説明

光ピックアップ及び光ディスク装置

【課題】本発明は、減光フィルタ部を上記光ビーム及び上記反射光ビームの共通光路中に設置した場合であっても、再生特性を向上させる光ピックアップ及び光ディスク装置を実現することができる。
【解決手段】光ピックアップ1における減光フィルタ部2Cは、P偏光の光ビーム40とS偏光の反射光ビーム50における偏光方向の差異を利用して、P偏光でなる光ビーム40の光量を減少させて回折素子13に入射することにより光ビーム40を対物レンズ20へ導く一方、反射光ビーム50の光量を殆ど減少させることなくビームスプリッタ17に入射することにより反射光ビーム50を光検出器22へ導くようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ及び光ディスク装置に関し、例えばレーザダイオード及び光検出器が近傍配置された光ピックアップや、レーザダイオード及びビームスプリッタが近傍配置された光ピックアップを有する光ディスク装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ピックアップでは、再生処理時と比較して大きい照射光量が求められる記録処理時に合わせてレーザダイオードの定格が選定される。
【0003】
この光ピックアップでは、再生処理時には、レーザダイオードの出力を大きく低下させて使用する必要が生じる。ここで、一般的にレーザダイオードは、出力を小さくして使用すると、出射する光ビームの光量に対するノイズの割合が増大することが知られている。従って単にレーザダイオードの出力を小さくして使用することにより光ディスクに対する照射光量を小さくすると、光ビームにおけるノイズが増大してしまう。
【0004】
このため、図1に示すように、光ビームをほぼ100%透過する高透過部及び光ビームの一部を遮断する減光フィルタ部を有する可変フィルタ2を光ピックアップ1に設け、大きい照射光量を必要とする記録処理時には光ビームを高透過部に通過させる一方、小さい照射光量を必要とする再生処理時には光ビームを減光フィルタ部に通過させることにより、記録処理時には大きな照射光量を確保しつつ、再生処理時においてもレーザダイオードを高出力で使用して光ビームのノイズを抑制するようになされたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この光ピックアップ1では、可変フィルタ2をレーザダイオード11とビームスプリッタ17との間に設けている。これにより光ピックアップ1は、再生処理時において、光ビーム40に可変フィルタ2における減光フィルタ部を通過させてレーザダイオード11から出射された光ビーム40の光量を減少させる一方、この光ビーム40が光ディスク100によって反射されてなる反射光ビーム50をビームスプリッタ17でその方向を変化させて光検出器22へ導くため、反射光ビーム50を可変フィルタ2に通過させず、反射光ビーム50の光量を減少させないようになされている。
【特許文献1】特開2002−260272公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年、光ピックアップ1では、小型化に伴って、小型化可能な光学部品を光集積回路として一つにまとめ、一つの部品として取り扱うようになされたものがある。図2に示すように、この光集積回路4では、レーザダイオード11及び光検出器22並びにこれらの近傍の光学部品がまとめられている。
【0007】
このような光集積回路4を用いた光ピックアップ1に対して上述した可変フィルタ2を設ける場合、光集積回路4と対物レンズ20との間に可変フィルタ2を配置することになり、可変フィルタ2が上記光ビーム40及び上記反射光ビーム50の共通光路中に配置される。
【0008】
ここで、この可変フィルタ2を上記光ビーム40及び上記反射光ビーム50の共通光路中に配置した場合には、光ビーム40だけでなく反射光ビーム50が可変フィルタ2を通過することになる。