説明

光学フィルタ

【課題】ディスプレイパネル前面側に直接貼り合わせる光学フィルタであって、パネルの割れや損傷を防止し、更にはパネルが割れたときの飛散を防止することができ、また更には、光学フィルタに折痕がつきにくく、傷及びこれに伴う歪みによる画像劣化のないディスプレイ用光学フィルタを提供する。
【解決手段】反射防止層1を最外層とし、更に反射防止層1とは反対面に保護部材を有するディスプレイ用光学フィルタにおいて、反射防止層1の外表面のビッカース硬さが35N/mm以上である。保護部材は、アクリル酸系誘導体ポリマ10.0重量部〜80.0重量部、又はアクリル酸系誘導体15.0〜89.9重量部及び光重合開始剤0.1〜5.0重量部を必須成分とし、これら混合物を硬化させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパネル前面側に貼り合わせる光学フィルタに関する。更に詳しくは、CRT、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶、ELなどのディスプレイ前面側に直接貼りつける光学フィルタにおいて、ディスプレイ前面のガラス又はプラスチック又はこれらのディスプレイ用前面板のガラス又はプラスチックの割れや損傷を防止し、また、そのようなガラス又はプラスチックが割れたときの飛散を防止することができる衝撃吸収層を備え、更には光学フィルタに部分的圧力がかかった場合に歪みをもった傷又は折痕がつきにくく、傷及びこれに伴う歪みによる画像劣化のないディスプレイ用光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルやプラズマディスプレイパネル等のフラットパネルディスプレイが、各種ディスプレイの中でシェアを伸ばし大きな市場を形成している。その中で、テレビ用途は大きな市場であり、特にPDPは大型・薄型の特徴を生かし、高画質化、低価格化に伴って売上を急速に伸ばしている。
この種のディスプレイ構造は、従来、外部衝撃などからPDPパネルを保護するため、PDPパネルの前面側に、強化ガラスを基体とする光学フィルタを、PDPパネルとの間に空隙を設けて配置した構成となっているものが一般的であった。ところが、PDPパネルと強化ガラスを基体とする光学フィルタとの間に空隙が介在すると、外部から表示面に入射する外光が光学フィルタ前面とPDPパネル前面とで反射して多重に映り込む二重映り現象が生じ、PDPパネルの表示画質を低下させてしまう。更には、PDPの大型化に伴い、前面に設置するガラスも大きくなるため、PDPの重量が重くなってしまうといった問題点があった。
【0003】
このため、最近では、PDPパネル上に、光学フィルタを直接貼り合わせる直貼りPDPが提案されている(特許文献1,2参照)。
しかし、ディスプレイパネル上に光学フィルタを直接貼り合わせる場合、外部からの衝撃を受けた際、PDPパネルが割れる恐れがある。そのため、外部衝撃などからPDPを保護することで、割れや損傷を防止し、更にはパネルが割れたときの飛散を防止することができる柔らかい衝撃吸収層が必要である。
【0004】
一方、光学フィルタの最外層に積層される反射防止層表面には、外部からの接触による傷防止のためハードコート処理が施されているのが一般的である。しかし、前述の衝撃吸収層を備えた光学フィルタの場合、パネルの割れや損傷防止のため柔軟性が向上していることから、外部からの部分的な圧力によって光学フィルタが変形しやすくなり、その結果、反射防止層表面のハードコート層の本来有する傷耐性が得られなくなる問題点があった。この傷は歪みを伴うものであり、画像劣化の原因となる。
【特許文献1】特開平11−119666号公報
【特許文献2】特開2002−251144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる点に鑑み、ディスプレイパネル前面側に直接貼り合わせる光学フィルタであって、パネルの割れや損傷を防止し、更にはパネルが割れたときの飛散を防止することができ、また更には、光学フィルタに折痕がつきにくく、傷及びこれに伴う歪みによる画像劣化のない光学フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次のものに関する。
1.ハードコート層を有する反射防止層を最外層とし、更に衝撃吸収層を有する光学フィルタにおいて、ビッカース硬さが35N/mm以上であることを特徴とする光学フィルタ。
2.耐久衝撃力が0.5J以上である項1記載の光学フィルタ。
3.衝撃吸収層のガラス転移温度が0℃以下である項1または2に記載の光学フィルタ。
4.衝撃吸収層のガラス転移温度が−20〜−60℃である項1〜3のいずれかに記載の光学フィルタ。
5.衝撃吸収層の厚さが150〜500μmで、反射防止層の基材フィルムがPETフィルムであってその厚さが90〜300μmである項3または4のいずれかに記載の光学フィルタ。
6.反射防止層の基材フィルムがPETフィルムであってその厚さが150〜300μmである項5記載の光学フィルタ。
7.衝撃吸収層が、アクリル酸系誘導体ポリマ10〜80重量部、アクリル酸系誘導体15〜89.9重量部、光重合開始剤0.1〜5.0重量部を必須成分とし、これらの混合物を硬化させてなるものである項1〜6のいずれかに記載の光学フィルタ。
8.アクリル酸系誘導体ポリマの重量平均分子量が100,000以上である項7記載の光学フィルタ。
9.衝撃吸収層が粘着性を有するものである項1〜8のいずれかに記載の光学フィルタ。
10.衝撃吸収層の可視光の透過率が80%以上である項1〜9のいずれかに記載の光学フィルタ。
