説明

光フィルターおよび分析機器

【課題】印加電圧を低く抑えるためにダイアフラム部を薄くした場合においても、ダイアフラム部の強度低下を抑制することができ、その結果、最大印加電圧が低くかつダイアフラム部の強度を高め、安定的なギャップ変位を可能とし、良好に駆動することができる光フィルター及び分析機器を提供する。
【解決手段】光フィルター1は、下部基板3と、下部基板3に設けられた下部ミラー4Bと、下部基板3に設けられた下部電極6Bと、下部電極6Bに対向して設けられた上部基板2と、上部基板2に設けられ下部ミラー4Bと対向する上部ミラー4Aと、上部基板2に設けられ下部電極6Bと対向する上部電極6Aを有し、上部基板2は平面視において上部ミラー4Aを囲む溝8を有し、前記溝8は断面視において底面部8aと第1端部8b、第2端部8dと第1側面部8c、第2側面部8eとを有し、第1端部8b、第2端部8dは曲面を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光フィルターおよび分析機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入射光から目的とする波長の光を選択して出射する光フィルターとして、一対の基板を対向配置し、これら基板の対向する面それぞれにミラーを設け、これらのミラーの周囲にそれぞれ電極を設けるとともに、一方のミラーの周囲にダイアフラム部を設け、これら電極間の静電力によりダイアフラム部を変位させてこれらのミラー間のギャップ(エアーギャップ)を変化させることにより、所望の波長の光を取り出すエアーギャップ型かつ静電駆動型の光フィルターが知られている(例えば、特許文献1)。
このような光フィルターでは、製造時に一対のミラー間のギャップをサブミクロンから数ミクロンと非常に狭い範囲で制御する必要があり、しかも、これらのミラー間のギャップを精度良く維持し、かつ、所望のギャップ量に制御することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−57438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでエアーギャップ型かつ静電駆動型の光フィルターでは、静電引力でダイアフラムを動かし、ミラー間のギャップを変化させる。このため、ダイアフラム部の厚みに応じて、ギャップの変位に必要な静電引力を生み出すための印加電圧が変化することになる。そのため、ダイアフラム部は印加電圧を低く抑えるためにも出来るだけ薄いことが望ましい。しかし、ダイアフラム部を薄くすることは強度低下に繋がり、繰り返しギャップ変位を行う光フィルターでは、変位を行う度にダイアフラム部に応力がかかるため、強度の低下は即ちダイアフラム部の破壊に繋がるという問題があった。
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであって、印加電圧を低く抑えるためにダイアフラム部を薄くした場合においても、ダイアフラム部の強度低下を抑制することができ、その結果、最大印加電圧が低くかつダイアフラム部の強度を高め、安定的なギャップ変位を可能とし、良好に駆動することができる光フィルター及びそれを備えた光モジュールを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光フィルターは、
下部基板と、
前記下部基板に設けられた下部ミラーと、
前記下部基板に設けられた下部電極と、
前記下部電極に対向して設けられた上部基板と、
前記上部基板に設けられ、前記下部ミラーと対向する上部ミラーと、
前記上部基板に設けられ、前記下部電極と対向する上部電極と、
を有し、
前記上部基板は、平面視において、前記上部ミラーを囲む溝を有し、
前記溝は、断面視において、第1側面部、第2側面部、底面部、前記第1側面部と前記底面部との間に位置する第1端部および前記第2側面部と前記底面部との間に位置する第2端部を有し、
前記第1端部および前記第2端部は曲面を有することを特徴とする。
本発明の光フィルターでは、溝の端部を曲面としている。これにより、ギャップ変位時に発生する溝の端部への応力集中が緩和され、ダイアフラム部の強度を向上させる。その結果、安定的なギャップ変位を可能とし、良好にギャップ駆動をすることができる。
【0006】
上記に記載の光フィルターは、
前記底面部は平坦であり、
平面視において、前記上部電極は、前記底面部の下方の領域内の前記第2基板に設けられていることを特徴とする。
これにより、溝の歪みに伴う上部電極にクラック等が発生することを防止することができる。
【0007】
上記に記載の光フィルターは、
前記第1端部は、前記上部ミラー側に位置し、
前記第1端部は、平面視において、前記上部ミラーと重なっていないことを特徴とする。
これにより、上部ミラーに入射される光の進行が、ダイアフラム部の側面部によって、遮られることを抑制することができ、良好なセンシングが可能となる。
【0008】
