説明

光学シートおよびその製造方法ならびに表示装置

【課題】屈折率異方性を有する立体構造を精確に形成することの可能な光学シートの製造方法を提供する。
【解決手段】原盤100と光透過フィルム130との間に組成物110を保持した状態で、組成物110を融点温度T1以上の温度で加熱すると共に押圧する。これにより、組成物110が押圧によって、凸部100a同士の間で凸部100aの延在方向に向かって押し動かされ、液晶配向する。次に、ホットプレート120を原盤100から取り外し、組成物110を相転移温度Tよりも低い温度で紫外線Lを照射して、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマを光透過フィルム130側から重合する。これにより、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマが原盤100の凸部100aの延在方向に配向性を有する液晶性高分子となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率異方性を有する光学シートおよびその製造方法ならびに屈折率異方性を有する光学シートを内蔵する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、低消費電力、省スペース等の利点や、低価格化等により、従来から表示装置の主流であったブラウン管(CRT;Cathode Ray Tube)に置き換わりつつある。
【0003】
その液晶表示装置においても、例えば画像を表示する際の照明方法で分類するといくつかのタイプが存在し、代表的なものとして、液晶パネルの背後に配置した光源を利用して画像表示を行う透過型の液晶表示装置が挙げられる。
【0004】
ところで、このような表示装置では、消費電力を低減する共に表示輝度を高くすることが表示装置の商品価値を高める上で極めて重要である。そのため、光源の消費電力をできる限り低く抑えつつ、液晶パネルと光源との間に設けられた光学系の利得を高くすることが強く望まれている。
【0005】
例えば、輝度向上フィルムとしてのプリズムシートを液晶パネルと光源との間に設ける技術が開示されている。このプリズムシートは、例えば頂角90度の二等辺三角柱状の複数のプリズムを樹脂フィルム上に並列配置したものであり、プリズムの集光効果を利用して正面輝度を上げることが可能である。さらに、上記プリズムシートにおいて、プリズムの延在方向の屈折率と、プリズムの配列方向の屈折率とが互いに異なるプリズムを用いる技術が開示されている。このプリズムシートでは、プリズムの集光効果の他に、臨界角の違いによる界面反射を利用してプリズムの傾斜面で偏光分離を行うことにより、正面輝度を上げることが可能である。
【0006】
ところで、上記したような偏光分離機能を備えたプリズムシートは、例えば、半結晶性または結晶性の樹脂を含むシートの一の面に複数の立体構造を形成したのち、立体構造を形成した後のシートを面内の一の方向に延伸することにより作製することが可能である(特許文献1,2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平01−273002号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0138702号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の製法では、延伸時に立体構造が崩れ易く、所望の構造を精確に得ることが容易ではないという問題があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、形状の崩れがほとんどない、屈折率異方性を有する立体構造を備えた光学シートおよびこれを用いた表示装置を提供することにある。また、第2の目的は、屈折率異方性を有する立体構造を精確に形成することの可能な光学シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光学シートは、一の面内に連続して配置され、かつ一の面内において形状異方性を有する複数の立体構造を備えたものである。ここで、立体構造は、一の面内において配向性を有する液晶性高分子を含んでおり、この液晶性高分子の配向性に応じた屈折率異方性を有している。
【0011】
ここで、液晶性高分子とは、液晶を形成した高分子であり、液晶高分子、高分子液晶などとも称されるものである。この液晶性高分子は、主鎖型、側鎖型、複合型という3種類の構造に分類可能である。ここで、主鎖型とは、液晶性を発現する部位を主鎖に備えたものであり、側鎖型とは、液晶性を発現する部位を側鎖に備えたものであり、複合型とは、液晶性を発現する部位を主鎖および側鎖の双方に備えたものである。また、液晶性高分子は、上記した分類方法の他に、サーモトロピック(熱溶融型)、リオトロピック(溶液型)という2つの型に分類することも可能である。ここで、熱溶融型とは、加熱溶融することによって、液晶状態になるものであり、熱溶融型の1つとして液晶ポリマー(LCP)を挙げることができる。また、溶液型とは、溶液状態にすることによって、液晶状態になるものである。
【0012】
本発明の表示装置は、画像信号に基づいて駆動されるパネルと、表示パネルを挟む一対の偏光子と、パネルを照明する光源と、偏光子と光源との間に設けられた上記光学シートとを備えている。
【0013】
本発明の光学シートおよびそれを備えた表示装置では、光学シートの一の面内において形状異方性を有する立体構造が、上記一の面内において配向性を有する液晶性高分子を含んで構成されており、この液晶性高分子の配向性に応じた屈折率異方性を有している。ここで、配向性を有する液晶性高分子は、例えば、一の面内に連続して配置され、かつ一の面内において形状異方性を有する複数の立体構造を備えた原盤と、原盤の立体構造と対向配置された光透過フィルムとの間に、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマと光重合開始剤とを含む組成物を保持した状態で、組成物を、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマの融点以上の温度で加熱すると共に押圧したのち、等方相への相転移温度よりも低い温度で組成物に対して紫外線を照射して、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマを重合させることにより形成可能なものである。また、延伸により液晶性高分子に配向性を持たせることはできないことから、本光学シートは延伸以外の方法で形成されたものと言える。