11.反射防止層を最外層とし、衝撃吸収層を有するのに加え、電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、色調補正層及び粘着層からなる群から選ばれる層を少なくとも一つ有する項1〜10のいずれかに記載の光学フィルタ。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る光学フィルタは、ディスプレイパネル前面側に直接貼り合わせて使用することができ、パネルの割れや損傷を防止し、更にはパネルが割れたときの飛散を防止することができ、また更には、光学フィルタに部分的圧力がかかった場合に歪みをもった傷又は折痕がつきにくく、傷及びこれに伴う歪みによる画像劣化のない光学フィルタを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る光学フィルタは、表面にハードコート層を有する反射防止層を有しており衝撃吸収層を有し、ビッカース硬さが35N/mm以上であることにより、衝撃吸収性を確保しつつ表面に残るような歪みをもった傷又は折痕が付きにくくなっている。また、全体として耐久衝撃力が0.5J以上であることが好ましい。これにより、光学フィルタとして、ディスプレイ表面に適用したときに十分な衝撃吸収性を有する。耐久衝撃力は1.0J以上であることがさらに好ましい。
【0009】
本発明に用いる反射防止層は、可視光(380〜780nm)の反射率が10%以下となる反射防止性を有している層であればよく、透明なプラスチックフィルムの少なくとも一つの面に低屈折率層と高屈折率層からなる2層以上の反射防止層を有していればよい。更に詳しくは、透明基材から外側に向かって低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の3層からなるのが好ましいが、何層であっても、反射防止の目的を達成できればよい。別の3層の好ましい例として、基材から外側に向かって中屈折率層、第1層より屈折率が高い高屈折率層、そして中屈折率層より屈折率が低い低屈折率層からなっているものをあげる事ができる。
【0010】
低屈折率層と呼ばれる薄膜のための物質としては、例えば、SiO、MgF、AlF、BaF、LiF、NaAlF、NaAl14、NaF、SrFなどが挙げられ、これらの物質単体あるいはこれらの物質を1種類以上含む混合物が挙げられる。中でも、SiO、MgFが好ましく用いられる。これらの物質からなる薄膜を2層以上重ね合わせて低屈折率層としても良い。一方、高屈折率層と呼ばれる薄膜のための物質としては、ZrO、TiO、SiO、Y、Yb、Sb、Sb、SnO、In、ITO(インジウムチンオキサイド)、Ta、CeO、MgO、HfO、Pr、Pr11、Bi、Cr、Eu、Fe、La、MoO、Nd、PbO、Sm、Sc、ZnO、CaF、SmF、ZnS、Ge、Siなどが挙げられ、これらの物質単体あるいはこれらの物質を1種類以上含む混合物が挙げられる。中でも、ZrO、TiO、ITO、Ta、ZnO、SnO、Y、MgOが好ましく用いられる。これらの物質からなる薄膜を2層以上重ね合わせて高屈折率層としても良い。また、中屈折率層と呼ばれる薄膜のための物質としては、Al、WO、CeF、LaF、NdF、PbF、MgOなどが挙げられ、これらの物質単体あるいはこれらの物質を1種類以上含む混合物が挙げられる。中でも、Alが好ましく用いられる。中屈折率層の場合はしばしば、高屈折率物質と低屈折率物質とを混合して用いたり、等価膜化して用いたりする。等価膜とは、例えばAlのある膜をZrOとSiOの膜の組み合わせで光学的に等価に置き換えることなどをいう。すなわち、高屈折率層を構成する薄膜と低屈折率層を構成する薄膜を組み合わせて2層以上重ね合わせて中屈折率層としてもよい。
【0011】
反射防止膜の好ましい構成は、透明基材側から「低屈折率層がSiO膜層からなり、高屈折率層がITO膜層からなり、低屈折率層がSiO膜層からなるもの」、「中屈折率層が透明基材側から数えてSiO膜層、ZrO膜層、SiO膜層の3層からなり、高屈折率層が基材から数えてTiO膜層、ITO膜層の2層からなり、低屈折率層がSiO膜層からなるもの」、「中屈折率層が透明基材側から数えてSiO膜層、ITO膜層、SiO膜層の3層からなり、高屈折率層がITO膜層からなり、低屈折率層がSiO膜層からなるもの」、「中屈折率層が透明基材側から数えてSiO膜層、ZrO膜層、SiO膜層の3層からなり、高屈折率層がTiO膜層からなり、低屈折率層がSiO膜層からなるもの」などが挙げられる。
反射防止膜の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの通常の方法を用いることができる。
【0012】
前記の透明なプラスチックフィルムは反射防止層の基材フィルムであるが、その素材としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等があるが、それらは単層であっても2層以上で使用してもよい。中でも、透明性、フィルムの平滑性、取り扱い性、価格等からポリエステルフィルム(以下、PETと略す)が好ましい。ここでの透明とは、可視光線(380〜780nm)平均透過率87%以上のものを言う。また、380〜780nmの波長範囲において特定の波長における透過率が87%以下であってもかまわない。厚さは25〜350μmが好ましく、50〜300μmがより好ましい。衝撃吸収層が厚い場合、又は全体として耐久衝撃力が大きい場合、反射防止層の基材フィルムとしては、PETであって、厚さが100〜300μmであることが好ましく、また、150〜300μmであることが好ましい。衝撃吸収層が薄すぎると耐久衝撃性が低下しやすくなり、厚すぎると歪みをもった傷、折痕等が付きやすくなる。
【0013】
本発明に用いる反射防止層には、ハードコート層を有していることが必要であり、特に最表面に存在することが好ましい。ハードコート層は反射防止膜の下で基材の上に存在してもよい。ハードコート層としては、熱キュア型のオルガノポリシロキサン系ハードコート又は紫外線硬化型のアクリル系ハードコートなどが好ましい。更に好ましくは、基材の屈折率と同等の屈折率を有するハードコートとすると、干渉縞が見えにくい光学フィルタとなる。また、ハードコート層の傷耐性は、JIS K 5600に準拠した鉛筆引っかき試験にて、H以上であることが好ましく、2H以上がより好ましい。
【0014】
