説明

光学レンズ素子、詳細には車両ヘッドライト用のヘッドライト・レンズの製造方法

本発明は、詳細には照明目的の光学レンズ素子(2)の製造、特に車両ヘッドライト用、詳細には自動車ヘッドライト(1)用のヘッドライト・レンズ(2)の製造方法に関し、透明材料から作られたブランク(136)が、射出成形法により射出成形ツール(131、132)内で成形され、ブランク(136)は、引き続き、特に研磨された方式で、最終形状金型(140、141、142)を用いてレンズ素子(2)に処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、詳細には照明目的の光学レンズ素子の製造、特に車両ヘッドライト用、詳細には自動車ヘッドライト用のヘッドライト・レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ特許DE699 23 847T2では、熱可塑性樹脂からなる光学成形体を射出圧縮成形によって製造する方法が開示されており、ここでは、目的とする光学成形体の容積よりも成形キャビティの容積を大きく広げ、射出成形通路を通じて溶融熱可塑性樹脂を成形キャビティ内に射出させるようにする。続いて、拡大した成形キャビティにおいて、材料を成形体の内側域の所定の厚み、又は所定の厚みよりも200μm小さい厚みまで圧縮させる。膨張キャビティの材料が圧縮された後、射出成形通路における樹脂圧と成形キャビティにおける成形圧とを、最終成形体の所定の厚みが得られるように、成形体の内側域の所定の厚みよりも変動幅が±100μmを越えない範囲内で変動させる。次に、成形キャビティ内で目的とする成形体が形成されるまで、溶融熱可塑性樹脂を十分な時間保持する。その後、結果として得られた成形体を成形キャビティから取り出す。
【0003】
ドイツ特許DE699 23 847T2によれば、米国特許第4,540,534号、欧州特許第0 640 460号、及び日本特許09−057794号に記載された、熱可塑性樹脂からなる光学成形体を射出圧縮成形により製造する方法は区別されるべきであり、当該ドイツ特許は、
−目的とする光学成形体の容積よりも成形キャビティの容積を拡
大させ、
−成形キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を射出成形シリンダーを通じて射出させ、
−拡大されたキャビティを成形体の所定の厚みまで圧縮させ、
−射出ステップによって生じた熱可塑性樹脂の余剰分を射出成形シリンダーに戻し、
−目的とする成形体が形成されるまで成形キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を放置し、
−得られた成形体を成形キャビティから取り出す、
ことを含む。
【0004】
ドイツ特許DE102 20 671A1では、高アッベ数のプラスチック材料製集光レンズと、集光レンズのプラスチック材料に対して比較的低いアッベ数のプラスチック材料と嵌め合いで且つ一体的に接続された分散レンズとからなり、プラスチック材料の熱膨張係数が本質的に同じであるプラスチック・レンズを開示している。
【0005】
ヘッドライト・レンズは、例えば、国際特許WO02/31543A1、米国特許第6,992,804B2号、国際特許WO03/074251号、及びドイツ特許198 29 586A1から公知である。更に、車両用ヘッドライトは、例えば、ドイツ特許100 33 766A1、欧州特許EP0 272 646A1、ドイツ特許101 18 687A1、及びドイツ特許198 29 586A1から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ特許DE699 23 847T2公報
【特許文献2】米国特許第4,540,534号公報
【特許文献3】欧州特許第0 640 460号公報
【特許文献4】日本特許公開09−057794号公報
【特許文献5】ドイツ特許DE102 20 671A1公報
【特許文献6】国際特許WO02/31543A1公報
【特許文献7】米国特許第6,992,804B2号公報
【特許文献8】国際特許WO03/074251号公報
【特許文献9】ドイツ特許100 52 653A1公報
【特許文献10】ドイツ特許100 33 766A1公報
【特許文献11】欧州特許EP0 272 646A1公報
【特許文献12】ドイツ特許101 18 687A1公報
【特許文献13】ドイツ特許198 29 586A1公報
【特許文献14】国際特許出願PCT/EP2006/007820公報
【特許文献15】ドイツ特許DE10 2005 009 556公報
【特許文献16】ドイツ特許DE102 26 471B1公報
【特許文献17】ドイツ特許DE299 14 114U1公報
【特許文献18】ドイツ特許証1009964公報
【特許文献19】ドイツ特許DE36 02 262C2公報