【0014】
本発明の光学シートの製造方法は、以下の2つの工程を含むものである。
(A)一の面内に連続して配置され、かつ一の面内において形状異方性を有する複数の立体構造を備えた原盤と、原盤の立体構造と対向配置された光透過フィルムとの間に、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマと光重合開始剤とを含む組成物を保持した状態で、組成物を、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマの融点以上の温度で加熱すると共に押圧する第1工程
(B)相転移温度よりも低い温度に冷却された後の組成物に対して紫外線を照射して、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマを重合させたのち、光透過フィルムを原盤から剥離する第2工程
【0015】
本発明の光学シートの製造方法では、組成物内の液晶性モノマまたは液晶性プレポリマが融点以上の温度で加熱されることによって液体状態となり、液体状態となった組成物が押圧によって原盤の立体構造の延在方向に押し動かされ、液晶配向する。その後、組成物に対して紫外線が照射されることにより、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマが重合し、原盤の立体構造の延在方向に配向性を有する液晶性高分子となる。このように、延伸を用いないで、組成物に対して屈折率異方性を付与することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学シートおよび表示装置によれば、配向性を有する液晶性高分子を用いることにより、光学シートの立体構造に屈折率異方性を発現させるようにしたので、光学シートの立体構造には延伸による形状の崩れがない。これにより、形状の崩れがほとんどない、屈折率異方性を有する立体構造を備えた光学シートを実現することができる。
【0017】
本発明の光学シートの製造方法によれば、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマと光重合開始剤とを含む組成物に対して、加熱、押圧、冷却および紫外線照射の各処理を順に行うことにより、光学シートの立体構造に屈折率異方性を発現させるようにしたので、延伸を用いなくても、光学シートの立体構造に屈折率異方性を付与することができる。これにより、屈折率異方性を有する立体構造を精確に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示装置1の概略構成を表すものである。この表示装置1は、液晶表示パネル10と、この液晶表示パネル10を挟む第1偏光子20Aおよび第2偏光子20Bと、第1偏光子20Aの背後に配置された照明装置30と、液晶表示パネル10を駆動して映像を表示させるための駆動回路(図示せず)とを備えており、第2偏光子20Bの表面が観察者(図示せず)側に向けられている。
【0020】
液晶表示パネル10は、例えば、映像信号に応じて各画素が駆動される透過型の表示パネルであり、液晶層を一対の透明基板で挟み込んだ構造となっている。具体的には、観察者側から順に、透明基板と、カラーフィルタと、透明電極と、配向膜と、液晶層と、配向膜と、透明画素電極と、透明基板とを有している。
【0021】
ここで、透明基板は、一般に、可視光に対して透明な基板である。なお、照明装置30側の透明基板には、透明画素電極に電気的に接続された駆動素子としてのTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)および配線などを含むアクティブ型の駆動回路が形成されている。カラーフィルタは、照明装置30からの射出光を例えば、赤(R)、緑(G)および青(B)の三原色にそれぞれ色分離するためのカラーフィルタを配列して形成されている。透明電極は、例えばITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)からなり、共通の対向電極として機能する。配向膜は、例えばポリイミドなどの高分子材料からなり、液晶に対して配向処理を行う。液晶層は、例えばVA(Virtical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)モード、またはSTN(Super TwistedNematic)モードの液晶からなり、図示しない駆動回路からの印加電圧により、照明装置30からの射出光を各画素ごとに透過または遮断する機能を有している。透明画素電極は、例えばITOからなり、画素ごとの電極として機能する。
【0022】
第1偏光子20Aは、液晶表示パネル10の光入射側に配置された偏光子であり、第2偏光子20Bは液晶表示パネル10の光射出側に配置された偏光子である。第1偏光子20Aおよび第2偏光子20Bは、光学シャッタの一種であり、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。第1偏光子20Aおよび第2偏光子20Bはそれぞれ、偏光軸が互いに90度異なるように配置されており、これにより照明装置30からの射出光が液晶層を介して透過し、あるいは遮断されるようになっている。
【0023】
