説明

光フィルタ

【課題】 ゲートデバイスを使用しないで、構成を簡略化かつ小型化し、低損失、高S/N比が得られ、かつ低価格の光フィルタを提供する。
【解決手段】 2つのアレイ導波路格子(13−1.13−2)の間を、位相調節用の屈折率制御部(15)を設けた導波路(14)で接続し、入力側のアレイ導波路格子の入力ポートのうちの2つのポートに2入力2出力の方向性結合器(12−1)を接続するとともに、出力側のアレイ導波路格子の出力ポートのうちの2つのポートに2入力2出力の方向性結合器(12−2)を接続する。各波長成分に対して、等価的にマッハツェンダ型干渉計を構成することができ、ゲートデバイスを使用しないで光フィルタを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号のレベル調節のための可変光減衰および利得等化、波長多重信号光の波長選択、波長ブロッキング、アド/ドロップなどの波長制御を行う光フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
波長多重信号光の波長選択フィルタ(光伝送路中所望の波長のみを選択するフィルタ)としては、従来は、図1の(A)に示すような構成が用いられてきた(非特許文献1)。同図において、1は入力導波路、2−1、2−2はアレイ導波路格子、3−1〜3−I(I:1以上の整数)は導波路、4−1〜4−Iはゲートデバイス(強度調節デバイス)、5は出力導波路である。ゲートデバイス4−1〜4−Iはマッハツェンダ型光スイッチ、半導体レーザ増幅器などを用いて構成することができる。
【0003】
図1の(B)は、上記のゲートデバイス4−1〜4−I(総括番号;4)の各々をマッハツェンダ型干渉計で構成した例を示している。同図において、6−1、6−2は方向性結合器、7は導波路位相調節部である。この場合、このデバイスは通常石英系ガラス導波路技術を用いて作製される。各ゲートデバイス4−1〜4−Iは、導波路位相調節部7を用いて導波路の屈折率を調節し、スイッチングを行うことにより、信号光を2出力のいずれか一方に振り分けることができ、これにより信号光の取捨選択を行うことができる。
【0004】
ゲートデバイス4−1〜4−Iとして、半導体レーザ増幅器(図示しない)を用いる場合には、半導体レーザ増幅器に供給する注入電流に応じて信号光を透過または遮断することができる。
【0005】
この従来の波長選択フィルタでは、図1の(A)に示しように、入力導波路1から入射した波長λ〜λを有する波長多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)信号光を、波長分波作用を有する入力側のアレイ導波路格子2−1によって複数の導波路3−1〜3−Iに分波した後、それぞれの対応するゲートデバイス4−1〜4−Iを用いて所望波長の選択を行った後、波長合波作用を有する出力側のアレイ導波路格子2−2を用いて、出力導波路5に必要波長信号のみを出力する。
【0006】
【非特許文献1】R. Kasahara et al., “A compact optical wavelength selector composed of arrayed-waveguide gratings and an optical gate array integrated on a single PLC platform,” IEEE Photonics Technology Letters, vol.12, no.1, pp.34-36, Jan. 2000.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のデバイス構成では、入力信号光波長数と一致したゲートデバイス4−1〜4−Iを用いなければならなかった。そのため、(1)デバイス構成の複雑化および付随するデバイスの大型化を招き、さらに(2)ゲートデバイスをマッハツェンダ型干渉計とした場合には、損失を増加させ、(3)ゲートデバイスを半導体レーザ増幅器とした場合には、信号S/N比の劣化、プロセスの複雑化(ハイブリッド集積プロセス)およびフィルタの高価格化を招く、などの解決すべき点があった。