説明

光ファイバ線路の反射機構部

【課題】光ファイバ線路の距離に対する制約を抑えることができ、さらに、信号波長とは異なる波長を光ファイバ線路に入射させなくても光ファイバ線路の基準点を検出させることができる、光ファイバ線路の反射機構部を提供する。
【解決手段】所定の波長を反射する反射手段を備えた光ファイバ線路の反射機構部であって、前記反射手段が、光ファイバ縦接接続部のMT方式コネクタの端面またはSC方式コネクタの端面であり、反射手段ではない光ファイバ縦接接続部のMT方式コネクタの端面またはSC方式コネクタの端面の研磨面よりも前記反射手段の端面の研磨面の方が粗く、前記反射手段における反射光が25dB以上45dB以下であることを特徴とする光ファイバ線路の反射機構部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ線路の反射機構部に関する。特に、所定の波長を反射する反射手段を備えた前記光ファイバ線路の反射機構部に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光ファイバ線路は、伝送容量の大きさ等から通信手段の主力を担っており、地下、道路や鉄道の側溝など、あらゆる場所に布設されている。しかし、光ファイバ線路は、曲げを受けると放射損失が生じ、材質がガラスであることから破断しやすく、また、浸水に弱いなど、外界からの影響で異常が発生しやすい。従って、光ファイバ線路の状態を常時監視し、何らかの障害が発生した場合には、障害地点を迅速に特定して、早急に光ファイバ線路の補修を行って、通信機能を復旧させなければならない。
【0003】
光ファイバ線路の監視には、一般的に光パルス試験器が使用されている。光パルス試験器は、光ファイバの長手方向における損失の分布測定を行う装置であり、光ファイバ線路上における光デバイスの損失の増加位置、光ファイバの破断位置等を検索できる。
【0004】
しかし、監視対象の光ファイバ線路の長さが何km、何十kmにも及ぶ場合、光パルス試験器の表示では障害地点を検出しても、その測定距離の長さゆえ、地図上で実際の障害地点を即座には特定しにくく、障害地点の位置確認作業が煩雑であるという問題がある。従って、光パルス試験器に所定間隔で光ファイバ線路に設けた基準点を表示させ、この基準点を作業用の地図にマーキングしておけば、地図上の基準点を手がかりに障害地点を即座に特定でき、また、位置確認作業の精度も向上する。
【0005】
そこで、特許文献1では、光ファイバ線路の1ヶ所以上に信号波長とは異なる波長を反射する反射手段を配置して、その反射手段の反射波長に合致する波長のプローブ・パルス光を入射することで、その反射光から反射手段の設置位置に対応する基準点を検出することが開示されている。これは、光ファイバ線路上に複数の距離基準点を設けることにより、障害位置をより高い精度で検出することを狙ったものである。この従来技術の反射手段として、光ファイバ・グレーティングが開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1では、反射手段である光ファイバ・グレーティングの反射率は、1%から10%が適当であるとしている。このため、信号波長とは異なる波長からなるプローブ・パルス光の損失が著しく、光ファイバ線路に入射したプローブ・パルス光は遠くまで届かないので、布設する光ファイバ線路の距離に大きな制約があるという問題がある。
【0007】
また、特許文献1では、反射手段である光ファイバ・グレーティングの反射率が高いので、信号波長を基準点の検出に使用することができず、別途、信号波長とは異なる波長を光ファイバ線路に入射させている。従って、通信光の伝送装置の他に、信号波長とは異なる波長を伝送する装置が必要となり、障害位置検出装置の複雑化、高コスト化といった問題がある。また、光パルス試験器の検出する反射波長は信号波長とは異なる波長であるため、市販の光パルス試験器を使用することができず、特別仕様の光パルス試験器を用意する必要があるので、特許文献1の障害位置検出装置は、汎用性がなく、この点でもコスト高となる。
【特許文献1】特開平10−51401
