光伝送路、光伝送モジュール、および電子機器
【課題】曲げられた状態で使用される場合でも、曲げ損失と結合損失との両方を低減することが可能な光伝送路を提供する。
【解決手段】コア部11の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域において、コア部11の厚みdが、(R−d/2)/(R+d/2)≧(n2/n1)なる関係式を満たしている。また、少なくともコア部11の光入射面において、コア部11の横幅wが、厚みdよりも長くなっている。
【解決手段】コア部11の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域において、コア部11の厚みdが、(R−d/2)/(R+d/2)≧(n2/n1)なる関係式を満たしている。また、少なくともコア部11の光入射面において、コア部11の横幅wが、厚みdよりも長くなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を伝送する光伝送路、光伝送モジュール、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速で大容量のデータ通信が可能な光通信網が拡大している。今後、この光通信網は機器間から機器内への搭載が予想されている。そして、プリント配線基板を光配線として実現するために、アレイ化が可能な光導波路が期待されている。
【0003】
光導波路は、コアと呼ばれる芯とそれを覆うクラッドと呼ばれる鞘の二重構造になっており、クラッドよりもコアの屈折率が高くなっている。すなわち、コアに入射した光信号は、コア内部で全反射を繰り返すことによって伝搬される。このような光導波路については、例えば特許文献1および特許文献2などに開示されている。
【0004】
また、特に近年では、より小型、薄型の民生機器に搭載されるフレキシブルな光配線を光導波路で実現することが求められている。これに対して、光導波路のコアおよびクラッドの材料に従来よりもさらに柔軟な材料を用いることによって、高い屈曲性を有する光導波路が開発されている。このような高い屈曲性を有する光導波路を用いれば、機器内の基板間でのデータ伝送をも光導波路にて行うことが可能となる。
【特許文献1】特開2001-242334公報(2001年9月7日公開)
【特許文献2】特開2001-330742公報(2001年11月30日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば小型・薄型の機器内において光導波路を用いる場合、高い屈曲性を有することが要求されることが考えられる。これに対して、従来の光導波路においては、このような高い屈曲性が要求された場合、曲げ部分において生じる曲げ損失が大きくなるという問題を有している。このような曲げ損失が大きくなると、通信エラーが発生する確率が高くなり、通信媒体として不適格なものとなってしまう。
【0006】
また、光源から光導波路に光が照射される際に生じる結合損失についても考慮する必要があるが、従来の光導波路では、曲げ損失と結合損失との両方を的確に低減することが可能なものは実現されていない。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、曲げられた状態で使用される場合でも、曲げ損失と結合損失との両方を低減することが可能な光伝送路、光伝送モジュール、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光伝送路は、上記課題を解決するために、透光性を有する材料から構成されるコア部と、該コア部の屈折率と異なる屈折率を有する材料から構成されるクラッド部とを備えた光伝送路であって、上記コア部内で光が伝送される際の光伝送方向に垂直な断面において、少なくとも1つのコア部からなるコア領域のうち、当該光伝送路の曲げを最も許容する曲げ方向としての第1の方向におけるコア部の長さを厚みd、該第1の方向に垂直な第2の方向におけるコア領域の長さを横幅wとし、上記第1の方向に曲げた時に許容することができる、上記コア領域の中心軸の曲率半径の最小値としての最許容曲率半径をRとし、上記コア領域と上記クラッド部との境界面のうち、少なくとも上記第1の方向での曲げによるカーブの外側となる領域におけるコア領域の屈折率をn1、クラッド部の屈折率をn2とすると、上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが、(R−d/2)/(R+d/2)≧(n2/n1)なる関係式を満たすとともに、少なくとも上記コア領域の光入射面において、上記横幅wが、上記厚みdよりも長くなっている構成である。
【0009】
上記の構成では、まず、少なくとも曲げを許容する領域において、コア領域の厚みdが上記のように設定されている。このようにコア領域の厚みが設定されると、詳細は後述するが、コア領域とクラッド部との境界面のうち、少なくとも上記第1の方向での曲げによるカーブの外側となる領域(外側内面)に対して当たる光の入射角が最も小さくなると想定される光が、該外側内面で全反射することになる。よって、光伝送路を最許容曲率半径で曲げた状態で使用したとしても、上記外側内面においてコア領域からクラッド領域に透過してしまう光を低く抑えることが可能となり、曲げ損失を低減することができる。
【0010】
また、上記の構成では、少なくとも光入射面において、コア領域の横幅wが、厚みdよりも長くなっている。ここで、光伝送路の曲げ領域においては、上記のように厚みdの上限が定まっているので、光伝送効率を考慮すると、光入射面における厚みも比較的小さくすることが好ましいことになる。一方、詳細は後述するが、結合損失を考慮すると、光入射面におけるコア領域の面積は大きい方が好ましいことになる。すなわち、比較的小さくする必要がある厚みdよりも、横幅wを大きくする断面形状とすることによって、光入射面におけるコア領域の面積をより大きくすることが可能となり、結合損失を低減することができる。
【0011】
つまり、上記の構成によれば、曲げられた状態で使用される場合でも、曲げたときの損失変動が原因の曲げ損失と製造ばらつき等が原因の結合損失を同時に低減することが可能な光伝送路を提供することができる。
【0012】
また、本発明に係る光伝送路は、上記課題を解決するために、透光性を有する材料から構成されるコア部と、該コア部の屈折率と異なる屈折率を有する材料から構成されるクラッド部とを備えた光伝送路であって、上記コア部内で光が伝送される際の光伝送方向に垂直な断面において、少なくとも1つのコア部からなるコア領域のうち、当該光伝送路の曲げを最も許容する曲げ方向としての第1の方向における長さを厚みd、該第1の方向に垂直な第2の方向における長さを横幅wとし、上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが40μm以下であるとともに、少なくとも上記コア領域の光入射面において、上記横幅wが、上記厚みdよりも長くなっているとともに、上記厚みdが20μm以上である構成である。
【0013】
上記の構成では、まず、少なくとも曲げを許容する領域において、コア領域の厚みdが上記のように設定されている。このようにコア領域の厚みが設定されると、一般的にマルチモードの光伝送路として用いられる光伝送路であれば、例えば小型の電子機器内の光配線としても十分に用いることが可能なレベルの曲げを許容した状態で、曲げ損失を低く抑えることができる。
【0014】
また、上記の構成では、少なくとも光入射面において、コア領域の横幅wが、厚みdよりも長くなっている。ここで、光伝送路の曲げ領域においては、上記のように厚みdの上限が定まっているので、光伝送効率を考慮すると、光入射面における厚みも比較的小さくすることが好ましいことになる。一方、詳細は後述するが、結合損失を考慮すると、光入射面におけるコア領域の面積は大きい方が好ましいことになる。すなわち、比較的小さくする必要がある厚みdよりも、横幅wを大きくする断面形状とすることによって、光入射面におけるコア領域の面積をより大きくすることが可能となり、結合損失を低減することができる。
【0015】
また、上記の構成では、少なくとも光入射面において、厚みdが20μm以上に設定されている。このように光入射面におけるコア領域の厚みが設定されると、一般的に用いられる光源および該光源との配置関係であれば、結合損失を低く抑えることができる。
【0016】
つまり、上記の構成によれば、曲げられた状態で使用される場合でも、曲げたときの損失変動が原因の曲げ損失と製造ばらつき等が原因の結合損失を同時に低減することが可能な光伝送路を提供することができる。
【0017】
また、本発明に係る光伝送路は、上記の構成において、上記コア領域の光入射面に照射される光源からの光照射領域のうち、上記第2の方向の長さの最大値よりも大きくなるように、上記横幅wが設定されている構成としてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、コア領域の横幅wが、コア領域の光入射面に照射される光源からの光照射領域のうち、第2の方向の長さの最大値よりも大きくなるように設定されているので、第2の方向に関しては、光照射領域がコア領域よりも大きいことによる光の損失を最小限にすることが可能となる。よって、結合損失をより低減することが可能となる。光照射領域とは、VCSEL等(光源)の発光エリアと、光の広がり角と、光入射面までの距離と、その間に設けられる光学部品(レンズ、プリズム等)により計算される光入射面における照射エリアをいう。光入射面とは、光伝送路に光を結合させる昨日を有する面のことをいう。
【0019】
また、本発明に係る光伝送路は、上記の構成において、上記コア部と上記クラッド部との屈折率差((n1−n2)/n1)が2〜5%である構成としてもよい。
【0020】
コア部とクラッド部との屈折率差が上記のような範囲である光伝送路は、一般的にマルチモードの光伝送路となる。すなわち、上記の構成によれば、マルチモードの光伝送路として好適に用いることが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る光伝送路は、上記の構成において、上記最許容曲率半径が1.5mm以下である構成としてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、光伝送路を曲率半径1.5mmまで曲げて用いることが可能となる。よって、例えば小型の電子機器内の光配線としても十分に用いることが可能なフレキシビリティを有する光伝送路を提供することができる。
【0023】
また、本発明に係る光伝送路は、上記の構成において、上記コア領域の光入射面が、上記光伝送方向に対して斜めに設けられているとともに、光源から照射された光が、上記光入射面において反射されることによって上記コア領域内に導入されるように構成されていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、光伝送路に対して、光伝送方向に対して横方向に光源を配置する構成とすることが可能となる。よって、例えば基板面に平行に光伝送路を配置することが必要とされる場合に、光伝送路と基板面との間に、該基板面の法線方向に光を出射するように光源を設置すればよいことになる。このような構成は、例えば光源を基板面に平行に光を出射するように設置する構成よりも、実装が容易であり、また、構成としてもよりコンパクトにすることができる。
【0025】
なお、上記クラッド部が空気によって構成されてもよいし、上記コア部および上記クラッド部が樹脂によって構成されていてもよい。
【0026】
また、上記厚みdに対する上記横幅wの比であるアスペクト比が2以上とする構成としてもよい。これにより、アスペクト比が1の場合よりも2の場合の方が結合損失を低減することができる。
【0027】
また、上記横幅wが光伝送方向に対する位置変化に応じて変化するようにしてもよい。横幅wは、上記したように、結合損失を低減することを目的として好ましい範囲が設定されている。すなわち、上記の構成によれば、横幅wを、結合損失が生じる光入射面において少なくとも上記の好ましい範囲に設定しておく一方、その他の領域においては異なる値とするような構成とすることが可能となる。
【0028】
なお、横幅wを連続的に変化させる構成とすれば、不連続に変化する場合に生じる光の漏洩を低減することができ、光伝送効率を高く保つことができる。
【0029】
また、本発明に係る光伝送路は、上記の構成において、上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域において、上記厚みdが、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて不変である、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて増大する、光入射側となる入口から一旦減少し、その後、光出射側となる出口に向けて不変である、または、光入射側となる入口から一旦減少し、その後、光出射側となる出口に向けて増大するように設定されていてもよい。
【0030】
この構成によれば、曲げられた状態における曲げを許容する領域での光の損失を最小限にすることができるので、曲げ損失をより低減することが可能となる。なお、厚みdが光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて増大する場合、増大の仕方は段階的であってもよいし連続的であってもよい。
【0031】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記本発明に係る光伝送路と、上記光伝送路の光入射面に対して光を照射する発光部と、上記光伝送路の光出射面から出射される光を受光する受光部と、外部から入力された電気信号に基づいて上記発光部の発光を駆動する発光駆動部と、受光部から出力された電気信号を増幅して外部に出力する増幅部とを備えている構成である。
【0032】
上記の構成によれば、光伝送路を曲げた状態で使用したとしても、光伝送路における曲げたときの損失変動が原因の曲げ損失や製造ばらつき等が原因の結合損失を起因とする性能劣化の発生が生じにくい光伝送モジュールを提供することができる。
