号の記録又は再生を行う。
【0141】
以上のような光ピックアップ制御方法は、高密度記録用の対物レンズとしてプラスチック製のレンズを用いた光ピックアップ3により環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。
【0142】
以上のように本発明を適用した光ピックアップ3は、対物レンズをプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。すなわち、光ピックアップ3は、量産性や軽量化を実現させるとともに、良好な記録再生特性を実現する。
【0143】
尚、上述では、2つの対物レンズを有する光ピックアップ3について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、1つの対物レンズのみを有する光ピックアップにも適用可能なものである。
【0144】
〔10.光ピックアップの他の例について(第2の実施の形態)〕
次に、本発明が適用された光ピックアップの他の例として1つの対物レンズのみを有する光ピックアップ80について図21を用いて説明する。尚、対物レンズの数が異なることを除いて、上述した光ピックアップ3と同様であるので、共通する部分には同一の符号を付すとともに詳細は省略する。
【0145】
光ピックアップ80は、第1の光源31と、第2の光源32と、第1及び第2の光源31,32から出射された光ビームの光路を合成する光路合成素子としてのビームスプリッタ81とを備える。また、光ピックアップ80は、上述した第1の対物レンズ33及び第1のコリメータレンズ36に換えて、これらと同様の機能を3波長共通に有するように構成された対物レンズ82及びコリメータレンズ83を備える。また、光ピックアップ80は、上述した偏光ビームスプリッタ38、マルチレンズ40及び光検出器39に換えて、これらと同様の機能を3波長共通に有するよう構成されたビームスプリッタ84、マルチレンズ85及び光検出器86を備える。
【0146】
コリメータレンズ83には、第1のコリメータレンズ36と同様に、光軸方向に駆動させるコリメータ駆動部48が設けられている。コリメータレンズ83及びコリメータレンズ駆動部48は、温度変化やカバー層厚さ変化やディスク種類に応じて発生する球面収差を低減でき、適切なビームスポットを形成する。
【0147】
対物レンズ82は、異なる3波長の光ビームをそれぞれカバー層厚さが異なる第1乃至第3の光ディスクの信号記録面に集光する対物レンズである。対物レンズ82は、例えば、図22に示すように、屈折機能を有する第1の素子82Aと、回折機能を有する第2の素子82Bとからなり、かかる第1及び第2の素子82A,82Bがホルダ82Cにより一体化されることにより3波長互換機能を有している。対物レンズ82は、例えば、第2の素子82Bに設けられた回折部82B1,82B2が、第1の波長LB1に対しては回折作用を施さず、第1の素子82Aの屈折機能により第1の波長の光ビームを第1の光ディスクの信号記録面11sに適切に集光させる。そして対物レンズ82は、例えば第2の素子82Bの入射面側に設けられた回折部82B1が、第2の波長LB2に対しては所定の回折作用を発揮する。対物レンズ82は、これと第1の素子82Aの屈折作用により第2の波長の光ビームを第2の光ディスクの信号記録面12sに適切に集光させる。また対物レンズ82は、例えば第2の素子82Bの出射面側に設けられた回折部82B2が、第3の波長に対しては所定の回折作用を発揮する。対物レンズ82は、これと第1の素子82Aの屈折作用により第3の波長の光ビームLB3を、第3の光ディスクの信号記録面13sに適切に集光させる。尚、第2の素子82Bによる回折作用は、これに限られるものではなく、第1の波長に対しても所定の回折作用を施すように構成しても良い。また、第2の素子82Bに設けられる回折部は、例えば、複数の領域内のそれぞれに輪帯状の回折構造が形成され、かかる領域毎に、各波長の光ビームに所定の回折作用を発揮させる構成としてもよい。かかる対物レンズは、第2の素子82Bの回折機能と、第1の素子82Aの屈折機能とにより、3波長互換を実現する。尚、3波長互換を有する対物レンズは、かかる2群構成のものに限られるものではなく、例えば、上述のような回折機能を有する回折部が屈折機能を有する非球面形状とされたレンズ形状の表面に重畳して設けられるように構成しても良い。
【0148】
対物レンズ82は、プラスチック製であり、上述した第1の対物レンズ33と同様に、対物レンズ駆動部51により移動自在に保持されている。対物レンズ82は、光検出器86で検出された光ディスク2からの戻り光により生成されたトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号に基づいて、対物レンズ駆動部51により変位される。対物レンズ82は、第1乃至第3の発光部からの光ビームが対応する光ディスクの記録面上に形成された記録トラックに追従させる。光ピックアップ80に設けられる対物レンズ駆動部51は、第1の光ディスクへの記録及び再生時には、対物レンズ82のチルト方向への傾斜は行わない。換言すると、第1の光ディスクへの記録及び再生時には、チルト補正機構は使用されず、対物レンズ及びその周辺の温度環境が変化してもその状態を維持する。
【0149】
その一方で、対物レンズ駆動部51は、第2及び第3の光ディスクへの記録及び再生時には、上述した第2の対物レンズ34と同様に、チルト補正機構としての機能を発揮させる。すなわち、対物レンズ駆動部51は、第2及び第3の波長の光ビームが入射される場合、コマ収差が最も低減されるように予め決められた所定の最適角度θAだけ、図23(c)に示すように、当該チルト方向に対物レンズ82を傾斜させる。換言すると、第2、第3の光ディスクへの記録及び再生時には、チルト補正機構は使用され、これにより最適な記録環境及び再生環境を得ることができる。尚、第2、第3の光ディスクを用いる場合のチルト駆動は、静的でもよく、動的でもよい。
【0150】
このように第2及び第3の波長を用いる場合にチルト方向に傾斜可能とされた対物レンズ82は、複数波長に互換性を有する互換対物レンズを設ける構成において、次の効果を奏する。かかる構成は、図23(b)に示すように第1の波長を用いる場合の対物レンズ82を最適な状態に取り付けることを可能とする。すなわち、互換対物レンズにおいては、各波長毎にコマ収差に対する最適な取付角度が異なる場合がありうる。また、第1乃至第3の波長の光ビームが通過する光学部品の製造誤差や配置誤差等により各波長の光ビームに発生するコマ収差も異なる場合がある。そして、かかる互換対物レンズをプラスチック製とする場合には、レンズチルトコマ収差感度の温度特性を考慮すると、高密度記録に対応した第1の波長を用いる場合の取付角度を最優先する必要がある。よって、図23(b)を用いて後述するように第1の波長に対する初期コマ収差が低減できるように光ピックアップ80自体をスキュー調整する。かかる構成により、このままの対物レンズ82を用いると、第2及び第3の波長に対しては、コマ収差が発生することになる場合がある。これに対し、第2及び第3の波長を用いる場合にチルト方向に傾斜可能とされた対物レンズ82は、第2及び第3の波長を用いる場合にも最適な状態で記録・再生を行うことを可能とする。
【0151】
また、対物レンズ82は、図6(a)で説明したのと同様に、導光光学系と光軸が一致するように取り付けられている。すなわち、対物レンズ82は、図23(a)に示すように、導光光学系87により導かれた第1の波長の光ビームの光軸L87と、対物レンズ82の光軸L82とが略一致するように取り付けられている。ここで、導光光学系87とは、対物レンズ駆動部51に可動自在に取り付けられる対物レンズ82以外の光学部品を意味する。尚、この対物レンズ82は、第1の波長に対しては、上述した第1の対物レンズ33と略同じ特性を有しており、すなわち、上述した条件下における第1の波長に対するレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]とされている。
【0152】
以上のように構成された光ピックアップ80は、装着された光ディスクの種類に応じて、第1及び第2の光源31,32に設けられた出射部から第1乃至第3の波長の光ビームのうち光ディスクの種類に対応した波長の光ビームを出射させる。そして、光ピックアップ80は、光検出器86により検出された戻り光により生成されたフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号に基づいて、対物レンズ82を駆動変位する。光ピックアップ80は、上述と同様に、対物レンズ82がサーボ信号により駆動変位されることにより、光ディスク2の記録トラック上に合焦されて、情報信号の記録又は再生を行う。
【0153】
この光ピックアップ80を構成する対物レンズ82の第1の光ディスク及び第1の波長に対するレンズチルトコマ収差感度の温度特性については、上述の〔3.〕で説明した第1の対物レンズ33と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0154】
次に、かかる光ピックアップ80における初期コマ収差の補正、光ピックアップの相対角度調整、光ピックアップの作用・効果について説明するが、基本的には上述した〔4.〕〜〔6.〕の内容と略同様である。以下では、特徴的な部分についてのみ説明する。
【0155】
この光ピックアップ80において、第1の波長に対する初期コマ収差の補正は、光ディスク装置1を構成するに際し、光ディスク2と光ピックアップ80との相対的な傾きを調整することによって行われる。すなわち、図7で説明したのと同様に、図23(b)に示すように光ピックアップ80自体のスキュー調整を行うことにより初期コマ収差を抑えるものである。尚、このとき、対物レンズ82は、2波長又は3波長に共通であるので、あくまで高密度記録光ディスクである第1の光ディスクに対応した第1の波長に対する初期コマ収差を抑えるように当該スキュー調整が行われる。
【0156】
本発明を適用した光ピックアップ80は、例えばBD等の高密度記録に対応するとともにプラスチック製の対物レンズ82と導光光学系87の光軸を一致させた状態でレンズホルダ52に取り付けられている点に特徴を有する。また、光ピックアップ80は、ディスク取付基準面67aとの関係で、第1の波長に対する対物レンズ82の初期コマ収差を補正するように傾斜調整される点に特徴を有する。このように、光ピックアップ80は、対物レンズ82のレンズチルトコマ収差感度の温度特性に鑑みて構成されている。光ピックアップ80は、かかる構成により、環境温度変化があったときにも短波長である第1の波長の光ビームを用いる際のコマ収差の変動を低減し、すなわち、コマ収差を低減した状態で記録再生を行うことを可能とする。よって、光ピックアップ80は、高密度記録光ディスクに対応する対物レンズ82をプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させる。それとともに、光ピックアップ80は、レンズチルトコマ収差感度の変動を考慮した構成とすることにより、環境温度変化があったときにも良好な記録再生特性を実現する。
【0157】
また、この光ピックアップ80において、対物レンズのコマ収差の方向と取付方向については、対物レンズが一つであることを除き、〔7.〕で説明したのと同様である。また、この光ピックアップ80の製造方法についても、対物レンズが一つであることを除き、〔8.〕で説明したのと略同様である。尚、ステップS4においては、第1及び第2の対物レンズ33,34を用いた場合の最適角度を算出するのに換えて、第1及び第2の波長を用いる場合の最適角度を算出することとなる。そしてステップS5においては、第1の波長を用いる場合の最適角度となるように光ピックアップ80を調整して光ディスク装置1に取付固定される。またステップS6においては、第2の波長を用いる場合の最適チルト角度を算出して内部メモリ26に記憶させる。
【0158】
かかる光ピックアップ製造方法は、高密度記録用をも兼用した互換対物レンズとしてプラスチック製のレンズを用いる場合の温度変化時のコマ収差の変動を低減するという効果を有する光ピックアップ80を製造することができる。
【0159】
また、この光ピックアップ80の制御方法についても、対物レンズが一つであることを除き、〔9.〕で説明したのと略同様である。尚、ステップS14においては、光ピックアップ80は、チルト補正機構を使用しない状態で第1の光ディスクに対して第1の波長の光ビームを照射して情報信号の記録再生を行う。すなわち、対物レンズ82をチルト方向に傾斜させない。そして、ステップS16において、光ピックアップ80は、チルト補正機構としての対物レンズ駆動部51を使用して第2の光ディスクに対して第2の波長の光ビームを照射して情報信号の記録再生を行う。すなわち、図23(c)に示すように対物レンズ82をチルト方向に傾斜させる。
【0160】
かかる光ピックアップ制御方法は、高密度記録用をも兼用した互換対物レンズとしてプラスチック製のレンズを用いた光ピックアップ80により環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。
【0161】
以上のように、本発明を適用した光ピックアップ80は、対物レンズ82をプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。すなわち、光ピックアップ80は、量産性や軽量化を実現させるとともに、良好な記録再生特性を実現する。さらに、光ピックアップ80は,光学系や光学部品を共通化することにより小型化を実現する。
【0162】
尚、上述の光ピックアップ3,80では、第2、第3の光ディスクの記録再生時にチルト補正機構としての対物レンズ駆動部51により対物レンズを傾斜することでコマ収差を低減するようにしたが、これに限られるものではない。すなわち、上述のチルト補正機構としての対物レンズ駆動部51は、対物レンズを傾斜させることで対物レンズにより集光する光ビームにコマ収差を発生させ信号記録面上のコマ収差を調整する機能を有していた。換言すると、光ピックアップ3、80は、対物レンズにより集光される光ビームのコマ収差を調整するコマ収差調整部としての対物レンズ駆動部51を備えるものであったが、かかる光ピックアップに設けられるコマ収差調整部はこれに限られるものではない。すなわち、本発明は、コマ収差調整部としての液晶素子を有する光ピックアップにも適用可能なものである。
【0163】
〔11.光ピックアップの更に他の例について(第3の実施の形態)〕
次に、本発明が適用された光ピックアップの更に他の例としてコマ収差調整部としての液晶素子を有する光ピックアップ90について図24を用いて説明する。尚、液晶素子が設けられていることと、対物レンズ駆動部51が所謂2軸アクチュエータであることを除いて光ピックアップ3と同様であるので、共通する部分には同一の符号を付すとともに詳細は説明する。
【0164】
光ピックアップ90は、図24に示すように、第1及び第2の光源31,32と、第1及び第2の対物レンズ33,34とを有する。また、光ピックアップ90は、上述した光ピックアップ3と同様に、レンズホルダ52,支持体53、サスペンション54等からなる対物レンズ駆動部51を有する。ただし、かかる光ピックアップ90に用いられる対物レンズ駆動部51は、トラッキング及びフォーカス方向にのみ対物レンズを駆動可能な所謂2軸アクチュエータであるものとして説明する。
【0165】
また、光ピックアップ90は、第1の導光光学系28として、第1のグレーティング35、第1のコリメータレンズ36、第1の立ち上げミラー41、1/4波長板49、偏光ビームスプリッタ38、第1の光検出器39、マルチレンズ40を備える。
【0166】
また、光ピックアップ90は、第2の導光光学系91として、第2のグレーティング43、第2のコリメータレンズ44、折り曲げミラー45、第2の立ち上げミラー42、ビームスプリッタ46、第2の光検出器47を備える。さらに、光ピックアップ90は、第2の導光光学系91として、第2のコリメータレンズ44及び折り曲げミラー45の間に液晶素子92が設けられている。液晶素子92は、コマ収差を発生可能な電極パターンを有した一対の電極と、一対の電極間に配向膜を介して挟まれた液晶分子等を有している。かかる液晶素子92は、所定の電位が印加されることで通過する光ビームに所定の強さのコマ収差を発生させ、光ディスク上のコマ収差を調整することができる。換言すると、液晶素子92は、上述した図7に示すように光ピックアップ自体を相対的にスキュー調整させることにより発生するコマ収差を相殺するコマ収差を発生させることで、コマ収差を低減できる。尚、この相殺されるコマ収差には、第2の導光光学系91や第2の対物レンズ34の製造誤差や配置誤差に起因するコマ収差も含めることができる。
【0167】
液晶素子92を有する光ピックアップ90は、上述の光ピックアップ3が図8に示すようにチルト方向に第2の対物レンズ34を傾斜するのに換えて、第2、第3の光ディスクに照射する光ビームに所定のコマ収差を付与する。このコマ収差量は、上述した光ピックアップ3における適切なチルト角θAだけ第2の対物レンズ34を傾斜させた時に発生するコマ収差量と同一量である。これにより、光ピックアップ90は、第2及び第3の光ディスクの記録再生時には、液晶素子92を使用することで最適な状態で記録・再生を可能とする。
【0168】
以上のように構成された光ピックアップ90は、装着された光ディスクの種類に応じて、第1及び第2の光源31,32に設けられた出射部から第1乃至第3の波長の光ビームのうち光ディスクの種類に対応した波長の光ビームを出射させる。そして、光ピックアップ90は、第1及び第2の光検出器39,47により検出された戻り光により生成されたフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号に基づいて、第1又は第2の対物レンズ33,34を駆動変位する。これにより、光ピックアップ90は、上述と同様に各対物レンズがサーボ信号により駆動変位されることにより、光ディスク2に対して情報信号の記録又は再生を行う。
【0169】
かかる光ピックアップ90における、レンズチルトコマ収差感度の温度特性、初期コマ収差の補正、光ピックアップの相対角度調整、光ピックアップの作用・効果については、上述した〔3.〕〜〔6.〕で説明したのと同様であるので、詳細な説明は省略する。そして、本発明を適用した光ピックアップ90は、例えばBD等の高密度記録に対応するとともにプラスチック製の第1の対物レンズ33と第1の導光光学系28の光軸を一致させた状態でレンズホルダ52に取り付けられている点に特徴を有する。また、光ピックアップ90は、ディスク取付基準面67aとの関係で、第1の対物レンズ33の初期コマ収差を補正するように傾斜調整される点に特徴を有する。このように、光ピックアップ90は、第1の対物レンズ33のレンズチルトコマ収差感度の温度特性に鑑みて構成されている。光ピックアップ90は、かかる構成により、環境温度変化があったときにもコマ収差の変動を低減し、すなわちコマ収差を低減した状態で記録再生を行うことを可能とする。よって、光ピックアップ90は、第1の対物レンズ33をプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、レンズチルトコマ収差感度の変動を考慮した構成とすることにより、環境温度変化があったときにも良好な記録再生特性を実現する。
【0170】
また、光ピックアップ90は、第1の光ディスク再生時には、環境温度が変化してもコマ収差発生部としての液晶素子92を使用せず、第2、第3の光ディスク再生時等には、最適な再生環境を得るために液晶素子92を駆動してコマ収差を発生させる。これにより、光ピックアップ90は、第2、第3の光ディスクに対してもコマ収差を低減した状態で記録再生を行うことを可能とする。さらに、光ピックアップ90は、液晶素子92を設けることにより、対物レンズ駆動部51を3軸ではなく2軸アクチュエータで構成することができ、これにより装置の簡素化及び小型化を実現する。
【0171】
また、この光ピックアップ90において、対物レンズのコマ収差の方向と取付方向については、〔7.〕で説明したのと同様である。また、この光ピックアップ90の製造方法についても、チルト補正機構に換えて液晶素子を設けたことを除いて〔8.〕で説明したのと略同様である。尚、ステップS6においては、第2の対物レンズ34を用いる場合の最適チルト角度を算出するのに換えて、第2の対物レンズ34を用いる場合に液晶素子92で発生させるコマ収差量を算出する。かかるコマ収差量は、図8に示す最適のチルト角θAにより発生するコマ収差量と同一量である。そして、かかるステップS6において、算出したコマ収差量をメモリ26等の記憶部に記憶することとなる。かかる光ピックアップ製造方法は、上述したような高密度記録光ディスク用の対物レンズとしてプラスチック製のものを用いる場合の温度変化時のコマ収差の変動を低減するという効果を有する光ピックアップ90を製造することができる。また、この光ピックアップ90の制御方法についても、チルト補正機構に換えて液晶素子を設けたことを除き、〔9.〕で説明したのと略同様である。尚、ステップS14においては、光ピックアップ90は、コマ収差発生部としての液晶素子92を使用しない状態で第1の光ディスクに対して第1の波長の光ビームを照射して情報信号の記録再生を行う。そして、ステップS16において、光ピックアップ90は、コマ収差発生部としての液晶素子90を使用してコマ収差を低減した状態で第2の光ディスクに対して第2の波長の光ビームを照射して情報信号の記録再生を行う。かかる光ピックアップ制御方法は、高密度記録用の対物レンズとしてプラスチック製のレンズを用いた光ピックアップ90により環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。
【0172】
以上のように、本発明を適用した光ピックアップ90は、対物レンズをプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。すなわち、光ピックアップ90は、量産性や軽量化を実現させるとともに、良好な記録再生特性を実現する。さらに、光ピックアップ90は,対物レンズ駆動部51を2軸アクチュエータで構成できるので3軸アクチュエータとする場合に比べて構成の簡素化及び小型化を実現する。
【0173】