上記に記載の光フィルターは、
前記第1基板および前記第2基板は、光透過性を有することを特徴とする。
このように、第1基板及び第2基板を、光透過性を有することとしたことにより、基板における光の透過率が向上し、取り出した光の強度も高くなる。よって、光の取り出し効率が向上する。
【0009】
上記に記載の光フィルターは、
前記溝は、ドライエッチングを行った後に、ウェットエッチングを行うことにより形成されていることを特徴とする。
このように、加工にウェットエッチングを用いることで容易に端部の形状を曲面にすることが出来、端部への応力集中を緩和し、ダイアフラム部の強度を向上させることが出来る。またドライエッチングとウェットエッチングを組み合わせることで、溝の加工にかかる時間を短縮し、且つ、溝端部が曲面を有する構造とすることができ、端部への応力集中を緩和し、ダイアフラム部の強度を向上させることが出来る。その結果、安定的なギャップ変位を可能とし、良好に駆動することができる。
【0010】
本発明の分析機器は、上記に記載の光フィルターを用いることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の光フィルターの平面図である。
【図2】本実施形態の光フィルターの断面図である。
【図3】本実施形態の光フィルターにおいて、電圧が印加されていない場合の波長と透過率との関係を示す図である。
【図4】本実施形態の光フィルターにおいて、電圧が印加された場合の波長と透過率との関係を示す図である。
【図5】本実施形態の光フィルターの製造方法を説明するための図である。
【図6】本実施形態の光フィルターの製造方法を説明するための図である。
【図7】本実施形態の光フィルターの製造方法を説明するための図である。
【図8】本実施形態の光フィルターの製造方法を説明するための図である。
【図9】本実施形態の光フィルターの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかる実施形態の光フィルターについて説明する。ここでは、光フィルターとして、エアーギャップ型かつ静電駆動型の光フィルターについて説明する。
【0013】
図1および図2において、符号1はエアーギャップ型で静電駆動型の光フィルターである。この光フィルター1は、上部基板2と、上部基板2に対向した状態で接合(または接着)された下部基板3と、上部基板2の下部基板3と対向する側の対向面2aの中央部に設けられた円形状のミラー4A(上部ミラー)と、下部基板3の上部基板2と対向する側の面の中央部に形成された第1の凹部5の底部中央にミラー4Aと第1のギャップG1を介して対向して設けられた円形状のミラー4B(下部ミラー)と、上部基板2のミラー4Aの周囲に設けられた円環状の電極6A(上部電極)と、下部基板3の第1の凹部5の周囲に形成された円環状の第2の凹部7に電極6Aと第2のギャップG2を介して対向して設けられた円環状の電極6B(下部電極)と、上部基板2の対向面2aの反対面側において、電極6Aとほぼ対応する位置にエッチング(選択除去)により形成された薄肉の円環状のダイアフラム部8とにより構成されている。
【0014】
ダイアフラム部8は第1側面部8c、第2側面部8e、底面部8a、第1側面部8cと底面部8aとの間に位置する第1端部8b、および第2側面部8eと底面部8aとの間に位置する第2端部8d、から構成される。また、ダイアフラム部8における、ミラー4A側に位置する第1端部8bは、平面視においてミラー4Aと重ならないように形成されている。このような構造とすることで、ミラー4Aに入射される光の進行が、ダイアフラム部8の第1側面部8cによって、遮られることを抑制することができる。
【0015】
そして、第2のギャップG2を介して対向して設けられた電極6A、6Bと、ダイアフラム部8と、により、静電アクチュエーターが構成されている。
上部基板2および下部基板3の材料としてガラスを用いることができる。ガラスとしては、具体的には、ソーダガラス、結晶化ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス、無アルカリガラス等が好適に用いられる。
【0016】
上部基板2及び下部基板3を共に光透過性を有する材料とすることにより、電磁波のうち所望の波長帯域の電磁波や可視光線を入射光として用いることができる。
また、上部基板2及び下部基板3を共に半導体材料、例えばシリコンで形成すれば、入射光として近赤外線を用いることができる。
【0017】
ミラー4A、4Bは、第1のギャップG1を介して互いに対向して配置されたもので、高屈折率層と低屈折率層とが交互に複数積層された誘電体多層膜により構成されている。なお、ミラー4A、4Bは、誘電体多層膜に限定されることなく、例えば、銀を主成分とする合金膜や、それらの多層膜等を用いることもできる。
【0018】
これらミラー4A、4Bのうち、一方のミラー4Aは変形可能な上部基板2に設けられているので可動ミラーと称し、他方のミラー4Bは変形しない下部基板3に設けられているので固定ミラーと称することもある。
