説明

光フィルター装置

【課題】光フィルター装置におけるスペクトル測定の測定時間を短縮させ、測定精度を向上させること。
【解決手段】可変エタロン4と、可変エタロン駆動回路13と、受光素子5と、受光素子5に接続されたI−V変換回路6と、I−V変換回路6に接続されゲイン切り替え機能を有する増幅回路7と、増幅回路7に接続されたADコンバーター8と、増幅回路7およびADコンバーター8に接続されたマイコン11と、マイコン11に接続され増幅回路7のゲインのデータであるゲインテーブル14を有する電圧設定メモリー10と、を備え、受光素子5で検出された電流に基づき受光電圧の事前測定を行い、電圧設定メモリー10に記憶させた事前測定で得られた受光電圧に対する増幅回路7のゲインのゲインテーブル14を参照し、事前測定で得られた受光電圧をADコンバーター8のダイナミックレンジに合うように増幅回路7のゲインを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光フィルター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として特許文献1に示す透過波長可変干渉フィルター(以降、可変エタロンと記す)がある。この可変エタロンは対向する基板に外力、たとえば静電気アクチュエーターなどを用いてミラー間のギャップを調整し、透過する波長を変えるものである。可変エタロンの波長に対する透過率特性は、ある一定の間隔で区切られた波長帯域で、それぞれの間隔において透過率が決まっている。この波長の間隔は、可変エタロンに印加する静電気力の値(電圧)によって決まる。従って、物体色のスペクトルデータを得るためには、波長の間隔毎に逐次可変エタロンの印加電圧を変えてデータを得る必要がある。
【0003】
図9に従来の可変エタロンを用いて波長帯域の受光電圧を測定する光フィルター装置のブロック図を示す。図9において制御演算回路112はマイコン111とV−λテーブル(電圧データテーブル)109を格納する電圧設定メモリー110からなる。V−λテーブル109の電圧データに基づいて、可変エタロンの駆動電圧のレベルが決定される。電圧設定メモリー110はマイコン111に内蔵されていてもよい。制御演算回路112は、可変エタロン駆動回路113、増幅回路107、ADコンバーター108と接続している。
従来の光フィルター装置における1波長分の測定の流れを以下に示す。
【0004】
(従来の測定手順)
可変エタロン駆動回路113は、制御演算回路112からの指令により電圧設定メモリー110に格納されたV−λテーブル109に応じて、波長毎の駆動電圧データを可変エタロン4の静電アクチュエーターに出力する(ステップ51)。
測定対象1からの反射した光2もしくは透過した光3は、可変エタロン4を透過し受光素子5に入る(ステップ52)。
受光素子5はフォトダイオードなどの電流出力素子であり、素子に接続されたI−V変換回路106にて電圧(受光電圧)に変換される(ステップ53)。
受光電圧は、I−V変換回路(電流電圧変換回路)106の出力に接続された増幅回路107により増幅される(ステップ54)。
増幅された受光電圧は、増幅回路107の出力に接続されたADコンバーター108によりアナログ信号からデジタル信号に変換される(ステップ55)。
デジタル信号に変換された受光電圧はマイコン111により測定される(ステップ56)。
マイコン111により測定された受光電圧が基準電圧値よりも大きい場合は、受光電圧を基準電圧値以下になるように制御演算回路112からの指令により増幅回路107のゲインを下げて、測定手順ステップ52〜ステップ56を繰り返し行い、測定した受光電圧値を更新する(ステップ57)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−142752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の可変エタロンを用いた光フィルター装置にける受光電圧測定において、2つの課題が存在する。1つ目は、測定時間が長くなることである。この理由は、上記に示した受光電圧の測定において基準電圧値以下になるまで測定手順ステップ52〜ステップ56を繰り返し行うためである。2つ目は測定精度が下がることである。