説明

光ファイバの端部構造及びその端部加工方法

【課題】本発明の目的は、封止剤として用いる接着剤への許容範囲が広く、多心コネクタ用にも容易な作業で光ファイバの端部構造及びその端部加工方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、屈折率の高いコア部と、該コア部を取り囲み前記コア部より小さい屈折率を有するクラッド部と、前記コア部を取り囲み前記クラッド部に形成された軸方向に延びた複数の空孔とを有する光ファイバの端部を覆うようにフェルールが取り付けられてなる光ファイバの構造において、前記複数の空孔は封止剤によって封止され、前記光ファイバの端面と前記フェルールの端面とは同一面を形成すると共に、前記光ファイバの端面側に位置する前記封止剤の端面は、前記光ファイバの端面とは同一面を形成せずに窪んでいることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信用光コード、光デバイス等への広範な応用が検討されているホーリーファイバやフォトニック結晶ファイバ等の空孔部を有する光ファイバの端部構造及びその端部加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホーリーファイバやフォトニック結晶ファイバと呼ばれる新しい光ファイバが注目されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
代表的なホーリーファイバの構成を図2に示す。図2(a)はホーリーファイバの軸方向に直角な断面図、図2(b)はその軸方向に平行な断面図である。図2において、ホーリーファイバ1は、屈折率の高いコア部1−1と、コア部1−1を取り囲みコア部1−1より小さい屈折率を有するクラッド部1−2と、コア部1−1を取り囲みクラッド部1−2に形成された軸方向に延び、同心円上に60度間隔で均等に配置された6本の空孔1−3とから構成される。
【0004】
ホーリーファイバ1のクラッド部1−2に存在する空孔1−3は、端部が開放されていると、空孔1−3の内部に水分が進入したり、温度変化による結露が発生したりすることによって機械的強度が低下したり、光学的特性の変動が生じることがある。
【0005】
また、メカニカルスプライスや、MTコネクタ等の接続部材を用いて光ファイバ同士を接続する場合、光ファイバを他の光ファイバへ接続させる側の端面(接続端面)と、他の光ファイバの接続端面との間隙に液体の屈折率整合剤を充填して、接続端面での反射と損失を低減させる方法が用いられるが、光ファイバが図2に示すようなホーリーファイバである場合、この液体の屈折率整合剤が接続端面から空孔の内部に流入してしまう。これにより、接続端面にて大きな反射や接続損失を引き起こす心配がある。また、屈折率整合剤が不要な単心の光コネクタにおいても、接続端面の研磨の際に空孔に研磨剤や研磨屑が入り、後で端面に出てきて接続面に挟まって光ファイバの端面を損傷させたり、空隙が発生して光学特性を劣化させる問題がある。
【0006】
このような問題に対して、特許文献1では、ホーリーファイバの空孔の端部を、コアよりも屈折率が低い閉塞材で塞ぐという方法が記載されている。
【0007】
また、特許文献2においては、ホーリーファイバの空孔を封止する方法として、接続端面から少し離れた部分のクラッドの周囲を加熱して空孔をつぶす方法、接続端面を融着機(気体放電により光ファイバを加熱溶融させて接続する装置)で加熱して空孔を封止する方法、空孔内に紫外線硬化型樹脂あるいは熱硬化型樹脂等の硬化型樹脂を充填して空孔を封止する方法、または金属薄膜で空孔の端面を覆うことで封止する方法が記載されている。
【0008】
更に、実用性を重視の観点から、接着剤による封止方法が検討され、特許文献3では、シリコーン接着剤を使う方法が示されている。
【0009】
これまでのホーリーファイバへのコネクタ付けは、ホーリーファイバの端部の空孔を封止した後にフェルールに接着固定し、その後にフェルール端面を研磨するものだった。したがって、フェルール端面を研磨する際に、ホーリーファイバと一緒に空孔の封止材も研磨される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】長谷川:「フォトニック結晶ファイバおよびホーリーファイバの開発動向」、月刊誌「オプトロニクス」、オプトロニクス(株)発行、No.7、pp.203−208(2001)。
