説明

光ファイバ接続部品と光ファイバの接続構造

【課題】光ファイバ間の接続が容易にできる光ファイバ接続部品及び光ファイバの接続構造を提供する。
【解決手段】一端から他端に貫通する貫通孔32と、外周壁に設けられ貫通孔32に通じる開口部31とを有する筒形状のスリーブ3と、一端から貫通孔に挿入された第1フェルール1と、他端から貫通孔に挿入された第2フェルール2とを、備え、第1フェルール1の先端面10と第2フェルール2の先端面20が離れて対向して貫通孔32内に空洞6が形成され、かつその空洞6は開口部31により外部に通じている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ間を接続する光ファイバ接続部品及び光ファイバの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信網の敷設が進んでおり、屋外で光ファイバを接続する必要性が増大している。通常、光ファイバケーブル同士を接続するには、光ファイバの先端部(例えば光ファイバケーブル先端の樹脂被覆を除去することにより露出した裸光ファイバ)をフェルール等の接続部品に挿通して接着剤を用いて固定し、光ファイバの先端をフェルール先端とともに鏡面研磨した後に光コネクタに組み込んでいる。このようにして、光コネクタ内で、フェルールの鏡面研磨された先端同士をコネクタに設けられたバネにより当接させることにより、鏡面研磨された光ファイバ同士を当接させて接続する。
【特許文献1】特開平10−206688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の接続方法では、フェルール先端を研磨する必要があることから、工場以外での接続現場にて接続作業を行う際には、接続現場に研磨機を持ち込む必要がある上、フェルール先端を鏡面研磨するのに時間を要し、光ファイバ接続工事の費用と時間を増加させてしまうという問題点があった。
【0004】
そこで、本発明は、光ファイバ間の接続が容易にできる光ファイバ接続部品及び光ファイバの接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の目的を達成するために、本発明に係る光ファイバ接続部品は、一端から他端に貫通する貫通孔と、外周壁に設けられ前記貫通孔に通じる開口部とを有する筒形状のスリーブと、前記一端から前記貫通孔に挿入された第1フェルールと、前記他端から前記貫通孔に挿入された第2フェルールとを、備え、前記第1フェルールの先端面と前記第2フェルールの先端面が離れて対向して前記貫通孔内に空洞が形成され、かつその空洞は前記開口部により外部に通じていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る光ファイバ接続部品において、前記第1フェルールおよび前記第2フェルールの少なくとも一方の先端面は、段差を有して、軸方向の位置が異なる第1の面及び第2の面とその2つの面の間にある第3の面からなっており、前記空洞の開口部側が大きくなっていることが好ましい。
【0007】
本発明に係る光ファイバ接続部品において、前記第3の面に、内孔に連続するガイド溝を有することが好ましい。
【0008】
本発明に係る光ファイバ接続部品において、一方の前記第1フェルールの内孔の径が他方の前記第2フェルールの内孔の径よりも小さくなっていてもよい。
【0009】
本発明に係る光ファイバの接続構造は、本発明に係る光ファイバ接続部品と、前記第1フェルールの内孔に挿入された第1光ファイバと、前記第2フェルールの内孔に挿入された第2光ファイバと、を備え、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとが前記空洞内で接続されたことを特徴とする。
【0010】
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとは光学接着剤により接続されていてもよい。
【0011】
