光ピックアップ用対物レンズおよび光ピックアップ装置
【課題】レーザ光が透過することによる劣化を抑制可能な光ピックアップ用対物レンズおよびそれを搭載した光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】
光ピックアップ用対物レンズは、レーザ光を収束させる光源側レンズ面11と、光源側レンズ面11で収束されたレーザ光を更に収束させるディスク側レンズ面12とを備える。ここで、前記第2レンズ面によって反射された前記レーザ光の集光部の一部が、前記第1レンズ面よりも外側に導かれるよう、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面が設定されている。
【解決手段】
光ピックアップ用対物レンズは、レーザ光を収束させる光源側レンズ面11と、光源側レンズ面11で収束されたレーザ光を更に収束させるディスク側レンズ面12とを備える。ここで、前記第2レンズ面によって反射された前記レーザ光の集光部の一部が、前記第1レンズ面よりも外側に導かれるよう、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面が設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ用対物レンズおよびそれを搭載した光ピックアップ装置に関し、特に、青色波長帯のレーザ光をディスク上に収束させる樹脂製の対物レンズおよびそれを搭載した光ピックアップ装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ピックアップ装置には、樹脂製の対物レンズが搭載されるようになっている。樹脂製の対物レンズはガラス製の対物レンズに比べ軽量であるため、対物レンズの駆動レスポンスを高めることができる。また、樹脂製の対物レンズは安価であるため、機器のコスト削減を図ることができる。
【0003】
以下の特許文献1には、開口数が0.75以上であって、波長が400nm程度のレーザが使用される場合に好適な対物レンズが提示されている。かかる対物レンズは、1.1≦d1/f≦3(d1:軸上レンズ厚f:焦点距離)を満たすように設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−324673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂製の対物レンズに波長400nm程度のレーザ光が入射すると、レーザ光によって対物レンズが劣化するとの問題が生じる。特に、対物レンズに用いられる樹脂材料は、400nm程度の波長帯域を吸収し易い。このため、対物レンズが劣化し、透過率等の光学特性が低下するとの問題が生じる。
【0006】
本発明は、かかる課題を解消するために為されたものであり、レーザ光が透過することによる劣化を抑制可能な光ピックアップ用対物レンズおよびそれを搭載した光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、光ピックアップ用対物レンズに関する。本態様に係る光ピックアップ用対物レンズは、レーザ光を収束させる第1レンズ面と、前記第1レンズ面で収束されたレーザ光を更に収束させる第2レンズ面とを備える。前記第2レンズ面によって反射された前記レーザ光の集光部の一部が、前記第1レンズ面よりも外側に導かれるよう、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面が設定されている。
【0008】
本態様に係る光ピックアップ用対物レンズによれば、対物レンズの内部の光軸上に、柱状の劣化領域が生じるのを抑制することができる。
【0009】
この場合、前記光軸方向に見たときの、前記第2レンズ面の前記レーザ光の入射領域の最外周から内周側へ投影面積S3の範囲の領域において反射された前記レーザ光の集光部が、前記第1レンズ面よりも外側に導かれるよう構成され得る。こうすると、柱状の劣化領域が生じるのをより効果的に抑制することができる。
【0010】
さらに、前記光軸方向に見たときの前記第2レンズ面の投影面積S2と前記投影面積S3の比が、S3/S2≧0.3を満たすよう前記第1レンズ面と前記第2レンズ面が設定
されるのが望ましい。こうすると、柱状の劣化領域がほぼ生じないようにすることができる。
【0011】
なお、柱状の劣化領域を抑制するには、第1レンズ面と第2レンズ面を、次式を満たすように設定すれば良い。
【0012】
d < D2・tan(90−Θ1+Arcsin(sinΘ1/Nh)−2・Θ2)+sag2
【0013】
ただし、この式における各要素は、以下のとおりである。
【0014】
Θ1: 所定の開口数でレーザ光の光線が対物レンズによって収束されるときの、第1レンズ面におけるこの光線の入射角。
【0015】
Θ2: 前記開口数でレーザ光の前記光線が対物レンズによって収束されるときの、第2レンズ面におけるこの光線の出射角。
【0016】
Nh: 使用波長での対物レンズの屈折率。
【0017】
D2:前記開口数でレーザ光の前記光線が対物レンズによって収束されるときの、第2レンズ面におけるこの光線の入射領域の半径。
【0018】
sag2:前記開口数でレーザ光の前記光線が対物レンズによって収束されるときの第2レンズ面のザグ量。
【0019】
d: 対物レンズの中心厚
【0020】
本態様に係る光ピックアップ用対物レンズにおいて、前記レーザ光の波長をNh、対物レンズの中心厚をd、対物レンズの焦点距離をfとすると、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面は、1.5≦Nh・d/f≦1.8を満たすように設定されるのが好ましい。こうすると、対物レンズの内部の光軸上に、柱状の劣化領域が生じるのを抑制することができるとともに、プレス成形により対物レンズを成形する際のレンズ面の転写精度を高めることができる。
【0021】
また、本態様に係る光ピックアップ用対物レンズにおいて、前記レーザ光の波長をNh、対物レンズの中心厚をd、対物レンズの焦点距離をfとすると、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面は、1.65≦Nh・d/f≦1.8を満たすように設定されるのがさらに好ましい。こうすると、対物レンズの内部の光軸上に、柱状の劣化領域が生じるのを抑制することができるとともに、射出成形により対物レンズを成形する場合にも、レンズ面の転写精度を高めることができる。
【0022】
本態様に係る光ピックアップ用対物レンズにおいて、前記第2レンズ面には、反射防止膜が形成され得る。この場合、前記反射防止膜は、前記第2レンズ面の外周部の方が内周部よりも前記レーザ光に対する反射率が低くなるように形成されるのが好ましい。こうすると、対物レンズ内の光軸上に生じる柱状の劣化を、より効果的に抑制することができる。
【0023】
本態様に係る光ピックアップ用対物レンズにおいて、前記第2レンズ面には、酸化防止膜が形成されるのが好ましい。こうすると、レーザ光が照射されることによる第2レンズ面の劣化を、さらに抑制することができる。
【0024】
この場合、前記酸化防止膜は、たとえば、Al2O3とSiO2の混合物を蒸着することにより、前記第2レンズ面に形成され得る。
【0025】
本発明の第2の態様は、光ピックアップ装置に関する。本態様に係る光ピックアップ装置は、上記第1の態様に係る対物レンズが搭載される。
【0026】
本態様に係る光ピックアップ装置によれば、上記第1の態様と同様、対物レンズの劣化が抑制される。
【発明の効果】
【0027】
以上のとおり、本発明によれば、レーザ光が透過することによる劣化を抑制可能な光ピックアップ用対物レンズおよびそれを搭載した光ピックアップ装置を提供することができる。
【0028】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態に係る対物レンズの構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る対物レンズの光の収束作用を示す図である。
【図3】実施の形態に係る対物レンズの出射面での反射作用を示す図である。
【図4】実施の形態に係る対物レンズの設計方法を説明する図である。
【図5】実施例に係る対物レンズと光学系の面設定の条件を示す図である。
【図6】各実施例の対物レンズのレンズ面の形状の設計値を示す図である。
【図7】各実施例の対物レンズのレンズ面の形状の設計値を示す図である。
【図8】各実施例の対物レンズのレンズ面の形状の設計値を示す図である。
【図9】各実施例についての実験結果を示す図である。
【図10】実験結果に適用される対物レンズの耐光性の指標を示す図である。
【図11】実施例に適用される対物レンズの偏肉比の適正範囲を示す図である。
【図12】実施の形態の変更例の構成を示す図である。
【図13】実施の形態の変更例における反射防止膜の特性を示す図である。
【図14】実施の形態に係る光ピックアップ装置の構成を示す図である。
【図15】実施の形態に係る投影面積S1、S2を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態は、ブルーレイディスク(BD)用の対物レンズおよび光ピックアップ装置に本発明を適用したものである。
【0031】
図1は、対物レンズ10の構成を示す図である。同図(a)は、対物レンズ10の側面図、同図(b)は、対物レンズ10を上側(光源側)から見た平面図、同図(c)は、対物レンズ10を下側(ディスク側)から見た平面図である。
【0032】
図示の如く、対物レンズ10は、上下に、突状のレンズ面11、12を有する。以下、上側のレンズ面を光源側レンズ面11といい、下側のレンズ面をディスク側レンズ面12という。光源側レンズ面11は、ディスク側レンズ面12よりも曲率が大きくなっている。また、光軸方向に見たとき、光源側レンズ面11の投影面積(S1)は、ディスク側レンズ面12の投影面積(S2)よりも大きくなっている。
【0033】
なお、本実施の形態では、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の大きさは、追って示す実験結果に基づき、S1/S2≦2.0を満たすように設計される。これにより、BD用レーザ光(以下、「BD光」という)によるディスク側レンズ面12の劣化を抑制することができる。
【0034】
本実施の形態に係る対物レンズは、光透過性に優れる樹脂材料により形成される。かかる樹脂材料として、たとえば、帝人化成製ポリカーボネート樹脂(製品名:AD5503)、日本ゼオン社製シクロオレフィン樹脂(製品名:E48R)、大阪ガスケミカル製ポリエステル樹脂(製品名:OKP4HT)等を用いることができる。これら材料のパラメータ値は、以下のとおりである。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
本実施の形態において、対物レンズ10は、射出成形またはプレス成形により形成され
