説明

光反射防止光学系および撮像光学系

【課題】光学部材の平面と、この平面上に設けた接着層との間の界面において発生する反射光を、簡易な構成にて大幅に抑制し得る、光反射防止光学系および撮像光学系を提供する。
【解決手段】ゴースト防止部材5と接着層23との界面、および接着層23とハーフプリズム2との界面に、各々多層の反射防止膜21、22を介在させるようにしている。ゴースト防止部材5とハーフプリズム2を構成する硝材はBK7であって、そのd線に対する屈折率nは前述したように1.516であり、また接着層23を構成する接着剤はエポキシ樹脂であって、そのd線に対する屈折率nは前述したように1.56である。反射防止膜21は、ゴースト防止部材5の平面13上に、SiO層、Al層、およびSiO層を順次積層してなる3層構成の多層膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な光反射が問題となる光学系に適用される光反射防止光学系および撮像光学系に関し、特に、表面反射率が比較的高い撮像素子を使用するビデオカメラやデジタルカメラのゴースト防止に好適な光反射防止光学系および撮像光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像光学系においては、様々な目的のために光学系内に平行光束部が設けられている。例えば、この平行光束部にアフォーカル光学系を挿入しレンズ系全体の焦点距離を変化させる場合もあるが、分割プリズムを挿入し光束の一部をファインダ系に導いたり、オートフォーカスのための測距光学系に導いたり、別の結像系に利用したりすることも行われている。さらに、フィルタなど画像に特殊な効果を与える光学部材を挿入する場合もある。
【0003】
このように平行光束部に、フィルタやプリズムなどの光軸に対して略直交する平面を有する光学部材(以下、これを平面部材と称する)を挿入する場合には、撮像素子の表面と平面部材の平面での反射によるゴーストが問題となる。ゴーストは、撮像面において結像された光の一部が、撮像面を第1反射面として撮像光学系に戻され、撮像光学系内で1回ないしそれ以上反射されて再び撮像面に達するために発生するものである。特に、CCDなどの撮像素子はフィルム等に比べ表面反射率が高いので、素子表面からの反射光が強くなりやすい。
【0004】
図6は、ゴーストの発生を説明するための模式図である。図6において模式的に表された撮像光学系はレンズL〜Lを備え、光束を撮像素子の撮像面101上の結像位置Pに収束させる。また、このレンズLとレンズLの間の平行光束部Cに、平面部材としてハーフプリズム102が配設され、光束はこのハーフプリズム102により第1撮像面側と第2撮像面側に分割される。
【0005】
ここで、問題となるゴーストは、光束平行部C中に光軸Xに対して略直交する平面が存在する場合、撮像面101からの反射光束がこの平面で反射した後、全く同じ経路を通って再び撮像面101に到達することにより生じる。例えば、l方向に進む主光線は、撮像面101へ入射した後、一部が反射され、l、l方向に進み、光束平行部Cに配された光軸Xに対して略直交する平面である、ハーフプリズム102の第1撮像面側平面103や物体側平面104でさらにその一部が再反射され、l、l方向を逆行して再び撮像面101に達する。
【0006】
CCDなどの撮像素子を用い、光束平行部Cに光軸Xに対して略直交する平面が存在する場合、いずれの表面も反射率が高いので、光量の大きな対象を撮影した場合に上記のように発生するゴーストは光量がかなり大きくなってしまい、そのままでは表示画像の画質が大幅に劣化することになりかねない。
【0007】
従来、ゴースト防止の方法としては、例えば平面部材に反射防止コートを付加する方法が知られている。下記特許文献1には平面フィルタの表面に反射防止コートを施すことにより反射光を減らす手法が記載されている。しかしこの手法では、0.1〜0.2%程度の反射光は残ってしまうため、車のライトや太陽光など光量の大きい対象を撮影する場合には反射光も強くなり、無視できないゴーストとなって画面に現れる。したがって、ビデオカメラやデジタルカメラにおいて要求される性能が高度になると、この程度の残存反射率であっても許容し難いものとなり、抜本的な改善が必要である。
【0008】
また、ゴースト防止の別の方法として、平面部材の表面を非平面形状にする方法も提案されている。例えば、下記特許文献2には単体の板状フィルタを湾曲形状に形成することが記載されている。しかしこのようなフィルタは加工も難しく、また、新規に作成する必要があるので既存のフィルタを使用する場合に比ベコストがかかるという問題がある。
【0009】
