説明

光学フィルタの実装構造

【課題】光学フィルタの実装時の変形を防止する。
【解決手段】光学フィルタ6を他の部材2に対し周囲間に弾性部材7を挟み込んで加圧した状態で実装する構造において、弾性部材7を、内周側部に対し外周側部が加圧により外側方向へ伸びて変形する断面形状に形成する。具体的には、弾性部材7は、非加圧状態において、光学フィルタ6に対し内周側部が接触して外周側先端部71が離間している。そして、弾性部材7の外周側先端部71は、加圧により光学フィルタ6に接触して外側方向への滑り止めとして機能するギザギザ形状に形成されている。なお、光学フィルタ6は、プラスチック製のIRカットフィルタで、他の部材2は撮像素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子に実装する光学フィルタの実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体撮像素子への光学ローパスフィルタに実装構造として、例えば特許文献1に開示される構造が広く知られている。
この特許文献1には、固体撮像素子が形成された半導体チップを上部に開口を有した箱体に収納し、箱体に開口を塞ぐカバーガラスを接着してパッケージとし、カバーガラス上に四角枠状のスペーサを介して光学ローパスフィルタを配置し、光学ローパスフィルタとパッケージとを一体に保持するホルダを設けた構造が開示されている。
【0003】
また、デジタルカメラのレンズユニットには通常、IR(赤外線)をカットするため、ガラス製の基材にIRカットコートが施されたレンズが使用されている。従来、その厚みは最薄で0.3mm程度であり、これ以上薄くすると、組み立て時、若しくは、実使用おいて割れる危険性がある。
【0004】
図4は一般的な実装構造を分解状態で示すもので、1は基板、2は撮像素子、3はレンズベース、4はガラス製のIRカットフィルタ、5は押さえ部材、9はレンズである。
図示のように、基板1に撮像素子2を搭載する一方、レンズベース3にガラス製のIRカットフィルタ4を置き、その上に押さえ部材5を載せる。押さえ部材5としては通常、ゴムのような弾性力のある材料を用いる。
図5に示すように、撮像素子2を、IRカットフィルタ4上の押さえ部材5に押し当てて、基板1とレンズベース3をネジ止めで固定する。この組み付け状態で、IRカットフィルタ4に対し押さえ部材5の先端が潰れて、圧力が加わった状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−211438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近、デジラルカメラ自体やカメラユニットを搭載する電子機器の小型化、薄型化、若しくは高密度実装化が進み、それに伴うレンズ薄型化のために、IRカットフィルタをプラスチック化することが可能となり、その厚みは0.1mm程度まで薄型化できるようになっている。
しかし、プラスチック製で薄型化したIRカットフィルタは、実装する際に押さえ部材の先端が潰れて圧力が加わり、その部分から反りや歪みが発生しやすく、撮像素子にて撮像される画質に悪影響を与える可能性がある。
【0007】
本発明の課題は、特に実装時における光学フィルタの変形を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、光学フィルタを他の部材に対し周囲間に弾性部材を挟み込んで加圧した状態で実装する構造において、前記弾性部材を、内周側部に対し外周側部が加圧により外側方向へ伸びて変形する断面形状に形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学フィルタの実装構造であって、前記弾性部材は、非加圧状態において、前記光学フィルタに対し内周側部が接触して外周側先端部が離間していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光学フィルタの実装構造であって、前記弾性部材の外周側先端部は、前記加圧により前記光学フィルタに接触して外側方向への滑り止めとして機能する形状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の光学フィルタの実装構造であって、前記弾性部材の外周側先端部をギザギザ形状に形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学フィルタの実装構造であって、前記光学フィルタはプラスチック製のIRカットフィルタで、前記他の部材は撮像素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光学フィルタの実装時の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した実装構造の一実施形態の構成を示すもので、分解状態の概略断面図である。
【図2】図1の組み付け状態を示した図である。
【図3】図2要部の拡大図である。
【図4】一般的な実装構造を示す分解状態の概略断面図である。
【図5】図4の組み付け状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した実装構造の一実施形態の構成として分解状態を示すもので、1は基板、2は撮像素子、3はレンズベース、9はレンズであって、6はプラスチック製のIRカットフィルタ、7は押さえ部材である。
