説明

光ヘッド装置

【課題】光ヘッド装置の部品点数の削減および小型化を実現する。
【解決手段】第1波長帯の光、第2波長帯の光および第3波長帯の光に対応した反射光を受光する単一の光検出器と、第2波長帯および第3波長帯のS偏光の光を透過させるとともに、第1波長帯のS偏光の光を反射させる第1偏向手段と、少なくとも第2波長帯および第3波長帯のS偏光の光を反射させるとともに、第1波長帯、第2波長帯および第3波長帯のP偏光の光を透過させる第2偏向手段と、第2波長帯の光および第3波長帯の光の往路において第2波長帯の光および第3波長帯の光を透過させるとともに、第1波長帯の光、第2波長帯の光および第3波長帯の光の復路において第1波長帯の光の一部を回折させる偏光ホログラム素子と、1/4波長板とを備え、偏光ホログラム素子への復路入射光の偏光方向が3つの波長帯で揃っていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ストレージを扱う光学系として、CD、DVD、光磁気ディスクなどの光記録媒体および、「Blu−ray」(登録商標:以下、BD)などの高密度光記録媒体(以下、これらを総称して「光ディスク」という。)に情報の記録および/または再生(以下、「記録・再生」という。)を行う光ヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD、DVD、BDなど異なる波長の光を用いて各光ディスクに記録・再生を行う光ヘッド装置が開発されている。このような光ヘッド装置には、複数の異なる波長の光に対して共通して用いる光学部品による部品点数の削減、小型化が求められている。また、光源となる半導体レーザについて、いわゆる2波長レーザ、3波長レーザとして、複数種の発振波長を有する半導体レーザを一体形成する技術を用いて、2波長レーザまたは3波長レーザを発振する半導体を1つのパッケージに収めた半導体レーザの開発が検討されている。
【0003】
また、光ヘッド装置の部品点数の削減、小型化のために、波長が異なる2つまたは3つの光について、各波長の光に対応したそれぞれの光ディスクに対して球面収差を低減して集光させる対物レンズも開発されている。さらに、各光ディスクの情報記録面で反射した信号光などを検出する光検出器について、波長が異なる2つまたは3つの光に対して共通する受光光学系を有し、1つの光検出器で複数の波長の光情報を検出する光ヘッド装置が検討、開発されている。
【0004】
光検出器は、複数の受光エリアを有し、各光ディスクから反射された光がそれぞれの受光エリアに到達するように配置されている。そして、受光エリアに到達した光の信号(光量)を演算処理することによって、再生RF信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号などを生成する。ここで、各光ディスクの情報記録面から反射された、波長が異なる複数の光を1つの光検出器で受光させる光ヘッド装置の一例として、例えば、特許文献1には、BDより反射した光と、CDまたはDVDより反射した光とを、それぞれ異なるセンサーパターンで受光させる光ヘッド装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、偏光ホログラム素子を用いて1ビーム法でトラッキングとフォーカシング信号を得る発光素子および受光素子を1つのユニットとして実装した光ヘッド装置が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、CDおよびDVDに対応した発光・受光ユニットとBDに対応した発光・受光ユニットを併用することにより、CD、DVD、BDそれぞれの光ディスク規格に対応した光ヘッド装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−146685号公報
【特許文献2】特許第4437806号明細書
【特許文献3】特許第4466450号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、いずれの特許文献に記載の技術も、CD用、DVD用、BD用の3つの波長の光を用いる場合に、これらの光信号を最適に処理しているとは言い難い。例えば、CDとDVDとBD用の3つの光を1つの光検出器で受光させ、かつそのような光検出器と光源とが1つのユニットとして実装されるといった発光・受光ユニットは存在しなかった。
【0009】
そこで、本発明は、3つの異なる波長の光を用いて、各々記録フォーマットの異なる光ディスクに情報を記録・再生する光ヘッド装置において、各光ディスクの情報記録面から反射された光信号を最適に処理し、これにより光ヘッド装置の部品点数の削減および小型化の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による光ヘッド装置は、3つの異なる波長の光を各々記録フォーマットの異なる光ディスクに集光するとともに、前記3つの異なる波長の光の前記光ディスクにおける反射光を各々受光する光ヘッド装置であって、
最も波長の短い第1波長帯の光を出力する第1光源(例えば、光源101b)と、
前記第1波長帯よりも波長の長い第2波長帯の光と、前記第2波長帯よりも波長の長い第3波長帯の光の両方またはいずれかを出力する第2光源(例えば、光源101a)と、
前記第1波長帯の光、第2波長帯の光および第3波長帯の光に対応した前記反射光を受光する単一の光検出器(例えば、光検出器113)と、
前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の往路と、前記第1波長帯の光の往路とを一部重ねるための偏向手段であって、前記第2波長帯および前記第3波長帯の直線偏光の光であるS偏光の光を透過させるとともに、前記第1波長帯のS偏光の光を反射させる第1偏向手段(例えば、偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面122や偏光ビームスプリッタ103)と、
少なくとも前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の往路と、前記第1波長帯の光、前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の復路とを一部重ねるための偏向手段であって、少なくとも前記第2波長帯および前記第3波長帯のS偏光の光を反射させるとともに、前記第1波長帯、前記第2波長帯および前記第3波長帯の前記S偏光の光と直交するP偏光の光を透過させる第2偏向手段(例えば、偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面123や偏光・ダイクロイックプリズム112の接合面125)と、
少なくとも前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の往路と、前記第1波長帯の光、前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の復路とが重なる光路上に配置され、前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の往路において前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光を透過させるとともに、前記第1波長帯の光、前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の復路において前記第1波長帯の光の一部を回折させる偏光ホログラム素子(例えば、ホログラム素子30)と、
