説明

光分岐モジュール

【課題】コードの引留力が強い光分岐モジュールを提供する。
【解決手段】コード3が引き出されるケース2と、ケース2に挿入によって装着される出力用コード引き留め部材20とを備え、出力用コード引き留め部材20のコード挿入孔21にコード3を挿入し、開口部22より塗布した接着剤25によってコード3を出力用コード引き留め部材20に固定した。コード3は、抗張力繊維3cを含む箇所を出力用コード引き留め部材20に接着剤25で固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力側の光コードより入力される光信号に光分岐等の光信号処理を行い、光信号処理を行った光信号を出力側の光コードより出力する光分岐モジュールに関し、特に、光スプリッタを内蔵した光スプリッタモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光分岐モジュールは、入力側と出力側の例えばコードがケースより引き出される。光分岐モジュールより引き出されたコードは、引っ張り力が作用しても接続不良等の不具合が発生しないように光分岐モジュールに固定される。従来のコードの固定構造としては、図14及び図15に示すものが提案されている。
【0003】
図14及び図15において、複数のコード100は、その一端側がケース101に収容され、それより他端側がケース101より引き出される。ケース101に収容されたコード100の端部は段剥ぎ処理されている。複数のコード100の段剥ぎ処理された箇所は、互いに間隔が開けられた状態で両面粘着テープ102で覆われている。複数のコード100の両面粘着テープ102で覆われた箇所は、ケース101の二列の位置決めピン103の間に配置され、両面粘着テープ102の下面がケース101に貼り付けられている。ケース101の二列の位置決めピン103の間には上方から保護カバー104が被せられ、この保護カバー104に両面粘着テープ102の上面が貼り付けされている。
【0004】
この従来例では、ケース101におけるコード100の引留力は、両面粘着テープ102の粘着力によって得るようになっている。
【特許文献1】特開2004−62020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、両面粘着テープ102の粘着力は、コード100に作用される種々の引っ張り力の大きさを想定すると、十分な大きさとはいえない。特に、両面粘着テープ102は、屋外環境ではその粘着力が劣化するため、引留力が低下する。
【0006】
そこで、本発明は、コードの引留力が強い光分岐モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する請求項1の発明は、ケース本体と、前記ケース本体の開口面を塞ぐカバーとから構成され、光コードが引き出されるケースと、前記ケースに装着され、前記光コードが挿入されるコード挿入孔を有すると共に、前記コード挿入孔を開口する開口部を有するコード引き留め部材とを備え、前記光コードの端部側を前記コード引き留め部材の前記コード挿入孔に挿入し、前記コード引き留め部材の前記開口部より塗布した接着剤によって前記光コードの少なくとも抗張力繊維の箇所が前記コード引き留め部材に接着されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光分岐モジュールであって、前記コード引き留め部材は、複数段に積層された状態で前記ケースに装着されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の光分岐モジュールであって、前記コード引き留め部材の積層段数は、2段であることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光分岐モジュールであって、前記ケースより外部に引き出された前記光コードを整列状態で、且つ、互いの整列位置を変更できないように隙間なく収容すると共に、前記光コードの許容曲率半径より小さな曲率半径では屈曲しないよう構成されたコードブーツを備え、前記コードブーツは、1段又は複数段の前記コード引き留め部材に固定されたことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4記載のいずれかに記載の光分岐モジュールであって、キャビネットの挿入完了位置まで挿入された位置で前記キャビネットの被係止部に係止すると共に、前記被係止部との係止を解除するよう操作可能なラッチレバーを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、光コードに引っ張り力が作用すると、この引っ張り力を粘着テープの粘着力に比べて遙かに強い接着剤の接着力によって受け止める。光コードの先端をコード引き留め部材で接着剤で固定し、このコード引き留め部材を光分岐モジュールに固定する構造であり、光コードの引留力が強い光分岐モジュールを提供できる。