【0016】
図示のように、基板1に撮像素子2が搭載されている。
また、レンズベース3にプラスチックフィルムによる厚み0.1mm程度と薄型のIRカットフィルタ6が置かれ、このIRカットフィルタ6の上に押さえ部材7が載せられている。
【0017】
押さえ部材7は、ゴムのような弾性部材を用いて、図1に示す非加圧状態において、IRカットフィルタ6に対し、ほぼ垂直に起立した状態の内周側部が接触して、外側へ斜めに開いた状態の外周側先端部71が上方に離間する鉤型のような断面形状に形成されている。
【0018】
この断面形状により押さえ部材7は、図2に示すように、撮像素子2をIRカットフィルタ6上の押さえ部材7に押し当てて、基板1とレンズベース3をネジ止めして固定する加圧状態において、内周側部に対し外周側先端部71が加圧により外側方向へ伸びて変形する。
【0019】
この押さえ部材7の加圧による弾性変形によって、薄型プラスチックフィルムのIRカットフィルタ6には、中心から外側方向へ押し開くような力が働く。
【0020】
そして、押さえ部材7の外周側先端部71は、図2に示すように、加圧により外側方向に開いてIRカットフィルタ6に接触して、外側方向への滑り止めとして機能する形状に形成されている。
すなわち、外周側先端部71には、図3に拡大して示すように、光軸中心へ向かって約5°〜10°の範囲で斜め上方にギザギザ状の山形突起が形成され、その先端が外側方向に向いたギザギザ形状部72が形成されている。
【0021】
また、押さえ部材7の内周側先端部にも同様に、光軸中心へ向かって約5°〜10°の範囲で斜め上方にギザギザ状の山形突起が形成され、その先端が外側方向に向いたギザギザ形状部72が形成されている。
【0022】
従って、押さえ部材7の外周側先端部71のギザギザ形状部72が、前記加圧によって、薄型プラスチックフィルムのIRカットフィルタ6を外側方向へ引き伸ばしながら潰れて、IRカットフィルタ6の外側方向への押し開きを助ける。
これにより、実装後のIRカットフィルタ6の変形を防止して、IRカットフィルタ6の表面精度を保証することができる。
【0023】
以上、実施形態のIRカットフィルタ6の実装構造によれば、押さえ部材7の弾性変形によって、IRカットフィルタ6の実装時の変形を効果的に防止して、画質劣化を起こさせずに、良好な画質を確保することができる。
【0024】
以上の実施形態においては、IRカットフィルタとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の光学フィルタであってもよい。
また、弾性部材を鉤型のような断面形状としたが、内周側部に対し外周側部が加圧により外側方向へ伸びて変形する断面形状であれば他の断面形状であってよい。
さらに、弾性部材の外周側先端部をギザギザ形状としたが、滑り止めとして機能する形状であれば他の形状であってもよい。
また、光学フィルタと撮像素子との間に弾性部材を挟み込んで加圧したが、要は光学フィルタとケースなどの他の部材との間に弾性部材を挟み込んで加圧する構造であればよい。
その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1 基板
2 撮像素子(他の部材)
3 レンズベース
6 プラスチック製のIRカットフィルタ(光学フィルタ)
7 押さえ部材(弾性部材)
71 外周側先端部
72 ギザギザ形状部
9 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルタを他の部材に対し周囲間に弾性部材を挟み込んで加圧した状態で実装する構造において、
前記弾性部材を、内周側部に対し外周側部が加圧により外側方向へ伸びて変形する断面形状に形成したことを特徴とする光学フィルタの実装構造。
【請求項2】
前記弾性部材は、非加圧状態において、前記光学フィルタに対し内周側部が接触して外周側先端部が離間していることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタの実装構造。
【請求項3】
前記弾性部材の外周側先端部は、前記加圧により前記光学フィルタに接触して外側方向への滑り止めとして機能する形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルタの実装構造。
【請求項4】
前記弾性部材の外周側先端部をギザギザ形状に形成したことを特徴とする請求項3に記載の光学フィルタの実装構造。
【請求項5】
前記光学フィルタはプラスチック製のIRカットフィルタで、
前記他の部材は撮像素子であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学フィルタの実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−133059(P2012−133059A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283975(P2010−283975)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】