すなわち、再生処理時に反射光ビーム50も減光フィルタ部を通過することになり、光検出器22で受光される反射光ビーム50の受光量が減少するため、再生特性が悪化するという問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、減光フィルタ部を上記光ビーム及び上記反射光ビームの共通光路中に設置した場合であっても良好な再生特性を呈する光ピックアップ及び光ディスク装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明においては、直線偏光でなる光ビームを出射する光源と、光ビームを集光して光ディスクに照射すると共に、光ディスクで反射された反射光ビームを受光する対物レンズと、光ビーム及び反射光ビームを分離するビームスプリッタと、ビームスプリッタから導かれる光ビームを円偏光に変換すると共に、ビームスプリッタへ導かれる反射光ビームを円偏光から光ビームと垂直な偏光方向へ変換する1/4波長板と、分離された反射光ビームを受光する光検出部と、上記光ビーム及び上記反射光ビームの共通光路中に設けられ、光ビーム及び反射光ビームにおける偏光方向の差異を利用して、光ビームの光量を減少させて対物レンズへ導く一方、反射光ビームの光量を殆ど変化させないで光検出部へ導く減光フィルタ部と、減光フィルタ部を光ビーム及び反射光ビームの光路中若しくは光路外へ駆動するフィルタ駆動部とを設け、光ディスクに照射される光ビームが所定の照射光量になるように光源から出射される光ビームの光量及びフィルタ駆動部が制御されるようにした。
【0011】
これにより、減光フィルタ部が光路中に駆動された際、光ディスクに対して照射される光ビームのみに対して選択的にその光量を減少させることができるため、減光フィルタ部を上記光ビーム及び上記反射光ビームの共通光路中に設置することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、減光フィルタ部が光路中に駆動された際、光ディスクに対して照射される光ビームのみに対して選択的にその光量を減少させることができ、かくして減光フィルタ部を上記光ビーム及び上記反射光ビームの共通光路中に設置した場合であっても良好な再生特性を呈する光ピックアップ及び光ディスク装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0014】
(1)光ディスク装置の全体構成
図3において、3は全体として光ディスク装置を示しており、図1及び図2と対応する部分を同一符号で示している。この光ディスク装置3は、光ディスク100としてCD(Compact Disc)などの信号記録層を1層だけ有する1層ディスク100a及びBD(Blu-ray Disc、登録商標)などの信号記録層を2層有する2層ディスク100bのいずれにも対応している。
【0015】
制御部32は、CPU(Central Processing Unit)と、各種プログラムなどが格納されるROM(Read Only Memory)と、当該CPUのワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)とからなり、光ディスク装置3の各部を制御する。
【0016】
すなわち制御部32は、サーボ回路33を介してスピンドルモータ34を回転させ、ターンテーブル(図示せず)に載置された光ディスク100を回転駆動する。また制御部32は、サーボ回路33を介して送りモータ35を駆動させ、ガイド軸37に沿って光ピックアップ1を光ディスク100の半径方向であるトラッキング方向に移動させる。さらに制御部32は、光ピックアップ1を制御し、光ディスク100に対する再生処理及び記録処理を実行させる。
【0017】
図4に示すように、光ピックアップ1のレーザダイオード11は、制御部32から供給される駆動電流に応じた光量で、光ディスク100の各方式に対応した波長を有するレーザ光を出射し、光ビーム40として1/2波長板12を介して回折素子13に入射させる。
【0018】
回折素子13は、光ビーム40を光ディスク100に対する再生及び記録に使用されるメインビームと各種トラッキング制御信号を生成するためのサブビームとに分光し、このメインビーム及びサブビームを光ビーム40としてビームスプリッタ17に入射する。
【0019】
ビームスプリッタ17は、入射された光ビーム40の多くをそのまま透過させ、可変フィルタ2に入射する。詳しくは後述するが、可変フィルタ2は、再生処理及び記録処理に応じて光ビーム40の光量を調整し、コリメータレンズ18に入射する。コリメータレンズ18は、発散光として入射された光ビーム40を平行光に変換し、1/4波長板19に入射する。
【0020】
1/4波長板19は、S偏光でなる光ビーム40を円偏光へ変換し、対物レンズ20に入射する。そして対物レンズ20は、光ビーム40を集光し光ディスク100に照射する。
【0021】
また対物レンズ20は、光ビーム40が光ディスク100によって反射されてなる反射光ビーム50を受光し、1/4波長板19に入射する。1/4波長板19は、円偏光でなる光ビーム40を直線偏光であるP偏光に変換し、コリメータレンズ18と、可変フィルタ2とを介してビームスプリッタ17に入射させる。
【0022】
