説明

光学シート、面光源装置および表示装置

【課題】期待された光学特性と優れた耐擦傷性とを呈し安価に作製され得る光学シートを提供する。
【解決手段】光学シート40は、シート状の本体部42と、本体部の出光側面上に設けられた複数の単位光学要素45と、を含む。光学シートは、熱可塑性を有した第1の樹脂材料を用いて形成された第1層51と、第1層の出光側に設けられ、熱可塑性および電離放射線硬化性の両方を有した第2の樹脂材料を用いて形成された第2層52と、を含む。第2層は、単位光学要素の出光側面45aに沿って延び、光学シートの出光面40aを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の進行方向を変化させるシートに係り、とりわけ、期待された光学特性と優れた耐擦傷性とを呈し安価に作製され得る光学シートに関する。また、本発明は、このような有用な光学シートを有する面光源装置、透過型表示装置および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型表示装置に用いられる面光源装置は、光源と、光源からの光の進行方向を変化させるための複数の光学シート(光学フィルム)と、を有している。例えば特許文献1に開示されているように、多くの場合、複数の光学シートの中には、光源からの光を拡散させて光源の像を隠す(目立たなくさせる)光拡散シートと、光の進行方向を正面方向へ絞り込み正面方向輝度を向上させる機能(集光機能)を有した集光シートと、が含まれている。
【0003】
このうち、集光シートとしては、線状に延びる単位光学要素(単位形状要素)をその長手方向に直交する方向に配列(いわゆるリニア配列)してなる光学シートが多く用いられている。単位光学要素は、通常、その長手方向には稜線部(線状に延在する頂部)を有し、又、長手方向に直交する断面においては、三角形形状、楕円形または円形の一部分に相当する形状を有している。とりわけ、正面方向を中心として対称的に配置された二等辺三角形形状(とりわけ、直角二等辺三角形形状)からなる断面形状を有した単位プリズムを配列してなる光学シートが、優れた正面方向輝度を付与し得るものと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−295523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、線状に延びる単位光学要素を有した光学シートは、透過型表示装置に組み込まれた際に、隣接する光学シート等の他の部材と重ねて配置された状態となる。また、透過型表示装置に組み込まれる前の光学シートは、最終的な大きさに切断された枚葉状の部材として多数重ね合わされた状態で、あるいは、最終的な大きさに切断される前のウェブ状の部材として巻き取られた状態で、取り扱われること(例えば、輸送されること)がある。このような状態下において、光学シートの単位光学要素は稜線部の線状に延びる狭い領域において局所的に他の部材に接触している。このため、表示装置や光学シートの取り扱い時に生じるわずかな振動や外力等によって、稜線部に応力が集中して、単位光学要素が変形または欠損してしまうこともある。そして、このような不具合は、優れた集光機能を発揮し得る断面三角形形状の単位光学要素(単位プリズム)において、特に顕著に生じる。
【0006】
このような不具合を回避するため、光学シートを取り扱う際に、枚葉状の光学シート間に保護シートを介在させること、あるいは、ウェブ状の光学シートを保護シートとともに巻き取ることが行われてきた。しかしながら、この対処方法は、使い捨ての保護シートを用いる点において、コスト面、作業面および環境面から好ましくない。また、保護シートを表示装置に組み込む訳にはいかないので、表示装置に組み込んだ後での光学シートの擦傷に対して対処することができない。
【0007】
また、別の対処方法として、単位光学要素の表面にハードコート層または復元層からなる表面保護層を形成することも行われている。この表面保護層は、紫外線硬化性樹脂を単位光学要素の表面に塗布し、その後、塗布された紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射して硬化させることによって、形成される。しかしながら、単位光学要素上に塗布された紫外線硬化性樹脂は、紫外線を照射される前に、重力によって単位光学要素の表面上を流動する。このため、表面保護層の厚みは不均一となり、単位光学要素の外輪郭が理想的な形状からずれてしまう。結果として、光学シートは、表面保護層によって耐擦傷性を有するようになるが、期待された光学特性を呈することができなくなる。
【0008】
なお、耐擦傷性を発現させ得る特定の紫外線硬化性樹脂を用いて単位光学要素の全体を形成すれば、期待された光学特性と優れた耐擦傷性とを呈する光学シートを得ることもできる。しかしながら、この光学シートは、耐擦傷性を発現させ得る特定の紫外線硬化性樹脂を部分的に用いた光学シートと比較して、材料費が大幅に上昇するので、製造コスト面での問題を生じさせてしまう。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、期待された光学特性と優れた耐擦傷性とを呈し安価に作製され得る光学シートを提供することを目的とする。また、本発明は、このような光学シートを有する面光源装置および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による光学シートは、
シート状の本体部と、前記本体部の一側の面上に設けられた複数の単位光学要素と、を含む光学シートであって、
熱可塑性を有した第1の樹脂材料を用いて形成された第1層と、
前記第1層の一側に設けられ、熱可塑性および電離放射線硬化性の両方を有した第2の樹脂材料を用いて形成された第2層と、を備え、
前記第2層は、前記単位光学要素の表面に沿って延びている。
【0011】
本発明による光学シートにおいて、前記第2層の形成に用いられる第2の樹脂材料は、前記第1層の形成に用いられる第1の樹脂材料よりも、ハードコート性および摺動性の少なくとも一方において優れているようにしてもよい。
【0012】
本発明による光学シートにおいて、前記第1層および前記第2層は、共押し出し加工により互いに積層されていてもよい。
【0013】
本発明による光学シートが、前記第1層の他側に設けられ、熱可塑性および電離放射線硬化性の両方を有した第3の樹脂材料を用いて形成された第3層を、さらに備え、前記第3層は、前記第1層を他側から覆っていてもよい。
【0014】
本発明による光学シートにおいて、前記第3層の形成に用いられる第3の樹脂材料は、前記第1層の形成に用いられる第1の樹脂材料よりも、ハードコート性および摺動性の少なくとも一方において優れていてもよい。
【0015】
本発明による光学シートにおいて、前記第1層、前記第2層および前記第3層は、共押し出し加工により互いに積層されていてもよい。
【0016】
本発明による光学シートにおいて、前記第3の樹脂材料は、前記第2の樹脂材料と同一であってもよい。
【0017】
本発明による光学シートにおいて、前記複数の単位光学要素は、前記本体部の前記一側の面上の配列方向に沿って配列され、各単位光学要素は、前記配列方向と交差する前記一側の面上の方向に延びており、前記複数の単位光学要素の配列方向と前記本体部のシート面への法線方向との両方向と平行な断面において、各単位光学要素は、直角の頂角が一側に突出した二等辺三角形形状となっていてもよい。
