光学式エンコーダ
【課題】第1格子と第2格子までの光学的距離と第2格子から第3格子までの光学的距離の設計値からのずれによる性能劣化を抑制することにより、安定した性能を有し、小型で量産に向いた光学式エンコーダを提供すること。
【解決手段】3重スリット方式の光学式エンコーダにおいて、発光部側の発散光の出射幅を限定する位置からスケールの格子までの光学的距離z1と、受光部側のスケールの格子から光検出部の格子機能面までの光学的距離z2と、の少なくとも一方の値を増減させることによって、検出信号の振幅レベルの劣化を低減させる信号劣化低減手段を備える
【解決手段】3重スリット方式の光学式エンコーダにおいて、発光部側の発散光の出射幅を限定する位置からスケールの格子までの光学的距離z1と、受光部側のスケールの格子から光検出部の格子機能面までの光学的距離z2と、の少なくとも一方の値を増減させることによって、検出信号の振幅レベルの劣化を低減させる信号劣化低減手段を備える
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダなどの変位検出に用いられる光学式変位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術による光学式エンコーダの一般的な例として、3重スリット方式と呼ばれるものが挙げられる。これは、LED等の光源と該光源からの光の光路に配置された第1格子と、第1格子からの光を受けるスケール上に配置された第2格子と、第2格子を透過、または、反射した光が入射する第3格子と、第3格子の直後に配置された光検出器と、から構成している。また、第2格子を有するスケールを除いた構成要素は検出ヘッドを構成している。
【0003】
反射型の3重スリット方式としては、特開2003−166856号公報で示されるものがある。図20に示すように、第1格子が形成された透明部材と第3格子が形成された透明部材を別体に形成し、第1格子と第3格子の高さを揃えて検出ヘッド内に配置する構成が示されている。この構成において、第1格子から第2格子までの距離と第2格子から第3格子までの距離が等しくなるように設定されている。
【0004】
3重スリット方式のエンコーダの検出原理は以下のようになる。第1格子から出た光が第2格子で回折され、第2格子の拡大像が第3格子上に形成され、第3格子を透過した光が光検出器で検出される。第2格子の拡大像と第3格子は同じピッチを持つように設計されている。そして、スケールの動きに応じて光検出で検出される光の強度の変化により変位量を検出する。
【0005】
3重スリット方式のエンコーダにおいて、第1格子と第3格子の高さを設定値通りに揃えることは重要なポイントである。その理由は、設定値から僅かに外れただけで第3格子上に形成される像の拡大倍率が変化して第3格子を透過して光検出器で検出される光の信号振幅が下がってしまうためである。
【0006】
特開2003−166856号公報に示すような反射型の3重スリット方式においては、スケールと検出ヘッドの間隔に影響されにくい検出を行うために、検出ヘッドに含まれる第2格子と第3格子を同一面上に配置する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−166856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、エンコーダの現状として、ロボットの関節部の隙間に組み込むなど小型・薄型な物が求められている。従来のエンコーダは、高精度なものほど光源や受光素子にカンパッケージタイプの物を用いるなど各部材のサイズが大きく、検出ヘッドのサイズも一辺が10mm〜20mm程ある。
【0009】
光源や受光素子をベアチップタイプや面実装タイプの物に置き換えるだけでかなり小型化・薄型化が図れる。しかしながら、3重スリット方式のエンコーダでは、第1格子、第3格子を形成したスリット部材の大きさや厚みがエンコーダのサイズに大きく効くようになる。そのため、スリット部材の小型化・省スペース化を図る必要がある。
【0010】
第1格子、第3格子を分離した特開2003−166856号公報に示すような構成の3重スリット方式のエンコーダでは、第1格子と第3格子の段差量が設計値からずれると、3重スリット方式のエンコーダでは信号振幅が大幅に低下する可能性がある。
【0011】
また、厚さムラの少ない特定の部材で設計してもロットが変わったり、部材を換えたりした場合に第1格子と第3格子の段差量が大きく変化する可能性がある。
3重スリットではない構成のエンコーダについても、高精度タイプには検出ヘッド側に第1格子、第3格子の少なくとも一方に相当する格子を有しているものが多い。出射側として光源または第1格子の高さと、受光側として受光部または第3格子の高さとが所定の関係に無いと、検出信号レベルや検出信号レベルに含まれるDC成分量が設計通りに制御しにくい、または、制御できないものがある。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、第1格子と第2格子までの光学的距離と第2格子から第3格子までの光学的距離の設計値からのずれによる性能劣化を抑制することにより、安定した性能を有し、小型で量産に向いた光学式エンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、相対的に移動する固定体と移動体の内のいずれか一方に取り付けられた検出ヘッドと、
他方に前記検出ヘッドに対向して取り付けられた、相対移動する方向に所定ピッチの光学パタンを有する格子が設けられたスケールと、を備え、
前記検出ヘッドは、
出射光のスケール移動方向の出射幅が限定された発散光を出射し、前記スケールに所定の光を照射する発光部と、格子機能面と受光部を有する光検出部と、を有し、
前記発光部の限定された出射幅を有する出射面から前記スケールに照射されて前記スケールに設けられた前記格子により反射し、回折した光が前記光検出部の前記格子機能面に形成するイメージの動きを検出するよう配置された前記光検出部が設けられ、前記スケールの相対移動量に応じて前記光検出部から周期的な検出信号が出力されるような光学式エンコーダにおいて、
前記発光部側の発散光の出射幅を限定する位置から前記スケールの前記格子までの光学的距離z1と、
前記受光部側の前記スケールの前記格子から前記光検出部の前記格子機能面までの光学的距離z2と、の少なくとも一方の値を増減させることによって、検出信号の振幅レベルの劣化を低減させる信号劣化低減手段を備えることを特徴とする光学式エンコーダを提供できる。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は部材、または、空間であり、
前記部材、または、空間の光路上の厚み、または、間隔と屈折率のいずれかを変化させることによって光学的距離を調整することが望ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は部材、または、空間であり、