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−4320号公報
【特許文献2】特開2002−323625号公報
【特許文献3】特開2006−126720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1では、コアよりも屈折率が低い閉塞材で塞ぐものであるが、具体的な閉塞剤もその方法も記載されていない。
【0013】
特許文献2に記載の加熱によってホーリーファイバ自体を融かして空孔を封止する方法は、硬化型樹脂を用いて空孔を封止する方法に比べ、経年劣化のおそれがなく、端面の研磨も容易である利点がある。しかし、溶融する部分が局所的であることから、その部分を接続端面にするための切断作業が必要になるという問題点がある。
【0014】
ホーリーファイバ自体を融かして空孔を封止する方法としては、ホーリーファイバの接続端面に一般の光ファイバを融着接続することも考えられる。しかし、この方法では、接続における軸ずれや角度ずれ、接続部分の膨らみが発生し易い。このような軸ずれや角度ずれ、接続部分の膨らみの発生によって、ホーリーファイバのフェルールへの取付けを難しくし、その作業の際にホーリーファイバの表面に傷が発生し易くなるなど、作業性や信頼性に課題がある。また、ホーリーファイバと光ファイバとの融着接続部分の接続損失が余分に発生する欠点もある。
【0015】
特許文献3では、封止樹脂の研磨面の品質を考慮してシリコーン接着剤を封止樹脂として選定し、体積収縮率5%以下で、硬化前の粘度は60Pa・s以上が好ましいとしている。硬化前の粘度が大きいために、封止樹脂の充填距離は数分の1mmとなってしまう。コネクタ付けに際しては、この封止樹脂の硬化部分がフェルール端面になるようにする必要があることから、端末処理において、被覆端からファイバカット面までの長さ(口出し長と呼ばれる)を歩留まりよく精密に管理する必要がある。そのため、特許文献3の方法ではその接着剤は安価なものの、実用性において劣るものであった。
【0016】
また、特許文献3の方法によれば、封止後に研磨するため、シリコーン樹脂の表面は研磨されるが、シリコーン樹脂は硬化しても柔らかいため、研磨くずがシリコーン樹脂の表面に食い込みやすいので、清浄にしにくく、この研磨くずが光ファイバ端面に露出して付着し、接続損失が大きくなる恐れがあった。
【0017】
本発明の目的は、封止に用いるシリコーン接着剤への許容範囲が広く、多心コネクタ用にも容易な作業で光ファイバの端部構造及びその端部加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、光ファイバ端にフェルールを取り付けて研磨した後に、空孔を封止剤(例えば安価なシリコーン接着剤)で封止できるようにしたものである。この場合、研磨処理によって、空孔内に研磨くずや水が入ってしまうことがあるが、有機溶剤による超音波洗浄や機械による吸引で光ファイバの空孔の近傍(開口部付近)及び光ファイバ周囲に付着した研磨くずは除去でき、空孔内の水分は乾燥によって容易に除去でき、除去しきれずに空孔内に詰まった研磨くずは封止剤で封止して固着させることにより光ファイバ接続時の接続損失が生じないことが確認できた。
【0019】
本発明は、屈折率の高いコア部と、該コア部を取り囲み前記コア部より小さい屈折率を有するクラッド部と、前記コア部を取り囲み前記クラッド部に形成された軸方向に延びた複数の空孔とを有する光ファイバの端部を覆うようにフェルールが取り付けられてなる光ファイバの端部構造において、
前記複数の空孔は封止剤によって封止され、
前記光ファイバの端面と前記フェルールの端面とは同一面を形成すると共に、
前記光ファイバの端面側に位置する前記封止剤の端面は、前記光ファイバの端面とは同一面を形成せずに窪んでいることを特徴とする。
【0020】
前記封止剤の屈折率が、前記クラッド部の屈折率よりも小さい樹脂が用いられ、シリコーン樹脂を主体とする接着剤が好ましい。それ以外にも、UV、熱などによって硬化する樹脂を用いても良い。また、複数の光ファイバの端部が単一のフェルールに配列されて固定されていることが好ましい。
