説明

光学体、窓材、建具、および日射遮蔽部材

【課題】光学体の両面いずれからの入射においても、入射角による色調変化を抑制することができる光学体を提供する。
【解決手段】光学体は、凹凸面を有する第1の光学層と、凹凸面上に形成された波長選択反射層と、凹凸面を埋めるように波長選択反射層上に形成された第2の光学層とを備える。光学体は、入射角(θ、φ)で入射面に入射した光のうち、特定波長帯の光を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に選択的に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光を透過する(但し、θ:入射面に対する垂線と、入射面に入射する入射光または入射面から出射される反射光とのなす角、φ:入射面内の特定の直線と、入射光または反射光を入射面に射影した成分とのなす角)。光学体は、5°以上60°以下の入射角度で、光学体の両面のいずれか一方から入射し、光学体により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、光学体の両面のいずれにおいても、0.05以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学体、窓材、建具、および日射遮蔽部材に関する。詳しくは、色調変化を抑制できる光学体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高層ビル、住居などの建築用ガラスや車窓ガラスに太陽光の一部を吸収、または反射させる層が設けられるケースが増加している。これは地球温暖化防止を目的とした省エネルギー対策のひとつであり、太陽から注がれる光エネルギーが窓から屋内に入り、屋内温度が上昇することによりかかる冷房設備の負荷を軽減することを目的としている。太陽光から注がれる光エネルギーは、波長380〜780nmの可視領域と780〜2100nmの近赤外領域とが大きな比率を占めている。このうち後者の波長域における窓の透過率は、人間の視認性と無関係であるため、高透明性かつ高熱遮蔽性を有する窓としての性能を左右する重要な要素となる。
【0003】
可視領域の透明性を維持しながら近赤外線を遮蔽する方法としては、近赤外領域に高い反射率を有する光学体を窓ガラスに設ける方法がある。この方法については、反射層として光学多層膜を用いる技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、このような反射層は平面状のフィルムや窓ガラスに設けられるため、入射した太陽光を正反射させることしかできない。このため、上空から照射されて正反射された光は、屋外の別な建物や地面に到達し、吸収されて熱に変わり周囲の気温を上昇させる。これにより、このような反射層が窓全体に貼られたビルの周辺では、局所的な温度上昇が起こり都市部ではヒートアイランドが増長されたり、反射光の照射面のみ芝生が生長しないなどの問題が生じている。
【0004】
しかしながら、光学多層膜による反射層では、干渉効果を利用しているため、入射角が変化すると見掛けの膜厚が変化し、色調が変化してしまう。そこで、このような色調の変化を抑制するために、光学多層膜の材料、膜厚、および各層の膜厚比を調整することにより、入射角による色調変化を抑制する技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−152773号公報
【0006】
【特許文献2】特許第4114429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の技術では、光学多層膜の材料、膜厚、および各層の膜厚比を調整することで、入射角の色調変化をある程度抑制することはできるが、光学体の表面、および裏面のいずれの面からの入射においても、入射角による色調変化を抑制することは困難である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、光学体の両面いずれからの入射においても、入射角による色調変化を抑制することができる光学体、窓材、建具、および日射遮蔽部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
凹凸面を有する第1の光学層と、
凹凸面上に形成された波長選択反射層と、
凹凸面を埋めるように波長選択反射層上に形成された第2の光学層と
を備え、
波長選択反射層が、特定波長帯の光を選択的に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光を透過するものであり、
入射角(θ、φ)で入射面に入射した光のうち、特定波長帯の光を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に選択的に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光を透過し、
5°以上60°以下の入射角度で、光学体の両面のいずれか一方から入射し、光学体により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、両面のいずれにおいても、0.05以下である光学体。
(但し、θ:入射面に対する垂線と、入射面に入射する入射光または入射面から出射される反射光とのなす角、φ:入射面内の特定の直線と、入射光または反射光を入射面に射影した成分とのなす角)
【0010】
第2の発明は、
凹凸面を有する光学層と、
凹凸面上に形成された波長選択反射層と、
を備え、
波長選択反射層が、特定波長帯の光を選択的に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光を透過するものであり、
入射角(θ、φ)で入射面に入射した光のうち、特定波長帯の光を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に選択的に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光を透過し、
5°以上60°以下の入射角度で、光学体の両面のいずれか一方から入射し、光学体により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、両面のいずれにおいても、0.05以下である光学体。
(但し、θ:入射面に対する垂線と、入射面に入射する入射光または入射面から出射される反射光とのなす角、φ:入射面内の特定の直線と、入射光または反射光を入射面に射影した成分とのなす角)
【0011】
第3の発明は、
凹凸面を有する第1の光学層と、
凹凸面上に形成された半透過層と、
凹凸面を埋めるように半透過層上に形成された第2の光学層と
を備え、
入射角(θ、φ)で入射面に入射した光を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射し、
5°以上60°以下の入射角度で、光学体の両面のいずれか一方から入射し、光学体により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、両面のいずれにおいても、0.05以下である光学体。
(但し、θ:入射面に対する垂線と、入射面に入射する入射光または入射面から出射される反射光とのなす角、φ:入射面内の特定の直線と、入射光または反射光を入射面に射影した成分とのなす角)
【0012】
第4の発明は、
凹凸形状の入射面を有する光学層と、
凹凸面上に形成された半透過層と、
を備え、
入射角(θ、φ)で入射面に入射した光を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射し、
5°以上60°以下の入射角度で、光学体の両面のいずれか一方から入射し、光学体により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、両面のいずれにおいても、0.05以下である光学体。
(但し、θ:入射面に対する垂線と、入射面に入射する入射光または入射面から出射される反射光とのなす角、φ:入射面内の特定の直線と、入射光または反射光を入射面に射影した成分とのなす角)
【0013】
第1〜第4の発明では、波長選択反射層、または半透過層が形成される光学層の成膜面を凹凸面としている。また、5°以上60°以下の入射角度で、光学体の両面のいずれか一方から入射し、光学体により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値を、光学体の両面のいずれにおいても、0.05以下にしている。したがって、光学体の両面いずれからの入射においても、入射角による色調変化を抑制することができる。
【0014】
第1〜第4の発明では、正反射以外のある特定の方向への反射光強度を正反射光強度より強くできる。また、第1および第2の発明では、特定波長帯の光を指向反射し、所定の空間に入り込むのを排除し、特定波長帯以外の光を所定の空間に取り込むことできる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、光学体の両面いずれからの入射においても、入射角による色調変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。図1Bは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムを被着体に貼り合わせた例を示す断面図である。
【図2】図2は、光学フィルムに対して入射する入射光と、光学フィルムにより反射された反射光との関係を示す斜視図である。
【図3】図3A〜図3Cは、第1の光学層に形成された構造体の形状例を示す斜視図である。
【図4】図4Aは、第1の光学層に形成された構造体の形状例を示す斜視図である。図4Bは、図4Aに示す構造体が形成された第1の光学層を備える光学フィルムの一構成例を示す断面図である。
【図5】図5A、図5Bは、光学フィルムの機能の一例を説明するための断面図である。
【図6】図6A、図6Bは、光学フィルムの機能の一例を説明するための断面図である。
【図7】図7Aは、光学フィルムの機能の一例を説明するための断面図である。図7Bは、光学フィルムの機能の一例を説明するための平面図である。
【図8】図8は、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムを製造するための製造装置の一構成例を示す概略図である。
【図9】図9A〜図9Cは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図10】図10A〜図10Cは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図11】図11A〜図11Cは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図12】図12Aは、本発明の第1の実施形態の第1の変形例を示す断面図である。図12Bは、本発明の第1の実施形態の第2の変形例を示す断面図である。
【図13】図13Aは、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムにおける第1の光学層の第1の構成例を示す斜視図である。図13Bは、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムにおける第1の光学層の第2の構成例を示す斜視図である。図13Cは、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムにおける第1の光学層の第3の構成例を示す斜視図である。
【図14】図14Aは、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムにおける第1の光学層の第3の構成例を示す平面図である。図14Bは、図14Aに示した第1の光学層のB−B線に沿った断面図である。図14Cは、図14Aに示した第1の光学層のC−C線に沿った断面図である。
【図15】図15Aは、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムにおける第1の光学層の第4の構成例を示す平面図である。図15Bは、図15Aに示した第1の光学層のB−B線に沿った断面図である。図15Cは、図15Aに示した第1の光学層のC−C線に沿った断面図である。
【図16】図16Aは、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムにおける第1の光学層の第5の構成例を示す平面図である。図16Bは、図16Aに示した第1の光学層のB−B線に沿った断面図である。
【図17】図17Aは、本発明の第3の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。図17Bは、本発明の第3の実施形態に係る光学フィルムが備える第1の光学層の一構成例を示す斜視図である。
【図18】図18Aは、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルムの第1の構成例を示す断面図である。図18Bは、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルムの第2の構成例を示す断面図である。図18Cは、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルムの第3の構成例を示す断面図である。
【図19】図19Aは、本発明の第5の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。図19Bは、本発明の第5の実施形態に係る光学フィルムを被着体に貼り合わせた例を示す断面図である。
【図20】図20は、本発明の第6の実施形態に係るブラインド装置の一構成例を示す斜視図である。
【図21】図21Aは、スラットの第1の構成例を示す断面図である。図21Bは、スラットの第2の構成例を示す断面図である。
【図22】図22Aは、本発明の第7の実施形態に係るロールスクリーン装置の一構成例を示す斜視図である。図22Bは、スクリーンの一構成例を示す断面図である。
【図23】図23Aは、本発明の第8の実施形態に係る建具の一構成例を示す斜視図である。図23Bは、光学体の一構成例を示す断面図である。
【図24】図24は、実施例1の金型が有する成形面の形状を示す断面図である。
【図25】図25は、実施例1の分光反射率曲線を示すグラフである。
【図26】図26Aは、実施例2〜4の光学フィルムを作製するための原盤の形状を示す平面図である。図26Bは、図26Aに示した原盤のB−B線に沿った断面図である。
【図27】図27は、指向反射体の再帰反射率を測定するため測定装置の構成を示す概略図である。
【図28】図28Aは、実施例2〜4の光学フィルムの分光透過率を示すグラフである。図28Bは、比較例2〜4の光学フィルムの分光透過率を示すグラフである。
【図29】図29Aは、実施例7〜11の光学フィルムを作製するための原盤の形状を示す平面図である。図29B、図29Cは、図29Aに示した原盤のB−B線に沿った断面図である。
【図30】図30Aは、実施例7および実施例8の光学フィルムの透過特性を示すグラフである。図30Bは、実施例9および実施例10の光学フィルムの透過特性を示すグラフである。
【図31】図31Aは、比較例9および比較例10の光学フィルムの透過特性を示すグラフである。図31Bは、比較例9および比較例10の光学フィルムの反射特性を示すグラフである。
【図32】図32Aは、比較例11および比較例12の光学フィルムの透過特性を示すグラフである。図32Bは、比較例11および比較例12の光学フィルムの反射特性を示すグラフである。
【図33】図33Aは、比較例13の光学フィルムの透過特性を示すグラフである。図33Bは、比較例13の光学フィルムの反射特性を示すグラフである。
【図34】図34は、JIS R 3106の試験方法による感度係数を示すグラフである。
【図35】図35は、波長選択反射層の膜厚について説明するための図である。
【図36】図36は、実施例2の形状転写樹脂の粘弾性率挙動を示すグラフである。
【図37】図37Aは、実施例4の光学フィルムの透過スペクトルを示すグラフである。図37Bは、実施例7の光学フィルムの透過スペクトルを示すグラフである。
【図38】図38Aは、実施例8の光学フィルムの透過スペクトルを示すグラフである。図38Bは、実施例9の光学フィルムの透過スペクトルを示すグラフである。
【図39】図39Aは、比較例5の光学フィルムの透過スペクトルを示すグラフである。図39Bは、比較例8の光学フィルムの透過スペクトルを示すグラフである。
【図40】図40Aは、実施例9の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射スペクトルを示すグラフである。図40Bは、実施例9の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射スペクトルを示すグラフである。
【図41】図41Aは、比較例5の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射スペクトルを示すグラフである。図41Bは、比較例5の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射スペクトルを示すグラフである。
【図42】図42Aは、比較例8の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射スペクトルを示すグラフである。図42Bは、比較例8の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射スペクトルを示すグラフである。
【図43】図43Aは、実施例7、実施例9の光学フィルムの第2の光学層側入射、および第1の光学層側入射にける反射色調を示すグラフである。図43Bは、比較例5、比較例8の光学フィルムの第2の光学層側入射、および第1の光学層側入射にける反射色調を示すグラフである。
【図44】図44Aは、実施例13の形状付きフィルムの概観を示す斜視図である。図44Bは、実施例14の形状付きフィルムの概観を示す斜視図である。
【図45】図45Aは、実施例15の形状付きフィルムの概観を示す斜視図である。図45Bは、実施例15の形状付きフィルムの断面形状を示す略線図である。
【図46】図46Aは、実施例16の形状付きフィルムの概観を示す斜視図である。図46Bは、実施例16の形状付きフィルムの断面形状を示す略線図である。
【図47】図47Aは、実施例13の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過率の測定結果を示すグラフである。図47Bは、実施例13の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図48】図48Aは、実施例13の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過色度の測定結果を示すグラフである。図48Bは、実施例13の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射色度の測定結果を示すグラフである。
【図49】図49Aは、実施例14の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過率の測定結果を示すグラフである。図49Bは、実施例14の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図50】図50は、実施例実施例14の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図51】図51Aは、実施例14の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過色度の測定結果を示すグラフである。図51Bは、実施例14の光学フィルムの第1および第2の光学層側入射における反射色度の測定結果を示すグラフである。
