説明

光プリントヘッド、および画像形成装置

【課題】高解像度で画像を形成できる第1のモードと、充分な画質を維持しつつ高速に画像形成できる第2のモードと、を選択して画像を形成する。
【解決手段】
光プリントヘッドにおいて、前記発光継続時間制御手段は、前記発光継続時間を各発光素子毎に個別に調整するとともに、前記発光強度制御手段は、前記一方向に沿って連続するn個(nは2以上の自然数)の前記発光素子からなる発光素子群毎に前記電流の大きさを調整して、各発光素子群毎に同一の大きさで前記電流を供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光プリントヘッドおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファクシミリや、家庭用およびオフィス用複写機などの露光手段として光プリントヘッドが用いられている。
【0003】
かかる従来の光プリントヘッドは、回路基板の上面に、複数の発光素子が直線状に配列されてなる発光素子アレイチップを複数個、一列状に配置させるとともに、これら発光素子アレイチップ上にロッドレンズアレイ等のレンズアレイを配設した構成を有している。発光素子アレイチップの発光素子を外部からの画像データに基づいて個々に選択的に発光させると、発光した光は、レンズアレイを介して感光体に照射・結像され、感光体に所定の潜像が形成される。そして、感光体に形成された潜像は、その後、所定の現像プロセスを経てトナー像となり、このトナー像を記録紙に転写・定着させることによって記録紙に所定の画像が記録される。
【0004】
下記特許文献1には、従来の光プリントヘッドの一例が開示されている。例えば特許文献1に記載の光プリントヘッドは、発光素子の発光を制御する制御ICを有している。この制御ICには、発光素子の発光量バラツキを補正するための発光強度制御データ(補正データ)と、各発光素子の発光時間を設定する階調データとを一対にした画像データが入力される。制御ICは、この画像データに基づいて発光素子の発光制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−54959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような光プリントヘッドでは、画像の高解像度化が進み、用いられる発光素子の数が増大すると、制御ICが処理すべき画像データの量が増大する。例えば1200dpiの解像度に対応するピッチで配列された発光素子の発光制御を行う場合には、解像度が600dpiの場合と比較して、各発光素子に対応する画像データの量が2倍になる。このため、制御ICにおける画像データの処理量、転送量も大きくなり、特定の大きさの画像を形成するのにかかる時間が増大するといった課題があった。また、このようなデータ処理、転送量にかかる時間を減少するために、処理速度の速いICを光プリントヘッドに搭載したり、データ転送にかかるノイズ発生が少ない配線などを光プリントヘッドに設けた場合も、光プリントヘッドが高価となるといった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願は、複数の発光素子が一方向に沿って配列された発光素子アレイ、前記発光素子アレイの前記発光素子を発光させるための電流を前記発光素子に供給する電流供給部、および複数の前記発光素子を所定の発光周波数で順次発光させる発光制御部を有しており、前記発光制御部が、前記電流供給部から前記発光素子に供給される前記電流の大きさを調整して前記発光素子毎の発光強度を制御する発光強度制御手段、および前記発光素子に対する前記電流の供給継続時間を調整して前記発光素子の発光継続時間を制御する発光継続時間制御手段を備える光プリントヘッドであって、前記発光継続時間制御手段は、前記発光継続時間を各発光素子毎に個別に調整するとともに、前記発
光強度制御手段は、前記一方向に沿って連続するn個(nは2以上の自然数)の前記発光素子からなる発光素子群毎に前記電流の大きさを調整して、各発光素子群毎に同一の大きさで前記電流を供給することを特徴とする光プリントヘッドを提供する。
【0008】
