説明

光学ブロック及び光軸調整方法

【課題】光軸調整を容易に行うこと。
【解決手段】光学ブロック10は、第1の面M1と、第1の面M1に対して30°傾斜し、入射光LA2の一部を第1の面M1へ向けて反射するとともに、入射光LA2の他の一部を透過させる第2の面M2と、第1の面M1に対して60°かつ第2の面M2に対して30°傾斜し、第2の面M2からの透過光を第1の面M1へ向けて反射する第3の面M3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ブロック及び光軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの光学素子の光軸を位置合わせする際には、図6に示すように、一方の光学素子30(コリメートレンズを含む)に光源20から光を導入し、この光学素子30から出射されたコリメート光Lをもう一方の光学素子40(コリメートレンズを含む)で受光して、パワーメータ60により測定される受光パワーが最大になるように、光軸Kに対する受光側の光学素子40の位置X,Yや向き(角度)θ,θを調整するという方法が一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−101848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光軸合わせにおける角度ずれの感度は、例えば光軸から角度が0.1°ずれただけでも結合効率が50%程度に落ちてしまうほど敏感であり、極めて許容範囲が小さい。そのため、光軸調整の作業は熟練を要し、難易度が高かった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光軸調整を容易に行うことを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、第1の面と、前記第1の面に対して30°傾斜し、入射光の一部を前記第1の面へ向けて反射するとともに、前記入射光の他の一部を透過させる第2の面と、前記第1の面と前記第2の面の交線を通って前記第1の面に対して60°かつ前記第2の面に対して30°傾斜し、前記第2の面からの透過光を前記第1の面へ向けて反射する第3の面と、を備えた光学ブロックを提供する。
【0007】
また、2つの上記光学ブロックを、各光学ブロックの前記第1の面が平行となりかつ各光学ブロックの前記第3の面が向かい合うようにして配置した光学ブロックとしてもよい。
【0008】
さらに、2つの光学ブロックを、一方の光学ブロックの前記第1の面を含む平面と他方の光学ブロックの前記第1の面を含む平面とが一致するように配置してもよい。
【0009】
また、本発明は、上記の光学ブロックを用いて光学素子の光軸を調整する光軸調整方法であって、前記光学素子からの光を前記光学ブロックの前記第2の面へ入射させ、前記第2の面からの反射光と前記第2の面を透過し前記第3の面で反射した光が前記第1の面上の同一点へ到達するように前記光学素子の光軸を調整する工程を含む光軸調整方法を提供する。
【0010】
また、上記の光軸調整方法において、前記光学素子と光学結合させる光学素子の光軸に対して、前記第1の面が平行であり、前記第1の面と前記第2の面の交線が垂直である。
また、上記の光軸調整方法において、前記第2の面へ入射される光は平行光にコリメートされていることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構成によれば、光学ブロックの光軸(後述)と平行な光が第2の面へ入射する場合、第2の面からの反射光の光路と第2の面を透過し第3の面で反射した光の光路がそれぞれ第1の面と交差する点は一致するため、第1の面上にはビームスポットが1つのみ出現し、光学ブロックの光軸と平行ではない光が第2の面へ入射する場合、上記2つの光路はそれぞれ異なる点で第1の面と交差するため、第1の面上には2つのビームスポットが出現する。
したがって、本発明によれば、第1の面上のビームスポットが1つであるかにより、光軸合わせの状態を視覚的に簡単に把握することができ、光軸調整を容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態による光学ブロックの構成を示す図である。
【図2】入射光LA1〜LA3に対して光路及びビームスポットが変化する様子を示す図である。
【図3】入射光LB1〜LB3に対して光路及びビームスポットが変化する様子を示す図である。
【図4】光学ブロックを使用して光学素子の光軸を調整する方法を示す図である。
【図5】第2の実施形態による光学ブロックの構成を示す図である。
