説明

光学レンズシート用エネルギー線硬化型樹脂組成物及びその硬化物

【課題】離型性、型再現性、基材への密着性に優れ、高屈折率でガラス転移点が高く、低粘度な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート(A)を主成分とし、一般式(1)で表される化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含む光学レンズシート用エネルギー線硬化型樹脂組成物。


(R1、R2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、a、bはそれぞれ1以上の数でありa+bが2〜4である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズシート用エネルギー線硬化型樹脂組成物及びその硬化物に関する。更に詳しくは、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等のレンズ類に特に適する樹脂組成物及び硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のレンズはプレス法、キャスト法(注型形成法)等の方法により成形されていた。前者のプレス法は、加熱、加圧、冷却サイクルで製造するため生産性が悪かった。又、後者のキャスト法は、金型にモノマーを流し込んで重合するため製作時間が長くかかるとともに、金型が多数個必要なため製造コストが上がるという問題があった。このような問題を解決するために、紫外線硬化性樹脂組成物を使用することについて種々の提案がなされている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
これら紫外線硬化型樹脂組成物を使用することによって透過型スクリーンなどに用いる光学レンズシートを製造する方法はある程度成功している。しかしながら、これら従来の樹脂組成物の硬化物は基板との密着性、型からの離型性が悪いという課題があった。密着性が悪いと、使用可能な基板の種類が限られ、意図する光学物性を得づらくなる。離型性が悪いと、離型時に型に樹脂が残り、型が使用できなくなる。又、密着性の良い硬化物を与える樹脂組成物は型への密着も良くなるため離型性が悪くなり易く、一方、離型性の良い樹脂組成物は密着性が悪くなり易いという課題もある。そのため、基板との密着性と型からの離型性の両性能を満足できる樹脂組成物を提供することが望まれている。特許文献2、及び特許文献3は密着性には言及しておらず、密着性と離型性のバランスの取れた、微細な構造を持つ光学レンズシートについての要求に対しての提案はいずれの特許文献にも記載されていない。
【0004】
これら光学レンズシート等に用いられるレンズ類用組成物は、近年の画像の高精細化等に伴い、より微細な形状に加工されたり、より薄く加工されたりするために、あるいはロール状のシートやフィルムに連続加工をするために、低粘度のものが求められる。
【0005】
さらに、レンズシートを巻き取ったときなどに微細構造が潰れにくいことも必要であり、この場合、ガラス転移温度(Tg)が高いことが求められる。
【0006】
又、硬化物としての物性も、透過型スクリーン使用時の高温環境下でも物性の変化が少ないように、なるべくガラス転移温度(Tg)の高いものが求められる傾向がある。
上記のような要求に対し、高い屈折率、高いTg点、離型性、密着性、低粘度を兼ね備えることは難しく、すべてを満足できるものは得られていないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−167301号公報
【特許文献2】特開昭63−199302号公報
【特許文献3】特許第3209554号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ、シートレンズ等のレンズ類を製造するに適した低粘度の樹脂組成物や、離型性、型再現性、密着性に優れ、高屈折率であるその硬化物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究の結果、特定の組成を有する紫外線硬化性樹脂組成物及びその硬化物が前記課題を解決することを見い出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は
(1)o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート(A)、一般式(1)で表される化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含む光学レンズシート用エネルギー線硬化型樹脂組成物、
【0011】
【化1】

【0012】
(R1、R2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、a、bはそれぞれ1以上の正数でありa+bが2〜4である。)
(2)更に、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート(A)および一般式(1)で表される化合物(B)以外の(メタ)アクリレート化合物(D)を含むことを特徴とする前記(1)に記載の樹脂組成物、
(3)樹脂組成物中の(メタ)アクリレート(A)、(B)、(D)の合計量を100重量部としたときに、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート(A)と、一般式(1)で表される化合物(B)との合計の含有量がそのうちの70〜100重量部であり、さらに樹脂組成物中の(メタ)アクリレート(A)と(B)との合計量を100重量部としたときにo−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート(A)の含有量がそのうちの60重量部から95重量部である前記(1)又は(2)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
(4)樹脂組成物中の(メタ)アクリレート(A)、(B)、(D)の合計量を100重量部としたときに、(A):(B):(D)=42〜95:5〜38:30〜0である前記(1)又は(2)に記載の樹脂組成物、
(5)E型粘度計で測定した25℃での粘度が1500mPa・s以下である前記(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
(6)前記(1)ないし(5)のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化して得られる25℃での屈折率が1.58以上である硬化物、
(7)前記(6)に記載の硬化物を用いる光学シートレンズ、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、低粘度で、その硬化物は離型性、型再現性、基板との密着性に優れ、高屈折率である。そのため特にフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等の光学レンズシートに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の樹脂組成物は、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート(A)、一般式(1)で表される化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含む。
【0015】
本発明に使用する、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート(A)について説明する。o−フェニルフェノールポリエトキシアクリレート(A)としては、エトキシ構造部分の繰り返し数が平均で1〜3の正数である化合物が好ましく、o−フェニルフェノールとエチレンオキサイドとの反応物と(メタ)アクリル酸を反応させることにより得ることができる。o−フェニルフェノールとエチレンオキサイドとの反応物は公知の方法により得ることができ、次いで、p−トルエンスルホン酸又は硫酸等のエステル化触媒、ハイドロキノン、フェノチアジン等の重合禁止剤の存在下に、好ましくは溶剤類(例えば、トルエン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等)の存在下に、好ましくは70〜150℃の温度で(メタ)アクリル酸と反応させることによりo−フェニルフェノールポリエトキシアクリレート(A)が得られる。(メタ)アクリル酸の使用割合は、p−フェニルフェノールとエチレンオキサイドとの反応物1モルに対して1〜5モル、好ましくは1.05〜2モルである。エステル化触媒は使用する(メタ)アクリル酸に対して0.1〜15モル%、好ましくは1〜6モル%である。
【0016】
本発明の樹脂組成物に使用する、一般式(1)で表される化合物(B)について以下説明する。
【0017】
【化2】

