光ピックアップ装置、光ディスク装置、およびその球面収差補正方法
【課題】 追加の温度測定装置を設けることなく、温度変化による球面収差を補正することができる光ピックアップ装置、光ディスク装置、およびその球面収差補正方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 光源21からの光を光ディスクの信号記録面に集光させる光学系10と、コイル68を有し、コイル68に通電することで光学系10を構成する光学素子37を駆動させる駆動部200と、光学素子のうち、第1の光学素子37の温度変化に伴う球面収差を補正するため、光学素子のうち第2の光学素子32を所定量移動するように駆動部200を制御する球面収差補正部300と、を備え、球面収差補正部300は、コイル68の電気特性に基づいて、第2の光学素子32の移動量を算出するように構成した。
【解決手段】 光源21からの光を光ディスクの信号記録面に集光させる光学系10と、コイル68を有し、コイル68に通電することで光学系10を構成する光学素子37を駆動させる駆動部200と、光学素子のうち、第1の光学素子37の温度変化に伴う球面収差を補正するため、光学素子のうち第2の光学素子32を所定量移動するように駆動部200を制御する球面収差補正部300と、を備え、球面収差補正部300は、コイル68の電気特性に基づいて、第2の光学素子32の移動量を算出するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに対して信号の記録や再生を行う光ピックアップ装置、光ディスク装置、およびその球面収差補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高開口数(NA)の対物レンズを用いた光ディスクの記録/再生装置(光ディスク装置)においては、光透過層の厚み変化に起因する球面収差の発生が著しいことが従来から知られている。球面収差が大きくなると、情報記録面上に集光される光スポットのスポット径が大きくなり、スポットピーク強度が低下する。この光スポットの劣化により、情報の読み取り時においては、再生信号レベルが低下してジッターが増大し、隣接トラックからのクロストークが増加してエラーレートが増大する。また、情報の書き込み時においては、記録マーク径が増大し、記録感度が低下する。これらの現象は狭トラックピッチ、短ピット長になるほど顕著となる。
【0003】
そこで、遮蔽体を透過した光量とフォトセンサの出力に応じて光学部品の基準位置を正確に定め、カップリングレンズ、またはコリメータレンズを光軸方向の適切な位置に移動させて球面収差を補正する光学装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、光ピックアップ装置においては、対物レンズ等に光学樹脂が多く用いられるようになってきている。しかし、光学樹脂は光学ガラスに比べて温度変化による屈折率の変化が大きいため、温度変化に対する球面収差の変化量も大きくなる。この場合、基準位置を正確に定めただけでは、光学素子の温度変化によって生ずる球面収差を適切に補正することはできなくなる。そこで、温度変化によって生ずる球面収差特性をあらかじめ見積り、光ピックアップ装置の光学素子近傍に温度センサを設置して、光学素子の温度を測定することにより、その温度に対応した球面収差を補正する方式が提案されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−131113号公報(段落0023、図3、図4)
【特許文献2】特開平10−106012号公報(段落0094、図5、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような構成では、光学素子の温度測定のため、光スポットを調整するための基本的な部材以外に、新たに温度測定装置を搭載する必要がある。そのため、温度センサや付属する制御基板等への配線が必要となって部品点数の増加や作業工程の複雑化を招くという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、追加の温度測定装置を設けることなく、温度変化による球面収差を補正することができる光ピックアップ装置、光ディスク装置、およびその球面収差補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる光ピックアップ装置は、光源からの光を光ディスクの信号記録面に集光させる光学系と、コイルを有し、前記コイルに通電することで前記光学系を構成する光学素子を駆動させる駆動部と、前記光学素子のうち、第1の光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正するため、前記光学素子のうち第2の光学素子を所定量移動するように前記駆動部を制御する球面収差補正部と、を備え、前記球面収差補正部は、前記コイルの電気特性に基づいて、前記第2の光学素子の移動量を算出する、ものである。
【0009】
また、本発明にかかる光ディスク装置は、上記光ピックアップ装置と、光ディスクを回転可能に保持するディスク保持部と、前記光ディスクに記録された信号を再生または光ディスクに信号を記録するために前記光ピックアップ装置を制御する光ピックアップ装置制御部と、を備えるものである。
【0010】
また、本発明にかかる球面収差補正方法は、光学系を駆動させる駆動装置の所定のコイルに通電して、前記所定のコイルの電気特性を測定する電気特性測定ステップと、測定された前記所定のコイルの電気特性に基づき、前記光学系を構成する光学素子のうち、所定の光学素子の移動量を算出する演算ステップと、前記算出された移動量に基づき、前記所定の光学素子を駆動させ、前記光学系を構成する光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正する球面収差補正ステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光学素子の駆動部に設けられたコイルの電気特性を測定することにより光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正するので、追加の温度測定装置を設けることなく、温度変化による球面収差を補正することができる光ピックアップ装置、光ディスク装置、およびその球面収差補正方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1〜図13は、本発明の実施の形態1に係る光ピックアップ装置、光ディスク装置、およびその球面収差補正方法を示すもので、図1〜図11が光ピックアップ装置の構成を示す図、図12、13がその球面収差補正方法を示す図であり、光ディスク装置自身は図示しないが、上記光ピックアップ装置と、光ディスクを回転可能に保持するディスク保持部と、光ディスクから信号を再生する、または光ディスクに信号を記録するために上記光ピックアップ装置を制御する光ピックアップ装置制御部と、を備えたものである。
【0013】
図1は、光ピックアップ装置の本発明の特徴部分を示す機能ブロック図であり、光源からの光を光ディスクの信号記録面に集光させる光学系10と、コイルを有し、コイルに通電することで光学系10を構成する光学素子(レンズ)を駆動させる駆動部200と、光学素子のうち、第1の光学素子(例えば対物レンズ)の温度変化に伴う球面収差を補正するため、光学素子のうち第2の光学素子(例えばコリメートレンズ)を所定量移動するように駆動部200を制御する球面収差補正部300と、を備えている。そして、球面収差補正部300は、コイルの電気特性(コイル電気特性測定部302で測定)に基づいて第1の光学素子の温度を算出(記憶部304に記憶されたデータを用いて光学素子温度演算部303が演算)し、算出した第1の光学素子の温度に基づいて、第2の光学素子の移動量を算出(光学素子温度演算部303が演算する)するものである。
【0014】
ここで、図2〜図11を用いて光ピックアップ装置の光学系や駆動部等の構成について説明する。
図2、図3は光ピックアップ装置全体を上方からそれぞれ角度を変えて見た斜視図、図4は光ピックアップ装置内に設置された光学素子で形成される光路系部分を取り出して見た場合の光路系全体図、図5は光ピックアップ装置全体を下方から見た底面図、図6は光ピックアップ装置に設けられた対物レンズアクチュエータ(駆動部200)の斜視図、図7は図6に対応する対物レンズアクチュエータの分解斜視図、図8は光学素子の取付けを説明するために光ピックアップ装置の基板をはずした状態で下方から見た底面斜視図、図9は図8に対応する光ピックアップ装置の分解斜視図、図10は光ピックアップ装置内に設置された球面収差を補正する光学ユニットであるところのコリメートレンズアクチュエータ(駆動部200)の斜視図、図11は図10に対応するコリメートレンズアクチュエータの分解斜視図である。以下、具体的に説明する。
【0015】
図2、3(主に図2で説明)において、光ピックアップ装置1はピックアップベース11を基台とし、これに各部品を組み込む形で構成されている。このように構成された光ピックアップ装置1には、図4に示す光学系10が形成されている。ここでレーザ光源21から出射された光ビーム20aは、回折格子25で3分割され、ビームスプリッタ31に入射する。ここで光ビーム20aは光ビームパワー検知器41に入射する光ビーム20fとコリメートレンズ32に入射する光ビーム20bに分割される。光ビームパワー検知器41は受光した光ビーム強度を検知し、この検知結果に基づきレーザ光源21の出射光強度を制御するよう回路を構成している。光ビーム20bはコリメートレンズ32で略平行光に、さらに波長板34で円偏光に変換され、打上げミラー36によりZ(+)方向に方向転換された光ビーム20cは対物レンズ37に入射し、図示していない光ディスクにスポットを集光する。光ディスクで反射した光ビーム20crは、対物レンズ37、打上げミラー36を経て、波長板34で直線偏光に変換され、さらにコリメートレンズ32、ビームスプリッタ31、シリンドリカルレンズ38を経て光ビーム20dは光検知器44に入射し、ここで光信号が電気信号に変換され、再生信号と制御信号が得られる。
【0016】