そこで、本願出願人は、平行光束部に配置される平面部材に対し、この平面部材側の面が平面とされるとともに他方の面が曲面とされ、さらに、この平面部材と光学的に同等の硝材を用いたゴースト防止部材を貼着する手法を既に提案している(下記特許文献3参照)。
【0010】
この手法によれば、撮像素子の表面で反射されゴースト防止部材の曲面で再反射される光束は、たとえその一部が再び撮像面に到達するとしても対象の像よりかなり広範囲に拡散される。この手法は、既存の平凸レンズをゴースト防止部材として用いればよいので、安価に、かつ容易にゴーストの発生を少なくすることができるので、優れた手法である。
【0011】
【特許文献1】特開2000−36917号公報
【特許文献2】特開2000−249820号公報
【特許文献3】特開2003−110891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献3に記載の手法においては、撮像面で反射され、ゴースト防止部材の曲面で再反射された光が撮像面への戻り光となる虞は少ないが、その一方で、撮像面で反射された光のうち、ゴースト防止部材の曲面を透過した光による撮像面への戻り光が問題となる。
【0013】
すなわち、ゴースト防止部材とハーフプリズム等の平面部材とを各々構成する硝材の屈折率を整合させたとしても、これら2つの部材の間には接着層が介在するため、これらの硝材の屈折率と接着剤の屈折率とを整合させなければ、ゴースト防止部材と平面部材との間の界面での反射を抑制することは難しい。ところが、実際には、硝材の屈折率と接着剤の屈折率を正確に整合させることは極めて困難である。例えば、ガラス硝材として極めて安価なBK7のd線に対する屈折率Ndは1.516であり、接着剤としてこれと屈折率差の小さいエポキシ樹脂を選択したとしても、そのd線に対する屈折率Ndは1.56であるから、この両者間で0.04以上の屈折率差が生じることになり、結局、界面において0.02%程度の戻り光が発生する。勿論、ハーフプリズム等の平面部材と接着層の間でも同様の戻り光が生じるから、合わせて0.04%程度の戻り光が発生することになる。
【0014】
画質向上の要請が高まっている現状においては、0.04%程度の戻り光によるゴーストであっても、改善すべき大きな問題となっている。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、光学部材の平面と、この平面上に設けた接着層との間の界面において発生する反射光を、簡易な構成にて大幅に抑制し得る、光反射防止光学系および撮像光学系を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の光反射防止光学系は、光学部材と、その光学部材の平面に設けられた接着層との間に、多層膜からなる光反射防止膜を設けてなることを特徴とするものである。
【0017】
ここで、前記光反射防止光学系は、前記光学部材を構成する硝材と前記接着層を構成する接着剤との屈折率差が0.1以内の値とされた場合に用いることが好適である。
【0018】
また、本発明の撮像光学系は、撮像素子の物体側において、中心光束が光軸と略平行となる光束域に配置される、該光軸に対して略直交する平面を少なくとも1つ有する光学部材を備え、
前記光学部材の少なくとも1つの該平面に、この光学部材と光学的に同等の特性を有する硝材により形成されるとともに前記撮像素子側の面を曲面とされたゴースト防止部材を接着層により接着された撮像光学系において、
前記ゴースト防止部材と前記接着層との間、および前記光学部材と前記接着層との間の少なくとも一方に、多層膜構成の光反射防止膜を設けてなることを特徴とするものである。
【0019】
ここで、前記撮像光学系は、前記ゴースト防止部材を構成する硝材と前記接着層を構成する接着剤との屈折率差、および前記光学部材を構成する硝材と前記接着層を構成する接着剤との屈折率差が0.1以内の値とされた場合に用いることが好適である。
【0020】
さらに、前記撮像光学系において、前記光学部材は、光束分岐用のプリズムであって、入射側平面から入射された光束を、第1および第2の射出光束に分岐し、該第1の射出光束を第1の射出側平面から前記撮像素子に向けて射出するとともに、該第2の射出光束を第2の射出側平面からオートフォーカス調整用のセンサ部に向けて射出するものであり、これら2つの射出側平面の少なくとも一方に、接着層を介して各々前記ゴースト防止部材が接着されており、該プリズムと該接着層の間および該ゴースト防止部材と該接着層の間の少なくとも一方に、多層膜からなる光反射防止膜を設けてなることが好ましい。
【0021】