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとが融着により接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成された本発明に係る光ファイバ接続部品及び光ファイバの接続構造は、前記第1フェルールの先端面と前記第2フェルールの先端面が離れて対向して前記貫通孔内に空洞が形成され、かつその空洞は前記開口部により外部通じているので、該開口部を介して前記空洞において光ファイバ間の接続が容易にできる。
したがって、本発明によれば、光ファイバ間の接続が容易にできる光ファイバ接続部品及び光ファイバの接続構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明に係る実施形態の光ファイバ接続部品について図面を参照しながら説明する。
本実施形態1の光ファイバ接続部品は、
(1)一端から他端に貫通する貫通孔32と、外周壁に設けられた貫通孔に通じる開口部31とを有する筒形状のスリーブ3と、
(2)スリーブ3の貫通孔32に一端から挿入された第1フェルール1と、
(3)スリーブ3の貫通孔32に他端から挿入された第2フェルール2と、
によって構成されている。
そして、特に、本実施形態1の光ファイバ接続部品は、第1フェルール1の先端面10と第2フェルール2の先端面が離れて対向して貫通孔32の中に空洞6を有しており、かつその空洞6は開口部31により外部空間に通じていることを特徴としている。
【0014】
以上のように構成された本実施形態1の光ファイバ接続部品を用いると、第1フェルール1の内孔14に挿入される第1光ファイバ4と第2フェルール2の内孔24に挿入される第2光ファイバ5とを空洞6内において対向させ、例えば、開口部31を用いて、第1光ファイバ4の先端面及び/又は第2光ファイバ5の先端面に光学接着剤を塗布して接合することが可能になり、極めて容易に光ファイバ同士を接合できる。さらに、この開口部31は、光ファイバの接合部位が目視可能な位置に形成されていることが好ましい。この目視可能な位置とは、外部から開口部31を目視した際に、光ファイバの接合部位を確認できる程度のことを示すものである。特に、図1に示すように、光ファイバ同士の接合部位の直上に開口部31を形成すれば、開口部31から容易に光ファイバの接合部位を目視することができるため、光ファイバの接続作業の精度を向上させることができる。
【0015】
以下、本発明に係る実施形態1の光ファイバ接続部品について詳細に説明する。
<第1及び第2フェルール>
尚、以下の説明において、特に第1と第2のフェルールを区別しないで両者に共通する事項を説明する際には、単にフェルールという。本実施形態1において、フェルールは、例えば、円筒状や直方体形状で構成され、長手方向に光ファイバを保持するための内孔(貫通孔)が形成されている。フェルールを構成する材料としては、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、ムライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素および窒化アルミニウムなどの単体もしくはこれらを主成分として含むセラミックス、結晶化ガラスなどのガラスセラミックス、燐青銅、ベリリウム銅、黄銅、ステンレスなどの金属、エポキシや液晶ポリマなどのプラスチックスなどが挙げられ、中でも対候性や靭性に優れたジルコニア系セラミックス(ジルコニアを主成分とするセラミックス)が好適である。ジルコニア系セラミックスの中でも、とりわけ、酸化ジルコニウム(ZrO)を主成分とし、Y、CaO、MgO、CeO、Dyなどからなる群より選択される少なくとも一種を安定化剤として含む部分安定化ジルコニアセラミックス(正方晶の結晶が主体)が、耐摩耗性および弾性変形性の観点からより好ましい材料として挙げられる。
【0016】
フェルールは、例えば、以下のようにして作製される。