後述するが、ここで対物レンズ37は、光ディスクの所定位置にスポットを照射するために、光ディスク半径方向となるY方向、および光ディスクの信号面に対して垂直方向となるZ方向に可動となる対物レンズアクチュエータ60(図6、7)に支持されている。また、光ディスク上のスポットに発生する球面収差を補正するため、コリメートレンズ32は光軸方向となるX方向に可動となるコリメートレンズアクチュエータ80(図8、9)に支持されている。
【0017】
図2および図3において、対物レンズアクチュエータ60はピックアップベース11に対して固定ねじ63、付勢ばね64、調整ねじ62a、62bにより傾き調整可能に固定されている。またピックアップベース11には、光ピックアップ装置1を図示しない光ディスク装置に取り付ける際の支持部となる軸受部11a、11b、11cが構成されている。図5において、基板47はピックアップベース11の底面を覆う形で止めねじ49a、49b、49cによりピックアップベース11に固定されている。フレキシブル基板48は、突出部48a〜cを有し、基板47に接着され、突出部48aで光ビームパワー検知器41と、突出部48bでレーザ光源21と、突出部48cで光検知器44と電気的に接続している。またフレキシブル基板48には演算、記憶、制御を実施する集積回路チップ50とコネクタ51、52が実装され、コネクタ52はコリメートアクチュエータ80のフレキシブル基板82と接続し、コネクタ51は図示しない光ディスク装置との電気的接続に用いられる。本実施の形態では、図1に示した球面収差補正部300は、集積回路チップ50内にソフトウェアをインストールすることにより形成されている。
【0018】
次に、駆動部200の一部である対物レンズアクチュエータ部分について説明する
図6および図7において、対物レンズ37はレンズホルダー65に設けられた取付部65aに接着固定されている。対物レンズ37の周囲には、これを図示しない光ディスクとの接触による損傷を回避するためのプロテクタ66a、66b、66c、66dが、レンズホルダー65に設けられた取付部65bに接着固定されている。トラッキングコイル67b、67dはレンズホルダー65の側面に設けたコイル接着部65mに接着固定され、トラッキングコイル67a、67c(図示せず)はこれと対向する側面に設けたコイル接着部65nに接着固定されている。トラッキングコイル67a、67b、67d、67c(まとめてトラッキングコイル67と表記する)は、この順に直列に接続され、直列接続の両コイル端子は、レンズホルダー65に設けられたワイヤ接続部65g、65j(図示せず)にそれぞれ接続されている。フォーカスコイル68は、レンズホルダー65の底面開口部(図示せず)に設けたコイル接着部65pに位置決めされ、接着固定されている。このフォーカスコイル68の両コイル端子もトラッキングコイル67と同様に、ワイヤ接続部65h、65k(図示せず)にそれぞれ接続されている。導電性材料で構成されたワイヤ71a、71bは各々その一端をレンズホルダー65に設けたワイヤ固定穴65c、65dを挿通し、ワイヤ接続部65g、65hに位置決めされ、ここで半田(図示せず)により先のトラッキングコイル端子、およびフォーカスコイル端子とそれぞれ電気的に接続される。
【0019】
また図示しないが、これと同様にレンズホルダー65の反対側では、ワイヤ71c、71dがその一端をレンズホルダー65に設けたワイヤ固定穴65e、65fを挿通し、ワイヤ接続部65j、65kに位置決めされ、ここで半田(図示せず)によりもう一方のトラッキングコイル端子、およびフォーカスコイル端子とそれぞれ電気的に接続される。ワイヤ71a、71b、71c、71dのそれぞれのもう一端は、ワイヤホルダー72を経て基板73に設けられたワイヤ固定部73a、73b、73c、73dにそれぞれ位置決めされ、ここで半田(図示せず)によりワイヤ固定部73a、73b、73c、73dと電気的接続を保ちながら固定される。ワイヤ固定部73a、73b、73c、73dは、フレキシブル基板74と電気的に接続しており、フレキシブル基板74は、図5に示したフレキシブル基板48に電気的に接続している。基板73はワイヤホルダー72に固定され、ワイヤホルダー72はアクチュエータベース61に固定されている。
【0020】
磁石69a、69bはアクチュエータベース61に設けられた磁石取付部61a、61bに固定され、トラッキングコイル67、フォーカスコイル68とわずかな隙間を持ち、トラッキングコイル67に通電した場合にはY方向の電磁力が発生するように、またフォーカスコイル68に通電した場合にはZ方向の電磁力が発生するように着磁されている。また、アクチュエータベース61にはその底面側に球面座70が固定されており、対物レンズアクチュエータ60をピックアップベース11に対して傾き調整する際の座面となる。カバー75は止めねじ76によりワイヤホルダー72に固定される。
【0021】
つづいて、こちらも駆動部200の一部であるコリメートレンズアクチュエータについて説明する。
図8および図9において、コリメートレンズアクチュエータ80は、止めねじ81a、81b、81cによりピックアップベース11の取付部11nに位置決め後、固定されている。打上げミラー36は、傾斜取付部11hに位置決め後、接着固定されている。波長板34は、ホルダー35を介して取付部11gに位置決め後、接着固定されている。ビームスプリッタ31は、取付部11fに位置決め後、接着固定されている。シリンドリカルレンズ38はホルダー39を介して取付部11mに位置決め後、接着固定されている。回折格子25はホルダー26を介して取付部11eに取り付けられ、止めねじ28でピックアップベース11に固定された板ばね27により回転調整可能に付勢されている。レーザ光源21はホルダー22を介して、調整面11dの面内で光軸調整されたのち、ワッシャー23a、23b、止めねじ24a、24bによりピックアップベース11に固定されている。光ビームパワー検知器41は回路基板42に実装され、保持板43を介して取付部11jに位置決め後、接着固定されている。光検知器44は回路基板45に実装され、保持板46を介して取付部11kに三次元的に位置決め調整後、接着固定されている。
【0022】
図10および図11に示すコリメートレンズアクチュエータ80は、図9に示すコリメートレンズアクチュエータ80からフレキシブル基板82、カバー83、止めねじ84a、84bを除去したものであり、コリメートレンズ32はレンズホルダー86に設けたレンズ取付部86aに位置決めされ、接着固定されている。レンズホルダー86には、軸受部86b、86cが設けられ、ガイドシャフト87a、87bによりX方向に並進可能に軸支されている。また、レンズホルダー86には遮光部86dが設けられ、アクチュエータベース85に設けられた取付部85fに位置決め固定された光検知器88により、特許文献1と同様に遮光部86dの遮光による光量変化によって、レンズホルダー86の基準位置検知を実施する構成となっている。
【0023】
ガイドシャフト87a、87bはアクチュエータベース85に設けられたシャフト保持穴85b、85c、85d、85eにそれぞれ保持され、付勢ばね89により、レンズホルダー86は常時X(−)方向に付勢されている。モータ90は、その回転軸にリードスクリュー90aを一体構成した2相ステッピングモータであり、電源供給用に第一のコイル端子90b、90c、第二のコイル端子90d、90eを備え、モータ取付部85gに位置決め後、止めねじ91a、91bにより固定されている。リードナット92は、そのナット部92aがリードスクリュー90aと螺合し、係合部92bがアクチュエータベース85のガイド溝85aにより回転規制される構成となっている。これによりリードナット92は、リードスクリュー90aの回転により、X方向に並進移動する。
【0024】
次に動作について説明する。図12は本実施の形態1にかかる光ピックアップ装置および光ディスク装置における温度変化に伴う球面収差を補正する方法を示すフローチャートであり、図13は球面収差を行う中で、コイルの電気特性とコイル温度との関係を示す図である。図12において、光ディスク装置の電源を投入すると、集積回路チップ50に形成された球面収差補正部300(各部構成は図1参照)は、球面収差補正シーケンスを起動する(ステップS10)。つぎに、現在の運転状況が電源スイッチを入れた起動直後(光ディスクの回転駆動を開始した場合も含む)であるのか、または、運転中であるのかを判断する(ステップS20)。
【0025】
起動直後である場合(S20で「Yes」)、ステップS100に移行し、図13の相関1に示すデータを用いて第1の光学素子(本実施の形態では対物レンズ37)の温度検知動作を開始する。球面収差補正部300の駆動制御部301は、対物レンズアクチュエータ60のフォーカスコイル68に、Z(−)方向にレンズホルダー65が移動するように直流電圧を印加する(ステップS100)。つぎに(時間的には、ステップS100と同時であるが)、コイル電気特性測定部302は、フォーカスコイル68に流れる直流電流量を検知する(ステップS110)。なお、このとき、印加する電圧を実測してもよいが、本実施の形態では、印加電圧は一定であるとして、固定値を使用する。つぎに、光学素子温度演算部303は、電流値と電圧値からオームの法則により、フォーカスコイル68の抵抗値Rを算出する(ステップS120)。コイル抵抗値はコイル温度に比例して値が変化する特性があり、温度T0(℃)のときのコイル抵抗値をR0(Ω)とした場合、フォーカスコイルの抵抗値と温度との関係は、図13の相関1に示すように、温度T(℃)の時の抵抗値R(Ω)は、(数式1)で示される。
R(T)=K・(T−T0)+R0 (数式1)
ここでK(Ω/℃)は、コイルに固有の温度係数である。これより、事前に温度T0(℃)のときのコイル抵抗値R0(Ω)と、温度係数K(Ω/℃)を把握すれば、抵抗値R(Ω)からその時のコイル温度T(℃)を(数式1)の逆算により算出することが可能となる。
【0026】
光ピックアップ装置1は、出荷時にフォーカスコイル68の抵抗値R0を例えばテスターで、フォーカスコイル68の温度T0を例えば赤外放射温度計で測定し、コイル温度係数Kと共にその結果を記憶部304に記録している。したがって、光学素子温度演算部303は、Z(−)方向にレンズホルダー65を移動させた先のフォーカスコイル68への通電動作で得た印加電圧値と電流値から、コイル抵抗値Rを計算する。そして、このコイル抵抗値Rと記憶部304に保管された温度T0(℃)のときのコイル抵抗値R0(Ω)と、温度係数K(Ω/℃)から、コイルの温度T(℃)を計算する(ステップS130)。このとき、コイルはそれまでに通電されておらず、発熱がなかったので、コイルの温度は、対物レンズ37やコリメートレンズ32といった光学系を構成する光学素子の温度とほぼ同じ温度であるといえる。そこで、ステップ130では、相関1を用いて対物レンズ37の温度=コイル温度Tであるとして、コイルの温度Tを算出し、球面収差補正を行うためのステップS300に移行する。