【特許文献20】ドイツ特許DE40 31 352A1公報
【特許文献21】米国特許第6,130,777号公報
【特許文献22】米国特許公開2001/0033726A1公報
【特許文献23】日本特許10−123307A公報
【特許文献24】日本特許09−159810A公報
【特許文献25】日本特許01−147403A公報
【特許文献26】旧ソビエト連邦特許SU1838163A3
【特許文献27】旧ソビエト連邦SU1818307A1
【特許文献28】米国特許第6,992,804B2公報
【特許文献29】国際特許WO/03/087893A1公報
【特許文献30】ドイツ特許DE 203 20 546U1公報
【特許文献31】欧州特許EP 1 495 347A1公報
【特許文献32】ドイツ特許DE 102 16 706A1公報
【特許文献33】欧州特許EP 1645545公報
【特許文献34】ドイツ特許DE 10 2004 048 500A1公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】文献「Euドープガラスにおけるレーザ誘起格子の光学的応用(Optical applications of laser−induced gratings in Eu−doped glasses)」、Edward G. Behrens, Richard C. Powell, Douglas H. Blackburnの1990年4月10日、Vol.29、No.11、APPLIED OPTICS
【非特許文献2】文献「Euドープガラスのレーザ誘起格子と振動特性との間の関連性(Relationship between laser−induced gratings and vibrational properties of Eu−doped glasses)」、Frederic M. Durville, Edward G. Behrens, Richard C. Powell, 35, 4109, 1987年,The American Physical Society
【非特許文献3】文献「Euドープガラスにおけるレーザ誘起屈折率格子(LASER−INDUCED REFRACTIVE−INDEX GRATINGS IN EU−DOPED GLASSES)」、FREDERIC M. DURVILLE, EDWARD G. BEHRENS, RICHARD C. POWELL, 34, 4213, 1986年, THE AMERICAN PHYSICAL SOCIETY
【非特許文献4】文献「Nd:YAGレーザを用いたガラスの内部処理(Interior Treatment of Glass by Means of Nd: YAG−Laser)(Innenbearbeitung von Glas mit Nd: YAG−Laser)」、Klaus Dickmann, Elena Dik, Laser Magazin
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、詳細には照明目的の光学レンズ素子の製造、特に車両ヘッドライト用ヘッドライト・レンズの製造のコストを低減することである。この関連において、高品質高付加価値のレンズ素子、詳細にはヘッドライト・レンズを製造することが特に望ましい。本発明の別の目的は、具体的には高品質高付加価値のレンズ素子、詳細にはヘッドライトンレズを製造することである。本発明の別の目的は、自動車用ヘッドライト用ヘッドライト・レンズの重量並びに自動車用ヘッドライトの重量を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、詳細には照明目的の光学レンズ素子の製造、特に車両ヘッドライト用、詳細には自動車ヘッドライト用のヘッドライト・レンズの製造方法によって達成され、ここでは、ブランクが、射出圧縮金型において特に射出圧縮法を用いて、透明な、詳細には熱可塑性の、詳細には本質的に液体プラスチックから成形され、次にブランクは、最終形状/輪郭の金型により圧縮されて、レンズ素子を形成、詳細には圧縮生成される。ここで、ブランクは、特に、レンズ素子として本質的に同じ質量を有するように成形される。
【0010】
本発明の意味におけるレンズ素子は、特にヘッドライト・レンズである。本発明の意味におけるレンズ素子は、特に、道路上で明暗境界部を結像するためのヘッドライト・レンズである。本発明の意味におけるレンズ素子は、詳細には単一のレンズであるが、PCT/EP2006/007820の意味における光学的構造にも適切とすることができる。本発明の意味におけるレンズ素子はまた、PCT/EP2006/007820の意味における透明な成形要素とすることができる。
【0011】