前記信号劣化低減手段により、前記発光部側の出射面と、前記光検出部の前記格子機能面との少なくとも一方の位置を移動させることが望ましい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記発光部と、前記光検出部とを一体的に覆う保護部材を備えることが望ましい。
【0017】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記保護部材は光透過性樹脂であることが望ましい。
【0018】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、前記保護部材のスケール側の表面形状を所定の形に成形してなることが望ましい。
【0019】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、前記保護部材のスケール側表面に貼り付ける光透過部材であることが望ましい。
【0020】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、前記保護部材の表面よりもヘッド内部の光路上に配置されることが望ましい。
【0021】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、前記保護部材の表面よりもヘッド内部の光路外に配置されることが望ましい。
【0022】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、光路上に光屈折率の境界面を少なくとも1つ備えるよう配置される部材、または、空間であることが望ましい。
【0023】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、発光部、または、光検出器のスケール側の面に接するように実装される部材であることが望ましい。
【0024】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、前記発光部側の出射面から前記スケールの格子までの光学的距離と、前記受光部側のスケールの格子から前記光検出部の前記格子機能面までの光学的距離とのいずれか一方の光学的距離のみを調整することが望ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明よれば、第1格子と第2格子までの光学的距離と第2格子から第3格子までの光学的距離の設計値からのずれによる性能劣化を抑制することにより、安定した性能を有し、小型で量産に向いた光学式エンコーダを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光学式エンコーダの斜視構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る光学式エンコーダの光検出器を置き換えた例の斜視構成を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る光学式エンコーダの光検出器を置き換えた例の断面構成を示す図である。
【図5】PDアレイの構成と結線を説明する図である。
【図6】点光源の例を説明する図である。
【図7】1スリットの例を説明する図である。
【図8】従来の光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図9】従来の光学式エンコーダの断面構成を示す他の図である。
【図10】第1の実施形態の変形例1に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図11】第1の実施形態の変形例2に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図12】第1の実施形態の変形例1に係る光学式エンコーダの断面構成を示す他の図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る光学式エンコーダの斜視構成を示す図である。
【図14】第2の実施形態の変形例1に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図15】第2の実施形態の変形例2に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図16】第2の実施形態の変形例3に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図17】第2の実施形態の変形例4に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図18】本発明の第3の実施形態に係る光学式エンコーダの斜視構成を示す図である。
【図19】第3の実施形態に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図20】従来の光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明にかかる光学式エンコーダの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0028】
まず、第1の実施形態に係る光学式エンコーダついて、図1、図2、図3を用いて説明する。また、調整部材や調整空間を含まない従来の形態について、図8、図9を用いて説明する。
【0029】
図1は、本実施形態の光学式エンコーダの斜視図である。図2は、その断面図である。なお、図1中に示すようにx、y、zの直交3軸座標系を設定している。
【0030】
図1において、光学式エンコーダは、大きく分けて、基板1、ベアチップであるベアLED2、ピッチp1の第1格子31を有する光透過基板3、4つの受光部を有する光検出器4、ピッチp3の第3格子51を有する光透過基板5、光透過樹脂6、ピッチp2の第2格子71を有するスケール7、の7つの部分から構成されている。
【0031】
基板1、基板1上に配置されたベアLED2、ベアLED2上にx方向、および、y方向にはみ出して配置された光透過基板3、基板1上に配置された光検出器4、光検出器4上に配置された光透過基板5は検出ヘッドとして一体に構成されている。そして、検出ヘッド上部は屈折率nの光透過樹脂6に埋め込まれている。
【0032】
第1格子31と、第2格子71と、第3格子51とは、図中x方向の向きに互いに平行に配置されている。光透過樹脂6上部の面については、少なくとも光源であるベアLED2からの光がスケール7で反射されて光検出器4に入射する際に通過する部分は平坦であり、3つの格子31、71、51と平行に形成されている。
【0033】
スケール7は、第2格子71が第1格子31と第3格子51に平行になる状態でx方向にのみ相対的に変位が可能となっている。
基板1、ベアLED2、光透過基板3、光検出器4、光透過基板5は平行平板状になっている。これらの厚み公差は±20μm程度以下となっている。そして、図1、図2に示すように、基板1の上に順次直接貼り付けられている。これらの部材の接着固定に用いる接着剤の厚みムラについても、±10μm程度以下となっている。
【0034】