【図52】図52Aは、実施例15の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過率の測定結果を示すグラフである。図52Bは、実施例15の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図53】図53は、実施例15の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図54】図54Aは、実施例15の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過色度の測定結果を示すグラフである。図54Bは、実施例15の光学フィルムの第1および第2の光学層側入射における反射色度の測定結果を示すグラフである。
【図55】図55Aは、実施例16の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過率の測定結果を示すグラフである。図55Bは、実施例16の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図56】図56は、実施例16の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図57】図57Aは、実施例16の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過色度の測定結果を示すグラフである。図57Bは、実施例16の光学フィルムの第1および第2の光学層側入射における反射色度の測定結果を示すグラフである。
【図58】図58Aは、実施例17の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過率の測定結果を示すグラフである。図58Bは、実施例17の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図59】図59は、実施例17の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図60】図60Aは、実施例18の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過率の測定結果を示すグラフである。図60Bは、実施例18の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図61】図61は、実施例18の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図62】図62Aは、実施例19の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過率の測定結果を示すグラフである。図62Bは、実施例19の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図63】図63は、実施例19の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図64】図64Aは、実施例20の光学フィルムの凹凸面側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。図64Bは、実施例20の光学フィルムの光学層側入射における反射率の測定結果を示すグラフである。
【図65】図65は、本発明の第6の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(構造体を1次元配列した例)
2.第2の実施形態(構造体を2次元配列した例)
3.第3の実施形態(ルーバ型の反射層の例)
4.第4の実施形態(光学フィルムに光散乱体を設けた例)
5.第5の実施形態(反射層を露出させた例)
6.第6の実施形態(自己洗浄効果層を備えた例)
7.第7の実施形態(ブラインド装置に光学フィルムを適用した例)
8.第8の実施形態(ロールスクリーン装置に光学フィルムを適用した例)
9.第9の実施形態(ロールスクリーン装置に光学フィルムを適用した例)
【0018】
<1.第1の実施形態>
[光学フィルムの構成]
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。図1Bは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムを被着体に貼り合わせた例を示す断面図である。光学体としての光学フィルム1は、いわゆる指向反射性能を有する光学フィルムである。図1Aに示すように、この光学フィルム1は、凹凸形状の界面を内部に有する光学層2と、この光学層2の界面に設けられた反射層3とを備える。光学層2は、凹凸形状の第1の面を有する第1の光学層4と、凹凸形状の第2の面を有する第2の光学層5とを備える。光学層内部の界面は、対向配置された凹凸形状の第1の面と第2の面とにより形成されている。具体的には、光学フィルムは、凹凸面を有する第1の光学層4と、第1の光学層の凹凸面上に形成された反射層3と、反射層3が形成された凹凸面を埋めるように、反射層3上に形成された第2の光学層5とを備える。光学フィルム1は、太陽光などの光が入射する入射面S1と、この入射面S1より入射した光のうち、光学フィルム1を透過した光が出射される出射面S2とを有する。光学フィルム1は、内壁部材、外壁部材、窓材、壁材などに適用して好適なものである。また、光学フィルム1は、ブラインド装置のスラット(日射遮蔽部材)、およびロールスクリーン装置のスクリーン(日射遮蔽部材)として用いても好適なものである。さらに、光学フィルム1は、障子などの建具(内装部材または外装部材)の採光部に設けられる光学体として用いても好適なものである。
【0019】
光学フィルム1が、必要に応じて、光学層2の出射面S2に第1の基材4aをさらに備えるようにしてもよい。また、光学フィルム1が、必要に応じて、光学層2の入射面S1に第2の基材5aをさらに備えるようにしてもよい。なお、このように第1の基材4a、および/または第2の基材5aを光学フィルム1に備える場合には、第1の基材4a、および/または第2の基材5aを光学フィルム1に備えた状態において、以下に示す透明性、および透過色などの光学特性を満たすことが好ましい。
【0020】
光学フィルム1が、必要に応じて貼合層6をさらに備えるようにしてもよい。この貼合層6は、光学フィルム1の入射面S1および出射面S2のうち、窓材10に貼り合わされる面に形成される。この貼合層6を介して、光学フィルム1は被着体である窓材10の屋内側または屋外側に貼り合わされる。貼合層6としては、例えば、接着剤を主成分とする接着層(例えば、UV硬化型樹脂、2液混合型樹脂)、または粘着剤を主成分とする粘着層(例えば、感圧粘着材(PSA:Pressure Sensitive Adhesive))を用いることができる。貼合層6が粘着層である場合、貼合層6上に形成された剥離層7をさらに備えることが好ましい。このような構成にすることで、剥離層7を剥離するだけで、貼合層6を介して窓材10などの被着体に対して光学フィルム1を容易に貼り合わせることができるからである。
【0021】
光学フィルム1が、第2の基材5aと、貼合層6および/または第2の光学層5の接合性を向上させる観点から、第2の基材5aと、貼合層6および/または第2の光学層5との間に、プライマー層(図示せず)をさらに備えるようにしてもよい。また、同様の箇所の接合性を向上させる観点から、プライマー層に代えて、またはプライマー層と共に、公知の物理的前処理を施すことが好ましい。公知の物理的前処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理などが挙げられる。
【0022】
光学フィルム1が、窓材10などの被着体に貼り合わされる入射面S1または出射面S2上、またはその面と反射層3との間に、バリア層(図示せず)をさらに備えるようにしてもよい。このようにバリア層を備えることで、入射面S1または出射面S2から反射層3への水分の拡散を低減し、反射層3に含まれる金属などの劣化を抑制することができる。したがって、光学フィルム1の耐久性を向上させることができる。
【0023】
光学フィルム1は、表面に耐擦傷性などを付与する観点から、ハードコート層8をさらに備えるようにしてもよい。このハードコート層8は、光学フィルム1の入射面S1および出射面S2のうち、窓材10などの被着体に貼り合わされる面とは反対側の面に形成することが好ましい。光学フィルム1の入射面S1に、防汚性などを付与する観点から、撥水性または親水性を有する層をさらに備えてもよい。このような機能を有する層は、例えば、光学層2上に直接備える、またはハードコート層8などの各種機能層上に備えるようにしてもよい。
【0024】
光学フィルム1は、光学フィルム1を窓材10などの被着体に容易に貼り合わせ可能にする観点からすると、可撓性を有することが好ましい。ここで、フィルムにはシートが含まれるものとする。すなわち、光学フィルム1には光学シートも含まれものとする。
【0025】
光学フィルム1は、透明性を有している。透明性としては、後述する透過像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。第1の光学層4と第2の光学層5との屈折率差が、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.005以下である。屈折率差が0.010を超えると、透過像がぼけて見える傾向がある。0.008を超え0.010以下の範囲であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。0.005を超え0.008以下の範囲であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。0.005以下であれば、回折パターンは殆ど気にならない。第1の光学層4および第2の光学層5のうち、窓材10などと貼り合わせる側となる光学層は、粘着剤を主成分としてもよい。このような構成とすることで、粘着材を主成分とする第1の光学層4、または第2の光学層5により光学フィルム1を窓材10などに貼り合わせることができる。なお、このような構成にする場合、粘着剤の屈折率差が上記範囲内であることが好ましい。
【0026】
第1の光学層4と第2の光学層5とは、屈折率などの光学特性が同じであることが好ましい。より具体的には、第1の光学層4と第2の光学層5とが、可視領域において透明性を有する同一材料、例えば同一樹脂材料からなることが好ましい。第1の光学層4と第2の光学層5とを同一材料により構成することで、両者の屈折率が等しくなるので、可視光の透明性を向上させることができる。ただし、同一材料を出発源としても、成膜工程における硬化条件などにより最終的に生成する層の屈折率が異なることがあるので、注意が必要である。これに対して、第1の光学層4と第2の光学層5とを異なる材料により構成すると、両者の屈折率が異なるので、反射層3を境界として光が屈折し、透過像がぼやける傾向がある。特に、遠くの電灯など点光源に近い物を観察すると回折パターンが顕著に観察される傾向がある。なお、屈折率の値を調整するために、第1の光学層4および/または第2の光学層5に添加剤を混入させてもよい。
【0027】
第1の光学層4と第2の光学層5は、可視領域において透明性を有することが好ましい。ここで、透明性の定義には2種類の意味があり、光の吸収がないことと、光の散乱がないことである。一般的に透明と言った場合に前者だけを指すことがあるが、第1の実施形態に係る光学フィルム1では両者を備えることが好ましい。現在利用されている再帰反射体は、道路標識や夜間作業者の衣服など、その表示反射光を視認することを目的としているため、例えば散乱性を有していても、下地反射体と密着していれば、その反射光を視認することができる。例えば、画像表示装置の前面に、防眩性の付与を目的として散乱性を有するアンチグレア処理をしても、画像は視認できるのと同一の原理である。しかしながら、第1の実施形態に係る光学フィルム1は、指向反射する特定の波長以外の光を透過する点に特徴を有しており、この透過波長を主に透過する透過体に接着し、その透過光を観察するため、光の散乱がないことが好ましい。但し、その用途によっては、第2の光学層5に意図的に散乱性を持たせることも可能である。
【0028】
光学フィルム1は、好ましくは、透過した特定波長以外の光に対して主に透過性を有する剛体、例えば、窓材10に粘着剤などを介して貼り合わせて使用される。窓材10としては、高層ビルや住宅などの建築用窓材、車両用の窓材などが挙げられる。建築用窓材に光学フィルム1を適用する場合、特に東〜南〜西向きの間のいずれかの向き(例えば南東〜南西向き)に配置された窓材10に光学フィルム1を適用することが好ましい。このような位置の窓材10に適用することで、より効果的に熱線を反射することができるからである。光学フィルム1は、単層の窓ガラスのみならず、複層ガラスなどの特殊なガラスにも用いることができる。また、窓材10は、ガラスからなるものに限定されるものではなく、透明性を有する高分子材料からなるものを用いてもよい。光学層2が、可視領域において透明性を有することが好ましい。このように透明性を有することで、光学フィルム1を窓ガラスなどの窓材10に貼り合せた場合、可視光を透過し、太陽光による採光を確保することができるからである。また、貼り合わせる面としてはガラスの内面のみならず、外面にも使用することができる。
【0029】
また、光学フィルム1は他の熱線カットフィルムと併用して用いることができ、例えば空気と光学フィルム1との界面(すなわち、光学フィルム1の最表面)に光吸収塗膜を設けることもできる。また、光学フィルム1は、ハードコート層、紫外線カット層、表面反射防止層などとも併用して用いることができる。これらの機能層を併用する場合、これらの機能層を光学フィルム1と空気との間の界面に設けることが好ましい。ただし、紫外線カット層については、光学フィルム1よりも太陽側に配置する必要があるため、特に室内の窓ガラス面に内貼り用として用いる場合には、該窓ガラス面と光学フィルム1の間に紫外線カット層を設けることが望ましい。この場合、窓ガラス面と光学フィルム1の間の貼合層中に、紫外線吸収剤を練りこんでおいてもよい。
【0030】
また、光学フィルム1の用途に応じて、光学フィルム1に対して着色を施し、意匠性を付与するようにしてもよい。このように意匠性を付与する場合、透明性を損なわない範囲で第1の光学層4および第2の光学層5の少なくとも一方が、可視領域における特定の波長帯の光を主として吸収する構成とすることが好ましい。
【0031】
図2は、光学フィルム1に対して入射する入射光と、光学フィルム1により反射された反射光との関係を示す斜視図である。光学フィルム1は、光Lが入射する入射面S1を有する。反射層3が波長選択反射層である場合、光学フィルム1は、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光Lのうち、特定波長帯の光L1を選択的に正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光L2を透過することが好ましい。また、光学フィルム1は、上記特定波長帯以外の光に対して透明性を有する。透明性としては、後述する透過像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。反射層3が半透過層である場合、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光Lのうち一部の光L1を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射するのに対して、残りの光L2を透過することが好ましい。但し、θ:入射面S1に対する垂線l1と、入射光Lまたは反射光L1とのなす角である。φ:入射面S1内の特定の直線l2と、入射光Lまたは反射光L1を入射面S1に射影した成分とのなす角である。ここで、入射面内の特定の直線l2とは、入射角(θ、φ)を固定し、光学フィルム1の入射面S1に対する垂線l1を軸として光学フィルム1を回転したときに、φ方向への反射強度が最大になる軸である(図3および図4参照)。但し、反射強度が最大となる軸(方向)が複数ある場合、そのうちの1つを直線l2として選択するものとする。なお、垂線l1を基準にして時計回りに回転した角度θを「+θ」とし、反時計回りに回転した角度θを「−θ」とする。直線l2を基準にして時計回りに回転した角度φを「+φ」とし、反時計回りに回転した角度φを「−φ」とする。反射層3が半透過層である場合、指向反射する光が、主に波長帯域400nm以上2100nm以下の光であることが好ましい。
【0032】
選択的に指向反射する特定の波長帯の光、および透過させる特定の光は、光学フィルム1の用途により異なる。例えば、窓材10に対して光学フィルム1を適用する場合、選択的に指向反射する特定の波長帯の光は近赤外光であり、透過させる特定の波長帯の光は可視光であることが好ましい。具体的には、選択的に指向反射する特定の波長帯の光が、主に波長帯域780nm〜2100nmの近赤外線であることが好ましい。近赤外線を反射することで、光学体をガラス窓などの窓材に貼り合わせた場合に、建物内の温度上昇を抑制することができる。したがって、冷房負荷を軽減し、省エネルギー化を図ることができる。ここで、指向反射とは、正反射以外のある特定の方向への反射を有し、かつ、指向性を持たない拡散反射強度よりも十分に強いことを意味する。ここで、反射するとは、特定の波長帯域、例えば近赤外域における反射率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上であることを示す。透過するとは、特定の波長帯域、例えば可視光域における透過率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上であることを示す。
【0033】
光学フィルム1において、指向反射する方向φoが−90°以上、90°以下であることが好ましい。光学フィルム1を窓材10に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空方向に戻すことができるからである。周辺に高い建物がない場合にはこの範囲の光学フィルム1が有用である。また、指向反射する方向が(θ、−φ)近傍であることが好ましい。近傍とは、好ましく(θ、−φ)から5度以内、より好ましくは3度以内であり、さらに好ましくは2度以内の範囲内のずれのことをいう。この範囲にすることで、光学フィルム1を窓材10に貼った場合、同程度の高さが立ち並ぶ建物の上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を他の建物の上空に効率良く戻すことができるからである。このような指向反射を実現するためには、例えば球面や双曲面の一部や三角錐、四角錘、円錐などの3次元構造体を用いることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、その形状に基づいて(θo、φo)方向(0°<θo<90°、−90°<φo<90°)に反射させることができる。または、一方向に伸びた柱状体にすることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、柱状体の傾斜角に基づいて(θo、−φ)方向(0°<θo<90°)に反射させることができる。
【0034】
光学フィルム1において、特定波長体の光の指向反射が、再帰反射近傍方向、すなわち、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光に対する、特定波長体の光の反射方向が、(θ、φ)近傍であることが好ましい。光学フィルム1を窓材10に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に戻すことができるからである。ここで近傍とは5度以内が好ましく、より好ましくは3度以内であり、さらに好ましくは2度以内である。この範囲にすることで、光学フィルム1を窓材10に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に効率良く戻すことができるからである。また、赤外線センサーや赤外線撮像のように、赤外光照射部と受光部が隣接している場合は、再帰反射方向は入射方向と等しくなければならないが、本発明のように特定の方向からセンシングする必要がない場合は、厳密に同一方向とする必要はない。
