説明

光学シート及びその製造方法

【課題】容易に、大型の部品に対しても、繋ぎ目なく高精度に微細構造を形成することを目的とする。
【解決手段】基材上に硬化性樹脂を塗布する塗布工程と、雰囲気の酸素濃度を所定の濃度に制御する制御工程と、前記硬化性樹脂に微細構造型を有するスタンパを押し付ける押し付け工程と、前記硬化性樹脂と前記スタンパとの接触面に微細構造を転写して硬化部として硬化させると共に、前記硬化部より柔らかい半硬化部を前記硬化性樹脂における前記スタンパの周辺に形成する硬化工程と、前記硬化性樹脂から前記スタンパを離型する離型工程と、前記硬化部に隣接する領域で、かつ、前記半硬化部および前記硬化部の一部を含む領域に、前記スタンパを押し付ける再押し付け工程と、を繰り返して、基材から光学シートを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に微細構造が形成された光学シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイなどの光学部品に特殊光学特性を発揮するナノメートル(nm)オーダーからミクロン(μm)オーダーの微細なパターンを形成することで、高精度化を実現することが望まれている。たとえば、ピッチ250nm、高さ250nmの微細円錐構造(微細構造体)が規則正しく並んだ光学部品では、光学部品表面へ入射する光の反射率を低減できる特性を有していることが知られている。このような光学部品については、微細構造体を継ぎ目無く大面積に構成することが要望されている。
【0003】
従来、ナノメートルオーダーからミクロンオーダーの微細なパターンを形成するためには、半導体製造プロセスのフォトリソグラフィ技術や電子線描画法であるEB描画法が適用されてきた。これらの方法では、微細なパターンを形成できる一方で、大面積に微細なパターンを形成しようとすると、描画数の増加に伴う高精度制御や装置自体の大型化が必要であった。結果として、半導体製造プロセスを適用すると、装置の製造コストが高くなり、大型化が困難となる課題がある。
【0004】
一方、微細な凹凸パターンの形成を低コストで行うための技術として、基板上に転写したい凹凸パターンの反転形状を有する金型を、転写層に対してナノインプリントすることで、転写する技術が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
さらに、図9(a)、(b)に示すように、ナノインプリントを繰り返し行った場合の転写間での繋ぎ目を発生させないために、微細構造体1の基本微細構造体3間の距離Dsが基準値より小さくなるように、基本微細構造体3の端部を整形する微細構造体の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5259926号明細書
【特許文献2】米国特許第5772905号明細書
【特許文献3】特開2010−80670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、ナノインプリント技術を繰り返し行うことで、微細構造を大型化できる一方で、転写されたパターンの間にパターンが形成されていない部分が連続に発生して、繋ぎ目になり、性能を満たさない場合が発生するという課題がある。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の光学シート及びその製造方法は、容易に、大型の部品に対しても、繋ぎ目なく高精度に微細パターンを形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の目的を達成するために、本発明の光学シートの製造方法は、基材上に硬化性樹脂を塗布する塗布工程と、雰囲気の酸素濃度を所定の濃度に制御する制御工程と、前記硬化性樹脂に微細構造型を有するスタンパを押し付ける押し付け工程と、前記硬化性樹脂と前記スタンパとの接触面に微細構造を転写して硬化部として硬化させると共に、前記硬化部より柔らかい半硬化部を前記硬化性樹脂における前記スタンパの周辺に形成する硬化工程と、前記硬化性樹脂から前記スタンパを離型する離型工程と、前記硬化部に隣接する領域で、かつ、前記半硬化部および前記硬化部の一部を含む領域に、前記スタンパを押し付ける再押し付け工程と、を有し、前記塗布工程と、前記制御工程と、前記押し付け工程と、前記硬化工程と、前記離型工程と、前記再押し付け工程とを繰り返して、基材から光学シートを製造することを特徴とする。
