説明

光学分析用デバイス及び光学分析装置

【課題】 チャンバとキャピラリとの間において、発生する毛細管力が減少せず、確実な液体移送ができる光学分析用デバイス及び光学分析装置を提供する。
【解決手段】 光学分析用デバイスの回転軸周りに配置され、前記液体サンプルを注入可能に構成された第1チャンバと、前記第1チャンバに比して前記回転軸に対して外側に配置され、前記第1チャンバとキャピラリで連結され、前記キャピラリを通じて前記第1チャンバに注入された液体サンプルを受入可能に構成された第2チャンバと、を備え、前記第1チャンバが、前記液体サンプルの流路の上流側に前記キャピラリより前記回転軸に平行する方向の長さが長い空間を有する第1領域と、前記キャピラリとの連結部側に前記回転軸に平行する方向の長さが前記キャピラリより長く、かつ、前記第1領域よりも前記回転軸に平行する方向の長さが短い空間を有する第2領域を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的流体を光学的に分析する光学分析用デバイス及び光学分析装置に関するものであり、より詳細には、光学的分析装置で生物学的流体の成分測定に使用する分析用デバイスにおけるチャンバの構造と液体サンプルの移送手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体サンプルとして血液をその内部に収集した分析用ディスクを用い、この分析用ディスクを軸心周りに回転させながら、光ディスク装置の光学スキャン技術を用いて、血液の特性を分析する分析装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図17の分解斜視図に示すように、この分析用ディスク100は、同心円状または螺旋状のトラック101が存在するベース基板117と、血液が収集され移送の行われる流路となる溝を形成したスペーサ基板118と、これらの上部に、血液の注入口や空気口を形成した上カバー119を貼り合わせて構成されている。
【0004】
図18の平面図は、上記分析用ディスク100に設けられた流路のうちの一つを拡大して示したものである。分析用ディスク100は、一定量の血液を収集し、血液を血球成分と血漿成分に分離する第1のチャンバ200と、第1のチャンバ200に対して軸心より外側に配置され、第1のチャンバ200にて分離された血漿成分が移送される第2のチャンバ201と、第1のチャンバ200と第2のチャンバ201とを連結するキャピラリ202とを有している。
【0005】
このような分析用ディスクを用いた分析動作としては、ピペットなどで血液208を第1のチャンバ200に形成した注入口204より充填し、第1のチャンバ200内に血液を収集した状態で、分析用ディスク100を回転させる。すると血液は、キャピラリ202の頂点202aを越えることのない状態、すなわち、第1のチャンバ200に保持された状態で遠心分離が行われる。
【0006】
遠心分離後、分析用ディスク100の回転を停止させると、遠心分離された血漿成分が毛細管作用によってキャピラリの頂点202aを越え、第2のチャンバ201の入り口まで移送される。
【0007】
そして、再度、分析用ディスク100を回転させると、遠心力および毛細管作用力により、分離された血漿成分が第1のチャンバ200から第2のチャンバ201へ移送される。第2のチャンバ201には、血漿中の分析したい特定の物質と反応して呈色する試薬を保持させることができる。試薬を塗布する方法としては、上カバー119をスペーサ基板118の上部に貼り付ける前に、上カバー119の第2のチャンバ201部へ、試薬を滴下し乾燥させることにより行う。乾燥された試薬が上カバー119の第2チャンバの壁面に均一に塗布された後、上カバー119をスペーサ基板118の上部に貼り付ける。
【0008】
第2のチャンバ201に移送が完了して呈色反応が生じた後、分析用ディスク100を回転させながら、その内周から外周、あるいは外周から内周に向かって、上記のトラック101に沿って光を照射することで、第2のチャンバ201を走査する。そして第2のチャンバ201から得られる透過光を検出することで、上記の試薬と反応した血漿成分中の特定の物質の量を検出することができる。
【0009】
なお、第2のチャンバに保持させる試薬の種類を変えることで、血漿成分中の他の物質の分析も可能であり、また、透過光だけでなく反射光を用いて検出することも可能となる。さらに上記の流路は、第1から第2のチャンバのみで構成された例を挙げたが、これに限らず、さらには、もっと多くのチャンバを第2のチャンバ以降に連結して設けるように構成されることもある。
【特許文献1】特表平10―504397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記のような光学分析装置においては、第1のチャンバ200にて遠心分離された血漿成分が、第2のチャンバ201での分析に必要な所定量だけ、キャピラリ202を通じて確実に移送されなければならない。
【0011】
しかしながら、上記従来の分析装置においては、前記分析ディスクの小型化のため、第1のチャンバ200の厚みを可能な限り、部分的に少しでも薄くしたいのであるが、第1のチャンバ200の厚みとキャピラリ202の厚みとの差が少なくなり、第1のチャンバ200とキャピラリ202との間に生じる毛細管力が小さくなり、血漿成分を移送するための十分な推進力が得られず、必要な量の血液成分を第2のチャンバ201へ移送できないという問題があった。
【0012】
又、第1のチャンバ201が分離用チャンバでなく、単に試薬が塗布されたチャンバである場合、注入もしくは移送されてきた血液と混ざり合い、試薬が血液に溶解される時に、どうしてもチャンバ内の隅部(端部)に試薬が偏りむらができる。これは、滴下された試薬が乾燥される時に、どうしても試薬が第1のチャンバ201の壁面の隅部(端部)に偏るため、注入溶液との溶解時に、チャンバ内の隅部(端部)での反応液の濃度が高くなり、均一にならないという課題があった。