る。射出成形の場合、たとえば、溶融した樹脂がゲートから上型と下型の間の空間に流入され、流入された樹脂と上型および下型が冷却される。その後、上型と下型が離間され、対物レンズが取り出される。プレス成形の場合、変形可能なレンズ中間体が、加熱されながら上型と下型でプレスされ、プレスされたレンズ中間体と上型および下型が冷却される。しかる後、上型と下型を離間させて、対物レンズが取り出される。
【0039】
射出成形およびプレス成形において、上型と下型には、それぞれ、対物レンズの各レンズ面に応じた形状の被転写面が形成されている。対物レンズ10に対する被転写面の転写精度は、射出成形よりもプレス成形の方が高い。
【0040】
図2は、実施の形態に係る対物レンズ10のBD用レーザ光に対する収束作用を、模式的に示す図である。なお、図2には、対物レンズ10の側面図のうち、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の部分のみが示されている。
【0041】
図示の如く、本実施の形態では、BD光が、平行光の状態で、対物レンズ10に入射する。BD光の波長は、405nm程度である。光源側レンズ面11に入射したBD光は、光源側レンズ面11で光軸に向かう方向に屈折され、ディスク側レンズ面12に向かう。光源側レンズ面11の最外周部(エッジ)に入射した光線は、ディスク側レンズ面12の最外周部(エッジ)に入射する。ディスク側レンズ面12に入射したBD光は、ディスク側レンズ面12によって、さらに光軸に向かう方向に屈折される。こうして対物レンズ10により収束されたBD光は、BDに適する開口数にてBDに入射する。その後、BD光は、BDのカバー層で屈折され、記録層上にフォーカスされる。
【0042】
ところで、対物レンズ10においては、図2に示すように、BD光が、光源側レンズ面11により収束されて、ディスク側レンズ面12に入射するため、ディスク側レンズ面12における光線密度が、光源側レンズ面11よりも高くなる。このため、ディスク側レンズ面12では、BD光による劣化が起こり易くなる。
【0043】
本実施の形態では、かかる劣化を抑制するために、光源側レンズ面11の投影面積S1と、ディスク側レンズ面12の投影面積S2が、S1/S2≦2.0を満たすように、光源側レンズ面11と、ディスク側レンズ面12が設計される。
【0044】
なお、対物レンズ10内を進むBD光の一部は、ディスク側レンズ面12によって反射される。ディスク側レンズ面12に対するBD光の入射角は、ディスク側レンズ面12の内周側よりも外周側の方が大きいため、かかる反射は、ディスク側レンズ面12の内周側よりも外周側において起こり易い。
【0045】
図3は、かかる反射を模式的に示す図である。図中、破線矢印が、ディスク側レンズ面12で反射されたBD光である。なお、図3には、図2と同様、対物レンズ10の側面図のうち、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の部分のみが示されている。
【0046】
図3に示す如く、ディスク側レンズ面12で反射されたBD光は、対物レンズ10の光軸上に集光される。このため、対物レンズ10は、光軸上において、BD光の光線密度が高くなる。ディスク側レンズ面12で反射されるBD光の光量は比較的少ないが、このように反射光が集光されると、集光部分におけるBD光のパワーは大きくなる。したがって、対物レンズ10内には、光軸上において、劣化が起こり易い。これにより、対物レンズ10内には、光軸上に、柱状の劣化領域が生じ易くなる。
【0047】
かかる問題を解消するために、本実施の形態では、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の面形状が調整されている。具体的には、次式を満たすように、光源側レンズ
面11とディスク側レンズ面12の面形状が設計されている。
【0048】
【数1】
【0049】
図3のように、Θ1、Θ2が各レンズ面の最外周に入射する光線について規定される場合、上記式(1)の右辺は、図3中の集光領域の高さd’である。すなわち、上記式(1)を満たすようにΘ1、Θ2を調整し、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の面形状を設計することで、ディスク側レンズ面12の最外周部分で反射されたBD光の集光位置を、光源側レンズ面11よりも外側に退避させることができる。上記のように、ディスク側レンズ面12の最外周部分では、BD光の反射光量が大きくなる。よって、このように、ディスク側レンズ面12の最外周部分で反射されたBD光の集光位置を、光源側レンズ面11よりも外側に退避させることで、対物レンズ10内で起こる柱状の劣化を効果的に抑制することができる。
【0050】
なお、図3では、Θ1、Θ2が各レンズ面の最外周に入射する光線について規定される場合を例示したが、レンズ面の最外周よりも内側の光線についてΘ1、Θ2を規定し、上記式(1)に基づき、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の面形状を設計するようにしても良い。この場合、この光線が入射する部分よりも外側においてディスク側レンズ面12により反射されるBD光を、光源側レンズ面11よりも外側に退避させることができる。
【0051】
図4(a)は、上記式(1)に従って光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の面形状が設計された場合の反射光の状態を模式的に示す図である。この例では、ハッチを付した部分の反射光が、光源側レンズ面11よりも外側に退避する。
【0052】
同図(b)は、ディスク側レンズ面12を光軸方向から見たときの模式図である。同図(b)のハッチ部分は、同図(a)のハッチ部分の光が入射する領域を示している。この
例では、ディスク側レンズ面12の投影面積S2のうち、投影面積S3(ハッチ部分)に入射するBD光の反射光が、光源側レンズ面11よりも外側に退避する。投影面積S2に対する投影面積S3の比率を高めることにより、対物レンズ10内で起こる柱状の劣化を、さらに効果的に抑制することができる。
【0053】
本願発明者は、26種の対物レンズの実施例について、BD光による劣化(光線密度が高まることによるディスク側レンズ面12の劣化および光軸上に生じる柱状の劣化)を検証した。以下、その検証結果について説明する。26種の実施例は、それぞれ、以下の条件に従う。
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
【表8】
【0059】
【表9】
【0060】
上記各実施例では、図5に示す光学系が想定されている。上記各実施例の表の最左欄は面番号を示す。また、各表の“R”は、各面の光学要素の曲率半径を示し、“Thickness”は各面から次の面までの距離を示し、“Semi-Diameter”は、光軸に垂直な方向における各面の光学要素の半径を示す。面番号1は、BD光を出射するレーザ光源の出射面である。各実施例では、対物レンズ10にBD光が平行光で入射するため、面1は、対物レンズ10に対して、無限遠点に設定される。STOはアパーチャ20の光入射側の面である。面番号3は、対物レンズ10の光源側レンズ面11の光軸位置に設定された面である。面番号4は、対物レンズ10のディスク側レンズ面12の光軸位置に設定された面である。面番号5は、BD30のカバー層31の表面である。面番号6は、BD30の記録層32のBD光が照射される面である。
【0061】
面番号3の“材料”の項目には、各実施例の対物レンズ10を形成する材料が示されている。各実施例の対物レンズ10は、上記表1〜3に示す何れかの材料からなっている。面番号5の“材料”の項目には、ディスク(BD)30のカバー層31を形成する材料が示されている。カバー層31の材料は、F8である。F8は、レンズ性能測定検査機に使用しているダミーカバーガラスである。実際に製品に使用する場合には、AD5503等が用いられる。
【0062】
各実施例において、対物レンズ10の光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の形状は、図6ないし図8のように設計されている。光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の形状は、以下の式で示される。
【0063】
【数2】
【0064】
上記式(2)において、Z軸は、光軸方向とされている。Rは、曲率半径であり、Hは、光軸と直交する方向の高さである。Kは、コーニック定数で、図6ないし図8中の“Conic”に相当する。A4、A6、A8、A10、A12、A14およびA16は、それぞれ、4次、6次、8次、10次、12次、14次および16次の非球面係数で、図6ないし図8の“A4”〜“A16”に相当する。
【0065】
<試験結果>
各実施例の対物レンズ10について、図5に示す光学系により、耐光性の試験を行った。試験では、環境温度を35℃とし、BD光の波長は405.6nmとした。各実施例の対物レンズ10にBD光を2000時間入射させた後、各対物レンズ10の特性を調べた。レーザ光源の出力は1mWとした。なお、2000時間は、レーザ光源(半導体レーザ)の寿命とされる時間である。
【0066】
図9に、試験結果を示す。同図(a)は、材料AD5503によって対物レンズ10が形成されたグループの試験結果、同図(b)は、材料E48Rによって対物レンズ10が形成されたグループの試験結果、同図(c)は、材料OKP4HTによって対物レンズ10が形成されたグループの試験結果である。
【0067】
図9中、“center thickness”は、対物レンズ10の光軸部分の厚みであり、図3の“d”に相当する。また、図9中の“d”および“d’”は、それぞれ、図3の“d”および“d’”に対応し、図9中の“f”は、各対物レンズ10の焦点距離である。さらに、図9中の“S1”および“S2”は、各対物レンズ10の光源側レンズ面11の投影面積S1およびディスク側レンズ面12の投影面積S2に相当し、図9中の“S3”は、図4におけるS3に相当する。また、図9中の“Nh”は、上記式(1)におけるNh(使用波長における対物レンズの屈折率)である。図9中の“偏肉比”は、各対物レンズ10の光軸部分の厚みをエッジ部分の厚みで割ったもので、図4においては、d/deに相当する。
【0068】
図9中、“耐光性”と“中心部の劣化”は、各実施例に対し上記条件で試験を行ったと
きの試験結果である。
【0069】
図9中の“耐光性”は、BD光を2000時間入射させた後の各対物レンズ10の透過率(Tr1)が初期の透過率(Tr0)に対して10%を超えて低下したか否かを基準に、良否判定が行われている。透過率Tr0に対する透過率Tr1の低下率が10%を超える場合、対物レンズ10に劣化があるとして、図9中に“×”が記されている。透過率Tr0に対する透過率Tr1の低下率が10%以下の場合、対物レンズ10には劣化がないとして、図9中に“○”が記されている。なお、図9中の“◎”は、2000時間を超えて更に3000時間まで、BD光を入射させても、透過率Tr0に対する透過率Tr1の低下率が10%以下であった場合を示す。また、図9中の“△”は、透過率Tr0に対する透過率Tr1の低下率が10%付近(誤差程度しか差が無い)であったことを示す。