【0018】
本発明による光学シートが、前記本体部の他側の面上に設けられた複数の第2単位光学要素をさらに含むようにしてもよい。
【0019】
本発明による光学シートにおいて、前記本体部の他側の面に凹凸が形成されていてもよい。
【0020】
本発明による面光源装置は、
光源と、
上述した本発明による光学シートのいずれかであって、前記光源からの光を受ける光学シートと、を備える。
【0021】
本発明による表示装置は、
上述した本発明による面光源装置と、
前記面光源装置に対向して配置された透過型表示部と、を備える。
【0022】
本発明による光学シートの製造方法は、
熱可塑性を有した第1の樹脂材料と、熱可塑性および電離放射線硬化性の両方を有した第2の樹脂材料と、を共押し出しし、さらに、押し出された材料を少なくとも前記第2の樹脂材料からなる層の側から成型する、押し出し成型工程と、
前記第2の樹脂材料からなる層に電離放射線を照射して硬化させる、硬化工程と、を含む。
【0023】
本発明による光学シートの製造方法の前記押し出し成型工程において、第1の樹脂材料および第2の樹脂材料とともに、さらに、熱可塑性および電離放射線硬化性の両方を有した第3の樹脂材料が共押し出しされ、前記硬化工程において、前記第2の樹脂材料からなる層とともに第3の樹脂材料からなる層にも電離放射線を照射して硬化させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、期待された光学特性と優れた耐擦傷性とを呈し安価に作製され得る光学シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、表示装置および面光源装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のII−II線に沿った断面において光学シートを示す断面図である。
【図3】図3は、光学シートの製造方法および光学シートの製造装置の一例を説明するための図である。
【図4】図4は、図2と同様の断面で光学シートを示す図であって、光学シートの光学的作用を説明するための図である。
【図5】図5は、図2と同様の断面で光学シートの一変形例を示す図である。
【図6】図6は、図3に対応する図であって、光学シートの製造方法および光学シートの製造装置の一変形例を説明するための図である。
【図7】図7は、図3に対応する図であって、光学シートの製造方法および光学シートの製造装置の他の変形例を説明するための図である。
【図8】図8は、ハードコート性および摺動性の評価方法およびハードコート性および摺動性の評価に用いられる試験機を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0027】
図1〜図4は本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は表示装置および面光源装置の概略構成を示す斜視図である。図2および図4は、光学シートの主切断面を通る断面において光学シートを示す図である。図3は、光学シートの製造方法の一例を説明するための図である。
【0028】
図1に示された表示装置10は、透過型表示部15と、透過型表示部15の背面側に配置され透過型表示部15を背面側から面状に照らす面光源装置20と、を備えている。透過型表示部15は、面光源装置20からの光の透過または遮断を画素毎に制御するシャッターとして機能し、画像を形成する装置である。本実施の形態において、透過型表示部15は、液晶表示パネルから構成されている。つまり、表示装置10は液晶表示装置として構成されている。透過型表示部(液晶表示パネル)15の構成は、従来の液晶表示装置に組み込まれている装置(部材)と同様に構成することができ、ここでは、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0029】
次に、面光源装置20について説明する。図1に示された面光源装置20は、直下型のバックライトユニットとして構成されている。このため、面光源装置20は、図1に示すように、光源25と、光源25に対向して配置された複数のシート状部材と、を有している。シート状部材には、光源25に直面する位置に配置された拡散板28、拡散板28の出光側に配置された下拡散シート30と、下拡散シート30と、下拡散シート30の出光側に配置された光学シート40と、光学シート40の出光側に配置された上拡散シート35と、が含まれている。
【0030】
光源25は、複数の線状の発光部25aを有している。複数の発光部25aは、ある仮想の平面上に規則的に並べて配列されている。具体的には、複数の発光部25aは、仮想平面上の一つの配列方向に配列され、各発光部25aは当該配列方向と交差する仮想平面上の方向に延びている。図示する例において、複数の発光部25aは、並列配置された冷陰極管から構成され、例えば、水平方向に延びるように配列される。
【0031】
光源25をなす複数の発光部25aは、反射板22によって背面側から覆われている。反射板22は、光学シート40の側に開口部(窓)を有する箱状に形成されている。反射板22は、図1に示すように、光源25からの光を透過型表示部15の側へ向けるための部材である。反射板22の少なくとも内側表面は、例えば金属等の高い反射率を有する材料を用いて形成されている。
【0032】
拡散板28、下拡散シート30および上拡散シート35は、いずれも、光を拡散させる機能を有したシート状の部材である。拡散板28および下拡散シート30は、主として、光源25をなす発光部25aからの光を拡散させ、光源25の構成(とりわけ発光部25aの配列)に応じた輝度の不均一さを均し、光源25をなす発光部25aの像を目立たなくさせる。一方、上拡散シート35は、光学シート40によって後述するように集光された光をある程度拡散させ、視野角を調節したり、輝度の角度分布の変化を緩やかにする。
【0033】
図2に示された一例において、下拡散シート30の出光面30aは、基材31上にバインダー樹脂32を介して光拡散性粒子33を結合してなるマット面として、構成されている。同様に、図2に示された一例において、上拡散シート35の入光面35bは、基材36上にバインダー樹脂37を介して光拡散性粒子38を結合してなるマット面として、構成されている。このようなマット面30a,35bによれば、その表面をなす凹凸形状において、さらには、光拡散性粒子33,38の表面において、光を拡散させることができる。ただし、このような構成に変えて又はこのような構成に加えて、下拡散シート30および上拡散シート35が、他の構成により、拡散機能を発現するようにしてもよい。
【0034】
ところで、本明細書において、「出光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から透過型表示部15を経て観察者へ向かう光の進行方向における下流側(観察者側、図2および図4においては紙面の上側)のことであり、「入光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から透過型表示部15を経て観察者へ向かう光の進行方向における上流側のことである。
【0035】
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0036】
次に、光学シート40について説明する。図2に示すように、光学シート40は、入光側から入射した光の進行方向を変化させて出光側から出射させ、正面方向ndおよびその近傍の方向における輝度を集中的に向上させる機能(集光機能)を、主として有している。