本発明における衝撃吸収層は、衝撃吸収能を有するものであればよく、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のゴム系重合体などがあり、架橋構造を有するものが好ましい、アクリル酸系誘導体ポリマ等特に制限はないが、なかでもアクリル酸系誘導体ポリマが好ましい。衝撃吸収層は、粘着性を有するものであってもよい。
【0015】
アクリル酸系誘導体ポリマはアクリル酸系誘導体を重合させて得られるものであり、その重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したもの)が100,000以上であるものが好ましい。アクリル酸系誘導体ポリマは、アクリル酸系誘導体以外のモノマーを併用して重合させて得られるポリマであってもよい。
【0016】
上記のアクリル酸系誘導体として、アクリル酸又はメタクリル酸、それらの誘導体等がある。具体的には、重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーとしては、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、n−オクチルアクリレート等のアルキルアクリレート、ベンジルメタクリレート等のアラルキルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノアルキルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート、(ジエチレングリコールエチルエーテル)のメタクリル酸エステル、(トリエチレングリコールブチルエーテル)のメタクリル酸エステル、(ジプロピレングリコールメチルエーテル)のメタクリル酸エステル等の(ポリアルキレングリコールアルキルエーテル)のメタクリル酸エステル、(ジエチレングリコールエチルエーテル)のアクリル酸エステル、(トリエチレングリコールブチルエーテル)のアクリル酸エステル、(ジプロピレングリコールメチルエーテル)のアクリル酸エステル等の(ポリアルキレングリコールアルキルエーテル)のアクリル酸エステル、(ヘキサエチレングリコールフェニスエーテル)のメタクリル酸エステル等の(ポリアルキレングリコールアリールエーテル)のメタクリル酸エステル、(ヘキサエチレングリコールフェニスエーテル)のアクリル酸エステル等の(ポリアルキレングリコールアリールエーテル)のアクリル酸エステル、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシ化シクロデカトリエンメタクリレート、イソボルニルアクリレート、メトキシ化シクロデカトリエンアクリレート等の脂環式基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、ヘプタデカフロロデシルメタクリレート等のフッ素化アルキルメタクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート等のフッ素化アルキルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、グリセロールアクリレート等の水酸基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等のグリシジル基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、アクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上を併用することができる。
これらの重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーは、1種で又は2種以上併用して用いることができる。
【0017】
上記の重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーと共に、重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーを使用することができる。このようなモノマーとしては、ビスフェノールAジメタクリレート1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリエレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
【0018】
重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーとしては、さらに、一般式(a)
【化1】

(ただし、式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を示し、m及びnはそれぞれ独立に、1〜20の整数を示す)で示されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジアクリレート、一般式(b)
【化2】

(ただし、式中、m及びnはそれぞれ独立に、1〜10の整数を示す)で示されるビスフェノールAのエピクロルヒドリン変性物とアクリル酸の付加エステル化物、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、一般式(c)
【化3】

(ただし、式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を示し、m及びnはそれぞれ独立に、1〜20の整数を示す)で示されるリン酸のアルキレンオキシド付加物のジアクリレート、一般式(d)
【化4】

(ただし、式中、m及びnはそれぞれ独立に、1〜10の整数を示す)で示されるフタル酸のエピクロリン変性物とアクリル酸の付加エステル化物、ポリエチレングリコールのジアクリレート、ポリプロピレングリコールのジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、一般式(e)
【化5】