【0033】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記の構成において、上記発光部が、上記光伝送路に対して、該光伝送路内での光伝送方向に対して横方向から光を照射するとともに、上記光伝送路が、上記発光部から照射された光を、光入射面において反射させることによって上記コア領域内に導入する構成としてもよい。
【0034】
上記の構成によれば、光伝送路に対して、光伝送方向に対して横方向に発光部を配置する構成とすることが可能となる。よって、例えば基板面に平行に光伝送路を配置することが必要とされる場合に、光伝送路と基板面との間に、該基板面の法線方向に光を出射するように発光部を設置すればよいことになる。このような構成は、例えば発光部を基板面に平行に光を出射するように設置する構成よりも、実装が容易であり、また、構成としてもよりコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る光伝送路は、以上のように、上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが、(R−d/2)/(R+d/2)≧(n2/n1)なる関係式を満たすとともに、少なくとも上記コア領域の光入射面において、上記横幅wが、上記厚みdよりも長くなっている構成である。
【0036】
また、本発明に係る光伝送路は、上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが40μm以下であるとともに、少なくとも上記コア領域の光入射面において、上記横幅wが、上記厚みdよりも長くなっているとともに、上記厚みdが20μm以上である構成である。
【0037】
これにより、曲げられた状態で使用される場合でも、曲げ損失と結合損失との両方を低減することが可能な光伝送路を提供することができるという効果を奏する。
【0038】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記本発明に係る光伝送路と、上記光伝送路の光入射面に対して光を照射する発光部と、上記光伝送路の光出射面から出射される光を受光する受光部と、外部から入力された電気信号に基づいて上記発光部の発光を駆動する発光駆動部と、受光部から出力された電気信号を増幅して外部に出力する増幅部とを備えている構成である。
【0039】
これにより、光伝送路を曲げた状態で使用したとしても、光伝送路における曲げたときの損失変動が原因の曲げ損失や製造ばらつき等が原因の結合損失を起因とする性能劣化の発生が生じにくい光伝送モジュールを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。
【0041】
(光伝送モジュールの構成)
図2は、本実施形態に係る光伝送モジュール1の概略構成を示している。同図に示すように、光伝送モジュール1は、光送信処理部2、光受信処理部3、および光伝送路4を備えている。
【0042】
光送信処理部2は、発光駆動部5および発光部6を備えた構成となっている。発光駆動部5は、外部から入力された電気信号に基づいて発光部6の発光を駆動する。この発光駆動部5は、例えば発光駆動用のIC(Integrated Circuit)によって構成される。なお、図示はしていないが、発光駆動部5には、外部からの電気信号を伝送する電気配線との電気接続部が設けられている。
【0043】
発光部6は、発光駆動部5による駆動制御に基づいて発光する。この発光部6は、例えばVCSEL(Vertical Cavity-Surface Emitting Laser)などの発光素子によって構成される。発光部6から発せられた光は、光信号として光伝送路4の光入射側端部に照射される。
【0044】
光受信処理部3は、増幅部7および受光部8を備えた構成となっている。受光部8は、光伝送路4の光出射側端部から出射された光信号としての光を受光し、光電変換によって電気信号を出力する。この受光部8は、例えばPD(Photo-Diode)などの受光素子によって構成される。
【0045】
増幅部7は、受光部8から出力された電気信号を増幅して外部に出力する。この増幅部7は、例えば増幅用のICによって構成される。なお、図示はしていないが、増幅部7には、外部へ電気信号を伝送する電気配線との電気接続部が設けられている。
【0046】
光伝送路4は、発光部6から出射された光を受光部8まで伝送する媒体である。この光伝送路4の構成の詳細については後述する。
【0047】
図3は、光伝送路4における光伝送の状態を模式的に示している。同図に示すように、光伝送路4は可撓性を有する柱状形状の部材によって構成される。また、光伝送路4の光入射側端部には光入射反射面(光入射面)4Aが設けられているとともに、光出射側端部には光出射反射面(光出射面)4Bが設けられている。
【0048】
発光部6から出射された光は、光伝送路4の光入射側端部に対して、光伝送路4の光伝送方向に対して垂直となる方向から入射される。入射された光は、光入射反射面4Aにおいて反射されることによって光伝送路4内を進行する。光伝送路4内を進行して光出射側端部に到達した光は、光出射反射面4Bにおいて反射されることによって、光伝送路4の光伝送方向に対して垂直となる方向へ出射される。出射された光は、受光部8に照射され、受光部8において光電変換が行われる。
【0049】
このような構成によれば、光伝送路4に対して、光伝送方向に対して横方向に光源としての発光部6を配置する構成とすることが可能となる。よって、例えば基板面に平行に光伝送路4を配置することが必要とされる場合に、光伝送路4と基板面との間に、該基板面の法線方向に光を出射するように発光部6を設置すればよいことになる。このような構成は、例えば発光部6を基板面に平行に光を出射するように設置する構成よりも、実装が容易であり、また、構成としてもよりコンパクトにすることができる。これは、発光部6の一般的な構成が、光を出射する方向のサイズよりも、光を出射する方向と垂直な方向のサイズの方が大きくなっていることによるものである。さらに同一面内に電極と発光部がある平面実装向け発光素子を使用する構成にも適用が可能である。
【0050】
(光伝送路の構成)
図1は、光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。同図に示すように、光伝送路4は、光伝送方向を軸とする柱状形状のコア部11と、コア部11の周囲を囲むように設けられたクラッド部12とを備えた構成となっている。コア部11およびクラッド部12は透光性を有する材料によって構成されているとともに、コア部11の屈折率は、クラッド部12の屈折率よりも高くなっている。コア部11に入射した光信号は、コア部11内部で全反射を繰り返すことによって光伝送方向に伝送される。
【0051】
コア部11およびクラッド部12を構成する材料としては、ガラスやプラスチックなどを用いることが可能であるが、十分な可撓性を有する光伝送路4を構成するためには、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、およびシリコーン系等の樹脂材料を使用することが好ましい。また、クラッド部12を空気などの気体で構成してもよい。さらに、クラッド部12をコア部11よりも屈折率の小さい液体の雰囲気下において使用しても同様の効果が得られる。
【0052】
光伝送方向に垂直な面でのコア部11の断面形状は長方形となっている。そして、光伝送路4の曲げを最も許容する曲げ方向(最許容曲げ方向)を、コア部11の側面のうち、コア部11の断面形状における長方形の長辺を含む側面の法線方向とする。
【0053】
ここで、コア部11の断面形状の長方形において、長辺の長さを横幅w、短辺の長さを厚みdとする。また、光伝送路4を最許容曲げ方向に曲げた時に許容することができる最許容曲率半径をRとする。なお、この最許容曲率半径Rは、コア部11の中心軸の曲率半径に相当する。
【0054】
(結合損失、曲げ損失)
次に、光伝送路4による光伝送に生じる結合損失および曲げ損失について説明する。結合損失とは、光源(発光部6に対応)からの光が光伝送路4に入射される際に生じる光の損失である。詳細に説明すると次のとおりである。光源と光伝送路4との間には、ある程度の間隔が設けられている。これは、光源および光伝送路4の設置位置の誤差、および、部品サイズの誤差を吸収するために設けられている。すなわち、光源から出射した光は、上記の間隔を経由して光伝送路4に入射することになる。ここで、光源から出射した光が完全に光伝送路4には入射できないことになり、ここで生じる光の損失が結合損失となる。
【0055】
また、曲げ損失とは、光伝送路4が曲げられることによって生じる光の損失である。詳細に説明すると次のとおりである。光伝送路4の内部を伝送する光は、コア部11内部で全反射を繰り返すことによって光伝送方向に伝送される。ここで、光が全反射するためには、コア部11の内面に対する入射角が所定の角度以上であることが必要とされる。これに対して、光伝送路4が曲げられると、曲げられた方向とは逆となるコア部11の内面に対して当たる光の入射角が小さくなる確率が高くなる。これにより、伝送されている光が、コア部11の内面において全反射せずに、一部が外部に透過してしまうことになる。ここで生じる光の損失が曲げ損失となる。
【0056】
ここで、図1に示した光伝送路4の構成において、コア部11の厚みを示すdと、結合損失および曲げ損失との関係について説明する。図4は、横軸にコア部11の厚みd(単位:μm)、縦軸に損失(dB)をとった時の、結合損失、曲げ損失、およびトータル損失の計算値を示すグラフである。なお、トータル損失とは、結合損失と曲げ損失との和に相当するものである。同図において、A1で示す曲線は、曲げ損失を示しており、A2で示す曲線は、コア部11の断面形状のアスペクト比が1の時の結合損失を示しており、A3で示す曲線は、コア部11の断面形状のアスペクト比が2の時の結合損失を示しており、A4で示す曲線は、コア部11の断面形状のアスペクト比が1の時のトータル損失を示しており、A5で示す曲線は、コア部11の断面形状のアスペクト比が2の時のトータル損失を示している。
【0057】
なお、コア部11の断面形状のアスペクト比とは、w/dに相当する値である。また、図4に示す実験値は、光源と光伝送路4とが次のような関係になっている構成によって得られたものである。まず、光源から出射された光が、光伝送路4の光伝送方向に垂直な断面を光入射側面とする面に対して垂直に入射されるように、光源と光伝送路4とが配置されている。また、光源と光入射側面との間隔が70μmとなっており、光源から出射される光の広がり角度を30度となっている。また、曲げ損失に関しては、曲率半径を1.5mmとし、コア部11とクラッド部12との屈折率差((n1−n2)/n1)を3%とした場合の値を示している。
【0058】
同図に示すように、結合損失は、コア部11の厚みdが大きくなるほど低下する傾向がある。これは、コア部11の厚みdが大きくなり、コア部11における光源からの光入射面の面積が大きくなるためである。また、曲げ損失は、コア部11の厚みdが大きくなるほど増加する傾向がある。これは、光伝送路4が曲げられた際の曲率半径が同一である場合には、コア部11の厚みdが大きくなると、カーブの外側となる領域におけるコア部11の界面に対して当たる光の入射角が小さくなる確率が高くなることが原因である。
【0059】
すなわち、トータル損失は、コア部11の厚みdが大きすぎても小さすぎても良くないことになる。つまり、トータル損失を小さくするには、コア部11の厚みdを所定の範囲内にすることが好ましいことになる。
【0060】
図4に示すように、曲げ損失に関しては、厚みdが40μmより大きくなると損失変動幅が1dBを上回ることがわかる。曲げによる瞬間的な変動により損失変動幅が大きくなると、それを補正するための回路を設けなければならず、構成が複雑になってしまうという欠点がある。すなわち、厚みdは40μm以下であることが好ましいことになる。
【0061】
また、結合損失に関しては、厚みdが小さくなるほど損失が大きくなるが、厚みdが20μmを下回ると、厚みdの減少に伴う結合損失の増大(dB値の低下)の割合が大きくなる。言い換えると、厚みdの変化に対する損失の変化において、厚みdが20μmのところで変曲点が存在し、この変曲点を境に、損失の変化の割合が変化している。すなわち、厚みdは20μm以上であることが好ましいことになる。
【0062】
また、結合損失に関して、アスペクト比が1の場合よりも2の場合の方が損失が小さいことがわかる。これは、アスペクト比が大きいほど、光伝送路4における光入射側面の面積が大きくなり、より多くの入射光を取り込めるようになるからである。すなわち、アスペクト比は2以上であることが好ましいことになる。
【0063】
(コア部の厚みの設計)
次に、曲げ損失を低減するために、コア部11の厚みをどの程度に設定することが好ましいかについて説明する。図5は、曲率半径Rで曲げられた光伝送路4の状態を示している。前記したように、光伝送路4が曲げられると、コア部11の内面のうち、曲げによるカーブの外側となる領域(以降、外側内面と称する)に対して当たる光の入射角が小さくなる確率が高くなり、外部に光が漏れてしまうことになる。したがって、ここでは、コア部11の外側内面に対して当たる光の入射角が最も小さくなると想定される光が該外側内面で全反射するための、コア部11の厚みの条件を求める。
【0064】
ここで、コア部11が直線状となっている部分で光伝送方向に平行に進行してきた光のうち、コア部11の外側内面に対して当たる光の入射角が最も小さくなる光は、曲げによるカーブの内側となるコア部11の内面に接して曲げ部分に入射した光L1となる。
【0065】
光L1によるコア部11の外側内面への入射角をθとすると、光L1がコア部11の外側内面で全反射するための条件は、
sinθ≧(n2/n1) …(1)
となる。ここで、n1およびn2は、それぞれコア部11およびクラッド部12の屈折率を示している。
【0066】
一方、sinθは、図5より、Rおよびdに基づいて次のように表すことができる。
sinθ=(R−d/2)/(R+d/2) …(2)
(1)式および(2)式より、
(R−d/2)/(R+d/2)≧(n2/n1)
d≦2R(n1−n2)/(n1+n2) …(3)
を導くことができる。すなわち、許容する曲率半径、および、コア部11およびクラッド部12の屈折率が決まれば、コア部11の厚みdの最大値を求めることができる。
【0067】