【0010】
また、上記従来の目的を達成するために、本発明の光学シートは、基材と、前記基材上に形成される第一微細構造と、前記第一微細構造より前記基材からの高さが高い第二微細構造とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば、容易に、大型の部品に対しても、繋ぎ目なく高精度に微細パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)、(b)本発明の実施の形態にかかるインプリント装置構成を示す図
【図2】(a)〜(g)本発明の実施の形態にかかるシート製造方法を説明する工程図
【図3】紫外線硬化樹脂の硬化に及ぼす雰囲気の酸素濃度の影響を説明する図
【図4】酸素濃度が低い雰囲気で形成された微細構造の様子を説明する図
【図5】酸素濃度が低い雰囲気で連続的に形成された微細構造の様子を説明する図
【図6】本発明の実施の形態にかかる1度の硬化工程で形成した硬化部と半硬化部の輪郭形状を示す平面図
【図7】本発明の実施の形態にかかる光学シートの平面形状を示す図
【図8】本発明の実施の形態にかかる連続的に形成された微細構造の断面構造を説明する図
【図9】(a)、(b)従来の微細構造パターンの構成を例示する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図8を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるインプリント装置構成を示す図である。図2は、本発明の実施の形態にかかるシート製造方法を説明する工程断面図である。図3は、ラジカル重合系の紫外線硬化樹脂の硬化に及ぼす雰囲気の酸素濃度の影響を説明する図である。図4は、酸素濃度が低い雰囲気で形成された微細構造の様子を説明する図である。図5は、酸素濃度が低い雰囲気で連続的に形成された微細構造の様子を説明する図である。図6は、1度の硬化工程で形成した硬化部と半硬化部の輪郭形状を示す平面図である。図7は、本発明の実施の形態にかかる光学シートの平面形状を示す図である。図8は、連続的に形成された微細構造の断面構造を説明する図である。
【0014】
まず、本発明の実施の形態にかかるインプリント装置の構成を、図1(a)、(b)を用いて説明する。
図1(a)、(b)に示すように、インプリント装置101は、X軸駆動用駆動軸103、Y軸駆動用駆動軸104、Z軸駆動用駆動軸105を有し、3軸制御が可能である。また、Z軸駆動用駆動軸105には、UV照射装置106が取り付けられている。UV照射装置106には、スタンパ202を固定するための型固定用ベース108が取り付けられている。型固定用ベース108は、波長350nmから波長400nmの領域において紫外線光が90%以上透過する素材を選定する必要があり、一例として、透過率92%の石英を用いている。また、X軸駆動用駆動軸103およびY軸駆動用駆動軸104上に、テーブル107を配置し、このテーブル107上に、インプリントされる基材を載置する。X軸駆動用駆動軸103およびY軸駆動用駆動軸104を駆動させることで、テーブル107を移動させ、インプリントする位置を制御することが出来る。
【0015】
次に、被転写対象である基材に微細構造を転写するプロセスを、図2(a)〜(g)を用いて説明する。
図2(a)〜(g)において、基材201は、材料として接着処理を施した厚み250μmのポリエチレンテレフタラートを用いており、テーブル107上に固定されている。また、スタンパ202は、型固定用ベース108に厚み50μmの両面テープを用いて固定され、インプリント装置101に装着されている。スタンパ202上に形成された微細構造型301は、ピッチ0.8μm高さ0.8μmの四角柱形状である。また、スタンパ202のサイズは、縦長さ10mm、横長さ10mm、厚み3mmのものを使用した。
【0016】
まず、図2(a)に示すように、基材201上に、スピンコーターによりラジカル重合系の紫外線硬化樹脂401を塗布する。紫外線硬化樹脂(UV硬化樹脂)401としては、例えば、粘度9mPa・sec、屈折率1.51のものを使用する。紫外線硬化樹脂401の初期膜厚は、微細構造型301が転写された場合の最小膜厚0.256μmから、1.056μm(=0.8μm+0.256μm)以上とする必要がある。本実施の形態では、回転数が2000回転/分のスピンコーターを用いて、紫外線硬化樹脂401の基材201上での最小膜厚が0.33μmになるように、すなわち、初期膜厚が1.13μm以上となるように塗布する。