【0027】
一方、ステップS20において、運転状況が運転中であると判断した場合(「No」)について説明する。この場合、光ディスクは、その時点以前から連続回転駆動されているため、コイルには既に電流が流され発熱している状態になっている。また、コイルも動作状況に応じて適宜駆動されているため、起動直後とは異なるシーケンスで光学素子の温度を検知する。
【0028】
光ディスクを連続回転駆動している時の光学素子の温度は、定常記録または定常再生状態にあるフォーカスコイル68に、図示していないフォーカスサーボ回路から通電駆動される交流電圧の最大値E、交流電流の最大値I、および光ディスクの回転周波数fをもとに算出したコイルの抵抗を基に算出する。定常状態においては、交流電圧の最大値E、交流電流の最大値I、およびフォーカスコイル68のインピーダンスZの間には、(数式2)の関係が成り立つ。
E=I・Z (数式2)
ここで、フォーカスサーボ回路に通電駆動される交流波形は、そのほとんどが光ディスクの回転周期に同期した面振れ成分であるので、インピーダンスZは、フォーカスコイル68の抵抗R、インダクタンスL、光ディスクの回転周波数fを用いて、(数式3)で表される。
Z=〔R2+(2πfL)2 〕0.5 (数式3)
【0029】
そこで、ステップS20からステップS200に移行した場合、球面収差補正部300の駆動制御部301は、対物レンズアクチュエータ60のフォーカスサーボ回路を駆動させ、フォーカスコイル68に交流電圧を印加する(ステップS200)。つぎに(時間的には、ステップS200と同時であるが)、コイル電気特性測定部302は、フォーカスコイル68に流れる交流電流量とディスク回転数fを検知する(ステップS210)。つぎに、光学素子演算部303は、電流値と電圧値および記憶部304に記憶されたフォーカスコイル68のインダクタンスLから上述した数式2,3により、フォーカスコイル68の抵抗値Rを算出する(ステップS220)。この場合も、コイル抵抗値はコイル温度に比例して値が変化する特性があり、コイル温度T0(℃)のときのコイル抵抗値をR0(Ω)とした場合の関係は図13の相関1と同様である。
【0030】
一方、光ディスクを連続回転駆動する場合、先の温度検知結果をもとに随時球面収差補正動作を実施するが、光ディスクの回転駆動開始時と異なり、定常記録または定常再生状態にあるフォーカスコイル68は連続通電により発熱し、コイル温度T(℃)と対物レンズ表面の温度T1(℃)の間には平衡状態において一定の温度差ΔTが生じる。よって定常記録または定常再生状態の球面収差補正動作においてはこの温度差を考慮し、図13の相関2に示す関係式を用いた温度補正を実施し、対物レンズ表面の温度T1(℃)を算出する(ステップS230)。そして、球面収差補正を行うためのステップS300に移行する。
【0031】
上記のように、光学系を構成する光学素子(対物レンズ37)の近傍に位置するコイル(フォーカスコイル68やトラッキングコイル67)の電気特性から光学素子の温度を検知するようにしたので、特許文献2に示すように温度センサを光学素子近傍に設置する必要がない。そのため、アクチュエータにより頻繁に駆動される光学素子の動きをセンサやセンサの配線により妨げることもない。
【0032】
また、上記配線やセンサ自体が、コイルに使用される銅線等と同じく、温度により抵抗値が変化することは一般に知られていることではあるが、光学素子近傍を通る配線であっても、コイル以外の配線の場合、光学素子から離れた位置の配線部分の抵抗変化も検出してしまうことになる。しかし、コイルの場合、配線長さのほとんどはコイル部分に集中するので、その抵抗はほとんどコイル部分で決まり、他の配線部分の影響は無視しうるものとなる。また、センサ自体や配線の配置上の制約から、温度センサは必ずしも光学素子近傍に配置できるとは限らない。一方、光学素子の駆動に用いるコイルは、まさに光学素子の近傍(1cm程度以内)に配置されるので、光学素子の駆動に用いるコイルの電気特性である抵抗値から光学素子の温度を検知することは、温度センサを用いる温度検知より正確に温度検知ができるといえる。
【0033】
温度検知後の光ピックアップ装置1の球面収差補正動作(ステップS300、S310)については、例えば従来技術で示した特許文献2と同様となる。第1の光学素子(ここでは対物レンズ37)の温度変化によって発生する球面収差特性をあらかじめ見積った計算結果(表示せず)を記憶部304に記録し、先の温度検知結果からその温度に対応した所定量だけ第2の光学素子であるコリメートレンズ32をコリメートレンズアクチュエータ80で駆動する。具体的には、上記温度検知後モータ90に通電し、リードスクリュー90aの回転によりリードナット92をX(+)方向に並進移動させる。これにより付勢ばね89により常時X(−)方向に付勢されているレンズホルダー86は、リードナット92によりX(+)方向に並進駆動される。レンズホルダー86の遮光部86dが光検知器88のスリット部88aに到達し、光検知器88の検知光(図示せず)を遮光すると、光検知器からの出力電圧が変化する。この電圧変化があらかじめ設定していた所定の閾値を超えるまでモータ90に通電し、その後通電を停止する。このときレンズホルダー86が停止する位置をレンズホルダー86位置決め調整の基準位置とする。モータ90はステッピングモータであり、所定のパルス数だけ駆動パルスを入力すると、そのパルス数に比例した回転角だけリードスクリュー90aが回転し、これと螺合するリードナット92がこの回転角に比例してX方向に並進移動する。
【0034】
ここで記憶部304には、温度変化によって発生する球面収差特性を補正するコリメートレンズ32の適正位置が、先のレンズホルダー86の基準位置からのモータ90の駆動パルス数として記憶されている。よって、先に述べた方法で温度検知した後、この温度結果に対応したモータ90の駆動パルス数を集積回路チップ50の記憶部から検索する(ステップS300)。その検索で得られた駆動パルス数を駆動制御部301は、駆動部200のモータ90に入力する(ステップS310)。これによりリードスクリュー90aが回転し、リードナット92をX方向に並進移動させ、コリメートレンズ32を光学系内の適正位置に位置決め保持し、球面収差補正することが可能となる。
【0035】
その後は、一定時間経過ごと、および/または光ディスクの交換等の動作が行われるごとにステップS20に戻り、第1の光学素子である対物レンズ37の温度変化に伴う球面収差補正動作を実行する。
【0036】
以上のように、本実施の形態1にかかる光ピックアップ装置によれば、レーザ光源21からの光を光ディスクの信号記録面に集光させる光学系10と、コイル67,68を有し、コイル67,68に通電することで光学系10を構成する光学素子(対物レンズ37)を駆動させる駆動部200と、光学素子のうち、第1の光学素子37の温度変化に伴う球面収差を補正するため、光学素子のうち第2の光学素子32を所定量移動するように駆動部200を制御する球面収差補正部300と、を備え、球面収差補正部300は、コイル68の電気特性に基づいて第1の光学素子37の温度Tを算出し、算出した第1の光学素子37の温度Tに基づいて、第2の光学素子32の移動量を算出するように構成したので、追加の温度測定装置を設けることなく、光ピックアップ装置に本来搭載されている部品を用いて光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正することができるので、部品点数が少なく、組立てが容易であり、高性能な光ピックアップ装置を得ることができる。
【0037】
とくに、コイル68の電気特性を、コイル68の電気抵抗で評価するので、簡単な測定で球面収差を補正することができる。
【0038】
さらに、コイル68の電気抵抗を、光学素子37を駆動する際にコイル68に流れる電流値から換算するようにしたので、通常の起動動作や運転動作を妨げることなく球面収差を補正することができる。とくに、直流電流により抵抗を評価する場合はコイルのインダクタンスを無視することができるので、より簡易に電気抵抗を評価することができる。
【0039】
また、コイルの電気特性(電流値)と、第2の光学素子32の移動量とを関係付けた相関式(式1〜3および表示しない式)に対応する係数群(K、T0、R0、L)を記録した記録部304、を備え、球面収差補正部300は、コイル68の電気特性と相関式および記憶部304に記憶された係数群に基づいて第2の光学素子32の移動量を算出するように構成したので、簡単な演算で正確に球面収差を補正することができる。
【0040】
また、記録部304には、光ディスク装置の運転状況に対応する複数の係数群が記憶され、球面収差補正部300は、運転状況に応じて、複数の係数群のなかからひとつを選択し、第2の光学素子の移動量を算出するように構成したので、運転中のコイルの発熱による影響を考慮した正確な球面収差補正が可能となる。
【0041】
また、本実施の形態1にかかる光ディスク装置によれば、上記光ピックアップ装置1と、光ディスクを回転可能に保持するディスク保持部と、光ディスクに記録された信号を再生または光ディスクに信号を記録するために光ピックアップ装置1を制御する光ピックアップ装置制御部と、を備えるように構成したので、追加の温度測定装置を設けることなく、光ディスク装置に本来搭載されている部品を用いて光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正することができるので、部品点数が少なく、組立てが容易であり、高性能な光ディスク装置を得ることができる。
【0042】