【0013】
これを防止するため、チャンバ内の隅部(端部)の領域が少なくなるように、第1のチャンバ200の厚みをできるだけ薄くしたいのであるが、血液を第2のチャンバ201へ移送するための十分な移送推進力が得られないがために、この移送推進力を利用した確実な攪拌が不十分なので、たとえ第2のチャンバ201へ移送されたとしても、以降のチャンバにおける反応を阻害してしまい、精度の高い分析ができないという問題があった。
【0014】
そこで本発明は、上記課題を解決するものであり、たとえ、チャンバの厚みが薄い場合においても、確実に溶液を移送できるような移送推進力が得られるようにするとともに、試薬が均一に溶解できる光学分析装置の光学分析用デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の光学分析用デバイスは、内部に設けられたチャンバに収容される液体サンプルに照射される光に基づいて前記液体サンプルが発する光を分析して前記液体サンプルを分析する光学分析用デバイスにおいて、前記光学分析用デバイスの回転軸周りに配置され、前記液体サンプルを注入可能に構成された第1チャンバと、前記第1チャンバに比して前記回転軸に対して外側に配置され、前記第1チャンバとキャピラリで連結され、前記キャピラリを通じて前記第1チャンバに注入された液体サンプルを受入可能に構成された第2チャンバと、を備え、前記第1チャンバが、前記液体サンプルの流路の上流側に前記キャピラリより前記回転軸に平行する方向の長さが長い空間を有する第1領域と、前記キャピラリとの連結部側に前記回転軸に平行する方向の長さが前記キャピラリより長く、かつ、前記第1領域よりも前記回転軸に平行する方向の長さが短い空間を有する第2領域と、を有する、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記第1チャンバにおける、前記第1領域と前記第2領域とにおいて、前記回転軸に平行する方向の長さの差が、50μm以上2mm以下であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記第1チャンバにおいて、前記第1領域の容積が、前記キャピラリの容積以上であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記第1チャンバにおいて、前記第2領域を形成する壁面に液体サンプルと反応する試薬が塗布されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記第2領域は、2枚の基板を貼りあわせて形成され、液体サンプルが流入する方向に垂直方向の基板の断面形状が、凹形状を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記凹形状が半円形状をなし、前記第2領域が半円筒形の壁面を備えてなることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記第2領域において、その凹形状を有する基板の表面の少なくとも一部にすりガラス状の凹凸部を有し、前記凹凸部における高低差が、0.01mm以上0.5mm以下であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、前記第2領域において、その凹形状を有する基板の表面に、2つ以上の溝を有することを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記第2領域において、その凹形状を有する基板の表面に、液体サンプルの流れに実質的に平行な2つ以上の溝を有することを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、前記第2領域において、前記実質的に平行な溝は、2mm以下の間隔で、1mm以下で、溝の深さは、0.05mm以上1mm以下であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、前記第2領域において、液体サンプルが流入する方向の基板の断面形状が、下流側で半円形状もしくは半楕円形状を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、前記光学分析用デバイスが分析装置から着脱可能な試験片であり、この試験片に前記キャピラリ及び前記チャンバが設けられていることを特徴とする。
【0026】
また、前記光学分析用デバイスが装着される分析装置であって、前記分析用デバイスを軸心周りに回転させる回転駆動手段を備え、第1チャンバに液体サンプルが収容された前記光学分析用デバイスの回転を停止することで前記液体サンプルの血漿成分をキャピラリまで移送し、再び回転することで前記液体サンプルの血漿成分を第2チャンバまで移送させることを特徴とする。
【0027】
また、前記試薬は、血漿成分中のHDL−C以外のコレステロール成分を凝集させる試薬であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
以上のような本発明の光学分析用デバイスによれば、第1のチャンバ200の厚みが薄い場合、第1のチャンバ200の厚みとキャピラリ202との厚みの差が少ないがために、必要量の溶液を確実に第2のチャンバへ移送できるような十分な毛細管力を発生できないことや、毛細管力が不十分なため、チャンバ内で試薬との均一な攪拌ができないという問題に対して、補助的に推進移送力を発せさせることができるので、確実な移送ができる。
【0029】
また、溶液の移送を確実に行うための十分な推進力が得られるので、移送時に、攪拌作用が生じ、試薬との均一な攪拌ができるようになり、以降の分析制度を向上させることができるという効果がある。
【0030】
