説明

光ファイバ用ボビンおよびこのボビンを使用した光ファイバの製造方法

【課題】 耐熱性を有する熱硬化型樹脂を被覆した光ファイバの製造時間を短縮化することができる光ファイバ用ボビンおよびこのボビンを用いた光ファイバの製造方法を提供する。
【解決手段】 熱硬化型樹脂で被覆した光ファイバ18を製造する際に、光ファイバ母材11を加熱溶融してガラスファイバを線引きし、ガラスファイバ13の表面を熱硬化型樹脂で被覆して得られた光ファイバ18を巻取りボビン30に巻き取る。そして、巻き取った光ファイバ18を巻取りボビン30ごとまとめて追加加熱して熱硬化型樹脂に含まれている溶剤成分を除去して、被覆を硬化させるので、巻取り時に十分に加熱して被覆を硬化させる場合に比べて、製造時間の短縮を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバ用ボビンおよびこのボビンを使用した光ファイバの製造方法に係り、例えば熱硬化型樹脂で被覆した光ファイバを製造するのに好適な光ファイバ用ボビンおよびこのボビンを用いた光ファイバの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高温環境下で使用される光ファイバとして、耐熱性を有する熱硬化型樹脂被覆により保護されたものが知られている(例えば特許文献1,2参照)。
前述したような熱硬化型樹脂被覆を有する光ファイバは、プリフォームを加熱炉で加熱・溶融して所定の外径まで線引きして光ファイバを形成し、この光ファイバを熱硬化型樹脂で覆う。そして、例えば、赤外線ランプのような加熱手段で耐熱性を有する熱硬化型樹脂を加熱・硬化させて被覆し、巻取ボビンに巻き取られる。
【特許文献1】特開2005−173084号公報
【特許文献2】特開2003−329901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、耐熱性を有するポリイミド樹脂等の熱硬化型樹脂では光ファイバを被覆する際の作業性の観点から溶剤が多く含まれて軟らかくなっているため、光ファイバを被覆した後に加熱して溶剤を除去して硬化させるには、十分に加熱する必要がある。このため、例えば、巻取り速度を遅くして加熱時間を長くすることができるが、巻取り速度を遅くすると、製造に要する時間が長くなるという不都合があった。
【0004】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱硬化型樹脂で被覆した光ファイバの製造時間を短縮化することができる光ファイバ用ボビンおよび光ファイバの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した目的を達成するために、本発明に係る光ファイバ用ボビンの第1の特徴は、ガラスファイバの表面を熱硬化型樹脂で被覆した光ファイバを巻き取る巻取りボビンであって、前記巻取りボビンを構成する胴部および該胴部の両端に設けられている鍔部に通気用の開口部を有するとともに、前記胴部の半径方向の熱膨張を抑える低膨張構造を有することにある。
【0006】
このように構成された光ファイバ用ボビンにおいては、線引きされ、熱硬化型樹脂で被覆された光ファイバを巻取り、巻取りボビンごと巻き取った光ファイバを追加加熱して被覆を硬化させる。この被覆を形成する熱硬化型樹脂を追加加熱した際に溶剤成分が揮発するが、巻取りボビンの胴部および鍔部に設けられている開口部から溶剤成分を巻取りボビンの外部に放出できるので、最外層の光ファイバのみならず、巻き取られている中間層及び最下層の光ファイバの被覆も効率よく硬化させることができる。また、巻取りボビンの胴部は、追加加熱に伴うボビン自体の半径外方向の熱膨張を抑える低膨張構造となっているので、胴部の熱膨張によって、光ファイバに引張力が作用するのを抑えて、上層に巻き取られている光ファイバが下層にまかれている光ファイバに食い込むのを防止することができる。さらに、ボビン胴部が半径外方向に熱膨張して生じる引張力により、光ファイバが断線するのを防止することができる。
【0007】
また、本発明に係る光ファイバ用ボビンの第2の特徴は、上記本発明の第1の特徴において、前記低膨張構造は、前記胴部が複数本の細径の金属製棒状部材を円筒状に離間配置して形成されたことにある。
【0008】
