説明

光ファイバケーブル分岐構造体、光ファイバケーブル分岐方法及び光ファイバケーブル用分岐具

【課題】光ファイバケーブル分岐構造体において、ケーブル分岐作業をより容易にすることである。
【解決手段】光ファイバケーブルのシースを除去し、スロット溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線と、一端にコネクタを設けた複数の第2光ファイバ心線と、を融着して形成される融着部を保持して分岐した光ファイバケーブル分岐構造体は、ケーブルコアに取り付けられる分岐具本体32と、保護蓋34とを備え、分岐具本体は、ケーブルコアを係合して取り付けるケーブルコア係合部と、複数の第1光ファイバ心線を背面側から表面側へ誘導する誘導スリット38と、融着部を保持する融着部保持部を有し、複数の融着された第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線の余長を収納する余長収容室44と、第2光ファイバ心線のコネクタが一方に接続される複数のアダプタ46と、を有する分岐具30を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルの中間後分岐に用いられる光ファイバケーブル分岐構造体、光ファイバケーブル分岐方法及び光ファイバケーブル用分岐具に関し、特に、屋内に敷設される光ファイバケーブルの分岐に用いられる光ファイバケーブル分岐構造体、光ファイバケーブル分岐方法及び光ファイバケーブル用分岐具に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた光伝送線路において、例えば、光ファイバネットワークの構築には、光ファイバケーブルを敷設した後、この光ファイバケーブルを途中から分岐させる中間後分岐の技術が用いられている(例えば、特許文献1から5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−220390号公報
【特許文献2】特表2008−501151号公報
【特許文献3】特表2008−501152号公報
【特許文献4】特表2008−501153号公報
【特許文献5】特表2008−501154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような光ファイバケーブルの分岐方法では、光ファイバケーブル用分岐具のサイズが大きいことなどから、特に、多種多様な多数の光ファイバケーブルが密集して配設されている場合において光ファイバケーブルの分岐作業が容易ではなかった。
【0005】
そこで本発明の目的は、光ファイバケーブルの分岐作業をより容易にして、中間分岐配線時の作業性を向上させる光ファイバケーブル分岐構造体、光ファイバケーブル分岐方法及び光ファイバケーブル用分岐具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光ファイバケーブル分岐構造体は、光ファイバケーブルのシースを所定範囲にわたって除去し、前記シースを除去した部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線と、一端にコネクタを設けた複数の第2光ファイバ心線と、を融着して形成される融着部を保持して分岐した光ファイバケーブル分岐構造体であって、前記シースを除去した部分のケーブルコアに取り付けられ、表面側を凹状に形成した分岐具本体と、前記分岐具本体の表面側を覆う保護蓋と、を備え、前記分岐具本体は、背面側に設けられ、前記シースを除去した部分のケーブルコアを係合して前記分岐具本体を取り付けるケーブルコア係合部と、前記表面側の一端に設けられ、前記光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線を前記分岐具本体の背面側から表面側へ誘導する誘導スリットと、前記表面側に設けられ、前記融着部を保持する融着部保持部を有し、複数の融着された第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線の余長を略円形状に束ねて収納する余長収容室と、前記表面側に設けられ、前記複数の第2光ファイバ心線のコネクタが一方に接続される複数のアダプタと、を有する光ファイバケーブル用分岐具を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る光ファイバケーブル分岐構造体は、前記スロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれ、前記ケーブルコア係合部から表面側へ前記誘導スリットで誘導された複数の第1光ファイバ心線と、前記アダプタの一方に一端に設けたコネクタが接続され、他端が前記複数の第1光ファイバ心線と融着された複数の第2光ファイバ心線と、前記融着部保持部で保持された前記融着部と、を含む複数の分岐光ファイバ線を備えることが好ましい。