本発明の有利な実施形態において、ブランクは、冷却されて再度加熱することができ、或いは、射出圧縮金型から取り出した後に冷却し、再度加熱することができる。ここで、ブランクの温度勾配が好都合に反転される。結果として、ブランクのコアは、射出圧縮金型から取り出されたときには、ブランクの外側領域よりも高温にすることができる。しかしながら、加熱後、ブランクの外側領域は、有利には、ブランクのコアよりも高温にすることができる。本発明の更なる好都合な実施形態によれば、プリフォームの勾配は、プリフォームのコアの温度が室温を明らかに上回る状態になるように設定することができる。本発明の更に有利な実施形態では、プリフォームの温度勾配は、プリフォームのコアの温度が室温を少なくとも100℃上回る状態になるように設定することができる。
【0012】
本発明の更に有利な実施形態によれば、ブランクは、一体成形の注入口で射出圧縮法を用いて製造することができる。本発明の更に別の有利な実施形態では、ブランクは、冷却及び/又は加熱時には注入口に懸下されて保持することができる。本発明の別の好適な実施形態では、ブランクは、冷却及び/又は加熱中に接触しないようにすることができる。本発明の更に別の好適な実施形態では、ブランクは、冷却及び/又は加熱時に、光学的に動作可能な面として設けられた表面上に接触しないようにすることができる。本発明の更に別の好適な実施形態では、ブランクは、圧縮中以外は、光学的に動作可能な面として設けられた表面上に接触していない。本発明の別の有利な実施形態では、ブランクは、圧縮前には、光学的に動作可能な面として設けられた表面上に接触していない。本発明の更に別の有利な実施形態では、ブランクは、射出圧縮と圧縮との間は、光学的に動作可能な面として設けられた表面上に接触していない。
【0013】
本発明の更に有利な実施形態では、最終形状/輪郭の金型を用いて、光分散表面構造を光学的に動作可能なレンズ素子表面にエンボス加工することができる。適切な光分散表面構造は、例えば、変調及び/又は(表面)粗度が少なくとも0.05μm、詳細には少なくとも0.08μmとすることができ、或いは、必要に応じて、(表面)粗度が少なくとも0.05μm、詳細には少なくとも0.08μmを有する変調として設計することができる。本発明の意味における粗度は、特にRa、詳細にはISO4287に従って定義されるものとする。本発明の更に有利な実施形態では、光分散表面構造は、ゴルフボールの表面を模擬した構造を含むことができ、或いは、ゴルフボール表面を模倣した構造として設計することができる。光を分散する適切な表面構造は、例えば、ドイツ特許DE102005 009 556、DE102 26 471B1、及びDE299 14 114U1で開示されている。光を分散する適切な表面構造の別の実施形態は、ドイツ特許証1009964、ドイツ特許DE36 02 262C2、DE40 31 352A1、米国特許第6,130,777号、米国特許公開2001/0033726A1、日本特許10123307A、日本特許09159810A、及び日本特許01147403Aで開示されている。
【0014】
上述の目的は(更に)、車両ヘッドライトのシールドの縁部を、定められた勾配を有する明暗境界部として結像するための車両ヘッドライト用、詳細には自動車用ヘッドライト用の、特に請求項の何れかによる方法に従って、詳細には10、有利には100の連続して生成されるヘッドライト・レンズのバッチによって解決され、ここでは、各はヘッドライト・レンズは、本質的に透明なプラスチックから作られ、バッチのヘッドライト・レンズの勾配の標準偏差が0.005未満であり、バッチ又は該バッチのヘッドライト・レンズが組み込まれたヘッドライトのヘッドライト・レンズのグレア(値)の標準偏差が、0.05lux以下であり、バッチのヘッドライト・レンズの値75R又はバッチのヘッドライト・レンズが組み込まれたヘッドライト・レンズの標準偏差は、0.5lux以下である。
【0015】
更なる利点及び詳細事項は、例示的な実施形態の以下の説明から得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】自動車の例示的な実施形態を示す図である。
【図2】例示的な車両ヘッドライトの概略図である。
【図3】図2によるヘッドライトの例示的な照明又は光分布を示す図である。
【図4】図2による車両ヘッドライト用ヘッドライト・レンズの例示的な実施形態の断面図である。
【図5】図4による断面の切り出し図を示す。
【図6】図2によるヘッドライト・レンズの光学的に動作可能な表面の変調の例示的な実施形態を示す図である。
【図7】ヘッドライト・レンズの代替の例示的な実施形態を示す図である。
【図8】ヘッドライト・レンズの別の代替の例示的な実施形態を示す図である。
【図9】ヘッドライト・レンズの別の代替の例示的な実施形態を示す図である。
【図10】ヘッドライト・レンズの別の代替の例示的な実施形態を示す図である。
【図11】図4によるヘッドライト・レンズを製造するための方法の例示的な実施形態を示す図である。