また、複数の発光素子が一方向に沿って配列された発光素子アレイ、前記発光素子アレイの前記発光素子を発光させるための電流を前記発光素子に供給する電流供給部、および複数の前記発光素子を所定の発光周波数で順次発光させる発光制御部を有しており、前記発光制御部が、前記電流供給部から前記発光素子に供給される前記電流の大きさを調整して前記発光素子毎の発光強度を制御する発光強度制御手段、および前記発光素子に対する前記電流の供給継続時間を調整して前記発光素子の発光継続時間を制御する発光継続時間制御手段を備える光プリントヘッドと、前記光プリントヘッドにおける前記発光素子の発光動作を制御するためのヘッド動作制御部とを有する画像形成装置であって、前記ヘッド動作制御部は、前記光プリントヘッドの前記発光制御部において、前記発光継続時間制御手段が、複数の前記発光素子それぞれへの前記電流の前記供給継続時間を全て個別に調整するとともに、前記発光強度制御手段が、複数の前記発光素子それぞれへ供給する前記電流の大きさを全て個別に調整する第1のモードと、前記光プリントヘッドの前記発光制御部において、前記発光強度制御手段が、前記一方向に沿って連続するn個(nは2以上の自然数)の前記発光素子からなる発光素子群毎に前記電流の大きさを調整して、前記発光素子群毎に同一の大きさで前記電流を供給する第2のモードとの2つのモードのいずれかで、前記光プリントヘッドを発光動作させることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光プリントヘッドによれば、比較的高い発光周波数で発光素子を発光させることができ、画像形成にかかる時間を短くすることができる。本発明の画像形成装置によれば、コンパクトかつ安価な構成でありながら、高解像度で画像を形成できる第1のモードと、充分な画質を維持しつつ高速に画像形成できる第2のモードと、を選択して画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態による光プリントヘッドの概略構成図である。
【図3】本実施形態の光プリントヘッドが備える画像データ処理回路の構成について説明する図である。
【図4】本発明の画像形成装置における第1のモードの例と、第2のモードの例と、の相違点について説明する概略図であり、(a)は第1のモードの例、(b)は第2のモードの例を示している。
【図5】(a)は第1のモードにおける発光タイミングを示す図であり、(b)は第2のモードにおける発光タイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略図である。図1において、1は画像形成装置の一例としてのカラープリンタ、2は筐体、3K、3Y、3C、3Mは各々ブラック、イエロー、シアン、マゼンダ用の画像形成部で、10K、10Y、10C、10Mは、各色のトナーホッパーである。また、12は用紙14を収納する給紙カセット、13は給紙ガイド、11aと11bは搬送ベルト駆動ローラ、8は搬送ベルト、9は転写ローラ、17
は定着部、15は排紙ガイド、16は排紙部である。また、各色の画像形成部3K、3Y、3C、3Mは、各々、現像器4、感光体5、主帯電器6、光プリントヘッド7、動作モード制御部37、プリント電源部(図示せず)、クリーニング部20等から構成されている。
【0012】
一方、給紙カセット12から送出された用紙14は、給紙ガイド13により案内されて、反時計方向に回転している搬送ベルト8の上面に吸着されて、各色の画像形成部3K、3Y、3C、3Mの真下を通過するときに、転写ローラ9によって各色の画像が用紙14に順次転写される。この様に、用紙14上でフルカラー画像を形成した4色のトナーは、用紙4が定着部17を通過する際に定着される。その後、用紙14は排紙ガイド15により、排紙部16に排出案内される。
【0013】
カラープリンタ1において、主帯電器6によって帯電された感光体5上には、光プリントヘッド7によって静電潜像が形成され、現像器4により現像されて可視画像が形成される。
【0014】
モード制御部37は、プリンタ1の筐体2に設けられた図示しない操作パネル等の入力インターフェースと接続されており、このインターフェースを介して外部から入力される指令を受け取る。モード制御部37は、画像処理回路34と接続されており、外部から入力された指令に応じ光プリントヘッド7の発光動作モードを選択して切り替えることができる。モード制御部37は、光プリントヘッド7を、後述する第1のモードまたは第2のモードのいずれか一方のモードで発光させる。
【0015】
図2は、本実施形態による光プリントヘッド7(および画像処理回路34)の概略構成図であり、図3は、光プリントヘッド7が備える画像データ処理回路34の構成について説明する図である。
【0016】