(ただし、式中、m及びnはそれぞれ独立に、1〜20の整数を示す)で示される1,6−ヘキサンジオールのエピクロリン変性物とアクリル酸の付加エステル化物(アクイリル基を一分子中に2個有するもの)、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、一般式(f)
【化6】

(ただし、式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を示し、3個のmはそれぞれ独立に、1〜20の整数を示す)で示されるリン酸のアルキンオキシド付加物のトリアクリレート、一般式(g)
【化7】

(ただし、式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を示し、m、m′及びm″はそれぞれ独立に、1〜20の整数を示す)で示されるトリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリアクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記のアクリル酸系誘導体以外に、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン等の重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーを使用することができる。また、上記のアクリル酸系誘導体以外のモノマーであって、重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマー(ジビニルベンゼン等)を使用することもできる。
以上において、本発明における効果を得るためには、使用するモノマーの全量の内、アクリル酸系誘導体以外のモノマーの使用量は90重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、特に、20重量%以下が好ましい。
また、重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーの使用量は使用するモノマー全量に対して10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。10重量%を超えて使用すると、衝撃で衝撃吸収層が裂け易くなる傾向がある。
【0020】
本発明における衝撃吸収層は、前記アクリル酸系誘導体ポリマの存在下に前記したアクリル酸系誘導体を重合させて得たものが特に好ましい。このときに使用されるアクリル酸系誘導体は前記したとおりであり、併用可能はアクリル酸系誘導体以外のモノマーとその好ましい使用量も前記の通りであり、また、使用できる重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーとその好ましい使用量も前記と同様である。配合を調整することにより所望の粘着性にすることができる。
【0021】
前記アクリル酸系誘導体ポリマ10〜80重量部に対してアクリル酸系誘導体15〜89.9重量部使用され、重合開始剤が0.1〜5.0重量部で全体が100重量部になるように使用されることが好ましい。配合は、アクリル酸系誘導体ポリマ30〜50重量部、アクリル酸系誘導体45〜69.9重量部、重合開始剤が0.1〜5重量部がより好ましい。この配合であれば、良好な粘着性と耐衝撃性が容易に得られる。
【0022】
前記したモノマーの重合方法としては、溶液重合、乳化重合及び塊状重合等の既知の重合方法を用いることができる。これらの方法は、前記アクリル酸系誘導体ポリマの合成にも利用できる。
【0023】
重合開始剤としては、光重合開始剤を使用することができ、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイン系、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、オニウム塩等の公知の材料から選ぶことができる。
光重合開始剤として、さらに具体的には、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の芳香族ケトン化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、β−(アクリジン−9−イル)アクリル酸のジエステル化合物、9−フェニルアクリジン、9−ピリジルアクリジン、1,7−ジアクリジノヘプタン等のアクリジン化合物、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メチルメルカプトフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モリホリノフェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン等がある。
【0024】
重合開始剤として、熱重合開始剤を使用してもよい。熱重合開始剤としては、熱によりラジカルを発生する開始剤であり、具体的には、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドの様な有機過酸化物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニル)。2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]のようなアゾ系化合物が挙げられる。
本発明に用いるアクリル酸系誘導体ポリマ(アクリル酸系誘導体ポリマの存在下にアクリル酸系誘導体を重合させたものを包含する)の重量平均分子量は、100,000以上であることが好ましく、200,000〜700,000であることがより好ましい。
【0025】
本発明に用いる衝撃吸収層の材料は、ガラス転移温度(Tg)が、0℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃を超えると衝撃吸収層が硬くなり、衝撃で衝撃吸収層が裂けやすくなる。Tgは−20〜−60℃であることがより好ましい。