尚、ここでは光ピックアップ3に対する変形例としてコマ収差発生部としての液晶素子92を設ける光ピックアップ90について説明したが、光ピックアップ80の変形例として液晶素子を設けてもよい。かかる場合には、例えば、コリメータレンズ83と立ち上げミラー41との間の上述の液晶素子92を設け、対物レンズ駆動部51を2軸アクチュエータとして構成すればよい。かかる光ピックアップは、上述した光ピックアップ80,90の両方の効果を奏することとなる。
【0174】
〔12.光ディスク装置の効果〕
また、本発明を適用した光ディスク装置1は、回転駆動される光ディスク2に対して光ビームを照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップを備えるものであり、この光ピックアップとして上述の光ピックアップ3等を用いている。よって、光ディスク装置1は、量産性や軽量化を実現させるとともに、温度変化時のコマ収差の低減を実現して良好な記録再生特性を実現する。
【符号の説明】
【0175】
1 光ディスク装置、 2 光ディスク、 3 光ピックアップ、 4 スピンドルモータ、 5 送りモータ、 7 システムコントローラ、 9 サーボ制御部、 11 第1の光ディスク、 12 第2の光ディスク、 13 第3の光ディスク、 14 プリアンプ、 15 信号変復調器&ECCブロック、 16 インターフェース、 17 外部コンピュータ、 18 D/A,A/D変換器、 19 オーディオ・ビジュアル処理部、 20 オーディオ・ビジュアル信号入出力部、 21 レーザ制御部、 22 ディスク種類判別部、 26 メモリ、 27 制御部、 28 第1の導光光学系、 29 第2の導光光学系、 31 第1の光源、 32 第2の光源、 33 第1の対物レンズ、 34 第2の対物レンズ、 35 第1のグレーティング、 36 第1のコリメータレンズ、 38 偏光ビームスプリッタ、 39 第1の光検出器、 40 マルチレンズ、 41 第1の立ち上げミラー、 42 第2の立ち上げミラー、 43 第2のグレーティング、 44 第2のコリメータレンズ、 45 折り曲げミラー、 46 ビームスプリッタ、 47 第2の光検出器、 48 コリメータレンズ駆動部、 50 ピックアップベース、 51 対物レンズ駆動部、 52 レンズホルダ、 53 支持体、 54 サスペンション、 62 主軸、 63 副軸、 64 スキュー調整機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の光記録媒体に対して、情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ、この光ピックアップを用いた光ディスク装置、光ピックアップ製造方法及び光ピックアップ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、情報信号の記録媒体として、波長785nm程度の光ビームを用いるCD(Compact Disc)がある。また、光ディスクには、CDより高密度記録を実現した波長660nm程度の波長の光ビームを用いるDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクがある。さらに、光ディスクには、DVDより高密度記録が実現された青紫色半導体レーザによる波長405nm程度の光ビームを用いて信号の記録再生を行う高密度記録が可能な光ディスク(以下、「高密度記録光ディスク」という。)がある。この高密度記録光ディスクとして、例えばBD(Blu-ray Disc(登録商標))のような、信号を記録する記録層を保護する保護層(カバー層)の厚さを薄くした構造のものが提案されている。
【0003】
上述のBD等の光ディスクに情報信号の記録を行い、あるいは光ディスクに記録された情報信号の再生を行うための光ピックアップに用いられる対物レンズとして、プラスチック製の対物レンズを用いることが検討されている。これは、プラスチック製の対物レンズは、ガラス製の対物レンズに比べて、量産性向上や軽量化に対して有利であるからである。
【0004】
プラスチック製対物レンズは、その材料特性上、熱による屈折率変化が大きく、使用される環境下によっては、不要な収差が多く発生する。特に、プラスチック製対物レンズにおいて、環境温度変化による球面収差の変化は従来のガラス製の対物レンズに比べ変化が大きく、そのままでは読み取り性能の悪化に繋がってしまう。
【0005】
このため、プラスチック製対物レンズを使用する際には、一般的にコリメータレンズを光軸方向に移動させることで倍率球面収差を発生させ、温度変化により発生する球面収差を補正する手法が用いられている。
【0006】
しかし、かかるコリメータレンズ駆動による球面収差補正を行う場合に、倍率変化による副作用としてレンズチルトによるコマ収差感度(以下、「レンズチルトコマ収差感度」という。)が大きく変化するという問題があった。
【0007】
その一方で、従来の光ピックアップにおいて、対物レンズやそれ以外の光学部品自体が有するコマ収差、及びこれらの組み立て精度によって発生するコマ収差を、対物レンズの傾きを静的又は動的に調整することで補正する手法が採用されていた。具体的には、対物レンズを保持するアクチュエータのチルト方向の傾きを静的又は動的に調整するといったことでかかる初期コマ収差等の補正が行われていた。
【0008】
プラスチック製対物レンズは、使用環境温度範囲において、その構成材料や形状により、上述の様にレンズチルトコマ収差感度が大きく変動し、条件によっては0から常温時の2倍程度まで変動する場合がある。そして、高低温環境下において、アクチュエータ駆動による傾き調整によるコマ収差補正が困難になるという問題や、これに伴いディスク読み取り性能が悪化するおそれがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−112575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、光ピックアップを構成する対物レンズをプラスチック製とすることによる量産性や軽量化を向上させるとともに、環境温度が変化した場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する光ピックアップ、光ディスク装置、光ピックアップ製造方法及び光ピックアップ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明に係る光ピックアップは、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記第1の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記第1の対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記第1の対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記第1の対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、当該光ピックアップは、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜され、上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する。
【0012】
また、本発明に係る光ディスク装置は、回転駆動される光ディスクに対して光ビームを照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップを備え、上記光ピックアップは、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記第1及び第2の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記第1の対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記第1の対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、上記光ピックアップ及び上記光ディスクを装着するディスク装着部は、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップと上記ディスク装着部に装着される光ディスクとが相対的に傾斜するように、少なくともいずれか一方が傾斜され、上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する。
【0013】
また、本発明に係る光ピックアップ製造方法は、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記第1の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記第1の対物レンズは、プラスチック製である光ピックアップを製造するに際し、光ビームを上記第1の対物レンズに導く導光光学系をベース部材に取り付ける導光光学系取付ステップと、上記導光光学系により上記第1の対物レンズに導かれる光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように、上記第1の対物レンズを上記レンズホルダに固定する対物レンズ調整ステップと、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップを上記光ディスクに対して相対的に傾斜するように、調整する光ピックアップ取付角度調整ステップと、上記光ピックアップが上記ピックアップ取付角度調整ステップで傾斜された状態で、上記第2の対物レンズによる上記第2の光ディスクに対する初期コマ収差を上記コマ収差発生部を用いて最適に補正するようなコマ収差補正量を算出し記憶部に記憶させる最適状態記憶ステップとを有する。
【0014】
さらに、本発明に係る光ピックアップ制御方法は、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記第1の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記第1の対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記第1、第2の対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、当該光ピックアップは、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜される光ピックアップを制御するに際し、装着された光ディスクの種類を判別する光ディスク判別ステップと、上記光ディスク判別ステップにより第1の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用しない状態で上記第1の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第1の光ディスク再生ステップと、上記光ディスク判別ステップにより第2の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用して上記第2の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第2の光ディスク再生ステップとを有する。
【0015】
また、本発明に係る光ピックアップは、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、当該光ピックアップは、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜され、上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する。
【0016】
また、本発明に係る光ディスク装置は、回転駆動される光ディスクに対して光ビームを照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップを備え、上記光ピックアップは、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、上記光ピックアップ及び上記光ディスクを装着するディスク装着部は、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップと上記ディスク装着部に装着される光ディスクとが相対的に傾斜するように、少なくともいずれか一方が傾斜され、上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する。
【0017】
また、本発明に係る光ピックアップ製造方法は、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記対物レンズは、プラスチック製である光ピックアップを製造するに際し、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系をベース部材に取り付ける導光光学系取付ステップと、上記導光光学系により上記対物レンズに導かれる光ビームの光軸と、上記対物レンズとが略一致するように、上記対物レンズを上記レンズホルダに固定する対物レンズ調整ステップと、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップを上記光ディスクに対して相対的に傾斜するように、調整する光ピックアップ取付角度調整ステップと、上記光ピックアップが上記ピックアップ取付角度調整ステップで傾斜された状態で、上記対物レンズによる上記第2の光ディスクに対する初期コマ収差を上記コマ収差発生部を用いて最適に補正するようなコマ収差補正量を算出し記憶部に記憶させる最適状態記憶ステップとを有する。
【0018】
また、本発明に係る光ピックアップ制御方法は、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、上記対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、当該光ピックアップは、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜される光ピックアップを制御するに際し、装着された光ディスクの種類を判別する光ディスク判別ステップと、上記光ディスク判別ステップにより第1の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用しない状態で上記第1の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第1の光ディスク再生ステップと、上記光ディスク判別ステップにより第2の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用して上記第2の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第2の光ディスク再生ステップとを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、対物レンズをプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。すなわち、本発明は、量産性や軽量化を実現させるとともに、良好な記録再生特性を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した光ディスク装置を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した光ピックアップの斜視図である。
【図3】本発明を適用した光ピックアップを構成する対物レンズを保持するレンズホルダと、これを支持する支持体とを示す平面図である。
【図4】本発明を適用した光ピックアップを構成する光学系を示す平面図である。
【図5】本発明を適用した光ピックアップを構成する第1の光学系の一部を模式的に示すための図であり、光ピックアップの断面図である。
【図6】本発明を適用した光ピックアップを構成する第1の対物レンズ及び第1の導光光学系との関係を説明するための図である。(a)は、当該第1の対物レンズの光軸と第1の導光光学系の光軸とが一致するように配置されていることを示す図である。(b)は、本発明の適用例と比較するための比較例における対物レンズの光軸と導光光学系の光軸とが傾斜して配置されていることを示す図である。
【図7】本発明を適用した光ピックアップが、光ディスクに対して相対的な角度が調整されていることを示す図である。
【図8】本発明を適用した光ピックアップが、図6(a)及び図7に示す構成とされた場合において、第2の対物レンズを使用する場合に、対物レンズ駆動部により第2の対物レンズをチルト方向に駆動することを示す図である。
【図9】本発明を適用した光ピックアップを構成する第1及び第2の対物レンズが、レンズホルダに組み付けられる際に、コマ収差の方向をラジアル方向に向けて配置されていることを示す平面図である。
【図10】レンズチルトコマ収差感度が環境温度変化により変化することを示す図であり、常温及び高低温環境におけるレンズチルト量に対する発生するコマ収差量の関係を示す図である。
【図11】光ピックアップと光ディスクとの相対的な傾斜角度が変化することによりコマ収差量が変化することを示す図であり、ディスクチルト量に対する発生するコマ収差量の関係を示す図である。
【図12】本発明を適用した光ピックアップのスキュー調整を行うスキュー調整機構を説明するための光ディスク装置の斜視図である。
【図13】本発明を適用した光ピックアップと、図6(b)に示すように調整された従来の光ピックアップとの温度変化に対するコマ収差変動量を比較するための図で、温度変化に対する最適ディスクチルト量変化を示す図である。
【図14】光ピックアップを構成する第1及び第2の対物レンズの光ビーム通過領域内で発生する温度勾配について説明するための図である。(a)は、対物レンズ及びレンズホルダ部分の温度分布を示す斜視図である。(b)は、対物レンズ及びレンズホルダ部分の温度分布を示す平面図である。(c)は、レンズホルダ部分の断面位置における温度変化を示す図であり、横軸は第1及び第2の対物レンズの光軸を通る直線上のラジアル方向の位置、縦軸は、温度を示す。
【図15】コイル電流量とコマ収差の関係を説明するための図である。(a)は、コイル電流量とその頻度を示す。(b)は、コイル電流量とコマ収差の関係を示す。(c)は、コマ収差とその頻度を示す。
【図16】本発明を適用した光ピックアップにおいて各対物レンズの取付方向について説明するための図である。(a)は、各対物レンズに発生する様々なコマ収差の向きを半径方向に向けて取り付けられていることを示す図である。(b)は、光ピックアップ及び光ディスクの相対角度調整により、第1の光ディスクの電流コマ収差及び第3の光ディスクの軸外コマ収差が低減されることを示す図である。
【図17】本発明を適用した光ピックアップの第1及び第2の対物レンズを用いた場合のそれぞれにコマ収差を低減した最適相対角を算出するための手法を説明するための図である。(a)は、(b)に示す計測器で得られる分布を示し、(b)は、干渉計又は波面センサからなる計測器を示し、(c)は、(d)に示す計測器で得られる分布を示し、(d)は、スポット観察を行う計測器を示す。
【図18】本発明を適用した光ピックアップの第1及び第2の対物レンズを用いた場合のそれぞれにコマ収差を低減した最適相対角を算出する他の手法を説明するための図である。そして、光ディスク及び光ピックアップの相対角度を変化させた場合のジッター、RF振幅、TE振幅、エラーレートの変化を示す図である。
【図19】本発明を適用した光ピックアップの製造方法を示す工程図である。
【図20】本発明を適用した光ピックアップの制御方法を説明するための記録再生方法のフローチャートである。
【図21】本発明を適用した光ピックアップの他の例の光学系を示す平面図である。
【図22】図21に示す光ピックアップを構成する対物レンズの一例を示す断面図である。
【図23】図21に示す光ピックアップを構成する対物レンズと導光光学系との関係を説明するための図である。(a)は、当該対物レンズの光軸と、導光光学系の光軸とが一致するように配置されていることを示す図である。(b)は、当該光ピックアップが、光ディスクに対して相対的な角度が調整されていることを示す図である。(c)は、第1の波長に対して(a)及び(b)に示すよう構成された場合に、第2の波長等を使用する場合に、対物レンズ駆動部により対物レンズをチルト方向に駆動することを示す図である。
【図24】本発明を適用した光ピックアップの更に他の例の光学系を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明を実施するための最良の形態を以下の順で説明する。
1.光ディスク装置の全体構成
2.光ピックアップの全体構成(第1の実施の形態)
3.対物レンズのレンズチルトコマ収差感度の温度特性について
4.初期コマ収差の補正について
5.光ピックアップの光ディスクに対する相対角度調整
6.光ピックアップの作用・効果
7.対物レンズのコマ収差の方向と取付方向
8.光ピックアップの製造方法
9.光ピックアップの制御方法
10.光ピックアップの他の例について(第2の実施の形態)
11.光ピックアップの更に他の例について(第3の実施の形態)
12.光ディスク装置の効果
【0022】
〔1.光ディスク装置の全体構成〕
以下、本発明を適用した光ピックアップを用いた光ディスク装置について、図面を参照して説明する。
【0023】
本発明が適用された光ディスク装置1は、図1に示すように、光ディスク2から情報記録再生を行う光ピックアップ3と、光ディスク2を回転操作する駆動手段としてのスピンドルモータ4とを備える。また、光ディスク装置1は、光ピックアップ3を光ディスク2の径方向に移動させる送りモータ5を備えている。この光ディスク装置1は、フォーマットの異なる3種類の光ディスク及び記録層が積層化された光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行うことができる3規格間互換性を実現した光ディスク装置である。
【0024】