【0035】
反射層3が波長選択反射層である場合、光学フィルム1において、透過性を持つ波長帯に対する透過像鮮明度に関し、0.5mmの光学くしを用いたときの値が、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは75以上である。透過像鮮明度の値が50未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。50以上60未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。60以上75未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。75以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。更に0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの光学くしを用いて測定した透過像鮮明度の値の合計値が、好ましくは230以上、より好ましくは270以上、さらに好ましくは350以上である。透過像鮮明度の合計値が230未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。230以上270未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。270以上350未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。350以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。ここで、透過像鮮明度の値は、スガ試験機製ICM−1Tを用いて、JIS K7105に準じて測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。
反射層3が半透過層である場合、D65光源に対する透過像鮮明度に関し、0.5mmの光学くしを用いたときの値が、好ましくは30以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは75以上である。透過像鮮明度の値が30未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。30以上50未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。50以上75未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。75以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。更に0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの光学くしを用いて測定した透過像鮮明度の値の合計値が、好ましくは170以上、より好ましくは230以上、さらに好ましくは350以上である。透過像鮮明度の合計値が170未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。170以上230未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。230以上350未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。350以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。ここで、透過像鮮明度の値は、スガ試験機製ICM−1Tを用いて、JIS K7105に準じて測定したものである。
【0036】
光学フィルム1において、透過性を持つ波長帯に対するヘイズが、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下である。ヘイズが6%を超えると、透過光が散乱され、曇って見えるためである。ここで、ヘイズは、村上色彩製HM−150を用いて、JIS K7136で規定される測定方法により測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。光学フィルム1の入射面S1、好ましくは入射面S1および出射面S2は、透過像鮮明度を低下させない程度の平滑性を有する。具体的には、入射面S1および出射面S2の算術平均粗さRaは、好ましくは0.08μm以下、より好ましくは0.06μm以下、さらに好ましくは0.04μm以下である。なお、上記算術平均粗さRaは、入射面の表面粗さを測定し、2次元断面曲線から粗さ曲線を取得し、粗さパラメータとして算出したものである。なお、測定条件はJIS B0601:2001に準拠している。以下に測定装置および測定条件を示す。
測定装置:全自動微細形状測定機 サーフコーダーET4000A(株式会社小坂研究所)
λc=0.8mm、評価長さ4mm、カットオフ×5倍
データサンプリング間隔0.5μm
【0037】
光学フィルム1の透過色はなるべくニュートラルに近く、色付きがあるとしても涼しい印象を与える青、青緑、緑色などの薄い色調が好ましい。このような色調を得る観点からすると、入射面S1から入射し、光学層2および反射層3を透過し、出射面S2から出射される透過光および反射光の色度座標x、yは、例えばD65光源の照射に対しては、好ましくは0.20<x<0.35かつ0.20<y<0.40、より好ましくは、0.25<x<0.32かつ0.25<y<0.37、更に好ましくは0.30<x<0.32かつ0.30<y<0.35の範囲を満たすのが望ましい。更に、色調が赤みを帯びないためには、好ましくはy>x−0.02、より好ましくはy>xの関係を満たすのが望ましい。また、反射色調が入射角度によって変化すると、例えばビルの窓に適用された場合に、場所によって色調が異なったり、歩くと色が変化して見えるため好ましくない。このような色調の変化を抑制する観点からすると、5°以上60°以下の入射角度θで入射面S1または出射面S2から入射し、光学フィルム1により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、光学フィルム1の両主面のいずれにおいても、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.01以下である。このような反射光に対する色座標x、yに関する数値範囲の限定は、入射面S1、および出射面S2の両方の面において満たされることが望ましい。
【0038】
正反射近傍での色変化を抑制するためには、好ましくは5°以下、更に好ましくは10°以下の傾斜角を有する平面が含まれない事が望ましい。また、反射層3が樹脂で覆われている場合、入射光が空気から樹脂に入射する際に屈折するため、より広い入射角の範囲で正反射光近傍での色調変化を抑制する事が出来る。その他、正反射以外への反射色が問題になる場合は、問題となる方向に指向反射がいかないよう、光学フィルム1を配置する事が好ましい。
【0039】
以下、光学フィルム1を構成する第1の光学層4、第2の光学層5、および反射層3について順次説明する。
【0040】
(第1の光学層、第2の光学層)
第1の光学層4は、例えば、反射層3を支持し、かつ保護するためのものである。第1の光学層4は、光学フィルム1に可撓性を付与する観点から、例えば、樹脂を主成分とする層からなる。第1の光学層4の両主面のうち、例えば、一方の面は平滑面であり、他方の面は凹凸面(第1の面)である。反射層3は該凹凸面上に形成される。
【0041】
第2の光学層5は、反射層3が形成された第1の光学層4の第1の面(凹凸面)を包埋することにより、反射層3を保護するためのものである。第2の光学層5は、光学フィルム1に可撓性を付与する観点から、例えば、樹脂を主成分とする層からなる。第2の光学層5の両主面のうち、例えば、一方の面は平滑面であり、他方の面は凹凸面(第2の面)である。第1の光学層4の凹凸面と第2の光学層5の凹凸面とは、互いに凹凸を反転した関係にある。
【0042】
第1の光学層4の凹凸面は、例えば、1次元配列された複数の構造体4cにより形成されている。第2の光学層5の凹凸面は、例えば、1次元配列された複数の構造体5cにより形成されている(図3、図4参照)。第1の光学層4の構造体4cと第2の光学層5の構造体5cとは、凹凸が反転している点のみが異なるので、以下では第1の光学層4の構造体4cについて説明する。
【0043】
光学フィルム1において、構造体4cのピッチPは、好ましくは5μm以上5mm以下、より好ましくは5μm以上250μm未満、さらに好ましくは20μm以上200μm以下である。構造体4cのピッチが5μm未満であると、構造体4cの形状を所望のものとすることが難しい上、波長選択反射層の波長選択特性は一般的には急峻にすることが困難であるため、透過波長の一部を反射することがある。このような反射が起こると回折が生じて高次の反射まで視認されるため、透明性が悪く感じられる傾向がある。一方、構造体4cのピッチが5mmを超えると、指向反射に必要な構造体4cの形状を考慮した場合、必要な膜厚が厚くなりフレキシブル性が失われ、窓材10などの剛体に貼りあわせることが困難になる。また、構造体11aのピッチを250μm未満にすることにより、さらにフレキシブル性が増し、ロール・ツー・ロールでの製造が容易となり、バッチ生産が不要となる。窓などの建材に本発明の光学素子を適用するためには、数m程度の長さが必要であり、バッチ生産よりもロール・ツー・ロールでの製造が適している。さらに、ピッチを20μm以上200μm以下とした場合には、より生産性が向上する。
【0044】
また、第1の光学層4の表面に形成される構造体4cの形状は1種類に限定されるものではなく、複数種類の形状の構造体4cを第1の光学層4の表面に形成するようにしてもよい。複数種類の形状の構造体4cを表面に設ける場合、複数種類の形状の構造体4cからなる所定のパターンが周期的に繰り返されるようにしてもよい。また、所望とする特性によっては、複数種類の構造体4cがランダム(非周期的)に形成されるようにしてもよい。
【0045】
図3A〜図3Cは、第1の光学層に形成された構造体の形状例を示す斜視図である。構造体4cは、一方向に延在された柱状の凹部であり、この柱状の構造体4cが一方向に向かって一次元配列されている。反射層3はこの構造体4c上に成膜させるため、反射層3の形状は、構造体4cの表面形状と同様の形状を有することになる。
【0046】
構造体4cの形状としては、例えば、図3Aに示すプリズム形状、図3Bに示す、プリズムの稜線部に丸みを付与した形状、図3Cに示すレンチキュラー形状の反転形状、またはこれらの反転形状を挙げることができる。ここで、レンチキュラー形状とは、凸部の稜線に垂直な断面形状が円弧状もしくはほぼ円弧状、楕円弧状もしくはほぼ楕円弧、または放物線状もしくはほぼ放物線状の一部となっているものをいう。したがって、シリンドリカル形状もレンチキュラー形状に含まれる。なお、図3Bに示すように、稜線部分にはRがあっても良く、好ましくは曲率半径Rと構造体4cのピッチPの比R/Pが7%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下が好ましい。また、構造体4cの形状は、図3A〜図3Cに示した形状、またはこれらの反転形状に限定されるものではなく、トロイダル形状、双曲柱状、楕円柱状、多角柱状、自由曲面状としてもよい。また、プリズム形状、およびレンチキュラー形状の頂部を多角形状(例えば五角形状)の形状としてもよい。構造体4cをプリズム形状とする場合、プリズム形状の構造体4cの傾斜角度θは、例えば45°である。構造体4cは、窓材10に適用した場合に、上空から入射した光を反射して上空に多く戻す観点からは、傾斜角が45°以上傾斜した平面または曲面を有することが好ましい。このような形状にすることで、入射光はほぼ1回の反射で上空へ戻るため、反射層3の反射率がそれ程高く無くとも効率的に上空方向へ入射光を反射できると共に、反射層3における光の吸収を低減できるからである。
【0047】
また、図4Aに示すように、構造体4cの形状を、光学フィルム1の入射面S1または出射面S2に垂直な垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。この場合、構造体4cの主軸lmが、垂線l1を基準にして構造体4cの配列方向aに傾くことになる。ここで、構造体4cの主軸lmとは、構造体断面の底辺の中点と構造体の頂点とを通る直線を意味する。地面に対して略垂直に配置された窓材10に光学フィルム1を貼る場合には、図4Bに示すように、構造体4cの主軸lmが、垂線l1を基準にして窓材10の下方(地面側)に傾いていることが好ましい。一般に窓を介した熱の流入が多いのは昼過ぎ頃の時間帯であり、太陽の高度が45°より高いことが多いため、上記形状を採用することで、これら高角度から入射する光を効率的に上方に反射できるからである。図4Aおよび図4Bでは、プリズム形状の構造体4cを垂線l1に対して非対称な形状とした例が示されている。なお、プリズム形状以外の構造体4cを垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。例えば、コーナーキューブ体を垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。
【0048】
第1の光学層4が、100℃での貯蔵弾性率の低下が少なく、25℃と100℃とでの貯蔵弾性率が著しく異ならない樹脂を主成分としていることが好ましい。具体的には、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下であり、100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上である樹脂を含んでいることが好ましい。なお、第1の光学層4は、1種類の樹脂で構成されているのが好ましいが、2種類以上の樹脂を含んでいてもよい。また、必要に応じて、添加剤が混入されていてもよい。
【0049】
このように100℃での貯蔵弾性率の低下が少なく、25℃と100℃とでの貯蔵弾性率が著しく異ならない樹脂を主成分としていると、熱、または熱と加圧とを伴うプロセスが第1の光学層4の凹凸面(第1の面)を形成後に存在する場合でも、設計した界面形状をほぼ保つことができる。これに対して、100℃での貯蔵弾性率の低下が大きく、25℃と100℃とでの貯蔵弾性率が著しく異なる樹脂を主成分としていると、設計した界面形状からの変形が大きくなり、光学フィルム1にカールが生じたりする。
【0050】
ここで、熱を伴うプロセスには、アニール処理などのように直接的に光学フィルム1またはその構成部材に対して熱を加えるようなプロセスのみならず、薄膜の成膜時、および樹脂組成物の硬化時などに、成膜面が局所的に温度上昇して間接的にそれらに対して熱を加えるようなプロセスや、エネルギー線照射により金型の温度が上昇し、間接的に光学フィルムに熱を加えるようなプロセスも含まれる。また、上述した貯蔵弾性率の数値範囲を限定することにより得られる効果は、樹脂の種類に特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、およびエネルギー線照射型樹脂のいずれでも得ることができる。
【0051】
第1の光学層4の貯蔵弾性率は、例えば以下のようにして確認することができる。第1の光学層4の表面が露出している場合には、その露出面の貯蔵弾性率を微小硬度計を用いて測定することにより確認することができる。また、第1の光学層4の表面に第1の基材4aなどが形成されている場合には、第1の基材4aなどを剥離して、第1の光学層4の表面を露出させた後、その露出面の貯蔵弾性率を微小硬度計を用いて測定することにより確認することができる。
【0052】
高温下での弾性率の低下を抑制する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂にあっては、側鎖の長さおよび種類などを調整する方法が挙げられ、熱硬化型樹脂、およびエネルギー線照射型樹脂にあっては、架橋点の量および架橋材の分子構造などを調整する方法が挙げられる。但し、このような構造変更によって樹脂材料そのものに求められる特性が損なわれないようにすることが好ましい。例えば、架橋剤の種類によっては室温付近での弾性率が高くなり、脆くなってしまったり、収縮が大きくなりフィルムが湾曲したり、カールしたりすることがあるので、架橋剤の種類を所望とする特性に応じて適宜選択することが好ましい。
【0053】
第1の光学層4が、結晶性高分子材料を主成分として含んでいる場合には、ガラス転移点が、製造プロセス中の最高温度より大きく、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が少ない樹脂を主成分としていることが好ましい。これに対して、ガラス転移点が、室温25℃以上、製造プロセス中の最高温度以下の範囲内にあり、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が大きい樹脂を用いると、製造プロセス中に、設計した理想的な界面形状を保持することが困難になる。
【0054】
第1の光学層4が、非晶性高分子材料を主成分として含んでいる場合には、融点が、製造プロセス中の最高温度より大きく、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が少ない樹脂を主成分としていることが好ましい。これに対して、融点が、室温25℃以上、製造プロセス中の最高温度以下の範囲内にあり、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が大きい樹脂を用いると、製造プロセス中に、設計した理想的な界面形状を保持することが困難になる。
【0055】
ここで、製造プロセス中の最高温度とは、製造プロセス中における第1の光学層4の凹凸面(第1の面)の最高温度を意味している。上述した貯蔵弾性率の数値範囲、およびガラス転移点の温度範囲は、第2の光学層5も満たしていることが好ましい。
【0056】
すなわち、第1の光学層4、および第2の光学層5の少なくとも一方が、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である樹脂を含んでいることが好ましい。室温25℃において光学フィルム1に可撓性を付与することができるので、ロール・ツー・ロールでの光学フィルム1の製造が可能となるからである。
【0057】
第1の基材4a、および第2の基材5aは、例えば、透明性を有している。基材の形状としては、光学フィルム1に可撓性を付与する観点から、フィルム状を有することが好ましいが、特にこの形状に限定されるものではない。第1の基材4a、および第2の基材5aの材料としては、例えば、公知の高分子材料を用いることができる。公知の高分子材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、特にこれらの材料に限定されるものではない。第1の基材4a、および第2の基材5aの厚さは、生産性の観点から38〜100μmであることが好ましいが、この範囲に特に限定されるものではない。第1の基材4a、および第2の基材5aは、エネルギー線透過性を有することが好ましい。これにより、後述するように、第1の基材4a、または第2の基材5aと反射層3との間に介在させたエネルギー線硬化型樹脂に対して、第1の基材4a、または第2の基材5a側からエネルギー線を照射し、エネルギー線硬化型樹脂を硬化させることができるからである。
【0058】
