説明

光ピックアップ装置の組み立て方法

【課題】 光ディスクの信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置の組み立て方法に関する。
【解決手段】 対物レンズを除く光学部品が組み込まれるハウジング1と、対物レンズが固定されているとともに支持ワイヤーによってフォーカス方向及びトラッキング方向への変位を可能に支持されレンズホルダー8を備えた対物レンズ駆動部4と、マグネット15が固定されるヨークを備え、マグネット15をヨークに固定した後該ヨークを前記ハウジング1に固定し、その後別個に組み立てられた対物レンズ駆動部4をハウジング1に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作や光ディスクに信号の記録動作を行う光ピックアップ装置の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクの信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作や信号の記録動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
光ディスク装置としては、CDやDVDと呼ばれる光ディスクを使用するものが一般に普及しているが、最近では記録密度を向上させた光ディスク、即ちBlu−ray規格やHD DVD(High Density Digital Versatile Disk)規格の光ディスクを使用するものが開発されている。
【0004】
CD規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うレーザー光としては、波長が780nmである赤外光が使用され、DVD規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うレーザー光としては、波長が650nmの赤色光が使用されている。
【0005】
そして、前記CD規格の光ディスクにおける信号記録層の上面に設けられている保護層の厚さは1.2mmであり、この信号記録層から信号の読み出し動作を行うために使用される対物レンズの開口数は0.45と規定されている。また、DVD規格の光ディスクにおける信号記録層の上面に設けられている保護層の厚さは0.6mmであり、この信号記録層から信号の読み出し動作を行うために使用される対物レンズの開口数は0.6と規定されている。
【0006】
斯かるCD規格及びDVD規格の光ディスクに対して、Blu−ray規格やHD DVD規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うレーザー光としては、波長が短いレーザー光、例えば波長が405nmの青紫色光が使用されている。
【0007】
Blu−ray規格の光ディスクにおける信号記録層の上面に設けられている保護層の厚さは、0.1mmであり、この信号記録層から信号の読み出し動作を行うために使用される対物レンズの開口数は、0.85と規定されている。
【0008】
前述したように規格の異なる光ディスクが提案されており、全ての光ディスクを使用することが出来る光ディスク装置が製品化されている。その結果、斯かる光ディスク装置に組み込まれる光ピックアップ装置も異なる規格の光ディスクに対応したものが要求されることになる。斯かる要求に応じるための光ピックアップ装置が開発されている。(特許文献1、2参照。)
また、光ピックアップ装置は、周知のように光学部品が組み込まれているハウジング、対物レンズが固定されているとともに支持ワイヤーによって光ディスクの信号面に対して垂直方向、即ちフォーカス方向及び光ディスクの径方向、即ちトラッキング方向への変位を可能に支持され、且つフォーカスコイルやトラッキングコイルが取付けられているレンズホルダー、そして前記各コイルに作用する磁界を発生するマグネットとを備えている。
【0009】
斯かる構成の光ピックアップ装置は、支持ワイヤーによって支持されているレンズホルダーが組み込まれる対物レンズ用支持基板にマグネットが固定されるヨークを取付けるこ
とによって対物レンズ駆動部を組み立て、このように組み立てられた対物レンズ駆動部をハウジングに固定することによって組み立てを行うように構成されている。(特許文献3参照。)
【特許文献1】特開2005−182941号公報
【特許文献2】特開2004−259414号公報
【特許文献3】特開2004−164750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
対物レンズ駆動部を構成する対物レンズ用支持基板に対して、対物レンズが固定されるレンズホルダーは支持ワイヤーによってフォーカス方向及びトラッキング方向への変位を可能に支持固定されるが、斯かるレンズホルダーにはフォーカスコイル及びトラッキングコイルが取付けられる。そして、斯かるフォーカスコイル及びトラッキングコイルは、対物レンズを挟んで対称になるようにレンズホルダーの側面に固定されている。
【0011】
フォーカスコイル及びトラッキングコイルが対物レンズを挟んで対称に設けられると、これらのコイルに対して作用する磁界を発生するマグネットも対物レンズを挟んで対称に設けられることになる。従って、対物レンズ駆動部を組み立てるためには、対物レンズ用支持基板上に前述したレンズホルダーだけでなくマグネットを固定させる必要がある。その結果、対物レンズ用支持基板にはレンズホルダーを挟んでマグネットを固定するためのヨークが設けられるので、両ヨークを連結するための連結部が設けられることになる。
【0012】
この連結部は、必然的にレンズホルダーの下側に設けられるので、ハウジングに組み込む場合に取付位置に規制を受けやすいだけでなく、光ピックアップ装置の薄型化に対して障害になることが多いという問題がある。
【0013】