【0021】
又、本発明は、屈折率の高いコア部と、該コア部を取り囲み前記コア部より小さい屈折率を有するクラッド部と、前記コア部を取り囲み前記クラッド部に形成された軸方向に延びた複数の空孔とを有する光ファイバの端部を覆うようにフェルールが取り付けられた光ファイバの端部加工法において、
前記光ファイバの端部をフェルール内に接着固定して前記光ファイバを前記フェルールと共に端面を研磨加工する研磨加工工程と、
前記研磨加工によって生じた研磨くずを除去する除去工程と、
前記除去工程後に、前記光ファイバの端部の空孔内に封止剤を充填する充填工程と、
前記充填工程後に、前記空孔内の前記封止剤を硬化させて前記空孔を封止する硬化工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0022】
更に、本発明の光ファイバの端部加工法において、
前記光ファイバの端部をフェルール内に接着固定して、前記光ファイバの端面を前記フェルールの端面と共に水を用いないで研磨する第1研磨加工工程と、
前記第1研磨加工工程後に、前記光ファイバ端部の空孔内に封止剤を充填する第1充填工程と、
第1充填工程後に、前記光ファイバの端面を前記フェルールの端面と共に研磨する第2研磨加工工程と、
前記2研磨加工工程によって生じた研磨くずを除去する除去工程と、
前記除去工程後に、前記光ファイバの端部の空孔内に封止剤を充填する第2充填工程と、
前記第2充填工程後に、前記封止剤を硬化させて前記空孔を封止する硬化工程と、
を少なくとも有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、封止剤として用いる接着剤への許容範囲が広く、多心コネクタ用にも容易な作業で光ファイバの端部構造及びその端部加工方法を提供することができることから、空孔を有する光ファイバへの多様な応用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の光ファイバ端部構造を示す断面図である。
【図2】本発明に係るホーリーファイバの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明に係る光ファイバの一例である図2に示すホーリーファイバの端部構造を示す断面図である。図1(a)は光ファイバの端部の全体構造を示す断面図、図1(b)は図1(a)の点線部で囲むキャピラリー部3−1の先端部の拡大図である。図1(a)に示すように、フェルール3は、光ファイバコネクタを構成する部材であり、被覆付き光ファイバの被覆2が除去されて露出した光ファイバ1を固定するためのキャピラリー部3−1と、被覆付き光ファイバの被覆2を固定するためのフランジ部3−2とからなり、単心光コネクタで利用する場合、フェルール3は円筒形をしている。
【0026】
図1(b)及び図2に示すように、被覆付き光ファイバは、屈折率の高いコア部1−1と、このコア部1−1を取り囲みコア部1−1より小さい屈折率を有するクラッド部1−2と、コア部1−1を同心円上に等間隔で取り囲みクラッド部1−2に形成された軸方向に延びた複数の空孔1−3とを有する光ファイバ1の外周に、被覆2が設けられて構成される。
【0027】
被覆付き光ファイバは、光ファイバ1の長さがキャピラリー部3−1よりも若干長めになるように被覆2を除去され、光ファイバ1の空孔3−1の開口部には、封止材(シリコーン樹脂)4が充填・硬化されて封止されている。
【0028】
そして、光ファイバ1はキャピラリー部3−1に熱硬化性樹脂等の接着剤で接着固定されており、その先端面は、端面でのフレネル反射を抑えるためにキャピラリー部3−1と共に球面状に研磨されて表面が平滑になっており、被覆2はフランジ部3−2に熱硬化性樹脂等の接着剤で接着固定されることにより、被覆付き光ファイバにフェルール3が取り付けられている。
【0029】
実施例1においては、封止剤4の外側表面4−1が研磨されておらず、清浄である。そして、図1(b)に示すように、封止剤4の外側表面4−1は、封止剤4が加熱硬化され未研磨のままの表面を有するので、封止剤4のシリコーン樹脂が硬化する際に硬化収縮が起こり、軸方向における両側表面には収縮によって窪んだ窪み4−2を有する。
