説明

光ファイバコネクタおよびブーツ

【課題】光の伝送損失を低減しつつ、光ファイバを任意の方向に曲げることが可能な光ファイバコネクタおよびブーツを提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る光ファイバコネクタは、光ファイバ1001を収納するためのブーツ1003を備える。このブーツ1003は、コーン状であり、45°扇形の壁面を有する貫通孔1101が形成された第1のブーツ部1004と、上記コーン状と同一の形状であり、45°扇形の壁面を有するコーン状の開口領域1202を含む貫通孔1201が形成された第2のブーツ部1005とを備えている。そして、第1のブーツ部1004および第2のブーツ部1004は、第2の開口部1103と第2の開口部1205とが対向するように、所定の距離だけ離間して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを収納するためのブーツを備えた光ファイバコネクタおよびブーツに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信技術の進展により、高速で大容量の通信が可能になってきている。高速で大容量の通信網を構築する伝送媒体として光ファイバが注目されている。光ファイバは、企業はもちろんのこと、各家庭にまで導入され、ユーザは、多彩な通信サービスを受けることができる。こうした光通信においては、着脱可能な光ファイバの接続器として光ファイバコネクタが必要である。
【0003】
ここで、光ファイバの曲げによる影響を述べておく。光ファイバは曲げにより通信光が漏洩し伝送損失が生じる。特にシングルモード光ファイバでは曲げによる影響が大きい。シングルモード光通信に最も多く使用されている石英系ガラスシングルモード光ファイバであるJIS規格、型名SSMA−9.3/125(波長1310nmゼロ分散、モードフィールド径9.3μm、クラッド径125μm)では、曲率半径20mmで損失が発生するため、一般的に曲げ半径が20mm以下とならないようにしている。
【0004】
一方、マルチモード光通信に最も多く使用されている石英系ガラスマルチモード光ファイバであるJIS規格、型名SGI−50/125(コア径50μm、クラッド径125μm))は、比較的曲げ損失が小さく、曲げ半径10mm程度でも使用上問題ない。
【0005】
以上の光ファイバの曲げの影響を考慮して、従来の光ファイバコネクタは本体後部のブーツに工夫がなされている。特に、装置に対して光ファイバコネクタを水平に嵌合し、その後端から光ファイバコードが90°下に向って垂れ下がる場合を想定して工夫がなされている。
【0006】
図1は特許文献1に記載された、従来のSC形光ファイバコネクタの断面図である。
図1において、光ファイバコード5の一方端は、ブーツ2によって被覆され、かつ光コネクタ1に接続されている。このブーツ2の露出している領域には、ブーツ2の長さ方向と直交状にし、かつ該長さ方向に沿って2個で一対のスリット3、4が複数対形成されている。
【0007】
このように図1に示す、特許文献1に記載されたSC形光ファイバコネクタでは、ブーツ2に大きさを調整したスリット3、4を入れているので、図2に示すように、光ファイバコード外被切り裂き部7を含む光コネクタ1の後端では光ファイバが曲がらず、光ファイバ2が全体的に曲率半径20mmで曲がるような構造となっている。
【0008】
図3に示すような、スリットを有さない、旧来の単純な円錐形のブーツ8では、光ファイバコードに垂直に張力が加わった場合、光ファイバコードの外被を固定するためのかしめ金具6の後端で小さな曲率半径の屈曲が発生していた。しかしながら、図1のような構成にすることにより、かしめ金具6の後端を緩やかな角度で曲げることができ、曲率半径の小さな屈曲の発生を抑えることができる(特許文献1参照)。
【0009】
なお、図2、3においては、かしめ金具の内側にあるかしめ座に対して、光コードの外被を切り裂き広げて被せ、かしめ金具でかしめ固定してある。
【0010】
一方、図4は、従来のLC形光ファイバコネクタの側面図である。
図4において、符号41は光コネクタであり、符号42はブーツであり、符号43はチューブであり、符号44は光ファイバである。このLC形光ファイバコネクタでは、図5に示すように屈曲が生じやすい。図4に示すLC形光ファイバコネクタでは、ブーツ42が特に工夫されておらず、また、光ファイバコード44の外被を固定するために熱収縮チューブであるチューブ43を用いており、これらの境界面で屈曲が生じる。
【0011】
そこで図6(a)および(b)に示すように、予め曲率半径を決めて90°で下方に曲げられたブーツがある。図6(a)はシングルモード用の光ファイバコネクタであり、光ファイバコード44の曲率半径が20mmである。一方、図6(b)はマルチモード用の光ファイバコネクタであり、光ファイバコード44の曲率半径が10mmである。これによって、予め曲率半径が決められているので、曲げ損失がこれ以上増加することが無い。なお、図6(a)および(b)に示すようにブーツ45の屈曲カーブの内側は曲がり状態を維持するためのブーツ補強部46が設けられている(非特許文献1参照)。
【0012】
【特許文献1】特許第3361395号明細書
【非特許文献1】“LC DUPLEX CONNECTOR (90° BOOT)”、インターネット<URL:http://www.molex.com/pdm_docs/sd/860253400_sd.pdf)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
さて、特許文献1では、ブーツ2を光コネクタ1からテーパ状に形成し、光コネクタ1側ではスリット3,4の深さを深くし、後端に向って徐々にスリット3,4の深さを浅くしているので、光ファイバコード5に荷重が加わった際に、ブーツ2の光コネクタ1側が曲がりにくくなり、後端に向けて曲がりやすいようになっている。従って、かしめ金具6の後端が緩やかに曲がるようになり、光ファイバコード5の光コネクタ1への接続部において、光の伝送損失を低減するようになっている。
【0014】
すなわち、特許文献1では、光ファイバコード5の光コネクタ1への接続部における伝送損失の低減を図ってスリットを形成しており、このスリットが形成されたブーツにより大きな曲率半径を得るものである。
【0015】
このように、光ファイバコネクタにおいては、光の伝送損失を抑えるために特許文献1に記載されているようにスリットをブーツに設ける形態が有力であるが、より利便性の高いものにするためには、まだ解決しなければならない課題が残されている。特に、引用文献1では、スリットを、一対毎、交互に90°変位して設けているので、二軸方向の曲げ荷重に対して、上記光ファイバコード5と光コネクタ1との接続部の急角度の曲がりを抑制することが可能であるが、上記二軸方向以外の方向に曲げると、該曲げ方向にかかる加重に対するスリットによる緩和効果が低減し、上記接続部に急角度の曲げが生じてしまう可能性がある。この場合は、光の伝送損失低減が期待できない。
【0016】
近年の光通信技術の発達に伴い、様々な環境で光ファイバが用いられており、光ファイバを光コネクタを介して、例えばルータ等の装置に装着する環境も多種多様となってきている。そして、一旦、光コネクタを対象となる装置に装着した後は、収納性を考慮して、例えば90°方向に曲げることが好ましい。上述のように、装着対象となる装置の環境が多種多様であることを考慮すると、収納性を向上するために光ファイバを曲げる方向は一意の方向ではなく、任意の方向に曲げられることが望まれている。
【0017】
しかしながら、曲げ方向を二軸方向に限定する場合は、特許文献1に記載のスリット付きのブーツを用いることは光の伝送損失を低減できるので有用であるが、スリットの形成により定められた方向以外の方向については、上述のように光の伝送損失の低減が期待できない。
【0018】
また、図6(a)および(b)に示したブーツ補強部46を備えるブーツ45においても、光ファイバコード44の向きを90°曲げる場合専用となってしまい、直線状に接続する用途では使用できず、また、決められた方向以外にも曲げることができないので、用途に制限がかかってしまう。