本発明は、斯かる問題を解決することが出来る光ピックアップ装置の組み立て方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、対物レンズを除く光学部品が組み込まれるハウジングと、対物レンズが固定されているとともに支持ワイヤーによってフォーカス方向及びトラッキング方向への変位を可能に支持され、且つマグネットから生成される磁界との協働によってフォーカス方向及びトラッキング方向への駆動力を生成するフォーカスコイル及びトラッキングコイルが搭載されたレンズホルダーを備えた対物レンズ駆動部と、前記マグネットが固定されるヨークを備え、マグネットをヨークに固定した後該ヨークを前記ハウジングに固定し、その後別個に組み立てられた対物レンズ駆動部をハウジングに固定するようにされている。
【0015】
また、本発明は、ハウジングの底壁にヨークが嵌合する取付孔を設け、該取付孔にヨークを嵌合させることによってマグネットを前記ハウジングに固定したことを特徴とするものである。
【0016】
そして、本発明は、取付孔が形成されている底壁の厚みと該取付孔に嵌合されるヨークの厚みを同一にしたことを特徴とするものである。
【0017】
更に、本発明は、ハウジングに異なる波長のレーザー光を各々放射する第1及び第2のレーザーダイオードを組み込むとともに各レーザーダイオードから放射されるレーザー光が各々入射される第1及び第2の対物レンズがレンズホルダーに組み込まれていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、レンズホルダーに固定されているフォーカスコイル及びトラッキングコイルに作用する磁界を発生するマグネットをヨークに固定した後該ヨークをハウジングに固定し、その後別個に組み立てられた対物レンズ駆動部をハウジングに固定するようにしたので、対物レンズ駆動部の構成が簡潔となるだけでなく、取付作業を容易に行うことが出来る。
【0019】
また、本発明は、ハウジングの底壁にヨークが嵌合する取付孔を設け、該取付孔にヨークを嵌合させることによってマグネットを前記ハウジングに固定するようにしたので、取付作業が簡単になるという利点を有している。
【0020】
そして、本発明は、取付孔が形成されている底壁の厚みと該取付孔に嵌合されるヨークの厚みを同一にしたので、即ちハウジングの底壁の厚みを利用してヨークの取付けを行うようにしたので、光ピックアップ装置を薄型化することが出来る。
【0021】
また、本発明は、ハウジングに異なる波長のレーザー光を各々放射する第1及び第2のレーザーダイオードを組み込むとともに各レーザーダイオードから放射されるレーザー光が各々入射される第1及び第2の対物レンズをレンズホルダーに組み込むようにしたので、規格の異なる光ディスクに対応させた光ピックアップ装置のように光学系の構成が複雑になる光ピックアップ装置に実施することが出来る。
【実施例】
【0022】
図1は本発明の光ピックアップ装置を示す斜視図、図2、図3及び図4は本発明に係る光ピックアップ装置の組み立て動作を説明するため斜視図である。
【0023】
図1において、1はアルミニューム等の材料にて成型されたハウジングであり、光ピックアップ装置を構成する光学部品、例えば青紫色のレーザー光を生成放射する第1レーザーダイオード2及び赤色のレーザー光を生成放射する第2レーザーダイオード3が取付固定されている。
【0024】
4は対物レンズ駆動部であり、図4に示すように対物レンズ用支持基板5に対して各部品が固定支持されるように構成されている。5A及び5Bは、前記対物レンズ用支持基板5に一体的に設けられている固定片であり、前記ハウジング1に設けられている固定部1A及び1Bに設置固定されるように構成されている。
【0025】
6は前記対物レンズ用支持基板5に固定されている印刷配線基板、7は一端が前記印刷配線基板に半田によって固定されている支持ワイヤー、8は前記支持ワイヤー7によって光ディスクに対してフォーカス方向及びトラッキング方向への変位を可能に支持されているレンズホルダーである。
【0026】
9は前記第1レーザーダイオード2から放射される青紫色のレーザー光が第1レーザーダイオード2を使用するために設計された光路を通して入射される第1対物レンズであり、前記レンズホルダー8上に固定されている。10は前記第2レーザーダイオード3から放射される赤色のレーザー光が第2レーザーダイオード3を使用するために設計された光路を通して入射される第2対物レンズであり、前記レンズホルダー8上に固定されている。前記第1対物レンズ9と第2対物レンズ10とは、図示したように光ディスクの径方向に並んで配置されている。
【0027】
11は前記レンズホルダー8の側面に設けられているフォーカスコイルであり、前記第1対物レンズ9及び第2対物レンズ10の光軸中心を結ぶ直線を中心とて対称となるよう
に配置されている。また、前記フォーカスコイル11は、前記レンズホルダー8の同一の側面側に一対設けられている。従って、フォーカスコイル11は、全部で4個設けられていることになる。
【0028】
12は前記レンズホルダー8の側面に設けられているトラッキングコイルであり、前記第1対物レンズ9及び第2対物レンズ10の光軸中心を結ぶ直線を中心とて対称となるように配置されている。また、前記トラッキングコイル12は、図示したように第1対物レンズ9と第2対物レンズ10の中間部に配置されている。
【0029】
図2において、13及び14は同一形状のヨークであり、各々マグネット15が接着固定される取付用折曲片13A、13B、13C及び14A、14B、14Cが形成されているとともに取付部13D及び14Dが形成されている。
【0030】
斯かる構成において、前記ハウジング1を構成する底壁1Cの前記ヨーク13及び14が取り付けられる位置には、該ヨーク13及び14の取付部13D及び14Dの形状と同一形状の取付孔1D及び1Eが形成されている。前記ヨーク13及び14は、その取付部13D及び14Dを前記取付孔1D及び1Eに嵌合させることによってハウジング1に固定するように構成されている。
