光学ユニット、照明光学装置、露光装置、およびデバイス製造方法
【課題】照明瞳輝度分布の形状、大きさ、および偏光状態について多様性に富んだ照明条件を実現することのできる照明光学装置を提供する。
【解決手段】照明光学装置は、光学ユニット3を備えている。光学ユニットは、入射光束を2つの光束に分割する光分割器35と、第1光束の光路に配置可能な第1空間光変調器33と、第2光束の光路に配置可能な第2空間光変調器34と、第1空間光変調器を介した光束と第2空間光変調器を介した光束とを合成する光合成器36とを備え、第1空間光変調器および第2空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素33a,34aを有する。
【解決手段】照明光学装置は、光学ユニット3を備えている。光学ユニットは、入射光束を2つの光束に分割する光分割器35と、第1光束の光路に配置可能な第1空間光変調器33と、第2光束の光路に配置可能な第2空間光変調器34と、第1空間光変調器を介した光束と第2空間光変調器を介した光束とを合成する光合成器36とを備え、第1空間光変調器および第2空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素33a,34aを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニット、照明光学装置、露光装置、およびデバイス製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のデバイスをリソグラフィー工程で製造するための露光装置に好適な照明光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の典型的な露光装置においては、光源から射出された光束が、オプティカルインテグレータとしてのフライアイレンズを介して、多数の光源からなる実質的な面光源としての二次光源(一般には照明瞳における所定の光強度分布)を形成する。以下、照明瞳での光強度分布を、「照明瞳輝度分布」という。また、照明瞳とは、照明瞳と被照射面(露光装置の場合にはマスクまたはウェハ)との間の光学系の作用によって、被照射面が照明瞳のフーリエ変換面となるような位置として定義される。
【0003】
二次光源からの光束は、コンデンサーレンズにより集光された後、所定のパターンが形成されたマスクを重畳的に照明する。マスクを透過した光は投影光学系を介してウェハ上に結像し、ウェハ上にはマスクパターンが投影露光(転写)される。マスクに形成されたパターンは高集積化されており、この微細パターンをウェハ上に正確に転写するにはウェハ上において均一な照度分布を得ることが不可欠である。
【0004】
従来、ズーム光学系を用いることなく照明瞳輝度分布(ひいては照明条件)を連続的に変更することのできる照明光学装置が提案されている(特許文献1を参照)。特許文献1に開示された照明光学装置では、アレイ状に配列され且つ傾斜角および傾斜方向が個別に駆動制御される多数の微小なミラー要素により構成された可動マルチミラーを用いて、入射光束を反射面毎の微小単位に分割して偏向させることにより、光束の断面を所望の形状または所望の大きさに変換し、ひいては所望の照明瞳輝度分布を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−353105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、照明瞳輝度分布の形状、及び大きさについてさらに多様性に富んだ照明条件を実現することのできる照明光学装置を提供することを目的とする。また、本発明は、多様性に富んだ照明条件を実現することのできる照明光学装置を用いて、パターン特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことのできる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、入射光路を進行する入射光束を複数の光束に分割する光分割器と、
前記複数の光束のうちの第1光束の光路に配置可能な第1空間光変調器と、
前記複数の光束のうちの第2光束の光路に配置可能な第2空間光変調器と、
前記第1空間光変調器を介した光束と前記第2空間光変調器を介した光束とを合成して射出光路へ向ける光合成器とを備え、
前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器のうちの少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有し、
前記光分割器側の前記入射光路と前記光合成器側の前記射出光路とは同じ方向に延ばされていることを特徴とする光学ユニットを提供する。
【0008】
本発明の第2形態では、光源からの光に基づいて被照射面を照明する照明光学装置において、
第1形態の光学ユニットと、
前記第1および第2空間光変調器を介した光束に基づいて、前記照明光学装置の照明瞳に所定の光強度分布を形成する分布形成光学系とを備えていることを特徴とする照明光学装置を提供する。
【0009】
本発明の第3形態では、所定のパターンを照明するための第2形態の照明光学装置を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置を提供する。
【0010】
本発明の第4形態では、第3形態の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記パターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記パターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の照明光学装置では、照明瞳輝度分布の形状、及び大きさについてさらに多様性に富んだ照明条件を実現することができる。また、本発明の露光装置では、多様性に富んだ照明条件を実現することのできる照明光学装置を用いて、マスクMのパターン特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいては良好なデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】空間光変調ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図3】シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成を概略的に示す斜視図である。
【図4】本実施形態においてアフォーカルレンズの瞳面に形成される4極状の光強度分布を模式的に示す図である。
【図5】本実施形態において5極状の照明瞳輝度分布を形成する例を模式的に示す図である。
【図6】光分割器と光合成器とが共通の偏光ビームスプリッターを有する変形例にかかる空間光変調ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図7】透過型の空間光変調器を有する変形例にかかる空間光変調ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図8】偏光制御部を有する変形例にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図9】光分割器として回折光学素子を用いる変形例の要部構成を概略的に示す図である。
【図10】図9の空間光変調ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図11】図9の空間光変調ユニットが備える空間光変調器の部分斜視図である。
【図12】光分割器としてプリズムユニットを用いる変形例の要部構成を概略的に示す図である。
【図13】半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【図14】液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図2は、空間光変調ユニットの構成を概略的に示す図である。図1において、感光性基板であるウェハWの法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの面内において図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。
【0014】
図1を参照すると、本実施形態の露光装置は、露光光(照明光)を供給するための光源1を備えている。光源1として、たとえば193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1から射出された光は、整形光学系2により所要の断面形状の光束に拡大された後、空間光変調ユニット3に入射する。
【0015】
空間光変調ユニット3は、図2に示すように、一対のプリズム部材31および32と、一対の空間光変調器33および34とを備えている。空間光変調ユニット3のプリズム部材31の入射面31aに光軸AXに沿って入射した光は、プリズム部材31の内部を伝播した後、プリズム部材31と32との間に形成された偏光分離膜35に入射する。偏光分離膜35で反射されたs偏光の光は、プリズム部材31の内部を伝播した後、第1空間光変調器33に入射する。
【0016】
第1空間光変調器33は、二次元的に配列された複数のミラー要素(一般には光学要素)33aと、複数のミラー要素33aの姿勢を個別に制御駆動する駆動部33b(図1では不図示)とを有する。同様に、第2空間光変調器34は、二次元的に配列された複数のミラー要素34aと、複数のミラー要素34aの姿勢を個別に制御駆動する駆動部34b(図1では不図示)とを有する。駆動部33b,34bは、図示を省略した制御部からの指令にしたがって、複数のミラー要素33a,34aの姿勢を個別に制御駆動する。
【0017】
第1空間光変調器33の複数のミラー要素33aにより反射された光は、プリズム部材31の内部を伝播した後、s偏光の状態でプリズム部材31と32との間に形成された偏光分離膜36に入射する。第1空間光変調器33を経て偏光分離膜36で反射された光は、プリズム部材31の内部を伝播した後、プリズム部材31の射出面31bから空間光変調ユニット3の外部へ射出される。第1空間光変調器33のすべてのミラー要素33aの反射面がXY平面に沿って位置決めされた基準状態では、空間光変調ユニット3に光軸AXに沿って入射して第1空間光変調器33を経た光は、空間光変調ユニット3から光軸AXに沿って射出される。
【0018】
一方、偏光分離膜35を透過したp偏光の光は、プリズム部材32の内部を伝播し、プリズム部材32と気体(空気または不活性ガス)37との界面32aで全反射された後、第2空間光変調器34に入射する。第2空間光変調器34の複数のミラー要素34aにより反射された光は、プリズム部材32の内部を伝播し、プリズム部材32と気体37との界面32bで全反射された後、p偏光の状態でプリズム部材31と32との間に形成された偏光分離膜36に入射する。
【0019】
第2空間光変調器34を経て偏光分離膜36を透過した光は、プリズム部材31の内部を伝播した後、プリズム部材31の射出面31bから空間光変調ユニット3の外部へ射出される。第2空間光変調器34のすべてのミラー要素34aの反射面がXY平面に沿って位置決めされた基準状態では、空間光変調ユニット3に光軸AXに沿って入射して第2空間光変調器34を経た光は、空間光変調ユニット3から光軸AXに沿って射出される。
【0020】
このように、空間光変調ユニット3において、プリズム部材31と32との間に形成された偏光分離膜35は、入射光束を2つの光束(一般には複数の光束)に分割する光分割器を構成している。また、プリズム部材31と32との間に形成された偏光分離膜36は、第1空間光変調器33を介した光束と第2空間光変調器34を介した光束とを合成する光合成器を構成している。
【0021】
空間光変調ユニット3から射出された光は、アフォーカルレンズ4に入射する。アフォーカルレンズ4は、その前側焦点位置と第1空間光変調器33の複数のミラー要素33aの位置および第2空間光変調器34の複数のミラー要素34aの位置とがほぼ一致し且つその後側焦点位置と図中破線で示す所定面5の位置とがほぼ一致するように設定されたアフォーカル系(無焦点光学系)である。
【0022】
したがって、第1空間光変調器33を介したs偏光の光束は、アフォーカルレンズ4の瞳面に、例えば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布からなるZ方向2極状の光強度分布を形成した後、2極状の角度分布でアフォーカルレンズ4から射出される。一方、第2空間光変調器34を介したp偏光の光束は、アフォーカルレンズ4の瞳面に、例えば光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布からなるX方向2極状の光強度分布を形成した後、2極状の角度分布でアフォーカルレンズ4から射出される。
【0023】
アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aと後側レンズ群4bとの間の光路中においてその瞳面の位置またはその近傍の位置には、円錐アキシコン系6が配置されている。円錐アキシコン系6の構成および作用については後述する。アフォーカルレンズ4を介した光束は、σ値(σ値=照明光学装置のマスク側開口数/投影光学系のマスク側開口数)可変用のズームレンズ7を介して、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8に入射する。
【0024】
シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8は、図3に示すように、光源側に配置された第1フライアイ部材8aとマスク側に配置された第2フライアイ部材8bとから構成されている。第1フライアイ部材8aの光源側の面および第2フライアイ部材8bの光源側の面には、X方向に並んで配列されたシリンドリカルレンズ群8aaおよび8baがそれぞれピッチp1で形成されている。第1フライアイ部材8aのマスク側の面および第2フライアイ部材8bのマスク側の面には、Z方向に並んで配列されたシリンドリカルレンズ群8abおよび8bbがそれぞれピッチp2(p2>p1)で形成されている。
【0025】
シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8のX方向に関する屈折作用(すなわちXY平面に関する屈折作用)に着目すると、光軸AXに沿って入射した平行光束は、第1フライアイ部材8aの光源側に形成されたシリンドリカルレンズ群8aaによってX方向に沿ってピッチp1で波面分割され、その屈折面で集光作用を受けた後、第2フライアイ部材8bの光源側に形成されたシリンドリカルレンズ群8baのうちの対応するシリンドリカルレンズの屈折面で集光作用を受け、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面上に集光する。
【0026】
シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8のZ方向に関する屈折作用(すなわちYZ平面に関する屈折作用)に着目すると、光軸AXに沿って入射した平行光束は、第1フライアイ部材8aのマスク側に形成されたシリンドリカルレンズ群8abによってZ方向に沿ってピッチp2で波面分割され、その屈折面で集光作用を受けた後、第2フライアイ部材8bのマスク側に形成されたシリンドリカルレンズ群8bbのうちの対応するシリンドリカルレンズの屈折面で集光作用を受け、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面上に集光する。
【0027】
このように、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8は、シリンドリカルレンズ群が両側面に配置された第1フライアイ部材8aと第2フライアイ部材8bとにより構成されているが、X方向にp1のサイズを有しZ方向にp2のサイズを有する多数の矩形状の微小屈折面が縦横に且つ稠密に一体形成されたマイクロフライアイレンズと同様の光学的機能を発揮する。シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8では、微小屈折面の面形状のばらつきに起因する歪曲収差の変化を小さく抑え、たとえばエッチング加工により一体的に形成される多数の微小屈折面の製造誤差が照度分布に与える影響を小さく抑えることができる。
【0028】
所定面5の位置はズームレンズ7の前側焦点位置の近傍に配置され、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面はズームレンズ7の後側焦点位置の近傍に配置されている。換言すると、ズームレンズ7は、所定面5とシリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面とを実質的にフーリエ変換の関係に配置し、ひいてはアフォーカルレンズ4の瞳面とシリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面とを光学的にほぼ共役に配置している。
【0029】
したがって、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面上には、アフォーカルレンズ4の瞳面と同様に、たとえば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布と光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布とからなる4極状の照野が形成される。この4極状の照野の全体形状は、ズームレンズ7の焦点距離に依存して相似的に変化する。シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8における波面分割単位としての矩形状の微小屈折面は、マスクM上において形成すべき照野の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状である。
【0030】
シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8に入射した光束は二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍(ひいては照明瞳)には、入射光束によって形成される照野とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源、すなわち光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の実質的な面光源と光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の実質的な面光源とからなる4極状の二次光源(4極状の照明瞳輝度分布)が形成される。シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍に形成された二次光源からの光束は、その近傍に配置された開口絞り9に入射する。
【0031】
開口絞り9は、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍に形成される4極状の二次光源に対応した4極状の開口部(光透過部)を有する。開口絞り9は、照明光路に対して挿脱自在に構成され、且つ大きさおよび形状の異なる開口部を有する複数の開口絞りと切り換え可能に構成されている。開口絞りの切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。開口絞り9は、後述する投影光学系PLの入射瞳面と光学的にほぼ共役な位置に配置され、二次光源の照明に寄与する範囲を規定する。
【0032】
開口絞り9により制限された二次光源からの光は、コンデンサー光学系10を介して、マスクブラインド11を重畳的に照明する。こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド11には、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の波面分割単位である矩形状の微小屈折面の形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。マスクブラインド11の矩形状の開口部(光透過部)を介した光束は、結像光学系12の集光作用を受けた後、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。すなわち、結像光学系12は、マスクブラインド11の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。
【0033】
マスクステージMS上に保持されたマスクMを透過した光束は、投影光学系PLを介して、ウェハステージWS上に保持されたウェハ(感光性基板)W上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハステージWSを二次元的に駆動制御しながら、ひいてはウェハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハWの各露光領域にはマスクMのパターンが順次露光される。
