説明

光ファイバケーブル及びその布設方法

【課題】電柱等への引き留め作業の作業性を向上できる光ファイバケーブル及びその布設方法を提供する。
【解決手段】光ファイバケーブル1は、光ファイバ心線5を外被6で覆ってなるとともに横断面が円形状をなす光エレメント2と、光エレメント2を支持する支持線3とを備え、光エレメント2がピッチを部分的に変更可能な状態で支持線3の外周に螺旋状にルース巻きされている。支持線3を引留具16に固定する固定部18周辺の光エレメント2を、巻きピッチを短くするように固定部18から離れる方向に寄せた状態で、支持線3の固定部18を引留具16に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ網を構築する際に用いるのに好適な光ファイバケーブル及びその布設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH (Fiber To The Home)等の用途に用いられる光ファイバケーブルとして、電柱等の架空に布設された幹線系の光ファイバケーブルから加入者宅等に引き落とすための光ファイバケーブルが広く使用されている。引き落とし用の光ファイバケーブルは、例えば特許文献1等に記載されている。
【0003】
引き落とし用の光ファイバケーブルの一例を図5に示す。
この引き落とし用の光ファイバケーブル100は、エレメント部101と支持線102とが首部103により接続された構成である。
【0004】
エレメント部101は、中央に配置された光ファイバ心線105と、光ファイバ心線105の両側にそれぞれ配置された抗張力体106とが、難燃ポリエチレン等の樹脂107により一括被覆されている。光ファイバ心線105は、例えば外径が125μmのガラス体の光ファイバの外周に紫外線硬化樹脂が被覆されてなるものであり、その外径が250μmである。抗張力体106は、鋼や繊維強化プラスチック(FRP)等が用いられており、外径は0.4mm程度である。この光ファイバ心線105と抗張力体106が一括に被覆されていることにより、光ファイバケーブル100に付加される張力等の外力を抗張力体106が受けて、光ファイバ心線105を外力から保護している。このエレメント部101は、一般に長径が3mm、短径が2mm程度の大きさである。
【0005】
支持線102は、光ファイバケーブル100を架空で支持するための強度を有するように構成されており、鋼や繊維強化プラスチック等の支持体108がエレメント部101と同じ樹脂107により被覆されている。支持体108の外径は1.2mm程度、支持線102の外径は2mm程度である。
また、首部103は、エレメント部101及び支持線102と同じ樹脂107により、エレメント部101及び支持線102と一体に形成されており、引き裂かれることでエレメント部101と支持線102とを分離することができる。
【0006】
このような形態の光ファイバケーブルは、ケーブル本体であるエレメント部と分離できる支持線を有しているため、電柱や電柱間に既に布設されたケーブル等の吊り線や、加入者宅の軒下等の箇所に引留具を用いて留めておくことができる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−171673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
布設時に光ファイバケーブルを電柱等に留める場合には、首部を引き裂くことで、図6に示すようにエレメント部101から分離された支持線102を、電柱110等に取り付けられた引留具111に巻き付ける等して固定することになる。このため、支持線102から分離されたエレメント部101は、これを拘束するものがなくなってしまい、外力を受けやすくなってしまうことから、エレメント部101を保護用のスパイラルチューブ112で覆う作業が必要になり、作業が繁雑になってしまう。
【0009】
本発明の目的は、電柱等への引き留め作業の作業性を向上できる光ファイバケーブル及びその布設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明に係る光ファイバケーブルは、光ファイバ心線を外被で覆ってなるとともに横断面が円形状をなす光エレメントと、該光エレメントを支持する支持線とを備えた光ファイバケーブルであって、前記光エレメントがピッチを部分的に変更可能な状態で前記支持線の外周に螺旋状にルース巻きされていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る光ファイバケーブルにおいて、前記外被の弾性率が300MPa以上であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ心線と前記外被との間に抗張力繊維が配設されていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る光ファイバケーブルにおいて、前記光エレメントが複数本並列に並べられた状態で前記支持線の外周に螺旋状にルース巻きされていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る光ファイバケーブルにおいて、前記光エレメントの外径が前記支持線の外径以下であることが望ましい。
【0015】
本発明に係る光ファイバケーブルにおいて、前記光エレメントの外径が2.0mm以下であることが望ましい。
【0016】
