説明

光学ユニットおよび赤外線撮像センサ

【課題】赤外波長領域で用いられ、安価で装置の小型化が可能な光学ユニットおよび赤外線撮像センサを提供する。
【解決手段】レンズを含む複数の光学素子を有し、赤外波長領域の光を結像させる光学ユニット1において、物体側に配置され、赤外線を選択的に透過する物体側レンズ2と、結像側に配置され、赤外線を選択的に透過する結像側レンズ6と、物体側レンズ2を透過した赤外線の光路を屈曲させて該赤外線を結像側レンズ6に入射させる金属反射鏡3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外波長領域の光を結像させる光学ユニットと、この光学ユニットを用いた赤外線撮像センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レンズやフィルタ等の複数の光学素子を有し、撮像素子上に被写体像を結像させる光学ユニットが様々な分野で利用されている。その中でも、赤外波長領域の光を結像させる光学ユニットは主に赤外線撮像センサに用いられる。この赤外線撮像センサは、熱線を放出する物体の認識が可能であるため、医療産業やセキュリティ産業等においては生体認識、計測分野においては高温部の感知等に幅広く用いられている。
【0003】
赤外線撮像センサは、一般的に、赤外線を検出する赤外線検出素子がパッケージに収納された構成となっている。さらにパッケージには、鏡筒に保持された複数の光学素子からなる光学ユニットが収納されており、この光学ユニットを介して集光された赤外線がパッケージ内の赤外線検出素子に導かれ、赤外線検出素子の受光面で結像される。赤外波長領域で用いられる光学ユニットのレンズには、一般的にゲルマニウム、シリコン、カルコゲナイド等が用いられている。
【0004】
関連する技術として特許文献1(特開2001−83412号公報)には、8〜12μmの赤外波長領域で使用する赤外線レンズの構成が開示されている。この赤外線レンズは、4枚のゲルマニウム製のレンズで構成されており、異なるレンズの組み合わせにより収差が小さく高い結像性能を有するレンズシステムとしている。
また、特許文献2(特開2010−113191号公報)には、3〜14μmの赤外線から遠赤外線までの波長域で用いられる赤外線光学系の構成が開示されている。この赤外線光学系は、メニスカス状の2枚のレンズで構成され、少なくとも一方のレンズの両面を回折光学素子面としており、これにより色収差等の補正を可能としている。
【0005】
さらに、特許文献3(特開2009−180752号公報)には、レンズの代わりに反射鏡を用いた結像光学系の構成が開示されている。この結像光学系は、光軸の向きを変化させるように3枚の反射鏡を配置しており、これにより、色収差を効果的に補正することを可能としている。さらに、反射鏡材質には樹脂基材を用い、この基材に金属膜をコーティングし、可視光域、赤外域において高反射な結像光学系としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−83412号公報
【特許文献2】特開2010−113191号公報
【特許文献3】特開2009−180752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2等に開示されるゲルマニウム、あるいはシリコンを用いたレンズは、これらが結晶物のため成形加工ができず、非球面形状に加工するためには切削加工する必要があり作製が困難で材料単価が高くなる。カルコゲナイドを用いたレンズにおいても材料単価の高いレンズであるため、光学ユニットの全てのレンズにこれらを用いると高価になってしまうという問題があった。
さらに、複数のレンズを用いる光学ユニットにおいては、直線上に複数のレンズを配置すると光軸方向全長が長くなってしまい、装置が大型化してしまうという問題もあった。
【0008】
さらにまた、特許文献3に開示されるように、反射鏡のみで光学ユニットを構成すると、特定波長領域以外の光線が入射することを防げられず、赤外波長領域のみで用いられる場合には適していない。
したがって、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、赤外波長領域で用いられ、安価で装置の小型化が可能な光学ユニットおよび赤外線撮像センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の光学ユニットは、レンズを含む複数の光学素子を有し、赤外波長領域の光を結像させる光学ユニットにおいて、物体側に配置され、赤外線を選択的に透過する物体側レンズと、結像側に配置され、赤外線を選択的に透過する結像側レンズと、前記物体側レンズを透過した前記赤外線の光路を屈曲させて該赤外線を前記結像側レンズに入射させる金属反射鏡とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、光学ユニットを構成する複数の光学素子のうち物体側レンズと結像側レンズとの間に位置する光学素子として材料単価が安い金属反射鏡を用いるようにしているため、安価な光学ユニットとすることができる。また、一般に金属反射鏡の反射率はレンズの透過率よりも大きいため、赤外線の利用効率を向上させることが可能である。