また、上記「接着層」とは、光学部材と他部材を接着するために用いる接着剤の層のみならず、例えば、接着剤を含む光吸収膜(例えば特願2003−332398号明細書に記載の光吸収膜)等も含むような広義の概念である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光反射防止光学系および撮像光学系によれば、光学部材の平面と、この平面上に設けた接着層との間の界面に、光反射防止効果を有する多層膜からなる反射防止膜を介在させており、光学部材と接着層との形成部材間に屈折率差が生じていても、光学部材と接着層との界面で従来生じていた光線の反射を抑制することができ、ゴーストの発生を確実に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面においては、説明の便宜上、各層の厚みが誇張して描かれている。図1に示す実施形態の撮像光学系はカメラ装置(例えばデジタルカメラ)に搭載されるものであり、模式的に表されたレンズL〜Lにより光束を撮像素子の撮像面1上の結像位置Pに収束させるものである。このレンズLとレンズLの間の、中心光束が光軸と略平行となる平行光束部Cにハーフプリズム2が配設され、光束はこのハーフプリズム2により第1撮像面側と第2撮像面側に分割されて射出される。ここで、このハーフプリズム2は、物体側と第1撮像面側の両面3、4が光軸に対して略直交する平面とされた光学部材(平面部材)である。この平面部材の両平面3、4には各々ゴースト防止部材5、6が接着され、この平面部材と両ゴースト防止部材5、6とで接着体を構成している。このゴースト防止部材5、6は、各々、この平面部材と光学的に同等の硝材を材料とされ、接着面と反対側の面は曲率半径の大きなレンズ面とされている。
【0024】
ここで、上記「曲率半径の大きなレンズ面」とは、収差が発生することなく、平行光束に影響を与えない程度のパワーを有する面であることを表しているが、このような影響を与えない程度のパワーは、光学系の性能や各面の曲率によって変化するものであって、必ずしも具体的数値として表されるものではない。ゴースト防止部材5、6の接着面と反対側の面は凸面とされているが、これに替えて凹面とすることも可能である。
【0025】
このような構成による第1のゴースト防止機能について、ゴースト防止部材5を代表として説明する。図1に示される撮像光学系において、撮像面1からの反射光束の光路を検討してみるに、例えば、l方向に進む主光線は、撮像素子へ入射した後、一部が反射され、l、l方向に進み、ゴースト防止部材5のレンズ面でさらにその一部が再反射される。この面はレンズ面(図1においては凸面)であるので、主光線はl、l方向に進む。すなわち、この主光線はゴースト防止部材5のレンズ面で再反射されるので、撮像面1からレンズ面へと向かう主光線と全く同じ経路を逆行することはない。したがって、たとえこれらの再反射光の一部が再び撮像面1に到達するとしても、生じる光像は画像に影響を与えにくい。
【0026】
しかしながらその一方、撮像面1で反射され、ゴースト防止部材5のレンズ面を透過した光線は、ゴースト防止部材5のハーフプリズム2側の平面や、ハーフプリズム2の平面3に到達し、その一部がこれらの平面(以下平面3等と称する)において反射する。すなわち、撮像面1で反射され、l、l方向に進んで、ゴースト防止部材5のレンズ面を透過した主光線は、これらの平面3等に垂直に入射することから、これらの平面3等で反射された主光線はl、l方向を逆行するように進み、これらの再反射光の一部が再び撮像面1に到達する。
【0027】
このように、これらの平面3等から反射された光線は撮像面1に到達してゴーストを生ぜしめることから、このゴーストを防止するためには、平面3等における光線の反射を極力抑えることが必要である。
【0028】
ここで、平面3等における光線の反射を抑えるためには、ゴースト防止部材5と接着層との屈折率差、および接着層とハーフプリズム2との屈折率差を0とすればよいのであるが、現実には、ゴースト防止部材5やハーフプリズム2を構成する硝材の屈折率と接着層を構成する接着剤の屈折率を整合させることは難しい。すなわち、例えばガラス硝材として極めて安価なBK7のd線に対する屈折率Ndは1.516であり、接着剤として屈折率差の小さいエポキシ樹脂を選択したとしても、そのd線に対する屈折率Ndは1.56であるから、この両者間で0.04以上の屈折率差が生じる。この結果、ゴースト防止部材5と接着層との界面、および接着層とハーフプリズム2との界面において各々0.02%程度の戻り光が発生し、合わせて0.04%程度の戻り光が発生することになる。前述したように、この戻り光を抑制できなければ、ゴーストの発生を確実に抑えることはできない。
【0029】
そこで、本実施形態においては、以下に説明するような第2のゴースト防止機能を有することにより上述したゴーストの発生を確実に抑えるようにしている。
【0030】