先ず、フェルールを例えばジルコニアセラミックスから形成する場合、予め射出成形、プレス成形、押出成形等の所定の成形法によってフェルール2となる円筒状もしくは内孔を有する直方体形状の成形体を作製する。そして、その成形体を1300〜1500℃で焼成し、所定の寸法に切削加工または研磨加工を施して、所定の形状とする。なお、成形体に切削加工等によって予め所定の形状を形成しておき、その後焼成を行ってもよい。
【0017】
また、本実施形態1の光ファイバ接続部品において、第1フェルール1及び第2フェルール2の先端面10,20はそれぞれ、段差を有していて、軸方向の位置が異なる第1の面11,21と第2の面12,22とその2つの面の間にある第3の面13,23からなる好ましい形態を有している(図1及び図2参照)。ここで、軸方向とは、第1フェルール1及び第2フェルール2の軸方向を指す。すなわち、第1の面と第2の面との軸方向の位置が異なるというのは、例えば上記軸方向に延びる仮想軸を仮定した場合、該仮想軸上において、異なる座標の位置に第1フェルール1(もしくは第2フェルール2)の第1の面11(もしくは第1の面21)と第2の面12(もしくは第2の面22)が形成されていることを示す。なお、以下の説明において、単に軸方向という記載については、上述したように、第1フェルール1及び第2フェルール2の軸方向を指す。このように、第1フェルール1及び第2フェルール2の先端面を構成して、第2の面12,22が開口部31側になるように第1フェルール1及び第2フェルール2を貫通孔32に挿入すると、開口部31側の空洞6を大きくでき、光ファイバを接続する際の作業がより容易になる。ここで、開口部31側の空洞6が大きいとは、空洞自体の容積が開口部31側(第1フェルールおよび第2フェルールの第2の面で挟まれた領域)において他の部分(第1フェルールおよび第2フェルールの第1の面で挟まれた領域)に比べて大きいことを意味する。
また、光ファイバを接続した後、空洞6内に例えば低融点ガラスあるいはエポキシ系の樹脂を充填して固定する接続構造としたときには、接着面積を増やすことが出来るため、強度を上げることが可能となり、信頼性の高い接続が得られる。
【0018】
さらに、本実施形態1の光ファイバ接続部品において、第1フェルール1及び第2フェルール2の第3の面13,23にはそれぞれ、より好ましい形態として、内孔14,24に連続するガイド溝を有している。図2及び図3には、第1フェルール1における先端面10の構造を例示しており、ガイド溝には13gの符号を付して示している。なお、図2および図3の破線で示した半円部分は、第2の面12に露出する内孔の外径を示すものである。
ここで、内孔に連続するガイド溝13gとは、ガイド溝の底面(ガイド面)が内孔の内周面の一部から折れ曲がることなく連続して延びていることをいい、例えば、図3に示すように、段差が無ければ、先端まで延びていたであろう貫通孔が、第3の面13によって2分されて、ガイド溝13gとなった構造が例として挙げられる。
【0019】
このように、第1フェルール1及び/又は第2フェルール2の第3の面に内孔から連続するガイド溝を形成しておくと、光ファイバを接続する際の光軸調整が容易になり、より作業性を向上させることができる。
また、光ファイバをガイド溝の底面に接着することも可能であり、これにより、接合時の作業性をより向上させることができ、かつ信頼性の高い接続が得られる。
【0020】
フェルールの第1の面、第2の面、および第3の面で構成される切欠き部の形状としては、図3に示すように第3の面13が平面になるように構成してもよいし、図4Aに示すような曲面になるように構成してもよいし、図4Bに示すような傾斜した2つの面からなるように構成してもよい。
【0021】
また、切欠き部において、第3の面13の軸方向の長さLは、0.2mm以上5mm以下の長さとすることが好ましい。長さLが0.2mmよりも小さい場合は、作業空間内に露出する光ファイバが短くなるため、作業性が悪くなり、空洞6内に樹脂を充填する構造にする場合には、樹脂の注入が難しくなるため接着剤が十分充填されず、光ファイバを十分に密着出来なくなる場合がある。一方、長さLが5mmよりも大きい場合は、切欠き部が大きくなり過ぎ、フェルールの強度が弱くなるため、フェルール2に破損が生じる可能性が高くなる。