【0030】
従って、光ファイバ1の端面とフェルール3(キャピラリー部3−1)の端面とは同一面を形成すると共に、光ファイバ1の端面側に位置する封止剤4の端面(外側表面4−1)は、光ファイバ1の端面とは同一面を形成せずに窪んだ形状となる。
【0031】
このような光ファイバ1の端部構造を実現するための加工法について説明する。
被覆付き光ファイバの端部の被覆2を除去して光ファイバ1を露出させ、この表面をガーゼ等で拭うなどして被覆かすを除き、光ファイバ1を適切な長さにカットした後に、エポキシ接着剤を充填したフェルール3に挿入する。その状態で、フェルール3を一定時間加熱してエポキシ接着剤を硬化させ、光ファイバ1をキャピラリー部3−1に接着固定し、被覆2をフランジ部3−2に接着固定する。その後、キャピラリー部3−1と光ファイバ1の先端面が球面状かつ平滑になるように研磨してから、フェルール3の先端部(光ファイバ1の先端面及びキャピラリー部3−1の先端面と側面)の汚れをガーゼ等で拭き取る。
【0032】
その後の処理として、先ず、真空ポンプやピストン式の器具で、フェルール3の先端面側(キャピラリー部3−1と光ファイバ1の先端面側)から真空吸引することにより、空孔1−3内及び光ファイバ1の周囲にある水分及び研磨くずを除去し、その後、フェルール3の先端部を有機溶剤に浸して超音波洗浄してから乾燥させる。有機溶剤としては、安全面から、エチルアルコールが好ましい。
【0033】
乾燥させた後は、突合せ接続時に光ファイバ端面間に介在させた屈折率整合剤が空孔内に侵入して接続損失が増加することを防止すると共に、真空吸引・超音波洗浄によって除去し切れなかった空孔1−3内に詰まった研磨くずが、光ファイバ端面に出てきて接続損失が増加することを防止するための蓋の役割としてシリコーン樹脂を主体とする封止剤(接着剤)4をフェルール3の端面から空孔1−3内に充填・硬化させて封止し、研磨くずを固着する。その方法としては、以下がある。
(1)プラスティックシート上にその接着剤をチューブから搾り出し、これにフェルール端面を押し当てる方法。
(2)やわらかい繊維上にその接着剤をチューブから搾り出し、フェルール端面に擦り付けて塗り込む方法。
(3)チューブから直接、あるいは注射器状の器具を使って、フェルール端から圧入する方法。
【0034】
これらの方法では、気泡を巻き込んだとしても特性には影響しないので、容易な作業である。又、特に(3)の直接フェルール端に圧入する方法は、高い圧力を加えられるため、接着剤の封止長を大きくすることができる。
【0035】
次に、乾いたガーゼ等で、キャピラリー部3−1と光ファイバ1の先端面や側面に付着した封止剤(接着剤)4を拭き取り、空孔内の封止剤(接着剤)4を硬化させる。常温で硬化する接着剤の場合はそのまま放置して硬化させ、加熱硬化タイプの接着剤の場合は、所定時間加熱して硬化させる。そして、封止剤4が硬化する際に硬化収縮が起こり、封止剤4の外側表面4−1には窪み4−2が形成される。本実施例の場合には、接着剤の硬化収縮や硬化前の粘度についての必要条件はないので、作業性を重視して接着剤を選ぶことができる。
【0036】
なお、光ファイバ1の両端末に本実施例の端末構造を形成する場合には、片側の空孔1−3を封止してしまった後に、反対側の端末の空孔1−3を真空吸引しても清掃の効果がでにくいので、両端末の空孔1−3の開口部の有機溶剤を用いた超音波洗浄までの清掃が終わってから、それぞれの端末について空孔1−3を封止することが望ましい。本実施例の場合は、清浄さが保たれるため、接続の高品質が保たれる。
【0037】
本実施例では、単心コネクタを前提に述べてきた。コネクタとしては、他にMTコネクタやMPOコネクタのように、角型のフェルールに複数心の光ファイバを配列して固定し、端面を研磨した構造の多心コネクタが存在する。この種のコネクタについても、本実施例が適用できるものであり、これが他の封止方法に優ることである。
【0038】
