光増幅器および光伝送装置
【課題】 本願発明の課題は、ラマン励起光によって、光増幅器の遮断回路が誤動作の防止することである。
【解決手段】 本願発明の代表的な形態は、光増幅器を構成するの入力光検出器、反射光検出器の前に励起光除去フィルタを挿入しておくものである。これによって、例えば光ファイバ伝送路の下流から送信されるラマン励起光の残留成分を除去し、信号成分のみを検出し遮断動作を行う。また、励起光のオン・オフ状態によって、遮断動作を行う判別しきい値を変更する。もしくはラマン励起光自身を出力解放検出に用いる。
【解決手段】 本願発明の代表的な形態は、光増幅器を構成するの入力光検出器、反射光検出器の前に励起光除去フィルタを挿入しておくものである。これによって、例えば光ファイバ伝送路の下流から送信されるラマン励起光の残留成分を除去し、信号成分のみを検出し遮断動作を行う。また、励起光のオン・オフ状態によって、遮断動作を行う判別しきい値を変更する。もしくはラマン励起光自身を出力解放検出に用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ラマン励起光を用いた光システムに関するものである。当該光システムの代表的な例をあげると、光増幅器、ラマン励起光の放出装置、例えば、ラマン励起光光源あるいは光ファイバにおける誘導ラマン効果によって光増幅を行うためのラマン励起光の放出装置、光中継器、あるいはこれらの諸装置を用いた光システムなどである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ中に波長の異なる複数の光信号を多重して情報伝送を行う波長多重(WDW)光伝送方式は、光ファイバ通信の大容量化に極めて有効な手法である。このような光信号の中継/増幅にはEDFA(Erbium-doped Fiber Amplifier)などの希土類添加光ファイバ増幅器や、半導体光増幅器、ラマン・アンプなどの光ファイバ増幅器が用いられる。これらの光増幅器は、光ファイバ伝送路の上流側に配置され1波長もしくは複数の波長の送信光信号を大きな光パワーに増幅して出力するためのポストアンプとして用いられる。更には、前記光増幅器が光ファイバ伝送路の下流側に配置され、伝送後の弱くなった光信号を増幅して受信するためのプリアンプとして、また伝送後光信号を増幅して次の光ファイバ伝送路に送り出す光中継機などの用途に広く用いられている。
【0003】
これらの光増幅器、なかでも既に商用光ファイバ伝送システムに広く使用されているEDFAにおいては、入力光信号の消失や出力端の解放(コネクタの解放やファイバの切断)を検出して光増幅器の出力を遮断する遮断回路が設けられている。入力信号の消失を検出して光増幅器を遮断する方式については、例えば、日本国公開特許公報、特開平7−240717号公報(特許文献1)に記載されている。また、出力コネクタの解放を検出して光増幅器を遮断する方式については、例えば、日本国公開特許公報、特開平07−190887号公報(特許文献2)などがある。
【0004】
図2に入力光の消失と出力解放検出による遮断機構を備えた、従来の光増幅器100の構成を示す。光増幅器100は入力光コネクタ101から入力された光信号を、EDF(Erbium Doped Fiber)などの光増幅媒体103で増幅して出力光コネクタ105から出力する。通常の光増幅動作時には、光増幅媒体は励起光源111から出力される励起光によって励起され、光信号利得を形成している。励起光の出力強度は一定、もしくは光増幅器100の出力光強度が一定(一定出力制御)になるように、もしくは光増幅器100の信号利得が一定になるように(一定利得制御)制御されるのが一般的である。
【0005】
入力信号の消失による遮断機構は以下の通りである。入力光コネクタ101を介して入力された光信号の一部(数%程度)は、光分岐器102によって分岐され入力光検出器109によって光電変換される。制御回路110は入力光検出器109の検出した光電流が一定レベル以下になると入力光信号が消失したと判定し、励起光源111の駆動電流を制御し、光増幅媒体103に供給される励起光を低減もしくは遮断して、光増幅器の利得を減少させる。上記一定レベルは、光信号のSN比や伝送システムの構成から決まる最小信号入力レベルと、雑音レベルの中間などに設定されるのが一般的である。
【0006】
この他、入力信号が消失した光増幅器は、信号光を増幅するかわりに自然放出光雑音(ASE:Amplified Spontaneous Emission)と呼ばれる広帯域の雑音光を出力する。これらの雑音光は、後続の光増幅器の入力信号検出回路や、利得一定制御や出力一定制御の光アンプを誤動作させるなどの悪影響を引き起こす可能性があり、これを防ぐためにも光増幅器を遮断する場合がある。
【0007】
出力解放による遮断機構は以下の通りである。光分岐器104は光増幅器100の出力端に設置され、光ファイバ伝送路に出力される光信号112と、逆に光コネクタ105から入力される反射光113の一部(数%程度)を分岐し、それぞれ出力光検出器107と反射光検出器108に導入する。これらの信号強度は光電変換されて制御回路110に入力され、制御回路は反射光強度の出力光強度に対する比が一定レベルを越えると出力端が解放されたと判定し、励起光源111の駆動電流を制御し、光増幅媒体103に供給される励起光を低減もしくは遮断して、光増幅器の利得を減少させる。上記一定レベルは、コネクタ解放時やファイバ切断に際して発生するフレネル反射のレベルと、光ファイバ伝送路で発生するレーリー散乱による光信号の反射レベルの中間(通常前者の方が大)に設定されるのが一般的である。
【0008】
【特許文献1】特開平7−240717号公報
【特許文献2】特開平07−190887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明の目的は、強力な励起光を用いることがあっても、誤動作することのない光増幅器を提供するものである。更には、本願発明は、強力な励起光を用いることがあっても、誤動作することのないラマン増幅器を提供するものである。
【0010】
更には、本願発明は、強力な励起光を用いることがあっても、誤動作することのない光伝送装置、あるいは光伝送システムを提供するものである。
【0011】
本願発明の主な技術的な課題を説明すれば、次の通りである。
【0012】
その一つ目は、強力な励起光を用いることがあっても、光増幅器に対する入力信号の消失を確度高く検出し、当該光増幅器を遮断あるいは出力低減することを可能にせんとするものである。光増幅器のこの正確な動作によって、光の再入射時の光サージを防止することが出来る。
【0013】
本願発明の主な技術的な課題の二つ目は、強力な励起光を用いることがあっても、光増幅器における出力信号の解放を確度高く検出し、当該光増幅器を遮断あるいは出力低減することを可能にせんとするものである。光増幅器のこの正確な動作によって、不必要な光の射出を防止することが出来る。
【0014】
本願発明のより好ましい目的は、前記第1及び第2の技術的課題を共に解消した光増幅器を可能ならしめんとするものである。併せて、本願発明の光増幅器は、誤動作のない光伝送装置、あるいは光システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、大きくは三つの基本的な形態を有する。
【0016】
本願発明の第1の形態は、励起光の除去手段、除去部材、例えばフィルタを用いる形態である。これには、種々の実施の形態が考えられるが、代表的には例えば、光増幅器などの光装置の、入力検出回路や出力検出回路に対して、励起光の除去フィルタを挿入する形態である。前記入力検出回路及び前記出力検出回路の双方に対して励起光の除去手段を用いることによって、前記第1及び第2の技術的課題を共に解消することが出来る。あるいは、ラマン励起光の出力端等からの反射光を検出する場合は、この反射光の受光器への経路に同様の励起光の除去手段を用いることは有用である。
【0017】
励起光の除去手段はフィルタに限らず、例えば、合波器などを用いることも可能である。この場合、当該合波器が励起光、例えばラマン光を除去し、所望の信号光を透過する特性を有することは云うまでもない。
【0018】
本合波器は、光検出器に到達するラマン励起光の強度を、検出すべき光信号強度の1/2以下に減衰せしめるラマン励起光透過率を有することが好適である。
【0019】
本願発明の第2の形態は、励起光のON/OFF等、励起光の状態に応じて、入出力検出回路の検出閾値を変化させる形態である。前記入力検出回路及び前記出力検出回路の双方に対して検出閾値を変化させる方策を用いることによって、前記第1及び第2の技術的課題を共に解消することが出来る。
【0020】
本願発明の第3の形態は、励起光自身の強度を調整する形態である。その代表的形態は、励起光を入出力の解放の有無の検出に使用する形態である。
【0021】
更に、これらの基本的形態に加えて、励起光の立ち上げ方や逆方向励起光を用いた監視情報伝達方法を組み合わせて用いることも可能であり、本願発明の目的に有用である。
【0022】
以下、上述の3つの代表的な形態を軸に、本願発明の諸形態を詳しく説明する。
【0023】
尚、本願発明の対象となる装置、光システムは、強力な励起光、例えば信号光に比較して強力な励起光を用いる光装置、あるいは光システムに関する。この強力な励起光は、ラマン光が代表的な例である。しかし、本願発明の適用可能な光装置、その部材あるいは光システムなどは多岐に渡るので、ここに、その主なものを列挙し例示する。ここに具体的に列挙した以外の光装置あるいは光システムにおいて、本願に開示の発明思想を適用できる光装置あるいは光システムは当然本願発明の範囲である。
(1)光増幅器としては、光ファイバ増幅器、半導体光増幅器、光ファイバ・ラマン増幅器、集中定数型ラマン増幅器などを挙げることが出来る。ここで、光ファイバ・ラマン増幅器とは、ラマン光を光伝送路、光ファイバに導入し、この光伝送路、光ファイバ中で、誘導ラマン効果によって光増幅を行うものである。本願明細書では、このラマン光を光伝送路、光ファイバに導入する手段、装置の部分を光ファイバ・ラマン増幅器と称することとする。
(2)光ファイバ・ラマン増幅器用の励起光源。
(3)光ファイバ・ラマン増幅器を縦列接続した各種光増幅器あるいは光システム。
(4)ラマン励起光が入力される光増幅器。例えば、光ファイバ・ラマン増幅器用の励起光の入力部を有する光増幅器。
(5)上記各光増幅器を有する光装置、光伝送装置、光中継機。
(6)上記各光増幅器を用いた光装置、光伝送装置、光中継機などを有する光システム。
【0024】
本願発明の基本的な第1の技術思想は、光増幅器の光信号の出力端からの反射光強度を検出する光検出器と出力端との間に、光ファイバラマン増幅に用いる励起光の波長を阻止し、この光信号の波長を透過する光フィルタを挿入する形態である。こうすることによって、ラマン励起光による、前記光検出器への外乱を除去するものである。また、光信号の入力端からの入力信号強度を検出する光検出器と入力端の間に、光ファイバラマン増幅に用いる励起光の波長を阻止し、この光信号の波長を透過する光フィルタを挿入すれば、同じように入力検出にも適用できる。
【0025】
あるいは、前記ラマン励起光の混入を阻止するには、次のような方策も存在する。合波器を光ファイバラマン増幅に用いる励起光の波長を阻止し、この光信号の波長を透過する役割を担わせるのである。即ち、光信号の入力部もしくは出力部もしくはその双方に、光ファイバ伝送路に向かって光ファイバラマン増幅用励起光を合波する合波器を備え、この合波器を光信号の入力端からの入力信号強度を検出する光検出器と入力端の間に配置することによって励起光の波長成分を除去できる。もしくは、この合波器を、光信号の出力端からの反射光強度を検出する光検出器と出力端の間に配置することを、もしくはその双方に配置することによっても、同様に合波器によって励起光の波長成分を除去できる。この場合、合波器が前述の光ファイバラマン増幅に用いる励起光の波長を阻止し、この光信号の波長を透過する光フィルタと類似の特性を有し、従って、合波器が前述の光フィルタと同様の働きをなしているのである。
【0026】
上記励起光の波長成分を除去する手段は、特に、光ファイバ伝送路を利得媒体とする光ファイバラマン増幅器もしくは光ファイバラマン増幅用励起光源、更には、光ファイバラマン増幅用励起光の入力部を備えた光増幅器において有効である。また、こうした光ファイバラマン増幅器、光ファイバラマン増幅用励起光源、あるいは光ファイバラマン増幅用励起光の入力部を備えた光増幅器を有する光伝送装置や光伝送システムにおいて効果を奏する。
【0027】
本願発明の第2の形態は、励起光のON/OFF等の励起光の状態に応じて、入出力検出回路の検出閾値を変化させる形態である。
【0028】
即ち、信号光の反射強度あるいは入射強度は、光ファイバ・ラマン増幅器のオン・オフ状態や励起光の出力強度に応じて変化する。従って、これに応じて入力検出もしくは出力反射光検出の判定のしきい値を、異なる複数の値に変化させることによって、雑音光の影響を低減し、より確実な入力光あるいは反射光の検出が行えるようになる。例えば、具体的な動作を例示すれば、ラマン励起光のオン・オフ信号がオンの場合、システムは、基準電圧源の大きな電圧値を用い、一方、ラマン励起光のオン・オフ信号がオフの場合、小さな電圧値を用いるのである。もって、当該光装置、光システムの誤動作を防止することが出来る。
【0029】
本願発明の第3の形態は、励起光自身の強度を調整する形態、例えば、励起光自身を入出力解放の為の検出に使用する形態である。即ち、ラマン増幅用の励起光源装置や光ファイバ・ラマン増幅器も高強度の光を出力するので、出力端からの反射光強度、もしくは出力端からの反射光強度と出力光強度の比を測定する光検出器を備えれば、本願発明の目的が達成できる。この光検出器の検出結果に基づいて、当該励起光を調節するのである。
【0030】
この調節の一例を例示すれば、励起光の強度を検出し、光信号レベルが一定以上であれば、当該光源装置の上流側のすべてのコネクタ開放がされていないことと確認できる。従って、励起光を点灯し、上流側に向けて励起光を送出する。また、動作中に上記入力信号光が一定レベル以下に低下した場合には、コネクタ開放などの状態が発生したと判断し、ラマン励起光を遮断する。このしきい値の変更は必ずしも、オンオフ2値で行う必要はなく、励起光の強度によって、連続的に可変もしくは3値以上の複数としても構わない。
【0031】
この際、これらの光検出器と出力端の間に、励起光波長を透過し、増幅される信号光波長や他の外乱光を阻止する光フィルタを配置することによって、これらの外乱光の影響を除去し、より正確な入出力解放検出が行えるようになる。これは励起光と増幅される信号光を合波する合波器と励起光源の間に、これらの光検出器を配置することによっても達成できる。
【0032】
さらに、出力端からの反射光強度もしくは出力端からの反射光強度と出力光強度比が設定値を越えた場合に、励起光を低減もしくは遮断したり、警報表示を行ったり、もしくは警報や監視情報を他の装置に転送することによって装置の安全性を高めることが可能になる。
【0033】
次に、ラマン光源よりの励起光の立ち上げ方にも工夫を施すことが可能である。即ち、励起光の立ち上げ時に、出力端からの反射光強度、もしくは出力端からの反射光強度と出力光強度の比を測定しながら励起光強度をあらかじめ弱強度で点灯する。そして、この測定値が一定値を越える場合には、励起光の強度を固定もしくは低減もしくは遮断したり、警報表示を行ったり、警報・監視情報を他の装置に転送したり、また概測定値が一定値以下の場合には、励起光強度を所定値まで増加する。こうした励起光の立ち上げ方によって、励起光のより安全確実な立ち上げ時における方法を提供できる。
【0034】
特に、光ファイバラマン増幅器においては、増幅される光信号波長での上記入力及び反射検出と、励起光波長での上記入力及び反射検出を併用することによって、より入出力解放の為の検出の確実性を高めることが可能になる。
【0035】
次に、逆方向励起光を用いた方法について説明する。光ファイバ伝送路の下流側に配置される逆進励起型の光ファイバラマン増幅器においては、信号光と逆進するラマン励起光を周波数ac(尚、ここで、aは励起光源における光ファイバ伝送路の損失係数、cは光速である。)以上で変調し、その変調成分を検出することで、ラマン励起光を用いた入出力解放検出において外乱光の影響を排除し、かつ信号光の伝送特性の劣化を避けることが可能になる。
【0036】
また、レーリー散乱成分とコネクタ端でのフレネル反射成分の区別が可能になり、さらに確実に入出力解放を判別することが可能となる。概変調成分は上流側の光伝送装置の入出力の解放状態を検出や、上流側の光伝送装置に情報伝送にも共用することが可能である。
【0037】
なお、光ファイバ伝送路の上流側に配置された並進型の光ファイバラマン増幅器において同様の技術を適用する場合には、変調振幅を十分小とすれば伝送信号の劣化を最小限にとどめ、上記と同様の目的を達成することが可能となる。
【0038】
また、光ファイバ伝送路の上流側に配置される光増幅器においては、光ファイバ伝送路の下流側に配置されたラマン増幅器の励起光強度を測定し、この光強度があらかじめ設定した光強度範囲内の場合には光信号出力もしくは概光増幅器の励起光を点灯、もしくは増加もしくは一定に維持することを、またこの光強度が上記範囲を逸脱した場合には光信号出力もしくはこの光増幅器の励起光を低減もしくは遮断することをによって、より安全・確実な励起光の立ち上げ・遮断方式を提供できる。これは上流側の光増幅器が光ファイバラマン増幅器の場合でも同様であり、また、立ち上げ時には下流側から送るラマン励起光が励起強度が低減状態であればより安全性が高い。
【0039】
また、逆に光ファイバ伝送路下流側に配置される光ファイバラマン増幅器においては、上流側から送信される信号光もしくはラマン励起光の強度を測定し、概光強度があらかじめ設定した光強度範囲内の場合にはラマン励起光を点灯、もしくは増加、もしくは一定に維持することを、また概光強度が上記範囲を逸脱した場合には光信号出力を低減もしくは遮断することによって、同様に安全性の高い立ち上げ・遮断方式を提供できる。
【発明の効果】
【0040】
本願発明は、強力な励起光を用いることがあっても、誤動作することのない光増幅器を提供することが出来る。本願発明は、更には、強力な励起光を用いることがあっても、誤動作することのないラマン増幅器を提供することが出来る。
【0041】
本願発明は、更には、強力な励起光を用いることがあっても、誤動作することのない光伝送装置、あるいは光伝送システムを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
<本願発明の基礎となる諸難点の考察>
本願発明の具体的な実施の形態を例示する前に、本願発明を提出するに到った本発明者らの検討、考察等について説明する。
【0043】
前記従来の技術の欄に略述したように、これまでの光増幅器において、入力信号の消失を検出して光増幅器を遮断する目的は、主として光増幅器の光サージを防止するためである。
【0044】
それは、エルビウム・ドープ・ファイバー・アンプ(EDFA)のように反転分布を利用した光増幅器では、入力信号が消失した状態では、前記EDFAにおける上の準位のキャリアが消費されず、光信号利得が上昇しきった状態となる。この状態の光増幅器に光信号が再び入力されると、光信号の立ちあがり部分が先鋭化し、ピークパワーの高い光パルス(光サージ)を生ずる可能性がある。特に、このような光サージは、複数の光増幅器が縦続接続された多中継光伝送においては、光増幅器を通過するたびにピークパワーが増し次第に成長していき、最終的には受信端に接続された光受信機などの光デバイスや、光コネクタを破壊してしまう可能性がある。このため、入力信号が消失した場合には光増幅器の励起光や励起電流を遮断あるいは低減し、光サージの発生を抑圧することがある。
【0045】
更に、前述のごとく、出力解放を検出して光増幅器を遮断する目的としては、作業者の保護や解放点のコネクタ焼損防止などである。この遮断は、最近の波長多重伝送においては、光増幅器の出力信号強度は数100mWにも達するため、特に重要である。尚、ここで、出力解放とはコネクタの解放やファイバーの切断などを意味する。また、出力解放された部位(以下、出力解放点と略称する)が、再び接続されたときに発生する光サージを防止するなどの効果もある。
【0046】
しかし、本願発明者らは、従来型の光増幅器をラマン増幅器と組み合わせて用いる場合を種々検討した結果、上記の効果を有するにも係わらず、次のような難点があることを見出した。こうした観点に基づき、本願諸発明を提供するものである。
【0047】
こうした従来型の光増幅器においては、ラマン増幅器と組合わせて用いた場合は、即ち、強力な励起光を用いる場合、その遮断機構が正常に動作しない場合がある。この理由は、主に次の2つである。
(1)光ファイバ伝送路を利得媒体とするラマン増幅器は、光ファイバ伝送路に強いラマン励起光を入力するため、この励起光によりEDFAなどの従来の光増幅器に用いられている上記入力検出あるいは出力解放検出等が誤動作してしまうことである。