この理由は、測定した受光電圧が小さいときに増幅回路のゲインを上げるシステムが組み込まれていないため、ADコンバーターのダイナミックレンジよりも大幅に小さい場合は、アナログ信号からデジタル信号に変換する際に変換誤差が大きくなってしまうためである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる光フィルター装置は、特定の波長の光を出射する透過波長可変干渉フィルターと、前記透過波長可変干渉フィルターを駆動させる可変エタロン駆動回路と、前記透過波長可変干渉フィルターから出射された光を受光する受光素子と、前記受光素子に接続されたI−V変換回路と、前記I−V変換回路に接続されゲイン切り替え機能を有する増幅回路と、前記増幅回路に接続されたADコンバーターと、前記増幅回路および前記ADコンバーターに接続されたマイコンと、前記マイコンに接続され、前記増幅回路のゲインのデータであるゲインテーブルを有する電圧設定メモリーと、を備え、前記受光素子で検出された電流に基づき受光電圧の事前測定を行い、前記電圧設定メモリーに記憶させた事前測定で得られた前記受光電圧に対する前記増幅回路のゲインの前記ゲインテーブルを参照し、事前測定で得られた前記受光電圧を前記ADコンバーターのダイナミックレンジに合うように前記増幅回路のゲインを調整することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、従来の測定のように、基準電圧になるまで何度も測定した受光電圧をフィードバックして増幅回路のゲインを調整することなく、1度の事前測定で受光電圧をADコンバーターのダイナミックレンジに合うように増幅回路のゲインを決定できる。このため、従来と比べて測定時間を短縮できる効果を有する。また、事前測定で得られた受光電圧をADコンバーターのダイナミックレンジに合わせるため、アナログ信号からデジタル信号に変換する際の変換誤差を小さくできる効果を有する。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかる光フィルター装置において、前記増幅回路および前記ADコンバーターに接続された積分回路を含み、前記電圧設定メモリーに事前測定で得られた前記受光電圧に対する積分時間のデータテーブルを追加することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、積分回路の追加することでモニター等の時間に対して光量が変化する光源に対しても測定可能とする効果を有する。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかる光フィルター装置において、前記ゲインテーブルは前記積分回路の出力電圧と前記ADコンバーターのダイナミックレンジに合わせるために、前記積分回路の出力電圧の桁ごとの増加に応じて前記増幅回路のゲインと積分時間が減少するようにそれぞれ前記増幅回路内のマルチプレクサーの信号と積分時間を設定することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、効率的に増幅回路のゲインと積分時間を設定できる効果を有する。
【0014】
[適用例4]上記適用例にかかる光フィルター装置において、前記透過波長可変干渉フィルターの駆動と同期させて前記積分回路内の帰還コンデンサーを放電させることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、透過波長可変干渉フィルターの駆動と積分回路内の帰還コンデンサーの放電を同期させることで、測定時間を短縮できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る可変エタロンを用いた光フィルター装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る増幅回路の構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る増幅回路の出力電圧とADコンバーターのダイナミックレンジに合わせるために、増幅回路の出力電圧の桁ごとの増加に応じて増幅回路のゲインが減少するように増幅回路内のマルチプレクサーの信号を設定したゲインテーブルを示す図である。
【図4】第1実施形態に係る1波長分測定時の増幅回路の出力電圧、エタロンの駆動電圧の波形の概要を説明するための図である。
【図5】第2実施形態に係る可変エタロンを用いた光フィルター装置のブロック図である。