本発明に用いる衝撃吸収層の材料となるポリマの分子中には、粘着性を大きくする目的で、極性基を付与しておくことが好ましい。ガラスとの粘着性を大きくする極性基としては、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、グリシジル基等の極性基があるが、これらの基は、この様な基を有するモノマーを共重合させることにより導入することができる。
【0026】
本発明に用いる衝撃吸収層の厚みは100〜1000μmであることが好ましく、150〜500μmであれば更に好ましい。100μm未満になると耐衝撃性が不足し、また1000μmを超えると、光学フィルタの柔軟性が過剰に高くなるため、外部からの部分的な圧力によって光学フィルタが変形しやすくなり、その結果、反射防止層表面のハードコート層の本来有する傷耐性が得られなくなる傾向があるためである。
【0027】
本発明に用いる衝撃吸収層は、放射線(紫外線、電子線等)の照射により硬化したものであることが好ましく、さらには設備投資、安全管理の観点から、紫外線を用いるのがより好ましい。衝撃吸収層に一定の耐衝撃性を付与させるために、衝撃吸収層に一定の厚みが必要であり、例えば、その厚みは100μm以上が好ましい。この膜厚を得るためには、溶剤を含む必要がない放射線照射により硬化する材料が好適である。
本発明に用いる衝撃吸収層の形成方法としては、特に限定するものではないが、生産性の観点から、硬化前の材料を連続塗布方式により塗布し、その後硬化させることが好ましい。塗布方式としては、ロールコータ、ダイコータ、グラビアコータ、ドクターブレードなどがあるが、特に限定するものではない。
【0028】
本発明に用いる衝撃吸収層は、その粘着力が、0.5N/25mm以上のものが好ましく、2.0N/25mm以上のものがより好ましい。0.5N/25mm未満である場合、パネルと貼り合わせた後に浮きや剥れが発生しやすくなる。
本発明に係る光学フィルタを、ディスプレイ装置に使用するためには、衝撃吸収層の可視光透過率を80%以上とすることが好ましい。そのためには、原料となるモノマーと重合開始剤の混合溶液の可視光透過率が80%以上とすることが好ましい(前記アクリル酸系誘導体ポリマの生成の場合も同様である)。
【0029】
本発明における光学フィルタは、反射防止層と衝撃吸収層以外に、電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、色調補正層及び粘着層からなる群から選ばれる少なくとも一つの層をさらに積層し、多層物として他の機能を付加することができる。反射防止層が最外層となること以外は、積層順序は任意である。積層順序の例を、概略断面図で図1〜3に示す。図1は、反射防止層1と衝撃吸収層2を隣接させ、最下層に粘着層3を配置し、衝撃吸収層2と粘着層3の間に電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層及び色調補正層のうち1層又は2層以上4を積層したものである。図2は、反射防止層1、衝撃吸収層2及び粘着層3をこの順で積層し、さらにこれらの層の間に、電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層及び色調補正層のうち1層又は2層以上5、6をそれぞれ積層したものである。図3は、反射防止層1と衝撃吸収層2の間に電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、色調補正層及び粘着層のうち1層又は2層以上7を積層したものである。これらの態様において、各層間には必要に応じ粘着層を介在させることができる。反射防止層1の反対側の最外層に衝撃吸収層2が積層された図3に示す構成が好ましく、この場合、衝撃吸収層2自体が粘着性を有することが好ましく、衝撃吸収層2の下に予め又はディスプレイに適用するとき粘着層を積層又は介在させてもよい。
【0030】
各層の厚さは、適宜決定される。例えば、電磁波遮蔽層は50〜300μm、近赤外線吸収層は100μm以下(好ましくは50μm以下)、ネオン光吸収層は100μm以下(好ましくは50μm以下)、粘着層は100μm以下(好ましくは50μm以下)、色調補正層は100μm以下(好ましくは50μm以下)を目安に作製される。これらの層は、機能を併用することができ、この場合は、各層の厚さが必ずしも加算されるものではない。
【0031】
本発明における光学フィルタに積層される電磁波遮蔽層としては、可視光透過率60%以上で電磁波遮蔽性を有していれば既知の電磁波遮蔽層を用いることができる。透明導電膜、導電性繊維メッシュ、導電性インキにより作製されたメッシュ等を使用することができるが、高透明、高電磁波遮蔽性の観点から、金属メッシュが最も好ましい。金属メッシュの作製は、ポリエステルフィルム等の透明基材と銅箔、アルミ箔等の導電性金属箔のどちらか一方又は両方に接着剤を塗布し両者を貼り合わせ、次いで金属箔をケミカルエッチングプロセスによりエッチング加工して得られる。この時、導電性金属箔としては、表面粗化されたものを使用することが好ましい。表面粗化した面が上記の接着剤層に面するように積層される。上記のエッチングにより金属製メッシュが作製されたなら、その上に、樹脂を塗布し、特に好ましくは紫外線もしくは電子線で硬化可能な樹脂を塗布し、紫外線もしくは電子線を照射し硬化することによって、粗化面が転写された接着剤層を透明化することが好ましい。
【0032】