【図12】原理的な表現を用いた射出圧縮金型の例示的な実施形態を示す図である。
【図13】原理的な表現を用いた最終形状に対する金型の例示的な実施形態を示す図である。
【図14】輸送コンテナの例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、光を生成するための光源10と、光源10を用いて生成された光を反射させるリフレクタ12と、シールド14とを含む、図2に概略的に描かれた車両ヘッドライト1を有する車両100を示す。車両ヘッドライト1は更に、光源10を用いて生成される光のビーム方向を変えるように、及び詳細にはシールド14の図2の参照符号15で示される縁部を、例示として図3中の曲線図部分20及び写真部分21で表されるような明暗境界部25として結像するように、両側がブランク成形された(ブライトプレスされた)一体型ヘッドライト・レンズ2を備えている。ここで、明暗境界部25の勾配(グラジエント)G及びヘッドライト・レンズ2が設置されている車両ヘッドライト1のグレア(値)HVは、重要な測光ガイド値である。
【0018】
ヘッドライト・レンズ2は、透明な材料(特にガラス)から作られたレンズ本体3を備え、該本体は、光源10に面した本質的に平坦且つ光学的に有効/動作可能な表面5と、光源10から転回され又は離れて面する凸面の光学的に有効/動作可能な表面4とを含む。任意選択的に、ヘッドライト・レンズ2は更に縁部又はリム6を含み、これを用いてヘッドライト・レンズ2を車両ヘッドライト1内に取り付けることができる。
【0019】
図4は、図2による車両ヘッドライト1用のヘッドライト・レンズ2の例示的な実施形態を通る断面を示している。図5は、図4において切り出し部が破線線で示された、ヘッドライト・レンズ2の切り出し部を示している。本質的に平坦で且つ光学的に動作可能な表面5は、カスケード又は段部60として形成されるよう突出し、ヘッドライト・レンズ2の光学軸30の方向にレンズ縁部6を超えて又は光源10に面するレンズ縁部6の表面61を超えて延びており、ここで段部60の高さhは1mm未満、有利には0.5mm未満である。段部60の高さの有効値は好都合には0.2mmである。
【0020】
レンズ縁部6の厚みrは、少なくとも2mmであり、5mm未満である。ヘッドライト・レンズ2の直径DLは、少なくとも40mmであり、100mm未満である。本質的に平坦且つ光学的に動作可能な表面5の直径DBは、凸面の光学的に動作可能な表面4の直径DAと等しい。好適な実施形態において、本質的に平坦且つ光学的に動作可能な表面5の直径DBは、凸面の光学的に動作可能な表面4の直径DAの110%未満である。更に、本質的に平坦且つ光学的に動作可能な表面5の直径DBは、有利には、凸面の光学的に動作可能な表面4の直径DAの少なくとも90%である。ヘッドライト・レンズ2の直径DLは、有利には、本質的に平坦且つ光学的に動作可能な表面5の直径DB又は凸面の光学的に動作可能な表面4の直径DAよりも約5mm大きい。
【0021】
透明な本体3の内部において、ヘッドライト・レンズ2は、光分散構造35を有する。光分散構造35は、有利には、レーザを用いて生成される構造である。ここで、光分散構造は、有利には、光学軸30に直角な平面に対して整列された幾つかの点状欠陥を含む。A分散構造35は、リング状であるように設計され、又は環状領域を含み、或いは、点状欠陥がリング状に配列されるように定めることができる。点状欠陥は、特に選択された構造範囲内で不規則に分布されるように定めることができる。
【0022】
例えば、透明な本体3の内部に光分散構造35を生成する適切な方法は、旧ソビエト連邦特許SU1838163A3及びSU1818307A1、文献「Euドープガラスにおけるレーザ誘起格子の光学的応用(Optical applications of laser−induced gratings in Eu−doped glasses)」、Edward G. Behrens, Richard C. Powell, Douglas H. Blackburnの1990年4月10日、Vol.29、No.11、APPLIED OPTICS、文献「Euドープガラスのレーザ誘起格子と振動特性との間の関連性(Relationship between laser−induced gratings and vibrational properties of Eu−doped glasses)」、Frederic M. Durville, Edward G. Behrens, Richard C. Powell, 35, 4109, 1987年,The American Physical Society、文献「Euドープガラスにおけるレーザ誘起屈折率格子(LASER−INDUCED REFRACTIVE−INDEX GRATINGS IN EU−DOPED GLASSES)」、FREDERIC M. DURVILLE, EDWARD G. BEHRENS, RICHARD C. POWELL, 34, 4213, 1986年, THE AMERICAN PHYSICAL SOCIETY、文献「Nd:YAGレーザを用いたガラスの内部処理(Interior Treatment of Glass by Means of Nd: YAG−Laser)(Innenbearbeitung von Glas mit Nd: YAG−Laser)」、Klaus Dickmann, Elena Dik, Laser Magazin、並びに米国特許第6,992,804B2に記載された最新技術から得られる。