前記第1波長帯の光、前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の往路と復路において、それぞれπ/2の位相差を生じさせる1/4波長板(例えば、1/4波長板108a,108b)とを備え、前記偏光ホログラム素子への復路入射光の偏光方向が前記3つの波長帯で揃っていることを特徴とする。
【0011】
また、光ヘッド装置は、前記第1光源と、前記第2光源と、前記光検出器と、前記第1偏向手段に相当する接合面および前記第2偏向手段に相当する接合面を具備した偏光・ダイクロイックプリズムとを有してなる発光・受光ユニット(例えば、発光・受光ユニット998)を備え、前記第2偏向手段に相当する接合面(例えば、偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面122)で、前記第1波長帯、前記第2波長帯および前記第3波長帯のS偏光の光を反射させるとともに、前記第1波長帯、前記第2波長帯および前記第3波長帯のP偏光の光を透過させてもよい。
【0012】
また、光ヘッド装置は、前記第2光源と、前記光検出器と、前記第2偏向手段に相当する接合面を具備した偏光・ダイクロイックプリズムとを有してなる発光・受光ユニット(例えば、発光・受光ユニット999)を備えていてもよい。
【0013】
また、前記偏光ホログラム素子は、前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光に対する0次回折効率が、往路で90%以上、かつ復路で70%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、3つの異なる波長の光を用いて、各々記録フォーマットの異なる光ディスクを記録・再生する光ヘッド装置において、各光ディスクの情報記録面から反射された光信号を最適に処理し、これにより光ヘッド装置のさらなる小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ヘッド装置の構成例を示す模式図である。
【図2】偏光ホログラム素子30の構成例を示す断面模式図である。
【図3】偏光ホログラム素子30に入射する光の光路および偏光方向を示す模式図である。
【図4】偏光ホログラム素子30の特性例を示す説明図である。
【図5】偏光・ダイクロイックプリズム111における光の光路および偏光方向を示す説明図である。
【図6】偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面121の特性例を示す説明図である。
【図7】偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面121を構成する偏光・波長選択性反射層の構成例を示す説明図である。
【図8】偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面122の特性を示す説明図である。
【図9】偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面122を構成する偏光・波長選択性反射層の構成例を示す説明図である。
【図10】偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面123の特性を示す説明図である。
【図11】偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面123を構成する偏光・波長選択性反射層の構成例を示す説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る光ヘッド装置の構成例を示す模式図である。
【図13】偏光・ダイクロイックプリズム112における光の光路および偏光方向を示す説明図である。
【図14】偏光ビームスプリッタ103の特性例を示す説明図である。
【図15】偏光ビームスプリッタ103の特性例を示す説明図である。
【図16】偏光ビームスプリッタ103を構成する偏光・波長選択性反射層の構成例を示す説明図である。
【図17】本発明の第3の実施形態に係る光ヘッド装置の構成例を示す模式図である。
【図18】偏光・ダイクロイックプリズム112’における光の光路および偏光方向を示す説明図である。
【図19】偏光・ダイクロイックプリズム112’の接合面124’の特性を示す説明図である。
【図20】偏光・ダイクロイックプリズム112’の接合面124’を構成する偏光・波長選択性反射層の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
実施形態1.
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光ヘッド装置の構成例を示す模式図である。図1に示す光ヘッド装置100は、BD、DVD、CD用の3つの異なる波長の光を用い、それぞれの規格の光ディスクの記録・再生が可能な互換性を有する光ヘッド装置である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の光ヘッド装置100は、光源101a、101bと、グレーティング素子102aと、偏光・ダイクロイックプリズム111と、光検出器113と、偏光ホログラム素子30と、コリメータレンズ105と、立ち上げプリズム106、107と、1/4波長板108a、108bと、対物レンズ109a、109bとを備えている。なお、本実施形態の光ヘッド装置100において、光源101a、101b、グレーティング素子102a、偏光・ダイクロイックプリズム111および光検出器113は、1つの発光・受光ユニット998として実装されている。
【0019】
光ヘッド装置100を構成する上述の各光学部品について、光源101a、101bから発射する光の光路を辿りながら説明する。なお、光源から光ディスクに至るまでの光路を「往路」とし、(反射して)光ディスクから光検出器に至るまでの光路を「復路」と定義する。なお、図1では、便宜的にBD用の405nm波長帯の光の軌道を実線、DVD用の660nm波長帯およびCD用の785nm波長帯の光の軌道を点線で示している。また、光軸を一点鎖線で示している。
【0020】
光源101aは、DVD用として660nm波長帯の光とCD用として785nm波長帯の光の両方を発射するハイブリッド型またはモノシリック型の半導体レーザ等である。また、光源101bは、BD用として405nm波長帯の光を発射する半導体レーザ等である。なお、405nm波長帯は385nm〜430nm、660nm波長帯は630nm〜690nm、785nm波長帯は760nm〜810nmの範囲とする。また、以下では、405nm波長帯の光をBD光、660nm波長帯の光をDVD光、785nm波長帯の光をCD光、と表現する場合がある。
【0021】