光プリントヘッド7は、複数の発光素子44が配列された発光素子アレイ31と、各発光素子44の発光を制御する駆動IC(発光制御部)33と、この駆動IC33と配線を介して電気的に接続されたコネクタ(図示せず)と、各発光素子44の発光特性に応じた補正データが記憶されたEEPROM46とを有する。また、光プリントヘッド7は、画像処理回路34を備えている。画像処理回路34は、光プリントヘッド7における発光動作を制御する。画像処理回路34は、ネットワークケーブルやCD−ROMドライブなどの情報読み込み手段と接続された図示しない入力インターフェースを介して、プリンタ1にて形成する画像を表す基画像データを受け取り、受け取った画像データに基づき、光プリントヘッド7における各発光素子の発光動作を制御する。画像処理回路34は、後述する駆動IC(発光制御部)33と接続されている。
【0017】
発光素子アレイ31、駆動IC33、およびEEPROM46は、プリント基板30上に設けられている。光プリントヘッド7は、さらに、発光素子アレイ31の上方に配されて正立等倍の像を結像するレンズアレイを備え、上述のプリント基板30とレンズアレイ等は、図示しない保持部材により保持されている。
【0018】
基板30は、ガラス布基材エポキシ樹脂やガラス、セラミック等の電気絶縁性材料からなる矩形状のベースの上面に多数の回路配線を所定パターンに被着させてなり、その上面でもって複数個の発光素子アレイ31や駆動IC33等を支持する。
【0019】
光プリントヘッド7の基板30上に搭載した複数個の発光素子アレイ31は、基板30の長手方向に沿って一列状に配置されており、各々の発光素子アレイ31の上面には、たとえば600dpi(dot per inch)の密度で直線状に配列した複数の発光素子44と、この複数の発光素子44に電気的に接続される多数の接続パッドとを有しており、これら各接続パッドはボンディングワイヤを介して基板30上の回路配線に電気的に接続される。
【0020】
発光素子44は、例えば公知のLED素子であり、GaAlAs系やGaAsP系の発光素子等からなり、p型半導体とn型半導体とをpn接合して構成され、外部より回路配線および接続パッド等を介して発光素子44に電源電力が印加されると、p型半導体の内部に電子が、n型半導体の内部に正孔がそれぞれ注入され、これらキャリアをpn接合付近で再結合させ、この結合の際に生じたエネルギーを光に変換することによって発光素子44が所定の輝度で発光する。発光素子44は、公知の半導体製造プロセスを経て形成されている。すなわち、一枚の半導体製造用ウエハ上にエピタキシャル成長された半導体結晶層を加工することで形成されている。発光素子アレイ31は、一枚のウエハに形成された発光素子44を、複数個同時に含む領域毎に切り出されたものであり、ウエハ上で近接して配置された発光素子44同士は、結晶構造や形状精度がある程度似通っている。このため、例えば同一強度の電流を供給した場合、近接配置された発光素子44では略同等の発光強度が得られる。
【0021】
EEPROM46は、例えば公知のEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)であり、光プリントヘッド7に配置された複数の発光素子44に対
応する補正データ(強度制御データに対応)を全て記憶している。この補正データは、例えば光プリントヘッドの製造工程において、製品の組み上げ後に実際に光プリントヘッド7の各発光素子44を発光させ、この発光状態を測定した結果も基づいて導出したものを予め記憶しておけばよい。補正データは、例えば、発光素子の発光量の発光強度分布と、像担持体である感光体の半減露光感度による強度閾値とに基づいて、求めたものを用いればよく、補正データの種類については特に限定されない。上述のように、一方向(長手方向)に連続する発光素子44同士では発光特性が似通っており、ある程度の範囲にわたって連続した発光素子44同士の補正データは略同一の値をもちやすい傾向にある。EEPROM46には、このような補正データが予め記憶されている。
【0022】
画像データ処理回路34には、図示しないデータバスおよびデータ送受信手段を介して、外部から基画像データが入力される。また、EEPROM46から補正データが入力される。画像データ処理回路34は、入力された基画像データに対し、階調処理等の画像処理を適宜行い、基画像データを、例えばこの基画像データに対応する各画素の階調等を表す階調データ(時間制御データに対応)に変換する。階調データは、上記ブラック、イエロー、シアン、およびマゼンダの色毎に分離された画素濃度を示すためのデータである。そして、画像データ処理回路34は、上記階調データと補正データとを一対にした画像データDATA01−10を生成し出力する。本実施形態において、階調データは、例えば各発光素子の発光継続時間に対応する、発光素子44への電流の供給継続時間を示す4ビットのデータであり、補正データは、発光素子へ供給する電流の大きさを制御するための、例えば6ビットのデータである。なお、本発明において、補正データ(強度制御データ)のビット数αと、階調データ(時間制御データ)のビット数βは、特に限定されない。