【0034】
円錐アキシコン系6は、光源側から順に、光源側に平面を向け且つマスク側に凹円錐状の屈折面を向けた第1プリズム部材6aと、マスク側に平面を向け且つ光源側に凸円錐状の屈折面を向けた第2プリズム部材6bとから構成されている。そして、第1プリズム部材6aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材6bの凸円錐状の屈折面とは、互いに当接可能なように相補的に形成されている。また、第1プリズム部材6aおよび第2プリズム部材6bのうち少なくとも一方の部材が光軸AXに沿って移動可能に構成され、第1プリズム部材6aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材6bの凸円錐状の屈折面との間隔が可変に構成されている。以下、理解を容易にするために、4極状または輪帯状の二次光源に着目して、円錐アキシコン系6の作用およびズームレンズ7の作用を説明する。
【0035】
第1プリズム部材6aの凹円錐状屈折面と第2プリズム部材6bの凸円錐状屈折面とが互いに当接している状態では、円錐アキシコン系6は平行平面板として機能し、形成される4極状または輪帯状の二次光源に及ぼす影響はない。しかしながら、第1プリズム部材6aの凹円錐状屈折面と第2プリズム部材6bの凸円錐状屈折面とを離間させると、4極状または輪帯状の二次光源の幅(4極状の二次光源に外接する円の直径(外径)と内接する円の直径(内径)との差の1/2;輪帯状の二次光源の外径と内径との差の1/2)を一定に保ちつつ、4極状または輪帯状の二次光源の外径(内径)が変化する。すなわち、4極状または輪帯状の二次光源の輪帯比(内径/外径)および大きさ(外径)が変化する。
【0036】
ズームレンズ7は、4極状または輪帯状の二次光源の全体形状を相似的(等方的)に拡大または縮小する機能を有する。たとえば、ズームレンズ7の焦点距離を最小値から所定の値へ拡大させることにより、4極状または輪帯状の二次光源の全体形状が相似的に拡大される。換言すると、ズームレンズ7の作用により、4極状または輪帯状の二次光源の輪帯比が変化することなく、その幅および大きさ(外径)がともに変化する。このように、円錐アキシコン系6およびズームレンズ7の作用により、4極状または輪帯状の二次光源の輪帯比と大きさ(外径)とを制御することができる。
【0037】
本実施形態では、空間光変調器33,34として、たとえば二次元的に配列された複数のミラー要素33a,34aの向きを連続的にそれぞれ変化させる空間光変調器を用いている。このような空間光変調器として、たとえば特表平10−503300号公報およびこれに対応する欧州特許公開第779530号公報、特開2004−78136号公報およびこれに対応する米国特許第6,900,915号公報、特表2006−524349号公報およびこれに対応する米国特許第7,095,546号公報、並びに特開2006−113437号公報に開示される空間光変調器を用いることができる。なお、二次元的に配列された複数のミラー要素33a,34aの向きを離散的に複数の段階を持つように制御してもよい。
【0038】
第1空間光変調器33では、制御部からの制御信号に応じて作動する駆動部33bの作用により、複数のミラー要素33aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素33aがそれぞれ所定の向きに設定される。第1空間光変調器33の複数のミラー要素33aによりそれぞれ所定の角度で反射されたs偏光の光は、図4に示すように、アフォーカルレンズ4の瞳面に、例えば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布41aおよび41bを形成する。光強度分布41aおよび41bを形成する光は、図中両方向矢印で示すようにX方向に沿った偏光方向を有する。
【0039】
同様に、第2空間光変調器34では、制御部からの制御信号に応じて作動する駆動部34bの作用により、複数のミラー要素34aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素34aがそれぞれ所定の向きに設定される。第2空間光変調器34の複数のミラー要素34aによりそれぞれ所定の角度で反射されたp偏光の光は、図4に示すように、アフォーカルレンズ4の瞳面に、例えば光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布41cおよび41dを形成する。光強度分布41cおよび41dを形成する光は、図中両方向矢印で示すようにZ方向に沿った偏光方向を有する。空間光変調ユニット3に入射する光束の偏光状態が円偏光または偏光方向がX軸およびZ軸と45度の角度をなす直線偏光(以下、「45度直線偏光」という)である場合、4つの光強度分布41a〜41dの光強度は互いに等しくなる。
【0040】
アフォーカルレンズ4の瞳面に4極状の光強度分布41を形成した光は、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面、およびシリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳(開口絞り9が配置されている位置)に、光強度分布41a〜41dに対応する4極状の光強度分布を形成する。すなわち、アフォーカルレンズ4、ズームレンズ7、およびシリンドリカルマイクロフライアイレンズ8は、第1空間光変調器33および第2空間光変調器34を介した光束に基づいて、照明光学装置(2〜12)の照明瞳に所定の光強度分布を形成する分布形成光学系を構成している。さらに、開口絞り9と光学的に共役な別の照明瞳位置、すなわち結像光学系12の瞳位置および投影光学系PLの瞳位置にも、光強度分布41a〜41dに対応する4極状の光強度分布が形成される。
【0041】
露光装置では、マスクMのパターンをウェハWに高精度に且つ忠実に転写するために、パターン特性に応じた適切な照明条件のもとで露光を行う。本実施形態では、図4に示す4極状の光強度分布41に対応する4極状の照明瞳輝度分布が形成され、この4極状の照明瞳輝度分布を通過する光束が周方向偏光状態に設定される。周方向偏光状態で4極状の照明瞳輝度分布に基づく周方向偏光4極照明では、最終的な被照射面としてのウェハWに照射される光がs偏光を主成分とする偏光状態になる。
【0042】
ここで、s偏光とは、入射面に対して垂直な方向に偏光方向を有する直線偏光(入射面に垂直な方向に電気ベクトルが振動している偏光)のことである。また、入射面とは、光が媒質の境界面(被照射面:ウェハWの表面)に達したときに、その点での境界面の法線と光の入射方向とを含む面として定義される。その結果、周方向偏光4極照明では、投影光学系の光学性能(焦点深度など)が向上し、ウェハ(感光性基板)上において高コントラストの良好なマスクパターン像が得られる。
【0043】
本実施形態では、複数のミラー要素33a,34aの姿勢がそれぞれ個別に変化する一対の空間光変調器33,34を備えた空間光変調ユニット3を用いているので、第1空間光変調器33の作用により照明瞳に形成されるs偏光状態の第1光強度分布と第2空間光変調器34の作用により照明瞳に形成されるp偏光状態の第2光強度分布とからなる照明瞳輝度分布を自在に且つ迅速に変化させることができる。換言すれば、本実施形態では、偏光状態の互いに異なる第1光強度分布および第2光強度分布の形状および大きさをそれぞれ変化させることにより、照明瞳輝度分布の形状、大きさ、および偏光状態について多様性に富んだ照明条件を実現することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態において光源1からの光に基づいて被照射面としてのマスクMを照明する照明光学装置(2〜12)では、照明瞳輝度分布の形状、大きさ、および偏光状態について多様性に富んだ照明条件を実現することができる。また、本実施形態の露光装置(1〜WS)では、多様性に富んだ照明条件を実現することのできる照明光学装置(2〜12)を用いて、マスクMのパターン特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では、空間光変調器33および34の基準状態において、光分割器として機能する偏光分離膜35に入射する入射光束の進行方向と、光合成器として機能する偏光分離膜36から射出される射出光束の進行方向とは平行(一致を含む)である。換言すれば、空間光変調器33および34の基準状態において、空間光変調ユニット3への入射光束および空間光変調ユニット3からの射出光束の進行方向は、照明光学装置の光軸AXと一致している(または平行である)。このように、空間光変調ユニット3の上流と下流とで光路が同軸(または平行)になるので、例えば照明瞳輝度分布の形成のために回折光学素子を用いる従来の照明光学装置と光学系を共用することができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1空間光変調器33の複数のミラー要素33aがプリズム部材31に近接して配置され、第2空間光変調器34の複数のミラー要素34aがプリズム部材32に近接して配置されている。この場合、プリズム部材31,32が複数のミラー要素33a,34aのカバー部材の役目を果たすことになり、空間光変調器33,34の耐久性の向上を図ることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、プリズム部材31と32との間に形成された偏光分離膜35に対する光の入射角θ(図2を参照)がブルースター角(Brewster's angle)に近づくように、空間光変調ユニット3を設計してもよい。この構成により、偏光分離膜35でのp偏光の反射率を小さく抑えて、偏光効率を高めることができる。なお、偏光分離膜35,36は、誘電体多層膜で形成されるものに限定されることなく、例えば「周期的な格子構造を持つ偏光分離層」を有するものでもよい。このような「周期的な格子構造を持つ偏光分離層」として、第1方向に平行な複数の金属格子を、第1方向と直交する第2方向に周期的な配列したワイヤーグリッド型偏光分離素子を用いることができる。このような技術は、たとえば特開2005−77819号公報およびこれに対応する米国特許第7116478号公報に開示されている。
【0048】
また、上述の実施形態では、一対のプリズム部材31および32と、一対の空間光変調器33および34とにより、空間光変調ユニット3を構成している。しかしながら、これに限定されることなく、空間光変調ユニット3の具体的な構成については様々な形態が可能である。
【0049】
また、上述の実施形態では、空間光変調ユニット3とシリンドリカルマイクロフライアイレンズ8との間の光路中に、アフォーカルレンズ4、円錐アキシコン系6、およびズームレンズ7が配置されている。しかしながら、これに限定されることなく、これらの光学部材に代えて、例えばフーリエ変換レンズとして機能する集光光学系を配置することもできる。
【0050】
また、上述の実施形態では、第1偏向面としてプリズム部材32と気体37との界面32aでの全反射により、光分割器として機能する偏光分離膜35を介したp偏光の光を第2空間光変調器34へ向けて偏向している。同様に、プリズム部材32と気体37との界面32bでの全反射により、第2空間光変調器34を介したp偏光の光を光合成器として機能する偏光分離膜36へ向けて偏向している。しかしながら、これに限定されることなく、界面32a,32bに反射膜を設けることもできる。
【0051】
また、上述の説明では、第1空間光変調器33の作用によりZ方向2極状の光強度分布41a,41bを形成し、第2空間光変調器34の作用によりX方向2極状の光強度分布41c,41dを形成することにより、4極状の照明瞳輝度分布を形成している。しかしながら、上述したように、本実施形態では、照明瞳輝度分布の形状、大きさ、および偏光状態について様々な形態が可能である。以下、図5を参照して、5極状の照明瞳輝度分布を形成する例を模式的に示す。
【0052】
この例では、第1空間光変調器33の作用により、図5の左図に示すように、例えば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布42aおよび42bと、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布42c’とが、アフォーカルレンズ4の瞳面に形成される。光強度分布42a,42b,42c’を形成する光は、図中両方向矢印で示すようにX方向に沿った偏光方向を有する。一方、第2空間光変調器34の作用により、図5の中央図に示すように、例えば光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布42dおよび42eと、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布42c''とが、アフォーカルレンズ4の瞳面に形成される。光強度分布42d,42e,42c''を形成する光は、図中両方向矢印で示すようにZ方向に沿った偏光方向を有する。
【0053】
その結果、アフォーカルレンズ4の瞳面には、図5の右図に示すように、5極状の光強度分布42a〜42eが形成される。ここで、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布42cは、光強度分布42c’と42c''とが重なり合って形成される。第1空間光変調器33を経てアフォーカルレンズ4の瞳面に達するs偏光の光と、第2空間光変調器34を経てアフォーカルレンズ4の瞳面に達するp偏光の光との間に、光源1の時間コヒーレント長以上の光路長差が付与されている場合、図中両方向矢印で示すようにZ方向に沿った偏光方向を有する光束とX方向に沿った偏光方向を有する光束とが光強度分布42cの領域を通過する。
【0054】
これに対し、第1空間光変調器33を経てアフォーカルレンズ4の瞳面に達するs偏光の光と、第2空間光変調器34を経てアフォーカルレンズ4の瞳面に達するp偏光の光との間に光路長差がない場合、光強度分布42cの領域を通過する光束の偏光状態は空間光変調ユニット3への入射光束の偏光状態と一致する。空間光変調ユニット3に入射する光束の偏光状態が円偏光または45度直線偏光である場合、4つの周辺の光強度分布42a,42b,42d,42eの光強度は互いに等しくなり、中央の光強度分布42cの光強度はその2倍になる。
【0055】
また、例えば1/2波長板を通過させた光を光分割器として機能する偏光分離膜35に入射させてもよい。偏光分離膜35よりも光源側に配置される1/2波長板を光軸を中心として回転させることにより、偏光分離膜35で分離されるs偏光の強度とp偏光の強度との比を制御することができる。すなわち、アフォーカルレンズ4の瞳面に達するs偏光の光の強度とp偏光の光の強度との比を制御できる。例えば、偏光分離膜35に対してs偏光となるように1/2波長板の回転角を制御するか、又は偏光分離膜35に対してp偏光となるように1/2波長板の回転角を制御することにより、s偏光又はp偏光のみの光がアフォーカルレンズ4の瞳面に達するようにすることもできる。これにより、2極状の光強度分布(例えば、図4の光強度分布41a、41b)をアフォーカルレンズ4の瞳面に形成することができる。
【0056】
また、上述の実施形態では、光分割面に位置する偏光分離膜35が光分割器として機能し、偏光分離膜35とは別の位置に設けられた光合成面に位置する偏光分離膜36が光合成器として機能している。しかしながら、これに限定されることなく、例えば図6に示すように、光分割器と光合成器とが共通の偏光ビームスプリッター51を有する変形例も可能である。図6の変形例に示す空間光変調ユニット3Aでは、偏光ビームスプリッター51に光軸AXに沿って入射した光のうち、偏光分離膜51aで反射されたs偏光の光は、1/4波長板52を介して円偏光になり、第1空間光変調器53に入射する。
【0057】
第1空間光変調器53の複数のミラー要素により反射された光は、1/4波長板52を介してp偏光になり、偏光ビームスプリッター51に戻る。第1空間光変調器53を経て偏光ビームスプリッター51に入射したp偏光の光は、偏光分離膜51aを透過し、偏光ビームスプリッター51から射出される。第1空間光変調器53の基準状態では、空間光変調ユニット3Aに光軸AXに沿って入射して第1空間光変調器53を経た光は、空間光変調ユニット3Aから光軸AXに沿って射出される。
【0058】
一方、偏光ビームスプリッター51の偏光分離膜51aを透過したp偏光の光は、1/4波長板54を介して円偏光になり、第2空間光変調器55に入射する。第2空間光変調器55の複数のミラー要素により反射された光は、1/4波長板54を介してs偏光になり、偏光ビームスプリッター51に戻る。第2空間光変調器55を経て偏光ビームスプリッター51に入射したs偏光の光は、偏光分離膜51aで反射され、偏光ビームスプリッター51から射出される。第2空間光変調器55の基準状態では、空間光変調ユニット3Aに光軸AXに沿って入射して第2空間光変調器55を経た光は、空間光変調ユニット3Aから光軸AXに沿って射出される。
【0059】
なお、上述の説明では、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有する空間光変調器として、二次元的に配列された複数の反射面の向き(角度:傾き)を個別に制御可能な空間光変調器を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、たとえば二次元的に配列された複数の反射面の高さ(位置)を個別に制御可能な空間光変調器を用いることもできる。このような空間光変調器としては、たとえば特開平6−281869号公報及びこれに対応する米国特許第5,312,513号公報、並びに特表2004−520618号公報およびこれに対応する米国特許第6,885,493号公報の図1dに開示される空間光変調器を用いることができる。これらの空間光変調器では、二次元的な高さ分布を形成することで回折面と同様の作用を入射光に与えることができる。なお、上述した二次元的に配列された複数の反射面を持つ空間光変調器を、たとえば特表2006−513442号公報およびこれに対応する米国特許第6,891,655号公報や、特表2005−524112号公報およびこれに対応する米国特許公開第2005/0095749号公報の開示に従って変形しても良い。
【0060】
また、上述の説明では、複数のミラー要素を有する反射型の空間光変調器を用いているが、これに限定されることなく、たとえば米国特許第5,229,872号公報に開示される透過型の空間光変調器を用いても良い。図7に、透過型の空間光変調器を有する変形例にかかる空間光変調ユニットの構成を概略的に示す。図7の変形例に示す空間光変調ユニット3Bでは、光分割器として機能する偏光ビームスプリッター61に光軸AXに沿って入射した光のうち、偏光分離膜61aで反射されたs偏光の光は、第1空間光変調器62に入射する。
【0061】
第1空間光変調器62の複数の光学要素(プリズム要素など)を透過した光は、光路折曲げミラー63により偏向された後、光合成器として機能する偏光ビームスプリッター64に入射する。第1空間光変調器62を経て偏光ビームスプリッター64に入射したs偏光の光は、偏光分離膜64aで反射され、偏光ビームスプリッター64から射出される。第1空間光変調器62の基準状態では、空間光変調ユニット3Bに光軸AXに沿って入射して第1空間光変調器62を経た光は、空間光変調ユニット3Bから光軸AXに沿って射出される。
【0062】
偏光ビームスプリッター61の偏光分離膜61aを透過したp偏光の光は、第2空間光変調器65に入射する。第2空間光変調器65の複数の光学要素を透過した光は、光路折曲げミラー66により偏向された後、偏光ビームスプリッター64に入射する。第2空間光変調器65を経て偏光ビームスプリッター64に入射したp偏光の光は、偏光分離膜64aを透過し、偏光ビームスプリッター64から射出される。第2空間光変調器65の基準状態では、空間光変調ユニット3Bに光軸AXに沿って入射して第2空間光変調器65を経た光は、空間光変調ユニット3Bから光軸AXに沿って射出される。
【0063】
また、上述の説明では、直線偏光を主成分とする偏光状態を供給する光源1からの光を、その偏光状態を実質的に維持しつつ空間光変調ユニット(3;3A;3B)へ導く構成としたが、例えば図8に示すように、空間光変調ユニット3の光源1側の光路に、射出光の偏光状態を可変にする偏光制御部13を設ける変形例も可能である。なお、図8において図1と同じ機能を有する部材には同じ符号を付している。
【0064】
図8の変形例に示す偏光制御部13は、整形光学系2および光路折曲げミラーを経由した光源1からの光を受け、空間光変調ユニット3に対して所望の偏光状態の光を射出する。この偏光制御部13は、例えば光軸または光軸と平行な軸を中心として回転可能に設けられた1/2波長板13aと、この1/2波長板13aを回転駆動させる回転駆動部13bとを備えている。
【0065】