【0019】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたもので、その目的とするところは、光の伝送損失を低減しつつ、光ファイバを任意の方向に曲げることが可能な光ファイバコネクタおよびブーツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光ファイバを収納するためのブーツを備える光ファイバコネクタであって、前記ブーツは、コーン状の第1の開口領域を少なくとも含む第1の貫通孔が形成された第1のブーツ部であって、前記第1の開口領域の一方端の、前記第1の貫通孔の長手方向に垂直な断面の面積が、前記第1の開口領域の他方端の、該長手方向に垂直な断面の面積よりも大きい第1のブーツ部と、前記第1の開口領域のコーン状と同一の形状のコーン状である第2の開口領域を少なくとも含む第2の貫通孔が形成された第2のブーツ部であって、前記第2の開口領域の一方端の、前記第2の貫通孔の長手方向に垂直な断面の面積が、前記第2の開口領域の他方端の、該長手方向に垂直な断面の面積よりも大きい第2のブーツ部とを備え、前記第1および第2の貫通孔の、長手方向に垂直な断面の形状は円状であり、前記第1の開口領域の壁面は、前記第1の開口領域の一方端から他方端に向って湾曲した形状であって、前記第1の開口領域を前記第1の貫通孔の中心線に沿って切断した断面における、該第1の開口領域の壁面に相当する曲線が、所定の曲率半径で中心角45°の扇形の円弧と一致するような形状であり、前記第2の開口領域の壁面は、前記第2の開口領域の一方端から他方端に向って湾曲した形状であって、前記第2の開口領域を前記第2の貫通孔の中心線に沿って切断した断面における、該第2の開口領域の壁面に相当する曲線が、前記所定の曲率半径で中心角45°の扇形の円弧と一致するような形状であり、前記第1の貫通孔の一方端は、前記第1の開口領域の一方端であり、前記第2の貫通孔の一方端は、前記第2の開口領域の一方端であり、前記第1のブーツ部および第2のブーツ部は、前記第1の貫通孔の一方端と、前記第2の貫通孔の一方端とが対向するように、所定の距離だけ離間して配置されていることを特徴とする。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記所定の距離は、前記光ファイバの、前記第1のブーツ部および第2のブーツ部を通過する部分が屈曲領域となるように、該光ファイバを90°曲げる際に、前記第1のブーツ部と前記第2のブーツ部とが接する領域を介して、前記第1の開口領域の壁面と前記第2の開口領域の壁面とが連続的に繋がるような距離であって、該壁面が連続的に繋がった第1の開口領域および第2の開口領域とを前記第1の貫通孔および第2の貫通孔の中心線に沿って切断した断面における、前記連続的に繋がった壁面に相当する曲線が、前記所定の曲率半径で中心角90°の扇形の円弧と一致するような距離であることを特徴とする。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記光ファイバは、第1のコアおよび第2のコアを備える光ファイバであり、前記光ファイバは、前記光ファイバの軸中心に配置された、第1の屈折率を有する第1の材料と、前記第1の材料の外周に配置された、前記第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率を有する第2の材料と、前記第2の材料の外周に配置された、前記第2の屈折率よりも小さい第3の屈折率を有する第3の材料とを備え、前記第1の材料が前記第1のコアであり、前記第1の材料と前記第2の材料とが前記第2のコアであり、前記第2の材料が前記第1のコアに対する第1のクラッドであり、前記第3の材料が前記第2のコアに対する第2のクラッドであり、前記光ファイバは、第1の波長帯の光信号を用いて前記第1のコアのみ選択的に励振した際に、伝搬モードが規定モードのみとなるシングルモード特性を有し、且つ該規定モードのモードフィールド径は、前記第1の波長帯でシングルモード伝送可能なシングルモード光ファイバのモードフィールド径と等しく、前記第2のコアの直径は、第2の波長帯の光信号の伝送路として用いられるグレーデッドインデックス型マルチモードファイバ、あるいはステップインデックス型マルチモードファイバのコア直径と等しいことを特徴とする。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記所定の曲率半径は、10mm以上、20mm未満であることを特徴とする。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記第1のブーツ部および第2のブーツ部の少なくとも一方は、ブーツ部の一方端から他方端に向って形成されたスリットであって、該ブーツ部が有する貫通孔まで深さが達するスリットを有することを特徴とする。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記第1のブーツ部と第2のブーツ部との間に設けられた蛇腹部材をさらに備えることを特徴とする。
【0026】
請求項7に記載の発明は、ブーツであって、コーン状の第1の開口領域を少なくとも含む第1の貫通孔が形成された第1のブーツ部であって、前記第1の開口領域の一方端の、前記第1の貫通孔の長手方向に垂直な断面の面積が、前記第1の開口領域の他方端の、該長手方向に垂直な断面の面積よりも大きい第1のブーツ部と、前記第1の開口領域のコーン状と同一の形状のコーン状である第2の開口領域を少なくとも含む第2の貫通孔が形成された第2のブーツ部であって、前記第2の開口領域の一方端の、前記第2の貫通孔の長手方向に垂直な断面の面積が、前記第2の開口領域の他方端の、該長手方向に垂直な断面の面積よりも大きい第2のブーツ部とを備え、前記第1および第2の貫通孔の、長手方向に垂直な断面の形状は円状であり、前記第1の開口領域の壁面は、前記第1の開口領域の一方端から他方端に向って湾曲した形状であって、前記第1の開口領域を前記第1の貫通孔の中心線に沿って切断した断面における、該第1の開口領域の壁面に相当する曲線が、所定の曲率半径で中心角45°の扇形の円弧と一致するような形状であり、前記第2の開口領域の壁面は、前記第2の開口領域の一方端から他方端に向って湾曲した形状であって、前記第2の開口領域を前記第2の貫通孔の中心線に沿って切断した断面における、該第2の開口領域の壁面に相当する曲線が、前記所定の曲率半径で中心角45°の扇形の円弧と一致するような形状であることを特徴とする。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記第1のブーツ部および第2のブーツ部の少なくとも一方は、ブーツ部の一方端から他方端に向って形成されたスリットであって、該ブーツ部が有する貫通孔まで深さが達するスリットを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、第1のブーツ部と第2のブーツ部とを用いるので、光の伝送損失を低減しつつ、光ファイバを任意の方向に曲げることが可能な光ファイバコネクタおよびブーツを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
本実施形態は、光ファイバコネクタに用いるブーツの構造に特徴がある。該ブーツは、分離した2個の部品(第1のブーツ部と第2のブーツ部)を備え、第1のブーツ部および第2のブーツ部のそれぞれは、曲率半径Rのコーン状の開口領域を少なくとも含む貫通孔を有しており、該貫通孔中を光ファイバが貫通することになる。そして、上記開口領域の壁面は、45°扇形の壁面となっている。
【0030】
なお、光ファイバコネクタに接続するものとして、光ファイバ、光ファイバ素線、光ファイバ芯線、光ファイバコードと様々なものが挙げられるが、いずれの部材であっても、光伝送手段として光ファイバは少なくとも用いられる。従って、本明細書では、光ファイバ、光ファイバ素線、光ファイバ芯線、光ファイバコードを総じて、「光ファイバ」と呼ぶことにする。
【0031】
(第1の実施形態)