【0023】
画像データ処理回路34は、さらに、光プリントヘッド7に配列された複数の発光素子44をダイナミック駆動するための、後述のCLK信号やSTB信号を生成し、光プリントヘッド7に供給する。
【0024】
駆動IC33は、基板30に設けられた配線を介してコネクタ(図示せず)と接続されており、コネクタはケーブルを介して画像データ処理回路34と接続されている。駆動IC33は、画像データ処理回路34から供給される上記画像データDATA01−10、CLK信号、およびSTB信号等を受け取る。
【0025】
このような駆動IC33は、先に述べた発光素子アレイ31と同様に、ボンディングワイヤを介してプリント基板30上の対応する回路配線に電気的に接続されている。
駆動IC33は、複数個の発光素子アレイ31毎に1つずつ設けられており、基板30表
面に設けられた配線を介して、対応する複数の発光素子44と接続している。本実施形態による光プリントヘッド7では、各駆動IC33に対応する発光素子アレイ31の複数の発光素子44が共通に接続され、各駆動IC33によって、発光素子アレイ31毎に発光素子44を選択的に駆動するダイナミック方式によって各発光素子44を時分割駆動する構成としている。
【0026】
駆動IC33は、発光強度制御手段52、発光時間制御手段54、ラッチ回路(記憶領域)56、差動回路(ODD/EVEN差動伝送回路)58を備え、さらには、図示しないCLKカウンタ、SCLKカウンタ等を備えている。またさらに、画像データ処理回路34から出力される10ビットの画像データDATA01−DATA10が入力されるデータ入力端子、並びに、ストローブ(STB)信号、SCLK信号、リセット(RST)信号、クロック(CLK)信号、および制御信号がそれぞれ入力される、STB端子、SCLK端子、RST端子、CLK端子等を備えている。発光強度制御手段52は、図示しない発光強度制御用のシフトレジスタおよびラッチ回路等を備えて構成されており、発光時間制御手段54は、図示しない発光時間制御用のシフトレジスタおよびラッチ回路等を備えて構成されている。
【0027】
差動回路(ODD/EVEN差動伝送回路)58は、公知の差動伝送回路であり、ラッチ回路56等から読み出した強度制御データを分割して伝送する。具体的には、長手方向に沿って奇数番目の発光素子44を制御する強度制御データの群と、偶数番目の発光素子44を制御する強度制御データの群とに分割し、これらのデータ群を交互に伝送する。プリンタ1に備えられたモード制御部37は、画像処理回路34に接続されており、この差動回路58の動作状態を制御することで、光プリントヘッド7を、後述する第1のモードまたは第2のモードのいずれか一方のモードで発光させる。
【0028】
以下、光プリンタ1における画像形成動作について説明する。光プリンタ1ではモード制御部37が、外部から入力された指令に応じて、光プリントヘッド7を第1のモードまたは第2のモードのいずれかで発光させる。
【0029】
図4は、第1のモードと第2のモードの相違点について説明する概略図である。図4(a)は、第1のモードにおける、画像データと発光素子との対応関係を示す概略図であり、図4(b)は、第2のモードにおける、画像データと発光素子との対応関係を示す概略図である。
【0030】
第1のモードでは、配列された複数の発光素子44に対して、αビットの強度制御データ(A、A、・・・A)を供給するとともに、βビットの時間制御データ(B、B、・・・B)を供給する。光プリンタヘッド7に配列された発光素子44の数をN個とした場合、第1のモードでは、光プリントヘッド7に配列された複数の発光素子44の全てをひととおり発光させるために、(α+β)ビットの画像データを、発光素子アレイに対してN回供給する必要がある。
【0031】
一方の第2のモードでは、長手方向に連続したn個(nは2以上の自然数。図4ではn=2)の発光素子44からなる発光素子群毎に、共通の強度制御データ(A、A、・・・AN´)を供給するとともに、各発光素子44に対し、いずれも異なるβ/nビット
