説明

光伝送部材及びその製造方法

【課題】屈曲による伝送損失量が大きな光伝送部材の製造方法を提供する。
【解決手段】コア部材成形工程11にて横断面が正方形のコア部材12を得る。クラッド部材成形工程13にて筒状のクラッド部材14を得る。このクラッド部材14の中空部分である嵌合孔14aは、コア部材12と嵌合可能な形状に成形されている。嵌合孔14aとコア部材12を、プリフォーム成形工程15にて嵌合しプリフォーム16を得る。加熱延伸工程17にてプリフォーム16を加熱延伸し、光伝送部材18を得る。加熱延伸では、光伝送部材18の横断面を、プリフォーム16の横断面と略相似形に成形する。クラッド部18bの横断面外形が円形であり、コア部18aの横断面外形が正方形である光伝送部材18は、コア部18a内を反射する光を側面から漏光することが可能になる。この光伝送部材18の屈曲により、伝送損失量は更に増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送部材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通信産業の発達に伴い、光伝送部材の需要が高まると共に伝送損失が小さく、低価格であるものが要求されている。光伝送部材には、石英系光伝送部材やプラスチック光伝送部材などがあげられる。特に、プラスチック光伝送部材は、石英系光伝送体と比較して、製造及び加工が容易であること並びに低価格であるなどの利点がある。このプラスチック光伝送部材の代表的なものとして、プラスチック光ファイバ(以下、POFと称する)などがあげられる。
【0003】
POFは、素材が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系光ファイバと比較してやや大きいという短所を有する。しかしながら、良好な可撓性を有し軽量で加工性が良く、石英系光ファイバと比較して口径の大きい光ファイバの製造が容易であるという長所を有する。さらに低コストで製造が可能であるという長所をも有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならない程度の短距離用の光ファイバとして種々検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
近年では、POFの側面から光を漏らす照光プラスチック光ファイバの実用化が検討されている。照光プラスチック光ファイバは、クラッド部の断面形状が多角形に成形され、この照光プラスチック光ファイバに入射した光は、このクラッド部の外周近傍において全反射されず、側面から漏光すると報じている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、POFを屈曲すると、POFの屈曲部の伝送損失は増大することが知られている。このようなPOFの性質を利用した各種センサの実用化が検討されており、例えば、金属棒の外周面にPOFをスパイラル状に巻きつけて、POFの伝送損失の変化量から金属棒の歪量を検出する歪センサなどがある(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開昭61−130904号公報
【特許文献2】特開平6−118242号公報
【特許文献3】特開昭60−219503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に示されるような断面形状が多角形の照光プラスチック光ファイバの製造方法について明記されていない。また、特許文献3に示されるような歪センサに適するPOFの構造については述べられていない。更に、側面から漏光可能であり、屈曲による伝送損失の変化量が大きなPOFの製造方法については開示されていない。
【0007】
上記問題を鑑みて、本発明は、側面からの漏光が可能であると同時に、屈曲による伝送特性の変化量が大きい光伝送部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光伝送部材の製造方法は、光伝送路であり、多角形の横断面を有する棒状のコア部の周囲に、横断面が円形であり、前記コア部よりも低い屈折率を有するクラッド部を成形し、棒状のプリフォーム成形する第1工程と、このプリフォームの長手方向に加熱延伸し、前記プリフォームの横断面と略相似形の横断面を有する第1延伸体を成形する第2工程とを有することを特徴とする。
【0009】
前記コア部の横断面を4角形に成形することが好ましい。
【0010】
前記コア部及び前記クラッド部を、プラスチックを主成分とする材料を用いて成形することが好ましい。
【0011】
前記コア部を、その横断面の中心に向かうに従って連続的、或いは、段階的に前記屈折率が高くなる屈折率分布型に成形することが好ましい。
【0012】
前記コアの断面積を、400μm2以上に成形することが好ましい。
【0013】
前記コア部の外周面或いはクラッド部の内周面の表面粗さが、0.05μm以上であることが好ましい。
【0014】
前記第2工程にて、複数の前記プリフォームを束ね、この多心プリフォームを長手方向に加熱延伸し、互いの前記プリフォームの前記クラッド部の外周面を固着させるとともに、前記多心プリフォームの横断面と略相似形の横断面を有する第2延伸体を成形することが好ましい。
【0015】
前記多心プリフォームが、横断面の外形寸法が異なる、或いは同一の前記クラッド部を有する前記プリフォームから構成されることが好ましい。
【0016】
前記多心プリフォームが、同じ、或いは、異なる材料から成形される前記クラッド部を有する前記プリフォームから構成されることが好ましい。
【0017】