【0013】
特に、光コードの抗張力繊維とコード引き留め部材間が接着剤を介して固定されるため、引っ張り力に対する、光コード自体の引っ張り強度をも確保できる。
【0014】
また、ケースと別体のコード引き留め部材に光コードの端部を固定できるため、光コードをケースに組み付ける前に、光コードの先端と他の収容光部品間の例えば融着接続工程が可能であり、光接続部品の組み付け作業性が向上する。
【0015】
更に、光コードの本数が多い場合、多数の光コードをコード挿入孔に挿入することによって所定の間隔に整列させて仮配置できるため、接着剤の塗布作業性等が良い。又、光コードの本数が多い場合、開口部によって一度の塗布作業で全ての光コードを接着できるため、接着剤の塗布作業が容易である。更に、開口部の寸法によって接着剤の塗布領域を所望の寸法に設定できるため、信頼性の高い接着を行うことができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、複数のコード引き留め部材を省スペースでケースに装着できるため、光分岐モジュールをコンパクトできる。又、多数本の光コードを高密度で引き出すことができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明の効果に加え、2個のコード引き留め部材を省スペースでケースに装着できるため、光分岐モジュールをコンパクトできる。又、多数本の光コードを高密度で引き出すことができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3の発明の効果に加え、ケースより引き出された光コードの箇所がコードブーツによって保護される。又、コードブーツによって光コードがその許容曲率半径より小さな曲率半径では屈曲しないため、光伝送損失の低下を防止できる。
【0019】
また、1個又は複数個のコード引き留め部材と単一のコードブーツとを一体物として取り扱うことができるため、複数のコード引き留め部材のケースへの装着作業性が良い。又、複数のコード引き留め部材をケースに装着すると、コードブーツがコード引き留め部材を介してケースに支持されるため、ケースにコードブーツを支持するための構造を設ける必要がない。
【0020】
請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4の発明の効果に加え、光分岐モジュールをキャビネットに挿入するだけでラッチレバーによって係止状態で装着でき、又、キャビネットに装着された光分岐モジュールをラッチレバーの操作によって係止を解除でき、これによって光分岐モジュールをキャビネットより容易に取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1〜図13は本発明の一実施の形態を示す。図1はカバーを取り外した光分岐モジュールの平面図、図2(a)は図1のA−A線の要部拡大断面図、図2(b)は図1のB−B線の要部拡大断面図、図3は光分岐モジュールの要部分解斜視図、図4は光ファイバコード(以下、光コード、コードという場合がある)の一端側の正面図、図5は出力用コード引き留め部材とコード押さえプレートの斜視図、図6はコード押さえプレートを装着した出力用コード引き留め部材の平面図、図7は出力側のコードをコード挿入孔に挿入した出力用コード引き留め部材の平面図、図8は開口部の接着剤塗布領域に接着剤を塗布した出力用コード引き留め部材の平面図、図9は入力用コード引き留め部材とコード押さえプレートの斜視図、図10は開口部の接着剤塗布領域に接着剤を塗布した入力用コード引き留め部材の平面図、図11は出力用コードブーツの斜視図、図12は横方向に最大限に折り曲げた出力用コードブーツの断面図、図13は光分岐モジュールをキャビネットに装着する過程を示す斜視図である。
【0023】
なお、本実施の形態では、光分岐モジュールの中でも、特に、光部品として光スプリッタを用いた光スプリッタモジュールについて説明するが、内蔵させる光部品は限定されない
図1〜図3に示すように、光分岐モジュール1は、ケース2と、このケース2内に一端側が収容され、それ以外の部分がケース2より引き出された32本の出力側のコード3と、ケース2内に一端側が収容され、それ以外の部分がケース2より引き出された1本の入力側のコード4と、ケース2内に収容された光スプリッタ5、ファイバ余長収容部材6及びファイバ押さえシート7と、ケース2に装着された4個の出力用コード引き留め部材20と、同じくケース2に装着された2個の入力用コード引き留め部材30と、出力側のコード3を保護する2個の出力用コードブーツ40と、入力側のコード4を保護する1つの入力用コードブーツ50と、ケース2の左右外側に固定された一対のラッチレバー60とを備えている。
【0024】