の時間制御データを供給する。光プリンタヘッド7に配列された発光素子44の数をN個とした場合、第2のモードでは、光プリントヘッド7に配列された複数の発光素子44の全てをひととおり発光させるために、第1のモードの同じビット数の(α+β)ビットの画像データを、発光素子アレイに対してN´(N>N´=N/n)回だけ供給すればよい。な
お、図4(b)では、n=2の場合を例に図示しているが、このnの値については特に限定されない。また、αは2以上の偶数であり、βはnの倍数とされている。
【0032】
このように、第2のモードでは、(α+β)ビットの画像データ1つで、n個の発光素子44からなる発光素子群全体について、発光強度と発光継続時間の双方を制御することができる。このため、駆動IC33による画像データの処理速度を同一とした場合、第1のモードに比べて第2のモードの方が、発光素子アレイの発光周波数をより高くすることができる。
【0033】
図5は、第1のモードにおける発光素子44の発光タイミングと、第2モードにおける発光素子44の発光タイミングとを示す図であり、(a)は第1のモードにおける発光タイミング、(b)は第2のモードにおける発光タイミングを、それぞれ示している。上述の説明の通り、第1のモードで2つの発光素子を発光させる時間『T』の間に、第2のモードでは、4つの発光素子を発光させることができる。
【0034】
すなわち、第2のモードでは、光プリンタ1における一枚の画像形成に係る時間を、第1のモードに比べて短くすることができる。光プリンタ1を使用するユーザが、画像が形成されたプリントを短時間で取得したい場合など、第2のモードで画像形成すればよい。
【0035】
なお、第2のモードでは、一方向に連続したn個の発光素子において、共通の強度制御データを用いる。上述のように、LED等の発光素子の製造過程において、ウエハ上で近接して配置された発光素子44同士は、結晶構造や形状精度がある程度似通っており、例えば同一強度の電流を供給した場合、近接配置された発光素子44では略同等の発光強度が得られる。第2のモードにおいても、各発光素子44の発光強度は、強度制御データによって充分な精度で制御されているといえる。
【0036】
また、第1のモードは、時間制御データのビット数が、第2のモードにおけるビット数β/nと比べてより多く(ビット数β)なっている。このため、例えば、光プリンタ1を使用するユーザが、高画質な(階調数の多い)画像が形成されたプリントを取得したい場合など、第1のモードで画像形成すればよい。
【0037】
プリンタ1では、このように充分な画質を有しつつ画像形成速度がより高い第2のモードと、充分な画像形成速度を維持しつつより高い画質の画像を形成することができる第1のモードとを備え、ユーザーが、いずれのモードで画像形成するかを選択することができる。
【0038】
次に、第1のモードおよび第2のモードでの各部の動作について説明しておく。まず、ヘッド動作制御部11が、外部から入力された指令に応じて、光プリントヘッド7を第1のモードで発光させる場合について説明する。
【0039】
この第1のモードでは、差動回路58を機能させず、発光時間制御手段54が画像データに応じて、複数の発光素子44それぞれへの電流の供給時間を全て個別に調整するとともに、発光強度補正手段52が、複数の発光素子44それぞれへ供給する電流の大きさを全て個別に調整する。
【0040】
第1のモードにおいては、まず、駆動IC33に、画像データ信号DATA01−10が、クロック信号CLKと共に入力される。この画像データDATA01−10は、6ビットの補正データと4ビットの階調データからなる計10ビットのデータであり、補正データが発光強度制御手段52のシフトレジスタに、階調データが発光時間制御手段54のシフトレジスタに、それぞれパラレルに転送される。例えば、64CLKで64dot分のデータを駆動IC33内のラッチ回路56にシリアルで入力する。このとき、補正データ6ビットと階調データ4ビット計10ビットを1ドット分としてパラレルに入力する。
この際、CLKカウンタによりRST信号が送られることで、ラッチ回路56には、64クロック毎に画像データが格納される。このラッチ回路56へ、64CLK分の画像データが格納されると同時に、駆動IC33から回路基板30に設けられたスイッチングIC(図示せず)へBLK信号が出力される。このBLK信号に応じてスイッチングICは、画像データを供給する発光素子の選択範囲を切り替える。LED発光用の電流はラッチ直後のSTBデータのLOW時間内とタイミングを合わせて出力され、STB信号がHIGHとなったタイミングで電流もOFFになる。データ転送とラッチとSTB発光制御を繰り返すことで、発光素子44が連続して発光する。