【0037】
光学シート40は、本体部42と、本体部42上に設けられた複数の単位光学要素(単位形状要素、単位プリズム)45と、を有している。図2および図4に示すように、本体部42は、互いに対向する出光側面42aおよび入光側面42bを有したシート状の部材として形成されている。本体部42は、単位光学要素45を支持するシート状部材として機能する。
【0038】
なお、本明細書において「正面方向」とは、面光源装置20の発光面20aに対する法線の方向ndであり、光学シート40のシート面への法線方向nd、拡散板28の板面への法線方向nd、拡散シート30,35の板面への法線方向nd、および、表示装置10の表示面10aの法線方向nd等にも一致する。また、本明細書において「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。
【0039】
図2および図4に示すように、本実施の形態において、本体部42の出光側面42a上には、単位光学要素45が隙間をあけることなく並べて配置されている。この結果、光学シート40の出光面40aは、単位光学要素45の出光側面45aのみによって構成されている。その一方で、図2および図4に示すように、本実施の形態において、本体部42の入光側面42bは、平坦(平ら)な面として、光学シート40の入光面40bを構成している。
【0040】
図1に示すように、多数の単位光学要素45は、本体部42の出光側面42a上のある配列方向に配列されている。各単位光学要素45は、その配列方向と交差する方向に、線状に延びている。とりわけ本実施の形態において、単位光学要素45は直線状に延びている。また、単位光学要素45の長手方向は、本体部42のシート面と平行な面上において、単位光学要素45の配列方向に直交している。図1に示すように、正面方向からの観察において、光学シート40の単位光学要素45の配列方向は、光源25の発光部25aの配列方向と平行になっている。
【0041】
図2および図4では、光学シート40の本体部42のシート面の法線方向ndおよび単位光学要素45の配列方向の両方に平行な断面(「主切断面」とも呼ぶ)において、光学シート40が示されている。本実施の形態においては、図2および図4に示すように、光学シートの主切断面において、各単位光学要素45は、出光側に突出する三角形形状となっている。そして、正面方向輝度を集中的に向上させるという観点から、当該断面形状がとりわけ二等辺三角形形状であるとともに、等辺の間に位置する頂角が本体部42の出光側面42aから出光側に突出するように、各単位光学要素45が構成されている。とりわけ、本実施の形態において、光学シートの主切断面における各単位光学要素45の断面形状は、直角二等辺三角形形状となっており、単位光学要素45の長手方向(直線状に延びている方向)に沿って一定となっている。また、光学シート40に含まれた複数の単位光学要素45は、全て同様に構成されている。
【0042】
なお、本明細書における「三角形形状」とは、厳密な意味での三角形形状のみでなく、製造技術における限界や成型加工時の誤差等を含む略三角形形状、例えば、三角形の頂点が若干丸味を帯びてしまっている形状等を含む。同様に、本明細書において用いる、その他の形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」や「直交」等の用語も、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差を含めて解釈することとする。
【0043】
ところで、本実施の形態における光学シート40は、用いられている材料に基づき、複数の層に区分けされ得る。図2に示すように、本実施の形態において、光学シート40は、第1の樹脂材料を用いて形成された第1層51と、第1層51の出光側に設けられた第2層52と、第1層51の入光側に配置された第3層53と、を有している。第2層52および第3層53は、詳しくは後述するように、それぞれ、第1の樹脂材料とは異なる樹脂材料を用いて作製されている。
【0044】
図2に示すように、第2層52は、単位光学要素45の出光側面45aに沿って延び、光学シート40の出光面40aを形成している。とりわけ、図示する例において、第2層52は、単位光学要素45の出光側面45aの全領域にわたって延び、光学シート40の出光面40aの全面を構成している。また、図2に示すように、光学シートの主切断面において、第2層52の厚みは変動しており、図示する例では、本体部42から最も離間した単位光学要素45の頂部(先端部)46aにおいて、第2層52の厚みが厚くなっており、本体部42に最も近接した単位光学要素45の端部(基端部、谷部)46bにおいて、第2層52の厚みが薄くなっている。
【0045】
また、図示する例において、第2層52が単位光学要素45の出光側面45aの全領域にわたって延びていることから、第2層52は、一部において、より具体的には単位光学要素45の端部46b近傍において、本体部42内に位置している。その一方で、第2層52の厚みは、単位光学要素45の高さHよりも、小さい(薄い)。すなわち、第2層52は、単位光学要素45内を完全に満たしていない。このため、第1層51が、単位光学要素45の出光側面45aから離間した単位光学要素45内の領域に位置している。
【0046】
一方、第3層53は、第1層51を入光側から覆い、光学シート40の入光面40bを構成している。図2に示すように、第3層53は、概ね一定の厚さを有し、第1層51に積層されている。
【0047】
後述するように、第1層51、第2層52および第3層53は、共押し出し加工により、言い換えると同時複数層押し出し加工(多層押し出し加工)により、互いに積層されている。したがって、第1層51の形成に用いられる第1の樹脂材料、第2層52の形成に用いられる第2の樹脂材料、及び、第3層53の形成に用いられる第3の樹脂材料は、熱可塑性を有している。このような第1の樹脂材料、第2の樹脂材料および第3の樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂を用いることができる。
【0048】
また、第2層52の形成に用いられる第2の樹脂材料および第3層53の形成に用いられる第3の樹脂材料は、さらに、紫外線(UV線)や電子線(EB線)等の電離放射線を照射されることによって硬化する電離放射線硬化性も有している。すなわち、第2の樹脂材料および第3の樹脂材料は、電離放射線硬化性を発現させる樹脂材料(モノマー、オリゴマー等)も含んでいる。この電離放射線硬化性を発現させるための樹脂材料は、上述した熱可塑性を発現させるための樹脂材料に対して相溶性を有していなければならない。
【0049】
さらに、本実施の形態においては、第2の樹脂材料に含まれる電離放射線硬化性を発現させるための樹脂材料は、第2層52の形成に用いられる第2の樹脂材料が、第1層51の形成に用いられる第1の樹脂材料よりも、優れたハードコート性および優れた摺動性(復元性)の少なくとも一つを有するように、選択される。同様に、第3の樹脂材料に含まれる電離放射線硬化性を発現させるための樹脂材料も、第3層53の形成に用いられる第3の樹脂材料が、第1層51の形成に用いられる第1の樹脂材料よりも、優れたハードコート性および優れた摺動性(復元性)の少なくとも一つを有するように、選択される。
【0050】