【図6】従来の光軸調整方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による光学ブロック10の構成を示す図であり、同図(A)は斜め上から光学ブロック10を見た斜視図を表し、同図(B)はX軸方向から光学ブロック10を見た正面図を表している。
【0015】
図1に示されるように、光学ブロック10は、三角形ABC及び三角形EFGを底面とする三角柱の第1光学ブロック10Aと三角形BCD及び三角形FGHを底面とする三角柱の第2光学ブロック10Bを、互いの側面BCGFで貼り合わせた形を有する。以下、平面ACGEを第1の面M1、平面BCGFを第2の面M2、平面CDHGを第3の面M3、平面ABFEを第4の面M4とする。また、上記三角柱の底面の法線方向をX軸とし、三角柱の側面の1つである第1の面M1の法線方向をY軸とする。
【0016】
第1光学ブロック10Aと第2光学ブロック10Bは、後述する光軸調整で使用される光の波長において屈折率が同じ材質が用いられる。材質の例は、例えばガラスである。ガラス以外の材質として、上記波長において透明な材質を適宜用いることもできる。
【0017】
光学ブロック10の第2の面M2は、第1の面M1に対して30°の角度をなしている。また、第3の面M3は、第1の面M1と第2の面M2の交線を通る平面であり(即ち、第3の面M3と第1の面M1の交線が第1の面M1と第2の面M2の交線と一致しており)、さらに、第2の面M2に対して30°、即ち第1の面M1に対して60°の角度をなしている。第4の面M4は、その法線方向がZ軸を向いており、第1の面M1に対し直角をなしている。
【0018】
第2の面M2には、誘電体薄膜による部分反射膜が形成されている。第3の面M3には、金属反射膜が形成されている。なお、第3の面M3に金属反射膜を設けず、第2光学ブロック10Bと空気(図において第3の面M3より右側)の屈折率差による部分反射を利用してもよい。また、第3の面M3の金属反射膜に代えて、誘電体薄膜による反射膜としてもよい。
第1の面M1には、入射された光が表面で散乱されるように、多数の微小な凹凸を有したすりガラス状に表面加工が施されていてもよい。
【0019】
次に、図2,図3を用いて光学ブロック10の使用方法を説明する。図2(A)及び図3(A)は、光学ブロック10をX軸方向から見た正面図であり、光学ブロック10内の光路を表している。図2(B)〜(D)及び図3(B)〜(D)は、光学ブロック10をY軸方向から見た上面図であり、第1の面M1に出現するビームスポットを表している。以下、Z軸を光学ブロック10の光軸と定義する。
【0020】
図2(A)において、光学ブロック10の光軸(Z軸)と平行な光LA2(平行光にコリメートされた光。以下同様)を、第4の面M4から光学ブロック10へ入射させたとする。光LA2は、第4の面M4へ垂直に入射するので、第4の面M2で屈折せず、第1光学ブロック10A中をZ軸と平行に伝搬していく。光LA2が第2の面M2へ入射する入射点を、点Pとする。
【0021】
第2の面M2へ入射した光LA2は、その一部が第2の面M2により反射される。入射点Pにおいて光LA2の入射角は60°であり、反射角も60°であるから、第2の面M2からの反射光は、Z軸から60°傾いた方向へ反射されていき、第1の面M1へ到達する。この反射光が第1の面M1と交差する点を、点Rとする。
【0022】
また、第2の面M2上の点Pへ入射した光LA2の別の一部は、第2の面M2を透過して、第2光学ブロック10Bへ入射される。第1光学ブロック10Aと第2光学ブロック10Bの屈折率が等しいので、この透過光は、第2光学ブロック10B中をZ軸と平行に伝搬していく。上記透過光が第3の面M3へ入射する入射点を、点Qとする。
【0023】
すると、点Pからの反射光の光路PRと透過光の光路PQは第2の面M2に対して線対称となり、また、∠RPQ=60°となるから、三角形RPQは正三角形であることになる。一方、点Qにおいて第3の面M3へ入射した光は、第3の面M3によって反射され、その入射角と反射角の和は60°となっているから、点Qからの反射光は、上記正三角形RPQの辺Q上を伝搬していき、第1の面M1へ到達することになる。
そのため、この反射光が第1の面M1へ到達して第1の面M1と交差する点Sは、正三角形RPQの頂点Rと一致する。
【0024】
このように、光学ブロック10への入射光が光軸(Z軸)と平行である場合は、第2の面M2からの反射光と第2の面M2を透過し第3の面M3により反射された光が、図2(C)に示される如く、第1の面M1上の同一点R(=S)へと到達し、第1の面M1上には、1つのビームスポットが出現することとなる。
【0025】
次に、図2(A)において、伝搬方向が光学ブロック10の光軸(Z軸)よりもY軸の負側に傾いた光LA1を、第4の面M4から光学ブロック10へ入射させたとする。光LA1は、第4の面M4で屈折し、第1光学ブロック10Aにおいても光軸から傾いて伝搬する。ここでは説明の便宜上、光LA1の第2の面M2への入射点を、上記と同じ点Pであるとする。