【0019】
この光フィルター1を可視光線の領域あるいは赤外線の領域で用いる場合、誘電体多層膜における高屈折率層を形成する材料としては、例えば、酸化チタン(Ti2O)、酸化タンタル(Ta25)、酸化ニオブ(Nb25)等が用いられる。また、光フィルター1を紫外線の領域で用いる場合、高屈折率層を形成する材料としては、例えば酸化アルミニウム(Al23)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化トリウム(ThO2)等が用いられる。
【0020】
一方、誘電体多層膜における低屈折率層を形成する材料としては、例えば、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化ケイ素(SiO2)等が用いられる。
この高屈折率層及び低屈折率層の層数及び厚みについては、必要とする光学特性に基づいて適宜に設定される。一般に、誘電体多層膜により反射膜(ミラー)を形成する場合、その光学特性を得るために必要な層数は12層以上である。
【0021】
電極6A、6Bは、第2のギャップG2を介して互いに対向して配置されたもので、入力される駆動電圧に応じてこれら電極6A、6B間に静電力を発生させ、ミラー4A、4Bを互いに対向した状態で相対移動させる静電アクチュエーターの一部を構成するものである。
【0022】
これにより、電極6A、6Bは、ダイアフラム部8を図2中上下方向に変位させてミラー4A、4B間の第1のギャップG1を変化させ、この第1のギャップG1に対応する波長の光を出射するようになっている。
【0023】
また、電極6Aは、図2に示すように、平坦な面である底面部8aの下方の領域内に設けられている。仮に、電極6Aを、曲面を有する第1端部8b、第2端部8dと重なるように形成した場合、ダイアフラム部8の駆動によってダイアフラム部8が歪み、第1端部8b、第2端部8dの下方に位置する電極6Aに大きな応力が発生してしまう。それにより、電極6Aにクラック等の不具合が生じてしまう恐れがある。しかしながら、平坦な面である底面部8aの下方の領域内に電極6Aを形成することで、ダイアフラム部8の歪みに伴う電極6Aのクラック等を防止することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、上部基板2の対向面2aと下部基板3に形成された第2の凹部7とは平行になっているので、電極6A、6B間も平行となっている。
これら電極6A、6Bを形成する材料としては導電性であればよく、特に限定はされないが、例えば、Cr、Al、Al合金、Ni、Zn、Ti、Au等の金属、あるいはカーボン、チタン等を分散した樹脂、多結晶シリコン(ポリシリコン)、アモルファスシリコン等のシリコン、窒化シリコン、ITO等の透明導電材料等が用いられる。
これら電極6A、6Bには、図1に示すように、配線11A、11Bが接続されており、これら電極6A、6Bは、これら配線11A、11Bを介して電源(図示せず)に接続されている。
【0025】
なお、これら配線11A、11Bは、上部基板2に形成された配線溝12A、あるいは下部基板3に形成された配線溝12Bに形成されている。したがって、上部基板2と下部基板3との接合に干渉しないようになっている。
【0026】
電源は、駆動信号として、電極6A、6Bに電圧を印加することにより、電極6A、6Bを駆動させ、これらの間に所望の静電力を発生させるものである。なお、この電源には制御装置(図示せず)が接続されており、この制御装置によって電源を制御することにより、電極6A、6B間の電位差を調整することができるようになっている。
【0027】
ダイアフラム部8は、このダイアフラム部8が形成されていない上部基板2の箇所に比べて厚さが薄くなっている。このように、上部基板2のうち他の箇所に比べて厚さが薄い箇所は、弾性(可撓性)を有して変形可能(変位可能)になっており、これにより、このダイアフラム部8は、第1のギャップG1を変化させてミラー4A、4B間の間隔を所望の波長の光に対応する間隔に変化させることにより、所望の波長の光を出射させる波長選択機能を有するようになっている。
【0028】
これらダイアフラム部8の形状や厚みは、所望の波長の範囲の光を出射させることができればよく、具体的には、ミラー4A、4B間の間隔の変化量及び変化の速さ等を勘案し、この光フィルター1に求められる出射光の波長の範囲に対応して設定される。
【0029】
本実施形態の光フィルター1では、制御装置及び電源が駆動されず、したがって、電極6Aと電極6Bとの間に電圧が印加されていない場合、ミラー4Aとミラー4Bとは第1のギャップG1を介して対向している。そこで、この光フィルター1に光が入射すると、図3に示すように、この第1のギャップG1に対応した波長の光、例えば720nmの波長の光が出射されることとなる。
【0030】