ここで用いられる光ディスク2は、例えば、発光波長が短い405nm程度(青紫色)の半導体レーザを光源に用いた高密度記録が可能なBD(Blu-ray Disc(登録商標))等の高密度記録型の第1の光ディスク11である。この第1の光ディスク11は、100μmm程度のカバー層(「保護層」ともいう。)を有し波長400〜410nm程度の第1の波長の光ビームがカバー層側から照射される。なお、この第1の光ディスクには、記録層が単層である光ディスク(カバー層厚さ:100μm)や、記録層が2層である所謂2層光ディスクがあるが、更に、多くの記録層を有していても良い。2層光ディスクの場合は、記録層L0のカバー層厚さが100μm程度とされ、記録層L1のカバー層厚さが75μm程度とされている。
【0025】
また、ここで用いられる光ディスク2は、例えば、発光波長を655nm程度の半導体レーザを光源に用いたDVD(Digital Versatile Disc)、DVD−R(Recordable)、DVD−RW(ReWritable)、DVD+RW(ReWritable)等の第2の光ディスク12である。第2の光ディスク12は、0.6mm程度のカバー層を有し、波長650〜660nm程度の第2の波長の光ビームがカバー層側から照射される。なお、この第2の光ディスク12においても、複数の記録層を設けても良い。
【0026】
更に、ここで用いられる光ディスク2は、例えば、発光波長が785nm程度の半導体レーザを光源に用いたCD(Compact Disc)、CD−R(Recordable)、CD−RW(ReWritable)等の第3の光ディスク13である。第3の光ディスク13は、1.2mm程度のカバー層を有し、波長760〜800nm程度の第3の波長の光ビームがカバー層側から照射される。
【0027】
なお、以下、特に第1乃至第3の光ディスク11,12,13を区別しないときは、単に光ディスク2ともいう。
【0028】
光ディスク装置1において、スピンドルモータ4及び送りモータ5は、ディスク種類判別手段ともなるシステムコントローラ7からの指令に基づいて制御されるサーボ制御部9によりディスク種類に応じて駆動制御されている。スピンドルモータ4及び送りモータ5は、例えば、第1の光ディスク11、第2の光ディスク12、第3の光ディスク13に応じて所定の回転数で駆動される。
【0029】
光ピックアップ3は、3波長互換光学系を有する光ピックアップであり、規格の異なる光ディスクの記録層に対して異なる波長の光ビームを保護層側から照射するとともに、この光ビームの記録層における反射光を検出する。光ピックアップ3は、検出した反射光から各光ビームに対応する信号を出力する。
【0030】
光ディスク装置1は、光ピックアップ3から出力された信号に基づいてフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、RF信号等を生成するプリアンプ14を備える。また、光ディスク装置1は、プリアンプ14からの信号を復調し又は外部コンピュータ17等からの信号を変調するための信号変復調器及びエラー訂正符号ブロック(以下、信号変復調器&ECCブロックと記す。)15を備える。また、光ディスク装置1は、インターフェース16と、D/A,A/D変換器18と、オーディオ・ビジュアル処理部19と、オーディオ・ビジュアル信号入出力部20とを備える。
【0031】
このプリアンプ14は、光検出器からの出力に基づいて、非点収差法等によってフォーカスエラー信号を生成し、また、3ビーム法、DPD法、DPP法等によってトラッキングエラー信号を生成する。また、プリアンプ14は、更にRF信号を生成し、RF信号を、信号変復調器&ECCブロック15に出力する。また、プリアンプ14は、フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号とをサーボ制御部9に出力する。
【0032】
信号変復調器&ECCブロック15は、第1の光ディスク11に対して、データの記録を行うとき、インターフェース16又はD/A,A/D変換器18から入力されたディジタル信号に対して、以下の処理を行う。すなわち、信号変復調器&ECCブロック15は、第1の光ディスク11に対してデータを記録するとき、入力されたディジタル信号に対して、LDC−ECC及びBIS等のエラー訂正方式によってエラー訂正処理を行う。信号変復調器&ECCブロック15は、次いで、1−7PP方式等の変調処理を行う。また、信号変復調器&ECCブロック15は、第2の光ディスク12に対してデータを記録するとき、PC(Product Code)等のエラー訂正方式に従ってエラー訂正処理を行い、次いで、8−16変調等の変調処理を行う。更に、信号変復調器&ECCブロック15は、第3の光ディスク13に対してデータを記録するとき、CIRC等のエラー訂正方式によってエラー訂正処理を行い、次いで、8−14変調処理等の変調処理を行う。そして、信号変復調器&ECCブロック15は、変調されたデータをレーザ制御部21に出力する。更に、信号変復調器&ECCブロック15は、各光ディスクの再生を行うとき、プリアンプ14から入力されたRF信号に基づいて、変調方式に応じた復調処理を行う。更に、信号変復調器&ECCブロック15は、エラー訂正処理を行って、インターフェース16又はデータをD/A,A/D変換器18に出力する。
【0033】
なお、データ圧縮してデータ記録するときには、圧縮伸長部を信号変復調器&ECCブロック15とインターフェース16又はD/A,A/D変換器18との間に設けても良い。この場合、データは、MPEG2やMPEG4といった方式でデータが圧縮される。
【0034】
サーボ制御部9は、プリアンプ14からフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号が入力される。サーボ制御部9は、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号が0となるようなフォーカスサーボ信号やトラッキングサーボ信号を生成し、これらのサーボ信号に基づいて、対物レンズを駆動する2軸アクチュエータ等の対物レンズ駆動部を駆動制御する。また、プリアンプ14からの出力より、同期信号等を検出して、CLV(Constant Linear Velocity)やCAV(Constant Angular Velocity)、更にはこれらの組み合わせの方式等で、スピンドルモータをサーボ制御する。
【0035】
レーザ制御部21は、光ピックアップ3のレーザ光源を制御する。特に、この具体例では、レーザ制御部21は、記録モード時と再生モード時とでレーザ光源の出力パワーを異ならせる制御を行っている。また、光ディスク2の種類に応じてもレーザ光源の出力パワーを異ならせる制御を行っている。レーザ制御部21は、ディスク種類判別部22によって検出された光ディスク2の種類に応じて光ピックアップ3のレーザ光源を切り換えている。
【0036】
ディスク種類判別部22は、第1〜第3の光ディスク11,12,13の間の表面反射率、形状的及び外形的な違い等から反射光量の変化を検出し光ディスク2の異なるフォーマットを検出することができる。
【0037】
光ディスク装置1を構成する各ブロックは、ディスク種類判別部22における検出結果に応じて、装着される光ディスク2の仕様に基づく信号処理ができるように構成されている。
【0038】
システムコントローラ7は、ディスク種類判別部22で判別された光ディスク2の種類に応じて装置全体を制御する。また、システムコントローラ7は、ユーザからの操作入力に応じて、光ディスク最内周にあるプリマスタードピットやグルーブ等に記録されたアドレス情報や目録情報(Table Of Contents;TOC)に基づいて、各部を制御する。すなわち、システムコントローラ7は、上述の情報に基づいて、記録再生を行う光ディスクの記録位置や再生位置を特定し、特定した位置に基づいて、各部を制御する。
【0039】
以上のように構成された光ディスク装置1は、スピンドルモータ4によって、光ディスク2を回転操作する。そして、光ディスク装置1は、サーボ制御部9からの制御信号に応じて送りモータ5を駆動制御し、光ピックアップ3を光ディスク2の所望の記録トラックに対応する位置に移動することで、光ディスク2に対して情報の記録再生を行う。
【0040】
具体的には、光ディスク装置1により記録再生するときには、サーボ制御部9は、CAVやCLVやこれらの組み合わせで光ディスク2を回転する。光ピックアップ3は、光源から光ビームを照射して光検出器により光ディスク2からの戻りの光ビームを検出し、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成する。また、光ピックアップ3は、これらフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号に基づいて対物レンズ駆動機構により対物レンズを駆動してフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行う。
【0041】
また、光ディスク装置1により記録する際には、外部コンピュータ17からの信号がインターフェース16を介して信号変復調器&ECCブロック15に入力される。信号変復調器&ECCブロック15は、インターフェース16又はA/D変換器18から入力されたディジタルデータに対して上述したような所定のエラー訂正符号を付加し、更に所定の変調処理を行った後に記録信号を生成する。レーザ制御部21は、信号変復調器&ECCブロック15で生成された記録信号に基づいて、光ピックアップ3のレーザ光源を制御して、所定の光ディスクに記録する。
【0042】
また、光ディスク2に記録された情報を光ディスク装置1により再生する際には、光検出器で検出された信号に対して、信号変復調器&ECCブロック15が復調処理を行う。信号変復調器&ECCブロック15により復調された記録信号がコンピュータのデータストレージ用であれば、インターフェース16を介して外部コンピュータ17に出力される。これにより、外部コンピュータ17は、光ディスク2に記録された信号に基づいて動作することができる。また、信号変復調器&ECCブロック15により復調された記録信号がオーディオビジュアル用であれば、D/A変換器18でデジタルアナログ変換され、オーディオ・ビジュアル処理部19に供給される。そしてオーディオ・ビジュアル処理部19でオーディオビジュアル処理が行われ、オーディオ・ビジュアル信号入出力部20を介して、図示しない外部のスピーカやモニターに出力される。
【0043】
〔2.光ピックアップの全体構成(第1の実施の形態)〕
次に、本発明が適用された光ピックアップ3について詳細に説明する。尚、以下では、光ピックアップ3を異なる3種類の光ディスク11,12,13に対して、情報信号の記録及び/又は再生を行うものとして説明するが、これに限られるものではない。例えば、異なる2種類の光ディスク11,12に対して記録・再生を行うものとしてもよい。
【0044】
本発明が適用された光ピックアップ3は、上述した異なる波長の複数種類の光ビームを出射する半導体レーザ等からなる第1及び第2の光源31,32を有する。また、光ピックアップ3は、光ディスク2の信号記録面から反射される反射光ビームを検出する光検出素子としてのフォトダイオードを有する。また、光ピックアップ3は、第1及び第2の光源31,32からの光ビームを光ディスク2に導くとともに、光ディスク2で反射した光ビームを光検出素子に導く光学系とを有している。
【0045】
ここで、第1の光源31は、第1の光ディスク11に対応すべく設計波長が405nm程度とする第1の波長の光ビームを出射させる発光部(出射部)を有している。第2の光源32は、第2の光ディスク12に対応すべく設計波長が655nm程度とする第2の波長の光ビームを出射させる発光部(出射部)を有する。また、この第2の光源32は、第3の光ディスク13に対応すべく設計波長が785nm程度とする第3の波長の光ビームを出射させる発光部(出射部)とを有している。尚、第2の光源32において、第2の波長用の発光部と、第3の波長用の発光部とは、後述の第2の対物レンズ34のコマ収差の方向に対応する方向に並べて配置されている。
【0046】
この光ピックアップ3は、図2に示すように、光ディスク装置1の筐体内で光ディスク2の半径方向R(以下、「ラジアル方向」ともいう。)に移動可能に設けられた各種構成部品の取り付け基台となるピックアップベース50上に設けられている。このピックアップベース50は、所謂スライドベースとして機能し、光ディスク装置1のシャーシに取り付けられたガイド軸としての主軸62及び副軸63が挿通され、主軸62及び副軸63に半径方向に移動自在に支持されている。尚、図2及び後述の図中矢印RIは、ラジアル方向のうち内周側に向けた方向を示し、矢印ROは、ラジアル方向のうち外周側に向けた方向を示すものである。
【0047】
また、光ピックアップ3は、図3に示すように光源から出射された光ビームを集光して光ディスクに照射する複数の対物レンズ33,34を保持するレンズホルダ52を有している。このレンズホルダ52は、アクチュエータ可動部として機能するものであり、アクチュエータ固定部として機能する支持体53に、支持アームとして機能する複数のサスペンション54を介して、トラッキング方向やフォーカス方向に変位可能に支持されている。ここで、支持体53は、レンズホルダ52からタンジェンシャル方向Tzに間隔をおいて配置され、ピックアップベース50上に取り付けられている。また、支持アームとしてのサスペンション54は、支持体53に対してレンズホルダ52をフォーカス方向F及びトラッキング方向Tに移動可能に支持する。
【0048】
このレンズホルダ52、支持体53及びサスペンション54は、後述の各コイル56,57a〜57d及びマグネット58とともに、対物レンズ駆動部51を構成する。かかる対物レンズ駆動部51は、対物レンズ33,34をフォーカス方向F及びトラッキング方向Tに駆動する。さらに、対物レンズ駆動部51は、第1及び第2の対物レンズ33,34を保持するレンズホルダ52をチルト方向Tirに駆動して傾斜させるチルト補正機構としても機能する。このように、対物レンズ駆動部51は、フォーカス方向、トラッキング方向及びチルト方向にレンズホルダ52及びこれに保持される対物レンズを駆動可能なものであり、所謂3軸アクチュエータである。
【0049】
また、この第1及び第2の対物レンズ33,34は、光ピックアップ3の光学系の一部を構成している。この第1の対物レンズ33は、開口数(NA)が0.85程度とされたプラスチック製の単玉対物レンズである。第2の対物レンズ34は、第2の波長に対し開口数(NA)が0.6〜0.65程度で、第3の波長に対し開口数(NA)が0.45〜0.53程度とされた、プラスチック製の単玉対物レンズである。第1及び第2の対物レンズ33,34は、プラスチック製であることにより、従来のガラス製に比べて量産性や軽量化を可能とする。以下で説明する光ピックアップ3の各構成は、BD等の高密度記録光ディスクに対応する第1の対物レンズ33をプラスチック製とする場合の問題点を克服するものである。よって、第2の対物レンズ34については、プラスチック製に限られるものでなく、例えばガラスにより形成されるように構成しても良い。
【0050】
尚、光ピックアップ3では、ラジアル方向R(トラッキング方向T)に並んで配置される複数の対物レンズ33,34を備えるように構成したが、対物レンズの数及び配置はこれに限られるものではない。例えば複数の対物レンズをタンジェンシャル方向Tzに配置するように構成してもよい。
【0051】
第1及び第2の光源31,32から出射された光ビームを光ディスク2に導く光学系としては、第1及び第2の光学系がある。第1の光学系は、第1の光源31から出射された第1の波長の光ビームを第1の対物レンズ33を介して第1の光ディスク11である光ディスク2に導くものである。かかる第1の光学系は、図4に示すように、第1の波長の光ビームを第1の対物レンズ33に導く第1の導光光学系28と、第1の対物レンズ33とから構成される。第2の光学系は、第2の光源32から出射された光ビームを第2の対物レンズ34を介して第2又は第3の光ディスク12,13である光ディスク2に導くものである。かかる第2の光学系は、図4に示すように、第2及び第3の波長の光ビームを第2の対物レンズ34に導く第2の導光光学系29と、第2の対物レンズ34とから構成される。
【0052】
まず、第1の光学系を構成する第1の導光光学系28について図4を用いて説明する。第1の導光光学系28は、第1の光源31から出射された第1の波長の光ビームを回折してトラッキングエラー信号等の検出のために少なくとも3ビームに分割する第1のグレーティング35を有する。また、第1の導光光学系28は、第1のグレーティング35で回折された光ビームの発散角を変換して略平行光等の所望の角度とする発散角変換素子として第1のコリメータレンズ36を有する。また、第1の導光光学系28は、第1のコリメータレンズ36で略平行光とされた光ビームを反射して第1の対物レンズ33及び光ディスク2側に導く第1の立ち上げミラー41を有する。また、第1の導光光学系28は、第1の立ち上げミラー41と第1の対物レンズ33との間に設けられ、入射した光ビームに1/4波長の位相差を与える1/4波長板49を備える(図5参照)。尚、図4は、各光学部品と対物レンズの位置関係を説明するための平面図であり、当該図の見易さを考慮して1/4波長板49が図4には図示されていないが、後述の図5のように配置されているものとして説明する。そして、第1の光学系を構成する第1の対物レンズ33は、第1の立ち上げミラー41により立ち上げられ1/4波長板49を通過した光ビームを光ディスクの信号記録面に集光する。また、第1の導光光学系28は、第1のグレーティング35と第1のコリメータレンズ36との間に設けられる偏光ビームスプリッタ38を有する。第1の導光光学系28の偏光ビームスプリッタ38は、第1の対物レンズ33により集光され光ディスクで反射された戻りの光ビームの光路を、第1の光源31から出射された往路の光ビームの光路から分離する機能を有する。また、第1の導光光学系28は、偏光ビームスプリッタ38で分離された戻りの光ビームを受光して検出する第1の光検出器39を有する。また、第1の導光光学系28は、偏光ビームスプリッタ38と第1の光検出器39との間に設けられ、偏光ビームスプリッタ38で分離された戻りの光ビームを第1の光検出器39の受光面に集光させるマルチレンズ40を有する。第1の光検出器39は、受光面でマルチレンズ40で集光された光ビームを受光し、情報信号(RF信号)をプリアンプ14に出力するとともに、トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号等の各種信号を検出し、サーボ制御部9に出力する。
【0053】
第1の導光光学系28を構成する第1のコリメータレンズ36は、例えば、温度変化やカバー層厚の誤差等の要因により発生する球面収差を補正するために移動され、位置に応じて、第1の対物レンズ33に入射する光ビームの発散角を変換する。すなわち、第1のコリメータレンズ36は、光軸方向に移動可能とされ、光ピックアップ3には、この第1のコリメータレンズ36を光軸方向に駆動して移動させるコリメータレンズ駆動部48が設けられている。コリメータレンズ駆動部48は、例えば送りモータによってリードスクリューを回転させて第1のコリメータレンズ36を移動させてもよい。また、コリメータレンズ駆動部48は、対物レンズ駆動部のように、マグネットとコイルに流れる電流との作用により、第1のコリメータレンズ36を移動させてもよい。さらに、リニアモータ等を用いてもよい。そして、第1のコリメータレンズ36は、移動されることにより、平行光より僅かに収束された状態である収束光の状態で、又は僅かに発散された状態である発散光の状態で第1の対物レンズ33に入射させることで、発生する球面収差を低減する。このように、コリメータレンズ駆動部48は、第1のコリメータレンズ36を光軸方向に移動させ、第1の対物レンズ33に入射する光ビームの角度を変化させ、入射倍率を変化させることで球面収差を補正する。
【0054】
光ピックアップ3には、温度変化やカバー層厚さ誤差に伴い第1のコリメータレンズ36の位置を調整するための演算を行う制御部27が設けられている。この制御部27には、第1の光検出器39よりRF信号が入力される。制御部27は、入力されたRF信号のジッタ量を監視し、コリメータレンズ駆動部48を駆動し、第1のコリメータレンズ36を光軸方向に移動し球面収差補正を行う。尚、温度変化に伴う第1のコリメータレンズ36の位置調整を行うために、対物レンズ近傍に温度検出素子を設けるようにしてもよい。かかる場合には、制御部27には温度検出素子より温度の温度信号が入力される。この場合、制御部27は、温度信号や温度信号及びRF信号のジッタ量に基づいて、コリメータレンズ駆動部48を駆動し、球面収差補正を行う。
【0055】
また、第1のコリメータレンズ36は、光ピックアップが記録層が複数設けられている光ディスクに対して情報信号の記録再生を行う場合、記録層毎に適切な位置に移動される。このとき、第1のコリメータレンズ36は、フォーカスサーチによって表面反射率の変化が検出され又識別信号が読み出されることにより、記録層毎に適切な位置に移動される。この際、第1のコリメータレンズ36は、各記録層に応じた位置に移動されることで、各記録層から光ディスクの光入射側の表面までの厚さ(「カバー層厚さ」ともいう。)の違いに起因する球面収差を低減する。すなわち、第1のコリメータレンズ36及びコリメータレンズ駆動部48は、複数の記録層のそれぞれに対して適切に光ビームのビームスポットを形成することができる。このように、第1のコリメータレンズ36等は、光軸方向に駆動されることで第1の対物レンズ33への光ビームの入射倍率を変化させることで、温度変化やカバー層厚さ変化により発生する球面収差を低減でき、適切なビームスポットを形成することを可能とする。
【0056】
以上のように、第1のコリメータレンズ36及びコリメータレンズ駆動部48は、第1の対物レンズ33への光ビームの入射倍率を変換する入射倍率可変部として機能する。ここで、本発明を適用した光ピックアップ3を構成する入射倍率可変部は、これに限られるものではなく、所謂ビームエキスパンダや液晶素子等であってもよい。
【0057】