前記多心プリフォームが、横断面の外形形状が異なる、略相似形、或いは横断面の外形形状及び外形寸法が同一の前記コア部を有する前記プリフォームから構成されることが好ましい。
【0018】
前記多心プリフォームが、同じ、或いは異なる材料から成形される前記コア部を有する前記プリフォームから構成されることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、光伝送路であるコア部と、前記コア部の周面に成形されるクラッド部とから構成される光伝送部材において、前記コア部が、多角形の横断面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光伝送部材の製造方法によれば、光伝送路であり、多角形の横断面を有する棒状のコア部の周囲に、横断面が円形であり、前記コア部よりも低い屈折率を有するクラッド部を成形し、棒状のプリフォーム成形する第1工程と、このプリフォームの長手方向に加熱延伸し、前記プリフォームの横断面と略相似形の横断面を有する第1延伸体を成形する第2工程とを有するため、所望の横断面形状に成形されるプリフォームに加熱延伸処理を施すことにより、所望の横断面形状の光伝送部材を得ることができる。また、コア部の横断面が多角形に成形されるため、コア部の角部分で散乱された光伝送部材の側面から漏光し、屈曲による伝送損失の変化量が大きい光伝送部材を製造することができる。このような光伝送部材は、感度の高い歪センサとしての利用が可能である。
【0021】
コア部の横断面を4角形に成形するため、4角形に形成されることが多い平面光導波路との接続において、高効率の光結合を得ることができる。
【0022】
コア部及びクラッド部を、プラスチックを主成分とする材料を用いて成形するため、所望の横断面形状の光伝送部材を容易に製造することができる。また、この光伝送部材の製造方法は、特定のコア部及びクラッド部の成形方法に限定しないため、従来のプラスチック光伝送部材の製造方法を適用することが可能である。
【0023】
コア部が、その横断面の中心に向かうに従って連続的に屈折率が高くなる屈折率分布型、或いは、コア部が、その横断面の中心に向かうに従って段階的に屈折率が高くなる屈折率分布型に成形されるため、GI(グレーデッドインデックス)型の光伝送部材、MSI(マルチステップインデックス)型、或いはSI(ステップインデックス)型の光伝送部材を製造することができる。
【0024】
前記コアの断面積を400μm2以上に成形するため、マルチモード用光伝送部材としての利用が可能になる。
【0025】
前記コア部の外周面或いはクラッド部の内周面の表面粗さが、0.05μm以上であるため、コア部及びクラッド部の界面における光散乱を促進させ、光伝送部材の側面から漏光量、及び、光伝送部材の屈曲に伴う伝送損失の変化量を増大することが可能にする。
【0026】
第2工程にて、複数の前記プリフォームを束ね、この多心プリフォームを長手方向に加熱延伸し、互いのプリフォームのクラッド部の外周面を固着させるとともに、多心プリフォームの横断面と略相似形の横断面を有する第2延伸体を成形するため、多心光伝送部材を容易に製造することができる。
【0027】
この多心光伝送部材を構成する各光伝送部材のコア部及びクラッド部は、異なる材料から成形されてもよい。更に、この多心光伝送部材を成形するコア部及びクラッド部の断面形状が、同一或いは異なる形状のいずれかに成形されてもよい。このように、所望の屈折率分布、屈曲による所望の伝送損失変化量、或いは、所望の漏光領域など、使用目的に応じた各種光伝送部材を一体化させることも可能である。
【0028】
本発明の光伝送部材によれば、前記コア部が多角形の横断面を有するため、コア部の角部分で散乱された光伝送部材の側面から漏光し、屈曲による伝送損失の変化量が大きい光伝送部材を製造することができる。このような光伝送部材は、感度の高い歪センサとしての利用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1及び図2を用いて本発明の第1実施形態である光伝送部材製造工程10について説明する。最初に、コア部材成形工程11にて、所望の横断面形状を有するコア部材12を得る。第2に、クラッド部材成形工程13にて、筒状であり、所望の横断面形状を有するクラッド部材14を得る。このクラッド部材14の中空部分である嵌合孔14aは、コア部材12と嵌合可能な寸法に成形されている。第3に、嵌合孔14aとコア部材12を、プリフォーム成形工程15にて嵌合することによりプリフォーム16を得る。第4に、加熱延伸工程17にてプリフォーム16を加熱延伸して所望のサイズの光伝送部材18を得る。
【0030】
図2(A)に示すように、入射光の伝送路となるコア部材12は、横断面が正方形の4角柱に成形され、横断面の端部から中心に向かうに従い連続的に屈折率が高くなるGI(グレーデッドインデックス)型の屈折率分布を有し、プラスチックを主成分とした材料から成形される。クラッド部材成形工程13にて、嵌合孔14aを有するクラッド部材14は筒状に成形される。嵌合孔14aは、コア部材12と嵌合可能な形状に成形される。図示するクラッド部材14は、中心軸に嵌合孔14aを有する円柱であり、この嵌合孔14aの横断面は、コア部材12の横断面と略同一寸法の正方形になるように成形される。また、クラッド部材14は、コア部材12よりも低い屈折率を有し、プラスチックを主成分とした材料から成形される。コア部材12及びクラッド部材14の成形に用いられる材料の詳細については、後述する。
【0031】
次に、プリフォーム成形工程15において、コア部材12をクラッド部材14の嵌合孔14aに嵌合させて、図2(B)に示すようにプリフォーム16を得る。
【0032】