すなわち、本実施形態においては、図1の円内に示すように、ゴースト防止部材5と接着層23との界面、および接着層23とハーフプリズム2との界面に、各々多層の反射防止膜21、22を介在させるようにしている。その形成手法は、ゴースト防止部材5の平面13上に多層の反射防止膜21を、またハーフプリズム2の平面3に多層の反射防止膜22を、各々蒸着法やスパッタリング法等の周知の多層膜形成手法により成膜し、これら反射防止膜21、22が形成された2つの平面13、3を接着層23を用いて接着するものである。
【0031】
なお、上記ゴースト防止部材5と接着層23と反射防止膜21(またはハーフプリズム2と接着層23と反射防止膜22)により本発明の実施形態に係る光反射防止光学系が構成される。
ここで、ゴースト防止部材5とハーフプリズム2を構成する硝材はBK7であって、そのd線に対する屈折率nは前述したように1.516であり、また接着層23を構成する接着剤はエポキシ樹脂であって、そのd線に対する屈折率nは前述したように1.56である。
【0032】
図2は、ゴースト防止部材5と接着層23との界面部分のみを拡大して示すものである。図示するように、反射防止膜21は、ゴースト防止部材5の平面13上に、SiO層21a(屈折率n=1.46、幾何学的厚みをdとしたとき4nd=48nm)、Al層21b(屈折率n=1.60、幾何学的厚みをdとしたとき4nd=112nm)、およびSiO層21c(屈折率n=1.46、幾何学的厚みをdとしたとき4nd=72nm)を順次積層してなる3層構成の多層膜である。なお、図2中には、物体から撮像素子に向かう光線31と、撮像素子により反射された光線32が模式的に示されている。
【0033】
この反射防止膜21は、屈折率の大きいAl層21bを屈折率の小さいSiO層21a、21cにより挟むサンドイッチ構造とされており、各層厚が光の干渉効果によって反射光の発生を抑制し得る値に設定されている。このような反射防止膜21の光反射防止効果により、ゴースト防止部材5と接着層23との形成部材間に屈折率差が生じていても、ゴースト防止部材5と接着層23との界面で、従来生じていた光線の反射を抑制することができ、上記ゴーストの発生を抑えることができる。
【0034】
同様に、接着層23とハーフプリズム2との間に反射防止膜22を介在させることによって、接着層23とハーフプリズム2との界面でも、従来生じていた光線の反射を抑制することができ、上記ゴーストの発生を確実に抑えることができる。
【0035】
また、上述したように、本実施形態においては、ハーフプリズム2の物体側の面4も、光軸に対して略直交する平面とされた光学部材(平面部材)とされており、この平面部材の平面4にもゴースト防止部材6が接着され、このゴースト防止部材6と接着層との間、および接着層とハーフプリズム2との間に、上記反射防止膜21、22と同様の多層反射防止膜を設けている。したがって、ハーフプリズム2とゴースト防止部材6との間の領域においても上記第1のゴースト防止機能および上記第2のゴースト防止機能を発揮し、ゴーストの発生を確実に抑えることができるようになっている。
【0036】
図3は、上記第1のゴースト防止機能のみを有する従来技術と、上記第1のゴースト防止機能および上記第2のゴースト防止機能を備えた本実施形態との、ゴースト防止部材5と接着層23との界面における光線の反射率を示すグラフである。図3に示すように、従来技術のものでは、全可視光波長領域において、略0.02%程度までしか光反射率を抑えられないのに対し、本実施形態のものでは、全可視光波長領域において、0.01%程度以下に光反射率を抑えることができ、特に510nmの波長領域付近では0.000425%程度と極めて小さい光反射率とすることができる。
【0037】
したがって、本実施形態のものでは、可視光波長領域全域に亘っての使用においても勿論大きな効果を奏することができるが、510nm付近の単一波長の光による撮像の場合には極めて大きな効果を奏することができる。
【0038】
なお、反射防止膜21、22の層構成としては、上記実施形態のものに限られるものではなく、光干渉効果により反射防止機能を奏する種々の層構成のものに変更することは勿論可能であり、このような変更により最小反射率の波長を任意に設定することも可能である。
【0039】
なお、本発明の光反射防止光学系および撮像光学系としても上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態においては、平面部材の両平面3、4において各々ゴースト防止部材5、6が接着され、各平面3、4と、対応するゴースト防止部材5、6との間に、上記第2のゴースト防止機能を発揮しうる多層の反射防止膜21、22が設けられているが、その一方のみに多層の反射防止膜21、22を設けるようにしてもよいし、これらに加え、図4に示すように、平面部材の第2撮像面側の平面8においてゴースト防止部材9を接着し、平面8とゴースト防止部材9との間に、上記第2のゴースト防止機能を発揮しうる多層の反射防止膜を設けるようにしてもよい。