【0070】
図9中の“中心部の劣化”は、BD光を2000時間入射させた後の各対物レンズ10の光軸上に、柱状の劣化領域が視認されたか否かを基準に、良否判定が行われている。肉眼で柱状の劣化領域が確認された場合、図9中に“×”が記されている。肉眼で柱状の劣化領域が確認されないが、倍率が10倍の顕微鏡により微かに柱状の劣化領域が確認された場合、図9中に“△”が記されている。倍率が10倍の顕微鏡によっても柱状の劣化領域が全く確認されなかった場合、図9中に“○”が記されている。
【0071】
なお、本願発明者は、対物レンズ10の透過率の低下率が10%を超えると、その後の使用により、急激に対物レンズ10の特性が劣化することを確認した。これに基づき、図9における“耐光性”の判定について、各対物レンズ10の透過率(Tr1)が初期の透過率(Tr0)に対して10%を超えて低下したか否かが、良否判定の基準とされた。
【0072】
図10は、BD光の入射時間とともに対物レンズ10の透過率が低下することを示す実験結果である。ここでは、異なる材料(AD5503、E48R、OKP4HT)にて構成された3種の対物レンズ10について実験が行われた。何れの場合も、透過率の低下率が10%を超えると、その後のBD光の入射によって、対物レンズ10の透過率が急激に変化することが分かる。対物レンズ10の透過率が低下すると、BDに照射されるBD光の特性が劣化し、BDに対する信号の読み取りエラー率が高くなる。よって、対物レンズ10の透過率の低下率は、10%を超えないのが望ましい。
【0073】
かかる実験結果に基づき、図9の試験結果における“耐光性”は、各対物レンズ10の透過率(Tr1)が初期の透過率(Tr0)に対して10%を超えて低下したか否かが、良否判定の基準とされた。
【0074】
以下、図9の試験結果に基づき、各実施例を評価する。
【0075】
(1)耐光性
図9(a)を参照して、材料がAD5503である場合、実施例1〜4において、耐光性が良好であった。よって、対物レンズ10をAD5503にて形成する場合は、集光率(投影面積比:S1/S2)が概ね以下の範囲となるのが好ましい。
【0076】
S1/S2≦2.0 …(3)
すなわち、集光率(S1/S2)が、2.0以下となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、BD光が2000時間入射したときの対物レンズ10の透過率の低下を10%以下に抑えることができる。
【0077】
図9(b)を参照して、材料がE48Rである場合、実施例9〜15において、耐光性が良好であった。よって、対物レンズ10をE48Rにて形成する場合は、集光率(S1
/S2)が概ね以下の範囲となるのが好ましい。
【0078】
S1/S2≦2.0 …(4)
すなわち、集光率(S1/S2)が、2.0以下となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、BD光が2000時間入射したときの対物レンズ10の透過率の低下を10%以下に抑えることができる。
【0079】
図9(c)を参照して、材料がOKP4HTである場合、実施例19〜23において、概ね耐光性が良好であった。よって、対物レンズ10をOKP4HTにて形成する場合、投影面積比(S3/S2)が概ね以下の範囲となるのが好ましい。
【0080】
S1/S2≦2.0 …(5)
すなわち、集光率(S1/S2)が、2.0以下となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、BD光が2000時間入射したときの対物レンズ10の透過率の低下を10%以下に抑えることができる。
【0081】
図9(a)〜(b)の試験結果から、“耐光性”が最も弱いOKP4HTによっても、集光率(S1/S2)が、2.0以下であれば、BD光が2000時間入射したときの対物レンズ10の透過率の低下を10%以下に抑えることができる。よって、対物レンズ10を樹脂材料から形成する場合には、少なくとも、集光率(S1/S2)が、2.0以下となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、BD光が2000時間入射したときの対物レンズ10の透過率の低下を10%以下に抑えることができ、BDからの信号の読み取り精度が劣化するのを防止できるものと想定される。
【0082】
(2)中心部の劣化
図9(a)を参照して、材料がAD5503である場合、実施例1〜3において、中心部の劣化が見られなかった。よって、対物レンズ10をAD5503にて形成する場合は、投影面積比(S3/S2)が以下の範囲となるのが好ましい。
【0083】
S3/S2≧0.1 …(6)
すなわち、投影面積比(S3/S2)が、0.1以上となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、光軸上に柱状の劣化領域が生じるのを回避することができる。
【0084】
図9(b)を参照して、材料がE48Rである場合、実施例9、10、12において、中心部の劣化が見られなかった。よって、対物レンズ10をE48Rにて形成する場合、投影面積比(S3/S2)が以下の範囲となるのが好ましい。
【0085】
S3/S2≧0.1 …(7)
すなわち、投影面積比(S3/S2)が、0.1以上となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、光軸上に柱状の劣化領域が生じるのを回避することができる。
【0086】
図9(c)を参照して、材料がOKP4HTである場合、実施例19〜23において、中心部の劣化が見られなかった。よって、対物レンズ10をOKP4HTにて形成する場合、投影面積比(S3/S2)が以下の範囲となるのが好ましい。
【0087】
S3/S2≧0.3 …(8)
すなわち、投影面積比(S3/S2)が、0.3以上となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、光軸上に柱状の劣化領域が生じるのを回
避することができる。
【0088】
図9(a)〜(b)の試験結果から、“中心部の劣化”が最も生じ易いOKP4HTによっても、投影面積比(S3/S2)が、0.3以上であれば、光軸上に柱状の劣化領域が略視認されなくなる。よって、対物レンズ10を樹脂材料から形成する場合には、少なくとも、投影面積比(S3/S2)が0.3以上となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、光軸上に柱状の劣化領域が生じるのを回避できるものと想定される。
【0089】
(3)対物レンズの材料
図9(a)〜(b)の試験結果から、材料がOKP4HTである場合に比べ、材料がAD5503またはE48Rである場合は、“中心部の劣化”が起こり難い。よって、対物レンズ10の材料としては、AD5503またはE48Rを用いるのが好ましい。
【0090】
なお、図9(a)、(b)を比較して分かるとおり、材料E48Rは、材料AD5503よりも耐光性に優れる。この点からは、対物レンズ10の材料として、E48Rを用いるのが好ましいと言える。
【0091】
しかしながら、上記表1、2を比較して分かるとおり、BD光の波長帯域における屈折率は、材料AD5503の方が、材料E48Rよりも高いため、材料AD5503の方が上記式(1)に適合し易い。よって、レンズ設計の行い易さの観点からは、対物レンズ10の材料として、AD5503を用いるのが好ましいと言える。
【0092】
なお、対物レンズ10の材料として、E48Rと同等の屈折率(Nd1.5〜1.56)を有するものを用いる場合には、BD光の波長帯域での屈折率Nhが1.53以上である材料を用いるのが好ましい。BD光の波長帯域での屈折率Nhが1.53未満であると、屈折率Nhが低いため、上記式(1)を満たしにくく、レンズ設計が難しくなるためである。
【0093】
(4)偏肉比
レンズ成形時の面転写の精度を高めるためには、偏肉比がなるべく小さい方が望ましい。レンズ面の突出が急峻であるほど、面転写が難しく、面転写精度が低下する。一般に、射出成形にて対物レンズ10を成形する場合、偏肉比は、4以下に設定するのが望ましく、プレス成形にて対物レンズ10を成形する場合には、偏肉比は、6以下に設定するのが望ましい。
【0094】
図11は、横軸をNh・d/fとし、縦軸を集光率および偏肉比としたときの、上記各実施例の値をプロットしたグラフである。
【0095】
図9の“耐光性”を良好とするためには集光率(S1/S2)を2以下とする必要がある。この条件を満たすためには、図10の上段のグラフから、Nh・d/fは、以下の条件を満たさなければならない。
【0096】
Nh・d/f≦1.8 …(9)
【0097】
他方、プレス成形にて対物レンズ10を成形するときの面転写精度の観点から、偏肉比を6.0以下にするためには、図11の下段のグラフから、Nh・d/fは、以下の条件を満たさなければならない。
【0098】
Nh・d/f≧1.5 …(10)
【0099】
よって、以下の式を満たすように、対物レンズを設計することで、プレス成形時の面転写精度を高く維持しつつ、“耐光性”を良好とすることができる。
【0100】
1.5≦Nh・d/f≦1.8 …(11)
【0101】
さらに、射出成形にて対物レンズ10を成形するときの面転写精度の観点から、偏肉比を4.0以下にするためには、図11の下段のグラフから、Nh・d/fは、以下の条件を満たさなければならない。
【0102】
Nh・d/f≧1.65 …(12)
よって、以下の式を満たすように、対物レンズを設計することで、射出成形時の面転写精度を高く維持しつつ、“耐光性”を良好とすることができる。
【0103】
1.65≦Nh・d/f≦1.8 …(13)
【0104】
なお、さらに、“中心部の劣化”を抑制するには、図9から、Nh・d/fを1.70以下とする必要がある。この場合、式(11)、(13)は、以下のようになる。
【0105】
1.5≦Nh・d/f≦1.7 …(11’)
【0106】
1.65≦Nh・d/f≦1.7 …(13’)
【0107】
この式に従って対物レンズを設計することで、“耐光性”、“中心部の劣化”および“面転写精度”を何れも良好なものとすることができる。
【0108】
<変更例1>
上記実施の形態の構成に加え、さらに、ディスク側レンズ面12に形成された反射防止膜13(図12参照)の特性を調整することにより、光軸上に、劣化領域が生じるのを一層抑制することもできる。
【0109】
図13は、反射防止膜の特性を示す図である。同図の横軸は、光軸からの距離、縦軸は、BD光に対する反射防止膜の反射率である。なお、横軸は、ディスク側レンズ面12の最外周部の半径方向の距離を1として規格化されている。同図の“コートB”は、従来の反射防止膜の特性を示し、“コートA”は、本変更例における反射防止膜の特性を示す。