また、上記課題を解決することのできる本発明に係る光ファイバケーブルの布設方法は、前記支持線を引留具に固定する固定部周辺の前記光エレメントを、巻きピッチを短くするように前記固定部から離れる方向に寄せた状態で、前記支持線の前記固定部を前記引留具に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、支持線の外周に光エレメントがピッチを部分的に変更可能な状態で螺旋状にルース巻きされているため、光エレメントを支持線の長手方向に沿って移動させることが可能である。そのため、支持線を引留具に固定する固定部周辺の光エレメントを、巻きピッチを短くするように固定部から離れる方向に寄せることで、光エレメントに無理な張力をかけることなく、また光エレメントを弛ませずに、支持線の固定部を引き出し、この固定部で支持線を引留具に固定することができる。よって、支持線による光エレメントの拘束状態を維持することができるため、光エレメントを保護用のスパイラルチューブ等で覆う作業が必要なく、電柱等への引き留め作業の作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る光ファイバケーブル及びその布設方法の実施形態の例について、図1〜図4を参照して説明する。
図1は光ファイバケーブルを示す断面斜視図、図2は光ファイバケーブルの接続状態を示す正面図、図3は光ファイバケーブルを引留具へ留めた状態を示す斜視図、図4は光ファイバケーブルの別例を示す断面斜視図である。
【0019】
図1に示すように、光ファイバケーブル1は、長尺状の光エレメント2が、長尺状の支持線3の外周に巻き付けられることで支持された構成である。
【0020】
光エレメント2は、横断面が円形状をなすもので、コア及びクラッドからなるガラスファイバに紫外線硬化型樹脂等の被覆が設けられた光ファイバ心線5が中心に設けられ、この光ファイバ心線5の周囲を全長にわたって外被6で覆ってなるものである。光エレメント2は、光ファイバ心線5の外径が例えば250μmであり、全体の外径が1.0〜2.0mmとなっている。
【0021】
外被6は、弾性率が300MPa以上の硬質の合成樹脂からなるものであり、低摩擦化されている。外被6は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)からなっている。高密度ポリエチレンはタック性が優れるため滑材なしでも低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンよりも低摩擦である。
光ファイバ心線5と外被6との間には、光ファイバ心線5の全周を囲むようにして抗張力繊維7が配設されている。抗張力繊維7は、例えばアラミド繊維からなっている。
【0022】
このような光エレメント2を、図2に示すように、他の光エレメント2に接続する場合には、光エレメント2の接続端に外被6を直接把持するようにコネクタ8を取り付け、このコネクタ8と、同様に接続端に取り付けられた接続先の光エレメント2のコネクタ8とを接続させることで、光ファイバ心線5同士が突き合わせ状態となり、光接続される。
【0023】
支持線3は、図1に示すように、横断面が円形状をなすもので、長尺状の支持体11が中心に設けられ、この支持体11の周囲を全長にわたって外被12で覆ってなるものである。
支持体11は、横断面が円形状をなしており、例えば、鋼や繊維強化プラスチック(FRP)等からなっている。支持体11の外径は、例えば1.0mmである。
【0024】
支持線3の外被12は、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等からなっている。この外被12の外径である支持線3の外径は、光エレメント2の外径以上であることが好ましく、例えば2.0mmとなっている。
【0025】
そして、本実施形態の光ファイバケーブル1は、光エレメント2がピッチを部分的に変更可能な状態で、支持線3の外周に螺旋状にルース巻きされている。つまり、光エレメント2は、支持線3の外周面を全面的に覆うことなく部分的に露出させるように、しかも支持線3上で支持線3の長さ方向に移動可能となるように巻き付けられている。このルース巻きによって、光エレメント2は外力によって生じる歪みを支持線3に対して移動することで逃がすようになっている。支持線3に対する光エレメント2の巻きピッチは300mm以上が好ましく、例えば600mmに設定されている。
【0026】
次に、上記した光ファイバケーブル1の布設方法について説明する。
布設時に光ファイバケーブル1を電柱等に留める場合には、図3に示すように、電柱15に留められた引留具16に光ファイバケーブル1を固定することになる。
【0027】
このとき、まず、支持線3を引留具16に固定する固定部18周辺の光エレメント2を、巻きピッチ(撚りピッチ)を短くするように固定部18から離れる方向に両側あるいは片側に寄せながら、支持線3の固定部18を引き出す。このとき、光エレメント2が支持線3に対して弛みを生じることがなく、かつ必要以上に張力が加わることがないように、支持線3の引き出しにより生じる余長に応じて、光エレメント2の寄せる量を調整する。
【0028】
次に、支持線3における光ファイバケーブル1から引き出された固定部18を、引留具16に固定する。このとき、固定部18を引留具16の巻付部20に巻き付ける等して固定する。
【0029】