図7は、本実施形態に係る光ファイバコネクタの側面図である。図7において、本実施形態に係る光ファイバコネクタは、光ファイバ1001と、光コネクタ1002と、光コネクタ1002の接合部1006の対向する側から引き出された光ファイバ1001の一部を収納するブーツ1003とを備えている。すなわち、光ファイバ1001の一方端は、ブーツ1003によって被覆され、かつ光コネクタ1002に接続されている。
【0032】
本実施形態では、ブーツ1003の構造に特徴がある。該ブーツ1003は、分離した2個の部品である、第1のブーツ部1004および第2のブーツ部1005を備えている。第1のブーツ部1004および第2のブーツ部1005のそれぞれには光ファイバを通すための貫通孔が形成されており、それら貫通孔は、一方から他方に向って広がるような曲率半径Rのコーン状となっている。
【0033】
図7において、光コネクタ1002から引き出された光ファイバ1001を収納するように第1のブーツ部1004が配置され、該第1のブーツ部1004から所定の距離だけ離間して第2のブーツ1005が配置されている。
【0034】
図8(a)は、貫通孔に沿って切断した、第1のブーツ部1004の断面図であり、図8(b)は、第1のブーツ部1004の貫通孔が形成された一方の面からみた正面図であり、図8(c)は、上記一方の面と対向する面からみた正面図である。
【0035】
図8(a)において、第1のブーツ部1004は、該第1のブーツ部1004の中心線Aを中心とした、凹型の円錐面状をなす貫通孔1101が形成されている。よって、貫通孔1101の、該貫通孔1101の長手方向に垂直な断面の形状は円状となる。貫通孔1101の一方端は、図8(b)に示す通り円状の第1の開口部1102であり、上記一方端と対向する他方端は、図8(c)に示す通り円状の第1の開口部1102よりも面積が大きな円状の第2の開口部1103である。
【0036】
なお、本実施形態では、貫通孔1101は、その全体がコーン状の開口領域となっているが、この形状に限定されず、第1の開口部1102に、該第1の開口部の半径と同じ半径の円柱状の開口領域を接続するような形にしても良い。すなわち、本実施形態では、貫通孔が、図8(a)に示すような、その一方端から他方端に向って湾曲し、該他方端の、上記貫通孔の長手方向に垂直な断面の面積が、上記一方端の断面の面積よりも大きい開口領域(貫通孔1101に相当)を少なくとも含み、かつ上記貫通孔の一方端を、該開口領域の一方端とするような構成であればいずれの構成であっても良い。
【0037】
貫通孔1101の壁面は、第1の開口部1102から第2の開口部1103に向って湾曲している。さらに、図8(a)から分かるように、貫通孔1101の壁面は、貫通孔1101を中心線Aに沿って切断した断面における、該貫通孔1101の壁面に相当する曲線1104が、曲率半径Rで中心角45°の扇形の円弧と一致するような形状である。
【0038】
本明細書において、貫通孔1101の壁面のように、湾曲した壁面を有する開口領域であって、該開口領域の一方端から他方端に向って湾曲し、かつ上記開口領域の中心線に沿って切断した断面における壁面に相当する曲線が、曲率半径Rで中心角45°の扇形の円弧と一致するような壁面を、「45°扇形の壁面」と呼ぶことにする。
【0039】
図9(a)は、貫通孔に沿って切断した、第2のブーツ部1005の断面図であり、図9(b)は、第2のブーツ部1005の貫通孔が形成された一方の面からみた正面図であり、図9(c)は、上記一方の面と対向する面からみた正面図である。
【0040】
図9(a)において、貫通孔1201は、45°扇形の壁面を有する、貫通孔1101と同一形状であるコーン状の開口領域1202と、円柱状の開口領域1203とを含んでいる。貫通孔1201においても、該貫通孔1201の長手方向に垂直な断面の形状は円状となる。
なお、貫通孔1201は、円柱状の開口領域1203を含んでいるが、該開口領域1203を含まないようにしても良い。上述したように、本実施形態では、ブーツ部に形成された貫通孔が、コーン状の開口領域を少なくとも含んでいれば良いのである。
【0041】
貫通孔1201の一方端は、図9(b)に示す通り円状の第1の開口部1204であり、上記一方端と対向する他方端は、図9(c)に示す通り円状の第1の開口部1204よりも面積が大きな、円状の第2の開口部1205である。
【0042】
上述したようにコーン状の開口領域1202の壁面は45°扇形の壁面である。すなわち、コーン状の開口領域1202の壁面は、コーン状の開口領域1202の一方端である、コーン状の開口領域1202と円柱状の開口領域1203との接続領域から第2の開口部1205に向って湾曲している。さらに、図9(a)から分かるように、コーン状の開口領域1202の壁面は、貫通孔1201を貫通孔1201の中心線Bに沿って切断した断面における、該開口領域1202の壁面に相当する曲線1206が、曲率半径Rで中心角45°の扇形の円弧と一致するような形状である。
【0043】
このような構造の第1のブーツ部1004と第2のブーツ部1005とを、第1のブーツ部1004の第2の開口部1103と第2のブーツ部1005の第2の開口部1205とが対向するようにして、所定の距離だけ離間して配置している。このように、所定の距離だけ離間して配置することにより、第1のブーツ部1004と第2のブーツ部1005との間に空間を形成することができ、光ファイバ1001の、第1のブーツ部1004と第2のブーツ部1005を通過する部分が屈曲領域となるように、上記光ファイバ1001を曲げる際、上記空間内を第2のブーツ部1005が移動可能となる。従って、光ファイバ1001を所望に応じて曲げることができる。
【0044】
ここで、本実施形態に係る光ファイバコネクタを、対象となる装置に装着する場合の収納性を考慮すると、該光ファイバコネクタの装着後に光ファイバ1001を90°方向に曲げることが好ましい。そして、収納時に90°方向に曲げた場合における曲げ損失を低減するために、その曲率半径を一定に保つことが好ましい。
【0045】
そこで、上記所定の距離は、光ファイバ1001の、第1のブーツ部1004および第2のブーツ部1005を通過する部分が屈曲領域となるように、光ファイバ1001を90°曲げた際に、第1のブーツ部1004が有する第1の貫通孔1101の壁面と、第2のブーツ部1005が有するコーン状の開口領域1202の壁面が以下に示す形状となるような距離が好ましい。すなわち、第1のブーツ部1004と第2のブーツ部1005とが接する領域を介して、貫通孔1101の壁面とコーン状の開口領域1201の壁面とが連続的に繋がり、該壁面が連続的に繋がった貫通孔1101およびコーン状の開口領域1202とを、それらの中心線に沿って切断した断面における、上記連続的に繋がった壁面に相当する曲線が、曲率半径Rで中心角90°の扇形の円弧と一致するような距離(90°扇形の壁面を形成するための距離)とするのである。
【0046】
なお、本明細書において、上記連続的に繋がった壁面のように、コーン状の第1の開口領域(貫通孔1101)の壁面と、該コーン状と同一の形状の第2の開口領域の壁面とが連続的に繋がって形成された壁面であって、第1および第2の開口領域の中心線に沿って切断した断面における、連続的に繋がって形成された壁面に相当する曲線が、曲率半径Rで中心角90°の扇形の円弧と一致するような壁面を、「90°扇形の壁面」と呼ぶことにする。
【0047】
上記所定の距離について詳細に説明する。
図18(a)〜(c)は、上記所定の距離を説明するための図である。
図18(a)において、第1のブーツ部1004と第2のブーツ部1005とは、所定の距離d1だけ離間して配置されている。
【0048】
また、コーン状の開口領域となっている貫通孔1101、およびコーン状の開口領域1202は共に45°扇形の壁面を有しているので、
【0049】
【数1】

【0050】
となる。これは、図18(b)のように、半径Rで中心角90°の扇形において、直角二等辺三角形1801を仮想的に考えると、底辺以外の辺の長さと底辺との比は
【0051】
【数2】

【0052】
となり、上記直角二等辺三角形1801の底辺以外の辺の長さが、距離d2、d3に対応するからである。
【0053】