ここで、本実施形態においては、光伝送路4としてマルチモードの光伝送路を用いることが想定されている。マルチモードの光伝送路では、一般的に、コア部11とクラッド部12との屈折率差((n1−n2)/n1)は2〜5%程度となっている。屈折率差が2%よりも小さくなると、曲げによる損失が大きくなってしまう問題点がある。また屈折率差が5%よりも大きくなると、不要なモードが多数発生し光信号の高速伝送が困難になるという問題がある。また、本実施形態においては、光伝送路4の最許容曲率半径を1.5mm以下にすることを想定している。これらより、屈折率差および最許容曲率半径の具体的な数値の組合せは以下のようになる。
【0068】
例えば屈折率差4%の場合、最許容曲率半径R=1.0ならばd≦41μm、最許容曲率半径R=1.5ならばd≦61μmとなる。また、製造ばらつきや使用状況等を考慮すると、計算値よりも厚みdを10〜20%小さく作製することが望ましい。
【0069】
なお、上記のように、曲げ損失は、コア部11の外側内面におけるコア部11とクラッド部12との屈折率差に影響を受けるものである。よって、(3)式におけるn1およびn2は、光伝送路4において曲げが想定される領域における想定される曲げ方向において、コア部11の外側内面となる領域でのコア部11およびクラッド部12の屈折率であればよい。すなわち、この領域でのコア部11およびクラッド部12の屈折率と、その他の領域でのコア部11およびクラッド部12の屈折率とが同じであっても構わないし、異なっていても構わない。
【0070】
なお、図5に示す例では、曲率半径Rで曲げられている領域、すなわち、曲げを許容する領域におけるコア部11の厚みdは均一となっている。これに対して、曲げを許容する領域の光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて、上記厚みdが連続的に増大するような構成となっていてもよい。このような構成の場合、光L1によるコア部11の外側内面への入射角θは、図5に示す状態よりも大きくなるので、光L1は外側内面において全反射することになる。すなわち、曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが、上記(3)式を満たすとともに、少なくとも曲げを許容する領域において、上記厚みdが、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて不変であるか、または、増大するように設定されていれば、曲げ損失を低減することができる。厚みdが光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて増大する場合、増大の仕方は段階的であってもよいし連続的であってもよい。
【0071】
さらに、曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが、上記(3)式を満たすとともに、少なくとも曲げを許容する領域において、上記厚みdが、光入射側となる入口から一旦減少し、その後、光出射側となる出口に向けて不変である、または、光入射側となる入口から一旦減少し、その後、光出射側となる出口に向けて増大するように設定されていても、曲げ損失を低減することができる。これは、上記厚みdが、光入射側となる入口から一旦減少する場合、若干の光伝送効率の低下は生じるが、その後、その後不変であるか、または増大していれば、曲げによる損失を低減することができるからである。
【0072】
(コア部の横幅の設計)
次に、結合損失を低減するために、コア部11の横幅wをどの程度に設定することが好ましいかについて説明する。図6は、光源としての発光部6と光伝送路4との位置関係を示している。同図において、発光部6の光源開口の大きさをAとし、発光部6から出射される光の広がり角度をαとし、発光部6の光源開口と光伝送路4の光入射面との距離をDとしている。
【0073】
コア部11の厚みに関しては、上記したように、曲げ損失を考慮すると上限値が自ずと決まってくることになる。よって、結合損失を低減するためには、コア部11の横幅wが大きい程よいことになる。ここで、結合損失を最小限にするためには、光源から出射されて光伝送路4の光入射面に照射される光の領域のうち、コア部11の横幅方向の長さよりも、コア部11の横幅wの方が大きくなっていればよいことになる。
【0074】
上記の関係を図6に示す状態において式で表すと、
w≧A+2*D*tan(α/2) …(4)
となる。なお、(4)式は、光源の中心位置から出射される光の光軸上に、コア部11の横幅方向の中心軸がある配置関係を前提としたものとなる。
【0075】
ここで、発光部6および光伝送路4の設置位置の誤差、および、部品サイズの誤差を考慮すると、(4)式は次のように表される。
w≧A+2*D*tan(α/2)+Δx …(5)
(5)式において、Δxは、発光部6および光伝送路4の設置位置の誤差、および、部品サイズの誤差の絶対値を示している。すなわち、光源の中心位置から出射される光の光軸と、コア部11の横幅方向の中心軸との位置のずれが、誤差Δxとなった場合が最も結合損失に影響を与えることになるので、(5)式はこの場合を考慮したものとなっている。
【0076】
ここで、一例として、光源開口の大きさAを10μm、光の広がり角度αを30°、発光部6の光源開口と光伝送路4の光入射面との距離Dを50μm、誤差Δxを50μmとすると、横幅wは、86.8μm以上であることが好ましいことになる。
【0077】
なお、図6に示す構成では、上記したように、光源の中心位置から出射される光の光軸上に、コア部11の横幅方向の中心軸がある配置関係となっているが、図7に示すような構成であってもよい。図7に示す構成では、発光部6から出射された光は、光伝送路4の光入射側端部に対して、光伝送路4の光伝送方向に対して垂直となる方向から入射される。入射された光は、光入射反射面S1(図3における光入射反射面4Aに相当)において反射されることによってコア部11内を進行する。
【0078】
このような構成の場合、コア部11の横幅wは次のように設定すればよい。まず、光入射反射面S1に照射される発光部6からの光照射領域のうち、コア部11の横幅方向の長さの最大値(横幅方向最大長さ)を求める。そして、コア部11の横幅wを、この横幅方向最大長さよりも大きくなるように設定すればよい。さらに、誤差Δxを考慮する場合には、コア部11の横幅wを、この横幅方向最大長さと誤差Δxとの和よりも大きくなるように設定すればよい。
【0079】
(変形例1)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成の変形例について説明する。図8は、この変形例1としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。図1に示す構成では、光伝送方向に垂直な断面において、コア部11の周囲は全てクラッド部12によって囲まれている構成となっているが、図8に示すように、コア部11の周囲の少なくとも一部が外部に露出した構成、逆に言えば、コア部11の周囲の少なくとも一部がクラッド部12に囲まれている構成となっていてもよい。同図に示す例では、コア部11の横幅方向に平行な面の一方が外部に露出している構成となっている。
【0080】
(変形例2)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成の他の変形例について説明する。図9は、この変形例2としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。図1に示す構成では、コア部11の光伝送方向に垂直な断面形状が長方形となっているが、図9に示すように、この断面形状が楕円形状であってもよい。この場合、コア部11の横幅wは、楕円の長径に相当し、コア部11の厚みdは、楕円の短径に相当する。なお、図9に示す例では、断面形状が楕円となっているが、例えば長方形の角部分が円弧となっている(角にRがついている)ような形状であっても構わない。さらに、長方形の角部分が三角形状などに落とされた形状であっても構わない。
【0081】
(変形例3)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図10は、この変形例3としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。
【0082】
同図に示すように、コア部11の光伝送方向に垂直な断面において、複数のコア部11によってコア領域が形成されていてもよい。同図に示す例では、コア部11の断面形状が正方形である複数の領域が、横幅方向に間隔をおいて並んだ形状となっている。
【0083】
また、図11に示す構成では、コア部11の断面形状が円である複数の領域が、横幅方向に間隔をおいて並んだ形状となっている。さらに、図12に示す構成では、コア部11の断面形状が円である複数の領域が、互いに接しながら並んだ形状となっている。
【0084】
この構成の場合、コア部11の領域同士の間に照射された光が結合損失となってしまうデメリットがあるが、同じ断面形状のコア部11を平行に複数並べることによってコア領域としての横幅方向の長さを確保することが可能となるので、様々な横幅を有する光伝送路4を柔軟に生産することができるというメリットを有する。
【0085】
また、複数に分かれているコア部11のそれぞれの材料、材質は、同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
【0086】
(変形例4)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図13は、この変形例4としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。
【0087】
同図に示す例では、コア部11の光伝送方向に垂直な断面形状において、厚みが場所によって異なる形状となっている。コア部11の厚みdは、上記のように好ましい値の範囲が存在するが、この形状の場合、厚みが好ましい値の範囲となっている領域が、横幅wの半分以上の大きさであればよい。
【0088】
図13に示す構成では、好ましい値の範囲となっている厚みdの領域が断面図におけるコア部11の右側半分以上の領域となっており、それ以外の領域の厚みは、厚みdよりも厚くなっている。なお、厚みの変化はこの例に限定されるものではなく、好ましい厚みの領域が断面図における左側にあってもよいし、中央近傍にあってもよいし、複数の箇所に分かれていてもよい。
【0089】
(変形例5)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図14は、この変形例5としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。
【0090】
同図に示す例では、光伝送路4の光入射面におけるコア部11の横幅wが上記した好ましい範囲になっている一方、光入射面から離れるに従って、コア部11の横幅wが徐々にテーパ状に減少していく構成、すなわち、横幅wが連続的に減少していく構成となっている。ここで、コア部11の横幅wは、上記したように、結合損失を低減することを目的として好ましい範囲が設定されている。すなわち、コア部11の横幅wは、結合損失が生じる光入射面において少なくとも上記の好ましい範囲に設定されていれば、その他の領域ではどのような横幅になっていてもよいことになる。
【0091】
また、図15に示す例では、光伝送路4の光入射面から所定の距離範囲にあるコア部11の横幅wが上記した好ましい範囲になっている一方、上記所定の距離範囲以外のコア部11の横幅wが、上記した好ましい範囲以外の長さとなっている。なお、このように、コア部11の横幅wが光伝送方向において不連続に変化する構成とする場合、この不連続となる箇所において光の漏洩が生じることが考えられるので、光伝送効率を考慮すると、図14に示すように、コア部11の横幅wが光伝送方向において連続的に変化する構成のほうが好ましい。
【0092】
なお、図14および図15に示す構成では、コア部11の横幅wが光伝送方向での位置に応じて変化しているが、コア部11の厚みdが光伝送方向での位置に応じて変化する構成としてもよい。すなわち、コア部11の厚みdは、曲げ損失を最小限とするために、上記のような好ましい範囲とするようになっているが、コア部11の光伝送方向の位置において、コア部11の厚みdが好ましい範囲とすべき領域は、少なくとも光伝送路4で曲げが生じうる領域(曲げを許容する領域)であればよい。
【0093】
例えば、光伝送路4で曲げが生じうる領域では、コア部11の厚みdを上記の好ましい範囲とする一方、光入射面においては、コア部11の厚みdをより大きくする構成としてもよい。この構成によれば、光入射面における結合損失をより低減することが可能となる。この構成の場合、コア部11の厚みdの光伝送方向の位置による変化は連続的であってもよいし、不連続的であってもよい。
【0094】
(変形例6)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図16は、この変形例6としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。
【0095】
同図に示す例では、クラッド部12が複数の種類の材料によって構成されている。より具体的には、コア部11の光伝送方向に垂直な断面形状において、横幅方向に平行な面に接するクラッド部12Aと、厚み方向に平行な面に接するクラッド部12Bとで、材料が異なっている。例えば、クラッド部12Aの材料の屈折率を、曲げ損失を低くすることに最適な屈折率とする一方、クラッド部12Bの材料の屈折率を、光伝送に最適な屈折率とするような構成とすることが考えられる。
【0096】
なお、図16に示す例では、コア部11の光伝送方向に垂直な断面形状において、横幅方向に平行な2つの面に接する2つのクラッド部の材料を同じものとしているが、それぞれを異なる材料としてもよい。例えば、曲げを許容する方向が決まっている場合には、曲げの外側となるクラッド部12Aの屈折率を、曲げ損失を低くすることに最適な屈折率とする構成としてもよい。
【0097】
(変形例7)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図17は、この変形例7としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。