なお、本明細書において、樹脂材料間でのハードコート性の優劣は、比較されるべき樹脂材料を用いて同一の光学シートを作製し、当該光学シートに対して同一の試験を行って評価する。具体的には、後述の実施例で説明する耐摩耗試験機を用いた試験を試験用に作製した光学シートに対して実施し、後述の実施例で説明する[ハードコート性評価]での基準にしたがいハードコート性の優劣を判断する。この際、[ハードコート性評価]での基準における、「評価5」の場合にハードコート性が最も優れている(高い)と評価し、「評価5」から「評価1」に向けてハードコート性がしだいに低下(劣化)していくものとして評価する。
【0051】
同様に、本明細書において、樹脂材料間での摺動性(復元性)の優劣も、比較されるべき樹脂材料を用いて同一の光学シートを作製し、当該光学シートに対して同一の試験を行って評価する。具体的には、後述の実施例で説明する耐摩耗試験機を用いた試験を試験用に作製した光学シートに対して実施し、後述の実施例で説明する[摺動性評価]での基準にしたがい摺動性の優劣を判断する。この際、[摺動性評価]での基準における、「評価5」の場合に摺動性が最も優れている(高い)と評価し、「評価5」から「評価1」に向けて摺動性がしだいに低下(劣化)していくものとして評価する。
【0052】
電離放射線硬化性を発現させるための樹脂材料のうち、優れたハードコート性を付与する観点から選択され得る樹脂材料としては、例えばエチレンオキサイド10モル変性したビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、電離放射線硬化性を発現させるための樹脂材料のうち、優れた摺動性を付与する観点から選択され得る樹脂材料としては、例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート、特定の構造を有するエチレンオキサイド変性(EO変性)されたフェノキシエチル(メタ)アクリレート、特定の構造を有するエチレンオキサイド変性(EO変性)されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
なお、後述するように、本実施の形態においては、第1層51と第2層52との界面、並びに、第1層51と第3層53との界面において、何らかの光学的作用が光に対して及ぼされる必要はない。したがって、各層51,52,53の屈折率が実質的に同一となるように、第1〜第3の樹脂材料が調整されるようにしてもよい。また、第2層52を作製するために用いられる第2の樹脂材料および第3層53を作製するために用いられる第3の樹脂材料は、それぞれ電離放射線硬化性を有する点において第1の樹脂材料とは異なるが、第2の樹脂材料および第3の樹脂材料が互いに同一であってもよい。
【0054】
以上のような構成からなる単位光学要素45の具体例として、単位光学要素45の配列方向に沿った単位光学要素45の配列ピッチP(図2参照:本実施の形態においては、単位光学要素45の幅に相当する)を1μm〜200μmとすることができる。また、光学シート40のシート面への法線方向ndに沿った本体部42の出光側面42aからの単位光学要素45の突出高さH(図2参照)を0.25μm〜150μmとすることができる。さらに、単位光学要素45の断面形状が二等辺三角形状である場合には、正面方向輝度を集中的に向上させる観点から、等辺の間に位置するとともに出光側に突出する頂角の角度θd(図2参照)が、80°以上120°以下となっていることが好ましく、90°であればさらに好ましい。
【0055】
次に、主に図3を参照して、以上のような構成からなる光学シート40の製造方法の一例について説明する。
【0056】
まず、光学シート40の製造に用いる製造装置70について説明する。図3に示すように、製造装置70は、樹脂材料を押し出し成型する押し出し成型装置80と、電離放射線を照射する照射装置75と、を有している。照射装置75は、押し出し成型装置80から搬送される押し出し材90の搬送経路の両側に配置された一対の照射器75aを有している。
【0057】
押し出し成型装置80は、ダイ82aを含む押し出し機82と、賦型用の成型ロール84と、成型ロール84に対向して配置されたバックアップ手段86と、成型ロール84およびバックアップ手段86の下流側に配置された誘導手段88と、を有している。誘導手段88は、一対のガイドロール88aとして構成されている。
【0058】
押し出し機82は、原料となる熱可塑性の樹脂材料をガラス転移点温度以上の温度まで加熱し、ダイス82aを介して、シート状の押し出し材90として押し出す。本実施の形態においては、押し出し機82は、多層押し出し加工により、複数種類の樹脂材料を同時押し出しするように構成されている。
【0059】
成型ロール84は、円柱状の外形状を有しており、成型ロール84の円柱状の外周面に、製造されるべき光学シート40の単位光学要素45の形状に対応した溝(図示せず)が形成されている。当該溝は、螺旋状に形成されている、又は、並列配置されて多数形成されている。この結果、成型ロール84の円柱状の外周面は、製造されるべき光学シート40の単位光学要素45を賦型するための型面84aとして機能する。
【0060】
バックアップ手段86は、一対の支持ロール86aと、一対の支持ロール86a間に掛け渡された無縁ベルト86bと、を有している。そして、押し出し機82から押し出された押し出し材90を、無縁ベルト86bと成型ロール84との間で押圧することができるようになっている。
【0061】
ただし、以上の押し出し成型装置80は、単なる例示に過ぎず、他の既知な押し出し成型装置を用いて上述した光学シート40を作製することもできる。例えば、図6に示すように、バックアップ手段86が単一の支持ロール87から構成されていてもよい。また、押し出し機82から押し出されて成型ロール84へ向かう押し出し材90を加熱するためのヒーターがさらに設けられていてもよい。
【0062】
次に、このような製造装置70を用いて、上述した光学シート40を製造する方法を説明する。まず、上述した第1の樹脂材料、第2の樹脂材料および第3の樹脂材料を押し出し機82に投入する。第1の樹脂材料、第2の樹脂材料および第3の樹脂材料は、押し出し機82内で各ガラス転移点温度以上に加熱される。加熱されて軟化した第1〜第3の樹脂材料は、押し出し機82によって、同時多層押し出しされる。押し出し機82から押し出された押し出し材90は、第2の樹脂材料からなる第2層52と、第1の樹脂材料からなる第1層51と、第3の樹脂材料からなる第3層53と、がこの順番で積層されてなる積層体となっている。また、押し出し機82のダイ82aにおいて、各層51,52,53の厚みは所望の厚さに制御される。
【0063】
押し出し機82から押し出された押し出し材90は、成型ロール84とバックアップ手段86との間に搬送される。ここで押し出し材90は、バックアップ手段86の無縁ベルト86bによって第3層53の側から支持された状態で、成型ロール84によって第2層52の側から押圧される。この結果、成型ロール84の型面84aが押し出し材90の第2層52に押し付けられ、型面84aの凹凸形状が押し出し材90に転写される。
【0064】
なお、押し出し機82から押し出された押し出し材90は、成型ロール84とバックアップ手段86との間で押圧され始めるまで、ガラス転移点温度以上の温度に維持されていることが、賦型を精度良く行ううえで好ましい。その一方で、押し出し材90は、成型ロール84とバックアップ手段86との間での押圧から開放される際に、ガラス転移点温度未満の温度までに冷却されている、例えば成型ロール84に熱を奪われていることが好ましい。