さらに、本実施の形態1にかかる光ピックアップ装置の球面収差補正方法によれば、光学系を駆動させる駆動装置の所定のコイル68に通電して、所定のコイル68の電気特性を測定する電気特性測定ステップ(S100,S110、S200,210)と、測定された所定のコイル68の電気特性に基づき、光学系10を構成する光学素子のうち、所定の光学素子32の移動量を算出する演算ステップ(S120,S130、S220,S230、S300)と、算出された移動量に基づき、所定の光学素子32を駆動させ、光学系10を構成する光学素子37の温度変化に伴う球面収差を補正する球面収差補正ステップ(S310)と、を備えるように構成したので、部品の追加や通常の運転動作の遅滞を生じさせることなく、光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正することができる。
【0043】
なお、本実施の形態1においては、温度検知のための通電を対物レンズアクチュエータ60のフォーカスコイル68に実施したが、これをトラッキングコイル67に通電してもよい。この場合、Y方向の何れかにレンズホルダー65が移動するように直流電圧を印加する。同時にこのときトラッキングコイル67に流れる直流電流量を検知する。後の動作はフォーカスコイル68に通電した場合と同じ手順で温度検知、球面収差補正を実施する。
【0044】
また、本実施の形態においては、球面収差補正部300を光ピックアップ装置の集積回路チップ内に設けたが、球面収差補正部300を物理的に光ピックアップ装置内に形成する必要はなく、光ピックアップ装置を備える光ディスク装置内に形成してもよい。この場合、光ピックアップ装置には、コイルの電気特性を計測するための出力端子を設けておけば、光ディスク装置に組み込まれることで、本発明の実施の形態に係る球面収差補正部を備えることになる。
【0045】
また、本実施の形態においては、コイルの電気特性に関しては、測定した電流値から抵抗値を算出することとし、算出した抵抗値から温度を算出するようにしているが、電流値と抵抗の関係式と、抵抗と温度の関係式とをひとつに纏め、測定した電流値から直接温度を算出するようにしてもよい。さらに、電流値と、第1の光学素子(対物レンズ37)の温度変化に伴う球面収差補正のための第2の光学素子(コリメートレンズ32)の移動量との関係がひとつの式で表せるならば、抵抗値や温度を算出することなく、電流値から直接球面収差補正のための第2の光学素子(コリメートレンズ32)の移動量を算出するようにしてもよい。
【0046】
また、本実施の形態においては、図13における相関1や相関2に関する係数等を記憶部304に記憶して、光学素子温度演算部303にて抵抗や温度、あるいは移動量を計算するようにしているが、これらの関係を運転状況毎の2つのLUT(Look Up Table)として記憶部304に記憶し、電気特性に対する温度あるいは移動量を運転状況ごとに選択したLUTから読み込み制御するようにしてもよい。また、運転状況についても2つに限らず、コイルへの通電頻度に応じて複数のテーブルを用意してもよい。
【0047】
実施の形態2.
本実施の形態2における光ピックアップ装置、光ディスク装置、および球面収差補正方法は、コリメートレンズアクチュエータ80に搭載したモータ90のコイルを電気特性の測定対象としたものであり、その他の構成については実施の形態1と同様である。図14は、モータ90内部のコイル接続関係を示した図である。コイルは第一のコイル90f、第二のコイル90gの2相で構成されており、各コイル端子90b、90c、90d、90eはフレキシブル基板82、コネクタ52を介して集積回路チップ50に電気的に接続されている。
【0048】
動作についても実施の形態1と同様に図12と図13で説明できる。ここで実施の形態1と異なるのは、通電先が対物レンズアクチュエータ60ではなく、コリメートレンズアクチュエータ80となることである。例えばステップS100では、コリメートレンズアクチュエータ80のモータ90の第一のコイル90fに直流電圧を印加する。ステップS110では、第一のコイル90fに流れる直流電流量を検知する。以降は実施の形態1と同じく、第一のコイル90fのコイル抵抗値もコイル温度に比例して値が変化する特性がある。よって実施の形態1と同じように光ピックアップ装置1は、出荷時に第一のコイル90fの抵抗値R0を例えばテスターで、第一のコイル90fの温度として、第一のコイル端子部90bの温度T0を例えば赤外放射温度計で測定し、コイル温度係数Kと共にその結果を集積回路チップ50の記憶部304に記録している。第一のコイル90fへの通電動作で得た印加電圧値と電流値から、集積回路チップ50の演算部でコイル抵抗値Rが計算される。このコイル抵抗値Rと記憶部に保管された温度T0(℃)のときのコイル抵抗値R0(Ω)と、温度係数K(Ω/℃)から、現在の温度T(℃)が集積回路チップ50の演算部で計算され、温度検知が可能となる。検知後の球面収差補正動作については、実施の形態1と同じである。
【0049】
さらに光ディスクを連続回転駆動する場合(S200〜S230)の温度検知は、先の光ディスク回転駆動開始時の温度検知と同じである。所定の時間間隔で、コリメートレンズアクチュエータ80のモータ90の第一のコイル90fに直流電圧を印加し、同時にこのとき第一のコイル90fに流れる直流電流量を検知する。これにより現在のコイル温度を検知し、先の検知温度から変化があれば、温度変化分に対応した量だけコリメートレンズ32の光学系内での位置を補正する。
【0050】
なおここでは、温度検知のための通電をコリメートレンズアクチュエータ80の第一のコイル90fに実施したが、これを第二のコイル90gに通電してもよい。この場合、第二のコイル90gに直流電圧を印加し、同時にこのとき流れる直流電流量を検知する。後の動作は第一のコイル90fに通電した場合と同じ手順で温度検知、球面収差補正を実施する。
【0051】
以上のように本実施の形態2における光ピックアップ装置においては、コリメートレンズアクチュエータ80に搭載したモータ90のコイルを電気特性の測定対象としたので、新たに温度検知装置を設けることなく、光ピックアップ装置に本来搭載されている部品を用いて周辺温度を検知するので、組立てを容易にすると共に、部品点数を削減することで小型化や軽量化が図られ、さらにはコストの増大を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置を上面から見た斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置を上面から見た斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置内に設けられた光学素子により形成される光路を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置を下方から見た底面図である。
【図6】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置に設けられた対物レンズアクチュエータの斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置に設けられた対物レンズアクチュエータの分解斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の部品の一部をはずした底面斜視図である。
【図9】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の部品の一部をはずした底面分解斜視図である。
【図10】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置に設けられたコリメートレンズアクチュエータの斜視図である。
【図11】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置に設けられたコリメートレンズアクチュエータの分解斜視図である。
【図12】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の球面収差補正方法を示すフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の駆動部を構成するコイルの抵抗温度特性図である。
【図14】この発明の実施の形態2における光ピックアップ装置に設けられたコリメートアクチュエータのモータコイル接続図である。
【符号の説明】
【0053】
1 光ピックアップ装置、 10 光学系、 32 コリメートレンズ(第2の光学素子)、 37 対物レンズ(第1の光学素子)、 50 集積回路チップ、 60 対物レンズアクチュエータ(駆動部)、 65 レンズホルダー、 67(67a,67b,67c,67d) トラッキングコイル、 69a,69b 磁石、 80 コリメートレンズアクチュエータ(駆動部)、 90 モータ、 90b第一のコイル端子、 90c第一のコイル端子、 90d第二のコイル端子、 90e第二のコイル端子、 90f第一のコイル、 90g第二のコイル、 200 駆動部、 300 球面収差補正部、 301 駆動制御部、 302 コイル電気特性測定部、 303 光学素子温度演算部、 304 記憶部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに対して信号の記録や再生を行う光ピックアップ装置、光ディスク装置、およびその球面収差補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高開口数(NA)の対物レンズを用いた光ディスクの記録/再生装置(光ディスク装置)においては、光透過層の厚み変化に起因する球面収差の発生が著しいことが従来から知られている。球面収差が大きくなると、情報記録面上に集光される光スポットのスポット径が大きくなり、スポットピーク強度が低下する。この光スポットの劣化により、情報の読み取り時においては、再生信号レベルが低下してジッターが増大し、隣接トラックからのクロストークが増加してエラーレートが増大する。また、情報の書き込み時においては、記録マーク径が増大し、記録感度が低下する。これらの現象は狭トラックピッチ、短ピット長になるほど顕著となる。
【0003】