【0041】
次に、モード制御部37が、外部から入力された指令に応じて、光プリントヘッド7を第2のモードで発光させる場合について説明する。
【0042】
この第2のモードでは、差動回路58を機能させ、発光時間制御手段54が画像データに応じて、複数の発光素子44それぞれへの電流の供給時間を全て個別に調整するとともに、隣接するn個の発光素子44からなる発光素子群毎に電流の大きさを調整して、各発光素子群毎に同一の大きさの電流を供給する。
【0043】
モード制御部37は、差動回路(ODD/EVEN差動伝送回路)58を制御して、奇数アドレスのデータ伝送と、偶数アドレスのデータ伝送とを切り替えることで、発光時間制御手段54は、階調制御データ4ビットの前段2ビットと後段2ビットを隣あう2ドット分の階調制御データとして制御することになる。例えば、前段2ビットが奇数ドット、後段2ドットが偶数ドットのデータに相当する。
【0044】
第2のモードでは、第1のモードにおける64CLK時間単位の半分である、32CLK時間単位で、第1のモードの64CLK時間単位に対応する数の発光素子44分の画像データを転送することができる。CLKカウンタは差動回路58から出力されたLOW信号により、32CLKでBLK信号を発生させる。差動回路58は、STB信号も32CLK単位で制御する。第2のモードでは、前の32CLKで奇数番目の発光素子44が発光し、後の32CLKで偶数番目の発光素子44が発光される。
【0045】
第2のモードでは、差動伝送回路58によって、第1のモードで「T」時間単位で伝送していた画像データを、「T/2」時間単位で転送することができ、比較的短時間で画像を形成することができる。
【0046】
本実施形態の光プリントヘッドでは、ダイナミック駆動方式により、複数の発光素子を時分割駆動しており、光プリントヘッドに一度に供給される電流は比較的少なくされている。また、発光素子の発熱量も比較的少なく、発光素子の発熱にともなう発光量の変動等も抑制され、比較的高精度に発光量が駆動されている。
【0047】
本発明の光プリントヘッドによれば、比較的高い発光周波数で発光素子を発光させることができ、画像形成にかかる時間を短くすることができる。また、本発明の画像形成装置によれば、コンパクトかつ安価な構成でありながら、高解像度で画像を形成できる第1のモードと、充分な画質を維持しつつ高速に画像形成できる第2のモードと、を選択して画像を形成することができる。
【0048】
以上、本発明の一実施形態であるプリンタ装置および光プリントヘッドについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 カラープリンタ
2 筐体
3K、3Y、3C、3M 画像形成部
10K、10Y、10C、10M トナーホッパー
4 現像器
5 感光体
6 主帯電器
7 光プリントヘッド
8 搬送ベルト
9 転写ローラ
11a、11b 搬送ベルト駆動ローラ
12 給紙カセット
15 用紙
16 排紙部
17 定着部
20 クリーニング部
30 プリント基板
31 LED素子アレイ
33 駆動IC(発光制御部)
34 画像データ処理回路
37 動作モード制御部
46 EEPROM
52 発光強度制御手段
54 発光時間制御手段
56 ラッチ回路(記憶領域)
58 差動回路(ODD/EVEN差動伝送回路)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が一方向に沿って配列された発光素子アレイ、前記発光素子アレイの前記発光素子を発光させるための電流を前記発光素子に供給する電流供給部、および複数の前記発光素子を所定の発光周波数で順次発光させる発光制御部を有しており、前記発光制御部が、前記電流供給部から前記発光素子に供給される前記電流の大きさを調整して前記発光素子毎の発光強度を制御する発光強度制御手段、および前記発光素子に対する前記電流の供給継続時間を調整して前記発光素子の発光継続時間を制御する発光継続時間制御手段を備える光プリントヘッドであって、
前記発光継続時間制御手段は、前記発光継続時間を各発光素子毎に個別に調整するとともに、
前記発光強度制御手段は、前記一方向に沿って連続するn個(nは2以上の自然数)の前記発光素子からなる発光素子群毎に前記電流の大きさを調整して、各発光素子群毎に同一の大きさで前記電流を供給することを特徴とする光プリントヘッド。