【0018】
(R1、R2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。a、bはそれぞれ1以上の正数でありa+bが2〜4である。)
は、一般式(2)
【0019】
【化3】

【0020】
(R1、a、bは一般式(1)と同一である。)
で表される化合物と(メタ)アクリル酸を溶剤(例えばトルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等)中で脱水反応を行うことにより得ることができる。反応を促進させるために酸触媒(例えば硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等)を使用するのが好ましい。反応中、重合を防止するために重合禁止剤(例えばハイドロキノン、p−メトキシフェノール、メチルハイドロキノン等)を使用するのが好ましい。
【0021】
一般式(2)で表される化合物と(メタ)アクリル酸の使用割合は、一般式(2)で表される化合物の水酸基1当量に対して(メタ)アクリル酸1〜2当量を使用するのが好ましい。反応温度は70〜150℃が好ましく、反応時間は3〜20時間が好ましい。
【0022】
一般式(2)で表される化合物は9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとアルキレン(例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)を反応することにより得ることができる。
【0023】
更に、先に挙げたo−フェニルフェノールポリエトキシアクリレート(A)、一般式(1)で表される化合物(B)の他に、得られる本発明の樹脂組成物の粘度、密着性や、ガラス転移温度(Tg)、硬化物の硬度等を考慮して、成分(A)、成分(B)以外の(メタ)アクリレート化合物(D)を単独あるいは二種類以上を混合して使用してもよい。該(メタ)アクリレート化合物(D)としては、(メタ)アクリレートモノマーや(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、単官能(メタ)アクリレートモノマー、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマー等を挙げることができる。
【0025】
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0026】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0027】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620等)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0028】
(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0029】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジオール化合物(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ビスフェノールAポリプロポキシジオール等)又はこれらジオール化合物と二塩基酸若しくはその無水物(例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸若しくはこれらの無水物)との反応物であるポリエステルジオールと、有機ポリイソシアネート(例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の鎖状飽和炭化水素イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等の環状飽和炭化水素イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート)を反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを付加した反応物等が挙げられる。
【0030】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸との反応物等を挙げることができる。
【0031】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、上記のジオール化合物と上記の二塩基酸又はその無水物との反応物であるポリエステルジオールと、(メタ)アクリル酸の反応物等が挙げられる。
【0032】
中でも本発明の樹脂組成物に使用することのできる(メタ)アクリレート化合物(D)としては、粘度が低く、硬化物の密着性の良好な単官能あるいは2官能(メタ)アクリレートモノマーが適している。中でも、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能あるいは2官能(メタ)アクリレートモノマーが適している。
【0033】
本発明の樹脂組成物に含有される光重合開始剤(C)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等を挙げることができる。好ましくは、アセトフェノン類であり、さらに好ましくは2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを挙げることができる。なお、本発明の樹脂組成物においては、光重合開始剤(C)は単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0034】
本発明の樹脂組成物の各成分の使用割合は、所望の屈折率やガラス転移温度や粘度や密着性等を考慮して決められるが、成分(A)+成分(B)+成分(D)を100重量部とした場合に、成分(A)+成分(B)の含有量は70〜100重量部であり、特に好ましくは75〜100重量部であり、したがって成分(D)の含有量は30重量部未満であり、特に好ましくは25部未満である。また、成分(A)+成分(B)の合計量を100重量部としたときに成分(A)の含有量はそのうちの60〜98重量部であり、特に好ましくは70〜95重量部である。成分(C)は成分(A)+成分(B)+成分(D)の総量100重量部に対して、0.1〜10重量部使用することが好ましく、特に好ましくは0.3〜5重量部である。
【0035】
本発明の樹脂組成物の各成分の使用割合は、所望の屈折率やガラス転移温度や粘度や密着性等を考慮して決められるが、成分(A)+成分(B)+成分(D)を100重量部とした場合には、(A):(B):(D)=42〜98:2〜38:30〜0であり、好ましくは(A):(B):(D)=42〜95:5〜38:30〜0である。
【0036】