【0041】
さらに、接着する両光学部材のいずれかと接着層との間にのみ上記多層の反射防止膜を設けることも可能である。
【0042】
また、本発明の光反射防止光学系は、上述したような撮像光学系以外の種々の光学系に適用することが可能である。例えば、図5(説明の便宜上、一部の要素を互いに分離して示す)に示すように、透過光学部材45と反射光学部材41(基体42上に反射膜47を形成してなる)とを接着層23により接着する場合に、この透過光学部材45の平面43上に多層の反射防止膜21(21a、21b、21c)を積層して形成し、この透過光学部材45と接着層23との間の界面における不要な反射光53を抑制することも可能である。これにより、反射光学部材41から反射された光52のノイズ成分を低減することが可能となる。さらに、透過光学部材上に接着剤を含む光吸収膜(本発明においては接着層の概念に含まれる)を設けるような場合にも本発明の構成を適用可能である。
【0043】
なお、例えば、特開昭62−78501号公報には光学部材上に単層反射防止膜を形成し、その上に接着剤を塗布する技術が開示されているが、この公報記載の技術は最終目標とする反射率や、その目的および作用、効果が本発明のものと全く異なっている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像光学系の構成図
【図2】図1に示す撮像光学系の一部を拡大して示す概念図
【図3】従来技術と本実施形態の両者における、ゴースト防止部材と接着層との界面での光反射率を示すグラフ
【図4】図1に示す実施形態の一部変更態様を示すグラフ
【図5】図1に示す実施形態とは異なる実施形態を示す概略図
【図6】従来技術に係る撮像光学系の構成図
【符号の説明】
【0045】
〜L レンズ
1、101 撮像面
2、102 ハーフプリズム(平面部材)
3、4、8、13、43、103、104 平面
5、6、9、105、106 ゴースト防止部材
21、22 反射防止膜
21a、21c SiO
21b Al
23 接着層
41 反射光学部材
45 透過光学部材
X 光軸
C 平行光束部
P 結像位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材と、その光学部材の平面に設けられた接着層との間に、多層膜からなる光反射防止膜を設けてなることを特徴とする光反射防止光学系。
【請求項2】
前記光学部材を構成する硝材と前記接着層を構成する接着剤との屈折率差が0.1以内の値とされていることを特徴とする請求項1記載の光反射防止光学系。
【請求項3】
撮像素子の物体側において、中心光束が光軸と略平行となる光束域に配置される、該光軸に対して略直交する平面を少なくとも1つ有する光学部材を備え、
前記光学部材の少なくとも1つの該平面に、この光学部材と光学的に同等の特性を有する硝材により形成されるとともに前記撮像素子側の面を曲面とされたゴースト防止部材を接着層により接着された撮像光学系において、
前記ゴースト防止部材と前記接着層との間、および前記光学部材と前記接着層との間の少なくとも一方に、多層膜構成の光反射防止膜を設けてなることを特徴とする撮像光学系。
【請求項4】
前記ゴースト防止部材を構成する硝材と前記接着層を構成する接着剤との屈折率差、および前記光学部材を構成する硝材と前記接着層を構成する接着剤との屈折率差が0.1以内の値とされていることを特徴とする請求項3記載の撮像光学系。
【請求項5】
前記光学部材は、光束分岐用のプリズムであって、入射側平面から入射された光束を、第1および第2の光束に分岐し、該第1の光束を第1の射出側平面から前記撮像素子に向けて射出するとともに、該第2の光束を第2の射出側平面からオートフォーカス調整用のセンサ部に向けて射出するものであり、これら2つの射出側平面の少なくとも一方に接着層を介して前記ゴースト防止部材が接着されており、前記プリズムと該接着層の間および該ゴースト防止部材と該接着層の間の少なくとも一方に、多層膜からなる光反射防止膜を設けてなることを特徴とする請求項3または4記載の撮像光学系。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−284656(P2006−284656A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101094(P2005−101094)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】