【0008】
本発明に係る光ファイバケーブル分岐方法は、光ファイバケーブルのシースを剥がした後、剥がしたシースの所定範囲を除去し、前記シースを剥がした部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線と、一端にコネクタを設けた複数の第2光ファイバ心線と、を融着して形成される融着部を保持して光ファイバケーブル用分岐具で分岐する光ファイバケーブル分岐方法であって、前記シースを剥がした部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から前記光ファイバ集合心線を取り出し、前記剥がしたシースの所定範囲を除去した残部を前記シースを剥がした部分のケーブルコアに被せる工程と、前記光ファイバケーブル用分岐具は、表面側を凹状に形成した分岐具本体と、前記分岐具本体の表面側を覆う保護蓋と、を備え、前記分岐具本体は、背面側に設けられ、前記シースを除去した部分のケーブルコアを係合して前記分岐具本体を取り付けるケーブルコア係合部と、前記表面側の一端に設けられ、前記光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線を前記分岐具本体の背面側から表面側へ誘導する誘導スリットと、前記表面側に設けられ、前記融着部を保持する融着部保持部を有し、複数の融着された第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線の余長を略円形状に束ねて収納する余長収容室と、前記表面側に設けられ、前記複数の第2光ファイバ心線のコネクタが一方に接続される複数のアダプタと、を有し、前記シースを剥がした部分のケーブルコアをケーブルコア係合部に係合して前記分岐具本体を取り付け、前記光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線を前記分岐具本体の背面側から表面側へ前記誘導スリットで誘導し、前記アダプタの一方にコネクタで接続された前記複数の第2光ファイバ心線と融着する工程と、前記融着部を前記融着部保持部で保持し、複数の融着された第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線の余長を前記余長収容室へ収容する工程と、前記分岐具本体の表面側に、前記保護蓋を取り付ける工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る光ファイバケーブル用分岐具は、光ファイバケーブルのシースを所定範囲にわたって除去し、前記シースを除去した部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線と、一端にコネクタを設けた複数の第2光ファイバ心線と、を融着接続して形成される融着部を保持して分岐する光ファイバケーブル用分岐具であって、表面側を凹状に形成した分岐具本体と、前記分岐具本体の表面側を覆う保護蓋と、を備え、前記分岐具本体は、背面側に設けられ、前記シースを除去した部分のケーブルコアを係合して前記分岐具本体を取り付けるケーブルコア係合部と、前記表面側の一端に設けられ、前記光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線を背面側から表面側へ誘導する誘導スリットと、前記表面側に設けられ、前記融着部を保持する融着部保持部を有し、複数の融着された第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線の余長を略円形状に束ねて収納する余長収容室と、前記表面側に設けられ、前記複数の第2光ファイバ心線のコネクタが一方に接続される複数のアダプタと、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る光ファイバケーブル用分岐具において、前記分岐具本体は、前記背面側に凸状に形成され、前記スロット溝に挿入されて前記分岐具本体を位置決めする位置決め凸部を有することが好ましい。
【0011】