また、金属反射鏡で赤外線の光路を屈曲させる構成としているため、複数の光学素子を一直線上に配置する必要がなくなり、光軸方向全長を短くでき、光学ユニットの小型化が可能となる。
さらに、金属反射鏡の物体側と結像側にそれぞれ赤外線を選択的に透過するレンズを配置しているため、赤外波長領域の光以外を遮断するフィルタ等を別に設ける必要がなくなり、さらなる装置の小型化が可能となる。
【0011】
また、前記金属反射鏡は、基材表面に金属膜が蒸着された構成であることが好ましい。
これにより、基材に成形加工可能な材料を用いることで、金属反射鏡の形状自由度を高めることが可能となる。
【0012】
さらに、前記金属反射鏡は、反射面が非球面であることが好ましい。
これは、上記したように金属反射鏡は基材に成形加工可能な材料を用いることで、レンズに比べて金属反射鏡の形状自由度を高めることが可能であるため、金属反射鏡の反射面を非球面に形成しやすく安価なコストで非球面反射面を形成できる。
【0013】
さらにまた、前記物体側レンズまたは前記結像側レンズが透過する赤外線は、遠赤外線領域の波長を有することが好ましい。
このように、遠赤外線領域の波長を透過する物体側レンズまたは結像側レンズを用いることで、遠赤外線領域の波長のみを導く光学ユニットを構成でき、熱線を放出する物体の認識を行う赤外線撮像センサ等に幅広く用いることが可能となる。
【0014】
また、前記複数の光学素子を支持する鏡筒を有し、前記金属反射鏡の反射面は、前記鏡筒と前記物体側レンズと前記結像側レンズとで密閉された空間に位置することが好ましい。
このように、金属反射鏡の反射面が密閉された空間に位置することにより、反射面の酸化や腐食を抑制することが可能となる。
【0015】
さらに、前記複数の光学素子を支持する鏡筒を有し、前記鏡筒と前記金属反射鏡の基材とが樹脂により一体成形されていることが好ましい。
このように、鏡筒と金属反射鏡の基材とが一体成形されていることにより、部品点数を削減可能で、かつ光学ユニットの小型化が可能となる。
【0016】
また、本発明の赤外線撮像センサは、上記した光学ユニットと、前記光学ユニットにより結像される赤外波長領域の光学像を検出する赤外線検出素子とを有することを特徴とする。
このように、上記した光学ユニットを用いた赤外線撮像センサとすることにより、安価で且つ小型化が可能な赤外線撮像センサを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上記載のように本発明によれば、光学ユニットを構成する複数の光学素子のうち物体側レンズと結像側レンズとの間に位置する光学素子として材料単価が安い金属反射鏡を用いるようにしているため、安価な光学ユニットとすることができる。また、一般に金属反射鏡の反射率はレンズの透過率よりも大きいため、赤外線の利用効率を向上させることが可能である。
また、金属反射鏡で赤外線の光路を屈曲させる構成としているため、複数の光学素子を一直線上に配置する必要がなくなり、光軸方向全長を短くでき、光学ユニットの小型化が可能となる。
さらに、金属反射鏡の物体側と結像側にそれぞれ赤外線を選択的に透過するレンズを配置しているため、赤外波長領域の光以外を遮断するフィルタ等を別に設ける必要がなくなり、さらなる装置の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る光学ユニットの側面図である。
【図2】レンズと金属反射鏡のそれぞれにおける赤外線利用効率を説明する図であり、(A)はレンズの断面図で、(B)は金属反射鏡の断面図である。
【図3】金属反射鏡の反射率を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係る光学ユニットの構成例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る光学ユニットの変形例を示す図である。
【図6】本実施例の光学ユニットの具体的構成例を示す側面図である。
【図7】本実施例の光学ユニットにおける光学特性を示すグラフである。
【図8】比較例の光学ユニットの具体的構成例を示す側面図である。
【図9】比較例の光学ユニットにおける光学特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係る光学ユニットの側面図である。