回転駆動部13bを介して、1/2波長板13aを回転調整することにより、例えば空間光変調ユニット3に対して、XZ平面内でX軸またはZ軸に対し45度方向に偏光方向(電場の方向)を持つ直線偏光を供給できる。このとき、空間光変調ユニット3の偏光分離膜によって分離されるs偏光の光(第1空間光変調器33へ向かう光)とp偏光の光(第2空間光変調器34へ向かう光)との光量はほぼ等しくなる。
【0066】
ここで、偏光制御部13内の1/2波長板13aの回転調整によって、空間光変調ユニット3の偏光分離膜によって分離されるs偏光の光(第1空間光変調器33へ向かう光)とp偏光の光(第2空間光変調器34へ向かう光)との光量比を任意の光量比に設定することができる。たとえば図4に示したような4極状の光強度分布41a〜41dを形成する場合、光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの光強度分布41a,41bの光強度と、光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの光強度分布41c,41dの光強度との比を所望の光量比に設定することができる。
【0067】
図8に示す変形例では、瞳偏光分布計測装置14で照明瞳偏光分布を計測しつつ、この計測結果に応じて偏光制御部13を制御してもよい。このとき必要に応じて、空間光変調ユニット中の各空間光変調器を制御してもよい。この瞳偏光分布計測装置14は、ウェハWを保持するためのウェハステージWS内または当該ウェハステージWSと別に設けられた計測ステージ内に設けられて、ウェハWに入射する照明光(露光光)の瞳内(開口内)における偏光状態を測定するものである。偏光状態測定部14の詳細な構成および作用については、たとえば特開2005−5521号公報に開示されている。
【0068】
これにより、たとえば照明光学系内あるいは投影光学系内に配置される光路折曲げミラーの偏光毎反射率差があったとしても、これによる悪影響を防ぐことができる。なお、図8の変形例では、偏光制御部13によって空間光変調ユニット3への偏光方向を調整したが、光源1自体、或いは空間光変調ユニット3を光軸廻りに回転させても同様の効果を得ることができる。また、この偏光制御部13は図6および図7に示した変形例にも適用できる。
【0069】
なお、上述の実施形態並びに図6〜図8の変形例では、光分割器および光合成器が偏光分離膜(35,36;51a;61a,64a)を有するが、これに限定されることなく、光分割器および光合成器が光束を振幅分割する分離膜を有する構成も可能である。この場合、第1空間光変調器の作用により照明瞳に形成される第1光強度分布と第2空間光変調器の作用により照明瞳に形成される第2光強度分布とで偏光状態は同じであるが、第1光強度分布および第2光強度分布の形状および大きさをそれぞれ変化させることにより、照明瞳輝度分布の形状および大きさについて多様性に富んだ照明条件を実現することができる。
【0070】
また、上述の実施形態並びに図6〜図8の変形例では、偏光分離膜(35;51a;61a)を用いて入射光束を2つの光束に分割しているが、これに限定されることなく、例えば回折光学素子を用いて入射光束を2つの光束に分割する構成も可能である。図9は、光分割器として回折光学素子を用いる変形例の要部構成を概略的に示す図である。図9の変形例は、図1の実施形態における空間光変調ユニット3が、回折光学素子71、集光レンズ72、一対の1/2波長板73A,73B、および一対の空間光変調ユニット74A,74Bにより置き換えられた構成を有する。
【0071】
図9の変形例では、整形光学系2を介した光源1からの光束が、光軸AXに沿って光分割器としての回折光学素子71に入射する。回折光学素子71は、例えば矩形状の断面を有する平行光束が光軸AXに沿って入射した場合、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に、光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの矩形状の光強度分布を形成する機能を有する。換言すれば、回折光学素子71は、入射光束を2つの光束に分割する機能を有する。
【0072】
回折光学素子71により分割された2つの光束のうちの第1光束は、フーリエ変換レンズとして機能する集光レンズ72を介して、第1光束の光路の光軸AXa廻りまたは光軸AXaと平行な軸線廻りに回転可能な1/2波長板73Aに入射する。1/2波長板73Aを通過した直線偏光状態の光は、空間光変調ユニット74Aを経た後、アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aを介して、アフォーカルレンズ4の瞳面4cに達する。一方、回折光学素子71により分割された2つの光束のうちの第2光束は、集光レンズ72を介して、第2光束の光路の光軸AXb廻りまたは光軸AXbと平行な軸線廻りに回転可能な1/2波長板73Bに入射する。1/2波長板73Bを通過した直線偏光状態の光は、空間光変調ユニット74Bを経た後、アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aを介して瞳面4cに達する。アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aは、空間光変調ユニット74A中の空間光変調器を介した光束と空間光変調ユニット74B中の空間光変調器を介した光束とを瞳面4cで重ね合わせる光学系であって、光合成器として機能する。
【0073】
以下、説明を簡単にするために、第1光束の光路中に配置された空間光変調ユニット74Aと第2光束の光路中に配置された空間光変調ユニット74Bとは互いに同じ構成を有するものとする。また、回折光学素子71にはZ方向およびX方向と45度をなす方向に沿った偏光方向を有する直線偏光状態の平行光束が入射し、1/2波長板73Aの作用により空間光変調ユニット74AにはX方向に偏光したX方向直線偏光状態(横偏光状態)の光が入射し、1/2波長板73Bの作用により空間光変調ユニット74BにはZ方向に偏光したZ方向直線偏光状態(縦偏光状態)の光が入射するものとする。
【0074】
以下、図10および図11を参照して、空間光変調ユニット74Aの具体的な構成および作用を説明する。空間光変調ユニット74Bは空間光変調ユニット74Aと基本的に同じ構成を有するため、空間光変調ユニット74Bの具体的な構成および作用についての重複する説明を省略する。空間光変調ユニット74Aは、図10に示すように、例えば蛍石のような光学材料により形成されたプリズム23bと、プリズム23bのXY平面に平行な側面23baに近接して取り付けられた反射型の空間光変調器23aとを備えている。プリズム23bを形成する光学材料は、蛍石に限定されることなく、光源1が供給する光の波長などに応じて、石英であっても良くその他の光学材料であっても良い。
【0075】
プリズム23bは、直方体の1つの側面(空間光変調器23aが近接して取り付けられる側面23baと対向する側面)をV字状に凹んだ側面23bbおよび23bcと置き換えることにより得られる形態を有し、YZ平面に沿った断面形状に因んでKプリズムとも呼ばれる。プリズム23bのV字状に凹んだ側面23bbおよび23bcは、鈍角をなすように交差する2つの平面PN1およびPN2によって規定されている。2つの平面PN1およびPN2はともにYZ平面と直交し、YZ平面に沿ってV字状を呈している。
【0076】
2つの平面PN1とPN2との接線(X方向に延びる直線)P3で接する2つの側面23bbおよび23bcの内面は、反射面R1およびR2として機能する。すなわち、反射面R1は平面PN1上に位置し、反射面R2は平面PN2上に位置し、反射面R1とR2とのなす角度は鈍角である。一例として、反射面R1とR2とのなす角度を120度とし、光軸AXaに垂直なプリズム23bの入射面IPと反射面R1とのなす角度を60度とし、光軸AXaに垂直なプリズム23bの射出面OPと反射面R2とのなす角度を60度とすることができる。
【0077】
プリズム23bでは、空間光変調器23aが近接して取り付けられる側面23baと光軸AXaとが平行であり、且つ反射面R1が光源1側(露光装置の上流側:図10中左側)に、反射面R2がアフォーカルレンズ4側(露光装置の下流側:図10中右側)に位置している。さらに詳細には、反射面R1は光軸AXaに対して斜設され、反射面R2は接線P3を通り且つXZ平面に平行な面に関して反射面R1とは対称的に光軸AXaに対して斜設されている。プリズム23bの側面23baは、後述するように、空間光変調器23aの複数のミラー要素SEが配列される面に対向した光学面である。
【0078】
プリズム23bの反射面R1は、入射面IPを介して入射した光を空間光変調器23aに向かって反射する。空間光変調器23aは、反射面R1と反射面R2との間の光路中に配置され、反射面R1を経て入射した光を反射する。プリズム23bの反射面R2は、空間光変調器23aを経て入射した光を反射し、射出面OPを介してアフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aへ導く。図10では、説明の理解を容易にするために、空間光変調ユニット74Aよりも後側において光軸AXaが直線状に延びるように光路を展開している。また、図10にはプリズム23bを1つの光学ブロックで一体的に形成した例を示しているが、複数の光学ブロックを用いてプリズム23bを構成しても良い。
【0079】
空間光変調器23aは、反射面R1を経て入射した光に対して、その入射位置に応じた空間的な変調を付与して射出する。空間光変調器23aは、図11に示すように、二次元的に配列された複数の微小なミラー要素(光学要素)SEを備えている。説明および図示を簡単にするために、図10および図11では空間光変調器23aが4×4=16個のミラー要素SEを備える構成例を示しているが、実際には16個よりもはるかに多数のミラー要素SEを備えている。
【0080】
図10を参照すると、光軸AXaと平行な方向に沿って空間光変調ユニット23に入射する光線群のうち、光線L1は複数のミラー要素SEのうちのミラー要素SEaに、光線L2はミラー要素SEaとは異なるミラー要素SEbにそれぞれ入射する。同様に、光線L3はミラー要素SEa,SEbとは異なるミラー要素SEcに、光線L4はミラー要素SEa〜SEcとは異なるミラー要素SEdにそれぞれ入射する。ミラー要素SEa〜SEdは、その位置に応じて設定された空間的な変調を光L1〜L4に与える。
【0081】
空間光変調ユニット23では、空間光変調器23aのすべてのミラー要素SEの反射面がXY平面に平行に設定された基準状態において、光軸AXaと平行な方向に沿って反射面R1へ入射した光線が、空間光変調器23aを経た後に、反射面R2により光軸AXaと平行な方向に向かって反射されるように構成されている。また、空間光変調ユニット23は、プリズム23bの入射面IPからミラー要素SEa〜SEdを経て射出面OPまでの空気換算長と、プリズム23bが光路中に配置されていないときの入射面IPに相当する位置から射出面OPに相当する位置までの空気換算長とが等しくなるように構成されている。ここで、空気換算長とは、光学系中の光路長を屈折率1の空気中の光路長に換算したものであり、屈折率nの媒質中の空気換算長は、その光路長に1/nを乗じたものである。
【0082】
空間光変調器23aの複数のミラー要素SEが配列される面は、集光レンズ72の後側焦点位置またはその近傍に位置決めされ、且つアフォーカルレンズ4の前側焦点位置またはその近傍に位置決めされている。したがって、空間光変調器23aには、回折光学素子71の特性に応じた形状(例えば矩形状)の断面を有する光束が入射する。空間光変調器23aの複数のミラー要素SEa〜SEdによって反射されて所定の角度分布が与えられた光は、アフォーカルレンズ4の瞳面4cに所定の光強度分布SP1〜SP4を形成する。すなわち、アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aは、空間光変調器23aの複数のミラー要素SEa〜SEdが射出光に与える角度を、空間光変調器23aの遠視野領域(フラウンホーファー回折領域)である面4c上での位置に変換している。
【0083】
図1を参照すると、アフォーカルレンズ4の瞳面4c(図1では不図示)と光学的に共役な位置またはその近傍に、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面が位置決めされている。したがって、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8が形成する二次光源の光強度分布(輝度分布)は、空間光変調器23aおよびアフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aが瞳面4cに形成する光強度分布SP1〜SP4に応じた分布となる。空間光変調器23aは、図11に示すように、平面形状の反射面を上面にした状態で1つの平面に沿って規則的に且つ二次元的に配列された多数の微小な反射素子であるミラー要素SEを含む可動マルチミラーである。
【0084】
各ミラー要素SEは可動であり、その反射面の傾き、すなわち反射面の傾斜角および傾斜方向は、制御部(不図示)からの指令にしたがって作動する駆動部23c(図11では不図示)の作用により独立に制御される。各ミラー要素SEは、その反射面に平行な二方向であって互いに直交する二方向(X方向およびY方向)を回転軸として、所望の回転角度だけ連続的或いは離散的に回転することができる。すなわち、各ミラー要素SEの反射面の傾斜を二次元的に制御することが可能である。
【0085】
なお、各ミラー要素SEの反射面を離散的に回転させる場合、回転角を複数の状態(例えば、・・・、−2.5度、−2.0度、・・・0度、+0.5度・・・+2.5度、・・・)で切り換え制御するのが良い。図11には外形が正方形状のミラー要素SEを示しているが、ミラー要素SEの外形形状は正方形に限定されない。ただし、光利用効率の観点から、ミラー要素SEの隙間が少なくなるように配列可能な形状(最密充填可能な形状)にしてもよい。また、光利用効率の観点から、隣り合う2つのミラー要素SEの間隔を必要最小限に抑えてもよい。
【0086】
空間光変調器23aでは、制御部からの制御信号に応じて作動する駆動部23cの作用により、複数のミラー要素SEの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素SEがそれぞれ所定の向きに設定される。空間光変調器23aの複数のミラー要素SEによりそれぞれ所定の角度で反射された光は、アフォーカルレンズ4およびズームレンズ7を介して、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点位置またはその近傍の照明瞳に、複数極状(4極状、5極状など)等の光強度分布(照明瞳輝度分布)を形成する。この照明瞳輝度分布は、ズームレンズ7の作用により、相似的に(等方的に)変化する。
【0087】
具体的には、空間光変調ユニット74A中の空間光変調器23aの複数のミラー要素SEによりそれぞれ所定の角度で反射された横偏光の光は、図4に示すように、アフォーカルレンズ4の瞳面4cに、例えば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布41aおよび41bを形成する。光強度分布41aおよび41bを形成する光は、図中両方向矢印で示すようにX方向に沿った偏光方向を有する。
【0088】
同様に、空間光変調ユニット74B中の空間光変調器の複数のミラー要素によりそれぞれ所定の角度で反射された縦偏光の光は、図4に示すように、アフォーカルレンズ4の瞳面4cに、例えば光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布41cおよび41dを形成する。光強度分布41cおよび41dを形成する光は、図中両方向矢印で示すようにZ方向に沿った偏光方向を有する。
【0089】
アフォーカルレンズ4の瞳面4cに4極状の光強度分布41を形成した光は、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面、およびシリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳(開口絞り9が配置されている位置)に、光強度分布41a〜41dに対応する4極状の光強度分布を形成する。さらに、開口絞り9と光学的に共役な別の照明瞳位置、すなわち結像光学系12の瞳位置および投影光学系PLの瞳位置にも、光強度分布41a〜41dに対応する4極状の光強度分布が形成される。
【0090】
あるいは、空間光変調ユニット74Aの作用により、図5の左図に示すように、例えば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布42aおよび42bと、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布42c’とが、アフォーカルレンズ4の瞳面4cに形成される。光強度分布42a,42b,42c’を形成する光は、図中両方向矢印で示すようにX方向に沿った偏光方向を有する。一方、空間光変調ユニット74Bの作用により、図5の中央図に示すように、例えば光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布42dおよび42eと、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布42c''とが、アフォーカルレンズ4の瞳面4cに形成される。光強度分布42d,42e,42c''を形成する光は、図中両方向矢印で示すようにZ方向に沿った偏光方向を有する。
【0091】
その結果、アフォーカルレンズ4の瞳面4cには、図5の右図に示すように、5極状の光強度分布42a〜42eが形成される。ここで、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布42cは、光強度分布42c’と42c''とが重なり合って形成される。空間光変調ユニット74Aを経てアフォーカルレンズ4の瞳面4cに達する横偏光の光と、空間光変調ユニット74Bを経てアフォーカルレンズ4の瞳面に達する縦偏光の光との間に、光源1の時間コヒーレント長以上の光路長差が付与されている場合、図中両方向矢印で示すようにZ方向に沿った偏光方向を有する光束とX方向に沿った偏光方向を有する光束とが光強度分布42cの領域を通過する。
【0092】
このように、図9の変形例では、空間光変調ユニット74A中の空間光変調器の作用により照明瞳に形成される横偏光状態の第1光強度分布と空間光変調ユニット74B中の空間光変調器の作用により照明瞳に形成される縦偏光状態の第2光強度分布とからなる照明瞳輝度分布を自在に且つ迅速に変化させることができる。換言すれば、図9の変形例においても図1の実施形態と同様に、偏光状態の互いに異なる第1光強度分布および第2光強度分布の形状および大きさをそれぞれ変化させることにより、照明瞳輝度分布の形状、大きさ、および偏光状態について多様性に富んだ照明条件を実現することができる。
【0093】
図9の変形例では、光分割器として回折光学素子71を用いているので、空間光変調ユニット74A,74B中の空間光変調器に入射する光の強度の均一性を向上させることができるという利点がある。また、回折光学素子71に入射する光束の位置が変動しても、回折光学素子71の直後の光束の角度が変化しないので、空間光変調ユニット74A,74B中の空間光変調器に入射する光束の位置が変動し難いという利点がある。
【0094】
図9の変形例において、回折光学素子71に矩形状の断面を有する光束が入射する場合、プリズム23bの小型化、ひいては空間光変調ユニット74Aおよび74Bの小型化を図るには、矩形状の断面の短辺方向に入射光束を分割してもよい。換言すれば、空間光変調ユニット74A,74B中の空間光変調器の有効領域の長手方向を法線とする面内で入射光束を分割してもよい。一般的には、回折光学素子71への入射光束の断面内における第1の方向に沿った大きさよりも第1の方向と直交する第2の方向に沿った大きさの方が大きい断面形状を有する場合、入射光束を第1の方向に分割することにより、空間光変調ユニット74Aおよび74Bの小型化を図ることができる。
【0095】
なお、図9の変形例では、回折光学素子71を用いて入射光束を2つの光束に分割している。しかしながら、これに限定されることなく、例えば図12に示すように、一対のプリズム部材76aと76bとを有するプリズムユニット76を用いて入射光束を2つの光束に分割する構成も可能である。図12の変形例は図9の変形例と類似の構成を有するが、回折光学素子71および集光レンズ72に代えてプリズムユニット76が配置されている点だけが図9の変形例と相違している。図12では、図9に示す構成要素と同様の機能を有する要素に、図9と同じ参照符号を付している。また、図12に示す変形例では、一対のプリズム部材76aと76bとを有するプリズムユニット76を用いて入射光束を2つの光束に分割しているため、装置を小型化することが可能となる。
【0096】