まず、CD光/DVD光の往路を辿る。光源101aから、ディスク面に平行な方向であってディスクが置かれる方へ向かう方向であるZ方向に発射されたDVD光およびCD光は、グレーティング素子102aで回折されて3ビームとなり、S偏光で偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面121に入射する。偏光・ダイクロイックプリズム111内では、接合面121で反射されてディスク面に垂直な方向であるX方向に偏向された後、接合面122を透過する。そして、接合面123で反射されてZ方向に偏向される。偏光・ダイクロイックプリズム111からZ方向に出射されたDVD光およびCD光は、偏光ホログラム素子30を透過し、コリメータレンズ105に入射して略平行光となる。その後、立ち上げプリズム106に入射し、立ち上げプリズム106によってディスク面に向かう方向である−X方向に偏向される。立ち上げプリズム106によって−X方向に偏向されたDVD光およびCD光は、1/4波長板108aを透過して、対物レンズ109aによって光ディスク110aの情報記録面に集光する。
【0022】
次に、CD光/DVD光の復路を辿る。光ディスク110aの情報記録面で反射されたDVD光およびCD光は、往路を逆方向に進む。すなわち、対物レンズ109aおよび1/4波長板108aを透過して、立ち上げプリズム106によって−Z方向に偏向される。そして、コリメータレンズ105および偏光ホログラム素子30を透過し、偏光・ダイクロイックプリズム111に到達する。このときDVD光およびCD光は、往路および復路で1/4波長板108aを透過したことによりP偏光となって、偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面123に入射する。偏光・ダイクロイックプリズム111内では、P偏光のCD光およびDVD光は、接合面123を透過する。偏光・ダイクロイックプリズム111から−Z方向に出射されたDVD光およびCD光は、図示しないシリンドリカルレンズを透過して、光検出器113に到達する。
【0023】
対物レンズ109aは、DVD光およびCD光に対して集光性があるものであればよい。また、グレーティング素子102aは、直進透過光である0次回折光と、±1次回折光とを発生させ3ビーム法を用いて記録・再生を行うものである。なお、例えば、DVD用の660nm波長帯の光に対して1ビーム法、CD用の785nm波長帯の光に対して3ビーム法を用いる場合には、グレーティング102bとして、一方の波長帯の光のみを回折する波長選択性のグレーティングを用いてもよい。
【0024】
次に、BD光の往路を辿る。光源101bからZ方向に発射されたBD光は、S偏光で偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面122に入射する。偏光・ダイクロイックプリズム111内では、接合面122で反射されX方向に偏向され、さらに接合面123で反射されることにより、Z方向に偏向される。偏光・ダイクロイックプリズム111からZ方向に出射されたBD光は、偏光ホログラム素子30を透過し、コリメータレンズ105に入射して略平行光となる。その後、立ち上げプリズム106を透過した後、立ち上げプリズム107に入射する。そして、立ち上げミラー107により、ディスク面に向かう方向である−X方向に偏向される。立ち上げプリズム107によって−X方向に偏向されたBD光は、1/4波長板108bを透過して、対物レンズ109bによって光ディスク110bの情報記録面に集光する。
【0025】
次に、BD光の復路を辿る。光ディスク110bの情報記録面で反射されたBD光は往路を逆方向に進む。すなわち、対物レンズ109bおよび1/4波長板108bを透過して、立ち上げプリズム107によって−Z方向に偏向される。そして、立ち上げプリズム106、コリメータレンズ105を透過した後、偏光ホログラム素子30で回折される。そして、偏光ホログラム素子30により回折されて出射されたBD光は、偏光・ダイクロイックプリズム111に到達する。このときBD光は、CD光およびDVD光と同様に、往路および復路で1/4波長板108aを透過したことによりP偏光となって、偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面123に入射する。偏光・ダイクロイックプリズム111内では、P偏光のBD光は、接合面123を透過する。偏光・ダイクロイックプリズム111から−Z方向に出射されたBD光は、図示しないシリンドリカルレンズを透過して、光検出器113に到達する。
【0026】
対物レンズ109bは、BD光に対して集光性があるものであればよい。
【0027】
このように、本実施形態の光ヘッド装置100では、往路および復路の偏光方向が3波長とも揃うように各光学部品を配置している。このため、偏光ホログラム素子30は、DVD光およびCD光の往路を略100%透過できるものであれば、例えば、波長選択性のないBD用の偏光ホログラム素子を用いてもよい。なお、略100%透過とは、具体的には70%以上の透過率をいい、より好ましくは80%以上の透過率をいう。
【0028】
図2は、偏光ホログラム素子30の構成例を示す断面模式図である。図2に示すように、偏光ホログラム素子30は、透明基板31a上に、複屈折性材料からなり複屈折材料層33aに相当する凸部と、等方性材料からなり等方性材料層34に相当する凹部とが周期的に配置された回折格子構造を有する。
【0029】
等方性材料層34は、複屈折材料層33aを覆うように形成されてもよいが複屈折材料層33aと同じ高さで交互に配置されてもよい。
【0030】
複屈折性材料層33aは、常光屈折率nと異常光屈折率nとの差の絶対値で表される屈折率異方性Δn(=|n−n|>0)を有し、等方性材料層34の屈折率nが、nまたはnのいずれか一方と略等しくなる材料の組み合わせとする。
【0031】
なお、等方性材料層34にはUV硬化型の透明な接着剤などが利用できる。このようにすることで、例えば、n≒nの場合(n≠n)、偏光ホログラム素子30に入射する光のうち、複屈折性材料層33aの進相軸方向となる光は、屈折率が略一致しているので偏光ホログラム素子30を直進透過し、一方、遅相軸方向となる光は、屈折率が一致しないので少なくとも一部は回折する。また、複屈折性材料層33aと等方性材料層34を構成する材料は、屈折率の波長分散特性を考慮する。
【0032】
複屈折性材料層33aは、複屈折性材料によって形成されていればよく、屈折率異方性Δnが大きいことなどから液晶モノマーを硬化させた高分子液晶を用いるのが好ましい。また、高分子液晶は、偏光ホログラム素子30の凹凸の長手方向と液晶の配向方向に相当する遅相軸とを異ならせて自由に設定できる。
【0033】
従って、図2ではホログラム格子の長手方向をY軸方向としているが、光を透過または回折して到達させる光検出器113の受光エリアのレイアウトに応じて、X−Y平面内の長手方向を自由に設定できる。また、光が入射する有効領域内において、偏光ホログラム素子30は、ホログラム格子の長手方向が1方向の領域のみに限らず、長手方向が異なる複数の領域から構成されて、各領域に入射した光毎、異なる方向に回折させてもよい。
【0034】
また、偏光ホログラム素子30は、図2のようにホログラム格子の断面形状が矩形状に限らず、断面形状がブレーズ形状またはブレーズ形状を階段状に近似した擬似ブレーズ形状であってもよい。なお、ブレーズ形状は鋸歯状とも呼ばれる。この場合、入射した光に対して1方向に高い回折効率で回折させることができる。さらに、ホログラム格子は、断面形状が矩形状となるホログラム格子の領域と、ブレーズ形状または疑似ブレーズ形状となるホログラム格子の領域との組み合わせであってもよい。