このように構成された光ファイバ用ボビンにおいては、複数本の細径の金属製棒状部材を円筒形状に離間配置して光ファイバを巻き取る胴部を形成したので、追加加熱された際に、光ファイバから揮発した溶剤成分を胴部の離間配置した金属製棒状部材の隙間から内部に逃がすことができる。また、鍔部にも開口部を設けたので、胴部の内部に逃げた溶剤成分や、重ねて巻き取られている中間層の光ファイバから揮発した溶剤成分を、外部に放出することができる。
【0009】
また、本発明に係る光ファイバ用ボビンの第3の特徴は、上記本発明の第1または第2の特徴において、ステンレス製であることにある。
【0010】
このように構成された光ファイバ用ボビンにおいては、ステンレスを用いているので、追加加熱の温度に十分耐えることができるとともに、容易に製造することができる。また、軽量化を実現でき、しかも外観も永続的にきれいである。
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係る光ファイバの製造方法の第1の特徴は、ガラスファイバの表面を熱硬化型樹脂で被覆しながら熱硬化させた光ファイバを胴部及び鍔部に通気用の開口を有した巻取りボビンに巻き取る線引工程と、その後、前記光ファイバを前記巻取りボビンごと不活性ガス下で保持した状態で追加加熱する加熱工程とを有することにある。
【0012】
このように構成された光ファイバの製造方法においては、例えばポリイミド樹脂等の熱硬化型樹脂製の被覆を有する光ファイバを製造する際に、光ファイバ母材を加熱溶融してガラスファイバを線引きし、ガラスファイバの表面を熱硬化型樹脂製の被覆で被覆する。そして、被覆を加熱して熱硬化型樹脂を硬化させて光ファイバを巻取りボビンに巻き取る。そして、巻き取った光ファイバを巻取りボビンごとまとめて追加加熱して、熱硬化型樹脂に残留している溶剤を除去して被覆を硬化させるので、巻取り速度を遅くして巻取り時に被覆を十分に加熱・硬化させる場合に比べて、製造時間の短縮を図ることができる。なお、前記追加加熱においては、酸素が存在する雰囲気下では、熱硬化型樹脂が酸化劣化し低分子化が進む。その結果、被覆表面状態の劣化に至るため、不活性ガス雰囲気下での追加加熱は必須である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐熱性を有する熱硬化型樹脂により被覆された光ファイバを、巻き取った後に巻取りボビンごとまとめて追加加熱することにより、熱硬化型樹脂に含まれている溶剤成分を除去して被覆を硬化させることができるので、従来のように、被覆を十分に加熱して硬化させるために巻取り速度を遅くしなければならないという問題を解消でき、製造時間の短縮を図ることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(A)は本発明の光ファイバの製造方法を実施する製造装置の一例を示す構成図、図1(B)は追加加熱炉の断面図、図2は本発明に係る光ファイバ用ボビンの実施形態を示す斜視図、図3は追加加熱により揮発した溶剤の放出状態を示す断面図、図4は光ファイバ用ボビンに巻き取られた光ファイバの状態を示す断面図、図5(A)は光ファイバ用ボビンの鍔部の一例を示す側面図、図5(B)は光ファイバ用ボビンの胴部を示す正面図、図6(A)および(B)は低膨張構造の一例を示す鍔部の正面図および拡大図である。
【0015】
まず、図1(A)に基づいて、本発明に係る光ファイバの製造方法を実施するための製造装置10について説明する。この製造装置10では、光ファイバ母材(プリフォーム)11の下端部を加熱溶融して線引きするための加熱炉12が設けられており、加熱炉12の下流側には線引きされたガラスファイバ13の外径を制御する線径制御部14が設けられている。線径制御部14の下流側には、所定の外径に線引きされたガラスファイバ13に耐熱性を有する熱硬化型樹脂製の被覆をコーティングするコーティング部15が設けられている。コーティング部15は、熱硬化型樹脂でガラスファイバ13を被覆するためのダイス16と、ガラスファイバ13を覆う熱硬化型樹脂製の被覆を加熱するための例えば赤外線照射装置のような加熱硬化用ヒータ17を有している。コーティング部15の下流側には、被覆された光ファイバ18を巻き取るためのキャプスタン19および巻取りボビン30が設けられている。
【0016】