本発明に係る光ファイバケーブル用分岐具において、前記分岐具本体は、前記シースを除去した部分のケーブルコアに前記分岐具本体を固定する締結具を取り付ける締結具取り付け部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成における光ファイバケーブル分岐構造体、光ファイバケーブル分岐方法及び光ファイバケーブル用分岐具によれば、光ファイバケーブル用分岐具の構造がより簡略であるので、例えば、多種多様な多数の光ファイバケーブルが密集して配設されて空きスペースが小さくなっている場合でも中間後分岐作業がより容易になり作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態において、光ファイバケーブルの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態において、光ファイバケーブルから光ファイバ集合心線を取り出す手順を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態において、光ファイバケーブル用分岐具の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態において、光ファイバケーブル用分岐具の構成を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態において、光ファイバケーブル用分岐具の構成を示す底面図である。
【図6】本発明の実施の形態において、光ファイバケーブル用分岐具の構成を示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態において、光ファイバケーブルのシースを切断した状態を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態において、ケーブルコアを露出させた状態を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態において、1つの光ファイバ集合心線を取り出した状態を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態において、剥がしたシースを、露出部分のケーブルコアに被せた状態を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態において、ケーブルコアに分岐具本体を取り付けた状態を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態において、光ファイバ集合心線に含まれる第1光ファイバ心線と、第2光ファイバ心線とを融着した状態を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態において、複数の融着された第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線とを余長収容室へ収容した状態を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態において、一端にコネクタを設けた光ファイバ側光ファイバ心線をアダプタの他方に接続した状態を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態において、分岐具本体に保護蓋を被せた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。まず、光ファイバケーブル10の構成について説明する。図1は、光ファイバケーブル10の概略構成を示す断面図である。光ファイバケーブル10は、ケーブルコア12の外周にシース14が形成された構成を有している。ケーブルコア12は、スロット溝16が形成されたスロット部材18と、スロット溝16に収容された複数の光ファイバ集合心線20と、を備えている。スロット溝16は、ケーブル長さ方向に沿って形成されている。光ファイバ集合心線20には、複数の単心線である第1光ファイバ心線20aを集合させた光ファイバテープ心線や多心の光ファイバ心線等が用いられる。また、ケーブルコア12には、抗張力体22が設けられている。
【0015】
シース14の外面には、ケーブル長さ方向に沿って一対の溝状のノッチ14c(弱化部分)または薄肉部が、周方向に互いに離間して形成され、これらノッチ14cによって、シース14は周方向に第1部分14aと第2部分14bとの2つの部分に区分されている。第1部分14aは、ノッチ14c間の距離が比較的小さい部分であり、第2部分14bは、それ以外の部分であり、断面略C形になっている。
【0016】
図2は、光ファイバケーブル10から光ファイバ集合心線20を取り出す手順を示す図である。図2(a)、図2(b)に示すように、シース14をカッタ26で周方向に切断した後、この切断部からノッチ14cでシース14を引裂くようにして第1部分14aを第2部分14bから分離することによって、ケーブルコア12を露出させる。