図4に詳しく示すように、出力側と入力側の各コード3,4は、同一構成であり、中心に配置された光ファイバ3a,4aと、この光ファイバ3a,4aの外周を覆うプラスチック製の筒状の内皮3b,4bと、この内皮3b,4bの外周に配置された多数の抗張力繊維3c,4cと、この抗張力繊維3c,4cの外周を覆うプラスチック製の筒状の外皮3d,4dとから構成されている。
【0025】
各コード3,4は、その一端側が段剥ぎ処理され、光ファイバ3a,4a、内皮3b,4b及び抗張力繊維3c,4cが口出しされている。外皮3d,4dより露出された抗張力繊維3c,4cは、外皮3d,4dの切断面より他端側に折り返されている。又、各コード3,4の他端には、光コネクタ(図示せず)が接続されている。
【0026】
図1〜図3に戻り、ケース2は、プラスチック成型品であるケース本体10と、このケース本体10の開口を閉塞し、同じくプラスチック成型品であるカバー11とから構成されている。
【0027】
ケース本体10は、底面部10aと、この底面部10aの周縁より立設された周壁部10bと、この周壁部10bの一部に所定の間隔を置いて平行に延設された内壁部10cとを有する。内壁部10cと周壁部10bに囲まれて光スプリッタスペース12が構成されている。周壁部10bで囲まれた底面部10a上のほとんどの領域は、ファイバ余長収容スペース13と部品用補助スペース14に構成されている。尚、この実施の形態では、部品用補助スペース14には部品が収容されていない。
【0028】
周壁部10bは、底面部10aの周縁の全域に亘って形成されず、周壁部10bの形成されていない箇所には、4つの係止凸部10dが間隔を置いて立設されている。両端の係止凸部10dは、周壁部10bに連続して設けられている。両端以外の中間の係止凸部10dは、周壁部10bとは独立し、底面部10aより立設されている。この4つの係止凸部10dの各間に、二カ所の出力側の引き留め用装着スペース15(図3に示す)と一カ所の入力側の引き留め用装着スペース16(図3に示す)が構成されている。各引き留め用装着スペース15,16は、2段に積層された出力用コード引き留め部材20や入力用コード引き留め部材30を係止して装着できる高さに設定されている。
【0029】
又、ケース本体10の両側には、周壁部10bを利用してレバー用係止凹部10eがそれぞれ設けられている。
【0030】
カバー11は、ケース本体10の周壁部10bの上面に固定されている。ケース本体10の底面部10a上に収容される光スプリッタ5、ファイバ余長収容部材6、ファイバ押さえシート7、出力用コード引き留め部材20及び入力用コード引き留め部材30は、カバー11によって上方への移動が規制される。
【0031】
光スプリッタ5は、光スプリッタスペース12に収容されている。光スプリッタ5は、その両端面に1本の入力部(図示せず)と32本の出力部(図示せず)をそれぞれ有する。
【0032】
1本の入力部(図示せず)には、入力側の1本の光ファイバ4aの端部が融着によって接続されている。32本の出力部(図示せず)には、出力側の32本の光ファイバ3aが融着によって接続されている。光スプリッタ5は、導波路基板型のものであり、入力側の1本の光ファイバ4aより入力された単一の光パワーを均等に32本の出力側の光ファイバ3aに分配して出力する。
【0033】
ファイバ余長収容部材6は、ケース本体10のファイバ余長収容スペース13に収容されている。ファイバ余長収容部材6は、底面部10aに密着状態で固定されたベース部6aと、このベース部6aより立設された複数の巻付け部6bとを有する。出力側と入力側の各コード3,4の光ファイバ3a,4aは、複数の巻付け部6bに巻き付けられて整然と収容されている。
【0034】
ファイバ押さえシート7は、透明な薄いプラスチックシートであり、ファイバ余長収容部材6の上面に配置されている。ファイバ余長収容部材6に巻き付けされた光ファイバ3a,4aは、ファイバ押さえシート7によって上方への飛び出し等が防止される。
【0035】
各出力用コード引き留め部材20は、図5〜図8に詳しく示すように、プラスチック成型品であり、概略偏平直方体である。各出力用コード引き留め部材20の両側面には、間隔を置いて8つのコード挿入孔21(以下、コード挿入孔という場合がある)が形成されている。
【0036】
一方の側面に形成されたコード挿入孔21は、他方の側面に形成されたコード挿入孔21と向かい合っている。向かい合ったコード挿入孔21の間にコード3が挿通される。
【0037】