第1の光学層4、および第2の光学層5は、例えば、透明性を有する。第1の光学層4、および第2の光学層5は、例えば、樹脂組成物を硬化することにより得られる。樹脂組成物としては、製造の容易性の観点からすると、光または電子線などにより硬化するエネルギー線硬化型樹脂、または熱により硬化する熱硬化型樹脂を用いることが好ましい。エネルギー線硬化型樹脂としては、光により硬化する感光性樹脂組成物が好ましく、紫外線により硬化する紫外線硬化型樹脂組成物が最も好ましい。樹脂組成物は、第1の光学層4、または第2の光学層5と反射層3との密着性を向上させる観点から、リン酸を含有する化合物、コハク酸を含有する化合物、ブチロラクトンを含有する化合物をさらに含有することが好ましい。リン酸を含有する化合物としては、例えばリン酸を含有する(メタ)アクリレート、好ましくはリン酸を官能基に有する(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。コハク酸を含有する化合物としては、例えば、コハク酸を含有する(メタ)アクリレート、好ましくはコハク酸を官能基に有する(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。ブチロラクトンを含有する化合物としては、例えば、ブチロラクトンを含有する(メタ)アクリレート、好ましくはブチロラクトンを官能基に有する(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。
【0059】
紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを含有している。また、紫外線硬化型樹脂組成物が、必要に応じて、光安定剤、難燃剤、レベリング剤および酸化防止剤などをさらに含有するようにしてもよい。
【0060】
アクリレートとしては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーを用いることが好ましい。このモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートなどを用いることができる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基のいずれかを意味するものである。ここで、オリゴマーとは、分子量500以上60000以下の分子をいう。
【0061】
光重合開始剤としては、公知の材料から適宜選択したものを使用できる。公知の材料としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、アントラキノン誘導体などを単独で、または併用して用いることができる。重合開始剤の配合量は、固形分中0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であると、光硬化性が低下し、実質的に工業生産に適さない。一方、10質量%を超えると、照射光量が小さい場合に、塗膜に臭気が残る傾向にある。ここで、固形分とは、硬化後のハードコート層12を構成する全ての成分をいう。具体的には例えば、アクリレート、および光重合開始剤などを固形分という。
【0062】
樹脂はエネルギー線照射や熱などによって構造を転写できるものが好ましく、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、熱可塑性樹脂など上述の屈折率の要求を満たすものであればどのような種類の樹脂を使用しても良い。
【0063】
硬化収縮を低減するために、オリゴマーを添加してもよい。硬化剤としてポリイソシアネートなどを含んでもよい。また、第1の光学層4、および第2の光学層5との密着性を考慮して水酸基やカルボキシル基、リン酸基を有するような単量体、多価アルコール類、カルボン酸、シラン、アルミ、チタンなどのカップリング剤や各種キレート剤などを添加しても良い。
【0064】
樹脂組成物が、架橋剤をさらに含んでいることが好ましい。この架橋剤としては、環状の架橋剤を用いることが特に好ましい。架橋剤を用いることで、室温での貯蔵弾性率を大きく変化させることなく、樹脂を耐熱化することができるからである。なお、室温での貯蔵弾性率が大きく変化すると、光学フィルム1が脆くなり、ロール・ツー・ロール工程などによる光学フィルム1の作製が困難となる。環状の架橋剤としては、例えば、ジオキサングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどを挙げることができる。
【0065】
第1の基材4a、または第2の基材5aは、第1の光学層4、または第2の光学層5より水蒸気透過率が低いことが好ましい。例えば、第1の光学層4をウレタンアクリレートのようなエネルギー線硬化型樹脂で形成する場合には、第1の基材4aを第1の光学層4より水蒸気透過率が低く、かつ、エネルギー線透過性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂により形成することが好ましい。これにより、入射面S1または出射面S2から反射層3への水分の拡散を低減し、反射層3に含まれる金属などの劣化を抑制することができる。したがって、光学フィルム1の耐久性を向上させることができる。なお、厚み75μmのPETの水蒸気透過率は、10g/m2/day(40℃、90%RH)程度である。
【0066】
第1の光学層4および第2の光学層5の少なくとも一方が、極性の高い官能基を含み、その含有量が第1の光学層4と第2の光学層5とで異なることが好ましい。第1の光学層4と第2の光学層5との両方が、リン酸化合物(例えば、リン酸エステル)を含み、第1の光学層4と第2の光学層5とにおける上記リン酸化合物の含有量が異なることが好ましい。リン酸化合物の含有量は、第1の光学層4と第2の光学層5とにおいて、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上異なることが好ましい。
【0067】
第1の光学層4、および第2の光学層5の少なくとも一方が、リン酸化合物を含む場合、反射層3は、リン酸化合物を含む第1の光学層4または第2の光学層5と接する面に、酸化物もしくは窒化物、酸窒化物を含むことが好ましい。反射層3は、リン酸化合物を含む第1の光学層4または第2の光学層5と接する面に、酸化亜鉛(ZnO)または酸化ニオブを含む層を有することが特に好ましい。これらの光学層と波長選択反射層などの反射層3との密着性が向上するためである。また、反射層3がAg等の金属を含む場合に、腐食防止効果が高いからである。また、この反射層は、Al、Gaなどのドーパントを含有していても良い。金属酸化物層をスパッタ法等で形成する場合に、膜質や平滑性が向上するからである。
【0068】
第1の光学層4、および第2の光学層5の少なくとも一方が、光学フィルム1や窓材10などに意匠性を付与する観点からすると、可視領域における特定の波長帯の光を吸収する特性を有することが好ましい。樹脂中に分散させる顔料は、有機系顔料および無機系顔料のいずれであってもよいが、特に顔料自体の耐候性が高い無機系顔料とすることが好ましい。具体的には、ジルコングレー(Co、NiドープZrSiO4)、プラセオジムイエロー(PrドープZrSiO4)、クロムチタンイエロー(Cr、SbドープTiO2またはCr、WドープTiO2)、クロムグリーン(Cr23など)、ピーコックブルー((CoZn)O(AlCr)23)、ビクトリアグリーン((Al、Cr)23)、紺青(CoO・Al23・SiO2)、バナジウムジルコニウム青(VドープZrSiO4)、クロム錫ピンク(CrドープCaO・SnO2・SiO2)、陶試紅(MnドープAl23)、サーモンピンク(FeドープZrSiO4)などの無機顔料、アゾ系顔料やフタロシアニン系顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0069】
(反射層)
反射層は、例えば、入射角(θ、φ)で入射面に入射した光のうち、特定波長帯の光を指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光を透過する波長選択反射層、入射角(θ、φ)で入射面に入射した光を指向反射する反射層、または散乱が少なく反対側を視認できる透明性を有する半透過層である。波長選択反射層は、例えば、積層膜、透明導電層、または機能層である。また、積層膜、透明導電層、および機能層を2以上組み合わせて波長選択層としてもよい。反射層3の平均層厚は、好ましくは20μm、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。反射層3の平均層厚が20μmを超えると、透過光が屈折する光路が長くなり、透過像が歪んで見える傾向がある。反射層の形成方法としては、例えば、スパッタ法、蒸着法、ディップコーティング法、ダイコーティング法などを用いることができる。
【0070】
以下、積層膜、透明導電層、機能層、および半透過層について順次説明する。
(積層膜)
積層膜は、例えば、屈折率の異なる低屈折率層および高屈折率層を交互に積層してなる積層膜である。または、積層膜は、例えば、赤外領域において反射率の高い金属層と、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する高屈折率層とを交互に積層してなる積層膜である。高屈折率層としては、光学透明層、または透明導電層を用いることができる。
【0071】
赤外領域において反射率の高い金属層は、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの単体を2種以上含む合金を主成分とする。そして、実用性の面を考慮すると、これらのうちのAg系、Cu系、Al系、Si系またはGe系の材料が好ましい。また、金属層の材料として合金を用いる場合には、金属層は、AlCu、AlTi、AlCr、AlCo、AlNdCu、AlMgSi、AgPdCu、AgPdTi、AgCuTi、AgPdCa、AgPdMg、AgPdFe、AgまたはSiBなどを主成分とすることが好ましい。また、金属層の腐食を抑えるために、金属層に対してTi、Ndなどの材料を添加することが好ましい。特に、金属層の材料としてAgを用いる場合には、上記材料を添加することが好ましい。
【0072】
光学透明層は、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する光学透明層である。光学透明層は、例えば酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタンなどの高誘電体を主成分とする。透明導電層は、例えば、ZnO系酸化物、インジウムドープ酸化錫などの主成分とする。なお、ZnO系酸化物としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウム(Ga)およびアルミニウム(Al)をドープした酸化亜鉛(GAZO)、Alをドープした酸化亜鉛(AZO)、およびガリウム(Ga)をドープした酸化亜鉛(GZO)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0073】
また、積層膜に含まれる高屈折率層の屈折率は、1.7以上2.6以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1.8以上2.6以下、更に好ましくは1.9以上2.6以下である。これにより、クラックが発生しない程度の薄い膜で可視光領域での反射防止が実現できるからである。ここで、屈折率は、波長550nmにおけるものである。高屈折率層は、例えば、金属の酸化物を主成分とする層である。金属の酸化物としては、層の応力を緩和し、クラックの発生を抑制する観点からすると、酸化亜鉛以外の金属酸化物を用いることが好ましい場合もある。特に、酸化ニオブ(例えば、五酸化ニオブ)、酸化タンタル(例えば、五酸化タンタル)、および酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。高屈折率層の膜厚は、好ましくは10nm以上120nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上80nm以下である。膜厚が10nm未満であると、可視光が反射しやすくなる傾向がある。一方、膜厚が120を超えると、透過率の低下やクラックが発生しやすくなる傾向がある。
【0074】
なお、積層膜は、無機材料からなる薄膜に限定されるものではなく、高分子材料からなる薄膜や高分子中に微粒子などを分散した層を積層して構成してもよい。また、これら光学透明層成膜時の下層金属の酸化劣化を防ぐ目的で、成膜する光学透明層の界面に数nm程度のTiなどの薄いバッファー層を設けてもよい。ここで、バッファー層とは、上層成膜時に、自らが酸化することで下層である金属層などの酸化を抑制するための層である。
【0075】
(透明導電層)
透明導電層は、可視領域において透明性を有する導電性材料を主成分とする透明導電層である。透明導電層は、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ含有体、インジウムドープ酸化錫、インジウムドープ酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化錫などの透明導電物質を主成分とする。もしくはこれらのナノ粒子や金属などの導電性を持つ材料のナノ粒子、ナノロッド、ナノワイヤーを樹脂中に高濃度に分散させた層を用いても良い。
【0076】
(機能層)
機能層は、外部刺激により反射性能などが可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする。クロミック材料は、例えば、熱、光、侵入分子などの外部刺激により構造を可逆的に変化させる材料である。クロミック材料としては、例えば、フォトクロミック材料、サーモクロミック材料、ガスクロミック材料、エレクトロクロミック材料を用いることができる。
【0077】
フォトクロミック材料とは、光の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。フォトクロミック材料は、例えば紫外線などの光照射により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。フォトクロミック材料としては、例えばCr、Fe、NiなどをドープしたTiO2、WO3、MoO3、Nb25などの遷移金属酸化物を用いることができる。また、これらの層と屈折率の異なる層を積層することで波長選択性を向上させることもできる。
【0078】
サーモクロミック材料とは、熱の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。フォトクロミック材料は、加熱により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。サーモクロミック材料としては、例えばVO2などを用いることができる。また、転移温度や転移カーブを制御する目的で、W、Mo、Fなどの元素を添加することもできる。また、VO2などのサーモクロミック材料を主成分とする薄膜を、TiO2やITOなどの高屈折率体を主成分とする反射防止層で挟んだ積層構造としてもよい。
【0079】
または、コレステリック液晶などのフォトニックラティスを用いることもできる。コレステリック液晶は層間隔に応じた波長の光を選択的に反射することができ、この層間隔は温度によって変化するため、加熱により、反射率や色などの物性を可逆的に変化させることができる。この時、層間隔の異なるいくつかのコレステリック液晶層を用いて反射帯域を広げることも可能である。
【0080】
エレクトロクロミック材料とは、電気により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる材料である。エレクトロクロミック材料としては、例えば、電圧の印加により構造を可逆的に変化させる材料を用いることができる。より具体的には、エレクトロクロミック材料としては、例えば、プロトンなどのドープまたは脱ドープにより、反射特性が変わる反射型調光材料を用いることができる。反射型調光材料とは、具体的には、外部刺激により、光学的な性質を透明な状態と、鏡の状態、および/またはその中間状態に制御することができる材料である。このような反射型調光材料としては、例えば、マグネシウムおよびニッケルの合金材料、マグネシウムおよびチタンの合金材料を主成分とする合金材料、WO3やマイクロカプセル中に選択反射性を有する針状結晶を閉じ込めた材料などを用いることができる。
【0081】
具体的な機能層の構成としては、例えば、第2の光学層上に、上記合金層、Pdなどを含む触媒層、薄いAlなどのバッファー層、Ta25などの電解質層、プロトンを含むWO3などのイオン貯蔵層、透明導電層が積層された構成を用いることができる。または、第2の光学層上に透明導電層、電解質層、WO3などのエレクトロクロミック層、透明導電層が積層された構成を用いることができる。これらの構成では、透明導電層と対向電極の間に電圧を印加することにより、電解質層に含まれるプロトンが合金層にドープまたは脱ドープされる。これにより、合金層の透過率が変化する。また、波長選択性を高めるために、エレクトロクロミック材料をTiO2やITOなどの高屈折率体と積層することが望ましい。また、その他の構成として、第2の光学層上に透明導電層、マイクロカプセルを分散した光学透明層、透明電極が積層された構成を用いることができる。この構成では、両透明電極間に電圧を印加することにより、マイクロカプセル中の針状結晶が配向した透過状態にしたり、電圧を除くことで針状結晶が四方八方を向き、波長選択反射状態にすることができる。
【0082】
(半透過層)
半透過層は、半透過性の反射層である。半透過性の反射層としては、例えば、半導体性物質を含む薄い金属層、金属窒化層などが挙げられ、反射防止、色調調整、化学的濡れ性向上、または環境劣化に対する信頼性向上などの観点からすると、上記反射層を酸化層、窒化層、または酸窒化層などと積層した積層構造とすることが好ましい。
【0083】
可視領域および赤外領域において反射率の高い金属層として、例えばAu、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの単体を2種以上含む合金を主成分とする材料が挙げられる。そして、実用性の面を考慮すると、これらのうちのAg系、Cu系、Al系、Si系またはGe系の材料が好ましい。また、金属層の腐食を抑えるために、金属層に対してTi、Ndなどの材料を添加することが好ましい。また金属窒化層としては、例えば、TiN、CrN、WNなどが挙げられる。
【0084】
半透過層の膜厚は、例えば、2nm以上40nm以下の範囲とすることが可能であるが、可視領域および近赤外領域において半透過性を有する膜厚であればよく、これに限定されるものではない。ここで、半透過性とは、波長500nm以上1000nm以下における透過率が5%以上70%以下、好ましくは10%以上60%以下、更に好ましくは15%以上55%以下であることを示す。また、半透過層とは、波長500nm以上1000nm以下における透過率が5%以上70%以下、好ましくは10%以上60%以下、更に好ましくは15%以上55%以下である反射層を示す。
【0085】
(光学フィルムの機能)
図5A、図5Bは、光学フィルムの機能の一例を説明するための断面図である。ここでは、例として、構造体の形状が傾斜角45°のプリズム形状である場合を例として説明する。図5Aに示すように、この光学フィルム1に入射した太陽光のうち近赤外線L1の一部は、入射した方向と同程度の上空方向に指向反射するのに対して、可視光L2は光学フィルム1を透過する。
【0086】
また、図5Bに示すように、光学フィルム1に入射し、反射層3の反射層面で反射された光は、入射角度に応じた割合で、上空反射する成分LAと、上空反射しない成分LBとに分離する。そして、上空反射しない成分LBは、第2の光学層4と空気との界面で全反射した後、最終的に入射方向とは異なる方向に反射する。
【0087】
光の入射角度をα、第1の光学層4の屈折率をn、反射層3の反射率をRとすると、全入射成分に対する上空反射成分LAの割合xは以下の式(1)で表される。
x=(sin(45−α’)+cos(45−α’)/tan(45+α’))/(sin(45−α’)+cos(45−α’))×R2 ・・・(1)
但し、α’=sin-1(sinα/n)
【0088】