このように、本実施形態の光ファイバケーブル1及びその布設方法によれば、光エレメント2がピッチを部分的に変更可能な状態で支持線3の外周に螺旋状にルース巻きされているため、支持線3を引留具16に固定する固定部18周辺の光エレメント2を、巻きピッチを短くするように固定部18から離れる方向に寄せることで、光エレメント2に無理な張力をかけることなく、また光エレメント2を弛ませずに、支持線3の固定部18を引き出し、この固定部18で支持線3を引留具16に固定することができる。よって、支持線3による光エレメント2の拘束状態を維持することができるため、光エレメント2を保護用のスパイラルチューブ等で覆う作業が必要なく、電柱15への引き留め作業の作業性が向上する。
【0030】
また、支持線とエレメント部とが首部で接続された従来の光ファイバケーブルにおいて必要であった首部の引き裂き作業が不要となるため、引き留め作業の作業性がさらに向上する。
【0031】
また、光エレメント2の外被6の弾性率が300MPa以上と硬いものであるため、光エレメント2が支持線3に対して滑りやすく、移動を容易に行うことができる。よって、引き留め作業の作業性がさらに向上する。光エレメント2の外被6が硬いことから、外被6に針を刺すクマゼミ等の虫から光ファイバ心線5を保護することもできる。
【0032】
また、光エレメント2の光ファイバ心線5と外被6との間に抗張力繊維7が配設されているため、光エレメント2の支持線3上での移動時に張力が加わることがあっても、光ファイバ心線5を保護することができる。
【0033】
また、支持線3の外径が光エレメント2の外径以上に形成されているため、例えば布設作業中に光ファイバケーブル1を作業者が踏み付ける等した場合にも、踏み付け位置の光エレメント2がルース巻きされていることから支持線3に対してずれて、その際に、支持線3の高さが光エレメント2の高さ以上あることで、光エレメント2が踏み付けられることは防がれる。また、光エレメント2の外径が2mm以下であることより、クマゼミ等の虫が安定して留まることができないため、外被6が虫に刺されにくくなり、光ファイバ心線5をさらに良好に保護することができる。
【0034】
ここで、図4に示すように、複数本の光エレメント2を一本の支持線3で支持する場合には、複数本の光エレメント2を並列に並べた状態で、支持線3の外周にピッチを部分的に変更可能となるように螺旋状にルース巻きすればよい。つまり、複数本の光エレメント2が、支持線3の外周面を全面的に覆うことなく部分的に露出させるように、支持線3上で支持線3の長さ方向に移動可能となるように巻き付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る光ファイバケーブルの実施形態の例を示す断面図である。
【図2】図1の光ファイバケーブルの接続状態を示す正面図である。
【図3】図1の光ファイバケーブルを引留具へ留めた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る光ファイバケーブルの別例を示す断面斜視図である。
【図5】従来の光ファイバケーブルの例を示す断面斜視図である。
【図6】従来の光ファイバケーブルを引留具へ留めた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1…光ファイバケーブル、2…光エレメント、3…支持線、5…光ファイバ心線、6…外被、7…抗張力繊維、16…引留具、18…固定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線を外被で覆ってなるとともに横断面が円形状をなす光エレメントと、該光エレメントを支持する支持線とを備えた光ファイバケーブルであって、
前記光エレメントがピッチを部分的に変更可能な状態で前記支持線の外周に螺旋状にルース巻きされていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバケーブルであって、
前記外被の弾性率が300MPa以上であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ファイバケーブルであって、
前記光ファイバ心線と前記外被との間に抗張力繊維が配設されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の光ファイバケーブルであって、
前記光エレメントが複数本並列に並べられた状態で前記支持線の外周に螺旋状にルース巻きされていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の光ファイバケーブルであって、
前記光エレメントの外径が前記支持線の外径以下であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の光ファイバケーブルであって、
前記光エレメントの外径が2.0mm以下であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の光ファイバケーブルを布設する方法であって、
前記支持線を引留具に固定する固定部周辺の前記光エレメントを、巻きピッチを短くするように前記固定部から離れる方向に寄せた状態で、前記支持線の前記固定部を前記引留具に固定することを特徴とする光ファイバケーブルの布設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−244550(P2009−244550A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90326(P2008−90326)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】