第1偏光子20Aの偏光軸a(透過軸)の向きは、後述の凸部33aの延在方向における輝度向上フィルム33の屈折率と、凸部33aの延在方向と直交する方向における輝度向上フィルム33の屈折率との大小関係によって決定される。具体的には、偏光軸aと平行な方向の輝度向上フィルム33の屈折率が偏光軸aと直交する方向における輝度向上フィルム33の屈折率よりも小さくなるように、第1偏光子20Aの偏光軸aの向きが設定されている。
【0024】
例えば、凸部33aの延在方向における輝度向上フィルム33の屈折率の方が凸部33aの延在方向と直交する方向における輝度向上フィルム33の屈折率よりも小さい場合には、第1偏光子20Aの偏光軸aの向きを、図1に示すように、凸部33aの延在方向と平行な方向の向きにすることが好ましい。ただし、適当な角度輝度分布を得ることや液晶表示パネル10のコントラストを向上させる等の他の理由により、偏光軸aと凸部33aの延在方向の向きとを一致させられないときには、偏光軸aと凸部33aの延在方向との成す角度を広げてもよい。この場合、正面輝度の向上のためにはこの角度を0度より大きく45度より小さくする必要があり、より好ましくは0度より大きく20度より小さくすることが望ましい。
【0025】
一方、凸部33aの延在方向と直交する方向における輝度向上フィルム33の屈折率の方が凸部33aの延在方向における輝度向上フィルム33の屈折率よりも小さい場合には、第1偏光子20Aの偏光軸aの向きを、凸部33aの延在方向と直交する方向の向きにすることが好ましい。ただし、上記と同様の理由により、偏光軸aと凸部33aの延在方向と直交する方向の向きを一致させられないときには、偏光軸aと凸部33aの延在方向との成す角度を広げてもよい。この場合、正面輝度の向上のためにはこの角度を0度より大きく45度より小さくする必要があり、より好ましくは0度より大きく20度より小さくすることが望ましい。
【0026】
なお、本実施の形態において、輝度向上フィルム33が本発明の「光学シート」の一具体例に相当し、凸部33aが本発明の「立体構造」の一具体例に相当する。
【0027】
照明装置30は、光源31を有しており、例えば、光源31の液晶表示パネル10側に、拡散シート32と、輝度向上フィルム33とが光源31側から順に配置されており、他方、光源31の背後に、反射シート34が配置されている。このように、本実施の形態では、照明装置30はいわゆる直下型となっているが、例えば、導光板を使用するサイドエッジ型となっていてもよい。
【0028】
光源31は、例えば、複数の線状光源31aが等間隔(例えば20mm間隔)で並列配置されたものである。線状光源31aは、例えば、熱陰極管(HCFL;Hot Cathode Fluorescent Lamp)または冷陰極管(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)などが挙げられる。なお、光源31は、例えば発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)などの点光源を2次元配列したものであってもよいし、有機EL(Electro Luminescence)などの面光源であってもよい。
【0029】
反射シート34は、例えば、発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)や銀蒸着フィルム、多層膜反射フィルムなどであり、光源31からの射出光の一部を、液晶表示パネル10の方向へ反射するようになっている。これにより、光源31からの射出光を効率的に利用することができる。
【0030】
拡散シート32は、例えば、比較的厚手の板状の透明樹脂の内部に拡散材(フィラ)を分散して形成された拡散板、比較的薄手のフィルム状の透明樹脂上に拡散材を含む透明樹脂(バインダ)を塗布して形成された拡散フィルム、またはこれらを組み合わせたものである。板状またはフィルム状の透明樹脂には、例えばPET、アクリル、ポリカーボネートなどが用いられる。拡散材には、例えば、SiOなどの無機フィラや、アクリルなどの有機フィラなどが用いられる。
【0031】
輝度向上フィルム33は、例えば、透光性を有する樹脂材料からなり、当該輝度向上フィルム33を含む面が液晶表示パネル10の表面と平行となるように配置されている。この輝度向上フィルム33の光射出側の面(表面)には、図1、図2に示したように、複数の柱状の凸部33aが光射出側の面内の一の方向に延在すると共に、延在方向と交差する方向に連続的に並列配置されている。他方、この輝度向上フィルム33の光入射側の面(裏面33b)は、例えば、平面となっている。なお、図2は、輝度向上フィルム33の断面の一例を拡大して表した断面図であり、図1には、複数の柱状の凸部33aが延在方向と直交する方向に連続的に並列配置されている場合が例示されている。
【0032】
各凸部33aは、例えば、図2に示したように、頂角θの頭部33cに接する傾斜面33d,33eを有する三角柱形状となっており、これら傾斜面33d,33eは、当該輝度向上フィルム33を含む面に対して底角θ,θで斜めに対向して配置されている。各凸部33aの配列方向の幅(ピッチP)は、例えば10μm以上350μm以下となっている。なお、各凸部33aは、図2に示したような三角柱形状に限定されるものではなく、例えば、五角柱形状などの多角柱形状であってもよいし、各凸部33aの延在方向と直交する方向に、楕円形状および非球面形状などの曲面形状(例えばシリンドリカル形状)を有するものであってもよい。
【0033】
また、各凸部33aが互いに同一の形状および同一の大きさになっていなくてもよい。例えば、(ア)隣接する同一形状の2つの凸部33aの一方が高く(大きく)、他方が低い(小さい)一組の立体構造を配列方向に等ピッチで並べて配置してもよいし、例えば、(イ)隣接する同一高さの2つの凸部33aの形状が互いに異なる一組の立体構造を配列方向に等ピッチで並べて配置してもよいし、例えば、(ウ)隣接する2つの凸部33aの形状および大きさ(高さ)の双方が互いに異なる一組の立体構造を配列方向に等ピッチで並べて配置してもよい。なお、各凸部33aの延在方向に複数の凸部や凹部を設けてもよい。
【0034】