【0065】
ところで、成型ロール84の型面84aに当接するようになる第2層52は、電離放射線硬化性を発現させるための樹脂材料を含んでいる。一般的に、電離放射線硬化性を発現させるための樹脂材料は、熱可塑性樹脂よりも高い流動性を有している。したがって、第2層をなすようになる第2の樹脂材料は、その高い流動性に起因して、型面84aの溝内に延び亘りやすくなる。このため、高い賦型率で高精度に賦型を行うことができる。
【0066】
また、第2の樹脂材料の流動性が第1の樹脂材料の流動性よりも高いと、第2の樹脂材料は第1の樹脂材料よりも、型面84aの溝内の深い位置まで入り込みやすくなる。この結果、図2に示すように、単位光学要素45の頂部46a近傍における第2の樹脂材料からなる第2層52の厚みを、単位光学要素45の端部46b近傍における第2の樹脂材料からなる第2層52の厚みよりも厚くすることができる。詳しくは後述するように、優れたハードコート性または優れた摺動性を呈する第2層52は、光学シート40に優れた耐擦傷性を付与することができる。このため、外部との接触の影響を受けやすい単位光学要素45の頂部46a近傍において第2層52の厚みを厚くすることができれば、第1の樹脂材料と比較して高価となる傾向のある第2の樹脂材料を有効に利用して、光学シート40の耐擦傷性を効果的に向上させることができる。
【0067】
賦型された押し出し材90は、その後、誘導手段88によって、冷却されるとともに、適度なテンションを付加されて反りや曲がりを矯正されながら、誘導される。
【0068】
次に、押し出し材90は照射装置75に対面する位置を通過し、この際、照射装置75の照射器75aから電離放射線を照射される。これにより、電離放射線硬化性を有した第2層52および第3層53が完全に硬化する。
【0069】
以上のようにして、熱可塑性を有した第1の樹脂材料と、熱可塑性および電離放射線硬化性の両方を有した第2の樹脂材料および第3の樹脂材料と、を共押し出しし、さらに、押し出された材料を少なくとも第2の樹脂材料からなる第2層52の側から成型する、押し出し成型工程と、第2の樹脂材料からなる第2層52に電離放射線を照射して硬化させる、硬化工程と、が実施され、ウェブ状の光学シート40が連続的に形成されていく。
【0070】
次に、以上のような表示装置10の作用について説明する。
【0071】
図1において、光源25で発光された光は、直接または反射板22で反射した後に観察者側に進む。観察者側に進んだ光は、拡散板28および下拡散シート30で等方拡散された後に、光学シート40に入射する。この入射光は、本体部45を透過して、光学シート40の単位光学要素45へ到達し、その後、単位光学要素45から出射する。
【0072】
図4に示すように、単位光学要素45から出射する光L41,L42,L43は、単位光学要素(単位プリズム)45の出光側面(プリズム面)45aにおいて屈折する。この屈折により、正面方向ndから傾斜した方向に進む光L41,L42,L43の進行方向(出射方向)は、主として、光学シート40へ入射する直前における光の進行方向と比較して、光学シート40のシート面への法線方向ndに対する角度が小さくなるように、曲げられる(図4参照)。このような光学シート40の作用により、単位光学要素45は、透過光の進行方向を正面方向nd側に絞り込むことができる。すなわち、単位光学要素45は、透過光に対して集光作用を及ぼして、正面方向輝度が集中的に高くなるように輝度の角度分布に変化をもたらす。
【0073】
なお、このような単位光学要素45の集光作用は、正面方向ndから大きく傾斜して進む光に対してより効果的に及ぼされる。このため、光学シート40よりも光源側に配置された拡散板28および下拡散シート30による拡散の程度にも依るが、光源25の発光部25aから大きな入射角度で多くの光が入射するようになる傾向がある光源25の発光部25aから離れた領域において、効果的に正面方向輝度を上昇させることができる(図4の光L41参照)。
【0074】
その一方で、図4に示すように、正面方向ndに対する進行方向の傾斜角度が小さい光L44は、単位光学要素45の出光側面(プリズム面)45aにおいて全反射を繰り返し、その進行方向を入光側(光源側)へ転換することもある。このため、光学シート40よりも光源側に配置された拡散板28および下拡散シート30による拡散の程度にも依るが、光源25から小さな入射角度で多くの光が入射するようになる傾向がある光源25の直上位置において、輝度が高くなり過ぎることを防止することができる。
【0075】
このように、面光源装置20の発光面20aと平行な方向における光源25からの離間距離に依存して、透過光に対して単位光学要素45から主として及ぼされる光学的作用が相違する。これにより、光源25の発光部25aの配列に応じて発生する輝度ムラ(管ムラ)を効果的に低減し、光源の像(ライトイメージ)を目立たなくさせることもできる。すなわち、光学シート40は、透過光に対して光拡散作用も及ぼし、輝度の面内バラツキを均一化させるように機能する(拡散機能)。
【0076】
以上のように、光学シート40によれば、光源25の構成に起因した輝度の面内バラツキを解消しながら、光学シート40から出射する光の出射角度を、正面方向を中心とした狭い角度範囲内に絞り込むことができる。
【0077】
光学シート40を出射した光は、その後、上拡散シート35で或る程度等方拡散された後、透過型表示部15に入射する。透過型表示部15は、面光源装置20からの光を画素毎に選択的に透過させる。これにより、透過型表示装置10の観察者が、映像を観察することができるようになる。
【0078】
ところで、従来技術の欄でも説明したように、単位光学要素45を有した光学シート40が表示装置10に組み込まれた際、通常、光学シート40は、隣接する他の部材と接触するようになる。この際、光学シート40の単位光学要素45は、本体部42から突出した頂部46aにおいて、隣接する他の部材と接触するようになる。このため、局所的な外力が単位光学要素45の頂部46aに加えられ得る。また、表示装置10が配置されている環境条件に変化が生じると、光学シート40または隣接する部材は、反りや曲がりを生じさせて変形し得る。この際、単位光学要素45の頂部46aは、局所的な外力が加えられた状態で、隣接する他の部材と擦られるようにもなる。このようなことから、表示装置に組み込まれた光学シート40の単位光学要素45に擦れ痕が形成されるといった不具合が生じることがある。とりわけ上述した本実施の形態のように、光学シート40に隣接する他の部材がマット面としての表面を有し、光学シート40の単位光学要素45がマット面の接触する場合には、光学シート40の単位光学要素45に擦れ痕が発生しやすく、単位光学要素45の頂部46aに欠損が生じることすらある。
【0079】
また、従来技術の欄でも説明したように、一般的に、光学シート40は、表示装置10に組み込まれる前、表示装置10に組み込まれる際の大きさの部材として多数重ね合わされた状態で、あるいは、表示装置10に組み込まれる際の大きさに切断される前のウェブ状の部材として巻き取られた状態で、輸送等の取り扱いを受ける。この際にも、光学シート40の単位光学要素45が、隣接する他の部材(ここでは、隣接する位置にある光学シート40の入光面40b)に隣接することになり、従来、単位光学要素45の頂部46a周辺での損傷が問題となっていた。
【0080】