【0098】
同図に示す例では、クラッド部12の外側に補強部13が設けられている。より具体的には、クラッド部12の外側のうち、コア部11の厚み方向における外側となる2つの面に補強部13が設けられている。このような補強部13を設けることにより、光伝送路4の曲げに対する靱性を高めることが可能となる。なお、補強部13を設ける位置は上記の例に限定されるものではなく、光伝送路4の構成のどの位置に設けられていても良い。例えば、クラッド部12の外側のうち、コア部11の横幅方向における外側となる面に補強部13が設けられた構成であってもよい。
【0099】
(応用例)
本実施形態の光伝送路4は、例えば以下のような応用例に適用することが可能である。
【0100】
まず、第一の応用例として、折り畳み式携帯電話,折り畳み式PHS(Personal Handyphone System),折り畳み式PDA(Personal Digital Assistant),折り畳み式ノートパソコン等の折り畳み式の電子機器におけるヒンジ部に用いることができる。
【0101】
図18(a)〜図18(c)は、光伝送路4を折り畳み式携帯電話40に適用した例を示している。すなわち、図18(a)は光伝送路4を内蔵した折り畳み式携帯電話40の外観を示す斜視図である。
【0102】
図18(b)は、図18(a)に示した折り畳み式携帯電話40における、光伝送路4が適用されている部分のブロック図である。この図に示すように、折り畳み式携帯電話40における本体40a側に設けられた制御部41と、本体の一端にヒンジ部を軸として回転可能に備えられる蓋(駆動部)40b側に設けられた外部メモリ42,カメラ部(デジタルカメラ)43,表示部(液晶ディスプレイ表示)44とが、それぞれ光伝送路4によって接続されている。
【0103】
図18(c)は、図18(a)におけるヒンジ部(破線で囲んだ部分)の透視平面図である。この図に示すように、光伝送路4は、ヒンジ部における支持棒に巻きつけて屈曲させることによって、本体側に設けられた制御部と、蓋側に設けられた外部メモリ42,カメラ部43,表示部44とをそれぞれ接続している。
【0104】
光伝送路4を、これらの折り畳み式電子機器に適用することにより、限られた空間で高速、大容量の通信を実現できる。したがって、例えば、折り畳み式液晶表示装置などの、高速、大容量のデータ通信が必要であって、小型化が求められる機器に特に好適である。
【0105】
第2の応用例として、光伝送路4は、印刷装置(電子機器)におけるプリンタヘッドやハードディスク記録再生装置における読み取り部など、駆動部を有する装置に適用できる。
【0106】
図19(a)〜図19(c)は、光伝送路4を印刷装置50に適用した例を示している。図19(a)は、印刷装置50の外観を示す斜視図である。この図に示すように、印刷装置50は、用紙52の幅方向に移動しながら用紙52に対して印刷を行うプリンタヘッド51を備えており、このプリンタヘッド51に光伝送路4の一端が接続されている。
【0107】
図19(b)は、印刷装置50における、光伝送路4が適用されている部分のブロック図である。この図に示すように、光伝送路4の一端部はプリンタヘッド51に接続されており、他端部は印刷装置50における本体側基板に接続されている。なお、この本体側基板には、印刷装置50の各部の動作を制御する制御手段などが備えられる。
【0108】
図19(c)および図19(d)は、印刷装置50においてプリンタヘッド51が移動(駆動)した場合の、光伝送路4の湾曲状態を示す斜視図である。この図に示すように、光伝送路4をプリンタヘッド51のような駆動部に適用する場合、プリンタヘッド51の駆動によって光伝送路4の湾曲状態が変化するとともに、光伝送路4の各位置が繰り返し湾曲される。
【0109】
したがって、本実施形態にかかる光伝送路4は、これらの駆動部に好適である。また、光伝送路4をこれらの駆動部に適用することにより、駆動部を用いた高速、大容量通信を実現できる。
【0110】
図20は、光伝送路4をハードディスク記録再生装置60に適用した例を示している。
【0111】
この図に示すように、ハードディスク記録再生装置60は、ディスク(ハードディスク)61、ヘッド(読み取り、書き込み用ヘッド)62、基板導入部63、駆動部(駆動モータ)64、光伝送路4を備えている。
【0112】
駆動部64は、ヘッド62をディスク61の半径方向に沿って駆動させるものである。ヘッド62は、ディスク61上に記録された情報を読み取り、また、ディスク61上に情報を書き込むものである。なお、ヘッド62は、光伝送路4を介して基板導入部63に接続されており、ディスク61から読み取った情報を光信号として基板導入部63に伝搬させ、また、基板導入部63から伝搬された、ディスク61に書き込む情報の光信号を受け取る。
【0113】
このように、光伝送路4をハードディスク記録再生装置60におけるヘッド62のような駆動部に適用することにより、高速、大容量通信を実現できる。
【0114】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明に係る光伝送モジュールおよび光伝送路は、各種機器間の光通信路にも適用可能であるとともに、小型、薄型の民生機器内に搭載される機器内配線としてのフレキシブルな光配線にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の一実施形態に係る光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図2】本実施形態に係る光伝送モジュールの概略構成を示す図である。
【図3】光伝送路における光伝送の状態を模式的に示す図である。
【図4】横軸にコア部の厚み、縦軸に損失をとった時の、結合損失、曲げ損失、およびトータル損失の実験値を示すグラフである。
【図5】曲率半径Rで曲げられた光伝送路の状態を示す図である。
【図6】光源としての発光部と光伝送路との位置関係を示す図である。
【図7】光源としての発光部と光伝送路との位置関係の他の例を示す図である。
【図8】変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図9】他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図10】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図11】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図12】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図13】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図14】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図15】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図16】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図17】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図18】(a)は、本実施形態に係る光伝送路を備えた折り畳み式携帯電話の外観を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示した折り畳み式携帯電話における、上記光伝送路が適用されている部分のブロック図であり、(c)は、(a)に示した折り畳み式携帯電話における、ヒンジ部の透視平面図である。
【図19】(a)は、本実施形態に係る光伝送路を備えた印刷装置の外観を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示した印刷装置の主要部を示すブロック図であり、(c)および(d)は、印刷装置においてプリンタヘッドが移動(駆動)した場合の、光伝送路の湾曲状態を示す斜視図である。
【図20】本実施形態に係る光伝送路を備えたハードディスク記録再生装置の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0117】
1 光伝送モジュール
2 光送信処理部
3 光受信処理部
4 光伝送路
5 発光駆動部
6 発光部
7 増幅部
8 受光部
11 コア部
12 クラッド部
13 補強部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を伝送する光伝送路、光伝送モジュール、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速で大容量のデータ通信が可能な光通信網が拡大している。今後、この光通信網は機器間から機器内への搭載が予想されている。そして、プリント配線基板を光配線として実現するために、アレイ化が可能な光導波路が期待されている。
【0003】
光導波路は、コアと呼ばれる芯とそれを覆うクラッドと呼ばれる鞘の二重構造になっており、クラッドよりもコアの屈折率が高くなっている。すなわち、コアに入射した光信号は、コア内部で全反射を繰り返すことによって伝搬される。このような光導波路については、例えば特許文献1および特許文献2などに開示されている。
【0004】
また、特に近年では、より小型、薄型の民生機器に搭載されるフレキシブルな光配線を光導波路で実現することが求められている。これに対して、光導波路のコアおよびクラッドの材料に従来よりもさらに柔軟な材料を用いることによって、高い屈曲性を有する光導波路が開発されている。このような高い屈曲性を有する光導波路を用いれば、機器内の基板間でのデータ伝送をも光導波路にて行うことが可能となる。
【特許文献1】特開2001-242334公報(2001年9月7日公開)
【特許文献2】特開2001-330742公報(2001年11月30日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば小型・薄型の機器内において光導波路を用いる場合、高い屈曲性を有することが要求されることが考えられる。これに対して、従来の光導波路においては、このような高い屈曲性が要求された場合、曲げ部分において生じる曲げ損失が大きくなるという問題を有している。このような曲げ損失が大きくなると、通信エラーが発生する確率が高くなり、通信媒体として不適格なものとなってしまう。
【0006】
また、光源から光導波路に光が照射される際に生じる結合損失についても考慮する必要があるが、従来の光導波路では、曲げ損失と結合損失との両方を的確に低減することが可能なものは実現されていない。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、曲げられた状態で使用される場合でも、曲げ損失と結合損失との両方を低減することが可能な光伝送路、光伝送モジュール、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光伝送路は、上記課題を解決するために、透光性を有する材料から構成されるコア部と、該コア部の屈折率と異なる屈折率を有する材料から構成されるクラッド部とを備えた光伝送路であって、上記コア部内で光が伝送される際の光伝送方向に垂直な断面において、少なくとも1つのコア部からなるコア領域のうち、当該光伝送路の曲げを最も許容する曲げ方向としての第1の方向におけるコア部の長さを厚みd、該第1の方向に垂直な第2の方向におけるコア領域の長さを横幅wとし、上記第1の方向に曲げた時に許容することができる、上記コア領域の中心軸の曲率半径の最小値としての最許容曲率半径をRとし、上記コア領域と上記クラッド部との境界面のうち、少なくとも上記第1の方向での曲げによるカーブの外側となる領域におけるコア領域の屈折率をn1、クラッド部の屈折率をn2とすると、上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが、(R−d/2)/(R+d/2)≧(n2/n1)なる関係式を満たすとともに、少なくとも上記コア領域の光入射面において、上記横幅wが、上記厚みdよりも長くなっている構成である。
【0009】
上記の構成では、まず、少なくとも曲げを許容する領域において、コア領域の厚みdが上記のように設定されている。このようにコア領域の厚みが設定されると、詳細は後述するが、コア領域とクラッド部との境界面のうち、少なくとも上記第1の方向での曲げによるカーブの外側となる領域(外側内面)に対して当たる光の入射角が最も小さくなると想定される光が、該外側内面で全反射することになる。よって、光伝送路を最許容曲率半径で曲げた状態で使用したとしても、上記外側内面においてコア領域からクラッド領域に透過してしまう光を低く抑えることが可能となり、曲げ損失を低減することができる。
【0010】
また、上記の構成では、少なくとも光入射面において、コア領域の横幅wが、厚みdよりも長くなっている。ここで、光伝送路の曲げ領域においては、上記のように厚みdの上限が定まっているので、光伝送効率を考慮すると、光入射面における厚みも比較的小さくすることが好ましいことになる。一方、詳細は後述するが、結合損失を考慮すると、光入射面におけるコア領域の面積は大きい方が好ましいことになる。すなわち、比較的小さくする必要がある厚みdよりも、横幅wを大きくする断面形状とすることによって、光入射面におけるコア領域の面積をより大きくすることが可能となり、結合損失を低減することができる。
【0011】
つまり、上記の構成によれば、曲げられた状態で使用される場合でも、曲げたときの損失変動が原因の曲げ損失と製造ばらつき等が原因の結合損失を同時に低減することが可能な光伝送路を提供することができる。
【0012】
また、本発明に係る光伝送路は、上記課題を解決するために、透光性を有する材料から構成されるコア部と、該コア部の屈折率と異なる屈折率を有する材料から構成されるクラッド部とを備えた光伝送路であって、上記コア部内で光が伝送される際の光伝送方向に垂直な断面において、少なくとも1つのコア部からなるコア領域のうち、当該光伝送路の曲げを最も許容する曲げ方向としての第1の方向における長さを厚みd、該第1の方向に垂直な第2の方向における長さを横幅wとし、上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが40μm以下であるとともに、少なくとも上記コア領域の光入射面において、上記横幅wが、上記厚みdよりも長くなっているとともに、上記厚みdが20μm以上である構成である。