加熱延伸工程17では、プリフォーム16を加熱炉25内に配置する(図3)。加熱炉25で加熱するとプリフォーム16は溶融する。なお、溶融温度は特に限定されるものではないが、150℃〜300℃の温度であることが好ましく、より好ましくは180℃〜240℃であり、最も好ましくは190℃〜220℃とすることである。溶融した箇所の先端部16aを始点として線引き(延伸)を行う。この光伝送部材18は、線径モニタ26を通した後に巻取装置27の芯材28に巻き取られる。線引きしている際には、線径モニタ26で光伝送部材18の外径をモニタリングして加熱炉25内のプリフォーム16の位置や加熱炉25の温度、巻取装置27の巻取速度などを適宜調整する。このような加熱延伸工程17において、プリフォーム16から光伝送部材18を得る(図2(C))。
【0033】
この光伝送部材18は、棒状のコア部18aと、コア部18aの周囲に成形されるクラッド部18bから構成される(図4)。この光伝送部材18の横断面において、コア部18aとクラッド部18bの境界となる界面は正方形に成形される。界面が有する4つの角部近傍において、光伝送部材18内に入射した光の一部は反射せずに、角部近傍のクラッド外周面18c(以下、漏光面18cと称する。)から漏れる。
【0034】
また、光伝送部材をその軸から所定の曲率半径で屈曲すると、光伝送部材の各部の歪量は、横断面中心から離れるにつれて大きくなる。横断面が正方形のコア部18aを有する光伝送部材18を曲げると、界面の4つの角部には、他の部位よりも大きな歪が発生する。この歪量の増大に伴い、その部位における屈折率の変化量も増大する。すなわち、屈曲時において、界面の角部近傍で全反射せずに漏光面18cから漏れ出す光の量が増大するため、光伝送部材18の伝送損失は増大する。このような構造を有する光伝送部材18は、屈曲による伝送損失量が大きいため、歪センサに適している。
【0035】
更に、コア部或いはクラッド部の界面の表面粗さが大きい光伝送部材を屈曲すると、漏光面からの漏光量及び伝送損失がさらに増大する。この効果は、コア部の外周面或いはクラッド部の内周面の表面粗さが、0.05μm以上であるときに発現する。コア部材成形工程11或いはクラッド部材成形工程13において、周面や嵌合孔の内周面の研磨処理を施したコア部材或いはクラッド部材を用いることにより、所望の表面粗さを有する光伝送部材を製造することができる。
【0036】
上記実施形態では、正方形の横断面を有するコア部材12を用いて光伝送部材18を成形すると記載したが、これに限らず、長方形や台形など他の四角形、或いは、三角形、五角形など多角形の横断面を有するコア部材を用いてもよい。このようなコア部材及びを嵌合可能な嵌合孔をクラッド部材に設け、コア部18aと嵌合可能な嵌合孔14aの成形位置及び形状を適切に選択することによって、光伝送部材18に所望の漏光面18cを成形することが可能になる。
【0037】
本発明におけるコア部材12、クラッド部材14の製造方法は、特に限定されるものではなく、プラスチック光ファイバ(POF)用プリフォーム(母材)と同様の方法を適用することができる。例えば、特願平2004−354786号公報による溶融押し出し法や射出成形法などにより成形され、所望の断面形状を有するコア部材12、クラッド部材14を本発明に適用することも可能である。
【0038】
また、筒状のクラッド部材に、所定のモノマー、重合開始剤及び添加物などを入れ、重合し、所望の屈折率分布を有するコア部材を成形してもよい。具体的には、特願平2004−276805号公報に開示される回転重合法などがある。図5を用いて、この回転重合法を用いた光伝送部材製造工程30の概要について説明する。プリフォーム成形工程31によりプリフォーム32を成形し、加熱延伸工程17では、このプリフォーム32から光伝送部材33を得る。
【0039】
次に、プリフォーム成形工程31について説明する。クラッドパイプ成形工程34では、溶融押し出し法や射出成形法などを用いて、所望の横断面形状の孔を有するクラッドパイプ35を得る。このクラッドパイプ35の横断面形状も、クラッドパイプ成形工程34にて、所望の形状に成形される。コア形成工程36では、重合性モノマーと所望の添加剤(例えば、重合開始剤など)とをクラッドパイプ35の孔に入れる。次に、クラッドパイプ35を長手方向が水平になるように支持し、水平方向に回転させて重合を開始する。このようにして、クラッドパイプ35の孔部にコア部が成形される。なお、前述した回転重合法の替わりに特許第3332922号公報による界面ゲル重合法を用いてもよい。
【0040】
更に、溶融押し出し法、射出成形法などによって形成されるコア部材12、クラッド部材14やクラッドパイプ35、或いは、回転重合法や界面ゲル重合法などによって成形される或いはプリフォーム32の周面を研磨し、それぞれを所望の横断面に加工したものも、本発明に適用することができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、コア部18aに、GI型の屈折率分布を成形すると記載したが、これに限らず、MSI(マルチステップインデックス)型或いはSI(ステップインデックス)型の屈折率分布を成形してもよい。また、コア部が、屈折率が横断面の中心へ向かうに従って連続的或いは段階的に高くなるような屈折率分布を有することが好ましく、その分布形状について限定するものではない。このコア部の屈折率分布形状の具体的な例として、コア部の横断面中心へ向かうに従い、同心円状または同心多角形状に、連続的または段階的に高くなるものなどがある。
【0042】