ここで、制御装置及び電源を駆動させて電極6Aと電極6Bとの間に電圧を印加すると、これら電極6Aと電極6Bとの間には、電圧(電位差)の大きさに対応した静電力が発生する。このように、制御装置が電源を制御することにより、電極6A、6B間に所望の電圧を印加し、電極6Aと電極6Bとの間に所望の静電力を発生させることができる。このようにして電極6A、6B間に所望の静電力が発生すると、この静電力により電極6A、6Bが相互に引きつけられて上部基板2が下部基板3側に向かって変形し、ミラー4Aとミラー4Bとの第1のギャップG1が、電圧が印加されていない場合と比べて狭くなる。
この場合、静電力によりダイアフラム部8が稼動することで、第1端部8b、第2端部8dに応力が発生するが、本実施形態によれば第1端部8b、第2端部8dは丸み半径が大きな形状となるため、応力集中はし難くなり、繰り返しのダイアフラム部8の駆動に対しても破壊等が起き難く、良好な駆動が繰り返される。
【0031】
そこで、この光フィルター1に光が入射すると、図4に示すように、変位した第1のギャップG1に対応した波長の光、例えば590nmの波長の光が出射されることとなり、透過波長が短波長側にシフトすることとなる。
【0032】
次に、本実施形態の光フィルター1の製造方法について、図面を参照して説明する。図5〜9は、本実施形態の光フィルター1の製造方法を示す断面図である。
この製造方法は、[1]上部基板の加工工程、[2]下部基板の加工工程、を有している。以下、各工程について順次説明する。
【0033】
[1]上部基板の加工工程
図5(a)に示すように、上部基板2の全面にマスク層51を成膜する。マスク層51を構成する材料としては、例えば、Cr/Au等の金属膜等を用いることができる。マスク層51の厚さは、特に限定されないが、0.01〜1μm程度とすることが好ましく、0.1〜0.3μm程度とすることがより好ましい。マスク層51が薄すぎると、上部基板2を十分に保護できない場合があり、マスク層51が厚すぎると、マスク層51の内部応力によりマスク層51が剥がれ易くなる場合がある。本実施形態では、マスク層51は、Cr/Au膜をスパッタ法によって成膜し、Cr、Auそれぞれの膜厚は0.01μm、0.3μmとしている。
【0034】
次に、図5(b)に示すように、マスク層51に、ダイアフラム部8を形成するための開口部51aを形成する。開口部51aは、例えばフォトリソグラフィー法により形成することができる。具体的には、マスク層51上に、開口部51aに対応したパターンを有するレジスト層(図示せず)を形成し、このレジスト層をマスクとして、マスク層51の一部を除去した後に、レジスト層を除去することで開口部51aが形成される。なお、マスク層51の一部除去は、ウェットエッチング等により行われる。
【0035】
次に、図5(c)に示すように、ウェットエッチングによって上部基板2を食刻し、ダイアフラム部8を形成する。エッチング液としては、例えば、フッ酸水溶液や緩衝フッ酸水溶液(BHF)が等を用いることができる。また、これに変えて、ドライエッチングを行った後にウェットエッチングを行って、ダイアフラム部8を形成しても良い。これによると、溝の加工にかかる時間を短縮し、且つ、溝の第1端部8b、第2端部8dが曲面を有する構造とすることができ、端部への応力集中を緩和し、ダイアフラム部8の強度を向上させることが出来る。
【0036】
次に、図6(a)に示すように、電極6A、配線11Aを形成する。電極6A、配線11Aを構成する材料としては、例えばCr、Al等の金属膜やITOのような透明導電材料等を用いることができる。電極6A、配線11Aの厚さは、例えば、0.1〜0.2μmとするのが好ましい。
【0037】
これら電極6A、配線11Aを形成するためには、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等によって金属膜等を成膜した後、フォトリソグラフィー法及びエッチングによってパターニングを行う。
【0038】
次に、対向面2aのダイアフラム部8に囲まれた位置2a’にミラー4Aを形成する。例えば、高屈折率層を形成する材料として酸化チタン(Ti2O)、低屈折率層を形成する材料として酸化ケイ素(SiO2)を積層し、それらをリフトオフ法によりパターニングするとミラー4Aが得られる。
【0039】
[2]下部基板の加工工程
図7(a)に示すように、下部基板3の上部基板2との対向面3aにマスク層61を成膜する。マスク層61を構成する材料としては、一般的な材料レジスト材料を用いる。
次に、図7(b)に示すように、マスク層61に、第2の凹部7を形成するための開口部61aを形成する。開口部61aは、フォトリソグラフィー法により形成することができる。
【0040】
次に、図7(c)に示すように、ウェットエッチングによって下部基板3を食刻し、第2の凹部7を形成する。エッチング液としては、例えば、フッ酸水溶液や緩衝フッ酸水溶液(BHF)等を用いることができる。なお、第2の凹部7の形成方法としては、ウェットエッチングに限られず、ドライエッチング等他のエッチング法を用いてもよい。