【0035】
次に、波長が異なる3つの光に対する偏光ホログラム素子30の光学作用について説明する。図3は、偏光ホログラム素子30に入射する光の光路および偏光方向を示す模式図である。なお、図3(a)は、光ヘッド装置におけるBD光、DVD光、CD光の往路の光路および偏光方向を示す模式図である。すなわち、偏光ホログラム素子30にZ軸方向に進行する3つの波長の光、すなわち波長λの光、波長λの光、波長λの光がいずれもY軸方向の直線偏光の光として入射するときの様子を模式的に示している。なお、波長λは405nm波長帯、波長λは660nm波長帯、波長λは785nm波長帯である。図3(a)において、符号41は、偏光ホログラム素子30に入射する波長λおよびλのY軸方向の直線偏光の光を示している。また、符号42aは、偏光ホログラム素子30から出射される波長λ、λおよびλの0次回折光を示している。また、符号42bは、偏光ホログラム素子30から出射される波長λおよびλの±1次回折光を示している。
【0036】
図3(a)に示すように、光ヘッド装置100の往路において、BD用の波長λの光、DVD用の波長λの光およびCD用の波長λの光は、それぞれY軸方向の直線偏光の光としてZ軸方向に進行しながら偏光ホログラム素子30に入射する。すると、複屈折性材料層33aの液晶がX軸方向に平行に配向され、波長λの光、波長λの光および波長λの光に対してn≒nであるので、波長λの光、波長λの光および波長λの光は、ほぼ回折せず直進透過する。
【0037】
また、図3(b)は、光ヘッド装置におけるBD光の復路の光路および偏光方向を示す模式図である。すなわち、偏光ホログラム素子30に−Z軸方向に進行するBD用の波長λの光がX軸方向の直線偏光の光として入射するときの様子を模式的に示している。図3(b)において、符号51は、偏光ホログラム素子30に入射する波長λのX軸方向の直線偏光の光を示している。また、符号52aは、偏光ホログラム素子30から出射される波長λの0次回折光を示している。また、符号52bは、偏光ホログラム素子30から出射される波長λの±1次回折光を示している。
【0038】
図3(b)に示すように、光ヘッド装置100の復路において、波長λの光は、X軸方向の直線偏光の光として−Z軸方向に進行しながら偏光ホログラム素子30に入射する。すると、複屈折性材料層33aの液晶がX軸方向に平行に配向され、n≠nであるので、波長λの光の一部は回折する。
【0039】
また、図3(c)は、光ヘッド装置におけるDVD光、CD光の復路の光路および偏光方向を示す模式図である。すなわち、偏光ホログラム素子30に−Z軸方向に進行する2つの波長の光、すなわちDVD用の波長λの光、CD用の波長λの光がいずれもX軸方向の直線偏光の光として入射するときの様子を模式的に示している。図3(c)において、符号61は、偏光ホログラム素子30に入射する波長λおよびλのX軸方向の直線偏光の光を示している。また、符号62aは、偏光ホログラム素子30から出射される波長λおよびλの0次回折光を示している。また、符号62bは、偏光ホログラム素子30から出射される波長λおよびλの±1次回折光を示している。
【0040】
図3(c)に示すように、光ヘッド装置100の復路において、波長λの光および波長λの光は、X軸方向の直線偏光の光として−Z軸方向に進行しながら偏光ホログラム素子30に入射する。すると、複屈折性材料層33aの液晶がX軸方向に平行に配向され、n≠nであるので、波長λと同様にその一部は回折するが、等方性材料層34と複屈折性材料層33aの分散を調整して、Δn(=|n−n|>0)の値を波長λおよびλで波長λより小さく調整することにより、回折する光量を小さく抑えることが可能である。
【0041】
DVD用の波長λの光およびCD用の波長λの光は、偏光ホログラム素子30によって回折されたQ次回折光(Q=±1、±2、・・・)を光検出の対象とせず、偏光ホログラム素子30を直進透過する0次回折光のみを検出することがある。そのため、波長λおよび波長λの光に対して、偏光ホログラム素子30のホログラム格子33において0次回折効率が高いことが好ましい。より具体的には、偏光ホログラム素子30を直進透過する光のトータルの0次回折効率は70%以上であればよく、80%以上であればより好ましい。
【0042】
図4は、偏光ホログラム素子30の特性例を示す説明図である。なお、図4(a)は、偏光ホログラム素子30における各波長の格子高さdに応じた0次効率の一例を示すグラフであり、図4(b)は、偏光ホログラム素子30における各波長の格子高さdに応じた1次効率の一例を示すグラフである。なお、本特性は、光ヘッド装置における復路に適用されるものである。なお、往路では各波長とも略100%透過である。また、本特性は、偏光ホログラム素子30の複屈折性材料層33aに、異常光屈折率nがλで1.588、λで1.555、λで1.550であり、常光屈折率nが、λで1.543、λで1.518、λで1.514である複屈折材料を用い、かつ等方性材料層34に屈折率nがλで1.541、λで1.519、λで1.513である材料を用いた場合の例である。
【0043】
図4(a)、(b)に示す例では、例えば格子高さdが2.0[μm]のときのように、波長λの光に対して1次回折率が15%以上あるときでも、波長λおよび波長λの光に対して0次回折効率が90%付近を維持していることがわかる。
【0044】
例えば、光ヘッド装置100が、DVD用の波長λの光に対して往路の光路中にて3ビームとする3ビーム法を利用する場合であっても、偏光ホログラム素子30によって、往復した3ビームの光利用効率を低下させずに光検出器113に到達させることができる。
【0045】
また、ホログラム格子の格子ピッチと回折角との関係として、透明基板面に垂直に波長λの光が格子ピッチPの回折格子に入射するとき、透明基板面の法線(=光の進行方向)に対するQ次回折光(Q=±1、±2、・・・)の回折角θ[°]は、以下の式(1)で表される。
【0046】
θ=Sin−1(Qλ/P) ・・・式(1)
【0047】
従って、光ヘッド装置100における光検出器112の仕様、各受光エリアの位置に合わせて各波長の光の回折効率および回折角度を調整するとよい。
【0048】
また、図5は、偏光・ダイクロイックプリズム111における光の光路および偏光方向を示す説明図である。図5(a)は、光ヘッド装置100におけるDVD光、CD光の往路の光路および偏光方向を示す模式図である。すなわち、偏光・ダイクロイックプリズム111にZ方向に進行する2つの波長の光、すなわちDVD用の波長λの光、CD用の波長λの光がいずれもS偏光(本例では、Y軸方向の直線偏光)の光として入射するときの様子を模式的に示している。図5(a)に示すように、DVD用の波長λの光、CD用の波長λの光は、それぞれY軸方向の直線偏光の光としてZ方向に進行しながら偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面121に入射すると、接合面121で反射されてX方向に偏向される。そして、接合面122を透過し、接合面123に入射する。接合面123に入射すると、接合面123で反射されて、最終的にZ方向に偏向されて出射される。
【0049】