また、第1の光学系を構成する第1の対物レンズ33は、上述したように、光ピックアップ3に設けられる対物レンズ駆動部51により移動自在に保持されている。この第1の対物レンズ33は、第1の光検出器39で検出された光ディスク2からの戻り光により生成されたトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号に基づいて、対物レンズ駆動部51により変位される。これにより、第1の対物レンズ33は、光ディスク2に近接離間する方向(フォーカス方向)及び光ディスク2の径方向(トラッキング方向)の2軸方向へ変位される。第1の対物レンズ33は、第1の発光部からの光ビームが光ディスク2の記録面上で常に焦点が合うように、この光ビームを集束すると共に、この集束された光ビームを光ディスク2の記録面上に形成された記録トラックに追従させる。尚、対物レンズ駆動部51は、レンズホルダ52をチルト方向に傾斜させるチルト補正機構としての機能も有しているが、第1の対物レンズ33を用いる場合にはチルト方向への傾斜は行わない。換言すると、第1の光ディスクへの記録及び再生時には、チルト補正機構は使用されず、対物レンズ及びその周辺の温度環境が変化してもその状態を維持し、すなわち、対物レンズ駆動部51は、レンズホルダ52のチルト方向への傾斜を行わない。
【0058】
また、第1の対物レンズ33には、記録層の切換や製造誤差により光ディスク2のカバー層厚さ変化があったときや、環境温度変化があったとき、コリメータレンズ35を光軸方向に移動させ入射倍率が変化された光ビームが入射される。第1の対物レンズ33は、入射倍率が変化されることで、常に球面収差を補正、すなわち低減する。
【0059】
また、第1の対物レンズ33は、図5及び図6(a)に示すように、第1の導光光学系28により導かれた光ビームの光軸L28と、第1の対物レンズ33の光軸L33とが略一致するように取り付けられている。ここで、第1の導光光学系28とは、上述したように、第1の光ディスクに対応する第1の光学系のうち、対物レンズ駆動部51に可動自在に取り付けられる第1の対物レンズ33以外の光学部品を意味する。第1の対物レンズ33の光軸とは、第1の対物レンズ33を形成する入射側・出射側の光学面を結ぶ軸を意味するものとする。そして、第1の対物レンズ33は、レンズホルダ52に取り付けられる際に、従来のように導光光学系や対物レンズ自体等の初期コマ収差を考慮して傾斜調整させて取り付けられるのではなく、第1の導光光学系28の光軸に一致するように取り付けられる。これに対し、従来の「対物レンズの組立調整」においては、図6(b)に示す比較例のように、調整されていた。図6(b)に示す比較例の場合、対物レンズ133の光軸L133が、導光光学系128の光軸L128に対して初期コマ収差分だけ傾斜させてレンズホルダ152に組み立てられていた。一方図6(a)に示すように光ピックアップ3では、第1の対物レンズ33は、変位していない基準状態のレンズホルダ52に、光軸調整されて取り付けられる。具体的に第1の対物レンズ33は、導光光学系28により導かれ第1の対物レンズ33に入射する光ビームの光軸と、第1の対物レンズ33の光軸とが略一致するように取り付けられている。ここで、略一致とは、取付誤差の範囲程度であれば許容でき、第1の導光光学系28により導かれ第1の対物レンズ33に入射する光ビームの光軸と、第1の対物レンズ33の光軸との角度が、0±0.25°以内であれば十分後述の効果が得られる。尚、導光光学系の各種光学部品や対物レンズ33自体が有する所謂初期コマ収差については、後述のように、光ピックアップ3自体を光ディスクに対して相対的にチルト方向に傾斜させることにより、取り除くことが可能である。
【0060】
このように、かかる第1の光学系を有する光ピックアップ3は、光ディスク装置1を構成するに際し、図7に示すように光ピックアップ3自体のチルト角度の調整を行うことにより、第1の対物レンズ33を用いる場合に発生する初期コマ収差を抑えるものである。具体的な光ピックアップ3自体のチルト角度の調整は、後述の〔5.光ピックアップの光ディスクに対する相対角度調整〕で詳細に説明する。そして、対物レンズ駆動部51は、第1の対物レンズ33を用いてカバー層厚さt1の光ディスク再生時には、チルト補正機構としての機能を発揮されない。そして、かかる場合、光ピックアップ3は、第1の対物レンズ33やその周辺の温度環境が変化してもその状態を維持して記録再生を行う。
【0061】
次に、第2の光学系を構成する第2の導光光学系29について図4を用いて説明する。第2の導光光学系29は、少なくとも、第2の光源32から出射された第2及び第3の波長の光ビームを回折して少なくとも3ビームに分割する第2のグレーティング43を有する。また、第2の導光光学系29は、第2のグレーティング43で回折された光ビームの発散角を変換して略平行光とする第2のコリメータレンズ44を有する。また、第2の導光光学系29は、第2のコリメータレンズ44で略平行光とされた光ビームを反射してフォーカス方向Fに略直交する面内において光ビームの光路を変更する折り曲げミラー45を有する。また、第2の導光光学系29は、折り曲げミラー45から出射された光ビームを反射して第2の対物レンズ34及び光ディスク2側に導く第2の立ち上げミラー42を有する。尚、第2の導光光学系29において、第2の立ち上げミラー42と第2の対物レンズ34との間に、上述した第1の導光光学系と同様に1/4波長板を設けるように構成しても良い。そして、第2の光学系を構成する第2の対物レンズ34は、第2の立ち上げミラー42により立ち上げられた光ビームを光ディスクの信号記録面に集光する。また、第2の導光光学系29は、第2のグレーティング43と第2のコリメータレンズ44との間の光路上に設けられるビームスプリッタ46を有する。第2の導光光学系29のビームスプリッタ46は、第2の対物レンズ34により集光され光ディスクで反射された戻りの光ビームの光路を、第2の光源32から出射された往路の光ビームの光路から分離する。また、第2の導光光学系29は、ビームスプリッタ46で分離された戻りの光ビームを受光して検出する第2の光検出器47を有する。第2の光検出器47は、受光面で光ビームを受光し、情報信号(RF信号)をプリアンプ14に出力するとともに、トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号等の各種信号を検出し、サーボ制御部9に出力する。
【0062】
第2の光学系を有する第2の対物レンズ34は、上述したように、光ピックアップ3に設けられる対物レンズ駆動部51により移動自在に保持されている。この第2の対物レンズ34は、第2の光検出器47で検出された光ディスク2からの戻り光により生成されたトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号に基づいて、対物レンズ駆動部51により変位される。これにより、第2の対物レンズ34は、フォーカス方向及びトラッキング方向の2軸方向へ変位される。第2の対物レンズ34は、第2及び第3の発光部からの光ビームが光ディスク2の記録面上で常に焦点が合うように、この光ビームを集束すると共に、この集束された光ビームを光ディスク2の記録面上に形成された記録トラックに追従させる。また、第2の対物レンズ34は、上述の2軸方向のみならず、対物レンズ34のチルト方向に傾斜可能とされ、図8に示すように、当該チルト方向Tirに対物レンズ駆動部51により傾けられる。すなわち、第2の対物レンズ34は、後述のようにコマ収差が最も低減されるように予め決められた所定の最適角度だけ、当該チルト方向に対物レンズ駆動部51により傾けられる。このようにチルト方向に傾斜可能とされた第2の対物レンズ34は、共通のレンズホルダ52に2つの対物レンズを取り付ける構成において、図7に示すように第1の対物レンズ33を最適な状態となるように光ピックアップ3を設定することを可能とする。すなわち、かかる第2の対物レンズ34は、図7に示すように光ピックアップ3をこのように設定した場合にも、第2の対物レンズ34を利用する場合にもチルト駆動されることで最適な状態で記録・再生を可能とする。尚、ここでは、第2の対物レンズ34は、当該レンズを用いる場合に静的にチルト駆動するものとして説明したが、所謂動的にチルト駆動するように構成しても良い。例えば、第2の対物レンズ34は、第2の光検出器47で検出されたRF信号等に基づいて当該チルト方向に対物レンズ駆動部51により傾けられるようにしてもよい。かかる構成とすることにより、第2の対物レンズ34は、さらにコマ収差を低減することを可能とする。また、ここで説明したチルト補正機構としての対物レンズ駆動部51は、第2の対物レンズ34に入射する光ビームに相殺すべきコマ収差を発生させることでコマ収差を低減させる。すなわち、対物レンズ駆動部51にコマ収差発生部としての機能を持たせているが、これに換えて後述のように液晶素子等を設けコマ収差を調整するようにしてもよい。
【0063】
このように、対物レンズ駆動部51は、第1の対物レンズ33を用いる場合にはチルト方向への傾斜は行わないが、第2の対物レンズ34を用いる場合にはチルト方向への傾斜を行う。換言すると、第2の光ディスクへの記録及び再生時には、最適な再生環境を得るためにチルト補正機構としての対物レンズ駆動部51を使用してレンズホルダ52を傾斜させる。
【0064】
ここで、チルト方向としては、図2に示すように、上述のフォーカス方向F及びトラッキング方向Tに直交するタンジェンシャル方向Tzを軸とした軸回り方向である所謂ラジアルチルト方向Tirを意味するが、これに限られるものではない。すなわち、当該第2の対物レンズ34は、トラッキング方向を軸とした軸回り方向である所謂タンジェンシャルチルト方向に駆動可能なように構成しても良い。但し、ここで説明する光ピックアップ3では、対物レンズ33,34のコマ収差を後述のようにラジアル方向に向けて配置しているため、ラジアルチルト方向Tirへの駆動する必要がある。また、動的にチルト補正を行う場合には、ラジアルチルト方向及びタンジェンシャルチルト方向に駆動可能とした4軸方向に駆動可能なように構成しても良い。
【0065】
かかる第2の光学系においても、上述した第1の光学系と同様に、コリメータレンズを駆動するように構成して、温度変化の際などの球面収差を補正するように構成しても良い。かかる構成と併せて、環境温度変化に伴い入射倍率の変化があったときには、対物レンズ駆動部51によって、第2の対物レンズ34がチルト方向に傾けられることにより、コマ収差を打ち消すようにしてもよい。
【0066】
また、第2の対物レンズ34は、第2の導光光学系29により導かれた光ビームの光軸と、第2の対物レンズ34の光軸とが略一致するように取り付けられることが望ましい。ここで、後述のように、2つの対物レンズを共通のレンズホルダ52に取り付ける構成とされていることから、上述した第1の対物レンズ33側の光軸調整が優先されている。
【0067】
尚、上述では、第1の光ディスクに対応する第1の光学系28と、第2及び第3の光ディスクに対応する第2の光学系29とのそれぞれに専用の光学部品を設けるように構成したがこれに限られるものではない。すなわち、第1及び第2の光学系として共通化可能な光学部品を共通とするような構成としても良い。
【0068】
ところで、上述した第1及び第2の対物レンズ33,34は、コマ収差の方向が略一定になるようにレンズホルダ52に組み付けられている。このように、2つ以上の対物レンズを搭載する光ピックアップ3において、各々の対物レンズ33,34が有するコマ収差の方向を略同一の方向になるよう揃えてアクチュエータとしての対物レンズ駆動部51に組み込む点にも特徴を有している。かかる構成により、後述の第1の対物レンズ33を最適な状態とするために光ピックアップ3を図7に示すように傾斜させることにより第2の対物レンズ34に対しても有利に作用させることができる(図16(b)参照)。換言すると、両対物レンズの傾き最良位置からの誤差バラツキを極力低減することを可能とする。
【0069】
また、特にここで説明する光ピックアップ3においては、第1及び第2の対物レンズ33,34は、図9に示すように、それぞれのコマ収差の方向が、ラジアル方向であって例えば外側ROに向けて配置されてレンズホルダ52に組み付けられる。尚、内側RIに向けて配置されるように構成しても良い。
【0070】
ここで、具体的な取付手法について説明する。第1及び第2の対物レンズ33,34は、それぞれ円周方向に所定の分割数で分割された領域のいずれかの領域にコマ収差の方向が向いているかを検出される。例えば、その光軸に直交する平面内における等分された領域のいずれの領域内にコマ収差の方向が向いているかを検出され、その領域の中間位置の方向がコマ収差が向いている方向と認識される。第1及び第2の対物レンズ33,34には、光ビームが通過する有効領域外に、例えばゲートカット(Gate−Cut)等の、コマ収差の方向を示す認識部N1,N2が設けられる。図中領域R1は、第1の対物レンズ33の第1の波長の光ビームに対する有効領域を示し、領域R2,R3は、それぞれ第2の対物レンズ34の第2、第3の波長の光ビームに対する有効領域を示す。プラスチック製の対物レンズを用いる場合は、その製造上の要因としてキャビティが一定であることから、ロット毎にコマ収差の方向が略一定であるため、製造されたレンズのロット中の複数個のコマ収差の方向を計測することが考えられる。この場合、ゲートカットN1,N2が設けられた方向に対してその領域の中間位置の方向C1,C2との角度θ1,θ2が検出される。そして、このゲートカットN1,N2に対して所定の角度θ1,θ2だけ離れた方向にコマ収差が向いていると認識して、これに基づきレンズホルダ52に組み付けられる。尚、かかるコマ収差の方向を示す認識部は、ゲートカットに限られるものではなく、ケガキ線を設けるようにしてもよい。さらに、認識部は、ゲートカットとケガキ線の両方からなるようにしてもよく、かかる場合にはさらに精度良い取付を可能とする。そして、この認識部N1,N2に基づいて、コマ収差の方向C1,C2が認識された第1及び第2の対物レンズ33,34は、そのコマ収差の方向がラジアル方向に向くようにレンズホルダ52に組み付けられる。
【0071】
ところで、上述した対物レンズ33,34が保持されたレンズホルダ52には、図3及び図5に示すように光ディスク2の略半径方向であるトラッキング方向Tに駆動力を発生させるトラッキングコイル56が設けられる。また、レンズホルダ52には、光ディスクに近接及び離間する方向であるフォーカス方向Fに駆動力を発生させるフォーカスコイル57a〜57dとが取り付けられている。ピックアップベース50には、このトラッキングコイル56及びフォーカスコイル57a〜57dに対向するように配置され、このトラッキングコイル56及びフォーカスコイル57a〜57dに所定の磁界を与えるマグネット58が設けられている。
【0072】
そして、このトラッキングコイル56及びフォーカスコイル57a〜57dには、駆動用の電流が供給される。対物レンズ駆動部51は、各コイルに電流が供給されると、各コイルに供給された電流と、マグネットからの磁界との相互作用によって、レンズホルダ52をトラッキング方向T及びフォーカス方向Fに駆動変位させる。
【0073】
その結果、レンズホルダ52に支持された第1及び第2の対物レンズ33,34は、フォーカス方向F及び/又はトラッキング方向Tに駆動変位される。すなわち、第1及び第2の対物レンズ33,34を介して光ディスクに照射される光ビームが光ディスクの信号記録面に合焦するように制御されるフォーカス制御が行われる。また、第1及び第2の対物レンズ33,34を介して照射される光ビームが光ディスクに形成された記録トラックを追従するように制御されるトラッキング制御が行われる。
【0074】
また、対物レンズ駆動部51は、トラッキング方向Tに並んで配置されるフォーカスコイル57a,57dとフォーカスコイル57b,57cとの駆動力に差異を設けることにより、レンズホルダ52をラジアルチルト方向Tirに駆動変位させる。
【0075】
その結果、レンズホルダ52に支持された第2の対物レンズ34がチルト方向に駆動変位され、第2の対物レンズ34を用いて光ビームを集光する場合のコマ収差を低減することができる。すなわち、第2の対物レンズ34を介して光ディスクに照射される光ビームによるスポット形状を最適な状態となるように調整することができる。
【0076】
尚、ここでは、フォーカスコイル57a〜57dの駆動力に差異を設けるようにしてチルト駆動を行うようにしたが、これに限られるものではなく、チルトコイル及びチルトコイル用のマグネットを設けるように構成し、各種チルト制御を行うように構成してもよい。
【0077】
以上のように構成された光ピックアップ3は、装着された光ディスクの種類に応じて、第1及び第2の光源31,32に設けられた出射部から第1乃至第3の波長の光ビームのうち光ディスクの種類に対応した波長の光ビームを出射させる。そして、光ピックアップ3は、第1及び第2の光検出器39,47により検出された戻り光により生成されたフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号に基づいて、第1又は第2の対物レンズ33,34を駆動変位する。これにより、光ピックアップ3は、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行う。光ピックアップ3において、第1及び第2の対物レンズ33,34が駆動変位されることにより、光ディスク2の信号記録面に対して合焦する合焦位置に移動される。これにより、光ピックアップ3は、かかる光ビームが光ディスク2の記録トラック上に合焦されて、光ディスク2に対して情報信号の記録又は再生を行う。
【0078】
そして、この光ピックアップ3は、構成部品である第1の対物レンズ33をプラスチック製とすることによる量産性や軽量化を向上させる。また、光ピックアップ3は、BD等の高密度記録光ディスクに対応する第1の対物レンズ33をプラスチック製とすることにより温度変化に応じてレンズチルトコマ収差感度が変動することに起因する問題点を解消する。この点について、次の〔3.対物レンズのレンズチルトコマ収差感度の温度特性について〕で詳細に説明する。
【0079】
〔3.対物レンズのレンズチルトコマ収差感度の温度特性について〕
次に、本発明を適用した光ピックアップ3等を構成する第1の対物レンズ33のレンズチルトコマ収差感度の温度特性について説明する。
【0080】
上述したように、プラスチック製対物レンズは、環境温度変化による球面収差の変化がガラス製のものに比べて大きく、そのままでは記録再生特性の劣化を招くという問題がある。特に高開口数で高密度記録可能な光ディスクでは、かかる特性劣化が深刻な問題となる可能性がある。これに対し、上述したように、第1のコリメータレンズ36を駆動して当該第1の対物レンズ33へ入射する光ビームの入射角度を変化させ、すなわち入射倍率を変化させることによりこの球面収差を補正できる。このとき、第1の対物レンズ33への光ビームの入射角度を変化させることにより、対物レンズを傾斜させた(「レンズチルト」ともいう。)際のコマ収差の発生量が変化することを見出した。
【0081】
具体的には、図10に示すように、35℃程度の常温におけるレンズチルトコマ収差感度がLNで示される状態であるとすると、70℃程度の高温環境下では、LHで示されるようにレンズチルトコマ収差感度が低下する。その一方で、0℃程度の低温環境下では、LCで示されるようにレンズチルトコマ収差感度が上昇することとなる。このように、図10は、同一のレンズチルト角度で発生するコマ収差がコリメータレンズ駆動による入射倍率の変化に対応して大きく変化することを意味している。換言すると、レンズチルト角度に対するコマ収差が、環境温度変化に伴い大きく変化することを見出した。
【0082】
そして、かかるプラスチック製対物レンズを、従来のガラスレンズと同様にコマ収差を補正するため対物レンズを傾斜した状態でアクチュエータのレンズホルダに取り付けると以下のような問題が発生する。すなわち、従来の対物レンズの取付においては、対物レンズ自体や導光光学系を構成する部品自体や、これらの部品の組み立て精度により発生するコマ収差を打ち消すように、対物レンズを傾斜させてレンズホルダに取り付ける手法が良く用いられる。これは、図6(b)を用いて説明した通りである。これにより、常温においては、コマ収差をほとんどゼロにすることができる。すなわち、常温時においては、補正すべきコマ収差の量と、対物レンズの傾斜調整により発生するコマ収差の量とが等しくなっている。
【0083】
しかし、上述した図10に示すように、温度変化に伴う入射倍率変化により、レンズチルトコマ収差感度が変化するため、高低温環境下では、実線LH、LCで示すように、対物レンズの傾斜調整により発生するコマ収差の量が変化することとなる。そして、高低温環境下のようにレンズチルトコマ収差感度が変化した場合には、結果としてコマ収差が残留するか、さらに大きなコマ収差が発生するといった問題がある。
【0084】
この点について、詳細に説明すると、光ピックアップを構成する光学部品や部品の組み立て誤差によって発生するコマ収差がYであったとする。この場合、常温感度であるβ1/αを用いてY=β1となるレンズチルト量αだけ、コマ収差を相殺する方向に対物レンズを傾けてレンズホルダに取り付ける。かかる場合、温度変化により高温となったとき、(β1’−β1)分だけコマ収差が補正不足となる。また、温度変化により低温となったとき、(β1’’−β1)分だけコマ収差が補正過剰となってしまう。そして、この過不足分が大きくなった場合には、光ディスクの記録再生特性が悪化することになる。
【0085】
本発明を適用した光ピックアップ3では、図6(a)に示すように、第1の導光光学系28により第1の対物レンズ33に導かれる光ビームの光軸と、第1の対物レンズ33の光軸が一致するように、レンズホルダ52に配置されている。すなわち、レンズホルダ52に対して第1の対物レンズ33を傾斜させることなく正対するように、配置されている。よって、上述で説明した温度変化によるレンズチルトコマ収差感度の影響を受けることがなく、温度変化に伴うコマ収差の変動を防止できる。次に、図6(a)のように構成する場合において、従来では図6(b)に示すような対物レンズを傾斜させることにより低減していた初期コマ収差の低減手法について〔4.〕で説明する。
【0086】
〔4.初期コマ収差の補正について〕
この光ピックアップ3において、初期コマ収差の補正は、光ディスク装置1を構成するに際し、光ディスク2と光ピックアップ3との相対的な傾きを調整することによって行われる。具体的に、光ピックアップ3は、光ディスク装置1を構成するに際して、図7に示すように光ピックアップ3自体のスキュー方向Skへのスキュー調整を行うことにより、光ディスク2と光ピックアップ3との相対的な傾きを調整し、初期コマ収差を抑えるものである。ここで、スキュー方向Skは、上述したチルト方向Tirに対応する方向であり、チルト方向Tirと同様に、タンジェンシャル方向Tzの軸回り方向への傾斜方向である。すなわち、光ディスク2と光ピックアップ3とが相対的に傾斜するとコマ収差が発生するからであり、傾斜角度とコマ収差量との間には一定の関係がある。光ピックアップ3自体のチルト方向へのスキュー角度の調整については、〔5.〕で説明する。