一方、本実施の形態によれば、光学シート40は、光学シート40の大部分をなす第1層51だけでなく、第1層51の出光側に積層された第2層52をさらに、有している。この第2層52は、単位光学要素45の出光側面45aに沿って延び、光学シート40の出光面40aを形成している。そして、第2層52は、熱可塑性だけでなく電離放射線硬化性をも有した第2の樹脂材料を用いて形成されている。したがって、光学シート40のうちの出光面40a近傍に位置する一部分をなす第2層52に、電離放射線硬化性樹脂に特有の種々の性質、具体的には、優れたハードコート性や優れた摺動性を選択して付与することができる。すなわち、光学シート40の大部分(第1層51)を安価な材料によって形成しながら、光学シート40の出光面40aを含んだ一部分に、優れたハードコート性や優れた摺動性を付与することができる。この結果、光学シート40の出光面40aに優れた耐擦傷性が付与され、表示装置10内で使用されている際、あるいは、搬送等の取り扱いを受けている際に、光学シート40が他の部材と接触することに起因した不具合を効果的に抑制することができる。
【0081】
とりわけ、本実施の形態によれば、図2に示すように、単位光学要素45の頂部46a近傍における第2の樹脂材料からなる第2層52の厚みが、単位光学要素45の端部(谷部)46b近傍における第2の樹脂材料からなる第2層52の厚みよりも厚くなっている。このような光学シート40によれば、第2層52が占めている体積を少なくしながら、すなわち、第1の樹脂材料と比較して高価となりやすい第2の樹脂材料の使用量を少なく抑えながら、光学シート40に優れた耐擦傷性を付与することができる。なお、第2層52の厚みは、第2層52の作製に用いる樹脂材料のハードコート性や摺動性に応じて適宜調整可能であり、その場合、押し出し機82にて、第2層52の作製に用いる樹脂材料の吐出量を調整することで、厚みを制御することができる。
【0082】
また、本実施の形態における光学シート40は、共押し出しされた押し出し積層材90を第2層52の側から賦型する押し出し成型法によって、作製されている。すなわち、第2層52は直接成型加工を施されて、光学シート40の出光面40aをなす単位光学要素45の出光側面45aを構成するようになっている。したがって、いったん成型された樹脂材料上に事後的に耐擦傷性を有した層を形成する従来の方法と比較して、光学シート40の出光面40aに、精度良く、所望の外輪郭(外形状)を付与することができる。言い換えると、期待した光学特性を光学シート40に付与することができる。これにより、光学シート40は、単位光学要素45の出光側面45aでの屈折や反射による上述した有用な光学機能(集光機能および光拡散機能)を、予定された通りに発揮することができる。つまり、本実施の形態における光学シート40は、耐擦傷性だけでなく、優れた光学特性を呈することができる。
【0083】
さらに、本実施の形態においては、光学シート40は、第1層51および第2層52に加えて、第1層51の入光側に積層された第3層53をさらに有している。この第3層52は、光学シート40の入光面40bを形成している。そして、第3層53は、第2層と同様に、熱可塑性だけでなく電離放射線硬化性をも有した樹脂材料を用いて形成されている。したがって、光学シート40のうちの入光面40b近傍に位置する一部分をなす第3層53に、電離放射線硬化性樹脂に特有の種々の性質、具体的には、優れたハードコート性や優れた摺動性を付与することができる。すなわち、光学シート40の大部分(第1層51)を安価な材料によって形成しながら、光学シート40の入光面40bを含んだ一部分に、優れたハードコート性や優れた摺動性を付与することができる。この結果、光学シート40の入光面40bが、例えば図2に示すように表示装置10内において、隣接する他の部材のマット面(下拡散シート30の出光面30a)と接触するような場合や、あるいは、光学シート40の入光面40bがハードコート処理された単位光学要素45と接触した状態で搬送される場合等に、光学シート40の入光面40bが損傷を受けることを効果的に防止することができる。なお、上述の第2層52と同様に、第3層53の厚みは、第3層53の作製に用いる樹脂材料のハードコート性や摺動性に応じて適宜調整可能であり、その場合、押し出し機82にて、第3層53の作製に用いる樹脂材料の吐出量を調整することで、第3層53の厚みを制御することができる。
【0084】
以上のような本実施の形態によれば、光学シート40が、熱可塑性を有した第1の樹脂材料を用いて形成された第1層51と、第1層51の出光側に設けられ、熱可塑性および電離放射線硬化性の両方を有した第2の樹脂材料を用いて形成された第2層52と、を含み、且つ、第2層52は、単位光学要素45の出光側面45aに沿って延び、光学シート40の出光面40bを形成している。このような、光学シート40は、期待された光学特性を発現させることができ、且つ、優れた耐擦傷性を呈することができる。加えて、このような有用な光学シートは安価に作製得る。
【0085】
また、上述した実施の形態によれば、光学シート40が材料の異なる複数の層51,52,53を有して形成されているので、反りや曲がり等の発生を抑制することもできる。これにより、光学シート40が隣接する他の部材との接触に起因した不具合をさらに効果的に抑制することができる。
【0086】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を適宜参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いており、重複する説明を省略する。
【0087】
上述した実施の形態において、光学シート40が、第1層51と、第1層51の出光側に設けられた第2層52と、第1層51の入光側に設けられた第3層53と、を有する例を示したが、これに限られない。例えば、図5に示すように、光学シート40から第3層53を省略することができる。このような光学シート40は、主に図3を参照しながら説明した上述の製造方法において、押し出し機82から、第1層51および第2層52のみを共押し出しすることによって、得られる。
【0088】
また、他の例として、上述した複数層同時押し出し成型工程とは別途の工程により、図5に二点鎖線で示すように更なる層(第4層)54を、第3層53に代えて又は第3層53に加えて、形成するようにしてもよい。更なる層54としては、拡散機能、耐電防止機能、反射防止機能等の少なくともいずれか一つの機能を有した層が例示され得る。そして、このような層54は、上述した照射工程の後に行われる、別途の蒸着工程や塗布工程等によって形成され得る。あるいは、図7に示すように、さらなる層54を形成するフィルム材91を、成型ロール84とバックアップ手段86との間に送り込み、押し出し機82から押し出された押し出し材90に積層させるようにしてもよい。
【0089】
また、上述した実施の形態において、各層51,52,53を形成するための各樹脂材料が、光拡散剤等の種々の機能を発現させるための粒子や材料をさらに含むようにしてもよい。このような変形例によれば、各層51,52,53に、拡散機能や耐電防止機能等の種々の機能を付与することが可能となる。
【0090】