【0017】
次いで、図2(c)、図2(d)に示すように、ケーブルコア12のスロット溝16の溝内に収容された複数の光ファイバ集合心線20のうち一部を切断し、スロット溝16から取り出すことができる。他の光ファイバ集合心線20は、スロット溝16内に残す。そして、剥がした部分の第2部分14bを、再びケーブルコア12に被せてスロット溝16を覆うことによって、スロット溝16内の光ファイバ集合心線20が外に出るのを防ぐことができる。
【0018】
なお、後述するように、スロット溝16の溝内から取り出した光ファイバ集合心線20に含まれる複数の第1光ファイバ心線20aは、光モジュール側における一端にコネクタを設けた複数の第2光ファイバ心線と融着接続される。
【0019】
次に、光ファイバケーブル用分岐具について説明する。
【0020】
図3は、光ファイバケーブル用分岐具30の構成を示す斜視図であり、図4は、光ファイバケーブル用分岐具30の構成を示す平面図であり、図5は、光ファイバケーブル用分岐具30の構成を示す底面図であり、図6は、光ファイバケーブル用分岐具30の構成を示す側面図である。
【0021】
光ファイバケーブル用分岐具30は、表面側を凹状に形成した分岐具本体32と、分岐具本体32の表面側を覆う保護蓋34と、を備えている。
【0022】
図5に示すように、分岐具本体32は、背面側に設けられ、シース14を除去した部分のケーブルコア12を係合して分岐具本体32を取り付けるケーブルコア係合部36と、表面側の一端に設けられ、光ファイバ集合心線20に含まれる複数の第1光ファイバ心線20aを背面側から表面側へ誘導する誘導スリット38と、表面側に設けられ、複数の第1光ファイバ心線20aと、一端にコネクタを設けた複数の第2光ファイバ心線との融着部を保持する融着部保持部42を有し、複数の融着された第1光ファイバ心線20aと第2光ファイバ心線の余長を略円形状に束ねて収納する余長収容室44と、表面側に設けられ、複数の第2光ファイバ心線のコネクタが一方に接続される複数のアダプタ46と、を有している。
【0023】
ケーブルコア係合部36は、分岐具本体32の背面側に設けられ、シース14を除去した部分のケーブルコア12を係合して分岐具本体32を光ファイバケーブル10に取り付ける機能を有している。ケーブルコア係合部36は、ケーブルコア12の一部を挿入して係合するため凹状に形成される。
【0024】
位置決め凸部48は、分岐具本体32の背面側に凸状に形成され、スロット溝16に挿入されて分岐具本体32を位置決めする機能を有している。位置決め凸部48は、スロット溝16の溝内に挿入可能な幅で凸状に形成される。
【0025】
誘導スリット38は、分岐具本体32の表面側の一端に設けられ、光ファイバ集合心線20に含まれる複数の第1光ファイバ心線20aを分岐具本体32の背面側から表面側へ誘導する機能を有している。誘導スリット38は、光ファイバ集合心線20を分岐具本体32内へ誘導する誘導口50と連通して形成される。誘導口50は、例えば、位置決め凸部48に形成される。誘導スリット38は、長手方向に沿って所定長さと所定の傾斜でスロープ状に形成される。誘導スリット38は、光ファイバ集合心線20を挿入可能なスリット幅で形成される。なお、誘導スリット38の近傍には、誘導された光ファイバ集合心線20を保持する光ファイバ集合心線保持体52が設けられる。
【0026】
余長収容室44は、分岐具本体32の表面側に設けられ、光ファイバ集合心線20に含まれる複数の第1光ファイバ心線20aと、一端にコネクタを設けた複数の第2光ファイバ心線とを融着して形成された融着部を保持する融着部保持部42を有し、複数の融着された第1光ファイバ心線20aと第2光ファイバ心線の余長を略円形状に束ねて収納する機能を有している。
【0027】
融着部保持部42は、例えば、誘導スリット38と交差する方向(例えば、略直交方向)に設けられる。融着部保持部42は、突出した一対の保持体を有している。一対の保持体は、融着部を着脱可能に挿入保持できる間隔で形成される。
【0028】
余長保持体54は、余長収容室44に設けられ、略円形状に束ねて収納された複数の融着された第1光ファイバ心線20aと第2光ファイバ心線の余長を保持する機能を有している。余長保持体54は、例えば、分岐具本体32の側壁や融着部保持部42から突出させて設けられ、余長を上から押えることにより保持する。余長保持体54は、余長収容室44に複数設けられることが好ましい。
【0029】