【0087】
また、かかる相対的な傾きを調整するためには、光ディスク2を装着するディスク装着部側がスキュー調整可能なように構成されていてもよい。換言するとディスク装着部67のディスク取付基準面67aが光ピックアップ3に対して傾斜させるように構成されていてもよい。かかる場合には、ディスク装着部側が傾斜されることにより、コマ収差を最適に補正するような角度で、光ピックアップ3とディスク装着部67に装着される光ディスクとが相対的に傾斜されることとなる。
【0088】
ここで、光ディスク2と光ピックアップ3との相対的な傾きを調整し、初期コマ収差を補正する点について上述した図10と比較しながら、図11を用いて具体的に説明する。尚、相対的な傾きに対して発生するコマ収差量の割合をディスクチルト感度ともいう。ここで、図10及び図11は、第1の光ディスクのカバー層厚さt1が、t1=100μmであった場合の球面収差補正後のコマ収差量を示している。また、図10は、レンズチルトコマ収差感度を示し、図11は、ディスクチルトコマ収差感度を示している。
【0089】
光ピックアップ3を構成する光学部品や部品の組み立て誤差によって発生するコマ収差が上述と同様にYであったとする。この場合に、レンズチルト量αはゼロとし、光ピックアップの組み立て時に、次の調整を行う。すなわち、図11の実線LDに示すようなディスクチルト感度β2/δを用いてY=β2となるディスクチルト量δだけ、コマ収差を相殺する方向に光ピックアップ3はラジアルチルト方向Tirに傾斜される。この際、上述したように光ディスク取付基準面を傾斜させることで光ディスク側を傾斜させる構成であってもよい。かかる場合α≒0であるので、(β1’−β1)≒0、(β1’’−β1)≒0となる。また、ディスクチルト感度は温度によってほぼ一定であることが知られている。このことから、図7に示すような手法を取り入れることにより、温度変化が発生してもコマ収差が大きく変動することがなく、光ディスクに対する記録再生特性を良好に保つことができる。
【0090】
ところで、光ピックアップ3は、図7に示すように、第1の対物レンズ33による第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスク2に対して相対的に傾斜するように、約±0.5°の範囲でチルト調整されている。具体的には、第1の対物レンズ33の中心軸と、光ディスク取付基準面とのなす角度が約90±0.5°の範囲でコマ収差を最適に補正するように配置されることとなる。ここで、約±0.5°の範囲でコマ収差を最適に補正することができることについて説明する。
【0091】
第1の波長λ1、カバー層厚さt1の第1の光ディスクに対応する第1の対物レンズにおいて、実際に光ピックアップ3が有するコマ収差が0.05λrmsであり、それぞれのチルト感度が以下であった場合について検討する。他の条件としては、高温レンズチルト感度:0.01λrms/°であり、常温レンズチルト感度:0.08λrms/°であり、低温レンズチルト感度:0.15λrms/°であり、ディスクチルト感度:0.10λrms/°であるとする。従来例では、常温状態において図6(b)に示すようにレンズを0.05/0.08=0.625°傾けてコマ収差を補正する。この場合、高温時には、0.625×0.01=0.006λrms程度のコマ収差を補正することになるため、差し引き0.044λrmsこのコマ収差補正不足が発生する。また、低温時には、0.625×0.15=0.094λrms程度のコマ収差を補正することになるため、差し引き0.044λrmsのコマ収差過補正が発生する。
【0092】
ここで、規格化されている光ディスク自身の傾き0±0.35°をディスクチルト感度に置き換えると0.035λrmsとなる。そして、一般的なマレシャル限界0.07λrmsに対し、光ディスクへの影響を考慮すると光ピックアップの収差はマレシャル限界の半分以下にする必要がある。しかし、従来例では6割以上の収差が発生するため、マレシャル限界を超えてディスク読み取り性能に支障を来す場合が出てくる。尚、光ディスク読み取りに支障が発生した場合、チルト補正機構としての対物レンズ駆動部51を用いて動的にコマ収差を補正することも考えられる。しかし、高温時においてはレンズチルト感度が低いため、チルト補正機構を動的に動作させてもコマ収差を補正することが事実上困難である。
【0093】
光ピックアップ3では,図6(a)に示すように、第1の対物レンズ33を傾斜させずに、図7に示すように光ディスクの光ディスク取付基準面と光ピックアップとの相対的な角度をコマ収差/ディスクチルト感度=0.05/0.1=0.5°傾ける。かかる構成とすることで、光ピックアップ3の有するコマ収差を補正する。
【0094】
尚、この場合、第2の波長λ2、カバー層厚さt2の第2の光ディスクに対応する第2の対物レンズにおいては光ピックアップ3の有するコマ収差と、光ディスク取付基準面と光ピックアップとの相対的な傾け量で発生するコマ収差との関係が一致しない場合がある。この場合、チルト補正機構としての対物レンズ駆動部51を使用し、最適な再生条件の下で光ディスク読み取り性能を良好に保つことができる。
【0095】
〔5.光ピックアップの光ディスクに対する相対角度調整〕
次に、光ピックアップと光ディスクとの相対角度を調整する手法について図12を用いて説明する。具体的には、光ディスク装置1には、図12に示すように、光ピックアップ3が設けられるピックアップベース50に挿通されピックアップベース50の光ディスクの径方向への移動を支持するガイド軸となる主軸62及び副軸63が設けられている。また、光ディスク装置1は、主軸62及び副軸63のそれぞれの両端部に設けられるスキュー調整機構64を備える。このスキュー調整機構64は、例えば、主軸62及び副軸63をフォーカス方向Fの上側から支持するスプリング65と、主軸62及び副軸63の下部に当接されガイド軸を押圧することで主軸62及び副軸63の上下方向の高さを調節する調節ネジ66とからなる。そして、光ピックアップ3は、スキュー調整機構64により主軸62及び副軸63の両端部の上下方向の高さが調整されることにより、上述のラジアルチルト方向のチルト角度の調整とともに、所望の取付高さで光ディスク装置1に取り付けられる。例えば、光ピックアップ3の出力を見ながら、スキュー調整機構64の調整ネジを回してガイド軸としての主軸62及び副軸63の両端部の高さ方向の調整が行われることで、光ピックアップ3が調整される。尚、スキュー量を決定するための手法については、これに限られるものでなく、図17及び図18を用いて後述する。すなわち、光ピックアップ3は、スキュー調整機構64によりラジアルチルト方向のスキュー角度の調整が行われることにより上述の初期コマ収差を抑えた状態で光ディスク装置1に取り付けられる。尚、スキュー調整機構の構成は上述の形式に限定されるものではなく、光ピックアップ3自体のスキュー調整が可能な構成であればよい。また、光ディスクを装着するディスク装着部側がスキュー調整可能なように構成されていてもよい。換言するとディスク装着部67のディスク取付基準面67aが光ピックアップ3に対して傾斜されるように構成されていてもよい。
【0096】
〔6.光ピックアップの作用・効果〕
以上のように、本発明を適用した光ピックアップ3は、例えばBD等の高密度記録に対応するとともにプラスチック製の第1の対物レンズ33と第1の導光光学系28の光軸を一致させた状態でレンズホルダ52に取り付けられている点に特徴を有する。ここで第1の導光光学系28の光軸とは、第1の導光光学系28により導かれ第1の対物レンズ33に入射する光ビームの光軸を意味するものとする。また、光ピックアップ3は、ディスク取付基準面67aとの関係で、第1の対物レンズ33の初期コマ収差を補正するように傾斜調整される点に特徴を有する。このように、光ピックアップ3は、第1の対物レンズ33のレンズチルトコマ収差感度の温度特性に鑑みて構成されている。光ピックアップ3は、かかる構成により、環境温度変化があったときにもコマ収差の変動を低減し、すなわちコマ収差を低減した状態で記録再生を行うことを可能とする。よって、光ピックアップ3は、第1の対物レンズ33をプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、レンズチルトコマ収差感度の変動を考慮した構成とすることにより、環境温度変化があったときにも良好な記録再生特性を実現する。
【0097】
かかる構成によりコマ収差の変動が低減されることについて、図13を用いて説明する。図13は、上述の図6(a)を用いて説明したように構成された第1の対物レンズ33と、比較例として図6(b)を用いて説明したように構成された対物レンズ133との温度変化に伴うディスクチルト量の変動を示す図である。横軸は、温度変化を示し、縦軸は、コマ収差の取れ残り量をディスクチルト量に換算したものである。換言すると、取れ残ったコマ収差を相殺するディスクチルト量を縦軸に示した。LT133は、比較例の場合のチルト変化を示し、かかる比較例では温度によるチルト変化が大きい。これは、比較例の構成では、高温ではより大きくチルト補正が必要なことを示し、対物レンズ駆動部の構成によっては、必要なチルト角を超えてしまう場合があることを意味する。また、低温では、チルト補正角度は小さくてもよいが、感度が大きくなるため微妙な調整ができなくなることや、衝撃等によりチルト角度が変動した場合にかなり大きなコマ収差が発生してしまうことを意味している。また、図中LT33は、上述した光ピックアップ3を構成する第1の対物レンズ33のような構成の場合のチルト変化を示し、かかる本発明の適用例では温度によるチルト変化が小さいことを示している。これは、かかる適用例の場合では、チルト感度の変化が少ないことを示す。ここで図中ZTiに示すように常温時においても0°からのズレがあるが、このズレ量を図7で説明したように光ピックアップ3及び光ディスク取付基準面の相対角度調整することで対応できる。換言すると図6(a)及び図7の構成により、常温時のコマ収差の取れ残り量も少なく、かつ温度変化によるコマ収差の変動量を少なくすることができる。
【0098】
すなわち、光ピックアップ3は、第1の対物レンズ33へ入射する光ビームが、第1の対物レンズ33を形成する入射側及び出射側の光学面の中心を結ぶ軸と平行になるように配置され、且つ動作状態においてもその関係を維持する点に特徴を有する。かかる光ピックアップ3は、環境温度下におけるコマ収差の変化を抑制できる。これにより光ピックアップ3は、高密度記録光ディスクに対応した第1の対物レンズ33を使用する際の、高低温環境下における記録再生性能の悪化を抑制できる。
【0099】
そして、光ピックアップ3は、第1の光ディスク再生時には、環境温度が変化してもチルト補正機構としての対物レンズ駆動部51は使用せず、第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るためにチルト補正機構を駆動してレンズホルダ52を傾斜する。
【0100】
また、光ピックアップ3の第1の対物レンズ33が、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、所定の感度を満足する。かかる条件において、発生する球面収差を第1のコリメータレンズ36を移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズ33が傾斜することで対応する第1の波長λ1の光ビームに発生するコマ収差の割合の範囲にも特徴を有する。具体的に、この条件下かかるレンズチルトに対するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足している点にも特徴を有する。これは、上述の条件下でレンズチルトコマ収差感度が0.3[λrms/°]を超えるようなレンズの場合は、光ビームの光軸とレンズ光軸とを一致させる際の製造誤差等が無視できなくなるからである。また、かかるレンズは、経時変化や環境変化による光ビームの光軸とレンズ光軸の相対変化についても無視できなくなるからである。さらに、かかるレンズは、レンズホルダをフォーカス方向及びトラッキング方向に変位させた際のレンズホルダの姿勢変化による光ビームの光軸とレンズ光軸との相対変化についても無視できなくなるからである。このように、上述の条件下でレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]であることが望ましい条件といえる。そして、上述の条件下のレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3の範囲である対物レンズは、上述した図6(a)及び図7で説明した構成とすることにより、上述の様な効果を得ることができるものである。
【0101】
〔7.対物レンズのコマ収差の方向と取付方向〕
次に、光ピックアップ3において、図9を用いて上述したように第1及び第2の対物レンズ33,34のコマ収差をラジアル方向に向けることの利点について説明する。光ピックアップ3で発生するコマ収差は、上述したように、対物レンズ自体が持つコマ収差と、コリメータレンズやその他の光学部品が持つコマ収差と、各光学部品の組み立て誤差によるコマ収差とが存在する。それに加えて、プラスチック製対物レンズにおいては、光ビーム通過領域内で温度勾配を有することとなった場合に発生するコマ収差を考慮する必要がある。すなわち、通過領域内で温度勾配を有するとき領域毎に屈折率が異なることとなり、これに起因してコマ収差が発生することを意味する。また、温度勾配は、主にレンズアクチュエータを駆動するためのコイルの発熱と、光ディスクの回転で起こる風損により発生する。
【0102】
ここで、光ピックアップ3を構成する第1及び第2の対物レンズ33,34の光ビーム通過領域内で発生する温度勾配について図14を用いて説明する。図14(a)及び図14(b)では、例えばBD等に対応した第1の対物レンズ33には例えばDVD等に対応した第2の対物レンズ34に比較して、非対称な温度分布が発生していることを示す。対物レンズ内に非対称な温度分布が発生した場合は、分布位置毎に屈折率が異なることとなり、図14(a)及び図14(b)に示すような分布を有する場合にはラジアル方向にコマ収差が発生することとなる。尚、図3に示すようにコイルが配置されている場合に、図14(a)及び図14(b)に示すような温度分布が発生する。尚、図14(a)において、AT01〜AT05は、それぞれ、所定の温度範囲となっている領域を示し、AT05が最も高い温度で、次いでAT04、AT03、AT02の順となっており、AT01が最も低い温度であることを示している。また、図14(b)においても、AT11〜AT15は、それぞれ、所定の温度範囲となっている領域を示し、AT15が最も高い温度で、次いでAT14、AT13、AT12の順となっており、AT11が最も低い温度であることを示している。また、図14(c)は、半径方向の断面における対物レンズ温度分布断面を示すものである。図14(c)中横軸は、断面位置を、縦軸は温度を示すものである。図14(c)によっても、第1の対物レンズ33に相当する断面位置において、急峻な温度差を有した温度分布が生じていることが示されている。
【0103】
対物レンズに発生する温度差は一般的に、次の4つの要因により決定する。第1の要因は、対物レンズを取り付けるレンズホルダの形状である。第2の要因は、各コイルと対物レンズとの相対位置関係である。第3の要因は、コイルに流れる電流量である。第4の要因は、光ディスクの回転で発生させられる風損である。ここで、第3、第4の要因は、その動作状態によって大きく変動するため、対物レンズの温度差によるコマ収差の発生量は一定の値を取り得ない。
【0104】
しかしながら、そのコマ収差の発生する方向については、主に第1及び第2の要因により決定される。そのため、第3及び第4の要因から経験的に推測される平均的な電流量と風損から求まるコマ収差の発生量の分だけ、スピンドルモータの光ディスク取付基準面と光ピックアップ主軸副軸基準面との相対角度に上乗せすればよい。これにより、レンズ温度差によるコマ収差の影響を低減することができる。
【0105】
この点を図15を用いて説明する。図15は、コイル電流量とコマ収差の関係と想定されるコマ収差分布を示すものである。図15(a)は、横軸に示されるコイル電流量と、縦軸に示されるその頻度の分布を示す。図15(b)は、コイル電流量とコマ収差の関係を示し、横軸は、コイル電流量の2乗を示し、縦軸はコマ収差を示している。尚、コイル電流量の2乗は、発熱量に比例し、コマ収差は、ディスクチルトに比例する。図15(c)は、図15(a)及び図15(b)の関係から導かれる分布を示し、横軸は、風損を込みにしたコマ収差量を示し、縦軸は、頻度を示す。図中の破線は、平均的なコマ収差量を示す。
【0106】
本発明を適用した光ピックアップ3は、第1及び第2の対物レンズ33,34のコマ収差の方向が同一方向で且つラジアル方向に向くようにレンズホルダ52に組み付けられていることに特徴を有する。かかる構成により、図7で説明したように、第1の対物レンズ33の初期コマ収差を低減する方向θPへの相対傾斜により、第2の対物レンズ34の初期コマ収差についてもある程度は低減できる。すなわち、第2の対物レンズ34を用いる場合の図8で説明したチルト角度を小さくした状態で良好な記録再生特性を実現する。
【0107】
また、光ピックアップ3は、第1及び第2の対物レンズ33,34の温度差によるコマ収差の方向を光ディスクの内外周方向(ラジアル方向)に設定する点に特徴を有する。具体的には、第1及び第2の対物レンズ33,34をラジアル方向に並べて、且つコイルを第1及び第2の対物レンズ33,34のタンジェンシャル方向の両側に配置するように構成されている。かかる構成により、第1及び第2の対物レンズ33,34の温度差によるコマ収差の方向を概ねラジアル方向に設定することが可能である。よって、光ピックアップ3は、温度差によるコマ収差を平均的にオフセットさせて、その影響を低減させることができる。換言すると、光ピックアップと光ディスクの相対角度は、実動作状態において対物レンズ近傍に発生する熱量や温度分布により生じるコマ収差を予測し、かかる使用状態におけるコマ収差が最も低減するようにオフセットさせて決定される。これにより、光ピックアップ3は、高密度記録光ディスクに対応した第1の対物レンズ33を使用する際の、レンズ近傍のコイル等の熱源による、記録再生性能の悪化を抑制できる。そして、光ピックアップ3では、かかる構成と上述のような対物レンズ自体のコマ収差を内外周方向に一致させる構成とを兼ね備える。よって、光ピックアップ3は、第1の対物レンズ33については、図7で示した相対角度調整により、第2の対物レンズ34については、図8で示した対物レンズ駆動部51によるチルト調整によりかかるコマ収差を補正することが可能となる。
【0108】
さらに、光ピックアップ3は、第2の光源32の第2の波長λ2用の発光部と、第3の波長λ3用の発光部とが、第2の対物レンズ34のコマ収差の方向に対応する方向に並べて配置されている点に特徴を有する。具体的に、DVD等に用いられる第2の波長用の発光部が、第2の光学系の光軸上に配置され、CD等に用いられる第3の波長用の発光部が、第2の光学系の軸外配置となるように構成されている。そして、かかる発光点が軸外配置となる発光部に対しても、第2の対物レンズ34に対して斜め入射することで発生する軸外コマ収差の向きを光ディスク内外周方向(半径方向)に向けて配置されている。換言すると、DVDやCD用として2波長レーザとして第2の光源32を構成するに際し、軸外配置で使用される発光点は、次の観点で配置されている。すなわち、軸外コマ収差が第1の対物レンズ33における光ピックアップの相対角度のスキュー調整方向により発生するコマ収差により相殺される方向に配置されている。よって、光ピックアップ3は、第3の波長及び第2の対物レンズ34を用いる場合に、軸外配置の影響によるコマ収差についても、図7で示した調整により低減し、さらに図8で示した対物レンズ駆動部51によるチルト調整により補正することが可能となる。光ピックアップ3は、対物レンズ自体のコマ収差の方向と、温度変化によるコマ収差の方向と、軸外コマ収差の方向とを概ねラジアル方向に一致させる構成により、上述の効果とともに、軸外配置された光路における軸外コマ収差の影響も同時に補正することができる。すなわち、光ピックアップ3は、第1の対物レンズ33に対する最適化を行うために光ピックアップ3をスキュー調整することにより、第2の光源32の第2及び第3波長用のそれぞれの発光点の軸外配置による影響として発生するコマ収差も低減できる。
【0109】
上述の点を、図16を用いてさらに説明する。図16(a)に示すように、第1の対物レンズ33及び第2の対物レンズ34には、次の(D1)〜(D5)の収差が考えられるが、光ピックアップ3では、かかる各収差の方向を全てラジアル方向に向けている。すなわち、まず、(D1)のコマ収差は、第1の波長λ1の光ビームが第1の対物レンズ33を通過することにより発生するコマ収差である。(D2)のコマ収差は、第1の対物レンズ33におけるレンズ温度差により発生するコマ収差平均値(以下、「電流コマ収差」ともいう。)である。(D3)のコマ収差は、第2の波長λ2の光ビームが第2の対物レンズ34を通過することにより発生するコマ収差である。(D4)のコマ収差は、第3の波長λ3の光ビームが第2の対物レンズ34を通過することにより発生するコマ収差である。(D5)のコマ収差は、第2の光学系における第2の光源32の第3の波長用の発光部34bが、軸外配置されることにより第3の波長の光ビームに発生する軸外コマ収差である。
【0110】
光ピックアップ3において、上述の(D2)及び(D5)のコマ収差の方向をそろえるように第2の光源32の第3の波長用の発光部34bを配置することで、次の効果が得られる。すなわち、かかる構成により、第1の波長の光ビームに発生するコマ収差と第3の波長の光ビームに発生するコマ収差とが相対的に小さくなる。そして、かかる構成は、第1の波長を用いる場合と、第3の波長を用いる場合の相対ディスクチルトが小さくなることを示す。光ピックアップ3は、かかる構成と、上述の図7で説明した第1の対物レンズ33に最適な相対角度調整を行う構成とにより、以下の効果を奏する。すなわち、光ピックアップ3は、図16(b)に示すように、(D1)及び(D2)のコマ収差を打ち消すようにディスク取付基準面と光ピックアップとの相対角度θPが調整される。これにより、光ピックアップ3は、第2の対物レンズ34の第3の波長の光ビームに発生するチルト取れ残り量を低減させることができる。換言すると、光ピックアップ3は、第3の波長の光ビームを使用する場合の対物レンズ駆動部51によるチルト角度を小さくすることができる。