【0041】
次に、エッチングによってマスク層61を除去した後、第2の凹部7の形成と同じ要領で、第1の凹部5を形成する。具体的には、下部基板3上にマスク層62を成膜し、図8(a)に示すように、第1の凹部5を形成するための開口部62aを形成する。次いで、図8(b)に示すように、ウェットエッチングによって下部基板3を食刻して、第1の凹部5を形成する。その後、図8(c)に示すように、マスク層62をエッチングによって除去することによって、第1の凹部5及び第2の凹部7を備えた下部基板3が得られる。
【0042】
次に、図9(a)に示すように、電極6B、配線11Bを形成する。電極6A、配線11Aを構成する材料としては、例えばCr、Al等の金属膜やITOのような透明導電材料等を用いることができる。電極6A、配線11Aの厚さは、例えば、0.1〜0.2μmとするのが好ましい。
これら電極6A、配線11Aを形成する、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等によって金属膜等を成膜した後、フォトリソグラフィー法及びエッチングによってパターニングを行う。
【0043】
次に、上部基板2のミラー4Aに対向する位置にミラー4Bを形成する。例えば、高屈折率層を形成する材料として酸化チタン(Ti2O)、低屈折率層を形成する材料として酸化ケイ素(SiO2)を積層し、それらをリフトオフ法によりパターニングするとミラー4Bが得られる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の光フィルターによれば、選択的に波長を取り出すために第1のギャップG1を変動させる際にダイアフラム部8が稼動することで、第1端部8b、第2端部8dに応力が発生するが、本実施形態によれば第1端部8b、第2端部8dは丸み半径が大きな形状となるため、応力集中はし難くなり、繰り返しのダイアフラム部8の駆動に対しても破壊等が起き難く、良好な駆動が繰り返される。
【0045】
なお、本発明の光フィルターは、色を測定する測色器やガスを測定するガス検出器等の分析機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…光フィルター、2…上部基板、3…下部基板、4A,4B…ミラー、5…第1の凹部、6A,6B…電極、7…第2の凹部、8…ダイアフラム部、11A,11B…配線、G1…第1のギャップ、G2…第2のギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部基板と、
前記下部基板に設けられた下部ミラーと、
前記下部基板に設けられた下部電極と、
前記下部電極に対向して設けられた上部基板と、
前記上部基板に設けられ、前記下部ミラーと対向する上部ミラーと、
前記上部基板に設けられ、前記下部電極と対向する上部電極と、
を有し、
前記上部基板は、平面視において、前記上部ミラーを囲む溝を有し、
前記溝は、断面視において、第1側面部、第2側面部、底面部、前記第1側面部と前記底面部との間に位置する第1端部および前記第2側面部と前記底面部との間に位置する第2端部を有し、
前記第1端部および前記第2端部は曲面を有することを特徴とする光フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の光フィルターにおいて、
前記底面部は平坦であり、
平面視において、前記上部電極は、前記底面部の下方の領域内の前記第2基板に設けられていることを特徴とする光フィルター。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光フィルターにおいて、
前記第1端部は、前記上部ミラー側に位置し、
前記第1端部は、平面視において、前記上部ミラーと重なっていないことを特徴とする光フィルター。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光フィルターにおいて、
前記第1基板および前記第2基板は、光透過性を有することを特徴とする光フィルター。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光フィルターにおいて、
前記溝は、ドライエッチングを行った後に、ウェットエッチングを行うことにより形成されていることを特徴とする光フィルター。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光フィルターを用いた分析機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−197386(P2011−197386A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63923(P2010−63923)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】