【0022】
尚、本実施形態1の光ファイバ接続部品では、より好ましい形態の第1フェルール1及び第2フェルール2を用いて構成した例を示しているが、本発明は、先端面に段差が形成されたフェルールに限定されるものではない。また、本実施形態1では、第1フェルール1及び第2フェルール2の両方の先端面10,20に段差を設けたが、どちらか一方の先端面に段差を設けるようにしてもよい。また、本実施形態1では、第1フェルール1と第2フェルール2の内孔径の大きさが異なっているが(第1フェルール1の内孔の径が第2フェルール2の内孔の径に比べて小さい)、同じ大きさの内孔径であってもよい。このように、第1フェルール1と第2フェルール2の内孔径が異なる形態であれば、異なる径を有する光ファイバ同士を接続することができるため、現場における作業性に優れている。
【0023】
<スリーブ>
本実施形態1において、スリーブ3は、一端から他端に貫通する貫通孔を有する筒状形状の部材であり、一端から挿入された第1フェルール1の内孔14の中心軸と、他端から挿入される第2フェルール2の内孔24の中心軸とを略一致させる機能を担う。
このスリーブ3を構成する材料としては、上述したフェルールの材質が挙げられる。
第1フェルール1及び第2フェルール2をスリーブの貫通孔32内に固定する方法としては、例えば接着による方法または圧入が挙げられるが、長期信頼性の点から圧入固定が望ましい。
【0024】
また、上述したように、スリーブ3には、第1フェルール1及び第2フェルール2を挿入した後に貫通孔32内に形成される空洞6に通じる開口部31が形成されている。この開口部は、空洞6内で光ファイバを接続する際に利用されるものであり、その作業性を考慮して適宜決定されるが、好ましくは、幅(軸方向の長さ)が1mm以上10mm以下で、かつ長さ(周方向の長さ)がスリーブの外周径の1/5以上1/2以下に設定される。幅1mm未満かつ長さがスリーブの外周径の1/5以下の場合は、光ファイバ接続状態を目視確認することが難しくなり、作業性を悪化させ、また、修理作業や、材料の注入口としても十分な機能を果たせない。また、幅10mm以上かつ長さがスリーブの外周径の1/2以上の場合には、接続部品に占める孔部の割合が大きくなり過ぎて、スリーブ3の強度が弱くなってしまう。
【0025】
スリーブ3に開口部31を設ける方法としては、例えば、射出成形、プレス成形等に使用する金型に孔部形状をあらかじめ設けておいて成型時に形成する方法、成形後又は焼成後にスリーブにNC加工機やダイシング装置等を用いて機械加工により孔部を設ける方法等が挙げられる。
【0026】
<スリーブ内へのフェルールの組み込み>
以上のように構成されたスリーブ3の貫通孔32の中に、第1フェルール1と第2フェルール2が以下のように挿入(好ましくは圧入)される。
例えば、第1フェルール1の先端面及び第2フェルール2の先端面がそれぞれ切り欠きを有する場合には、第1フェルール1はその第2の面12が貫通孔32の一端と開口部31の間に位置するように一端から貫通孔32に挿入され、第2フェルール2はその第2の面22が貫通孔32の他端と開口部31の間に位置するように他端から貫通孔32に挿入される。
この場合、第1フェルール1の第1の面11と第2フェルール2の第1の面21は離れているが、その間隔は、光ファイバ接続時のたわみや応力による変位を逃がすために、1mm以上であることが好ましい。
また、第1フェルール1の先端面及び第2フェルール2の先端面がそれぞれ切り欠きの無い平坦な面である場合には、第1フェルール及び第2フェルールはその先端面が貫通孔の端と開口部31の間に位置するようにそれぞれ挿入され、その間隔は、光ファイバ接続時のたわみや応力による変位を逃がすために、1mm以上であることが好ましい。
【0027】
以下、本発明に係る実施形態1の光ファイバ接続部品を用いた光ファイバ接続構造及び接続方法について説明する。