【0111】
〔8.光ピックアップの製造方法〕
次に、本発明を適用した光ピックアップ3の製造方法について説明する。
【0112】
光ピックアップ3の製造方法は、主に、図19に示すような工程図に示されるステップS1〜ステップS6を有する。
【0113】
ステップS1において、第1及び第2の導光光学系28,29がベース部材としてのピックアップベース50に取り付けられる。換言すると、ステップS1において、第1及び第2の導光光学系28,29を構成する光学部品が取り付けられる。
【0114】
具体的に、かかるステップS1においては、光ピックアップ3の主軸副軸基準面に対して第1及び第2の波長の光ビームの光軸が垂直に立ち上がるように第1及び第2の光源31,32や第1及び第2の立ち上げミラー41,42が調整設置される。また、その他の光学部品についても同様の観点から調整、設置される。主軸副軸基準面とは、光ピックアップ3をガイドする主軸62及び副軸63の中心線を含む平面である。
【0115】
このステップS1において、第1の光源31の第1の波長用の発光点は、第1の導光光学系28の光軸上に位置するよう調整される。そして、第1の光源31の第1の波長用の発光点は、各光学部品の光軸を経由した後に第1の立ち上げミラー41で反射された光ビームが、主軸副軸基準面に対して垂直に立ち上がる位置となるように調整される。また、第2の光源32の第2の波長用の発光点34aは、第2の導光光学系29の光軸上に位置するよう調整される。そして第2の光源32の第2の波長用の発光点34aは、各光学部品の光軸を経由した後に第2の立ち上げミラー42で反射された光ビームが、主軸副軸基準面に対して垂直に立ち上がる位置となるように調整される。ところで、第2の光源32の第3の波長用の発光点34bは、軸上に配置される第2の波長用の発光点に対して、軸外に配置されることとなるが、第2の対物レンズ34のコマ収差の方向である概ねラジアル方向に対応する方向に位置するように配置調整される。(図16参照)。そして、第1及び第2の導光光学系28,29を構成する他の部品は、第1及び第2の光源31,32から出射された光ビームが中心を通るよう配置される。
【0116】
ステップS2において、第1及び第2の対物レンズ33,34が対物レンズ駆動部51のレンズホルダ52に固定される。
【0117】
具体的にこのステップS2において、第1及び第2の対物レンズ33,34は、それぞれのコマ収差の方向がラジアル方向の例えば外側に向けて一致するように配置され、対物レンズ駆動部51のレンズホルダ52に固定される。また、このとき、第1及び第2の対物レンズ33,34の光軸は、なるべく平行となるように取付固定される。これにより、後述のように第1の対物レンズ33の光軸を調整することにより第2の対物レンズ34の光軸も所望の状態に近くすることができる。
【0118】
ステップS3において、図6(a)に示すように第1の対物レンズ33の光軸が第1の導光光学系28の光軸と一致するように対物レンズ駆動部51が光ピックアップ3に取り付けられる。すなわち、対物レンズの光軸が調整される。
【0119】
このステップS3では、アクチュエータ固定部としての支持体53を光ピックアップ3のピックアップベース50に固定することで対物レンズ駆動部51を光ピックアップ3に取り付ける。この対物レンズ駆動部51取付時において、チルト補正機構はオフとされている。対物レンズ駆動部51は、アクチュエータ可動部としてのレンズホルダ52が支持体53に対してチルト方向には変位していない状態で、第1の対物レンズ33の光軸が第1の導光光学系28から導かれる光ビームの光軸と一致するように調整される。チルト方向には変位していない状態とは、第1の対物レンズ33を用いる場合のレンズホルダ52及び支持体53の基準となる位置関係であることを意味する。例えば、かかる状態とは、レンズホルダ52が支持体53に対して変位していない状態に対して、レンズホルダ52が光軸方向に変位された状態を意味するものとする。また、これにより、第2の対物レンズ34の光軸も、第2の導光光学系29の光軸と一致する状態に近くなるが、ここでは、高密度記録再生を行う第1の対物レンズ33の光軸を最適な状態となるように優先して調整する。具体的には、光ピックアップ3の主軸副軸基準面に対し、第1の対物レンズ33の光軸が垂直になるように調整が行われる。このことは、換言すると、レンズ光軸と垂直な面をもつレンズ外周部と主軸副軸基準面とが平行となるように調整されていることを示す。
【0120】
尚、このステップS2及びステップS3において、対物レンズが調整されることとなる。かかるステップにおいて、第1の導光光学系28により第1の対物レンズ33に導かれる光ビームの光軸と、第1の対物レンズ33の光軸とが略一致するように、第1の対物レンズ33が光ピックアップ3のレンズホルダ52に固定される。
【0121】
ステップS4において、光ピックアップの取付角度が測定される。ここで、取付角度とは、光ピックアップ3と光ディスク取付基準面との相対角度を調整するための取付角度、すなわちスキュー量を意味する。かかるステップS4においては、第1の対物レンズ33を用いる場合の光ピックアップ3とディスク基準面との相対角度の最適値を測定する。
【0122】
ここで、この必要スキュー量を算出する手法について図17を用いて説明する。例えば、ステップS4では、図17(a)に示すような出力を得る図17(b)に示す干渉計又は波面センサからなる計測器71が用いられる。かかる計測器71は、上述のように第1の対物レンズ33が取り付けられた光ピックアップ3の第1の対物レンズ33を通過した光ビームのコマ収差(λrms)を計測する。そして、計測器71は、コマ収差と、ディスクチルト感度とから、最適相対角を算出する。ここで、最適相対角(°)=コマ収差(λrms)/ディスクチルト感度(λrms/°)の関係が成立している。
【0123】
また、必要スキュー量を算出する他の手法について図17(c)及び図17(d)を用いて説明する。この手法では、図17(c)に示すような出力を得る図17(d)に示すスポット観察が可能な計測器72が用いられる。かかる計測器72は、上述の様に第1の対物レンズ33が取り付けられた光ピックアップ3を傾斜させながら、第1の対物レンズ33を通過した光ビームのスポット形状を図17(c)のように計測する。そして、計測器72は、1次リング72aの強度がバランスする角度を最適相対角として計測する。
【0124】
また、必要スキュー量を算出するさらに他の手法について図18を用いて説明する。この手法では、OPU評価機上で、光ピックアップと光ディスク取付基準面との相対角度を変化させながら、ジッター(Jitter)等を測定する。そして、ジッターが最も小さく最適となる相対角度を最適相対角θPとして算出する。尚、図18に示す場合は、ジッター以外の信号を検出してもよく、例えば、RF信号又はトラッキングエラー信号の振幅が最大となる場合の相対角度を最適相対角として算出してもよい。また、エラーレートが小さくなるときを最適な角度として検出しても良い。
【0125】
尚、このステップS4では、いずれの手法をとる場合にも、第1の対物レンズ33を用いた場合の最適角度を算出しているが、さらに、第2の対物レンズ34を用いた場合の最適角度についてもステップS6のために測定検出する。
【0126】
ステップS5においては、光ピックアップが取り付けられる。かかるステップS5においては、スキュー調整機構64は、光ピックアップ3を支持する主軸62及び副軸63のシャフト高さを調整し、ディスク取付基準面67aと光ピックアップ3との相対角度がステップS4で算出された最適相対角となるように調整する。そして、光ピックアップ3は、最適相対角の状態で光ディスク装置1に取付固定される。
【0127】
尚、このステップS4及びステップS5において、光ピックアップの取付角度が調整されることとなる。かかるステップにおいて、光ピックアップ3は、光ディスクに対して最適相対角となるように調整される。ここで、光ピックアップ3は、第1の対物レンズを用いた場合に最適相対角となるように調整される。ここで、このステップS4とステップS5とを同じステップにて行うように構成しても良い。この場合、具体的には例えば、光ピックアップ3とディスク基準面との相対角度を変化させながら、直接光ピックアップの収差を測定し、収差が最適となる相対角度となるように調整するというものである。
【0128】
ステップS6においては、第2の対物レンズ34を用いる場合の最適チルト角度を算出して記憶させる最適状態算出記憶ステップである。ステップS6において、計測器71,72等は、ステップS4で測定された結果に基づいて第2の対物レンズ34を用いる場合の最適チルト角度を算出する。すなわち、ステップS4では、第1の対物レンズ33を用いる場合の光ピックアップ3の最適相対角と、第2の対物レンズ34を用いる場合の光ピックアップ3の最適相対角とが算出されている。計測器71,72等は、この2つの最適相対角に基づいて、図7のように相対角度θPで傾斜された光ピックアップ3において、第2の対物レンズ34を用いる場合の図8に示す最適のチルト角θAを算出する。このように算出された最適のチルト角θAとは、第2の対物レンズ34による第2、第3の光ディスクに対する初期コマ収差をチルト補正機構としての対物レンズ駆動部51を用いて最適に補正するようなチルト角度である。そして、当該ステップにおいて、記憶部としての光ピックアップ3の内部メモリ26は、当該チルト角度θAを記憶する。尚、記録再生時においては、光ピックアップ3は、第2の対物レンズ34を用いる場合には、内部メモリ26に記憶されたチルト角度θAに基づいて、対物レンズ駆動部51により第2の対物レンズ34を図8に示すように傾斜させる。尚、ここでは、ステップS4で算出された第2の対物レンズ34の最適チルト角度を算出し、これに基づき、チルト角度θAを算出するように構成したが、これに限られるものではない。すなわち、実際に図7のように取り付けられた光ピックアップ3において、図8に示すようにチルトを変動させ、第2の対物レンズ34により集光される光ビームの収差が一番小さなときの角度をチルト角度θAとしてもよい。尚、ここでは、当該チルト角度θAについての情報を光ピックアップ3の内部メモリ26に記憶するものとして説明したがこれに限られるものではない。すなわち、当該チルト角度θAを記憶する記憶部として、光ディスク装置1のシステムコントローラ7に含まれるメモリやシステムコントローラ7に接続されるメモリを用いるよう構成してもよい。このように、光ピックアップ3自体がメモリを有さない場合には、かかるステップS4で算出された最適のチルト角θAは、例えば2次元バーコード等を情報伝達用の記憶部として用いて記憶される。具体的には、製造装置により、かかるチルト角θAを含めた情報を光学的に読み取り可能な2次元バーコード等を作成して例えば光ピックアップ3の筐体表面上に貼り付ける。そして、光ピックアップ3を光ディスク装置1に組み込む際に製造装置によりこのバーコードを読み取り、かかる情報を光ディスク装置1内部の記憶部(メモリ)に格納するように構成しても良い。
【0129】
以上のような光ピックアップ製造方法は、上述したような高密度記録光ディスク用の対物レンズとしてプラスチック製のものを用いる場合の温度変化時のコマ収差の変動を低減するという効果を有する光ピックアップ3を製造することができる。当該製造方法は、特に、ステップS3を備えることにより、第1の対物レンズ33を使用する場合の温度変化時のコマ収差の変動を低減することを実現する。また、当該製造方法は、特にステップS6を備えることにより、上述の様に第1の対物レンズ33用の最適化を行った光ピックアップにより、第2の対物レンズを用いて第2及び第3の光ディスクに対してもコマ収差を低減した状態とすることを実現する。
【0130】
〔9.光ピックアップの制御方法〕
次に光ピックアップ3の制御方法について、図20を用いて説明する。具体的に、上述した光ピックアップ3を有する光ディスク装置1は、図20のフローチャートに示すような記録再生方法を行い、この記録再生において所定の光ピックアップ3の制御を行う。記録再生方法は、ステップS11〜S17を有する。
【0131】
ステップS11において、光ディスク装置1のディスク装着部に光ディスク2が装着され、記録又は再生の開始釦が操作されると、システムコントローラ7は、レーザ制御部21を駆動し、第1又は第2の光源部31,32より光ビームを出射させる。また、このステップS11においてシステムコントローラ7は、サーボ制御部9でスピンドルモータ4を駆動してディスク装着部に装着された光ディスク2を回転操作する。
【0132】
次に、ステップS12において、光ピックアップ3及びディスク種類判別部22は、表面反射率、形状的及び外形的な違い等から反射光量の変化を検出し、光ディスク2を検知して判別する。尚、この光ディスク判別ステップの結果により、第1の波長の光ビームを用いる場合には、対物レンズ駆動部51のチルト補正機能を用いず、第2及び第3の波長の光ビームを用いる場合には、対物レンズ駆動部51のチルト補正機能を用いることとなる。また、このステップS12において、装着された光ディスクが第1の光ディスク11と判別された場合には、ステップS13に進む。また、このステップS12において、装着された光ディスクが第1の光ディスク11でないと判別された場合には、ステップS15に進む。装着された光ディスクが第1の光ディスク11でない場合は、第2及び第3の光ディスクであった場合である。また、ここで、第2及び第3の光ディスク12,13のいずれかであることも判別されるように構成してもよい。
【0133】
ステップS13において、第1の対物レンズ33を用いて第1の光ディスクに記録再生を行うために光ピックアップ3の各部を調整(第1の最適化調整)する。ステップS13において、制御部27は、第1の光源31から記録又は再生に応じた強さで第1の波長の光ビームを出射させる。また、制御部27は、システムコントローラ7の制御に応じてコリメータレンズ駆動部48を制御して、第1のコリメータレンズ36を所定の位置に移動させる。このとき、第1のコリメータレンズ36は、ディスク種類判別部22で検出された光ディスク2の種類に応じた基準位置に移動される。また、制御部27は、コリメータレンズ駆動部48で第1のコリメータレンズ36を光軸方向に微動して球面収差の補正も行う。具体的に制御部27は、光検出器39により検出されるRF信号の品位が良くなる方向に、すなわち光検出器39により検出されるRF信号のジッタ量を検出し、このジッタ量が最小となる方向に、第1のコリメータレンズ36を移動する。このステップにおいて、サーボ制御部9は、フォーカスエラー信号に基づいて対物レンズ駆動部51を駆動して第1の対物レンズ33をフォーカス方向に移動させてフォーカス制御を行う。尚、このステップにおいて、制御部27は、対物レンズ駆動部51のチルト補正機能を、使用させない。換言すると対物レンズ駆動部51は、チルト方向にレンズホルダ52及び第1の対物レンズ33を駆動させない。そしてステップS14に進む。
【0134】
ステップS14において、制御部27は、光ディスク2に対する情報信号の記録又は再生を開始する。この際、光ピックアップ3は、チルト補正機構を使用しない状態で第1の光ディスクに対して情報信号の記録再生を行う。また、このステップにおいて、サーボ制御部9は、トラッキングエラー信号に基づいて対物レンズ駆動部51を駆動して第1の対物レンズ33をトラッキング方向に移動させてトラッキング制御を行う。そして、システムコントローラ7より記録再生動作が終了であると判断された場合にはステップS17に進む。
【0135】
ステップS15において、第2の対物レンズ34を用いて第2又は第3の光ディスクに記録再生を行うために光ピックアップ3の各部を調整(第2の最適化調整)する。以下では、第2の光ディスクに記録再生を行う場合について説明する。尚、第3の光ディスクに記録再生を行う場合についても、以下で説明する場合と同様に、第3の光ディスクに対応した最適化調整がされ、チルト補正機構を用いて記録再生が行われる。ステップS15において、制御部27は、第2の光源32の第2の波長用の発光部から記録又は再生に応じた強さで第2の波長の光ビームを出射させる。
【0136】
このステップS15において、制御部27は、例えば内部メモリ26に記憶された図8に示す最適チルト角度に基づいて対物レンズ駆動部51を駆動して、チルト方向にレンズホルダ52及び第2の対物レンズ34を駆動させる。そして、第2の対物レンズ34は、上述したようにコマ収差が低減された状態で、図8に示すような状態で傾斜されている。また、このステップにおいて、サーボ制御部9は、フォーカスエラー信号に基づいて対物レンズ駆動部51を駆動して第2の対物レンズ34をフォーカス方向に移動させてフォーカス制御を行う。そしてステップS16に進む。
【0137】
ステップS16において、光ピックアップ3は、光ディスク2に対する情報信号の記録又は再生を開始する。この際、光ピックアップ3は、チルト補正機構としての対物レンズ駆動部51を使用して第2の光ディスクに対して情報信号の記録又は再生を行う。さらに、動的にチルト補正を行う場合には、サーボ制御部9は、光ディスク2の反りに対してコマ収差を低減できるようレンズチルト補正量を決定し、対物レンズ駆動部51を駆動して第2の対物レンズ34をチルト方向に変位させる。また、このステップにおいて、サーボ制御部9は、トラッキングエラー信号に基づいて対物レンズ駆動部51を駆動して第2の対物レンズ34をトラッキング方向に移動させてトラッキング制御を行う。そして、システムコントローラ7より記録再生動作が終了であると判断された場合にはステップS17に進む。
【0138】
ステップS17において、レーザ制御部21は、第1又は第2の光源31、32から光ビームの出射を停止させ、サーボ制御部9は、スピンドルモータ4の駆動を停止させる。
【0139】
以上のような図20に示した処理によれば、光ディスクの種類に応じて、用いる対物レンズ毎にそれぞれの最適なコマ収差で記録再生を行うことができ、良好な記録再生特性を実現する。
【0140】
すなわち、ステップS12〜ステップS16を備える光ピックアップ制御方法は、第1の対物レンズを用いる場合と第2の対物レンズを用いる場合とで、対物レンズ駆動部51のチルト補正機構を使用するかしないかを決定している点に特徴を有する。すなわち、光ピックアップ3は、第1の光ディスクに対して記録又は再生が行われる場合には、図7に示すように、チルト補正機構を使用しない状態で第1の光ディスクに対して情報信号の記録又は再生を行う。一方、この光ピックアップ3は、第2、第3の光ディスクに対して記録又は再生が行われる場合には、図8に示すように、チルト補正機構を使用して第2、第3の光ディスクに対して情報信号の記録又は再生を行う。
【0141】
以上のような光ピックアップ制御方法は、高密度記録用の対物レンズとしてプラスチック製のレンズを用いた光ピックアップ3により環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。
【0142】
以上のように本発明を適用した光ピックアップ3は、対物レンズをプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。すなわち、光ピックアップ3は、量産性や軽量化を実現させるとともに、良好な記録再生特性を実現する。
【0143】
尚、上述では、2つの対物レンズを有する光ピックアップ3について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、1つの対物レンズのみを有する光ピックアップにも適用可能なものである。
【0144】
〔10.光ピックアップの他の例について(第2の実施の形態)〕
次に、本発明が適用された光ピックアップの他の例として1つの対物レンズのみを有する光ピックアップ80について図21を用いて説明する。尚、対物レンズの数が異なることを除いて、上述した光ピックアップ3と同様であるので、共通する部分には同一の符号を付すとともに詳細は省略する。
【0145】
光ピックアップ80は、第1の光源31と、第2の光源32と、第1及び第2の光源31,32から出射された光ビームの光路を合成する光路合成素子としてのビームスプリッタ81とを備える。また、光ピックアップ80は、上述した第1の対物レンズ33及び第1のコリメータレンズ36に換えて、これらと同様の機能を3波長共通に有するように構成された対物レンズ82及びコリメータレンズ83を備える。また、光ピックアップ80は、上述した偏光ビームスプリッタ38、マルチレンズ40及び光検出器39に換えて、これらと同様の機能を3波長共通に有するよう構成されたビームスプリッタ84、マルチレンズ85及び光検出器86を備える。
【0146】
コリメータレンズ83には、第1のコリメータレンズ36と同様に、光軸方向に駆動させるコリメータ駆動部48が設けられている。コリメータレンズ83及びコリメータレンズ駆動部48は、温度変化やカバー層厚さ変化やディスク種類に応じて発生する球面収差を低減でき、適切なビームスポットを形成する。
【0147】
対物レンズ82は、異なる3波長の光ビームをそれぞれカバー層厚さが異なる第1乃至第3の光ディスクの信号記録面に集光する対物レンズである。対物レンズ82は、例えば、図22に示すように、屈折機能を有する第1の素子82Aと、回折機能を有する第2の素子82Bとからなり、かかる第1及び第2の素子82A,82Bがホルダ82Cにより一体化されることにより3波長互換機能を有している。対物レンズ82は、例えば、第2の素子82Bに設けられた回折部82B1,82B2が、第1の波長LB1に対しては回折作用を施さず、第1の素子82Aの屈折機能により第1の波長の光ビームを第1の光ディスクの信号記録面11sに適切に集光させる。そして対物レンズ82は、例えば第2の素子82Bの入射面側に設けられた回折部82B1が、第2の波長LB2に対しては所定の回折作用を発揮する。対物レンズ82は、これと第1の素子82Aの屈折作用により第2の波長の光ビームを第2の光ディスクの信号記録面12sに適切に集光させる。また対物レンズ82は、例えば第2の素子82Bの出射面側に設けられた回折部82B2が、第3の波長に対しては所定の回折作用を発揮する。対物レンズ82は、これと第1の素子82Aの屈折作用により第3の波長の光ビームLB3を、第3の光ディスクの信号記録面13sに適切に集光させる。尚、第2の素子82Bによる回折作用は、これに限られるものではなく、第1の波長に対しても所定の回折作用を施すように構成しても良い。また、第2の素子82Bに設けられる回折部は、例えば、複数の領域内のそれぞれに輪帯状の回折構造が形成され、かかる領域毎に、各波長の光ビームに所定の回折作用を発揮させる構成としてもよい。かかる対物レンズは、第2の素子82Bの回折機能と、第1の素子82Aの屈折機能とにより、3波長互換を実現する。尚、3波長互換を有する対物レンズは、かかる2群構成のものに限られるものではなく、例えば、上述のような回折機能を有する回折部が屈折機能を有する非球面形状とされたレンズ形状の表面に重畳して設けられるように構成しても良い。