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決し、光ファイバ線路の距離に対する制約を抑えることができ、さらに、信号波長とは異なる波長を光ファイバ線路に入射させなくても光ファイバ線路の基準点を検出させることができる、光ファイバ線路の反射機構部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、所定の波長を反射する反射手段を備えた光ファイバ線路の反射機構部であって、前記反射手段が、光ファイバ縦接接続部のMT方式コネクタの端面またはSC方式コネクタの端面であり、反射手段ではない光ファイバ縦接接続部のMT方式コネクタの端面またはSC方式コネクタの端面の研磨面よりも前記反射手段の端面の研磨面の方が粗く、前記反射手段における反射光が25dB以上45dB以下であることを特徴とする光ファイバ線路の反射機構部である。
【0010】
光ファイバ線路上に反射手段を設け、この反射手段にて生じた所定強度の反射光を、光パルス試験器を用いたOTDR法で観測する。これにより、反射手段に対応する位置に受光レベルのピークを検出することができ、このピークの位置を光ファイバ線路上の基準点とすることができる。
【0011】
また、本発明の第1の態様では、基準点とする光ファイバ縦接接続部におけるMT方式コネクタ端面またはSC方式コネクタ端面の研磨の程度を、基準点ではない通常の光ファイバ縦接接続部のMT方式コネクタ端面またはSC方式コネクタ端面よりも粗くすることにより、基準点の光ファイバ縦接接続部にフレネル反射光が生じる。これにより、基準点の光ファイバ縦接接続部の反射強度は、通常の光ファイバ縦接接続部の反射強度よりも強くなる。なお、反射光が25dBとは、全反射と仮定すると反射率0.315%に該当し、反射光が45dBとは、全反射と仮定すると反射率0.003%に該当する。また、光ファイバ線路の基準点とは、光ファイバ線路の長手方向における所定位置を意味する。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記反射手段が、所定の角度で斜研磨された端面を衝合した光ファイバアレイの縦接接続部であることを特徴とする光ファイバ線路の反射機構部である。通常の光ファイバアレイの縦接接続部における端面の角度は、光ファイバ線路長手方向に対する垂直方向を基準として8°である。この角度をより小さくすることで、光ファイバアレイの縦接接続部における反射光が強くなり、よって、反射手段とすることができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記反射手段が、光ファイバを切断して形成した相互に対向する端面間に挟まれたガラスであることを特徴とする光ファイバ線路の反射機構部である。光ファイバの端面間にガラスを挿入して接着することにより、通常の光ファイバ縦接接続部に空気層が生じるのを防止できるので、反射手段とすることができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、前記反射手段が、光ファイバブラックグレーティングであることを特徴とする光ファイバ線路の反射機構部である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の実施態様によれば、反射手段による反射光が、25dB以上45dB以下なので、入射光の反射による損失が抑えられ、光ファイバ線路を長くすることができる。また、入射光の反射による損失が抑えられるので、別途、監視光として信号波長と異なる波長を光ファイバ線路に入射させず、通信光を基準点の検出用にも使用することができる。また、通信光を基準点の検出にも使用することができるので、市販の光パルス試験器をそのまま使うことができる。さらに、25dB以上45dB以下の反射光は、例えば、通常の光ファイバ縦接接続部の反射光よりも強いので、光パルス試験器は確実に基準点を検出することができる。
【0016】
