説明

光ファイバ型光機能素子カートリッジモジュール

【課題】 良好な光結合を達成でき,光ファイバ型のモジュール又は導波路型のモジュールを有するカートリッジ型光機能モジュールを提供する。
【解決手段】 本発明は,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3と,光ファイバ型のモジュール又は導波路型のモジュールを有する光機能オブジェクト5と,ベース部7とを有する,カートリッジ型光機能モジュール10に関する。そして,光機能オブジェクト5は,第3のコリメータ13と,第3のコリメータ13の光機能オブジェクト5内の位置を調整するための第1の位置調整機構17と,を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバ型光機能素子カートリッジモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第3933967号(特許文献1)には,光機能素子カートリッジモジュールが開示されている。この文献に開示されたカートリッジ型光機能モジュールは,バルク型の光機能素子を対象としたものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3933967号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方,バルク型の光学素子以外の光学素子を用いたモジュールに関するニーズがある。しかしながら,特許第3933967号(特許文献1)に開示されたモジュールのカートリッジに光ファイバ型のモジュール又は導波路型のモジュールを搭載しようとすると,モジュールの両端にある光ファイバコリメータとの間で良好な光結合を得ることができないという問題があった。
【0005】
更に従来の光機能素子カートリッジモジュールでは,光増幅ができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は,基本的には,カートリッジにコリメータを搭載し,コリメータの位置調整機構を設けることで,モジュールの両端にある光ファイバコリメータとの間で良好な光結合を得ることができるという知見に基づく。
【0007】
さらに,本発明は,モジュールの両端にある光ファイバコリメータとの間で良好な光結合を得ることができるため,EDFAを含む光ファイバ型のモジュール,又は導波路型のモジュールをカートリッジに搭載できるという知見に基づく。
【0008】
本発明のカートリッジ型光機能モジュール10は,対向して配置された第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3と,光機能オブジェクト5と,光機能オブジェクト5を脱着可能に載置するベース部7とを有する。第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3はベース部7に連結されている。そして,光機能オブジェクト5は,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3の間で光結合が可能なように配置される少なくとも1つの光機能を有する光学素子4を載置したカートリッジである。
【0009】
このモジュールにおいて,光学素子4は,光ファイバ型のモジュール又は導波路型のモジュールである。そして,光機能オブジェクト5は,第3のコリメータ13と,第3のコリメータ13の光機能オブジェクト5内の位置を調整するための第1の位置調整機構17とを有する。
【0010】
そして,このモジュールにおいて,好ましい第1の位置調整機構17は,第3のコリメータ13の縦方向及び横方向の位置を調整するための機構である。
【0011】
そして,このモジュールにおいて,好ましい光学素子4は,光ファイバ型増幅器である。
【0012】
そして,このモジュールにおいて,好ましい光学素子4は,光遅延回路である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は,各カートリッジにも光ファイバコリメータを搭載し,しかも各カートリッジに光ファイバコリメータの調整機構を設けることで,モジュールの両端にある光ファイバコリメータとの間で良好な光結合を得ることができる。これにより,本発明は,光ファイバ型のモジュール,又は導波路型のモジュールをカートリッジに搭載できる。
【0014】
さらに,本発明は,光ファイバ型のモジュールとしてEDFAモジュールを用いることで,光増幅を行うことができる光ファイバ型光機能素子カートリッジモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は,本発明のカートリッジ型光機能モジュールの構成を説明するための概念図である。
【図2】図2は,本発明の光機能オブジェクトの外観例を説明するための図である。
【図3】図3は,本発明の位置調整機構を説明するための図である。
【図4】図4は,本発明の光機能オブジェクトの例を説明するための図である。
【図5】図5は,本発明のベース部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は,少なくとも両端に位置するカートリッジがコリメータを有する。そして,本発明は,たとえば,コリメータの位置を微調整することができるように,カートリッジの形状を工夫した。カートリッジ中央にコリメータ挿入部を設け,その上方及び横方向の穴に調整機構を設けた。すると,モジュールを実際にセットアップする際に,複数のカートリッジを基体に装着した後,各カートリッジの光結合や光ファイバコリメータとの光結合を最適化するように,コリメータの位置を調整することができる。調整機構の例は,手動で移動することができるねじや,電気的な指令により位置を移動できるアクチュエータである。この調整機構により,コリメータの位置を最適化でき,これにより光ファイバ型や導波路型の光学素子を用いても,最適な光学結合を達成できる。
【0017】
以下,図面を用いて本発明のモジュールを具体的に説明する。図1は,本発明のカートリッジ型光機能モジュールの構成を説明するための概念図である。図1に示されるように,本発明のカートリッジ型光機能モジュール10は,対向して配置された第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3と,光機能オブジェクト5と,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3を連結するとともに光機能オブジェクト5を脱着可能に載置するベース部7とを有する。そして,光機能オブジェクト5は,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3の間で光結合が可能なように配置される少なくとも1つの光機能を有する光学素子4を載置したカートリッジである。図1に示される例では,カートリッジとしての光機能オブジェクト5を3つ含む。