【0017】
次に、図2(b)に示すように、塗布した紫外線硬化樹脂401にスタンパ202を、速度1mm/分でZ軸マイナス方向へZ軸駆動用駆動軸105を動かし、加圧力が0.7N/平方mmになるまで押し付ける。
【0018】
次に、図2(c)に示すように、UV照射装置106からUV光をスタンパ202およびその隣接領域にZ軸方向に平行に光があたるように照射し、スタンパ202の微細構造型301を基材201上の紫外線硬化樹脂401へ転写させる。例えば、UV照射装置106の光源に波長375nmのLEDランプを採用し、UV照射パワーを3mW/cm、照射時間を60秒で実施する。この時、後述のように酸素濃度雰囲気を調整することにより、スタンパ202に覆われる部分に硬化部402が形成される。また、この時、UVが照射され、かつスタンパ202に覆われない部分に、微細構造が完全に転写され硬化されていない部分(硬化部402より柔らかい部分)である半硬化部302が形成される。また、スタンパ202を紫外線硬化樹脂401に押し込んで硬化させるため、硬化部402と半硬化部302を含む硬化されていない紫外線硬化樹脂401の基材201からの高さには差ができ、硬化されていない紫外線硬化樹脂401の方が硬化部402より高くなる。
【0019】
次に、図2(d)に示すように、スタンパ202をZ軸プラス方向へ、例えば、3mm/分の速度で移動させ、基材201上の微細構造が転写された硬化部402から離型し、X軸駆動用駆動軸103、Y軸駆動用駆動軸104の片方、または両方を駆動し、スタンパ202を移動させる。移動させる時には、半硬化部302に重なるように、X軸またはY軸のプラス方向へスタンパ202を移動させる。例えば、半硬化部302の図2(a)〜(g)のX方向の長さが1.8μmであるとした場合、移動量をX軸プラス方向へ9.99mm(重ね合せ量Bを0.01mm)に設定する。これにより、スタンパ202の端部が半硬化部302を超えて硬化部402に達し、硬化部402上に新たな微細構造を形成することができ、微細構造に隙間が生じない。なお、重ね合わせ量Bは任意であるが、微細構造型301のピッチを考慮し、微細構造型301の凸部と硬化部402の凹部ができるだけ重なるようにすることで、硬化部402に形成される微細構造が整い、反射率抑制効果が維持されて好ましい。
【0020】
次に、図2(e)に示すように、図2(b)の工程と同様に、スタンパ202を、例えば、速度1mm/分でZ軸マイナス方向へZ軸駆動用駆動軸105を動かし、0.7N/mmになるまで押し付ける。そして、図2(f)に示すように、図2(c)の工程と同様に、例えば、UV照射パワーを3mW/cm、照射時間を60秒でUV照射を行い、図2(c)に示す工程で転写した硬化部402に重なるように、次の転写した硬化形状403を作成する。このようにスタンパ202を半硬化部302上に重ねて押し付けた場合、半硬化部302は紫外線硬化樹脂401より硬さが硬いため、硬化形状403は硬化部402より基材201からの高さが高い状態で形成される。この時、半硬化部302上で重ね合わせながら硬化形状403を形成することにより、硬化部402から硬化形状403にかけて、微細構造の隙間なく、連続的に微細構造が形成されることになる。
【0021】
次に、図2(g)に示すように、スタンパ202をZ軸プラス方向へ、3mm/分の速度で移動させ、離型させる。また更に転写面積を増やす場合は、X軸駆動用駆動軸103、Y軸駆動用駆動軸104を駆動し、図2(e)から図2(g)の工程を繰り返し実施し、微細構造を有する光学シート501を製造する。
【0022】
本発明では、図2(c)、図2(d)の工程において、酸素濃度Aを調整することで、紫外線硬化樹脂401の硬化状態が酸素濃度によって異なることを利用して、硬化部402と半硬化部302を形成する。
【0023】
酸素濃度が、紫外線硬化樹脂401のUV光による硬化に及ぼす影響を説明する。
図3では、30μmの膜厚の紫外線硬化樹脂401に対して、酸素濃度Aを変化させて、硬化させた硬化物の高さを測定し、酸素濃度Aによる膜厚の変化量を算出した。図3に示した結果から、雰囲気中の酸素分子量により、紫外線硬化樹脂401の表面硬化状態が変わることが分かり、酸素濃度Aが高いほど、酸素にふれている紫外線硬化樹脂401の表面が硬化し難いことが分かった。