(2)また、ラマン励起光の有無によって、信号利得が発生し信号強度自身が変化してしまうことである。このことによって、光増幅器が誤動作を起こすのである。
【0048】
これらの難点は、強力な励起光を用いることに基づく特異性によるものである。図2及び図3に示す従来の技術を参酌して、この特異性について考察する。
【0049】
難点の第1の例は、強力な励起光を用いた場合、信号光の反射光強度と励起光の残存強度はほぼ等しくなってしまい、正常なコネクタ解放の為の検出が行えなくなるという問題である。
【0050】
図2の例を用いて問題点を説明する。例えば、図2では光増幅器100の下流側に、光ファイバ伝送路106を介して、光ファイバラマン増幅器120が接続されている。光ファイバラマン増幅器120では、合波器122を介して励起光源121よりの光を波長合波し、励起光源121から出力される励起光123を光ファイバ伝送路106中に導いている。励起光123は信号光よりおよそ100nmほど短波長の無変調光であり、信号光に対し逆向きに進行している。従って、光ファイバ伝送路106中で、誘導ラマン効果により信号光を増幅する。
【0051】
尚、前述したように、ラマン増幅は、実際には光ファイバ伝送路中で行われるが、本願明細書では、信号光とラマン励起光を合波する機能を持つ装置を「光ファイバラマン増幅器」と称する。また、図中で黒塗りの矢印(112など)は光信号もしくは光信号の反射成分を、また白抜きの矢印はラマン励起光(123など)もしくはその反射成分を示している。また、合波器および分波器は、励起光や信号光の波長の差を利用して、低損失で合波・分波する機能を有する素子であるとする。
【0052】
励起光123は、光ファイバ伝送路106により損失を受けるものの、その一部がコネクタ105まで到達し、信号光の反射光113と一緒に反射光検出器108に到達する。例えば、励起光の出力レベルを25dBm、光ファイバ伝送路の損失を30dBとすると、出力コネクタ105に入力される光強度は−5dBmとなる。一方、光増幅器100の信号光出力が10dBm、信号光のフレネル反射率を−14dBとすると、フレネル反射光強度と励起光の残存強度はほぼ等しくなってしまい、正常なコネクタ解放の為の検出が行えなくなるという問題が生じる。
【0053】
次に、難点の第2点は、ラマン増幅器を他の光増幅器と縦続配置で用いた場合、従来の光増幅器においてもラマン増幅器においても入力信号の検出あるいは出力解放の検出が困難になるという問題である。
【0054】
図3の形態を考察してみよう。図3は光ファイバ伝送路106の上流側に、光増幅器100−1と光ファイバラマン増幅器(並進励起型)130を、また下流側に光ファイバラマン増幅器(逆進励起型)120と光ファイバ増幅器100−2を配置した例である。
【0055】
例えば、反射光検出器108は、本来、光コネクタ105、134、135などで生じた反射光113を検出するはずである。しかしながら、ラマン励起光133のレーリー散乱光や、下流側からのラマン励起光123の残留分133’が、合波器132を通過し、反射光113に漏れこむ可能性がある。合波器132には、通常、波長分離度30dB〜40dB程度のものが使用される。しかし、ラマン励起光の光強度はきわめて高いため、光信号の波長数が少なく光信号強度が低い場合など、反射光検出器108を誤動作させる場合がある。また、ラマン増幅の方式によっては、励起効率を向上させるために、光ファイバ伝送路106の途中に励起光を反射する励起光反射グレーティングを配置する手法などが知られている。このような場合には、励起光の反射率がより強くなるため誤動作が起こりやすくなる。
【0056】
また、前述の各図では省略しているが、光ファイバラマン増幅器130、120も入力検出や出力解放検出を設けることが考えられる。しかし、これらの回路が、同様に他方のラマン光増幅器によって誤動作する可能性がある。
【0057】
また、光増幅器100−2の入力検出回路109も同様にラマン励起光によって誤動作する可能性がある。
【0058】
入力検出器109での入力信号の有無の識別しきい値は、システム構成にも依存するが、通常−20dBm〜−40dBmと低い値である。このため、合波器122における波長の分離度が高くとも、励起光の反射や残留成分によって誤動作する可能性が高くなる。特に、光ファイバラマン増幅器120が用いられない場合には大きな問題となる。
【0059】
また、光ファイバラマン増幅器を用いた場合には、ラマン励起光源131、121のオン・オフによって信号光のレベルが変動してしまうため誤動作を招く可能性がある。
【0060】
<主な発明の実施の諸形態>
本願発明者らのこれら諸検討に基づき、本願は、光増幅器(尚、ここでの光増幅器には前記ラマン増幅器を含むことを、念の為、注記する)の入力検出法や出力解放の検出法、またラマン増幅器の特異性を考慮した光増幅器の立ち上げや遮断方法に関して、新たな諸発明を提供する。
【0061】
以下、本願発明は多岐に渡るので、その主な実施の諸形態を列挙する。
【0062】
本願の第1の実施の形態は、1波長もしくは波長多重された光信号を増幅する光増幅器において、光信号の出力端からの反射光強度を検出する光検出器と出力端の間に、光ファイバラマン増幅に用いる励起光の波長を阻止し、概光信号の波長を透過する光フィルタを挿入することを特徴とする光増幅器である。ラマン励起光除去部材としては、信号光を透過し、ラマン励起光を取り除く機能があれば、誘電体多層膜や光ファイバ・グレーティング、ガラス導波路などどのような光フィルタでも用いることができる。ラマン励起光除去部材を、個別の部品として取り扱っているが、同様の機能があればその機能を他の部品の一部に組み込んだりしても問題ない。この側面は、以下の諸例においても同様である。
【0063】
本願の第2の実施の形態は、1波長もしくは波長多重された光信号を増幅する光増幅器において、光信号の入力端からの入力信号強度を検出する光検出器と入力端の間に、光ファイバラマン増幅に用いる励起光の波長を阻止し、概光信号の波長を透過する光フィルタを挿入することを特徴とする光増幅器である。
【0064】
本願の第3の実施の形態は、1波長もしくは波長多重された光信号を増幅する光増幅器において、光信号の入力部もしくは出力部もしくはその双方に、光ファイバ伝送路に向かって光ファイバラマン増幅用励起光を合波する合波器を備え、合波器を光信号の入力端からの入力信号強度を検出する光検出器と入力端の間に配置することを、もしくは概合波器を光信号の出力端からの反射光強度を検出する光検出器と出力端の間に配置することを、もしくはその両方に配置することを、特徴とする光増幅器である。
【0065】
本願の第4の実施の形態は、前記第1、2、3の光増幅器を含み、光ファイバ伝送路を利得媒体とする光ファイバラマン増幅器もしくは光ファイバラマン増幅用励起光源もしくは光ファイバラマン増幅用励起光の入力部を備えたことを特徴とする光増幅器、光伝送装置、および光伝送システムである。
【0066】
本願の第5の実施の形態は、前記第1、2、3、4の光増幅器、光伝送装置、光伝送システムにおいて、光ファイバラマン増幅器のオン・オフ状態や励起光の出力強度に応じて、入力検出もしくは出力反射光検出の判定のしきい値を異なる複数の値に変化させることを特徴とする、光増幅器、光伝送装置、もしくは光伝送システムである。
【0067】
本願の第6の実施の形態は、ラマン増幅用の励起光を送出する励起光源装置、もしくは、光ファイバ伝送路にラマン増幅用励起光を送出する光ファイバラマン増幅器において、励起光の出力端からの反射光強度、もしくは励起光の出力端からの反射光強度と出力光強度の比を測定する光検出器を備えたことを特徴とする励起光源装置、もしくは光ファイバラマン増幅器である。
【0068】
本願の第7の実施の形態は、前記第6の励起光源装置、もしくは光ファイバラマン増幅器において、励起光の出力端からの反射光強度を検出する光検出器もしくは出力光強度を検出する光検出器と、励起光の出力端の間に、この励起光波長を透過し、増幅される信号光波長もしくは他の光ファイバラマン増幅器の励起光波長もしくは他の外乱光を阻止する光フィルタを配置することを、もしくはこの励起光と増幅される信号光を合波する合波器と励起光源の間に、この反射光強度検出器もしくは概出力光検出器もしくはその双方を配置することを、特徴とする励起光源装置、もしくは光ファイバラマン増幅器である。
【0069】
本願の第8の実施の形態は、前記6ないし7の励起光源装置もしくは光ファイバラマン増幅器において、出力端からの反射光強度もしくは出力端からの反射光強度と出力光強度比が設定値を越えた場合に、励起光を低減もしくは遮断することを、もしくは警報表示を行うことを、もしくは警報や監視情報を他の装置に転送することを、特徴とする励起光源装置、もしくは光ファイバラマン増幅器である。
【0070】
本願の第9の実施の形態は、前記第6、7、ないし8の光ファイバラマン増幅器の励起光立ち上げ時に、出力端からの反射光強度、もしくは出力端からの反射光強度と出力光強度の比を測定しながら励起光強度をあらかじめ弱強度で点灯し、この測定値が一定値を越える場合には、励起光強度を固定もしくは低減もしくは遮断することをもしくは警報表示を行うことをもしくは警報・監視情報を他の装置に転送することを、また前記測定値が一定値以下の場合には、励起光強度を所定値まで増加させることを、特徴とする励起光源装置、もしくは光ファイバラマン増幅器である。
【0071】
本願の第10の実施の形態は、前記第6、7、8、ないし9の光ファイバラマン増幅器において、前記第1、2、3、4、ないし5の、光信号波長の入力検出もしくは反射光検出、もしくはその双方を持つことを特徴とした光ファイバラマン増幅器である。
【0072】
本願の第11の実施の形態は、光ファイバ伝送路の下流側に配置され、光ファイバ伝送路の上流側に向かって励起光を送出して光信号増幅を行う光ファイバラマン増幅器において、励起光源を周波数ac(aは励起光源における光ファイバ伝送路の損失係数、cは光速)以上で強度変調することを特徴とした光ファイバラマン増幅器でえある。
【0073】
本願の第12の実施の形態は、前記第11の形態において、変調成分を、光ファイバラマン増幅器もしくは上流側に配置された光伝送装置の入出力解放検出に用いることを、もしくは上流側の光伝送装置に情報伝送することを、特徴とした光ファイバラマン増幅器もしくは光伝送装置である。
【0074】
本願の第13の実施の形態は、光ファイバ伝送路の上流側に配置され、光ファイバ伝送路の下流側に向かって励起光を送出して光信号増幅を行う光ファイバラマン増幅器において、励起光源を周波数ac(aは励起光源における光ファイバ伝送路の損失係数、cは光速)以上で小信号強度変調し、概変調成分を検出して出力の解放状態を検出することを、もしくは下流側に配置された光伝送装置で入力解放検出を行うことを特徴とした、光ファイバラマン増幅器、もしくは光伝送装置である。
【0075】
本願の第14の実施の形態は、光ファイバ伝送路の光信号伝送方向の上流側に配置される光増幅器において、光ファイバ伝送路の下流側に配置されたラマン増幅器の励起光強度を測定し、光強度があらかじめ設定した光強度範囲内の場合には光信号出力もしくは光増幅器の励起光を点灯、もしくは増加もしくは一定に維持することを、また概光強度が上記範囲を逸脱した場合には光信号出力もしくは概光増幅器の励起光を低減もしくは遮断することを、特徴とした光増幅器である。
【0076】
本願の第15の実施の形態は、光ファイバ伝送路下流側に配置される光ファイバラマン増幅器において、上流側から送信される信号光もしくはラマン励起光の強度を測定し、光強度があらかじめ設定した光強度範囲内の場合にはラマン励起光を点灯、もしくは増加、もしくは一定に維持することを、また光強度が上記範囲を逸脱した場合には光信号出力を低減もしくは遮断することを、特徴とした光ファイバラマン増幅器である。
【0077】
<本願発明の実施例>
第1の実施形態は、励起光の除去用のフィルタを用いる形態の例である。図1は、本願発明の第1の実施形態を示す構成図である。わけても、本例は本願発明に係わる光増幅器140の構成例を示している。即ち、本例では、光増幅器140と励起光を発生する光ファイバラマン増幅器120とが光ファイバ伝送路106で接続されている。尚、ここで、図中の略号について略述する。これらの略号は全ての図において同じ意味で用いられている。LDはLaser Diode、PDはPhoto Diode、CTL、CTRLはControl Circuit、EDFはErbium Doped Fiber、BPFはBand−Pass Filterの略号である。
【0078】
信号光200は光増幅器140で増幅されたのち、光ファイバラマン増幅器120よりのラマン励起光123によって、光ファイバ伝送路106にて、再度増幅される。そして、この増幅された信号光201は光ファイバラマン増幅器120の出力端211より出力される。
【0079】
光増幅媒体103の入力側には、光分岐器102が配され、入力光200の分岐光が入力光を検出する入力光検出器109に入力される。入力光検出器109による検出結果は制御回路110に伝達され、励起光源111の出力等を制御する。一方、光増幅媒体103の出力側には、光分岐器104が配され、出力端105に光信号を伝達すると共に、この光分岐器104より分岐された光を出力光検出器107に入力する。光の分岐比は数%、例えば1%より10%程度である。そして、入力光検出器107による検出結果は制御回路110に伝達され、励起光源111の出力等を制御する。更に、光分岐器104を通して、出力端105よりの反射光113を、反射光検出器108に入力される。そして、入力光検出器108による検出結果は制御回路110に伝達され、励起光源111の出力等を制御する。こうして、当該光増幅器140は、励起光の出力強度を一定に制御すること、あるいは光増幅器140の出力強度を一定に制御すること、あるいは光増幅器140の信号利得が一定になるように制御することなど、所望に制御されている。尚、制御回路110の具体例は後述されるが、こうした制御系の一般的な制御は通例の方法に従って十分であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0080】
さて、本願発明の特徴点は次の通りである。光増幅器140は、入力光コネクタ101から入力された光信号200を光増幅媒体103で増幅して、出力光コネクタ105から光ファイバ伝送路106に出力する。この出力光コネクタ105後に、光ファイバラマン増幅器120が接続されている。従って、光信号112は出力光コネクタ105に達するが、反射光113が生ずる。反射光の検出器108の直前には、ラマン励起光の除去用のフィルタ(以下、このフィルタをラマン励起光除去用フィルタと略記する)142が配置され、反射光113に漏れこむ残留ラマン励起光123を除去している。
【0081】
このラマン励起光除去フィルタ142は、光増幅器140が増幅すべき波長の光信号を透過し、ラマン励起光を除去する機能を持っている。従って、ラマン増幅器120を用いた場合にも、信号光112の反射光113の強度を正確に測定し、正しい出力解放検出を行うことが可能となる。なお、通常ラマン増幅に用いる励起光は信号波長から約100nm短波長側になるので、両者は波長フィルタリングによって、容易に分離することが可能である。例えば、光信号の波長が1550nmの場合、ラマン励起光の波長はおよそ1450nmとなる。また、ラマン増幅器を用いない場合でも、通常の光増幅器としての動作に影響を及ぼすことはない。
【0082】
本例では、入力光検出器109と入力コネクタ101の間にも、ラマン励起光除去フィルタ141を配置している。本実施形態では光ファイバ下流側から逆進励起する場合の信号のみを具体的に示したが、このようにあらかじめ、光増幅器内の入力光検出部と反射光検出部などに、ラマン励起光を除去する光フィルタを挿入しておけば、将来、光ファイバ・ラマン・アンプを用いる場合や、異なるシステム構成においても同じ光増幅器を共用できるという利点がある。
【0083】
本実施形態では、入力光検出と反射光検出の両機能を持つ例を示したが、どちらか一方の場合でも問題なく本願発明を適用できる。また、入力光検出と反射光検出はシステム形態などによって要求仕様が異なるため、システムの仕様によって、どちらか一方にのみ本願発明を適用しても構わない。
【0084】
なお、広帯域波長多重信号の増幅の場合、信号波長も複数の波長多重された光信号に、また励起光源としても複数の波長の異なる励起光を波長多重して用いられる場合がある。このような場合にも本願発明は問題なく適用可能である。
【0085】
利得媒体103としては、最も広く用いられる1550nm帯のEDFAのほかに、1580nm帯などの長波長帯EDFA、1.3μm帯などの波長の異なる光ファイバアンプ、もしくは半導体光増幅器、高非線型ファイバなどを利用した集中定数型のラマン増幅器、入力光・反射光検出機能がある光増幅器であれば、どのような光増幅器にも適用可能である。なお、光ファイバ伝送路自身を利得媒体とする光ファイバラマン増幅器については、その特異性を考慮した実施形態を別に示した。
【0086】
また、ラマン励起光除去フィルタ141及び142としては、信号光を透過し、ラマン励起光を取り除く機能があれば、誘電体多層膜や光ファイバ・グレーティング、ガラス導波路などどのような光フィルタでも用いることができる。また、信号光波長と励起光を波長合波する合波器もこの用途に適用できる。
【0087】
ラマン励起光は一般に数100mWと非常に強力であるため、光フィルタの位置によっては、フィルタによって除去すべき光強度が非常に強くなる場合がある。このような場合でも、非吸収型の光フィルタを用いたり、十分に光信号の断面積を広げておけばフィルタの破壊を防ぐことができるので問題はない。また、本願発明においては、ラマン励起光除去フィルタを、個別の部品として取り扱っているが、同様の機能があればその機能を他の部品の一部に組み込んだりしても問題ない。例えば、光検出器そのものにラマン励起波長を阻止する機能や光フィルタを付加したり、入力検出や反射検出を行う光分岐器にラマン励起波長での阻止特性を賦与しても、基本的には本願発明に含まれるものであることに、念の為言及しておく。
【0088】
ラマン励起光除去フィルタ141及び142の挿入位置は、本機能を満足しさえすれば、必ずしも、入力光検出器109、反射光検出器108の直前である必要はない。例えば、入力コネクタ101と光分岐器102の中間、光分岐器104と出力光コネクタ105の中間などに配置しても構わない。この場合、若干信号光の損失は増加するものの、漏れこんだラマン励起光が光増幅媒体103の増幅動作に影響を与えにくいなどの利点がある。
【0089】
また、本願発明で合波器とした部分は、励起光と信号光を合成する機能を持てば、必ずしも波長に依存しない合波方法も適用可能である。例えば、信号光・励起光に3dB程度の損失が許容可能であれば、1:1光カプラ型の光分岐器を用いたり、また励起光と信号光の進行方向や偏波が異なる場合には、光サーキュレータや偏波ビームスプリッタなどによって低損失に合波することも可能である。このような場合にも、入力光検出器や反射光検出器における励起光と信号光の分離度が十分に得られない場合には、本願発明が有効となる。
【0090】
励起光除去部材を用いた別な例を第2の実施形態として示す。図4は、本願発明の第2の実施形態を示す構成図である。図は、光ファイバ伝送路の上流側と下流側の双方に、それぞれ信号光と並進励起、逆進励起の光ファイバラマン増幅器を適用した例である。
【0091】
尚、図4には、本願発明に直接係わる主要な部分のみ表示した。光増幅器が、励起光の出力強度を一定に制御すること、あるいは光増幅器140の出力強度を一定に制御すること、あるいは光増幅器140の信号利得が一定になるように制御することなど、所望に制御されていることは、前記実施の形態1に例示した通りである。これらの諸点の詳細説明は省略する。以下に示す諸実施例においても同様に本願発明に直接係わる主要な部分のみ表示する。
【0092】
光増幅器140−1で増幅された光信号は、光ファイバラマン増幅器130に入力される。光信号は、合波器132で、ラマン励起光源131から出力された励起光133と合波された後に、光ファイバ伝送路106に入力される。
【0093】
また、光ファイバ伝送路106の他端では、光ファイバラマン増幅器120内部でラマン励起光源121から出力された励起光123が、合波器122を介して信号光と逆方向に入力されている。光ファイバラマン増幅器120を通過した光信号は、光増幅器140−2でさらに増幅される。
【0094】
本実施形態においては、光増幅器140−1の反射光検出器108、光増幅器140−2の入力光検出器109の直前に、ラマン励起光除去フィルタ142、141が挿入されており、漏れこんだラマン励起光による光増幅器遮断回路の誤動作を防いでいる。例えば、励起光除去フィルタ141は、入力光検出器109に漏れこむ光信号から、光ファイバ伝送路を通過したラマン励起光133の残留成分、ラマン励起光123の反射成分を除去している。
【0095】