さて、本実施形態では、光ファイバ1001を90°曲げた際に、貫通孔1101の壁面とコーン状の開口領域1202の壁面とが連続的に繋がり、90°扇形の壁面を形成することになる。従って、所定の距離d1と距離d2と距離d3との合計が、半径Rで中心角90°の扇形の円弧の長さl1と等しくなれば良い。
【0054】
上記半径Rで中心角90°の扇形の円弧の長さl1は、図18(c)に示すように、πR/2となる。よって、所定の距離d1は、
【0055】
【数3】

【0056】
の関係を満たす距離である。すなわち、上記所定の距離が、
【0057】
【数4】

【0058】
を満たすことにより、光ファイバ1001を90°曲げた際に、第1のブーツ部1004および第2のブーツ部1005によって90°扇形の壁面を形成することができる。
【0059】
例えば、曲率半径R=10mmにおいては、円弧の長さl1=約15.71mmとなり、d2、d3=約7.07となるので、(数4)の関係より、d1=1.57mmとなる。
【0060】
このように所定の距離を設定することにより、光ファイバ1001を90°曲げた際に、該光ファイバ1001は、90度扇形の壁面に沿って配置されることになる。すなわち、光ファイバ1001の屈曲領域は、中心角90°で曲率半径Rの扇形の円弧上に配置されることになるので、上記屈曲領域のいずれにおいても、曲率半径Rを実現することができ、一定の曲率半径Rで光ファイバを曲げることができる。
【0061】
すなわち、本実施形態では、貫通孔1101およびコーン状の開口領域1202の壁面を45°扇形の壁面とし、第1のブーツ部1004と第2のブーツ部1005とを、それぞれのコーンの広がっている方を合わせるように、上述した90°扇形の壁面を形成するための距離だけ離間して配置しているので、光ファイバ1001を90°曲げると、上記2つの45°扇形の壁面から90°扇形の壁面が形成され、光ファイバ1001の屈曲領域も上記壁面の形成に合わせて、90°扇形の壁面に沿って配置される。よって、曲率半径Rを、用いる光ファイバが許容する曲率半径以上の値に設定しておけば、光ファイバを90°曲げるだけで、曲げ損失を抑えた所望の曲率半径にて光ファイバを曲げることが可能となり、かつ光ファイバの屈曲領域のいずれの領域においても所望の曲率半径で曲げることが可能となる。
【0062】
このように、貫通孔1101およびコーン状の開口領域1202の45°扇形の壁面は、光ファイバが90°曲げられた際、曲げられた光ファイバの屈曲領域が適切な曲率半径であり、かつ該適切な曲率半径を維持するように光ファイバをガイドする機能を有するので、上記曲げの際に、所望の曲率半径よりも小さくなるような光ファイバの急な屈曲領域の発生を抑えることができ、曲げ損失の発生を抑えることができる。
【0063】
また、特許文献1では、ブーツにスリットを形成することにより、光ファイバの急な曲げを抑えるようにしているが、光ファイバをスリットの配置方向にしか曲げることができない。これに対して、本実施形態では、第1のブーツ部1004および第2のブーツ部1005の双方において、対向させる部分を、コーンの広がっている方とし、かつそれぞれの貫通孔の長手方向に垂直な断面の形状を円状とし、第1のブーツ部1004と第2のブーツ部1005とを離間して配置して空間を形成しているので、任意の方向に光ファイバを曲げることが可能となる。すなわち、本実施形態によれば、特許文献1では実現できなかった、光ファイバの意図しない急な曲げを抑えつつ、所望の曲率半径にて光ファイバを任意の方向に曲げることが可能となる。
【0064】
さて、図10(a)〜(d)では、図10(a)から図10(d)に向って徐々に光ファイバ1001の角度がついていく様子を示している。図10(d)は、光ファイバ1001が90°下向きとなった図である。
【0065】
図10(b)および(c)から分かるように、光ファイバ1001を徐々に曲げていくと、光ファイバ1001の、第1のブーツ部1004および第2のブーツ部1005を通過する部分が屈曲領域となるように曲がっていく。そして、90°曲げられると、図10(d)に示す通り、第1のブーツ部1004と第2のブーツ部1005とが接する領域を介して、貫通孔1101の壁面とコーン状の開口領域1202の壁面とが連続的に繋がり、貫通孔1101の壁面とコーン状の開口領域1202の壁面とが連続的に繋がった壁面1301が形成される。該連続的に繋がって形成された壁面1301は、90°扇形の壁面となり、該壁面1301に沿って光ファイバ1001の屈曲領域1302が配置される。
【0066】
本実施形態では、貫通孔1101の壁面と、コーン状の開口領域1202の壁面とは、曲率半径Rの45°扇形の壁面となるように設計されているので、中心角90°の扇形の円弧に一致する壁面1301に配置された屈曲領域1302は、一定の曲率半径Rで曲げられることになる。よって、曲率半径Rを、光ファイバ1001に応じて、曲げ損失の発生を抑える値に設定しておけば、光ファイバ1001を90°曲げても曲率半径Rよりも小さい曲率半径で曲げられることは無いので、曲げ損失の発生を抑えることができる。
【0067】
なお、第1のブーツ部1004および第2のブーツ部1005とは、光ファイバ1001を曲げる際にブーツ自体の変形は無いので、用いる材料としては、これまでのブーツのように柔軟な材料のみならず、硬度の高いものでも使用可能であり、材料の選択が広がり、安価な材料を選択することも可能である。また、特許文献1のブーツのように複雑な切り込み(スリット)を設ける必要がなく、構造が簡単であり、この点からも安価に製造することが可能となる。
【0068】
また、第1のブーツ部1004および第2のブーツ部1005の作製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、第1のブーツ部1004や第2のブーツ部1005の形状の金型を用意し、該金型にブーツ部の材料を流し込むことによって、簡単に作製することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
本発明では、用いる光ファイバは、従来から用いられる、シングルモード用の光ファイバ、マルチモード用の光ファイバのいずれであっても良く、また、材料も特に限定されるものではなく、例えば、ガラス製光ファイバ、プラスチック製光ファイバ等、光伝送手段として用いられる光ファイバであればいずれのものを用いても良い。
【0070】
その中でも、ダブルコア光ファイバ(デュアルモード光ファイバ)を用いると、曲げに強い(曲げても伝送損失が小さい)光ファイバであるので、曲率半径Rを小さく設定することができる。従って、ブーツ1003の長さ(第1のブーツ部1004および第2のブーツ部1005のそれぞれの長さ)を短くすることができ、対象となる装置に装着した際の収納性を向上することができる。
【0071】
特に、特許文献1記載の技術は、伝送損失を低減することは可能であるが、該伝送損失を低減するために、光ファイバの屈曲部において緩やかに曲げること、すなわち、曲率半径を大きくする構成を採用している。従って、大きな曲率半径を実現するために、ブーツの長さも長くなってしまう。
【0072】
すなわち、特許文献1に記載されたSC形光コネクタのブーツ2は、伝送損失低減の観点から、全体として大きな曲率半径(シングルモードでは曲率半径20mm)を確保する必要があり、また、光コネクタ1の後端において直線を確保するために、半径20mmの90度円弧分の長さとなるようにブーツの全長が30mmと長くなっていた。このようにブーツの全長が長くなると、光ファイバコネクタを装着する装置内での収納スペースが大きくなってしまう。
【0073】
このように、特許文献1では、特許文献1の目的である「光ファイバコードと光コネクタとの接続部における光の伝送損失の低減」を実現するために、光ファイバの屈曲部において緩やかに曲げること、すなわち、曲率半径を大きくしている。よって、伝送損失を低減できるので有用であるが、近年望まれている「収納スペースのコンパクト化」を図ることは困難である。
【0074】