【0026】
このとき、入射点Pにおける光LA1の入射角は60°より小さいので、第2の面M2からの反射光が第1の面M1と交差する点は、上述の点Rよりも図中左側の点Rとなる。また、第2の面M2からの透過光が第3の面M3へ入射する入射点は、上述の点Qよりも図中左下側の点Qとなり、さらに、この点Qにおける入射角は30°より小さいことから、点Qで第3の面M3により反射された光が第1の面M1と交差する点は、点Rよりも図中さらに左側の点Sとなる。
【0027】
また同様に、図2(A)において、伝搬方向が光軸(Z軸)よりもY軸の正側に傾いた光LA3を光学ブロック10へ入射させたとすると、今度は、第2の面M2からの反射光が第1の面M1と交差する点は、上述の点Rよりも図中右側の点Rとなり、第2の面M2からの透過光が第3の面M3へ入射する入射点は、上述の点Qよりも図中右上側の点Qとなり、点Qで第3の面M3により反射された光が第1の面M1と交差する点は、点Rよりも図中さらに右側の点Sとなる。
【0028】
このように、光学ブロック10への入射光が光軸(Z軸)と平行ではない場合は、第2の面M2からの反射光と第2の面M2を透過し第3の面M3により反射された光が、図2(B),(D)に示される如く、第1の面M1上の異なる点(点Rと点S、あるいは点Rと点S)へと到達し、第1の面M1上には、2つのビームスポットが出現することとなる。
【0029】
したがって、この光学ブロック10を使えば、光学ブロック10の光軸と平行な光と平行でない光を、第1の面M1上に出現したビームスポットが1つであるか2つであるかにより、視覚的に容易に判別することが可能である。
【0030】
次に、図3(A)において、光学ブロック10の光軸(Z軸)と平行であり、第4の面M4への入射位置がY軸方向に異なっている光LB1,LB2,LB3を、それぞれ光学ブロック10へ入射させたとする。このとき、各光について、第2の面M2からの反射光の光路と、第2の面M2を透過し第3の面M3で反射された光の光路は、それぞれ正三角形U,正三角形U,正三角形Uを描く。
【0031】
そして、第1の面M1上のビームスポットは、図3(B)〜(D)に示されるように、各光LB1,LB2,LB3の第4の面M4における入射位置に応じて、Z軸方向に異なる点U,U,Uとして出現する。よって、第1の面M1上に出現したビームスポットの位置により、光学ブロック10への入射位置を判別することも可能である。
【0032】
次に、図4を参照し、この光学ブロック10を使用して光学素子の光軸を調整する方法を説明する。なお、本発明において光学素子の種類は特に限定されないものとする。
【0033】
まず、同図(A)に示すように、コリメートレンズ31を有する光学素子30に光源20から赤外光を導入し、光学素子30からのコリメート光を光学ブロック10の第4の面M4から入射させる。そして、光学ブロック10の第1の面M1に出現したビームスポットを赤外線カメラ50により観察しながら、光学素子30の角度(YZ平面内の傾き角)を調整して、第1の面M1上のビームスポットが1つとなるような状態にする。これにより、光学素子30の光軸(コリメート光の出射方向)が光学ブロック10の光軸と平行になる。
なお、光学ブロック10の第1の面M1にすりガラス状の表面加工が施されている場合は、散乱によりビームスポットが観察しやすくなり、光学素子30の角度調整もやりやすくなる。
【0034】
光学素子30の角度を調整し終わったら、次に、同図(B)に示すように、光学ブロック10をY軸の回りに(即ち第1の面M1を角度調整の終わった光学素子30の光軸と平行に保ったまま)180°回転させて、第4の面M4が図中右側を向いて光学素子30の光軸に垂直(第1の面M1と第2の面M2の交線が光学素子30の光軸に垂直)となる配置とする。そして、この第4の面M4へ、コリメートレンズ41を有し光源20と繋いだ光学素子40からのコリメート光を入射させて、上記と同様に、第1の面M1上のビームスポットが1つとなるように光学素子40の角度(YZ平面内の傾き角)を調整する。
【0035】
これにより、光学素子40の光軸(コリメート光の出射方向)が光学ブロック10の光軸と平行になり、同図(C)に示すように、光学素子30と光学素子40を、それぞれの光軸が平行な状態に調整できたことになる。
【0036】
なお、この後さらに、光学ブロック10と赤外線カメラ50をZ軸の回りに90°回転させて、再び上記と同様の手順により、光学素子30,40の角度(今度はXY平面内の傾き角)を調整するようにしてもよい。これにより、光学素子30と光学素子40の光軸調整の精度をより一層高めることができる。