本構成においては、励起光を波長合波する合波器122が、励起光の漏れこみ光を減少する効果持っているが、この値は通常−30〜−40dB程度であり、必ずしも十分とは言えない。例えば、励起光出力が+25dBm、光ファイバ伝送路106のレーリー散乱による光反射率が−24dB、合波器の励起光除去効果が−35dBとすると、光ファイバ増幅器100−2に入力される励起光強度は、−34dBmとなる。この値は、例えば、光プリアンプを用いた10Gbit/sの光受信機の受信感度(誤り率10−12)に相当する。この値は、システム構成や誤り訂正回路を用いたシステムにおいては、光信号自身の入力レベルに近い場合もあり、本願発明を適用しない場合には入力光検出回路109を誤動作させる可能性がある。また、光ファイバ・ラマン・アンプ120に出力解放検出回路がついていない場合や、出力解放検出回路が誤動作した場合、入力コネクタ124などが解放されると、入力光検出回路109にはさらに10dBほど強い反射光が入力されてしまう。どちらの場合も、信号光入力が無い場合に有りと誤認し、光増幅器100−2が正常に遮断されなくなってしまう。本願発明では、励起光除去フィルタにより励起光のレベルを、さらに数10dB下げ、このような事態を防ぐことが可能となる。
【0096】
また、光ファイバラマン増幅器120を使用しない構成の場合には、ラマン励起光133の残留成分が、光ファイバ増幅器140−2に入力されてしまう。この場合にも、励起光除去フィルタ141によって誤動作を防ぐことが可能になる。このように本願発明を適用した光増幅器は、ラマン増幅器の位置や個数の異なるシステム構成においても、常に入力検出回路が正常に動作するという利点がある。
【0097】
すべての実施形態において共通であるが、本願発明の適用には必ずしも図中に示した全ての光増幅器や、光ラマン増幅器が必須なわけではない。例示した図は光増幅器や光ラマン・ファイバ増幅器などの接続状態を例示したものである。
【0098】
例えば、上記第2の実施形態においては、光増幅器140−1、140−2のどちらかが存在しない場合や、ラマン増幅器120、130のどちらかもしくは双方が存在しない構成がありうる。また、逆にさらに別の光増幅器を多段接続したりするような構成や、複数の光ファイバ伝送路を中継伝送する構成も考えられるが、本願発明の適用には問題がない。例えば、まったくラマン増幅器が存在しない場合においても、光増幅器140−1、140−2中にあらかじめラマン励起光除去フィルタ141、142を配置しておくことによって、将来ラマン増幅器が適用された場合に光増幅器140−1、140−2の遮断回路が誤動作しないように備えておくことができる。更に、この形態は、また装置構成を統一・共用化をはかることが可能となるという利点がある。
【0099】
第3の実施の形態は、励起光除去フィルタを用いた別な例である。図5は、本願発明の第3の実施形態であり、複数の帯域の光信号を帯域分割して伝送する光伝送システムの構成を示している。
【0100】
本実施形態では1.3μmと1.5μm帯との2つの波長帯域を仮定している。1.5μm帯の光信号は、EDFAなどの光増幅器140−1、140−2によって、また1.3μm帯の光信号は光ファイバラマン増幅器130、120によってそれぞれ増幅されている。即ち、この場合、光ファイバ106等において誘導ラマン効果によって光が増幅される。両波長の光信号は合分波器143−1によって合波されて光ファイバ伝送路106中を伝送され、再び合分波器143−2によって分波される。1.3μm帯の増幅に用いる励起光源121、131の波長はおよそ1.2μmである。合分波器143−1、143−2の波長分波特性は、必ずしも1.2μm帯で十分な波長分離特性が得られるようには設計されていない場合、他の実施例同様、ラマン励起光が光増幅器140−1、140−2の入力光や出力反射光検出回路に影響を及ぼす可能性がある。本実施例では、反射光検出回路108、入力光検出回路109の直前に、波長1.2μm付近を除去するラマン励起光除去フィルタ142、141を挿入して誤動作を防止している。
【0101】
なお、波長帯の組合せや、ラマン増幅を適用する波長帯は必ずしも本例に限らない。図5では例えば1.3μm帯の増幅をPDFAなどの1.3μm帯光ファイバ増幅器で、また1.5μm帯の光増幅器の前後にさらに光ファイバラマン増幅器を適用するなどの構成も考えられる。これらの場合にも本願発明はまったく同様に適用が可能である。この場合、ラマン励起光の波長1.4μmと両帯域の中間近くになるので、合分波器143−1、143−2のみで十分な波長分離を行うのが困難となり、より本願発明の必要性が増す。
【0102】
これまで、励起光除去フィルタを用いた例を説明して来たが、制御回路110の構成例を例示しよう。前記の励起光除去フィルタを用いた例への適用の場合を説明する。
【0103】
図6は、本願発明における制御回路110を、電子回路で構成した例である。本例の制御回路は、図1の実施形態に対応し、3つの光検出器で測定した入力光強度信号150、反射光強度信号151、出力光強度信号152が入力となっている。入力光強度信号150は、コンパレータ154−1に入力されており、この値が基準電圧源153−1に設定された基準入力レベルより大の場合、すなわち信号光入力がある場合には、コンパレータ154の出力は論理値1となる。また反射光強度信号151と出力光強度信号152は、除算器155に入力され両者の比が算出される。この値は、コンパレータ154−2に入力され、基準電圧源153−2に設定された基準反射レベルと比較され、両者の比が一定以下、すなわち反射光強度が十分小さい場合にコンパレータ154−2の出力が論理値1に設定される。これら2つのコンパレ−タ154−1、154−2の出力信号はAND回路156に入力され、その論理積が論理値1の場合にのみ励起光源電流源157がオンとなり励起光源駆動電流158が出力される。すなわち、それ以外の場合には、励起電流158がオフとなり、光増幅器が遮断されることとなる。
【0104】
本例では、基本動作のみを示したが、実際の回路では雑音の影響や光サージの発生を防ぐためコンパレータの動作にヒステリシスを持たせたり、励起電流源の立ち上げに一定の遅延をかけたりする場合や、複数の励起光源を同時にもしくはその一部のみを制御する場合もある。また、本例は、あくまで実現の一例であり、例えばA/Dコンバータ、D/AコンバータとCPUの組合せにより、ほとんどの動作をプログラムで実現することもできる。
【0105】
第4の実施の形態は、前述の本願発明の第2の形態である励起光の状態に応じて、入出力検出回路の検出閾値を変化させる例である。図7は、本願発明の第4の実施形態を示す図である。この例は、励起光源用の電流源157よりの励起光源用電流158が、ラマン励起光の状態に応じて、制御回路110によって制御される例である。
【0106】
制御回路110において、ラマン励起光のオン・オフ信号160を受けて、スイッチ159によって異なる電圧の基準電圧源に153−1、153−2を切替、識別しきい値を変化させる例である。コンパレータ154−1に、入力信号強度信号150と、前記基準電圧値の信号が入力される。例えば、基準電圧源153−1は大きな電圧値、これに対して基準電圧源153−2は小さな電圧値であるとする。そして、このコンパレータ154−1よりの出力信号と制御回路110に対する他の信号がAND回路156に入力され、この出力が励起光源用電流源157を制御する。尚、光増幅器自体は、各種のものを用いることが出来る。例えば、図1の基本構成を用いることが出来る。更に、本願明細書に例示される光増幅器に適用することが出来る。勿論、こうした諸構成において、例えば、図1ではフィルタ141、142を用いず、本例の制御回路を用い、本願発明の目的を達することが出来る。他の諸例でも同様である。
【0107】
光ファイバ伝送路を利得媒体として用いたラマン増幅においては、ラマン励起光のオン・オフによって、光ファイバ中で信号波長の利得が変化するため、信号波長での反射光や入力光の大きさや雑音光の大きさが変化してしまう。例えば、光ファイバ伝送路の下流から逆進励起を行った場合には、信号波長の受けるラマン利得は10〜20dBに達し、この分だけ入力光強度信号150の大きさや、雑音光の大きさが変化する。
【0108】
従って、ラマン励起光がオンの場合には、入力光検出レベルを引き上げることにより、適切に光増幅器の遮断を行い光サージの抑圧を行うことが可能となる。即ち、ラマン励起光のオン・オフ信号160がオンの場合、大きな電圧値の基準電圧源153−1に接続される。一方、ラマン励起光のオン・オフ信号160がオフの場合、小さな電圧値の基準電圧源153−2に接続される。ラマン励起光源が故障するなどし、励起光が低下した場合には、下流の光増幅器の入力検出レベルを下げれば、必ずしも下流の光増幅器が遮断されなくなるので、信号劣化をラマン増幅器1台分の最小限のSN劣化のみに抑え、不要な信号断を防ぐことも可能となる。
【0109】
ラマン励起光のオン・オフ信号は、信号増幅に関与する励起光のオンオフ情報であれば、どのように入手や伝送を行っても構わない。例えば、ボード上の電気信号や装置間のケーブル、または監視信号などによって論理的な情報として装置間や光ファイバ伝送路をまたがって伝送しても構わない。また後述のように、別途、ラマン励起光の波長の光検出器を設け、ラマン励起光の反射強度や入力強度を検出し、これを用いて生成しても構わない。しきい値の変更は必ずしも、オンオフ2値で行う必要はなく、励起光の強度によって連続的に可変もしくは3値以上の複数としても構わない。また上記実施形態では、入力検出部にのみ適用した例を示したが、反射光検出部に適用しても構わない。
【0110】
第5の実施の形態は、前記本願発明の第3の形態である励起光自身の強度を調整する例である。図8は、本願発明の第5の実施形態を示す図である。この例は、光ファイバ・ラマン増幅器に信号光の入力強度あるいは出力反射強度を検出し、遮断する機構を取りつけた例である。
【0111】
図8の例は、光ファイバラマン増幅器136と光ファイバ・ラマン増幅器126が光ファイバ伝送路106の両端部に接続されている。信号光200が増幅された出力光210として出力される。図8において、ラマン励起光源131及び121が設けられ、これらは制御回路110−1及び110−2によって制御されている。そして、この制御にあったて、出力光検出器107、109、及び反射光検出器108よりの検出光に基づいて、前記各制御回路に制御信号が入力される。光ファイバラマン増幅器136は、光分岐器102を有し、入力光を入力光検出器109で検出する。
【0112】
本願発明で用いる光ファイバ・ラマン増幅器は、光ファイバ伝送路が利得媒体であり、光ファイバラマン増幅器として示した部分の内部には利得媒体を含まないので、信号光の入力強度と出力強度は合波器の損失などを除くと一致する。従って、以下では、特に両者の区別はせずにどちらか一方のみを測定している。
【0113】
光ファイバ伝送路の上流側の本願発明の光ファイバラマン増幅器136では、入力コネクタ134から入力される信号光の強度と反射光強度を光検出器107と108で検出し、出力コネクタ135の解放検出を行っている。
【0114】
本例では、ラマン励起光を合波する合波器132を、光信号の出力端からの反射光検出器108と出力コネクタ135の間に配置することによって励起光除去用の光フィルタを不要としている。光ファイバラマン増幅器の場合、常に励起光の合波器があるためこのような配置が可能となる。合波器132の波長分離度が低い場合や、他の波長のラマン励起光が漏れこむ可能性のある場合、もしくは合波器132と光分岐器104の位置を逆にする場合などは光検出器108、107の手前などにラマン励起光除去フィルタを挿入することが必要となる。
【0115】
このように、信号光を出力コネクタ解放検出に利用すれば、信号光に比べ極めて出力の高いラマン励起光源を点灯する前に、コネクタ解放を判定し励起光源131を点灯するかどうかを決定できる。従って、作業者の安全やコネクタ・光部品の保護の点で有利となる。また動作中に入力信号光が切れた場合にも励起光源131を遮断することにより、安全性を高め、さらに下流の機器の誤動作を防ぐことが可能となる。
【0116】
一方、光ファイバ伝送路106の下流側の本願発明の光ファイバ・ラマン増幅器126においては、信号光波長で入力光強度の検出を行っている。本例では励起光の合波器122を入力光検出部109と入力端の間に配置し、さらにラマン励起光除去フィルタ142を挿入している。特に入力光検出部109に対する入力信号の有無の判定しきい値は低いため、このような配置にすることで、ラマン励起光除去フィルタ142や波長合波器122に対する波長分離度の仕様を緩和することが可能となる。励起光除去フィルタ142の位置は分岐器102と入力光検出器109の間であっても構わない。
【0117】
このように、信号光を入力有無の判定に用いれば、高出力の励起光源121を点灯する前に確実に上流側まで、コネクタ解放部が存在しないことを確認できるので、特に外部に対する安全性を高めることが可能となる。
【0118】
また、入力光検出器109では、ラマン励起光源121の点灯前後の信号利得を測定することができるので、増幅動作の異常検出にも用いることが可能となる。また、特にこの構成においては、動作中に異常が起こり信号光が途絶えても、本ラマン増幅器が上流の光増幅器のASEなどの雑音光を増幅してしまい、入力信号が有ると誤認してしまう可能性がある。このような場合、直前の実施形態で述べたように入力検出レベルを可変にすることで問題を回避できる。
【0119】
また、逆に、ある程度以上入力信号光が強い場合には、誤接続などの異常事態や伝送路が短くラマン増幅が不要、などの状況が考えられるので、他の装置や光素子の保護のため励起光源を点灯しないなどの対策が有効となる。更に、信号光パワーが一定となるように励起光強度にフィードバック制御をかけることによって、後続の光受信機や光増幅器への入力範囲を逸脱しないようにし、部品の保護や利得の波長利得差の発生を抑制することができるようになる。
【0120】
図9は、本願発明の第6の実施例である。この例は、ラマン励起光自身をコネクタ解放検出に用いる逆進励起型の光ファイバラマン増幅器126の構成を示している。逆進励起型ラマン増幅器とは、信号光の進行方向とは逆方向にラマン励起光を進行させるタイプのラマン増幅器である。尚、図9では、光ファイバラマン増幅器の回路部分のみを示す。光ファイバ伝送路は入力光コネクタ124に接続されるが、図示は省略される。
【0121】
従って、逆進励起型ラマン増幅器においては、強いラマン励起光を光信号の入力コネクタ124に向けて出力するため、信号入力側から反射光を検出する必要がある。
【0122】
本例では、励起光と増幅される信号光を合波する合波器122とラマン励起光源121の間に、光分岐器104−1を設けて励起光の出力光と反射光の一部を取りだし、励起光反射光検出器171と励起光出力光検出器170で検出している。このように、ラマン励起光の一部及び励起光反射光を検知し、更に、入力光検知器109信号光の一部を検出し、これらの信号に基づいて制御回路110を制御する。
【0123】
こうした構成によって、例えば、出力端124でのラマン励起光が所定値以上になったことを、その反射光202で検出されると、ラマン励起光を低減あるい
は遮断する。あるいは信号光の場合も同様に、入力光検知器109信号光の一部を検出し、励起光の維持、低減あるいは遮断等の動作を行うことが出来る。しかし、本例では、ラマン励起光をコネクタ解放検出に用いることでより正確に検知、制御が可能となる。
【0124】
即ち、本例では、入力光コネクタ124から入射される信号光200は励起光反射光検出器171に到達する前に、合波器122で十分に減衰されるため、信号光の影響を排除しラマン励起光の反射光202のみによって解放検出を行うことが可能となる。
【0125】
又、後述のように、段階的にラマン励起光を増加しながら点灯する場合など、励起光強度が弱い場合には、信号光除去フィルタの適用が特に有効となる。
【0126】
逆進励起型のラマン増幅器では、ラマン励起光を入力解放検出に用いた場合、前記の入射信号光を用いる場合に対し、励起光波長で反射損失が正確に測定できるので、コネクタの不完全な接続などの場合に、確実に解放検出が行えるようになる。さらに。励起光強度は信号光の100から10000倍以上も光強度が高いため、雑音光や外乱光の影響を受けにくいという利点がある。また、励起光を点灯し信号増幅を行わないと入力検出に十分な入力信号が確保できない場合があり、この場合信号光を用いた入力検出は適用できなくなる。また信号光を用いた場合には故障による信号断と入力解放検出の区別ができなくなるなどの問題もある。
【0127】
通常、ラマン増幅に用いる励起光強度は、数100mWと極めて強いため、上記のように反射光検出の目的であっても、励起光を点灯した時点で誤接続された機器の破損や作業者に対する問題を引き起こす可能性がある。本例では更に、光信号強度を測定するためラマン励起光除去フィルタ142および入力光検出器109を併設し、まず入力信号の範囲を確認したのちに励起光を点灯することにより、少なくとも入力コネクタの誤接続や強力な励起光の外部への放射などの問題を回避している。このように入射信号検出と、ラマン励起光の反射の2重検出により極めて信頼性の高い入力解放検出が行えるようになる。
【0128】
なお、出力コネクタ125からの出力光が、危険なほど強いレベルになる場合においては、こちらにも反射光検出器を設けてもよい。また、本実施形態では、励起光出力光検出器170も別途設けているが、これは、例えば、励起光源121内部に組み込まれたモニタフォトダイオードなどや、駆動電流と励起光出力の関係曲線などで代用しても構わない。
【0129】
図10は、本願発明の第7の実施形態を示す構成図である。この例は、ラマン励起光自身を出力解放検出に用いる並進励起型の光ファイバラマン増幅器136の構成を示している。尚、図10では、光ファイバラマン増幅器の回路部分のみを示す。光ファイバ伝送路は、出力光コネクタ135に接続されるが、図示は省略される。
【0130】
並進励起型ラマン増幅器とは、信号光の進行方向とは同方向にラマン励起光を進行させるタイプのラマン増幅器である。従って、並進励起型では出力コネクタ135側からの反射光を検出する必要がある。
【0131】
本例では、励起光と増幅される信号光を合波する合波器132とラマン励起光源131の間に、光分岐器102−3を設けて励起光の反射成分の一部を抽出し、励起光反射光検出器171で反射光強度を測定している。このように、本例では、信号光の一部211、励起光反射光の一部212、及び励起光の一部213を検知し、これらの諸信号に基づいて制御回路110を制御する。符号109は入力光検知器、171は励起光反射光の検知器、170は励起光出力の検知器である。信号光200は並進励起型ラマン増幅器136の出力光214として出力され、光導波路に伝達される。一方、ラマン励起光215は並進励起型ラマン増幅器136の出力端135より出力光216として光導波路に伝達される。そして、信号光214は、ラマン光216による誘導ラマン効果によって光導波路内で増幅される。
【0132】
ところで、本例では、光分岐器、合波器、信号光除去フィルタを有している。即ち、出力コネクタ135からの励起光の反射光は、光分岐器102−2、合波器132、光分岐器102−3を通過して、励起光の反射光の一部212として、励起光反射検出器171に到達する。信号光200の波長成分は、合波器132で十分に減衰されるように設定されており、励起光成分を用いた解放検出への、信号光成分の影響を防ぐことが可能となる。
【0133】
このように、励起光成分自身を用いる利点は、波長の異なる信号光波長を使う場合にくらべ、より確実な解放検出が行える点、また、信号光に比べ数倍〜数10倍光強度の強い励起光を用いることによって、雑音光や他の外乱光の混入を受けにくい点などである。
【0134】
また、本実施形態では、励起光出力光検出器170は、別途光分岐器102−2から取りだし、信号光除去フィルタ172によって抽出した励起光成分213の強度を測定する例を示している。
【0135】
出力光検出器170の位置も必ずしもここに限るものではなく、例えば前実施形態同様光分岐器102−3の空きポートに配置してもよい。
【0136】
前記の逆進励起の場合と違い、本実施形態においては入力信号光の有無では、励起光の出力される出力コネクタ135の解放を検出できない。
【0137】
このため、本願発明では励起光の反射光検出器と出力検出器の比をモニタしながら、ポンプ光を弱強度から段階的に増加するという手段を取る。即ち、前記の反射光検出器と出力検出器の比のモニタは、図6のように、除算器を用いて反射光強度151と出力光152の比を計算するのがその例である。
【0138】
これによって、出力コネクタや作業者に危険を与えることなく、出力コネクタの解放検出を行うことが可能となる。なお、本手段は逆進励起の場合に適用してもなんら問題はない。励起光点灯途中や動作中にコネクタの解放が検出された場合には、励起光の遮断を行たり、コネクタの再接続に備えて弱強度で点灯を維持しながら反射光強度のモニタを続けるなどの措置が有効である。
【0139】