【0031】
以上に説明したように本発明に係る光ピックアップ装置は構成されており、次に組み立て方法について説明する。第1レーザーダイオード2及び第2レーザーダイオード3等の光学部品は、図1に示すようにハウジング1上の所定の位置に固定される。
【0032】
ヨーク13及び14は磁性材料にて構成されているとともに図2に示したように取付用折曲片13A、13B、13C、14A、14B、14C及び取付部13D及び14Dが形成されている。斯かる構成のヨーク13及び14の各取付用折曲片13A、13B、13C、14A、14B、14Cに対しマグネット15を図示したように接着固定する。
【0033】
図2は各ヨーク13及び14がマグネット15の接着動作によって組み立てられた状態を示すものであり、斯かる状態から各ヨーク13及び14に設けられている取付部13D及び14Dをハウジング1の底壁1Cに形成されている取付孔1D及び1Eに嵌合させる作業が行われる。
【0034】
図3は斯かる取付作業が行われた状態を示すものであり、次に、対物レンズ駆動部4の組み立て作業が行われる。対物レンズ駆動部4の組み立て動作は、第1対物レンズ9及び第2対物レンズ10をレンズホルダー8上の所定の位置に固定するとともにフォーカスコイル11及びトラッキングコイル12を前記レンズホルダー8の側面に固定することによって行われる。
【0035】
また、対物レンズ用支持基板5に印刷配線基板6を固定した後支持ワイヤー7の一端を該印刷配線基板6に半田にて固定するとともに他端を前記レンズホルダー8に設けられている支持部8Aに半田にて固定する作業が行われる。斯かる作業が行われる結果、レンズホルダー8は前記支持ワイヤー7による印刷配線基板6に対する支持作用によってフォーカス方向及びトラッキング方向への変位を可能に支持されることになる。
【0036】
図4は斯かる作業が行われた状態を示すものであり、斯かる状態から対物レンズ用支持基板5に設けられている固定片5A及び5Bをハウジング1に形成されている固定部1A及び1Bに設置固定させる作業を行うと図1に示す状態になる。前記対物レンズ用支持基板5に設けられている固定片5A及び5Bをハウジング1に形成されている固定部1A及び1Bに設置固定させることによって対物レンズ駆動部4のハウジング1への固定作業は
行われるが、該対物レンズ駆動部4の位置決め等は他の部分、例えば対物レンズ用支持基板5の底面とハウジング1に設けられている位置決め部材(図示せず)との当接によって行うようにすることも出来る。
【0037】
また、前記対物レンズ用支持基板5のハウジング1への固定動作は、接着剤による固定動作や螺子による螺合動作によっても行うことは勿論可能である。
【0038】
尚、本説明では、本発明に関わる部品のみについて説明しており、その他の部品に関する説明は省略している。また、レンズホルダー8に第1対物レンズ9及び第2対物レンズ10の2つの対物レンズを固定した場合について説明したが、1つの対物レンズの場合にも実施することは出来る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の光ピックアップ装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の組み立て方法を説明するための斜視図である。
【図3】本発明の組み立て方法を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の組み立て方法を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ハウジング
2 第1レーザーダイオード
3 第2レーザーダイオード
4 対物レンズ駆動部
5 対物レンズ用支持基板
6 印刷配線基板
7 支持ワイヤー
8 レンズホルダー
9 第1対物レンズ
10 第2対物レンズ
11 フォーカスコイル
12 トラッキングコイル
13 ヨーク
14 ヨーク
15 マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを除く光学部品が組み込まれるハウジングと、対物レンズが固定されているとともに支持ワイヤーによってフォーカス方向及びトラッキング方向への変位を可能に支持され、且つマグネットから生成される磁界との協働によってフォーカス方向及びトラッキング方向への駆動力を生成するフォーカスコイル及びトラッキングコイルが搭載されたレンズホルダーを備えた対物レンズ駆動部と、前記マグネットが固定されるヨークを備えた光ピックアップ装置の組み立て方法であり、マグネットをヨークに固定した後該ヨークを前記ハウジングに固定し、その後別個に組み立てられた対物レンズ駆動部をハウジングに固定するようにしたことを特徴とする光ピックアップ装置の組み立て方法。
【請求項2】
ハウジングの底壁にヨークが嵌合する取付孔を設け、該取付孔にヨークを嵌合させることによってマグネットを前記ハウジングに固定したことを特徴とする請求項1に記載の組み立て方法。
【請求項3】
取付孔が形成されている底壁の厚みと該取付孔に嵌合されるヨークの厚みを同一にしたことを特徴とする請求項2に記載の組み立て方法。
【請求項4】
ハウジングに異なる波長のレーザー光を各々放射する第1及び第2のレーザーダイオードを組み込むとともに各レーザーダイオードから放射されるレーザー光が各々入射される第1及び第2の対物レンズがレンズホルダーに組み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−217887(P2008−217887A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52770(P2007−52770)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】