本発明における光学フィルタに積層される近赤外線吸収層は、接着剤層に近赤外線吸収化合物を含有させたものが好ましい。一般に近赤外線吸収化合物は熱に対し不安定であり、例えば透明樹脂基材からなる光学フィルタに配合して成形をする場合には、加熱によって変質する恐れがあるので好ましくない。接着剤組成物の系を例示すると、天然ゴム、ジエン系、ポリエーテル類、ポリエステル類、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。必要に応じて2種以上をブレンドすることも可能である。放射線硬化系の場合、ラジカル重合系、カチオン重合系などがある。材質としては、主材として、例えばアクリルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、エステルアクリレート、エーテルアクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマがある。また、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アリル系樹脂などがある。これらは、単独で用いてもあるいは、2種以上を混合して用いてもよい。またこれらに、必要に応じて感光剤、増感剤を加えた組成物を用いてもよい。近赤外線吸収化合物としては、アントラキノン化合物、フラロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、金属酸化物系微粉末、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム塩系化合物、チオウレア化合物、ビスチオウレア化合物、金属錯体化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらは、単独で用いても、あるいは、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
本発明における光学フィルタに積層されるネオン光吸収層は、接着剤層にネオン光吸収色素を含有させることが好ましい。ネオン光吸収色素としては、シアニン系化合物、オキソノール系化合物、トリフェニルメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、キサンテン系化合物、チアジン系化合物などが用いられる。
【0034】
本発明における光学フィルタに色調補正層を積層する事で、例えば、ニュートラルグレー化することにより、コントラストの向上ができる。特に限定されるものではないが、PDPに用いられている発光3原色の吸収が少ない染料が好ましい。例えば、スクアリリウム系、シアニン系、アゾ系、アゾメチン系、オキソノール系、ベンジリデン系、キサンテン系、メトロシアニン系などが挙げられる。
【0035】
また、近赤外線吸収化合物、ネオン光吸収色素、色調補正染料はそれぞれ接着剤に含有させて、単独の層を形成してもよいが、2種以上混合して層を形成してもよい。粘着剤組成物の系を例示すると、天然ゴム、ジエン系、ポリエーテル類、ポリエステル類、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。必要に応じて2種以上をブレンドすることも可能である。放射線硬化系の場合、ラジカル重合系、カチオン重合系などがある。材質としては、主材として、例えばアクリルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、エステルアクリレート、エーテルアクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマがある。また、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アリル系樹脂などがある。これらは、単独で用いてもあるいは、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
本発明における光学フィルタに積層される粘着層は、各機能層を多層化するため、あるいは、近赤外線吸収化合物、ネオン光吸収色素、色調補正染料などの染料を含有することで、粘着層自体を機能化するため、あるいは、パネルと貼り合わせるために用いられる。
【実施例1】
【0037】
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗及び窒素注入管の付いた反応容器にアクリル酸2−エチルヘキシル100重量部、トルエン80重量部を入れ、100ml/minの容量で窒素をバブリングしながら、トルエン20重量部に溶解したアゾビソイソブチロニトリル0.5重量部を滴下により添加した。滴下終了後2時間重合反応を行った。なお、重合反応は70℃で行った。その後、トルエンを除去し重量平均分子量20万のアクリル酸2−エチルヘキシルポリマを得た。
得られたアクリル酸2−エチルヘキシルポリマを10重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル89重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート1重量部、イルガキュア184(日本チバガイギー(株)商品名、光重合開始剤)0.5重量部を添加し、撹拌して均一な溶液とした。溶液を無アルカリガラス製の型に入れ、紫外線を2J照射し衝撃吸収層を作製した。なお、作製した衝撃吸収層の厚みは500μmとした。この衝撃吸収層のガラス点移転は−32.0℃であった。
反射防止層としては、基材フィルムとしてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの表面にハードコート処理を施した反射防止層(リアルック7700、日本油脂(株)製、基材フィルムの厚さ188μm)を選定した。この反射防止層の可視光反射率は3.0%、JIS K 5600で規定されるハードコート層の鉛筆引っかき値は2Hであった。
機能層として、アクリル系樹脂((株)日本触媒製、IR−H1)100重量部に近赤外線吸収化合物(旭電化工業(株)製、アデカアークルズTZ−1095)0.2重量部及びネオン光吸収色素(山田化学工業製、TAP−2)0.5重量部含有させ、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(東洋紡績(株)製、A4100)上にグラビアコート法を用いて層を形成した。なお、作製した機能層(機能フィルム)の厚みは10μmとした。