【0018】
カートリッジ型光機能モジュールは,基本的には,特許文献1に開示されたカートリッジ型光機能モジュールと同様の機能を有する。すなわち,ベース部7に第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3が所定間隔で設けられている。そして,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3の間に,所定数の光機能オブジェクト5をカートリッジとして設置し,ベース部7に固定することができる。各カートリッジの光学素子と,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3とは光学的に結合される。そのため,カートリッジ型光機能モジュール10は,カートリッジを交換することで,様々な光学的機能を有するモジュールとして使用することができるものである。
【0019】
第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3は,それぞれ光ファイバ部とコリメータ部とを有する。そして,コリメータ部と光ファイバ部とは光を伝達できるように接続されている。第1の光ファイバコリメータ2のコリメータ部と,第2の光ファイバコリメータ3のコリメータ部とは,ベース部7の上部の空間を隔てて対向する。この空間には,所定の数のカートリッジを挿入できる。
【0020】
第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3は,コリメータ部の位置を調整するための第2の位置調整機構を有するものが好ましい。そのような位置調整機構の例は,コリメータ部を上下又は左右に移動できる機構である。位置調整機構の例は,後述するコリメータ調整機構のように,コリメータの上部又は下部からねじやアクチュエータでコリメータを押してコリメータの縦方向の位置を調整できるものである。さらに,位置調整機構の例は,後述するコリメータ調整機構のように,コリメータの右部又は左部からねじやアクチュエータでコリメータを押してコリメータの横方向の位置を調整できるものである。
【0021】
図2は,本発明の光機能オブジェクトの外観例を説明するための図である。光機能オブジェクト5は,光学素子4を載置したカートリッジタイプの物である。光学素子4は,後述する第3のコリメータ13により,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3の間で光結合が可能なように配置される。光機能オブジェクト5は,1つでもよいし,2個又は3個以上であってもよい。光機能オブジェクト5が1つの場合は,2つのコリメータと,光学素子とを有すればよい。そして,2つのコリメータは光学素子と光学的に接続されるとともに,それぞれ第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3の間で光結合することができる。本発明のモジュール10が,複数の光機能オブジェクト5を搭載できる場合,それらの光機能オブジェクト5が同じ機能を有するものであってもよいし,異なる機能を有するものであってもよい。本発明のモジュール10が,複数の光機能オブジェクト5を搭載できる場合,すべての光機能オブジェクトが,光ファイバ型のモジュール又は導波路型のモジュールを有する必要がない。たとえば,1つ又は2つ以上の光機能オブジェクトが,光ファイバ型のモジュール又は導波路型のモジュールであれば,残りの光機能オブジェクトはダミーであってもよいし,バルク型の光学素子を有するものであってもよい。この場合,カセットを分割し,末端のカセットに第3のコリメータ13を搭載させ,そのカセットに隣接するカセットには光学素子4を搭載してもよい。一つのカセットが,第3のコリメータ13と光学素子4とを搭載していてもよい。
【0022】
1つのカセットが2つの第3のコリメータ13を有する場合,第3のコリメータ13は,光機能オブジェクト5の光の出入り口にそれぞれ設けられる。したがって,通常,2つの第3のコリメータ13は,それぞれカートリッジの表面及び裏面に設けられる。そして,2つの第3のコリメータ13は,光学素子と光学的に接続されている。第3のコリメータ13は,好ましくは,カートリッジがベース部7に装着された際に,第1及び第2の光ファイバコリメータのコリメータ部の位置に対応する位置に設けられる。第3のコリメータ13は,光ファイバ部とコリメータ部とを有する光ファイバコリメータであってもよい。
【0023】
光学素子4は,第3のコリメータ13又は隣接するカセットの光学素子との間で光の伝達を行うことができるように設定されている。本発明において,光学素子4は,光ファイバ型のモジュール又は導波路型のモジュールである。光ファイバ型のモジュールの例は,光ファイバ型増幅器(例えば,EDFAモジュール)である。EDFA(エルビウムドープファイバ増幅器)モジュールは,EDFAファイバを有し,光増幅作用を有するモジュールである。光ファイバ型のモジュールの別の例は,光ファイバを有する光遅延回路である。この光遅延回路は,カートリッジ内に光ファイバによる回路が設けられている。そいて,この光遅延回路は,光ファイバを光が伝搬する時間分,光遅延が生ずる。導波路型のモジュールの例は,SOA(半導体光増幅器)である。
【0024】
第3のコリメータ13は,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3に隣接する部位にのみ設けられてもよいし,それぞれのカートリッジに設けられてもよい。
【0025】
図2に示されるように,光機能オブジェクト5は,その上方中心に光路を形成する穴を有するとともに,その上面及び側面に光路へ向けた穴を有する物が好ましい。そして,光機能オブジェクト5は,コリメータ及び光学素子のいずれか又は両方を収容する。そして,上面及び側面から光路へ向けた穴に位置調整機構17を設ける。
【0026】
図3は,本発明の位置調整機構を説明するための図である。図13に示される例は,位置調整機構17がねじである。第3のコリメータ13の縦方向の位置を,上部のネジ17を用いて調整できる。また,第3のコリメータ13の横方向の位置を,側面のネジ17を用いて調整できる。