向かい合ったコード挿入孔21と、隣接する、向かいあったコード挿入孔21の間を仕切るために、壁21dが設けられている。壁21dは、引き留め部材20の本体の底部から立ち上がっており、引き留め部材20の両側面の間に連続して形成されている。壁21dの厚みは、中央部の肉厚部を除いて均一である。この肉厚となった部分は、コード3を向かいあったコード挿入孔21の間に挿入する際に、コード3のコード端部を突き当てるためのストッパとなる。このストッパは、図6の紙面上下方向において対称形状であり、同図の紙面左右方向に沿って平行で、かつ向かい合った中央の2つの平行辺21bと、この2つの平行辺21bから壁の薄肉部に向かって連続する、同方向に対して傾斜する傾斜辺21aより構成される。以上の構成により、コード3を向かい合ったコード挿入孔21に挿入すると、一方の壁21dと隣接する他方の壁21dの間のコードの挿通路は中央のストッパの所で急激に狭くなっているから、コードは、太いコード端部が、ストッパの傾斜辺21a、21aに突き当たったところで停止する。つまり、コード3は、その外皮3dの端面、正確には折り返された抗張力繊維3cの根本箇所が傾斜辺21aに突き当たる位置まで挿入されている。
【0038】
また、各出力用コード引き留め部材20の上下(図6、紙面上下方向)の側面の内側には、壁21bのストッパと向かいあうように突出部21eが形成されている。この突出部21eはストッパの片側半体と同形状であり、向かい合うストッパと協働して、コード3のコード端部の挿入を停止させる構造となっている。
【0039】
なお、コード挿入孔21の径は両側面で異なっている。左側面(図6、紙面左側)の孔径は、右側面(同、紙面右側)よりも小である。左側面のコード挿入孔21の径は、コード3から口出しされた光ファイバ(例えば、光ファイバ素線)3aが通過できる程度の大きさである。内皮3bに包まれた光ファイバ3aの先端をガイドするために、コード挿入孔21に連続する湾曲面を有するガイド片21fが、各コード挿入孔21に対して設けられている。
【0040】
又、開口部22で開口された壁21dの肉厚部の上面には、複数の係止突起24が突設されている。
【0041】
コード押さえプレート23は、金属製で、複数の係止突起24に対応する位置に複数の係止孔23aを有する。コード押さえプレート23の各係止孔23aに各係止突起24を嵌め込むことによってコード押さえプレート23が出力用コード引き留め部材20に留められている。コード押さえプレート23は、開口部22の縦幅(コード3,4の挿入方向)よりも小さな縦幅に設定されている。これによって、開口部22にはコード押さえプレート23で閉塞されない接着剤塗布領域22a,22bが二カ所に形成されている。この二カ所の接着剤塗布領域22a,22bより接着剤25が塗布され、この接着剤25によって各コード3が出力用コード引き留め部材20に接着されている。各コード3は、開口部22の一カ所の接着剤塗布領域22aでは、内皮3bの箇所が接着剤25によって出力用コード引き留め部材20に接着されている。開口部22の他の一カ所の接着剤塗布領域22bでは、折り返された抗張力繊維3cを含む箇所が接着剤25によって出力用コード引き留め部材20に接着されている。
【0042】
また、各出力用コード引き留め部材20の両方の側部には係止凹部26が設けられている。各出力用コード引き留め部材20は、一対の係止凹部26をケース本体10の係止凸部10dに係合しつつケース本体10の出力側の引き留め用装着スペース15(図3に示す)に挿入することによって装着されている。
【0043】
更に、出力用コード引き留め部材20の開口部22が形成された反対面には、ブーツ用係止爪27(図3に示す)が設けられている。
【0044】
各入力用コード引き留め部材30は、図9及び図10に詳しく示すように、プラスチック成型品であり、細長い概略直方体である。各入力用コード引き留め部材30には、単一のコード挿入孔31のみが形成されている。そのため、入力用コード引き留め部材30は、前記出力用コード引き留め部材に比べて幅寸法が小さく設定されている。開口部32で露出された入力用コード引き留め部材30の内面には、出力用コード引き留め部材20のものと同様に、傾斜辺31aと平行辺31bが形成されていると共に、ガイド片31fが設けられている。
【0045】
又、開口部32内に係止突起が形成するスペースを確保できないことから係止突起は形成されていない。コード押さえプレート33は、略H字状であり、開口部32内に嵌め込まれることによって固定される。コード押さえプレート33の略H字状によって、開口部32内には二カ所に接着剤塗布領域32a,32bが形成される。そして、出力用コード引き留め部材30と同様に、開口部32の一カ所の接着剤塗布領域32aでは、内皮4bの箇所が接着剤35によって入力用コード引き留め部材30に接着されている。開口部32の他の一カ所の接着剤塗布領域32bでは、折り返された抗張力繊維4cを含む箇所が接着剤35によって入力用コード引き留め部材30に接続されている。
【0046】
また、各入力用コード引き留め部材30の両方の側部には、出力用コード引き留め部材20と同様に、係止凹部36が設けられている。各入力用コード引き留め部材30は、一対の係止凹部36をケース本体10の係止凸部10dに係合しつつケース本体10の出力側の引き留め用装着スペース16(図3に示す)に挿入することによって装着されている。
【0047】