さらに、単位光学要素45が本体部40から出光側に突出するとともに、第2層52が第1層51の出光側に配置されて光学シート40の出光面40aを形成する例を示したが、これに限られない。例えば、単位光学要素45が本体部40から入光側に突出するとともに、第2層52が第1層51の入光側に配置されて光学シート40の入光面を40b形成するようにしてもよい。また、本体部40の両側から賦型が行われ、本体部40の一方の側の面上に単位光学要素45が形成されるとともに、本体部40の他方の側の面上にも第2の単位光学要素が形成されていてもよい。あるいは、本体部40の一方の側の面上に単位光学要素45が形成されるとともに、本体部40の他方の側の面上に、例えばエンボス模様等の凹凸が形成されていてもよい。
【0091】
さらに、上述した実施の形態において、単位光学要素45が、断面において、二等辺三角形形状を有する例を示したが、これに限られない。例えば、単位光学要素45の断面形状が、諸特性付与等の目的で、三角形形状に変調、変形を加えた形状であってもよい。具体例として、光学機能を適宜調整するために単位光学要素45の断面形状が、三角形のいずれか一以上の辺が折れ曲がった(屈曲した)形状、三角形のいずれか一以上の辺が湾曲した形状(所謂扇形)、三角形の頂点近傍を湾曲させて丸みを帯びさせた形状、三角形のいずれか一以上の辺に微小凹凸を付与した形状であってもよい。また、単位光学要素45の断面形状が、三角形形状以外の形状、例えば台形等の四角形、五角形、或は六角形等の種々の多角形形状を有するようにしてもよい。さらに、単位光学要素45が、断面において、円または楕円形状の一部分に相当する形状を有するようにしてもよい。
【0092】
さらに、上述した実施の形態において、光学シート40の単位光学要素45がすべて同一の構成を有する例を示したが、これに限られない。高さ及び断面形状等の少なくとも一つが互いに異なる複数種類の単位光学要素45が、光学シート40に含まれていてもよい。
【0093】
さらに、上述した実施の形態において、面光源装置20の光源25の発光部25aが、線状に延びる冷陰極管からなる例を示したが、これに限られない。光源25として、点状のLED(発光ダイオード)や面状のEL(電場発光体)等からなる発光部を用いることも可能である。また、上述した実施の形態において、光学シート40が直下型の面光源装置20に適用されている例を示したが、これに限られない。上述した光学シート40を、例えばエッジライト型(サイドライト型等とも呼ばれる)の面光源装置に適用することも可能であり、このような場合においても、光学シート40は直下型の面光源装置20に適用された場合と略同様の作用効果を奏することができる。
【0094】
さらに、上述した実施の形態において、光学シート40が組み込まれた面光源装置20および透過型表示装置10の全体構成の一例を説明したが、これに限られない。例えば、反射型の偏光分離フィルムや集光機能を有した更なる光学シート(集光シート)等を、追加で、面光源装置20および透過型表示装置10に組み込むようにしてもよい。
【0095】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0097】
実施例1〜4に係る光学シート(プリズムシート)および比較例1に係るプリズムシートを作製した。
【0098】
〔光学シート〕
実施例1〜4および比較例1に係る光学シートを同一の押し出し成型装置を用いて作製した。また、実施例1〜4に係る光学シートについては、押し出し成型装置で押し出された押し出し材に紫外線を照射して硬化処理を施した。
【0099】
光学シートの具体的な設計形状は次のようにした。上述した実施の形態と同様に、光学シートは、シート状の本体部と、本体部の出光側面上に一方向に沿って隙間無く配列された多数の単位光学要素と、を有するようにした。実施例1〜4および比較例1に係る光学シート間において、単位光学要素45の形状は同一とした。単位光学要素は、その配列方向と直交する方向に、直線状に延びるようにした。単位光学要素の主切断面における断面形状は、直角二等辺三角形形状とした。単位光学要素の配列ピッチ(幅)を50μmとした。また、実施例1〜4および比較例1に係る光学シート間において、本体部の厚みを300μmで同一とした。
【0100】
比較例1に係る光学シートは、MVR(メルトボリュームレート)が80程度と比較的に高い熱可塑性を有したポリカーボネート系樹脂からなる樹脂材料Aを、溶融温度220℃程度にて単層押し出し加工し、単一材料からなる部材として構成した。一方、実施例1および実施例3に係る光学シートは、図2に示された光学シートと同様に、3層同時押し出し加工によって、出光側から第2層、第1層、第3層の順番で積層された三層積層体として形成した。実施例1および実施例3に係る光学シートを作製する際、第2層、第1層および第3層をなすようになる各樹脂材料の供給量比を1:28:1とした。また、実施例2および実施例4に係る光学シートは、図5に示された光学シートと同様に、2層同時押し出し加工によって、出光側から第2層、第1層の順番で積層された二層積層体として形成した。実施例2および実施例4に係る光学シートを作製する際、第2層および第1層をなすようになる各樹脂材料の供給量比を1:29とした。
【0101】
実施例1〜4に係る光学シートの各第1層は、比較例1に係る光学シートをなす樹脂材料と同一の熱可塑性を有したポリカーボネート系樹脂からなる樹脂材料Aを用いた。実施例1に係る光学シートの第2層および第3層並びに実施例2に係る光学シートの第2層は、第1層の作製に用いられた熱可塑性を有したポリカーボネート系樹脂に、紫外線硬化性を発現させるための樹脂材料としてエチレンオキサイド10モル変性したビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを混合してなる樹脂材料Bを用いた。一方、実施例3に係る光学シートの第2層および第3層並びに実施例4に係る光学シートの第2層は、第1層の作製に用いられた熱可塑性を有したポリカーボネート系樹脂に、紫外線硬化性を発現させるための樹脂材料としてフェノキシエチル(メタ)アクリレートを混合してなる樹脂材料Cを用いた。
【0102】
なお、実施例1、3に係る光学シートの裏面、言い換えると、単位光学要素が形成されていない側における本体部の表面、さらに言い換えると、第3層の表面は、光学的に平坦な面とした。同様に、実施例2,4および比較例1に係る光学シートの裏面、言い換えると、単位光学要素が形成されていない側における本体部の表面、さらに言い換えると、第1層の表面は、光学的に平坦な面とした。
【0103】
〔評価方法〕
(評価方法1)
実施例1〜4および比較例1に係る光学シートを長さ150mm×幅40mmに切断して試験片を作製した。図8に示した耐摩耗試験機(商品名:AB−301、テスター(株)製)90の荷重部91の可動盤92側の面に、面積12cmの下偏光フィルム93(商品名:H25、大日本印刷(株)製)のマット層とは反対側の面を向け、当該荷重部91に対して当該下偏光フィルム93を巻き込むように固定した。次に、可動盤92の上に、上記試験片95をなす光学シート(40)の単位光学要素(45)の頂部(46a)が荷重部91側を向くように載置した。試験片95をなす光学シート(40)の単位光学要素(45)の頂部(46a)に、下偏光フィルム93のマット層が擦り合さるように荷重部91に250gの荷重をかけ、可動盤92を、試験片95をなす光学シート(40)の単位光学要素(45)の配列方向と平行な方向に20秒間で移動距離100mmを速度5mm/sの条件で移動させた後、各試験片95をなす光学シート(40)の単位光学要素(45)の頂部(46a)の状態を目視及び顕微鏡観察(デジタルマイクロスコープ VHX−200N、(株)キーエンス社製)により観察した。観察結果から、以下の基準にしたがって、実施例1、2および比較例1に係る光学シートについて、ハードコート性を評価し、実施例3、4および比較例1に係る光学シートについて、摺動性を評価した。評価結果を表1に示す。なお、ハードコート性および摺動性に用いられる評価テーブルは、天板となる曇りガラス下に40W蛍光灯が6本内蔵されている同人光機製の「スチールライトテーブルKLT−L406LC−F」とした。