アダプタ46は、分岐具本体32の表面側に設けられ、一方に複数の第2光ファイバ心線のコネクタが接続される。アダプタ46は、例えば、分岐具本体32の略中央に設けられ、分岐具本体32の長手方向に対して略直交方向に並列して複数設けられる。アダプタ46は、分岐具本体32の底面から突出して設けられるアダプタガイド56でガイドされ、アダプタ保持体58で挟持されて保持される。アダプタ46の他方には、例えば、光モジュールに接続され、一端にコネクタを設けた他の光モジュール側光ファイバ心線がコネクタ接続される。アダプタ46には、一般的な光ファイバ接続に用いられるアダプタ46を使用できる。
【0030】
分岐具本体32には、一端にコネクタを設けた光モジュール側光ファイバ心線が分岐具本体32内へ個別に誘導される複数の誘導溝59を設けることが好ましい。誘導溝59は、分岐具本体32の表面側の他端に設けられ、一端にコネクタを設けた複数の光モジュール側光ファイバ心線を個別に分岐具本体32内に誘導する機能を有している。誘導溝59は、アダプタ46と同じ数だけ並列してスリット状に設けられる。
【0031】
締結具取り付け部60は、分岐具本体32の一端と他端とに突出して設けられ、分岐具本体32をケーブルコア12に固定する締結具を取り付ける機能を有している。締結具取り付け部60は、例えば、裏面側が略円弧状に形成される。締結具取り付け部60には、締結具が、例えばスライドして外れないように凸状の締結具外れ止め62が設けられている。
【0032】
円筒突起64は、分岐具本体32の表面側に設けられ、後述する保護蓋34に設けられる円柱突起66を嵌め込んで保護蓋34を固定する機能を有している。円筒突起64は、例えば、分岐具本体32における表面側の長手方向に複数箇所設けられる。
【0033】
保護蓋34は、分岐具本体32の表面側を覆い、光ファイバ心線を保護する機能を有している。保護蓋34は、分岐具本体32に開閉可能または着脱可能に設けられる。保護蓋34には、分岐具本体32の表面側に設けられる円筒突起64に嵌め込まれる円柱突起66を有している。円柱突起66は、例えば、保護蓋34における長手方向に複数箇所設けられる。保護蓋34には、保護蓋34を分岐具本体32に被せたときに光モジュール側光ファイバ心線を通すスリット68が設けられる。
【0034】
分岐具本体32と保護蓋34とは、例えば、合成樹脂を用いて金型成形される。合成樹脂には、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン(ABS)共重合樹脂、PC樹脂とABS樹脂とをブレンドした合成樹脂等が用いられる。
【0035】
次に、光ファイバケーブル10の分岐方法について説明する。光ファイバケーブル10の分岐方法は、例えば、屋内に敷設された光ファイバケーブルの分岐作業に用いられる。
【0036】
まず、光ファイバケーブル10におけるシース14の所定部分が切断される。図7は、光ファイバケーブル10のシース14を切断した状態を示す図である。光ファイバケーブル10のシース14は、カッタ26等で切断される。シース14切断後の光ファイバケーブル10には、切断部14dが形成される。
【0037】
次に、所定部位のシース14を剥離して剥がし、剥がしたシース14の所定範囲をカットして除去し、ケーブルコア12を露出させる。図8は、ケーブルコア12を露出させた状態を示す図である。シース14の切断部14dから所定長さの部分のシース14にケーブル長さ方向の切れ目を入れ、この部分のシース14を剥がしてケーブルコア12を露出させる。例えば、図1及び図2に示すように、第1部分14aをノッチ14cに沿って第2部分14bから分離することによって、シース14をケーブルコア12から剥離させ、ケーブルコア12を露出させることができる。剥がした部分のシース14は、作業の邪魔にならないように、作業に関与しない部分のシース14などに仮止めしておくことが好ましい。
【0038】
次に、ケーブルコア12から1つの光ファイバ集合心線20を取り出す。図9は、1つの光ファイバ集合心線20を取り出した状態を示す図である。図9に示すように、ケーブルコア12のスロット溝16の溝内に収容された複数の光ファイバ集合心線20のうち一部を切断し、スロット溝16から1本の光ファイバ集合心線20を取り出す。
【0039】
次に、上述の剥がしたシース14の所定範囲を除去した残部を露出部分のケーブルコア12に被せる。図10は、剥がしたシース14を、露出部分のケーブルコア12に被せた状態を示す図である。この際、シース14の先端から所定長さの部分である所定範囲を切除することによって、シース14が光ファイバケーブル用分岐具30に接触しないようにすることができる。ケーブルコア12に被せたシース14は、テープ状固定具などによりケーブルコア12に固定することができる。後述するように、光ファイバケーブル用分岐具30は、シース14の一部削除により露出された部分のケーブルコア12に取り付けられる。