更に、入力用コード引き留め部材30の開口部32が形成された反対面には、ブーツ用係止爪37(図3に示す)が設けられている。
【0048】
出力用コードブーツ40は、図11及び図12に詳しく示すように、長方形の枠形状である固定枠部41と、この固定枠部41に一体に形成された屈曲変形部42とからゴム材より形成されている。出力用コードブーツ40の内部には、ケース2より出力用コード引き留め部材20を介して引き出された16本のコード3が収容されている。固定枠部41内には、2段に積層された出力用コード引き留め部材20が挿入されている。固定枠部41の上下面部には係止孔41aがそれぞれ形成されている。各出力用コード引き留め部材20のブーツ用係止爪27が固定枠部41の係止孔41aに係止されている。これによって、出力用コードブーツ40と2段の出力用コード引き留め部材20は、組み付け合体後は一体物となる。
【0049】
屈曲変形部42は、連結された多数の撓み揺動脚部42aから構成されている。屈曲変形部42内には、16本のコード3が所定の整列状態で、且つ、互いの整列位置を変更できないように隙間なく収容されている。屈曲変形部42は、図12に示すように、隣接する揺動脚部42aが互いに突き当たる位置まで横方向に撓み変形できるが、それ以上は撓み変形することができない。これによって、屈曲変形部42は、コード3の許容曲率半径より小さな曲率半径では屈曲できないよう構成されている。
【0050】
つまり、出力用コードブーツ40自体はコード3の許容曲率半径より小さな曲率半径で変形できず、且つ、出力用コードブーツ40内の各コード3自体も互いの整列位置を変更できない。以上より、出力用コードブーツ40内のコード3は、許容曲率半径より小さな曲率半径で折り曲げられることはない。
【0051】
入力用コードブーツ50は、図1及び図3に示すように、方形枠形状である固定枠部51と、この固定枠部51に一体に形成された屈曲変形部52とからゴム材より形成されている。固定枠部51内には、2段に積層された入力用コード引き留め部材30が挿入されている。固定枠部51の上下面部には係止孔51aがそれぞれ形成されている。各入力用コード引き留め部材30のブーツ用係止爪37が固定枠部51の係止孔51aに係止されている。これによって、入力用コードブーツ50と2段の入力用コード引き留め部材30は、組み付け合体後は一体物となる。
【0052】
屈曲変形部52は、前記出力用コードブーツ40のものと同様に、連結された多数の撓み揺動脚部52aから構成されている、屈曲変形部52内は、2本のコード4が所定の整列状態で、且つ、互いの整列位置を変更できないように隙間なく収容される寸法に設定されている。この実施の形態では、1本のコード4のみが収容されている。屈曲変形部52は、前記出力用コードブーツ40のものと同様に、隣接する揺動脚部52aが互いに突き当たる位置まで横方向に撓み変形できるが、それ以上は撓み変形することができない。これによって、屈曲変形部52は、コード3の許容曲率半径より小さな曲率半径では屈曲できないように構成されている。
【0053】
一対のラッチレバー60は、前記ケース2と同一のプラスチック材からなるプラスチック成型品である。各ラッチレバー60は、図1及び図12に示すように、ケース本体10の左右一対のレバー用係止凹部10eに係止する鈎状の係止部61と、この係止部61より一体に延設された弾性アーム部62と、この弾性アーム部62の先端近くの外面に設けられた係止爪63と、弾性アーム部62の先端に設けられた操作部64とを備えている。
【0054】
次に、前記光分岐モジュール1の組み付け手順の一例を、出力側のコード3と入力側のコード4をケース2に固定する組み付け作業を中心に説明する。出力側の32本のコード3と入力側の1本のコード4の一端側の段剥ぎ処理(図4参照)は、予め行ってあるものとして説明する。
【0055】
先ず、図6に示すように、出力用コード引き留め部材20の開口部22にコード押さえプレート23を装着する。
【0056】
次に、出力用コードブーツ40内に16本の出力側のコード3を整列状態で挿入する。図7に示すように、出力用コードブーツ40内に通した16本の内の8本のコード3の一端側を出力用コード引き留め部材20の各コード挿入孔21にそれぞれ通す。コード3は、その外皮3dの端面がコード挿入孔21の傾斜辺21aに突き当たる位置まで挿入する。
【0057】
次に、図8に示すように、出力用コード引き留め部材20の開口部22の二カ所の接着剤塗布領域22a,22bより接着剤25を塗布する。接着剤25が固化すれば、出力用コード引き留め部材20と8本のコード3の固定作業が完了する。
【0058】
上記と同じ作業によって、出力用コードブーツ40内を通した16本の内の他の8本のコード3と他の出力用コード引き留め部材20とを固定する。このようにして、出力側の16本のコード3に2個の出力用コード引き留め部材20を固定する。
【0059】