本実施形態の光学ユニット1はレンズを含む複数の光学素子を有し、赤外波長領域の光を結像させるものである。光学素子の構成は、図1に示すように、物体側レンズ2と、金属反射鏡3と、結像側レンズ6とを有する。
【0021】
物体側レンズ2は、光学ユニット1の物体側に配置され、赤外線を選択的に透過する。物体側レンズ2は、一枚のレンズであってもよいし、同一光軸を有するように配置される複数枚のレンズから構成されていてもよい。物体側レンズ2の材質は、例えばゲルマニウム材、シリコン材、カルコゲナイド材等が用いられる。また、物体側レンズ2はその入射面または出射面の少なくとも一方に反射防止(AR)コートが施されていることが好ましい。
【0022】
金属反射鏡3は、物体側レンズ2を透過した赤外線の光路を屈曲させて該赤外線を結像側レンズ6に入射させる。金属反射鏡3の構成は、基材4表面に金属膜が蒸着されて反射面5が形成されている。具体的には、金属反射鏡3は、物体側レンズ2の光軸O1に垂直な面に対して反射面4が角度を有して配置されているとともに、この反射面4は結像側レンズ6の光軸O2に垂直な面に対しても角度を有して配置されている。なお、金属反射鏡3は、一枚の反射鏡であってもよいし、複数枚の反射鏡がそれぞれ角度を有して配置されていてもよい。金属反射鏡3の構成例については後述する。
【0023】
また、金属反射鏡3は、基材4の材質として例えばガラスや樹脂等が用いられ、反射面5を形成する金属膜の材質として、Ag、Cu、Al、Rh等が用いられる。さらに、反射面5の表面に保護コートが施されていることが好ましい。なお、保護コートは、主に反射面4の酸化防止作用を有する。
さらに、金属反射鏡3は、その反射面4が非球面であることが好ましい。
【0024】
結像側レンズ6は、光学ユニット1の結像側に配置され、赤外線を選択的に透過する。結像側レンズ6は、一枚のレンズであってもよいし、同一光軸を有するように配置される複数枚のレンズから構成されていてもよい。結像側レンズ6の材質は、例えばゲルマニウム材、シリコン材、カルコゲナイド材等が用いられる。また、結像側レンズ6はその入射面または出射面の少なくとも一方に反射防止(AR)コートが施されていることが好ましい。なお、物体側レンズ2および結像側レンズ6は、球面レンズ、非球面レンズのいずれであってもよい。
【0025】
上記したように本実施形態の光学ユニット1においては、物体側レンズ2と結像側レンズ6との間に位置する光学素子として材料単価が安い金属反射鏡3を用いるようにしているため、安価な光学ユニット1とすることができる。
また、金属反射鏡3で赤外線の光路を屈曲させる構成としているため、複数の光学素子を一直線上に配置する必要がなくなり、光軸方向全長を短くでき、光学ユニット1の小型化が可能となる。
さらに、金属反射鏡3の物体側と結像側にそれぞれ赤外線を選択的に透過するレンズ2、6を配置しているため、赤外波長領域の光以外を遮断するフィルタ等を別に設ける必要がなくなり、さらなる装置の小型化が可能となる。
【0026】
また、金属反射鏡3が、基材4表面に反射面5を形成する金属膜が蒸着された構成であることにより、基材4に成形加工可能な材料を用いることで、金属反射鏡3の形状自由度を高めることが可能となる。
さらに、金属反射鏡3は、レンズに比べて形状自由度を高めることが可能であるため、金属反射鏡3の反射面4を非球面に形成しやすく安価なコストで非球面反射面4を形成できる。
【0027】
さらにまた、本実施形態において、物体側レンズ2または結像側レンズ6が透過する赤外線は、遠赤外線領域の波長を有することが好ましい。
このように、遠赤外線領域の波長を透過する物体側レンズ2または結像側レンズ6を用いることで、遠赤外線領域の波長のみを導く光学ユニット1を構成でき、熱線を放出する物体の認識を行う赤外線撮像センサ等に幅広く用いることが可能となる。
【0028】
また、一般に金属反射鏡の反射率はレンズの透過率よりも大きいため、赤外線の利用効率を向上させることが可能である。
ここで、図2を用いて、レンズと金属反射鏡のそれぞれにおける赤外線利用効率を説明する。図2(A)はレンズの断面図であり、(B)は金属反射鏡の断面図である。
図2(A)に示すレンズ11は、ゲルマニウムレンズ12の両面に厚膜コート(ARコート)13、14を施している。この場合、赤外線透過率は95%となり、損失は5%である。一方、図2(B)に示す金属反射鏡15は、Ag合金17に保護コート16を施している。この場合、赤外線反射率は97%となり、損失は3%である。このように、反射率の高い金属反射鏡15を用いることで、赤外線の利用効率を向上させることが可能となる。
【0029】
なお、金属反射鏡4に用いられる材質はAg合金に限定されるものではなく、他の材質でも高反射率が得られる。