また、図5(b)は、光ヘッド装置100におけるBD光の往路の光路および偏光方向を示す模式図である。すなわち、偏光・ダイクロイックプリズム111にZ方向に進行するBD用の波長λの光がS偏光(本例では、Y軸方向の直線偏光)の光として入射するときの様子を模式的に示している。図5(b)に示すように、BD用の波長λの光は、Y軸方向の直線偏光の光としてZ方向に進行しながら偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面122に入射すると、接合面122で反射されてX方向に偏向される。そして、接合面123に入射する。接合面123に入射すると、接合面123で反射されてZ方向に偏向されて出射される。
【0050】
また、図5(c)は、光ヘッド装置100におけるBD光、DVD光およびCD光の復路の光路および偏光方向を示す模式図である。すなわち、偏光・ダイクロイックプリズム111に−Z方向に進行するBD用の波長λの光、DVD用の波長λの光およびCD用の波長λの光が、それぞれP偏光(本例では、X軸方向の直線偏光)の光として入射するときの様子を模式的に示している。図5(c)に示すように、BD用の波長λの光、DVD用の波長λの光、CD用の波長λの光は、それぞれX軸方向の直線偏光の光として−Z方向に進行しながら偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面123に入射すると、接合面123を透過して出射される。
【0051】
偏光・ダイクロイックプリズム111において、例えば、接合面121は、+Z方向に向かって入射する少なくとも波長λおよびλのS偏光の光を反射させて+X方向に偏向させる機能を有していればよい。また、接合面122は、+X方向に向かって入射する少なくとも波長λおよびλのS偏光の光を透過するとともに、+Z方向に向かって入射する少なくとも波長λのS偏光の光を反射させて+X方向に偏向させる機能を有していればよい。また、接合面123は、+X方向に向かって入射する少なくとも波長λ、λ、λのS偏光の光を反射させて+Z方向に偏向させるとともに、−Z方向に向かって入射する少なくとも波長λ、λ、λのP偏光の光を透過する機能を有していればよい。なお、光の進行方向は上記例に限定されない。例えば、X方向を−X方向、−X方向をX方向としてもかまわないし、Z方向を−Z方向、−Z方向をZ方向としてもかまわない。どの方向へ出射または集光する場合であっても往路および復路において3波長とも偏光方向が揃うように各波長の光が出射および集光されればよい。
【0052】
図6に、本実施形態の偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面121の特性を示す。図6は、偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面121のS偏光の光に対する反射率を示すグラフである。図6に示す接合面121の特性例では、少なくとも波長630nm〜810nmのS偏光の光に対する反射率が95%以上である。なお、計算上は、少なくとも波長630nm〜810nmのS偏光の光に対する反射率は99%以上である。なお、図6では、参考までに、波長645nm〜675nm、765nm〜805nmにおいて反射率が95%となる位置に網掛け線を引いている。
【0053】
図7は、図6に示した接合面121を構成する偏光・波長選択性反射層の構成例を示す説明図である。例えば、接合面121は、石英ガラス基板等の透明基板の一方の平面に、図7に示すようなSiO(屈折率:1.47)とTa(屈折率:2.20)を交互に所定の膜厚になるように積層することによって形成できる。なお、図7では、設計波長λ=405nmのときのndを膜厚として示している。
【0054】
また、図8に、偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面122の特性を示す。なお、図8(a)は、接合面122のS偏光の光に対する透過率を示すグラフであり、図8(b)は、接合面122のS偏光の光に対する反射率を示すグラフである。図8(a),(b)に示す接合面122の特性例では、少なくとも波長630nm〜810nmのS偏光の光に対する透過率が95%以上であるとともに、少なくとも波長385nm〜430nmのS偏光の光に対する反射率が95%以上である。なお、計算上は、波長630nm〜810nmのS偏光の光に対する透過率は99%以上であるとともに、波長385nm〜430nmのS偏光の光に対する反射率は99%以上である。なお、図8では、参考までに、波長397nm〜415nm、645nm〜675nm、765nm〜805nmにおいて透過率が95%となる位置に網掛け線を引いている。
【0055】
図9は、図8に示した接合面122を構成する偏光・波長選択性反射層の構成例を示す説明図である。例えば、接合面122は、石英ガラス基板等の透明基板の一方の平面に、図9に示すようなSiOとTaを交互に所定の膜厚になるように積層することによって形成できる。なお、図9では、設計波長λ=405nmのときのndを膜厚として示している。
【0056】
また、図10に、偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面123の特性を示す。図10(a)は、接合面123のP偏光の光に対する透過率を示すグラフであり、図10(b)は、接合面123のS偏光の光に対する反射率を示すグラフである。図10(a),(b)に示す接合面123の特性例では、少なくとも波長387nm〜425nm、630nm〜690nm、760nm〜810nmのP偏光の光に対する透過率が85%以上であるとともに、少なくとも波長385nm〜430nm、630nm〜690nm、760nm〜810nmのS偏光の光に対する反射率が85%以上である。なお、波長390nm〜420nm、640nm〜680nm、765nm〜810nmのP偏光の光に対する透過率は95%以上であるとともに、波長385nm〜430nm、630nm〜687nm、760nm〜810nmのS偏光の光に対する反射率は95%以上である。なお、図10では、参考までに、波長397nm〜415nm、645nm〜675nm、765nm〜805nmにおいて透過率または反射率が95%となる位置に網掛け線を引いている。
【0057】
図11は、図10に示した接合面123を構成する偏光・波長選択性反射層の構成例を示す説明図である。例えば、接合面123は、石英ガラス基板等の透明基板の一方の平面に、図11に示すようなSiOとTaを交互に所定の膜厚になるように積層することによって形成できる。なお、図11では、設計波長λ=405nmのときのndを膜厚として示している。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、BD光、DVD光、CD光といった3つの異なる波長の光を用いる光ヘッド装置において、BD光、DVD光およびCD光の光路における偏光の組み合わせを工夫することにより、簡易な構成であってもDVD光およびCD光の往路の光量ロスを少なくできる。また、3つの異なる波長の光を、1つの光検出器113で受光する構成とできるので、光ピックアップユニットの小型化や低コスト化が図れる。本実施形態の例でいえば、光検出器113と、光源101a、101b、グレーティング素子102a、偏光・ダイクロイックプリズム111とを組み合わせて1つの発光・受光ユニットとして実装すれば、構成の簡易化や、部品点数の削減、組み立て精度の改善を図ることができる。
【0059】
実施形態2.