【図6】第2実施形態に係る増幅回路と積分回路の構成を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る積分回路の出力電圧とADコンバーターのダイナミックレンジに合わせるために、積分回路の出力電圧の桁ごとの増加に応じて増幅回路のゲインと積分時間が減少するようにそれぞれ増幅回路内のマルチプレクサーの信号と積分時間を設定したゲインテーブルを示す図である。
【図8】第2実施形態に係る1波長分測定時の積分回路の出力電圧、エタロンの駆動電圧、積分回路内の帰還コンデンサーの放電の波形の概要を説明するための図である。
【図9】従来の可変エタロンを用いた光フィルター装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0018】
(第1実施形態)
図1は本実施形態における可変エタロンを用いた光フィルター装置の構成を示すブロック図である。図2は増幅回路の構成を示す図である。図3は増幅回路内のマルチプレクサーの信号を設定したゲインテーブルを示す図である。図4は1波長分測定時の増幅回路の出力電圧、エタロンの駆動電圧の波形の概要を説明するための図である。
【0019】
図1に示すように、光フィルター装置100は、可変エタロン4と、受光素子5と、I−V変換回路6と、増幅回路7と、ADコンバーター8と、可変エタロン駆動回路13と、制御演算回路12を備えている。
可変エタロン4は、対向する基板に外力、たとえば静電アクチュエーターなどを用いて基板間のギャップを調整し、透過する波長を変えるものである。
可変エタロン駆動回路13は、制御演算回路12の命令により可変エタロン4の静電アクチュエーターなどに電圧を印加するものである。
受光素子5は、フォトダイオードなどの電流出力素子であり、可変エタロン4から入った光を電流信号に変換するものである。
【0020】
I−V変換回路6は、受光素子5から出力された電流を電圧(受光電圧)に変換するものである。
増幅回路7は、I−V変換回路6から出力された電圧を増幅するものであり、制御演算回路12の命令によりゲインの調整をして切り替えるものである。
ADコンバーター8は、増幅回路7から出力された電圧信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するものである。
制御演算回路12は、ADコンバーター8から出力されたデジタル信号化された電圧を取り込むものである。また、制御演算回路12は、増幅回路7のゲイン変更および可変エタロン駆動回路13の出力電圧の設定を行うものである。
【0021】
図1において制御演算回路12はマイコン11とゲインテーブル14と、V−λテーブル9を格納する電圧設定メモリー10とからなる。
マイコン11は、マイクロコンピューターやゲートアレイ等で構成されるものである。
V−λテーブル9は、可変エタロン4の駆動電圧(V)に対する可変エタロンのギャップ間の距離に対応する透過波長(λ)のデータが格納されており、電圧データに基づいて、可変エタロンの駆動電圧のレベルが決定されるものである。
ゲインテーブル14は、増幅回路7の出力電圧と増幅回路7内のマルチプレクサー16A,16Bの信号の関係を設定したデータである。
電圧設定メモリー10は、フラッシュメモリーなどの記憶素子であり、マイコン11に内蔵されていてもよい。
【0022】
図2に示す増幅回路7は、アンプ15A,15Bとマルチプレクサー16A,16Bと帰還抵抗17Aで構成され、マルチプレクサー16A,16Bにより帰還抵抗17Aを変えることでゲインを変更できるものである。アンプ15A,15Bは、I−V変換回路6から出力された電圧を増幅するものであり、オペアンプなどの信号増幅素子で構成されている。マルチプレクサー16A,16Bは、1つの入力から複数の出力から1つの出力を選択するスイッチング素子であり、アンプ15A,15Bの帰還部分に接続されている。
【0023】
図3に示すゲインテーブル14は、増幅回路7の出力電圧をADコンバーター8のダイナミックレンジに合わせるために、増幅回路7の出力電圧の桁ごとの増加に応じて増幅回路7のゲインが減少するように増幅回路7内のマルチプレクサー16A,16Bの信号を設定したテーブルデータである。制御演算回路12は、可変エタロン駆動回路13、増幅回路7および、ADコンバーター8と接続している。