電磁波遮蔽層としては、透明基材として厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(東洋紡績(株)製、A−4100)、金属箔として厚さ10μmの電解銅箔(日本電解(株)製、PBR−10A)を選定し、両者を貼り合わせる接着剤(日立化成工業(株)製、ヒタロイド7983AA3)を均一に20μm塗布した直後、紫外線を照射して連続的に硬化させ、ロール状のクラッド材を得た。次に、このロール・トゥ・ロール(roll to roll)でクラッド材の銅箔を連続ケミカルエッチングしてエッチングメッシュを得た。形状は、ピッチ:250μm、ライン幅:12μmの銅の格子で形成されている。このエッチングメッシュのエッチング部(接着剤面)は、銅箔表面の凹凸を転写しており可視光を乱反射して不透明であった。最後にこのエッチングメッシュのメッシュ部のみに放射線硬化型樹脂(日立化成工業(株)製、ヒタロイド7983AA3)を塗布した。表面にPETフィルム(東洋紡績(株)製、A4100−50μm)をラミネートして、紫外線を照射して電磁波遮蔽層を得た。この時点でエッチングメッシュのエッチング部は透明であった。
粘着層としては、アクリル系樹脂(日立化成工業(株)製、DA−1010)を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(東洋紡績(株)製、E7002)上にグラビアコート法を用いて層を形成した。なお、作製した粘着層の厚みは25μmとした。
そして、上述にて作製した粘着層を反射防止フィルムの反射防止層とは反対面の基材フィルム上にラミネートし、次いでポリエチレンテレフタレートを剥離して粘着層のもう一つの片面に機能フィルム(近赤外線吸収、ネオン光吸収)をラミネートした。次に、機能フィルムのPETフィルム面側に粘着層をラミネートし、次いでポリエチレンテレフタレートを剥離して粘着層のもう一つの片面に電磁波遮蔽層をシールド層側を貼着するようにラミネートした。
そして、上述にて作製した衝撃吸収層を反射防止層/粘着層/機能層/粘着層/電磁波遮蔽層からなる積層物の電磁波遮蔽層にラミネートし、光学フィルタを得た。このときのラミネート条件は次の通りである。
ラミネート温度:25℃ ラミネート圧力:0.05MPa
ライン速度:1.0m/min
【実施例2】
【0038】
衝撃吸収層の厚さを250μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして光学フィルタを作製した。
【実施例3】
【0039】
衝撃吸収層の厚さを500μmとし、反射防止層としては、基材フィルムとしてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの表面にハードコート処理を施した反射防止層(リアルック7700、日本油脂(株)製、基材フィルムの厚さ250μm)を選定したこと以外は、実施例1と同様にして光学フィルタを作製した。
【実施例4】
【0040】
衝撃吸収層の厚さを150μmとし、反射防止層としては、基材フィルムとしてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの表面にハードコート処理を施した反射防止層(リアルック7700、日本油脂(株)製、基材フィルムの厚さ100μm)を選定したこと以外は、実施例1と同様にして光学フィルタを作製した。
【0041】
(比較例1)
衝撃吸収層の厚さを500μmとし、反射防止層としては、基材フィルムとしてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの表面にハードコート処理を施した反射防止層(リアルック7700、日本油脂(株)製、基材フィルムの厚さ100μm)を選定したこと以外は、実施例1と同様にして光学フィルタを作製した。
【0042】
(比較例2)
衝撃吸収層の厚さを250μmとし、反射防止層としては、基材フィルムとしてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの表面にハードコート処理を施した反射防止層(リアルック7700、日本油脂(株)製、基材フィルムの厚さ100μm)を選定したこと以外は、実施例1と同様にして光学フィルタを作製した。
【0043】
(比較例3)
衝撃吸収層の厚さを1000μmとし、反射防止層としては、基材フィルムとしてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの表面にハードコート処理を施した反射防止層(リアルック7700、日本油脂(株)製、基材フィルムの厚さ100μm)を選定したこと以外は、実施例1と同様にして光学フィルタを作製した。
【0044】
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた光沢フィルタの試験結果を表1に示す。
試験方法
[ビッカース硬さ]
測定装置は、フィッシャーインスツルメンツ製ビッカース硬さ試験機フィッシャースコープH100Cであり、対面角136°の正四角錐圧子を用いた。測定方法は、圧子の先端を各サンプルの反射防止層表面に対して、下記条件にて荷重を負荷した。
荷重:500N クリープ時間:5sec 測定環境:23±5℃
荷重Gを負荷した後のサンプル表面には、正四角錐状に窪みが発生する。この窪みの対角線長さをそれぞれd1、d2とした時に、その平均値dを算出し、次式を用いてビッカース硬さを計算した。
ビッカース硬さ(N/m)=0.1891×荷重(N)/d
【0045】
[鉛筆引っかき試験]
JIS K 5600に準拠し、作製した光学フィルタを丸菱科学機械製作所製PS−150にて測定した。測定条件は次の通りである。
荷重:0.75kg 試験速度:0.7mm/sec
【0046】
[耐久衝撃力]
作製した光学フィルタの衝撃吸収層側を3mm厚のフロート板ガラス(セントラル硝子(株)製、FL3)に貼り付け、光学フィルタの反射防止層が上側に向くように定盤上に乗せた。その後、重さ0.5kgの鋼球を任意の高さから落下させ、衝撃吸収層を貼合したガラスが割れなかった最大高さh(m)を測定し、次式を用いて耐久衝撃力を計算した。