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図12は、本発明の第2の実施形態に係る光ヘッド装置の構成例を示す模式図である。図12に示す光ヘッド装置200は、第1の実施形態と同様、BD、DVD、CD用の3つの異なる波長の光を用い、それぞれの規格の光ディスクの記録・再生が可能な互換性を有する光ヘッド装置である。
【0060】
図12に示すように、本実施形態の光ヘッド装置200は、光源101a、101bと、グレーティング素子102aと、偏光・ダイクロイックプリズム112と、光検出器113と、偏光ホログラム素子30と、偏光ビームスプリッタ103と、コリメータレンズ105と、立ち上げプリズム106、107と、1/4波長板108a、108bと、対物レンズ109a、109bとを備えている。なお、本実施形態の光ヘッド装置200において、光源101a、グレーティング素子102a、偏光・ダイクロイックプリズム112および光検出器113は、1つの発光・受光ユニット999として実装されている。
【0061】
なお、光ヘッド装置200は、BD用の光源101bが、発光・受光ユニット999とは別に設けられている点が第1の実施形態の光ヘッド装置100と比べて大きく異なっている。また、それに伴い、偏光ビームスプリッタ103が追加されている点や、偏光ホログラム素子30の配置位置、偏光・ダイクロイックプリズム112の機能が異なっているが、BD光とDVD光およびCD光との間で往路および復路の偏光方向を揃えることにより、DVD光およびCD光の往路光量ロスを抑えつつ、簡易な構成で集積ユニット化を実現している点は、第1の実施形態と同様である。
【0062】
なお、図12では、図1と同様、便宜的にBD用の405nm波長帯の光の軌道を実線、DVD用の660nm波長帯およびCD用の785nm波長帯の光の軌道を点線で示している。また、光軸を一点鎖線で示している。以下、第1の実施形態と同じ光学部品については、同じ符号を付し説明を省略する。
【0063】
光ヘッド装置200を構成する光学部品について、まず、CD光/DVD光の往路を辿る。本実施形態では、光源101aから、Z方向に発射されたDVD光およびCD光は、グレーティング素子102aで回折されて3ビームとなり、S偏光で偏光・ダイクロイックプリズム112の接合面124に入射する。偏光・ダイクロイックプリズム112内では、接合面124で反射されX方向に偏向され、その後接合面125で反射されることにより、Z方向に偏向される。偏光・ダイクロイックプリズム112からZ方向に出射されたDVD光およびCD光は、偏光ホログラム素子30を透過し、偏光ビームスプリッタ103に入射する。S偏光のDVD光およびCD光は、偏光ビームスプリッタ103を透過する。そして、コリメータレンズ105に入射して略平行光となる。その後、立ち上げプリズム106に入射し、立ち上げプリズム106によって−X方向に偏向される。立ち上げプリズム106によって−X方向に偏向されたDVD光およびCD光は、1/4波長板108aを透過して、対物レンズ109aによって光ディスク110aの情報記録面に集光する。
【0064】
次に、CD光/DVD光の復路を辿る。光ディスク110aの情報記録面で反射されたDVD光およびCD光は、往路を逆方向に進む。すなわち、対物レンズ109aおよび1/4波長板108aを透過して、立ち上げプリズム106によって−Z方向に偏向される。そして、コリメータレンズ105を透過し、偏光ビームスプリッタ103に入射する。このときDVD光およびCD光は、往路および復路で1/4波長板108aを透過したことによりP偏光となって、偏光ビームスプリッタ103に入射する。偏光ビームスプリッタ103では、P偏光のDVD光およびCD光を透過する。偏光ビームスプリッタ103から−Z方向に出射されたDVD光およびCD光は、偏光ホログラム素子30を透過し、偏光・ダイクロイックプリズム112に到達する。偏光・ダイクロイックプリズム112内では、P偏光のDVD光およびCD光は、接合面125を透過する。偏光・ダイクロイックプリズム112から−Z方向に出射されたDVD光およびCD光は、図示しないシリンドリカルレンズを透過して、光検出器113に到達する。
【0065】
次に、BD光の往路を辿る。光源101bからZ方向に発射されたBD光は、S偏光で偏光ビームスプリッタ103に入射すると、偏光ビームスプリッタ103により反射されてZ方向に偏向される。偏光ビームスプリッタ103からZ方向に出射されたBD光は、コリメータレンズ105に入射して略平行光となる。その後、立ち上げプリズム106を透過した後、立ち上げプリズム107に入射する。そして、立ち上げミラー107により、ディスク面に向かう方向である−X方向に偏向される。立ち上げプリズム107によって−X方向に偏向されたBD光は、1/4波長板108bを透過して、対物レンズ109bによって光ディスク110bの情報記録面に集光する。
【0066】
次に、BD光の復路を辿る。光ディスク110bの情報記録面で反射されたBD光は往路を逆方向に進む。すなわち、対物レンズ109bおよび1/4波長板108bを透過して、立ち上げプリズム107によって−Z方向に偏向される。そして、立ち上げプリズム106、コリメータレンズ105を透過した後、偏光ビームスプリッタ103に入射する。このときBD光は、往路および復路で1/4波長板108bを透過したことによりP偏光となって、偏光ビームスプリッタ103に入射する。偏光ビームスプリッタ103では、P偏光のBD光を透過する。偏光ビームスプリッタ103から−Z方向に出射されたBD光は、偏光ホログラム素子30に入射する。そして、偏光ホログラム素子30で回折される。偏光ホログラム素子30により回折されて出射されたBD光は、偏光・ダイクロイックプリズム112に到達する。偏光・ダイクロイックプリズム112内では、P偏光のBD光は、接合面125を透過する。偏光・ダイクロイックプリズム112から−Z方向に出射されたBD光は、図示しないシリンドリカルレンズを透過して、光検出器113に到達する。
【0067】
本実施形態の光ヘッド装置200においても、往路および復路の偏光方向が3波長とも揃うように各光学部品を配置している。このため、偏光ホログラム素子30は、DVD光およびCD光の往路を略100%透過できるものであれば、例えば、波長選択性のないBD用の偏光ホログラム素子を用いてもよい。
【0068】
図13は、偏光・ダイクロイックプリズム112における光の光路および偏光方向を示す説明図である。図13(a)は、光ヘッド装置200におけるDVD光、CD光の往路の光路および偏光方向を示す模式図である。すなわち、偏光・ダイクロイックプリズム112にZ方向に進行する2つの波長の光、すなわちDVD用の波長λの光、CD用の波長λの光がいずれもS偏光(本例では、Y軸方向の直線偏光)の光として入射するときの様子を模式的に示している。図13(a)に示すように、DVD用の波長λの光、CD用の波長λの光は、それぞれY軸方向の直線偏光の光としてZ方向に進行しながら偏光・ダイクロイックプリズム112の接合面124に入射すると、接合面124で反射されてX方向に偏向される。そして、接合面125に入射すると、接合面125で反射されて、最終的にZ方向に偏向されて出射される。
【0069】
また、図13(b)は、光ヘッド装置200におけるBD光、DVD光およびCD光の復路の光路および偏光方向を示す模式図である。すなわち、偏光・ダイクロイックプリズム112に−Z方向に進行するBD用の波長λの光、DVD用の波長λの光およびCD用の波長λの光が、それぞれP偏光(本例では、X軸方向の直線偏光)の光として入射するときの様子を模式的に示している。図13(b)に示すように、BD用の波長λの光、DVD用の波長λの光、CD用の波長λの光は、それぞれX軸方向の直線偏光の光として−Z方向に進行しながら偏光・ダイクロイックプリズム112の接合面125に入射すると、接合面125を透過して出射される。