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するために成されたものであって、ゲートデバイスを使用しない構成にすることによって、構成を簡略化かつ小型化し、低損失、高S/N比が得られ、かつ低価格の光フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の光フィルタは、基板上に形成されてN個の波長(Nは1以上の整数)の制御を行う光フィルタであって、前記N個の波長からなる波長多重信号光を一方に入力する2本の入力側導波路と、前記2本の入力側導波路を近接させて構成した2入力2出力の第1の方向性結合器と、前記第1の方向性結合器の2本の出力導波路に接続する分波用の第1のアレイ導波路格子と、前記第1のアレイ導波路格子の出力導波路中の(N+1)本に1対1で接続する(N+1)本の接続導波路と、前記(N+1)本の接続導波路中の少なくともN本の接続導波路上にそれぞれ配置した導波路の屈折率を制御する少なくともN個の屈折率制御部と、前記(N+1)本の接続導波路の出力側に1対1で接続する少なくとも(N+1)本の入力導波路を有する合波用の第2のアレイ導波路格子と、前記第2のアレイ導波路格子の2本の出力導波路に接続する2本の出力側導波路と、前記2本の出力側導波路を近接させて構成した2入力2出力の第2の方向性結合器とを有することを特徴とする。
【0010】
ここで、前記第1のアレイ導波路格子の出力導波路と前記第2のアレイ導波路格子の入力導波路との(N+1)箇所の接続部分の長さがそれぞれ等しく設定され、前記第1の方向性結合器と前記第1のアレイ導波路格子との2箇所の接続部分の長さがそれぞれ等しく設定され、前記第2のアレイ導波路格子と前記第2の方向性結合器との2箇所の接続部分の長さがそれぞれ等しく設定されていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、前記第1の方向性結合器と前記第1のアレイ導波路格子との2箇所の接続部分の上部導波路と下部導波路との長さの差がΔL、前記第2のアレイ導波路格子と前記第2の方向性結合器との2箇所の接続部分の上部導波路と下部導波路との長さの差がΔLである場合に、前記第1のアレイ導波路格子の出力導波路と前記第2のアレイ導波路格子の入力導波路との(N+1)本の接続部分の隣り合う部分の上部導波路と下部導波路との長さの差ΔLを、ΔL=(ΔL+ΔL)と設定したことを特徴とすることができる。
【0012】
また、前記第1の方向性結合器および前記第2の方向性結合器の少なくともいずれか一方が、結合率可変の方向性結合器であることを特徴とすることができる。
【0013】
また、前記結合率可変の方向性結合器が、位相調整部を有する1段または複数段の、対称または非対称のマッハツェンダ型干渉計で構成されていることを特徴とすることができる。
【0014】
また、前記屈折率制御部が、熱光学位相シフト用薄膜ヒータを有することを特徴とすることができる。
【0015】
また、前記熱光学位相シフト用薄膜ヒータの近傍に断熱溝が設けられていることを特徴とすることができる。
【0016】
また、前記アレイ導波路格子の替わりに、非対称マッハツェンダ型干渉計を1つあるいは複数用いたフィルタ、あるいはグレーティングを1つあるいは複数用いたフィルタ、あるいは誘電体多層膜構造のバルク型フィルタを1つあるいは複数用いたフィルタを用いたことを特徴とすることができる。
【0017】
また、本発明の光フィルタは、他の態様として、基板上に形成されてN個の波長(Nは1以上の整数)の制御を行う光フィルタであって、前記N個の波長からなる波長多重信号光を一方に入力する2本の入力側導波路と、前記2本の入力側導波路を近接させて構成した2入力2出力の方向性結合器と、前記方向性結合器の2本の出力導波路に接続するアレイ導波路格子と、前記アレイ導波路格子の出力導波路中の(N+1)本に1対1で接続する(N+1)本の接続導波路と、前記(N+1)本の接続導波路中の少なくともN本の接続導波路上にそれぞれ配置した導波路の屈折率を制御する少なくともN個の屈折率制御部と、前記(N+1)本の接続導波路の一端に配置されて該接続導波路を伝搬してきた光信号を再び該接続導波路へ戻す光反射手段とを有し、前記入力側導波路が光信号を出力する入出力共用であることを特徴とすることができる。
【0018】
また、本発明の光フィルタは、さらに他の態様として、基板上に形成されてN個の波長(Nは1以上の整数)の制御を行う光フィルタであって、前記N個の波長からなる波長多重信号光を一方に入力する2本の入力側導波路と、前記2本の入力側導波路を近接させて構成した2入力2出力の第1の方向性結合器と、前記第1の方向性結合器の2本の出力導波路に接続するアレイ導波路格子と、前記アレイ導波路格子の出力導波路中の(N+1)本に1対1で接続する(N+1)本の接続導波路と、前記(N+1)本の接続導波路中の少なくともN本の接続導波路上にそれぞれ配置した導波路の屈折率を制御する少なくともN個の屈折率制御部とを有し、前記(N+1)本の接続導波路の末端が前記アレイ導波路格子の未使用の(N+1)本の入力(または出力)ポートに接続し、該アレイ導波路格子の未使用の2本の出力(または入力)導波路に接続する2本の出力側導波路と、前記2本の出力側導波路を近接させて構成した2入力2出力の第2の方向性結合器とを有することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