図3は、金属反射鏡の反射率を示すグラフである。このグラフに示すように、赤外波長領域、特に生体認識等に多く用いられる遠赤外波長領域(8μm以上)において、グラフ中に示した金属は全て90%以上の反射率を有しており、本実施形態の金属反射鏡4に用いることが可能である。この中でもAgの反射率は約97%程度であり、Ag合金に保護コートを施した場合においても反射率は約95%以上(不図示)を示し、本実施形態の金属反射鏡4により適した材質と言える。また、Alも上記の遠赤外波長領域で95%程度の反射率を示す。
【0030】
ここで、図4に本発明の実施形態に係る光学ユニットの構成例を示す。
図4(A)に示す光学ユニット1Aは、物体側レンズ2と、一枚の金属反射鏡3と、結像側レンズ6とを有している。なお、物体側レンズ2および結像側レンズ6は、一枚であっても複数枚であってもよい。
この光学ユニット1Aにおいては、物体側レンズ2と結像側レンズ6との間の赤外線の光路が、金属反射鏡3により一回屈曲されている。また、物体側レンズ2の光軸O1と、結像側レンズ6の光軸O2とが略直角となるように、各レンズ2、6および金属反射鏡3がそれぞれ配置されている。
本構成の光学ユニット1Aは、金属反射鏡3が一枚であるため光軸調整が容易である。
【0031】
図4(B)に示す光学ユニット1Bは、物体側レンズ2と、二枚の金属反射鏡3a、3bと、結像側レンズ6とを有している。なお、物体側レンズ2および結像側レンズ6は、一枚であっても複数枚であってもよい。
この光学ユニット1Bにおいては、物体側レンズ2と結像側レンズ6との間の赤外線の光路は、金属反射鏡3aと金属反射鏡3bとにより2回屈曲されている。また、物体側レンズの光軸O1と結像側レンズ6の光軸O2とが略平行で且つ赤外線の光路がコの字状に屈曲されるように、各レンズ2、6および金属反射鏡3a、3bがそれぞれ配置されている。
本構成の光学ユニット1Bは、赤外線の光路がコの字状となるように各レンズ2、6および金属反射鏡3a、3bが配置されているため、レンズ枚数が増加しても光軸方向全長最小長さに抑えることが可能である。
【0032】
図4(C)に示す光学ユニット1Cは、物体側レンズ2と、二枚の金属反射鏡3c、3dと、結像側レンズ6とを有している。なお、物体側レンズ2および結像側レンズ6は、一枚であっても複数枚であってもよい。
この光学ユニット1Cにおいては、物体側レンズ2と結像側レンズ6との間の赤外線の光路は、金属反射鏡3cと金属反射鏡3dとにより2回屈曲されている。また、物体側レンズの光軸O1と結像側レンズ6の光軸O2とが略平行で且つ光軸O1および光軸O2の向き(赤外線の進行向き)が同一となるように、各レンズ2、6および金属反射鏡3c、3dがそれぞれ配置されている。
本構成の光学ユニット1Cは、金属反射鏡3c、3dにより赤外線の光路が屈曲するように各レンズ2、6および金属反射鏡3c、3dが配置されているため光軸方向全長を短くでき、また物体側レンズ2と撮像側レンズ6を透過する赤外線の進行向きが同一であるためピント調整が容易である。
【0033】
本実施形態の光学ユニット1は、複数の光学素子を支持する鏡筒7を有していてもよい。なお、図1には鏡筒7の一部を示している。この鏡筒7は、物体側レンズ2と、金属反射鏡3と、結像側レンズ6とをそれぞれ所定の位置に所定の角度で支持するようになっている。
このとき、金属反射鏡3の反射面5は、鏡筒7と物体側レンズ2と結像側レンズ6とで密閉された空間に位置することが好ましい。このように、金属反射鏡3の反射面5が密閉された空間に位置することにより、反射面5の酸化や腐食を抑制することが可能となる。
【0034】
図5は、本発明の実施形態に係る光学ユニットの変形例を示す図である。
同図に示すように、この光学ユニット1’は、鏡筒と金属反射鏡の基材とが樹脂を用いて一体成形されている。筒状の鏡筒7’は、軸方向中央部が略直角方向に屈曲しており、屈曲した背側に金属反射鏡3’の基材部4’が形成されている。基材部4’には金属膜が蒸着されて反射面5’が形成されている。また、鏡筒7’の一側端部には物体側レンズ2が嵌め込まれてリテーナ18により固定され、他側端部には結像側レンズ6が嵌め込まれてリテーナ19により固定されている。なお、本構成において、鏡筒7’に用いられる材料としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂等が挙げられる。特に鏡筒7’の材質としては、表面精度が良く且つ吸湿性および熱膨張率が小さい材質が好適に用いられ、これにより鏡筒7’の基材部4’に金属膜を蒸着した際に反射面5’の状態を良好に保つことができる。
このように、鏡筒と金属反射鏡の基材とが樹脂により一体成形されていることにより、部品点数を削減可能で、かつ光学ユニット1の小型化が可能となる。
【0035】