成分(B)は固体であるため、前記使用量又は使用割合にとどめることで光学レンズシート類を製造するに適した粘度の本発明の樹脂組成物を得ることができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物には、前記成分以外に取り扱い時の利便性等を改善するために、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤等を状況に応じて併用して含有することができる。更に、必要に応じて、アクリルポリマー、ポリエステルエラストマー、ウレタンポリマー及びニトリルゴム等のポリマー類も添加することができる。溶剤を加えることもできるが、溶剤を添加しないものが好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、各成分を常法に従い混合溶解することにより調製することができる。例えば、撹拌装置、温度計のついた丸底フラスコに各成分を仕込み、40〜80℃にて0.5〜6時間撹拌することにより得ることができる。
【0039】
本発明の樹脂組成物の粘度は、光学レンズシート類を製造するに適した粘度として、E型粘度計(TV−200:東機産業社製)を用いて測定した粘度が25℃で1500mPa・s以下である組成物が好ましい。
【0040】
常法に従い、本発明の樹脂組成物に紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化して得ることができる硬化物も本発明に含まれる。該硬化物は本発明の樹脂組成物を、例えば、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ等の形状を有するスタンパー上に塗布して該樹脂組成物の層を設け、その層の上に硬質透明基板であるバックシート(例えば、ポリメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、又はこれらポリマーのブレンド品等からなる基板あるいはフィルム)を接着させ、次いで該硬質透明基板側から高圧水銀灯等により紫外線を照射して該樹脂組成物を硬化させた後、該スタンパーから硬化物を剥離して得ることができる。又、これらの応用として連続式での加工により行うこともできる。
【0041】
この様にして屈折率(25℃)が1.58以上で離型性、型再現性、密着性、耐光性に優れたフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等の光学レンズ部分を形成した光学レンズシートを得ることができ、これらも本発明に含まれる。なお、屈折率はアッベ屈折率計(DR−M2:(株)アタゴ製)等で測定することができる。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、光学レンズシート用として有用である。光学レンズシートとしては、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等のが挙げられる。光学レンズシート用以外の用途としては、各種コーティング剤、接着剤等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0044】
合成例1.化合物(B)の合成
乾燥容器中に一般式(2)においてR1=水素原子、a=1、b=1である化合物400部、トルエン500部、アクリル酸158部、p−トルエンスルホン酸50部、ハイドロキノン5部を仕込み、加熱し、脱水反応を行い、留出水が33部になるまで反応を行った。反応温度は110〜112℃であった。次いで反応液を冷却し、トルエン1500部および20%苛性ソーダ水溶液200部を仕込み、中和し、次いで20%塩化ナトリウム水溶液500部を用いて洗浄し、トルエンを除去し、透明淡黄色の固体を得た。屈折率は1.62であった。
【0045】
以下の実施例に示すような組成(数値は重量部を示す)にて本発明の紫外線硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。又、樹脂組成物及び硬化膜についての評価方法及び評価基準は以下の通り行った。
【0046】
(1)粘度:E型粘度計(TV−200:東機産業(株)製)を用い、25℃にて測定した。
(2)離型性:硬化した樹脂を金型より離型させるときの難易度を表す。
○・・・・金型からの離型が良好である
△・・・・離型がやや困難あるいは離型時に剥離音がある
×・・・・離型が困難あるいは型残りがある
(3)型再現性:硬化した紫外線硬化性樹脂層の表面形状と金型の表面形状を観察した。
○・・・・再現性良好である
×・・・・再現性が不良である
【0047】
(4)密着性:基材上に樹脂組成物を膜厚約50μm程度に塗布し、次いで高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で1000mJ/cm2の照射を行い硬化させたテストピースを作製し、JIS K5600−5−6に準じて密着性評価を行った。
評価結果は0〜2を○とし、3〜5を×とした。
【0048】
(5)屈折率(25℃):硬化した紫外線硬化性樹脂層の屈折率(25℃)をアッベ屈折率計(DR−M2:(株)アタゴ製)で測定した。
(6)ガラス転移温度(Tg):硬化した紫外線硬化性樹脂層のTg点を粘弾性測定システム(DMS−6000:セイコー電子工業(株)製)において、引っ張りモード、周波数1Hzにて測定した。
【0049】
実施例1
成分(A)としてo−フェニルフェノールモノエトキシアクリレート85部、成分(B)として合成例1で得た化合物5部、成分(C)として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン3部、成分(D)としてアクリロイルモルホリン10部を60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は120mPa・sであった。又、この樹脂組成物を硬化させた膜の屈折率(25℃)は1.604であり、ガラス転移温度(Tg)は50℃だった。
この樹脂組成物をプリズムレンズ金型の上に膜厚が50μmになるように塗布し、その上に基材としてポリカーボネートフィルム500μm厚を接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cm2の照射量の紫外線を照射して硬化させた後剥離して、プリズムレンズシートを得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○であった。
【0050】
実施例2
成分(A)としてo−フェニルフェノールモノエトキシアクリレート75部、成分(B)として合成例1で得られた化合物25部、成分(C)として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン3部を60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は710mPa・sであった。又、この樹脂組成物を硬化させた膜の屈折率(25℃)は1.616であり、ガラス転移温度(Tg)は59℃だった。