【0023】
ヘッドライト・レンズ2の代替の実施形態では、例えば、国際特許WO/03/087893A1, ドイツ特許DE 203 20 546U1,EP 1 495 347A1, ドイツ特許DE 102 16 706A1, EP 1645545, and ドイツ特許DE 10 2004 048 500 A1にて開示されたように、(縁部6の代わりに)レンズは、突出縁部(後方又は光源に面する側部の方向に突出する)を含むように定めることができる。
【0024】
図6は、ヘッドライト・レンズ2の光学的に動作可能な表面4の変調の例示的な実施形態を示す。ここで、RADは、光学的に動作可能な表面4を通る光学軸30の貫通点から光学的に動作可能な表面4に沿った半径方向距離を表している。参照記号zは変調を表している。ここで、変調zの振幅は減衰包絡線を辿る。
【0025】
図7は、ヘッドライト・レンズ2の代わりに使用するヘッドライト・レンズ2Aの例示的な実施形態を示す。ここでは、0.5mmから10mmの直径d及び少なくとも0.05μm、詳細には少なくとも0.8μmの(表面)粗度を有する、複数の本質的に円形の区域72が、光源10から離れて面する光学的に動作可能な表面4上に配列される。本発明の例示的な実施形態では、本質的に円形の区域72は、0.6μmの粗度を有する。参照数字71は、光源10から離れて面する光学的に動作可能な表面4の一部を表し、この部分は、本質的に円形の区域72の対象範囲ではない。この部分の表面はブランク/ブライトであり、すなわち、ほぼ0.04μmよりも小さい粗度を有する。しかしながら、この部分は、ブランク/ブライトではなく、本質的に円形の区域72とは異なる粗度を有すると定めることができる。本質的に円形の区域72は、光源10から離れて面する光学的に動作可能な表面4の5%から50%をカバーする。
【0026】
図8は、ヘッドライト・レンズ2の代わりに使用するヘッドライト・レンズ2Bの別の代替の例示的な実施形態を示す。ここでは、少なくとも0.05μm、詳細には少なくとも0.8μmの(表面)粗度を有する本質的に円形の表面82が、光源10から離れて面する光学的に動作可能な表面4上に配列される。本発明の例示的な実施形態では、本質的に円形の表面82は、0.2μmの粗度を有する。参照数字81は、光源10から離れて面する光学的に動作可能な表面4の一部を表し、この部分は、本質的に円形の表面82の対象範囲ではない。この部分の表面はブランクであり、すなわち、ほぼ0.04μmよりも小さい粗度を有する。しかしながら、この部分は、ブランクではなく、本質的に円形の表面82とは異なる粗度を有すると定めることができる。本質的に円形の表面82は、光源10から離れて面する光学的に動作可能な表面4の少なくとも5%をカバーする。
【0027】
図9は、ヘッドライト・レンズ2の代わりに使用するヘッドライト・レンズ2Cの別の代替の例示的な実施形態を示す。ここでは、互いの内部に配列された1mmから4mmのリング幅bRを有し、且つ少なくとも0.05μm、詳細には少なくとも0.8μmの(表面)粗度を有する、複数の本質的にリング状の区域92、93、94、95、96が、光源10に面した本質的に平坦な表面5上に配列される。本発明の例示的な実施形態では、本質的にリング状の区域92、93、94、95、96は、0.1μmの粗度を有する。参照数字91は、本質的にリング状の区域92、93、94、95、96の対象範囲ではない、光源10に面した本質的に平坦な表面5の一部を表している。この部分の表面はブランクであり、すなわち、ほぼ0.04μmよりも小さい粗度を有する。しかしながら、この部分は、ブランクではなく、本質的に円形の区域22とは異なる粗度を有すると定めることができる。本質的にリング状の区域92、93、94、95、96は、光源10に面する本質的に平坦な表面5の少なくとも20%から70%をカバーする。
【0028】
図10は、ヘッドライト・レンズ2の代わりに使用するヘッドライト・レンズ2Dの別の代替の例示的な実施形態を示す。ここでは、光源10から離れて面する光学的に動作可能な表面4は、ゴルフボールの表面を模擬した表面構造101を有する。同様の表面構造はまた、図6に示した変調zによって生成することができ、直角方向に延びる変調によって(すなわち、光学軸30の回りの(同心の)円上に)重畳されている。