【0024】
ここで、酸素濃度が低い状態でスタンパ202を用いて紫外線硬化樹脂401を硬化させて微細構造を形成した場合の問題点を説明する。
図4に、図2(c)、図2(d)の工程において、N雰囲気下で、スタンパ202を紫外線硬化樹脂401へ押し付け、UV光を照射した際の転写形状を示す。ここで、微細構造型301の反転形状が紫外線硬化樹脂401へ転写された硬化部402に対して、スタンパ202の外周部分で硬化した部分を外周硬化部404とする。ここで、スタンパ202の外周部で硬化した外周硬化部404の高さを短焦点レーザー顕微鏡で測定すると1μmであり、図4に示すように、転写された微細構造の高さより高く盛り上がっていた。外周盛り上がり部が硬化した外周硬化部404は、微細構造型301の反転形状が転写されている硬化部402と比較すると、光の反射特性が異なる。これは、外周硬化部404上には微細構造が形成されておらず、また、表面が曲面状に傾斜しているため、表面状態が異なるためであると考えられる。そのため、外周硬化部404が硬化部402の表面に存在すると、その部分が欠陥となる。また、外周硬化部404が存在したまま、図2(e)から図2(g)の工程にあるように転写工程を実施すると、外周硬化部404上にスタンパ202を押し付けるために、スタンパ202が適切に押し付けられず、適切な微細構造が形成されないという不具合が生じる。
【0025】
図5に外周硬化部404に重なるように図2(e)から図2(g)の工程を実施した際の転写形状を示す。外周硬化部404に重なるように、微細形状を有する硬化形状403を形成すると、外周硬化部404のためにスタンパ202が押し付けられず、図5に示すように、例えば、高さ1.2μm程度の段差Tが発生する。また、微細形状を有する硬化形状403を形成する際にも、外周硬化部404は形成されるため、本工程で出来た微細構造を有する光学シート501は、微細構造型301の反転形状が転写されている硬化部402と、次の工程で出来た硬化形状403との間に、段差Tが発生する。そして、この段差Tと微細形状を有していない部分が繋ぎ目となり、繋ぎ目のある光学シートとなる。
【0026】
ここで、段差Tの大きさに関して説明する。人間の目には段差Tの大きさが1μmよりも大きくなると、光学シート上に段差Tの部分がスジとなって見える。そのため、段差Tの大きさは、0μmより大きく、かつ、1μm以下とする必要がある。すなわち、 0<T≦1μm の範囲に抑え込む必要がある。
【0027】
本発明では、図2(e)から図2(g)の工程において、雰囲気中の酸素濃度Aを調整し、酸素にふれている部分の硬化状態をコントロールすることで、外周盛り上がり部の硬化を抑制し、外周硬化部404を発生させないことを特徴とする。外周硬化部404を発生させないことで、段差Tが形成されず、繋ぎ目の無い光学シート501を作成することができる。これは、雰囲気中の酸素濃度Aが高くなると、ビラジカル状態の酸素が多くなり、紫外線硬化樹脂401にUV光を照射しても、ビラジカル状態の酸素にふれている部分は、UV光による励起でラジカルが反応すると共にビラジカル状態の酸素とも反応し、硬化を抑制することが出来るためである。したがって、雰囲気中の酸素濃度Aを高くすることで、完全に硬化しない半硬化状態である半硬化部302とすることが出来る。
【0028】
図3の結果から、酸素濃度Aの変化により半硬化状態の半硬化部302の樹脂量を調整することが可能であって、具体的には、5%の酸素濃度を用いれば、初期膜厚30μmから硬化後膜厚28.7を引いた膜厚1.3μmの半硬化部302を形成することができることが分かった。半硬化状態では、ビラジカル状態の酸素に触れている表面を硬化度0%とすると、表面から内部へ行くに従い、硬化度は上がっていく。酸素濃度5%の状態で、図2(b)から図2(d)の工程を実施すると、硬化部402を形成するスタンパ202エッジ部に膜厚1.3μmの微細構造の完全に転写されていない半硬化部302が形成できる。
【0029】
図6は、硬化部402と半硬化部302の輪郭形状を示す平面図である。