上記のように、本発明の光フィルタは、2つのアレイ導波路格子間を、屈折率制御部を設置した導波路で接続し、2つのアレイ導波路格子の未接続の入力および出力端それぞれに2入力2出力の方向性結合器を接続することによって、アレイ導波路格子間に直接強度調節デバイスを挿入することなく、各波長成分に関して対称あるいは非対称的にマッハツェンダ型干渉計を等価的に構成することができる。従って、アレイ導波路格子間に直接強度調節デバイスを挿入しない簡略化かつ小型化された構成で、低損失、高S/N比、かつ低価格の光フィルタを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図2の(A)〜(D)は、本発明の第1の実施形態の光フィルタの構成例を示す。デバイスの全体構成を表わす同図の(A)に示すように、本実施形態の光フィルタは、シリコン基板(図示しない)上に形成した石英導波路型平面光波回路10であって、導波路11−1〜11−8、これら導波路を数μmオーダで近接させて構成した方向性結合器12−1、12−2、一対のアレイ導波路格子13−1、13−2、(N+1)本(Nは1以上の整数)の導波路14−1〜14−N+1、およびN個の熱光学位相シフト用薄膜ヒータ(クロム、窒化タンタル等)15−2〜15−N+1を備える。この構成で、導波路14−1上に熱光学位相シフト用薄膜ヒータを設置しても何らかまわず、熱光学位相シフト用薄膜ヒータ15−2の予備として使用することができる。
【0021】
小型、安定、および低損失化を目的として、シリコン基板上に石英導波路(クラッド:SiO、コア:SiO−GeO)を形成する周知の平面光波回路技術を用いて、導波路11−1〜11−8等のすべての構成要素を作製する。だが、その石英導波路部分を、半導体導波路、LiNbO(LN)あるいはKTa1-xNb(KTN)等の強誘電体導波路、ポリマー導波路、光ファイバなど、またはこれらを複合した導波路構成および各導波路材料に使用可能な位相シフト手段(これらは図示しない)で置き換えることももちろん可能である。
【0022】
図2の(B)は、上記のアレイ導波路格子13−1、13−2(総括番号;13)のそれぞれの構成を示す。同図に示すように、アレイ導波路格子13は、入力導波路アレイ16、入力側のスラブ導波路17−1、アレイ導波路18、出力側のスラブ導波路17−2、および出力導波路アレイ19を備える。
【0023】
アレイ導波路格子13−1、13−2を用いることにより、波長多重信号の合波あるいは分波を1素子で行うことができる。なお、これらアレイ導波路格子の替わりに、非対称マッハツェンダ型干渉計を1つあるいは複数用いたフィルタ、グレーティングを1つあるいは複数用いたフィルタ、誘電体多層膜構造のバルク型フィルタを1つあるいは複数用いたフィルタ(これらフィルタは図示しない)、などを用いることも可能である。
【0024】
簡単のため、入力側の導波路11−3と11−4、アレイ導波路格子間に接続された複数の導波路14−iと14−i+1(i:1〜Nの整数)、および出力側の導波路11−5と11−6の長さはそれぞれ互いに等しいとする。もちろん、これらの長さは異なっていても良い。
【0025】
入力側の導波路11−1から波長多重信号λ〜λ(λ<λ<λ・・・<λ)を入力する。方向性結合器12−1の強度分配比を1:1に設定した場合、信号λ〜λは導波路11−3、11−4に等強度で分配される。入力側のアレイ導波路格子13−1によって導波路11−3の波長成分は、導波路14−2〜14−N+1上に図2の(A)において実線で囲まれた部分に示すように分波されるものとする。導波路11−3と導波路11−4とがアレイ導波路格子13−1の隣り合うチャネルのポートに入力された場合において、導波路11−4の波長成分は、導波路14−1〜14−N上に図2の(A)において破線で囲まれた部分に示すように分波される。
【0026】
両アレイ導波路格子13−1、13−2の特性が同一で、左右対称に配置されたものであるとすると、上記の実線部分と破線部分の波長成分はそれぞれ、導波路11−5、11−6に合波され、出力側の方向性結合器12−2を通過後、出力側の導波路11−7、11−8のいずれかに出力される。
【0027】