また、本発明の第1の実施態様では、コネクタ端面を通常の光ファイバ縦接接続部のコネクタ端面よりも相対的に粗く研磨すれば基準点となる光ファイバ縦接接続部を作製できるので、迅速、簡易に光ファイバ線路上に基準点を設けることができる。また、基準点となる光ファイバ縦接接続部ごとにコネクタ端面の研磨の程度を変えることにより、該光ファイバ縦接接続部ごとに入射光の反射強度を変化させることができるので、光パルス試験器が検出する反射光の受光レベルの違いから、それぞれの基準点を簡易に識別することも可能となる。
【0017】
本発明の第2の実施態様によれば、基準点となる光ファイバアレイの縦接接続部の端面の傾斜が、通常の光ファイバアレイの縦接接続部の端面の傾斜よりも所定量きつくなるように斜め研磨すればよいので、迅速、簡易に光ファイバ線路上に基準点を作製することができる。また、基準点となる光ファイバアレイの縦接接続部ごとに端面の角度を変えることにより、該光ファイバアレイの縦接接続部ごとに入射光の反射強度を変化させることができるので、光パルス試験器が検出する反射光の受光レベルの違いから、それぞれの基準点を簡易に識別することも可能となる。
【0018】
本発明の第3の実施態様によれば、光ファイバを長手方向に対し所定の角度で切断して形成した互いに対向する光ファイバ端面間に、ガラスを挟んで入射光の反射強度を調節するので、迅速、簡易に光ファイバ線路上に基準点を作製することができる。また、光ファイバを切断して基準点を形成するので、光ファイバ線路上の任意な部位に基準点を設けることができ、基準点配置の自由度が高い。
【0019】
本発明の第4の実施態様によれば、反射手段は光ファイバブラックグレーティング(FBG)なので、光ファイバ線路上の任意な部位に基準点を設けることができ、基準点配置の自由度が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態例に係る光ファイバ線路の反射機構部を詳細に説明する。本発明の実施形態例である反射機構部は、光ファイバ線路の所定位置に配置されている。そして、この光ファイバ線路は、一方が光伝送装置に接続され、他方が光受信装置に接続されている。この実施形態例では、光ファイバ線路は、複数箇所の光ファイバ縦接接続部を有しており、この光ファイバ縦接接続部のうち、反射機構部である基準点となる光ファイバ縦接接続部が適当な割合で複数配置されている。この光伝送装置から出力された通信光(例えば、波長1550nm)は、光合分波器を介して、光ファイバ線路に入射すると、基準点となる各光ファイバ縦接接続部にてその一部が反射されつつ、光ファイバ線路を伝送していき、光受信装置に入力される。上記した通信光を基準点の検出に使用する代わりに、通信光とは別に通信光の波長とは異なる波長(例えば、1650nm)の監視光を、反射手段に反射させて基準点の検出に使用してもよい。
【0021】
また、本実施形態例では、光ファイバ線路の基準点の位置測定には、横軸に距離、縦軸に受光レベル(dB)を表示する光パルス試験器を用いている。反射手段により生じた反射光は、光ファイバ線路を光伝送装置に向けて逆に伝送され、光合分波器を介して、光パルス試験器に入力される。反射手段により生じた反射光の強度が光パルス試験器の受光レベルとして表示されることで、光ファイバ線路の入射端からの反射手段の距離、つまり、光ファイバ線路上の基準点の位置を測定することができる。
【0022】
次に、本発明の実施形態例を構成する反射手段について説明する。本実施形態例では、いくつかの反射手段、例えば、(1)MT方式コネクタの端面またはSC方式コネクタの端面、(2)光ファイバアレイの端面の傾斜、(3)光ファイバの端面間に挟持されたガラス、(4)光ファイバブラックグレーティングなどを用いることができる。
【0023】
まず、(1)のMT方式コネクタの端面またはSC方式コネクタの端面を用いた反射手段について説明する。光ファイバを接続する場合、互いに対向する一対のフェルール・光ファイバ間に隙間が生じることで、ガラスとガラスとの間に空気層ができるので、屈折率の違う前記空気層の境界面で反射による信号光の損失が生じてしまう。従って、通常、光ファイバの接続にMT方式コネクタまたはSC方式コネクタを使用する場合には、ガラス間の間隔を無くしてガラス同士を直接接続させることで、前記空気層の境界面による信号光の損失を抑えている。直接ガラス同士を接続させるために、前記コネクタの端面を十分に研磨する。コネクタ端面の研磨には、例えば、凸球面研磨を行うPC(physical contact)研磨を挙げることができる。前記PC研磨によるコネクタ端面の研磨の程度は、研磨時間や研磨剤などを変えることで調節可能である。