次に、本実施形態の光フィルター装置における1波長分の測定の流れを以下に示す。
【0024】
(測定手順)
まず、可変エタロン駆動回路13は、制御演算回路12からの指令により電圧設定メモリー10に格納されたV−λテーブル9に応じて、波長毎の静電アクチュエーターに印加する駆動電圧を出力する(ステップ1)。
測定対象1からの反射した光2もしくは透過した光3は、可変エタロン4を透過し受光素子5に入る(ステップ2)。
受光素子5はフォトダイオードなどの電流出力素子であり、素子に接続されたI−V変換回路6にて電圧(受光電圧)に変換される(ステップ3)。
受光電圧は、I−V変換回路6の出力に接続された増幅回路7により増幅される(ステップ4)。
増幅された受光電圧は、増幅回路7の出力に接続されたADコンバーター8によりアナログ信号からデジタル信号に変換される(ステップ5)。以上のステップ1からステップ5が、図4の時間ta〜tbに対応する。
デジタル信号に変換された受光電圧はマイコン11により事前測定される(ステップ6)。このステップ6は、図4の時間tbに対応する。
【0025】
事前測定した受光電圧とADコンバーター8のダイナミックレンジを合わせるため、制御演算回路12からの指令により電圧設定メモリー10に格納されたゲインテーブル14(図3参照)に応じて、増幅回路7のゲインを変更する(ステップ7)。このステップ7は、図4の時間tb〜tcに対応する。
本測定を開始する(ステップ8)。このステップ8は、図4の時間tcに対応する。
受光電圧は、I−V変換回路6の出力に接続された増幅回路7により増幅される(ステップ9)。
増幅された受光電圧は、増幅回路7の出力に接続されたADコンバーター8によりアナログ信号からデジタル信号に変換される(ステップ10)。ステップ9,10は、図4の時間tc〜tdに対応する。
デジタル信号に変換された受光電圧はマイコン11により本測定される(ステップ11)。このステップ11は、図4の時間tdに対応する。
【0026】
以上のように、従来の光フィルター装置におけるスペクトル測定と比べて、基準電圧になるまで何度も測定電圧をフィードバックして増幅回路のゲインを調整することなく、1度の事前測定で受光電圧をADコンバーター8のダイナミックレンジに合うように増幅回路7のゲインを決定できる。このため、従来と比べて測定時間を短縮でき、また、事前測定で得られた受光電圧をADコンバーター8のダイナミックレンジに合わせているため、アナログ信号からデジタル信号に変換する際の変換誤差を小さくできる。
【0027】
(第2実施形態)
図5は本実施形態における可変エタロンを用いた光フィルター装置の構成を示すブロック図である。図6は増幅回路と積分回路の構成を示す図である。図7は増幅回路内のマルチプレクサーの信号と積分回路における積分時間を設定したゲインテーブルを示す図である。図8は1波長分測定時の積分回路の出力電圧、エタロンの駆動電圧、帰還コンデンサーの放電の波形の概要を説明するための図である。
【0028】
図5に示すように、光フィルター装置200は、可変エタロン4と、受光素子5と、I−V変換回路6と、増幅回路7と、積分回路18と、ADコンバーター8と、可変エタロン駆動回路13と、制御演算回路12を備えている。
可変エタロン4は、対向する基板に外力、たとえば静電アクチュエーターなどを用いて基板間のギャップを調整し、透過する波長を変えるものである。
可変エタロン駆動回路13は、制御演算回路12の命令により可変エタロン4の静電アクチュエーターなどに電圧を印加するものである。
受光素子5は、フォトダイオードなどの電流出力素子であり、可変エタロン4から入った光を電流信号に変換するものである。
【0029】
I−V変換回路6は、受光素子5から出力された電流を電圧(受光電圧)に変換するものである。
増幅回路7は、I−V変換回路6から出力された電圧を増幅するものであり、制御演算回路12の命令によりゲインの調整をして切り替えるものである。
積分回路18は、増幅回路7から出力された電圧を時間に対して積分する回路であり、制御演算回路12より積分時間を設定するものである。
ADコンバーター8は、積分回路18から出力された電圧信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するものである。