また、滴下された試薬が乾燥される時に、試薬が第1のチャンバ201の壁面の隅部(端部)に偏ることなく均一に塗布できるので、溶液との混合時に、均一な攪拌ができる効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の光学分析用デバイスについて、その実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0032】
(実施の形態1)
図1に本発明の実施の形態1における分析装置の構成図を示す。この分析装置の下部には、分析用デバイス100に光を照射する光ピックアップ104、光ピックアップ104を分析用デバイスの径方向に移動させるためのトラバースモーター105、分析用デバイス100を回転駆動させるためのスピンドルモーター106を配置している。これらは、光ピックアップ104で得たトラック101を読み取った情報を信号処理回路108にて演算して、CPU109、サーボコントロール回路107を通じて駆動される。
【0033】
分析装置の上部には、光ピックアップ104から照射されたレーザー光のうち、分析用デバイス100を通過した透過光102を検出する光検出器103が配置されている。
【0034】
光検出器103で検出した信号は、A/D変換器111によりA/D変換され、A/D変換されたデータは信号処理回路115により信号処理され、液体サンプル、例えば血液中の特定物質の濃度や量のほか、分析の目的に応じて、物質の形状、大きさなどを演算する。メモリー112は、信号処理回路115により算出された値を特定物質の濃度などの値に変換するテーブルを保持していたり、得られた濃度などの値を記憶したりする。得られた分析値は、表示部120に出力されるが、これらはCPU114にて制御が行われる。
【0035】
さて、本実施の形態においては、図17に示した構造の分析用デバイスを用いるが、その流路の構造は、図18で示したものとは異なり、図2に示すような流路構造を持つ光学分析用デバイスを例に挙げ説明する。
【0036】
図2に示す流路構造は、善玉コレステロール、いわゆるHDL−Cを測定するためのものである。
【0037】
具体的な構造は、液体サンプルを注入する注入口204を有する第1のチャンバ200と、第1のチャンバ200とキャピラリ202で連結された第2のチャンバ201と、第2のチャンバ201とキャピラリ205で連結された第3のチャンバ203と、さらに、第3のチャンバ203とキャピラリ207で連結された第4のチャンバ206とから構成されている。なお、第3のチャンバ203、第4のチャンバ206には、HDL−Cの分析に必要な試薬が塗布されている。
【0038】
以下に、HDL−Cを分析する流れに沿って、本実施の形態における分析装置が高精度に分析を行う基本的な動作を説明する。
【0039】
まず、分析用デバイス100の注入口204より血液208を注入し、血液で第1のチャンバ200を満たした状態の分析用デバイス100を分析装置に装着し、従来の光デバイス装置で行われるスピンアップ処理を行う。
【0040】
この後、血液を血漿成分300と血球成分301とに分離する遠心分離処理を行う。遠心分離処理は、例えば、4000〜6000rpmの回転数で、2〜3分の間、分析用デバイス100を回転させる。
【0041】
所定の時間が経過した後、分析用デバイス100の回転を停止すると、第1のチャンバ200内で分離された血漿成分300がキャピラリ202を通じて移送され、第2のチャンバ201の入り口まで進む。そこで再び分析用デバイス100を1000〜3000rpmの回転数で回転させると、血漿成分が第2のチャンバ201に流入して、第2のチャンバ201を血漿成分300で充たす。この第2のチャンバ201の容積は、第1のチャンバ200において分離される血漿成分の容積よりも小さく設計されている。このため、第2のチャンバ201は血漿成分で充たすので、血漿成分の量を計量(定量)することができる(図3)。
【0042】
再度、分析用デバイスの回転を止めると、第2のチャンバ201の内周側に保持された上澄みの血漿成分300が第2のチャンバ201からキャピラリ205に流れ、第3のチャンバ203の入り口まで進行する。そこで再度、1000〜6000rpmの回転数で分析デバイス100を回転させると、血漿成分300がキャピラリ205から第3のチャンバ203に移送され、第3のチャンバ203を充たす。
【0043】
第3のチャンバ203では、チャンバ内に予め配置された試薬と移送された血漿成分が反応する。第3のチャンバ203には、血漿成分300中のHDL−C以外のコレステロール成分と凝集反応を生じる試薬を配置することができる。このような凝集試薬を配置する理由は、後の分析において、HDL−Cの光学的な分析を阻害するHDL−C以外のコレステロール成分を取り除くためである。一定時間、分析用デバイスの回転を停止もしくは低回転させておくと、図5に示すように、第3のチャンバ203中に凝集物303が生成する。
【0044】
一定時間の経過後、再び分析用デバイスを、3000〜6000rpmの回転数で3〜10分程度、回転させることにより、図6のように生成した凝集物をデバイスの外周方向に移動させ、凝集物303の遠心分離を行う。
【0045】
上述した移送方法にならって、凝集物303を除いた血漿成分303を第4のチャンバ206に移送する(図7)。第4のチャンバには、HDL−Cと反応して呈色反応を生じる試薬304を予め保持させており、 光ピックアップ104、光検出器103を第4のチャンバ206に移動させ、光ピックアップ104からレーザーを照射し光検出器103で透過光を検出し、吸光度測定を行う。
【0046】
メモリー112は、 吸光度とHDL−C濃度とを関係付けるテーブルを記憶しており、分析装置は、検出した吸光度に対応するHDL−C濃度を読み出して表示部120に出力する。
【0047】
ここで、上記一連のHDL−C濃度測定において、本実施の形態の特徴的な構成について、具体的に説明する。本実施の形態では、第2のチャンバ201内で、確実に移送を行うための十分な移送推進力を発生させることを特徴とする。