【0024】
本発明の実施形態例の反射手段として、(1)のMT方式コネクタの端面またはSC方式コネクタの端面を使用する場合には、基準点としない通常の光ファイバ縦接接続部よりも、コネクタ端面の研磨時間を短縮し、研磨剤を調整する。研磨時間と研磨剤を調製することで、通常の光ファイバ縦接接続部よりもコネクタ端面が相対的に粗くなるので、互いに対向する一対のフェルール・光ファイバ間に微小な隙間が残って、フレネル反射光を発生させる。光パルス試験器が、この反射光を受光レベルのピークとして表示することで、この反射手段の位置が光ファイバ線路上の基準点として検出される。
【0025】
(1)の反射手段における入射光の反射強度は特に限定されず、光ファイバ線路の長さと設置する基準点の数量に応じて適宜調節すればよい。しかし、反射による入射光の損失が大きいと、基準点としての識別は容易となるが入射光の伝送距離が制限され、また、基準点の設置数量も限定される。一方で、基準点とはしない通常の光ファイバ縦接接続部の反射強度は45dB以上なので、通常の光ファイバ縦接接続部が光ファイバ線路上に存在する場合、反射手段で発生する反射光の強度が小さいと、基準点で大きな透過損失となる。このような事情から、反射強度は、伝送距離の制限を抑える点から25dB以上が好ましく、特に、基準点の数量を確保する点から30dB以上が好ましい。また、基準点となる光ファイバ縦接接続部と基準点ではない通常の光ファイバ縦接接続部とを識別する点から45dB以下が好ましく、特に、前記識別を容易にする点から40dB以下が好ましい。なお、上記反射光の強度範囲についての記載内容は、以下に説明する他の反射手段(2)〜(4)についても、同様に該当する。
【0026】
また、基準点となる光ファイバ縦接接続部ごとにコネクタ端面の研磨の程度を変えることにより、光ファイバ縦接接続部ごとにフレネル反射の強度を変えて、光パルス試験器にそれぞれ異なる受光レベルのピークを表示させる基準点を光ファイバ線路上に設けることもできる。この態様では、光パルス試験器の距離表示を見なくとも反射光の受光レベルのピーク高さの違いだけを見ることで、簡易にそれぞれの基準点を識別することが可能となる。
【0027】
次に、本発明の実施形態例を構成する(2)光ファイバアレイの端面の傾斜を用いた反射手段について説明する。この反射手段は、光ファイバアレイの縦接接続部における端面の角度を調節することで、入射光を所定量反射させるものである。通常の光ファイバアレイ縦接接続部の端面は、反射光の発生を抑えるために、光ファイバ線路長手方向に対する垂直方向を基準として8°の角度でAPC(angle physical contact)研磨されている。一方で、基準点となる光ファイバアレイ縦接接続部の端面は、通常の光ファイバアレイ縦接接続部の端面よりも角度が小さい。つまり、基準点となる光ファイバアレイ縦接接続部の端面は垂直に近いことで、通常の光ファイバアレイ縦接接続部よりも強い反射光が発生する。
【0028】
基準点となる光ファイバアレイ縦接接続部の端面の角度は、所定の反射強度が発生するように調節すればよいが、好ましい反射強度である25dB以上45dB以下とするには、1°〜5°の角度となるように端面をAPC研磨する。また、特に好ましい反射強度である30dB以上40dB以下とするには、2°〜3°の角度となるように端面をAPC研磨する。
【0029】
さらに、基準点となる光ファイバアレイ縦接接続部ごとに光ファイバアレイ縦接接続部の端面の研磨角度を変えると、該光ファイバアレイ縦接接続部ごとに入射光の反射強度を変えることができる。このように、端面の角度を調節することで、光パルス試験器の距離表示を見なくとも反射光の受光レベルのピーク高さの違いを見るだけで、簡易にそれぞれの基準点を識別することが可能となる。
【0030】