図6及び図7を用いて本発明の第2実施形態である光伝送部材製造工程40について説明する。ここでは、第1実施形態と異なる部分についての詳細説明を行い、同一の部分の詳細説明は省略する。最初に、コア部材成形工程11にてコア部材12を得る。第2に、クラッド部材成形工程13にて筒状のクラッド部材14を得る。このクラッド部材14の中空部分である嵌合孔14aは、コア部材12と嵌合可能な寸法に成形されている。第3に、プリフォーム成形工程15にて、クラッド部材14の嵌合孔14aとコア部材12を嵌合することによりプリフォーム16を得る。第4に、結束工程45にて、耐熱テープなどを用いて複数のプリフォーム16を束ねて、多心プリフォーム47を得る。第5に、加熱延伸工程48にて多心プリフォーム47を加熱延伸することにより、束ねられたプリフォーム16の側面が熱融着すると同時に、所望の形状及び寸法の横断面を有する多心光伝送部材49を得る。
【0043】
なお、上記実施形態では、結束工程45で複数のプリフォーム16を束ね、加熱延伸工程48により複数のプリフォーム16を熱融着させると記載したが、これに限らず、結束工程45の段階で、熱融着、超音波融着法、加熱加圧法、超音波溶着法、振動溶着法或いは各種接着剤を用いてプリフォーム16を固着し、多心プリフォームとしてもよい。
【0044】
上記実施形態では、同一の横断面形状を有するプリフォーム16を束ねて、多心プリフォーム47を成形したが、これに限らず、コア部及びクラッド部の成形材料、或いは、横断面形状及びその寸法が異なるプリフォームを束ねて、多心プリフォームとしてもよい。この多心プリフォームを加熱延伸することにより、伝送特性の異なる光伝送部材を有する多心光伝送部材を得ることができる。このような多心プリフォームの例を図8(A)〜(E)に示す。
【0045】
結束工程45において、プリフォーム61、62を束ねることにより多心プリフォーム63(図8(A))を成形してもよい。プリフォーム61は、横断面が正方形のコア部61a、及び横断面が円形であり、コア部61aの周囲に形成されるクラッド部61bから構成される。一方、プリフォーム62は、横断面が正6角形のコア部61aと、横断面が円形であり、コア部61aの周囲に形成されるクラッド部62bから構成される。同様にして、プリフォーム61と、コア部61aと略相似形の横断面のコア部64aを有するプリフォーム64とを束ねることにより多心プリフォーム65(図8(B))を成形してもよい。このように、コア部61a、62aの横断面は、所望の漏光面、または、屈曲時における所望の伝送損失変化量に応じた形状に成形されることが好ましい。
【0046】
結束工程45において、正方形の横断面形状を有するコア部66a(図8(C))と、コア部66aの周囲にそれぞれ横断面の寸法が異なるクラッド部66b、67bが成形されるプリフォーム66,67を束ね、多心プリフォーム68を成形してもよい。このように、クラッド部66b、67bの横断面を、屈曲時における所望の伝送損失変化量に応じた寸法に成形することが好ましい。
【0047】
結束工程45において、プリフォーム70と71とを束ねることにより、多心プリフォーム72を得る(図8(D))。プリフォーム70は、PMMA製のコア部70aと、コア部70の周囲に形成されるPVDF製のクラッド部70bから構成され、プリフォーム71は、重水素化PMMA製のコア部71aと、コア部71の周囲に形成されるPVDF製のクラッド部71bから構成される。また、コア部70a、71aは、それぞれGI型及びMSI型の屈折率分布を有する。同様にして、プリフォーム75と76とを束ねることにより、多心プリフォーム77を得る(図8(E))。プリフォーム75は、PMMA製のコア部75aと、コア部75の周囲に形成されるPMMA製のクラッド部75bから構成され、プリフォーム76は、PMMA製のコア部76aと、コア部76の周囲に形成されるPVDF製のクラッド部76bから構成される。このように、使用する光の波長や所望の屈折率分布、或いは、使用する環境に応じる材料を用いて、コア部やクラッド部が成形されることが好ましい。
【0048】
次に、光伝送部材を成形するコア部及びクラッド部に用いられる材料について説明する。基本的にはプラスチック光ファイバに用いられるものであれば特に規定はされないが、そのうちで好ましいものを以下に述べる。
【0049】
(コア部)
コア部の原料の重合性モノマーとしては、塊状重合が容易である原料を選択するのが好ましい。また、得られるポリマーが熱可塑性で加工性が良好な、高い光透過性を有するものであれば好ましい。光透過性が高く塊状重合しやすい原料としては例えば、以下のような(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a),含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b),スチレン系化合物(c),ビニルエステル類(d)等を例示することができ、コア部はこれらのホモポリマー、あるいはこれらモノマーの2種以上からなる共重合体、およびホモポリマー及び/または共重合体の混合物から成形することができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル類を重合性モノマーとして含む組成を好ましく用いることができる。
【0050】