図12の変形例において光分割器として機能するプリズムユニット76は、光源側(図中左側)から順に、光源側に平面を向け且つマスク側(図中右側)に凹状で且つV字状の屈折面を向けた第1プリズム部材76aと、マスク側に平面を向け且つ光源側に凸状で且つV字状の屈折面を向けた第2プリズム部材76bとにより構成されている。第1プリズム部材76aの凹状屈折面は2つの平面から構成され、その交線(稜線)はX方向に沿って延びている。第2プリズム部材76bの凸状屈折面は、第1プリズム部材76aの凹状屈折面と相補的に形成されている。すなわち、第2プリズム部材76bの凸状屈折面も2つの平面から構成され、その交線(稜線)はX方向に沿って延びている。図12の変形例では、一対のプリズム部材76aと76bとにより光分割器としてのプリズムユニット76を構成しているが、少なくとも1つのプリズムを用いて光分割器を構成することもできる。さらに、光分割器の具体的な構成については様々な形態が可能である。
【0097】
なお、図9の変形例および図12の変形例では、集光レンズ72と空間光変調ユニット74Aおよび74Bとの間の光路中に、1/2波長板73Aおよび73Bがそれぞれ設けられている。しかしながら、これに限定されることなく、回折光学素子71またはプリズムユニット76により分割された2つの光束のうちの第1光束の光路中の他の適当な位置および第2光束の光路中の他の適当な位置に、1/2波長板73Aおよび73Bをそれぞれ設けることができる。
【0098】
また、図9の変形例および図12の変形例では、第1光束の光路中に所定の軸線廻りに回転可能な1/2波長板73Aが設けられ、第2光束の光路中に所定の軸線廻りに回転可能な1/2波長板73Bが設けられている。しかしながら、これに限定されることなく、少なくとも一方の光路中に1/2波長板を所定の軸線廻りに回転可能にまたは固定的に設けたり、少なくとも一方の光路中に1/2波長板以外の偏光子または旋光子を所定の軸線廻りに回転可能にまたは固定的に設けたりすることもできる。
【0099】
また、1/2波長板(一般的には偏光子または旋光子)を光路に対して挿脱自在に構成し、必要でないときには光路から退避させることにより、1/2波長板の長寿命化を図ることもできる。同様に、1/2波長板(一般的には偏光子または旋光子)を同じ光路長のガラス基板と交換可能に構成することにより、1/2波長板の長寿命化を図ることもできる。
【0100】
また、1/2波長板に加えて、所定の軸線廻りに回転可能な1/4波長板を配置することにより、楕円偏光を所望の直線偏光に調整することもできる。また、1/2波長板に加えて、あるいは1/2波長板に代えて、デポラライザ(非偏光化素子)を用いることにより、所望の非偏光状態の光を得ることもできる。なお、上述したように、例えば一方の光路中に所要の厚さの平行平面板を挿入して、第1光束と第2光束との間に時間コヒーレント長以上の光路長差を付与することにより、照明瞳で同一領域を通過した光束を非偏光化することもできる。さらに、第1光束と第2光束との間に時間コヒーレント長以上の光路長差を付与することによって、スペックルを√(1/2)程度、低減することが可能になる。
【0101】
実施形態及び変形例にかかる照明光学装置では、複数のミラー要素の姿勢がそれぞれ個別に変化する一対の空間光変調器を備えた光学ユニット(空間光変調ユニット)を用いているので、第1空間光変調器の作用により照明瞳に形成される第1偏光状態の第1光強度分布と第2空間光変調器の作用により照明瞳に形成される第2偏光状態の第2光強度分布とからなる照明瞳輝度分布を自在に且つ迅速に変化させることができる。換言すれば、偏光状態の互いに異なる第1光強度分布および第2光強度分布の形状および大きさをそれぞれ変化させることにより、照明瞳輝度分布の形状、大きさ、および偏光状態について多様性に富んだ照明条件を実現することができる。
【0102】
こうして、実施形態及び変形例に係る照明光学装置では、照明瞳輝度分布の形状、及び大きさ、および偏光状態について多様性に富んだ照明条件を実現することができる。また、実施形態及び変形例に係る露光装置では、多様性に富んだ照明条件を実現することのできる照明光学装置を用いて、マスクMのパターン特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいては良好なデバイスを製造することができる。
【0103】
上述の実施形態並びに各変形例において、空間光変調ユニットを用いて照明瞳輝度分布を形成する際に、瞳輝度分布計測装置で照明瞳輝度分布を計測しつつ、この計測結果に応じて空間光変調ユニット中の各空間光変調器を制御してもよい。このような技術は、たとえば特開2006−54328号公報や特開2003−22967号公報およびこれに対応する米国特許公開第2003/0038225号公報に開示されている。
【0104】
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開番号WO99/49504号公報に開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。
なお、上述の実施形態では、マスクの代わりに、所定の電子データに基づいて所定パターンを形成する可変パターン形成装置を用いることができる。このような可変パターン形成装置を用いれば、パターン面が縦置きでも同期精度に及ぼす影響を最低限にできる。なお、可変パターン形成装置としては、たとえば所定の電子データに基づいて駆動される複数の反射素子を含むDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いることができる。DMDを用いた露光装置は、例えば特開2004−304135号公報、国際特許公開第2006/080285号パンフレット、米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。また、DMDのような非発光型の反射型空間光変調器以外に、透過型空間光変調器を用いても良く、自発光型の画像表示素子を用いても良い。なお、パターン面が横置きの場合であっても可変パターン形成装置を用いても良い。
【0105】
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことができる。
【0106】
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。図13は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図13に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の投影露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。
【0107】
ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の投影露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の投影露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを、感光性基板つまりプレートPとしてパターンの転写を行う。
【0108】
図14は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図14に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルタ形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。
【0109】
ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の投影露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の投影露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
【0110】
ステップS52のカラーフィルタ形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルタを形成する。
【0111】
ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルタとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルタとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
【0112】
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0113】
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。
【0114】
また、上述の実施形態では、露光装置においてマスクを照明する照明光学装置に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、マスク以外の被照射面を照明する一般的な照明光学装置に対して本発明を適用することもできる。
【0115】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。また、上記実施形態の各構成要素等は、いずれの組み合わせ等も可能とすることができる。
【符号の説明】
【0116】
1 光源
3,3A,3B 空間光変調ユニット
4 アフォーカルレンズ
7 ズームレンズ
8 シリンドリカルマイクロフライアイレンズ
10 コンデンサー光学系
11 マスクブラインド
12 結像光学系
31,32 プリズム部材
33,34 空間光変調器
33a,34a 空間光変調器の複数のミラー要素
35,36 偏光分離膜
M マスク
PL 投影光学系
W ウェハ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニット、照明光学装置、露光装置、およびデバイス製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のデバイスをリソグラフィー工程で製造するための露光装置に好適な照明光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の典型的な露光装置においては、光源から射出された光束が、オプティカルインテグレータとしてのフライアイレンズを介して、多数の光源からなる実質的な面光源としての二次光源(一般には照明瞳における所定の光強度分布)を形成する。以下、照明瞳での光強度分布を、「照明瞳輝度分布」という。また、照明瞳とは、照明瞳と被照射面(露光装置の場合にはマスクまたはウェハ)との間の光学系の作用によって、被照射面が照明瞳のフーリエ変換面となるような位置として定義される。
【0003】
二次光源からの光束は、コンデンサーレンズにより集光された後、所定のパターンが形成されたマスクを重畳的に照明する。マスクを透過した光は投影光学系を介してウェハ上に結像し、ウェハ上にはマスクパターンが投影露光(転写)される。マスクに形成されたパターンは高集積化されており、この微細パターンをウェハ上に正確に転写するにはウェハ上において均一な照度分布を得ることが不可欠である。
【0004】
従来、ズーム光学系を用いることなく照明瞳輝度分布(ひいては照明条件)を連続的に変更することのできる照明光学装置が提案されている(特許文献1を参照)。特許文献1に開示された照明光学装置では、アレイ状に配列され且つ傾斜角および傾斜方向が個別に駆動制御される多数の微小なミラー要素により構成された可動マルチミラーを用いて、入射光束を反射面毎の微小単位に分割して偏向させることにより、光束の断面を所望の形状または所望の大きさに変換し、ひいては所望の照明瞳輝度分布を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−353105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、照明瞳輝度分布の形状、及び大きさについてさらに多様性に富んだ照明条件を実現することのできる照明光学装置を提供することを目的とする。また、本発明は、多様性に富んだ照明条件を実現することのできる照明光学装置を用いて、パターン特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことのできる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、入射光路を進行する入射光束を複数の光束に分割する光分割器と、
前記複数の光束のうちの第1光束の光路に配置可能な第1空間光変調器と、
前記複数の光束のうちの第2光束の光路に配置可能な第2空間光変調器と、
前記第1空間光変調器を介した光束と前記第2空間光変調器を介した光束とを合成して射出光路へ向ける光合成器とを備え、
前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器のうちの少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有し、
前記光分割器側の前記入射光路と前記光合成器側の前記射出光路とは同じ方向に延ばされていることを特徴とする光学ユニットを提供する。
【0008】
本発明の第2形態では、光源からの光に基づいて被照射面を照明する照明光学装置において、
第1形態の光学ユニットと、
前記第1および第2空間光変調器を介した光束に基づいて、前記照明光学装置の照明瞳に所定の光強度分布を形成する分布形成光学系とを備えていることを特徴とする照明光学装置を提供する。
【0009】
本発明の第3形態では、所定のパターンを照明するための第2形態の照明光学装置を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置を提供する。
【0010】
本発明の第4形態では、第3形態の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記パターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記パターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の照明光学装置では、照明瞳輝度分布の形状、及び大きさについてさらに多様性に富んだ照明条件を実現することができる。また、本発明の露光装置では、多様性に富んだ照明条件を実現することのできる照明光学装置を用いて、マスクMのパターン特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいては良好なデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】空間光変調ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図3】シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成を概略的に示す斜視図である。
【図4】本実施形態においてアフォーカルレンズの瞳面に形成される4極状の光強度分布を模式的に示す図である。
【図5】本実施形態において5極状の照明瞳輝度分布を形成する例を模式的に示す図である。
【図6】光分割器と光合成器とが共通の偏光ビームスプリッターを有する変形例にかかる空間光変調ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図7】透過型の空間光変調器を有する変形例にかかる空間光変調ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図8】偏光制御部を有する変形例にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図9】光分割器として回折光学素子を用いる変形例の要部構成を概略的に示す図である。
【図10】図9の空間光変調ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図11】図9の空間光変調ユニットが備える空間光変調器の部分斜視図である。
【図12】光分割器としてプリズムユニットを用いる変形例の要部構成を概略的に示す図である。
【図13】半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【図14】液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図2は、空間光変調ユニットの構成を概略的に示す図である。図1において、感光性基板であるウェハWの法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの面内において図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。
【0014】
図1を参照すると、本実施形態の露光装置は、露光光(照明光)を供給するための光源1を備えている。光源1として、たとえば193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1から射出された光は、整形光学系2により所要の断面形状の光束に拡大された後、空間光変調ユニット3に入射する。
【0015】
空間光変調ユニット3は、図2に示すように、一対のプリズム部材31および32と、一対の空間光変調器33および34とを備えている。空間光変調ユニット3のプリズム部材31の入射面31aに光軸AXに沿って入射した光は、プリズム部材31の内部を伝播した後、プリズム部材31と32との間に形成された偏光分離膜35に入射する。偏光分離膜35で反射されたs偏光の光は、プリズム部材31の内部を伝播した後、第1空間光変調器33に入射する。
【0016】
第1空間光変調器33は、二次元的に配列された複数のミラー要素(一般には光学要素)33aと、複数のミラー要素33aの姿勢を個別に制御駆動する駆動部33b(図1では不図示)とを有する。同様に、第2空間光変調器34は、二次元的に配列された複数のミラー要素34aと、複数のミラー要素34aの姿勢を個別に制御駆動する駆動部34b(図1では不図示)とを有する。駆動部33b,34bは、図示を省略した制御部からの指令にしたがって、複数のミラー要素33a,34aの姿勢を個別に制御駆動する。
【0017】
第1空間光変調器33の複数のミラー要素33aにより反射された光は、プリズム部材31の内部を伝播した後、s偏光の状態でプリズム部材31と32との間に形成された偏光分離膜36に入射する。第1空間光変調器33を経て偏光分離膜36で反射された光は、プリズム部材31の内部を伝播した後、プリズム部材31の射出面31bから空間光変調ユニット3の外部へ射出される。第1空間光変調器33のすべてのミラー要素33aの反射面がXY平面に沿って位置決めされた基準状態では、空間光変調ユニット3に光軸AXに沿って入射して第1空間光変調器33を経た光は、空間光変調ユニット3から光軸AXに沿って射出される。
【0018】
一方、偏光分離膜35を透過したp偏光の光は、プリズム部材32の内部を伝播し、プリズム部材32と気体(空気または不活性ガス)37との界面32aで全反射された後、第2空間光変調器34に入射する。第2空間光変調器34の複数のミラー要素34aにより反射された光は、プリズム部材32の内部を伝播し、プリズム部材32と気体37との界面32bで全反射された後、p偏光の状態でプリズム部材31と32との間に形成された偏光分離膜36に入射する。
【0019】
第2空間光変調器34を経て偏光分離膜36を透過した光は、プリズム部材31の内部を伝播した後、プリズム部材31の射出面31bから空間光変調ユニット3の外部へ射出される。第2空間光変調器34のすべてのミラー要素34aの反射面がXY平面に沿って位置決めされた基準状態では、空間光変調ユニット3に光軸AXに沿って入射して第2空間光変調器34を経た光は、空間光変調ユニット3から光軸AXに沿って射出される。
【0020】
このように、空間光変調ユニット3において、プリズム部材31と32との間に形成された偏光分離膜35は、入射光束を2つの光束(一般には複数の光束)に分割する光分割器を構成している。また、プリズム部材31と32との間に形成された偏光分離膜36は、第1空間光変調器33を介した光束と第2空間光変調器34を介した光束とを合成する光合成器を構成している。
【0021】
空間光変調ユニット3から射出された光は、アフォーカルレンズ4に入射する。アフォーカルレンズ4は、その前側焦点位置と第1空間光変調器33の複数のミラー要素33aの位置および第2空間光変調器34の複数のミラー要素34aの位置とがほぼ一致し且つその後側焦点位置と図中破線で示す所定面5の位置とがほぼ一致するように設定されたアフォーカル系(無焦点光学系)である。
【0022】
したがって、第1空間光変調器33を介したs偏光の光束は、アフォーカルレンズ4の瞳面に、例えば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布からなるZ方向2極状の光強度分布を形成した後、2極状の角度分布でアフォーカルレンズ4から射出される。一方、第2空間光変調器34を介したp偏光の光束は、アフォーカルレンズ4の瞳面に、例えば光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布からなるX方向2極状の光強度分布を形成した後、2極状の角度分布でアフォーカルレンズ4から射出される。