また、光透過樹脂6の上面には中央に段差が形成されている。この段差を除けばほぼ平坦な形状となっている。図2に示すように、段差は、ベアLED2と光検出器4の中間部で、かつヘッドからスケール7へ出射する光と、スケール7からヘッドへ戻って入射する光には大きな影響を与えない位置に設けられている。
【0035】
後述する式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、後述する式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせるようにする際に、その段差の大きさ(高さ)と光源側と受光側のどちらが高いかということが決められる。
【0036】
この段差形状は、Δzdの絶対値が大きく、もし段差形状が無い場合には信号検出レベルが低下して所望の信号やSN比が得られない、もしくは、そうなる可能性がある場合に適用する。
この段差は、図1、図2、および、図8、図9に示すような平坦な光透過樹脂6の表面形状を切削・加圧による変形・モールド型の修正によるモールディングといった加工により実現することができる。なお、ここに示した以外の加工法や加熱等による加工性向上の手段などを用いても構わない。
【0037】
光透過基板3において、第1格子31は光透過基板3の片側の面ほぼ全面にパターニングされており、第1格子31が光透過基板3のLED側の面になるように配置されている。第1格子31によって、スケール移動方向の出射幅が狭められたスリットが複数並んだ光出射部となっている。
【0038】
第1格子31の有効幅W1は、開口部のうち、第3格子上へのセルフイメージパタン形成に実質的に寄与する部分の幅である。従って、第1格子31の有効幅W1は必ずしも開口部の幅とは一致せず、開口部が大きい場合にはW1は開口部の幅より小さくなる。この場合、有効幅は理論的、または、実験的に求めることが可能である。
【0039】
光透過基板5において、第3格子51は光透過基板5の片側の面をほぼ4等分する形で4つの格子群から成り、各格子群のスケール移動方向の有効幅W3は、光透過基板5のスケール移動方向の幅の約1/2となっている。第3格子51が光透過基板5の光検出器側の面になるように配置されている。
【0040】
電気的な配線については、LED2と光検出器4が基板1と電気的に接続されており、ベアLED2と光検出器4の動作を可能としている。ベアLED2の上面、及び下面に電極が形成されている。上面の電極と基板1上の電極とは導電ワイヤ8にて接続されている。また、下面の電極と基板1の電極間は導電ペーストにて接続されている。光検出器4と基板1との間にも導電ワイヤでの接続があるが、ここでは詳細は省略する。
【0041】
(原理説明)
次に、本発明の光学式エンコーダの測定原理について説明する。以下において、像の拡大倍率の変化と、第3格子を透過して光検出器で検出される光の信号振幅の関係を式を用いて説明する。
【0042】
第1格子31と第2格子71の光学的な距離をz1、第2格子71と第3格子51の光学的な距離をz2、第1格子のピッチをp1、第2格子のピッチをp2、第3格子のピッチをp3、光源の波長をλとする。
【0043】
この場合、以下の条件を満たすときに第3格子51上にピッチp3iの周期を持つ干渉パタンが形成されることが知られている。なお、ここで用いている「光学的な距離」の定義については、式6、式7に示す。
【0044】
【数1】
【0045】
また、干渉パタンのピッチp3iは以下の通りである。
【数2】
【0046】
第3格子51のピッチp3を干渉パタンのピッチp3iに合致させれば、最適な信号検出が行える。
p3=p3i (式3)
【0047】
なお、エンコーダでは複数の位相差信号を検出することが多い。この場合、第3格子51は個々の位相差信号ごとに設けられたり、織り交ぜて配置されたりすることがある。このとき、ピッチp3は1つの位相信号検出に用いられる第3格子51のピッチを指す。
【0048】
ところで、検出ヘッド内の第1格子31と第3格子51の実装配置がずれることによってz1とz2が最適な値から若干ずれた場合、式2より拡大倍率が変化する。その結果、式3の関係が厳密には成り立たなくなり、これによって光検出器4で検出される干渉パタンの強度が変化していく。
【0049】
以下の式に示すように、第1格子31から第2格子71までの光学的な距離z1と第2格子から第3格子51までの光学的な距離z2の差をΔzとすると、
Δz=z2−z1=Δz0+Δzd (式4)
|Δzd|≦Δzt (式5)
ただし、Δz0は設計に基づく差、
Δzdはばらつきにより生じる実際の偏差、
Δztは公差、即ち、最大許容値である。
【0050】
なお、ここで表記されている距離は全て光学的な距離である。
光路が全て大気中の場合にはそのまま実際の距離を用いて良い。また、通常、検出ヘッドはパッケージに入れられることが多く、ガラスや光透過樹脂の中を光が通ることがある。この場合、光学的な距離とは、光路の構成する空間、または、物質ごとに実際の長さを個々の屈折率で割ったものの総和とする。
【0051】
即ち、第1格子31・第2格子間71のi(自然数)番目の物質、または、空間の屈折率ni・厚みtiとし、
第2格子71・第3格子51間のj(自然数)番目の物質の屈折率nj・厚みtjとしたときに、第1格子31・第2格子71間の光学的な距離をΣti/ni、第2格子・第3格子間の光学的な距離をΣtj/njとする。
【0052】
【数3】
【0053】
従って、式4・式5において、Δzdを光学的な距離ではなく、実際の距離で表現するには、第1格子31の高さの変化により第1格子31・第2格子71間で厚みが変化する部材、または、空間の屈折率をnとして、式4、または、式5で得られたΔzdの結果をn倍すればよいことになる。
以上で、原理の説明を終了する。
【0054】
ここで、第1格子31・第2格子71間、および、第2格子71・第3格子51間に介在する物質、または、空間の厚みと屈折率を説明する。
第1格子31・第2格子71間においては、光透過基板3の屈折率がn1、厚みがt1、光透過樹脂6の屈折率がn2、厚みがt2、ヘッドとスケール7間の空気の屈折率がn3、厚みがt3である。
【0055】
第2格子71・第3格子間51においては、ヘッドとスケール7間の空気の屈折率がn3、厚みがt3、光透過樹脂6の屈折率がn2、厚みがt5、光透過基板5の屈折率がn1、厚みがt4、である。
【0056】
光透過基板3と光透過基板5は共通の素材を用いているため屈折率は約1.5、光透過樹脂6の屈折率は約1.5、空気の屈折率はほぼ1である。光透過基板3、光透過基板5、光透過樹脂の屈折率は、比較的入手しやすい部材の屈折率を適用しているが、これ以外の値をとっても良いし、光透過基板3と光透過基板5に別素材を用いて屈折率に差があっても良い。
【0057】
以上の設定において、z1とz2は以下のように表される。
z1=t1/n1+t2/n2+t3/n3
z2=t4/n1+t5/n2+t3/n3
【0058】
本例では、z1=z2となるような設計を行っている。これは、ヘッド/スケール間のギャップが変化してz1とz2が等しい値だけ変化した場合、式3の拡大倍率(z1+z2)/z1の値が変化せず、検出に有利なためである。このとき、p1=p3となり、式2・式3と併せて、各格子のピッチについては以下の関係が成り立つ。