【0070】
偏光・ダイクロイックプリズム112において、例えば、接合面124は、+Z方向に向かって入射する少なくとも波長λおよびλのS偏光の光を反射させて+X方向に偏向させる機能を有していればよい。また、接合面125は、+X方向に向かって入射する少なくとも波長λおよびλのS偏光の光を反射させて+Z方向に偏向させるとともに、−Z方向に向かって入射する少なくとも波長λ、λ、λのP偏光の光を透過する機能を有していればよい。なお、光の進行方向は上記例に限定されない。例えば、X方向を−X方向、−X方向をX方向としてもかまわないし、Z方向を−Z方向、−Z方向をZ方向としてもかまわない。どの方向へ出射または集光する場合であっても往路および復路において3波長とも偏光方向が揃うように各波長の光が出射および集光されればよい。
【0071】
なお、本実施形態の偏光・ダイクロイックプリズム112の接合面124として、例えば、第1の実施形態の偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面121と同様の偏光・波長選択性反射層を用いてもよい。また、本実施形態の偏光・ダイクロイックプリズム112の接合面125として、例えば、第1の実施形態の偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面123と同様の偏光・波長選択性反射層を用いてもよい。なお、接合面125に接合面123と同様の偏光・波長選択性反射層を用いた場合、S偏光のBD光に対する反射特性が過剰となるが、特に問題はない。
【0072】
また、図14および図15に、偏光ビームスプリッタ103の特性例を示す。図14(a)は、偏光ビームスプリッタ103のS偏光の光に対する反射率を示すグラフであり、図14(b)は、偏光ビームスプリッタ103のS偏光の光に対する透過率を示すグラフであり、図15は、偏光ビームスプリッタ103のP偏光の光に対する透過率を示すグラフである。図14(a),(b)および図15に示す偏光・波長選択性反射層の特性例では、少なくとも波長385nm〜430nmのS偏光の光に対する反射率が95%以上であるとともに、少なくとも波長630nm〜690nm、760〜810nmのS偏光の光に対する透過率が95%以上であり、かつ、少なくとも波長385nm〜430nm、630nm〜690nm、760〜810nmのP偏光の光に対する透過率が95%以上である。なお、図14および図15では、参考までに、波長397nm〜415nm、645nm〜675nm、765nm〜805nmにおいて透過率または反射率が95%となる位置に網掛け線を引いている。
【0073】
図16は、図14および図15に示した偏光ビームスプリッタ103を構成する偏光・波長選択性反射層の構成例を示す説明図である。例えば、偏光ビームスプリッタ103のPBS膜は、石英ガラス基板等の透明基板の一方の平面に、図16に示すようなSiOとTaを交互に所定の膜厚になるように積層することによって形成できる。なお、図16では、設計波長λ=510nmのときのndを膜厚として示している。
【0074】
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、BD光、DVD光、CD光といった3つの異なる波長の光を用いる光ヘッド装置において、BD光、DVD光およびCD光の光路における偏光の組み合わせを工夫することにより、簡易な構成であってもDVD光およびCD光の往路の光量ロスを少なくできる。また、3つの異なる波長の光を、1つの光検出器113で受光する構成とできるので、光ピックアップユニットの小型化や低コスト化が図れる。本実施形態の例でいえば、光検出器113と、光源101a、グレーティング素子102a、偏光・ダイクロイックプリズム112とを組み合わせて1つの発光・受光ユニットとして実装すれば、構成の簡易化や、部品点数の削減、組み立て精度の改善を図ることができる。
【0075】
実施形態3.
また、3波長レーザを発振する光源101cを用いればさらに簡易な構成とすることも可能である。図17は、本発明の第3の実施形態に係る光ヘッド装置の構成例を示す模式図である。図17に示す光ヘッド装置300は、第1および第2の実施形態と同様、BD、DVD、CD用の3つの異なる波長の光を用い、それぞれの規格の光ディスクの記録・再生が可能な互換性を有する光ヘッド装置である。
【0076】
図17に示すように、本実施形態の光ヘッド装置300は、光源101cと、グレーティング素子102aと、偏光・ダイクロイックプリズム112’と、光検出器113と、偏光ホログラム素子30と、コリメータレンズ105と、立ち上げプリズム106、107と、1/4波長板108a、108bと、対物レンズ109a、109bとを備えている。なお、本実施形態の光ヘッド装置300において、光源101c、グレーティング素子102a、偏光・ダイクロイックプリズム112’および光検出器113は、1つの発光・受光ユニット997として実装されている。
【0077】
なお、光ヘッド装置300は、往路における各波長の光をP偏光に揃え、復路における各波長の光をS偏光に揃えている点で第1および第2の実施形態と異なるが、各波長で偏光方向を備えることにより、DVD光およびCD光の往路光量ロスを抑えつつ、簡易な構成で集積ユニット化を実現している点は、第1および第2の実施形態と同様である。
【0078】
図18は、偏光・ダイクロイックプリズム112’における光の光路および偏光方向を示す説明図である。図18(a)は、光ヘッド装置300におけるBD光、DVD光、CD光の往路の光路および偏光方向を示す模式図である。すなわち、偏光・ダイクロイックプリズム112’にZ方向に進行する3つの波長の光、すなわちBD用の波長λの光、DVD用の波長λの光、CD用の波長λの光がいずれもP偏光(本例では、X軸方向の直線偏光)の光として入射するときの様子を模式的に示している。図18(a)に示すように、BD用の波長λの光、DVD用の波長λの光、CD用の波長λの光は、それぞれX軸方向の直線偏光の光としてZ方向に進行しながら偏光・ダイクロイックプリズム112’の接合面125’に入射すると、接合面125’を透過して出射される。
【0079】
また、図18(b)は、光ヘッド装置300におけるBD光、DVD光およびCD光の復路の光路および偏光方向を示す模式図である。すなわち、偏光・ダイクロイックプリズム112’に−Z方向に進行するBD用の波長λの光、DVD用の波長λの光およびCD用の波長λの光が、それぞれS偏光(本例では、Y軸方向の直線偏光)の光として入射するときの様子を模式的に示している。図18(b)に示すように、BD用の波長λの光、DVD用の波長λの光、CD用の波長λの光は、それぞれY軸方向の直線偏光の光として−Z方向に進行しながら偏光・ダイクロイックプリズム112’の接合面125’に入射すると、接合面125’で反射されて−X方向に偏向される。そして、接合面124’に入射すると、接合面124’で反射されて、最終的に−Z方向に偏向されて出射される。
【0080】