【0023】
アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aと後側レンズ群4bとの間の光路中においてその瞳面の位置またはその近傍の位置には、円錐アキシコン系6が配置されている。円錐アキシコン系6の構成および作用については後述する。アフォーカルレンズ4を介した光束は、σ値(σ値=照明光学装置のマスク側開口数/投影光学系のマスク側開口数)可変用のズームレンズ7を介して、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8に入射する。
【0024】
シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8は、図3に示すように、光源側に配置された第1フライアイ部材8aとマスク側に配置された第2フライアイ部材8bとから構成されている。第1フライアイ部材8aの光源側の面および第2フライアイ部材8bの光源側の面には、X方向に並んで配列されたシリンドリカルレンズ群8aaおよび8baがそれぞれピッチp1で形成されている。第1フライアイ部材8aのマスク側の面および第2フライアイ部材8bのマスク側の面には、Z方向に並んで配列されたシリンドリカルレンズ群8abおよび8bbがそれぞれピッチp2(p2>p1)で形成されている。
【0025】
シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8のX方向に関する屈折作用(すなわちXY平面に関する屈折作用)に着目すると、光軸AXに沿って入射した平行光束は、第1フライアイ部材8aの光源側に形成されたシリンドリカルレンズ群8aaによってX方向に沿ってピッチp1で波面分割され、その屈折面で集光作用を受けた後、第2フライアイ部材8bの光源側に形成されたシリンドリカルレンズ群8baのうちの対応するシリンドリカルレンズの屈折面で集光作用を受け、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面上に集光する。
【0026】
シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8のZ方向に関する屈折作用(すなわちYZ平面に関する屈折作用)に着目すると、光軸AXに沿って入射した平行光束は、第1フライアイ部材8aのマスク側に形成されたシリンドリカルレンズ群8abによってZ方向に沿ってピッチp2で波面分割され、その屈折面で集光作用を受けた後、第2フライアイ部材8bのマスク側に形成されたシリンドリカルレンズ群8bbのうちの対応するシリンドリカルレンズの屈折面で集光作用を受け、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面上に集光する。
【0027】
このように、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8は、シリンドリカルレンズ群が両側面に配置された第1フライアイ部材8aと第2フライアイ部材8bとにより構成されているが、X方向にp1のサイズを有しZ方向にp2のサイズを有する多数の矩形状の微小屈折面が縦横に且つ稠密に一体形成されたマイクロフライアイレンズと同様の光学的機能を発揮する。シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8では、微小屈折面の面形状のばらつきに起因する歪曲収差の変化を小さく抑え、たとえばエッチング加工により一体的に形成される多数の微小屈折面の製造誤差が照度分布に与える影響を小さく抑えることができる。
【0028】
所定面5の位置はズームレンズ7の前側焦点位置の近傍に配置され、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面はズームレンズ7の後側焦点位置の近傍に配置されている。換言すると、ズームレンズ7は、所定面5とシリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面とを実質的にフーリエ変換の関係に配置し、ひいてはアフォーカルレンズ4の瞳面とシリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面とを光学的にほぼ共役に配置している。
【0029】
したがって、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面上には、アフォーカルレンズ4の瞳面と同様に、たとえば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布と光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布とからなる4極状の照野が形成される。この4極状の照野の全体形状は、ズームレンズ7の焦点距離に依存して相似的に変化する。シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8における波面分割単位としての矩形状の微小屈折面は、マスクM上において形成すべき照野の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状である。
【0030】
シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8に入射した光束は二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍(ひいては照明瞳)には、入射光束によって形成される照野とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源、すなわち光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の実質的な面光源と光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の実質的な面光源とからなる4極状の二次光源(4極状の照明瞳輝度分布)が形成される。シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍に形成された二次光源からの光束は、その近傍に配置された開口絞り9に入射する。
【0031】
開口絞り9は、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍に形成される4極状の二次光源に対応した4極状の開口部(光透過部)を有する。開口絞り9は、照明光路に対して挿脱自在に構成され、且つ大きさおよび形状の異なる開口部を有する複数の開口絞りと切り換え可能に構成されている。開口絞りの切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。開口絞り9は、後述する投影光学系PLの入射瞳面と光学的にほぼ共役な位置に配置され、二次光源の照明に寄与する範囲を規定する。
【0032】
開口絞り9により制限された二次光源からの光は、コンデンサー光学系10を介して、マスクブラインド11を重畳的に照明する。こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド11には、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の波面分割単位である矩形状の微小屈折面の形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。マスクブラインド11の矩形状の開口部(光透過部)を介した光束は、結像光学系12の集光作用を受けた後、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。すなわち、結像光学系12は、マスクブラインド11の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。
【0033】
マスクステージMS上に保持されたマスクMを透過した光束は、投影光学系PLを介して、ウェハステージWS上に保持されたウェハ(感光性基板)W上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハステージWSを二次元的に駆動制御しながら、ひいてはウェハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハWの各露光領域にはマスクMのパターンが順次露光される。
【0034】
円錐アキシコン系6は、光源側から順に、光源側に平面を向け且つマスク側に凹円錐状の屈折面を向けた第1プリズム部材6aと、マスク側に平面を向け且つ光源側に凸円錐状の屈折面を向けた第2プリズム部材6bとから構成されている。そして、第1プリズム部材6aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材6bの凸円錐状の屈折面とは、互いに当接可能なように相補的に形成されている。また、第1プリズム部材6aおよび第2プリズム部材6bのうち少なくとも一方の部材が光軸AXに沿って移動可能に構成され、第1プリズム部材6aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材6bの凸円錐状の屈折面との間隔が可変に構成されている。以下、理解を容易にするために、4極状または輪帯状の二次光源に着目して、円錐アキシコン系6の作用およびズームレンズ7の作用を説明する。
【0035】
第1プリズム部材6aの凹円錐状屈折面と第2プリズム部材6bの凸円錐状屈折面とが互いに当接している状態では、円錐アキシコン系6は平行平面板として機能し、形成される4極状または輪帯状の二次光源に及ぼす影響はない。しかしながら、第1プリズム部材6aの凹円錐状屈折面と第2プリズム部材6bの凸円錐状屈折面とを離間させると、4極状または輪帯状の二次光源の幅(4極状の二次光源に外接する円の直径(外径)と内接する円の直径(内径)との差の1/2;輪帯状の二次光源の外径と内径との差の1/2)を一定に保ちつつ、4極状または輪帯状の二次光源の外径(内径)が変化する。すなわち、4極状または輪帯状の二次光源の輪帯比(内径/外径)および大きさ(外径)が変化する。
【0036】
ズームレンズ7は、4極状または輪帯状の二次光源の全体形状を相似的(等方的)に拡大または縮小する機能を有する。たとえば、ズームレンズ7の焦点距離を最小値から所定の値へ拡大させることにより、4極状または輪帯状の二次光源の全体形状が相似的に拡大される。換言すると、ズームレンズ7の作用により、4極状または輪帯状の二次光源の輪帯比が変化することなく、その幅および大きさ(外径)がともに変化する。このように、円錐アキシコン系6およびズームレンズ7の作用により、4極状または輪帯状の二次光源の輪帯比と大きさ(外径)とを制御することができる。
【0037】
本実施形態では、空間光変調器33,34として、たとえば二次元的に配列された複数のミラー要素33a,34aの向きを連続的にそれぞれ変化させる空間光変調器を用いている。このような空間光変調器として、たとえば特表平10−503300号公報およびこれに対応する欧州特許公開第779530号公報、特開2004−78136号公報およびこれに対応する米国特許第6,900,915号公報、特表2006−524349号公報およびこれに対応する米国特許第7,095,546号公報、並びに特開2006−113437号公報に開示される空間光変調器を用いることができる。なお、二次元的に配列された複数のミラー要素33a,34aの向きを離散的に複数の段階を持つように制御してもよい。
【0038】
第1空間光変調器33では、制御部からの制御信号に応じて作動する駆動部33bの作用により、複数のミラー要素33aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素33aがそれぞれ所定の向きに設定される。第1空間光変調器33の複数のミラー要素33aによりそれぞれ所定の角度で反射されたs偏光の光は、図4に示すように、アフォーカルレンズ4の瞳面に、例えば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布41aおよび41bを形成する。光強度分布41aおよび41bを形成する光は、図中両方向矢印で示すようにX方向に沿った偏光方向を有する。
【0039】
同様に、第2空間光変調器34では、制御部からの制御信号に応じて作動する駆動部34bの作用により、複数のミラー要素34aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素34aがそれぞれ所定の向きに設定される。第2空間光変調器34の複数のミラー要素34aによりそれぞれ所定の角度で反射されたp偏光の光は、図4に示すように、アフォーカルレンズ4の瞳面に、例えば光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布41cおよび41dを形成する。光強度分布41cおよび41dを形成する光は、図中両方向矢印で示すようにZ方向に沿った偏光方向を有する。空間光変調ユニット3に入射する光束の偏光状態が円偏光または偏光方向がX軸およびZ軸と45度の角度をなす直線偏光(以下、「45度直線偏光」という)である場合、4つの光強度分布41a〜41dの光強度は互いに等しくなる。
【0040】
アフォーカルレンズ4の瞳面に4極状の光強度分布41を形成した光は、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面、およびシリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳(開口絞り9が配置されている位置)に、光強度分布41a〜41dに対応する4極状の光強度分布を形成する。すなわち、アフォーカルレンズ4、ズームレンズ7、およびシリンドリカルマイクロフライアイレンズ8は、第1空間光変調器33および第2空間光変調器34を介した光束に基づいて、照明光学装置(2〜12)の照明瞳に所定の光強度分布を形成する分布形成光学系を構成している。さらに、開口絞り9と光学的に共役な別の照明瞳位置、すなわち結像光学系12の瞳位置および投影光学系PLの瞳位置にも、光強度分布41a〜41dに対応する4極状の光強度分布が形成される。
【0041】
露光装置では、マスクMのパターンをウェハWに高精度に且つ忠実に転写するために、パターン特性に応じた適切な照明条件のもとで露光を行う。本実施形態では、図4に示す4極状の光強度分布41に対応する4極状の照明瞳輝度分布が形成され、この4極状の照明瞳輝度分布を通過する光束が周方向偏光状態に設定される。周方向偏光状態で4極状の照明瞳輝度分布に基づく周方向偏光4極照明では、最終的な被照射面としてのウェハWに照射される光がs偏光を主成分とする偏光状態になる。
【0042】
ここで、s偏光とは、入射面に対して垂直な方向に偏光方向を有する直線偏光(入射面に垂直な方向に電気ベクトルが振動している偏光)のことである。また、入射面とは、光が媒質の境界面(被照射面:ウェハWの表面)に達したときに、その点での境界面の法線と光の入射方向とを含む面として定義される。その結果、周方向偏光4極照明では、投影光学系の光学性能(焦点深度など)が向上し、ウェハ(感光性基板)上において高コントラストの良好なマスクパターン像が得られる。
【0043】
本実施形態では、複数のミラー要素33a,34aの姿勢がそれぞれ個別に変化する一対の空間光変調器33,34を備えた空間光変調ユニット3を用いているので、第1空間光変調器33の作用により照明瞳に形成されるs偏光状態の第1光強度分布と第2空間光変調器34の作用により照明瞳に形成されるp偏光状態の第2光強度分布とからなる照明瞳輝度分布を自在に且つ迅速に変化させることができる。換言すれば、本実施形態では、偏光状態の互いに異なる第1光強度分布および第2光強度分布の形状および大きさをそれぞれ変化させることにより、照明瞳輝度分布の形状、大きさ、および偏光状態について多様性に富んだ照明条件を実現することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態において光源1からの光に基づいて被照射面としてのマスクMを照明する照明光学装置(2〜12)では、照明瞳輝度分布の形状、大きさ、および偏光状態について多様性に富んだ照明条件を実現することができる。また、本実施形態の露光装置(1〜WS)では、多様性に富んだ照明条件を実現することのできる照明光学装置(2〜12)を用いて、マスクMのパターン特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では、空間光変調器33および34の基準状態において、光分割器として機能する偏光分離膜35に入射する入射光束の進行方向と、光合成器として機能する偏光分離膜36から射出される射出光束の進行方向とは平行(一致を含む)である。換言すれば、空間光変調器33および34の基準状態において、空間光変調ユニット3への入射光束および空間光変調ユニット3からの射出光束の進行方向は、照明光学装置の光軸AXと一致している(または平行である)。このように、空間光変調ユニット3の上流と下流とで光路が同軸(または平行)になるので、例えば照明瞳輝度分布の形成のために回折光学素子を用いる従来の照明光学装置と光学系を共用することができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1空間光変調器33の複数のミラー要素33aがプリズム部材31に近接して配置され、第2空間光変調器34の複数のミラー要素34aがプリズム部材32に近接して配置されている。この場合、プリズム部材31,32が複数のミラー要素33a,34aのカバー部材の役目を果たすことになり、空間光変調器33,34の耐久性の向上を図ることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、プリズム部材31と32との間に形成された偏光分離膜35に対する光の入射角θ(図2を参照)がブルースター角(Brewster's angle)に近づくように、空間光変調ユニット3を設計してもよい。この構成により、偏光分離膜35でのp偏光の反射率を小さく抑えて、偏光効率を高めることができる。なお、偏光分離膜35,36は、誘電体多層膜で形成されるものに限定されることなく、例えば「周期的な格子構造を持つ偏光分離層」を有するものでもよい。このような「周期的な格子構造を持つ偏光分離層」として、第1方向に平行な複数の金属格子を、第1方向と直交する第2方向に周期的な配列したワイヤーグリッド型偏光分離素子を用いることができる。このような技術は、たとえば特開2005−77819号公報およびこれに対応する米国特許第7116478号公報に開示されている。
【0048】
また、上述の実施形態では、一対のプリズム部材31および32と、一対の空間光変調器33および34とにより、空間光変調ユニット3を構成している。しかしながら、これに限定されることなく、空間光変調ユニット3の具体的な構成については様々な形態が可能である。
【0049】
また、上述の実施形態では、空間光変調ユニット3とシリンドリカルマイクロフライアイレンズ8との間の光路中に、アフォーカルレンズ4、円錐アキシコン系6、およびズームレンズ7が配置されている。しかしながら、これに限定されることなく、これらの光学部材に代えて、例えばフーリエ変換レンズとして機能する集光光学系を配置することもできる。
【0050】
また、上述の実施形態では、第1偏向面としてプリズム部材32と気体37との界面32aでの全反射により、光分割器として機能する偏光分離膜35を介したp偏光の光を第2空間光変調器34へ向けて偏向している。同様に、プリズム部材32と気体37との界面32bでの全反射により、第2空間光変調器34を介したp偏光の光を光合成器として機能する偏光分離膜36へ向けて偏向している。しかしながら、これに限定されることなく、界面32a,32bに反射膜を設けることもできる。
【0051】
また、上述の説明では、第1空間光変調器33の作用によりZ方向2極状の光強度分布41a,41bを形成し、第2空間光変調器34の作用によりX方向2極状の光強度分布41c,41dを形成することにより、4極状の照明瞳輝度分布を形成している。しかしながら、上述したように、本実施形態では、照明瞳輝度分布の形状、大きさ、および偏光状態について様々な形態が可能である。以下、図5を参照して、5極状の照明瞳輝度分布を形成する例を模式的に示す。
【0052】