また、赤外光の代わりに可視光を用いてもよく、この場合は赤外線カメラ50を使わずに目視によりビームスポットを観察してもよい。
【0037】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態による光学ブロック100の構成を示す図であり、X軸方向から光学ブロック100を見た正面図を表している。
【0038】
同図において、光学ブロック100は、3つの光学ブロック10,11,12を組み合わせて構成されている。このうち光学ブロック10は、第1の実施形態と同一の光学ブロックである。また、光学ブロック11も第1の実施形態と同一の光学ブロックであり、図示されるように第1の面N1、第2の面N2、第3の面N3、及び第4の面N4を有している。
【0039】
光学ブロック10と光学ブロック11は、それぞれの第3の面M3,N3が互いに向かい合い、さらに、それぞれの第1の面M1,N1が同一平面をなして2つの光学ブロック10,11の光軸が平行となる配置とされている。なお、第1の面M1,N1は、互いに平行であればよく、同一平面上になくてもよい。光学ブロック10と光学ブロック11の配置を保持するために、光学ブロック100がホルダを有していてもよい。
【0040】
光学ブロック12は、光学ブロック10の第3の面M3と光学ブロック11の第3の面N3に挟まれた空間に設けられている。なお、この光学ブロック12は省略してもよい。
【0041】
このような構成の光学ブロック100を使用する際には、対向させた2つの光学素子30,40の間に光学ブロック100を置き、光学素子30からのコリメート光を光学ブロック10の第4の面M4へ、また光学素子40からのコリメート光を光学ブロック11の第4の面N4へそれぞれ入射させて、第1の実施形態と同様に、赤外線カメラ50で第1の面M1,N1のビームスポットを観察しながら光学素子30,40の角度を調整すればよい。光学ブロック100を使うことで、第1の実施形態のように光学ブロック10を回転させる必要がなくなり、光軸調整の精度を高めることができる。
【0042】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10,11,100…光学ブロック 20…光源 30,40…光学素子 31,41…コリメートレンズ 50…赤外線カメラ M1,N1…第1の面 M2,N2…第2の面 M3,N3…第3の面 M4,N4…第4の面 LA1〜LA3,LB1〜LB3…コリメート光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、
前記第1の面に対して30°傾斜し、入射光の一部を前記第1の面へ向けて反射するとともに、前記入射光の他の一部を透過させる第2の面と、
前記第1の面と前記第2の面の交線を通って前記第1の面に対して60°かつ前記第2の面に対して30°傾斜し、前記第2の面からの透過光を前記第1の面へ向けて反射する第3の面と、
を備えることを特徴とする光学ブロック。
【請求項2】
請求項1に記載の光学ブロックを2つ備え、
前記2つの光学ブロックを、各光学ブロックの前記第1の面が平行となりかつ各光学ブロックの前記第3の面が向かい合うようにして配置したことを特徴とする光学ブロック。
【請求項3】
前記2つの光学ブロックを、一方の光学ブロックの前記第1の面を含む平面と他方の光学ブロックの前記第1の面を含む平面とが一致するように配置したことを特徴とする請求項2に記載の光学ブロック。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1の項に記載の光学ブロックを用いて光学素子の光軸を調整する光軸調整方法であって、
前記光学素子からの光を前記光学ブロックの前記第2の面へ入射させ、前記第2の面からの反射光と前記第2の面を透過し前記第3の面で反射した光が前記第1の面上の同一点へ到達するように前記光学素子の光軸を調整する工程を含むことを特徴とする光軸調整方法。
【請求項5】
前記光学素子と光学結合させる光学素子の光軸に対して、前記第1の面が平行であり、前記第1の面と前記第2の面の交線が垂直であることを特徴とする請求項4に記載の光軸調整方法。
【請求項6】
前記第2の面へ入射される光は平行光にコリメートされていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の光軸調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−215246(P2011−215246A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81404(P2010−81404)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】