以上に挙げた重合性モノマーとして具体的に、(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル(BzMA)、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。また、(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3 −テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3 −ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1 −トリフルオロメチル−2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5 −オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4 −ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。さらに、(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらには、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではない。モノマーの単独あるいは共重合体からなるコア部のポリマーの屈折率は、最外周部のそれに比べて同等かあるいはそれ以上になるように構成モノマーの種類,組成比を選択する。特に好ましいポリマーとしては、透明樹脂であるアクリル樹脂(PMMA)が挙げられる。また、耐熱性や低吸湿性などの用途にあわせて、コア部の材料を選択することもできる。
【0051】
(クラッド部)
コア部を伝送する光がコア部の界面で全反射するために、コア部の外周にクラッド部を設けることが好ましい。このクラッド部の屈折率は、コア部の屈折率より低くなるように成形することが好ましい。また、伝送特性に優れた光伝送部材を成形する場合には、コア部との密着性が良い材料からクラッド部を成形することが好ましい。
【0052】
クラッド部の素材としては、タフネスに優れ、耐湿熱性にも優れているものが好ましく用いられる。例えば、フッ素含有モノマーの単独重合体または共重合体からなるのが好ましい。フッ素含有モノマーとしてはフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましく、フッ化ビニリデンを10質量%以上含有する1種以上の重合性モノマーを重合させて得られるフッ素樹脂が好ましく用いられる。
【0053】
また、溶融押出法により重合体を成形し、クラッド部を作製する場合は、重合体の溶融粘度が適当であることが必要である。この溶融粘度については、相関する物性として分子量が用いられ特に重量平均分子量との相関がある。本発明においては、重量平均分子量が1万〜100万の範囲であることが適当であり、より好ましくは5万〜50万の範囲である。
【0054】
(重合開始剤)
前記コア部及び/又はクラッド部が、重合性モノマーから重合されたポリマーから作製される場合、重合の際に重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができ、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は勿論これらに限定されるものではなく、更には2種類以上を併用してもよい。
【0055】
(連鎖移動剤)
コア部成形用重合性組成物及びクラッド部成形用重合性組成物は、連鎖移動剤を含有していることが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。クラッド部およびコア部成形用重合性組成物がそれぞれ連鎖移動剤を含有していると、重合性モノマーからポリマーを成形する際に、重合速度および重合度を前記連鎖移動剤によってより制御することができ、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、得られたプリフォーム或いは多心プリフォームを延伸により線引きする際に、分子量を調整することによって延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。
【0056】
前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、前記連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0057】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンなど)、チオフェノール類(例えば、チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオールなど)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子(D)やフッ素原子(F)で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
【0058】
(屈折率調整剤)
コア部用重合性組成物に屈折率調整剤を含有させるのが好ましい。なお、場合によっては、クラッド部重合性組成物に屈折率調整剤を含有させても良い。屈折率調整剤の濃度に分布を持たせることによって、前記濃度の分布に基づいて屈折率分布型のコアを容易に作製することができる。
【0059】
屈折率調整剤はドーパントとも称し、併用する前記重合性モノマーの屈折率と異なる化合物である。その屈折率差は0.005以上であるのが好ましい。ドーパントは、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有する。これらは、特許第3332922号公報や特開平5−173026号公報に記載されているような、モノマーの合成によって生成される重合体との比較において溶解性パラメータとの差が7(cal/cm31/2以内であると共に、屈折率の差が0.001以上であり、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して屈折率が変化する性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、いずれも用いることができる。