【0013】
上記の構成では、まず、少なくとも曲げを許容する領域において、コア領域の厚みdが上記のように設定されている。このようにコア領域の厚みが設定されると、一般的にマルチモードの光伝送路として用いられる光伝送路であれば、例えば小型の電子機器内の光配線としても十分に用いることが可能なレベルの曲げを許容した状態で、曲げ損失を低く抑えることができる。
【0014】
また、上記の構成では、少なくとも光入射面において、コア領域の横幅wが、厚みdよりも長くなっている。ここで、光伝送路の曲げ領域においては、上記のように厚みdの上限が定まっているので、光伝送効率を考慮すると、光入射面における厚みも比較的小さくすることが好ましいことになる。一方、詳細は後述するが、結合損失を考慮すると、光入射面におけるコア領域の面積は大きい方が好ましいことになる。すなわち、比較的小さくする必要がある厚みdよりも、横幅wを大きくする断面形状とすることによって、光入射面におけるコア領域の面積をより大きくすることが可能となり、結合損失を低減することができる。
【0015】
また、上記の構成では、少なくとも光入射面において、厚みdが20μm以上に設定されている。このように光入射面におけるコア領域の厚みが設定されると、一般的に用いられる光源および該光源との配置関係であれば、結合損失を低く抑えることができる。
【0016】
つまり、上記の構成によれば、曲げられた状態で使用される場合でも、曲げたときの損失変動が原因の曲げ損失と製造ばらつき等が原因の結合損失を同時に低減することが可能な光伝送路を提供することができる。
【0017】
また、本発明に係る光伝送路は、上記の構成において、上記コア領域の光入射面に照射される光源からの光照射領域のうち、上記第2の方向の長さの最大値よりも大きくなるように、上記横幅wが設定されている構成としてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、コア領域の横幅wが、コア領域の光入射面に照射される光源からの光照射領域のうち、第2の方向の長さの最大値よりも大きくなるように設定されているので、第2の方向に関しては、光照射領域がコア領域よりも大きいことによる光の損失を最小限にすることが可能となる。よって、結合損失をより低減することが可能となる。光照射領域とは、VCSEL等(光源)の発光エリアと、光の広がり角と、光入射面までの距離と、その間に設けられる光学部品(レンズ、プリズム等)により計算される光入射面における照射エリアをいう。光入射面とは、光伝送路に光を結合させる昨日を有する面のことをいう。
【0019】
また、本発明に係る光伝送路は、上記の構成において、上記コア部と上記クラッド部との屈折率差((n1−n2)/n1)が2〜5%である構成としてもよい。
【0020】
コア部とクラッド部との屈折率差が上記のような範囲である光伝送路は、一般的にマルチモードの光伝送路となる。すなわち、上記の構成によれば、マルチモードの光伝送路として好適に用いることが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る光伝送路は、上記の構成において、上記最許容曲率半径が1.5mm以下である構成としてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、光伝送路を曲率半径1.5mmまで曲げて用いることが可能となる。よって、例えば小型の電子機器内の光配線としても十分に用いることが可能なフレキシビリティを有する光伝送路を提供することができる。
【0023】
また、本発明に係る光伝送路は、上記の構成において、上記コア領域の光入射面が、上記光伝送方向に対して斜めに設けられているとともに、光源から照射された光が、上記光入射面において反射されることによって上記コア領域内に導入されるように構成されていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、光伝送路に対して、光伝送方向に対して横方向に光源を配置する構成とすることが可能となる。よって、例えば基板面に平行に光伝送路を配置することが必要とされる場合に、光伝送路と基板面との間に、該基板面の法線方向に光を出射するように光源を設置すればよいことになる。このような構成は、例えば光源を基板面に平行に光を出射するように設置する構成よりも、実装が容易であり、また、構成としてもよりコンパクトにすることができる。
【0025】
なお、上記クラッド部が空気によって構成されてもよいし、上記コア部および上記クラッド部が樹脂によって構成されていてもよい。
【0026】
また、上記厚みdに対する上記横幅wの比であるアスペクト比が2以上とする構成としてもよい。これにより、アスペクト比が1の場合よりも2の場合の方が結合損失を低減することができる。
【0027】
また、上記横幅wが光伝送方向に対する位置変化に応じて変化するようにしてもよい。横幅wは、上記したように、結合損失を低減することを目的として好ましい範囲が設定されている。すなわち、上記の構成によれば、横幅wを、結合損失が生じる光入射面において少なくとも上記の好ましい範囲に設定しておく一方、その他の領域においては異なる値とするような構成とすることが可能となる。
【0028】
なお、横幅wを連続的に変化させる構成とすれば、不連続に変化する場合に生じる光の漏洩を低減することができ、光伝送効率を高く保つことができる。
【0029】
また、本発明に係る光伝送路は、上記の構成において、上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域において、上記厚みdが、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて不変である、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて増大する、光入射側となる入口から一旦減少し、その後、光出射側となる出口に向けて不変である、または、光入射側となる入口から一旦減少し、その後、光出射側となる出口に向けて増大するように設定されていてもよい。
【0030】
この構成によれば、曲げられた状態における曲げを許容する領域での光の損失を最小限にすることができるので、曲げ損失をより低減することが可能となる。なお、厚みdが光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて増大する場合、増大の仕方は段階的であってもよいし連続的であってもよい。
【0031】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記本発明に係る光伝送路と、上記光伝送路の光入射面に対して光を照射する発光部と、上記光伝送路の光出射面から出射される光を受光する受光部と、外部から入力された電気信号に基づいて上記発光部の発光を駆動する発光駆動部と、受光部から出力された電気信号を増幅して外部に出力する増幅部とを備えている構成である。
【0032】
上記の構成によれば、光伝送路を曲げた状態で使用したとしても、光伝送路における曲げたときの損失変動が原因の曲げ損失や製造ばらつき等が原因の結合損失を起因とする性能劣化の発生が生じにくい光伝送モジュールを提供することができる。
【0033】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記の構成において、上記発光部が、上記光伝送路に対して、該光伝送路内での光伝送方向に対して横方向から光を照射するとともに、上記光伝送路が、上記発光部から照射された光を、光入射面において反射させることによって上記コア領域内に導入する構成としてもよい。
【0034】
上記の構成によれば、光伝送路に対して、光伝送方向に対して横方向に発光部を配置する構成とすることが可能となる。よって、例えば基板面に平行に光伝送路を配置することが必要とされる場合に、光伝送路と基板面との間に、該基板面の法線方向に光を出射するように発光部を設置すればよいことになる。このような構成は、例えば発光部を基板面に平行に光を出射するように設置する構成よりも、実装が容易であり、また、構成としてもよりコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る光伝送路は、以上のように、上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが、(R−d/2)/(R+d/2)≧(n2/n1)なる関係式を満たすとともに、少なくとも上記コア領域の光入射面において、上記横幅wが、上記厚みdよりも長くなっている構成である。
【0036】
また、本発明に係る光伝送路は、上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが40μm以下であるとともに、少なくとも上記コア領域の光入射面において、上記横幅wが、上記厚みdよりも長くなっているとともに、上記厚みdが20μm以上である構成である。
【0037】
これにより、曲げられた状態で使用される場合でも、曲げ損失と結合損失との両方を低減することが可能な光伝送路を提供することができるという効果を奏する。
【0038】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記本発明に係る光伝送路と、上記光伝送路の光入射面に対して光を照射する発光部と、上記光伝送路の光出射面から出射される光を受光する受光部と、外部から入力された電気信号に基づいて上記発光部の発光を駆動する発光駆動部と、受光部から出力された電気信号を増幅して外部に出力する増幅部とを備えている構成である。
【0039】
これにより、光伝送路を曲げた状態で使用したとしても、光伝送路における曲げたときの損失変動が原因の曲げ損失や製造ばらつき等が原因の結合損失を起因とする性能劣化の発生が生じにくい光伝送モジュールを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。
【0041】
(光伝送モジュールの構成)
図2は、本実施形態に係る光伝送モジュール1の概略構成を示している。同図に示すように、光伝送モジュール1は、光送信処理部2、光受信処理部3、および光伝送路4を備えている。
【0042】
光送信処理部2は、発光駆動部5および発光部6を備えた構成となっている。発光駆動部5は、外部から入力された電気信号に基づいて発光部6の発光を駆動する。この発光駆動部5は、例えば発光駆動用のIC(Integrated Circuit)によって構成される。なお、図示はしていないが、発光駆動部5には、外部からの電気信号を伝送する電気配線との電気接続部が設けられている。
【0043】
発光部6は、発光駆動部5による駆動制御に基づいて発光する。この発光部6は、例えばVCSEL(Vertical Cavity-Surface Emitting Laser)などの発光素子によって構成される。発光部6から発せられた光は、光信号として光伝送路4の光入射側端部に照射される。
【0044】
光受信処理部3は、増幅部7および受光部8を備えた構成となっている。受光部8は、光伝送路4の光出射側端部から出射された光信号としての光を受光し、光電変換によって電気信号を出力する。この受光部8は、例えばPD(Photo-Diode)などの受光素子によって構成される。
【0045】
増幅部7は、受光部8から出力された電気信号を増幅して外部に出力する。この増幅部7は、例えば増幅用のICによって構成される。なお、図示はしていないが、増幅部7には、外部へ電気信号を伝送する電気配線との電気接続部が設けられている。
【0046】
光伝送路4は、発光部6から出射された光を受光部8まで伝送する媒体である。この光伝送路4の構成の詳細については後述する。
【0047】
図3は、光伝送路4における光伝送の状態を模式的に示している。同図に示すように、光伝送路4は可撓性を有する柱状形状の部材によって構成される。また、光伝送路4の光入射側端部には光入射反射面(光入射面)4Aが設けられているとともに、光出射側端部には光出射反射面(光出射面)4Bが設けられている。
【0048】
発光部6から出射された光は、光伝送路4の光入射側端部に対して、光伝送路4の光伝送方向に対して垂直となる方向から入射される。入射された光は、光入射反射面4Aにおいて反射されることによって光伝送路4内を進行する。光伝送路4内を進行して光出射側端部に到達した光は、光出射反射面4Bにおいて反射されることによって、光伝送路4の光伝送方向に対して垂直となる方向へ出射される。出射された光は、受光部8に照射され、受光部8において光電変換が行われる。
【0049】
このような構成によれば、光伝送路4に対して、光伝送方向に対して横方向に光源としての発光部6を配置する構成とすることが可能となる。よって、例えば基板面に平行に光伝送路4を配置することが必要とされる場合に、光伝送路4と基板面との間に、該基板面の法線方向に光を出射するように発光部6を設置すればよいことになる。このような構成は、例えば発光部6を基板面に平行に光を出射するように設置する構成よりも、実装が容易であり、また、構成としてもよりコンパクトにすることができる。これは、発光部6の一般的な構成が、光を出射する方向のサイズよりも、光を出射する方向と垂直な方向のサイズの方が大きくなっていることによるものである。さらに同一面内に電極と発光部がある平面実装向け発光素子を使用する構成にも適用が可能である。
【0050】
(光伝送路の構成)
図1は、光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。同図に示すように、光伝送路4は、光伝送方向を軸とする柱状形状のコア部11と、コア部11の周囲を囲むように設けられたクラッド部12とを備えた構成となっている。コア部11およびクラッド部12は透光性を有する材料によって構成されているとともに、コア部11の屈折率は、クラッド部12の屈折率よりも高くなっている。コア部11に入射した光信号は、コア部11内部で全反射を繰り返すことによって光伝送方向に伝送される。
【0051】