【0110】
同図に示すように、従来は、強度の高いBD光中心部の光をより多く透過させるために、対物レンズ10の中心部の反射率が低くなるよう、反射防止膜13が形成されていた。この場合、製膜の関係から、反射防止膜13を形成したときの反射率は、同図に示すように、対物レンズ10の外周部が高くなる。こうなると、入射角との関係から元々反射が起こり易いディスク側レンズ面12の外周部における反射が、反射防止膜13によって抑制され難くなる。よって、対物レンズ10の光軸上に、反射光が集光されることによる劣化が起こり易くなる。
【0111】
これに対し、本変更例では、同図に示すように、対物レンズ10の外周部の反射率が小さくなるように、反射防止膜13が形成される。これにより、入射角との関係から反射が起こり易いディスク側レンズ面12の外周部における反射が、反射防止膜13によって抑制され、よって、対物レンズ10の光軸上に、反射光が集光されることによる劣化が起こり難くなる。
【0112】
なお、このように反射防止膜13を形成すると、同図に示すように、ディスク側レンズ面12の中心部における反射率が高くなる。しかしながら、ディスク側レンズ面12の中心部は、光線の入射角が小さいため、反射が起こり難く、よって、このように、ディスク側レンズ面12の中心部における反射率が高くなっても、中心部のおける反射によるBD光の減衰は、それほど大きくならない。
【0113】
このように、本変更例によれば、対物レンズ10の光軸上に、反射光が集光されることによる劣化が一層起こり難くなるとの効果が奏され得る。
【0114】
<変更例2>
上記変更例1では、反射防止膜13の特性が調整されたが、本変更例では、ディスク側レンズ面12と反射防止膜13との間に酸化防止膜が形成される。
【0115】
BD光照射によるディスク側レンズ面12の劣化は、酸素によって起こる。よって、ディスク側レンズ面12の表面に酸化防止膜を蒸着し、ディスク側レンズ面12に対して酸素を遮断することで、さらに、ディスク側レンズ面12の劣化を抑制できる。
【0116】
なお、酸化防止膜は、たとえば、Al2O3とSiO2の混合物を蒸着することによって形成される。
【0117】
<光ピックアップ装置>
図14に、本実施の形態に基づき設計された対物レンズ10を搭載する光ピックアップ装置の光学系(BD用の光学系)の構成を例示する。
【0118】
BD用の光学系は、半導体レーザ101と、回折格子102と、偏光ビームスプリッタ103と、コリメータレンズ104と、レンズアクチュエータ105と、立ち上げミラー106と、λ/4板107と、第1の対物レンズ108と、アナモレンズ109と、光検出器110と、FMD(Front Monitor Diode)111から構成されている。
【0119】
半導体レーザ101は、波長400nm程度の青色レーザ光を出力する。回折格子102は、半導体レーザ101から出射されたレーザ光をメインビームと2つのサブビームに分割する。偏光ビームスプリッタ103は、回折格子102側から入射されたレーザ光を反射および透過する。なお、半導体レーザ101は、出射レーザ光の偏光方向が偏光ビームスプリッタ103に対してS偏光となる方向からややずれるように配置されている。これにより、回折格子102を透過したレーザ光は、たとえば、95%が偏光ビームスプリッタ103により反射され、残り5%が偏光ビームスプリッタ103を透過する。
【0120】
コリメータレンズ104は、偏光ビームスプリッタ103によって反射されたレーザ光を平行光に変換する。レンズアクチュエータ105は、コリメータレンズ104をレーザ光の光軸方向に駆動する。なお、コリメータレンズ104とレンズアクチュエータ105は、収差補正手段として機能する。
【0121】
立ち上げミラー106は、コリメータレンズ104を介して入射されたレーザ光を対物レンズ108に向かう方向に反射する。λ/4板107は、反射ミラー106によって反射されたレーザ光を円偏光に変換するとともに、ディスク(BD)からの反射光を、ディスクへ向かうときの偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、ディスクによって反射されたレーザ光は偏光ビームスプリッタ103を透過して光検出器110へと導かれる。
【0122】
対物レンズ108は、上記のように、“耐光性”、“中心部の劣化”および“面転写精
度”が良好となるように設計されている。対物レンズ108は、青色波長のレーザ光を、所定のNAで、BDの信号面上に適正に収束する。すなわち、第1の対物レンズ108は、0.1mm厚のカバー層を介して信号面上に青色波長のレーザ光を適正に収束できるよう設計されている。
【0123】
アナモレンズ109は、ディスクによって反射されたレーザ光を光検出器110上に収束させる。光検出器110は、受光したレーザ光の強度分布から再生RF信号、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を導出するためのセンサーパターンを有している。なお、本実施の形態では、フォーカスエラー信号の生成手法として非点収差法が採用され、トラッキングエラー信号の生成手法としてDPP(Differential Push Pull)法が採用されている。光検出器110は、これらの手法に従ってフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を導出するためのセンサーパターンを有している。
【0124】
FMD111は、偏光ビームスプリッタ103を透過したレーザ光を受光して、受光光量に応じた信号を出力する。FMD111からの信号は、半導体レーザ101のパワー制御に用いられる。
【0125】
本構成例の光ピックアップ装置によれば、半導体レーザ101の寿命(約2000時間)が尽きるまで用いられても、対物レンズ108の特性を高く維持することができる。よって、信号の読み取りエラーを抑制でき、円滑な記録/再生動作を実現することができる。
【0126】
以上、本発明の実施の形態およびその効果について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではない。また、本発明の実施の形態も、上記以外に、種々の変更が可能である。
【0127】
たとえば、上記実施の形態では、BD用の対物レンズに本発明が適用されたが、HD用等、他の対物レンズに本発明を適用することもできる。
【0128】
また、光ピックアップ装置の構成は、図14に示すものに限定されるものではなく、CD/DVD/BD互換型の光ピックアップ装置に本発明を適用することも可能である。また、光磁気ディスクにレーザ光を照射する光ピックアップ装置およびそれに搭載される対物レンズに本発明を適用することも可能である。
【0129】
なお、図2では、光源側レンズ面11全体とディスク側レンズ面12の全体について、投影面積S1、S2が規定されたが、たとえば、図15のように、所定の開口数NAにてBDに収束されるBD光の光線が、光源側レンズ面11の一部またはディスク側レンズ面12の一部を通る場合には、当該光線が通る光源側レンズ面11およびディスク側レンズ面12の領域を光軸方向に見たときの投影面積が、それぞれ、上記投影面積S1、S2とされる。
【0130】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0131】
10、108 … 対物レンズ
11 … 光源側レンズ面(第1レンズ面)
12 … ディスク側レンズ面(第2レンズ面)
13 … 反射防止膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ用対物レンズおよびそれを搭載した光ピックアップ装置に関し、特に、青色波長帯のレーザ光をディスク上に収束させる樹脂製の対物レンズおよびそれを搭載した光ピックアップ装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ピックアップ装置には、樹脂製の対物レンズが搭載されるようになっている。樹脂製の対物レンズはガラス製の対物レンズに比べ軽量であるため、対物レンズの駆動レスポンスを高めることができる。また、樹脂製の対物レンズは安価であるため、機器のコスト削減を図ることができる。
【0003】
以下の特許文献1には、開口数が0.75以上であって、波長が400nm程度のレーザが使用される場合に好適な対物レンズが提示されている。かかる対物レンズは、1.1≦d1/f≦3(d1:軸上レンズ厚f:焦点距離)を満たすように設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−324673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂製の対物レンズに波長400nm程度のレーザ光が入射すると、レーザ光によって対物レンズが劣化するとの問題が生じる。特に、対物レンズに用いられる樹脂材料は、400nm程度の波長帯域を吸収し易い。このため、対物レンズが劣化し、透過率等の光学特性が低下するとの問題が生じる。
【0006】
本発明は、かかる課題を解消するために為されたものであり、レーザ光が透過することによる劣化を抑制可能な光ピックアップ用対物レンズおよびそれを搭載した光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、光ピックアップ用対物レンズに関する。本態様に係る光ピックアップ用対物レンズは、レーザ光を収束させる第1レンズ面と、前記第1レンズ面で収束されたレーザ光を更に収束させる第2レンズ面とを備える。前記第2レンズ面によって反射された前記レーザ光の集光部の一部が、前記第1レンズ面よりも外側に導かれるよう、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面が設定されている。
【0008】
本態様に係る光ピックアップ用対物レンズによれば、対物レンズの内部の光軸上に、柱状の劣化領域が生じるのを抑制することができる。
【0009】
この場合、前記光軸方向に見たときの、前記第2レンズ面の前記レーザ光の入射領域の最外周から内周側へ投影面積S3の範囲の領域において反射された前記レーザ光の集光部が、前記第1レンズ面よりも外側に導かれるよう構成され得る。こうすると、柱状の劣化領域が生じるのをより効果的に抑制することができる。
【0010】
さらに、前記光軸方向に見たときの前記第2レンズ面の投影面積S2と前記投影面積S3の比が、S3/S2≧0.3を満たすよう前記第1レンズ面と前記第2レンズ面が設定
されるのが望ましい。こうすると、柱状の劣化領域がほぼ生じないようにすることができる。
【0011】
なお、柱状の劣化領域を抑制するには、第1レンズ面と第2レンズ面を、次式を満たすように設定すれば良い。
【0012】
d < D2・tan(90−Θ1+Arcsin(sinΘ1/Nh)−2・Θ2)+sag2
【0013】
ただし、この式における各要素は、以下のとおりである。
【0014】