【0040】
次に、シース14を除去したケーブルコア12に分岐具本体32を取り付ける。図11は、ケーブルコア12に分岐具本体32を取り付けた状態を示す図である。分岐具本体32は、その背面側をケーブルコア12に向けて取り付けられる。位置決め凸部48をスロット溝16に挿入し、ケーブルコア係合部36にケーブルコア12を係合する。それにより、分岐具本体32は、ケーブルコア12の軸方向と略一致するように位置決めされて光ファイバケーブル10に配置される。また、位置決め凸部48をスロット溝16に挿入することにより、分岐具本体32の姿勢を安定させることができる。
【0041】
分岐具本体32は、締結具70でケーブルコア12に締結されて固定される。締結具70には、例えば、係止穴を有する係止部がバンドの一端に設けられ、バンドを係止穴に通して任意の位置で係止可能な構造(例えば、いわゆるインシュロックタイ)などの結束具が採用できる。バンドが、分岐部本体の締結具取り付け部60と、ケーブルコア12と、に一括して巻き付けられ、分岐具本体32がケーブルコア12に締め付け固定された状態でバンドが係止部により係止されている。この際、バンドを、締結具取り付け部60に設けられた締結具外れ止め62の内側に巻き付けることにより、バンドの鉛直方向における上下方向の移動を規制し、分岐具本体32の脱落をより確実に防止できる。
【0042】
なお、締結具70としては、分岐具本体32をケーブルコア12に締結することができるものであれば特に限定されることはなく、分岐具本体32に、ケーブルコア12を保持する機能を与えることもできる。例えば、保持片、係止爪、クリップ部などによりケーブルコア12に係止可能とすることができる。
【0043】
光ファイバ集合心線20に含まれる複数の第1光ファイバ心線20aは、分岐具本体32の誘導口50から分岐具本体32内に誘導され、分岐具本体32の表面側へ誘導スリット38で誘導される。そして、一端にコネクタ72を設けた第2光ファイバ心線74は、アダプタ46の一方にコネクタ72を差し込んで接続される。
【0044】
次に、光ファイバ集合心線20に含まれる第1光ファイバ心線20aと、第2光ファイバ心線74と、を融着する。図12は、光ファイバ集合心線20に含まれる第1光ファイバ心線20aと、第2光ファイバ心線74とを融着した状態を示す図である。光ファイバ集合心線20に含まれる第1光ファイバ心線20aと、第2光ファイバ心線74とは、融着機で融着されて接続される。例えば、図12に示すように、第2光ファイバ心線74の融着側の所定範囲をテープ化させることにより、第2光ファイバ心線74のテープ化された部位と、光ファイバ集合心線20とをテープ状の状態のままテープ融着する。図12では、光ファイバ集合心線20と、第2光ファイバ心線74のテープ化された部位とが4心テープ融着されている。そして、光ファイバ集合心線20に含まれる第1光ファイバ心線20aと、第2光ファイバ心線74とが融着接続されて融着部76が形成される。融着部76は、補強スリーブ等で補強されることが好ましい。光ファイバ集合心線20に含まれる第1光ファイバ心線20aと、第2光ファイバ心線74との融着には、一般的に光ファイバの融着で用いられる融着機を使用することができる。
【0045】
次に、複数の融着された第1光ファイバ心線20aと第2光ファイバ心線74とを余長収容室44へ収容する。図13は、複数の融着された第1光ファイバ心線20aと第2光ファイバ心線74とを余長収容室44へ収容した状態を示す図である。複数の融着された第1光ファイバ心線20aと第2光ファイバ心線74とは、略円形状に巻回され余長保持体54で保持される。また、融着された第1光ファイバ心線20aと第2光ファイバ心線74との融着部76は、融着部保持部42で保持される。
【0046】
次に、分岐具本体32に保護蓋34を被せる。分岐具本体32に設けられた円筒突起64と、保護蓋34に設けられた円柱突起66と、を嵌め合せることにより、保護蓋34が分岐具本体32に取り付けられて固定される。これにより分岐具本体32の内側に位置している光ファイバが保護される。以上により、複数の分岐光ファイバ線78が設けられて分岐構造体80が形成され、光ファイバケーブル10の分岐作業が完了する。
【0047】