コア部11およびクラッド部12を構成する材料としては、ガラスやプラスチックなどを用いることが可能であるが、十分な可撓性を有する光伝送路4を構成するためには、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、およびシリコーン系等の樹脂材料を使用することが好ましい。また、クラッド部12を空気などの気体で構成してもよい。さらに、クラッド部12をコア部11よりも屈折率の小さい液体の雰囲気下において使用しても同様の効果が得られる。
【0052】
光伝送方向に垂直な面でのコア部11の断面形状は長方形となっている。そして、光伝送路4の曲げを最も許容する曲げ方向(最許容曲げ方向)を、コア部11の側面のうち、コア部11の断面形状における長方形の長辺を含む側面の法線方向とする。
【0053】
ここで、コア部11の断面形状の長方形において、長辺の長さを横幅w、短辺の長さを厚みdとする。また、光伝送路4を最許容曲げ方向に曲げた時に許容することができる最許容曲率半径をRとする。なお、この最許容曲率半径Rは、コア部11の中心軸の曲率半径に相当する。
【0054】
(結合損失、曲げ損失)
次に、光伝送路4による光伝送に生じる結合損失および曲げ損失について説明する。結合損失とは、光源(発光部6に対応)からの光が光伝送路4に入射される際に生じる光の損失である。詳細に説明すると次のとおりである。光源と光伝送路4との間には、ある程度の間隔が設けられている。これは、光源および光伝送路4の設置位置の誤差、および、部品サイズの誤差を吸収するために設けられている。すなわち、光源から出射した光は、上記の間隔を経由して光伝送路4に入射することになる。ここで、光源から出射した光が完全に光伝送路4には入射できないことになり、ここで生じる光の損失が結合損失となる。
【0055】
また、曲げ損失とは、光伝送路4が曲げられることによって生じる光の損失である。詳細に説明すると次のとおりである。光伝送路4の内部を伝送する光は、コア部11内部で全反射を繰り返すことによって光伝送方向に伝送される。ここで、光が全反射するためには、コア部11の内面に対する入射角が所定の角度以上であることが必要とされる。これに対して、光伝送路4が曲げられると、曲げられた方向とは逆となるコア部11の内面に対して当たる光の入射角が小さくなる確率が高くなる。これにより、伝送されている光が、コア部11の内面において全反射せずに、一部が外部に透過してしまうことになる。ここで生じる光の損失が曲げ損失となる。
【0056】
ここで、図1に示した光伝送路4の構成において、コア部11の厚みを示すdと、結合損失および曲げ損失との関係について説明する。図4は、横軸にコア部11の厚みd(単位:μm)、縦軸に損失(dB)をとった時の、結合損失、曲げ損失、およびトータル損失の計算値を示すグラフである。なお、トータル損失とは、結合損失と曲げ損失との和に相当するものである。同図において、A1で示す曲線は、曲げ損失を示しており、A2で示す曲線は、コア部11の断面形状のアスペクト比が1の時の結合損失を示しており、A3で示す曲線は、コア部11の断面形状のアスペクト比が2の時の結合損失を示しており、A4で示す曲線は、コア部11の断面形状のアスペクト比が1の時のトータル損失を示しており、A5で示す曲線は、コア部11の断面形状のアスペクト比が2の時のトータル損失を示している。
【0057】
なお、コア部11の断面形状のアスペクト比とは、w/dに相当する値である。また、図4に示す実験値は、光源と光伝送路4とが次のような関係になっている構成によって得られたものである。まず、光源から出射された光が、光伝送路4の光伝送方向に垂直な断面を光入射側面とする面に対して垂直に入射されるように、光源と光伝送路4とが配置されている。また、光源と光入射側面との間隔が70μmとなっており、光源から出射される光の広がり角度を30度となっている。また、曲げ損失に関しては、曲率半径を1.5mmとし、コア部11とクラッド部12との屈折率差((n1−n2)/n1)を3%とした場合の値を示している。
【0058】
同図に示すように、結合損失は、コア部11の厚みdが大きくなるほど低下する傾向がある。これは、コア部11の厚みdが大きくなり、コア部11における光源からの光入射面の面積が大きくなるためである。また、曲げ損失は、コア部11の厚みdが大きくなるほど増加する傾向がある。これは、光伝送路4が曲げられた際の曲率半径が同一である場合には、コア部11の厚みdが大きくなると、カーブの外側となる領域におけるコア部11の界面に対して当たる光の入射角が小さくなる確率が高くなることが原因である。
【0059】
すなわち、トータル損失は、コア部11の厚みdが大きすぎても小さすぎても良くないことになる。つまり、トータル損失を小さくするには、コア部11の厚みdを所定の範囲内にすることが好ましいことになる。
【0060】
図4に示すように、曲げ損失に関しては、厚みdが40μmより大きくなると損失変動幅が1dBを上回ることがわかる。曲げによる瞬間的な変動により損失変動幅が大きくなると、それを補正するための回路を設けなければならず、構成が複雑になってしまうという欠点がある。すなわち、厚みdは40μm以下であることが好ましいことになる。
【0061】
また、結合損失に関しては、厚みdが小さくなるほど損失が大きくなるが、厚みdが20μmを下回ると、厚みdの減少に伴う結合損失の増大(dB値の低下)の割合が大きくなる。言い換えると、厚みdの変化に対する損失の変化において、厚みdが20μmのところで変曲点が存在し、この変曲点を境に、損失の変化の割合が変化している。すなわち、厚みdは20μm以上であることが好ましいことになる。
【0062】
また、結合損失に関して、アスペクト比が1の場合よりも2の場合の方が損失が小さいことがわかる。これは、アスペクト比が大きいほど、光伝送路4における光入射側面の面積が大きくなり、より多くの入射光を取り込めるようになるからである。すなわち、アスペクト比は2以上であることが好ましいことになる。
【0063】
(コア部の厚みの設計)
次に、曲げ損失を低減するために、コア部11の厚みをどの程度に設定することが好ましいかについて説明する。図5は、曲率半径Rで曲げられた光伝送路4の状態を示している。前記したように、光伝送路4が曲げられると、コア部11の内面のうち、曲げによるカーブの外側となる領域(以降、外側内面と称する)に対して当たる光の入射角が小さくなる確率が高くなり、外部に光が漏れてしまうことになる。したがって、ここでは、コア部11の外側内面に対して当たる光の入射角が最も小さくなると想定される光が該外側内面で全反射するための、コア部11の厚みの条件を求める。
【0064】
ここで、コア部11が直線状となっている部分で光伝送方向に平行に進行してきた光のうち、コア部11の外側内面に対して当たる光の入射角が最も小さくなる光は、曲げによるカーブの内側となるコア部11の内面に接して曲げ部分に入射した光L1となる。
【0065】
光L1によるコア部11の外側内面への入射角をθとすると、光L1がコア部11の外側内面で全反射するための条件は、
sinθ≧(n2/n1) …(1)
となる。ここで、n1およびn2は、それぞれコア部11およびクラッド部12の屈折率を示している。
【0066】
一方、sinθは、図5より、Rおよびdに基づいて次のように表すことができる。
sinθ=(R−d/2)/(R+d/2) …(2)
(1)式および(2)式より、
(R−d/2)/(R+d/2)≧(n2/n1)
d≦2R(n1−n2)/(n1+n2) …(3)
を導くことができる。すなわち、許容する曲率半径、および、コア部11およびクラッド部12の屈折率が決まれば、コア部11の厚みdの最大値を求めることができる。
【0067】
ここで、本実施形態においては、光伝送路4としてマルチモードの光伝送路を用いることが想定されている。マルチモードの光伝送路では、一般的に、コア部11とクラッド部12との屈折率差((n1−n2)/n1)は2〜5%程度となっている。屈折率差が2%よりも小さくなると、曲げによる損失が大きくなってしまう問題点がある。また屈折率差が5%よりも大きくなると、不要なモードが多数発生し光信号の高速伝送が困難になるという問題がある。また、本実施形態においては、光伝送路4の最許容曲率半径を1.5mm以下にすることを想定している。これらより、屈折率差および最許容曲率半径の具体的な数値の組合せは以下のようになる。
【0068】
例えば屈折率差4%の場合、最許容曲率半径R=1.0ならばd≦41μm、最許容曲率半径R=1.5ならばd≦61μmとなる。また、製造ばらつきや使用状況等を考慮すると、計算値よりも厚みdを10〜20%小さく作製することが望ましい。
【0069】
なお、上記のように、曲げ損失は、コア部11の外側内面におけるコア部11とクラッド部12との屈折率差に影響を受けるものである。よって、(3)式におけるn1およびn2は、光伝送路4において曲げが想定される領域における想定される曲げ方向において、コア部11の外側内面となる領域でのコア部11およびクラッド部12の屈折率であればよい。すなわち、この領域でのコア部11およびクラッド部12の屈折率と、その他の領域でのコア部11およびクラッド部12の屈折率とが同じであっても構わないし、異なっていても構わない。
【0070】
なお、図5に示す例では、曲率半径Rで曲げられている領域、すなわち、曲げを許容する領域におけるコア部11の厚みdは均一となっている。これに対して、曲げを許容する領域の光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて、上記厚みdが連続的に増大するような構成となっていてもよい。このような構成の場合、光L1によるコア部11の外側内面への入射角θは、図5に示す状態よりも大きくなるので、光L1は外側内面において全反射することになる。すなわち、曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが、上記(3)式を満たすとともに、少なくとも曲げを許容する領域において、上記厚みdが、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて不変であるか、または、増大するように設定されていれば、曲げ損失を低減することができる。厚みdが光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて増大する場合、増大の仕方は段階的であってもよいし連続的であってもよい。
【0071】
さらに、曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが、上記(3)式を満たすとともに、少なくとも曲げを許容する領域において、上記厚みdが、光入射側となる入口から一旦減少し、その後、光出射側となる出口に向けて不変である、または、光入射側となる入口から一旦減少し、その後、光出射側となる出口に向けて増大するように設定されていても、曲げ損失を低減することができる。これは、上記厚みdが、光入射側となる入口から一旦減少する場合、若干の光伝送効率の低下は生じるが、その後、その後不変であるか、または増大していれば、曲げによる損失を低減することができるからである。
【0072】
(コア部の横幅の設計)
次に、結合損失を低減するために、コア部11の横幅wをどの程度に設定することが好ましいかについて説明する。図6は、光源としての発光部6と光伝送路4との位置関係を示している。同図において、発光部6の光源開口の大きさをAとし、発光部6から出射される光の広がり角度をαとし、発光部6の光源開口と光伝送路4の光入射面との距離をDとしている。
【0073】
コア部11の厚みに関しては、上記したように、曲げ損失を考慮すると上限値が自ずと決まってくることになる。よって、結合損失を低減するためには、コア部11の横幅wが大きい程よいことになる。ここで、結合損失を最小限にするためには、光源から出射されて光伝送路4の光入射面に照射される光の領域のうち、コア部11の横幅方向の長さよりも、コア部11の横幅wの方が大きくなっていればよいことになる。
【0074】
上記の関係を図6に示す状態において式で表すと、
w≧A+2*D*tan(α/2) …(4)
となる。なお、(4)式は、光源の中心位置から出射される光の光軸上に、コア部11の横幅方向の中心軸がある配置関係を前提としたものとなる。
【0075】
ここで、発光部6および光伝送路4の設置位置の誤差、および、部品サイズの誤差を考慮すると、(4)式は次のように表される。
w≧A+2*D*tan(α/2)+Δx …(5)
(5)式において、Δxは、発光部6および光伝送路4の設置位置の誤差、および、部品サイズの誤差の絶対値を示している。すなわち、光源の中心位置から出射される光の光軸と、コア部11の横幅方向の中心軸との位置のずれが、誤差Δxとなった場合が最も結合損失に影響を与えることになるので、(5)式はこの場合を考慮したものとなっている。
【0076】
ここで、一例として、光源開口の大きさAを10μm、光の広がり角度αを30°、発光部6の光源開口と光伝送路4の光入射面との距離Dを50μm、誤差Δxを50μmとすると、横幅wは、86.8μm以上であることが好ましいことになる。
【0077】
なお、図6に示す構成では、上記したように、光源の中心位置から出射される光の光軸上に、コア部11の横幅方向の中心軸がある配置関係となっているが、図7に示すような構成であってもよい。図7に示す構成では、発光部6から出射された光は、光伝送路4の光入射側端部に対して、光伝送路4の光伝送方向に対して垂直となる方向から入射される。入射された光は、光入射反射面S1(図3における光入射反射面4Aに相当)において反射されることによってコア部11内を進行する。
【0078】
このような構成の場合、コア部11の横幅wは次のように設定すればよい。まず、光入射反射面S1に照射される発光部6からの光照射領域のうち、コア部11の横幅方向の長さの最大値(横幅方向最大長さ)を求める。そして、コア部11の横幅wを、この横幅方向最大長さよりも大きくなるように設定すればよい。さらに、誤差Δxを考慮する場合には、コア部11の横幅wを、この横幅方向最大長さと誤差Δxとの和よりも大きくなるように設定すればよい。
【0079】