【0060】
上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、ドーパントとして用いることができる。本実施形態では、コア部成形用重合性組成物にドーパントを含有させ、コア部を成形する工程において界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、ドーパントの濃度に傾斜を持たせ、コア部にドーパントの濃度分布に基づく屈折率分布構造を成形する方法を例示する。
【0061】
ドーパントは重合性化合物であってもよく、重合性化合物のドーパントを用いた場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いる。なお、このような共重合体には、MMA−BzMA共重合体などが挙げられる。
【0062】
前記ドーパントとしては、特許第3332922号や特開平11−142657号公報に記載されている様な、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ジフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)、硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体などが挙げられる。中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOおよび硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体が好ましい。なお、これらの化合物中に存在する水素原子を重水素原子に置換した化合物も広い波長域での透明性を向上させる目的で用いることができる。また、重合性化合物として、例えば、トリブロモフェニルメタクリレート等が挙げられる。屈折率調整成分として重合性化合物を用いる場合は、マトリックスを成形する際に、重合性モノマーと重合性屈折率成分とを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。
【0063】
屈折率調整剤の濃度および分布を調整することによって、コア部の屈折率を所望の値に変化させることができる。その添加量は、用途および組み合わされる部材に応じて適宜選ばれる。屈折率調整剤は、複数種類添加してもよい。
【0064】
コア部に、重合性モノマーであるMMA、屈折率調整剤である高屈折率の低分子化合物、重合開始剤などの添加剤を入れる。その後に重合を開始させることで外周から中心方向に向けて屈折率が略2乗分布的に高くなるGI型コアを成形することができる。
【0065】
なお、前述した屈折率調整剤の代わりに、コア部の成形に屈折率の異なる2種以上の重合性モノマーを用い、コア部内に共重合比の分布を持たせることによって、所望の屈折率分布構造を導入することもできる。
【0066】
(その他の添加剤)
その他、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部には、光学性能を低下させない範囲で、それらを作製する重合性組成物にその他の添加剤を添加することができる。例えば、コア部もしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。前記誘導放出機能化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部に光ファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部に含有させることができる。更に、静電気を抑制するための添加剤としては、錫や亜鉛合金粉や銀等の貴金属微粒子、難燃性を付与する添加剤としては水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物などが挙げられ、着色の顔料としては、カーボンブラック,酸化チタン, 酸化ジルコニウムなどが用いられる。カーボンブラックは、低コストであり、光ファイバ用被覆材として用いる場合に、着色以外に制電性も有しているので静電気を帯びにくくなる、近赤外域に吸収を持つので外乱光の遮閉性に富むうえ、曲げなどで光ファイバの外部へ放出された光が再度戻ってくる事を抑制することを抑制するなど有利な点が多く、特に好ましい。
【0067】
また、多心プリフォームを成形する際に用いる接着剤としては、室温で流動性を示して加熱することにより、その流動性が消失して硬化する液状ゴムを用いることができる。具体的には、ポリジエン系(例えば、基本構造がポリイソプレン,ポリブタジエン,ブタジエン−アクリロニトリル共重合体,ポリクロロプレンなど),ポリオレフィン系(例えば、基本構造がポリオレフィン,ポリイソブチレンなど),ポリエーテル系(例えば、基本構造がポリ(オキシプロピレン)など),ポリスルフィド系(例えば、基本構造がポリ(オキシアルキレンジスフィド)など),ポリシロキサン系(例えば、基本構造がポリ(ジメチルシロキサン)など)などを挙げることができる。なお、上記に述べた液状ゴムの替わりに、紫外線の照射によって硬化するUV硬化剤や熱硬化接着剤を用いてもよい。
【実施例1】
【0068】
10mm角の棒状のPMMA製のコア部材12、及び直径15mmであり、嵌合孔14aが10mm角のPVDF製の棒状のクラッド部材14aを溶融押出法にて成形した。コア部材12をクラッド部材14の嵌合孔14aに嵌め、プリフォーム16を得た。このプリフォーム16を210℃で加熱延伸し、横断面の外径450μmのクラッド部18b、横断面の外形が300μm角の正方形のコア部18aからなる光伝送部材18を得た。このプリフォーム16と光伝送部材18の横断面が略相似形に成形されていることを確認した。この光伝送部材18を、曲率半径20mmで90°に曲げた。曲げた状態の伝送損失は、曲げる前に比べ、0.5dB上昇した。