【0048】
この液体を移送できる十分な毛細管力とはどういうものかについて、図11で説明する。
【0049】
図11は、第2チャンバ201へ血漿が移送され、血漿成分で充たされたときの第2チャンバ201を表した平面図である。分析用デバイスの回転を止めたとき、第2のチャンバ201の内周側に保持された上澄みの血漿成分300が第2のチャンバ201からキャピラリ205に流れ、第3のチャンバ203の入り口412まで進行する。
【0050】
この場合、血漿成分は、必ずしも第3のチャンバ203の入り口412まで到達する必要はなく、第2チャンバの最外周面413から、第3のチャンバ203の入り口412までの領域411の範囲内に進行していれば、再度、1000〜6000rpmの回転数で分析デバイス100を回転させたときに、血漿成分300がキャピラリ205から第3のチャンバ203に移送され、第3のチャンバ203を充たすことができる。
【0051】
従って、分析用デバイスの回転を止めたときに、第2のチャンバ201の血漿成分300が、少なくとも、第2チャンバの最外周面413を超えて領域411の範囲内まで確実に進行できるだけの移送推進力が必要になってくる。
【0052】
図8は、本実施の形態における第2のチャンバ201を拡大したもので、図11の線A―A‘の断面図である。図8においては、血漿が第2チャンバ201に移送される前の状態を表している。第2のチャンバ201は、その上流側に少なくとも前記キャピラリ205よりも厚みの大きい第1の領域401と、前記キャピラリ205が連結された側に、前記キャピラリ205以上の厚みで、かつ、前記第1の領域401よりも厚みの小さい第2の領域402とを備えている。即ち、第2チャンバ201の軸心方向の厚みが、下流であるキャピラリ205に近い側が、浅くなるように段差を設けており、その中に液体が流入されるように空洞417になっている。
【0053】
次に、寸法関係について説明する。第1の領域401の軸心方向の寸法406は約600μmであり、第2の領域402の軸心方向の寸法407の寸法は約200μmである。キャピラリ205の軸心方向の寸法403は約100μmであり、キャピラリ205の軸心方向の寸法403は約50μmである。又、第1の領域401の移送方向(トラック方向)の寸法408は、約2mmであり、第2の領域402の移送方向(トラック方向)の寸法409は約8mm、としている。
【0054】
従って、このような厚みの寸法にすることにより、液体を流入させたとき、第2チャンバ202の第2の領域402とキャピラリ205との寸法の差により発生する毛細管力418に加えて、同一チャンバ201内でも、第1の領域401と第2の領域402との寸法の差による毛細管力(毛細管現象により生ずる力)410が発生するため、より強力的な移送推進力を発生することができる。図9は、分析用デバイス100を1000〜3000rpmの回転数で回転させた時に、第2チャンバ201が血漿成分で充たされている様子を表したものである。
【0055】
第2のチャンバ201で、チャンバ内に予め配置された試薬と移送された血漿成分が反応した後、再度、分析用デバイスの回転を止めると、第2のチャンバ201の内周側に保持された上澄みの血漿成分300が第2のチャンバ201からキャピラリ205に流れ、第3のチャンバ203の入り口まで進行する。
【0056】
この時、この血漿成分405に作用する毛細管力410が、図10のように、第2チャンバ201内で、第1の領域401と第2の領域402との間に、矢印の方向に作用し、移送推進力となる。この移送推進力は、第2の領域402とキャピラリ205との間に作用する毛細管力418を強める作用を発生させるため、血漿成分405はキャピラリ205へ確実に吸い上げられる。
【0057】
つまり、この毛細管力410によって、分析用デバイスの回転を止めたときに、第2のチャンバ201の血漿成分300がキャピラリ205に流れ、確実に、第2チャンバの最外周面413を超えて領域411の範囲内まで進行できるだけの十分な毛細管力を発生させることができるのである。
【0058】
次に、第1の領域401の容積について簡単に説明する。分析用デバイスの停止されると、血漿成分300は、キャピラリ205に流れ込むのであるが、分析デバイスの回転時
(停止前)に血漿成分が満たされていなかった第2の領域402の内周側の領域にも、この移送推進力によって流れ込む(図示せず)。そのため、分析用デバイスの回転時の第1の領域401に満たされている血漿成分の体積は、分析用デバイスの回転時(停止前)に血漿成分が満たされていなかった第2の領域402の内周側の領域へ流入した体積と、第2チャンバの最外周面413まで進行したキャピラリ205内の血漿成分300の体積との和より多ければよい。言い換えると、前記第1領域の容積は、上記条件を満足できる容量の大きさであればよく、少なくとも前記キャピラリの容積以上あることが望ましい。しかしながら、前記第1領域の容積が上記条件より少ない容量の場合には、分析用デバイスの停止時に、血漿成分300がキャピラリ205における第2チャンバの最外周面413まで進行できないことになるので、分析用デバイスの再回転によっても、結果、第3のチャンバ203へ移送できないことになる。
【0059】
なお、本実施例では、第1の領域401の軸心方向の寸法406と第2の領域402の軸心方向の寸法407の寸法との差を約400μmにすることにより移送推進力を発生させているが、本分析用デバイスの厚みの構造上、この寸法差は、50μm以上2mm以下(好ましくは、300μm以上500μm以下)であれば、充分な毛細管力を発生することができ、第2のチャンバ201の血漿成分300を、確実に、キャピラリ205を通じて第3のチャンバ203へ移送させることができる。
【0060】
また、寸法差が50μm以下では、第2のチャンバ201の血漿成分300を、キャピラリ205を通じて第3のチャンバ203へ移送させるだけの充分な毛細管力が発生しないため、移送推進力の発生という観点からみると、実験ではあまり効果が得られなかった。