本実施形態でも、信号光強度は入力光検出器109によって測定している。信号光が一定レベル以下の場合には入力信号断などの異常状態と、また、一定レベルを超える場合には、接続ミスと考えられるので励起光を遮断したり、警報を発生し、他の装置などに異常状態を通知するのが有効である。
【0140】
次の例は、合波器を用い、この特性に励起光除去フィルタの役目を持たせた例である。図11は、本願発明の第8の実施形態である。この例は、光増幅器の入出力端の前にラマン励起光の合波用の合波器をあらかじめ内蔵した光増幅器180の構成である。この例は、逆進励起型ラマン増幅器を有する例である。逆進型励起ラマン増幅器とは、光伝送路において、信号光の進行方向とは逆方向にラマン励起光を導入し、この領域で誘導ラマン効果によって光を増幅するものである。
【0141】
図11の例は、光増幅媒体103によって入力光200を増幅する。光増幅媒体103には励起用光源111が配される。この光源111は制御回路110で制御される。この例では更に、当該光増幅180の入出力端101、105より、これらに接続された各光ファイバ等の光伝送路にラマン励起光221、223が導入される。こうして、本例の光システムでは、前記光伝送路内においても、更に誘導ラマン効果によって光が増幅されることとなる。
【0142】
逆進励起用のラマン励起光220は、ラマン励起光入力181から入力(220)されて合波器132で、信号光の経路と合波されたのち、入力コネクタ101側に接続された光ファイバ伝送路に出力(221)される。並進励起用のラマン励起光は、ラマン励起光入力182から入力(222)されて、合波器122で信号光と合波された後、出力コネクタ105側に接続された光ファイバ伝送路に出力(223)される。このように、あらかじめラマン励起用の合波器を入出力端に組み込むことによって、合波器132、122が励起光除去フィルタの役目を果たすことになる。したがって、本光中継機においてラマン励起を行うかどうかにかかわらず、常に入力光検出器109や反射検出器108、光増幅媒体103などへのラマン励起光の漏れこみを防ぐことが可能になる。本構成においても、特に入力光検出器109のようにわずかな励起光の漏れこみによっても、動作に影響が出る部分については、必要に応じて励起光除去フィルタ141を設けることができる。なお、このようにあらかじめ合波器を内蔵する構成はプリアンプ・ポストアンプなどに適用したり、逆進・並進どちらか一方のラマン励起光合波用の合波器のみを内蔵したりしてもかまわない。
【0143】
次に波長多重励起用光源の例を示す。こうした光源を光増幅器と別体に構成し、これまで述べてきた光増幅器の励起用光源に用いることが出来る。図12は、こうした例で、本願発明の第9の実施形態で、励起光源装置183の構成を示している。この光源は、例えば、図11の励起光源入力181、182に接続して使用するものである。
【0144】
本例は、波長多重励起の構成を示している。波長の異なるラマン励起光源121−1と121−2とを有し、これらの各出力光300、301は、ラマン励起光合波器184で合波されたのち、光分岐器104を介して、ラマン励起光出力185に接続されている。ラマン励起光の一部302は、励起光出力光検出器170に、またラマン励起光出力185から戻る反射光の一部303は、励起光反射光検出器171に導かれる。ここで、これらの光302及び303は波長多重の光である。制御回路110は、両光検出器の出力信号の比をモニタしており、反射光の強度がある一定値を越えた場合には、励起光を遮断する機能を持つ。また、励起光の立ち上げ時には反射光強度をモニタしながら、段階的に励起光を点灯する。
【0145】
本装置を図11の光増幅器の励起光入力181と接続した場合、励起光出力185に限らず、励起光入力181や入力コネクタ101などの点で発生した励起光の反射光も問題なく検出できる。さらに、他の波長帯の信号の漏れこみを避けたい場合などには、これらの波長の光を除去する光フィルタを組み込めばよい。
【0146】
このように、励起光源を別装置とし反射光検出器を組み込むことによって、高価なラマン励起光源を増設を必要時にのみ増設することが可能となり、また装置の運用中にも交換が可能になるという利点がある。複数の光中継器を用いた多中継伝送においては、必ずしも1箇所のラマン増幅器の故障が、全光信号の致命的なSN劣化を引き起こすわけではないので、運用中に交換可能な構成には大きな利点がある。また、必ず励起光と信号光の合波部分と励起光源の間で反射検出が行えるようになるため、余分な光フィルタを除去し構成を簡素化できるという利点もある。さらに励起光源の制御部分と、信号光の制御部分を完全に分離できるため装置間の信号の受け渡しや制御アルゴリズムを簡素化することが可能になる。
【0147】
なお、本実施例に限らず、光信号や励起光の入出力部分やコネクタ部分はそれぞれ、光ファイバコネクタであっても、ファイバ素線をスプライスする構成などの手段、もしくは空間中でコリメートされた光信号をレンズ系で結合するような部分があっても構わない。いずれの場合でもこれらの点で異常な反射や損失があれば本願発明の反射検出手段は問題なく動作する。
【0148】
また、本実施例に限らず、ラマン励起光源の数や強度比は、必要に応じて任意に設定して構わない。一般に光源の数や強度はラマン利得や利得の波長依存性に影響するので、これらを適切に設定することによって、利得の平坦化を図ったり、自動利得等化を行うことができる。励起光の反射・出力強度の検出は、本例のように複数の励起光の和を測定しても構わないし、また特定の励起光源に対して行っても構わない。後者は光分岐器104の位置を特定の光源と合波器184の間に変更すれば簡単に実現できる。
【0149】
図13は、本願発明の第10の実施形態である。この例は、逆進励起型の光ファイバラマン増幅器126のラマン励起光に周波数fで正弦波強度変調を施した例である。
【0150】
この光ファイバラマン増幅器126は、励起光源121を有し、励起光310は入力コネクタ124より射出(312)される。この励起光310の一部313は励起光出力検出器170、又、励起光の入力コネクタ124よりの反射光の一部314は励起光反射光検出器171で検知され、この各信号に基づき制御回路110を所望に制御する。図中、符号104は光分岐器、122は合波器である。
【0151】
本例においては、励起光源121の駆動電流には、正弦波発生器190からの信号が加えられ、出力される励起光には正弦波AM変調が重畳されている。正弦波の周波数fは、その波長が光ファイバ伝送路の非線型効果の有効長(Leff=1/a、ここで、aは励起光源における光ファイバ伝送路の損失係数である)より小となるように、例えば数MHzなどに設定されている。すなわち、f>ac(ここで、cは光速である)という関係が成立している。信号光と励起光は逆方向に進行しているので、励起光が変調されていても周波数fが上記値より十分大きければ、信号光の感じるラマン利得は空間的に平均化されてしまい、信号光には劣化が生じない。信号光と並進する励起光の場合には、このような変調を行うと信号光に強度変調が生じて伝送特性が劣化してしまうため、変調成分を極めて小さく(例えば、10%以下)とする必要がある。
【0152】
このように、ラマン励起光を変調しておけば、光検出器の出力信号中から変調成分を抽出することで、外乱光があっても励起光の強度や反射率を正確に知ることができる。
【0153】
本例では、信号光・励起光をそれぞれ励起光出力光検出器170、励起光反射光検出器171で受信する。この時、検知信号は電気信号に変換され、この電気信号の領域で、中心周波数fのバンドパスフィルタ191−1及び191−2を用いて周波数fの変調成分のみを抽出している。この為、信号光や上流からの励起光成分が混入する場合でも、光フィルタを設けなくとも、逆進励起光成分のみを抽出することが可能となる。また、ファイバ途中の解放端でフレネル反射された成分は変調成分を保持しているが、レーリー散乱のように分布的に反射された場合には変調成分は空間的に平均化されて極めて小さくなる。したがって、従来よりも検出しきい値を下げることができ、高精度に解放端(フレネル反射)検出ができるようになる。
【0154】
なお、変調信号は、最低周波数成分が上記条件を満たしていれば、正弦波である必要はなく、例えば、情報信号で変調しても構わず、下流の光ファイバラマン増幅器から上流の光増幅器もしくは光送信機への監視情報や警報の転送に用いることが可能である。この場合には監視情報専用の送受信器を設ける必要がなくなるので、装置構成を簡素化することができる。
【0155】
図14は、本願発明の第11の実施形態である。この例は、下流側の励起光の変調成分を受信することで、光ファイバ伝送路の上流側の光増幅器が下流側のラマン増幅器の励起光の点灯状態を検出する例である。
【0156】
信号光の反射強度を利用した出力開放を検出では、出力端から解放点までの距離が数km以上離れ、両地点間に数dBの損失が生じた場合には、反射光レベルが小さくなりすぎ出力開放を検出できなくなるという問題点があった。しかながら、波長多重伝送や高出力伝送においては数km先でも信号光や励起光の強度は十分に強く、開放検出が必要となるレベルとなることがある。本実施形態では、より確実性の高い出力開放検出を行うため、光ファイバ伝送路の下流側の光増幅器は上流からの信号光の有無を、また上流側の光増幅器は下流側からのラマン励起光を検出する。
【0157】
本例では、上流側の光ファイバラマン増幅器136、光ファイバ伝送路106、及び下流側の光ファイバラマン増幅器126が縦続接続されている。上流側の光ファイバラマン増幅器136は励起光源131を有し、励起光310は出力コネクタ181より射出される。この励起光310の一部は励起光出力検出器170、又、励起光の出力コネクタ181よりの反射光の一部313は励起光反射光検出器171で検知され、この各信号に基づき制御回路110−1を所望に制御する。本例では信号光の除去フィルタ172−1、172−2、及びバンドパスフィルタ191を有している。下流側の光ファイバラマン増幅器126は励起光源121を有し、励起光330は入力コネクタ182より射出される。信号光340は出力端183より出力(341)される。又、信号光の一部342は入力光検出器109で検出され、この信号に基づいて制御回路110−2が制御される。本例では、前記励起光源121よりの光は、正弦波発生器190によって周波数fで変調されている。又、入力光検出器109の前にラマン光の除去フィルタ141を有している。
【0158】
本例では、ラマン増幅器の特性を考慮し、例えば、以下のような立ち上げ手順を取る。まず、上流側・下流側ともラマン励起光を遮断しておき、下流側の光ファイバラマン増幅器126側では励起光除去フィルタ141を通過した入力信号光を入力光検出器109で検出し、光信号レベルが一定以上であれば上流側のすべてのコネクタ開放がされていないことと確認できる。制御回路110−2は励起光121を点灯し、上流側に向けて変調された励起光を送出する。また、動作中に上記入力信号光が一定レベル以下に低下した場合にはラマン励起光を遮断する。
【0159】
次に、上流側の光ファイバラマン増幅器136中では、分岐器104−1、信号光除去フィルタ172−2、励起光反射光検出器171によって、光ファイバ伝送路106側から入力される励起光強度を観測している。特に、そのうち、バンドパスフィルタ191によって周波数fで変調された成分を抽出しているので、その強度から下流側からの励起光の強度を判定できる。このレベルが一定以上であれば、下流側のすべてのコネクタが開放されていないことが確認できる。これを受けて、制御回路110−1は励起光131を点灯する。また、動作中に上記変調成分が一定レベル以下に低下した場合にはラマン励起光を遮断する。上記手順によって極めて確実性の高い励起光の立ち上げ操作が行える。図16にこの励起光の立ち上げの状態を例示する。
【0160】
なお、光ファイバ伝送路の損失や送信信号のレベルによっては、上流・下流どちらか、もしくは双方の光ファイバラマン増幅器を立ち上げないと信号レベルが低すぎ、下流側の入力光検出器109では検出が行えない場合もある。その場合には、まず、最初にどちらかもしくは双方のラマン励起光を、安全な弱強度で立ち上げ反射検出をするなどの手法が有効である。
【0161】
本例では、ラマン励起光変調による信号光劣化を避けるために、下流側のラマン励起光にのみ変調を施す例を示した。ある程度の信号光の劣化が、許容できる場合には上流側のラマン励起光も変調することも可能である。この場合、下流側とは異なる変調周波数やコードで符号化しておけば、上流側・下流側の励起光の区別をつけることが可能である。この上流側の変調成分は、下流側の変調と同様にコネクタ開放の検出などに適用可能である。
【0162】
図15は、本願発明の第12の実施形態である。この例は、前の実施形態に対して、光伝送路の上流側にラマン増幅器以外の光増幅器140を配置する場合の構成を示す。光増幅器140は光増幅媒体(例えば、EDF)103を有し、このEDF103は励起光源111によって励起される。信号光400は光増幅媒体103で増幅され、出力光コネクタ105より光伝送路106に射出(401)される。本例では、入力信号400は光分岐器102で分岐され、その一部が入力光検出器109で検知される。更に、増幅された信号光の一部403は出力光検出器107によって、増幅された信号光の反射光404の光分岐器104で分岐された一部402は、反射光検出器108によって検出される。一方、下流側に存在するラマン励起光源よりのラマン励起光は、その一部405が当該光増幅器140に入射される。そして、合波器192を介してその一部405が、励起光入力光検出器193で検出される。こうして、各検出器109、108、107、及び193の検出結果に基づき、制御回路110は、励起光を制御する。
【0163】
本例では、EDFを用いた光増幅器140の出力部に、ラマン励起波長と信号光波長を波長合波する合波器192を配置し、その直後に、励起光入力光検出器193を配置することによって、下流側から送信される励起光強度を検出できるようにしている。なお、本例においては合波器192が励起光除去フィルタの役目を果たす特性に設定されているものとし、信号光の出力光・反射光検出器108、107の前には励起光除去フィルタを配置していない。
【0164】
光増幅器140から出力される信号レベルが、そのままでは危険なほどに高い場合には、立ち上げ時には、まず励起光源111を弱励起とし、信号光を低出力で送信する。光ファイバ伝送路106の下流側の光ファイバラマン増幅器(この増幅器は図示されていない)はこの信号を検出すれば、下流側からラマン励起光を送出する。励起光入力検出器193で下流側からのラマン励起光を検出しこれが、規定レベル以上であった場合、且つ反射光検出器108と出力光検出器107の光強度比が一定レベル以下であった場合、制御回路110は励起光源111を通常の規定出力まで増加させる。このように、上流側からの反射と下流側からの励起光の有無の双方を確認することで、より確実性の高い開放検出が実施できる。
【0165】
本願発明によって、光増幅器を光ファイバラマン増幅器と併用した場合にも、入力信号の検出や出力解放検出機構が正常に動作させることができるようになる。また、光ファイバラマン増幅器においても、上記機能を付加することが可能となる。またラマン増幅器の特異性を考慮した光増幅器の立ち上げ・遮断方法により、より安全性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は、本願発明の第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】図2は、従来の光増幅装置の構成図である。
【図3】図3は、従来の光増幅装置の構成図である。
【図4】図4は、本願発明の第2の実施形態を示す構成図である。
【図5】図5は、本願発明の第3の実施形態を示す図である。
【図6】図6は、制御回路の実現例を示す構成図である。
【図7】図7は、本願発明の第4の実施形態を示す構成図である。
【図8】図8は、本願発明の第5の実施形態を示す構成図である。
【図9】図9は、本願発明の第6の実施形態を示す構成図である。
【図10】図10は、本願発明の第7の実施形態を示す構成図である。
【図11】図11は、本願発明の第8の実施形態を示す構成図である。
【図12】図12は、本願発明の第9の実施形態を示す構成図である。
【図13】図13は、本願発明の第10の実施形態を示す構成図である。
【図14】図14は、本願発明の第11の実施形態を示す構成図である。
【図15】図15は、本願発明の第12の実施形態を示す構成図である。
【図16】図16は、励起光の立ち上げの例を示すタイム・チャートである。
【符号の説明】
【0167】
100・・・従来の光増幅器、101・・・入力光コネクタ、102・・・光分岐器、103・・・光増幅媒体、104・・・光分岐器、105・・・出力光コネクタ、106・・・光ファイバ伝送路、107・・・出力光検出器、108・・・反射光検出器、109・・・入力光検出器、110・・・制御回路、111・・・励起光源、112・・・出力光、113・・・反射光、120・・・光ファイバラマン増幅器(逆進励起)、121・・・ラマン励起光源、122・・・合波器、123・・・ラマン励起光、124・・・入力光コネクタ、125・・・出力光コネクタ、126・・・本願発明の光ファイバラマン増幅器(逆進励起)、130・・・光ファイバラマン増幅器(並進励起)、131・・・ラマン励起光源、132・・・合波器、133・・・ラマン励起光、134・・・入力光コネクタ、135・・・出力光コネクタ、136・・・本願発明の光ファイバラマン増幅器(並進励起)、140・・・本願発明の光増幅装置、141・・・ラマン励起光除去フィルタ、142・・・ラマン励起光除去フィルタ、143・・・合波器、150・・・入力光強度信号、151・・・反射光強度信号、152・・・出力光強度信号、153・・・基準電圧源、154・・・コンパレータ、155・・・除算器、156・・・AND回路、157・・・励起光源電流源、158・・・励起光源駆動電流、159・・・スイッチ、160・・・ラマン励起光オン・オフ信号、161・・・他の制御信号、170・・・励起光出力光検出器、171・・・励起光反射光検出器、172・・・信号光除去フィルタ、180・・・本願発明の光中継器、181・・・ラマン励起光入力、182・・・ラマン励起光入力、183・・・本願発明の励起光源装置、184・・・ラマン励起光合波器、185・・・ラマン励起光出力190・・・正弦波発生器(周波数f)、191・・・バンドパスフィルタ(中心周波数f)、192・・・合波器、193・・・励起光入力光検出器。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ラマン励起光を用いた光システムに関するものである。当該光システムの代表的な例をあげると、光増幅器、ラマン励起光の放出装置、例えば、ラマン励起光光源あるいは光ファイバにおける誘導ラマン効果によって光増幅を行うためのラマン励起光の放出装置、光中継器、あるいはこれらの諸装置を用いた光システムなどである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ中に波長の異なる複数の光信号を多重して情報伝送を行う波長多重(WDW)光伝送方式は、光ファイバ通信の大容量化に極めて有効な手法である。このような光信号の中継/増幅にはEDFA(Erbium-doped Fiber Amplifier)などの希土類添加光ファイバ増幅器や、半導体光増幅器、ラマン・アンプなどの光ファイバ増幅器が用いられる。これらの光増幅器は、光ファイバ伝送路の上流側に配置され1波長もしくは複数の波長の送信光信号を大きな光パワーに増幅して出力するためのポストアンプとして用いられる。更には、前記光増幅器が光ファイバ伝送路の下流側に配置され、伝送後の弱くなった光信号を増幅して受信するためのプリアンプとして、また伝送後光信号を増幅して次の光ファイバ伝送路に送り出す光中継機などの用途に広く用いられている。
【0003】
これらの光増幅器、なかでも既に商用光ファイバ伝送システムに広く使用されているEDFAにおいては、入力光信号の消失や出力端の解放(コネクタの解放やファイバの切断)を検出して光増幅器の出力を遮断する遮断回路が設けられている。入力信号の消失を検出して光増幅器を遮断する方式については、例えば、日本国公開特許公報、特開平7−240717号公報(特許文献1)に記載されている。また、出力コネクタの解放を検出して光増幅器を遮断する方式については、例えば、日本国公開特許公報、特開平07−190887号公報(特許文献2)などがある。
【0004】
図2に入力光の消失と出力解放検出による遮断機構を備えた、従来の光増幅器100の構成を示す。光増幅器100は入力光コネクタ101から入力された光信号を、EDF(Erbium Doped Fiber)などの光増幅媒体103で増幅して出力光コネクタ105から出力する。通常の光増幅動作時には、光増幅媒体は励起光源111から出力される励起光によって励起され、光信号利得を形成している。励起光の出力強度は一定、もしくは光増幅器100の出力光強度が一定(一定出力制御)になるように、もしくは光増幅器100の信号利得が一定になるように(一定利得制御)制御されるのが一般的である。