本実施形態1の光ファイバ接続部品を用いた光ファイバの接続構造では、第1光ファイバ4および第2光ファイバ5の一端部をそれぞれ第1フェルール1および第2フェルール2の先端面から突出させて、第1光ファイバ4と第2光ファイバ5とを接続させる。
【0028】
尚、本明細書において、第1光ファイバ4と第2光ファイバ5とを、区別しないで両者に共通する事項を説明する際には、単に光ファイバという。
また、本発明は特定の光ファイバに限定されるものではないが、例示をすれば、石英系光ファイバ、プラスチック系光ファイバおよび多成分ガラス系光ファイバなどが挙げられる。
【0029】
本発明に係る実施形態1の光ファイバ接続部品を用いて光ファイバを接続する際、第1フェルール1と第2フェルールに挿入される第1光ファイバ4と第2光ファイバ5は、光ファイバケーブル先端の樹脂被覆を除去した裸光ファイバであり、その先端は直角または斜めクリーブカットされ、空洞部のほぼ中央部で接続される。
【0030】
具体的な接続の際の作業手順は以下のようになる。
まず、接続する光ファイバの樹脂被覆をストリッパ等の工具を用いて除去し、裸光ファイバとし、それぞれの裸光ファイバである第1光ファイバ4と第2光ファイバ5をそれぞれ第1フェルール1と第2フェルール2の内孔に挿入する。
【0031】
光学接着剤によって固定する場合には、挿通された第1光ファイバ4の先端及び/又は第2光ファイバ5の先端に光学接着剤を開口部31から塗布して、第1光ファイバ4の先端面と第2光ファイバ5の先端面とを接触させる。
次に、この光学接着材が熱硬化性樹脂である場合には、ドライヤーやヒーター等の熱源を用いて硬化させ、紫外線硬化性樹脂の場合は紫外線照射装置を用いて開口部31を介して接着剤を硬化させる。光学接着剤としては、作業性を考慮すると、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
また、他の光ファイバの接続方法としては、挿通された光ファイバの先端を付き合せたのち、放電装置を用いて開口部31を介して光ファイバに放電させることで光ファイバ溶融させて融着接続をしてもよい。
【0032】
光学接着剤の種類としては、紫外線硬化エポキシ樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、紫外線および熱硬化併用のエポキシ樹脂、紫外線硬化アクリル樹脂、紫外線硬化ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等の樹脂や、低融点ガラスを使用することが好ましい。また上記の接着剤に、ガラス繊維、ガラス粉、カーボン繊維、鉱物粉等を添加してもよい
【0033】
以上のようにして、第1光ファイバ1の先端と第2光ファイバの先端を接合した後、空洞6内に、開口部31から前述の光学接着剤やはんだや銀ろうなどのろう材、低融点ガラス、エポキシやシリコンなどの充填材料を充填して、光ファイバを接着固定することが望ましい。
空洞6に充填する充填材料としては、接続点での反射光を抑えるために、光学接着剤を用いることが好ましい。このように、空洞6の内部に充填材料を充填することにより、接続部に振動や衝撃等の外力が加わった際でも、安定した接続状態を維持することが出来るため、接続部の信頼性を高めることができる。
【0034】
また、空洞6内に充填材料を充填していない場合には、第1光ファイバ1と第2光ファイバ2との接合部において断線や破損等の故障が起こった場合には、開口部31を用いて状況を確認したり、修理作業を行うことも可能であり、修理の時間を短縮することが出来る。
【0035】
第1および第2光ファイバの接続方法としては、光学接着剤による固定や融着固定の他、バネ等を用いて先端面に押圧を与える方法、光ファイバにメタライズを行って半田固定する方法を用いてもよい。