ここで、別な複数の一端にコネクタ82を設けた光ファイバ側光ファイバ心線84が誘導溝59で分岐具本体32内へ誘導されてアダプタ46に接続される。図14は、一端にコネクタ82を設けた光ファイバ側光ファイバ心線84をアダプタ46の他方に接続した状態を示す図である。図15は、分岐具本体32に保護蓋34を被せた状態を示す図である。光ファイバ側光ファイバ心線84の一端に設けられたコネクタ82は、アダプタ46の他方に接続される。
【0048】
なお、光ファイバケーブル用分岐具30の増設により分岐数を増やすこともできる。ケーブルの長さ方向に複数の上記構成における分岐具を設けることにより同様の手順で光ファイバを分岐することができる。このように、ケーブルコア12に、長さ方向に位置を違えて複数の光ファイバケーブル用分岐具30を取り付けることにより、利用者数に応じた分岐数の増加に対してもより容易に対応することができる。
【0049】
上記構成によれば、光ファイバケーブル用分岐具の構造が簡略であり、分岐具のサイズをより小さくできるので省スペース化が可能である。そのため、多種多様な多数の光ファイバケーブルが密集して配設されて空きスペースが小さくなっている場合でも中間後分岐作業の作業性が向上する。また、分岐作業後の状態がコンパクトであり、他のケーブルの後増設にも支障が無い。また、分岐具内に融着した光ファイバ心線の余長を収納し、コネクタ接続点を収納可能とすることにより、ケーブルシャフト以外に成端箱、配線ルートを設ける必要がない。
【0050】
上記構成によれば、中間後分岐作業のために剥いだシースの大部分を再利用しているので、中間後分岐作業の作業コストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 光ファイバケーブル
12 ケーブルコア
14 シース
16 スロット溝
18 スロット部材
20 光ファイバ集合心線
20a 第1光ファイバ心線
22 抗張力体
26 カッタ
30 光ファイバケーブル用分岐具
32 分岐具本体
34 保護蓋
36 ケーブルコア係合部
38 誘導スリット
42 融着部保持部
44 余長収容室
46 アダプタ
48 位置決め凸部
50 誘導口
52 第1光ファイバ心線保持体
54 余長保持体
56 アダプタガイド
58 アダプタ保持体
59 誘導溝
60 締結具取り付け部
62 締結具外れ止め
64 円筒突起
66 円柱突起
68 スリット
70 締結具
72、82 コネクタ
74 第2光ファイバ心線
76 融着部
78 分岐光ファイバ線
80 分岐構造体
84 光モジュール側光ファイバ心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルのシースを所定範囲にわたって除去し、前記シースを除去した部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線と、一端にコネクタを設けた複数の第2光ファイバ心線と、を融着して形成される融着部を保持して分岐した光ファイバケーブル分岐構造体であって、
前記シースを除去した部分のケーブルコアに取り付けられ、表面側を凹状に形成した分岐具本体と、前記分岐具本体の表面側を覆う保護蓋と、を備え、前記分岐具本体は、背面側に設けられ、前記シースを除去した部分のケーブルコアを係合して前記分岐具本体を取り付けるケーブルコア係合部と、前記表面側の一端に設けられ、前記光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線を前記分岐具本体の背面側から表面側へ誘導する誘導スリットと、前記表面側に設けられ、前記融着部を保持する融着部保持部を有し、複数の融着された第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線の余長を略円形状に束ねて収納する余長収容室と、前記表面側に設けられ、前記複数の第2光ファイバ心線のコネクタが一方に接続される複数のアダプタと、を有する光ファイバケーブル用分岐具を備えることを特徴とする光ファイバケーブル分岐構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバケーブル分岐構造体であって、
前記スロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれ、前記ケーブルコア係合部から表面側へ前記誘導スリットで誘導された複数の第1光ファイバ心線と、前記アダプタの一方に一端に設けたコネクタが接続され、他端が前記複数の第1光ファイバ心線と融着された複数の第2光ファイバ心線と、前記融着部保持部で保持された前記融着部と、を含む複数の分岐光ファイバ線を備えることを特徴とする光ファイバケーブル分岐構造体。
【請求項3】