従って、波長λに関して、光路i−1(導波路11−3→アレイ導波路格子13−1→導波路14−i+1→アレイ導波路格子13−2→導波路11−5)と、光路i−2(導波路11−4→アレイ導波路格子13−1→導波路14−i→アレイ導波路格子13−2→導波路11−6)とを2つの長さの等しいアームとし、入力が導波路11−1、11−2、出力が導波路11−7、11−8である、図2の(C)に示すような、対称マッハツェンダ型干渉計が等価的に構成される。同図に示すように、入力を導波路11−1とする場合、波長λ成分は、例えば熱光学位相シフト用薄膜ヒータ15−i+1を用いて両アーム間の位相差を2Jπ、(2J+1)π(J:整数)とした場合に、図3の(A)に実線の曲線と破線の曲線で示すように、それぞれ導波路11−8、11−7に出力される。熱光学位相シフト用薄膜ヒータ15−i+1は波長λi+1成分(1≦i≦N−1)のスイッチングにも影響を及ぼすが、図2の(D)に示すように、次段の熱光学位相シフト用薄膜ヒータ15−i+2を用いてスイッチング状態の調整が可能である。このようにして、各波長成分のスイッチング状態の制御を所望特性に応じて順次行う。また、位相差をπの整数倍、およびそれ以外の様々な値に設定することによって、各波長成分の可変減衰器も構成可能である。
【0028】
また、熱光学位相シフト用薄膜ヒータ15−1〜15−N+1の近傍に石英部分を除去した断熱溝(図示しない)を設けて、これら熱光学位相シフト用薄膜ヒータ間の熱クロストークを低減する構成も有効である。
【0029】
なお、上記の図2の(A)の構成例では、導波路11−3と11−4、導波路14−i〜14−i+1、導波路11−5と11−6の長さをそれぞれ互いに等しいとしたが、導波路11−3と11−4、導波路11−5と11−6の長さがそれぞれ異なり、その差がそれぞれΔL、ΔLである場合、導波路14−iと14−i+1との長さの差ΔLを(ΔL+ΔL)と設定することにより、同様に各波長に対して等価的に対称マッハツェンダ型干渉計を構成することができる。
【0030】
図2の(A)の構成は、導波路14−1〜14−N+1を近接させているので、外乱に強い。
【0031】
(第2の実施形態)
図4の(A)、(B)は、本発明の第2の実施形態の光フィルタの構成例を示す。デバイスの全体構成を表わす同図の(A)に示すように、本実施形態の光フィルタは、シリコン基板(図示しない)上に形成した石英導波路型平面光波回路20であって、導波路21−1〜21−12、導波路を数μmオーダで近接させ構成した方向性結合器22−1〜22−4、熱光学位相シフト用薄膜ヒータ23−1、23−2、アレイ導波路格子24−1、24−2、導波路25−1〜25−N+1、および熱光学位相シフト用薄膜ヒータ26−2〜26−N+1を備える。
【0032】
導波路21−3、21−4、および導波路21−9、21−10間の長さの差は0で、図4の(A)中の破線部A、Bで囲った部分では、熱光学位相シフト用薄膜ヒータ23−1、23−2の位相シフト量によって光強度の分配・結合比が変化する対称マッハツェンダ型干渉計型の結合率可変方向性結合器が構成されている。
【0033】
ここで、簡単のため、導波路21−5と21−6、導波路25−jと25−j+1(j:1〜Nの整数)、および導波路21−7と21−8のそれぞれの長さの差を0と設定する。この場合、図4の(B)に示すように、両端の方向性結合器を対称マッハツェンダ型干渉計で置き換えた対称マッハツェンダ型干渉計が等価的に構成される。導波路を数μmオーダで近接させ構成した方向性結合器22−1〜22−4の強度分配比が作製誤差等により1:1からずれた場合には、その対称マッハツェンダ型干渉計のスイッチング特性(クロスポートの損失特性、バーポートの消光比特性)が、図3の(B)に示すように、劣化する。しかしながら、対称マッハツェンダ型干渉計構成の方向性結合器の場合、熱光学位相シフト用薄膜ヒータ23−1、23−2による導波路21−3、21−9の位相調整によって、その強度分配比を1:1に調節することは比較的容易である。そのため、図4の(B)に示す構成を用いることによって、良好なスイッチング特性を有する対称マッハツェンダ型干渉計を構成することができ、図4の(A)に示すデバイスの構成全体としても各波長成分のスイッチング特性を良好に制御可能となる。
【0034】
本第2の実施形態の構成例では、方向性結合器を対称マッハツェンダ型干渉計1段で構成したが、これを多段接続することも可能で、この場合には作製誤差にさらに影響を受けない結合率可変方向性結合器を実現できる。また、例えば、方向性結合器を非対称マッハツェンダ型干渉計で構成することによって、方向性結合器に波長依存性を持たせる構成を実現することもできる。
【0035】
(他の実施の形態)