<比較例1>
【0069】
10mm角のPMMA製の棒状のコア部材、及び15mm角であり、嵌合孔が10mm角のPVDF製の棒状のクラッド部材を溶融押出法にて成形した。このコア部材をクラッド部材の嵌合孔に嵌め、プリフォームを得た。このプリフォームを210℃で加熱延伸し、横断面外形が450μm角の正方形のクラッド部、横断面外形が300μm角の正方形のコア部からなる光伝送部材を得た。このプリフォームと光伝送部材の横断面が略相似形に成形されていることを確認した。この光伝送部材を、曲率半径20mmで90°に曲げた。曲げた状態の伝送損失は、曲げる前に比べ、0.1〜0.2dB上昇した範囲でバラついたため、安定した測定値が得られなかった。
【実施例2】
【0070】
15mm角のPMMA棒を削り、10mm角の棒状のコア部材を成形した。このコア部材の表面粗さは0.1μmであった。直径15mmであり、嵌合孔が10mm角のPVDF製の棒状のクラッド部材を溶融押出法にて成形した。このコア部材をクラッド部材の嵌合孔に嵌め、プリフォームを得た。このプリフォームを210℃で加熱延伸し、横断面外形が外径φ450μmのクラッド部、横断面外形が300μm角の正方形のコア部からなる光伝送部材を得た。このプリフォームと光伝送部材の横断面が略相似形に成形されていることを確認した。実施例1の光伝送部材と比較して、側面から多くの光が漏れていることが確認できた。この光伝送材料を、曲率半径20mmで90°に曲げた。曲げた状態の伝送損失は、曲げる前に比べ、1dB上昇した。
【実施例3】
【0071】
10mm角のPMMA製の棒状のコア部材、及び直径15mmであり、嵌合孔が10mm角のPVDF製の棒状のクラッド部材を溶融押出法にて成形した。このコア部材を、クラッド部材の嵌合孔に嵌め、プリフォームを得た。このプリフォームを5本並列に並べ、仮止めして多心プリフォームを得た。この多心プリフォームを210℃で加熱延伸し、横断面外形が450μm角の正方形のクラッド部、及び横断面形状が300μm角の正方形のコア部からなる光伝送部材が5本並列に並んだ多心光伝送部材を得た。このプリフォームと光伝送部材の横断面が略相似形に成形されていることを確認した。この光伝送材料を、曲率半径20mmで90°に曲げた。曲げた状態の伝送損失は、曲げる前に比べ、0.5dB上昇した。
【実施例4】
【0072】
重水化メタクリル酸メチルのモノマー溶液を、直径15mmであり、中空部が10mm角のPVDF製のクラッドパイプを用いてラジカル重合を行い、プリフォームを得た。このプリフォームを210℃で加熱延伸し、横断面外形が外径φ450μmの正方形のクラッド部及び横断面が300μm角の正方形のコア部からなる光伝送部材を得た。このプリフォームと光伝送部材の横断面が略相似形に成形されていることを確認した。この光伝送材料を、曲率半径20mmで90°に曲げた。曲げた状態の伝送損失は、曲げる前に比べ、0.1dB上昇した。
【実施例5】
【0073】
MMAに屈折率調節剤としてジフェニルスルホン(DPS)を、直径15mmであり、中空部が10mm角のPVDF製のクラッドパイプを用いて界面ゲル重合を行い、プリフォームを得た。このプリフォームを210℃で加熱延伸し、横断面外形が外径φ300μmのクラッド部及び横断面外形が200μm角の正方形のコア部からなる光伝送部材を得た。このプリフォームと光伝送部材の横断面が略相似形に成形されていることを確認した。実施例2と同様に、側面から多くの光が漏れていることが確認できた。この光伝送材料を、曲率半径20mmで90°に曲げた。曲げた状態の伝送損失は、曲げる前に比べ、0.8dB上昇した。
【0074】
これら実施例の結果より、本発明の光伝送部材は、屈曲による伝送損失量が大きく、またその損失量が安定しているため、歪センサ等に適する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態の光伝送部材製造方法を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の光伝送部材製造方法における各成形物の斜視図である。
【図3】加熱延伸工程の概要を示す説明図である。
【図4】光伝送部材の断面図である。
【図5】回転重合法を用いた光伝送部材製造方法を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の光伝送部材製造方法を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の光伝送部材製造方法における各成形物の斜視図である。
【図8】(A)は、横断面形状が異なる複数のコア部を有する多心プリフォームの断面図である。(B)は、横断面形状が相似形のコア部を有する多心プリフォームの断面図である。(C)は、横断面形状が異なる複数のクラッド部を有する多心プリフォームの断面図である。(D)は、成形材料が異なるコア部を、(E)は、成形材料が異なるクラッド部を有する多心プリフォームの断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10、30、40 光伝送部材製造工程
11 コア部材成形工程
12 コア部材
13 クラッド部材成形工程
14 クラッド部材
15 プリフォーム成形工程
16、32、61、62、64、66、67、70、71、75、76 プリフォーム
17、48 加熱延伸工程