これにより、各凸部33aは、輝度向上フィルム33の裏面33b側から入射した光のうち各凸部33aの配列方向の成分を液晶表示パネル10と直交する方向に向けて屈折透過させ、指向性を増加させるようになっている。なお、各凸部33aでは、輝度向上フィルム33の裏面33b側から入射した光のうち各凸部33aの延在方向の成分については各凸部33aの屈折作用による集光効果が少ない。
【0035】
ところで、本実施の形態では、各凸部33aは、一の方向の屈折率が一の方向と直交する方向の屈折率よりも大きい屈折率異方性を有している。具体的には、各凸部33aにおいて、偏光軸aと平行な方向の屈折率が偏光軸aと直交する方向の屈折率よりも小さくなっている。ここで、各凸部33aの延在方向の屈折率が各凸部33aの配列方向の屈折率よりも小さくなっている場合には、各凸部33aの延在方向が偏光軸aと平行となっていることが好ましく、その逆に、各凸部33aの延在方向の屈折率が各凸部33aの配列方向の屈折率よりも大きくなっている場合には、各凸部33aの延在方向が偏光軸aと直交していることが好ましい。
【0036】
このように、本実施の形態では、各凸部33aは、偏光軸aと平行な方向の屈折率が偏光軸aと直交する方向の屈折率よりも小さくなるような屈折率異方性を面内に持っているので、偏光軸aと直交する方向についてより多く反射し、戻り光のリサイクルを行うことにより偏光軸aと平行な方向の光を増加させることができる。従って、輝度向上フィルム33へ入射する光の透過特性を偏光状態に応じて変えることができる。なお、各凸部33aが光射出側(表面)に設けられているときの方が光入射側(裏面)に設けられているときよりも臨界角の関係からリサイクル効率がよい。
【0037】
ここで、屈折率の面内異方性は、半結晶性または結晶性の樹脂を含むシートを一の方向に延伸することにより発現させることが可能ではあるが、本実施の形態では、後述の製造方法を用いることにより、延伸を用いないで屈折率の面内異方性を発現させている。延伸しなくても屈折率の面内異方性を発現する材料としては、例えば、配向性を有する液晶性高分子が挙げられる。
【0038】
ここで、液晶性高分子とは、液晶を形成した高分子であり、液晶高分子、高分子液晶などとも称されるものである。この液晶性高分子は、主鎖型、側鎖型、複合型という3種類の構造に分類可能である。ここで、主鎖型とは、液晶性を発現する部位を主鎖に備えたものであり、側鎖型とは、液晶性を発現する部位を側鎖に備えたものであり、複合型とは、液晶性を発現する部位を主鎖および側鎖の双方に備えたものである。また、液晶性高分子は、上記した分類方法の他に、サーモトロピック(熱溶融型)、リオトロピック(溶液型)という2つの型に分類することも可能である。ここで、熱溶融型とは、加熱溶融することによって、液晶状態になるものであり、熱溶融型の1つとして液晶ポリマー(LCP)を挙げることができる。また、溶液型とは、溶液状態にすることによって、液晶状態になるものである。
【0039】
この液晶性高分子は、例えば、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマと光重合開始剤とを含む組成物に対して紫外線を照射して、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマを重合させることにより形成することが可能な材料である。
【0040】
次に、輝度向上フィルム33全体の屈折率が各凸部33aの延在方向と、各凸部33aの配列方向とで異なる場合における輝度向上フィルム33の機能について説明する。
【0041】
図3は、輝度向上フィルム33全体が、各凸部33aの延在方向の屈折率nxが各凸部33aの配列方向の屈折率nyよりも大きい(nx>ny)材料により構成されている場合に、輝度向上フィルム33の裏面から照明装置30の光が入射したときの光の経路の一例を示したものである。なお、図3において、Lxは、照明装置30の光のうち各凸部33aの延在方向(X方向)に振動する偏光成分を示し、Lyは、照明装置30の光のうち各凸部33aの配列方向(Y方向)に振動する偏光成分を示している。
【0042】
輝度向上フィルム33を含む面に対して斜め方向から入射した照明装置30の光は、各凸部33aの延在方向と、各凸部33aの配列方向とで各凸部33aおよび各凸部33bの屈折率が異なる(図3ではnx>ny)ことから、輝度向上フィルム33の裏面において照明装置30の光のX方向偏光成分LxとY方向偏光成分Lyとは異なる屈折角rx,ry(図3ではrx<ry)でそれぞれ屈折するとともに、異なる射出角φx,φy(図3ではφx>φy)で輝度向上フィルム33の表面(各凸部33aの光射出面)から射出する。
【0043】
(フレネル反射)
このとき、輝度向上フィルム33は各凸部33aの延在方向と各凸部33aの配列方向とで異なる屈折率(図3ではnx>ny)を有しているので、これら各方向に振動する偏光成分は、輝度向上フィルム33の裏面および凸部33aの光射出面といった界面において、互いに異なる反射率で反射される。従って、図3に例示したように、輝度向上フィルム33全体において、各凸部33aの延在方向の屈折率nxの方が各凸部33aの配列方向の屈折率nyよりも大きい場合(ケースAの場合)には、Lxの反射量がLyの反射量よりも大きくなる。そのため、輝度向上フィルム33を透過した光において、Lyの光量の方がLxの光量よりも多くなる。 逆に、輝度向上フィルム33全体において、各凸部33aの延在方向の屈折率nxの方が各凸部33aの配列方向の屈折率nyよりも小さい場合(ケースBの場合)には、Lyの反射量がLxの反射量よりも大きくなる。そのため、輝度向上フィルム33を透過した光において、Lxの光量の方がLyの光量よりも多くなる。
【0044】