光ファイバケーブルのシースを剥がした後、剥がしたシースの所定範囲を除去し、前記シースを剥がした部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線と、一端にコネクタを設けた複数の第2光ファイバ心線と、を融着して形成される融着部を保持して光ファイバケーブル用分岐具で分岐する光ファイバケーブル分岐方法であって、
前記シースを剥がした部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から前記光ファイバ集合心線を取り出し、前記剥がしたシースの所定範囲を除去した残部を前記シースを剥がした部分のケーブルコアに被せる工程と、
前記光ファイバケーブル用分岐具は、表面側を凹状に形成した分岐具本体と、前記分岐具本体の表面側を覆う保護蓋と、を備え、前記分岐具本体は、背面側に設けられ、前記シースを剥がした部分のケーブルコアを係合して前記分岐具本体を取り付けるケーブルコア係合部と、前記表面側の一端に設けられ、前記光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線を前記分岐具本体の背面側から表面側へ誘導する誘導スリットと、前記表面側に設けられ、前記融着部を保持する融着部保持部を有し、複数の融着された第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線の余長を略円形状に束ねて収納する余長収容室と、前記表面側に設けられ、前記複数の第2光ファイバ心線のコネクタが一方に接続される複数のアダプタと、を有し、
前記シースを除去した部分のケーブルコアをケーブルコア係合部に係合して前記分岐具本体を取り付け、前記光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線を前記分岐具本体の背面側から表面側へ前記誘導スリットで誘導し、前記アダプタの一方にコネクタで接続された前記複数の第2光ファイバ心線と融着する工程と、
前記融着部を前記融着部保持部で保持し、複数の融着された第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線の余長を前記余長収容室へ収容する工程と、
前記分岐具本体の表面側に、前記保護蓋を取り付ける工程と、
を備えることを特徴とする光ファイバケーブル分岐方法。
【請求項4】
光ファイバケーブルのシースを所定範囲にわたって除去し、前記シースを除去した部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線と、一端にコネクタを設けた複数の第2光ファイバ心線と、を融着接続して形成される融着部を保持して分岐する光ファイバケーブル用分岐具であって、
表面側を凹状に形成した分岐具本体と、
前記分岐具本体の表面側を覆う保護蓋と、
を備え、
前記分岐具本体は、
背面側に設けられ、前記シースを除去した部分のケーブルコアを係合して前記分岐具本体を取り付けるケーブルコア係合部と、
前記表面側の一端に設けられ、前記光ファイバ集合心線に含まれる複数の第1光ファイバ心線を背面側から表面側へ誘導する誘導スリットと、
前記表面側に設けられ、前記融着部を保持する融着部保持部を有し、複数の融着された第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線の余長を略円形状に束ねて収納する余長収容室と、
前記表面側に設けられ、前記複数の第2光ファイバ心線のコネクタが一方に接続される複数のアダプタと、
を有することを特徴とする光ファイバケーブル用分岐具。
【請求項5】
請求項4に記載の光ファイバケーブル用分岐具であって、
前記分岐具本体は、前記背面側に凸状に形成され、前記スロット溝に挿入されて前記分岐具本体を位置決めする位置決め凸部を有することを特徴とする光ファイバケーブル用分岐具。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光ファイバケーブル用分岐具であって、
前記分岐具本体は、前記シースを除去した部分のケーブルコアに前記分岐具本体を固定する締結具を取り付ける締結具取り付け部を有することを特徴とする光ファイバケーブル用分岐具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−243835(P2010−243835A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93035(P2009−93035)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】