上空反射しない成分LBの割合が多くなると、入射光が上空反射する割合が減少する。上空反射の割合を向上させるためには、反射層3の形状、すなわち、第1の光学層4の構造体4cの形状を工夫することが有効である。例えば、上空反射の割合を向上させるためには、構造体4cの形状は、図3Cに示すレンチキュラー形状、または図4に示す非対称な形状とすることが好ましい。このような形状にすることで、入射光と全く同じ方向に光を反射することはできなくても、建築用窓材などの上方向から入射した光を上方向に反射させる割合を多くすることが可能である。図3Cおよび図4に示す二つの形状は、図6Aおよび図6Bに示すように、反射層3による入射光の反射回数が1回で済むため、図5に示すような2回(もしくは3回以上)反射させる形状よりも、最終的な反射成分を多くすることが可能である。例えば、2回反射を利用する場合、反射層3のある波長に対する反射率を80%とすると、上空反射率は理論的には64%となるが、1回反射で済めば上空反射率は80%となる。
【0089】
図7は、柱状の構造体4cの稜線l3と、入射光Lおよび反射光L1との関係を示す。この図7に示した例では、反射層3は、一方向に延在された柱状体が一次元配列された形状を有している。反射層3が波長選択反射層である場合、光学フィルム1は、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光Lのうち、特定波長帯の光L1を選択的に(θo、−φ)の方向(0°<θo<90°)に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光L2を透過することが好ましい。また、反射層3が半透過層である場合、光学フィルム1は、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光Lのうち一部の光L1を(θo、−φ)の方向(0°<θo<90°)に指向反射するのに対して、残りの光L2を透過することが好ましい。このような関係を満たすことで、特定波長帯の光を上空方向に反射できるからである。但し、θ:入射面S1に対する垂線l1と、入射光Lまたは反射光L1とのなす角である。φ:入射面S1内において柱状の構造体4cの稜線l3と直交する直線とl2と、入射光Lまたは反射光L1を入射面S1に射影した成分とのなす角である。なお、垂線l1を基準にして時計回りに回転した角度θを「+θ」とし、反時計回りに回転した角度θを「−θ」とする。直線l2を基準にして時計回りに回転した角度φを「+φ」とし、反時計回りに回転した角度φを「−φ」とする。
【0090】
[光学フィルムの製造装置]
図8は、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムを製造するための製造装置の一構成例を示す概略図である。図8に示すように、この製造装置は、ラミネートロール41、42、ガイドロール43、塗布装置45、および照射装置46を備える。
【0091】
ラミネートロール41、42は、反射層付き光学層9と、第2の基材5aとをニップ可能に構成されている。ここで、反射層付き光学層9は、第1の光学層4の一主面上に反射層3を成膜したものである。なお、反射層付き光学層9として、第1の光学層4の反射層3が成膜された面と反対側の他主面上に第1の基材4aが形成されていてもよい。この例では、第1の光学層4の一主面上に反射層3が成膜され、他主面上に第1の基材4aが形成された場合が示されている。ガイドロール43は、帯状の光学フィルム1を搬送できるように、この製造装置内の搬送路に配置されている。ラミネートロール41、42およびガイドロール43の材質は特に限定されるものではなく、所望とするロール特性に応じてステンレスなどの金属、ゴム、シリコーンなどを適宜選択して用いることができる。
【0092】
塗布装置45は、例えば、コーターなどの塗布手段を備える装置を用いることができる。コーターとしては、例えば、塗布する樹脂組成物の物性などを考慮して、グラビア、ワイヤバー、およびダイなどのコーターを適宜使用することができる。照射装置46は、例えば、電子線、紫外線、可視光線、またはガンマ線などの電離線を照射する照射装置である。この例では、照射装置46として紫外線を照射するUVランプを用いた場合が図示されている。
【0093】
[光学フィルムの製造方法]
以下、図8〜図11を参照して、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの製造方法の一例について説明する。なお、以下に示す製造プロセスの一部または全部は、生産性を考慮して、図8に示すようなロール・ツー・ロールにより行われることが好ましい。但し、金型の作製工程は除くものとする。
【0094】
まず、図9Aに示すように、例えばバイト加工またはレーザー加工などにより、構造体4cと同一の凹凸形状の金型、またはその金型の反転形状を有する金型(レプリカ)を形成する。次に、図9Bに示すように、例えば溶融押し出し法または転写法などを用いて、上記金型の凹凸形状をフィルム状の樹脂材料に転写する。転写法としては、型にエネルギー線硬化型樹脂を流し込み、エネルギー線を照射して硬化させる方法、樹脂に熱や圧力を加え、形状を転写する方法、または樹脂フィルムをロールから供給し、熱を加えながら型の形状を転写する方法(ラミネート転写法)などが挙げられる。これにより、図9Cに示すように、一主面に構造体4cを有する第1の光学層4が形成される。
【0095】
また、図9Cに示すように、第1の基材4a上に、第1の光学層4を形成するようにしてもよい。この場合には、例えば、フィルム状の第1の基材4aをロールから供給し、該基材上にエネルギー線硬化型樹脂を塗布した後に型に押し当て、型の形状を転写し、エネルギー線を照射して樹脂を硬化させる方法が用いられる。なお、樹脂は、架橋剤をさらに含んでいることが好ましい。室温での貯蔵弾性率を大きく変化させることなく、樹脂を耐熱化することができるからである。
【0096】
次に、図10Aに示すように、その第1の光学層4の一主面上に反射層3を成膜する。反射層3の成膜方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ウェットコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられ、これらの成膜方法から、構造体4cの形状などに応じて適宜選択することが好ましい。次に、図10Bに示すように、必要に応じて、反射層3に対してアニール処理31を施す。アニール処理の温度は、例えば100℃以上250℃以下の範囲内である。
【0097】
次に、図10Cに示すように、未硬化状態の樹脂22を反射層3上に塗布する。樹脂22としては、例えば、エネルギー線硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂などを用いることができる。エネルギー線硬化型樹脂としては、紫外線硬化樹脂が好ましい。次に、図11Aのように、樹脂21上に第2の基材5aを被せることにより、積層体を形成する。次に、図11Bに示すように、例えばエネルギー線32または加熱32により樹脂22を硬化させるとともに、積層体に対して圧力33を加える。エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、可視光線、ガンマ線、電子線などを用いることができ、生産設備の観点から、紫外線が好ましい。積算照射量は、樹脂の硬化特性、樹脂や基材11の黄変抑制などを考慮して適宜選択することが好ましい。積層体に加える圧力は、0.01MPa以上1MPa以下の範囲内であることが好ましい。0.01MPa未満であると、フィルムの走行性に問題が生じる。一方、1MPaを超えると、ニップロールとして金属ロールを用いる必要があり、圧力ムラが生じ易く好ましくない。以上により、図11Cに示すように、反射層3上に第2の光学層5が形成され、光学フィルム1が得られる。
【0098】
ここで、図8に示す製造装置を用いて、光学フィルム1の形成方法について具体的に説明する。まず、図示しない基材供給ロールから第2の基材5aを送出し、送出された第2の基材5aは、塗布装置45の下を通過する。次に、塗布装置45の下を通過する第2の基材5a状に、塗布装置45により電離線硬化樹脂44を塗布する。次に、電離線硬化樹脂44が塗布された第2の基材5aをラミネートロールに向けて搬送する。一方、図示しない光学層供給ロールから反射層付き光学層9を送出し、ラミネートロール41、42に向けて搬送する。
【0099】
次に、第2の基材5aと反射層付き光学層9との間に気泡が入らないように、搬入された第2の基材5aと反射層付き光学層9とをラミネートロール41、42により挟み合わせ、第2の基材5aに対して反射層付き光学層9をラミネートする。次に、反射層付き光学層9によりラミネートされた第2の基材5aを、ラミネートロール41の外周面に沿わせながら搬送するとともに、照射装置46により第2の基材5a側から電離線硬化樹脂44に電離線を照射し、電離線硬化樹脂44を硬化させる。これにより、第2の基材5aと反射層付き光学層9とが電離線硬化樹脂44を介して貼り合わされ、目的とする長尺の光学フィルム1が作製される。次に、作製された帯状の光学フィルム1を図示しない巻き取りロールにより巻き取る。これにより、帯状の光学フィルム1が巻回された原反が得られる。
【0100】
硬化した第1の光学層4は、上述の第2の光学層形成時のプロセス温度をt℃としたときに、(t−20)℃における貯蔵弾性率が3×107Pa以上であることが好ましい。ここで、プロセス温度tとは、例えば、ラミネートロール41の加熱温度である。第1の光学層4は、例えば、第1の基材4a上に設けられ、第1の基材4aを介してラミネートロール41に沿うように搬送されるため、実際に第1の光学層4にかかる温度は、経験的に(t−20)℃程度であることが分かっている。したがって、第1の光学層4の(t−20)℃における貯蔵弾性率を3×107Pa以上にすることにより、熱、または熱と加圧とにより光学層内部の界面の凹凸形状が変形することを抑制することができる。
【0101】
また、第1の光学層4は、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下であることが好ましい。これにより、室温において可撓性を光学フィルムに付与することができる。したがって、ロール・ツー・ロールなどの製造工程により光学フィルム1を作製することが可能となる。
【0102】
なお、プロセス温度tは、光学層または基材の使用樹脂の耐熱性を考慮すると、200℃以下であることが好ましい。ただし、耐熱性の高い樹脂を用いることにより、プロセス温度tを200℃以上に設定することも可能である。
【0103】
第1の実施形態によれば、反射層3が形成される第1の光学層4の成膜面を凹凸面としている。また、5°以上60°以下の入射角度で、光学フィルム1の両面のいずれか一方から入射し、光学フィルム1により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値を、光学フィルム1の両面のいずれにおいても、0.05以下にしている。したがって、光学フィルム1の両面いずれからの入射においても、入射角による色調変化を抑制することができる。
【0104】
<変形例>
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0105】
[第1の変形例]
図12Aは、本発明の第1の実施形態の第1の変形例を示す断面図である。図12Aに示すように、この第1の変形例に係る光学フィルム1は、凹凸形状の入射面S1を有している。この入射面S1の凹凸形状と、第1の光学層4の凹凸形状とは、例えば、両者の凹凸形状が対応するように形成されており、凸部の頂部と凹部の最下部との位置が一致している。入射面S1の凹凸形状は、第1の光学層4の凹凸形状よりもなだらかであることが好ましい。
【0106】
[第2の変形例]
図12Bは、本発明の第1の実施形態の第2の変形例を示す断面図である。図12Bに示すように、この第2の変形例に係る光学フィルム1では、反射層3が形成された第1の光学層4の凹凸面のうちの凸形状頂部の位置が、第1の光学層4の入射面S1とほぼ同一の高さとなるように形成されている。
【0107】
<2.第2の実施形態>
図13〜図16は、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムの構造体の構成例を示す。第2の実施形態において、第1の実施形態と対応する箇所には同一の符号を付す。第2の実施形態は、第1の光学層4の一主面に、構造体4cが2次元配列されている点において、第1の実施形態とは異なっている。2次元配列は、最稠密充填状態での2次元配列であることが好ましい。指向反射率を向上することができるからである。
【0108】
図13A〜図13Bに示すように、第1の光学層4の一主面には、例えば、柱状の構造体(柱状体)4cを直交配列することにより形成されている。具体的には、第1の方向に向かって配列された第1の構造体4cと、上記第1の方向とは直交する第2の方向に向かって配列された第2の構造体4cとが、互いの側面を貫通するように配列されている。柱状の構造体4cは、例えば、プリズム形状(図13A)、レンチキュラー形状(図13B)などの柱状、またはこれらの柱状の頂部を多角形状(例えば五角形状)とした形状(図13C)を有する凸部または凹部である。
【0109】
また、第1の光学層4の一主面に、例えば、球面状やコーナーキューブ状などの形状を有する構造体4cを最稠密充填状態で2次元配列することにより、正方稠密アレイ、デルタ稠密アレイ、六方稠密アレイなどの稠密アレイを形成するようにしてもよい。正方稠密アレイは、例えば図14A〜図14Cに示すように、四角形状(例えば正方形状)の底面を有する構造体4cを正方稠密状、すなわちマトリックス状(格子状)に配列させたものである。六方稠密アレイは、例えば図15A〜図15Cに示すように、六方形状の底面を有する構造体4cを六方稠密状に配列させたものである。デルタ稠密アレイは、例えば図16A〜図16Bに示すように、三角形状の底面を有する構造体4c(例えば三角錐)を最稠密充填状態で配列させたものである。
【0110】
構造体4cは、例えば、コーナーキューブ状、半球状、半楕円球状、プリズム状、シリンドリカル形状、自由曲面状、多角形状、円錐形状、多角錐状、円錐台形状、放物面状などの凸部または凹部である。構造体4cの底面は、例えば、円形状、楕円形状、または三角形状、四角形状、六角形状もしくは八角形状などの多角形状を有している。また、構造体4cのピッチP1、P2は、所望とする光学特性に応じて適宜選択することが好ましい。また、光学フィルム1の入射面に対して垂直な垂線に対して、構造体4cの主軸を傾ける場合、構造体4cの2次元配列のうちの少なくとも一方の配列方向に構造体4cの主軸を傾けるようにすることが好ましい。地面に対して略垂直に配置された窓材に光学フィルム1を貼る場合には、構造体4cの主軸が、垂線を基準にして窓材の下方(地面側)に傾いていることが好ましい。
【0111】
構造体4cがコーナーキューブ形状の場合、稜線Rが大きい場合は、上空に向けて傾けた方が良く、下方反射を抑制するという目的においては、地面側に向けて傾いている方が好ましい。太陽光線は、フィルムに対して斜めから入射するため、構造の奥まで光が入射しにくく、入射側の形状が重要となる。すなわち、稜線部分のRが大きい場合は、再帰反射光が減少してしまうため、上空に向けて傾けることでこの現象を抑制することができる。また、コーナーキューブ体では、反射面で3回反射することで再帰反射を実現するが、一部の光が2回反射により再帰反射以外の方向に漏れる。コーナーキューブを地面側に向けて傾けることで、この漏れ光を上空方向に多く戻すことができる。このように、形状や目的に応じてどちらの方向に傾けても良い。
【0112】
<3.第3の実施形態>
図17Aは、本発明の第3の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。第3の実施形態において、第1の実施形態と同一の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。第3の実施形態は、光の入射面に対して傾斜した複数の反射層3を光学層2内に備え、これらの反射層3を互いに平行に配列している点において、第1の実施形態とは異なっている。反射層3は、例えば波長選択反射層または半透過層である。
【0113】
図17Bは、本発明の第3の実施形態に係る光学フィルムの構造体の一構成例を示す斜視図である。構造体4cは、一方向に延在された三角柱状の凸部であり、この柱状の構造体4cが一方向に向かって一次元配列されている。構造体4cの延在方向に垂直な断面は、例えば、直角三角形状を有する。構造体4cの鋭角側の傾斜面上に、例えば、蒸着法、スパッタリング法などの、指向性を有する薄膜形成法により、反射層3が形成される。
【0114】
第3の実施形態によれば、複数の反射層3を光学層5内に平行に配列している。これにより、反射層3による反射回数を、コーナーキューブ形状やプリズム形状の構造体4cを形成した場合に比べて低減することができる。したがって、反射率を高くすることができ、かつ、反射層3による光の吸収を低減できる。
【0115】
<4.第4の実施形態>
第4の実施形態は、特定波長の光を指向反射するのに対して、特定波長以外の光を散乱させる点において、第1の実施形態とは異なっている。光学フィルム1は、入射光を散乱する光散乱体を備えている。この散乱体は、例えば、光学層2の表面、光学層2の内部、および反射層3と光学層2との間のうち、少なくとも1箇所に設けられている。光散乱体は、好ましくは、反射層3と第1の光学層4との間、第1の光学層4の内部、および第1の光学層4の表面のうちの少なくとも一箇所に設けられている。光学フィルム1を窓材などの支持体に貼り合わせる場合、室内側および室外側のどちらにも適用可能である。光学フィルム1を室外側に対して貼り合わせる場合、反射層3と窓材などの支持体との間にのみ、特定波長以外の光を散乱させる光散乱体を設けることが好ましい。反射層3と入射面との間に光散乱体が存在すると、指向反射特性が失われてしまうからである。また、室内側に光学フィルム1を貼り合せる場合には、その貼り合わせ面とは反対側の出射面と、反射層3との間に光散乱体を設けることが好ましい。
【0116】
図18Aは、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルム1の第1の構成例を示す断面図である。図18Aに示すように、第1の光学層4は、樹脂と微粒子11とを含んでいる。微粒子11は、第1の光学層4の主構成材料である樹脂とは異なる屈折率を有している。微粒子11としては、例えば有機微粒子および無機微粒子の少なくとも1種を用いることができる。また、微粒子11としては、中空微粒子を用いてもよい。微粒子11としては、例えば、シリカ、アルミナなどの無機微粒子、またはスチレン、アクリルやそれらの共重合体などの有機微粒子が挙げられるが、シリカ微粒子が特に好ましい。
【0117】
図18Bは、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルム1の第2の構成例を示す断面図である。図18Bに示すように、光学フィルム1は、第1の光学層4の表面に光拡散層12をさらに備えている。光拡散層12は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。微粒子としては、第1の例と同様のものを用いることができる。
【0118】
図18Cは、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルム1の第3の構成例を示す断面図である。図18Cに示すように、光学フィルム1は、反射層3と第1の光学層4との間に光拡散層12をさらに備えている。光拡散層12は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。微粒子としては、第1の例と同様のものを用いることができる。
【0119】
第4の実施形態によれば、赤外線などの特定波長帯の光を指向反射し、可視光などの特定波長対以外の光を散乱させることができる。したがって、光学フィルム1を曇らせて、光学フィルム1に対して意匠性を付与することができる。
【0120】
<5.第5の実施形態>