【0027】
ベース部7は,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3を連結するとともに光機能オブジェクト5を脱着可能に載置するための基体である。通常,ベース部7の両端に,それぞれ第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3を設置することで,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3がベース部7に連結される。
【0028】
光機能オブジェクト5は,図1に示されるように,第3のコリメータと光学素子を1つ含むものであってもよい。また,光機能オブジェクト5は,第3のコリメータを有するものと,光学素子を有するものが存在してもよい。図4は,本発明の光機能オブジェクトの例を説明するための図である。図4に示されるように,本発明の光機能オブジェクト5は,ひとつのカートリッジに2つのコリメータ13及びそれぞれのコリメータの位置調整機構17が存在してもよい。図4の例では,光学素子が光ファイバ型(例えば,EDFAファイバ又は遅延回路)である。
【0029】
ベース部7は,たとえば,特許文献1の図8及び図9に開示されたものを適宜用いることができる。図5は,本発明のベース部を説明するための図である。図5に示されるように,ベース部7のうち,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3の間の空間には,所定の数のカートリッジ5を設置できる。すると,カートリッジ5に含まれる光学素子と,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3とは良好な光結合を得ることができるように,カートリッジ内のコリメータの位置を調整できるようにされている。
【0030】
たとえば,光機能オブジェクト5には,ベース部7に光機能オブジェクト5を固定するための取り付け部が設けられてもよい。そして,ベース部7には,取り付け部とかかり合って,光機能オブジェクト5をベース部7に固定するための係合部が設けられてもよい。
【0031】
次に,本発明のカートリッジ型光機能モジュール10の使用例について説明する。ベース部7には,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3が設置されている。そして,モジュールに必要な機能に応じて,ベース部7に挿入するカセットの種類を決める。カセットの数に余裕がある場合は,ダミーカセットを挿入してもよい。ダミーカセットは,隣接するカセットと光結合を行うものの特に光機能を有しないものである。ダミーカセットの例は光学素子として,ファイバや光学結晶を有するものである。挿入するカセットの種類を決めた場合,カセットを挿入し,ベース部7に設置する。この際,カセットの下部の窪み(凹部)が,ベース部7に存在する突起部(凸部)にはまるようにされていてもよい。
【0032】
ベース部7にカセット(光機能オブジェクト5)を設置した後,適宜第3のコリメータの位置を調整する。最も,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3の位置も調整してもよい。第3のコリメータの位置を調整する際には,調整機構を利用する。コリメータの位置を調整することで,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3と光学素子4との光結合を最適化することができる。たとえば,光学素子4の一つとして,光増幅型ファイバを用いた場合は,モジュール内で光増幅を達成できる。このようなファイバ型の光学素子を用いた場合も,第3のコリメータが存在するので,第1及び第2の光ファイバコリメータ2,3との効果的な光結合を達成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は,光通信機器の技術分野にて利用され得る。
【符号の説明】
【0034】
2 第1の光ファイバコリメータ
3 第2の光ファイバコリメータ
4 光学素子
5 光機能オブジェクト
7 ベース部
10 カートリッジ型光機能モジュール
13 第3のコリメータ
17 第1の位置調整機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された第1及び第2の光ファイバコリメータ(2,3)と,
前記第1及び第2の光ファイバコリメータ(2,3)の間で光結合が可能なように配置される少なくとも1つの光機能を有する光学素子(4)を載置した光機能オブジェクト(5)と,
前記第1及び第2の光ファイバコリメータ(2,3)を連結するとともに前記光機能オブジェクト(5)を脱着可能に載置するベース部(7)と,
を有する,カートリッジ型光機能モジュール(10)であって,
前記光学素子が,
光ファイバ型のモジュール又は導波路型のモジュールであり,
前記光機能オブジェクト(5)は,
第3のコリメータ(13)と,
前記第3のコリメータ(13)の前記光機能オブジェクト(5)内の位置を調整するための第1の位置調整機構(17)と,を有する,
ことを特徴とする,
カートリッジ型光機能モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のカートリッジ型光機能モジュールであって,
前記第1の位置調整機構(17)は,
前記第3のコリメータ(13)の縦方向及び横方向の位置を調整するための機構である,
カートリッジ型光機能モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のカートリッジ型光機能モジュールであって,
前記光学素子(4)は,光ファイバ型増幅器である,
カートリッジ型光機能モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載のカートリッジ型光機能モジュールであって,
前記光学素子(4)は,光遅延回路である,
カートリッジ型光機能モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−57880(P2013−57880A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197263(P2011−197263)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【出願人】(501392361)株式会社 オプトクエスト (24)
【Fターム(参考)】