【0148】
対物レンズ82は、プラスチック製であり、上述した第1の対物レンズ33と同様に、対物レンズ駆動部51により移動自在に保持されている。対物レンズ82は、光検出器86で検出された光ディスク2からの戻り光により生成されたトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号に基づいて、対物レンズ駆動部51により変位される。対物レンズ82は、第1乃至第3の発光部からの光ビームが対応する光ディスクの記録面上に形成された記録トラックに追従させる。光ピックアップ80に設けられる対物レンズ駆動部51は、第1の光ディスクへの記録及び再生時には、対物レンズ82のチルト方向への傾斜は行わない。換言すると、第1の光ディスクへの記録及び再生時には、チルト補正機構は使用されず、対物レンズ及びその周辺の温度環境が変化してもその状態を維持する。
【0149】
その一方で、対物レンズ駆動部51は、第2及び第3の光ディスクへの記録及び再生時には、上述した第2の対物レンズ34と同様に、チルト補正機構としての機能を発揮させる。すなわち、対物レンズ駆動部51は、第2及び第3の波長の光ビームが入射される場合、コマ収差が最も低減されるように予め決められた所定の最適角度θAだけ、図23(c)に示すように、当該チルト方向に対物レンズ82を傾斜させる。換言すると、第2、第3の光ディスクへの記録及び再生時には、チルト補正機構は使用され、これにより最適な記録環境及び再生環境を得ることができる。尚、第2、第3の光ディスクを用いる場合のチルト駆動は、静的でもよく、動的でもよい。
【0150】
このように第2及び第3の波長を用いる場合にチルト方向に傾斜可能とされた対物レンズ82は、複数波長に互換性を有する互換対物レンズを設ける構成において、次の効果を奏する。かかる構成は、図23(b)に示すように第1の波長を用いる場合の対物レンズ82を最適な状態に取り付けることを可能とする。すなわち、互換対物レンズにおいては、各波長毎にコマ収差に対する最適な取付角度が異なる場合がありうる。また、第1乃至第3の波長の光ビームが通過する光学部品の製造誤差や配置誤差等により各波長の光ビームに発生するコマ収差も異なる場合がある。そして、かかる互換対物レンズをプラスチック製とする場合には、レンズチルトコマ収差感度の温度特性を考慮すると、高密度記録に対応した第1の波長を用いる場合の取付角度を最優先する必要がある。よって、図23(b)を用いて後述するように第1の波長に対する初期コマ収差が低減できるように光ピックアップ80自体をスキュー調整する。かかる構成により、このままの対物レンズ82を用いると、第2及び第3の波長に対しては、コマ収差が発生することになる場合がある。これに対し、第2及び第3の波長を用いる場合にチルト方向に傾斜可能とされた対物レンズ82は、第2及び第3の波長を用いる場合にも最適な状態で記録・再生を行うことを可能とする。
【0151】
また、対物レンズ82は、図6(a)で説明したのと同様に、導光光学系と光軸が一致するように取り付けられている。すなわち、対物レンズ82は、図23(a)に示すように、導光光学系87により導かれた第1の波長の光ビームの光軸L87と、対物レンズ82の光軸L82とが略一致するように取り付けられている。ここで、導光光学系87とは、対物レンズ駆動部51に可動自在に取り付けられる対物レンズ82以外の光学部品を意味する。尚、この対物レンズ82は、第1の波長に対しては、上述した第1の対物レンズ33と略同じ特性を有しており、すなわち、上述した条件下における第1の波長に対するレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]とされている。
【0152】
以上のように構成された光ピックアップ80は、装着された光ディスクの種類に応じて、第1及び第2の光源31,32に設けられた出射部から第1乃至第3の波長の光ビームのうち光ディスクの種類に対応した波長の光ビームを出射させる。そして、光ピックアップ80は、光検出器86により検出された戻り光により生成されたフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号に基づいて、対物レンズ82を駆動変位する。光ピックアップ80は、上述と同様に、対物レンズ82がサーボ信号により駆動変位されることにより、光ディスク2の記録トラック上に合焦されて、情報信号の記録又は再生を行う。
【0153】
この光ピックアップ80を構成する対物レンズ82の第1の光ディスク及び第1の波長に対するレンズチルトコマ収差感度の温度特性については、上述の〔3.〕で説明した第1の対物レンズ33と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0154】
次に、かかる光ピックアップ80における初期コマ収差の補正、光ピックアップの相対角度調整、光ピックアップの作用・効果について説明するが、基本的には上述した〔4.〕〜〔6.〕の内容と略同様である。以下では、特徴的な部分についてのみ説明する。
【0155】
この光ピックアップ80において、第1の波長に対する初期コマ収差の補正は、光ディスク装置1を構成するに際し、光ディスク2と光ピックアップ80との相対的な傾きを調整することによって行われる。すなわち、図7で説明したのと同様に、図23(b)に示すように光ピックアップ80自体のスキュー調整を行うことにより初期コマ収差を抑えるものである。尚、このとき、対物レンズ82は、2波長又は3波長に共通であるので、あくまで高密度記録光ディスクである第1の光ディスクに対応した第1の波長に対する初期コマ収差を抑えるように当該スキュー調整が行われる。
【0156】
本発明を適用した光ピックアップ80は、例えばBD等の高密度記録に対応するとともにプラスチック製の対物レンズ82と導光光学系87の光軸を一致させた状態でレンズホルダ52に取り付けられている点に特徴を有する。また、光ピックアップ80は、ディスク取付基準面67aとの関係で、第1の波長に対する対物レンズ82の初期コマ収差を補正するように傾斜調整される点に特徴を有する。このように、光ピックアップ80は、対物レンズ82のレンズチルトコマ収差感度の温度特性に鑑みて構成されている。光ピックアップ80は、かかる構成により、環境温度変化があったときにも短波長である第1の波長の光ビームを用いる際のコマ収差の変動を低減し、すなわち、コマ収差を低減した状態で記録再生を行うことを可能とする。よって、光ピックアップ80は、高密度記録光ディスクに対応する対物レンズ82をプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させる。それとともに、光ピックアップ80は、レンズチルトコマ収差感度の変動を考慮した構成とすることにより、環境温度変化があったときにも良好な記録再生特性を実現する。
【0157】
また、この光ピックアップ80において、対物レンズのコマ収差の方向と取付方向については、対物レンズが一つであることを除き、〔7.〕で説明したのと同様である。また、この光ピックアップ80の製造方法についても、対物レンズが一つであることを除き、〔8.〕で説明したのと略同様である。尚、ステップS4においては、第1及び第2の対物レンズ33,34を用いた場合の最適角度を算出するのに換えて、第1及び第2の波長を用いる場合の最適角度を算出することとなる。そしてステップS5においては、第1の波長を用いる場合の最適角度となるように光ピックアップ80を調整して光ディスク装置1に取付固定される。またステップS6においては、第2の波長を用いる場合の最適チルト角度を算出して内部メモリ26に記憶させる。
【0158】
かかる光ピックアップ製造方法は、高密度記録用をも兼用した互換対物レンズとしてプラスチック製のレンズを用いる場合の温度変化時のコマ収差の変動を低減するという効果を有する光ピックアップ80を製造することができる。
【0159】
また、この光ピックアップ80の制御方法についても、対物レンズが一つであることを除き、〔9.〕で説明したのと略同様である。尚、ステップS14においては、光ピックアップ80は、チルト補正機構を使用しない状態で第1の光ディスクに対して第1の波長の光ビームを照射して情報信号の記録再生を行う。すなわち、対物レンズ82をチルト方向に傾斜させない。そして、ステップS16において、光ピックアップ80は、チルト補正機構としての対物レンズ駆動部51を使用して第2の光ディスクに対して第2の波長の光ビームを照射して情報信号の記録再生を行う。すなわち、図23(c)に示すように対物レンズ82をチルト方向に傾斜させる。
【0160】
かかる光ピックアップ制御方法は、高密度記録用をも兼用した互換対物レンズとしてプラスチック製のレンズを用いた光ピックアップ80により環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。
【0161】
以上のように、本発明を適用した光ピックアップ80は、対物レンズ82をプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。すなわち、光ピックアップ80は、量産性や軽量化を実現させるとともに、良好な記録再生特性を実現する。さらに、光ピックアップ80は,光学系や光学部品を共通化することにより小型化を実現する。
【0162】
尚、上述の光ピックアップ3,80では、第2、第3の光ディスクの記録再生時にチルト補正機構としての対物レンズ駆動部51により対物レンズを傾斜することでコマ収差を低減するようにしたが、これに限られるものではない。すなわち、上述のチルト補正機構としての対物レンズ駆動部51は、対物レンズを傾斜させることで対物レンズにより集光する光ビームにコマ収差を発生させ信号記録面上のコマ収差を調整する機能を有していた。換言すると、光ピックアップ3、80は、対物レンズにより集光される光ビームのコマ収差を調整するコマ収差調整部としての対物レンズ駆動部51を備えるものであったが、かかる光ピックアップに設けられるコマ収差調整部はこれに限られるものではない。すなわち、本発明は、コマ収差調整部としての液晶素子を有する光ピックアップにも適用可能なものである。
【0163】
〔11.光ピックアップの更に他の例について(第3の実施の形態)〕
次に、本発明が適用された光ピックアップの更に他の例としてコマ収差調整部としての液晶素子を有する光ピックアップ90について図24を用いて説明する。尚、液晶素子が設けられていることと、対物レンズ駆動部51が所謂2軸アクチュエータであることを除いて光ピックアップ3と同様であるので、共通する部分には同一の符号を付すとともに詳細は説明する。
【0164】
光ピックアップ90は、図24に示すように、第1及び第2の光源31,32と、第1及び第2の対物レンズ33,34とを有する。また、光ピックアップ90は、上述した光ピックアップ3と同様に、レンズホルダ52,支持体53、サスペンション54等からなる対物レンズ駆動部51を有する。ただし、かかる光ピックアップ90に用いられる対物レンズ駆動部51は、トラッキング及びフォーカス方向にのみ対物レンズを駆動可能な所謂2軸アクチュエータであるものとして説明する。
【0165】
また、光ピックアップ90は、第1の導光光学系28として、第1のグレーティング35、第1のコリメータレンズ36、第1の立ち上げミラー41、1/4波長板49、偏光ビームスプリッタ38、第1の光検出器39、マルチレンズ40を備える。
【0166】
また、光ピックアップ90は、第2の導光光学系91として、第2のグレーティング43、第2のコリメータレンズ44、折り曲げミラー45、第2の立ち上げミラー42、ビームスプリッタ46、第2の光検出器47を備える。さらに、光ピックアップ90は、第2の導光光学系91として、第2のコリメータレンズ44及び折り曲げミラー45の間に液晶素子92が設けられている。液晶素子92は、コマ収差を発生可能な電極パターンを有した一対の電極と、一対の電極間に配向膜を介して挟まれた液晶分子等を有している。かかる液晶素子92は、所定の電位が印加されることで通過する光ビームに所定の強さのコマ収差を発生させ、光ディスク上のコマ収差を調整することができる。換言すると、液晶素子92は、上述した図7に示すように光ピックアップ自体を相対的にスキュー調整させることにより発生するコマ収差を相殺するコマ収差を発生させることで、コマ収差を低減できる。尚、この相殺されるコマ収差には、第2の導光光学系91や第2の対物レンズ34の製造誤差や配置誤差に起因するコマ収差も含めることができる。
【0167】
液晶素子92を有する光ピックアップ90は、上述の光ピックアップ3が図8に示すようにチルト方向に第2の対物レンズ34を傾斜するのに換えて、第2、第3の光ディスクに照射する光ビームに所定のコマ収差を付与する。このコマ収差量は、上述した光ピックアップ3における適切なチルト角θAだけ第2の対物レンズ34を傾斜させた時に発生するコマ収差量と同一量である。これにより、光ピックアップ90は、第2及び第3の光ディスクの記録再生時には、液晶素子92を使用することで最適な状態で記録・再生を可能とする。
【0168】
以上のように構成された光ピックアップ90は、装着された光ディスクの種類に応じて、第1及び第2の光源31,32に設けられた出射部から第1乃至第3の波長の光ビームのうち光ディスクの種類に対応した波長の光ビームを出射させる。そして、光ピックアップ90は、第1及び第2の光検出器39,47により検出された戻り光により生成されたフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号に基づいて、第1又は第2の対物レンズ33,34を駆動変位する。これにより、光ピックアップ90は、上述と同様に各対物レンズがサーボ信号により駆動変位されることにより、光ディスク2に対して情報信号の記録又は再生を行う。
【0169】
かかる光ピックアップ90における、レンズチルトコマ収差感度の温度特性、初期コマ収差の補正、光ピックアップの相対角度調整、光ピックアップの作用・効果については、上述した〔3.〕〜〔6.〕で説明したのと同様であるので、詳細な説明は省略する。そして、本発明を適用した光ピックアップ90は、例えばBD等の高密度記録に対応するとともにプラスチック製の第1の対物レンズ33と第1の導光光学系28の光軸を一致させた状態でレンズホルダ52に取り付けられている点に特徴を有する。また、光ピックアップ90は、ディスク取付基準面67aとの関係で、第1の対物レンズ33の初期コマ収差を補正するように傾斜調整される点に特徴を有する。このように、光ピックアップ90は、第1の対物レンズ33のレンズチルトコマ収差感度の温度特性に鑑みて構成されている。光ピックアップ90は、かかる構成により、環境温度変化があったときにもコマ収差の変動を低減し、すなわちコマ収差を低減した状態で記録再生を行うことを可能とする。よって、光ピックアップ90は、第1の対物レンズ33をプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、レンズチルトコマ収差感度の変動を考慮した構成とすることにより、環境温度変化があったときにも良好な記録再生特性を実現する。
【0170】
また、光ピックアップ90は、第1の光ディスク再生時には、環境温度が変化してもコマ収差発生部としての液晶素子92を使用せず、第2、第3の光ディスク再生時等には、最適な再生環境を得るために液晶素子92を駆動してコマ収差を発生させる。これにより、光ピックアップ90は、第2、第3の光ディスクに対してもコマ収差を低減した状態で記録再生を行うことを可能とする。さらに、光ピックアップ90は、液晶素子92を設けることにより、対物レンズ駆動部51を3軸ではなく2軸アクチュエータで構成することができ、これにより装置の簡素化及び小型化を実現する。
【0171】
また、この光ピックアップ90において、対物レンズのコマ収差の方向と取付方向については、〔7.〕で説明したのと同様である。また、この光ピックアップ90の製造方法についても、チルト補正機構に換えて液晶素子を設けたことを除いて〔8.〕で説明したのと略同様である。尚、ステップS6においては、第2の対物レンズ34を用いる場合の最適チルト角度を算出するのに換えて、第2の対物レンズ34を用いる場合に液晶素子92で発生させるコマ収差量を算出する。かかるコマ収差量は、図8に示す最適のチルト角θAにより発生するコマ収差量と同一量である。そして、かかるステップS6において、算出したコマ収差量をメモリ26等の記憶部に記憶することとなる。かかる光ピックアップ製造方法は、上述したような高密度記録光ディスク用の対物レンズとしてプラスチック製のものを用いる場合の温度変化時のコマ収差の変動を低減するという効果を有する光ピックアップ90を製造することができる。また、この光ピックアップ90の制御方法についても、チルト補正機構に換えて液晶素子を設けたことを除き、〔9.〕で説明したのと略同様である。尚、ステップS14においては、光ピックアップ90は、コマ収差発生部としての液晶素子92を使用しない状態で第1の光ディスクに対して第1の波長の光ビームを照射して情報信号の記録再生を行う。そして、ステップS16において、光ピックアップ90は、コマ収差発生部としての液晶素子90を使用してコマ収差を低減した状態で第2の光ディスクに対して第2の波長の光ビームを照射して情報信号の記録再生を行う。かかる光ピックアップ制御方法は、高密度記録用の対物レンズとしてプラスチック製のレンズを用いた光ピックアップ90により環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。
【0172】
以上のように、本発明を適用した光ピックアップ90は、対物レンズをプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、環境温度変化があった場合のコマ収差を低減し、良好な記録再生特性を実現する。すなわち、光ピックアップ90は、量産性や軽量化を実現させるとともに、良好な記録再生特性を実現する。さらに、光ピックアップ90は,対物レンズ駆動部51を2軸アクチュエータで構成できるので3軸アクチュエータとする場合に比べて構成の簡素化及び小型化を実現する。
【0173】
尚、ここでは光ピックアップ3に対する変形例としてコマ収差発生部としての液晶素子92を設ける光ピックアップ90について説明したが、光ピックアップ80の変形例として液晶素子を設けてもよい。かかる場合には、例えば、コリメータレンズ83と立ち上げミラー41との間の上述の液晶素子92を設け、対物レンズ駆動部51を2軸アクチュエータとして構成すればよい。かかる光ピックアップは、上述した光ピックアップ80,90の両方の効果を奏することとなる。
【0174】
〔12.光ディスク装置の効果〕
また、本発明を適用した光ディスク装置1は、回転駆動される光ディスク2に対して光ビームを照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップを備えるものであり、この光ピックアップとして上述の光ピックアップ3等を用いている。よって、光ディスク装置1は、量産性や軽量化を実現させるとともに、温度変化時のコマ収差の低減を実現して良好な記録再生特性を実現する。
【符号の説明】
【0175】
1 光ディスク装置、 2 光ディスク、 3 光ピックアップ、 4 スピンドルモータ、 5 送りモータ、 7 システムコントローラ、 9 サーボ制御部、 11 第1の光ディスク、 12 第2の光ディスク、 13 第3の光ディスク、 14 プリアンプ、 15 信号変復調器&ECCブロック、 16 インターフェース、 17 外部コンピュータ、 18 D/A,A/D変換器、 19 オーディオ・ビジュアル処理部、 20 オーディオ・ビジュアル信号入出力部、 21 レーザ制御部、 22 ディスク種類判別部、 26 メモリ、 27 制御部、 28 第1の導光光学系、 29 第2の導光光学系、 31 第1の光源、 32 第2の光源、 33 第1の対物レンズ、 34 第2の対物レンズ、 35 第1のグレーティング、 36 第1のコリメータレンズ、 38 偏光ビームスプリッタ、 39 第1の光検出器、 40 マルチレンズ、 41 第1の立ち上げミラー、 42 第2の立ち上げミラー、 43 第2のグレーティング、 44 第2のコリメータレンズ、 45 折り曲げミラー、 46 ビームスプリッタ、 47 第2の光検出器、 48 コリメータレンズ駆動部、 50 ピックアップベース、 51 対物レンズ駆動部、 52 レンズホルダ、 53 支持体、 54 サスペンション、 62 主軸、 63 副軸、 64 スキュー調整機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、
上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記第1の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記第1の対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記第1の対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記第1の対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、
当該光ピックアップは、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜され、
上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する光ピックアップ。
【請求項2】
上記コマ収差発生部は、上記第1及び第2の対物レンズを保持するレンズホルダを有し、上記レンズホルダをチルト方向に駆動して傾斜させるチルト補正機構であり、