【0059】
p1=p3=2×p2
【0060】
各格子間の光学的な距離z1とz2については、式6、式7を用いて求める。式4におけるΔzの成分のうち、Δz0の設計値は本例においては0であり、図中のΔzdのみ存在する。なお、Δzdは第1格子31と第3格子51の幾何学的な段差ではなく、光学的な距離であるz1とz2の差である。
【0061】
第3格子51は、4つの格子群からなる。各格子群はピッチp3であるが、格子群ごとにp3/4だけ位相が異なるよう配置されている。
光検出器4には4つの図示しない受光部がある。各受光部は第3格子の各格子群に対応する面に形成されている。
【0062】
光検出器4についても同様な置き換えが可能である。例えば、図3に示すように、第3格子と受光部とを一体化したフォトダイオードアレイ41(以下、適宜「PDアレイ」とする。)を含む光検出器を構成要素に用いても良い。
【0063】
図3、図4に示す例では、フォトダイオードアレイ41(以下PDアレイとする)を有する平行平板状の光検出器4が用いられている。第1格子31と第2格子71とPDアレイの受光面は図中x方向の向きに互いに平行に配置されている。
【0064】
光検出器4において、PDアレイ41は光検出器4のスケール側上面に光検出器4の一部のエリアを占めるように形成されている。図5に示すように、PDアレイ41には、同形状の受光要素PD1、PD2、PD3、PD4がピッチp3/4で並んでいる。そして、これらを4つごとに電気的に接続することで位相がp3/4ずつ異なる4つの位相の異なる信号を生成する。
【0065】
各位相群のピッチはすべてp3であり、スケール移動方向の有効幅W3は、PDアレイ41の長さに等しくなっている。PDアレイ41は光検出器と第3格子を一体化したものであり、「従来の技術」において説明した3重スリットの機能がそのまま成立する。z2の算出に当たっては、第3格子の代わりにPDアレイ41の面からスケール7の第2格子71までの光学的距離を算出すればよい。
【0066】
なお、この発明の実施の形態の各構成要素については、各種の変形、置き換えが可能である。
光源にはベアLED2の例を示したが、面発光レーザ等、回折イメージが形成可能なものであれば、ベアチップタイプでもモールドタイプでもカン封止したタイプでもよい。第1格子31を有する光透過部材3の素材としてガラスが一般的であるが、PETやポリイミド等の樹脂を用いてもよい。第3格子51は検出位相の異なる4つの格子群に個別に受光部を用いた例を示したが、2群、または、1群の格子群を用いたタイプであってもよい。
【0067】
光源側のベアLEDと第1格子31の組合せについては、図6に示すような点光源21、または、線状光源、もしくは、図7に示すような1スリットの第1格子31を用いても良い。この場合、点光源21や線状光源、または、1スリット31の幅W1は所定の値以下であることが必要である。原理説明に用いた式を適用することを可能とするために、本例では、少なくともW1≦p3であることが望ましい。
【0068】
この出射部はスケール移動方向の出射幅が狭められている場合、点光源21や線状光源、または、1スリット31の出射部の位置からスケール7の格子面までの光学的距離をz1とする。
【0069】
PDアレイを用いる場合に関して、図5の例では検出位相の異なる4つの位相群を一カ所に入れ込んだ例を示したが、2群、または、4群のPDアレイ群を用いる構成でもよい。
【0070】
本実施携帯の構成は相対移動量を検出するものであるが、検出ヘッドおよびスケール上に基準位置検出用の部材、特に、光源・検出部・光学パタンなどを追加して配置することも可能である。
【0071】
さらに、本実施形態の第1から第3までの格子、または、この一部を複数配置することで、同一方向の変位を複数の検出系で検出、または、直交する複数の方向の変位を同時に検出する構成にすることも可能である。PDアレイを用いる場合には、本例の第1、第2までの格子とPDアレイ、または、この一部を複数配置することで同様の目的を達成するための構成とすることが可能である。
【0072】
次に、本実施形態の作用について説明する。
光源であるベアLED2から光が出射される。この光は光透過基板3に形成された第1格子31を通り、スケール7上の第2回折格子71に照射される。さらに、光は第2格子71で反射、回折され、光透過基板5に形成された第3格子51上に第2格子の回折イメージが形成される。光検出器4にPDアレイを用いる場合にも、同様にしてPDアレイ41上に第2格子71の回折イメージが形成される。
【0073】
この回折イメージは、第2格子71を2倍に拡大した像であり、第3格子51を通った回折イメージの光は光検出器4の受光部で検出される。スケール7が検出ヘッドに対してx方向に相対移動するとこの回折イメージが第3格子51上でx方向に移動する。このため、光検出器4から周期的な疑似正弦波信号が得られる。
【0074】
光源に点光源・線状光源や1スリットの第1格子31を用いた場合も同様である。光検出器4からは90°位相差の4つの信号が得られる。必要に応じて2組の180°位相差の信号ごとに差分を取り、90°位相差の2信号が得ることができる。
【0075】
光透過樹脂6表面の段差調整が無い場合には、Δzdが変化することによって、第1格子31から第2格子71までの光学的な距離z1と、第2格子71から第3格子51までの光学的な距離z2が最適な値から若干ずれる。これにより、第3格子51上にできる第2格子71のセルフイメージの拡大倍率が変化して光検出器で検出される干渉パタンの強度が変化する。
【0076】
光検出器4がPDアレイであれば、Δzdが変化することによって、第1格子31から第2格子71までの光学的な距離z1と、第2格子71からPDアレイまでの光学的な距離z2が最適な値から若干ずれる。これにより、PDアレイ上にできる第2格子71のセルフイメージの拡大倍率が変化して光検出器で検出される干渉パタンの強度が変化する。
【0077】
次に、信号調整部の作用について説明する。
これに対して、光透過樹脂6表面の段差調整によって拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれる。このことによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
また、効果を説明する。段差を設けなければ信号検出レベルが低下して所望の信号やSN比が得られなかったエンコーダについて、段差による拡大倍率の調整でほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。これによって、不良品の発生率を低下させることができる。
【0078】
さらに、Δzdによる拡大倍率のずれを打ち消すことが出来ることで、設計の自由度が向上し、使用部材の公差の緩いもの、従って通常はコストの安いものや、実装公差の緩い実装機を採用することも可能となる。
【0079】