次に、2つの出力用コード引き留め部材20を互いに異なる面を突き合わせて2段に積層する。2段に積層した出力用コード引き留め部材20を出力用コードブーツ40の固定枠部41にはめ込み、2段の出力用コード引き出し部材20と出力用コードブーツ40の一体物を作成する。
【0060】
上記と同じ作業によって、2段の出力用コード引き出し部材20と出力用コードブーツ40の一体物を別途作成する。これで、2段の出力用コード引き出し部材20と出力用コードブーツ40の一体物を合計2個作成する。
【0061】
また、上記とほぼ同じ作業によって、入力側の1本のコード4を1個の入力用コード引き出し部材30に固定する。この1個の入力用コード引き出し部材30とコードを何ら固定していないダミーの入力用コード引き出し部材30を入力用コードブーツ50に嵌合し、これで2個の入力用コード引き出し部材30と入力用コードブーツ50の一体物を1個作成する。
【0062】
次に、出力側の32本のコード3の光ファイバ3aと入力側の1本のコード4の光ファイバ4aとの先端を光スプリッタ5に融着によって接続する。尚、この作業は、出力用コードブーツ40と出力用コード引き留め部材20との組み付け合体作業や、入力用コードブーツ50と入力用コード引き留め部材30の組み付け合体作業の前に行っても良い。
【0063】
次に、図1に示すように、出力用コードブーツ40が固定された2段の出力用コード引き出し部材20を、その両側の係止凹部26にケース本体10の係止凸部10dを位置合わせしてケース本体10の引き留め用装着スペース15に挿入する。もう一つの出力用コードブーツ40が固定された2段の出力用コード引き出し部材20と、入力用コードブーツ50が固定された2段の入力用コード引き出し部材30も同様に、ケース本体10の各引き留め用装着スペース15,16に挿入する。
【0064】
次に、光スプリッタ5と出力用及び入力用コード引き留め部材20,30間の余分な光ファイバ3a,4aの箇所を、ファイバ余長収容部材6に巻き付けることによって収容する。
【0065】
次に、ファイバ押さえシート7をファイバ余長収容部材6の上面に装着する。
【0066】
最後に、ケース本体10の上面にカバー11を被せ、カバー11をケース本体10に係止手段を用いて固定すれば、完了する。
【0067】
次に、光分岐モジュール1をキャビネット70に装着したり、キャビネット70に装着された光分岐モジュール1をキャビネット70より取り外す作業を説明する。図13に示すように、作業者が所定の向きで光分岐モジュール1をキャビネット70の収容スペース71に挿入する。すると、一対のラッチレバー60の弾性アーム部62がキャビネット70の収容スペース71の内壁に干渉し、両側の弾性アーム部62が互いの間隔を狭める方向に撓み変形しつつ光分岐モジュール1がキャビネット70の収容スペース71に挿入される。光分岐モジュール1が挿入完了位置まで挿入されると、両側の係止爪63の位置とキャビネット70側の各被係止部72の位置が一致し、両側の弾性アーム部62が撓み復帰変形して各係止爪63がキャビネット70側の各被係止部72に係止される。これで、光分岐モジュール1は、キャビネット70に係止状態で装着される。
【0068】
又、作業者が一対のラッチレバー60を互いに近づける方向に撓み変形するべく操作すると、両側の弾性アーム部62の係止爪63とキャビネット70側の被係止部72との係止が解除される。この解除状態を保持しつつ作業者が光分岐モジュール1をキャビネット70の収容スペース71から引き出せば、光分岐モジュール1をキャビネット70から取り外すことができる。
【0069】
以上、前記した光分岐モジュール1は、コード3,4が引き出されるケース2と、ケース2に設けられ、ケース2内に収容されたコード3,4の箇所を接着剤25,35によって固定する出力用及び入力用コード用引き留め部材20,30とを備えたので、コード3,4に引っ張り力が作用すると、この引っ張り力を粘着テープの粘着力に比べて遙かに強い接着剤25の接着力によって受け止める。以上より、光分岐モジュール1は、コード3,4の引留力が強い。
【0070】
光分岐モジュール1のケース2よりコード3,4が引き出され、コード3,4の抗張力繊維3c,4cを露出するよう剥ぎ取り処理がなされ、少なくとも抗張力繊維3c,4cが出力用及び入力用コード引き留め部材20,30に接着剤25,35で固定されている。従って、コード3,4に引っ張り力が作用してもコード3,4の外皮3d,4dが引き抜けることがなく、コード3,4自体の引っ張り強度をも確保できる。
【0071】
出力用及び入力用コード引き留め部材20,30は、ケース本体10とは別体であり、ケース2に組み付けによって装着される。従って、ケース2と別体の出力用及び入力用コード引き留め部材20,30にコード3,4の端部を固定できるため、コード3,4をケース2に組み付ける前に、コード3,4の先端と光スプリッタ5間の例えば融着接続工程が可能であり、作業性が向上する。特に、この実施の形態では、出力用及び入力用コード引き留め部材20,30は、単に挿入することによってケース本体10に装着できるため、出力用及び入力用コード引き留め部材20,30の組み付け性が良い。