耐久衝撃力(J)=0.5(kg)×9.8(m/s2)×h(m)
【0047】
[粘着力]
JIS Z 0237に準拠し、作製した光学フィルタをガラスに貼り合わせた後、90°引き剥がし試験で測定した。測定条件はつぎの通りである。
引っ張り速度:50mm/min、サンプル幅:25mm
【0048】
[ガラス転移温度]
作製した衝撃吸収層を幅50mm、長さ250mmのサイズに切り出し、広域動的粘弾性測定装置(Pheometric Scientific社製、Solids Analyzer RSA−II)を用いて、引張りモードによりガラス転移温度を測定した。測定条件はつぎの通りである。
荷重:1.0g、周波数:1.0Hz
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示すように、実施例1〜4における光学フィルタは優れた保護性と耐傷性を示す。実際、実施例1〜4で得られた光学フィルタは、鉛筆の芯(硬さ2H)を押し当てながら線を書くようにその表面を移動させたときも光学フィルタ表面に歪みをもった傷や折痕は観察されなかった(光学フィルタの鉛筆引っかき値はこのことを示している。)が、比較例1〜3で得られた光学フィルタでは、その表面に歪みをもった傷又は折痕が発生した。
総合的に判断すると、反射防止層の表面硬度が硬いことは重要であるが、これが硬くても必ずしも歪みをもった傷や折痕が発生しないとは言えず、衝撃吸収性を良くすると(大きな衝撃吸収力を有していると)歪みをもった傷や折痕が発生しやいという傾向がある。しかし、ビッカース硬さを34N/mm以上とすることにより、大きな衝撃性を有していても歪みをもった傷や折痕をなくすことができる。また、衝撃吸収力を大きくした場合(衝撃吸収層の厚さを大きくした場合)反射防止層の基材フィルムの厚さを大きくすることが好ましい。衝撃吸収層の厚さは150μm以上であることが好ましく、このときは、反射防止層の基材フィルムも90μm以上または90〜300μmであることが好ましく、150μm以上または150〜300μmであることが、また、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】光学フィルタの構成の一例の概略断面図
【図2】光学フィルタの構成の他の例の概略断面図
【図3】光学フィルタの構成の他の例の概略断面図
【符号の説明】
【0052】
1 反射防止層
2 衝撃吸収層
3 粘着層
4 電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層及び色調補正層のうち一層または二層以上
5 電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層及び色調補正層のうち一層または二層以上
6 電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層及び色調補正層のうち一層または二次以上
7 電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、色調補正層及び粘着層のうち一層または二層以上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードコート層を有する反射防止層を最外層とし、更に衝撃吸収層を有する光学フィルタにおいて、ビッカース硬さが35N/mm以上であることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
耐久衝撃力が0.5J以上である請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項3】
衝撃吸収層のガラス転移温度が0℃以下である請求項1または2に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
衝撃吸収層のガラス転移温度が−20〜−60℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
衝撃吸収層の厚さが150〜500μmで、反射防止層の基材フィルムがPETフィルムであってその厚さが90〜300μmである請求項3または4に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
反射防止層の基材フィルムがPETフィルムであってその厚さが150〜300μmである請求項5記載の光学フィルタ。
【請求項7】
衝撃吸収層が、アクリル酸系誘導体ポリマ10〜80重量部、アクリル酸系誘導体15〜89.9重量部、光重合開始剤0.1〜5.0重量部を必須成分とし、これらの混合物を硬化させてなるものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
アクリル酸系誘導体ポリマの重量平均分子量が100,000以上である請求項7記載の光学フィルタ。
【請求項9】
衝撃吸収層が粘着性を有するものである請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
衝撃吸収層の可視光の透過率が80%以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
反射防止層を最外層とし、衝撃吸収層を有するのに加え、電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、色調補正層及び粘着層からなる群から選ばれる層を少なくとも一つ有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−298667(P2007−298667A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125594(P2006−125594)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】