【0061】
また、理論上は、2mmより大きい寸法差にすることは可能ではあるが、分析用デバイス自体の厚みをできるかぎり薄くし、血漿成分300もできる限り少量の利用で測定できる小型の分析用デバイスの方が、測定時間の削減やコストの面でも有利になる。従って、2mmより大きい寸法差のチャンバを有する分析用デバイスはあまり現実的ではない。さらに、光ディスク装置の光ディスクをそのまま分析用デバイスのベース基板として利用し、上カバーに2mmより大きい寸法差のチャンバを有する場合には、上カバーの厚みは、その肉厚を薄めに考慮しても約3〜4mmを超えるようになり、分析デバイス自体の厚みも、約5mmを超えるようなものになるので、現実的でないことは明白である。
【0062】
なお、発生する毛細管力は、キャピラリとチャンバのそれぞれの内壁の表面処理によっても多少影響され、親水性が高いほど毛細管力は高くなり、チャンバのキャピラリの断面形状によっても多少影響される。
【0063】
本実施例では、光学分析用デバイスの外観の形状は、利便的には円形デバイスであるが、回転可能なデバイスであれば円形デバイスに限らず、矩形や楕円形等あらゆる形状のものを含む。
【0064】
また、本実施例では、光学分析装置は、図1に示すように、光ディスク装置の光学スキャン技術を応用した分析装置と、回転及び信号の読み取りを制御するための情報領域(トラック情報やアドレス情報)を有する光学分析デバイスとしたが、必ずしも、その必要はない。光学分析用デバイスの構造は、回転及び信号の読み取りを制御するための情報領域(トラック情報やアドレス情報)を有さない着脱可能に構成された試験片(パネル状)であってもよく、分析装置の回転可能なプレート(図示せず)に、この試験片を直接取り付けることができるような構造にしてもよい。
【0065】
また、本実施例では、注入口204は、第1のチャンバ200の表面上部に設けられているが、前記注入口は、試験片が回転する中心側の端面に形成(図示せず)することにより、点着後、試験中に液体サンプルを遠心力によって試薬側へ確実に移送及び停留させるようにしてもよい。
【0066】
以上のように、本実施の形態1によれば、チャンバからチャンバへ移送を行う場合に、分析に必要な量が確実に移送することができ、以降のHDL−Cの分析精度の信頼性を向上することができる。
【0067】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2として、第2のチャンバ201に保持させた分析に必要な試薬が均一にむらなく溶解できる例について説明する。本実施の形態2において用いる光学分析装置および分析用デバイスの構成は、上記の実施の形態1で説明した構成と同様である。実施の形態1と異なる点は、分析用デバイスの第2のチャンバ201にも、HDL−C以外の成分を沈殿させる(血球成分を溶血させる試薬を含む)試薬を予め保持させている点が異なる。以下、この異なる点を中心に、本実施の形態の分析装置の動作を説明する。
【0068】
図4は、血漿成分が第2チャンバに移送された時の様子を表したもので、第2チャンバに塗布されている試薬と反応することになる。
【0069】
図12は、本実施の形態における第2のチャンバ201を拡大したものであり、図11の線A―A‘の断面図である。第1の領域401よりも厚みの小さい第2の領域402の領域の内壁に、滴下された試薬414を乾燥することにより、試薬414が塗布されている。これは、試薬414を第1の領域401にも担持することは可能ではあるが、後述にも記載しているように、滴下された試薬414が乾燥される時に、どうしても試薬がその表面張力により隅部に集まるという特性により、血漿成分との溶解時に均一性に欠けることになるので、その対策として、実施例では隅部の領域が浅くて狭い第2の領域402の領域の内壁に試薬414を担持する方が望ましい。
【0070】
ここで、第2のチャンバ201の壁面の形状によって、どれだけ反応に影響するのかを、次のような方法で実験をした。
【0071】
第2のチャンバ201の壁面を所定の形状に加工を施し、このチャンバ201に沈澱試薬(りんタングステン酸ナトリウム&塩化マグネシウム)を塗布・乾燥後、血漿成分を移送させ、沈澱試薬との反応により非HDL−C成分を沈澱させた後、上静内に非HDL−C成分がどれだけ含まれているかを測定することにより実施した。
【0072】
各種壁面(内面)の形状に関しては、図16a〜dのように、未加工の壁面、すりガラス状の壁面、5本の溝を設けた壁面、10本の溝を設けた壁面、中央に窪みを設けた壁面、それぞれ5つのタイプを用いた。図20は、これら5つのタイプの壁面ごとに、沈澱試薬との反応が確実に行われているかどうかを、沈澱すべき非HDL−C成分(LDL)を測定することにより行った結果であり、実験結果1および実験結果2は、サンプル液の濃度を変えた2種類の元サンプルで実験した結果である。
【0073】
各種壁面の形状に加工を施されたチャンバでは、沈殿生成後、上静を回収、自動分析装置「日立7020」を使い、TC濃度、LDL濃度を測定した。
【0074】
実験結果1では、未加工の壁面では、103mg/dlの元サンプルの非―HDL成分の代表としてLDLに着目して目安にすると、沈澱反応処理によっても沈澱されていないLDLが、3mg/dl存在する。これに対して、すりガラス状の壁面、5本の溝を設けた壁面、10本の溝を設けた壁面、中央に窪みを設けた壁面では、沈澱反応処理によっても沈澱されていないLDLは、0mg/dlとなっている。
【0075】
また、実験結果2では、未加工の壁面では、183mg/dlの元サンプルの非―HDL成分の代表としてLDLに着目すると、沈澱反応処理によっても沈澱されていないLDLが、5mg/dl存在する。これに対して、沈澱反応処理によっても沈澱されていないLDLは、すりガラス状の壁面では2mg/dl、5本の溝を設けた壁面では3mg/dl、10本の溝を設けた壁面では1mg/dl、中央に窪みを設けた壁面では、0mg/dlとそれぞれなっている。