ただし、特許文献1において、マルチモード用の光ファイバコネクタの場合は、曲げ半径(曲率半径)を小さく設定することができるので、ブーツの長さも小さくすることができ、収納スペースを小さくすることができる。しかしながら、該マルチモード用の光ファイバコネクタをシングルモード光ファイバに適用すると、想定されている曲率半径が小さいので、光ファイバコードを曲げると、光の伝送損失が起こってしまう。よって、シングルモード用の光ファイバコネクタとマルチモード用の光ファイバコネクタの双方を用意する必要があり、コストがかさんでしまう。
【0075】
さらに、光ファイバコネクタを装着する装置に、シングルモード光ファイバおよびマルチモード光ファイバの双方を接続する場合、収納スペースはシングルモード用の光ファイバコネクタを収納できるように設計する必要があり、結局、上述のように収納スペースのコンパクト化を図ることができない。
【0076】
一方、図6(a)および(b)に示したブーツ補強部46を備えるブーツ45についても、シングルモード用とマルチモード用とで2種類のブーツを用意する必要があり、コストがかさんでしまう。
【0077】
本実施形態では、光の伝送損失を低減しつつ、光ファイバコネクタを対象となる装置に装着した際の、光ファイバコネクタの収納スペースのコンパクト化を図るために、光ファイバ1001としてダブルコア光ファイバを用いている。このようにダブルコア光ファイバを用いることによって、曲げ損失の発生を抑えた曲率半径Rをできるだけ小さくすることができ、ブーツ1003の長さを短くすることができる。
【0078】
本実施形態に係るダブルコア光ファイバにおけるシングルモード伝送用のコアは、光ファイバの最も内側にある、屈折率n1を有する第1の材料であって、長波長帯域の光信号を用いて上記コアのみ選択的に励振した際に、伝搬モードが規定モードのみとなるシングルモード特性を備え、且つ該規定モードのモードフィールド径は、上記長波長帯域でシングルモード伝送可能なシングルモード光ファイバのモードフィールド径と同じ値、または略同じ値である。すなわち、上記ダブルコア光ファイバのシングルモード伝送用のコアは、通常用いられる長波長帯シングルモード伝送用光ファイバの開口率を有しているのである。
【0079】
また、本実施形態に係るダブルコア光ファイバのマルチモード伝送用のコアは、シングルモード伝送用のコアである第1の材料と、該第1の材料を覆うように形成された、屈折率n1よりも小さな屈折率n2を有する第2の材料との組み合わせによって形成されるコアであって、そのコアの直径は、短波長帯域の光信号の伝送路として用いられるグレーデッドインデックス型マルチモードファイバ、あるいはステップインデックス型マルチモードファイバのコア直径と同じ値、または略同じ値である。すなわち、上記ダブルコア光ファイバのマルチモード伝送用のコアは、通常用いられる短波長帯マルチモード伝送用光ファイバの開口率を有しているのである。
【0080】
従って、本発明の一実施形態に係るダブルコア光ファイバを用いると、シングルモード光ファイバおよびマルチモード光ファイバ共に低ロスで接続することが可能になる。
【0081】
なお、上記第2の材料は、シングルモード伝送用のコアに対してはクラッドとして機能し、マルチモード伝送用のコアに対しては、第1の材料と共に、上記マルチモード伝送用のコアとして機能する。
【0082】
このようなマルチモード伝送用のコアを覆うように、マルチモード伝送用のコアに対するクラッドとしての第3の材料が形成されている。この第3の材料の屈折率n3は、第2の材料の屈折率n2よりも小さい。すなわち、第3の材料は、上記第1の材料および第2の材料からなるマルチモード伝送用のコアに対してクラッドとして機能するので、良好なマルチモード信号光伝送を実現できる。
【0083】
また、マルチモード伝送用のコアに含まれる第2の材料の周囲に、第2の材料よりも屈折率が小さな第3の材料を設けることによって、ダブルコア光ファイバを曲げたとしても、曲げの外周側に発生する、シングルモード信号光が導波する第1の材料よりも高い屈折率を有する領域の発生を軽減することができる。
【0084】
さらに、第2の材料よりも屈折率が小さな第3の材料を設けることによって、第2の材料から第3の材料への光の染み出しは抑制される。この染み出しの抑制効果は、第3の材料の周囲に、第3の材料の屈折率n3よりも小さな屈折率n4を有する第4の材料を設けることによって、より一層顕著になる。従って、第3の材料を覆うようにして第4の材料を形成することはより好ましい形態である。
【0085】
なお、第4の材料の屈折率を第3の材料の屈折率よりも小さくすることは好ましいが、第4の材料の屈折率を第3の材料の屈折率よりも高くしても、上記染み出しの抑制効果を大きくすることができる。
【0086】
なお、本実施形態に係るダブルコア光ファイバでは、シングルモード信号光では長波長帯域の信号光を伝搬し、マルチモード信号光では短波長帯域の信号光を伝播することが本質ではない。同一の光ファイバにて、シングルモード信号光とマルチモード信号光とを伝送可能にすることが重要であって、シングルモード信号光およびマルチモード信号光として伝搬する信号光の波長はいずれであっても良いのである。従って、シングルモード信号光を短波長帯域の信号光としても良いし、マルチモード信号光を長波長帯域の信号光としても良いのである。
【0087】
よって、シングルモード伝送用のコアは、シングルモード伝送用光ファイバの開口率を有し、マルチモード伝送用のコアは、マルチモード伝送用光ファイバの開口率を有していれば良い。
【0088】
なお、本実施形態に係るダブルコア光ファイバにおいて、第1〜第4の材料は、上述の屈折率の関係を有し、光ファイバのコアやクラッドとして機能するものであれば、例えば、ガラス系や、ポリマー、アクリル等の有機物などいずれの材料であっても良い。
【0089】
図11(a)および(b)は、本実施形態に用いるのに好適な光ファイバであるダブルコア光ファイバの説明図である。図11(a)は、当該ダブルコア光ファイバの屈折率プロファイルであり、図11(b)は、図11(a)の屈折率プロファイルを有するダブルコア光ファイバの断面構造図である。
【0090】
図11(a)において、符号112はコア111の屈折率であり、符号122は第1クラッド121の屈折率であり、符号132は第2クラッド131の屈折率であり、符号142は第3クラッド141の屈折率であり、符号152は第4クラッド151の屈折率である。図11(a)から分かるように、第1クラッド121の屈折率122はコア111の屈折率112よりも小さく、第2クラッド131の屈折率132は第1クラッド121の屈折率122よりも小さく、第3クラッド141の屈折率142は第2クラッド131の屈折率132よりも小さい。また、第4クラッド151の屈折率152は、第3クラッド141の屈折率142よりも高い。
【0091】
このような構成において、コア111がシングルモード伝送用のコアとして機能し、コア111および第1クラッド121がマルチモード伝送用のコアとして機能する。なお、当該ダブルコア光ファイバでは、シングルモード伝送用光信号波長(コア111の規定モードを励振しシングルモード伝送する光信号の波長)をC−Band帯域(1530nm〜1560nm)、あるいはL−Band帯域(1570nm〜1610nm)、またあるいは1300nm帯域のいずれでも設計可能である。また、モードフィールド径を、7.0〜10.0μmとすることができる。すなわち、上述の規定モードのモードフィールド径を7.0〜10.0μmにすることができる。
【0092】
当該ダブルコア光ファイバでは、波長850nmのマルチモード信号光においては、コア111、第1クラッド121、第2クラッド131全体にわたって電界強度分布が形成され、波長850nm帯ステップインデックス型マルチモードファイバ、あるいは波長850nm帯グレーデッドインデックス型マルチモードファイバの開口率と同等に設計されている。また、マルチモード伝送用光信号波長(コア111および第1クラッド121からなるマルチモード伝送用のコアを励振しマルチモード伝送する光信号の波長)を850nm帯域と設計している。さらに、マルチモード伝送用のコアの直径、すなわち第1クラッド121の直径を、50μm、あるいは62.5μmとすることができる。
【0093】