18、33 光伝送部材
18a コア部
18b クラッド部
18c 漏光面
25 加熱炉
26 線径モニタ
27 巻取装置
45 結束工程
47、63、65、68、72、77 多心プリフォーム
49 多心光伝送部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路であり、多角形の横断面を有する棒状のコア部の周囲に、横断面が円形であり、前記コア部よりも低い屈折率を有するクラッド部を成形し、棒状のプリフォーム成形する第1工程と、
このプリフォームの長手方向に加熱延伸し、前記プリフォームの横断面と略相似形の横断面を有する第1延伸体を成形する第2工程とを有することを特徴とする光伝送部材の製造方法。
【請求項2】
前記コア部の横断面を、4角形に成形することを特徴とする請求項1記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項3】
前記コア部及び前記クラッド部を、プラスチックを主成分とする材料を用いて成形することを特徴とする請求項1または2項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項4】
前記コア部を、その横断面の中心に向かうに従って連続的に前記屈折率が高くなる屈折率分布型に成形することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項5】
前記コア部を、その横断面の中心に向かうに従って段階的に前記屈折率が高くなる屈折率分布型に成形することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項6】
前記コアの断面積を、400μm2以上に成形することを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項7】
前記コア部の外周面或いはクラッド部の内周面の表面粗さが、0.05μm以上であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程にて、複数の前記プリフォームを束ね、この多心プリフォームを長手方向に加熱延伸し、互いの前記プリフォームの前記クラッド部の外周面を固着させるとともに、前記多心プリフォームの横断面と略相似形の横断面を有する第2延伸体を成形することを特徴とする請求項1ないし7いずれか1項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項9】
前記多心プリフォームが、横断面の外形寸法が異なる前記クラッド部を有する前記プリフォームから構成されることを特徴とする請求項8項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項10】
前記多心プリフォームが、横断面の外形寸法が同一の前記クラッド部を有する前記プリフォームから構成されることを特徴とする請求項8項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項11】
前記多心プリフォームが、同じ材料から成形される前記クラッド部を有する前記プリフォームから構成されることを特徴とする請求項8ないし10いずれか1項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項12】
前記多心プリフォームが、異なる材料から成形される前記クラッド部を有する前記プリフォームから構成されることを特徴とする請求項8ないし10いずれか1項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項13】
前記多心プリフォームが、横断面の外形形状が異なる前記コア部を有する前記プリフォームから構成されることを特徴とする請求項8ないし12いずれか1項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項14】
前記多心プリフォームが、横断面の外形形状が略相似形の前記コア部を有する前記プリフォームから構成されることを特徴とする請求項8ないし12いずれか1項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項15】
前記多心プリフォームが、横断面の外形形状及び外形寸法が同一の前記コア部を有する前記プリフォームから構成されることを特徴とする請求項8ないし12いずれか1項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項16】
前記多心プリフォームが、同じ材料から成形される前記コア部を有する前記プリフォームから構成されることを特徴とする請求項8ないし15いずれか1項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項17】
前記多心プリフォームが、異なる材料から成形される前記コア部を有する前記プリフォームから構成されることを特徴とする請求項8ないし15いずれか1項記載の光伝送部材の製造方法。
【請求項18】
光伝送路であるコア部と、
前記コア部の周面に成形されるクラッド部とから構成される光伝送部材において、
前記コア部が、多角形の横断面を有することを特徴とする光伝送部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−108374(P2007−108374A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298486(P2005−298486)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】