また、量産時に使用する部材のロットごとのばらつきや部材変更によって発生する平均的なΔzdの値による拡大倍率のずれを打ち消すように段差を設けることで、まとまった数量単位での信号調整が可能となる。
【0080】
上述の効果以外にも、使用部材と構成により、以下のような効果がある。
通常、ベアチップ部品の厚さ公差は高々±20μm程度であり、Δzdの実装公差を小さく抑えることが出来る構成となっている。そのため、W1やW3を大きくとることができ、エンコーダ信号の振幅が大きく取れ、SN比が向上する。
【0081】
また、第1格子31と第3格子51が光透過基板3と光透過基板5の下側になるよう配置されているため、Δzdの実装公差に光透過基板3と光透過基板5の厚み公差はΔzdに影響を与えない。このため、Δzdの実装公差をより小さく抑えることが出来る。
【0082】
光源であるベアLED2上面の光出射部に光透過基板3を直接貼り付け、さらにベアLED上面の光透過基板3が貼られていない部分に通電のための配線を行うことで、第1格子の機能とベアLEDへの電流印可機能をコンパクトな形で実現している。
【0083】
光源、および、受光部にベアチップ部品を用いていることで、実装面積、及び、厚みを抑えることができる。さらにベアLEDを用いることで発光部の光出射部分の長さが数10μm〜200μm程度に小さくすることができ、この上に配置する光透過基板3の面積も小さくすることができる。このため、小型化・薄型化において有利である。
【0084】
ベアLED2の小さな発光部に第1格子31を密着させることで、第1格子31の必要本数を最小限に抑えることができる。このことによって、W1の長さを小さくすることができ、Δzdの実装公差が大きくとれる、または、Δzdの同じ実装公差でもエンコーダの信号振幅の低減が少なく抑えられるという利点が得られる。
また、小型化・薄型化によって樹脂封止における、クラックやワイヤ配線の断線といった点においても信頼性の向上が期待できる。
さらに樹脂で封止したことで大気圧の影響を受けにくくなり、真空中や高圧下での使用が可能となる。
【0085】
本実施形態ではベアLEDを用いているが、モールドLEDを用いることも可能である。この場合、LED上面にワイヤ配線をする必要がなくなり、第1格子を有する光透過基板3を実装することが容易となる。さらに、モールドLEDは封止されているため、ベアLEDに比べると汎用性・信頼性が高い。そのため、エンコーダの実装が容易となるメリットがある。
【0086】
(第1の実施形態の変形例1)
次に、本発明における第1の実施形態の変形例1について説明する。
【0087】
(構成)
図4における光透過樹脂6の形状を変えて、図10に示すように傾斜を設けている。なお、図2の上面に同様の傾斜を持たせた構成でも同様の作用・効果が期待出来る。
【0088】
式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように、その傾斜の大きさ(高さ)と光源側と受光側のどちらが高いかということが求められる。
【0089】
この傾斜形状は、Δzdの絶対値が大きく、もし段差形状が無い場合には信号検出レベルが低下して所望の信号やSN比が得られない、もしくは、そうなる可能性がある場合に適用する。
【0090】
この傾斜は、図8、または、図9に示す平坦な光透過樹脂6の表面形状を切削・加圧による変形・モールド型の修正によるモールディングといった加工により実現することができる。なお、ここに示した以外の加工法や加熱等による加工性向上の手段などを用いても構わない。
【0091】
(作用)
拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0092】
(効果)
本変形例では、上述した第1の実施形態と同様な効果を有する。
【0093】
(第1の実施形態の変形例2)
次に、本発明における第1の実施形態の変形例2について説明する。
図4おける光透過樹脂6のスケール側の表面の段差の代わりに、図11、または、図12に示すように新たな光透過部材61を設けている。なお、図4の光透過樹脂6のスケール側の表面を段差形状から図10の光透過樹脂6に示すような傾斜を持たせた形状に置き換えても同様の作用・効果が期待出来る。
【0094】
式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように、その光透過部材61の厚みと光源側と受光側のどちら側に設けるかということが決められる。
【0095】
光透過部材61は、Δzdの絶対値が大きく、もし段差形状が無い場合には信号検出レベルが低下して所望の信号やSN比が得られない、もしくは、そうなる可能性がある場合に適用する。
【0096】
光透過部材61は、図8、および、図9に示すような平坦な光透過樹脂6の表面に薄膜を実装したり、フォトリソグラフィ技術により形成したりすることにより実現することができる。なお、ここに示した以外の実装・形成方法を用いても構わない。
【0097】
さらに、本例では1つの光透過部材61を光源側と受光側のいずれか一方に設けているが、複数の部材を用いること、または両方に同時に設けること等、所望の拡大倍率の調整が出来さえすれば、その構成は問わない。
【0098】
(作用)
光透過部材61を設けることで、z1とz2の少なくとも一方が調整される。拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0099】
(効果)
本変形例では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
さらに、表面への別部材である光透過部材61の配置で実現可能であることから、以下のような効果も有する。
薄膜の貼付であれば作業が比較的容易である。さらに再調整等のために部材を除去したり、貼り替えたりすることも比較的容易である。
また、薄膜パタンをリソグラフィ技術で形成する場合には、多数のエンコーダを並べて同時に調整できる可能性がある。
【0100】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る光学式エンコーダについて説明する。
図3、図4における光透過樹脂6の表面の段差の代わりに、光透過樹脂6の内部に、図13に示すように光透過部材5を設けている。図1、図2における光透過樹脂6の表面の段差の代わりに光透過樹脂6の内部に、図13に示すように光透過部材5を設けても、同様の作用・効果が期待出来る。
【0101】
式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように、光透過部材5のスケール方向(図中z方向)の厚みと屈折率と光源側か受光側かの配置が決められる。
【0102】
光透過部材5は、Δzdの絶対値が大きく、もし段差形状が無い場合には信号検出レベルが低下して所望の信号やSN比が得られない、もしくは、そうなる可能性がある場合に適用する。
また、本例では光透過部材を用いているが、大気を含めた気体や真空を配置する空間であっても構わない。
【0103】
(作用)
光透過性樹脂6の一部を屈折率の異なる光透過部材5に置き換えることでz1とz2の少なくとも一方が調整される。
拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0104】
(効果)
本実施形態では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
【0105】
(第2の実施形態の変形例1)
本発明における第2の実施形態の変形例1について説明する。
図14に示すように、図3、図4における光透過部材3の第1格子31がスケール側に位置するように配置している。図1、図2における光透過部材3の第1格子31がスケール側に位置するように配置しても、同様の作用・効果が期待出来る。
【0106】
また、光透過部材3のスケール方向(図中z方向)の厚みは、式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように決められる。
【0107】
(作用)
光透過部材3の厚みを変更することでz1が調整される。
拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0108】
(効果)
本変形例では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
【0109】
さらに、この構成によると、第1格子31がスケール側である上側になっている。このため、第1格子31から樹脂表面までの厚みが一定の場合、第1格子31が下側である場合に比べて樹脂厚が厚いため、光透過基板3と樹脂の線膨張係数の違いにより、製造時に高温から低温に下げて樹脂を固めていく際に表面の平坦性がよくなり、その結果光学特性がよくなる。
【0110】
(第2の実施形態の変形例2)
次に、本発明の第2の実施形態の変形例2について説明する。
図15に示すように、図2、図3における光透過部材3を、第1格子を設けた光遮光部材3に置き換えている。図1、図2における光透過部材3を第1格子を設けた光遮光部材3に置き換えても、同様の作用・効果が期待出来る。
【0111】
光遮光部材3のスケール方向(図中z方向)の厚みは、式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように決められる。
【0112】
光遮光部材3の少なくとも表面は導電性を持ち、ベアLED光源の電極と金線ワイヤ8とを電気的に接続する役割を果たす。
本変形例では、第1格子を形成した光遮光部材を用いているが、光透過部材に内部まで光を通さないパタンで第1格子を形成したものを用いても構わない。
【0113】
(作用)
光遮光部材3の厚みを変更することでz1が調整される。
拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0114】
(効果)
本変形例では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
さらに、光遮光部材3が電気的配線の一部となることで、光源2の上に光遮光部材3以外に金線ワイヤ8をボンディングするパッドを設ける必要がなくなる。従って実装が容易となり、小型化も図れる。
【0115】
(第2の実施形態の変形例3)
次に、本発明の第2の実施形態の変形例3について説明する。
図16に示すように、図3、図4における光透過部材5を、第3格子51がスケール側に位置するように配置している。
光透過部材5のスケール方向(図中z方向)の厚みは、式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように決められる。
【0116】
(作用)
光透過部材5の厚みを変更することでz2が調整される。
拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0117】
(効果)
本変形例では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
さらに、この構成によると、第3格子がスケール側である上側になっているため、第3格子から樹脂表面までの厚みが一定の場合、第3格子が下側である場合に比べて樹脂厚が厚くなる。このため、光透過基板5と樹脂の線膨張係数の違いにより、製造時に高温から低温に下げて樹脂を固めていく際に表面の平坦性がよくなり、その結果光学特性がよくなる。
【0118】
(第2の実施形態の変形例4)
次に、本発明の第2の実施形態の変形例4について説明する。
図17に示すように、図3、図4における光透過部材5を、第3格子を設けた光遮光部材5に置き換えている。
光遮光部材5のスケール方向(図中z方向)の厚みは、式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように決められる。
本変形例では、第3格子を形成した光遮光部材を用いているが、光透過部材に内部まで光を通さないパタンで第1格子を形成したものを用いても構わない。
【0119】
(作用)
光遮光部材5の厚みを変更することでz2が調整される。
拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0120】
(効果)
本変形例では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
【0121】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施形態に係る光学式エンコーダについて説明する。
図11では、図3、図4における光源2と基板1の間にスペーサ22を配置し、図19では、図1、図2における光検出器4と基板1の間にスペーサ42を配置している。
【0122】
スペーサ42のスケール方向(図中z方向)の厚みは、式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように決められる。
本実施形態では、光源側と受光側の一方にスペーサ42を配置しているが、両方に配置しても構わない。また、光源側や光検出側の格子の形状には何を用いても良い。即ち、点光源や第1格子、PDアレイや第3格子には特に制約は無い。
【0123】
(作用)
スペーサ42の厚みを変更することでz1とz2の少なくとも一方が調整される。拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0124】
(効果)
本実施形態では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
このようにスペーサ42を用いることで、第1格子と第3格子(PDアレイ)の高さ合わせにおいて、ベアLED2と光透過基板3と光検出器4の厚みの調整が可能となる。具体的には、個々の部材の厚みが予め決まっているためにスペーサ無しで第1格子と第3格子(PDアレイ)の高さを合わせることが出来ない場合に有効である。
【0125】
また、部材の厚みが極端にばらついたときや、部材を別の物に交換するときなど、スペーサの厚みを変えることで調整ができるメリットがある。また、スペーサ42は厚み公差が小さいものを用いることにより、z1とz2の差であるΔzdへの影響も極力小さく抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