【0076】
この実験結果からわかるように、第2のチャンバ201の壁面に何も加工を施さない従来例に比べて、沈澱反応処理によっても沈澱されていない、非―HDL成分のLDLの濃度は低濃度に抑えられたことを示す。
【0077】
これは、壁面に何も加工を施さないよりも、所定の加工を施した方が、非HDL成分と沈澱試薬との反応が確実に促進するということがわかる。
【0078】
なお血漿成分を沈澱試薬で反応させたものを、あらかじめ自動分析機で検定したものをリファレンスとした。
【0079】
次に寸法について、説明する。
【0080】
図13は、本実施の形態における第2のチャンバ201を拡大したものであり、図11の線B―B‘の断面図である。図13では、試薬を塗布する内壁120の形状は半円状にするため、上カバー119を半円状にカットした形状にしており、第2の領域は、少なくとも2枚の基板の貼りあわせにより構成されている。図19は、壁面に何も加工を施さない形状のもので、内壁120の形状がほぼ直線状になっている従来技術の1つの形状であり、図11の線B―B‘の断面図である。
【0081】
しかしながら、このような形状の場合は、チャンバ内において、どうしても上カバー119の壁面120に隅部(角部)416が生じることになる。この場合、図21からもわかるように、滴下された試薬414が乾燥される時に、どうしても試薬が第1のチャンバ201の壁面の端から約1〜1.5mmの領域に試薬が表面張力により集まり、そのまま乾燥されるので、第1のチャンバ201の壁面の隅部(端部)に試薬が偏る。そのため、第2のチャンバ201内で、注入もしくは移送されてきた血漿成分との溶解時に、どうしてもチャンバ内の隅部(端部)の領域に試薬が偏りむらが生じるため、チャンバ内において、隅部(端部)では反応液の濃度が高くなり、中央部では反応液の濃度が低くなることになる。
【0082】
これが、チャンバ内で濃度が均一にならないという問題を発生させ、試薬との均一な反応ができないという主な要因であった。これを防ぐため、図13及び図16dに示すように、チャンバ内の隅部(端部)の領域が少なくなるように、内壁120の形状の中央部が凹むように円形状の窪みを設けたものであるが、隅部(端)に塗布乾燥された試薬のむらを抑えること可能なのがわかる。中央の凹みの深さは、チャンバの大きさや分析デバイスの厚みにも制約されるが、壁面の隅部に丸みをもたせるため、本実施例では、約0.5mmとしている。
【0083】
図14および図16aは、第2のチャンバ201における、第2の領域402の断面図の他の実施例の形状である。試薬を塗布する内壁120の形状は半円状(または直線状)であり、図13(または図19)と同じであるが、その凹形状を有する基板の表面に、液体サンプルの流れに平行な溝を5本有している。
【0084】
本実施例では、約1mmの間隔で、約0.5mm幅の溝を設け、溝の深さは約0.5mmとした。このような構造にすることにより、図21bのように、試薬を塗布・乾燥すると、第2のチャンバ201の壁面の隅部(端部)だけに試薬が偏ることなく、内壁120面全体の溝部にも試薬が集まって塗布・乾燥できる。そのため、注入もしくは移送されてきた血漿成分との溶解時に、チャンバ内の隅部(端部)の領域だけに試薬が偏ることのよるむらが生じるのを防止できるため、チャンバ内での濃度が均一性が向上することができる。
【0085】
図16bは、10本の溝を設けた壁面であるが、試薬を塗布乾燥した時の試薬の塗布状態は、5本の溝を設けた壁面を示す図21bと比べて、塗布状態のピッチ間隔はさらに短くなるので、よりチャンバ内での均一性を向上できる。
【0086】
溝の深さは、チャンバの大きさや分析デバイスの厚みにも制約されるが、本実施例では、凹凸部における高低差は、約0.5mmとしているが、好ましくは、0.05mm以上1mm以下であり、0.05mm未満の寸法では、壁面に試薬を均一に塗布、乾燥させることが不十分なので、あまり効果が得られなかった。
【0087】
又、1mmより大きい高低差の溝を有するチャンバでは、滴下された試薬414が乾燥される時に、高低差による隅部の領域が多くなるため、各溝の隅部の領域に試薬が表面張力により集まり試薬が偏るので、試薬の濃淡の差が各溝ごとに大きくなり、あまりよい効果が得られなかった。また、理論上は、1mmより大きい高低差にすることは可能ではあるが、分析用デバイス自体の厚みをできるかぎり薄くしたいので、1mmより大きい高低差のチャンバを有する分析用デバイスはあまり現実的ではない。
【0088】
又、溝の幅と間隔も、チャンバの大きさや分析デバイスの厚みにも制約されるが、溝の間隔は約1mmで、溝の幅は約0.5mmとしているが、好ましくは、溝の間隔は約2mm以下、溝の幅は1mm以下であり、溝の間隔を約2mmより広くしたり、溝の幅を1mmより広くすると、溝の数が少なくなるので、あまり効果が得られなかった。
【0089】
図16cは、壁面120に、すりガラス状の壁面を形成したもので、この凹凸部における高低差は、0.2mmとしている。チャンバの大きさや分析デバイスの厚みにも制約されるが、壁面の隅部に丸みをもたせるため、本実施例では、凹凸部における高低差は、約0.2mmとしているが、好ましくは、0.01mm以上0.5mm以下であり、0.01mm未満の寸法では、壁面に試薬を均一に塗布、乾燥させることが不十分なので、あまり効果が得られなかった。
【0090】
又、0.5mmより大きい高低差の溝を有するチャンバでは、滴下された試薬414が乾燥される時に、高低差による隅部の領域が多くなるため、すりガラス状の凹凸部の各隅部に試薬が表面張力により集まるが、その試薬の濃淡の差が一定でなく、あまりよい効果が得られなかった。また、理論上は、0.5mmより大きい高低差にすることは可能ではあるが、分析用デバイス自体の厚みをできるかぎり薄くしたいので、0.5mmより大きい高低差のチャンバを有する分析用デバイスは、あまり好ましくなく、すりガラス状の壁面の製造加工も難しくなるので現実的ではない。