上記第1の光ディスク再生時には、上記チルト補正機構は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記チルト補正機構を使用して上記レンズホルダを傾斜させる請求項1記載の光ピックアップ。
【請求項3】
上記コマ収差発生部は、液晶素子である請求項1記載の光ピックアップ。
【請求項4】
上記第1及び第2の対物レンズは、それぞれ上記第1、第2の対物レンズ自体が有するコマ収差の方向を同一方向で且つ上記光ディスクの半径方向に向けて配置されている請求項2又は請求項3記載の光ピックアップ。
【請求項5】
回転駆動される光ディスクに対して光ビームを照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップを備え、
上記光ピックアップは、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、
上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記第1及び第2の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記第1の対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記第1の対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、
上記光ピックアップ及び上記光ディスクを装着するディスク装着部は、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップと上記ディスク装着部に装着される光ディスクとが相対的に傾斜するように、少なくともいずれか一方が傾斜され、
上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する光ディスク装置。
【請求項6】
波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、
上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記第1の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記第1の対物レンズは、プラスチック製である光ピックアップを製造するに際し、
光ビームを上記第1の対物レンズに導く導光光学系をベース部材に取り付ける導光光学系取付ステップと、
上記導光光学系により上記第1の対物レンズに導かれる光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように、上記第1の対物レンズを上記レンズホルダに固定する対物レンズ調整ステップと、
上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップを上記光ディスクに対して相対的に傾斜するように、調整する光ピックアップ取付角度調整ステップと、
上記光ピックアップが上記ピックアップ取付角度調整ステップで傾斜された状態で、上記第2の対物レンズによる上記第2の光ディスクに対する初期コマ収差を上記コマ収差発生部を用いて最適に補正するようなコマ収差補正量を算出し記憶部に記憶させる最適状態記憶ステップとを有する光ピックアップ製造方法。
【請求項7】
波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、
上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記第1の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記第1の対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記第1、第2の対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、
当該光ピックアップは、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜される光ピックアップを制御するに際し、
装着された光ディスクの種類を判別する光ディスク判別ステップと、
上記光ディスク判別ステップにより第1の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用しない状態で上記第1の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第1の光ディスク再生ステップと、
上記光ディスク判別ステップにより第2の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用して上記第2の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第2の光ディスク再生ステップとを有する光ピックアップ制御方法。
【請求項8】
波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、
上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、
当該光ピックアップは、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜され、
上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する光ピックアップ。
【請求項9】
上記コマ収差発生部は、上記対物レンズを保持するレンズホルダを有し、上記レンズホルダをチルト方向に駆動して傾斜させるチルト補正機構であり、
上記第1の光ディスク再生時には、上記チルト補正機構は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記チルト補正機構を使用して上記レンズホルダを傾斜させる請求項8記載の光ピックアップ。
【請求項10】
上記コマ収差発生部は、液晶素子である請求項8記載の光ピックアップ。
【請求項11】
回転駆動される光ディスクに対して光ビームを照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップを備え、
上記光ピックアップは、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、
上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、
上記光ピックアップ及び上記光ディスクを装着するディスク装着部は、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップと上記ディスク装着部に装着される光ディスクとが相対的に傾斜するように、少なくともいずれか一方が傾斜され、
上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する光ディスク装置。
【請求項12】
波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、
上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記対物レンズは、プラスチック製である光ピックアップを製造するに際し、
光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系をベース部材に取り付ける導光光学系取付ステップと、
上記導光光学系により上記対物レンズに導かれる光ビームの光軸と、上記対物レンズとが略一致するように、上記対物レンズを上記レンズホルダに固定する対物レンズ調整ステップと、
上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップを上記光ディスクに対して相対的に傾斜するように、調整する光ピックアップ取付角度調整ステップと、
上記光ピックアップが上記ピックアップ取付角度調整ステップで傾斜された状態で、上記対物レンズによる上記第2の光ディスクに対する初期コマ収差を上記コマ収差発生部を用いて最適に補正するようなコマ収差補正量を算出し記憶部に記憶させる最適状態記憶ステップとを有する光ピックアップ製造方法。
【請求項13】
波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、
上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、
当該光ピックアップは、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜される光ピックアップを制御するに際し、
装着された光ディスクの種類を判別する光ディスク判別ステップと、
上記光ディスク判別ステップにより第1の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用しない状態で上記第1の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第1の光ディスク再生ステップと、
上記光ディスク判別ステップにより第2の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用して上記第2の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第2の光ディスク再生ステップとを有する光ピックアップ制御方法。
【請求項1】
波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、
上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記第1の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記第1の対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記第1の対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記第1の対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、
当該光ピックアップは、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜され、
上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する光ピックアップ。
【請求項2】
上記コマ収差発生部は、上記第1及び第2の対物レンズを保持するレンズホルダを有し、上記レンズホルダをチルト方向に駆動して傾斜させるチルト補正機構であり、
上記第1の光ディスク再生時には、上記チルト補正機構は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記チルト補正機構を使用して上記レンズホルダを傾斜させる請求項1記載の光ピックアップ。
【請求項3】
上記コマ収差発生部は、液晶素子である請求項1記載の光ピックアップ。
【請求項4】
上記第1及び第2の対物レンズは、それぞれ上記第1、第2の対物レンズ自体が有するコマ収差の方向を同一方向で且つ上記光ディスクの半径方向に向けて配置されている請求項2又は請求項3記載の光ピックアップ。
【請求項5】
回転駆動される光ディスクに対して光ビームを照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップを備え、
上記光ピックアップは、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、
上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記第1及び第2の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記第1の対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記第1の対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、
上記光ピックアップ及び上記光ディスクを装着するディスク装着部は、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップと上記ディスク装着部に装着される光ディスクとが相対的に傾斜するように、少なくともいずれか一方が傾斜され、
上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する光ディスク装置。
【請求項6】
波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、
上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記第1の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記第1の対物レンズは、プラスチック製である光ピックアップを製造するに際し、
光ビームを上記第1の対物レンズに導く導光光学系をベース部材に取り付ける導光光学系取付ステップと、
上記導光光学系により上記第1の対物レンズに導かれる光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように、上記第1の対物レンズを上記レンズホルダに固定する対物レンズ調整ステップと、
上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップを上記光ディスクに対して相対的に傾斜するように、調整する光ピックアップ取付角度調整ステップと、
上記光ピックアップが上記ピックアップ取付角度調整ステップで傾斜された状態で、上記第2の対物レンズによる上記第2の光ディスクに対する初期コマ収差を上記コマ収差発生部を用いて最適に補正するようなコマ収差補正量を算出し記憶部に記憶させる最適状態記憶ステップとを有する光ピックアップ製造方法。
【請求項7】
波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する第1及び第2の対物レンズと、
上記第1及び/又は第2の対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記第1の対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の対物レンズに対応する第1の光ディスクは、上記第2の対物レンズに対応する上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記第1の対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該第1の対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記第1の対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記第1、第2の対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記第1の対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、
当該光ピックアップは、上記第1の対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜される光ピックアップを制御するに際し、
装着された光ディスクの種類を判別する光ディスク判別ステップと、
上記光ディスク判別ステップにより第1の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用しない状態で上記第1の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第1の光ディスク再生ステップと、
上記光ディスク判別ステップにより第2の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用して上記第2の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第2の光ディスク再生ステップとを有する光ピックアップ制御方法。
【請求項8】
波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、
上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、
当該光ピックアップは、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜され、
上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する光ピックアップ。
【請求項9】
上記コマ収差発生部は、上記対物レンズを保持するレンズホルダを有し、上記レンズホルダをチルト方向に駆動して傾斜させるチルト補正機構であり、
上記第1の光ディスク再生時には、上記チルト補正機構は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記チルト補正機構を使用して上記レンズホルダを傾斜させる請求項8記載の光ピックアップ。
【請求項10】
上記コマ収差発生部は、液晶素子である請求項8記載の光ピックアップ。
【請求項11】
回転駆動される光ディスクに対して光ビームを照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップを備え、
上記光ピックアップは、波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、
上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、
上記光ピックアップ及び上記光ディスクを装着するディスク装着部は、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップと上記ディスク装着部に装着される光ディスクとが相対的に傾斜するように、少なくともいずれか一方が傾斜され、
上記第1の光ディスク再生時には、上記コマ収差発生部は使用せず、上記第2の光ディスク再生時には、最適な再生環境を得るために上記コマ収差発生部を使用する光ディスク装置。
【請求項12】
波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、
上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記対物レンズは、プラスチック製である光ピックアップを製造するに際し、
光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系をベース部材に取り付ける導光光学系取付ステップと、
上記導光光学系により上記対物レンズに導かれる光ビームの光軸と、上記対物レンズとが略一致するように、上記対物レンズを上記レンズホルダに固定する対物レンズ調整ステップと、
上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、上記光ピックアップを上記光ディスクに対して相対的に傾斜するように、調整する光ピックアップ取付角度調整ステップと、
上記光ピックアップが上記ピックアップ取付角度調整ステップで傾斜された状態で、上記対物レンズによる上記第2の光ディスクに対する初期コマ収差を上記コマ収差発生部を用いて最適に補正するようなコマ収差補正量を算出し記憶部に記憶させる最適状態記憶ステップとを有する光ピックアップ製造方法。
【請求項13】
波長の異なる光ビームをそれぞれ保護層厚さの異なる第1及び第2の光ディスクに集光する一の対物レンズと、
上記対物レンズを通過する光ビームにコマ収差を発生させるコマ収差発生部と、
光ビームを出射する光源と上記対物レンズとの間の光路中に設けられ、通過する光ビームの発散角を変換するコリメータレンズと、
上記コリメータレンズを、光軸方向に移動させ上記対物レンズに入射する光ビームの角度を変化させることで球面収差を補正するコリメータレンズ駆動部とを備え、
上記第1の光ディスクは、上記第2の光ディスクより保護層厚さが小さく、
上記対物レンズは、環境温度が0℃〜70℃で、対応する第1の光ディスクの保護層厚さが70〜105μmで、上記第1の光ディスクに対応する光ビームの波長λ1が398〜414nmである条件において、発生する球面収差を上記コリメータレンズを移動させることで補正した状態における、当該対物レンズが傾斜することで対応する光ビームに発生するコマ収差の割合であるレンズチルトコマ収差感度が0〜0.3[λrms/°]を満足し、
上記対物レンズは、プラスチック製であり、光ビームを上記対物レンズに導く導光光学系により導かれた光ビームの光軸と、上記対物レンズの光軸とが略一致するように取り付けられ、
当該光ピックアップは、上記対物レンズによる上記第1の光ディスクに対する初期コマ収差を最適に補正するような角度で、光ディスクに対して相対的に傾斜される光ピックアップを制御するに際し、
装着された光ディスクの種類を判別する光ディスク判別ステップと、
上記光ディスク判別ステップにより第1の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用しない状態で上記第1の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第1の光ディスク再生ステップと、
上記光ディスク判別ステップにより第2の光ディスクであることを判別された際に、上記コマ収差発生部を使用して上記第2の光ディスクに対して情報信号の再生を行う第2の光ディスク再生ステップとを有する光ピックアップ制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−257542(P2010−257542A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108248(P2009−108248)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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