制御演算回路12は、ADコンバーター8から出力されたデジタル信号化された電圧を取り込むものである。また、制御演算回路12は、増幅回路7のゲイン変更および可変エタロン駆動回路13の出力電圧の設定を行うものである。
【0030】
図5において制御演算回路12はマイコン11とゲインテーブル19とV−λテーブル9を格納する電圧設定メモリー10とからなる。
マイコン11は、マイクロコンピューターやゲートアレイ等で構成されるものである。
V−λテーブル9は、可変エタロン4の駆動電圧(V)に対する可変エタロン4のギャップ間の距離に対応する透過波長(λ)のデータが格納されており、電圧データに基づいて、可変エタロンの駆動電圧のレベルが決定されるものである。
ゲインテーブル19は、増幅回路7の出力電圧と増幅回路7内のマルチプレクサー16A,16Bの信号の関係を設定したデータである。
電圧設定メモリー10は、フラッシュメモリーなどの記憶素子であり、マイコン11に内蔵されていてもよい。
【0031】
図6に示す増幅回路7は、アンプ15A,15Bとマルチプレクサー16A,16Bと帰還抵抗17Aで構成され、マルチプレクサー16A,16Bにより帰還抵抗17Aを変えることでゲインを変更できるものである。また、図6に示す積分回路18は、アンプ15Cと帰還コンデンサー20で構成され、帰還コンデンサーの放電は、制御演算回路12の指令で帰還コンデンサー20に並列に接続したアナログスイッチやフォトカプラーなどのスイッチング素子のオンオフにより行うものである。アンプ15A,15Bは、I−V変換回路6から出力された電圧を増幅するものであり、オペアンプなどの信号増幅素子で構成されている。マルチプレクサー16A,16Bは、1つの入力から複数の出力から1つの出力を選択するスイッチング素子であり、アンプ15A,15Bの帰還部分に接続されている。
【0032】
図7に示すゲインテーブル19は、積分回路18の出力電圧をADコンバーター8のダイナミックレンジに合わせるために、積分回路18の出力電圧の桁ごとの増加に応じて増幅回路7のゲインが減少するように増幅回路7内のマルチプレクサー16A,16Bの信号を設定したテーブルデータである。制御演算回路12は、可変エタロン駆動回路13、増幅回路7、積分回路18および、ADコンバーター8と接続している。
次に本実施形態の光フィルター装置における1波長分の測定の流れを以下に示す。
【0033】
(測定手順)
可変エタロン駆動回路13は、制御演算回路12からの指令により電圧設定メモリー10に格納されたV−λテーブル9に応じて、波長毎の静電アクチュエーターに印加する駆動電圧を出力する(ステップ21)。
制御演算回路12からの指令により可変エタロン駆動完了まで積分回路内の帰還コンデンサー20を放電し続け、積分回路18の出力電圧を0Vにする(ステップ22)。ステップ22では、図8の時間t1〜t2に対応する。
測定対象1からの反射した光2もしくは透過した光3は、可変エタロン4を透過し受光素子5に入る(ステップ23)。
受光素子5はフォトダイオードなどの電流出力素子であり、素子に接続されたI−V変換回路6にて電圧(受光電圧)に変換される(ステップ24)。
受光電圧は、I−V変換回路6の出力に接続された増幅回路7により増幅される(ステップ25)。
増幅された受光電圧は、増幅回路7の出力に接続された積分回路18により制御演算回路12から命令された時間だけ積分される(ステップ26)。
積分された受光電圧は、積分回路18の出力に接続されたADコンバーター8によりアナログ信号からデジタル信号に変換される(ステップ27)。ステップ23〜27は、図8の時間t2〜t3に対応する。
デジタル信号に変換された受光電圧はマイコン11により事前測定される(ステップ28)。このステップ28は、図8の時間t3に対応する。
【0034】
制御演算回路12からの指令により電圧設定メモリー10に格納されたゲインテーブル19(図7参照)に応じて、増幅回路7のゲインと積分時間を変更する(ステップ29)。
積分回路内の帰還コンデンサー20は、制御演算回路12からの指令により増幅回路7のゲインと積分時間の変更が完了するまで放電し続け、積分回路18の出力電圧を0Vにして次の受光電圧測定に備える(ステップ30)。このステップ29,30は、図8の時間t3〜t4に対応する。
本測定を開始する(ステップ31)。
受光電圧は、I−V変換回路6の出力に接続された増幅回路7により増幅される(ステップ32)。