また、図1(B)には、巻取りボビン30に巻き取られた光ファイバ18を一括して追加加熱するための、追加加熱用加熱炉22が示されている。追加加熱用加熱炉22には、巻取りボビン30を収容する加熱室23と、加熱室23を追加加熱するためのヒータ24と、加熱室23の排気を行うための排気管25が設けられている。従って、追加加熱用加熱炉22は、熱硬化型樹脂で形成された光ファイバ18の被覆を追加加熱するとともに、加熱室23の排気を行うことができるようになっている。
なお、追加加熱用加熱炉22は、図1(A)に示した製造ラインの巻取りボビン30の下流側に設けることができるが、まったく別個に独立して設けることもできる。
【0017】
従って、図1に示すように、本発明の光ファイバの製造方法では、光ファイバ母材11を加熱炉12により加熱溶融してガラスファイバ13を所定の外径に線引きし、ダイス16によってガラスファイバ13の表面に熱硬化型樹脂製の被覆をコーティングして光ファイバ18を形成する。そして、硬化用ヒータ17により熱硬化型樹脂製の被覆が加熱された光ファイバ18を、キャプスタン19を経由して巻取りボビン30に巻き取る。ここで、硬化用ヒータ17により被覆を加熱する際に、光ファイバ15の送り速度を落として十分な加熱時間を確保するようにすると光ファイバ15の製造時間が徒に長くなるため、特に送り速度を落とすことなく、例えば紫外線硬化型樹脂を被覆にコーティングした場合と同様の速さで送るようにする。
【0018】
巻取りボビン30に巻き取られた状態の光ファイバ18の被覆は、硬化用ヒータ17によって加熱されたものの、十分な時間をかけて加熱したものではないので、被覆にはまだ溶剤成分が残っていて、十分な樹脂硬化度を得るに至っていない。そこで、光ファイバ18を、追加加熱用加熱炉22において一括して巻取りボビン30ごと追加加熱して、被覆に残留している溶剤成分を除去して、被覆を硬化させる。
耐熱性を有する熱硬化型樹脂として、例えばポリイミド樹脂を用いて光ファイバ18の被覆を形成し、巻取りボビン30に巻き取られた状態で光ファイバ18を例えば300℃で追加加熱することにより、被覆に残留している溶剤を揮発させて、被覆を硬化させることができる。このとき、巻取りボビン30を収容している加熱室23の内部を排気管25をとおして排気するようにして、揮発した溶剤成分を外部に効率よく放出するようにする。
【0019】
以上、説明したように、本発明に係る光ファイバの製造方法においては、巻き取った光ファイバ18を巻取りボビン30ごとまとめて追加加熱して、熱硬化型樹脂製の被覆に残留している溶剤成分を除去し、被覆を硬化させるので、巻取り速度を遅くして巻取り時に被覆を十分に加熱・硬化させる場合に比べて、製造時間の短縮を図ることができる。
【0020】
次に、本発明に係る光ファイバ用ボビンについて説明する。この光ファイバ用ボビンは、前述した光ファイバの製造方法において光ファイバが巻き取られる巻取りボビン30である。
この巻取りボビン30は、図2に示すように、光ファイバ18を巻き付ける胴部31と、胴部31の両端に設けられている一対の鍔部32を有している。
胴部31は、複数本の細径の金属製棒状部材となる金属棒34が所定間隔で円筒状に離間配置して形成されている。従って、隣接する金属棒34の間には後述する通気用開口部となる隙間35が設けられている。また、一対の鍔部32には同じく通気用となる開口部33a、33bが設けられている。さらに、胴部31は、胴部31の半径外方向への熱膨張を抑える低膨張構造を有している。
【0021】
従って、巻取りボビン30は、図3に示すように、光ファイバ18を巻き取った状態で追加加熱した際に、胴部31の隣接する金属棒34の間に隙間35が設けられているので、下層に巻き取られている光ファイバ18から揮発した溶剤成分を、胴部31の隙間35から内部に逃がすことができる。また、鍔部32にも開口部33a、33bを設けたので、胴部31の内部に逃げた溶剤成分および重ねて巻き取られている中間層の光ファイバ18から揮発した溶剤成分を、外部に放出することができる。また、上層に巻き取られている光ファイバ18から揮発した溶剤成分は、直接外に放出される。
【0022】
図5(A)および(B)には、巻取りボビン30の具体例が示されている。図5(A)に示すように、鍔部32には、胴部31の外側に対応する部分にφ40mmの円形の開口部33bが12個設けられている。また、鍔部32において胴部31の内側に対応する直径275mmの円周内の部分には、開口部33aとして、φ75mmの円形の開口部33aが4個と、φ26mmの開口が2個と、φ22mmの開口が1個設けられている。