当該ダブルコア光ファイバでは、マルチモード伝送用のコアの直径を規定する、第1クラッド121の直径を、マルチモード伝送用の光ファイバの直径と同じ、または略同じに設定し、マルチモード伝送用の光ファイバの開口率を有するようにしているので、マルチモード伝送用の光ファイバ(例えば、LAN(Local Area Network)に導入されているような光信号波長850nmのマルチモード光ファイバ)と、低ロスで接続し、低ロスでマルチモード信号光を伝送することができる。
【0094】
さらに、当該ダブルコア光ファイバでは、マルチモード伝送用のコアに含まれるコア111が、シングルモード伝送用のコアとしても機能するので、シングルモード用の光ファイバと低ロスで接続し、低ロスでシングルモード信号光を伝送することができる。
【0095】
すなわち、同一の光ファイバで、シングルモード信号光とマルチモード信号光との双方、および片方ずつを伝送することができる。
【0096】
図12に示す形状で、当該ダブルコア光ファイバを曲げたときの屈折率プロファイルを示したのが図13である。図12において、符号21は曲率中心であり、符号22は曲率半径であり、符号23は光ファイバを曲げた場合の光ファイバの外周側であり、符号24は光ファイバを曲げた場合の光ファイバの内周側である。なお、図13において、符号175は曲率半径Rのときのコア111の屈折率の最大値である。
【0097】
このとき、第2クラッド121外周側(図13では紙面右側)の屈折率が高くなるが、第1クラッド121の屈折率122よりも第2クラッド131の屈折率132を小さくし、さらに第3クラッド141の屈折率142を屈折率132よりも小さく設定しているので、従来の光ファイバではコアの屈折率よりも屈折率が高い領域が発生する曲率半径であっても、コア111の屈折率112よりも屈折率が高い領域の発生を無くすことができる。従って、コアを伝送する光信号の伝送特性の劣化が付与されることがなく、従来の光ファイバを用いた場合に発生し得る光信号受信端における復調時でのエラー増加をもたらすことはない。すなわち、光ファイバを曲げた際に、コア111から漏れた一部のシングルモード信号光が第1クラッド121、第2クラッド131および第3クラッド141にトラップあるいは、それぞれから反射してコア111に戻ることなく、第4クラッド151まで到達し吸収させることができる。よって、光ファイバを曲げた際において安定なシングルモード伝送、さらにマルチモード伝送が同時に可能となる。
【0098】
また、曲率半径Rを小さくする(曲げをきつくする)ことにより、屈折率132や142が、最大値175よりも大きくなる領域が生じることがあるかもしれない。このように最大値175よりも大きな領域が発生したとしても、その領域は、同じ曲率半径Rにて曲げた際の従来の光ファイバに生じる上記領域よりも小さくなる。従って、光ファイバを曲げた場合の、コア111を導波していたシングルモード信号光の上記曲げによる放射モードによる、マルチモード伝送を軽減することができる。
【0099】
このように、当該ダブルコア光ファイバでは、従来の光ファイバではコアの屈折率よりも高くなる領域が生じてしまう曲率半径Rにおいて、上記領域を無くす、あるいは、上記領域が生じたとしても、その領域を従来に比べて小さくすることができるので、コアを導波していた信号光のマルチモード伝送を軽減することができる。
【0100】
また、当該ダブルコア光ファイバでは、屈折率122よりも低い屈折率132を有する第2クラッド131は、マルチモード信号光をより、マルチモード伝送用のコアに閉じ込める機能を有し、さらに、光ファイバを曲げた場合においては、コア111を導波するシングルモード信号光のマルチモード伝送を軽減する機能を有する。
【0101】
さらに、屈折率132よりも低い屈折率142を有する第3クラッド141は、さらに良好にマルチモード信号光をマルチモード伝送用のコアに閉じ込める機能を有する。すなわち、F元素添加された低屈折率の第3クラッド141により、マルチモード信号光が高分子樹脂で形成された被覆である第4クラッド151に導波されるのをより軽減する役割を果たしている。
【0102】
このように、光ファイバ1001として、ダブルコア光ファイバを用いることによって、シングルモードの屈折率プロファイルと、マルチモードの屈折率プロファイルを融合させたプロファイルを有し、シングルモード、マルチモード両方の光通信を同一の光ファイバにて実現することができる。また、ダブルコア光ファイバのマルチモード用コア部分である第1クラッド121、およびマルチモード用コア部分のクラッドである第2のクラッド131が、ダブルコア光ファイバが曲げられた時のシングルモード通信光の放射モードを抑制するので、シングルモード通信光の曲げ損失も小さくすることができる。
【0103】
さて、本実施形態で重要なことは、例えば光ファイバを90度曲げた際の曲げ損失を小さくしつつ、光コネクタ1002を所定の装置に装着した際の光ファイバコネクタの収納スペースを小さくすることであり、そのために、曲がった(例えば90度)光ファイバを所定の曲率半径で保持する役割を果たすブーツ1003の長さを短くすることが本実施形態の本質である。
【0104】
すなわち、上記収納スペースの縮小化を図るためには、光ファイバを曲げた際の曲率半径を、曲げ損失を損なわない程度に小さくする必要があるが、このような曲げ損失を抑えつつできるだけ小さい曲率半径を保持するために、ブーツの長さを短くする必要があるのである。
【0105】
光ファイバを例えば90度曲げた際の曲げ損失を抑えることは、上述したように特許文献1に開示されている方法により達成できるが、特許文献1では、曲げ損失を抑えるために、緩やかな曲がりを確保するという技術思想の下、光ファイバの急な曲がりを抑えるような構成を取っている。すなわち、曲率半径20mmで損失が発生する従来の光ファイバに対して、損失低減に求められている曲率半径20mmを維持するような構成にすることで、損失低減を図っている。よって、特許文献1の構成は、省スペース化を実現するものではない。
【0106】
これに対して、本実施形態では、シングルモード信号光とマルチモード信号光とを同一の光ファイバで伝送可能にするという思想の下、マルチモード用コア部分とマルチモード用クラッド部分の存在により、ダブルコア光ファイバの曲げをきつくしても(曲率半径を小さくしても)放射モードを抑制しており、特許文献1とは全く異なる着想の下なされたものである。
【0107】
図14は、本実施形態に係るダブルコア光ファイバについて、シングルモード信号光伝送時の曲げ(360度)による過剰損失特性を示す図である。また、図15は、上記ダブルコア光ファイバについて、マルチモード信号光伝送時の曲げ(360度)による過剰損失特性を示す図である。
図14および15に示すように、シングルモード、マルチモード共に、ダブルコア光ファイバ1001を曲率半径5mmで360度曲げても損失がほとんど発生しない。従って、シングルモード、マルチモード共に、損失を抑えた曲率半径の最小値を従来に比べて小さくすることができる。
【0108】
特に、シングルモードに対しては、従来では、損失を抑えた曲率半径の最小値は20mm程度であるが、本実施形態のように曲率半径を10mmとしても曲げ損失の発生を抑えることができる。つまり、本実施形態により、シングルモードに対する、損失を抑えた曲率半径の最小値を大幅に小さくすることができる。
【0109】
すなわち、従来のように大きな曲率半径を確保することなく、小さな曲率半径でも曲げ損失を抑えることができるので、その小さな曲率半径を保持するためのブーツ1003(第1のブーツ部1004と第2のブーツ部1005との長さの和)の長さを従来よりも小さくすることができ、装着する装置内での収納スペースを小さくすることができる。
【0110】
また、本実施形態では、シングルモード、マルチモード共に、損失を抑えた曲率半径を同程度まで小さくすることができるので、本実施形態に係る光ファイバコネクタは、省スペース化を図りつつ曲げ損失を抑えて、シングルモード、およびマルチモード両方の光通信の接続を可能とすることができる。
【0111】