例えば、バネによる固定の場合は、あらかじめバネを取り付けた円筒状の押圧部材を光ファイバに接着、もしくは光ファイバの樹脂被覆を用いたかしめ等により固定し、光ファイバの先端面同士をつき合せる。その後、2つの中空状のケースを光ファイバ接続部品の両側から嵌め込み、光ファイバ接続部品を収納する。このケースには、それぞれ平坦部もしくは凸部による押さえ部が設けられている。この押さえ部は、押圧部材の一端面と当接するように配置にされている。すなわち、バネによる固定の場合は、ケースを嵌め込んだときに押圧部材のバネが光ファイバを互いにつき合わせる方向に作用することにより、当該つき合わせ方向における押圧力を維持し、良好な接続を可能とする。
【0036】
光ファイバにメタライズを行って半田固定する場合には、まず、光ファイバの側面にニッケル−金またはチタン−白金−金で構成されるメタライズの薄膜を形成する。薄膜の形成方法は、たとえば気相成長、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法が挙げられる。気相成長は、膜とする元素を含んだ蒸発しやすい気体を高温に加熱した光ファイバ表面に送り、分解、酸化、還元、置換などの化学反応により薄膜を形成する方法である。蒸着は、電子銃からの電子ビームが、ターゲットを加熱し、蒸発した原子が光ファイバの上について膜を形成する方法で、簡便に均一な金属膜を形成させることができるため、光ファイバへの薄膜形成方法として好適である。加熱方法としては、前述の電子銃による加熱の他、抵抗加熱による加熱方法を利用することもできる。スパッタリングは、プラズマ中のイオンがターゲットの表面にある原子をはねとばし、はねとばされた原子はターゲットの近くにおかれた光ファイバの上について膜を形成する方法で、一様な厚さの膜がつき、ターゲットの温度を上げる必要がないことが特徴で、樹脂製被覆をもつ光ファイバの薄膜形成方法として適している。イオンプレーティングは、ターゲットから蒸発させながら、スパッタにおけるターゲットを光ファイバとして膜を付ける方法であり、蒸着とスパッタの中間的な方法である。この方法では、光ファイバはスパッタのターゲットと同様にイオンによって表面がスパッタされ清浄化されるのと同時に高温になるので、付着強度が大きくなり、光ファイバには最も適した方法である。こうして得られた光ファイバのメタライズ層(薄膜)の上に、加熱により溶融させた半田を塗布し、光ファイバを付き合わせた後に冷却することで、光ファイバの側面同士を強固に固定することができる。
【0037】
第1および第2光ファイバの接続に際しては、接続点での反射光を抑えるために、例えばシリコン系オイル等の屈折率調合剤を光ファイバ端面に塗布することが望ましい。このようなシリコン系オイル等の屈折率調合剤を用いる場合は、フェルールに光ファイバを挿通する前にあらかじめ光ファイバ端面に塗布してもよく、また、光ファイバをフェルールに挿通した後に、綿棒等を用いて光ファイバ端面に塗布してもよい。なお、屈折率調合剤を用いる場合は、光学接着剤は光ファイバの側面に塗布される。一方で、屈折率調合剤と光学接着剤とを混合してなる混合物を光ファイバの塗布する方法であれば、光ファイバの端面に光学接着剤が付着しないようにすることが困難であることから、光ファイバの接続作業の効率化という観点からより好適である。
【0038】
以上、詳細に説明したように、本実施形態1の光ファイバ接続部品及び光ファイバの接続構造によれば、光ファイバ間の接続が極めて容易になる。
また、光ファイバの接続は、通常、径の異なる光ファイバ間で行われるものであるが、第1フェルール1と第2フェルール2とを間隔を開けて対向させているので、大きな径の光ファイバの端面を小さな径の光ファイバを固定するフェルールによってキズをつけてしまうことがない。したがって、本実施の形態の光ファイバ接続部品及び接続構造によれば、接続損失を悪化させることなく信頼性の高い接続が可能になる。
【0039】
すなわち、従来のフェルールを当接させる接続構造では、小径ファイバが挿通されたフェルールの先端面が大径ファイバのファイバ端面に付き当たり、大径ファイバのファイバ端面にキズをつけてしまうことがあり、かかる場合、接続損失が大きくなり、また、信頼性の高い接続ができないが、本願では係る問題はない。
【0040】
実施形態2.