【0091】
このような構造にすることにより、試薬を塗布乾燥した時の試薬の塗布状態を、内壁120の形状が直線状である従来の壁面形状(図19及及び図21a)と比べて、壁面全体に試薬が塗布できるので(図示せず)、チャンバ内での均一性を向上できる。これは、試薬の隅部(側壁面)への偏りむらが生じるのを防止することができる。
【0092】
図15は、第2のチャンバ201の断面図の他の実施例の形状であり、本実施の形態における第2のチャンバ201を拡大したものであり、図11の線AーA‘の断面図である。液体サンプルが流出する側の断面形状415が、少なくとも半円形状もしくは半楕円形状を有するものである。これは、試薬を塗布する壁面120を半円球形状にするだけでなく、第2チャンバ201の下流側の壁面も液体サンプルの移送方向に半円形状もしくは半楕円形状にしている。
【0093】
このような構造にすることにより、第2のチャンバ201の液体サンプルが流出する壁面とカバーデバイスとの間に生じる隅部(角部)を無くすことができるので、滴下された試薬414が乾燥される時に、この隅部(角部)への試薬の偏りによるむらが生じるのを低減することができる。これは、注入溶液との溶解時に、チャンバ内の隅部(端部)での反応液の濃度が高くなるのを防ぎ、均一性を向上できる効果がある。
【0094】
上述のように、第2チャンバ201が上記いずれの構造においても、滴下された試薬414が乾燥される時に、試薬が壁面120の壁面415、416付近に偏ることによるむらができるのを防止できるので、注入もしくは移送されてきた血漿成分との試薬の溶解時に、試薬を前記空洞部分全体に拡散させ、反応液の濃度を均一にすることができる。
【0095】
なお本発明は、以上の実施の形態1、2において説明した第2チャンバ201の構造に限らず、チャンバの個数は分析の目的に合わせて構成すればよく、2つ以上のチャンバがあれば、本発明を実施することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明にかかる分析装置は、液体サンプルを回転可能なデバイスに収集し、少なくとも第1のチャンバにて遠心分離を行ってから第2のチャンバにて液体サンプル中の特定物質について分析をおこなう装置に適用することができ、医療分野に限らず、環境分野などの分析装置においても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態1における光学分析用デバイスの構成図
【図2】本発明の実施の形態1における光学分析用デバイスの要部平面図
【図3】本発明の実施の形態1における光学分析用デバイスの要部平面図
【図4】本発明の実施の形態1における光学分析用デバイスの要部平面図
【図5】本発明の実施の形態1における光学分析用デバイスの要部平面図
【図6】本発明の実施の形態1における光学分析用デバイスの要部平面図
【図7】本発明の実施の形態1における光学分析用デバイスの要部平面図
【図8】本発明の実施の形態1における光学分析用デバイスの要部平面図
【図9】本発明の実施の形態1における光学分析用デバイスの要部平面図
【図10】本発明の実施の形態1における光学分析用デバイスの要部平面図
【図11】本発明の実施の形態1、2における光学分析用デバイスの要部平面図
【図12】本発明の実施の形態2における光学分析用デバイスの要部平面図
【図13】本発明の実施の形態2における光学分析用デバイスの要部断面図
【図14】本発明の実施の形態2における光学分析用デバイスの要部断面図
【図15】本発明の実施の形態2における光学分析用デバイスの要部断面図
【図16a】本発明の実施の形態2における光学分析用デバイス(溝を5本形成)の要部断面図
【図16b】本発明の実施の形態2における光学分析用デバイス(溝を10本形成)の要部断面図
【図16c】本発明の実施の形態2における光学分析用デバイス(すりガラス状の凹凸部を形成)の要部断面図
【図16d】本発明の実施の形態2における光学分析用デバイス(中央部に凹みを形成)の要部断面図
【図17】従来の光学分析用デバイスの分解斜視図
【図18】従来の光学分析用デバイスの要部平面図
【図19】従来の分析用デバイス(試薬塗布状態)の要部断面図
【図20】壁面に加工を施した場合における、非―HDL成分(LDL)と沈澱試薬との反応結果を示す図
【図21a】従来の壁面(未加工)に試薬を塗布乾燥した場合の試薬の乾燥塗布状態を示す図
【図21b】溝を設けた壁面に試薬を塗布乾燥した場合の試薬の乾燥塗布状態を示す図
【符号の説明】
【0098】
100 分析用デバイス(ディスク)
101 トラック
102 透過光
103 光検出器
104 光ピックアップ
105 トラバースモーター
106 スピンドルモーター
107 サーボコントロール回路
108 信号処理回路
109、114 CPU
110 調整回路
111 A/D変換器
112 メモリー
115 信号処理回路
117 ベース基板
118 スペーサ基板
119 上カバー
120 壁面
200 第1のチャンバ
202、205、207 キャピラリ
201 第2のチャンバ
203 第3のチャンバ
204 注入口
206 第4のチャンバ
208 血液
300、405 血漿成分
301 血球
303 凝集物
304、414 試薬
400 遠心力
401 第1領域
402 第2領域
403 サイフォンの厚み(キャピラリ205の軸心方向の寸法)
404 サイフォンの幅(キャピラリ205のトラック方向の寸法)
406 第1領域の厚み(第1の領域401の軸心方向の寸法)
407 第2領域の厚み(第2の領域402の軸心方向の寸法)
408 第1領域の幅(第1の領域401の移送方向(トラック方向)の寸法)
409 第2領域の幅(第2の領域402の移送方向(トラック方向)の寸法)
410 毛細管力(移送推進力)