以上のように、本発明は、小型で量産に向いた光学式エンコーダに有用である。
【符号の説明】
【0127】
2 ベアLED
4 光検出器
5 光透過基板
6 光透過樹脂
7 スケール
31 第1格子
71 第2格子
51 第3格子
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダなどの変位検出に用いられる光学式変位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術による光学式エンコーダの一般的な例として、3重スリット方式と呼ばれるものが挙げられる。これは、LED等の光源と該光源からの光の光路に配置された第1格子と、第1格子からの光を受けるスケール上に配置された第2格子と、第2格子を透過、または、反射した光が入射する第3格子と、第3格子の直後に配置された光検出器と、から構成している。また、第2格子を有するスケールを除いた構成要素は検出ヘッドを構成している。
【0003】
反射型の3重スリット方式としては、特開2003−166856号公報で示されるものがある。図20に示すように、第1格子が形成された透明部材と第3格子が形成された透明部材を別体に形成し、第1格子と第3格子の高さを揃えて検出ヘッド内に配置する構成が示されている。この構成において、第1格子から第2格子までの距離と第2格子から第3格子までの距離が等しくなるように設定されている。
【0004】
3重スリット方式のエンコーダの検出原理は以下のようになる。第1格子から出た光が第2格子で回折され、第2格子の拡大像が第3格子上に形成され、第3格子を透過した光が光検出器で検出される。第2格子の拡大像と第3格子は同じピッチを持つように設計されている。そして、スケールの動きに応じて光検出で検出される光の強度の変化により変位量を検出する。
【0005】
3重スリット方式のエンコーダにおいて、第1格子と第3格子の高さを設定値通りに揃えることは重要なポイントである。その理由は、設定値から僅かに外れただけで第3格子上に形成される像の拡大倍率が変化して第3格子を透過して光検出器で検出される光の信号振幅が下がってしまうためである。
【0006】
特開2003−166856号公報に示すような反射型の3重スリット方式においては、スケールと検出ヘッドの間隔に影響されにくい検出を行うために、検出ヘッドに含まれる第2格子と第3格子を同一面上に配置する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−166856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、エンコーダの現状として、ロボットの関節部の隙間に組み込むなど小型・薄型な物が求められている。従来のエンコーダは、高精度なものほど光源や受光素子にカンパッケージタイプの物を用いるなど各部材のサイズが大きく、検出ヘッドのサイズも一辺が10mm〜20mm程ある。
【0009】
光源や受光素子をベアチップタイプや面実装タイプの物に置き換えるだけでかなり小型化・薄型化が図れる。しかしながら、3重スリット方式のエンコーダでは、第1格子、第3格子を形成したスリット部材の大きさや厚みがエンコーダのサイズに大きく効くようになる。そのため、スリット部材の小型化・省スペース化を図る必要がある。
【0010】
第1格子、第3格子を分離した特開2003−166856号公報に示すような構成の3重スリット方式のエンコーダでは、第1格子と第3格子の段差量が設計値からずれると、3重スリット方式のエンコーダでは信号振幅が大幅に低下する可能性がある。
【0011】
また、厚さムラの少ない特定の部材で設計してもロットが変わったり、部材を換えたりした場合に第1格子と第3格子の段差量が大きく変化する可能性がある。
3重スリットではない構成のエンコーダについても、高精度タイプには検出ヘッド側に第1格子、第3格子の少なくとも一方に相当する格子を有しているものが多い。出射側として光源または第1格子の高さと、受光側として受光部または第3格子の高さとが所定の関係に無いと、検出信号レベルや検出信号レベルに含まれるDC成分量が設計通りに制御しにくい、または、制御できないものがある。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、第1格子と第2格子までの光学的距離と第2格子から第3格子までの光学的距離の設計値からのずれによる性能劣化を抑制することにより、安定した性能を有し、小型で量産に向いた光学式エンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、相対的に移動する固定体と移動体の内のいずれか一方に取り付けられた検出ヘッドと、
他方に前記検出ヘッドに対向して取り付けられた、相対移動する方向に所定ピッチの光学パタンを有する格子が設けられたスケールと、を備え、
前記検出ヘッドは、
出射光のスケール移動方向の出射幅が限定された発散光を出射し、前記スケールに所定の光を照射する発光部と、格子機能面と受光部を有する光検出部と、を有し、
前記発光部の限定された出射幅を有する出射面から前記スケールに照射されて前記スケールに設けられた前記格子により反射し、回折した光が前記光検出部の前記格子機能面に形成するイメージの動きを検出するよう配置された前記光検出部が設けられ、前記スケールの相対移動量に応じて前記光検出部から周期的な検出信号が出力されるような光学式エンコーダにおいて、
前記発光部側の発散光の出射幅を限定する位置から前記スケールの前記格子までの光学的距離z1と、
前記受光部側の前記スケールの前記格子から前記光検出部の前記格子機能面までの光学的距離z2と、の少なくとも一方の値を増減させることによって、検出信号の振幅レベルの劣化を低減させる信号劣化低減手段を備えることを特徴とする光学式エンコーダを提供できる。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は部材、または、空間であり、
前記部材、または、空間の光路上の厚み、または、間隔と屈折率のいずれかを変化させることによって光学的距離を調整することが望ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は部材、または、空間であり、
前記信号劣化低減手段により、前記発光部側の出射面と、前記光検出部の前記格子機能面との少なくとも一方の位置を移動させることが望ましい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記発光部と、前記光検出部とを一体的に覆う保護部材を備えることが望ましい。
【0017】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記保護部材は光透過性樹脂であることが望ましい。
【0018】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、前記保護部材のスケール側の表面形状を所定の形に成形してなることが望ましい。