又、多心コネクタの場合、光ファイバ心線は通常テープ型である。フェルール端面の研磨の前に空孔を封止する従来方法では、これが面倒になる。接着剤で封止する場合には、それぞれの光ファイバの側面にも接着剤が付着するが、テープ心線状態で光ファイバ同士が近接していると、それを拭き取ることが難しい。場合によっては、テープ心線をばらして単心状態で封止処理を実施せざるを得ない。融着接続による方法でも、一括融着接続で実施すると複数の接続部での融着品質のばらつきが大きくなるために、フェルールのキャピラリー部に設けられた孔部(ファイバ挿入穴)に入らなくなることが頻発するからである。
【0039】
なお、シリコーン樹脂の標準的な屈折率は、可視域で1.41程度であり、通信波長域でも、クラッド部の屈折率よりも十分小さい。空孔1−3の封止剤4の屈折率はクラッド部1−2の屈折率よりも小さいことが、損失増加を招かぬためには必要である。したがって、一般的な安価な接着剤でこの条件を満足できる利点がある。なお、変性シリコーンなどでは屈折率がクラッド部よりも高くなる場合があるが、このような場合には、図1(b)に示す封止剤4の充填長さを損失が増加しない程度に短くすれば良い。
【実施例2】
【0040】
実施例2においては、実施例1とは別の端部加工方法について説明する。
実施例2は、図1に示す実施例1と同様に、被覆付き光ファイバは、その端部の被覆2を除去して光ファイバ1を露出させ、この光ファイバ1はコネクタ用のキャピラリー部3−1に接着固定されており、被覆2はコネクタ用のフランジ部3−2に接着固定されて、被覆付き光ファイバにはフェルール3が取り付けられている。
【0041】
まず、フェルール3の先端面(キャピラリー部3−1及び光ファイバ1の先端面)の1回目の研磨(第1研磨加工工程)を行う。この第1研磨加工工程は、研磨時の水が空孔1−3内に入らないようにするために、水なしの粗研磨を施すものであり、キャピラリー部3−1の先端面と光ファイバ1の先端面を大体揃えるために行うものである。そして、封止剤(シリコーン接着剤)4を空孔1−3に充填(第1充填工程)し、端面を拭ってはみ出した封止剤4を清掃した後に2回目の研磨(第2研磨加工工程)を行う。
【0042】
なお、封止剤(シリコーン接着剤)4を空孔1−3に充填する前に、粗研磨時に空孔1−3内に入った研磨くずの清掃を必ずしも行う必要はない。これは、空孔1−3内に取り込まれた研磨くずは、そのまま空孔1−3内に残っても伝送特性や機械的信頼性に影響せず、また、研磨くずは、封止剤4によって固着されることになるので、光ファイバ端面に露出して付着し、損失が増加する恐れがないからである。
【0043】
次に、第2研磨加工工程を行う。この第2研磨加工工程は、水を用いて細かく研磨するものであり、キャピラリー部3−1と光ファイバ1の先端面が球面状かつ平滑になるように研磨する。
【0044】
なお、この第2研磨加工工程にあたって、封止剤(シリコーン接着剤)4が固まってから水有り研磨をする必要はない。封止剤4に用いたシリコーン接着剤が硬化しない状態であっても、シリコーン接着剤は撥水性が高いことから、空孔1−3内面にできるシリコーン接着剤からなる膜のために、第2研磨工程時の研磨液や研磨くずは、封止剤(シリコーン接着剤)4よりも空孔1−3の奥深くに入り込むことは無い。
【0045】
第2研磨加工工程が完了した後は、有機溶剤(エチルアルコール等)での超音波洗浄を実施し、フェルール3の先端部から研磨液、研磨くずを洗い出す。先に充填した封止剤(シリコーン接着剤)4によって、研磨くずが光ファイバの空孔1−3の奥深くに入り込むことがないから(ストッパの役割)、実施例1のような真空吸引は必要としない。その後乾燥させた後、第2研磨加工工程の研磨時に発生し、超音波洗浄で除去し切れず空孔1−3内に詰まった研磨くずを樹脂で固着するために、再度シリコーン接着剤を空孔1−3内に充填(第2充填工程)し、その後、空孔1−3からはみ出してフェルール3の表面に付着した接着剤を拭き取って、空孔1−3内に充填された封止剤(シリコーン接着剤)4を硬化させ封止し、研磨くずを固着する。
【0046】
実施例2においても、実施例1の図1(b)と同様に、第2充填工程で充填・硬化された封止剤4の外側表面4−1は、硬化されて未研磨のままの表面を有しており、封止剤4のシリコーン樹脂が硬化する際に硬化収縮が起こるため、軸方向における外側表面4−1は窪んだ形になっている。
【0047】