また、輝度向上フィルム33は各凸部33aの延在方向と各凸部33aの配列方向とで異なる屈折率(図3ではnx>ny)を有しているので、これらの各方向に振動する偏光成分は、輝度向上フィルム33の裏面および凸部33aの光入射面といった界面において、互いに異なる臨界角を有する。従って、ケースAの場合に、図3の中央部に例示したように、ある入射角で入射した光は光射出面において、その射出面に入る角度がLxの臨界角よりも大きく、Lyの臨界角よりも小さいときには、Lxは全反射し、Lyは透過する。よって、偏光成分Lxが各凸部33aの光射出面で全反射を繰り返して戻り光となり、偏光成分Lyのみが各凸部33aの光射出面を透過する完全な偏光分離状態を実現することができる。逆に、ケースBの場合には、ある入射角で入射した光は光射出面において、その射出面に入る角度がLyの臨界角よりも大きく、Lxの臨界角よりも小さいときには、Lyは全反射し、Lxは透過する。よって、偏光成分Lyが各凸部33aの光射出面で全反射を繰り返して戻り光となり、偏光成分Lxのみが各凸部33aの光射出面を透過する完全な偏光分離状態を実現することができる。
【0045】
また、各凸部33aの光射出面に対する照明装置30の光の入射角が大きくなり過ぎると、ケースAおよびケースBのいずれの場合においても、図3の右側に示したように、照明装置30の光は偏光状態に関係なく、各凸部33aの光射出面において全反射を繰り返して、照明装置30側へ戻る戻り光となる。
【0046】
ここで、輝度向上フィルム33の表面または裏面で反射された光は、照明装置30の反射シート34(図1)や拡散シート32の表面において反射し無偏光化されて再び輝度向上フィルム33へ入射する。これにより、一方の偏光成分(図3ではLy)の光量を他方の偏光成分(図3ではLx)の光量よりも格段に多くすることが可能となる。その結果、各凸部33aが偏光分離作用を有していない場合よりも、光の利用効率が高まり正面輝度が向上する。
【0047】
なお、光透過フィルムの上に、輝度向上フィルム33を裏面33b側から張り合わせた場合や、輝度向上フィルム33の凸部33aだけが面内に屈折率異方性を有している場合には、光透過フィルムとの接触面や、凸部33bの底部が、輝度向上フィルム33全体が屈折率異方性を有している場合における裏面33bとして機能する。従って、輝度向上フィルム33を裏面33b側から張り合わせた場合や、輝度向上フィルム33の凸部33aだけが屈折率異方性を有している場合にも、輝度向上フィルム33全体に面内の屈折率異方性をもたせた場合と同様の光学的な機能を発揮する。
【0048】
このように、輝度向上フィルム33は、集光作用に加え、偏光分離作用によって正面輝度を向上させるようになっている。
【0049】
次に、図4(A)〜(B)、図5(A)〜(C)、図6(A),(B)および図7を参照して、輝度向上フィルム33の形成方法の一例について説明する。なお、図4(A)〜(C)、図5(A)〜(C)、図6(A),(B)は、輝度向上フィルム33の形成過程を説明するための断面構成を表したものであり、図7は、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマのDSC曲線の一例を表したものである。なお、図7において、Tは液晶相への相転移温度(融点)であり、Tは等方相への相転移温度である。
【0050】
まず、一の面内に連続して配置され、かつ一の面内において形状異方性を有する複数の凸部100aを有する原盤100を用意する(図4(A)参照)。この原盤100の複数の凸部100aによって形成される凹凸形状は、輝度向上フィルム33上に2次元配置された複数の凸部33aによって形成される凹凸形状と反対の凹凸形状となっている。次に、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマを溶剤に溶解させたものに光重合開始剤を混合した組成物110(溶液)を用意する。なお、この溶液の代わりに、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマと光重合開始剤とを混合した組成物110(液晶調整粉)を用いてもよい。
【0051】
次に、原盤100の凸部100a上に、組成物110を配置したのち(図4(A))、原盤100をホットプレート120上に配置して、組成物110に含まれる液晶性モノマまたは液晶性プレポリマの融点T1(図7参照)以上の温度(例えば170℃)で加熱する(図4(B))。すると、組成物110として上記した溶液を用いた場合には、組成物110の粘性が低下して組成物110が凸部100aに隙間無く接すると共に、組成物110に含まれる溶剤が蒸発する。また、組成物110として上記した液晶調整粉を用いた場合には、組成物110が溶解すると共に、組成物110の粘性が低下して組成物110が凸部100aに隙間無く接する。
【0052】
次に、ホットプレート120の温度を、融点T1以上の温度(例えば140℃)にまで下げたのち、光透過フィルム130を、組成物110上に乗せる(図5(A))。このようにして、原盤100と、原盤100の凸部100aと対向配置された光透過フィルム130との間に、組成物110を保持した状態で、この組成物110を、融点T1以上の温度であって、かつ相転移温度T以下の温度(例えば120℃)で加熱すると共に押圧する。例えば、図5(B)に示したように、押圧ローラ140を光透過フィルム130上で転がしつつ、光透過フィルム130を介して組成物110を原盤100の凸部100aに押し当てる。これにより、組成物110が押圧によって、互いに隣り合う凸部100aおよび凸部100aの間の谷部の中で、凸部100aの延在方向に向かって押し動かされる。その結果、組成物110は液晶配向すると共に、高さHの凸部110aと、厚さHの袴110bとを有する光学機能層が形成される。
【0053】
その後、ホットプレート120を原盤100から取り外す(図5(C))。次に、組成物110に対して紫外線Lを照射する。例えば、図6(A)に示したように、光透過フィルム130側から組成物110に対して紫外線Lを照射して、組成物110に含まれる液晶性モノマまたは液晶性プレポリマを光透過フィルム130側から重合する。これにより、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマが原盤100の凸部100aの延在方向に配向性を有する液晶性高分子となる。最後に、光透過フィルム130を原盤100から剥離する(図6(B))。このようにして、配向性を有する液晶性高分子を含む組成物110と、光透過フィルム130とを備えた輝度向上フィルム33が形成される。