Θ1: 所定の開口数でレーザ光の光線が対物レンズによって収束されるときの、第1レンズ面におけるこの光線の入射角。
【0015】
Θ2: 前記開口数でレーザ光の前記光線が対物レンズによって収束されるときの、第2レンズ面におけるこの光線の出射角。
【0016】
Nh: 使用波長での対物レンズの屈折率。
【0017】
D2:前記開口数でレーザ光の前記光線が対物レンズによって収束されるときの、第2レンズ面におけるこの光線の入射領域の半径。
【0018】
sag2:前記開口数でレーザ光の前記光線が対物レンズによって収束されるときの第2レンズ面のザグ量。
【0019】
d: 対物レンズの中心厚
【0020】
本態様に係る光ピックアップ用対物レンズにおいて、前記レーザ光の波長をNh、対物レンズの中心厚をd、対物レンズの焦点距離をfとすると、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面は、1.5≦Nh・d/f≦1.8を満たすように設定されるのが好ましい。こうすると、対物レンズの内部の光軸上に、柱状の劣化領域が生じるのを抑制することができるとともに、プレス成形により対物レンズを成形する際のレンズ面の転写精度を高めることができる。
【0021】
また、本態様に係る光ピックアップ用対物レンズにおいて、前記レーザ光の波長をNh、対物レンズの中心厚をd、対物レンズの焦点距離をfとすると、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面は、1.65≦Nh・d/f≦1.8を満たすように設定されるのがさらに好ましい。こうすると、対物レンズの内部の光軸上に、柱状の劣化領域が生じるのを抑制することができるとともに、射出成形により対物レンズを成形する場合にも、レンズ面の転写精度を高めることができる。
【0022】
本態様に係る光ピックアップ用対物レンズにおいて、前記第2レンズ面には、反射防止膜が形成され得る。この場合、前記反射防止膜は、前記第2レンズ面の外周部の方が内周部よりも前記レーザ光に対する反射率が低くなるように形成されるのが好ましい。こうすると、対物レンズ内の光軸上に生じる柱状の劣化を、より効果的に抑制することができる。
【0023】
本態様に係る光ピックアップ用対物レンズにおいて、前記第2レンズ面には、酸化防止膜が形成されるのが好ましい。こうすると、レーザ光が照射されることによる第2レンズ面の劣化を、さらに抑制することができる。
【0024】
この場合、前記酸化防止膜は、たとえば、Al2O3とSiO2の混合物を蒸着することにより、前記第2レンズ面に形成され得る。
【0025】
本発明の第2の態様は、光ピックアップ装置に関する。本態様に係る光ピックアップ装置は、上記第1の態様に係る対物レンズが搭載される。
【0026】
本態様に係る光ピックアップ装置によれば、上記第1の態様と同様、対物レンズの劣化が抑制される。
【発明の効果】
【0027】
以上のとおり、本発明によれば、レーザ光が透過することによる劣化を抑制可能な光ピックアップ用対物レンズおよびそれを搭載した光ピックアップ装置を提供することができる。
【0028】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態に係る対物レンズの構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る対物レンズの光の収束作用を示す図である。
【図3】実施の形態に係る対物レンズの出射面での反射作用を示す図である。
【図4】実施の形態に係る対物レンズの設計方法を説明する図である。
【図5】実施例に係る対物レンズと光学系の面設定の条件を示す図である。
【図6】各実施例の対物レンズのレンズ面の形状の設計値を示す図である。
【図7】各実施例の対物レンズのレンズ面の形状の設計値を示す図である。
【図8】各実施例の対物レンズのレンズ面の形状の設計値を示す図である。
【図9】各実施例についての実験結果を示す図である。
【図10】実験結果に適用される対物レンズの耐光性の指標を示す図である。
【図11】実施例に適用される対物レンズの偏肉比の適正範囲を示す図である。
【図12】実施の形態の変更例の構成を示す図である。
【図13】実施の形態の変更例における反射防止膜の特性を示す図である。
【図14】実施の形態に係る光ピックアップ装置の構成を示す図である。
【図15】実施の形態に係る投影面積S1、S2を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態は、ブルーレイディスク(BD)用の対物レンズおよび光ピックアップ装置に本発明を適用したものである。
【0031】
図1は、対物レンズ10の構成を示す図である。同図(a)は、対物レンズ10の側面図、同図(b)は、対物レンズ10を上側(光源側)から見た平面図、同図(c)は、対物レンズ10を下側(ディスク側)から見た平面図である。
【0032】
図示の如く、対物レンズ10は、上下に、突状のレンズ面11、12を有する。以下、上側のレンズ面を光源側レンズ面11といい、下側のレンズ面をディスク側レンズ面12という。光源側レンズ面11は、ディスク側レンズ面12よりも曲率が大きくなっている。また、光軸方向に見たとき、光源側レンズ面11の投影面積(S1)は、ディスク側レンズ面12の投影面積(S2)よりも大きくなっている。
【0033】
なお、本実施の形態では、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の大きさは、追って示す実験結果に基づき、S1/S2≦2.0を満たすように設計される。これにより、BD用レーザ光(以下、「BD光」という)によるディスク側レンズ面12の劣化を抑制することができる。
【0034】
本実施の形態に係る対物レンズは、光透過性に優れる樹脂材料により形成される。かかる樹脂材料として、たとえば、帝人化成製ポリカーボネート樹脂(製品名:AD5503)、日本ゼオン社製シクロオレフィン樹脂(製品名:E48R)、大阪ガスケミカル製ポリエステル樹脂(製品名:OKP4HT)等を用いることができる。これら材料のパラメータ値は、以下のとおりである。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
本実施の形態において、対物レンズ10は、射出成形またはプレス成形により形成され
る。射出成形の場合、たとえば、溶融した樹脂がゲートから上型と下型の間の空間に流入され、流入された樹脂と上型および下型が冷却される。その後、上型と下型が離間され、対物レンズが取り出される。プレス成形の場合、変形可能なレンズ中間体が、加熱されながら上型と下型でプレスされ、プレスされたレンズ中間体と上型および下型が冷却される。しかる後、上型と下型を離間させて、対物レンズが取り出される。
【0039】
射出成形およびプレス成形において、上型と下型には、それぞれ、対物レンズの各レンズ面に応じた形状の被転写面が形成されている。対物レンズ10に対する被転写面の転写精度は、射出成形よりもプレス成形の方が高い。
【0040】
図2は、実施の形態に係る対物レンズ10のBD用レーザ光に対する収束作用を、模式的に示す図である。なお、図2には、対物レンズ10の側面図のうち、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の部分のみが示されている。
【0041】
図示の如く、本実施の形態では、BD光が、平行光の状態で、対物レンズ10に入射する。BD光の波長は、405nm程度である。光源側レンズ面11に入射したBD光は、光源側レンズ面11で光軸に向かう方向に屈折され、ディスク側レンズ面12に向かう。光源側レンズ面11の最外周部(エッジ)に入射した光線は、ディスク側レンズ面12の最外周部(エッジ)に入射する。ディスク側レンズ面12に入射したBD光は、ディスク側レンズ面12によって、さらに光軸に向かう方向に屈折される。こうして対物レンズ10により収束されたBD光は、BDに適する開口数にてBDに入射する。その後、BD光は、BDのカバー層で屈折され、記録層上にフォーカスされる。
【0042】
ところで、対物レンズ10においては、図2に示すように、BD光が、光源側レンズ面11により収束されて、ディスク側レンズ面12に入射するため、ディスク側レンズ面12における光線密度が、光源側レンズ面11よりも高くなる。このため、ディスク側レンズ面12では、BD光による劣化が起こり易くなる。
【0043】
本実施の形態では、かかる劣化を抑制するために、光源側レンズ面11の投影面積S1と、ディスク側レンズ面12の投影面積S2が、S1/S2≦2.0を満たすように、光源側レンズ面11と、ディスク側レンズ面12が設計される。
【0044】
なお、対物レンズ10内を進むBD光の一部は、ディスク側レンズ面12によって反射される。ディスク側レンズ面12に対するBD光の入射角は、ディスク側レンズ面12の内周側よりも外周側の方が大きいため、かかる反射は、ディスク側レンズ面12の内周側よりも外周側において起こり易い。
【0045】
図3は、かかる反射を模式的に示す図である。図中、破線矢印が、ディスク側レンズ面12で反射されたBD光である。なお、図3には、図2と同様、対物レンズ10の側面図のうち、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の部分のみが示されている。
【0046】
図3に示す如く、ディスク側レンズ面12で反射されたBD光は、対物レンズ10の光軸上に集光される。このため、対物レンズ10は、光軸上において、BD光の光線密度が高くなる。ディスク側レンズ面12で反射されるBD光の光量は比較的少ないが、このように反射光が集光されると、集光部分におけるBD光のパワーは大きくなる。したがって、対物レンズ10内には、光軸上において、劣化が起こり易い。これにより、対物レンズ10内には、光軸上に、柱状の劣化領域が生じ易くなる。
【0047】
かかる問題を解消するために、本実施の形態では、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の面形状が調整されている。具体的には、次式を満たすように、光源側レンズ
面11とディスク側レンズ面12の面形状が設計されている。
【0048】
【数1】
【0049】
図3のように、Θ1、Θ2が各レンズ面の最外周に入射する光線について規定される場合、上記式(1)の右辺は、図3中の集光領域の高さd’である。すなわち、上記式(1)を満たすようにΘ1、Θ2を調整し、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の面形状を設計することで、ディスク側レンズ面12の最外周部分で反射されたBD光の集光位置を、光源側レンズ面11よりも外側に退避させることができる。上記のように、ディスク側レンズ面12の最外周部分では、BD光の反射光量が大きくなる。よって、このように、ディスク側レンズ面12の最外周部分で反射されたBD光の集光位置を、光源側レンズ面11よりも外側に退避させることで、対物レンズ10内で起こる柱状の劣化を効果的に抑制することができる。
【0050】