そこで、遮蔽体を透過した光量とフォトセンサの出力に応じて光学部品の基準位置を正確に定め、カップリングレンズ、またはコリメータレンズを光軸方向の適切な位置に移動させて球面収差を補正する光学装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、光ピックアップ装置においては、対物レンズ等に光学樹脂が多く用いられるようになってきている。しかし、光学樹脂は光学ガラスに比べて温度変化による屈折率の変化が大きいため、温度変化に対する球面収差の変化量も大きくなる。この場合、基準位置を正確に定めただけでは、光学素子の温度変化によって生ずる球面収差を適切に補正することはできなくなる。そこで、温度変化によって生ずる球面収差特性をあらかじめ見積り、光ピックアップ装置の光学素子近傍に温度センサを設置して、光学素子の温度を測定することにより、その温度に対応した球面収差を補正する方式が提案されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−131113号公報(段落0023、図3、図4)
【特許文献2】特開平10−106012号公報(段落0094、図5、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような構成では、光学素子の温度測定のため、光スポットを調整するための基本的な部材以外に、新たに温度測定装置を搭載する必要がある。そのため、温度センサや付属する制御基板等への配線が必要となって部品点数の増加や作業工程の複雑化を招くという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、追加の温度測定装置を設けることなく、温度変化による球面収差を補正することができる光ピックアップ装置、光ディスク装置、およびその球面収差補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる光ピックアップ装置は、光源からの光を光ディスクの信号記録面に集光させる光学系と、コイルを有し、前記コイルに通電することで前記光学系を構成する光学素子を駆動させる駆動部と、前記光学素子のうち、第1の光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正するため、前記光学素子のうち第2の光学素子を所定量移動するように前記駆動部を制御する球面収差補正部と、を備え、前記球面収差補正部は、前記コイルの電気特性に基づいて、前記第2の光学素子の移動量を算出する、ものである。
【0009】
また、本発明にかかる光ディスク装置は、上記光ピックアップ装置と、光ディスクを回転可能に保持するディスク保持部と、前記光ディスクに記録された信号を再生または光ディスクに信号を記録するために前記光ピックアップ装置を制御する光ピックアップ装置制御部と、を備えるものである。
【0010】
また、本発明にかかる球面収差補正方法は、光学系を駆動させる駆動装置の所定のコイルに通電して、前記所定のコイルの電気特性を測定する電気特性測定ステップと、測定された前記所定のコイルの電気特性に基づき、前記光学系を構成する光学素子のうち、所定の光学素子の移動量を算出する演算ステップと、前記算出された移動量に基づき、前記所定の光学素子を駆動させ、前記光学系を構成する光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正する球面収差補正ステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光学素子の駆動部に設けられたコイルの電気特性を測定することにより光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正するので、追加の温度測定装置を設けることなく、温度変化による球面収差を補正することができる光ピックアップ装置、光ディスク装置、およびその球面収差補正方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1〜図13は、本発明の実施の形態1に係る光ピックアップ装置、光ディスク装置、およびその球面収差補正方法を示すもので、図1〜図11が光ピックアップ装置の構成を示す図、図12、13がその球面収差補正方法を示す図であり、光ディスク装置自身は図示しないが、上記光ピックアップ装置と、光ディスクを回転可能に保持するディスク保持部と、光ディスクから信号を再生する、または光ディスクに信号を記録するために上記光ピックアップ装置を制御する光ピックアップ装置制御部と、を備えたものである。
【0013】
図1は、光ピックアップ装置の本発明の特徴部分を示す機能ブロック図であり、光源からの光を光ディスクの信号記録面に集光させる光学系10と、コイルを有し、コイルに通電することで光学系10を構成する光学素子(レンズ)を駆動させる駆動部200と、光学素子のうち、第1の光学素子(例えば対物レンズ)の温度変化に伴う球面収差を補正するため、光学素子のうち第2の光学素子(例えばコリメートレンズ)を所定量移動するように駆動部200を制御する球面収差補正部300と、を備えている。そして、球面収差補正部300は、コイルの電気特性(コイル電気特性測定部302で測定)に基づいて第1の光学素子の温度を算出(記憶部304に記憶されたデータを用いて光学素子温度演算部303が演算)し、算出した第1の光学素子の温度に基づいて、第2の光学素子の移動量を算出(光学素子温度演算部303が演算する)するものである。
【0014】
ここで、図2〜図11を用いて光ピックアップ装置の光学系や駆動部等の構成について説明する。
図2、図3は光ピックアップ装置全体を上方からそれぞれ角度を変えて見た斜視図、図4は光ピックアップ装置内に設置された光学素子で形成される光路系部分を取り出して見た場合の光路系全体図、図5は光ピックアップ装置全体を下方から見た底面図、図6は光ピックアップ装置に設けられた対物レンズアクチュエータ(駆動部200)の斜視図、図7は図6に対応する対物レンズアクチュエータの分解斜視図、図8は光学素子の取付けを説明するために光ピックアップ装置の基板をはずした状態で下方から見た底面斜視図、図9は図8に対応する光ピックアップ装置の分解斜視図、図10は光ピックアップ装置内に設置された球面収差を補正する光学ユニットであるところのコリメートレンズアクチュエータ(駆動部200)の斜視図、図11は図10に対応するコリメートレンズアクチュエータの分解斜視図である。以下、具体的に説明する。
【0015】
図2、3(主に図2で説明)において、光ピックアップ装置1はピックアップベース11を基台とし、これに各部品を組み込む形で構成されている。このように構成された光ピックアップ装置1には、図4に示す光学系10が形成されている。ここでレーザ光源21から出射された光ビーム20aは、回折格子25で3分割され、ビームスプリッタ31に入射する。ここで光ビーム20aは光ビームパワー検知器41に入射する光ビーム20fとコリメートレンズ32に入射する光ビーム20bに分割される。光ビームパワー検知器41は受光した光ビーム強度を検知し、この検知結果に基づきレーザ光源21の出射光強度を制御するよう回路を構成している。光ビーム20bはコリメートレンズ32で略平行光に、さらに波長板34で円偏光に変換され、打上げミラー36によりZ(+)方向に方向転換された光ビーム20cは対物レンズ37に入射し、図示していない光ディスクにスポットを集光する。光ディスクで反射した光ビーム20crは、対物レンズ37、打上げミラー36を経て、波長板34で直線偏光に変換され、さらにコリメートレンズ32、ビームスプリッタ31、シリンドリカルレンズ38を経て光ビーム20dは光検知器44に入射し、ここで光信号が電気信号に変換され、再生信号と制御信号が得られる。
【0016】
後述するが、ここで対物レンズ37は、光ディスクの所定位置にスポットを照射するために、光ディスク半径方向となるY方向、および光ディスクの信号面に対して垂直方向となるZ方向に可動となる対物レンズアクチュエータ60(図6、7)に支持されている。また、光ディスク上のスポットに発生する球面収差を補正するため、コリメートレンズ32は光軸方向となるX方向に可動となるコリメートレンズアクチュエータ80(図8、9)に支持されている。
【0017】
図2および図3において、対物レンズアクチュエータ60はピックアップベース11に対して固定ねじ63、付勢ばね64、調整ねじ62a、62bにより傾き調整可能に固定されている。またピックアップベース11には、光ピックアップ装置1を図示しない光ディスク装置に取り付ける際の支持部となる軸受部11a、11b、11cが構成されている。図5において、基板47はピックアップベース11の底面を覆う形で止めねじ49a、49b、49cによりピックアップベース11に固定されている。フレキシブル基板48は、突出部48a〜cを有し、基板47に接着され、突出部48aで光ビームパワー検知器41と、突出部48bでレーザ光源21と、突出部48cで光検知器44と電気的に接続している。またフレキシブル基板48には演算、記憶、制御を実施する集積回路チップ50とコネクタ51、52が実装され、コネクタ52はコリメートアクチュエータ80のフレキシブル基板82と接続し、コネクタ51は図示しない光ディスク装置との電気的接続に用いられる。本実施の形態では、図1に示した球面収差補正部300は、集積回路チップ50内にソフトウェアをインストールすることにより形成されている。
【0018】
次に、駆動部200の一部である対物レンズアクチュエータ部分について説明する
図6および図7において、対物レンズ37はレンズホルダー65に設けられた取付部65aに接着固定されている。対物レンズ37の周囲には、これを図示しない光ディスクとの接触による損傷を回避するためのプロテクタ66a、66b、66c、66dが、レンズホルダー65に設けられた取付部65bに接着固定されている。トラッキングコイル67b、67dはレンズホルダー65の側面に設けたコイル接着部65mに接着固定され、トラッキングコイル67a、67c(図示せず)はこれと対向する側面に設けたコイル接着部65nに接着固定されている。トラッキングコイル67a、67b、67d、67c(まとめてトラッキングコイル67と表記する)は、この順に直列に接続され、直列接続の両コイル端子は、レンズホルダー65に設けられたワイヤ接続部65g、65j(図示せず)にそれぞれ接続されている。フォーカスコイル68は、レンズホルダー65の底面開口部(図示せず)に設けたコイル接着部65pに位置決めされ、接着固定されている。このフォーカスコイル68の両コイル端子もトラッキングコイル67と同様に、ワイヤ接続部65h、65k(図示せず)にそれぞれ接続されている。導電性材料で構成されたワイヤ71a、71bは各々その一端をレンズホルダー65に設けたワイヤ固定穴65c、65dを挿通し、ワイヤ接続部65g、65hに位置決めされ、ここで半田(図示せず)により先のトラッキングコイル端子、およびフォーカスコイル端子とそれぞれ電気的に接続される。