【0029】
図11は、ヘッドライト・レンズ2、或いはヘッドライト・レンズ2A、2B、2C、又は2Dの1つを製造する方法を示す。ここでは、ステップ111において、透明な熱可塑性材料が生成又は液化される。透明な熱可塑性のプラスチック材料は、詳細には、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸樹脂、変性ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂である。適切な熱可塑性プラスチック材料又は熱可塑性樹脂の実施例は、詳細には、ドイツ特許DE699 23 847T2から得ることができる。これによりドイツ特許DE699 23 847T2では、ポリカーボネート樹脂として、ジフェノール及びカーボネート前駆体を処理することによって得られた芳香族ポリカーボネート樹脂を適切に使用することを開示している。この関連において、ジフェノールの実施例には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等があげられる。これらジフェノールは単独で用いても、二種以上の製品の組み合わせを用いてもよい。
【0030】
ステップ111の後にステップ112が続き、ここでは図12において示されたように、ブランク136が、射出圧縮金型内で射出圧縮プロセスを利用して透明なプラスチック材料から成形される。図12の原理的表現で表される射出圧縮金型は、金型セクション131と金型セクション132とを含む。本質的に液体の透明プラスチック材料が、矢印135で表されるように注入口137により射出圧縮金型内に射出され、ブランク136が形成されるようになる。金型セクション131及び132を開くことにより、注入口137によりブランク136を取り出すことができる。
【0031】
ステップ113が続き、ここでは、ブランク136が調質及び/又は冷却される。調質において、ブランク136は、最初に冷却された後に加熱され、温度勾配が反転されるようになり、これは、調質を行う前にブランク136のコアがその外側領域よりも高温になり、調質後には、ブランク136の外側領域がそのコアよりも高温になることを意味する。冷却及び/又は調質中、ブランクは、有利には、注入口137により保持され、或いはこれによりハングアップされる。また、ブランクは、冷却及び/又は調質中に注入口137により自立するように位置付けられると定めることができる。
【0032】
ステップ114が続き、ここでは、プリフォーム136が、図13で示される最終形金型を用いて、第1の金型140と第2の金型との間に(ブランク)成形(又は(ブライト)プレス)され、上記金型は、第1の金型セクション141と環状の第2の金型セクション142とを含み、第1の金型セクション141を密封して一体成形のレンズ縁部又はリム6を有するヘッドライト・レンズ2を形成し、ここで、プリフォームの容積に応じた第1の金型セクション141と第2の金型セクション142との間のオフセット143を用いて、カスケード又は段部60がヘッドライト・レンズ2に圧入されるようになる。ここで、詳細には、圧縮は、真空又は極めて低い圧力下では実施されない。圧縮は、特に空気圧(大気圧)下で行われる。第1の金型セクション141及び第2の金型セクション142は、バネ145及び146を用いて互いに非確動的に結合される。ここで、圧縮は、第1の金型セクション141と第1の金型140との間の距離が、プリフォームもしくは圧縮されるヘッドライト・レンズ2の容積に依存し、更に第2の金型セクション142と第1の金型140との間の距離が、プリフォームもしくは圧縮されるヘッドライト・レンズ2の容積に依存しないように実施される。圧縮後、ヘッドライト・レンズ2は冷却され、必要に応じて、本質的に平坦な表面5が研磨される。
【0033】
最終形状(すなわち輪郭)の金型は、90°転回した水平圧縮金型として同様に設計することができる。
【0034】
任意選択的に、ステップ114の後にステップ115が続くことができ、ここでヘッドライト・レンズの勾配が測定され、光分散構造35に対応する構造が、勾配の測定値に応じて当該又は別のヘッドライト・レンズに導入される。
【0035】
ステップ114又は115の後のステップ116において、ヘッドライト・レンズ2は、ヘッドライト・レンズ2に対応して示された別のヘッドライト・レンズ151、152、153と共にヘッドライト・レンズを輸送するために、図14で表される輸送コンテナ150内にパッケージングされる。輸送コンテナ150において、ヘッドライト・レンズ2、151、152、153は、バッチ、すなわち請求項の意味におけるバッチを形成する。輸送コンテナ150において、ヘッドライト・レンズ151の1つの段部の高さは、別のヘッドライト・レンズ153の段部の高さとは0.05mmを上回って、有利には0.1mmを上回って異なる。