(変形例1)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成の変形例について説明する。図8は、この変形例1としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。図1に示す構成では、光伝送方向に垂直な断面において、コア部11の周囲は全てクラッド部12によって囲まれている構成となっているが、図8に示すように、コア部11の周囲の少なくとも一部が外部に露出した構成、逆に言えば、コア部11の周囲の少なくとも一部がクラッド部12に囲まれている構成となっていてもよい。同図に示す例では、コア部11の横幅方向に平行な面の一方が外部に露出している構成となっている。
【0080】
(変形例2)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成の他の変形例について説明する。図9は、この変形例2としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。図1に示す構成では、コア部11の光伝送方向に垂直な断面形状が長方形となっているが、図9に示すように、この断面形状が楕円形状であってもよい。この場合、コア部11の横幅wは、楕円の長径に相当し、コア部11の厚みdは、楕円の短径に相当する。なお、図9に示す例では、断面形状が楕円となっているが、例えば長方形の角部分が円弧となっている(角にRがついている)ような形状であっても構わない。さらに、長方形の角部分が三角形状などに落とされた形状であっても構わない。
【0081】
(変形例3)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図10は、この変形例3としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。
【0082】
同図に示すように、コア部11の光伝送方向に垂直な断面において、複数のコア部11によってコア領域が形成されていてもよい。同図に示す例では、コア部11の断面形状が正方形である複数の領域が、横幅方向に間隔をおいて並んだ形状となっている。
【0083】
また、図11に示す構成では、コア部11の断面形状が円である複数の領域が、横幅方向に間隔をおいて並んだ形状となっている。さらに、図12に示す構成では、コア部11の断面形状が円である複数の領域が、互いに接しながら並んだ形状となっている。
【0084】
この構成の場合、コア部11の領域同士の間に照射された光が結合損失となってしまうデメリットがあるが、同じ断面形状のコア部11を平行に複数並べることによってコア領域としての横幅方向の長さを確保することが可能となるので、様々な横幅を有する光伝送路4を柔軟に生産することができるというメリットを有する。
【0085】
また、複数に分かれているコア部11のそれぞれの材料、材質は、同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
【0086】
(変形例4)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図13は、この変形例4としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。
【0087】
同図に示す例では、コア部11の光伝送方向に垂直な断面形状において、厚みが場所によって異なる形状となっている。コア部11の厚みdは、上記のように好ましい値の範囲が存在するが、この形状の場合、厚みが好ましい値の範囲となっている領域が、横幅wの半分以上の大きさであればよい。
【0088】
図13に示す構成では、好ましい値の範囲となっている厚みdの領域が断面図におけるコア部11の右側半分以上の領域となっており、それ以外の領域の厚みは、厚みdよりも厚くなっている。なお、厚みの変化はこの例に限定されるものではなく、好ましい厚みの領域が断面図における左側にあってもよいし、中央近傍にあってもよいし、複数の箇所に分かれていてもよい。
【0089】
(変形例5)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図14は、この変形例5としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。
【0090】
同図に示す例では、光伝送路4の光入射面におけるコア部11の横幅wが上記した好ましい範囲になっている一方、光入射面から離れるに従って、コア部11の横幅wが徐々にテーパ状に減少していく構成、すなわち、横幅wが連続的に減少していく構成となっている。ここで、コア部11の横幅wは、上記したように、結合損失を低減することを目的として好ましい範囲が設定されている。すなわち、コア部11の横幅wは、結合損失が生じる光入射面において少なくとも上記の好ましい範囲に設定されていれば、その他の領域ではどのような横幅になっていてもよいことになる。
【0091】
また、図15に示す例では、光伝送路4の光入射面から所定の距離範囲にあるコア部11の横幅wが上記した好ましい範囲になっている一方、上記所定の距離範囲以外のコア部11の横幅wが、上記した好ましい範囲以外の長さとなっている。なお、このように、コア部11の横幅wが光伝送方向において不連続に変化する構成とする場合、この不連続となる箇所において光の漏洩が生じることが考えられるので、光伝送効率を考慮すると、図14に示すように、コア部11の横幅wが光伝送方向において連続的に変化する構成のほうが好ましい。
【0092】
なお、図14および図15に示す構成では、コア部11の横幅wが光伝送方向での位置に応じて変化しているが、コア部11の厚みdが光伝送方向での位置に応じて変化する構成としてもよい。すなわち、コア部11の厚みdは、曲げ損失を最小限とするために、上記のような好ましい範囲とするようになっているが、コア部11の光伝送方向の位置において、コア部11の厚みdが好ましい範囲とすべき領域は、少なくとも光伝送路4で曲げが生じうる領域(曲げを許容する領域)であればよい。
【0093】
例えば、光伝送路4で曲げが生じうる領域では、コア部11の厚みdを上記の好ましい範囲とする一方、光入射面においては、コア部11の厚みdをより大きくする構成としてもよい。この構成によれば、光入射面における結合損失をより低減することが可能となる。この構成の場合、コア部11の厚みdの光伝送方向の位置による変化は連続的であってもよいし、不連続的であってもよい。
【0094】
(変形例6)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図16は、この変形例6としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。
【0095】
同図に示す例では、クラッド部12が複数の種類の材料によって構成されている。より具体的には、コア部11の光伝送方向に垂直な断面形状において、横幅方向に平行な面に接するクラッド部12Aと、厚み方向に平行な面に接するクラッド部12Bとで、材料が異なっている。例えば、クラッド部12Aの材料の屈折率を、曲げ損失を低くすることに最適な屈折率とする一方、クラッド部12Bの材料の屈折率を、光伝送に最適な屈折率とするような構成とすることが考えられる。
【0096】
なお、図16に示す例では、コア部11の光伝送方向に垂直な断面形状において、横幅方向に平行な2つの面に接する2つのクラッド部の材料を同じものとしているが、それぞれを異なる材料としてもよい。例えば、曲げを許容する方向が決まっている場合には、曲げの外側となるクラッド部12Aの屈折率を、曲げ損失を低くすることに最適な屈折率とする構成としてもよい。
【0097】
(変形例7)
本実施形態の光伝送路4の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図17は、この変形例7としての光伝送路4の断面図、側面図、および上面図を示している。
【0098】
同図に示す例では、クラッド部12の外側に補強部13が設けられている。より具体的には、クラッド部12の外側のうち、コア部11の厚み方向における外側となる2つの面に補強部13が設けられている。このような補強部13を設けることにより、光伝送路4の曲げに対する靱性を高めることが可能となる。なお、補強部13を設ける位置は上記の例に限定されるものではなく、光伝送路4の構成のどの位置に設けられていても良い。例えば、クラッド部12の外側のうち、コア部11の横幅方向における外側となる面に補強部13が設けられた構成であってもよい。
【0099】
(応用例)
本実施形態の光伝送路4は、例えば以下のような応用例に適用することが可能である。
【0100】
まず、第一の応用例として、折り畳み式携帯電話,折り畳み式PHS(Personal Handyphone System),折り畳み式PDA(Personal Digital Assistant),折り畳み式ノートパソコン等の折り畳み式の電子機器におけるヒンジ部に用いることができる。
【0101】
図18(a)〜図18(c)は、光伝送路4を折り畳み式携帯電話40に適用した例を示している。すなわち、図18(a)は光伝送路4を内蔵した折り畳み式携帯電話40の外観を示す斜視図である。
【0102】
図18(b)は、図18(a)に示した折り畳み式携帯電話40における、光伝送路4が適用されている部分のブロック図である。この図に示すように、折り畳み式携帯電話40における本体40a側に設けられた制御部41と、本体の一端にヒンジ部を軸として回転可能に備えられる蓋(駆動部)40b側に設けられた外部メモリ42,カメラ部(デジタルカメラ)43,表示部(液晶ディスプレイ表示)44とが、それぞれ光伝送路4によって接続されている。
【0103】
図18(c)は、図18(a)におけるヒンジ部(破線で囲んだ部分)の透視平面図である。この図に示すように、光伝送路4は、ヒンジ部における支持棒に巻きつけて屈曲させることによって、本体側に設けられた制御部と、蓋側に設けられた外部メモリ42,カメラ部43,表示部44とをそれぞれ接続している。
【0104】
光伝送路4を、これらの折り畳み式電子機器に適用することにより、限られた空間で高速、大容量の通信を実現できる。したがって、例えば、折り畳み式液晶表示装置などの、高速、大容量のデータ通信が必要であって、小型化が求められる機器に特に好適である。
【0105】
第2の応用例として、光伝送路4は、印刷装置(電子機器)におけるプリンタヘッドやハードディスク記録再生装置における読み取り部など、駆動部を有する装置に適用できる。
【0106】
図19(a)〜図19(c)は、光伝送路4を印刷装置50に適用した例を示している。図19(a)は、印刷装置50の外観を示す斜視図である。この図に示すように、印刷装置50は、用紙52の幅方向に移動しながら用紙52に対して印刷を行うプリンタヘッド51を備えており、このプリンタヘッド51に光伝送路4の一端が接続されている。
【0107】
図19(b)は、印刷装置50における、光伝送路4が適用されている部分のブロック図である。この図に示すように、光伝送路4の一端部はプリンタヘッド51に接続されており、他端部は印刷装置50における本体側基板に接続されている。なお、この本体側基板には、印刷装置50の各部の動作を制御する制御手段などが備えられる。
【0108】
図19(c)および図19(d)は、印刷装置50においてプリンタヘッド51が移動(駆動)した場合の、光伝送路4の湾曲状態を示す斜視図である。この図に示すように、光伝送路4をプリンタヘッド51のような駆動部に適用する場合、プリンタヘッド51の駆動によって光伝送路4の湾曲状態が変化するとともに、光伝送路4の各位置が繰り返し湾曲される。
【0109】
したがって、本実施形態にかかる光伝送路4は、これらの駆動部に好適である。また、光伝送路4をこれらの駆動部に適用することにより、駆動部を用いた高速、大容量通信を実現できる。
【0110】
図20は、光伝送路4をハードディスク記録再生装置60に適用した例を示している。
【0111】
この図に示すように、ハードディスク記録再生装置60は、ディスク(ハードディスク)61、ヘッド(読み取り、書き込み用ヘッド)62、基板導入部63、駆動部(駆動モータ)64、光伝送路4を備えている。
【0112】
駆動部64は、ヘッド62をディスク61の半径方向に沿って駆動させるものである。ヘッド62は、ディスク61上に記録された情報を読み取り、また、ディスク61上に情報を書き込むものである。なお、ヘッド62は、光伝送路4を介して基板導入部63に接続されており、ディスク61から読み取った情報を光信号として基板導入部63に伝搬させ、また、基板導入部63から伝搬された、ディスク61に書き込む情報の光信号を受け取る。
【0113】
このように、光伝送路4をハードディスク記録再生装置60におけるヘッド62のような駆動部に適用することにより、高速、大容量通信を実現できる。
【0114】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明に係る光伝送モジュールおよび光伝送路は、各種機器間の光通信路にも適用可能であるとともに、小型、薄型の民生機器内に搭載される機器内配線としてのフレキシブルな光配線にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の一実施形態に係る光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図2】本実施形態に係る光伝送モジュールの概略構成を示す図である。
【図3】光伝送路における光伝送の状態を模式的に示す図である。
【図4】横軸にコア部の厚み、縦軸に損失をとった時の、結合損失、曲げ損失、およびトータル損失の実験値を示すグラフである。
【図5】曲率半径Rで曲げられた光伝送路の状態を示す図である。
【図6】光源としての発光部と光伝送路との位置関係を示す図である。
【図7】光源としての発光部と光伝送路との位置関係の他の例を示す図である。