411 領域
412 第3チャンバの入口
413 第2チャンバの最外周面
415 壁面(側壁面、隅部)
416 隅部(角部)
417 空洞
418 毛細管力
420 溝幅
421 第2のチャンバの半径方向の幅
422 壁面に塗布された試薬と側壁面からの距離
423 壁面の溝に塗布された試薬
424 溝
425 すりガラス状の凹凸の壁面
426 中央部が凹みのある壁面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に設けられたチャンバに収容される液体サンプルに照射される光に基づいて前記液体サンプルが発する光を分析して前記液体サンプルを分析する光学分析用デバイスにおいて、前記光学分析用デバイスの回転軸周りに配置され、前記液体サンプルを注入可能に構成された第1チャンバと、前記第1チャンバに比して前記回転軸に対して外側に配置され、前記第1チャンバとキャピラリで連結され、前記キャピラリを通じて前記第1チャンバに注入された液体サンプルを受入可能に構成された第2チャンバと、を備え、前記第1チャンバが、前記液体サンプルの流路の上流側に前記キャピラリより前記回転軸に平行する方向の長さが長い空間を有する第1領域と、前記キャピラリとの連結部側に前記回転軸に平行する方向の長さが前記キャピラリより長く、かつ、前記第1領域よりも前記回転軸に平行する方向の長さが短い空間を有する第2領域と、を有する、ことを特徴とする光学分析用デバイス。
【請求項2】
前記第1チャンバにおける、前記第1領域と前記第2領域とにおける前記回転軸に平行する方向の長さの差が、50μm以上2mm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学分析用デバイス。
【請求項3】
前記第1チャンバにおいて、前記第1領域の容積が、前記キャピラリの容積以上である、ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の光学分析用デバイス。
【請求項4】
前記第1チャンバにおいて、前記第2領域を形成する壁面に液体サンプルと反応する試薬が塗布されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学分析用デバイス。
【請求項5】
前記第2領域は、2枚の基板を貼りあわせて形成され、液体サンプルが流入する方向に垂直方向の基板の断面形状が、凹形状を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の光学分析用デバイス。
【請求項6】
前記断面形状が半円形状をなし、前記第2領域が半円筒状の壁面を備えてなる、ことを特徴とする請求項5に記載の光学分析用デバイス。
【請求項7】
前記第2領域において、その凹形状を有する基板の表面の少なくとも一部にすりガラス状の凹凸部を有し、前記凹凸部における高低差が、0.01mm以上0.5mm以下である、ことを特徴とする請求項5または請求項6のいずれかに記載の光学分析用デバイス。
【請求項8】
前記第2領域において、その凹形状を有する基板の表面に、2つ以上の溝を有する、ことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の光学分析用デバイス。
【請求項9】
前記溝は、液体サンプルの流れに実質的に平行な2つ以上の溝である、ことを特徴とする請求項8に記載の光学分析用デバイス。
【請求項10】
前記第2領域において、前記実質的に平行な溝は、2mm以下の間隔で、1mm幅以下で、溝の深さは、0.05mm以上1mm以下である、ことを特徴とする請求項9に記載の光学分析用デバイス。
【請求項11】
前記第2領域において、液体サンプルが流入する方向の基板の断面形状が、下流側で半円形状もしくは半楕円形状を有する、ことを特徴とする請求項4乃至請求項10のいずれかに記載の光学分析用デバイス。
【請求項12】
前記光学分析用デバイスは、光学分析装置から着脱可能に構成された試験片であり、この試験片に前記キャピラリ及び前記チャンバが設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の光学分析用デバイス。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12に記載の光学分析用デバイスが装着される分析装置であって、前記分析用デバイスを軸心周りに回転させる回転駆動手段を備え、第1チャンバに液体サンプルが収容された前記光学分析用デバイスの回転を停止することで前記液体サンプルの血漿成分をキャピラリまで移送し、再び回転することで前記液体サンプルの血漿成分を第2チャンバまで移送させる、ことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の光学分析用デバイスを用いた光学分析装置。
【請求項14】
前記試薬が、血漿成分中のHDL−C以外のコレステロール成分を凝集させる試薬である、ことを特徴とする請求項4乃至13のいずれかに記載の光学分析用デバイスまたは光学分析装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図16d】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21a】
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【図21b】
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【公開番号】特開2007−315879(P2007−315879A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144808(P2006−144808)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】