【0005】
入力信号の消失による遮断機構は以下の通りである。入力光コネクタ101を介して入力された光信号の一部(数%程度)は、光分岐器102によって分岐され入力光検出器109によって光電変換される。制御回路110は入力光検出器109の検出した光電流が一定レベル以下になると入力光信号が消失したと判定し、励起光源111の駆動電流を制御し、光増幅媒体103に供給される励起光を低減もしくは遮断して、光増幅器の利得を減少させる。上記一定レベルは、光信号のSN比や伝送システムの構成から決まる最小信号入力レベルと、雑音レベルの中間などに設定されるのが一般的である。
【0006】
この他、入力信号が消失した光増幅器は、信号光を増幅するかわりに自然放出光雑音(ASE:Amplified Spontaneous Emission)と呼ばれる広帯域の雑音光を出力する。これらの雑音光は、後続の光増幅器の入力信号検出回路や、利得一定制御や出力一定制御の光アンプを誤動作させるなどの悪影響を引き起こす可能性があり、これを防ぐためにも光増幅器を遮断する場合がある。
【0007】
出力解放による遮断機構は以下の通りである。光分岐器104は光増幅器100の出力端に設置され、光ファイバ伝送路に出力される光信号112と、逆に光コネクタ105から入力される反射光113の一部(数%程度)を分岐し、それぞれ出力光検出器107と反射光検出器108に導入する。これらの信号強度は光電変換されて制御回路110に入力され、制御回路は反射光強度の出力光強度に対する比が一定レベルを越えると出力端が解放されたと判定し、励起光源111の駆動電流を制御し、光増幅媒体103に供給される励起光を低減もしくは遮断して、光増幅器の利得を減少させる。上記一定レベルは、コネクタ解放時やファイバ切断に際して発生するフレネル反射のレベルと、光ファイバ伝送路で発生するレーリー散乱による光信号の反射レベルの中間(通常前者の方が大)に設定されるのが一般的である。
【0008】
【特許文献1】特開平7−240717号公報
【特許文献2】特開平07−190887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明の目的は、強力な励起光を用いることがあっても、誤動作することのない光増幅器を提供するものである。更には、本願発明は、強力な励起光を用いることがあっても、誤動作することのないラマン増幅器を提供するものである。
【0010】
更には、本願発明は、強力な励起光を用いることがあっても、誤動作することのない光伝送装置、あるいは光伝送システムを提供するものである。
【0011】
本願発明の主な技術的な課題を説明すれば、次の通りである。
【0012】
その一つ目は、強力な励起光を用いることがあっても、光増幅器に対する入力信号の消失を確度高く検出し、当該光増幅器を遮断あるいは出力低減することを可能にせんとするものである。光増幅器のこの正確な動作によって、光の再入射時の光サージを防止することが出来る。
【0013】
本願発明の主な技術的な課題の二つ目は、強力な励起光を用いることがあっても、光増幅器における出力信号の解放を確度高く検出し、当該光増幅器を遮断あるいは出力低減することを可能にせんとするものである。光増幅器のこの正確な動作によって、不必要な光の射出を防止することが出来る。
【0014】
本願発明のより好ましい目的は、前記第1及び第2の技術的課題を共に解消した光増幅器を可能ならしめんとするものである。併せて、本願発明の光増幅器は、誤動作のない光伝送装置、あるいは光システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、大きくは三つの基本的な形態を有する。
【0016】
本願発明の第1の形態は、励起光の除去手段、除去部材、例えばフィルタを用いる形態である。これには、種々の実施の形態が考えられるが、代表的には例えば、光増幅器などの光装置の、入力検出回路や出力検出回路に対して、励起光の除去フィルタを挿入する形態である。前記入力検出回路及び前記出力検出回路の双方に対して励起光の除去手段を用いることによって、前記第1及び第2の技術的課題を共に解消することが出来る。あるいは、ラマン励起光の出力端等からの反射光を検出する場合は、この反射光の受光器への経路に同様の励起光の除去手段を用いることは有用である。
【0017】
励起光の除去手段はフィルタに限らず、例えば、合波器などを用いることも可能である。この場合、当該合波器が励起光、例えばラマン光を除去し、所望の信号光を透過する特性を有することは云うまでもない。
【0018】
本合波器は、光検出器に到達するラマン励起光の強度を、検出すべき光信号強度の1/2以下に減衰せしめるラマン励起光透過率を有することが好適である。
【0019】
本願発明の第2の形態は、励起光のON/OFF等、励起光の状態に応じて、入出力検出回路の検出閾値を変化させる形態である。前記入力検出回路及び前記出力検出回路の双方に対して検出閾値を変化させる方策を用いることによって、前記第1及び第2の技術的課題を共に解消することが出来る。
【0020】
本願発明の第3の形態は、励起光自身の強度を調整する形態である。その代表的形態は、励起光を入出力の解放の有無の検出に使用する形態である。
【0021】
更に、これらの基本的形態に加えて、励起光の立ち上げ方や逆方向励起光を用いた監視情報伝達方法を組み合わせて用いることも可能であり、本願発明の目的に有用である。
【0022】
以下、上述の3つの代表的な形態を軸に、本願発明の諸形態を詳しく説明する。
【0023】
尚、本願発明の対象となる装置、光システムは、強力な励起光、例えば信号光に比較して強力な励起光を用いる光装置、あるいは光システムに関する。この強力な励起光は、ラマン光が代表的な例である。しかし、本願発明の適用可能な光装置、その部材あるいは光システムなどは多岐に渡るので、ここに、その主なものを列挙し例示する。ここに具体的に列挙した以外の光装置あるいは光システムにおいて、本願に開示の発明思想を適用できる光装置あるいは光システムは当然本願発明の範囲である。
(1)光増幅器としては、光ファイバ増幅器、半導体光増幅器、光ファイバ・ラマン増幅器、集中定数型ラマン増幅器などを挙げることが出来る。ここで、光ファイバ・ラマン増幅器とは、ラマン光を光伝送路、光ファイバに導入し、この光伝送路、光ファイバ中で、誘導ラマン効果によって光増幅を行うものである。本願明細書では、このラマン光を光伝送路、光ファイバに導入する手段、装置の部分を光ファイバ・ラマン増幅器と称することとする。
(2)光ファイバ・ラマン増幅器用の励起光源。
(3)光ファイバ・ラマン増幅器を縦列接続した各種光増幅器あるいは光システム。
(4)ラマン励起光が入力される光増幅器。例えば、光ファイバ・ラマン増幅器用の励起光の入力部を有する光増幅器。
(5)上記各光増幅器を有する光装置、光伝送装置、光中継機。
(6)上記各光増幅器を用いた光装置、光伝送装置、光中継機などを有する光システム。
【0024】
本願発明の基本的な第1の技術思想は、光増幅器の光信号の出力端からの反射光強度を検出する光検出器と出力端との間に、光ファイバラマン増幅に用いる励起光の波長を阻止し、この光信号の波長を透過する光フィルタを挿入する形態である。こうすることによって、ラマン励起光による、前記光検出器への外乱を除去するものである。また、光信号の入力端からの入力信号強度を検出する光検出器と入力端の間に、光ファイバラマン増幅に用いる励起光の波長を阻止し、この光信号の波長を透過する光フィルタを挿入すれば、同じように入力検出にも適用できる。
【0025】
あるいは、前記ラマン励起光の混入を阻止するには、次のような方策も存在する。合波器を光ファイバラマン増幅に用いる励起光の波長を阻止し、この光信号の波長を透過する役割を担わせるのである。即ち、光信号の入力部もしくは出力部もしくはその双方に、光ファイバ伝送路に向かって光ファイバラマン増幅用励起光を合波する合波器を備え、この合波器を光信号の入力端からの入力信号強度を検出する光検出器と入力端の間に配置することによって励起光の波長成分を除去できる。もしくは、この合波器を、光信号の出力端からの反射光強度を検出する光検出器と出力端の間に配置することを、もしくはその双方に配置することによっても、同様に合波器によって励起光の波長成分を除去できる。この場合、合波器が前述の光ファイバラマン増幅に用いる励起光の波長を阻止し、この光信号の波長を透過する光フィルタと類似の特性を有し、従って、合波器が前述の光フィルタと同様の働きをなしているのである。
【0026】
上記励起光の波長成分を除去する手段は、特に、光ファイバ伝送路を利得媒体とする光ファイバラマン増幅器もしくは光ファイバラマン増幅用励起光源、更には、光ファイバラマン増幅用励起光の入力部を備えた光増幅器において有効である。また、こうした光ファイバラマン増幅器、光ファイバラマン増幅用励起光源、あるいは光ファイバラマン増幅用励起光の入力部を備えた光増幅器を有する光伝送装置や光伝送システムにおいて効果を奏する。
【0027】
本願発明の第2の形態は、励起光のON/OFF等の励起光の状態に応じて、入出力検出回路の検出閾値を変化させる形態である。
【0028】
即ち、信号光の反射強度あるいは入射強度は、光ファイバ・ラマン増幅器のオン・オフ状態や励起光の出力強度に応じて変化する。従って、これに応じて入力検出もしくは出力反射光検出の判定のしきい値を、異なる複数の値に変化させることによって、雑音光の影響を低減し、より確実な入力光あるいは反射光の検出が行えるようになる。例えば、具体的な動作を例示すれば、ラマン励起光のオン・オフ信号がオンの場合、システムは、基準電圧源の大きな電圧値を用い、一方、ラマン励起光のオン・オフ信号がオフの場合、小さな電圧値を用いるのである。もって、当該光装置、光システムの誤動作を防止することが出来る。
【0029】
本願発明の第3の形態は、励起光自身の強度を調整する形態、例えば、励起光自身を入出力解放の為の検出に使用する形態である。即ち、ラマン増幅用の励起光源装置や光ファイバ・ラマン増幅器も高強度の光を出力するので、出力端からの反射光強度、もしくは出力端からの反射光強度と出力光強度の比を測定する光検出器を備えれば、本願発明の目的が達成できる。この光検出器の検出結果に基づいて、当該励起光を調節するのである。
【0030】
この調節の一例を例示すれば、励起光の強度を検出し、光信号レベルが一定以上であれば、当該光源装置の上流側のすべてのコネクタ開放がされていないことと確認できる。従って、励起光を点灯し、上流側に向けて励起光を送出する。また、動作中に上記入力信号光が一定レベル以下に低下した場合には、コネクタ開放などの状態が発生したと判断し、ラマン励起光を遮断する。このしきい値の変更は必ずしも、オンオフ2値で行う必要はなく、励起光の強度によって、連続的に可変もしくは3値以上の複数としても構わない。
【0031】
この際、これらの光検出器と出力端の間に、励起光波長を透過し、増幅される信号光波長や他の外乱光を阻止する光フィルタを配置することによって、これらの外乱光の影響を除去し、より正確な入出力解放検出が行えるようになる。これは励起光と増幅される信号光を合波する合波器と励起光源の間に、これらの光検出器を配置することによっても達成できる。
【0032】
さらに、出力端からの反射光強度もしくは出力端からの反射光強度と出力光強度比が設定値を越えた場合に、励起光を低減もしくは遮断したり、警報表示を行ったり、もしくは警報や監視情報を他の装置に転送することによって装置の安全性を高めることが可能になる。
【0033】
次に、ラマン光源よりの励起光の立ち上げ方にも工夫を施すことが可能である。即ち、励起光の立ち上げ時に、出力端からの反射光強度、もしくは出力端からの反射光強度と出力光強度の比を測定しながら励起光強度をあらかじめ弱強度で点灯する。そして、この測定値が一定値を越える場合には、励起光の強度を固定もしくは低減もしくは遮断したり、警報表示を行ったり、警報・監視情報を他の装置に転送したり、また概測定値が一定値以下の場合には、励起光強度を所定値まで増加する。こうした励起光の立ち上げ方によって、励起光のより安全確実な立ち上げ時における方法を提供できる。
【0034】
特に、光ファイバラマン増幅器においては、増幅される光信号波長での上記入力及び反射検出と、励起光波長での上記入力及び反射検出を併用することによって、より入出力解放の為の検出の確実性を高めることが可能になる。
【0035】
次に、逆方向励起光を用いた方法について説明する。光ファイバ伝送路の下流側に配置される逆進励起型の光ファイバラマン増幅器においては、信号光と逆進するラマン励起光を周波数ac(尚、ここで、aは励起光源における光ファイバ伝送路の損失係数、cは光速である。)以上で変調し、その変調成分を検出することで、ラマン励起光を用いた入出力解放検出において外乱光の影響を排除し、かつ信号光の伝送特性の劣化を避けることが可能になる。
【0036】
また、レーリー散乱成分とコネクタ端でのフレネル反射成分の区別が可能になり、さらに確実に入出力解放を判別することが可能となる。概変調成分は上流側の光伝送装置の入出力の解放状態を検出や、上流側の光伝送装置に情報伝送にも共用することが可能である。
【0037】
なお、光ファイバ伝送路の上流側に配置された並進型の光ファイバラマン増幅器において同様の技術を適用する場合には、変調振幅を十分小とすれば伝送信号の劣化を最小限にとどめ、上記と同様の目的を達成することが可能となる。
【0038】
また、光ファイバ伝送路の上流側に配置される光増幅器においては、光ファイバ伝送路の下流側に配置されたラマン増幅器の励起光強度を測定し、この光強度があらかじめ設定した光強度範囲内の場合には光信号出力もしくは概光増幅器の励起光を点灯、もしくは増加もしくは一定に維持することを、またこの光強度が上記範囲を逸脱した場合には光信号出力もしくはこの光増幅器の励起光を低減もしくは遮断することをによって、より安全・確実な励起光の立ち上げ・遮断方式を提供できる。これは上流側の光増幅器が光ファイバラマン増幅器の場合でも同様であり、また、立ち上げ時には下流側から送るラマン励起光が励起強度が低減状態であればより安全性が高い。
【0039】
また、逆に光ファイバ伝送路下流側に配置される光ファイバラマン増幅器においては、上流側から送信される信号光もしくはラマン励起光の強度を測定し、概光強度があらかじめ設定した光強度範囲内の場合にはラマン励起光を点灯、もしくは増加、もしくは一定に維持することを、また概光強度が上記範囲を逸脱した場合には光信号出力を低減もしくは遮断することによって、同様に安全性の高い立ち上げ・遮断方式を提供できる。
【発明の効果】
【0040】
本願発明は、強力な励起光を用いることがあっても、誤動作することのない光増幅器を提供することが出来る。本願発明は、更には、強力な励起光を用いることがあっても、誤動作することのないラマン増幅器を提供することが出来る。
【0041】
本願発明は、更には、強力な励起光を用いることがあっても、誤動作することのない光伝送装置、あるいは光伝送システムを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
<本願発明の基礎となる諸難点の考察>
本願発明の具体的な実施の形態を例示する前に、本願発明を提出するに到った本発明者らの検討、考察等について説明する。
【0043】
前記従来の技術の欄に略述したように、これまでの光増幅器において、入力信号の消失を検出して光増幅器を遮断する目的は、主として光増幅器の光サージを防止するためである。
【0044】
それは、エルビウム・ドープ・ファイバー・アンプ(EDFA)のように反転分布を利用した光増幅器では、入力信号が消失した状態では、前記EDFAにおける上の準位のキャリアが消費されず、光信号利得が上昇しきった状態となる。この状態の光増幅器に光信号が再び入力されると、光信号の立ちあがり部分が先鋭化し、ピークパワーの高い光パルス(光サージ)を生ずる可能性がある。特に、このような光サージは、複数の光増幅器が縦続接続された多中継光伝送においては、光増幅器を通過するたびにピークパワーが増し次第に成長していき、最終的には受信端に接続された光受信機などの光デバイスや、光コネクタを破壊してしまう可能性がある。このため、入力信号が消失した場合には光増幅器の励起光や励起電流を遮断あるいは低減し、光サージの発生を抑圧することがある。
【0045】
更に、前述のごとく、出力解放を検出して光増幅器を遮断する目的としては、作業者の保護や解放点のコネクタ焼損防止などである。この遮断は、最近の波長多重伝送においては、光増幅器の出力信号強度は数100mWにも達するため、特に重要である。尚、ここで、出力解放とはコネクタの解放やファイバーの切断などを意味する。また、出力解放された部位(以下、出力解放点と略称する)が、再び接続されたときに発生する光サージを防止するなどの効果もある。
【0046】
しかし、本願発明者らは、従来型の光増幅器をラマン増幅器と組み合わせて用いる場合を種々検討した結果、上記の効果を有するにも係わらず、次のような難点があることを見出した。こうした観点に基づき、本願諸発明を提供するものである。
【0047】
こうした従来型の光増幅器においては、ラマン増幅器と組合わせて用いた場合は、即ち、強力な励起光を用いる場合、その遮断機構が正常に動作しない場合がある。この理由は、主に次の2つである。
(1)光ファイバ伝送路を利得媒体とするラマン増幅器は、光ファイバ伝送路に強いラマン励起光を入力するため、この励起光によりEDFAなどの従来の光増幅器に用いられている上記入力検出あるいは出力解放検出等が誤動作してしまうことである。
(2)また、ラマン励起光の有無によって、信号利得が発生し信号強度自身が変化してしまうことである。このことによって、光増幅器が誤動作を起こすのである。
【0048】
これらの難点は、強力な励起光を用いることに基づく特異性によるものである。図2及び図3に示す従来の技術を参酌して、この特異性について考察する。
【0049】
難点の第1の例は、強力な励起光を用いた場合、信号光の反射光強度と励起光の残存強度はほぼ等しくなってしまい、正常なコネクタ解放の為の検出が行えなくなるという問題である。
【0050】
図2の例を用いて問題点を説明する。例えば、図2では光増幅器100の下流側に、光ファイバ伝送路106を介して、光ファイバラマン増幅器120が接続されている。光ファイバラマン増幅器120では、合波器122を介して励起光源121よりの光を波長合波し、励起光源121から出力される励起光123を光ファイバ伝送路106中に導いている。励起光123は信号光よりおよそ100nmほど短波長の無変調光であり、信号光に対し逆向きに進行している。従って、光ファイバ伝送路106中で、誘導ラマン効果により信号光を増幅する。
【0051】
尚、前述したように、ラマン増幅は、実際には光ファイバ伝送路中で行われるが、本願明細書では、信号光とラマン励起光を合波する機能を持つ装置を「光ファイバラマン増幅器」と称する。また、図中で黒塗りの矢印(112など)は光信号もしくは光信号の反射成分を、また白抜きの矢印はラマン励起光(123など)もしくはその反射成分を示している。また、合波器および分波器は、励起光や信号光の波長の差を利用して、低損失で合波・分波する機能を有する素子であるとする。
【0052】
励起光123は、光ファイバ伝送路106により損失を受けるものの、その一部がコネクタ105まで到達し、信号光の反射光113と一緒に反射光検出器108に到達する。例えば、励起光の出力レベルを25dBm、光ファイバ伝送路の損失を30dBとすると、出力コネクタ105に入力される光強度は−5dBmとなる。一方、光増幅器100の信号光出力が10dBm、信号光のフレネル反射率を−14dBとすると、フレネル反射光強度と励起光の残存強度はほぼ等しくなってしまい、正常なコネクタ解放の為の検出が行えなくなるという問題が生じる。
【0053】
次に、難点の第2点は、ラマン増幅器を他の光増幅器と縦続配置で用いた場合、従来の光増幅器においてもラマン増幅器においても入力信号の検出あるいは出力解放の検出が困難になるという問題である。
【0054】
図3の形態を考察してみよう。図3は光ファイバ伝送路106の上流側に、光増幅器100−1と光ファイバラマン増幅器(並進励起型)130を、また下流側に光ファイバラマン増幅器(逆進励起型)120と光ファイバ増幅器100−2を配置した例である。
【0055】
例えば、反射光検出器108は、本来、光コネクタ105、134、135などで生じた反射光113を検出するはずである。しかしながら、ラマン励起光133のレーリー散乱光や、下流側からのラマン励起光123の残留分133’が、合波器132を通過し、反射光113に漏れこむ可能性がある。合波器132には、通常、波長分離度30dB〜40dB程度のものが使用される。しかし、ラマン励起光の光強度はきわめて高いため、光信号の波長数が少なく光信号強度が低い場合など、反射光検出器108を誤動作させる場合がある。また、ラマン増幅の方式によっては、励起効率を向上させるために、光ファイバ伝送路106の途中に励起光を反射する励起光反射グレーティングを配置する手法などが知られている。このような場合には、励起光の反射率がより強くなるため誤動作が起こりやすくなる。