次に、本発明の実施形態例を構成する(3)光ファイバの端面間に挟持されたガラスを用いた反射手段について説明する。この反射手段は、光ファイバを光ファイバカッタで斜めに切断して形成した、相互に対向する光ファイバ端面間にガラスを挿入して、このガラスと両光ファイバ端面とを接着させて形成する。両光ファイバ端面間にガラスを挿入することにより、前記端面間に空気層が発生することを防止できる。光パルス試験器がこの反射光を受光レベルのピークとして表示することで、この反射手段が光ファイバ線路上の基準点として検出される。光ファイバの切断面の角度は、所定の反射光が得られる範囲であれば特に限定されないが、好ましい反射強度である25dB以上45dB以下とするには、1°〜5°の角度となるように端面をAPC研磨する。また、特に好ましい反射強度である30dB以上40dB以下とするには、2°〜3°の角度となるように端面をAPC研磨する。
【0031】
次に、本発明の実施形態例を構成する(4)光ファイバブラックグレーティング(FBG)を用いた反射手段について説明する。この反射手段は、光ファイバ線路の所定の位置に、コア部の屈折率が異なる部分(グレーティング)を配置して、ブラック波長の反射光を発生させるものである。屈折率変化の大きさとFBG長を調節して、所定の反射光(好ましくは、25dB以上45dB以下、特に好ましくは、30dB以上40dB以下)を発生させる。光パルス試験器がこの反射光を受光レベルのピークとして表示することで、この反射手段が光ファイバ線路上の基準点として検出される。FBGは、光ファイバ縦接接続部以外の位置にも配置することができるので、光ファイバ線路上の任意な部位に基準点を設けることが可能である。
【0032】
次に、本発明の実施形態例に係る光ファイバ線路の使用例を示す。使用例として地中に布設された光ファイバ線路が浸水した場合を説明する。基準点となる反射手段には、MTコネクタを用いている。例えば、光ファイバ線路が地中に埋設された配管内に配置されている場合に、光ファイバ線路が浸水、特に光ファイバ線路の接続部が浸水すると、該接続部において反射率や屈折率が変化し、また損失が生じるので、通信光の伝送に支障が生じる場合がある。従って、地中の光ファイバ線路の動作は、光パルス試験器の受光レベルを通じて常時監視し、光パルス試験器が光ファイバ線路の浸水現象を検知したら、その地点の光ファイバ線路を早急に補修または保護する必要がある。
【0033】
浸水地点の検出は、例えば、光ファイバ浸水検知センサにて行う。光ファイバ浸水検知センサとは、光ファイバが挿入される孔部を有する薄い直方体の容器であり、容器内には水に浸かると膨張する特性を有する材料と、この膨張性材料が水を含んで膨張すると該膨張性材料に押されて容器内を所定量移動する凸部を有する部材と、が納められている。凸部を有する部材が容器内を移動すると、孔部に挿入されている光ファイバ線路は、凸部に押されることで曲がり、放射損失が発生する。この放射損失を光パルス試験器で検出することにより、光ファイバの浸水現象が検知され、浸水地点が検出される。
【0034】
使用例では、光ファイバ線路上に所定の間隔(例えば、1〜2km間隔)で前記光ファイバ浸水検知センサを設置し、反射手段にMTコネクタを用いた基準点を複数個所、例えば、複数の光ファイバ浸水検知センサが基準点と基準点との間に配置されるように、設ける。必要であれば、各光ファイバ浸水検知センサと同じ位置またはその近傍に、それぞれ反射強度の異なる基準点を設けて、各基準点の識別を簡易にし、浸水地点の検出をより容易化してもよい。このとき、全てのMTコネクタ端面の研磨面を粗くして、全ての光ファイバ従接接続部を基準点としてもよく、一部の光ファイバ縦接接続部のMTコネクタ端面の研磨面を粗くして、一部の光ファイバ従接接続部を基準点としてもよい。
【0035】
使用される通信光または監視光は、反射手段であるMTコネクタにより、その一部が反射されるので、光パルス試験器の受光レベルはMTコネクタを設けた位置に対応してピークを表示する。反射手段であるMTコネクタの設置場所は既知なので、この場所を作業用の地図にあらかじめマーキングしておけば、浸水地点を検出する際の基準点を地図上に作成できる。
【0036】