【0054】
なお、輝度向上フィルム33は、例えば、以下に示した方法でも形成することが可能である。
【0055】
図8は輝度向上フィルム33の製造装置の一例を表したものである。この製造装置は、巻き出しロール200と、ガイドロール210,260,270と、ヒートロール220,230と、温調ロール240,250と、吐出機300と、紫外線照射機310とを備えたものである。ここで、巻き出しロール200は、光透過フィルム130を同心円状に巻いたものであり、光透過フィルム130を供給するためものである。巻き出しロール200から巻き出された光透過フィルム130は、ガイドロール210、ヒートロール220、ヒートロール230、温調ロール240、ガイドロール260、ガイドロール270の順に流れて行き、最後に巻き取りロール280で巻き取られるようになっている。温調ロール250は、ヒートロール230,240と所定の間隙を介して配置されている。吐出機は、巻き出しロール200から供給された光透過フィルム130のうちヒートロール220と接する部分と所定の間隙を介して吐出機300が設けられている。紫外線照射機310は、巻き出しロール200から供給された光透過フィルム130のうちヒートロール240を通過した後の部分であって、かつ温調ロール250と接している部分に対して紫外線を照射するようになっている。
【0056】
ガイドロール210は、巻き出しロール200から供給された光透過フィルム130をヒートロール220に導くためのものである。ヒートロール220は、常温から200℃程度まで発熱可能なものであり、例えば融点T1以上の温度(140℃)の発熱温度に設定されている。巻き出しロール200から供給された光透過フィルム130のうちヒートロール220と接する部分と所定の間隙を介して吐出機300が設けられている。この吐出機300は、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマを熱溶解させたものに光重合開始剤を混合した組成物110を融点T1以上の温度(例えば160℃)で加熱しつつ、光透過フィルム130上に滴下するためものである。ヒートロール230は、常温から200℃程度まで発熱可能なものであり、例えば、融点T1以上の温度(120℃)に設定されている。温調ロール240,250は、常温から90℃程度まで温度調節可能なものであり、例えば、相転移温度Tよりも低い温度(常温)の冷却温度に設定されている。また、温調ロール250の周面には、周面内に連続して配置され、かつ周面内において形状異方性を有する複数の凸部が形成されている。周面に形成された複数の凸部によって形成される凹凸形状は、輝度向上フィルム33上に2次元配置された複数の凸部33aによって形成される凹凸形状と反対の凹凸形状となっている。ガイドロール260は、温調ロール250に巻きついている光透過フィルム130を剥がすためのものである。また、ガイドロール270は、ガイドロール260によって剥がされた光透過フィルム130を巻き取りロール280に導くためのものである。
【0057】
このような構成の製造装置を用いて、輝度向上フィルム33を形成する。具体的には、まず、巻き出しロール200から巻き出した光透過フィルム130を、ガイドロール210を介してヒートロール220に導いたのち、光透過フィルム130上に、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマを熱溶解させたものに光重合開始剤を混合した組成物110を、吐出機300から滴下する。吐出機300から滴下された組成物110をヒートロール220で、融点T1(図7参照)以上の温度(例えば140℃)に加熱したのち、ヒートロール230によって、光透過フィルム130上の組成物110の温度を、融点T1以上の温度で維持しつつ、組成物110を温調ロール250の周面に形成された凸部に押し当てる。これにより、組成物110が温調ロール250の凸部に隙間無く接すると共に、組成物110が押圧によって、互いに隣り合う凸部同士の間の谷部の中で、凸部の延在方向に向かって押し動かされる。その結果、組成物110には、高さHの凸部110aと、厚さHの袴110bとを有する光学機能層が形成される。
【0058】
その後、温調ロール240,250で、組成物110を相転移温度T2よりも低い温度に冷却して、紫外線照射機310から、冷却された組成物110に対して紫外線Lを照射する。これにより、組成物110に含まれる液晶性モノマまたは液晶性プレポリマが光透過フィルム130側から重合するので、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマが温調ロール250の凸部の延在方向に配向性を有する液晶性高分子となる。最後に、ガイドロール260で、光透過フィルム130を温調ロール250から剥離したのち、ガイドロール270を介して巻き取りロール280に巻き取る。このようにして、配向性を有する液晶性高分子を含む組成物110と、光透過フィルム130とを備えた輝度向上フィルム33が形成される。
【0059】
なお、輝度向上フィルム33を上記各製造方法で製造した場合には、袴110bの厚さHは、凸部110aの高さHの40%以下となっていることが好ましい。
【0060】
次に、本実施の形態の表示装置1において画像を表示する際の作用について、図9を参照しつつ説明する。なお、図9は、表示装置1の作用の一例を模式的に表したものである。
【0061】
照明装置30から照射され拡散シート31を透過した無偏光の光Lは、輝度向上フィルム33の裏面に入射し、凸部33aの集光作用によって指向性を高める。また、このとき、光Lは、凸部33aの偏光分離作用によって第1偏光子20Aの偏光軸aと平行な偏光成分(図9ではLy)に分離されて、第1偏光子20Aへ入射する。
【0062】