ビームスプリッタ17は入射された反射光ビーム50を偏光面で反射し、その方向を90[°]変化させ、収差を補正するマルチレンズ21を介して光検出器22に入射する。そして、光検出器22は反射光ビーム50を光電変換して検出信号を生成し、信号処理部38(図3)へ供給する。
【0023】
信号処理部38は、この検出信号から再生RF信号及び各種サーボ制御信号を生成する。制御部32は、信号処理部38から供給されるサーボ制御信号に基づいて駆動制御信号を生成し、光ビーム40を光ディスク100における所望のトラック上に正確に照射するように対物レンズ20をフォーカス方向及びトラッキング方向に駆動する。
【0024】
さらにビームスプリッタ17(図4)は、その偏光面によって光ビーム40からその一部を所定の光量比で反射させることによって分離し、APC(Auto Power Control)用レンズ15を介してAPC用光検出器16に入射する。APC用光検出器16は入射された光ビーム40の光量を検出し、当該光量に応じた電流値でなるAPC検出電流を生成して制御部32へ供給する。
【0025】
制御部32は、このAPC検出電流が所定の電流値になるようにレーザダイオード11に供給する駆動電流を増減してレーザダイオード11の出力を調整することにより、レーザダイオード21から出射される光ビーム40の強度(以下、これを出射光強度と呼ぶ)を光ディスク100の種類や再生処理及び記録処理に応じた所定の値になるように制御する。
【0026】
このとき、制御部32は、記録処理時の光ディスク100に対する照射光量が再生処理時の照射光量よりも大きくなるようにレーザダイオード11の出力を調整する。また、制御部32は、2層ディスク100bの各信号記録層に対して照射される光ビーム40における損失が1層ディスク100aと比較して大きくなるため、この2層ディスク100bに対する照射光量を1層ディスク100aに対する照射光量よりも大きくするようにレーザダイオード11の出力を調整する。
【0027】
このように光ディスク装置3は、光ディスク100に対する再生処理及び記録処理を実行するようになされている。
【0028】
なお、S偏向及びP偏光とは、特に言及のない場合後述する可変フィルタ2の偏光面2Caに対して定義した偏光方向の呼称とする。また図4及び図6では、内部要素が見えるように紙面内に光集積回路4を示しているが、実際にはレーザダイオード11から光ディスク100に至る光軸を中心として90°回転した状態に配置されている。
【0029】
ところで、光ピックアップ1では、記録処理時に使用される高透過部2Bと再生処理時に使用される減光フィルタ部2Cからなる可変フィルタ2をビームスプリッタ17と対物レンズ20との間に配置している。
【0030】
従って、図4に示したように、レーザダイオード11から出射された光ビーム40は光ディスク100に照射される前に可変フィルタ2を通過し、光ディスク100から反射された反射光ビーム50は再度可変フィルタ2を通過することになる。
【0031】
このため、従来の可変フィルタ2(図1)を用いた場合、再生処理時に減光フィルタ部2Cを通過させることにより、光ビーム40の光量を減少させると、この減光フィルタ部2Cを通過する反射光ビーム50の光量をも減少させてしまうことになる。
【0032】
そこで本発明の光ピックアップ1では、減光フィルタ部2Cが光ビーム40のみに対して選択的にその光量を調整するようにする。
【0033】
(2)可変フィルタの構成
次に、かかる可変フィルタ2について説明する。本実施の形態では、光ビーム40がP偏光でなり、反射光ビーム50がS偏光であることを利用して、減光フィルタ部2Cが光ビーム40の光量を減少させるのに対し、反射光ビーム50の光量を殆ど変化させないようにする。
【0034】
可変フィルタ2は、フィルタ板2Aと図示しない電磁アクチュエータとによって構成されている。図5に示すように、このフィルタ板2Aは、光ビーム40の殆どをそのまま透過させる高透過部2B及び光ビーム40の一部を遮断する減光フィルタ部2Cが組み合わされてなる。従って、可変フィルタ2は、制御部32から供給される駆動電流に応じてフィルタ板2Aを駆動することにより、光ビーム40を高透過部2B又は減光フィルタ部2Cのいずれかに通過させる。
【0035】
高透過部2Bは、略立方体のプリズムでなり、入射される光ビームの偏光方向に拘わらず、その殆どを透過させるため、S偏光でなる光ビーム40及びP偏光でなる反射光ビーム50のいずれについてもその光量を殆ど減少させない。
【0036】