また、シングルモードの曲げ損失が小さいので、ブーツ構造についてシングルモード用とマルチモード用を区別する必要が無い。すなわち、従来では、損失を抑えた曲率半径の最小値は、マルチモード用の光ファイバよりもシングルモード用の光ファイバの方が大きく、マルチモード用のブーツをシングルモード用の光コネクタに適用すると、光ファイバを曲げた際の曲率半径が、シングルモード用の光ファイバの適正値よりも小さくなってしまい、大きな曲げ損失の発生に繋がってしまうが、本実施形態により、シングルモードに対する曲げ損失を抑える曲率半径を、マルチモードに対する曲げ損失の発生を抑えた曲率半径と同程度まで小さくすることができるので、同一構造のブーツにて、シングルモード、マルチモード共に対応することができる。
【0112】
すなわち、ダブルコア光ファイバを用いることにより、同一の光ファイバにてシングルモード信号光とマルチモード信号光とを伝送可能となり、かつ曲げ損失の発生を抑えた曲率半径の最小値を、シングルモードとマルチモードとで略同一にすることができる。よって、シングルモードとマルチモードとの双方で通信したい場合、シングルモード用光ファイバとマルチモード用光ファイバとの2本の光ファイバを用意しなくても、上記ダブルコア光ファイバの1本で対応可能となり、かつ例えば、従来のマルチモードに対応した曲率半径である、曲げ損失の発生を抑えた曲率半径10mmとなるようにダブルコア光ファイバを曲げた場合でも、伝送するシングルモード信号光における曲げ損失の発生を抑えることができる。
【0113】
従って、シングルモード信号光とマルチモード信号光とを損失を抑えたまま伝送可能な状態でブーツ1003の長さを小さくすることができ、光ファイバコネクタを装着対象となる装置に装着した際の収納スペースをコンパクトにすることができる。すなわち、上述のようにブーツ1003を短く、また、曲がりやすい構造とすることが可能であり、後端の収容スペースを小さくすることが可能である。
【0114】
なお、本実施形態では、図14および15からも分かるように、曲率半径を5mmでも曲げ損失がほとんど発生しないので、ブーツ1003を構成する第1のブーツ部1004および第2のブーツ部1005として曲率半径R=5mmで保持するブーツでも良いことになるが、光ファイバはガラスで脆性材料であり、小さな曲率半径で保持した場合、破断の恐れがある。
【0115】
光ファイバは製造時に一旦伸び歪を加えスクリーニングをかけている。1%の伸び歪でスクリーニングをかけることにより曲率半径20mmで保持しても破断の恐れを解消することができる。本実施形態に係るダブルコア光ファイバ1001の場合、2%の伸び歪でスクリーニングをかけることにより曲率半径10mmで保持した場合の破断の恐れを解消している。
【0116】
しかしながら、これ以下の曲率半径で保持することの保証は難しい。そこで、ブーツ1003により保持する曲率半径を10mmとしている。曲率半径をさらに小さくするために、伸び歪をさらに大きくしてスクリーニングをかけることにより、より小さい曲率半径での保持を保証できるが、スクリーニング中の破断が多くなり、歩留まりが低下する。これに対して、曲率半径10mmを保持する構造は、曲げ損失に対しては余裕があり、現状の光ファイバの強度を考慮して最小の曲率半径を保持する構造となっている。
【0117】
すなわち、本実施形態において、曲げ損失の発生を抑える観点からすると、90度方向に曲げた際の曲率半径の最小値は5mmであるが、製造の観点からすると、該最小値は10mmであることが好ましい。すなわち、90度方向に曲げた際の曲率半径を10mm以上となるように設定することが好ましい。
【0118】
このように、曲率半径=10mmと設定することにより、光の伝送損失を抑えつつ、従来の光ファイバコネクタよりも小さい曲率半径で曲げることが可能となり、全長が短く、占有スペースが小さい光ファイバコネクタを実現することができる。
【0119】
また90度方向に曲げた際の曲率半径を10mm以上、20mm未満となるように設定することで、従来よりもブーツの長さを短くできる。よって、省スペース化の観点からすると、90度方向に曲げた際の曲率半径を10mm以上、20mm未満に設定することはさらに好ましい。
【0120】
すなわち、従来よりも収納スペースの小型化および光ファイバの破断の影響を考慮すると、上記90度方向に曲げた差異の曲率半径を10mm以上、20mm未満にすることが好ましく、該曲率半径が小さい方が収納スペースを小さくすることができるので、上記曲率半径を10mmとすることがより好ましい。
【0121】
(第3の実施形態)
図16に示すように、ブーツ部にスリットを設けておくことにより、光ファイバの側面から取り付けることも可能である。図16は、本実施形態に係る、着脱を容易にするためのスリットが形成されたブーツ部の貫通孔が形成された一方の面からみた正面図である。
【0122】
図16において、符号1601は、第1の実施形態にて説明した、少なくともコーン状の開口領域を含む貫通孔1602が形成されたブーツ部である。該ブーツ部1602の側面には、ブーツ部1602の一方端から他方端に向って、貫通孔1602まで深さが達しているスリット1603が形成されている。該スリット1603により、光ファイバへの着脱を容易にすることができる。
【0123】
すなわち、従来の光ファイバコネクタでは、ブーツはアセンブリ前に光ファイバに通しておく必要があるが、本実施形態では、スリット1603により、アセンブリ作業に不必要な部品となるブーツ部を、後で取り付けることが可能となり、作業性が向上する利点がある。このようなスリット1603は、第1のブーツ部1004および第2のブーツ部1005の少なくとも一方に形成することができる。
【0124】
なお、ブーツ部を弾性変形する材料で作製する場合、貫通孔1602の最も内径が小さい部分の内径を、装着対象の光ファイバの直径よりも若干小さくしておくことにより、ブーツ部の弾性変形で光ファイバにブーツ部を固定することができる。
【0125】
また、上述した各実施形態において、光ファイバ1001を90°曲げた際に、第1のブーツ部1004と第2のブーツ部1005との間が開く領域(露出領域)が生じるが、特に接続特性には問題が生じない。ただし、光ファイバを曲げる方向が一意に決まっている場合、図17に示すように、蛇腹状の覆い(蛇腹部材)1701を、第1のブーツ部1004と第2のブーツ部1005との間において、光ファイバを曲げたい方向と反対側の領域に設けるようにしても良い。このように蛇腹状の覆い1701を設けることにより、上記露出領域を覆い隠すことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】従来のSC形光ファイバコネクタの側面図である。
【図2】従来の、光ファイバへの荷重によって曲がったブーツを示す断面図である。
【図3】従来の、光ファイバへの荷重によって曲がったブーツを示す断面図である。
【図4】従来のLC形光ファイバコネクタの側面図である。
【図5】図4に示したLC形光ファイバコネクタを屈曲させた様子を示す図である。
【図6】(a)および(b)は、従来のLC形光ファイバコネクタの側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る光ファイバコネクタの側面図である。
【図8】(a)は、本発明の一実施形態に係る、貫通孔に沿って切断した、第1のブーツ部の断面図であり、(b)は、上記第1のブーツ部の貫通孔が形成された一方の面からみた正面図であり、(c)は、上記一方の面と対向する面からみた正面図である。
【図9】(a)は、本発明の一実施形態に係る、貫通孔に沿って切断した、第2のブーツ部の断面図であり、(b)は、上記第2のブーツ部の貫通孔が形成された一方の面からみた正面図であり、(c)は、上記一方の面と対向する面からみた正面図である。
【図10】(a)〜(d)は、本発明の一実施形態に係る光ファイバを90°方向に曲げた際のブーツの様子を示す図である。
【図11】(a)は、本発明の一実施形態に係るダブルコア光ファイバの屈折率プロファイルであり、(b)は、(a)の屈折率プロファイルを有するダブルコア光ファイバの断面構造図である。
【図12】曲率半径Rである一点を中心に光ファイバを曲げる場合の説明図である。
【図13】本発明の一実施形態に用いるのに好適なダブルコア光ファイバを曲率半径Rで曲げた際に変化した屈折率プロファイルである。
【図14】本発明の一実施形態に係るダブルコア光ファイバについて、シングルモード信号光伝送時の曲げ(360度)による過剰損失特性を示す図である。