【請求項2】
前記発光強度制御手段は、前記発光強度を制御するためのαビット(αは2以上の偶数)の強度制御データに基づいて前記発光強度を制御し、
前記発光継続時間制御手段は、前記発光継続時間を制御するためのβビット(βはnの倍数)の時間制御データに基づいて前記発光継続時間を制御し、
前記発光制御部は、
前記αビットの前記強度制御データと前記βビットの前記時間制御データとの組合せからなる(α+β)ビットの発光制御用データを、同時に複数個記憶する記憶領域を備えることを特徴とする請求項1記載の光プリントヘッド。
【請求項3】
前記発光制御部は、前記記憶領域から前記時間制御データを読み出し、読み出した前記時間制御データをβ/nビットのn個の分割制御データに分けて、1つの前記分割制御データに基づいて1つの前記発光素子の発光を制御することを特徴とする請求項2記載の光プリントヘッド。
【請求項4】
nは2であり、
前記発光制御部はODD/EVEN差動伝送回路を備え、
前記ODD/EVEN差動伝送回路によって、前記記憶領域から読み出した前記時間制御データをβ/2ビットの2個の前記分割制御データに分けることを特徴とする請求項3記載の光プリントヘッド。
【請求項5】
複数の発光素子が一方向に沿って配列された発光素子アレイ、前記発光素子アレイの前記発光素子を発光させるための電流を前記発光素子に供給する電流供給部、および複数の前記発光素子を所定の発光周波数で順次発光させる発光制御部を有しており、前記発光制御部が、前記電流供給部から前記発光素子に供給される前記電流の大きさを調整して前記発光素子毎の発光強度を制御する発光強度制御手段、および前記発光素子に対する前記電流の供給継続時間を調整して前記発光素子の発光継続時間を制御する発光継続時間制御手段を備える光プリントヘッドと、
前記光プリントヘッドにおける前記発光素子の発光動作を制御するためのヘッド動作制御部とを有する画像形成装置であって、
前記ヘッド動作制御部は、
前記光プリントヘッドの前記発光制御部において、前記発光継続時間制御手段が、複数の前記発光素子それぞれへの前記電流の前記供給継続時間を全て個別に調整するとともに、前記発光強度制御手段が、複数の前記発光素子それぞれへ供給する前記電流の大きさを全て個別に調整する第1のモードと、
前記光プリントヘッドの前記発光制御部において、前記発光強度制御手段が、前記一方向
に沿って連続するn個(nは2以上の自然数)の前記発光素子からなる発光素子群毎に前記電流の大きさを調整して、前記発光素子群毎に同一の大きさで前記電流を供給する第2のモードと
の2つのモードのいずれかで、前記光プリントヘッドを発光動作させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記発光強度制御手段は、前記発光強度を制御するためのαビット(αは2以上の偶数)の強度制御データに基づいて前記発光強度を制御し、
前記発光継続時間制御手段は、前記発光継続時間を制御するためのβビット(βはnの倍数)の時間制御データに基づいて前記発光継続時間を制御し、
前記発光制御部は、
前記αビットの前記強度制御データと前記βビットの前記時間制御データとの組合せからなる(α+β)ビットの発光制御用データを、同時に複数個記憶する記憶領域を備えることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記発光制御部は、前記記憶領域から前記時間制御データを読み出し、読み出した前記時間制御データをβ/nビットのn個の分割制御データに分けて、1つの前記分割制御データに基づいて1つの前記発光素子の発光を制御することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
nは2であり、
前記発光制御部はODD/EVEN差動伝送回路を備え、
前記ODD/EVEN差動伝送回路によって、前記記憶領域から読み出した前記時間制御データをβ/2ビットの2個の前記分割制御データに分けることを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−111212(P2012−111212A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264530(P2010−264530)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】