この例では、第1空間光変調器33の作用により、図5の左図に示すように、例えば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布42aおよび42bと、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布42c’とが、アフォーカルレンズ4の瞳面に形成される。光強度分布42a,42b,42c’を形成する光は、図中両方向矢印で示すようにX方向に沿った偏光方向を有する。一方、第2空間光変調器34の作用により、図5の中央図に示すように、例えば光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布42dおよび42eと、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布42c''とが、アフォーカルレンズ4の瞳面に形成される。光強度分布42d,42e,42c''を形成する光は、図中両方向矢印で示すようにZ方向に沿った偏光方向を有する。
【0053】
その結果、アフォーカルレンズ4の瞳面には、図5の右図に示すように、5極状の光強度分布42a〜42eが形成される。ここで、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布42cは、光強度分布42c’と42c''とが重なり合って形成される。第1空間光変調器33を経てアフォーカルレンズ4の瞳面に達するs偏光の光と、第2空間光変調器34を経てアフォーカルレンズ4の瞳面に達するp偏光の光との間に、光源1の時間コヒーレント長以上の光路長差が付与されている場合、図中両方向矢印で示すようにZ方向に沿った偏光方向を有する光束とX方向に沿った偏光方向を有する光束とが光強度分布42cの領域を通過する。
【0054】
これに対し、第1空間光変調器33を経てアフォーカルレンズ4の瞳面に達するs偏光の光と、第2空間光変調器34を経てアフォーカルレンズ4の瞳面に達するp偏光の光との間に光路長差がない場合、光強度分布42cの領域を通過する光束の偏光状態は空間光変調ユニット3への入射光束の偏光状態と一致する。空間光変調ユニット3に入射する光束の偏光状態が円偏光または45度直線偏光である場合、4つの周辺の光強度分布42a,42b,42d,42eの光強度は互いに等しくなり、中央の光強度分布42cの光強度はその2倍になる。
【0055】
また、例えば1/2波長板を通過させた光を光分割器として機能する偏光分離膜35に入射させてもよい。偏光分離膜35よりも光源側に配置される1/2波長板を光軸を中心として回転させることにより、偏光分離膜35で分離されるs偏光の強度とp偏光の強度との比を制御することができる。すなわち、アフォーカルレンズ4の瞳面に達するs偏光の光の強度とp偏光の光の強度との比を制御できる。例えば、偏光分離膜35に対してs偏光となるように1/2波長板の回転角を制御するか、又は偏光分離膜35に対してp偏光となるように1/2波長板の回転角を制御することにより、s偏光又はp偏光のみの光がアフォーカルレンズ4の瞳面に達するようにすることもできる。これにより、2極状の光強度分布(例えば、図4の光強度分布41a、41b)をアフォーカルレンズ4の瞳面に形成することができる。
【0056】
また、上述の実施形態では、光分割面に位置する偏光分離膜35が光分割器として機能し、偏光分離膜35とは別の位置に設けられた光合成面に位置する偏光分離膜36が光合成器として機能している。しかしながら、これに限定されることなく、例えば図6に示すように、光分割器と光合成器とが共通の偏光ビームスプリッター51を有する変形例も可能である。図6の変形例に示す空間光変調ユニット3Aでは、偏光ビームスプリッター51に光軸AXに沿って入射した光のうち、偏光分離膜51aで反射されたs偏光の光は、1/4波長板52を介して円偏光になり、第1空間光変調器53に入射する。
【0057】
第1空間光変調器53の複数のミラー要素により反射された光は、1/4波長板52を介してp偏光になり、偏光ビームスプリッター51に戻る。第1空間光変調器53を経て偏光ビームスプリッター51に入射したp偏光の光は、偏光分離膜51aを透過し、偏光ビームスプリッター51から射出される。第1空間光変調器53の基準状態では、空間光変調ユニット3Aに光軸AXに沿って入射して第1空間光変調器53を経た光は、空間光変調ユニット3Aから光軸AXに沿って射出される。
【0058】
一方、偏光ビームスプリッター51の偏光分離膜51aを透過したp偏光の光は、1/4波長板54を介して円偏光になり、第2空間光変調器55に入射する。第2空間光変調器55の複数のミラー要素により反射された光は、1/4波長板54を介してs偏光になり、偏光ビームスプリッター51に戻る。第2空間光変調器55を経て偏光ビームスプリッター51に入射したs偏光の光は、偏光分離膜51aで反射され、偏光ビームスプリッター51から射出される。第2空間光変調器55の基準状態では、空間光変調ユニット3Aに光軸AXに沿って入射して第2空間光変調器55を経た光は、空間光変調ユニット3Aから光軸AXに沿って射出される。
【0059】
なお、上述の説明では、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有する空間光変調器として、二次元的に配列された複数の反射面の向き(角度:傾き)を個別に制御可能な空間光変調器を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、たとえば二次元的に配列された複数の反射面の高さ(位置)を個別に制御可能な空間光変調器を用いることもできる。このような空間光変調器としては、たとえば特開平6−281869号公報及びこれに対応する米国特許第5,312,513号公報、並びに特表2004−520618号公報およびこれに対応する米国特許第6,885,493号公報の図1dに開示される空間光変調器を用いることができる。これらの空間光変調器では、二次元的な高さ分布を形成することで回折面と同様の作用を入射光に与えることができる。なお、上述した二次元的に配列された複数の反射面を持つ空間光変調器を、たとえば特表2006−513442号公報およびこれに対応する米国特許第6,891,655号公報や、特表2005−524112号公報およびこれに対応する米国特許公開第2005/0095749号公報の開示に従って変形しても良い。
【0060】
また、上述の説明では、複数のミラー要素を有する反射型の空間光変調器を用いているが、これに限定されることなく、たとえば米国特許第5,229,872号公報に開示される透過型の空間光変調器を用いても良い。図7に、透過型の空間光変調器を有する変形例にかかる空間光変調ユニットの構成を概略的に示す。図7の変形例に示す空間光変調ユニット3Bでは、光分割器として機能する偏光ビームスプリッター61に光軸AXに沿って入射した光のうち、偏光分離膜61aで反射されたs偏光の光は、第1空間光変調器62に入射する。
【0061】
第1空間光変調器62の複数の光学要素(プリズム要素など)を透過した光は、光路折曲げミラー63により偏向された後、光合成器として機能する偏光ビームスプリッター64に入射する。第1空間光変調器62を経て偏光ビームスプリッター64に入射したs偏光の光は、偏光分離膜64aで反射され、偏光ビームスプリッター64から射出される。第1空間光変調器62の基準状態では、空間光変調ユニット3Bに光軸AXに沿って入射して第1空間光変調器62を経た光は、空間光変調ユニット3Bから光軸AXに沿って射出される。
【0062】
偏光ビームスプリッター61の偏光分離膜61aを透過したp偏光の光は、第2空間光変調器65に入射する。第2空間光変調器65の複数の光学要素を透過した光は、光路折曲げミラー66により偏向された後、偏光ビームスプリッター64に入射する。第2空間光変調器65を経て偏光ビームスプリッター64に入射したp偏光の光は、偏光分離膜64aを透過し、偏光ビームスプリッター64から射出される。第2空間光変調器65の基準状態では、空間光変調ユニット3Bに光軸AXに沿って入射して第2空間光変調器65を経た光は、空間光変調ユニット3Bから光軸AXに沿って射出される。
【0063】
また、上述の説明では、直線偏光を主成分とする偏光状態を供給する光源1からの光を、その偏光状態を実質的に維持しつつ空間光変調ユニット(3;3A;3B)へ導く構成としたが、例えば図8に示すように、空間光変調ユニット3の光源1側の光路に、射出光の偏光状態を可変にする偏光制御部13を設ける変形例も可能である。なお、図8において図1と同じ機能を有する部材には同じ符号を付している。
【0064】
図8の変形例に示す偏光制御部13は、整形光学系2および光路折曲げミラーを経由した光源1からの光を受け、空間光変調ユニット3に対して所望の偏光状態の光を射出する。この偏光制御部13は、例えば光軸または光軸と平行な軸を中心として回転可能に設けられた1/2波長板13aと、この1/2波長板13aを回転駆動させる回転駆動部13bとを備えている。
【0065】
回転駆動部13bを介して、1/2波長板13aを回転調整することにより、例えば空間光変調ユニット3に対して、XZ平面内でX軸またはZ軸に対し45度方向に偏光方向(電場の方向)を持つ直線偏光を供給できる。このとき、空間光変調ユニット3の偏光分離膜によって分離されるs偏光の光(第1空間光変調器33へ向かう光)とp偏光の光(第2空間光変調器34へ向かう光)との光量はほぼ等しくなる。
【0066】
ここで、偏光制御部13内の1/2波長板13aの回転調整によって、空間光変調ユニット3の偏光分離膜によって分離されるs偏光の光(第1空間光変調器33へ向かう光)とp偏光の光(第2空間光変調器34へ向かう光)との光量比を任意の光量比に設定することができる。たとえば図4に示したような4極状の光強度分布41a〜41dを形成する場合、光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの光強度分布41a,41bの光強度と、光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの光強度分布41c,41dの光強度との比を所望の光量比に設定することができる。
【0067】
図8に示す変形例では、瞳偏光分布計測装置14で照明瞳偏光分布を計測しつつ、この計測結果に応じて偏光制御部13を制御してもよい。このとき必要に応じて、空間光変調ユニット中の各空間光変調器を制御してもよい。この瞳偏光分布計測装置14は、ウェハWを保持するためのウェハステージWS内または当該ウェハステージWSと別に設けられた計測ステージ内に設けられて、ウェハWに入射する照明光(露光光)の瞳内(開口内)における偏光状態を測定するものである。偏光状態測定部14の詳細な構成および作用については、たとえば特開2005−5521号公報に開示されている。
【0068】
これにより、たとえば照明光学系内あるいは投影光学系内に配置される光路折曲げミラーの偏光毎反射率差があったとしても、これによる悪影響を防ぐことができる。なお、図8の変形例では、偏光制御部13によって空間光変調ユニット3への偏光方向を調整したが、光源1自体、或いは空間光変調ユニット3を光軸廻りに回転させても同様の効果を得ることができる。また、この偏光制御部13は図6および図7に示した変形例にも適用できる。
【0069】
なお、上述の実施形態並びに図6〜図8の変形例では、光分割器および光合成器が偏光分離膜(35,36;51a;61a,64a)を有するが、これに限定されることなく、光分割器および光合成器が光束を振幅分割する分離膜を有する構成も可能である。この場合、第1空間光変調器の作用により照明瞳に形成される第1光強度分布と第2空間光変調器の作用により照明瞳に形成される第2光強度分布とで偏光状態は同じであるが、第1光強度分布および第2光強度分布の形状および大きさをそれぞれ変化させることにより、照明瞳輝度分布の形状および大きさについて多様性に富んだ照明条件を実現することができる。
【0070】
また、上述の実施形態並びに図6〜図8の変形例では、偏光分離膜(35;51a;61a)を用いて入射光束を2つの光束に分割しているが、これに限定されることなく、例えば回折光学素子を用いて入射光束を2つの光束に分割する構成も可能である。図9は、光分割器として回折光学素子を用いる変形例の要部構成を概略的に示す図である。図9の変形例は、図1の実施形態における空間光変調ユニット3が、回折光学素子71、集光レンズ72、一対の1/2波長板73A,73B、および一対の空間光変調ユニット74A,74Bにより置き換えられた構成を有する。
【0071】
図9の変形例では、整形光学系2を介した光源1からの光束が、光軸AXに沿って光分割器としての回折光学素子71に入射する。回折光学素子71は、例えば矩形状の断面を有する平行光束が光軸AXに沿って入射した場合、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に、光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの矩形状の光強度分布を形成する機能を有する。換言すれば、回折光学素子71は、入射光束を2つの光束に分割する機能を有する。
【0072】
回折光学素子71により分割された2つの光束のうちの第1光束は、フーリエ変換レンズとして機能する集光レンズ72を介して、第1光束の光路の光軸AXa廻りまたは光軸AXaと平行な軸線廻りに回転可能な1/2波長板73Aに入射する。1/2波長板73Aを通過した直線偏光状態の光は、空間光変調ユニット74Aを経た後、アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aを介して、アフォーカルレンズ4の瞳面4cに達する。一方、回折光学素子71により分割された2つの光束のうちの第2光束は、集光レンズ72を介して、第2光束の光路の光軸AXb廻りまたは光軸AXbと平行な軸線廻りに回転可能な1/2波長板73Bに入射する。1/2波長板73Bを通過した直線偏光状態の光は、空間光変調ユニット74Bを経た後、アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aを介して瞳面4cに達する。アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aは、空間光変調ユニット74A中の空間光変調器を介した光束と空間光変調ユニット74B中の空間光変調器を介した光束とを瞳面4cで重ね合わせる光学系であって、光合成器として機能する。
【0073】
以下、説明を簡単にするために、第1光束の光路中に配置された空間光変調ユニット74Aと第2光束の光路中に配置された空間光変調ユニット74Bとは互いに同じ構成を有するものとする。また、回折光学素子71にはZ方向およびX方向と45度をなす方向に沿った偏光方向を有する直線偏光状態の平行光束が入射し、1/2波長板73Aの作用により空間光変調ユニット74AにはX方向に偏光したX方向直線偏光状態(横偏光状態)の光が入射し、1/2波長板73Bの作用により空間光変調ユニット74BにはZ方向に偏光したZ方向直線偏光状態(縦偏光状態)の光が入射するものとする。
【0074】
以下、図10および図11を参照して、空間光変調ユニット74Aの具体的な構成および作用を説明する。空間光変調ユニット74Bは空間光変調ユニット74Aと基本的に同じ構成を有するため、空間光変調ユニット74Bの具体的な構成および作用についての重複する説明を省略する。空間光変調ユニット74Aは、図10に示すように、例えば蛍石のような光学材料により形成されたプリズム23bと、プリズム23bのXY平面に平行な側面23baに近接して取り付けられた反射型の空間光変調器23aとを備えている。プリズム23bを形成する光学材料は、蛍石に限定されることなく、光源1が供給する光の波長などに応じて、石英であっても良くその他の光学材料であっても良い。
【0075】
プリズム23bは、直方体の1つの側面(空間光変調器23aが近接して取り付けられる側面23baと対向する側面)をV字状に凹んだ側面23bbおよび23bcと置き換えることにより得られる形態を有し、YZ平面に沿った断面形状に因んでKプリズムとも呼ばれる。プリズム23bのV字状に凹んだ側面23bbおよび23bcは、鈍角をなすように交差する2つの平面PN1およびPN2によって規定されている。2つの平面PN1およびPN2はともにYZ平面と直交し、YZ平面に沿ってV字状を呈している。
【0076】
2つの平面PN1とPN2との接線(X方向に延びる直線)P3で接する2つの側面23bbおよび23bcの内面は、反射面R1およびR2として機能する。すなわち、反射面R1は平面PN1上に位置し、反射面R2は平面PN2上に位置し、反射面R1とR2とのなす角度は鈍角である。一例として、反射面R1とR2とのなす角度を120度とし、光軸AXaに垂直なプリズム23bの入射面IPと反射面R1とのなす角度を60度とし、光軸AXaに垂直なプリズム23bの射出面OPと反射面R2とのなす角度を60度とすることができる。
【0077】
プリズム23bでは、空間光変調器23aが近接して取り付けられる側面23baと光軸AXaとが平行であり、且つ反射面R1が光源1側(露光装置の上流側:図10中左側)に、反射面R2がアフォーカルレンズ4側(露光装置の下流側:図10中右側)に位置している。さらに詳細には、反射面R1は光軸AXaに対して斜設され、反射面R2は接線P3を通り且つXZ平面に平行な面に関して反射面R1とは対称的に光軸AXaに対して斜設されている。プリズム23bの側面23baは、後述するように、空間光変調器23aの複数のミラー要素SEが配列される面に対向した光学面である。
【0078】
プリズム23bの反射面R1は、入射面IPを介して入射した光を空間光変調器23aに向かって反射する。空間光変調器23aは、反射面R1と反射面R2との間の光路中に配置され、反射面R1を経て入射した光を反射する。プリズム23bの反射面R2は、空間光変調器23aを経て入射した光を反射し、射出面OPを介してアフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aへ導く。図10では、説明の理解を容易にするために、空間光変調ユニット74Aよりも後側において光軸AXaが直線状に延びるように光路を展開している。また、図10にはプリズム23bを1つの光学ブロックで一体的に形成した例を示しているが、複数の光学ブロックを用いてプリズム23bを構成しても良い。
【0079】
空間光変調器23aは、反射面R1を経て入射した光に対して、その入射位置に応じた空間的な変調を付与して射出する。空間光変調器23aは、図11に示すように、二次元的に配列された複数の微小なミラー要素(光学要素)SEを備えている。説明および図示を簡単にするために、図10および図11では空間光変調器23aが4×4=16個のミラー要素SEを備える構成例を示しているが、実際には16個よりもはるかに多数のミラー要素SEを備えている。
【0080】
図10を参照すると、光軸AXaと平行な方向に沿って空間光変調ユニット23に入射する光線群のうち、光線L1は複数のミラー要素SEのうちのミラー要素SEaに、光線L2はミラー要素SEaとは異なるミラー要素SEbにそれぞれ入射する。同様に、光線L3はミラー要素SEa,SEbとは異なるミラー要素SEcに、光線L4はミラー要素SEa〜SEcとは異なるミラー要素SEdにそれぞれ入射する。ミラー要素SEa〜SEdは、その位置に応じて設定された空間的な変調を光L1〜L4に与える。
【0081】
空間光変調ユニット23では、空間光変調器23aのすべてのミラー要素SEの反射面がXY平面に平行に設定された基準状態において、光軸AXaと平行な方向に沿って反射面R1へ入射した光線が、空間光変調器23aを経た後に、反射面R2により光軸AXaと平行な方向に向かって反射されるように構成されている。また、空間光変調ユニット23は、プリズム23bの入射面IPからミラー要素SEa〜SEdを経て射出面OPまでの空気換算長と、プリズム23bが光路中に配置されていないときの入射面IPに相当する位置から射出面OPに相当する位置までの空気換算長とが等しくなるように構成されている。ここで、空気換算長とは、光学系中の光路長を屈折率1の空気中の光路長に換算したものであり、屈折率nの媒質中の空気換算長は、その光路長に1/nを乗じたものである。
【0082】
空間光変調器23aの複数のミラー要素SEが配列される面は、集光レンズ72の後側焦点位置またはその近傍に位置決めされ、且つアフォーカルレンズ4の前側焦点位置またはその近傍に位置決めされている。したがって、空間光変調器23aには、回折光学素子71の特性に応じた形状(例えば矩形状)の断面を有する光束が入射する。空間光変調器23aの複数のミラー要素SEa〜SEdによって反射されて所定の角度分布が与えられた光は、アフォーカルレンズ4の瞳面4cに所定の光強度分布SP1〜SP4を形成する。すなわち、アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aは、空間光変調器23aの複数のミラー要素SEa〜SEdが射出光に与える角度を、空間光変調器23aの遠視野領域(フラウンホーファー回折領域)である面4c上での位置に変換している。
【0083】
図1を参照すると、アフォーカルレンズ4の瞳面4c(図1では不図示)と光学的に共役な位置またはその近傍に、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面が位置決めされている。したがって、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8が形成する二次光源の光強度分布(輝度分布)は、空間光変調器23aおよびアフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aが瞳面4cに形成する光強度分布SP1〜SP4に応じた分布となる。空間光変調器23aは、図11に示すように、平面形状の反射面を上面にした状態で1つの平面に沿って規則的に且つ二次元的に配列された多数の微小な反射素子であるミラー要素SEを含む可動マルチミラーである。