なお、図3では、Θ1、Θ2が各レンズ面の最外周に入射する光線について規定される場合を例示したが、レンズ面の最外周よりも内側の光線についてΘ1、Θ2を規定し、上記式(1)に基づき、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の面形状を設計するようにしても良い。この場合、この光線が入射する部分よりも外側においてディスク側レンズ面12により反射されるBD光を、光源側レンズ面11よりも外側に退避させることができる。
【0051】
図4(a)は、上記式(1)に従って光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の面形状が設計された場合の反射光の状態を模式的に示す図である。この例では、ハッチを付した部分の反射光が、光源側レンズ面11よりも外側に退避する。
【0052】
同図(b)は、ディスク側レンズ面12を光軸方向から見たときの模式図である。同図(b)のハッチ部分は、同図(a)のハッチ部分の光が入射する領域を示している。この
例では、ディスク側レンズ面12の投影面積S2のうち、投影面積S3(ハッチ部分)に入射するBD光の反射光が、光源側レンズ面11よりも外側に退避する。投影面積S2に対する投影面積S3の比率を高めることにより、対物レンズ10内で起こる柱状の劣化を、さらに効果的に抑制することができる。
【0053】
本願発明者は、26種の対物レンズの実施例について、BD光による劣化(光線密度が高まることによるディスク側レンズ面12の劣化および光軸上に生じる柱状の劣化)を検証した。以下、その検証結果について説明する。26種の実施例は、それぞれ、以下の条件に従う。
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
【表8】
【0059】
【表9】
【0060】
上記各実施例では、図5に示す光学系が想定されている。上記各実施例の表の最左欄は面番号を示す。また、各表の“R”は、各面の光学要素の曲率半径を示し、“Thickness”は各面から次の面までの距離を示し、“Semi-Diameter”は、光軸に垂直な方向における各面の光学要素の半径を示す。面番号1は、BD光を出射するレーザ光源の出射面である。各実施例では、対物レンズ10にBD光が平行光で入射するため、面1は、対物レンズ10に対して、無限遠点に設定される。STOはアパーチャ20の光入射側の面である。面番号3は、対物レンズ10の光源側レンズ面11の光軸位置に設定された面である。面番号4は、対物レンズ10のディスク側レンズ面12の光軸位置に設定された面である。面番号5は、BD30のカバー層31の表面である。面番号6は、BD30の記録層32のBD光が照射される面である。
【0061】
面番号3の“材料”の項目には、各実施例の対物レンズ10を形成する材料が示されている。各実施例の対物レンズ10は、上記表1〜3に示す何れかの材料からなっている。面番号5の“材料”の項目には、ディスク(BD)30のカバー層31を形成する材料が示されている。カバー層31の材料は、F8である。F8は、レンズ性能測定検査機に使用しているダミーカバーガラスである。実際に製品に使用する場合には、AD5503等が用いられる。
【0062】
各実施例において、対物レンズ10の光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の形状は、図6ないし図8のように設計されている。光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12の形状は、以下の式で示される。
【0063】
【数2】
【0064】
上記式(2)において、Z軸は、光軸方向とされている。Rは、曲率半径であり、Hは、光軸と直交する方向の高さである。Kは、コーニック定数で、図6ないし図8中の“Conic”に相当する。A4、A6、A8、A10、A12、A14およびA16は、それぞれ、4次、6次、8次、10次、12次、14次および16次の非球面係数で、図6ないし図8の“A4”〜“A16”に相当する。
【0065】
<試験結果>
各実施例の対物レンズ10について、図5に示す光学系により、耐光性の試験を行った。試験では、環境温度を35℃とし、BD光の波長は405.6nmとした。各実施例の対物レンズ10にBD光を2000時間入射させた後、各対物レンズ10の特性を調べた。レーザ光源の出力は1mWとした。なお、2000時間は、レーザ光源(半導体レーザ)の寿命とされる時間である。
【0066】
図9に、試験結果を示す。同図(a)は、材料AD5503によって対物レンズ10が形成されたグループの試験結果、同図(b)は、材料E48Rによって対物レンズ10が形成されたグループの試験結果、同図(c)は、材料OKP4HTによって対物レンズ10が形成されたグループの試験結果である。
【0067】
図9中、“center thickness”は、対物レンズ10の光軸部分の厚みであり、図3の“d”に相当する。また、図9中の“d”および“d’”は、それぞれ、図3の“d”および“d’”に対応し、図9中の“f”は、各対物レンズ10の焦点距離である。さらに、図9中の“S1”および“S2”は、各対物レンズ10の光源側レンズ面11の投影面積S1およびディスク側レンズ面12の投影面積S2に相当し、図9中の“S3”は、図4におけるS3に相当する。また、図9中の“Nh”は、上記式(1)におけるNh(使用波長における対物レンズの屈折率)である。図9中の“偏肉比”は、各対物レンズ10の光軸部分の厚みをエッジ部分の厚みで割ったもので、図4においては、d/deに相当する。
【0068】
図9中、“耐光性”と“中心部の劣化”は、各実施例に対し上記条件で試験を行ったと
きの試験結果である。
【0069】
図9中の“耐光性”は、BD光を2000時間入射させた後の各対物レンズ10の透過率(Tr1)が初期の透過率(Tr0)に対して10%を超えて低下したか否かを基準に、良否判定が行われている。透過率Tr0に対する透過率Tr1の低下率が10%を超える場合、対物レンズ10に劣化があるとして、図9中に“×”が記されている。透過率Tr0に対する透過率Tr1の低下率が10%以下の場合、対物レンズ10には劣化がないとして、図9中に“○”が記されている。なお、図9中の“◎”は、2000時間を超えて更に3000時間まで、BD光を入射させても、透過率Tr0に対する透過率Tr1の低下率が10%以下であった場合を示す。また、図9中の“△”は、透過率Tr0に対する透過率Tr1の低下率が10%付近(誤差程度しか差が無い)であったことを示す。
【0070】
図9中の“中心部の劣化”は、BD光を2000時間入射させた後の各対物レンズ10の光軸上に、柱状の劣化領域が視認されたか否かを基準に、良否判定が行われている。肉眼で柱状の劣化領域が確認された場合、図9中に“×”が記されている。肉眼で柱状の劣化領域が確認されないが、倍率が10倍の顕微鏡により微かに柱状の劣化領域が確認された場合、図9中に“△”が記されている。倍率が10倍の顕微鏡によっても柱状の劣化領域が全く確認されなかった場合、図9中に“○”が記されている。
【0071】
なお、本願発明者は、対物レンズ10の透過率の低下率が10%を超えると、その後の使用により、急激に対物レンズ10の特性が劣化することを確認した。これに基づき、図9における“耐光性”の判定について、各対物レンズ10の透過率(Tr1)が初期の透過率(Tr0)に対して10%を超えて低下したか否かが、良否判定の基準とされた。
【0072】
図10は、BD光の入射時間とともに対物レンズ10の透過率が低下することを示す実験結果である。ここでは、異なる材料(AD5503、E48R、OKP4HT)にて構成された3種の対物レンズ10について実験が行われた。何れの場合も、透過率の低下率が10%を超えると、その後のBD光の入射によって、対物レンズ10の透過率が急激に変化することが分かる。対物レンズ10の透過率が低下すると、BDに照射されるBD光の特性が劣化し、BDに対する信号の読み取りエラー率が高くなる。よって、対物レンズ10の透過率の低下率は、10%を超えないのが望ましい。
【0073】
かかる実験結果に基づき、図9の試験結果における“耐光性”は、各対物レンズ10の透過率(Tr1)が初期の透過率(Tr0)に対して10%を超えて低下したか否かが、良否判定の基準とされた。
【0074】
以下、図9の試験結果に基づき、各実施例を評価する。
【0075】
(1)耐光性
図9(a)を参照して、材料がAD5503である場合、実施例1〜4において、耐光性が良好であった。よって、対物レンズ10をAD5503にて形成する場合は、集光率(投影面積比:S1/S2)が概ね以下の範囲となるのが好ましい。
【0076】
S1/S2≦2.0 …(3)
すなわち、集光率(S1/S2)が、2.0以下となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、BD光が2000時間入射したときの対物レンズ10の透過率の低下を10%以下に抑えることができる。
【0077】
図9(b)を参照して、材料がE48Rである場合、実施例9〜15において、耐光性が良好であった。よって、対物レンズ10をE48Rにて形成する場合は、集光率(S1
/S2)が概ね以下の範囲となるのが好ましい。
【0078】
S1/S2≦2.0 …(4)
すなわち、集光率(S1/S2)が、2.0以下となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、BD光が2000時間入射したときの対物レンズ10の透過率の低下を10%以下に抑えることができる。
【0079】
図9(c)を参照して、材料がOKP4HTである場合、実施例19〜23において、概ね耐光性が良好であった。よって、対物レンズ10をOKP4HTにて形成する場合、投影面積比(S3/S2)が概ね以下の範囲となるのが好ましい。
【0080】
S1/S2≦2.0 …(5)
すなわち、集光率(S1/S2)が、2.0以下となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、BD光が2000時間入射したときの対物レンズ10の透過率の低下を10%以下に抑えることができる。
【0081】
図9(a)〜(b)の試験結果から、“耐光性”が最も弱いOKP4HTによっても、集光率(S1/S2)が、2.0以下であれば、BD光が2000時間入射したときの対物レンズ10の透過率の低下を10%以下に抑えることができる。よって、対物レンズ10を樹脂材料から形成する場合には、少なくとも、集光率(S1/S2)が、2.0以下となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、BD光が2000時間入射したときの対物レンズ10の透過率の低下を10%以下に抑えることができ、BDからの信号の読み取り精度が劣化するのを防止できるものと想定される。
【0082】
(2)中心部の劣化