【図15】本発明の一実施形態に係るダブルコア光ファイバについて、マルチモード信号光伝送時の曲げ(360度)による過剰損失特性を示す図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る、着脱を容易にするためのスリットが形成されたブーツ部の貫通孔が形成された一方の面からみた正面図である。
【図17】本発明の一実施形態に係る、蛇腹部材を設けた光ファイバコネクタを示す図である。
【図18】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る第1のブーツ部と第2のブーツ部との間の距離(所定の距離)を説明するための図である。
【符号の説明】
【0127】
1001 光ファイバ
1002 光コネクタ
1003 ブーツ
1004 第1のブーツ部
1005 第2のブーツ部
1006 接合部
1101、1201 貫通孔
1102、1204 第1の開口部
1103、1205 第2の開口部
1104、1606 曲線
1202 コーン状の開口領域
1203 円柱状の開口領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを収納するためのブーツを備える光ファイバコネクタであって、
前記ブーツは、
コーン状の第1の開口領域を少なくとも含む第1の貫通孔が形成された第1のブーツ部であって、前記第1の開口領域の一方端の、前記第1の貫通孔の長手方向に垂直な断面の面積が、前記第1の開口領域の他方端の、該長手方向に垂直な断面の面積よりも大きい第1のブーツ部と、
前記第1の開口領域のコーン状と同一の形状のコーン状である第2の開口領域を少なくとも含む第2の貫通孔が形成された第2のブーツ部であって、前記第2の開口領域の一方端の、前記第2の貫通孔の長手方向に垂直な断面の面積が、前記第2の開口領域の他方端の、該長手方向に垂直な断面の面積よりも大きい第2のブーツ部とを備え、
前記第1および第2の貫通孔の、長手方向に垂直な断面の形状は円状であり、
前記第1の開口領域の壁面は、前記第1の開口領域の一方端から他方端に向って湾曲した形状であって、前記第1の開口領域を前記第1の貫通孔の中心線に沿って切断した断面における、該第1の開口領域の壁面に相当する曲線が、所定の曲率半径で中心角45°の扇形の円弧と一致するような形状であり、
前記第2の開口領域の壁面は、前記第2の開口領域の一方端から他方端に向って湾曲した形状であって、前記第2の開口領域を前記第2の貫通孔の中心線に沿って切断した断面における、該第2の開口領域の壁面に相当する曲線が、前記所定の曲率半径で中心角45°の扇形の円弧と一致するような形状であり、
前記第1の貫通孔の一方端は、前記第1の開口領域の一方端であり、
前記第2の貫通孔の一方端は、前記第2の開口領域の一方端であり、
前記第1のブーツ部および第2のブーツ部は、前記第1の貫通孔の一方端と、前記第2の貫通孔の一方端とが対向するように、所定の距離だけ離間して配置されていることを特徴とする光ファイバコネクタ。
【請求項2】
前記所定の距離は、
前記光ファイバの、前記第1のブーツ部および第2のブーツ部を通過する部分が屈曲領域となるように、該光ファイバを90°曲げる際に、前記第1のブーツ部と前記第2のブーツ部とが接する領域を介して、前記第1の開口領域の壁面と前記第2の開口領域の壁面とが連続的に繋がるような距離であって、該壁面が連続的に繋がった第1の開口領域および第2の開口領域とを前記第1の貫通孔および第2の貫通孔の中心線に沿って切断した断面における、前記連続的に繋がった壁面に相当する曲線が、前記所定の曲率半径で中心角90°の扇形の円弧と一致するような距離であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバコネクタ。
【請求項3】
前記光ファイバは、第1のコアおよび第2のコアを備える光ファイバであり、
前記光ファイバは、
前記光ファイバの軸中心に配置された、第1の屈折率を有する第1の材料と、
前記第1の材料の外周に配置された、前記第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率を有する第2の材料と、
前記第2の材料の外周に配置された、前記第2の屈折率よりも小さい第3の屈折率を有する第3の材料とを備え、
前記第1の材料が前記第1のコアであり、
前記第1の材料と前記第2の材料とが前記第2のコアであり、
前記第2の材料が前記第1のコアに対する第1のクラッドであり、
前記第3の材料が前記第2のコアに対する第2のクラッドであり、
前記光ファイバは、第1の波長帯の光信号を用いて前記第1のコアのみ選択的に励振した際に、伝搬モードが規定モードのみとなるシングルモード特性を有し、且つ該規定モードのモードフィールド径は、前記第1の波長帯でシングルモード伝送可能なシングルモード光ファイバのモードフィールド径と等しく、
前記第2のコアの直径は、第2の波長帯の光信号の伝送路として用いられるグレーデッドインデックス型マルチモードファイバ、あるいはステップインデックス型マルチモードファイバのコア直径と等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバコネクタ。
【請求項4】
前記所定の曲率半径は、10mm以上、20mm未満であることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバコネクタ。
【請求項5】
前記第1のブーツ部および第2のブーツ部の少なくとも一方は、ブーツ部の一方端から他方端に向って形成されたスリットであって、該ブーツ部が有する貫通孔まで深さが達するスリットを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバコネクタ。
【請求項6】
前記第1のブーツ部と第2のブーツ部との間に設けられた蛇腹部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光ファイバコネクタ。
【請求項7】
コーン状の第1の開口領域を少なくとも含む第1の貫通孔が形成された第1のブーツ部であって、前記第1の開口領域の一方端の、前記第1の貫通孔の長手方向に垂直な断面の面積が、前記第1の開口領域の他方端の、該長手方向に垂直な断面の面積よりも大きい第1のブーツ部と、
前記第1の開口領域のコーン状と同一の形状のコーン状である第2の開口領域を少なくとも含む第2の貫通孔が形成された第2のブーツ部であって、前記第2の開口領域の一方端の、前記第2の貫通孔の長手方向に垂直な断面の面積が、前記第2の開口領域の他方端の、該長手方向に垂直な断面の面積よりも大きい第2のブーツ部とを備え、
前記第1および第2の貫通孔の、長手方向に垂直な断面の形状は円状であり、
前記第1の開口領域の壁面は、前記第1の開口領域の一方端から他方端に向って湾曲した形状であって、前記第1の開口領域を前記第1の貫通孔の中心線に沿って切断した断面における、該第1の開口領域の壁面に相当する曲線が、所定の曲率半径で中心角45°の扇形の円弧と一致するような形状であり、
前記第2の開口領域の壁面は、前記第2の開口領域の一方端から他方端に向って湾曲した形状であって、前記第2の開口領域を前記第2の貫通孔の中心線に沿って切断した断面における、該第2の開口領域の壁面に相当する曲線が、前記所定の曲率半径で中心角45°の扇形の円弧と一致するような形状であることを特徴とするブーツ。
【請求項8】
前記第1のブーツ部および第2のブーツ部の少なくとも一方は、ブーツ部の一方端から他方端に向って形成されたスリットであって、該ブーツ部が有する貫通孔まで深さが達するスリットを有することを特徴とする請求項7に記載のブーツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−157261(P2009−157261A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337893(P2007−337893)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】