図19Aは、本発明の第5の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。第5の実施形態において、第1の実施形態と同一の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。図19Aに示すように、第5の実施形態に係る光学フィルム1は、光学層2aの凹凸面が樹脂材料などにより包埋されてはおらず、光学層2aの凹凸面上に形成された反射層3が露出している点において、第1の実施形態とは異なっている。光学フィルム1は、太陽光などの光が入射する凹凸形状の入射面S1と、この入射面S1より入射した光のうち、光学フィルム1を透過した光が出射される出射面S2とを有する。
【0121】
光学フィルム1が、必要に応じて、光学層2aの出射面S2に基材2bをさらに備えるようにしてもよい。また、光学フィルム1が、必要に応じて、光学層2aの出入射面S2上、または基材2b上に、貼合層6、および剥離層7を備えるようにしてもよい。光学層2a、基材2bとしては、上述の第1の実施形態における第1の光学層4、基材4aと同様のものを用いることができる。
【0122】
図19Bは、本発明の第5の実施形態に係る光学フィルムを被着体に貼り合わせた例を示す断面図である。図19Bに示すように、光学フィルム1の入射面S2が、例えば、貼合層6を介して被着体10aに対して貼り合わされる。被着体10aとしては、窓材、ブラインド、ロールスクリーン、プリーツスクリーンなどが好ましい。
【0123】
第5の実施形態によれば、反射層3が形成された光学層2aの凹凸面を入射面S1としているので、入射する光の一部は入射面S1により散乱されるのに対して、散乱されなかった光の一部が光学フィルム1を透過する。したがって、入射光により光の明るさを感じることはできるが、不透明であるという光学フィルム1を得ることができる。このような特性を有するため光学フィルム1は、プライバシーが要求される内装部材、外装部材、および日射遮蔽部材など、より具体的には窓材、ブラインド、ロールスクリーン、およびプリーツスクリーンなどに適用して好適である。
【0124】
<6.第6の実施形態>
図65は、本発明の第6の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。第5の実施形態は、光学フィルム1の入射面S1および出射面S2のうち、被着体に貼り合わされる面とは反対側の露出面上に、洗浄効果を発現する自己洗浄効果層51をさらに備えている点において、第1の実施形態とは異なっている。自己洗浄効果層51は、例えば、光触媒を含んでいる。光触媒としては、例えば、TiO2を用いることができる。
【0125】
上述したように、光学フィルム1は入射光を半透過する点に特徴を有している。光学フィルム1を屋外や汚れの多い部屋などで使用する際には、表面に付着した汚れにより光が散乱され透過性および反射性が失われてしまうため、表面が常に光学的に透明であることが好ましい。そのため、表面が撥水性や親水性などに優れ、表面が自動的に洗浄効果を発現することが好ましい。
【0126】
第6の実施形態によれば、光学フィルム1が自己洗浄効果層51を備えているので、撥水性や親水性などを入射面に付与することができる。したがって、入射面に対する汚れなどの付着を抑制し、指向反射特性の低減を抑制できる。
【0127】
<7.第7の実施形態>
上述の第1の実施形態では、本発明を窓材などに適用する場合を例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、窓材以外の内装部材や外装部材などに適用することが可能である。また、本発明は壁や屋根などのように固定された不動の内装部材および外装部材のみならず、季節や時間変動などに起因する太陽光の光量変化に応じて、太陽光の透過量および/または反射量を内装部材または外装部材を動かして調整し、屋内などの空間に取り入れ可能な装置にも適用可能である。第7の実施形態では、このような装置の一例として、複数の日射遮蔽部材からなる日射遮蔽部材群の角度を変更することにより、日射遮蔽部材群による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置(ブラインド装置)について説明する。
【0128】
図20は、本発明の第7の実施形態に係るブラインド装置の一構成例を示す斜視図である。図20に示すように、日射遮蔽装置であるブラインド装置は、ヘッドボックス203と、複数のスラット(羽)202aからなるスラット群(日射遮蔽部材群)202と、ボトムレール204とを備える。ヘッドボックス203は、複数のスラット202aからなるスラット群202の上方に設けられている。ヘッドボックス203からラダーコード206、および昇降コード205が下方に向かって延びており、これらのコードの下端にボトムレール204が吊り下げられている。日射遮蔽部材であるスラット202aは、例えば、細長い矩形状を有し、ヘッドボックス203から下方に延びるラダーコード206により所定間隔で吊り下げ支持されている。また、ヘッドボックス203には、複数のスラット202aからなるスラット群202の角度を調整するためのロッドなどの操作手段(図示省略)が設けられている。
【0129】
ヘッドボックス203は、ロッドなどの操作手段の操作により応じて、複数のスラット202aからなるスラット群202を回転駆動することにより、室内などの空間に取り込まれる光量を調整する駆動手段である。また、ヘッドボックス203は、昇降操作コード207などの操作手段の適宜操作に応じて、スラット群202を昇降する駆動手段(昇降手段)としての機能も有している。
【0130】
図21Aは、スラットの第1の構成例を示す断面図である。図21Aに示すように、スラット202は、基材211と、光学フィルム1とを備える。光学フィルム1は、基材211の両主面のうち、スラット群202を閉じた状態において外光が入射する入射面側(例えば窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。光学フィルム1と基材211とは、例えば、接着層または粘着層などの貼合層により貼り合される。
【0131】
基材211の形状としては、例えば、シート状、フィルム状、および板状などを挙げることができる。基材211の材料としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。光学フィルム1としては、上述の第1〜第6の実施形態に係る光学フィルム1のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0132】
図21Bは、スラットの第2の構成例を示す断面図である。図21Bに示すように、第2の構成例は、光学フィルム1をスラット202aとして用いるものである。光学フィルム1は、ラダーコード205により支持可能であるとともに、支持した状態において形状を維持できる程度の剛性を有していることが好ましい。
【0133】
<8.第8の実施形態>
第8の実施形態では、日射遮蔽部材を巻き取る、または巻き出すことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置の一例であるロールスクリーン装置について説明する。
【0134】
図22Aは、本発明の第8の実施形態に係るロールスクリーン装置の一構成例を示す斜視図である。図22Aに示すように、日射遮蔽装置であるロールスクリーン装置301は、スクリーン302と、ヘッドボックス303と、芯材304とを備える。ヘッドボックス303は、チェーン205などの操作部を操作することにより、スクリーン302を昇降可能に構成されている。ヘッドボックス303は、その内部にスクリーンを巻き取り、および巻き出すための巻軸を有し、この巻軸に対してスクリーン302の一端が結合されている。また、スクリーン302の他端には芯材304が結合されている。スクリーン302は可撓性を有し、その形状は特に限定されるものではなく、ロールスクリーン装置301を適用する窓材などの形状に応じて選択することが好ましく、例えば矩形状に選ばれる。
【0135】
図22Bは、スクリーン302の一構成例を示す断面図である。図22Bに示すように、スクリーン302は、基材311と、光学フィルム1とを備え、可撓性を有していることが好ましい。光学フィルム1は、基材211の両主面のうち、外光を入射させる入射面側(窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。光学フィルム1と基材311とは、例えば、接着層または粘着層などの貼合層により貼り合される。なお、スクリーン302の構成はこの例に限定されるものではなく、光学フィルム1をスクリーン302として用いるようにしてもよい。
【0136】
基材311の形状としては、例えば、例えば、シート状、フィルム状、および板状などを挙げることができる。基材311としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。光学フィルム1としては、上述の第1〜第6の実施形態に係る光学フィルム1のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0137】
<9.第9の実施形態>
第9の実施形態では、指向反射性能を有する光学体に採光部を備える建具(内装部材または外装部材)に対して本発明を適用した例について説明する。
【0138】
図23Aは、本発明の第9の実施形態に係る建具の一構成例を示す斜視図である。図23Aに示すように、建具401は、その採光部404に光学体402を備える構成を有している。具体的には、建具401は、光学体402と、光学体402の周縁部に設けられる枠材403とを備える。光学体402は枠材403により固定され、必要に応じて枠材403を分解して光学体402を取り外すことが可能である。建具401としては、例えば障子を挙げることができるが、本発明はこの例に限定されるものではなく、採光部を有する種々の建具に適用可能である。
【0139】
図23Bは、光学体の一構成例を示す断面図である。図23に示すように、光学体402は、基材411と、光学フィルム1とを備える。光学フィルム1は、基材411の両主面のうち、外光を入射させる入射面側(窓材に対向する面側)に設けられる。光学フィルム1と基材311とは、接着層または粘着層などの貼合層などにより貼り合される。なお、障子402の構成はこの例に限定されるものではなく、光学フィルム1を光学体402として用いるようにしてもよい。
【0140】
基材411は、例えば、可撓性を有するシート、フィルム、または基板である。基材411としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空欄に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来建具の光学体として公知のものを用いることができる。光学フィルム1としては、上述の第1〜第6の実施形態に係る光学フィルム1のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0142】
(実施例1)
まず、図24に示すように、バイトによる切削加工によりプリズム形状をNi―P製金型に付与した。次に、このNi―P製金型に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合樹脂(日本化薬社製、商品名DPHA)を塗布し、さらにその上に厚み75μmのPETフィルム(東洋紡製、A4300)を載置した。次に、PETフィルム側からUV光を混合樹脂に対して照射し、混合樹脂を硬化させた。
【0143】
次に、この樹脂とPETの積層体をNi―P製金型から剥がして、プリズム形状の成形面が成形された樹脂層(第1の光学層)を得た。次に、金型によりプリズム形状が成形された成形面に対し、下記の表1に示すように、五酸化二ニオブ層および銀層の交互多層膜を真空スパッタ法により成膜した。次に、この交互多層膜付PETフィルムの分光反射率を島津製作所製DUV3700により測定した。その結果、図25に示す分光反射率曲線が得られた。次に、交互多層膜上に再び上述の混合樹脂を塗布し、PETフィルムを載置して気泡を押し出した後に、UV光照射することで樹脂を硬化して、交互多層膜上に樹脂層(第2の光学層)を形成した。これにより、目的とする指向反射体である光学フィルムが得られた。
【0144】
(実施例2)
まず、図26A、図26Bに示すように、バイトによる切削加工により、三角錐形状(コーナーキューブ形状)をNi−P製金型に付与した。次に、このNi−P製金型に、ウレタンアクリレート(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.533)を塗布し、さらにその上に厚み75μmのPETフィルム(東洋紡製、A4300)を設置し、PETフィルム側からUV光を照射して樹脂を硬化させた。
【0145】
次に、この樹脂とPETの積層体をNi―P製金型から剥がして、三角錐形状の成形面が成形された樹脂層(第1の光学層)を得た。次に、金型により三角錐形状が成形された成形面に対し、表1に示すように、酸化亜鉛層および銀合金層の交互多層膜を真空スパッタ法により成膜した。なお、銀合金層であるAgNdCu層の成膜には、Ag/Nd/Cu=99.0at%/0.4at%/0.6at%の組成を有する合金ターゲットを使用した。成膜後、交互多層膜が形成されている形状面上に下地層と同じ樹脂(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.533)を塗布した。更にその上に厚み75μmのPETフィルム(東洋紡製、A4300)を設置し、気泡を押し出した後に、このPETフィルム越しにUV光を照射し、樹脂を硬化して、交互多層膜上に樹脂層(第2の光学層)を形成した。これにより、目的とする光学フィルムが得られた。
【0146】
(実施例3)
選択反射層を表1に示す膜厚構成にした以外は、実施例2と同様にして実施例3の光学フィルムを得た。
【0147】
(実施例4)
選択反射層を表1に示す膜厚構成にした以外は、実施例2と同様にして実施例4の光学フィルムを得た。
【0148】
(実施例5)
実施例2と同様に、硬化後の屈折率が1.533の樹脂を用いて三角錐形状を形成後、実施例2と同様の構成で酸化亜鉛層および銀合金層の交互多層膜による選択再帰反射層を形成した。その後、交互多層膜が形成されている形状面上にUV硬化型樹脂(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.540)を塗布した。更にその上に厚み75μmのPETフィルム(東洋紡製、A4300)を設置し、気泡を押し出した後に、このPETフィルム越しにUV光を照射し、樹脂を硬化させた。以上により、第1の光学層と第2の光学層との屈折率差0.007の実施例5の光学フィルムを得た。
【0149】
(実施例6)
上層に硬化後屈折率が1.542のUV硬化樹脂を用い、第1の光学層と第2の光学層との屈折率差を0.009とした以外は実施例5と同様にして実施例6の光学フィルムを得た。
【0150】
(比較例1)
平滑な表面を有するPETフィルム上に、表1に示す膜厚構成で交互多層膜を成膜する以外は実施例1と同様にして、比較例1の光学フィルムを得た。
【0151】
(比較例2)
平滑な表面を有するPETフィルム上に、実施例2と同一の成膜条件下で交互多層膜を成膜する以外は比較例1と同様にして、比較例2の光学フィルムを得た。
【0152】
(比較例3)
平滑な表面を有するPETフィルム上に、実施例3と同一の成膜条件下で交互多層膜を成膜する以外は比較例1と同様にして、比較例3の光学フィルムを得た。
【0153】
(比較例4)
平滑な表面を有するPETフィルム上に、実施例4と同一の成膜条件下で交互多層膜を成膜する以外は比較例1と同様にして、比較例4の光学フィルムを得た。
【0154】
(指向反射率の評価)
実施例1、比較例1の光学フィルムの指向反射率を以下のようにして評価した。
図27は、光学フィルムの再帰反射率を測定するため測定装置の構成を示す。ハロゲン灯光源101から出射されレンズによりコリメートされた直線光が、光の進行方向に対し45°の角度に設置されたハーフミラー102に入射する。入射光の半分は、ハーフミラー102により反射されてその進行方向が90°回転するのに対して、入射光の残り半分は、ハーフミラー102を透過する。次に、反射光がサンプル103で再帰反射し、再びハーフミラー102に入射する。この入射光の半分が、ハーフミラー102を透過しディテクター104に入射する。この入射光の強度が、反射強度としてディテクター104により測定される。なお、測定は、第2の光学層の側から光を入射することにより行った。
【0155】
上述の構成を有する測定装置を用いて、以下の方法により波長900nmおよび1100nmにおける再帰反射率を求めた。まず、本測定装置のサンプルフォルダーに鏡を入射角θ=0°の角度で設置し、それぞれの波長の光強度をディテクター104で測定した。次に、本測定装置のサンプルフォルダーに光学フィルムを設置し、入射角θ=0°、20°、40°、60°、80°において光強度を測定した。その後、鏡の光強度を再帰反射率90%として、光学フィルムの再帰反射率を求めた。その結果を表2に示す(本測定ではφ=0°)。なお、測定は、第2の光学層の側から光を入射することにより行った。
【0156】
(指向反射方向の評価)
実施例1〜6の光学フィルムの指向反射方向の評価を、上述の図27に示した測定装置を用いて以下のようにして行った。サンプル103を中心軸として、ディテクター104を矢印aに示すように回転させて、反射強度が最大となる方向を測定した。その結果を表3に示す。なお、測定は、第2の光学層の側から光を入射することにより行った。
【0157】
(垂直透過率の評価)
実施例2〜4、比較例2〜4の光学フィルムの垂直透過率を以下のようにして評価した。
可視及び近赤外領域の垂直透過率を島津製作所製DUV3700により測定した。その分光透過率波形を図28Aおよび図28Bに示す。なお、測定は、第2の光学層の側から光を入射することにより行った。
【0158】
(色度の評価)
実施例2〜4、比較例2〜4の光学フィルムの色度を以下のようにして評価した。
背面の色の影響を抑制するため、実施例2〜4および比較例2〜4の光学フィルムを黒色板(三菱レーヨン製 アクリライト L502)の上に置き、SP62(xRite社製 積分球型測色計。d/8°光学系、D64光源、2°視野、SPEXモード)により測定を行った。その結果を表4に示す。なお、サンプルを置かず測定した黒色板の色度はx=0.325、y=0.346であった。また、測定は、第2の光学層の側から光を入射することにより行った。
【0159】
(透過像鮮明度の評価)
実施例1〜6の光学フィルムの透過像鮮明度を以下のようにして評価した。JIS−K7105に従い、くし幅2.0mm、1.0mm、0.5mm、0.125mmの光学くしを用いて透過像鮮明度を評価した。評価に使用した測定装置はスガ試験機(株)製の写像性測定器(ICM−1T型)である。次に、くし幅2.0mm、1.0mm、0.5mm、0.125mmの光学くしを用いて測定した透過像鮮明度の総和を求めた。それらの結果を表3に示す。なお、測定は、第2の光学層の側から光を入射することにより行った。
【0160】
(ヘイズの評価)
実施例1〜6の光学フィルムのヘイズ評価を以下のようにして評価した。
JIS K7136に準拠した測定条件に基づき、ヘイズメータHM−150(村上色彩技術研究所製)を用いてヘイズの測定を行った。その結果を表3に示す。なお、光源はD65光源を用い、フィルターは適用しないで測定した。なお、測定は、第2の光学層の側から光を入射することにより行った。
【0161】
(視認性の評価)
実施例1〜6の光学フィルムの視認性を以下のようにして評価した。
作製したフィルムの第2の光学層側の面を光学透明な粘着剤により3mm厚のガラスに貼合した。次に、このガラスを目から50cm程度離して保持し、ガラス越しに約10mの距離にある隣の建物内部を観察し、以下の基準で評価した。その結果を表3に示す。
なお、観察は、具体的には以下に示す配置で行った。
(観察者側)第1の光学層/反射層/第2の光学層/粘着剤/ガラス(建物側)
◎:回折による多重像などは見られず、通常の窓と同様に見える
○:通常の使用には問題ないが、鏡面反射体などがあると回折による多重像が若干見える
△:物体のおおよその形状は見分けられるが、回折による多重像が気になる
×:回折の影響などで曇って何があるか分からない
【0162】
表1は、実施例1〜6、比較例1〜4の光学フィルムの構成を示す。
【表1】