【0056】
また、前述の各図では省略しているが、光ファイバラマン増幅器130、120も入力検出や出力解放検出を設けることが考えられる。しかし、これらの回路が、同様に他方のラマン光増幅器によって誤動作する可能性がある。
【0057】
また、光増幅器100−2の入力検出回路109も同様にラマン励起光によって誤動作する可能性がある。
【0058】
入力検出器109での入力信号の有無の識別しきい値は、システム構成にも依存するが、通常−20dBm〜−40dBmと低い値である。このため、合波器122における波長の分離度が高くとも、励起光の反射や残留成分によって誤動作する可能性が高くなる。特に、光ファイバラマン増幅器120が用いられない場合には大きな問題となる。
【0059】
また、光ファイバラマン増幅器を用いた場合には、ラマン励起光源131、121のオン・オフによって信号光のレベルが変動してしまうため誤動作を招く可能性がある。
【0060】
<主な発明の実施の諸形態>
本願発明者らのこれら諸検討に基づき、本願は、光増幅器(尚、ここでの光増幅器には前記ラマン増幅器を含むことを、念の為、注記する)の入力検出法や出力解放の検出法、またラマン増幅器の特異性を考慮した光増幅器の立ち上げや遮断方法に関して、新たな諸発明を提供する。
【0061】
以下、本願発明は多岐に渡るので、その主な実施の諸形態を列挙する。
【0062】
本願の第1の実施の形態は、1波長もしくは波長多重された光信号を増幅する光増幅器において、光信号の出力端からの反射光強度を検出する光検出器と出力端の間に、光ファイバラマン増幅に用いる励起光の波長を阻止し、概光信号の波長を透過する光フィルタを挿入することを特徴とする光増幅器である。ラマン励起光除去部材としては、信号光を透過し、ラマン励起光を取り除く機能があれば、誘電体多層膜や光ファイバ・グレーティング、ガラス導波路などどのような光フィルタでも用いることができる。ラマン励起光除去部材を、個別の部品として取り扱っているが、同様の機能があればその機能を他の部品の一部に組み込んだりしても問題ない。この側面は、以下の諸例においても同様である。
【0063】
本願の第2の実施の形態は、1波長もしくは波長多重された光信号を増幅する光増幅器において、光信号の入力端からの入力信号強度を検出する光検出器と入力端の間に、光ファイバラマン増幅に用いる励起光の波長を阻止し、概光信号の波長を透過する光フィルタを挿入することを特徴とする光増幅器である。
【0064】
本願の第3の実施の形態は、1波長もしくは波長多重された光信号を増幅する光増幅器において、光信号の入力部もしくは出力部もしくはその双方に、光ファイバ伝送路に向かって光ファイバラマン増幅用励起光を合波する合波器を備え、合波器を光信号の入力端からの入力信号強度を検出する光検出器と入力端の間に配置することを、もしくは概合波器を光信号の出力端からの反射光強度を検出する光検出器と出力端の間に配置することを、もしくはその両方に配置することを、特徴とする光増幅器である。
【0065】
本願の第4の実施の形態は、前記第1、2、3の光増幅器を含み、光ファイバ伝送路を利得媒体とする光ファイバラマン増幅器もしくは光ファイバラマン増幅用励起光源もしくは光ファイバラマン増幅用励起光の入力部を備えたことを特徴とする光増幅器、光伝送装置、および光伝送システムである。
【0066】
本願の第5の実施の形態は、前記第1、2、3、4の光増幅器、光伝送装置、光伝送システムにおいて、光ファイバラマン増幅器のオン・オフ状態や励起光の出力強度に応じて、入力検出もしくは出力反射光検出の判定のしきい値を異なる複数の値に変化させることを特徴とする、光増幅器、光伝送装置、もしくは光伝送システムである。
【0067】
本願の第6の実施の形態は、ラマン増幅用の励起光を送出する励起光源装置、もしくは、光ファイバ伝送路にラマン増幅用励起光を送出する光ファイバラマン増幅器において、励起光の出力端からの反射光強度、もしくは励起光の出力端からの反射光強度と出力光強度の比を測定する光検出器を備えたことを特徴とする励起光源装置、もしくは光ファイバラマン増幅器である。
【0068】
本願の第7の実施の形態は、前記第6の励起光源装置、もしくは光ファイバラマン増幅器において、励起光の出力端からの反射光強度を検出する光検出器もしくは出力光強度を検出する光検出器と、励起光の出力端の間に、この励起光波長を透過し、増幅される信号光波長もしくは他の光ファイバラマン増幅器の励起光波長もしくは他の外乱光を阻止する光フィルタを配置することを、もしくはこの励起光と増幅される信号光を合波する合波器と励起光源の間に、この反射光強度検出器もしくは概出力光検出器もしくはその双方を配置することを、特徴とする励起光源装置、もしくは光ファイバラマン増幅器である。
【0069】
本願の第8の実施の形態は、前記6ないし7の励起光源装置もしくは光ファイバラマン増幅器において、出力端からの反射光強度もしくは出力端からの反射光強度と出力光強度比が設定値を越えた場合に、励起光を低減もしくは遮断することを、もしくは警報表示を行うことを、もしくは警報や監視情報を他の装置に転送することを、特徴とする励起光源装置、もしくは光ファイバラマン増幅器である。
【0070】
本願の第9の実施の形態は、前記第6、7、ないし8の光ファイバラマン増幅器の励起光立ち上げ時に、出力端からの反射光強度、もしくは出力端からの反射光強度と出力光強度の比を測定しながら励起光強度をあらかじめ弱強度で点灯し、この測定値が一定値を越える場合には、励起光強度を固定もしくは低減もしくは遮断することをもしくは警報表示を行うことをもしくは警報・監視情報を他の装置に転送することを、また前記測定値が一定値以下の場合には、励起光強度を所定値まで増加させることを、特徴とする励起光源装置、もしくは光ファイバラマン増幅器である。
【0071】
本願の第10の実施の形態は、前記第6、7、8、ないし9の光ファイバラマン増幅器において、前記第1、2、3、4、ないし5の、光信号波長の入力検出もしくは反射光検出、もしくはその双方を持つことを特徴とした光ファイバラマン増幅器である。
【0072】
本願の第11の実施の形態は、光ファイバ伝送路の下流側に配置され、光ファイバ伝送路の上流側に向かって励起光を送出して光信号増幅を行う光ファイバラマン増幅器において、励起光源を周波数ac(aは励起光源における光ファイバ伝送路の損失係数、cは光速)以上で強度変調することを特徴とした光ファイバラマン増幅器でえある。
【0073】
本願の第12の実施の形態は、前記第11の形態において、変調成分を、光ファイバラマン増幅器もしくは上流側に配置された光伝送装置の入出力解放検出に用いることを、もしくは上流側の光伝送装置に情報伝送することを、特徴とした光ファイバラマン増幅器もしくは光伝送装置である。
【0074】
本願の第13の実施の形態は、光ファイバ伝送路の上流側に配置され、光ファイバ伝送路の下流側に向かって励起光を送出して光信号増幅を行う光ファイバラマン増幅器において、励起光源を周波数ac(aは励起光源における光ファイバ伝送路の損失係数、cは光速)以上で小信号強度変調し、概変調成分を検出して出力の解放状態を検出することを、もしくは下流側に配置された光伝送装置で入力解放検出を行うことを特徴とした、光ファイバラマン増幅器、もしくは光伝送装置である。
【0075】
本願の第14の実施の形態は、光ファイバ伝送路の光信号伝送方向の上流側に配置される光増幅器において、光ファイバ伝送路の下流側に配置されたラマン増幅器の励起光強度を測定し、光強度があらかじめ設定した光強度範囲内の場合には光信号出力もしくは光増幅器の励起光を点灯、もしくは増加もしくは一定に維持することを、また概光強度が上記範囲を逸脱した場合には光信号出力もしくは概光増幅器の励起光を低減もしくは遮断することを、特徴とした光増幅器である。
【0076】
本願の第15の実施の形態は、光ファイバ伝送路下流側に配置される光ファイバラマン増幅器において、上流側から送信される信号光もしくはラマン励起光の強度を測定し、光強度があらかじめ設定した光強度範囲内の場合にはラマン励起光を点灯、もしくは増加、もしくは一定に維持することを、また光強度が上記範囲を逸脱した場合には光信号出力を低減もしくは遮断することを、特徴とした光ファイバラマン増幅器である。
【0077】
<本願発明の実施例>
第1の実施形態は、励起光の除去用のフィルタを用いる形態の例である。図1は、本願発明の第1の実施形態を示す構成図である。わけても、本例は本願発明に係わる光増幅器140の構成例を示している。即ち、本例では、光増幅器140と励起光を発生する光ファイバラマン増幅器120とが光ファイバ伝送路106で接続されている。尚、ここで、図中の略号について略述する。これらの略号は全ての図において同じ意味で用いられている。LDはLaser Diode、PDはPhoto Diode、CTL、CTRLはControl Circuit、EDFはErbium Doped Fiber、BPFはBand−Pass Filterの略号である。
【0078】
信号光200は光増幅器140で増幅されたのち、光ファイバラマン増幅器120よりのラマン励起光123によって、光ファイバ伝送路106にて、再度増幅される。そして、この増幅された信号光201は光ファイバラマン増幅器120の出力端211より出力される。
【0079】
光増幅媒体103の入力側には、光分岐器102が配され、入力光200の分岐光が入力光を検出する入力光検出器109に入力される。入力光検出器109による検出結果は制御回路110に伝達され、励起光源111の出力等を制御する。一方、光増幅媒体103の出力側には、光分岐器104が配され、出力端105に光信号を伝達すると共に、この光分岐器104より分岐された光を出力光検出器107に入力する。光の分岐比は数%、例えば1%より10%程度である。そして、入力光検出器107による検出結果は制御回路110に伝達され、励起光源111の出力等を制御する。更に、光分岐器104を通して、出力端105よりの反射光113を、反射光検出器108に入力される。そして、入力光検出器108による検出結果は制御回路110に伝達され、励起光源111の出力等を制御する。こうして、当該光増幅器140は、励起光の出力強度を一定に制御すること、あるいは光増幅器140の出力強度を一定に制御すること、あるいは光増幅器140の信号利得が一定になるように制御することなど、所望に制御されている。尚、制御回路110の具体例は後述されるが、こうした制御系の一般的な制御は通例の方法に従って十分であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0080】
さて、本願発明の特徴点は次の通りである。光増幅器140は、入力光コネクタ101から入力された光信号200を光増幅媒体103で増幅して、出力光コネクタ105から光ファイバ伝送路106に出力する。この出力光コネクタ105後に、光ファイバラマン増幅器120が接続されている。従って、光信号112は出力光コネクタ105に達するが、反射光113が生ずる。反射光の検出器108の直前には、ラマン励起光の除去用のフィルタ(以下、このフィルタをラマン励起光除去用フィルタと略記する)142が配置され、反射光113に漏れこむ残留ラマン励起光123を除去している。
【0081】
このラマン励起光除去フィルタ142は、光増幅器140が増幅すべき波長の光信号を透過し、ラマン励起光を除去する機能を持っている。従って、ラマン増幅器120を用いた場合にも、信号光112の反射光113の強度を正確に測定し、正しい出力解放検出を行うことが可能となる。なお、通常ラマン増幅に用いる励起光は信号波長から約100nm短波長側になるので、両者は波長フィルタリングによって、容易に分離することが可能である。例えば、光信号の波長が1550nmの場合、ラマン励起光の波長はおよそ1450nmとなる。また、ラマン増幅器を用いない場合でも、通常の光増幅器としての動作に影響を及ぼすことはない。
【0082】
本例では、入力光検出器109と入力コネクタ101の間にも、ラマン励起光除去フィルタ141を配置している。本実施形態では光ファイバ下流側から逆進励起する場合の信号のみを具体的に示したが、このようにあらかじめ、光増幅器内の入力光検出部と反射光検出部などに、ラマン励起光を除去する光フィルタを挿入しておけば、将来、光ファイバ・ラマン・アンプを用いる場合や、異なるシステム構成においても同じ光増幅器を共用できるという利点がある。
【0083】
本実施形態では、入力光検出と反射光検出の両機能を持つ例を示したが、どちらか一方の場合でも問題なく本願発明を適用できる。また、入力光検出と反射光検出はシステム形態などによって要求仕様が異なるため、システムの仕様によって、どちらか一方にのみ本願発明を適用しても構わない。
【0084】
なお、広帯域波長多重信号の増幅の場合、信号波長も複数の波長多重された光信号に、また励起光源としても複数の波長の異なる励起光を波長多重して用いられる場合がある。このような場合にも本願発明は問題なく適用可能である。
【0085】
利得媒体103としては、最も広く用いられる1550nm帯のEDFAのほかに、1580nm帯などの長波長帯EDFA、1.3μm帯などの波長の異なる光ファイバアンプ、もしくは半導体光増幅器、高非線型ファイバなどを利用した集中定数型のラマン増幅器、入力光・反射光検出機能がある光増幅器であれば、どのような光増幅器にも適用可能である。なお、光ファイバ伝送路自身を利得媒体とする光ファイバラマン増幅器については、その特異性を考慮した実施形態を別に示した。
【0086】
また、ラマン励起光除去フィルタ141及び142としては、信号光を透過し、ラマン励起光を取り除く機能があれば、誘電体多層膜や光ファイバ・グレーティング、ガラス導波路などどのような光フィルタでも用いることができる。また、信号光波長と励起光を波長合波する合波器もこの用途に適用できる。
【0087】
ラマン励起光は一般に数100mWと非常に強力であるため、光フィルタの位置によっては、フィルタによって除去すべき光強度が非常に強くなる場合がある。このような場合でも、非吸収型の光フィルタを用いたり、十分に光信号の断面積を広げておけばフィルタの破壊を防ぐことができるので問題はない。また、本願発明においては、ラマン励起光除去フィルタを、個別の部品として取り扱っているが、同様の機能があればその機能を他の部品の一部に組み込んだりしても問題ない。例えば、光検出器そのものにラマン励起波長を阻止する機能や光フィルタを付加したり、入力検出や反射検出を行う光分岐器にラマン励起波長での阻止特性を賦与しても、基本的には本願発明に含まれるものであることに、念の為言及しておく。
【0088】
ラマン励起光除去フィルタ141及び142の挿入位置は、本機能を満足しさえすれば、必ずしも、入力光検出器109、反射光検出器108の直前である必要はない。例えば、入力コネクタ101と光分岐器102の中間、光分岐器104と出力光コネクタ105の中間などに配置しても構わない。この場合、若干信号光の損失は増加するものの、漏れこんだラマン励起光が光増幅媒体103の増幅動作に影響を与えにくいなどの利点がある。
【0089】
また、本願発明で合波器とした部分は、励起光と信号光を合成する機能を持てば、必ずしも波長に依存しない合波方法も適用可能である。例えば、信号光・励起光に3dB程度の損失が許容可能であれば、1:1光カプラ型の光分岐器を用いたり、また励起光と信号光の進行方向や偏波が異なる場合には、光サーキュレータや偏波ビームスプリッタなどによって低損失に合波することも可能である。このような場合にも、入力光検出器や反射光検出器における励起光と信号光の分離度が十分に得られない場合には、本願発明が有効となる。
【0090】
励起光除去部材を用いた別な例を第2の実施形態として示す。図4は、本願発明の第2の実施形態を示す構成図である。図は、光ファイバ伝送路の上流側と下流側の双方に、それぞれ信号光と並進励起、逆進励起の光ファイバラマン増幅器を適用した例である。
【0091】
尚、図4には、本願発明に直接係わる主要な部分のみ表示した。光増幅器が、励起光の出力強度を一定に制御すること、あるいは光増幅器140の出力強度を一定に制御すること、あるいは光増幅器140の信号利得が一定になるように制御することなど、所望に制御されていることは、前記実施の形態1に例示した通りである。これらの諸点の詳細説明は省略する。以下に示す諸実施例においても同様に本願発明に直接係わる主要な部分のみ表示する。
【0092】
光増幅器140−1で増幅された光信号は、光ファイバラマン増幅器130に入力される。光信号は、合波器132で、ラマン励起光源131から出力された励起光133と合波された後に、光ファイバ伝送路106に入力される。
【0093】
また、光ファイバ伝送路106の他端では、光ファイバラマン増幅器120内部でラマン励起光源121から出力された励起光123が、合波器122を介して信号光と逆方向に入力されている。光ファイバラマン増幅器120を通過した光信号は、光増幅器140−2でさらに増幅される。
【0094】
本実施形態においては、光増幅器140−1の反射光検出器108、光増幅器140−2の入力光検出器109の直前に、ラマン励起光除去フィルタ142、141が挿入されており、漏れこんだラマン励起光による光増幅器遮断回路の誤動作を防いでいる。例えば、励起光除去フィルタ141は、入力光検出器109に漏れこむ光信号から、光ファイバ伝送路を通過したラマン励起光133の残留成分、ラマン励起光123の反射成分を除去している。
【0095】
本構成においては、励起光を波長合波する合波器122が、励起光の漏れこみ光を減少する効果持っているが、この値は通常−30〜−40dB程度であり、必ずしも十分とは言えない。例えば、励起光出力が+25dBm、光ファイバ伝送路106のレーリー散乱による光反射率が−24dB、合波器の励起光除去効果が−35dBとすると、光ファイバ増幅器100−2に入力される励起光強度は、−34dBmとなる。この値は、例えば、光プリアンプを用いた10Gbit/sの光受信機の受信感度(誤り率10−12)に相当する。この値は、システム構成や誤り訂正回路を用いたシステムにおいては、光信号自身の入力レベルに近い場合もあり、本願発明を適用しない場合には入力光検出回路109を誤動作させる可能性がある。また、光ファイバ・ラマン・アンプ120に出力解放検出回路がついていない場合や、出力解放検出回路が誤動作した場合、入力コネクタ124などが解放されると、入力光検出回路109にはさらに10dBほど強い反射光が入力されてしまう。どちらの場合も、信号光入力が無い場合に有りと誤認し、光増幅器100−2が正常に遮断されなくなってしまう。本願発明では、励起光除去フィルタにより励起光のレベルを、さらに数10dB下げ、このような事態を防ぐことが可能となる。
【0096】
また、光ファイバラマン増幅器120を使用しない構成の場合には、ラマン励起光133の残留成分が、光ファイバ増幅器140−2に入力されてしまう。この場合にも、励起光除去フィルタ141によって誤動作を防ぐことが可能になる。このように本願発明を適用した光増幅器は、ラマン増幅器の位置や個数の異なるシステム構成においても、常に入力検出回路が正常に動作するという利点がある。
【0097】
すべての実施形態において共通であるが、本願発明の適用には必ずしも図中に示した全ての光増幅器や、光ラマン増幅器が必須なわけではない。例示した図は光増幅器や光ラマン・ファイバ増幅器などの接続状態を例示したものである。
【0098】
例えば、上記第2の実施形態においては、光増幅器140−1、140−2のどちらかが存在しない場合や、ラマン増幅器120、130のどちらかもしくは双方が存在しない構成がありうる。また、逆にさらに別の光増幅器を多段接続したりするような構成や、複数の光ファイバ伝送路を中継伝送する構成も考えられるが、本願発明の適用には問題がない。例えば、まったくラマン増幅器が存在しない場合においても、光増幅器140−1、140−2中にあらかじめラマン励起光除去フィルタ141、142を配置しておくことによって、将来ラマン増幅器が適用された場合に光増幅器140−1、140−2の遮断回路が誤動作しないように備えておくことができる。更に、この形態は、また装置構成を統一・共用化をはかることが可能となるという利点がある。
【0099】
第3の実施の形態は、励起光除去フィルタを用いた別な例である。図5は、本願発明の第3の実施形態であり、複数の帯域の光信号を帯域分割して伝送する光伝送システムの構成を示している。
【0100】
本実施形態では1.3μmと1.5μm帯との2つの波長帯域を仮定している。1.5μm帯の光信号は、EDFAなどの光増幅器140−1、140−2によって、また1.3μm帯の光信号は光ファイバラマン増幅器130、120によってそれぞれ増幅されている。即ち、この場合、光ファイバ106等において誘導ラマン効果によって光が増幅される。両波長の光信号は合分波器143−1によって合波されて光ファイバ伝送路106中を伝送され、再び合分波器143−2によって分波される。1.3μm帯の増幅に用いる励起光源121、131の波長はおよそ1.2μmである。合分波器143−1、143−2の波長分波特性は、必ずしも1.2μm帯で十分な波長分離特性が得られるようには設計されていない場合、他の実施例同様、ラマン励起光が光増幅器140−1、140−2の入力光や出力反射光検出回路に影響を及ぼす可能性がある。本実施例では、反射光検出回路108、入力光検出回路109の直前に、波長1.2μm付近を除去するラマン励起光除去フィルタ142、141を挿入して誤動作を防止している。