一方、減光フィルタ部2Cは、2つの三角プリズムが組み合わされてなり、その界面に偏光面2Caを有している。この偏光面2Caは、S偏光の光ビームの約50%を反射すると共に残りの約50%を透過させる一方、P偏光の光ビームの殆どを透過させる。すなわち、減光フィルタ部2Cは、S偏光でなる光ビーム40の光量を約50%に減少させる一方、P偏光でなる反射光ビーム50の光量を殆ど減少させないようになされている。
【0037】
従って記録処理時において、制御部32は、図4に示したように光ビーム40及び反射光ビーム50が高透過部2Bを通過するようフィルタ板2Aを駆動する。
【0038】
このとき高透過部2Bは、ビームスプリッタ17から入射される光ビーム40の殆どを透過させ、コリメータレンズ18に入射する。また、高透過部2Bは、コリメータレンズ18から入射される反射光ビーム50の殆どを透過させ、ビームスプリッタ17に入射する。
【0039】
これにより、大きな照射光量を必要とする記録処理時には、光ピックアップ1は、可変フィルタ2を通過させる際に光ビーム40の光量を殆ど減少させることがなく、十分な照射光量を確保することができる。
【0040】
一方再生処理時において、制御部32は、図6に示すように光ビーム40及び反射光ビーム50が減光フィルタ部2Cを通過するようフィルタ板2Aを駆動する。
【0041】
このとき減光フィルタ部2Cは、ビームスプリッタ17から入射される光ビーム40の約50%のみを透過させることにより、光ビーム40の光量を減少させてコリメータレンズ18に入射する。
【0042】
これにより、制御部32は、レーザダイオード11の出射光強度を可変フィルタ2が配置されない場合の約2倍に設定させて、光ビーム40におけるS/N(Signal to Noise)比を大きくすることができる。
【0043】
さらに、減光フィルタ部2Cは、光ビーム40の約50%を反射してその方向を90°変化させる。これにより、減光フィルタ部2Cは反射された光ビーム40がレーザダイオード11へ戻ることを防止することができる。
【0044】
また、減光フィルタ部2Cは、回折素子13から入射される反射光ビーム50の殆どをそのまま透過させ、ビームスプリッタ17に入射する。これにより、減光フィルタ部2Cは、光検出器22における反射光ビーム50の受光量を減少させないため、この受光量に応じて生成される再生信号である再生RF信号及び各種サーボ制御信号の品質を低下させることがない。
【0045】
このようにして、減光フィルタ部2Cは、光ビーム40及び反射光ビーム50の偏光方向の差異を利用して、偏光面2Caによって光ビーム40の一部を反射させることによりその光量を減少させる一方、反射光ビーム50の光量を殆ど減少させないようにしたため、再生処理時においても、レーザダイオード11を高出力で使用させつつ、光検出器22における反射光ビーム50の受光量を減少させないようにできる。
【0046】
(3)動作及び効果
以上の構成において、光ピックアップ1における可変フィルタ2の減光フィルタ部2Cは、S偏光の光ビーム40とP偏光の反射光ビーム50における偏光方向の差異を利用して、偏光面2Caによって光ビーム40の光量を減少させて回折素子13に入射することにより光ビーム40を対物レンズ20へ導く一方、反射光ビーム50の光量を殆ど減少させることなくビームスプリッタ17に入射することにより反射光ビーム50を光検出器22へ導くようにした。
【0047】
これにより、減光フィルタ部2Cが光ビーム40及び反射光ビーム50の光路中にあるときに、光ビーム40のみに対して選択的に光量を減少させることができ、減光フィルタ部2Cを有する可変フィルタ2を光ビーム40及び反射光ビーム50を分離するビームスプリッタ17との位置関係に拘わらず、レーザダイオード11及び対物レンズ20間の自由な位置に可変フィルタ20を配置することができ、かくして光集積回路4の一部としてレーザダイオード11及び光検出器22、又はレーザダイオード11及びビームスプリッタ17が近傍に配置されたような場合であっても、光ピックアップ1内に可変フィルタ2を設置することができる。
【0048】
減光フィルタ部2Cは、光ビーム40の一部である約50%を反射してその光量を減少させると共に、反射した光ビーム40の方向を90°変化させるようにしたため、反射した光ビーム40をレーザダイオード11から出射された光ビーム40の光路から逸らすことができ、反射した光ビーム40がレーザダイオード11への戻り光となることを防止できる。
【0049】