増幅された受光電圧は、増幅回路7の出力に接続された積分回路18により制御演算回路12から命令された時間だけ積分される(ステップ33)。
積分された受光電圧は、積分回路18の出力に接続されたADコンバーター8によりアナログ信号からデジタル信号に変換される(ステップ34)。ステップ31〜34は、図8の時間t4〜t5に対応する。
デジタル信号に変換された受光電圧はマイコン11により本測定される(ステップ35)。ステップ35は、図8の時間t5に対応する。
【0035】
以上のように、従来の光フィルター装置におけるスペクトルの測定と比べて、基準電圧になるまで何度も測定電圧をフィードバックして増幅回路のゲインを調整することなく、1度の事前測定で受光電圧をADコンバーター8のダイナミックレンジに合うように増幅回路7のゲインを決定できる。このため、従来と比べて測定時間を短縮でき、また、事前測定で得られた受光電圧をADコンバーター8のダイナミックレンジに合わせているため、アナログ信号からデジタル信号に変換する際の変換誤差を小さくできる。
また、積分回路18を追加することでモニター等の時間に対して光量が変化する光源に対しても測定可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1…測定対象、2…測定対象から反射した光、3…測定対象から透過した光、4…可変エタロン、5…受光素子、6…I−V変換回路、7…増幅回路、8…ADコンバーター、9…V−λテーブル、10…電圧設定メモリー、11…マイコン、12…制御演算回路、13…可変エタロン駆動回路、14…ゲインテーブル、15A〜15C…アンプ、16A,16B…マルチプレクサー、17A,17B…帰還抵抗、18…積分回路、19…ゲインテーブル、20…帰還コンデンサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の波長の光を出射する透過波長可変干渉フィルターと、
前記透過波長可変干渉フィルターを駆動させる可変エタロン駆動回路と、
前記透過波長可変干渉フィルターから出射された光を受光する受光素子と、
前記受光素子に接続されたI−V変換回路と、
前記I−V変換回路に接続されゲイン切り替え機能を有する増幅回路と、
前記増幅回路に接続されたADコンバーターと、
前記増幅回路および前記ADコンバーターに接続されたマイコンと、
前記マイコンに接続され、前記増幅回路のゲインのデータであるゲインテーブルを有する電圧設定メモリーと、
を備え、
前記受光素子で検出された電流に基づき受光電圧の事前測定を行い、
前記電圧設定メモリーに記憶させた事前測定で得られた前記受光電圧に対する前記増幅回路のゲインの前記ゲインテーブルを参照し、事前測定で得られた前記受光電圧を前記ADコンバーターのダイナミックレンジに合うように前記増幅回路のゲインを調整することを特徴とする光フィルター装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光フィルター装置において、
前記増幅回路および前記ADコンバーターに接続された積分回路を含み、
前記電圧設定メモリーに事前測定で得られた前記受光電圧に対する積分時間のデータテーブルを追加したこと特徴とする光フィルター装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光フィルター装置において、
前記ゲインテーブルは前記積分回路の出力電圧と前記ADコンバーターのダイナミックレンジに合わせるために、前記積分回路の出力電圧の桁ごとの増加に応じて前記増幅回路のゲインと積分時間が減少するようにそれぞれ前記増幅回路内のマルチプレクサーの信号と積分時間を設定すること特徴とする光フィルター装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光フィルター装置において、
前記透過波長可変干渉フィルターの駆動と同期させて前記積分回路内の帰還コンデンサーを放電させることを特徴とする光フィルター装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−247286(P2012−247286A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118792(P2011−118792)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】