従って、胴部31の内側に対応する鍔部32の開口率は、(75×4+26×2+22)/275=0.32となり、32%になる。なお、一般的に、開口率を25%以上とするのが望ましい。
【0023】
一方、胴部31の開口率について説明する。胴部31は、φ6mmの金属棒34を、直径275mmの円周上に24本設けた。これより、開口率は、1.0−(6×24)/(275×π)=0.83となり、83%となる。なお、一般的に、開口率を50%以上とするのが望ましい。但し、上記したいずれの開口率も、ボビン自体の機械的強度の低下が生じない範囲とするのは当然である。
なお、金属棒34の本数を少なくすることにより、隙間35を大きくして胴部31の開口率を上げることができるが、金属棒34の本数が少なくなると、胴部31の断面形状が円形から多角形になり、巻き取られている光ファイバ18が折れ曲がることになる。光ファイバ18が、許容曲げ半径よりも小さい半径で折れ曲がると、伝送特性に悪影響を及ぼすので、許容曲げ半径よりも小さくなることがないように金属棒34を設ける必要がある。
【0024】
巻取りボビン30は、耐熱性を有すると共に、製造が容易であることおよび美観からステンレス製であることが望ましい。但し、ステンレス製とすることにより、巻取りボビン30は、巻き取られている光ファイバ18と比較して熱膨張係数が大きくなるので、鍔部32の膨張に伴って胴部31の金属棒34が鍔部32の径方向外側に移動することになる。これにより胴部31の巻取り半径が拡大し、胴部31に巻き取られている光ファイバ18に引張力が作用して、光ファイバ18からみると、図4中の破線で示すように、光ファイバ18が巻取りボビン30に食い込むように作用して光ファイバ18の断線や、上層に巻き取られている光ファイバ18が下層の光ファイバ18間に食い込んで、例えば光ファイバ18の繰り出し時に付着して断線するおそれがある。このため、胴部31の半径外方向の熱膨張を抑える低膨張構造を採用する。
【0025】
図6(A)および(B)には、低膨張構造の一例が示されている。この巻取りボビン30では、胴部31を構成する金属棒34と鍔部32との取付部を、図6(B)に示すように、長孔36とすることにより、鍔部32が熱膨張しても金属棒34による巻取り半径を変えないように支持することが可能になっている。但し、追加加熱前の巻取り状態では、金属棒34が中心側へ移動するようでは光ファイバ18を適正に巻き取ることができないため、長孔36は、膨張前の状態では金属棒34を所定の巻取り半径の位置(図6(B)においては上端)に保持されるように、上端の半径を略金属棒34の半径と同じとする。そして、鍔部32の中心に向かって長孔36の半径を金属棒34の半径よりも小さくする。これにより、外力が作用しないときは金属棒34は長孔36の上部(鍔部32の半径外方向側)にあるが、鍔部32の膨張に伴う反力によって、金属棒34を中心方向へ押すある程度強い力が金属棒34に作用すると、金属棒34は長孔36の幅が狭い方(鍔部32の半径内方向側)へ移動するので、所定の巻取り半径を維持することができる。
【0026】
このように、低膨張構造を採用することにより、鍔部32が熱膨張した際には、巻き取られている光ファイバ18によって金属棒34を同じ巻取り半径の位置に保持することができ、光ファイバ18に作用する引張力を大幅に低減する事ができる。
なお、金属棒34自体の径方向の熱膨張量は小さいが、この熱膨張も同時に相殺することができる。また、胴部31の巻取り方向(周面方向)の熱膨張は、隣接する金属棒34の間に隙間35が設けられているので、問題にならない。
【0027】
以上、説明したように本発明に係る巻取りボビン30は、巻き取られた光ファイバ18の被覆を硬化させるために巻取りボビン30ごと追加加熱される。このとき、被覆を形成する熱硬化型樹脂に残留している溶剤成分が揮発するが、巻取りボビン30の胴部31および鍔部32に設けられている隙間35および開口部33a、33bから溶剤成分を巻取りボビン30の外に放出できるので、最外層の光ファイバ18のみならず、巻き取られている光ファイバ18の被覆も効率的に硬化させることができる。
また、胴部31は、追加加熱に伴う半径外方向の熱膨張を抑える低膨張構造となっているので、胴部31の熱膨張によって、光ファイバ18に引張力が作用するのを防止することができ、上層に巻き取られている光ファイバ18が下層にまかれている光ファイバ18に食い込むのを防止することができる。さらに、引張力により光ファイバ18が断線するのを防止することができる。