以上の構成によれば、光ピックアップ1における可変フィルタ2の減光フィルタ部2Cは、再生処理時において、S偏光でなる光ビーム40の光量を選択的に減少させる一方、P偏光でなる反射光ビーム50の光量を殆ど減少させないことにより、可変フィルタ2の配置に拘わらずレーザダイオード11を高出力で使用させつつ反射光ビーム50の光量を減少させないようにでき、レーザダイオード11及びビームスプリッタ17が近傍に配置されたため減光フィルタ部2Cを上記光ビーム40及び上記反射光ビーム50の共通光路中に設置する場合であっても、良好な再生特性を呈する光ピックアップ及び光ディスク装置を実現することができる。
【0050】
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、2つの三角プリズムの界面でなる偏光面2Caによって光ビーム40の一部を反射すると共にその方向を偏向させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば格子ピッチが波長付近ないし波長より短くなっている、いわゆるサブ波長回折格子や、サブ波長回折格子の構造を有すると言う点でサブ波長回折格子の延長の技術である、いわゆるフォトニック結晶、あるいは、複屈折材料を利用して偏光依存性をもたせた回折素子を使用するようにしても良い。この場合であっても上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
このサブ波長回折格子としては、例えば図7に示すように、減光フィルタ部2Cに縞状の凹凸構造2Cbを設け、この凹凸構造2Cbによって光ビーム40の一部を反射すると共に、反射した光ビーム40を回折又は散乱させるようにする。設計例として、減光フィルタ部2Cの屈折率が約1.5の場合、凹凸構造2Cbのピッチ(凹凸の1周期)を光ビーム40の波長の約60%、段差(凹凸の深さ)を光ビームの波長の約20%、にすることにより、凹凸構造2Cbに対して垂直なTM波の透過率を約98%、凹凸構造2Cbに対して平行なTE波の透過率を約80%にできる。
【0052】
また、ピッチを同一にし、凹凸構造2Cbの段差を光ビーム40の波長の約115%にすることにより、TM波の透過率を約72%、TE波の透過率を約97%にできる。この場合、光ビーム40及び反射光ビーム50の偏光方向を図7とは反対になるように設置することで、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、このときの各透過率は凹凸構造2Cbの段差及びピッチ並びに減光フィルタ部2Cの屈折率を変化させることで、任意に設計することができる。
【0053】
なお、上述の複屈折材料を利用して偏光依存性を持たせた回折素子(減光フィルタ部2Cとして使用される)は、反射光ビーム50には作用せず、光ビーム40のみを回折させることで上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。この場合の回折素子による回折光は光ディスク100に入射し、光ディスク100に焦点を結んでしまうことがありうるので、フレネルレンズの様な作用や、収差を発生させるような作用を持たせることが好ましく、これによりビームスポットをぼやけさせて光ディスク100に焦点を結ばせることを防止することができる。
【0054】
また上述の実施の形態においては、減光フィルタ部2CにおけるP偏光及びS偏光の光ビームに対する透過率を変更することにより、減光フィルタ部2Cによって光ビーム40の光量を減少する一方、反射光ビーム50の光量を殆ど変化させないようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、減光フィルタ部2CにおけるP偏光及びS偏光に対する反射率を変更するようにしても良い。
【0055】
この場合、図8に示すように、例えば2つの三角プリズムからなる高透過部2Bは偏光方向に拘わらず光ビームを高い反射率で反射する高反射膜2Baをその界面に設け、同じく2つの三角プリズムからなる減光フィルタ部2CはP偏光の光ビーム40の約半分を透過させ、約半分を反射する一方、S偏光の反射光ビーム50を高い反射率で反射する偏光膜2Caをその界面に設けるようにする。この場合、レーザダイオード11から出射される光ビーム40を90°偏向させるように可変フィルタ2を配置することにより、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
さらに上述の実施の形態においては、光ピックアップ1に光集積回路4を使用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばスペース上などの種々の制約により、レーザダイオード11及びビームスプリッタ17間に可変フィルタ2を設置できないような光ピックアップ1に対して本発明を適用することにより、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