【0019】
また図示しないが、これと同様にレンズホルダー65の反対側では、ワイヤ71c、71dがその一端をレンズホルダー65に設けたワイヤ固定穴65e、65fを挿通し、ワイヤ接続部65j、65kに位置決めされ、ここで半田(図示せず)によりもう一方のトラッキングコイル端子、およびフォーカスコイル端子とそれぞれ電気的に接続される。ワイヤ71a、71b、71c、71dのそれぞれのもう一端は、ワイヤホルダー72を経て基板73に設けられたワイヤ固定部73a、73b、73c、73dにそれぞれ位置決めされ、ここで半田(図示せず)によりワイヤ固定部73a、73b、73c、73dと電気的接続を保ちながら固定される。ワイヤ固定部73a、73b、73c、73dは、フレキシブル基板74と電気的に接続しており、フレキシブル基板74は、図5に示したフレキシブル基板48に電気的に接続している。基板73はワイヤホルダー72に固定され、ワイヤホルダー72はアクチュエータベース61に固定されている。
【0020】
磁石69a、69bはアクチュエータベース61に設けられた磁石取付部61a、61bに固定され、トラッキングコイル67、フォーカスコイル68とわずかな隙間を持ち、トラッキングコイル67に通電した場合にはY方向の電磁力が発生するように、またフォーカスコイル68に通電した場合にはZ方向の電磁力が発生するように着磁されている。また、アクチュエータベース61にはその底面側に球面座70が固定されており、対物レンズアクチュエータ60をピックアップベース11に対して傾き調整する際の座面となる。カバー75は止めねじ76によりワイヤホルダー72に固定される。
【0021】
つづいて、こちらも駆動部200の一部であるコリメートレンズアクチュエータについて説明する。
図8および図9において、コリメートレンズアクチュエータ80は、止めねじ81a、81b、81cによりピックアップベース11の取付部11nに位置決め後、固定されている。打上げミラー36は、傾斜取付部11hに位置決め後、接着固定されている。波長板34は、ホルダー35を介して取付部11gに位置決め後、接着固定されている。ビームスプリッタ31は、取付部11fに位置決め後、接着固定されている。シリンドリカルレンズ38はホルダー39を介して取付部11mに位置決め後、接着固定されている。回折格子25はホルダー26を介して取付部11eに取り付けられ、止めねじ28でピックアップベース11に固定された板ばね27により回転調整可能に付勢されている。レーザ光源21はホルダー22を介して、調整面11dの面内で光軸調整されたのち、ワッシャー23a、23b、止めねじ24a、24bによりピックアップベース11に固定されている。光ビームパワー検知器41は回路基板42に実装され、保持板43を介して取付部11jに位置決め後、接着固定されている。光検知器44は回路基板45に実装され、保持板46を介して取付部11kに三次元的に位置決め調整後、接着固定されている。
【0022】
図10および図11に示すコリメートレンズアクチュエータ80は、図9に示すコリメートレンズアクチュエータ80からフレキシブル基板82、カバー83、止めねじ84a、84bを除去したものであり、コリメートレンズ32はレンズホルダー86に設けたレンズ取付部86aに位置決めされ、接着固定されている。レンズホルダー86には、軸受部86b、86cが設けられ、ガイドシャフト87a、87bによりX方向に並進可能に軸支されている。また、レンズホルダー86には遮光部86dが設けられ、アクチュエータベース85に設けられた取付部85fに位置決め固定された光検知器88により、特許文献1と同様に遮光部86dの遮光による光量変化によって、レンズホルダー86の基準位置検知を実施する構成となっている。
【0023】
ガイドシャフト87a、87bはアクチュエータベース85に設けられたシャフト保持穴85b、85c、85d、85eにそれぞれ保持され、付勢ばね89により、レンズホルダー86は常時X(−)方向に付勢されている。モータ90は、その回転軸にリードスクリュー90aを一体構成した2相ステッピングモータであり、電源供給用に第一のコイル端子90b、90c、第二のコイル端子90d、90eを備え、モータ取付部85gに位置決め後、止めねじ91a、91bにより固定されている。リードナット92は、そのナット部92aがリードスクリュー90aと螺合し、係合部92bがアクチュエータベース85のガイド溝85aにより回転規制される構成となっている。これによりリードナット92は、リードスクリュー90aの回転により、X方向に並進移動する。
【0024】
次に動作について説明する。図12は本実施の形態1にかかる光ピックアップ装置および光ディスク装置における温度変化に伴う球面収差を補正する方法を示すフローチャートであり、図13は球面収差を行う中で、コイルの電気特性とコイル温度との関係を示す図である。図12において、光ディスク装置の電源を投入すると、集積回路チップ50に形成された球面収差補正部300(各部構成は図1参照)は、球面収差補正シーケンスを起動する(ステップS10)。つぎに、現在の運転状況が電源スイッチを入れた起動直後(光ディスクの回転駆動を開始した場合も含む)であるのか、または、運転中であるのかを判断する(ステップS20)。
【0025】
起動直後である場合(S20で「Yes」)、ステップS100に移行し、図13の相関1に示すデータを用いて第1の光学素子(本実施の形態では対物レンズ37)の温度検知動作を開始する。球面収差補正部300の駆動制御部301は、対物レンズアクチュエータ60のフォーカスコイル68に、Z(−)方向にレンズホルダー65が移動するように直流電圧を印加する(ステップS100)。つぎに(時間的には、ステップS100と同時であるが)、コイル電気特性測定部302は、フォーカスコイル68に流れる直流電流量を検知する(ステップS110)。なお、このとき、印加する電圧を実測してもよいが、本実施の形態では、印加電圧は一定であるとして、固定値を使用する。つぎに、光学素子温度演算部303は、電流値と電圧値からオームの法則により、フォーカスコイル68の抵抗値Rを算出する(ステップS120)。コイル抵抗値はコイル温度に比例して値が変化する特性があり、温度T0(℃)のときのコイル抵抗値をR0(Ω)とした場合、フォーカスコイルの抵抗値と温度との関係は、図13の相関1に示すように、温度T(℃)の時の抵抗値R(Ω)は、(数式1)で示される。
R(T)=K・(T−T0)+R0 (数式1)
ここでK(Ω/℃)は、コイルに固有の温度係数である。これより、事前に温度T0(℃)のときのコイル抵抗値R0(Ω)と、温度係数K(Ω/℃)を把握すれば、抵抗値R(Ω)からその時のコイル温度T(℃)を(数式1)の逆算により算出することが可能となる。
【0026】
光ピックアップ装置1は、出荷時にフォーカスコイル68の抵抗値R0を例えばテスターで、フォーカスコイル68の温度T0を例えば赤外放射温度計で測定し、コイル温度係数Kと共にその結果を記憶部304に記録している。したがって、光学素子温度演算部303は、Z(−)方向にレンズホルダー65を移動させた先のフォーカスコイル68への通電動作で得た印加電圧値と電流値から、コイル抵抗値Rを計算する。そして、このコイル抵抗値Rと記憶部304に保管された温度T0(℃)のときのコイル抵抗値R0(Ω)と、温度係数K(Ω/℃)から、コイルの温度T(℃)を計算する(ステップS130)。このとき、コイルはそれまでに通電されておらず、発熱がなかったので、コイルの温度は、対物レンズ37やコリメートレンズ32といった光学系を構成する光学素子の温度とほぼ同じ温度であるといえる。そこで、ステップ130では、相関1を用いて対物レンズ37の温度=コイル温度Tであるとして、コイルの温度Tを算出し、球面収差補正を行うためのステップS300に移行する。
【0027】
一方、ステップS20において、運転状況が運転中であると判断した場合(「No」)について説明する。この場合、光ディスクは、その時点以前から連続回転駆動されているため、コイルには既に電流が流され発熱している状態になっている。また、コイルも動作状況に応じて適宜駆動されているため、起動直後とは異なるシーケンスで光学素子の温度を検知する。
【0028】
光ディスクを連続回転駆動している時の光学素子の温度は、定常記録または定常再生状態にあるフォーカスコイル68に、図示していないフォーカスサーボ回路から通電駆動される交流電圧の最大値E、交流電流の最大値I、および光ディスクの回転周波数fをもとに算出したコイルの抵抗を基に算出する。定常状態においては、交流電圧の最大値E、交流電流の最大値I、およびフォーカスコイル68のインピーダンスZの間には、(数式2)の関係が成り立つ。
E=I・Z (数式2)
ここで、フォーカスサーボ回路に通電駆動される交流波形は、そのほとんどが光ディスクの回転周期に同期した面振れ成分であるので、インピーダンスZは、フォーカスコイル68の抵抗R、インダクタンスL、光ディスクの回転周波数fを用いて、(数式3)で表される。
Z=〔R2+(2πfL)2 〕0.5 (数式3)
【0029】
そこで、ステップS20からステップS200に移行した場合、球面収差補正部300の駆動制御部301は、対物レンズアクチュエータ60のフォーカスサーボ回路を駆動させ、フォーカスコイル68に交流電圧を印加する(ステップS200)。つぎに(時間的には、ステップS200と同時であるが)、コイル電気特性測定部302は、フォーカスコイル68に流れる交流電流量とディスク回転数fを検知する(ステップS210)。つぎに、光学素子演算部303は、電流値と電圧値および記憶部304に記憶されたフォーカスコイル68のインダクタンスLから上述した数式2,3により、フォーカスコイル68の抵抗値Rを算出する(ステップS220)。この場合も、コイル抵抗値はコイル温度に比例して値が変化する特性があり、コイル温度T0(℃)のときのコイル抵抗値をR0(Ω)とした場合の関係は図13の相関1と同様である。
【0030】