第1偏光子20Aへ入射した光Lのうち、偏光軸aと交差する偏光成分(図9ではLx)が第1偏光子20Aで吸収され、偏光軸aと平行な偏光成分(図9ではLy)が第1偏光子20Aを透過する。第1偏光子20Aを透過したLyは、液晶表示パネル10において画素単位で偏光制御がなされて第2偏光子20Bへ入射し、第2偏光子12Bの偏光軸bの偏光のみが透過してパネル正面に画像を形成する。このようにして、表示装置1において画像が表示される。
【0063】
ところで、本実施の形態では、輝度向上フィルム33の一の面内において形状異方性を有する凸部33aが、上記一の面内において配向性を有する液晶性高分子を含んで構成されており、この液晶性高分子の配向性に応じた屈折率異方性を有している。ここで、配向性を有する液晶性高分子は、例えば、上記したように、一の面内に連続して配置され、かつ一の面内において形状異方性を有する複数の凸部100aを備えた原盤100と、原盤100の凸部100aと対向配置された光透過フィルム130との間に、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマと光重合開始剤とを含む組成物110を保持した状態で、組成物110を相転移温度T以上の温度で加熱すると共に押圧したのち、相転移温度Tよりも低い温度に冷却し、その後、相転移温度Tよりも低い温度に冷却された後の組成物110に対して紫外線を照射して、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマを重合させることにより形成可能なものである。また、延伸により液晶性高分子に配向性を持たせることはできないことから、本実施の形態の輝度向上フィルム33は延伸を用いて形成することができず、上記で例示した方法で形成可能と言える。これにより、輝度向上フィルム33の凸部33aには延伸による形状の崩れがないので、形状の崩れがほとんどない、屈折率異方性を有する凸部33aを備えた輝度向上フィルム33を実現することができる。
【0064】
また、本実施の形態の輝度向上フィルム33の製造方法では、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマと光重合開始剤とを含む組成物110に対して、上記した加熱、押圧、冷却および紫外線照射の各処理を順に行うことにより、輝度向上フィルム33の凸部33aに屈折率異方性を発現させるようにしたので、延伸を用いなくても、輝度向上フィルム33の凸部33aに屈折率異方性を付与することができる。これにより、屈折率異方性を有する凸部33aを精確に形成することができる。
【0065】
[実施例]
次に、上記実施の形態の輝度向上フィルム33の実施例1〜2について比較例1〜3と対比して説明する。実施例1〜2および比較例1〜3において、製造過程における押圧の強さおよび紫外線照射時の組成物110の温度の少なくとも1つが互いに異なっている。具体的には、表1に示したようになっている。なお、表1において、押圧の強さが「なし」とは、組成物110上に光透過フィルム130を配置した際に、組成物110と光透過フィルム130とを互いに張り合わせる目的で与える押圧以外の圧力を特に与えていないことを意味する。
【表1】

【0066】
実施例1〜2および比較例1〜3において、輝度向上フィルムの凸部の形状を直角二等辺三角柱とし、輝度向上フィルムの凸部の幅を50μm、高さを25μmとした。また、配向性を有する液晶性高分子を形成する際の出発材料として、液晶性モノマを溶剤に溶解させたものに光重合開始剤を混合した溶液(RMS03-001C、メルク社製、等方相への相転移温度70℃)を用いた。
【0067】
[断面形状]
輝度向上フィルムの配列方向の断面を走査型共焦点レーザ顕微鏡(LEXT OLS3000、オリンパス(株)製)で測定した。その結果、実施例1〜2および比較例1〜3において、輝度向上フィルムの断面はそれぞれ、原盤100の凹凸形状と同じ頂角90度、底角45度の直角二等辺三角形となっていた。このことから、輝度向上フィルムの凸部には形状の崩れが無いことがわかった。
【0068】
[複屈折性]
次に、輝度向上フィルムの複屈折性を測定した。複屈折性の測定には、図10に示すように、輝度向上フィルム33の凸部33a側から偏光を垂直に入射し、透過光を測定器40で検出し、透過光の出射角φの違いにより、凸部33aの延在方向の屈折率nxと配列方向の屈折率nyとの差Δn(=nx−ny)を算出した。なお、図11に示したように、凸部33aの延在方向に振動する偏光成分を垂直偏光Lxとし、凸部33aの配列方向に振動する偏光成分を水平偏光Lyとすると、図12に示したように、垂直偏光Lxの射出角φxの方が水平偏光Lyの射出角φyよりも大きくなった。なお、図12の縦軸の単位(a.u.)は、arbitrary unit(任意単位)のことで「相対値」であることを示している。
【0069】
測定の結果、実施例1〜2において、輝度向上フィルムの延在方向の屈折率nxが1.54であり、配列方向の屈折率nyが1.66であったので、屈折率の差Δnは0.12であった。このことから、配向性を有する液晶性高分子を用いることにより、屈折率異方性を発現させることができることがわかった。一方、比較例1〜3においては、輝度向上フィルムの延在方向の屈折率nxが1.56であり、配列方向の屈折率nyが1.56であったので、屈折率の差Δnは0.00であった。このことから、配向性を有する液晶性高分子を用いた場合であっても、押圧の強さが弱かったり、紫外線照射時の組成物110の温度が相転移温度T(融点)以上の温度となっている場合には、屈折率異方性を発現させることができないことがわかった。なお、袴の厚さHが厚い場合(H/H≧60%以上)には、袴の部分が白化してしまうことがわかった。
【0070】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0071】
また、上記実施の形態等では、液晶表示装置の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成の一例を展開して表す斜視図である。