【0163】
表2は、実施例1、比較例1の指向反射率の評価結果を示す。
【表2】

【0164】
表3は、実施例1〜6の光学フィルムに対して、入射角(θ、φ)=(10°、45°)で光を入射させたときの指向反射方向、透過像鮮明度、ヘイズ、および視認性の評価結果を示す。
【表3】

【0165】
表4は、実施例2〜4、比較例2〜4の色度の評価結果を示す。
【表4】

【0166】
表2および図25などの評価結果から以下のことがわかる。
実施例1の光学フィルムでは、可視光の透過率を80%以上に維持しながら、近赤外線を指向反射させることができる。これに対して、比較例1の光学フィルムは、可視光の透過率を実施例1と同程度にできるが、入射角0度以外では近赤外線を再帰反射させることはできない。
【0167】
表3から以下のことがわかる。
実施例1〜6の光学フィルムでは、0.5mm幅の光学くしを用いて測定した透過像鮮明度が50以上であり、各光学くしを用いて測定した透過像鮮明度の値の合計値が230以上である。また、視認性の評価結果は「○」または「◎」となっている。
【0168】
表3、表4、図28Aおよび図28Bなどの評価結果から以下のことがわかる。
比較例2の光学フィルムは、可視光領域において反射率が高く金色がかった色調を呈する。比較例3の光学フィルムは、可視光領域において反射率が高く青緑色がかった色調を呈する。比較例4の光学フィルムは、可視光領域において反射率が高く赤色がかった色調を呈する。また、比較例3〜4の光学フィルムの色は見る角度によっても変化する。すなわち、比較例2〜4の光学フィルムの色調は、ビルの窓などに適用しにくいものとなっている。これに対して、比較例2〜4それぞれと同一の膜構成を有する実施例2〜4の光学フィルムには、見ると気にならない程度の色相で、実施例2は若干緑色、実施例3、4は若干青みがかっているが、その色相は見る角度を変えても殆ど色が変わらない。このような特性は、意匠性が要求されるような窓ガラスなどに光学フィルムを適用する場合に好ましいものである。
【0169】
(実施例7)
まず、図29A〜図29Cに示す微細三角錐形状(コーナーキューブ形状)を有するNi−P金型ロールをバイトによる切削加工により作製した。次に、厚み75μmのPETフィルム(東洋紡製、A4300)上にウレタンアクリレート(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.533)を塗布し、金型に密着させた状態でPETフィルム側からUV光を照射してウレタンアクリレートを硬化させた。次に、ウレタンアクリレートが硬化されてなる樹脂層とPETフィルムとの積層体をNi−P製金型から剥離した。これにより、三角錐形状が付与された樹脂層(第1の光学層)がPETフィルム上に形成された。次に、金型により三角錐形状が成形された成形面に対し、表5に示す膜構成を有する波長選択反射層をスパッタ法により成膜を行った。なお、AgPdCu層の成膜には、Ag/Pd/Cu=99.0at%/0.4at%/0.6at%の組成を有する合金ターゲットを使用した。
【0170】
次に、図8に示す製造装置を用いて、以下のようにして形状付きフィルムの成膜面を樹脂により包埋した。すなわち、厚み75μmの平滑なPETフィルム(東洋紡製、A4300)上に下記配合の樹脂組成物を塗布し、両フィルム間に気泡が入らないように、波長選択反射層が表面に形成された形状付きPETフィルムで平滑なPETフィルムをラミネートした。その後、平滑なPETフィルム側からUV光を照射して樹脂組成物を硬化させた。これにより、平滑なPETフィルムと波長選択反射層との間の樹脂組成物が硬化され、樹脂層(第2の光学層)が形成された。以上により、目的とする実施例7の光学フィルムを得た。
【0171】
<樹脂組成物の配合>
ウレタンアクリレート 99質量部
(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.533)
2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート 1質量部
(共栄社化学製、ライトアクリレートP−1A)
【0172】
(実施例8)
波長選択反射層を表5に示す膜構成にした以外は、実施例7と同様にして実施例8の光学フィルムを得た。
【0173】
(実施例9)
波長選択反射層を表5に示す膜構成にした以外は、実施例7と同様にして実施例9の光学フィルムを得た。なお、AgBi層の成膜には、Ag/Bi=99.0at%/1.0at%の組成を有する合金ターゲットを使用し、Nb25層の成膜には、Nb25セラミックスターゲットを用いた。
【0174】
(実施例10)
波長選択反射層を表5に示す膜構成にした以外は、実施例9と同様にして実施例10の光学フィルムを得た。
【0175】
(実施例11)
波長選択反射層を表5に示す膜構成にした以外は、実施例9と同様にして実施例11の光学フィルムを得た。
【0176】
(実施例12)
波長選択反射層を表5に示す膜構成にした以外は、実施例9と同様にして実施例12の光学フィルムを得た。
【0177】
(比較例5)
形状付きPETフィルムに代えて、平滑な表面を有するPETフィルム上に、実施例7と同一構成の波長選択反射層(但し、各層の膜厚は異なる。)を成膜した以外は、比較例1と同様にして比較例5の光学フィルムを得た。
【0178】
(比較例6)
形状付きPETフィルムに代えて、平滑な表面を有するPETフィルム上に、実施例8と同一構成の波長選択反射層(但し、各層の膜厚は異なる。)を成膜した以外は、比較例1と同様にして比較例6の光学フィルムを得た。
【0179】
(比較例7)
形状付きPETフィルムに代えて、平滑な表面を有するPETフィルム上に、実施例9と同一構成の波長選択反射層(但し、各層の膜厚は異なる。)を成膜した以外は、比較例1と同様にして比較例7の光学フィルムを得た。
【0180】
(比較例8)
形状付きPETフィルムに代えて、平滑な表面を有するPETフィルム上に、実施例10と同一構成の波長選択反射層(但し、各層の膜厚は異なる。)を成膜した以外は、比較例1と同様にして比較例8の光学フィルムを得た。
【0181】
(比較例9)
形状付きPETフィルムに代えて、平滑な表面を有するPETフィルム上に、実施例12と同一構成の波長選択反射層(但し、各層の膜厚は異なる。)を成膜した以外は、比較例1と同様にして比較例9の光学フィルムを得た。
【0182】
(反射層密着性評価)
作製したフィルムを光学透明な粘着剤により3mm厚のガラスに貼合し、フィルムの端を剥がしてその様子を観察した。
◎:剥離が困難であり、無理に剥がすと、基材や樹脂などのバルク破壊が生じる
○:剥離が比較的困難であるが、無理に剥がすと界面で剥離する
△:界面での剥離は生じるが、剥離時に抵抗を感じる
×:抵抗なく界面剥離が生じる
【0183】
(透過率/反射率評価)
島津製作所製DUV3700により、透過率および反射率を測定した。透過率は光学フィルムの垂線を基準として0°のものであり、反射率は光学フィルムの垂線を基準として8°のものである。その結果を図30〜図33に示す。なお、透過率の測定は第2の光学層側から行い、反射率の測定は第1の光学層側から行った。
【0184】
(透過光/反射光の色評価)
目視により透過光(第2の光学層側から第1の光学層側に透過する透過光)および反射光(第2の光学層側から入射した光の反射光)の赤みを判定した。その結果を表8、表9に示す。
【0185】
表5は、実施例7〜12、比較例5〜9の光学フィルムの構成およびその評価結果を示す。
【表5】

【0186】
なお、表5中において、波長選択反射層を凹凸面上に形成する実施例7〜12おける各層の平均膜厚は、以下のようにして測定した。すなわち、実施例7〜12において第1の光学層上に波長選択反射層を成膜したときと同一条件において、波長選択反射層を平滑なフィルム上に成膜し、FIBで断面をカットしたサンプルの各層の膜厚をTEMを用いて測定し、その測定値に基づき平均膜厚を求めた。なお、このようにして測定した平均膜厚は、第1の光学層の三角錐を形成する三角形の垂線の中心位置におけるn2方向の平均膜厚t2と一致することを確認している(図35参照)。ここで、三角形の垂線とは、三角錐の錐面を形成する三角形の頂点から対辺(三角錐の底辺)に下した垂線を意味する。このように平均膜厚が一致する三角錐上の位置を規定するのは、第1の光学層の三角錐上に形成された波長選択反射層の平均膜厚を測定すると、図35に示すように、その平均膜厚は三角錐を形成する三角形上の位置により異なるからである。但し、図35中、n1方向、n2方向は以下の方向を示す。
n1方向:PETフィルムに付与されたプリズム形状の傾斜面に対して垂直な方向
n2方向:PETフィルムの主面に対して垂直な方向(PETフィルムの厚さ方向)
【0187】
表6は、実施例7〜10、12の光学フィルムの評価結果を示す。
【表6】

【0188】
表7は、比較例5〜9の光学フィルムの評価結果を示す。
【表7】

【0189】
図34は、JIS R 3106の試験方法による感度係数を示すグラフである。
可視光透過率を向上するためには、可視視感度係数が高い波長500nm程度で高い透過率を有する必要があり、400〜750nmの光を通す事が望ましい。一方、熱の遮蔽を高めるためには、遮蔽に対する感度係数が高い波長域の光線を遮断する必要がある。これらを鑑み、可視透過率を向上させ、熱の遮蔽を向上するためには、波長400〜750nm程度の可視光線を透過し、波長750〜1300nm程度の近赤外線を効果的に遮断する必要がある。
【0190】
波長選択反射層の形成前に形成される第1の光学層(形状樹脂層)と、波長選択反射層形成後に形成される第2の光学層(包埋樹脂層)は屈折率が略同一であることが好ましい。例えば、両樹脂層が、可視光領域において透明性を有する同一樹脂からなることが好ましい。しかし、両層に同一樹脂を用いる場合、無機薄膜である波長選択反射層と、有機樹脂層である第2の光学層との密着性を向上するために、添加剤を第2の光学層に配合すると、形状転写の際にNi−P型から第1の光学層を剥離しにくくなる。波長選択反射層をスパッタ法により形成する場合は、高エネルギーの粒子が付着するため、第1の光学層と波長選択反射層との密着性が問題になることは少ない。そのため、第1の光学層の添加剤の添加量を必要最低限に抑えておき、第2の光学層に密着性を向上する添加剤を導入することが好ましい。この際、第2の光学層と第1の光学層の屈折率が大きく異なっていると、曇って反対側が見難くなるが、実施例7〜12では添加剤の添加量は1質量%であり、屈折率も殆ど変化がないため、透過鮮明性が非常に高かった。もし添加剤を多量に添加する必要がある場合には、第1の光学層を形成するための樹脂組成物の配合を調整し、第2の光学層と屈折率を略同一とすることが好ましい。
【0191】
実施例9と実施例11を比較すると、波長選択反射層の最表層のZnO層の有無が大きな違いであり、これらの分光スペクトルはほぼ一致するが、第2の光学層との密着性に関しては表層にZnOが存在する実施例9の方が高かった。
【0192】
図30〜図33および表6、表7などの評価結果から以下のことがわかる。
比較例5、7〜9の光学フィルムは、赤紫〜紫の反射色相で、窓ガラスに貼ると気になる程の反射色を示している。比較例6の光学フィルムは、赤色の反射は気にならない程度であったが、太陽光の熱をさえぎるために必要な近赤外線のうち、波長800〜900nmにおける反射率が50%以下と低く、赤みと熱遮蔽性能の両立が難しい。
これに対して、実施例7〜10、12の光学フィルムは、反射光が光源の方向に再帰するために反射色が認識されず、太陽光を反射させて見ても、透過させて見ても、青緑系統の色しか認識されず、窓に適用すると涼しさを感じるような好ましい色調であった。そして、例えば実施例9の光学フィルムは、比較例7と同一の膜構成であり、赤外線の反射能力も高い。このように、本実施例のフィルムを適用すると、好ましい外観色と赤外線遮蔽性能を両立することができる。
【0193】
図36は、実施例2の形状転写樹脂の粘弾性率挙動を示す。なお、図中の矢印は、各曲線がどちら側の縦軸に属しているかを示している。tanδのピーク値95℃がガラス転移点の値となる。実施例2では、このようにガラス転移点が60度以上、150度以下の範囲内であるため、上述したように、製造工程における加熱や成膜による樹脂形状の変形を抑制でき、かつ、クラックや界面剥がれの発生を抑制できる。
【0194】
(分光透過率/反射率評価)
日本分光製 分光光度計V550により、実施例、および比較例の膜の分光透過率、反射率の測定を行った。透過率の測定は入射光線に対し、検出器を0°の位置に配置し、サンプルを光軸に対して回転させて行った。反射率の測定は、サンプル、および検出器を連動させて回転させ、正反射光を受光するように配置して行った。ここで、透過率、反射率の測定においては、入射光線の光軸に対してサンプルを垂直に配置した場合を0°とした。測定結果を図37A〜図42Bに示す。透過、および反射色調は、各分光測定データから、JIS Z8701(1999年)に準じ、光源はD65光源、2°視野にて算出した。算出結果を表8〜13、および図43A、図43Bに示す。なお、測定は、第1および第2の光学層の両層の側について行った。
【0195】
どのフィルムも透過色調は入射角度によって大きな差はないが、実施例のフィルムと比較例のフィルムは反射色調の特徴が大きく異なった。実施例のフィルムはどれも第1の光学層側入射、第2の光学層側入射とも、フレネル反射に相当するフラットな分光特性を有する反射スペクトルしか観察されなかった。実施例9の反射スペクトルを図40A、図40Bに示すが、他の実施例のフィルムも同様の結果であった。それに対し、比較例のフィルムは見る角度により色調が異なり、第1の光学層側入射、第2の光学層側入射でも色調が異なった。比較例5、8の反射スペクトルを図41A〜図42Bに示す。
【0196】
表8は、実施例4〜9の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過色調を示す。
【表8】

【0197】
表9は、比較例5、8の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過色調を示す。
【表9】

【0198】
表10は、実施例7〜9の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射色調を示す。
【表10】

【0199】
表11は、実施例7〜9の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射色調を示す。
【表11】

【0200】
表12は、比較例5、8の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射色調を示す。
【表12】

【0201】
表13は、比較例5、8の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射色調を示す。
【表13】

【0202】
表14は、実施例4〜9、比較例5、8の光学フィルムの主面に対して、0°以上60°以下の入射角度で光を入射させたときの正反射光の色座標x、yの差(x最大差、y最大差)の絶対値を示す。
【表14】

【0203】
(実施例13)
まず、図44Aに示すプリズム形状を反転した形状を有するNi−P金型ロールをバイトによる切削加工により作製した。次に、厚み75μmのPETフィルム(東洋紡製、A4300)上にウレタンアクリレート(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.533)を塗布し、金型に密着させた状態でPETフィルム側からUV光を照射してウレタンアクリレートを硬化させた。次に、ウレタンアクリレートが硬化されてなる樹脂層とPETフィルムとの積層体をNi−P製金型から剥離した。これにより、図44Aに示すプリズム形状が付与された樹脂層(第1の光学層)がPETフィルム上に形成された。次に、金型によりプリズム形状が成形された成形面に対し、下記に示す層構成を有する波長選択反射層をスパッタ法により成膜を行った。
【0204】
(波長選択反射層)
下地側から以下の順序で薄膜を成膜した。
GAZO(68nm)/AgNdCu(13nm)/GAZO(128nm)/AgNdCu(13nm)/GAZO(68nm)
なお、GAZOの成膜は、ZnOにGa23とAl23をドープしたGa23/Al23/ZnO=0.57at%/0.31at%/99.12at%の酸化物ターゲットを用いた。また、AgNdCuの成膜には、Ag/Nd/Cu=99.0at%/0.4at%/0.6at%の合金ターゲットを用いた。両層共にスパッタガスをアルゴンガス100%とし、直流パルススパッタ法にて成膜した。
【0205】
次に、図8に示す製造装置を用いて、以下のようにして形状付きフィルムの成膜面を樹脂により包埋した。すなわち、厚み75μmの平滑なPETフィルム(東洋紡製、A4300)上に下記配合の樹脂組成物を塗布し、両フィルム間に気泡が入らないように、波長選択反射層が表面に形成された形状付きPETフィルムで平滑なPETフィルムをラミネートした。その後、平滑なPETフィルム側からUV光を照射して樹脂組成物を硬化させた。これにより、平滑なPETフィルムと波長選択反射層との間の樹脂組成物が硬化され、樹脂層(第2の光学層)が形成された。以上により、目的とする光学フィルムを得た。
【0206】
<樹脂組成物の配合>
ウレタンアクリレート 99質量部
(東亞合成製、アロニックス、硬化後屈折率1.533)
2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート 1質量部
(共栄社化学製、ライトアクリレートP−1A)
【0207】
(実施例14)
図44Bに示す直交プリズム形状を反転した形状を有するNi−P金型ロールをバイトによる切削加工により作製する以外は実施例13と同様にして、光学フィルムを得た。
【0208】
(実施例15)
図45A、図45Bに示すフライアイレンズ形状を反転した形状を有するNi−P金型ロールをバイトによる切削加工により作製する以外は実施例13と同様にして、光学フィルムを得た。
【0209】
(実施例16)
図46A、図46Bに示すマトリックス形状を反転した形状を有するNi−P金型ロールをレーザー加工により作製する以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。
なお、マトリックス形状を構成する構造体の曲面は、以下の式(2)により表されるものとした。
【0210】
なお、上記形状を有するNi−P金型ロールは、以下のようにして作製してもよい。
まず、波長248nmのKrFエキシマレーザを用いたマスクイメージング法を用いて、ポリカーボネート基材にピッチ60μmで格子状に凸部を加工する。そして、これをマスターとして、無電解Ni処理を行って凸部の表面を導電化処理したのち、Ni電鋳をとることにより凹部を有する母型を作製する。
【0211】
【数1】

【0212】
(分光透過率/反射率評価)
日本分光製 分光光度計V550により、実施例の層の分光透過率、および反射率の測定を行った。透過率の測定は入射光線に対し、検出器を0°の位置に配置し、サンプルを光軸に対して回転させて行った。反射率の測定は、サンプル、および検出器を連動させて回転させ、正反射光を受光するように配置して行った。ここで、透過率、反射率の測定においては、入射光線の光軸に対してサンプルを垂直に配置した場合を0°とした。また、透過色調、および反射色調は、各分光測定データから、JIS Z8701(1999年)に準じ、光源はD65光源、2°視野にて算出した。なお、測定は、第1および第2の光学層の両層の側について行った。
【0213】
(透過光/反射光の色評価)
目視により透過光および反射光の色味変化を、以下の基準で判定した。なお、評価は、第1および第2の光学層の両層の側について行った。
A:色味変化が殆ど感じられない。
B:色味変化が感じられる。
【0214】
図47A、図47Bに、実施例13の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過率、および反射率の測定結果を示す。図48A、図48Bに、実施例13の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過色度、および反射色度の測定結果を示す。なお、図示を省略するが、実施例13の光学フィルムの第1の光学層側入射における透過率、反射率、透過色度、および反射色度は、実施例13−1とほぼ同様であった。
図49A、図49B、図50に、実施例14の光学フィルムの第1および第2の光学層側入射における透過率、および反射率の測定結果を示す。図51A、図51Bに、実施例14の光学フィルムの第1および第2の光学層側入射における透過色度、および反射色度の測定結果を示す。
図52A、図52B、図53に、実施例15の光学フィルムの第1および第2の光学層側入射における透過率、および反射率の測定結果を示す。図54A、図54Bに、実施例15の光学フィルムの第1および第2の光学層側入射における透過色度、および反射色度の測定結果を示す。
図55A、図55B、図56に、実施例16の光学フィルムの第1および第2の光学層側入射における透過率、および反射率の測定結果を示す。図57A、図57Bに、実施例16の光学フィルムの第1および第2の光学層側入射における透過色度、および反射色度の測定結果を示す。
【0215】
表15は、実施例13〜16の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過色度の評価結果を示す。
【表15】