【図8】変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図9】他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図10】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図11】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図12】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図13】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図14】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図15】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図16】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図17】さらに他の変形例としての光伝送路の断面図、側面図、および上面図である。
【図18】(a)は、本実施形態に係る光伝送路を備えた折り畳み式携帯電話の外観を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示した折り畳み式携帯電話における、上記光伝送路が適用されている部分のブロック図であり、(c)は、(a)に示した折り畳み式携帯電話における、ヒンジ部の透視平面図である。
【図19】(a)は、本実施形態に係る光伝送路を備えた印刷装置の外観を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示した印刷装置の主要部を示すブロック図であり、(c)および(d)は、印刷装置においてプリンタヘッドが移動(駆動)した場合の、光伝送路の湾曲状態を示す斜視図である。
【図20】本実施形態に係る光伝送路を備えたハードディスク記録再生装置の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0117】
1 光伝送モジュール
2 光送信処理部
3 光受信処理部
4 光伝送路
5 発光駆動部
6 発光部
7 増幅部
8 受光部
11 コア部
12 クラッド部
13 補強部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する材料から構成されるコア部と、該コア部の屈折率と異なる屈折率を有する材料から構成されるクラッド部とを備えた光伝送路であって、
上記コア部内で光が伝送される際の光伝送方向に垂直な断面において、少なくとも1つのコア部からなるコア領域のうち、当該光伝送路の曲げを最も許容する曲げ方向としての第1の方向におけるコア部の長さを厚みd、該第1の方向に垂直な第2の方向におけるコア領域の長さを横幅wとし、
上記第1の方向に曲げた時に許容することができる、上記コア領域の中心軸の曲率半径の最小値としての最許容曲率半径をRとし、上記コア領域と上記クラッド部との境界面のうち、少なくとも上記第1の方向での曲げによるカーブの外側となる領域におけるコア領域の屈折率をn1、クラッド部の屈折率をn2とすると、
上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが、
(R−d/2)/(R+d/2)≧(n2/n1)
なる関係式を満たすとともに、
少なくとも上記コア領域の光入射面において、上記横幅wが、上記厚みdよりも長くなっていることを特徴とする光伝送路。
【請求項2】
透光性を有する材料から構成されるコア部と、該コア部の屈折率と異なる屈折率を有する材料から構成されるクラッド部とを備えた光伝送路であって、
上記コア部内で光が伝送される際の光伝送方向に垂直な断面において、少なくとも1つのコア部からなるコア領域のうち、当該光伝送路の曲げを最も許容する曲げ方向としての第1の方向における長さを厚みd、該第1の方向に垂直な第2の方向における長さを横幅wとし、
上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが40μm以下であるとともに、
少なくとも上記コア領域の光入射面において、上記横幅wが、上記厚みdよりも長くなっているとともに、上記厚みdが20μm以上であることを特徴とする光伝送路。
【請求項3】
上記コア領域の光入射面に照射される光源からの光照射領域のうち、上記第2の方向の長さの最大値よりも大きくなるように、上記横幅wが設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の光伝送路。
【請求項4】
上記コア部と上記クラッド部との屈折率差((n1−n2)/n1)が2〜5%であることを特徴とする請求項1記載の光伝送路。
【請求項5】
上記最許容曲率半径が1.5mm以下であることを特徴とする請求項1記載の光伝送路。
【請求項6】
上記コア領域の光入射面が、上記光伝送方向に対して斜めに設けられているとともに、光源から照射された光が、上記光入射面において反射されることによって上記コア領域内に導入されるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光伝送路。
【請求項7】
上記クラッド部が空気によって構成されることを特徴とする請求項1または2記載の光伝送路。
【請求項8】
上記コア部および上記クラッド部が樹脂によって構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光伝送路。
【請求項9】
上記厚みdに対する上記横幅wの比であるアスペクト比が2以上であることを特徴とする請求項1または2記載の光伝送路。
【請求項10】
上記横幅wが光伝送方向に対する位置変化に応じて変化することを特徴とする請求項1または2記載の光伝送路。
【請求項11】
上記厚みdが、少なくとも曲げを許容する領域において、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて不変であることを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送路。
【請求項12】
上記厚みdが、少なくとも曲げを許容する領域において、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて増大することを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送路。
【請求項13】
上記厚みdが、少なくとも曲げを許容する領域において、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて段階的に増大することを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送路。
【請求項14】
上記厚みdが、少なくとも曲げを許容する領域において、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて連続的に増大することを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送路。
【請求項15】
上記厚みdが、少なくとも曲げを許容する領域において、光入射側となる入口から一旦減少することを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送路。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の光伝送路と、
上記光伝送路の光入射面に対して光を照射する発光部と、
上記光伝送路の光出射面から出射される光を受光する受光部と、
外部から入力された電気信号に基づいて上記発光部の発光を駆動する発光駆動部と、
受光部から出力された電気信号を増幅して外部に出力する増幅部とを備えていることを特徴とする光伝送モジュール。
【請求項17】
上記発光部が、上記光伝送路に対して、該光伝送路内での光伝送方向に対して横方向から光を照射するとともに、
上記光伝送路が、上記発光部から照射された光を、光入射面において反射させることによって上記コア領域内に導入することを特徴とする請求項16記載の光伝送モジュール。
【請求項18】
請求項16または17に記載の光伝送モジュールを備えた電子機器。
【請求項1】
透光性を有する材料から構成されるコア部と、該コア部の屈折率と異なる屈折率を有する材料から構成されるクラッド部とを備えた光伝送路であって、
上記コア部内で光が伝送される際の光伝送方向に垂直な断面において、少なくとも1つのコア部からなるコア領域のうち、当該光伝送路の曲げを最も許容する曲げ方向としての第1の方向におけるコア部の長さを厚みd、該第1の方向に垂直な第2の方向におけるコア領域の長さを横幅wとし、
上記第1の方向に曲げた時に許容することができる、上記コア領域の中心軸の曲率半径の最小値としての最許容曲率半径をRとし、上記コア領域と上記クラッド部との境界面のうち、少なくとも上記第1の方向での曲げによるカーブの外側となる領域におけるコア領域の屈折率をn1、クラッド部の屈折率をn2とすると、
上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが、
(R−d/2)/(R+d/2)≧(n2/n1)
なる関係式を満たすとともに、
少なくとも上記コア領域の光入射面において、上記横幅wが、上記厚みdよりも長くなっていることを特徴とする光伝送路。
【請求項2】
透光性を有する材料から構成されるコア部と、該コア部の屈折率と異なる屈折率を有する材料から構成されるクラッド部とを備えた光伝送路であって、
上記コア部内で光が伝送される際の光伝送方向に垂直な断面において、少なくとも1つのコア部からなるコア領域のうち、当該光伝送路の曲げを最も許容する曲げ方向としての第1の方向における長さを厚みd、該第1の方向に垂直な第2の方向における長さを横幅wとし、
上記コア部の光伝送方向における位置のうち、少なくとも曲げを許容する領域の光入射側となる入口の断面において、上記厚みdが40μm以下であるとともに、
少なくとも上記コア領域の光入射面において、上記横幅wが、上記厚みdよりも長くなっているとともに、上記厚みdが20μm以上であることを特徴とする光伝送路。
【請求項3】
上記コア領域の光入射面に照射される光源からの光照射領域のうち、上記第2の方向の長さの最大値よりも大きくなるように、上記横幅wが設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の光伝送路。
【請求項4】
上記コア部と上記クラッド部との屈折率差((n1−n2)/n1)が2〜5%であることを特徴とする請求項1記載の光伝送路。
【請求項5】
上記最許容曲率半径が1.5mm以下であることを特徴とする請求項1記載の光伝送路。
【請求項6】
上記コア領域の光入射面が、上記光伝送方向に対して斜めに設けられているとともに、光源から照射された光が、上記光入射面において反射されることによって上記コア領域内に導入されるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光伝送路。
【請求項7】
上記クラッド部が空気によって構成されることを特徴とする請求項1または2記載の光伝送路。
【請求項8】
上記コア部および上記クラッド部が樹脂によって構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光伝送路。
【請求項9】
上記厚みdに対する上記横幅wの比であるアスペクト比が2以上であることを特徴とする請求項1または2記載の光伝送路。
【請求項10】
上記横幅wが光伝送方向に対する位置変化に応じて変化することを特徴とする請求項1または2記載の光伝送路。
【請求項11】
上記厚みdが、少なくとも曲げを許容する領域において、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて不変であることを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送路。
【請求項12】
上記厚みdが、少なくとも曲げを許容する領域において、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて増大することを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送路。
【請求項13】
上記厚みdが、少なくとも曲げを許容する領域において、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて段階的に増大することを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送路。
【請求項14】
上記厚みdが、少なくとも曲げを許容する領域において、光入射側となる入口から光出射側となる出口に向けて連続的に増大することを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送路。
【請求項15】
上記厚みdが、少なくとも曲げを許容する領域において、光入射側となる入口から一旦減少することを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送路。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の光伝送路と、
上記光伝送路の光入射面に対して光を照射する発光部と、
上記光伝送路の光出射面から出射される光を受光する受光部と、
外部から入力された電気信号に基づいて上記発光部の発光を駆動する発光駆動部と、
受光部から出力された電気信号を増幅して外部に出力する増幅部とを備えていることを特徴とする光伝送モジュール。
【請求項17】
上記発光部が、上記光伝送路に対して、該光伝送路内での光伝送方向に対して横方向から光を照射するとともに、
上記光伝送路が、上記発光部から照射された光を、光入射面において反射させることによって上記コア領域内に導入することを特徴とする請求項16記載の光伝送モジュール。
【請求項18】
請求項16または17に記載の光伝送モジュールを備えた電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−212899(P2007−212899A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34525(P2006−34525)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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