【0104】
[ハードコート性評価]の基準
・評価5:顕微鏡観察(倍率500)で傷が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察(倍率500)で傷が確認されたが、評価テーブル上で目視では傷が確認されなかった。
・評価3:評価テーブル上で目視により傷が2〜3本確認された。
・評価2:評価テーブル上で目視により傷(スジ)が多数確認された。
・評価1:評価テーブル上で目視によりプリズム表面全面に削れた後が確認された。
【0105】
[摺動性評価]の基準
・評価5:顕微鏡観察(倍率500)で形状の変形が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察(倍率500)で形状の変形が確認されたが、評価テーブル上で目視では確認されなかった。
・評価3:評価テーブル上で目視で確認されたが、室温(25℃)で10分以内に元の形状に復元された。
・評価2:評価テーブル上で目視で確認されたが、室温(25℃)で10分以内に元の形状に復元されなかったが、35℃に加熱した場合、5分以内に元の形状に復元された。
・評価1:評価テーブル上で目視で確認されたが、35℃で加熱し5分以内に元の形状に復元されなかったが、80℃で1分加熱した場合、元の形状に復元された。
【0106】
(評価方法2)
作製された実施例1〜4および比較例1に係る光学シートについて、反りや曲がりの有無を調査した。三層構成からなる実施例1および3に係る光学シートには、反りや曲がりが発生していなかった。二層構成からなる実施例2および4に係る光学シートには、反りや曲がりが発生していたが、一層構成からなる比較例1に係る光学シートに生じていた反りや曲がりと比較して、僅かであった。
【0107】
(評価方法3)
実施例1〜4および比較例1に係る光学シートを用いて、上述した実施の形態と同様の面光源装置を作製した。すなわち、面光源装置は、細長状に延びる複数の冷陰極管からなる光源と、光源を取り囲む反射板と、光源の出光側に配置された拡散板、拡散板の出光側に配置された下拡散シートと、下拡散シートの出光側に配置された各光学シートと、当該光学シートの出光側に配置された上拡散シートと、を有するようにした。面光源装置に用いられた光学シート以外の部材は、各光学シートに対して同一のものを使用し、具体的には、市販されている表示装置(液晶テレビ)の面光源装置内に実際に組み込まれていたものを利用した。
【0108】
光源から光を発光した状態で、面光源装置の発光面(上拡散シートの出光面)にて正面方向輝度(cd/m2)の測定を行った。輝度の測定には、トプコン製のBM−7を用いた。輝度測定結果を表1に示す。表1においては、比較例1の透過型表示装置についての測定値に対する、各透過型表示装置についての測定値の割合を百分率で表している。実施例1〜4に係る透過型表示装置の正面方向輝度は、比較例1に係る透過型表示装置の正面方向輝度よりも高くなった。
【0109】
【表1】

【符号の説明】
【0110】
10 表示装置
15 透過型表示部(表示パネル)
20 面光源装置
22 反射板
25 光源
25a 発光部
28 拡散板
30 下拡散シート
30a 出光面
35 上拡散シート
35b 入光面
40 光学シート
40a 出光面
40b 入光面
42 本体部
45 単位光学要素(単位プリズム、単位形状要素)
45a 出光側面
46a 頂部(先端部)
46b 端部(基端部)
51 第1層
52 第2層
53 第3層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の本体部と、前記本体部の一側の面上に設けられた複数の単位光学要素と、を含む光学シートであって、
熱可塑性を有した第1の樹脂材料を用いて形成された第1層と、
前記第1層の一側に設けられ、熱可塑性および電離放射線硬化性の両方を有した第2の樹脂材料を用いて形成された第2層と、を備え、
前記第2層は、前記単位光学要素の表面に沿って延びている、光学シート。
【請求項2】
前記第2層の形成に用いられる第2の樹脂材料は、前記第1層の形成に用いられる第1の樹脂材料よりも、ハードコート性および摺動性の少なくとも一方において優れている、請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記第1層および前記第2層は、共押し出し加工により互いに積層されている、請求項1または2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記第1層の他側に設けられ、熱可塑性および電離放射線硬化性の両方を有した第3の樹脂材料を用いて形成された第3層を、さらに備え、
前記第3層は、前記第1層を他側から覆っている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項5】
前記第3層の形成に用いられる第3の樹脂材料は、前記第1層の形成に用いられる第1の樹脂材料よりも、ハードコート性および摺動性の少なくとも一方において優れている、請求項4に記載の光学シート。
【請求項6】
前記第1層、前記第2層および前記第3層は、共押し出し加工により互いに積層されている、請求項4または5に記載の光学シート。
【請求項7】
前記第3の樹脂材料は、前記第2の樹脂材料と同一である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項8】
前記複数の単位光学要素は、前記本体部の前記一側の面上の配列方向に沿って配列され、各単位光学要素は、前記配列方向と交差する前記一側の面上の方向に延びており、
前記複数の単位光学要素の配列方向と前記本体部のシート面への法線方向との両方向と平行な断面において、各単位光学要素は、直角の頂角が一側に突出した二等辺三角形形状となっている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項9】
前記本体部の他側の面上に設けられた複数の第2単位光学要素をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項10】
前記本体部の他側の面に凹凸が形成されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項11】
光源と、
請求項1〜10のいずれか一項に記載された光学シートであって、前記光源からの光を受ける光学シートと、を備える、面光源装置。
【請求項12】
請求項11に記載された面光源装置と、
前記面光源装置に対向して配置された透過型表示部と、を備える、表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−14059(P2012−14059A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152089(P2010−152089)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】