図2の(A)、図4の(A)の構成では、アレイ導波路格子を2つずつ用いたが、以下のような構成によって、アレイ導波路格子を1つに削減することも可能である。図2の(A)を例として説明すると、1)導波路14−1〜14−N+1の一端に光を反射する手段(図示しない)を配置することで、アレイ導波路格子13−2以降の出力側の構成要素を全て削除し、導波路11−1,11−2を入出力共用とする構成、あるいは2)アレイ導波路格子13−2以降の出力側の構成要素を第2の方向性結合器を除いて全て削除し、かつ導波路14−1〜14−N+1の一端をアレイ導波路格子13−1の未使用の入力(または出力)ポートに接続した上で、アレイ導波路格子13−1の当該未使用の出力(または入力)ポート2つと第2の方向性結合器とを接続する構成、などがある。なお、これらの変形例もその作用効果は前述の各実施形態のものとほぼ同様である。
【0036】
上記では、本発明の好適な実施形態を例示して説明したが、本発明の実施形態は上記例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内であれば、その構成部材等の置換、変更、追加、個数の増減、形状の設計変更等の各種変形は、全て本発明の実施形態に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の光フィルタは、光信号のレベル調節のための可変光減衰および利得等化、波長多重信号光の波長選択、波長ブロッキング、アド/ドロップなどの波長制御を行うことができ、光通信、光信号処理、光センシング分野などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来の波長選択フィルタの構成を示すブロック図であって、(A)は全体の構成を示す図、(B)はゲートデバイスの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の光フィルタの構成を示すブロック図であって、(A)は全体の構成を示す図、(B)はアレイ導波路格子の構成を示す図、(C)および(D)はそれぞれその光フィルタの等価回路を示す図である。
【図3】本発明に係る対称マッハツェンダ型干渉計の特性を示す図であり、(A)は方向性結合器の強度結合率0.5の場合の強度透過特性を示す図、(B)は方向性結合器の強度結合率0.3の場合の強度透過特性を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の光フィルタの構成を示すブロック図であって、(A)は全体の構成を示す図、(B)はその光フィルタの等価回路を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 入力導波路
2−1、2−2 アレイ導波路格子
3−1〜3−I 導波路
4−1〜4−I ゲートデバイス(強度調節デバイス)
5 出力導波路
6−1、6−2 方向性結合器
7 導波路位相調節部
10 石英導波路型平面光波回路
11−1〜11−8 導波路
12−1、12−2 導波路を数μmオーダで近接させ構成した方向性結合器
13−1、13−2 アレイ導波路格子
14−1〜14−N+1 導波路
15−2〜15−N+1 熱光学位相シフト用薄膜ヒータ
16 入力導波路アレイ
17−1、17−2 スラブ導波路
18 アレイ導波路
19 出力導波路アレイ
20 石英導波路型平面光波回路
21−1〜21−12 導波路
22−1〜22−4 導波路を数μmオーダで近接させ構成した方向性結合器
23−1、23−2 熱光学位相シフト用薄膜ヒータ
24−1、24−2 アレイ導波路格子
25−1〜25−N+1 導波路
26−2〜26−N+1 熱光学位相シフト用薄膜ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されてN個の波長(Nは1以上の整数)の制御を行う光フィルタであって、
前記N個の波長からなる波長多重信号光を一方に入力する2本の入力側導波路と、
前記2本の入力側導波路を近接させて構成した2入力2出力の第1の方向性結合器と、
前記第1の方向性結合器の2本の出力導波路に接続する分波用の第1のアレイ導波路格子と、
前記第1のアレイ導波路格子の出力導波路中の(N+1)本に1対1で接続する(N+1)本の接続導波路と、
前記(N+1)本の接続導波路中の少なくともN本の接続導波路上にそれぞれ配置した導波路の屈折率を制御する少なくともN個の屈折率制御部と、
前記(N+1)本の接続導波路の出力側に1対1で接続する少なくとも(N+1)本の入力導波路を有する合波用の第2のアレイ導波路格子と、
前記第2のアレイ導波路格子の2本の出力導波路に接続する2本の出力側導波路と、
前記2本の出力側導波路を近接させて構成した2入力2出力の第2の方向性結合器と
を有することを特徴とする光フィルタ。
【請求項2】
前記第1のアレイ導波路格子の出力導波路と前記第2のアレイ導波路格子の入力導波路との(N+1)箇所の接続部分の長さがそれぞれ等しく設定され、