【0084】
各ミラー要素SEは可動であり、その反射面の傾き、すなわち反射面の傾斜角および傾斜方向は、制御部(不図示)からの指令にしたがって作動する駆動部23c(図11では不図示)の作用により独立に制御される。各ミラー要素SEは、その反射面に平行な二方向であって互いに直交する二方向(X方向およびY方向)を回転軸として、所望の回転角度だけ連続的或いは離散的に回転することができる。すなわち、各ミラー要素SEの反射面の傾斜を二次元的に制御することが可能である。
【0085】
なお、各ミラー要素SEの反射面を離散的に回転させる場合、回転角を複数の状態(例えば、・・・、−2.5度、−2.0度、・・・0度、+0.5度・・・+2.5度、・・・)で切り換え制御するのが良い。図11には外形が正方形状のミラー要素SEを示しているが、ミラー要素SEの外形形状は正方形に限定されない。ただし、光利用効率の観点から、ミラー要素SEの隙間が少なくなるように配列可能な形状(最密充填可能な形状)にしてもよい。また、光利用効率の観点から、隣り合う2つのミラー要素SEの間隔を必要最小限に抑えてもよい。
【0086】
空間光変調器23aでは、制御部からの制御信号に応じて作動する駆動部23cの作用により、複数のミラー要素SEの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素SEがそれぞれ所定の向きに設定される。空間光変調器23aの複数のミラー要素SEによりそれぞれ所定の角度で反射された光は、アフォーカルレンズ4およびズームレンズ7を介して、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点位置またはその近傍の照明瞳に、複数極状(4極状、5極状など)等の光強度分布(照明瞳輝度分布)を形成する。この照明瞳輝度分布は、ズームレンズ7の作用により、相似的に(等方的に)変化する。
【0087】
具体的には、空間光変調ユニット74A中の空間光変調器23aの複数のミラー要素SEによりそれぞれ所定の角度で反射された横偏光の光は、図4に示すように、アフォーカルレンズ4の瞳面4cに、例えば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布41aおよび41bを形成する。光強度分布41aおよび41bを形成する光は、図中両方向矢印で示すようにX方向に沿った偏光方向を有する。
【0088】
同様に、空間光変調ユニット74B中の空間光変調器の複数のミラー要素によりそれぞれ所定の角度で反射された縦偏光の光は、図4に示すように、アフォーカルレンズ4の瞳面4cに、例えば光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布41cおよび41dを形成する。光強度分布41cおよび41dを形成する光は、図中両方向矢印で示すようにZ方向に沿った偏光方向を有する。
【0089】
アフォーカルレンズ4の瞳面4cに4極状の光強度分布41を形成した光は、シリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の入射面、およびシリンドリカルマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳(開口絞り9が配置されている位置)に、光強度分布41a〜41dに対応する4極状の光強度分布を形成する。さらに、開口絞り9と光学的に共役な別の照明瞳位置、すなわち結像光学系12の瞳位置および投影光学系PLの瞳位置にも、光強度分布41a〜41dに対応する4極状の光強度分布が形成される。
【0090】
あるいは、空間光変調ユニット74Aの作用により、図5の左図に示すように、例えば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布42aおよび42bと、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布42c’とが、アフォーカルレンズ4の瞳面4cに形成される。光強度分布42a,42b,42c’を形成する光は、図中両方向矢印で示すようにX方向に沿った偏光方向を有する。一方、空間光変調ユニット74Bの作用により、図5の中央図に示すように、例えば光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布42dおよび42eと、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布42c''とが、アフォーカルレンズ4の瞳面4cに形成される。光強度分布42d,42e,42c''を形成する光は、図中両方向矢印で示すようにZ方向に沿った偏光方向を有する。
【0091】
その結果、アフォーカルレンズ4の瞳面4cには、図5の右図に示すように、5極状の光強度分布42a〜42eが形成される。ここで、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布42cは、光強度分布42c’と42c''とが重なり合って形成される。空間光変調ユニット74Aを経てアフォーカルレンズ4の瞳面4cに達する横偏光の光と、空間光変調ユニット74Bを経てアフォーカルレンズ4の瞳面に達する縦偏光の光との間に、光源1の時間コヒーレント長以上の光路長差が付与されている場合、図中両方向矢印で示すようにZ方向に沿った偏光方向を有する光束とX方向に沿った偏光方向を有する光束とが光強度分布42cの領域を通過する。
【0092】
このように、図9の変形例では、空間光変調ユニット74A中の空間光変調器の作用により照明瞳に形成される横偏光状態の第1光強度分布と空間光変調ユニット74B中の空間光変調器の作用により照明瞳に形成される縦偏光状態の第2光強度分布とからなる照明瞳輝度分布を自在に且つ迅速に変化させることができる。換言すれば、図9の変形例においても図1の実施形態と同様に、偏光状態の互いに異なる第1光強度分布および第2光強度分布の形状および大きさをそれぞれ変化させることにより、照明瞳輝度分布の形状、大きさ、および偏光状態について多様性に富んだ照明条件を実現することができる。
【0093】
図9の変形例では、光分割器として回折光学素子71を用いているので、空間光変調ユニット74A,74B中の空間光変調器に入射する光の強度の均一性を向上させることができるという利点がある。また、回折光学素子71に入射する光束の位置が変動しても、回折光学素子71の直後の光束の角度が変化しないので、空間光変調ユニット74A,74B中の空間光変調器に入射する光束の位置が変動し難いという利点がある。
【0094】
図9の変形例において、回折光学素子71に矩形状の断面を有する光束が入射する場合、プリズム23bの小型化、ひいては空間光変調ユニット74Aおよび74Bの小型化を図るには、矩形状の断面の短辺方向に入射光束を分割してもよい。換言すれば、空間光変調ユニット74A,74B中の空間光変調器の有効領域の長手方向を法線とする面内で入射光束を分割してもよい。一般的には、回折光学素子71への入射光束の断面内における第1の方向に沿った大きさよりも第1の方向と直交する第2の方向に沿った大きさの方が大きい断面形状を有する場合、入射光束を第1の方向に分割することにより、空間光変調ユニット74Aおよび74Bの小型化を図ることができる。
【0095】
なお、図9の変形例では、回折光学素子71を用いて入射光束を2つの光束に分割している。しかしながら、これに限定されることなく、例えば図12に示すように、一対のプリズム部材76aと76bとを有するプリズムユニット76を用いて入射光束を2つの光束に分割する構成も可能である。図12の変形例は図9の変形例と類似の構成を有するが、回折光学素子71および集光レンズ72に代えてプリズムユニット76が配置されている点だけが図9の変形例と相違している。図12では、図9に示す構成要素と同様の機能を有する要素に、図9と同じ参照符号を付している。また、図12に示す変形例では、一対のプリズム部材76aと76bとを有するプリズムユニット76を用いて入射光束を2つの光束に分割しているため、装置を小型化することが可能となる。
【0096】
図12の変形例において光分割器として機能するプリズムユニット76は、光源側(図中左側)から順に、光源側に平面を向け且つマスク側(図中右側)に凹状で且つV字状の屈折面を向けた第1プリズム部材76aと、マスク側に平面を向け且つ光源側に凸状で且つV字状の屈折面を向けた第2プリズム部材76bとにより構成されている。第1プリズム部材76aの凹状屈折面は2つの平面から構成され、その交線(稜線)はX方向に沿って延びている。第2プリズム部材76bの凸状屈折面は、第1プリズム部材76aの凹状屈折面と相補的に形成されている。すなわち、第2プリズム部材76bの凸状屈折面も2つの平面から構成され、その交線(稜線)はX方向に沿って延びている。図12の変形例では、一対のプリズム部材76aと76bとにより光分割器としてのプリズムユニット76を構成しているが、少なくとも1つのプリズムを用いて光分割器を構成することもできる。さらに、光分割器の具体的な構成については様々な形態が可能である。
【0097】
なお、図9の変形例および図12の変形例では、集光レンズ72と空間光変調ユニット74Aおよび74Bとの間の光路中に、1/2波長板73Aおよび73Bがそれぞれ設けられている。しかしながら、これに限定されることなく、回折光学素子71またはプリズムユニット76により分割された2つの光束のうちの第1光束の光路中の他の適当な位置および第2光束の光路中の他の適当な位置に、1/2波長板73Aおよび73Bをそれぞれ設けることができる。
【0098】
また、図9の変形例および図12の変形例では、第1光束の光路中に所定の軸線廻りに回転可能な1/2波長板73Aが設けられ、第2光束の光路中に所定の軸線廻りに回転可能な1/2波長板73Bが設けられている。しかしながら、これに限定されることなく、少なくとも一方の光路中に1/2波長板を所定の軸線廻りに回転可能にまたは固定的に設けたり、少なくとも一方の光路中に1/2波長板以外の偏光子または旋光子を所定の軸線廻りに回転可能にまたは固定的に設けたりすることもできる。
【0099】
また、1/2波長板(一般的には偏光子または旋光子)を光路に対して挿脱自在に構成し、必要でないときには光路から退避させることにより、1/2波長板の長寿命化を図ることもできる。同様に、1/2波長板(一般的には偏光子または旋光子)を同じ光路長のガラス基板と交換可能に構成することにより、1/2波長板の長寿命化を図ることもできる。
【0100】
また、1/2波長板に加えて、所定の軸線廻りに回転可能な1/4波長板を配置することにより、楕円偏光を所望の直線偏光に調整することもできる。また、1/2波長板に加えて、あるいは1/2波長板に代えて、デポラライザ(非偏光化素子)を用いることにより、所望の非偏光状態の光を得ることもできる。なお、上述したように、例えば一方の光路中に所要の厚さの平行平面板を挿入して、第1光束と第2光束との間に時間コヒーレント長以上の光路長差を付与することにより、照明瞳で同一領域を通過した光束を非偏光化することもできる。さらに、第1光束と第2光束との間に時間コヒーレント長以上の光路長差を付与することによって、スペックルを√(1/2)程度、低減することが可能になる。
【0101】
実施形態及び変形例にかかる照明光学装置では、複数のミラー要素の姿勢がそれぞれ個別に変化する一対の空間光変調器を備えた光学ユニット(空間光変調ユニット)を用いているので、第1空間光変調器の作用により照明瞳に形成される第1偏光状態の第1光強度分布と第2空間光変調器の作用により照明瞳に形成される第2偏光状態の第2光強度分布とからなる照明瞳輝度分布を自在に且つ迅速に変化させることができる。換言すれば、偏光状態の互いに異なる第1光強度分布および第2光強度分布の形状および大きさをそれぞれ変化させることにより、照明瞳輝度分布の形状、大きさ、および偏光状態について多様性に富んだ照明条件を実現することができる。
【0102】
こうして、実施形態及び変形例に係る照明光学装置では、照明瞳輝度分布の形状、及び大きさ、および偏光状態について多様性に富んだ照明条件を実現することができる。また、実施形態及び変形例に係る露光装置では、多様性に富んだ照明条件を実現することのできる照明光学装置を用いて、マスクMのパターン特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいては良好なデバイスを製造することができる。
【0103】
上述の実施形態並びに各変形例において、空間光変調ユニットを用いて照明瞳輝度分布を形成する際に、瞳輝度分布計測装置で照明瞳輝度分布を計測しつつ、この計測結果に応じて空間光変調ユニット中の各空間光変調器を制御してもよい。このような技術は、たとえば特開2006−54328号公報や特開2003−22967号公報およびこれに対応する米国特許公開第2003/0038225号公報に開示されている。
【0104】
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開番号WO99/49504号公報に開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。
なお、上述の実施形態では、マスクの代わりに、所定の電子データに基づいて所定パターンを形成する可変パターン形成装置を用いることができる。このような可変パターン形成装置を用いれば、パターン面が縦置きでも同期精度に及ぼす影響を最低限にできる。なお、可変パターン形成装置としては、たとえば所定の電子データに基づいて駆動される複数の反射素子を含むDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いることができる。DMDを用いた露光装置は、例えば特開2004−304135号公報、国際特許公開第2006/080285号パンフレット、米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。また、DMDのような非発光型の反射型空間光変調器以外に、透過型空間光変調器を用いても良く、自発光型の画像表示素子を用いても良い。なお、パターン面が横置きの場合であっても可変パターン形成装置を用いても良い。
【0105】
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことができる。
【0106】
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。図13は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図13に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の投影露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。
【0107】
ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の投影露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の投影露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを、感光性基板つまりプレートPとしてパターンの転写を行う。
【0108】
図14は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図14に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルタ形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。
【0109】
ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の投影露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の投影露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
【0110】
ステップS52のカラーフィルタ形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルタを形成する。
【0111】
ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルタとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルタとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
【0112】
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0113】
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。
【0114】
また、上述の実施形態では、露光装置においてマスクを照明する照明光学装置に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、マスク以外の被照射面を照明する一般的な照明光学装置に対して本発明を適用することもできる。
【0115】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。また、上記実施形態の各構成要素等は、いずれの組み合わせ等も可能とすることができる。
【符号の説明】
【0116】
1 光源
3,3A,3B 空間光変調ユニット
4 アフォーカルレンズ
7 ズームレンズ
8 シリンドリカルマイクロフライアイレンズ
10 コンデンサー光学系
11 マスクブラインド
12 結像光学系
31,32 プリズム部材
33,34 空間光変調器
33a,34a 空間光変調器の複数のミラー要素
35,36 偏光分離膜
M マスク
PL 投影光学系
W ウェハ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光路を進行する入射光束を複数の光束に分割する光分割器と、
前記複数の光束のうちの第1光束の光路に配置可能な第1空間光変調器と、
前記複数の光束のうちの第2光束の光路に配置可能な第2空間光変調器と、
前記第1空間光変調器を介した光束と前記第2空間光変調器を介した光束とを合成して射出光路へ向ける光合成器とを備え、
前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器のうちの少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有し、
前記光分割器側の前記入射光路と前記光合成器側の前記射出光路とは同じ方向に延ばされていることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
前記少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列された複数のミラー要素と、該複数のミラー要素の姿勢を個別に制御駆動する駆動部とを有することを特徴とする請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記駆動部は、前記複数のミラー要素の向きを連続的に変化させることを特徴とする請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記光分割器は、偏光分離膜を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記光合成器は、偏光分離膜を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記光分割器を介した前記第2光束を前記第2空間光変調器へ向けて偏向する第1偏向面と、
前記第2空間光変調器を介した前記第2光束を前記光合成器へ向けて偏向する第2偏向面とをさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項7】
前記光分割器の光分割面と前記光合成器の光合成面とは異なる位置に設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項8】
前記第1空間光変調器は、前記入射光路と前記射出光路とを結ぶ軸線を含む平面で分割される複数の空間のうちの第1空間に配置可能であり、
前記第2空間光変調器は、前記複数の空間のうちの前記第1空間とは異なる第2空間に配置可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項9】
前記第1空間光変調器と前記第2空間光変調器とは、前記軸線を挟んで対向する位置に配置可能であることを特徴とする請求項8に記載の光学ユニット。
【請求項10】