一方、光ディスクを連続回転駆動する場合、先の温度検知結果をもとに随時球面収差補正動作を実施するが、光ディスクの回転駆動開始時と異なり、定常記録または定常再生状態にあるフォーカスコイル68は連続通電により発熱し、コイル温度T(℃)と対物レンズ表面の温度T1(℃)の間には平衡状態において一定の温度差ΔTが生じる。よって定常記録または定常再生状態の球面収差補正動作においてはこの温度差を考慮し、図13の相関2に示す関係式を用いた温度補正を実施し、対物レンズ表面の温度T1(℃)を算出する(ステップS230)。そして、球面収差補正を行うためのステップS300に移行する。
【0031】
上記のように、光学系を構成する光学素子(対物レンズ37)の近傍に位置するコイル(フォーカスコイル68やトラッキングコイル67)の電気特性から光学素子の温度を検知するようにしたので、特許文献2に示すように温度センサを光学素子近傍に設置する必要がない。そのため、アクチュエータにより頻繁に駆動される光学素子の動きをセンサやセンサの配線により妨げることもない。
【0032】
また、上記配線やセンサ自体が、コイルに使用される銅線等と同じく、温度により抵抗値が変化することは一般に知られていることではあるが、光学素子近傍を通る配線であっても、コイル以外の配線の場合、光学素子から離れた位置の配線部分の抵抗変化も検出してしまうことになる。しかし、コイルの場合、配線長さのほとんどはコイル部分に集中するので、その抵抗はほとんどコイル部分で決まり、他の配線部分の影響は無視しうるものとなる。また、センサ自体や配線の配置上の制約から、温度センサは必ずしも光学素子近傍に配置できるとは限らない。一方、光学素子の駆動に用いるコイルは、まさに光学素子の近傍(1cm程度以内)に配置されるので、光学素子の駆動に用いるコイルの電気特性である抵抗値から光学素子の温度を検知することは、温度センサを用いる温度検知より正確に温度検知ができるといえる。
【0033】
温度検知後の光ピックアップ装置1の球面収差補正動作(ステップS300、S310)については、例えば従来技術で示した特許文献2と同様となる。第1の光学素子(ここでは対物レンズ37)の温度変化によって発生する球面収差特性をあらかじめ見積った計算結果(表示せず)を記憶部304に記録し、先の温度検知結果からその温度に対応した所定量だけ第2の光学素子であるコリメートレンズ32をコリメートレンズアクチュエータ80で駆動する。具体的には、上記温度検知後モータ90に通電し、リードスクリュー90aの回転によりリードナット92をX(+)方向に並進移動させる。これにより付勢ばね89により常時X(−)方向に付勢されているレンズホルダー86は、リードナット92によりX(+)方向に並進駆動される。レンズホルダー86の遮光部86dが光検知器88のスリット部88aに到達し、光検知器88の検知光(図示せず)を遮光すると、光検知器からの出力電圧が変化する。この電圧変化があらかじめ設定していた所定の閾値を超えるまでモータ90に通電し、その後通電を停止する。このときレンズホルダー86が停止する位置をレンズホルダー86位置決め調整の基準位置とする。モータ90はステッピングモータであり、所定のパルス数だけ駆動パルスを入力すると、そのパルス数に比例した回転角だけリードスクリュー90aが回転し、これと螺合するリードナット92がこの回転角に比例してX方向に並進移動する。
【0034】
ここで記憶部304には、温度変化によって発生する球面収差特性を補正するコリメートレンズ32の適正位置が、先のレンズホルダー86の基準位置からのモータ90の駆動パルス数として記憶されている。よって、先に述べた方法で温度検知した後、この温度結果に対応したモータ90の駆動パルス数を集積回路チップ50の記憶部から検索する(ステップS300)。その検索で得られた駆動パルス数を駆動制御部301は、駆動部200のモータ90に入力する(ステップS310)。これによりリードスクリュー90aが回転し、リードナット92をX方向に並進移動させ、コリメートレンズ32を光学系内の適正位置に位置決め保持し、球面収差補正することが可能となる。
【0035】
その後は、一定時間経過ごと、および/または光ディスクの交換等の動作が行われるごとにステップS20に戻り、第1の光学素子である対物レンズ37の温度変化に伴う球面収差補正動作を実行する。
【0036】
以上のように、本実施の形態1にかかる光ピックアップ装置によれば、レーザ光源21からの光を光ディスクの信号記録面に集光させる光学系10と、コイル67,68を有し、コイル67,68に通電することで光学系10を構成する光学素子(対物レンズ37)を駆動させる駆動部200と、光学素子のうち、第1の光学素子37の温度変化に伴う球面収差を補正するため、光学素子のうち第2の光学素子32を所定量移動するように駆動部200を制御する球面収差補正部300と、を備え、球面収差補正部300は、コイル68の電気特性に基づいて第1の光学素子37の温度Tを算出し、算出した第1の光学素子37の温度Tに基づいて、第2の光学素子32の移動量を算出するように構成したので、追加の温度測定装置を設けることなく、光ピックアップ装置に本来搭載されている部品を用いて光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正することができるので、部品点数が少なく、組立てが容易であり、高性能な光ピックアップ装置を得ることができる。
【0037】
とくに、コイル68の電気特性を、コイル68の電気抵抗で評価するので、簡単な測定で球面収差を補正することができる。
【0038】
さらに、コイル68の電気抵抗を、光学素子37を駆動する際にコイル68に流れる電流値から換算するようにしたので、通常の起動動作や運転動作を妨げることなく球面収差を補正することができる。とくに、直流電流により抵抗を評価する場合はコイルのインダクタンスを無視することができるので、より簡易に電気抵抗を評価することができる。
【0039】
また、コイルの電気特性(電流値)と、第2の光学素子32の移動量とを関係付けた相関式(式1〜3および表示しない式)に対応する係数群(K、T0、R0、L)を記録した記録部304、を備え、球面収差補正部300は、コイル68の電気特性と相関式および記憶部304に記憶された係数群に基づいて第2の光学素子32の移動量を算出するように構成したので、簡単な演算で正確に球面収差を補正することができる。
【0040】
また、記録部304には、光ディスク装置の運転状況に対応する複数の係数群が記憶され、球面収差補正部300は、運転状況に応じて、複数の係数群のなかからひとつを選択し、第2の光学素子の移動量を算出するように構成したので、運転中のコイルの発熱による影響を考慮した正確な球面収差補正が可能となる。
【0041】
また、本実施の形態1にかかる光ディスク装置によれば、上記光ピックアップ装置1と、光ディスクを回転可能に保持するディスク保持部と、光ディスクに記録された信号を再生または光ディスクに信号を記録するために光ピックアップ装置1を制御する光ピックアップ装置制御部と、を備えるように構成したので、追加の温度測定装置を設けることなく、光ディスク装置に本来搭載されている部品を用いて光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正することができるので、部品点数が少なく、組立てが容易であり、高性能な光ディスク装置を得ることができる。
【0042】
さらに、本実施の形態1にかかる光ピックアップ装置の球面収差補正方法によれば、光学系を駆動させる駆動装置の所定のコイル68に通電して、所定のコイル68の電気特性を測定する電気特性測定ステップ(S100,S110、S200,210)と、測定された所定のコイル68の電気特性に基づき、光学系10を構成する光学素子のうち、所定の光学素子32の移動量を算出する演算ステップ(S120,S130、S220,S230、S300)と、算出された移動量に基づき、所定の光学素子32を駆動させ、光学系10を構成する光学素子37の温度変化に伴う球面収差を補正する球面収差補正ステップ(S310)と、を備えるように構成したので、部品の追加や通常の運転動作の遅滞を生じさせることなく、光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正することができる。
【0043】
なお、本実施の形態1においては、温度検知のための通電を対物レンズアクチュエータ60のフォーカスコイル68に実施したが、これをトラッキングコイル67に通電してもよい。この場合、Y方向の何れかにレンズホルダー65が移動するように直流電圧を印加する。同時にこのときトラッキングコイル67に流れる直流電流量を検知する。後の動作はフォーカスコイル68に通電した場合と同じ手順で温度検知、球面収差補正を実施する。
【0044】
また、本実施の形態においては、球面収差補正部300を光ピックアップ装置の集積回路チップ内に設けたが、球面収差補正部300を物理的に光ピックアップ装置内に形成する必要はなく、光ピックアップ装置を備える光ディスク装置内に形成してもよい。この場合、光ピックアップ装置には、コイルの電気特性を計測するための出力端子を設けておけば、光ディスク装置に組み込まれることで、本発明の実施の形態に係る球面収差補正部を備えることになる。
【0045】
また、本実施の形態においては、コイルの電気特性に関しては、測定した電流値から抵抗値を算出することとし、算出した抵抗値から温度を算出するようにしているが、電流値と抵抗の関係式と、抵抗と温度の関係式とをひとつに纏め、測定した電流値から直接温度を算出するようにしてもよい。さらに、電流値と、第1の光学素子(対物レンズ37)の温度変化に伴う球面収差補正のための第2の光学素子(コリメートレンズ32)の移動量との関係がひとつの式で表せるならば、抵抗値や温度を算出することなく、電流値から直接球面収差補正のための第2の光学素子(コリメートレンズ32)の移動量を算出するようにしてもよい。
【0046】
また、本実施の形態においては、図13における相関1や相関2に関する係数等を記憶部304に記憶して、光学素子温度演算部303にて抵抗や温度、あるいは移動量を計算するようにしているが、これらの関係を運転状況毎の2つのLUT(Look Up Table)として記憶部304に記憶し、電気特性に対する温度あるいは移動量を運転状況ごとに選択したLUTから読み込み制御するようにしてもよい。また、運転状況についても2つに限らず、コイルへの通電頻度に応じて複数のテーブルを用意してもよい。
【0047】
実施の形態2.