偏光・ダイクロイックプリズム112’において、例えば、接合面124’は、−X方向に向かって入射する少なくとも波長λ、λおよびλのS偏光の光を反射させて−Z方向に偏向させる機能を有していればよい。また、接合面125’は、−Z方向に向かって入射する少なくとも波長λ、λおよびλのS偏光の光を反射させて−X方向に偏向させるとともに、Z方向に向かって入射する少なくとも波長λ、λおよびλのP偏光の光を透過する機能を有していればよい。なお、光の進行方向は上記例に限定されない。例えば、X方向を−X方向、−X方向をX方向としてもかまわないし、Z方向を−Z方向、−Z方向をZ方向としてもかまわない。どの方向へ出射または集光する場合であっても往路および復路において3波長とも偏光方向が揃うように各波長の光が出射および集光されればよい。
【0081】
図19に、本実施形態の偏光・ダイクロイックプリズム112’の接合面124’の特性を示す。図19は、偏光・ダイクロイックプリズム112’の接合面124’のS偏光の光に対する反射率を示すグラフである。図19に示す接合面124’の特性例では、少なくとも波長385nm〜430nm、630nm〜810nmのS偏光の光に対する反射率が95%以上である。なお、計算上は、少なくとも波長630nm〜810nmのS偏光の光に対する反射率は99%以上である。なお、図19では、参考までに、波長397nm〜415nm、645nm〜675nm、765nm〜805nmにおいて反射率が95%となる位置に網掛け線を引いている。
【0082】
なお、図20は、図19に示した接合面124’を構成する偏光・波長選択性反射層の構成例を示す説明図である。例えば、接合面124’は、石英ガラス基板等の透明基板の一方の平面に、図20に示すようなSiOとTaを交互に所定の膜厚になるように積層することによって形成できる。なお、図20では、設計波長λ=405nmのときのndを膜厚として示している。
【0083】
なお、接合面125’としては、例えば、第1の実施形態の偏光・ダイクロイックプリズム111の接合面121と同様の偏光・波長選択性反射層を用いてもよい。
【0084】
以上のように、本実施形態によれば、第1および第2の実施形態と同様に、BD光、DVD光、CD光といった3つの異なる波長の光を用いる光ヘッド装置において、BD光、DVD光およびCD光の光路における偏光の組み合わせを工夫することにより、簡易な構成であってもDVD光およびCD光の往路の光量ロスを少なくできる。また、3つの異なる波長の光を、1つの光検出器113で受光する構成とできるので、光ピックアップユニットの小型化や低コスト化が図れる。本実施形態の例でいえば、光検出器113と、光源101c、グレーティング素子102a、偏光・ダイクロイックプリズム112’とを組み合わせて1つの発光・受光ユニットとして実装すれば、構成のさらなる簡易化や、部品点数の削減、組み立て精度の改善を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、CD、DVD、光磁気ディスクやBDなどの光ディスクに情報の記録・再生を行う光ヘッド装置の部品点数の削減および小型化のために利用される。
【符号の説明】
【0086】
100、200 光ヘッド装置
101a、101b 光源
102a グレーティング素子
103 偏光ビームスプリッタ
111、112、112’ 偏光・ダイクロイックプリズム
113 光検出器
30 偏光ホログラム素子
105 コリメータレンズ
106、107 立ち上げプリズム
108a、108b 1/4波長板
109a、109b 対物レンズ
997、998、999 発光・受光ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの異なる波長の光を各々記録フォーマットの異なる光ディスクに集光するとともに、前記3つの異なる波長の光の前記光ディスクにおける反射光を各々受光する光ヘッド装置であって、
最も波長の短い第1波長帯の光を出力する第1光源と、
前記第1波長帯よりも波長の長い第2波長帯の光と、前記第2波長帯よりも波長の長い第3波長帯の光の両方またはいずれかを出力する第2光源と、
前記第1波長帯の光、第2波長帯の光および第3波長帯の光に対応した前記反射光を受光する単一の光検出器と、
前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の往路と、前記第1波長帯の光の往路とを一部重ねるための偏向手段であって、前記第2波長帯および前記第3波長帯の直線偏光の光であるS偏光の光を透過させるとともに、前記第1波長帯のS偏光の光を反射させる第1偏向手段と、
少なくとも前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の往路と、前記第1波長帯の光、前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の復路とを一部重ねるための偏向手段であって、少なくとも前記第2波長帯および前記第3波長帯のS偏光の光を反射させるとともに、前記第1波長帯、前記第2波長帯および前記第3波長帯の前記S偏光の光と直交するP偏光の光を透過させる第2偏向手段と、
少なくとも前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の往路と、前記第1波長帯の光、前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の復路とが重なる光路上に配置され、前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の往路において前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光を透過させるとともに、前記第1波長帯の光、前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の復路において前記第1波長帯の光の一部を回折させる偏光ホログラム素子と、
前記第1波長帯の光、前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光の往路と復路において、それぞれπ/2の位相差を生じさせる1/4波長板とを備え、
前記偏光ホログラム素子への復路入射光の偏光方向が前記3つの波長帯で揃っている
ことを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項2】
前記第1光源と、前記第2光源と、前記光検出器と、前記第1偏向手段に相当する接合面および前記第2偏向手段に相当する接合面を具備した偏光・ダイクロイックプリズムとを有してなる発光・受光ユニットを備え、
前記第2偏向手段に相当する接合面で、前記第1波長帯、前記第2波長帯および前記第3波長帯のS偏光の光を反射させるとともに、前記第1波長帯、前記第2波長帯および前記第3波長帯のP偏光の光を透過させる
請求項1に記載の光ヘッド装置。
【請求項3】
前記第2光源と、前記光検出器と、前記第2偏向手段に相当する接合面を具備した偏光・ダイクロイックプリズムとを有してなる発光・受光ユニットを備えた
請求項1に記載の光ヘッド装置。
【請求項4】
前記偏光ホログラム素子は、前記第2波長帯の光および前記第3波長帯の光に対する0次回折効率が、往路で90%以上、かつ復路で70%以上である
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の光ヘッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−41639(P2013−41639A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177115(P2011−177115)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】