本実施例の方法では、真空吸引を必要としないから、長尺の光ファイバについての端末構造の作製に特に適する。これは、パッチコードでなく多心ケーブルが対象となる場合に有用であり、更に、清浄さが保たれるため、接続の高品質を保ちやすい。
【0048】
なお、上記実施例1及び実施例2においては、封止剤4としてシリコーン樹脂を用いて説明を行ったが、例えばエポキシ樹脂や変性シリコーンを用いた場合にも適用可能である。また、被覆付き光ファイバとしてホーリーファイバを用いて説明を行ったが、例えばフォトニック結晶ファイバを用いた場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・光ファイバ、1−1・・・コア部、1−2・・・クラッド部、1−3・・・空孔、2・・・被覆、3・・・フェルール、3−1・・・キャピラリー部、3−2・・・フランジ部、4・・・封止剤、4−1・・・封止剤の外側表面、4−2・・・窪み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率の高いコア部と、該コア部を取り囲み前記コア部より小さい屈折率を有するクラッド部と、前記コア部を取り囲み前記クラッド部に形成された軸方向に延びた複数の空孔とを有する光ファイバの端部を覆うようにフェルールが取り付けられてなる光ファイバの端部構造において、
前記複数の空孔は封止剤によって封止され、
前記光ファイバの端面と前記フェルールの端面とは同一面を形成すると共に、
前記光ファイバの端面側に位置する前記封止剤の端面は、前記光ファイバの端面とは同一面を形成せずに窪んでいることを特徴とする光ファイバの端部構造。
【請求項2】
請求項1において、前記封止剤の屈折率が、前記クラッド部の屈折率よりも小さいことを特徴とする光ファイバ端部構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、複数の光ファイバの端部が単一のフェルールに配列されて固定されていることを特徴とする光ファイバ端部構造。
【請求項4】
屈折率の高いコア部と、該コア部を取り囲み前記コア部より小さい屈折率を有するクラッド部と、前記コア部を取り囲み前記クラッド部に形成された軸方向に延びた複数の空孔とを有する光ファイバの端部を覆うようにフェルールが取り付けられた光ファイバの端部加工法において、
前記光ファイバの端部を前記フェルール内に接着固定して前記光ファイバを前記フェルールと共に端面を研磨加工する研磨加工工程と、
前記研磨加工によって生じた研磨くずを除去する除去工程と、
前記除去工程後に、前記光ファイバの端部の空孔内に封止剤を充填する充填工程と、
前記充填工程後に、前記空孔内の前記封止剤を硬化させて前記空孔を封止する硬化工程と、を少なくとも有することを特徴とする光ファイバの端部加工方法。
【請求項5】
屈折率の高いコア部と、該コア部を取り囲み前記コア部より小さい屈折率を有するクラッド部と、前記コア部を取り囲み前記クラッド部に形成された軸方向に延びた複数の空孔とを有する光ファイバの端部を覆うようにフェルールが取り付けられた光ファイバの端部加工法において、
前記光ファイバの端部を前記フェルール内に接着固定して、前記光ファイバの端面を前記フェルールの端面と共に水を用いないで研磨する第1研磨加工工程と、
前記第1研磨加工工程後に、前記光ファイバの端部の空孔内に封止剤を充填する第1充填工程と、
前記第1充填工程後に、前記光ファイバの端面を前記フェルールの端面と共に研磨する第2研磨加工工程と、
前記第2研磨加工工程によって生じた研磨くずを除去する除去工程と、
前記除去工程後に、前記光ファイバの端部の空孔内に封止剤を充填する第2充填工程と、
前記第2充填工程後に、前記封止剤を硬化させて前記空孔を封止する硬化工程と、
を少なくとも有することを特徴とする光ファイバの端部加工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−108404(P2012−108404A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258612(P2010−258612)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】