さらに上述の実施の形態においては、光ディスク装置3は、光ディスク100として1層ディスク100a及び2層ディスク100bの双方に対応するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、いずれか一方にのみ対応するようにしても良い。この場合であっても上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
さらに上述の実施の形態においては、光ディスク装置1は、記録又は再生処理に応じて高透過部2B又は減光フィルタ部2Cを切り替え、大きな照射光量を必要とする記録処理時には光ビーム40の光量を殆ど減少させない一方、再生処理時において光ビーム40の光量を減少させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば光ディスク100の種類に応じて高透過部2B又は減光フィルタ部2Cを切り替え、大きな照射光量を必要とする光ディスク100に対して光ビーム40の光量を殆ど減少させない一方、小さな照射光量を必要とする光ディスク100に対しては光ビーム40の光量を減少させるようにしても良い。
【0059】
さらに上述の実施の形態においては、光ディスク100に照射される光ビーム40と、光ディスク100からの反射光ビーム50とを分離するために、光学薄膜を有するプリズム型のビームスプリッタ17を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば偏光依存性を有する回折格子などをビームスプリッタ17として用いることができる。この場合、ビームスプリッタ17は、その偏光状態のために光ビーム40を回折することなく透過させる一方、反射光ビーム50を回折させて光検出器22に入射する。
【0060】
さらに上述の実施の形態においては、光集積回路4を用いたことにより、レーザダイオード11及び光検出器22が近傍に配置されるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば光ビーム40と反射光ビーム50とを分離する空間が狭すぎる場合にも本発明を適用することができる。例えば、ビームスプリッタ17として偏向依存性回折素子を用い、反射光ビーム50のみを回折させて光検出器22へ導く場合がこれに相当する。この場合、減光フィルタ部2Cをレーザダイオード11とビームスプリッタ17との間に配置するものの、光ビーム40及び反射光ビーム50が完全に分離される前、すなわち光ビーム40及び反射光ビーム50の共通光路中に減光フィルタ部2Cを配置することができ、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
さらに上述の実施の形態においては、光源としてのレーザダイオード11と、対物レンズとしての対物レンズ20と、ビームスプリッタとしてのビームスプリッタ17と、光検出部としての光検出器22と、減光フィルタ部としての減光フィルタ部2Cと、フィルタ駆動部としての電磁アクチュエータと、照射光量制御部としての制御部32とによって光ディスク装置としての光ディスク装置3を構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる光源と、対物レンズと、ビームスプリッタと、光検出部と、減光フィルタ部と、フィルタ駆動部と、照射光量制御部とによって本発明の光ディスク装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の光ピックアップは、例えば電子機器に搭載される各種方式でなる光ディスクドライブに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来の光ピックアップの構成を示す略線図である。
【図2】可変フィルタの配置による反射光ビームの減少。
【図3】光ディスク装置の全体構成を示す略線図である。
【図4】記録処理における可変フィルタの配置を示す略線図である。
【図5】フィルタ板の効果の説明に供する略線図である。
【図6】再生処理における可変フィルタの配置を示す略線図である。
【図7】他の実施の形態によるフィルタ板の構成を示す略線図である。
【図8】他の実施の形態による可変フィルタの構成及び配置を示す略線図である。
【符号の説明】
【0064】