【0072】
出力用及び入力用コード引き留め部材20,30は、コード3,4が挿入されるコード挿入孔21,31を有すると共に、コード挿入孔21,31を開口する開口部22,32を有し、開口部22,32より接着剤25,35を塗布するよう構成されている。従って、出力用コード引き留め部材20のように、固定するコード3の本数が多い場合、多数のコード3をコード挿入孔21に挿入することによって所定の間隔に整列させて仮配置できるため、接着剤25の塗布作業性等が良い。又、コード3の本数が多い場合、開口部22によって一度の塗布作業で全てのコード3を接着できるため、接着剤25の塗布作業が容易である。更に、開口部22の寸法によって接着剤25の塗布領域を所望の寸法に設定できるため、信頼性の高い接着を行うことができる。
【0073】
この実施の形態では、出力用及び入力用コード引き留め部材20,30は、2段に積層された状態でケース2に装着されている。従って、2つの出力用及び入力用コード引き留め部材20,30を省スペースでケース2に装着できるため、光分岐モジュール1をコンパクト化できる。又、多数本のコード3,4を高密度で引き出すことができる。尚、出力用及び入力用コード引き留め部材20,30は、1段のみでケース2に装着するよう構成しても良いし、3段以上に積層した状態でケース2に装着するよう構成しても良い。
【0074】
この実施の形態では、光分岐モジュール1は、ケース2より外部に引き出されたコード3,4を収容する出力用及び入力用コードブーツ40,50を備えている。従って、ケース2より引き出されたコード3,4の箇所が出力用及び入力用コードブーツ40,50によって保護される。又、出力用コードブーツ40は、ケース2より外部に引き出されたコード3を整列状態で、且つ、互いの整列位置を変更できないように隙間なく収容すると共に、コード3,4の許容曲率半径より小さな曲率半径では屈曲しないよう構成されている。従って、コード3がその許容曲率半径より小さな曲率半径では屈曲しないため、光伝送損失の低下を防止できる。
【0075】
この実施の形態では、出力用及び入力用コードブーツ40,50は、2段に積層された出力用及び入力用コード引き留め部材20,30と一体に固定されている。従って、2段の出力用コード引き留め部材20と単一の出力用コードブーツ40と、又は、2段の入力用コード引き留め部材30と単一の入力用コードブーツ50とを一体物として取り扱うことができるため、2段の出力用及び入力用コード引き留め部材20,30のケース2への装着作業性が良い。又、2つの出力用及び入力用コード引き留め部材20,30をケース2に装着すると、出力用及び入力用コードブーツ40,50が出力用及び入力用コード引き留め部材20,30を介してケース2に支持されるため、ケース2に出力用及び入力用コードブーツ40,50を支持するための構造を設ける必要がない。
【0076】
尚、出力用及び入力用コードブーツ40,50は、1段の出力用及び入力用コード引き留め部材20,30と一体に固定されるよう構成しても良いし、3段以上に積層された出力用及び入力用コード引き留め部材20,30と一体に固定されるよう構成しても良い。
【0077】
この実施の形態では、光分岐モジュール1は、キャビネット70の挿入完了位置まで挿入された位置でキャビネット70の被係止部72に係止すると共に、被係止部72との係止を解除するよう操作可能なラッチレバー60を備えている。従って、光分岐モジュール1をキャビネット70に挿入するだけでラッチレバー60によって係止状態で装着できる。又、キャビネット70に装着された光分岐モジュール1をラッチレバー60の操作によって係止を解除できる。これによって光分岐モジュール1をキャビネット70から容易に取り外しできる。
【0078】
尚、この実施の形態では、光分岐モジュール1は、その入力側のコード4の本数が1本であるが、ダミーの入力用コード引き留め部材30を利用して容易に2本とすることができる。この場合には、2本のコード4の光ファイバ4aの先端を1×2カップラを介して光スプリッタ5に接続する。そして、1×2カップラ及びこれに付随する融着部は、部品用補助スペース14に収容する。
【0079】
尚、この実施の形態では、一対のラッチレバー60は、ケース本体10と別体に形成されているが、ケース本体10又はカバー11と同一材料で、一体成型によって形成しても良い。
【0080】