本実施形態に係る赤外線撮像センサは、上記した構成を有する光学ユニット1と、この光学ユニット1により結像される赤外波長領域の光学像を検出する赤外線検出素子8とを有する。赤外線検出素子8には、例えば、フォトダイオード、CCDやCMOS等を内臓したイメージセンサなどを用いることができる。この赤外線撮像センサは、熱線を放出する物体の認識が可能であるため、医療産業やセキュリティ産業等においては生体認識、計測分野においては高温部の感知等に利用することができる。
このように、上記した光学ユニット1を用いた赤外線撮像センサとすることにより、安価で且つ小型化が可能な赤外線撮像センサを提供することが可能となる。
【0036】
(実施例)
ここでは、本実施例に係る光学ユニットと、比較例としてレンズのみを用いた従来の光学ユニットとにおいて光学特性を比較する実験を行った結果を示す。
図6は本実施例の光学ユニットの具体的構成例を示す側面図で、図7は本実施例の光学ユニットにおける光学特性を示すグラフである。また、図8は比較例の光学ユニットの具体的構成例を示す側面図で、図9は比較例の光学ユニットにおける光学特性を示すグラフである。
【0037】
図6において、本実施例に係る光学ユニット1は、物体側レンズ2と、金属反射鏡3と、結像側レンズ6とを有している。物体側レンズ2には物体側に凸面を向けた球面レンズを用い、結像側レンズ6には金属反射鏡3側に凸面を向けた球面レンズを用いた。いずれのレンズ2、6もゲルマニウム材が用いられている。また、金属反射鏡3は非球面反射面を有し、その材質にはAg合金を用いた。なお、図では金属反射鏡3の非球面形状は省略して記載している。このような構成を有する光学ユニット1において、空間周波数で見た光学特性を測定した結果を図7に示している。
【0038】
図8において、比較例の光学ユニット20は、ゲルマニウム材を用いた3枚のレンズ21、22、23が同一光軸を有するように直線上に配置された構成を有する。この比較例においても実施例と同様に、空間周波数で見た光学特性を測定し、その結果を図9に示している。なお、図中、符号8は赤外線検出素子である。
図7および図9を比較すると、本実施例に係る光学ユニット1と、比較例の光学ユニット20とはほぼ同性能を有することがわかる。したがって、安価な金属反射鏡3を用いても従来と同性能を有する光学ユニット1を提供可能であることが明らかである。
【符号の説明】
【0039】
1、1’、1A〜1C 光学ユニット
2 物体側レンズ
3、3’、3a〜3d 金属反射鏡
4 基材
5 反射面
6 結像側レンズ
7 鏡筒
8 赤外線検出素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを含む複数の光学素子を有し、赤外波長領域の光を結像させる光学ユニットにおいて、
物体側に配置され、赤外線を選択的に透過する物体側レンズと、
結像側に配置され、赤外線を選択的に透過する結像側レンズと、
前記物体側レンズを透過した前記赤外線の光路を屈曲させて該赤外線を前記結像側レンズに入射させる金属反射鏡とを備えることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
前記金属反射鏡は、基材表面に金属膜が蒸着された構成であることを特徴とする請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記金属反射鏡は、反射面が非球面であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記物体側レンズまたは前記結像側レンズが透過する赤外線は、遠赤外線領域の波長を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記複数の光学素子を支持する鏡筒を有し、
前記金属反射鏡の反射面は、前記鏡筒と前記物体側レンズと前記結像側レンズとで密閉された空間に位置することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記複数の光学素子を支持する鏡筒を有し、
前記鏡筒と前記金属反射鏡の基材とが樹脂により一体成形されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光学ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の光学ユニットと、
前記光学ユニットにより結像される赤外波長領域の光学像を検出する赤外線検出素子とを有することを特徴とする赤外線撮像センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−155122(P2012−155122A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13776(P2011−13776)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(390022459)京セラオプテック株式会社 (26)
【Fターム(参考)】