この樹脂組成物をプリズムレンズ金型の上に膜厚が50μmになるように塗布し、その上に基材としてポリカーボネートフィルム500μm厚を接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cm2の照射量の紫外線を照射して硬化させた後剥離して、プリズムレンズシートを得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○であった。
【0051】
実施例3
実施例1で得られた樹脂組成物をフレネルレンズ金型の上に膜厚が200μmになるように塗布し、その上に基材としてポリカーボネート基材1mmを接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cm2の照射量の紫外線を照射して硬化させた後剥離して、フレネルレンズを得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○であった。
【0052】
比較例1
特許文献1(特開昭63−167301)の実施例1に従い、アロニックスM−315(トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート)を70部、テトラヒドロフルフリルアクリレート30部、光重合開始剤として1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン3部を60℃に加温、混合し、比較用の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は134mPa・sであった。又、この樹脂組成物を硬化させた膜の屈折率(25℃)は1.52であった。
この結果から比較例1の組成物は本発明の組成物に比べて屈折率が低く、本発明のレンズ類の製造に不向きである。
【0053】
比較例2
特許文献3(特許第3209554号)の実施例に従い、該文献の合成例1のウレタンアクリレート(ネオペンチルグリコールとアジピン酸のポリエステルジオール、エチレングリコール、トリレンジイソシアネート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートの反応物)及び該文献合成例3の化合物(o−フェニルフェノールジエトキシアクリレート)を合成し、上記のウレタンアクリレートを30部、上記のo−フェニルフェノールジエトキシアクリレートを15部、KAYARAD R−551(ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート)を45部、トリブロモフェニルアクリレートを10部、イルガキュアー184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)3部を60℃に加温、混合し、比較用の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は4420mPa・sであった。又、この樹脂組成物を硬化させた膜の屈折率(25℃)は1.574であった。
この結果から比較例2の組成物は本発明の組成物に比べて粘度が高く、微細な加工やロール状のシートやフィルムの連続加工に不向きである。
【0054】
実施例1、2、3、比較例1、2の評価結果から明らかなように、特定の組成を有する本発明の樹脂組成物は低粘度で、離型性、型再現性、基材への密着性に優れ、その硬化物は高屈折率でガラス転移温度(Tg)が50℃以上である。そのため微細構造を有する光学レンズシート、例えば、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等に適している。特に微細な加工が必要な用途や連続加工が必要な工程を含む製造に適している。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物及びその硬化物は、主に、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等の光学レンズシート用に特に適するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート(A)、一般式(1)で表される化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含む光学レンズシート用エネルギー線硬化型樹脂組成物。

(R1、R2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、a、bはそれぞれ1以上の正数でありa+bが2〜4である。)
【請求項2】
更に、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート(A)および一般式(1)で表される化合物(B)以外の(メタ)アクリレート化合物(D)を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂組成物中の(メタ)アクリレート(A)、(B)、(D)の合計量を100重量部としたときに、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート(A)と一般式(1)で表される化合物(B)との合計の含有量がそのうちの70〜100重量部であり、さらに樹脂組成物中の(メタ)アクリレート(A)と(B)との合計量を100重量部としたときにo−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート(A)の含有量がそのうちの60重量部から95重量部である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物中の(メタ)アクリレート(A)、(B)、(D)の合計量を100重量部としたときに、(A):(B):(D)=42〜95:5〜38:30〜0である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
E型粘度計で測定した25℃での粘度が1500mPa・s以下である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化して得られる25℃での屈折率が1.58以上である硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化物を用いる光学シートレンズ。

【公開番号】特開2010−106046(P2010−106046A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48870(P2007−48870)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】