図5は、本発明に係る実施形態2の光ファイバ接続部品とその接続構造を示す断面図である。
この実施形態2の光ファイバ接続部品は、第1ファイバ1の先端面10aの部分が実施形態1と異なっている以外は、実施形態1と同様に構成される。
すなわち、この実施形態2では、径の太い第2光ファイバ5の先端部分が、第3の面13aの底面で支えられるように、第1フェルールの先端面に段差が形成されている。したがって、実施形態2の第1フェルールにおいて、第3の面13aの位置は第2光ファイバ5の径を考慮して決定されており、第3の面13aの底面には第1光ファイバ4に沿うガイド溝は設けられていない。尚、第3の面13aの先端部分に第2光ファイバ5を支持するガイド溝を形成するようにしてもよく、これによってより確実に第2光ファイバ5を支持できる。
【0041】
以上のように構成された実施形態2の光ファイバ接続部品とその接続構造では、光ファイバの接続部分が第1フェルール1によって支持されるので、光軸調整が容易でかつ信頼性の高い接続が可能になる。
【0042】
以上の実施形態2では、径の異なる光ファイバを接続する際に用いる光ファイバ接続部品とその接続構造について説明したが、本実施形態2の構成は、図6に示すように、径が同一の光ファイバを接続する際に用いる光ファイバ接続部品とその接続構造にも適用できる。
また、この図6に示す光ファイバ接続部品及び接続構造では、第3の面13bに第1光ファイバ4及び第2光ファイバ5をガイドするガイド溝を設けることが好ましく、これにより、第1光ファイバ4及び第2光ファイバ5をより確実に支持できる。
【0043】
以上、本発明の具体的な実施形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る実施形態1の光ファイバ接続部品の断面図である。
【図2】実施形態1の第1フェルールの断面図である。
【図3】実施形態1の第1フェルールの端面図である。
【図4A】実施形態1の第1フェルールに係る変形例の端面図である。
【図4B】実施形態1の第1フェルールに係る他の変形例の端面図である。
【図5】本発明に係る実施形態2の光ファイバ接続部品の断面図である。
【図6】本発明に係る実施形態2の変形例の光ファイバ接続部品の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 第1フェルール、2 第2フェルール、3 スリーブ、4 第1光ファイバ、5 第2光ファイバ、6 空洞、10,20 先端面、11,21 第1の面、12,22 第2の面、13,13a,13b,23 第3の面、13g ガイド溝、14,24 内孔、32 貫通孔、31 開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端から他端に貫通する貫通孔と、外周壁に設けられた前記貫通孔に通じる開口部とを有するスリーブと、
前記一端から前記貫通孔に挿入された第1フェルールと、
前記他端から前記貫通孔に挿入された第2フェルールと、を備え
前記第1フェルールの先端面と前記第2フェルールの先端面が離れて対向して前記貫通孔内に空洞が形成され、かつその空洞は前記開口部により外部に通じていることを特徴とする光ファイバ接続部品。
【請求項2】
前記第1フェルールおよび前記第2フェルールの少なくとも一方の先端面は、段差を有して、軸方向の位置が異なる第1の面及び第2の面とその2つの面の間にある第3の面からなっており、前記空洞の開口部側が大きくなっている請求項1に記載の光ファイバ接続部品。
【請求項3】
前記第3の面に、前記第1フェルールおよび前記第2フェルールの少なくとも一方の内孔に連続するガイド溝を有する請求項2記載の光ファイバ接続部品。
【請求項4】
前記第1フェルールの内孔の径が前記第2フェルールの内孔の径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ファイバ接続部品。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の光ファイバ接続部品と、
前記第1フェルールの内孔に挿入された第1光ファイバと、
前記第2フェルールの内孔に挿入された第2光ファイバと、を備え、
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとが前記空洞内で接続されたことを特徴とする光ファイバの接続構造。
【請求項6】
請求項2に記載の光ファイバ接続部品と、
前記第1フェルールの内孔に挿入された第1光ファイバと、
前記第2フェルールの内孔に挿入された第2光ファイバと、を備え、
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとが前記空洞内の前記第3の面の上で接続されたことを特徴とする光ファイバの接続構造。
【請求項7】
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとが光学接着剤により接続された請求項5又は6に記載の光ファイバの接続構造。
【請求項8】
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとが融着により接続された請求項5又は6に記載の光ファイバの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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