【0101】
なお、波長帯の組合せや、ラマン増幅を適用する波長帯は必ずしも本例に限らない。図5では例えば1.3μm帯の増幅をPDFAなどの1.3μm帯光ファイバ増幅器で、また1.5μm帯の光増幅器の前後にさらに光ファイバラマン増幅器を適用するなどの構成も考えられる。これらの場合にも本願発明はまったく同様に適用が可能である。この場合、ラマン励起光の波長1.4μmと両帯域の中間近くになるので、合分波器143−1、143−2のみで十分な波長分離を行うのが困難となり、より本願発明の必要性が増す。
【0102】
これまで、励起光除去フィルタを用いた例を説明して来たが、制御回路110の構成例を例示しよう。前記の励起光除去フィルタを用いた例への適用の場合を説明する。
【0103】
図6は、本願発明における制御回路110を、電子回路で構成した例である。本例の制御回路は、図1の実施形態に対応し、3つの光検出器で測定した入力光強度信号150、反射光強度信号151、出力光強度信号152が入力となっている。入力光強度信号150は、コンパレータ154−1に入力されており、この値が基準電圧源153−1に設定された基準入力レベルより大の場合、すなわち信号光入力がある場合には、コンパレータ154の出力は論理値1となる。また反射光強度信号151と出力光強度信号152は、除算器155に入力され両者の比が算出される。この値は、コンパレータ154−2に入力され、基準電圧源153−2に設定された基準反射レベルと比較され、両者の比が一定以下、すなわち反射光強度が十分小さい場合にコンパレータ154−2の出力が論理値1に設定される。これら2つのコンパレ−タ154−1、154−2の出力信号はAND回路156に入力され、その論理積が論理値1の場合にのみ励起光源電流源157がオンとなり励起光源駆動電流158が出力される。すなわち、それ以外の場合には、励起電流158がオフとなり、光増幅器が遮断されることとなる。
【0104】
本例では、基本動作のみを示したが、実際の回路では雑音の影響や光サージの発生を防ぐためコンパレータの動作にヒステリシスを持たせたり、励起電流源の立ち上げに一定の遅延をかけたりする場合や、複数の励起光源を同時にもしくはその一部のみを制御する場合もある。また、本例は、あくまで実現の一例であり、例えばA/Dコンバータ、D/AコンバータとCPUの組合せにより、ほとんどの動作をプログラムで実現することもできる。
【0105】
第4の実施の形態は、前述の本願発明の第2の形態である励起光の状態に応じて、入出力検出回路の検出閾値を変化させる例である。図7は、本願発明の第4の実施形態を示す図である。この例は、励起光源用の電流源157よりの励起光源用電流158が、ラマン励起光の状態に応じて、制御回路110によって制御される例である。
【0106】
制御回路110において、ラマン励起光のオン・オフ信号160を受けて、スイッチ159によって異なる電圧の基準電圧源に153−1、153−2を切替、識別しきい値を変化させる例である。コンパレータ154−1に、入力信号強度信号150と、前記基準電圧値の信号が入力される。例えば、基準電圧源153−1は大きな電圧値、これに対して基準電圧源153−2は小さな電圧値であるとする。そして、このコンパレータ154−1よりの出力信号と制御回路110に対する他の信号がAND回路156に入力され、この出力が励起光源用電流源157を制御する。尚、光増幅器自体は、各種のものを用いることが出来る。例えば、図1の基本構成を用いることが出来る。更に、本願明細書に例示される光増幅器に適用することが出来る。勿論、こうした諸構成において、例えば、図1ではフィルタ141、142を用いず、本例の制御回路を用い、本願発明の目的を達することが出来る。他の諸例でも同様である。
【0107】
光ファイバ伝送路を利得媒体として用いたラマン増幅においては、ラマン励起光のオン・オフによって、光ファイバ中で信号波長の利得が変化するため、信号波長での反射光や入力光の大きさや雑音光の大きさが変化してしまう。例えば、光ファイバ伝送路の下流から逆進励起を行った場合には、信号波長の受けるラマン利得は10〜20dBに達し、この分だけ入力光強度信号150の大きさや、雑音光の大きさが変化する。
【0108】
従って、ラマン励起光がオンの場合には、入力光検出レベルを引き上げることにより、適切に光増幅器の遮断を行い光サージの抑圧を行うことが可能となる。即ち、ラマン励起光のオン・オフ信号160がオンの場合、大きな電圧値の基準電圧源153−1に接続される。一方、ラマン励起光のオン・オフ信号160がオフの場合、小さな電圧値の基準電圧源153−2に接続される。ラマン励起光源が故障するなどし、励起光が低下した場合には、下流の光増幅器の入力検出レベルを下げれば、必ずしも下流の光増幅器が遮断されなくなるので、信号劣化をラマン増幅器1台分の最小限のSN劣化のみに抑え、不要な信号断を防ぐことも可能となる。
【0109】
ラマン励起光のオン・オフ信号は、信号増幅に関与する励起光のオンオフ情報であれば、どのように入手や伝送を行っても構わない。例えば、ボード上の電気信号や装置間のケーブル、または監視信号などによって論理的な情報として装置間や光ファイバ伝送路をまたがって伝送しても構わない。また後述のように、別途、ラマン励起光の波長の光検出器を設け、ラマン励起光の反射強度や入力強度を検出し、これを用いて生成しても構わない。しきい値の変更は必ずしも、オンオフ2値で行う必要はなく、励起光の強度によって連続的に可変もしくは3値以上の複数としても構わない。また上記実施形態では、入力検出部にのみ適用した例を示したが、反射光検出部に適用しても構わない。
【0110】
第5の実施の形態は、前記本願発明の第3の形態である励起光自身の強度を調整する例である。図8は、本願発明の第5の実施形態を示す図である。この例は、光ファイバ・ラマン増幅器に信号光の入力強度あるいは出力反射強度を検出し、遮断する機構を取りつけた例である。
【0111】
図8の例は、光ファイバラマン増幅器136と光ファイバ・ラマン増幅器126が光ファイバ伝送路106の両端部に接続されている。信号光200が増幅された出力光210として出力される。図8において、ラマン励起光源131及び121が設けられ、これらは制御回路110−1及び110−2によって制御されている。そして、この制御にあったて、出力光検出器107、109、及び反射光検出器108よりの検出光に基づいて、前記各制御回路に制御信号が入力される。光ファイバラマン増幅器136は、光分岐器102を有し、入力光を入力光検出器109で検出する。
【0112】
本願発明で用いる光ファイバ・ラマン増幅器は、光ファイバ伝送路が利得媒体であり、光ファイバラマン増幅器として示した部分の内部には利得媒体を含まないので、信号光の入力強度と出力強度は合波器の損失などを除くと一致する。従って、以下では、特に両者の区別はせずにどちらか一方のみを測定している。
【0113】
光ファイバ伝送路の上流側の本願発明の光ファイバラマン増幅器136では、入力コネクタ134から入力される信号光の強度と反射光強度を光検出器107と108で検出し、出力コネクタ135の解放検出を行っている。
【0114】
本例では、ラマン励起光を合波する合波器132を、光信号の出力端からの反射光検出器108と出力コネクタ135の間に配置することによって励起光除去用の光フィルタを不要としている。光ファイバラマン増幅器の場合、常に励起光の合波器があるためこのような配置が可能となる。合波器132の波長分離度が低い場合や、他の波長のラマン励起光が漏れこむ可能性のある場合、もしくは合波器132と光分岐器104の位置を逆にする場合などは光検出器108、107の手前などにラマン励起光除去フィルタを挿入することが必要となる。
【0115】
このように、信号光を出力コネクタ解放検出に利用すれば、信号光に比べ極めて出力の高いラマン励起光源を点灯する前に、コネクタ解放を判定し励起光源131を点灯するかどうかを決定できる。従って、作業者の安全やコネクタ・光部品の保護の点で有利となる。また動作中に入力信号光が切れた場合にも励起光源131を遮断することにより、安全性を高め、さらに下流の機器の誤動作を防ぐことが可能となる。
【0116】
一方、光ファイバ伝送路106の下流側の本願発明の光ファイバ・ラマン増幅器126においては、信号光波長で入力光強度の検出を行っている。本例では励起光の合波器122を入力光検出部109と入力端の間に配置し、さらにラマン励起光除去フィルタ142を挿入している。特に入力光検出部109に対する入力信号の有無の判定しきい値は低いため、このような配置にすることで、ラマン励起光除去フィルタ142や波長合波器122に対する波長分離度の仕様を緩和することが可能となる。励起光除去フィルタ142の位置は分岐器102と入力光検出器109の間であっても構わない。
【0117】
このように、信号光を入力有無の判定に用いれば、高出力の励起光源121を点灯する前に確実に上流側まで、コネクタ解放部が存在しないことを確認できるので、特に外部に対する安全性を高めることが可能となる。
【0118】
また、入力光検出器109では、ラマン励起光源121の点灯前後の信号利得を測定することができるので、増幅動作の異常検出にも用いることが可能となる。また、特にこの構成においては、動作中に異常が起こり信号光が途絶えても、本ラマン増幅器が上流の光増幅器のASEなどの雑音光を増幅してしまい、入力信号が有ると誤認してしまう可能性がある。このような場合、直前の実施形態で述べたように入力検出レベルを可変にすることで問題を回避できる。
【0119】
また、逆に、ある程度以上入力信号光が強い場合には、誤接続などの異常事態や伝送路が短くラマン増幅が不要、などの状況が考えられるので、他の装置や光素子の保護のため励起光源を点灯しないなどの対策が有効となる。更に、信号光パワーが一定となるように励起光強度にフィードバック制御をかけることによって、後続の光受信機や光増幅器への入力範囲を逸脱しないようにし、部品の保護や利得の波長利得差の発生を抑制することができるようになる。
【0120】
図9は、本願発明の第6の実施例である。この例は、ラマン励起光自身をコネクタ解放検出に用いる逆進励起型の光ファイバラマン増幅器126の構成を示している。逆進励起型ラマン増幅器とは、信号光の進行方向とは逆方向にラマン励起光を進行させるタイプのラマン増幅器である。尚、図9では、光ファイバラマン増幅器の回路部分のみを示す。光ファイバ伝送路は入力光コネクタ124に接続されるが、図示は省略される。
【0121】
従って、逆進励起型ラマン増幅器においては、強いラマン励起光を光信号の入力コネクタ124に向けて出力するため、信号入力側から反射光を検出する必要がある。
【0122】
本例では、励起光と増幅される信号光を合波する合波器122とラマン励起光源121の間に、光分岐器104−1を設けて励起光の出力光と反射光の一部を取りだし、励起光反射光検出器171と励起光出力光検出器170で検出している。このように、ラマン励起光の一部及び励起光反射光を検知し、更に、入力光検知器109信号光の一部を検出し、これらの信号に基づいて制御回路110を制御する。
【0123】
こうした構成によって、例えば、出力端124でのラマン励起光が所定値以上になったことを、その反射光202で検出されると、ラマン励起光を低減あるい
は遮断する。あるいは信号光の場合も同様に、入力光検知器109信号光の一部を検出し、励起光の維持、低減あるいは遮断等の動作を行うことが出来る。しかし、本例では、ラマン励起光をコネクタ解放検出に用いることでより正確に検知、制御が可能となる。
【0124】
即ち、本例では、入力光コネクタ124から入射される信号光200は励起光反射光検出器171に到達する前に、合波器122で十分に減衰されるため、信号光の影響を排除しラマン励起光の反射光202のみによって解放検出を行うことが可能となる。
【0125】
又、後述のように、段階的にラマン励起光を増加しながら点灯する場合など、励起光強度が弱い場合には、信号光除去フィルタの適用が特に有効となる。
【0126】
逆進励起型のラマン増幅器では、ラマン励起光を入力解放検出に用いた場合、前記の入射信号光を用いる場合に対し、励起光波長で反射損失が正確に測定できるので、コネクタの不完全な接続などの場合に、確実に解放検出が行えるようになる。さらに。励起光強度は信号光の100から10000倍以上も光強度が高いため、雑音光や外乱光の影響を受けにくいという利点がある。また、励起光を点灯し信号増幅を行わないと入力検出に十分な入力信号が確保できない場合があり、この場合信号光を用いた入力検出は適用できなくなる。また信号光を用いた場合には故障による信号断と入力解放検出の区別ができなくなるなどの問題もある。
【0127】
通常、ラマン増幅に用いる励起光強度は、数100mWと極めて強いため、上記のように反射光検出の目的であっても、励起光を点灯した時点で誤接続された機器の破損や作業者に対する問題を引き起こす可能性がある。本例では更に、光信号強度を測定するためラマン励起光除去フィルタ142および入力光検出器109を併設し、まず入力信号の範囲を確認したのちに励起光を点灯することにより、少なくとも入力コネクタの誤接続や強力な励起光の外部への放射などの問題を回避している。このように入射信号検出と、ラマン励起光の反射の2重検出により極めて信頼性の高い入力解放検出が行えるようになる。
【0128】
なお、出力コネクタ125からの出力光が、危険なほど強いレベルになる場合においては、こちらにも反射光検出器を設けてもよい。また、本実施形態では、励起光出力光検出器170も別途設けているが、これは、例えば、励起光源121内部に組み込まれたモニタフォトダイオードなどや、駆動電流と励起光出力の関係曲線などで代用しても構わない。
【0129】
図10は、本願発明の第7の実施形態を示す構成図である。この例は、ラマン励起光自身を出力解放検出に用いる並進励起型の光ファイバラマン増幅器136の構成を示している。尚、図10では、光ファイバラマン増幅器の回路部分のみを示す。光ファイバ伝送路は、出力光コネクタ135に接続されるが、図示は省略される。
【0130】
並進励起型ラマン増幅器とは、信号光の進行方向とは同方向にラマン励起光を進行させるタイプのラマン増幅器である。従って、並進励起型では出力コネクタ135側からの反射光を検出する必要がある。
【0131】
本例では、励起光と増幅される信号光を合波する合波器132とラマン励起光源131の間に、光分岐器102−3を設けて励起光の反射成分の一部を抽出し、励起光反射光検出器171で反射光強度を測定している。このように、本例では、信号光の一部211、励起光反射光の一部212、及び励起光の一部213を検知し、これらの諸信号に基づいて制御回路110を制御する。符号109は入力光検知器、171は励起光反射光の検知器、170は励起光出力の検知器である。信号光200は並進励起型ラマン増幅器136の出力光214として出力され、光導波路に伝達される。一方、ラマン励起光215は並進励起型ラマン増幅器136の出力端135より出力光216として光導波路に伝達される。そして、信号光214は、ラマン光216による誘導ラマン効果によって光導波路内で増幅される。
【0132】
ところで、本例では、光分岐器、合波器、信号光除去フィルタを有している。即ち、出力コネクタ135からの励起光の反射光は、光分岐器102−2、合波器132、光分岐器102−3を通過して、励起光の反射光の一部212として、励起光反射検出器171に到達する。信号光200の波長成分は、合波器132で十分に減衰されるように設定されており、励起光成分を用いた解放検出への、信号光成分の影響を防ぐことが可能となる。
【0133】
このように、励起光成分自身を用いる利点は、波長の異なる信号光波長を使う場合にくらべ、より確実な解放検出が行える点、また、信号光に比べ数倍〜数10倍光強度の強い励起光を用いることによって、雑音光や他の外乱光の混入を受けにくい点などである。
【0134】
また、本実施形態では、励起光出力光検出器170は、別途光分岐器102−2から取りだし、信号光除去フィルタ172によって抽出した励起光成分213の強度を測定する例を示している。
【0135】
出力光検出器170の位置も必ずしもここに限るものではなく、例えば前実施形態同様光分岐器102−3の空きポートに配置してもよい。
【0136】
前記の逆進励起の場合と違い、本実施形態においては入力信号光の有無では、励起光の出力される出力コネクタ135の解放を検出できない。
【0137】
このため、本願発明では励起光の反射光検出器と出力検出器の比をモニタしながら、ポンプ光を弱強度から段階的に増加するという手段を取る。即ち、前記の反射光検出器と出力検出器の比のモニタは、図6のように、除算器を用いて反射光強度151と出力光152の比を計算するのがその例である。
【0138】
これによって、出力コネクタや作業者に危険を与えることなく、出力コネクタの解放検出を行うことが可能となる。なお、本手段は逆進励起の場合に適用してもなんら問題はない。励起光点灯途中や動作中にコネクタの解放が検出された場合には、励起光の遮断を行たり、コネクタの再接続に備えて弱強度で点灯を維持しながら反射光強度のモニタを続けるなどの措置が有効である。
【0139】
本実施形態でも、信号光強度は入力光検出器109によって測定している。信号光が一定レベル以下の場合には入力信号断などの異常状態と、また、一定レベルを超える場合には、接続ミスと考えられるので励起光を遮断したり、警報を発生し、他の装置などに異常状態を通知するのが有効である。
【0140】
次の例は、合波器を用い、この特性に励起光除去フィルタの役目を持たせた例である。図11は、本願発明の第8の実施形態である。この例は、光増幅器の入出力端の前にラマン励起光の合波用の合波器をあらかじめ内蔵した光増幅器180の構成である。この例は、逆進励起型ラマン増幅器を有する例である。逆進型励起ラマン増幅器とは、光伝送路において、信号光の進行方向とは逆方向にラマン励起光を導入し、この領域で誘導ラマン効果によって光を増幅するものである。
【0141】
図11の例は、光増幅媒体103によって入力光200を増幅する。光増幅媒体103には励起用光源111が配される。この光源111は制御回路110で制御される。この例では更に、当該光増幅180の入出力端101、105より、これらに接続された各光ファイバ等の光伝送路にラマン励起光221、223が導入される。こうして、本例の光システムでは、前記光伝送路内においても、更に誘導ラマン効果によって光が増幅されることとなる。
【0142】
逆進励起用のラマン励起光220は、ラマン励起光入力181から入力(220)されて合波器132で、信号光の経路と合波されたのち、入力コネクタ101側に接続された光ファイバ伝送路に出力(221)される。並進励起用のラマン励起光は、ラマン励起光入力182から入力(222)されて、合波器122で信号光と合波された後、出力コネクタ105側に接続された光ファイバ伝送路に出力(223)される。このように、あらかじめラマン励起用の合波器を入出力端に組み込むことによって、合波器132、122が励起光除去フィルタの役目を果たすことになる。したがって、本光中継機においてラマン励起を行うかどうかにかかわらず、常に入力光検出器109や反射検出器108、光増幅媒体103などへのラマン励起光の漏れこみを防ぐことが可能になる。本構成においても、特に入力光検出器109のようにわずかな励起光の漏れこみによっても、動作に影響が出る部分については、必要に応じて励起光除去フィルタ141を設けることができる。なお、このようにあらかじめ合波器を内蔵する構成はプリアンプ・ポストアンプなどに適用したり、逆進・並進どちらか一方のラマン励起光合波用の合波器のみを内蔵したりしてもかまわない。
【0143】
次に波長多重励起用光源の例を示す。こうした光源を光増幅器と別体に構成し、これまで述べてきた光増幅器の励起用光源に用いることが出来る。図12は、こうした例で、本願発明の第9の実施形態で、励起光源装置183の構成を示している。この光源は、例えば、図11の励起光源入力181、182に接続して使用するものである。
【0144】
本例は、波長多重励起の構成を示している。波長の異なるラマン励起光源121−1と121−2とを有し、これらの各出力光300、301は、ラマン励起光合波器184で合波されたのち、光分岐器104を介して、ラマン励起光出力185に接続されている。ラマン励起光の一部302は、励起光出力光検出器170に、またラマン励起光出力185から戻る反射光の一部303は、励起光反射光検出器171に導かれる。ここで、これらの光302及び303は波長多重の光である。制御回路110は、両光検出器の出力信号の比をモニタしており、反射光の強度がある一定値を越えた場合には、励起光を遮断する機能を持つ。また、励起光の立ち上げ時には反射光強度をモニタしながら、段階的に励起光を点灯する。
【0145】