図6に示すように、スタンパ202外周部の形状が直線であるのに対して、微細構造が完全に転写されていない半硬化部302の外周形状は曲線になる。これは、雰囲気中のビラジカル状態の酸素との反応状態が均一でないためである。ここで、酸素濃度が5%未満の領域を使用した場合を考える。酸素濃度が0%から4%では、微細構造の完全に転写していない半硬化部302を作成することが出来なかった。また、酸素濃度が4%から5%の範囲では、半硬化部302を形成できることもあるが、ビラジカル状態の酸素との反応状態によっては、一部、半硬化部302が形成できない部分が発生した。
【0030】
そのため酸素濃度Aは、 5%≦A である必要がある。
ここで、本実施の形態では、半硬化部302の最大長さは0.005mmであった。そのため、重ね合せ量Bは、 0.005mm≦B にする必要がある。ここで、重ね合せ量Bとは、前回の硬化による硬化部に、スタンパ202が重なる量である。すなわち、重ね合せ量Bとは、本実施の形態では、半硬化部302を含むと共に、スタンパ202の外縁からの距離である。これは、半硬化部302が最終的に残らないように、重ね合せ量Bを、微細構造が完全に転写していない半硬化部302以上にする必要があるためである。
【0031】
ここで、例えば、酸素濃度A=15%で実施した場合、微細構造が完全に転写されていない半硬化部302の図2(a)〜(g)のX方向の長さが1.8μmであった。また、スタンパ202の移動量をX軸プラス方向へ9.99mm(重ね合せ量Bを0.01mm)に設定すると、実際に移動した距離は9.989mmとなり、重ね合せ量0.009mmとなった。よって、この場合の重ね合せ量B=0.009mm(9μm)は、半硬化部302の長さ1.8μm以上となり、問題はないことが確認できた。
【0032】
より大面積に微細構造を転写させるためには、図2(e)〜図2(g)の工程を繰り返すことが必要である。ここで、図7に、微細構造を転写した紫外線硬化樹脂401にX方向に5回、Y方向に5回、UV光照射を繰り返して作成した光学シート501の平面図を示す。例えば、X方向幅49.96mm、Y方向幅49.96mmの微細構造型301の形状を転写した微細構造が多数個複製された光学シート501を作成することができる。図7のA部はX軸プラス方向へ移動させた時の重ね合せ部で、図7のB部はY軸マイナス方向へ移動させた時の重ね合せ部である。図7では、X軸マイナス方向からプラス方向へ、Y軸プラス方向からY軸マイナス方向へ微細構造である硬化部402を形成したものである。
【0033】
図8に、図7中C−C’断面形状を示す。重ね合せ部は、微細構造が完全に転写されていない半硬化部302上へ微細形状の硬化部402に形成するため、図8のA部(第二微細構造)では、微細構造を2層で形成している。このため、図8のA部の構造体の強度がその他の1層部分(第一微細構造)よりも強くなる。図8のA部のような2層構造を、光学シートに網目状に配置することで、図7中X方向、Y方向共に、光学シート501の折り曲げ強度を強くすることができる。
【0034】
そのため、通常は光学シートを折り曲げると、応力集中部分からシート構造の破壊が始まるが、前述のように、網目状に2層構造を配置することで、2層構造が存在しない場合と比較して、応力の分散が進み、強度を向上させることができる。また、強度の向上に加えて、2層構造が網目状に配置されていることで、時間経過における光学シート501のソリを抑制するという効果も発生する。
【0035】
また、2層構造の表面では、微細構造である硬化部402が全面に形成されているため、微細構造である硬化部402による光の反射防止効果が低減されることなく、光学シート501は光学部品として機能する。
【0036】
また、本発明では、雰囲気の酸素濃度Aをコントロールすることで、外周硬化部404を発生させず、代わりに微細構造の完全に転写していない半硬化部302を意図的に作り、重ね合せている。そのため、図5のような盛り上がり部分(外周硬化部404)に転写することによる段差Tが大きくなることが無い。また段差Tの大きさは、微細構造である硬化部402の構造高さの大きさ以下に制御することが出来る。加えて、ミクロン(μm)オーダーの高性能な位置決めを行わなくても微細構造である硬化部402が形成されていない場所が存在しないため、繋ぎ目の発生が無い光学シート501を形成することが出来る。本実施の形態では、例えば、段差Tを0.3μm程度に制御することができる。これは、半硬化部302の転写率を40%から80%に制御しているために、重なり合った場所が連続的に形成でき、段差Tが微細構造の大きさよりも小さく作成できるためである。