尚、本明細書にあって、光分岐モジュール1とは、入力光の光パワーを均等に分配するもの、入力光の光パワーをある比率で分配するもの、入力光の光波長を切り分けるもの(波長分割多重部品)等を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施の形態であり、カバーを取り外した光分岐モジュールの平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態であり、(a)は図1のA−A線の要部拡大断面図、(b)は図1のB−B線の要部拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態であり、光分岐モジュールの要部分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態であり、コードの一端側の正面図である。
【図5】本発明の一実施の形態であり、出力用コード引き留め部材とコード押さえプレートの斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態であり、コード押さえプレートを装着した出力用コード引き留め部材の斜視図である。
【図7】本発明の一実施の形態であり、出力側のコードをコード挿入孔に挿入した出力用コード引き留め部材の平面図である。
【図8】本発明の一実施の形態であり、開口部の接着剤塗布領域に接着剤を塗布した出力用コード引き留め部材の平面図である。
【図9】本発明の一実施の形態であり、入力用コード引き留め部材とコード押さえプレートの斜視図である。
【図10】本発明の一実施の形態であり、開口部の接着剤塗布領域に接着剤を塗布した入力用コード引き留め部材の平面図である。
【図11】本発明の一実施の形態であり、出力用コードブーツの斜視図である。
【図12】本発明の一実施の形態であり、横方向に最大限に折り曲げた出力用コードブーツの断面図である。
【図13】本発明の一実施の形態であり、光分岐モジュールをキャビネットに装着する過程を示す斜視図である。
【図14】従来例のコードの固定構造を示す平面図である。
【図15】図13のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 光分岐モジュール
2 ケース
3 出力側のコード(光コード)
3c,4c 抗張力繊維
4 入力側のコード(光コード)
10 ケース本体
11 カバー
20 出力用コード引き留め部材(コード引き留め部材)
21,31 コード挿入孔
22,32 開口部
25,35 接着剤
30 入力用コード引き留め部材(コード引き留め部材)
40 出力用コードブーツ(コードブーツ)
50 入力用コードブーツ(コードブーツ)
60 ラッチレバー
70 キャビネット
72 被係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体と、前記ケース本体の開口面を塞ぐカバーとから構成され、光コードが引き出されるケースと、
前記ケースに装着され、前記光コードが挿入されるコード挿入孔を有すると共に、前記コード挿入孔を開口する開口部を有するコード引き留め部材とを備え、
前記光コードの端部側を前記コード引き留め部材の前記コード挿入孔に挿入し、前記コード引き留め部材の前記開口部より塗布した接着剤によって前記光コードの少なくとも抗張力繊維を含む箇所が前記コード引き留め部材に接着されたことを特徴とする光分岐モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光分岐モジュールであって、
前記コード引き留め部材は、複数段に積層された状態で前記ケースに装着されていることを特徴とする光分岐モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の光分岐モジュールであって、
前記コード引き留め部材の積層段数は、2段であることを特徴とする光分岐モジュール。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光分岐モジュールであって、
前記ケースより外部に引き出された前記光コードを整列状態で、且つ、互いの整列位置を変更できないように隙間なく収容すると共に、前記光コードの許容曲率半径より小さな曲率半径では屈曲しないよう構成されたコードブーツを備え、
前記コードブーツは、1段又は複数段の前記コード引き留め部材に固定されたことを特徴とする光分岐モジュール。
【請求項5】
請求項1〜請求項4記載のいずれかに記載の光分岐モジュールであって、
キャビネットの挿入完了位置まで挿入された位置で前記キャビネットの被係止部に係止すると共に、前記被係止部との係止を解除するよう操作可能なラッチレバーを備えたことを特徴とする光分岐モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−31363(P2009−31363A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192497(P2007−192497)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】