【0036】
輸送コンテナ150内のヘッドライト・レンズ2、151、152、153の勾配の標準偏差は、0.0005以下である。ヘッドライト・レンズ2、151、152、153のバッチ、又はヘッドライト・レンズ2、151、152、153が組み込まれた車両ヘッドライトのグレアの標準偏差は、有利には、0.05lux以下である。更に別の有利な実施形態では、ヘッドライト・レンズ2、151、152、153、又はヘッドライト・レンズ2、151、152、153が組み込まれた車両ヘッドライトの値75Rの標準偏差は、0.5lux以下である。
【0037】
単一レンズに関して説明してきた手順はまた、PCT/EP2006/007820の意味における光学的構造にも使用することができる。
【0038】
各図の要素は、単純性と明確さを考慮して描かれており、必ずしも縮尺通りではない。従って、例えば、幾つかの要素の概略的大きさは、本発明の例示的な実施形態の理解を向上させるために他の要素に対して誇張して示されている。
【符号の説明】
【0039】
131 金型セクション
132 金型セクション
136 ブランク
137 注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
詳細には照明目的の光学レンズ素子(2)の製造、特に車両ヘッドライト用、詳細には自動車ヘッドライト(1)用のヘッドライト・レンズ(2)の製造方法において、
射出圧縮金型(131、132)において射出圧縮法で透明プラスチック材料からブランク(136)が成形され、次いで前記ブランク(136)が圧縮され、詳細には最終形状金型(140、141、142)によりブランク成形されてレンズ素子(2)を形成する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記透明プラスチック材料が熱可塑性プラスチック材料である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ブランク(136)が、本質的に液体プラスチック材料から射出圧縮法で生成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブランク(136)が、射出圧縮法を用いて注入口137により生成される、
ことを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ブランク(136)が、冷却されて再度加熱される、
ことを特徴とする前記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ブランク(136)が、前記射出圧縮金型(131、132)から取り出された後に冷却されて、再度加熱される、
ことを特徴とする前記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記最終形状金型(140、141、142)を用いて、光分散表面構造(72、82、92、93、94、95、96、101、z)が前記レンズ素子(2)の光学的に動作可能な表面(4、5)にエンボス加工される、
ことを特徴とする前記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
車両ヘッドライト(1)のシールド(14)の縁部(15)を定められた勾配(G)を有する明暗境界部(15)として結像するための車両ヘッドライト(1)、詳細には自動車用ヘッドライトにおいて、特に前記請求項の何れか1項に記載の方法に従って、連続して生成されるヘッドライト・レンズ(2、151、152、153)のバッチであって、各ヘッドライト・レンズ(2、151、152、153)が、少なくとも本質的に透明なプラスチック材料から作られ、前記バッチのヘッドライト・レンズ(2、151、152、153)の勾配(G)の標準偏差が0.005未満である、
ことを特徴とするバッチ。
【請求項9】
10、詳細には100の連続して生成されるヘッドライト・レンズ(2、151、152、153)を含む、
ことを特徴とする請求項8に記載のバッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−535649(P2010−535649A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519333(P2010−519333)
【出願日】平成20年7月12日(2008.7.12)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001160
【国際公開番号】WO2009/018798
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(506304118)ドクター・オプティクス・ゲーエムベーハー (7)
【Fターム(参考)】