【0216】
表16は、実施例13〜16の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射色度の評価結果を示す。
【表16】

【0217】
表17は、実施例13〜16の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射色度の評価結果を示す。
【表17】

【0218】
上述の評価結果から以下のことがわかる。
実施例13〜16の光学フィルムはいずれも、フレネル反射に相当するフラットな分光特性を有する反射スペクトルか観察された。
第2の光学層側から光を入射させた実施例13〜16の光学フィルムでは、透過色調および反射色調は入射角度によって大きな差はなかった。また、第1の光学層側から光りを入射させた実施例13〜16の光学フィルムでも、透過色調および反射色調は入射角度によって大きな差はなかった。また、第1の光学層側入射および第2の光学層入射の透過色調および反射色調には、ほとんど差がなかった。
以上により、透過色調および反射色調は、構造体の形状によらずほぼ同一であることがわかる。また、透過色調および反射色調は、第1の光学層側入射および第2の光学層入射のいずれであかによらず、ほぼ同一であることがわかる。
【0219】
(実施例17)
三角錐形状上に成膜する反射層をAgTi:8.5nm(Ag/Ti=98.5/1.5at%)とした以外は実施例7と同様にして実施例17の光学フィルムを得た。
【0220】
(実施例18)
三角錐形状上に成膜する反射層をAgTi:3.4nm(Ag/Ti=98.5/1.5at%)とした以外は実施例7と同様にして実施例18の光学フィルムを得た。
【0221】
(実施例19)
三角錐形状上に成膜する反射層をAgNdCu:14.5nm(Ag/Nd/Cu=99.0/0.4/0.6at%)とした以外は実施例7と同様にして実施例19の光学フィルムを得た。
【0222】
(分光透過率/反射率評価)
日本分光製 分光光度計V550により、実施例の層の分光透過率、および反射率の測定を行った。透過率の測定は入射光線に対し、検出器を0°の位置に配置し、サンプルを光軸に対して回転させて行った。反射率の測定は、サンプル、および検出器を連動させて回転させ、正反射光を受光するように配置して行った。ここで、透過率、反射率の測定においては、入射光線の光軸に対してサンプルを垂直に配置した場合を0°とした。また、透過色調、および反射色調は、各分光測定データから、JIS Z8701(1999年)に準じ、光源はD65光源、2°視野にて算出した。なお、測定は、第1および第2の光学層の両層の側について行った。
【0223】
(透過光/反射光の色評価)
目視により透過光および反射光の色味変化を、以下の基準で判定した。なお、評価は、第1および第2の光学層の両層の側について行った。
A:色味変化が殆ど感じられない。
B:色味変化が感じられる。
【0224】
図58A、図58Bに、実施例17の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過率、および反射率の測定結果を示す。図59に、実施例17の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射率の測定結果を示す。
図60A、図60Bに、実施例18の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過率、および反射率の測定結果を示す。図61に、実施例18の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射率の測定結果を示す。
図62A、図62Bに、実施例19の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過率、および反射率の測定結果を示す。図63に、実施例19の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射率の測定結果を示す。
【0225】
表18は、実施例17〜19の光学フィルムの第2の光学層側入射における透過色度の評価結果を示す。
【表18】

【0226】
表19は、実施例17〜19の光学フィルムの第2の光学層側入射における反射色度の評価結果を示す。
【表19】

【0227】
表20は、実施例17〜19の光学フィルムの第1の光学層側入射における反射色度の評価結果を示す。
【表20】

【0228】
上述の評価結果から以下のことがわかる。
第2の光学層側から光を入射させた実施例17〜19の光学フィルムでは、透過色調および反射色調は入射角度によって大きな差はなかった。また、第1の光学層側から光を入射させた実施例17〜19の光学フィルムでも、透過色調および反射色調は入射角度によって大きな差はなかった。また、第1の光学層側入射および第2の光学層入射の透過色調および反射色調には、ほとんど差がなかった。
以上により、透過色調および反射色調は、反射層として単層の反射層(半透過層)を用いた場合にも、交互多層膜を用いた場合と同様の傾向を示すことがわかる。また、反射層として単層の反射層(半透過層)を用いた場合にも交互多層膜を用いた場合と同様に、透過色調および反射色調は、第1の光学層側入射および第2の光学層入射のいずれであるかによらず、ほぼ同一であることがわかる。
【0229】
(実施例20)
形状付きフィルムの成膜面を包埋する工程を省略する以外は実施例8と同様にして、波長選択反射層が露出した光学フィルムを得た。
【0230】
(分光透過率/反射率評価)
実施例20の光学フィルムの分光透過率、および反射率を、実施例17〜19と同様にして測定した。
【0231】
(透過光/反射光の色評価)
透過光および反射光の色味変化を、実施例17〜19と同様にして評価した。
【0232】
図64Aに、実施例20の光学フィルムの凹凸面側入射における反射率の測定結果を示す。図64Bに、実施例20の光学フィルムの光学層側入射における反射率の測定結果を示す。
【0233】
表21は、実施例20の光学フィルムの凹凸面側入射における反射色度の評価結果を示す。
【表21】

【0234】
表22は、実施例20の光学フィルムの光学層側入射における反射色度の評価結果を示す。
【表22】

【0235】
上述の評価結果から以下のことがわかる。
形状付きフィルムの成膜面を包埋しない場合でも、包埋した場合と同様に、透過色調および反射色調は、入射面によらず、ほぼ同一であり、色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値は、両面のいずれにおいても、0.05以下である。
形状付きフィルムの成膜面を包埋しない場合の透過色調および反射色調は、包埋した場合と同様の傾向を示す。
【0236】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0237】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0238】
また、上述の実施形態の各構成は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0239】
また、上述の実施形態では、ブランインド装置、およびロールスクリーン装置の駆動方式が手動式である場合を例として説明したが、ブランインド装置、およびロールスクリーン装置の駆動方式を電動式としてもよい。
【0240】
また、上述の実施形態では、光学フィルムを窓材などの被着体に貼り合わせる構成を例として説明したが、窓材などの被着体を光学フィルムの第1の光学層、または第2の光学層自体とする構成を採用するようにしてもよい。これにより、窓材などの光学体に予め指向反射の機能を付与することができる。
【0241】
また、上述の実施形態では、光学体が光学フィルムである場合を例として説明したが、光学体の形状はフィルム状に限定されるものではなく、プレート状、ブロック状などでもよい。
【0242】
上述の実施形態では、本発明を窓材、建具、ブラインド装置のスラット、およびロールスクリーン装置のスクリーンなどの内装部材または外装部材に適用した場合を例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、上記以外の内装部材および外装部材にも適用可能である。
【0243】
本発明に係る光学体が適用される内装部材または外装部材としては、例えば、光学体自体により構成された内装部材または外装部材、指向反射体が貼り合わされた透明基材などにより構成された内装部材または外装部材などが挙げられる。このような内装部材または外装部材を室内の窓付近に設置することで、例えば、赤外線だけを屋外に指向反射し、可視光線を室内に取り入れることができる。したがって、内装部材または外装部材を設置した場合にも、室内照明の必要性が低減される。また、内装部材または外装部材による室内側への散乱反射も殆どないため、周囲の温度上昇も抑えることができる。また、視認性制御や強度向上など必要な目的に応じ、透明基材以外の貼り合わせ部材に適用することも可能である。
【0244】
また、上述の実施形態では、ブラインド装置、およびロールスクリーン装置に対して本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、室内または屋内に設置される種々の日射遮蔽装置に適用可能である。
【0245】
また、上述の実施形態では、日射遮蔽部材を巻き取る、または巻き出すことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置(例えばロールスクリーン装置)に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、日射遮蔽部材を折り畳むことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置に対しても本発明は適用可能である。このような日射遮蔽装置としては、例えば、日射遮蔽部材であるスクリーンを蛇腹状に折り畳むことで、入射光線の遮蔽量を調整するプリーツスクリーン装置を挙げることができる。
【0246】
また、上述の実施形態では、本発明を横型ブラインド装置(ベネシアンブラインド装置)に対して適用した例について説明したが、縦型ブラインド装置(バーチカルブラインド装置)に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0247】
1 光学フィルム
2 光学層
3 反射層
4 第1の光学層
4a 第1の基材
5 第2の光学層
5a 第2の基材
6 貼合層
7 剥離層
8 ハードコート層
9 反射層付き光学層
S1 入射面
S2 出射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸面を有する第1の光学層と、
上記凹凸面上に形成された波長選択反射層と、
上記凹凸面を埋めるように上記波長選択反射層上に形成された第2の光学層と
を備え、
上記波長選択反射層が、特定波長帯の光を選択的に指向反射するのに対して、上記特定波長帯以外の光を透過するものであり、
入射角(θ、φ)で入射面に入射した光のうち、特定波長帯の光を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に選択的に指向反射するのに対して、上記特定波長帯以外の光を透過し、
5°以上60°以下の入射角度で、光学体の両面のいずれか一方から入射し、上記光学体により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、上記両面のいずれにおいても、0.05以下である光学体。
(但し、θ:上記入射面に対する垂線と、上記入射面に入射する入射光または上記入射面から出射される反射光とのなす角、φ:上記入射面内の特定の直線と、上記入射光または上記反射光を上記入射面に射影した成分とのなす角)
【請求項2】
凹凸面を有する光学層と、
上記凹凸面上に形成された波長選択反射層と、
を備え、
上記波長選択反射層が、特定波長帯の光を選択的に指向反射するのに対して、上記特定波長帯以外の光を透過するものであり、
入射角(θ、φ)で入射面に入射した光のうち、特定波長帯の光を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に選択的に指向反射するのに対して、上記特定波長帯以外の光を透過し、
5°以上60°以下の入射角度で、光学体の両面のいずれか一方から入射し、上記光学体により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、上記両面のいずれにおいても、0.05以下である光学体。
(但し、θ:上記入射面に対する垂線と、上記入射面に入射する入射光または上記入射面から出射される反射光とのなす角、φ:上記入射面内の特定の直線と、上記入射光または上記反射光を上記入射面に射影した成分とのなす角)
【請求項3】
凹凸面を有する第1の光学層と、
上記凹凸面上に形成された半透過層と、
上記凹凸面を埋めるように上記半透過層上に形成された第2の光学層と
を備え、
入射角(θ、φ)で入射面に入射した光を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射し、
5°以上60°以下の入射角度で、光学体の両面のいずれか一方から入射し、上記光学体により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、上記両面のいずれにおいても、0.05以下である光学体。
(但し、θ:上記入射面に対する垂線と、上記入射面に入射する入射光または上記入射面から出射される反射光とのなす角、φ:上記入射面内の特定の直線と、上記入射光または上記反射光を上記入射面に射影した成分とのなす角)
【請求項4】
凹凸形状の入射面を有する光学層と、
上記凹凸面上に形成された半透過層と、
を備え、
入射角(θ、φ)で入射面に入射した光を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射し、
5°以上60°以下の入射角度で、光学体の両面のいずれか一方から入射し、上記光学体により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、上記両面のいずれにおいても、0.05以下である光学体。
(但し、θ:上記入射面に対する垂線と、上記入射面に入射する入射光または上記入射面から出射される反射光とのなす角、φ:上記入射面内の特定の直線と、上記入射光または上記反射光を上記入射面に射影した成分とのなす角)
【請求項5】
上記透過する波長の光に対する、JIS K−7105に準拠して測定した0.5mmの光学くしの透過像鮮明度が、50以上である請求項1または2記載の光学体。
【請求項6】
上記透過する波長の光に対する、JIS K−7105に準拠して測定した0.125、0.5、1.0、2.0mmの光学くしの透過像鮮明度の合計値が、230以上である請求項1または2記載の光学体。
【請求項7】
上記透過する波長の光に対する、JIS K−7105に準拠して測定した0.5mmの光学くしの透過像鮮明度が、30以上である請求項3または4記載の光学体。
【請求項8】
上記透過する波長の光に対する、JIS K−7105に準拠して測定した0.125、0.5、1.0、2.0mmの光学くしの透過像鮮明度の合計値が、170以上である請求項3または4記載の光学体。
【請求項9】
上記特定波長帯の光に対する指向反射の方向φが、−90°以上、90°以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学体。
【請求項10】
上記特定波長帯の光に対する指向反射の方向が、(θ、−φ)近傍である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学体。
【請求項11】
上記特定波長帯の光に対する指向反射の方向が、(θ、φ)近傍である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学体。
【請求項12】
上記指向反射する光が、主に波長帯域780nm〜2100nmの近赤外線である請求項1または2記載の光学体。
【請求項13】
上記波長選択反射層は、一方向に延在された柱状体が一次元配列された形状を有し、
入射角(θ、φ)に指向反射するのに対して、上記特定波長帯以外の光を透過する請求項1または2記載の光学体。
(但し、θ:上記入射面に対する垂線と、上記入射面に入射する入射光または上記入射面から出射される反射光とのなす角、φ:上記入射面内において上記柱面の稜線と直交する直線と、上記入射光または上記反射光を上記入射面に射影した成分とのなす角)で上記入射面に入射した光のうち、特定波長帯の光を選択的に(θo、−φ)の方向(0°<θo<90°)
【請求項14】
上記半透過層は、一方向に延在された柱状体が一次元配列された形状を有し、
入射角(θ、φ)(但し、θ:上記入射面に対する垂線と、上記入射面に入射する入射光または上記入射面から出射される反射光とのなす角、φ:上記入射面内において上記柱面の稜線と直交する直線と、上記入射光または上記反射光を上記入射面に射影した成分とのなす角)で上記入射面に入射した光の一部を(θo、−φ)の方向(0°<θo<90°)に指向反射する請求項3または4に記載の光学体。
【請求項15】
上記波長選択反射層が、可視光領域において透明性を有する導電性材料を主成分とする透明導電膜、または外部刺激により反射性能が可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする機能膜である請求項1または2記載の光学体。
【請求項16】
上記波長選択反射層が、上記入射面に対して傾斜した複数の波長選択反射層からなり、
上記複数の波長選択反射層が、互いに平行に配置されている請求項1または2記載の光学体。
【請求項17】
上記半透過層が、上記入射面に対して傾斜した複数の半透過層からなり、
上記複数の半透過層が、互いに平行に配置されている請求項3または4記載の光学体。
【請求項18】
上記第1の光学層の凹凸面は、1次元配列または2次元配列された構造体により形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学体。
【請求項19】
上記構造体が、プリズム形状、レンチキュラー形状、マトリックス状、またはコーナーキューブ状である請求項18記載の光学体。
【請求項20】
上記構造体の主軸が、上記入射面の垂線を基準にして上記構造体の配列方向に傾いている請求項18記載の光学体。
【請求項21】
上記構造体のピッチが、5μm以上5mm以下である請求項18記載の光学体。
【請求項22】
上記第1の光学層と上記第2の光学層との屈折率差が、0.010以下である請求項1または3記載の光学体。
【請求項23】
上記第1の光学層と上記第2の光学層とが、可視光領域において透明性を有する同一樹脂からなり、上記第2の光学層には添加剤が含まれている請求項1または3記載の光学体。
【請求項24】
上記第1の光学層、および上記第2の光学層の少なくとも一方が、可視領域における特定の波長帯の光を吸収する請求項1または3記載の光学体。
【請求項25】
上記第1の光学層と上記第2の光学層とにより光学層が形成され、
上記光学層の表面、上記光学層の内部、および上記波長選択反射層と上記光学層との間のうち、少なくとも1箇所に光散乱体をさらに備える請求項1または3記載の光学体。
【請求項26】
上記光学体の上記入射面上に、撥水性または親水性を有する層をさらに具備する請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学体。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の光学体を備える窓材。
【請求項28】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の光学体を採光部に備える建具。
【請求項29】
日射を遮蔽する1または複数の日射遮蔽部材を備え、
上記日射遮蔽部材が、請求項1〜26のいずれか1項に記載の光学体を備える日射遮蔽装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2011−164433(P2011−164433A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28237(P2010−28237)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】