【0028】
なお、本発明の光ファイバの製造方法およびこの製造方法に使用する光ファイバ用ボビンは、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した実施形態においては、棒状部材として金属棒34を用いたが、この他パイプ状としたり、または図7に示すように、細幅の板状部材37を縦に(中心に向かう放射状に配置)して用いることもできる。なお、前述した実施形態と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
あるいは、図8に示すように、板状部材37を横(円周方向)にして用いることもできる。この場合には、光ファイバ18を滑らかに胴部31に巻き取ることができるが、胴部31の開口率が小さくなり過ぎないように留意する。さらに、図示はしないが、胴部31を網目状の部材で構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に係る光ファイバ用ボビンは、耐熱性を有する熱硬化型樹脂により被覆された光ファイバを巻き取った後に、光ファイバごとまとめて追加加熱することができる。これにより、光ファイバは、熱硬化型樹脂に含まれている溶剤成分を除去して被覆を硬化させるので、従来のように、製造時、被覆を十分に加熱して硬化させるために巻取り速度を遅くしなければならないという問題を解消でき、製造時間の短縮を図ることができるという効果を有し、例えば熱硬化型樹脂製の被覆を有する光ファイバを製造するのに好適な光ファイバ用ボビンおよびこのボビンを使用した光ファイバの製造方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(A)は本発明の光ファイバの製造方法を実施する製造装置の一例を示す構成図である。 (B)は追加加熱炉の断面図である。
【図2】本発明に係る光ファイバ用ボビンの実施形態を示す斜視図である。
【図3】追加加熱により揮発した溶剤の放出状態を示す断面図である。
【図4】光ファイバ用ボビンに巻き取られた光ファイバの状態を示す断面図である。
【図5】(A)は光ファイバ用ボビンの鍔部の一例を示す側面図である。 (B)は光ファイバ用ボビンの胴部を示す正面図である。
【図6】(A)および(B)は低膨張構造の一例を示す鍔部の正面図および拡大図である。
【図7】光ファイバ用ボビンの胴部の構成の別の例を示す斜視図である。
【図8】光ファイバ用ボビンの胴部の構成のさらに別の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
11 光ファイバ母材
13 ガラスファイバ
18 光ファイバ
30 巻取りボビン
31 胴部
32 鍔部
33a、33b 開口部
34 金属棒
35 隙間(開口部)
36 長孔(低膨張構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスファイバの表面を熱硬化型樹脂で被覆した光ファイバを巻き取る巻取りボビンであって、
前記巻取りボビンを構成する胴部および該胴部の両端に設けられている鍔部に通気用の開口部を有するとともに、前記胴部の半径方向の熱膨張を抑える低膨張構造を有することを特徴とする光ファイバ用ボビン。
【請求項2】
前記低膨張構造は、前記胴部が複数本の細径の金属製棒状部材を円筒状に離間配置して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用ボビン。
【請求項3】
ステンレス製であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ用ボビン。
【請求項4】
ガラスファイバの表面を熱硬化型樹脂で被覆しながら熱硬化させた光ファイバを胴部及び鍔部に通気用の開口を有した巻取りボビンに巻き取る線引工程と、その後、前記光ファイバを前記巻取りボビンごと不活性ガス下で保持した状態で追加加熱する加熱工程とを有することを特徴とする光ファイバの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−230838(P2007−230838A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56521(P2006−56521)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】