前記光分割器に入射する前記入射光束の進行方向と、前記光合成器から射出される射出光束の基準状態での進行方向とは平行であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項11】
前記光学ユニットは、光源からの光に基づいて被照射面を照明する照明光学装置に用いられ、
前記射出光束の前記基準状態での進行方向は、前記照明光学装置の光軸と一致または平行であることを特徴とする請求項10に記載の光学ユニット。
【請求項12】
前記光分割器と前記光合成器とは、共通の偏光ビームスプリッターを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項13】
前記光分割器は、回折光学素子を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項14】
前記光分割器は、少なくとも1つのプリズムを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項15】
前記光分割器と前記光合成器との間において前記第1光束の光路および前記第2光束の光路のうちの少なくとも一方に配置可能な偏光子または旋光子をさらに備えていることを特徴とする請求項13または14に記載の光学ユニット。
【請求項16】
前記光合成器は、前記第1空間光変調器を介した光束と前記第2空間光変調器を介した光束とを所定面で重ね合わせる光学系を有することを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項17】
前記光分割器に対する前記入射光束の入射角がブルースター角であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項18】
前記第1空間光変調器を経る前記第1光束の光と、前記第2空間光変調器を経る前記第2光束の光との間で光路長差が付与されることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項19】
入射光束を互いに偏光状態の異なる複数の光束に分割する光分割器と、
前記複数の光束のうちの第1光束の光路に配置可能な第1空間光変調器と、
前記複数の光束のうちの第2光束の光路に配置可能な第2空間光変調器と、
前記第1空間光変調器を介した光束と前記第2空間光変調器を介した光束とを合成する光合成器とを備え、
前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器のうちの少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有することを特徴とする光学ユニット。
【請求項20】
前記入射光束は、前記入射光束の断面内における第1の方向に沿った大きさよりも該第1の方向と直交する第2の方向に沿った大きさの方が大きい断面形状を有し、
前記光分割器は、前記入射光束を前記第1の方向に分割することを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項21】
入射光束を複数の光束に分割する光分割器と、
前記複数の光束のうちの第1光束の光路に配置可能な第1空間光変調器と、
前記複数の光束のうちの第2光束の光路に配置可能な第2空間光変調器と、
前記第1空間光変調器を介した光束と前記第2空間光変調器を介した光束とを合成する光合成器とを備え、
前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器のうちの少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有し、
前記入射光束は、前記入射光束の断面内における第1の方向に沿った大きさよりも該第1の方向と直交する第2の方向に沿った大きさの方が大きい断面形状を有し、
前記光分割器は、前記入射光束を前記第1の方向に分割することを特徴とする光学ユニット。
【請求項22】
所定の光軸を有する光学系と共に用いられる光学ユニットであって、
前記光学系の光路に配置可能であって、入射光束を複数の光束に分割する光分割器と、
前記複数の光束のうちの第1光束の光路中の位置であって、前記所定の光軸とは異なる位置である第1位置に配置可能な第1空間光変調器と、
前記複数の光束のうちの第2光束の光路中の位置であって、前記所定の光軸とは異なる位置である第2位置に配置可能な第2空間光変調器と、
前記光学系の光路に配置可能であって、前記第1空間光変調器を介した光束と前記第2空間光変調器を介した光束とを合成する光合成器とを備え、
前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器のうちの少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有し、
前記第1位置および前記第2位置は前記光学系の前記所定の光軸から外れた位置であることを特徴とする光学ユニット。
【請求項23】
前記第1空間光変調器は、前記所定の光軸を含む平面で分割される複数の空間のうちの第1空間に配置可能であり、
前記第2空間光変調器は、前記複数の空間のうちの前記第1空間とは異なる第2空間に配置可能であることを特徴とする請求項22に記載の光学ユニット。
【請求項24】
前記第1空間光変調器と前記第2空間光変調器とは、前記所定の光軸を挟んで対向する位置に配置可能であることを特徴とする請求項22に記載の光学ユニット。
【請求項25】
所定の光軸を有する光学系と共に用いられる光学ユニットであって、
前記光学系の光軸と平行に入射した光を反射する第1の反射面と、
前記第1の反射面で反射した光の光路に配置可能な第1空間光変調器と、
前記第1空間光変調器を介した光反射して前記光学系中に射出する第2の反射面と、
前記光学系の光軸と平行に入射した光を反射する第3の反射面と、
前記第3の反射面で反射した光の光路に配置可能な第2空間光変調器と、
前記第2空間光変調器を介した光反射して前記光学系中に射出する第4の反射面とを備え、
前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器のうちの少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有することを特徴とする光学ユニット。
【請求項26】
前記第1乃至第4の反射面は、前記光学系の前記所定の光軸に対して斜設されていることを特徴とする請求項25に記載の光学ユニット。
【請求項27】
前記第1空間光変調器は、前記第2の反射面で反射して前記光学系中に射出する光が前記第1の反射面への入射光と平行になるように光を変調でき、
前記第2空間光変調器は、前記第4の反射面で反射して前記光学系中に射出する光が前記第3の反射面への入射光と平行になるように光を変調できることを特徴とする請求項25または26に記載の光学ユニット。
【請求項28】
前記第1の反射面は第1の平面上に位置し、
前記第2の反射面は前記第1の平面と交差する第2の平面上に位置し、
前記第3の反射面は第3の平面上に位置し、
前記第4の反射面は前記第3の平面と交差する第4の平面上に位置することを特徴とする請求項25乃至27のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項29】
前記第1及び第2の平面によって形成される稜線は前記第1及び第2の反射面に対して前記第1空間光変調器側に向けられ、
前記第3及び第4の平面によって形成される稜線は前記第3及び第4の反射面に対して前記第2空間光変調器側に向けられ、
前記第1及び第2の反射面同士のなす角は鈍角であり、前記第3及び第4の反射面同士のなす角は鈍角であることを特徴とする請求項28に記載の光学ユニット。
【請求項30】
前記光学ユニットは、光源からの光に基づいて被照射面を照明する照明光学装置に用いられ、該照明光学装置の照明瞳に所定の光強度分布を形成するために前記照明光学装置中の分布形成光学系に光を導くことを特徴とする請求項1乃至29のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項31】
光源からの光に基づいて被照射面を照明する照明光学装置において、
請求項1乃至30のいずれか1項に記載の光学ユニットと、
前記第1および第2空間光変調器を介した光束に基づいて、前記照明光学装置の照明瞳に所定の光強度分布を形成する分布形成光学系とを備えていることを特徴とする照明光学装置。
【請求項32】
所定のパターンを照明するための請求項31に記載の照明光学装置を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置。
【請求項33】
請求項32に記載の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項1】
入射光路を進行する入射光束を複数の光束に分割する光分割器と、
前記複数の光束のうちの第1光束の光路に配置可能な第1空間光変調器と、
前記複数の光束のうちの第2光束の光路に配置可能な第2空間光変調器と、
前記第1空間光変調器を介した光束と前記第2空間光変調器を介した光束とを合成して射出光路へ向ける光合成器とを備え、
前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器のうちの少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有し、
前記光分割器側の前記入射光路と前記光合成器側の前記射出光路とは同じ方向に延ばされていることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
前記少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列された複数のミラー要素と、該複数のミラー要素の姿勢を個別に制御駆動する駆動部とを有することを特徴とする請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記駆動部は、前記複数のミラー要素の向きを連続的に変化させることを特徴とする請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記光分割器は、偏光分離膜を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記光合成器は、偏光分離膜を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記光分割器を介した前記第2光束を前記第2空間光変調器へ向けて偏向する第1偏向面と、
前記第2空間光変調器を介した前記第2光束を前記光合成器へ向けて偏向する第2偏向面とをさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項7】
前記光分割器の光分割面と前記光合成器の光合成面とは異なる位置に設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項8】
前記第1空間光変調器は、前記入射光路と前記射出光路とを結ぶ軸線を含む平面で分割される複数の空間のうちの第1空間に配置可能であり、
前記第2空間光変調器は、前記複数の空間のうちの前記第1空間とは異なる第2空間に配置可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項9】
前記第1空間光変調器と前記第2空間光変調器とは、前記軸線を挟んで対向する位置に配置可能であることを特徴とする請求項8に記載の光学ユニット。
【請求項10】
前記光分割器に入射する前記入射光束の進行方向と、前記光合成器から射出される射出光束の基準状態での進行方向とは平行であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項11】
前記光学ユニットは、光源からの光に基づいて被照射面を照明する照明光学装置に用いられ、
前記射出光束の前記基準状態での進行方向は、前記照明光学装置の光軸と一致または平行であることを特徴とする請求項10に記載の光学ユニット。
【請求項12】
前記光分割器と前記光合成器とは、共通の偏光ビームスプリッターを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項13】
前記光分割器は、回折光学素子を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項14】
前記光分割器は、少なくとも1つのプリズムを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項15】
前記光分割器と前記光合成器との間において前記第1光束の光路および前記第2光束の光路のうちの少なくとも一方に配置可能な偏光子または旋光子をさらに備えていることを特徴とする請求項13または14に記載の光学ユニット。
【請求項16】
前記光合成器は、前記第1空間光変調器を介した光束と前記第2空間光変調器を介した光束とを所定面で重ね合わせる光学系を有することを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項17】
前記光分割器に対する前記入射光束の入射角がブルースター角であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項18】
前記第1空間光変調器を経る前記第1光束の光と、前記第2空間光変調器を経る前記第2光束の光との間で光路長差が付与されることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項19】
入射光束を互いに偏光状態の異なる複数の光束に分割する光分割器と、
前記複数の光束のうちの第1光束の光路に配置可能な第1空間光変調器と、
前記複数の光束のうちの第2光束の光路に配置可能な第2空間光変調器と、
前記第1空間光変調器を介した光束と前記第2空間光変調器を介した光束とを合成する光合成器とを備え、
前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器のうちの少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有することを特徴とする光学ユニット。
【請求項20】
前記入射光束は、前記入射光束の断面内における第1の方向に沿った大きさよりも該第1の方向と直交する第2の方向に沿った大きさの方が大きい断面形状を有し、
前記光分割器は、前記入射光束を前記第1の方向に分割することを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項21】
入射光束を複数の光束に分割する光分割器と、
前記複数の光束のうちの第1光束の光路に配置可能な第1空間光変調器と、
前記複数の光束のうちの第2光束の光路に配置可能な第2空間光変調器と、
前記第1空間光変調器を介した光束と前記第2空間光変調器を介した光束とを合成する光合成器とを備え、
前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器のうちの少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有し、
前記入射光束は、前記入射光束の断面内における第1の方向に沿った大きさよりも該第1の方向と直交する第2の方向に沿った大きさの方が大きい断面形状を有し、
前記光分割器は、前記入射光束を前記第1の方向に分割することを特徴とする光学ユニット。
【請求項22】
所定の光軸を有する光学系と共に用いられる光学ユニットであって、
前記光学系の光路に配置可能であって、入射光束を複数の光束に分割する光分割器と、
前記複数の光束のうちの第1光束の光路中の位置であって、前記所定の光軸とは異なる位置である第1位置に配置可能な第1空間光変調器と、
前記複数の光束のうちの第2光束の光路中の位置であって、前記所定の光軸とは異なる位置である第2位置に配置可能な第2空間光変調器と、
前記光学系の光路に配置可能であって、前記第1空間光変調器を介した光束と前記第2空間光変調器を介した光束とを合成する光合成器とを備え、
前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器のうちの少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有し、
前記第1位置および前記第2位置は前記光学系の前記所定の光軸から外れた位置であることを特徴とする光学ユニット。
【請求項23】
前記第1空間光変調器は、前記所定の光軸を含む平面で分割される複数の空間のうちの第1空間に配置可能であり、
前記第2空間光変調器は、前記複数の空間のうちの前記第1空間とは異なる第2空間に配置可能であることを特徴とする請求項22に記載の光学ユニット。
【請求項24】
前記第1空間光変調器と前記第2空間光変調器とは、前記所定の光軸を挟んで対向する位置に配置可能であることを特徴とする請求項22に記載の光学ユニット。
【請求項25】
所定の光軸を有する光学系と共に用いられる光学ユニットであって、
前記光学系の光軸と平行に入射した光を反射する第1の反射面と、
前記第1の反射面で反射した光の光路に配置可能な第1空間光変調器と、
前記第1空間光変調器を介した光反射して前記光学系中に射出する第2の反射面と、
前記光学系の光軸と平行に入射した光を反射する第3の反射面と、
前記第3の反射面で反射した光の光路に配置可能な第2空間光変調器と、
前記第2空間光変調器を介した光反射して前記光学系中に射出する第4の反射面とを備え、
前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器のうちの少なくとも一方の空間光変調器は、二次元的に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有することを特徴とする光学ユニット。
【請求項26】
前記第1乃至第4の反射面は、前記光学系の前記所定の光軸に対して斜設されていることを特徴とする請求項25に記載の光学ユニット。
【請求項27】
前記第1空間光変調器は、前記第2の反射面で反射して前記光学系中に射出する光が前記第1の反射面への入射光と平行になるように光を変調でき、
前記第2空間光変調器は、前記第4の反射面で反射して前記光学系中に射出する光が前記第3の反射面への入射光と平行になるように光を変調できることを特徴とする請求項25または26に記載の光学ユニット。
【請求項28】
前記第1の反射面は第1の平面上に位置し、
前記第2の反射面は前記第1の平面と交差する第2の平面上に位置し、
前記第3の反射面は第3の平面上に位置し、
前記第4の反射面は前記第3の平面と交差する第4の平面上に位置することを特徴とする請求項25乃至27のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項29】
前記第1及び第2の平面によって形成される稜線は前記第1及び第2の反射面に対して前記第1空間光変調器側に向けられ、
前記第3及び第4の平面によって形成される稜線は前記第3及び第4の反射面に対して前記第2空間光変調器側に向けられ、
前記第1及び第2の反射面同士のなす角は鈍角であり、前記第3及び第4の反射面同士のなす角は鈍角であることを特徴とする請求項28に記載の光学ユニット。
【請求項30】
前記光学ユニットは、光源からの光に基づいて被照射面を照明する照明光学装置に用いられ、該照明光学装置の照明瞳に所定の光強度分布を形成するために前記照明光学装置中の分布形成光学系に光を導くことを特徴とする請求項1乃至29のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項31】
光源からの光に基づいて被照射面を照明する照明光学装置において、
請求項1乃至30のいずれか1項に記載の光学ユニットと、
前記第1および第2空間光変調器を介した光束に基づいて、前記照明光学装置の照明瞳に所定の光強度分布を形成する分布形成光学系とを備えていることを特徴とする照明光学装置。
【請求項32】
所定のパターンを照明するための請求項31に記載の照明光学装置を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置。
【請求項33】
請求項32に記載の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−199552(P2012−199552A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−80374(P2012−80374)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2008−263405(P2008−263405)の分割
【原出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2008−263405(P2008−263405)の分割
【原出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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