図9(a)を参照して、材料がAD5503である場合、実施例1〜3において、中心部の劣化が見られなかった。よって、対物レンズ10をAD5503にて形成する場合は、投影面積比(S3/S2)が以下の範囲となるのが好ましい。
【0083】
S3/S2≧0.1 …(6)
すなわち、投影面積比(S3/S2)が、0.1以上となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、光軸上に柱状の劣化領域が生じるのを回避することができる。
【0084】
図9(b)を参照して、材料がE48Rである場合、実施例9、10、12において、中心部の劣化が見られなかった。よって、対物レンズ10をE48Rにて形成する場合、投影面積比(S3/S2)が以下の範囲となるのが好ましい。
【0085】
S3/S2≧0.1 …(7)
すなわち、投影面積比(S3/S2)が、0.1以上となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、光軸上に柱状の劣化領域が生じるのを回避することができる。
【0086】
図9(c)を参照して、材料がOKP4HTである場合、実施例19〜23において、中心部の劣化が見られなかった。よって、対物レンズ10をOKP4HTにて形成する場合、投影面積比(S3/S2)が以下の範囲となるのが好ましい。
【0087】
S3/S2≧0.3 …(8)
すなわち、投影面積比(S3/S2)が、0.3以上となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、光軸上に柱状の劣化領域が生じるのを回
避することができる。
【0088】
図9(a)〜(b)の試験結果から、“中心部の劣化”が最も生じ易いOKP4HTによっても、投影面積比(S3/S2)が、0.3以上であれば、光軸上に柱状の劣化領域が略視認されなくなる。よって、対物レンズ10を樹脂材料から形成する場合には、少なくとも、投影面積比(S3/S2)が0.3以上となるように、光源側レンズ面11とディスク側レンズ面12を設計することで、光軸上に柱状の劣化領域が生じるのを回避できるものと想定される。
【0089】
(3)対物レンズの材料
図9(a)〜(b)の試験結果から、材料がOKP4HTである場合に比べ、材料がAD5503またはE48Rである場合は、“中心部の劣化”が起こり難い。よって、対物レンズ10の材料としては、AD5503またはE48Rを用いるのが好ましい。
【0090】
なお、図9(a)、(b)を比較して分かるとおり、材料E48Rは、材料AD5503よりも耐光性に優れる。この点からは、対物レンズ10の材料として、E48Rを用いるのが好ましいと言える。
【0091】
しかしながら、上記表1、2を比較して分かるとおり、BD光の波長帯域における屈折率は、材料AD5503の方が、材料E48Rよりも高いため、材料AD5503の方が上記式(1)に適合し易い。よって、レンズ設計の行い易さの観点からは、対物レンズ10の材料として、AD5503を用いるのが好ましいと言える。
【0092】
なお、対物レンズ10の材料として、E48Rと同等の屈折率(Nd1.5〜1.56)を有するものを用いる場合には、BD光の波長帯域での屈折率Nhが1.53以上である材料を用いるのが好ましい。BD光の波長帯域での屈折率Nhが1.53未満であると、屈折率Nhが低いため、上記式(1)を満たしにくく、レンズ設計が難しくなるためである。
【0093】
(4)偏肉比
レンズ成形時の面転写の精度を高めるためには、偏肉比がなるべく小さい方が望ましい。レンズ面の突出が急峻であるほど、面転写が難しく、面転写精度が低下する。一般に、射出成形にて対物レンズ10を成形する場合、偏肉比は、4以下に設定するのが望ましく、プレス成形にて対物レンズ10を成形する場合には、偏肉比は、6以下に設定するのが望ましい。
【0094】
図11は、横軸をNh・d/fとし、縦軸を集光率および偏肉比としたときの、上記各実施例の値をプロットしたグラフである。
【0095】
図9の“耐光性”を良好とするためには集光率(S1/S2)を2以下とする必要がある。この条件を満たすためには、図10の上段のグラフから、Nh・d/fは、以下の条件を満たさなければならない。
【0096】
Nh・d/f≦1.8 …(9)
【0097】
他方、プレス成形にて対物レンズ10を成形するときの面転写精度の観点から、偏肉比を6.0以下にするためには、図11の下段のグラフから、Nh・d/fは、以下の条件を満たさなければならない。
【0098】
Nh・d/f≧1.5 …(10)
【0099】
よって、以下の式を満たすように、対物レンズを設計することで、プレス成形時の面転写精度を高く維持しつつ、“耐光性”を良好とすることができる。
【0100】
1.5≦Nh・d/f≦1.8 …(11)
【0101】
さらに、射出成形にて対物レンズ10を成形するときの面転写精度の観点から、偏肉比を4.0以下にするためには、図11の下段のグラフから、Nh・d/fは、以下の条件を満たさなければならない。
【0102】
Nh・d/f≧1.65 …(12)
よって、以下の式を満たすように、対物レンズを設計することで、射出成形時の面転写精度を高く維持しつつ、“耐光性”を良好とすることができる。
【0103】
1.65≦Nh・d/f≦1.8 …(13)
【0104】
なお、さらに、“中心部の劣化”を抑制するには、図9から、Nh・d/fを1.70以下とする必要がある。この場合、式(11)、(13)は、以下のようになる。
【0105】
1.5≦Nh・d/f≦1.7 …(11’)
【0106】
1.65≦Nh・d/f≦1.7 …(13’)
【0107】
この式に従って対物レンズを設計することで、“耐光性”、“中心部の劣化”および“面転写精度”を何れも良好なものとすることができる。
【0108】
<変更例1>
上記実施の形態の構成に加え、さらに、ディスク側レンズ面12に形成された反射防止膜13(図12参照)の特性を調整することにより、光軸上に、劣化領域が生じるのを一層抑制することもできる。
【0109】
図13は、反射防止膜の特性を示す図である。同図の横軸は、光軸からの距離、縦軸は、BD光に対する反射防止膜の反射率である。なお、横軸は、ディスク側レンズ面12の最外周部の半径方向の距離を1として規格化されている。同図の“コートB”は、従来の反射防止膜の特性を示し、“コートA”は、本変更例における反射防止膜の特性を示す。
【0110】
同図に示すように、従来は、強度の高いBD光中心部の光をより多く透過させるために、対物レンズ10の中心部の反射率が低くなるよう、反射防止膜13が形成されていた。この場合、製膜の関係から、反射防止膜13を形成したときの反射率は、同図に示すように、対物レンズ10の外周部が高くなる。こうなると、入射角との関係から元々反射が起こり易いディスク側レンズ面12の外周部における反射が、反射防止膜13によって抑制され難くなる。よって、対物レンズ10の光軸上に、反射光が集光されることによる劣化が起こり易くなる。
【0111】
これに対し、本変更例では、同図に示すように、対物レンズ10の外周部の反射率が小さくなるように、反射防止膜13が形成される。これにより、入射角との関係から反射が起こり易いディスク側レンズ面12の外周部における反射が、反射防止膜13によって抑制され、よって、対物レンズ10の光軸上に、反射光が集光されることによる劣化が起こり難くなる。
【0112】
なお、このように反射防止膜13を形成すると、同図に示すように、ディスク側レンズ面12の中心部における反射率が高くなる。しかしながら、ディスク側レンズ面12の中心部は、光線の入射角が小さいため、反射が起こり難く、よって、このように、ディスク側レンズ面12の中心部における反射率が高くなっても、中心部のおける反射によるBD光の減衰は、それほど大きくならない。
【0113】
このように、本変更例によれば、対物レンズ10の光軸上に、反射光が集光されることによる劣化が一層起こり難くなるとの効果が奏され得る。
【0114】
<変更例2>
上記変更例1では、反射防止膜13の特性が調整されたが、本変更例では、ディスク側レンズ面12と反射防止膜13との間に酸化防止膜が形成される。
【0115】
BD光照射によるディスク側レンズ面12の劣化は、酸素によって起こる。よって、ディスク側レンズ面12の表面に酸化防止膜を蒸着し、ディスク側レンズ面12に対して酸素を遮断することで、さらに、ディスク側レンズ面12の劣化を抑制できる。
【0116】
なお、酸化防止膜は、たとえば、Al2O3とSiO2の混合物を蒸着することによって形成される。
【0117】
<光ピックアップ装置>
図14に、本実施の形態に基づき設計された対物レンズ10を搭載する光ピックアップ装置の光学系(BD用の光学系)の構成を例示する。
【0118】
BD用の光学系は、半導体レーザ101と、回折格子102と、偏光ビームスプリッタ103と、コリメータレンズ104と、レンズアクチュエータ105と、立ち上げミラー106と、λ/4板107と、第1の対物レンズ108と、アナモレンズ109と、光検出器110と、FMD(Front Monitor Diode)111から構成されている。
【0119】
半導体レーザ101は、波長400nm程度の青色レーザ光を出力する。回折格子102は、半導体レーザ101から出射されたレーザ光をメインビームと2つのサブビームに分割する。偏光ビームスプリッタ103は、回折格子102側から入射されたレーザ光を反射および透過する。なお、半導体レーザ101は、出射レーザ光の偏光方向が偏光ビームスプリッタ103に対してS偏光となる方向からややずれるように配置されている。これにより、回折格子102を透過したレーザ光は、たとえば、95%が偏光ビームスプリッタ103により反射され、残り5%が偏光ビームスプリッタ103を透過する。
【0120】
コリメータレンズ104は、偏光ビームスプリッタ103によって反射されたレーザ光を平行光に変換する。レンズアクチュエータ105は、コリメータレンズ104をレーザ光の光軸方向に駆動する。なお、コリメータレンズ104とレンズアクチュエータ105は、収差補正手段として機能する。
【0121】
立ち上げミラー106は、コリメータレンズ104を介して入射されたレーザ光を対物レンズ108に向かう方向に反射する。λ/4板107は、反射ミラー106によって反射されたレーザ光を円偏光に変換するとともに、ディスク(BD)からの反射光を、ディスクへ向かうときの偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、ディスクによって反射されたレーザ光は偏光ビームスプリッタ103を透過して光検出器110へと導かれる。
【0122】
対物レンズ108は、上記のように、“耐光性”、“中心部の劣化”および“面転写精
度”が良好となるように設計されている。対物レンズ108は、青色波長のレーザ光を、所定のNAで、BDの信号面上に適正に収束する。すなわち、第1の対物レンズ108は、0.1mm厚のカバー層を介して信号面上に青色波長のレーザ光を適正に収束できるよう設計されている。
【0123】