1……光ピックアップ、2……可変フィルタ、2A……フィルタ板、2B……高透過部、2C……減光フィルタ部、2Ca……偏光面、3……光ディスク装置、11……レーザダイオード、12……1/2波長板、13……回折素子、15……APC用レンズ、16……APC用光検出器、17……ビームスプリッタ、18……コリメータレンズ、19……1/4波長板、20……対物レンズ、32……制御部、33……サーボ回路、34……スピンドルモータ、35……送りモータ、38……信号処理部、100……光ディスク、40……光ビーム、50……反射光ビーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光でなる光ビームを出射する光源と、
上記光ビームを集光して光ディスクに照射すると共に、上記光ディスクで反射された反射光ビームを受光する対物レンズと、
上記光ビーム及び上記反射光ビームを分離するビームスプリッタと、
上記ビームスプリッタから導かれる上記光ビームを円偏光に変換すると共に、上記ビームスプリッタへ導かれる上記反射光ビームを円偏光から上記光ビームと垂直な偏光方向へ変換する1/4波長板と、
分離された上記反射光ビームを受光する光検出部と、
上記光ビーム及び上記反射光ビームの共通光路中に設けられ、上記光ビーム及び上記反射光ビームにおける偏光方向の差異を利用して、上記光ビームの光量を減少させて上記対物レンズへ導く一方、上記反射光ビームの光量を殆ど変化させないで上記光検出部へ導く減光フィルタ部と、
上記減光フィルタ部を上記光ビーム及び上記反射光ビームの光路中若しくは光路外へ駆動するフィルタ駆動部と
を具え、
上記光ディスクに照射される上記光ビームが所定の照射光量になるように上記光源から出射される上記光ビームの光量及び上記フィルタ駆動部が制御される
ことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
上記フィルタ駆動部は、
上記光ディスクに対する照射光量が記録処理時よりも小さい再生処理時において、上記減光フィルタ部を上記光ビーム及び上記反射光ビームの光路中へ駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
上記減光フィルタ部は、
上記光ビームの一部を上記対物レンズへ導かれる上記光ビームとは異なる方向へ偏向することにより上記光ビームの光量を減少させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項4】
上記光ピックアップは、
1層の信号記録層を有する上記光ディスク及び複数層の信号記録層を有する上記光ディスクの双方に対応している
ことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項5】
上記フィルタ駆動部は、
必要な照射光量が相対的に小さい光ディスクの処理時において、上記減光フィルタ部を上記光ビーム及び上記反射光ビームの光路中へ駆動し、
必要な照射光量が相対的に大きい光ディスクの処理時において、上記減光フィルタ部を上記光ビーム及び上記反射光ビームの光路外へ駆動する
ことを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ。
【請求項6】
直線偏光でなる光ビームを出射する光源と、
上記光ビームを集光して光ディスクに照射すると共に、上記光ディスクで反射された反射光ビームを受光する対物レンズと、
上記光ビーム及び上記反射光ビームを分離するビームスプリッタと、
上記ビームスプリッタから導かれる上記光ビームを円偏光に変換すると共に、上記ビームスプリッタへ導かれる上記反射光ビームを円偏光から上記光ビームと垂直な偏光方向へ変換する1/4波長板と、
分離された上記反射光ビームを受光する光検出部と、
上記光ビーム及び上記反射光ビームの共通光路中に設けられ、上記光ビーム及び上記反射光ビームにおける偏光方向の差異を利用して、上記光ビームの光量を減少させて上記対物レンズへ導く一方、上記反射光ビームの光量を殆ど変化させないで上記光検出部へ導く減光フィルタ部と、
上記減光フィルタ部を上記光ビーム及び上記反射光ビームの光路中若しくは光路外へ駆動するフィルタ駆動部と、
上記光ディスクに照射される上記光ビームが所定の照射光量になるように上記光源から出射される上記光ビームの光量及び上記フィルタ駆動部を制御する照射光量制御部と
を具えることを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−16166(P2008−16166A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189364(P2006−189364)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】