本実施の形態2における光ピックアップ装置、光ディスク装置、および球面収差補正方法は、コリメートレンズアクチュエータ80に搭載したモータ90のコイルを電気特性の測定対象としたものであり、その他の構成については実施の形態1と同様である。図14は、モータ90内部のコイル接続関係を示した図である。コイルは第一のコイル90f、第二のコイル90gの2相で構成されており、各コイル端子90b、90c、90d、90eはフレキシブル基板82、コネクタ52を介して集積回路チップ50に電気的に接続されている。
【0048】
動作についても実施の形態1と同様に図12と図13で説明できる。ここで実施の形態1と異なるのは、通電先が対物レンズアクチュエータ60ではなく、コリメートレンズアクチュエータ80となることである。例えばステップS100では、コリメートレンズアクチュエータ80のモータ90の第一のコイル90fに直流電圧を印加する。ステップS110では、第一のコイル90fに流れる直流電流量を検知する。以降は実施の形態1と同じく、第一のコイル90fのコイル抵抗値もコイル温度に比例して値が変化する特性がある。よって実施の形態1と同じように光ピックアップ装置1は、出荷時に第一のコイル90fの抵抗値R0を例えばテスターで、第一のコイル90fの温度として、第一のコイル端子部90bの温度T0を例えば赤外放射温度計で測定し、コイル温度係数Kと共にその結果を集積回路チップ50の記憶部304に記録している。第一のコイル90fへの通電動作で得た印加電圧値と電流値から、集積回路チップ50の演算部でコイル抵抗値Rが計算される。このコイル抵抗値Rと記憶部に保管された温度T0(℃)のときのコイル抵抗値R0(Ω)と、温度係数K(Ω/℃)から、現在の温度T(℃)が集積回路チップ50の演算部で計算され、温度検知が可能となる。検知後の球面収差補正動作については、実施の形態1と同じである。
【0049】
さらに光ディスクを連続回転駆動する場合(S200〜S230)の温度検知は、先の光ディスク回転駆動開始時の温度検知と同じである。所定の時間間隔で、コリメートレンズアクチュエータ80のモータ90の第一のコイル90fに直流電圧を印加し、同時にこのとき第一のコイル90fに流れる直流電流量を検知する。これにより現在のコイル温度を検知し、先の検知温度から変化があれば、温度変化分に対応した量だけコリメートレンズ32の光学系内での位置を補正する。
【0050】
なおここでは、温度検知のための通電をコリメートレンズアクチュエータ80の第一のコイル90fに実施したが、これを第二のコイル90gに通電してもよい。この場合、第二のコイル90gに直流電圧を印加し、同時にこのとき流れる直流電流量を検知する。後の動作は第一のコイル90fに通電した場合と同じ手順で温度検知、球面収差補正を実施する。
【0051】
以上のように本実施の形態2における光ピックアップ装置においては、コリメートレンズアクチュエータ80に搭載したモータ90のコイルを電気特性の測定対象としたので、新たに温度検知装置を設けることなく、光ピックアップ装置に本来搭載されている部品を用いて周辺温度を検知するので、組立てを容易にすると共に、部品点数を削減することで小型化や軽量化が図られ、さらにはコストの増大を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置を上面から見た斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置を上面から見た斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置内に設けられた光学素子により形成される光路を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置を下方から見た底面図である。
【図6】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置に設けられた対物レンズアクチュエータの斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置に設けられた対物レンズアクチュエータの分解斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の部品の一部をはずした底面斜視図である。
【図9】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の部品の一部をはずした底面分解斜視図である。
【図10】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置に設けられたコリメートレンズアクチュエータの斜視図である。
【図11】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置に設けられたコリメートレンズアクチュエータの分解斜視図である。
【図12】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の球面収差補正方法を示すフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態1における光ピックアップ装置の駆動部を構成するコイルの抵抗温度特性図である。
【図14】この発明の実施の形態2における光ピックアップ装置に設けられたコリメートアクチュエータのモータコイル接続図である。
【符号の説明】
【0053】
1 光ピックアップ装置、 10 光学系、 32 コリメートレンズ(第2の光学素子)、 37 対物レンズ(第1の光学素子)、 50 集積回路チップ、 60 対物レンズアクチュエータ(駆動部)、 65 レンズホルダー、 67(67a,67b,67c,67d) トラッキングコイル、 69a,69b 磁石、 80 コリメートレンズアクチュエータ(駆動部)、 90 モータ、 90b第一のコイル端子、 90c第一のコイル端子、 90d第二のコイル端子、 90e第二のコイル端子、 90f第一のコイル、 90g第二のコイル、 200 駆動部、 300 球面収差補正部、 301 駆動制御部、 302 コイル電気特性測定部、 303 光学素子温度演算部、 304 記憶部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を光ディスクの信号記録面に集光させる光学系と、
コイルを有し、前記コイルに通電することで前記光学系を構成する光学素子を駆動させる駆動部と、
前記光学素子のうち、第1の光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正するため、前記光学素子のうち第2の光学素子を所定量移動するように前記駆動部を制御する球面収差補正部と、
を備え、
前記球面収差補正部は、前記コイルの電気特性に基づいて、前記第2の光学素子の移動量を算出する、
光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記コイルの電気特性は、前記コイルの電気抵抗であることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記コイルの電気抵抗は、前記光学素子を駆動する際に前記コイルに流れる電流値から換算されることを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記コイルの電気特性と、前記第2の光学素子の移動量とを関係付けた相関式に対応する係数群を記録した記憶部、を備え、
前記球面収差補正部は、前記コイルの電気特性と前記相関式および前記記憶部に記憶された前記係数群に基づいて前記第2の光学素子の移動量を算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記記憶部には、当該機器の運転状況に対応する複数の係数群が記憶され、
前記球面収差補正部は、前記運転状況に応じて、前記複数の係数群のなかからひとつを選択し、前記第2の光学素子の移動量を算出することを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記第1の光学素子は、前記光ディスクの信号記録面に光を集光させる対物レンズである、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
前記コイルは、前記コリメートレンズを駆動させるコリメートレンズアクチュエータのコイル、または、前記対物レンズを駆動させる対物レンズアクチュエータのコイルである、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】
前記第2の光学素子は、前記光源からの光を平行光に変換するコリメートレンズである、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の光ピックアップ装置と、
光ディスクを回転可能に保持するディスク保持部と、
前記光ディスクに記録された信号を再生、または前記光ディスクに信号を記録するために前記光ピックアップ装置を制御する光ピックアップ装置制御部と、
を備える光ディスク装置。
【請求項10】
光学系を駆動させる駆動装置の所定のコイルに通電して、前記所定のコイルの電気特性を測定する電気特性測定ステップと、
測定された前記所定のコイルの電気特性に基づき、前記光学系を構成する光学素子のうち、所定の光学素子の移動量を算出する演算ステップと、
前記算出された移動量に基づき、前記所定の光学素子を駆動させ、前記光学系を構成する光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正する球面収差補正ステップと、
を備えてなる光ピックアップ装置の球面収差補正方法。
【請求項1】
光源からの光を光ディスクの信号記録面に集光させる光学系と、
コイルを有し、前記コイルに通電することで前記光学系を構成する光学素子を駆動させる駆動部と、
前記光学素子のうち、第1の光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正するため、前記光学素子のうち第2の光学素子を所定量移動するように前記駆動部を制御する球面収差補正部と、
を備え、
前記球面収差補正部は、前記コイルの電気特性に基づいて、前記第2の光学素子の移動量を算出する、
光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記コイルの電気特性は、前記コイルの電気抵抗であることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記コイルの電気抵抗は、前記光学素子を駆動する際に前記コイルに流れる電流値から換算されることを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記コイルの電気特性と、前記第2の光学素子の移動量とを関係付けた相関式に対応する係数群を記録した記憶部、を備え、
前記球面収差補正部は、前記コイルの電気特性と前記相関式および前記記憶部に記憶された前記係数群に基づいて前記第2の光学素子の移動量を算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記記憶部には、当該機器の運転状況に対応する複数の係数群が記憶され、
前記球面収差補正部は、前記運転状況に応じて、前記複数の係数群のなかからひとつを選択し、前記第2の光学素子の移動量を算出することを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記第1の光学素子は、前記光ディスクの信号記録面に光を集光させる対物レンズである、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
前記コイルは、前記コリメートレンズを駆動させるコリメートレンズアクチュエータのコイル、または、前記対物レンズを駆動させる対物レンズアクチュエータのコイルである、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】
前記第2の光学素子は、前記光源からの光を平行光に変換するコリメートレンズである、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の光ピックアップ装置と、
光ディスクを回転可能に保持するディスク保持部と、
前記光ディスクに記録された信号を再生、または前記光ディスクに信号を記録するために前記光ピックアップ装置を制御する光ピックアップ装置制御部と、
を備える光ディスク装置。
【請求項10】
光学系を駆動させる駆動装置の所定のコイルに通電して、前記所定のコイルの電気特性を測定する電気特性測定ステップと、
測定された前記所定のコイルの電気特性に基づき、前記光学系を構成する光学素子のうち、所定の光学素子の移動量を算出する演算ステップと、
前記算出された移動量に基づき、前記所定の光学素子を駆動させ、前記光学系を構成する光学素子の温度変化に伴う球面収差を補正する球面収差補正ステップと、
を備えてなる光ピックアップ装置の球面収差補正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−123220(P2010−123220A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297909(P2008−297909)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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