アナモレンズ109は、ディスクによって反射されたレーザ光を光検出器110上に収束させる。光検出器110は、受光したレーザ光の強度分布から再生RF信号、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を導出するためのセンサーパターンを有している。なお、本実施の形態では、フォーカスエラー信号の生成手法として非点収差法が採用され、トラッキングエラー信号の生成手法としてDPP(Differential Push Pull)法が採用されている。光検出器110は、これらの手法に従ってフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を導出するためのセンサーパターンを有している。
【0124】
FMD111は、偏光ビームスプリッタ103を透過したレーザ光を受光して、受光光量に応じた信号を出力する。FMD111からの信号は、半導体レーザ101のパワー制御に用いられる。
【0125】
本構成例の光ピックアップ装置によれば、半導体レーザ101の寿命(約2000時間)が尽きるまで用いられても、対物レンズ108の特性を高く維持することができる。よって、信号の読み取りエラーを抑制でき、円滑な記録/再生動作を実現することができる。
【0126】
以上、本発明の実施の形態およびその効果について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではない。また、本発明の実施の形態も、上記以外に、種々の変更が可能である。
【0127】
たとえば、上記実施の形態では、BD用の対物レンズに本発明が適用されたが、HD用等、他の対物レンズに本発明を適用することもできる。
【0128】
また、光ピックアップ装置の構成は、図14に示すものに限定されるものではなく、CD/DVD/BD互換型の光ピックアップ装置に本発明を適用することも可能である。また、光磁気ディスクにレーザ光を照射する光ピックアップ装置およびそれに搭載される対物レンズに本発明を適用することも可能である。
【0129】
なお、図2では、光源側レンズ面11全体とディスク側レンズ面12の全体について、投影面積S1、S2が規定されたが、たとえば、図15のように、所定の開口数NAにてBDに収束されるBD光の光線が、光源側レンズ面11の一部またはディスク側レンズ面12の一部を通る場合には、当該光線が通る光源側レンズ面11およびディスク側レンズ面12の領域を光軸方向に見たときの投影面積が、それぞれ、上記投影面積S1、S2とされる。
【0130】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0131】
10、108 … 対物レンズ
11 … 光源側レンズ面(第1レンズ面)
12 … ディスク側レンズ面(第2レンズ面)
13 … 反射防止膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ピックアップ用対物レンズにおいて、
レーザ光を収束させる第1レンズ面と、
前記第1レンズ面で収束されたレーザ光を更に収束させる第2レンズ面と、
を備え、
前記第2レンズ面によって反射された前記レーザ光の集光部の一部が、前記第1レンズ面よりも外側に導かれるよう、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面が設定されている、ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
前記光軸方向に見たときの、前記第2レンズ面の前記レーザ光の入射領域の最外周から内周側へ投影面積S3の範囲の領域において反射された前記レーザ光の集光部が、前記第1レンズ面よりも外側に導かれる、
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項3】
請求項2に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
前記光軸方向に見たときの前記第2レンズ面の投影面積S2と前記投影面積S3の比が、S3/S2≧0.3を満たすよう前記第1レンズ面と前記第2レンズ面が設定されている、
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
第1レンズ面と第2レンズ面が、次式を満たすように、設定されている、
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
d < D2・tan(90−Θ1+Arcsin(sinΘ1/Nh)−2・Θ2)+sag2
ただし、この式における各要素は、以下のとおりである。
Θ1: 所定の開口数でレーザ光の光線が対物レンズによって収束されるときの、第1レンズ面におけるこの光線の入射角。
Θ2: 前記開口数でレーザ光の前記光線が対物レンズによって収束されるときの、第2レンズ面におけるこの光線の出射角。
Nh: 使用波長での対物レンズの屈折率。
D2:前記開口数でレーザ光の前記光線が対物レンズによって収束されるときの、第2レンズ面におけるこの光線の入射領域の半径。
sag2:前記開口数でレーザ光の前記光線が対物レンズによって収束されるときの第2レンズ面のザグ量。
d: 対物レンズの中心厚
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
前記レーザ光の波長をNh、対物レンズの中心厚をd、対物レンズの焦点距離をfとすると、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面は、1.5≦Nh・d/f≦1.8を満たすように設定される
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
前記レーザ光の波長をNh、対物レンズの中心厚をd、対物レンズの焦点距離をfとすると、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面は、1.65≦Nh・d/f≦1.8を満たすように設定される
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
前記第2レンズ面に、反射防止膜が形成され、
前記反射防止膜は、前記第2レンズ面の外周部の方が内周部よりも前記レーザ光に対する反射率が低くなるように形成される、
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
前記第2レンズ面に、酸化防止膜が形成される、
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の対物レンズが搭載された光ピックアップ装置。
【請求項1】
光ピックアップ用対物レンズにおいて、
レーザ光を収束させる第1レンズ面と、
前記第1レンズ面で収束されたレーザ光を更に収束させる第2レンズ面と、
を備え、
前記第2レンズ面によって反射された前記レーザ光の集光部の一部が、前記第1レンズ面よりも外側に導かれるよう、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面が設定されている、ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
前記光軸方向に見たときの、前記第2レンズ面の前記レーザ光の入射領域の最外周から内周側へ投影面積S3の範囲の領域において反射された前記レーザ光の集光部が、前記第1レンズ面よりも外側に導かれる、
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項3】
請求項2に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
前記光軸方向に見たときの前記第2レンズ面の投影面積S2と前記投影面積S3の比が、S3/S2≧0.3を満たすよう前記第1レンズ面と前記第2レンズ面が設定されている、
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
第1レンズ面と第2レンズ面が、次式を満たすように、設定されている、
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
d < D2・tan(90−Θ1+Arcsin(sinΘ1/Nh)−2・Θ2)+sag2
ただし、この式における各要素は、以下のとおりである。
Θ1: 所定の開口数でレーザ光の光線が対物レンズによって収束されるときの、第1レンズ面におけるこの光線の入射角。
Θ2: 前記開口数でレーザ光の前記光線が対物レンズによって収束されるときの、第2レンズ面におけるこの光線の出射角。
Nh: 使用波長での対物レンズの屈折率。
D2:前記開口数でレーザ光の前記光線が対物レンズによって収束されるときの、第2レンズ面におけるこの光線の入射領域の半径。
sag2:前記開口数でレーザ光の前記光線が対物レンズによって収束されるときの第2レンズ面のザグ量。
d: 対物レンズの中心厚
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
前記レーザ光の波長をNh、対物レンズの中心厚をd、対物レンズの焦点距離をfとすると、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面は、1.5≦Nh・d/f≦1.8を満たすように設定される
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
前記レーザ光の波長をNh、対物レンズの中心厚をd、対物レンズの焦点距離をfとすると、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面は、1.65≦Nh・d/f≦1.8を満たすように設定される
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
前記第2レンズ面に、反射防止膜が形成され、
前記反射防止膜は、前記第2レンズ面の外周部の方が内周部よりも前記レーザ光に対する反射率が低くなるように形成される、
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の光ピックアップ用対物レンズにおいて、
前記第2レンズ面に、酸化防止膜が形成される、
ことを特徴とする光ピックアップ用対物レンズ。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の対物レンズが搭載された光ピックアップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−53958(P2012−53958A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196823(P2010−196823)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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