本装置を図11の光増幅器の励起光入力181と接続した場合、励起光出力185に限らず、励起光入力181や入力コネクタ101などの点で発生した励起光の反射光も問題なく検出できる。さらに、他の波長帯の信号の漏れこみを避けたい場合などには、これらの波長の光を除去する光フィルタを組み込めばよい。
【0146】
このように、励起光源を別装置とし反射光検出器を組み込むことによって、高価なラマン励起光源を増設を必要時にのみ増設することが可能となり、また装置の運用中にも交換が可能になるという利点がある。複数の光中継器を用いた多中継伝送においては、必ずしも1箇所のラマン増幅器の故障が、全光信号の致命的なSN劣化を引き起こすわけではないので、運用中に交換可能な構成には大きな利点がある。また、必ず励起光と信号光の合波部分と励起光源の間で反射検出が行えるようになるため、余分な光フィルタを除去し構成を簡素化できるという利点もある。さらに励起光源の制御部分と、信号光の制御部分を完全に分離できるため装置間の信号の受け渡しや制御アルゴリズムを簡素化することが可能になる。
【0147】
なお、本実施例に限らず、光信号や励起光の入出力部分やコネクタ部分はそれぞれ、光ファイバコネクタであっても、ファイバ素線をスプライスする構成などの手段、もしくは空間中でコリメートされた光信号をレンズ系で結合するような部分があっても構わない。いずれの場合でもこれらの点で異常な反射や損失があれば本願発明の反射検出手段は問題なく動作する。
【0148】
また、本実施例に限らず、ラマン励起光源の数や強度比は、必要に応じて任意に設定して構わない。一般に光源の数や強度はラマン利得や利得の波長依存性に影響するので、これらを適切に設定することによって、利得の平坦化を図ったり、自動利得等化を行うことができる。励起光の反射・出力強度の検出は、本例のように複数の励起光の和を測定しても構わないし、また特定の励起光源に対して行っても構わない。後者は光分岐器104の位置を特定の光源と合波器184の間に変更すれば簡単に実現できる。
【0149】
図13は、本願発明の第10の実施形態である。この例は、逆進励起型の光ファイバラマン増幅器126のラマン励起光に周波数fで正弦波強度変調を施した例である。
【0150】
この光ファイバラマン増幅器126は、励起光源121を有し、励起光310は入力コネクタ124より射出(312)される。この励起光310の一部313は励起光出力検出器170、又、励起光の入力コネクタ124よりの反射光の一部314は励起光反射光検出器171で検知され、この各信号に基づき制御回路110を所望に制御する。図中、符号104は光分岐器、122は合波器である。
【0151】
本例においては、励起光源121の駆動電流には、正弦波発生器190からの信号が加えられ、出力される励起光には正弦波AM変調が重畳されている。正弦波の周波数fは、その波長が光ファイバ伝送路の非線型効果の有効長(Leff=1/a、ここで、aは励起光源における光ファイバ伝送路の損失係数である)より小となるように、例えば数MHzなどに設定されている。すなわち、f>ac(ここで、cは光速である)という関係が成立している。信号光と励起光は逆方向に進行しているので、励起光が変調されていても周波数fが上記値より十分大きければ、信号光の感じるラマン利得は空間的に平均化されてしまい、信号光には劣化が生じない。信号光と並進する励起光の場合には、このような変調を行うと信号光に強度変調が生じて伝送特性が劣化してしまうため、変調成分を極めて小さく(例えば、10%以下)とする必要がある。
【0152】
このように、ラマン励起光を変調しておけば、光検出器の出力信号中から変調成分を抽出することで、外乱光があっても励起光の強度や反射率を正確に知ることができる。
【0153】
本例では、信号光・励起光をそれぞれ励起光出力光検出器170、励起光反射光検出器171で受信する。この時、検知信号は電気信号に変換され、この電気信号の領域で、中心周波数fのバンドパスフィルタ191−1及び191−2を用いて周波数fの変調成分のみを抽出している。この為、信号光や上流からの励起光成分が混入する場合でも、光フィルタを設けなくとも、逆進励起光成分のみを抽出することが可能となる。また、ファイバ途中の解放端でフレネル反射された成分は変調成分を保持しているが、レーリー散乱のように分布的に反射された場合には変調成分は空間的に平均化されて極めて小さくなる。したがって、従来よりも検出しきい値を下げることができ、高精度に解放端(フレネル反射)検出ができるようになる。
【0154】
なお、変調信号は、最低周波数成分が上記条件を満たしていれば、正弦波である必要はなく、例えば、情報信号で変調しても構わず、下流の光ファイバラマン増幅器から上流の光増幅器もしくは光送信機への監視情報や警報の転送に用いることが可能である。この場合には監視情報専用の送受信器を設ける必要がなくなるので、装置構成を簡素化することができる。
【0155】
図14は、本願発明の第11の実施形態である。この例は、下流側の励起光の変調成分を受信することで、光ファイバ伝送路の上流側の光増幅器が下流側のラマン増幅器の励起光の点灯状態を検出する例である。
【0156】
信号光の反射強度を利用した出力開放を検出では、出力端から解放点までの距離が数km以上離れ、両地点間に数dBの損失が生じた場合には、反射光レベルが小さくなりすぎ出力開放を検出できなくなるという問題点があった。しかながら、波長多重伝送や高出力伝送においては数km先でも信号光や励起光の強度は十分に強く、開放検出が必要となるレベルとなることがある。本実施形態では、より確実性の高い出力開放検出を行うため、光ファイバ伝送路の下流側の光増幅器は上流からの信号光の有無を、また上流側の光増幅器は下流側からのラマン励起光を検出する。
【0157】
本例では、上流側の光ファイバラマン増幅器136、光ファイバ伝送路106、及び下流側の光ファイバラマン増幅器126が縦続接続されている。上流側の光ファイバラマン増幅器136は励起光源131を有し、励起光310は出力コネクタ181より射出される。この励起光310の一部は励起光出力検出器170、又、励起光の出力コネクタ181よりの反射光の一部313は励起光反射光検出器171で検知され、この各信号に基づき制御回路110−1を所望に制御する。本例では信号光の除去フィルタ172−1、172−2、及びバンドパスフィルタ191を有している。下流側の光ファイバラマン増幅器126は励起光源121を有し、励起光330は入力コネクタ182より射出される。信号光340は出力端183より出力(341)される。又、信号光の一部342は入力光検出器109で検出され、この信号に基づいて制御回路110−2が制御される。本例では、前記励起光源121よりの光は、正弦波発生器190によって周波数fで変調されている。又、入力光検出器109の前にラマン光の除去フィルタ141を有している。
【0158】
本例では、ラマン増幅器の特性を考慮し、例えば、以下のような立ち上げ手順を取る。まず、上流側・下流側ともラマン励起光を遮断しておき、下流側の光ファイバラマン増幅器126側では励起光除去フィルタ141を通過した入力信号光を入力光検出器109で検出し、光信号レベルが一定以上であれば上流側のすべてのコネクタ開放がされていないことと確認できる。制御回路110−2は励起光121を点灯し、上流側に向けて変調された励起光を送出する。また、動作中に上記入力信号光が一定レベル以下に低下した場合にはラマン励起光を遮断する。
【0159】
次に、上流側の光ファイバラマン増幅器136中では、分岐器104−1、信号光除去フィルタ172−2、励起光反射光検出器171によって、光ファイバ伝送路106側から入力される励起光強度を観測している。特に、そのうち、バンドパスフィルタ191によって周波数fで変調された成分を抽出しているので、その強度から下流側からの励起光の強度を判定できる。このレベルが一定以上であれば、下流側のすべてのコネクタが開放されていないことが確認できる。これを受けて、制御回路110−1は励起光131を点灯する。また、動作中に上記変調成分が一定レベル以下に低下した場合にはラマン励起光を遮断する。上記手順によって極めて確実性の高い励起光の立ち上げ操作が行える。図16にこの励起光の立ち上げの状態を例示する。
【0160】
なお、光ファイバ伝送路の損失や送信信号のレベルによっては、上流・下流どちらか、もしくは双方の光ファイバラマン増幅器を立ち上げないと信号レベルが低すぎ、下流側の入力光検出器109では検出が行えない場合もある。その場合には、まず、最初にどちらかもしくは双方のラマン励起光を、安全な弱強度で立ち上げ反射検出をするなどの手法が有効である。
【0161】
本例では、ラマン励起光変調による信号光劣化を避けるために、下流側のラマン励起光にのみ変調を施す例を示した。ある程度の信号光の劣化が、許容できる場合には上流側のラマン励起光も変調することも可能である。この場合、下流側とは異なる変調周波数やコードで符号化しておけば、上流側・下流側の励起光の区別をつけることが可能である。この上流側の変調成分は、下流側の変調と同様にコネクタ開放の検出などに適用可能である。
【0162】
図15は、本願発明の第12の実施形態である。この例は、前の実施形態に対して、光伝送路の上流側にラマン増幅器以外の光増幅器140を配置する場合の構成を示す。光増幅器140は光増幅媒体(例えば、EDF)103を有し、このEDF103は励起光源111によって励起される。信号光400は光増幅媒体103で増幅され、出力光コネクタ105より光伝送路106に射出(401)される。本例では、入力信号400は光分岐器102で分岐され、その一部が入力光検出器109で検知される。更に、増幅された信号光の一部403は出力光検出器107によって、増幅された信号光の反射光404の光分岐器104で分岐された一部402は、反射光検出器108によって検出される。一方、下流側に存在するラマン励起光源よりのラマン励起光は、その一部405が当該光増幅器140に入射される。そして、合波器192を介してその一部405が、励起光入力光検出器193で検出される。こうして、各検出器109、108、107、及び193の検出結果に基づき、制御回路110は、励起光を制御する。
【0163】
本例では、EDFを用いた光増幅器140の出力部に、ラマン励起波長と信号光波長を波長合波する合波器192を配置し、その直後に、励起光入力光検出器193を配置することによって、下流側から送信される励起光強度を検出できるようにしている。なお、本例においては合波器192が励起光除去フィルタの役目を果たす特性に設定されているものとし、信号光の出力光・反射光検出器108、107の前には励起光除去フィルタを配置していない。
【0164】
光増幅器140から出力される信号レベルが、そのままでは危険なほどに高い場合には、立ち上げ時には、まず励起光源111を弱励起とし、信号光を低出力で送信する。光ファイバ伝送路106の下流側の光ファイバラマン増幅器(この増幅器は図示されていない)はこの信号を検出すれば、下流側からラマン励起光を送出する。励起光入力検出器193で下流側からのラマン励起光を検出しこれが、規定レベル以上であった場合、且つ反射光検出器108と出力光検出器107の光強度比が一定レベル以下であった場合、制御回路110は励起光源111を通常の規定出力まで増加させる。このように、上流側からの反射と下流側からの励起光の有無の双方を確認することで、より確実性の高い開放検出が実施できる。
【0165】
本願発明によって、光増幅器を光ファイバラマン増幅器と併用した場合にも、入力信号の検出や出力解放検出機構が正常に動作させることができるようになる。また、光ファイバラマン増幅器においても、上記機能を付加することが可能となる。またラマン増幅器の特異性を考慮した光増幅器の立ち上げ・遮断方法により、より安全性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は、本願発明の第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】図2は、従来の光増幅装置の構成図である。
【図3】図3は、従来の光増幅装置の構成図である。
【図4】図4は、本願発明の第2の実施形態を示す構成図である。
【図5】図5は、本願発明の第3の実施形態を示す図である。
【図6】図6は、制御回路の実現例を示す構成図である。
【図7】図7は、本願発明の第4の実施形態を示す構成図である。
【図8】図8は、本願発明の第5の実施形態を示す構成図である。
【図9】図9は、本願発明の第6の実施形態を示す構成図である。
【図10】図10は、本願発明の第7の実施形態を示す構成図である。
【図11】図11は、本願発明の第8の実施形態を示す構成図である。
【図12】図12は、本願発明の第9の実施形態を示す構成図である。
【図13】図13は、本願発明の第10の実施形態を示す構成図である。
【図14】図14は、本願発明の第11の実施形態を示す構成図である。
【図15】図15は、本願発明の第12の実施形態を示す構成図である。
【図16】図16は、励起光の立ち上げの例を示すタイム・チャートである。
【符号の説明】
【0167】
100・・・従来の光増幅器、101・・・入力光コネクタ、102・・・光分岐器、103・・・光増幅媒体、104・・・光分岐器、105・・・出力光コネクタ、106・・・光ファイバ伝送路、107・・・出力光検出器、108・・・反射光検出器、109・・・入力光検出器、110・・・制御回路、111・・・励起光源、112・・・出力光、113・・・反射光、120・・・光ファイバラマン増幅器(逆進励起)、121・・・ラマン励起光源、122・・・合波器、123・・・ラマン励起光、124・・・入力光コネクタ、125・・・出力光コネクタ、126・・・本願発明の光ファイバラマン増幅器(逆進励起)、130・・・光ファイバラマン増幅器(並進励起)、131・・・ラマン励起光源、132・・・合波器、133・・・ラマン励起光、134・・・入力光コネクタ、135・・・出力光コネクタ、136・・・本願発明の光ファイバラマン増幅器(並進励起)、140・・・本願発明の光増幅装置、141・・・ラマン励起光除去フィルタ、142・・・ラマン励起光除去フィルタ、143・・・合波器、150・・・入力光強度信号、151・・・反射光強度信号、152・・・出力光強度信号、153・・・基準電圧源、154・・・コンパレータ、155・・・除算器、156・・・AND回路、157・・・励起光源電流源、158・・・励起光源駆動電流、159・・・スイッチ、160・・・ラマン励起光オン・オフ信号、161・・・他の制御信号、170・・・励起光出力光検出器、171・・・励起光反射光検出器、172・・・信号光除去フィルタ、180・・・本願発明の光中継器、181・・・ラマン励起光入力、182・・・ラマン励起光入力、183・・・本願発明の励起光源装置、184・・・ラマン励起光合波器、185・・・ラマン励起光出力190・・・正弦波発生器(周波数f)、191・・・バンドパスフィルタ(中心周波数f)、192・・・合波器、193・・・励起光入力光検出器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ伝送路の光信号伝送方向の上流側に配置される光増幅器であって、光ファイバ伝送路の下流側に配置されたラマン増幅器の励起光強度を測定し、この光強度があらかじめ設定した光強度範囲内の場合には光信号出力もしくはこの光増幅器の励起光を点灯、もしくは増加もしくは一定に維持することを、またこの光強度が上記範囲を逸脱した場合には光信号出力もしくはこの光増幅器の励起光を低減もしくは遮断することを、特徴とした光増幅器。
【請求項2】
請求項1記載の光増幅器であって、励起光源を周波数ac(ここで、aは励起光源における光ファイバ伝送路の損失係数、cは光速)以上で強度変調することを特徴とする光増幅器。
【請求項3】
請求項2記載の光増幅器であって、光ファイバ伝送路の下流側に向かって励起光を送出して光信号の増幅を行う光増幅器であって、前記変調成分を検出し、これに基づいて前記励起光の出力の解放状態を検出が可能なことを、特徴とする光増幅器。
【請求項4】
請求項2記載の光増幅器であって、光ファイバ伝送路の下流側に向かって励起光を送出して光信号の増幅を行う光増幅器であって、前記変調成分を検出し、これに基づいて、光ファイバ伝送路の前記下流側に配置された光検知手段で入力解放検出を行うことが可能なことを特徴とした光増幅器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光増幅器を備えた光伝送装置。
【請求項6】
光ファイバ伝送路の下流側に配置される光増幅器であって、上流側から送信される信号光もしくはラマン励起光の強度を測定し、この光強度があらかじめ設定した光強度範囲内の場合には、ラマン励起光を点灯、もしくは増加、もしくは一定に維持することを、またもの光強度が上記範囲を逸脱した場合には光信号出力を低減もしくは遮断することを、特徴とした光増幅器。
【請求項7】
請求項6記載の光増幅器であって、励起光源を周波数ac(ここで、aは励起光源における光ファイバ伝送路の損失係数、cは光速)以上で強度変調することを特徴とする光増幅器。
【請求項8】
請求項7記載の光増幅器であって、前記変調成分を、該光増幅器もしくは上流側に配置された光伝送装置の入力解放検出に用いることを特徴とする光増幅器。
【請求項9】
請求項7記載の光増幅器であって、前記変調成分を上流側の光伝送装置に情報伝送することを特徴とする光増幅器。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかに記載の光増幅器を備えた光伝送装置。
【請求項1】
光ファイバ伝送路の光信号伝送方向の上流側に配置される光増幅器であって、光ファイバ伝送路の下流側に配置されたラマン増幅器の励起光強度を測定し、この光強度があらかじめ設定した光強度範囲内の場合には光信号出力もしくはこの光増幅器の励起光を点灯、もしくは増加もしくは一定に維持することを、またこの光強度が上記範囲を逸脱した場合には光信号出力もしくはこの光増幅器の励起光を低減もしくは遮断することを、特徴とした光増幅器。
【請求項2】
請求項1記載の光増幅器であって、励起光源を周波数ac(ここで、aは励起光源における光ファイバ伝送路の損失係数、cは光速)以上で強度変調することを特徴とする光増幅器。
【請求項3】
請求項2記載の光増幅器であって、光ファイバ伝送路の下流側に向かって励起光を送出して光信号の増幅を行う光増幅器であって、前記変調成分を検出し、これに基づいて前記励起光の出力の解放状態を検出が可能なことを、特徴とする光増幅器。
【請求項4】
請求項2記載の光増幅器であって、光ファイバ伝送路の下流側に向かって励起光を送出して光信号の増幅を行う光増幅器であって、前記変調成分を検出し、これに基づいて、光ファイバ伝送路の前記下流側に配置された光検知手段で入力解放検出を行うことが可能なことを特徴とした光増幅器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光増幅器を備えた光伝送装置。
【請求項6】
光ファイバ伝送路の下流側に配置される光増幅器であって、上流側から送信される信号光もしくはラマン励起光の強度を測定し、この光強度があらかじめ設定した光強度範囲内の場合には、ラマン励起光を点灯、もしくは増加、もしくは一定に維持することを、またもの光強度が上記範囲を逸脱した場合には光信号出力を低減もしくは遮断することを、特徴とした光増幅器。
【請求項7】
請求項6記載の光増幅器であって、励起光源を周波数ac(ここで、aは励起光源における光ファイバ伝送路の損失係数、cは光速)以上で強度変調することを特徴とする光増幅器。
【請求項8】
請求項7記載の光増幅器であって、前記変調成分を、該光増幅器もしくは上流側に配置された光伝送装置の入力解放検出に用いることを特徴とする光増幅器。
【請求項9】
請求項7記載の光増幅器であって、前記変調成分を上流側の光伝送装置に情報伝送することを特徴とする光増幅器。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかに記載の光増幅器を備えた光伝送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−324684(P2006−324684A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199415(P2006−199415)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【分割の表示】特願2001−19660(P2001−19660)の分割
【原出願日】平成13年1月29日(2001.1.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【分割の表示】特願2001−19660(P2001−19660)の分割
【原出願日】平成13年1月29日(2001.1.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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