【0037】
なお、以上の説明においては、紫外線硬化樹脂(UV硬化樹脂)を用いて説明したが、本発明で目的とするように硬化状況の調整が可能であれば、熱硬化樹脂などを使用することも可能である。
【0038】
このように、本発明の微細パターンの製造方法によると、従来技術では、パターンの半分以下の精度で位置決めをしなくては作成できなかった大面積構造体を有する光学シート501を、位置決め精度を要求することなく、微細構造である硬化部402の間にできる形状未転写領域を発生することなく、つまり隙間が形成されることなく作成できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、容易に、大型の部品に対しても、繋ぎ目なく高精度に微細パターンを形成することができるため、表面に微細構造が形成される光学シートに適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 微細構造体
3 基本微細構造体
101 インプリント装置
103 X軸駆動用駆動軸
104 Y軸駆動用駆動軸
105 Z軸駆動用駆動軸
106 UV照射装置
107 テーブル
108 型固定用ベース
201 基材
202 スタンパ
301 微細構造型
302 半硬化部
401 紫外線硬化樹脂
402 硬化部
403 硬化形状
404 外周硬化部
501 光学シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に硬化性樹脂を塗布する塗布工程と、
雰囲気の酸素濃度を所定の濃度に制御する制御工程と、
前記硬化性樹脂に微細構造型を有するスタンパを押し付ける押し付け工程と、
前記硬化性樹脂と前記スタンパとの接触面に微細構造を転写して硬化部として硬化させると共に、前記硬化部より柔らかい半硬化部を前記硬化性樹脂における前記スタンパの周辺に形成する硬化工程と、
前記硬化性樹脂から前記スタンパを離型する離型工程と、
前記硬化部に隣接する領域で、かつ、前記半硬化部および前記硬化部の一部を含む領域に、前記スタンパを押し付ける再押し付け工程と、を有し、
前記塗布工程と、前記制御工程と、前記押し付け工程と、前記硬化工程と、前記離型工程と、前記再押し付け工程とを繰り返して、基材から光学シートを製造することを特徴とする
光学シートの製造方法。
【請求項2】
前記制御工程において、前記酸素濃度が5%以上であることを特徴とする
請求項1記載の光学シートの製造方法。
【請求項3】
前記再押し付け工程において、前記半硬化部および前記硬化部の一部を含む領域が、前記スタンパの外縁から5μm以上となることを特徴とする
請求項1または請求項2のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
【請求項4】
前記スタンパが、波長350nmから波長400nmのUV光を90%以上透過する材質からなり、
前記硬化性樹脂が、紫外線硬化性樹脂であることを特徴とする
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
【請求項5】
基材と、
前記基材上に形成される第一微細構造と、前記第一微細構造より前記基材からの高さが高い第二微細構造とを有することを特徴とする
光学シート。
【請求項6】
前記第二微細構造が、2層構造を有することを特徴とする
請求項5記載の光学シート。
【請求項7】
前記第一微細構造と前記第二微細構造との境界部分である段差が前記第一微細構造と前記第二微細構造との表面に網目状に形成されることを特徴とする
請求項5または請求項6のいずれかに記載の光学シート。
【請求項8】
前記第一微細構造と前記第二微細構造との前記基材からの高さの差が0μmより大きく1μm以下であることを特徴とする
請求項5〜請求項7のいずれかに記載の光学シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−944(P2013−944A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132760(P2011−132760)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】