【図2】図1の輝度向上フィルムの構成の一例を表す断面図である。
【図3】図1の輝度向上フィルムの光学特性について説明するための概念図である。
【図4】図1の輝度向上フィルムの形成方法の一例について説明するための断面図である。
【図5】図4に続く工程について説明するための断面図である。
【図6】図5に続く工程について説明するための断面図である。
【図7】DSC曲線について説明するための特性図である。
【図8】図1の輝度向上フィルムを他の方法で形成するための製造装置の概略構成図である。
【図9】図1の表示装置の動作について説明するための概略構成図である。
【図10】複屈折性を測定する方法の一例について説明するための概念図である。
【図11】複屈折性の偏光軸について説明するための概念図である。
【図12】輝度向上フィルムの射出角と光量との関係を表す関係図である。
【符号の説明】
【0073】
1…表示装置、10…液晶表示パネル、20A…第1偏光子、20B……第2偏光子、30…照明装置、31…光源、31a…線状光源、32…拡散シート、33…輝度向上フィルム、33a…凸部、34…反射シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の面内に連続して配置され、かつ前記一の面内において形状異方性を有する複数の立体構造を備えた光学シートであって、
前記立体構造は、前記一の面内において配向性を有する液晶性高分子を含み、この液晶性高分子の配向性に応じた屈折率異方性を有する
ことを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記立体構造は、前記一の面内の所定の方向に延在する柱形状となっており、
前記各立体構造の延在方向の屈折率が前記各立体構造の延在方向と交差する方向の屈折率よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記立体構造は、前記一の面内の所定の方向に延在する柱形状となっており、
前記各立体構造の延在方向の屈折率が前記各立体構造の延在方向と交差する方向の屈折率よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の光学シート。
【請求項4】
前記立体構造は、前記一の面内の所定の方向に延在する柱形状となっており、
前記液晶性高分子の配向方向が前記立体構造の延在方向と平行となっている
ことを特徴とする請求項1に記載の光学シート。
【請求項5】
前記立体構造は、多角柱状のプリズム、または突状の曲面を含むレンチキュラーレンズである
ことを特徴とする請求項1に記載の光学シート。
【請求項6】
基材と、
前記基材上に形成された光学機能層と
を備え、
前記立体構造は、前記光学機能層の前記基材とは反対側の表面に形成され、
前記光学機能層のうち前記立体構造と前記基材との間の部分の厚さは、前記立体構造の高さの40%以下となっている
ことを特徴とする請求項第1項記載の光学シート。
【請求項7】
一の面内に連続して配置され、かつ前記一の面内において形状異方性を有する複数の立体構造を備えた原盤と、前記原盤の立体構造と対向配置された光透過フィルムとの間に、液晶性モノマまたは液晶性プレポリマと光重合開始剤とを含む組成物を保持した状態で、前記組成物を、前記液晶性モノマまたは液晶性プレポリマの融点以上の温度で加熱すると共に押圧する第1工程と、
等方相への相転移温度よりも低い温度で組成物に対して紫外線を照射して、前記液晶性モノマまたは液晶性プレポリマを重合させたのち、前記光透過フィルムを前記原盤から剥離する第2工程と
を含むことを特徴とする光学シートの製造方法。
【請求項8】
前記第1工程において、前記原盤の立体構造上および前記光入射側フィルムの一の面上の少なくとも一方に前記組成物を配置したのち、前記原盤の立体構造上および前記光入射側フィルムの一の面上の少なくとも一方に配置した組成物を、前記原盤と前記光透過フィルムとによって所定の圧力で挟み込むことにより、前記原盤と前記透過フィルムとの間に前記組成物を所定の圧力で保持する
ことを特徴とする請求項7に記載の光学シートの製造方法。
【請求項9】
前記第1工程において、前記原盤の立体構造に前記透過フィルムを接触させたのち、前記原盤と前記透過フィルムとの隙間に前記組成物を挿入することにより、前記原盤と前記透過フィルムとの間に前記組成物を所定の圧力で保持する
ことを特徴とする請求項7に記載の光学シートの製造方法。
【請求項10】
前記原盤は、平板の一の面上に前記立体構造の形成されたものである
ことを特徴とする請求項7に記載の光学シートの製造方法。
【請求項11】
前記原盤は、柱状の構造物の周面上に前記立体構造の形成されたものである
ことを特徴とする請求項7に記載の光学シートの製造方法。
【請求項12】
画像信号に基づいて駆動されるパネルと、
前記表示パネルを挟む一対の偏光子と、
前記パネルを照明する光源と、
前記偏光子と光源との間に設けられた光学シートと
を備え、
前記光学シートは、
一の面内に連続して配置され、かつ前記一の面内において形状異方性を有する複数の立体構造を備えた光学シートであって、
前記立体構造は、前記一の面内において配向性を有する液晶性高分子を含み、この液晶性高分子の配向性に応じた屈折率異方性を有する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項13】
前記立体構造における屈折率の最も小さな方向が前記光源側の偏光子の光透過軸の方向と平行となっているか、または0度より大きく45度より小さな範囲内で交差している
ことを特徴とする請求項12に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−109840(P2009−109840A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283312(P2007−283312)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】