光ファイバ線路の所定部位が浸水して光ファイバ浸水検知センサが反応すると、光ファイバ浸水検知センサに挿入されている光ファイバ線路に、曲げによる通信光または監視光の放射損失が生じる。この放射損失によって光パルス試験器の所定距離における受光レベルが低下する。光パルス試験器の表示する受光レベルの低下位置が、光ファイバ線路の浸水地点となる。この光パルス試験器が表示する受光レベルの低下位置を、基準点を示す受光レベルのピーク位置と対比しつつ、作業用の地図にマーキングしてある基準点の位置と対比することで、簡易、正確に浸水地点を特定することができる。
【0037】
上記使用例では、光ファイバ線路が地下配管に布設されている場合を説明したが、これに限られず、例えば、道路脇の側溝に布設された光ファイバ線路に生じる障害の監視にも使用することができる。監視対象の障害が光ファイバ線路の接続不良や曲げの場合には、それにより光の損失が生じるので、特定のセンサを用いなくても、障害地点は受光レベルの低下として光パルス試験器に表示される。
【0038】
上記本発明の実施形態例では、光ファイバ線路に基準点を配置するために光ファイバ縦接接続部の反射手段を用いたが、反射手段の代わりに、光ファイバ線路の融着接続部の軸ずれによる損失、つまり接続損失を用いてもよい。光ファイバの融着接続は、光ファイバを光ファイバカッタで切断し、切断した光ファイバを接触させて光ファイバ融着器にて溶融させて接続する。光ファイバ融着器に光ファイバをセットする際に、所定量の軸ずれが生じるように軸合わせする。
【0039】
光ファイバ線路上の軸ずれ位置は、光パルス試験器では受光レベルの低下位置として表示される。前記損失は、光ファイバ線路の長さと設置する基準点の数量に応じて調節すればよいが、伝送距離の制限を抑えつつ、基準点を識別する点から1dB以上5dB以下が好ましく、特に、基準点の数量を確保しつつ、基準点の識別を容易にする点から2dB以上3dB以下が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
光ファイバ線路上の浸水地点、その他の障害地点を簡易に特定できるので、光ファイバ通信の保守・点検分野で利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長を反射する反射手段を備えた光ファイバ線路の反射機構部であって、
前記反射手段が、光ファイバ縦接接続部のMT方式コネクタの端面またはSC方式コネクタの端面であり、反射手段ではない光ファイバ縦接接続部のMT方式コネクタの端面またはSC方式コネクタの端面の研磨面よりも前記反射手段の端面の研磨面の方が粗く、前記反射手段における反射光が25dB以上45dB以下であることを特徴とする光ファイバ線路の反射機構部。
【請求項2】
前記反射手段が、前記光ファイバ縦接接続部のMT方式コネクタの端面またはSC方式コネクタの端面に代えて、所定の角度で斜研磨された端面を衝合した光ファイバアレイの縦接接続部であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ線路の反射機構部。
【請求項3】
前記反射手段が、前記光ファイバ縦接接続部のMT方式コネクタの端面またはSC方式コネクタの端面に代えて、光ファイバを切断して形成した相互に対向する端面間に挟まれたガラスであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ線路の反射機構部。
【請求項4】
前記反射手段が、前記光ファイバ縦接接続部のMT方式コネクタの端面またはSC方式コネクタの端面に代えて、光ファイバブラックグレーティングであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ線路の反射機構部。

【公開番号】特開2010−96869(P2010−96869A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265777(P2008−265777)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(593200593)株式会社成和技研 (15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】