前記第1の方向性結合器と前記第1のアレイ導波路格子との2箇所の接続部分の長さがそれぞれ等しく設定され、
前記第2のアレイ導波路格子と前記第2の方向性結合器との2箇所の接続部分の長さがそれぞれ等しく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項3】
前記第1の方向性結合器と前記第1のアレイ導波路格子との2箇所の接続部分の上部導波路と下部導波路との長さの差がΔL、前記第2のアレイ導波路格子と前記第2の方向性結合器との2箇所の接続部分の上部導波路と下部導波路との長さの差がΔLである場合に、
前記第1のアレイ導波路格子の出力導波路と前記第2のアレイ導波路格子の入力導波路との(N+1)本の接続部分の隣り合う部分の上部導波路と下部導波路との長さの差ΔLを、ΔL=(ΔL+ΔL)と設定したことを特徴とする請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項4】
前記第1の方向性結合器および前記第2の方向性結合器の少なくともいずれか一方が、結合率可変の方向性結合器であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光フィルタ。
【請求項5】
前記結合率可変の方向性結合器が、位相調整部を有する1段または複数段の、対称または非対称のマッハツェンダ型干渉計で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の光フィルタ。
【請求項6】
前記屈折率制御部が、熱光学位相シフト用薄膜ヒータを有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光フィルタ。
【請求項7】
前記熱光学位相シフト用薄膜ヒータの近傍に断熱溝が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の光フィルタ。
【請求項8】
前記アレイ導波路格子の替わりに、非対称マッハツェンダ型干渉計を1つあるいは複数用いたフィルタ、あるいはグレーティングを1つあるいは複数用いたフィルタ、あるいは誘電体多層膜構造のバルク型フィルタを1つあるいは複数用いたフィルタを用いたことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の光フィルタ。
【請求項9】
基板上に形成されてN個の波長(Nは1以上の整数)の制御を行う光フィルタであって、
前記N個の波長からなる波長多重信号光を一方に入力する2本の入力側導波路と、
前記2本の入力側導波路を近接させて構成した2入力2出力の方向性結合器と、
前記方向性結合器の2本の出力導波路に接続するアレイ導波路格子と、
前記アレイ導波路格子の出力導波路中の(N+1)本に1対1で接続する(N+1)本の接続導波路と、
前記(N+1)本の接続導波路中の少なくともN本の接続導波路上にそれぞれ配置した導波路の屈折率を制御する少なくともN個の屈折率制御部と、
前記(N+1)本の接続導波路の一端に配置されて該接続導波路を伝搬してきた光信号を再び該接続導波路へ戻す光反射手段とを有し、
前記入力側導波路が光信号を出力する入出力共用であることを特徴とする光フィルタ。
【請求項10】
基板上に形成されてN個の波長(Nは1以上の整数)の制御を行う光フィルタであって、
前記N個の波長からなる波長多重信号光を一方に入力する2本の入力側導波路と、
前記2本の入力側導波路を近接させて構成した2入力2出力の第1の方向性結合器と、
前記第1の方向性結合器の2本の出力導波路に接続するアレイ導波路格子と、
前記アレイ導波路格子の出力導波路中の(N+1)本に1対1で接続する(N+1)本の接続導波路と、
前記(N+1)本の接続導波路中の少なくともN本の接続導波路上にそれぞれ配置した導波路の屈折率を制御する少なくともN個の屈折率制御部とを有し、
前記(N+1)本の接続導波路の末端が前記アレイ導波路格子の未使用の(N+1)本の入力(または出力)ポートに接続し、該アレイ導波路格子の未使用の2本の出力(または入力)導波路に接続する2本の出力側導波路と、
前記2本の出力側導波路を近接させて構成した2入力2出力の第2の方向性結合器と
を有することを特徴とする光フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−220862(P2006−220862A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33540(P2005−33540)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】