【0019】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、前記保護部材のスケール側表面に貼り付ける光透過部材であることが望ましい。
【0020】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、前記保護部材の表面よりもヘッド内部の光路上に配置されることが望ましい。
【0021】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、前記保護部材の表面よりもヘッド内部の光路外に配置されることが望ましい。
【0022】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、光路上に光屈折率の境界面を少なくとも1つ備えるよう配置される部材、または、空間であることが望ましい。
【0023】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、発光部、または、光検出器のスケール側の面に接するように実装される部材であることが望ましい。
【0024】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記信号劣化低減手段は、前記発光部側の出射面から前記スケールの格子までの光学的距離と、前記受光部側のスケールの格子から前記光検出部の前記格子機能面までの光学的距離とのいずれか一方の光学的距離のみを調整することが望ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明よれば、第1格子と第2格子までの光学的距離と第2格子から第3格子までの光学的距離の設計値からのずれによる性能劣化を抑制することにより、安定した性能を有し、小型で量産に向いた光学式エンコーダを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光学式エンコーダの斜視構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る光学式エンコーダの光検出器を置き換えた例の斜視構成を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る光学式エンコーダの光検出器を置き換えた例の断面構成を示す図である。
【図5】PDアレイの構成と結線を説明する図である。
【図6】点光源の例を説明する図である。
【図7】1スリットの例を説明する図である。
【図8】従来の光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図9】従来の光学式エンコーダの断面構成を示す他の図である。
【図10】第1の実施形態の変形例1に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図11】第1の実施形態の変形例2に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図12】第1の実施形態の変形例1に係る光学式エンコーダの断面構成を示す他の図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る光学式エンコーダの斜視構成を示す図である。
【図14】第2の実施形態の変形例1に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図15】第2の実施形態の変形例2に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図16】第2の実施形態の変形例3に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図17】第2の実施形態の変形例4に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図18】本発明の第3の実施形態に係る光学式エンコーダの斜視構成を示す図である。
【図19】第3の実施形態に係る光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【図20】従来の光学式エンコーダの断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明にかかる光学式エンコーダの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0028】
まず、第1の実施形態に係る光学式エンコーダついて、図1、図2、図3を用いて説明する。また、調整部材や調整空間を含まない従来の形態について、図8、図9を用いて説明する。
【0029】
図1は、本実施形態の光学式エンコーダの斜視図である。図2は、その断面図である。なお、図1中に示すようにx、y、zの直交3軸座標系を設定している。
【0030】
図1において、光学式エンコーダは、大きく分けて、基板1、ベアチップであるベアLED2、ピッチp1の第1格子31を有する光透過基板3、4つの受光部を有する光検出器4、ピッチp3の第3格子51を有する光透過基板5、光透過樹脂6、ピッチp2の第2格子71を有するスケール7、の7つの部分から構成されている。
【0031】
基板1、基板1上に配置されたベアLED2、ベアLED2上にx方向、および、y方向にはみ出して配置された光透過基板3、基板1上に配置された光検出器4、光検出器4上に配置された光透過基板5は検出ヘッドとして一体に構成されている。そして、検出ヘッド上部は屈折率nの光透過樹脂6に埋め込まれている。
【0032】
第1格子31と、第2格子71と、第3格子51とは、図中x方向の向きに互いに平行に配置されている。光透過樹脂6上部の面については、少なくとも光源であるベアLED2からの光がスケール7で反射されて光検出器4に入射する際に通過する部分は平坦であり、3つの格子31、71、51と平行に形成されている。
【0033】
スケール7は、第2格子71が第1格子31と第3格子51に平行になる状態でx方向にのみ相対的に変位が可能となっている。
基板1、ベアLED2、光透過基板3、光検出器4、光透過基板5は平行平板状になっている。これらの厚み公差は±20μm程度以下となっている。そして、図1、図2に示すように、基板1の上に順次直接貼り付けられている。これらの部材の接着固定に用いる接着剤の厚みムラについても、±10μm程度以下となっている。
【0034】
また、光透過樹脂6の上面には中央に段差が形成されている。この段差を除けばほぼ平坦な形状となっている。図2に示すように、段差は、ベアLED2と光検出器4の中間部で、かつヘッドからスケール7へ出射する光と、スケール7からヘッドへ戻って入射する光には大きな影響を与えない位置に設けられている。
【0035】
後述する式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、後述する式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせるようにする際に、その段差の大きさ(高さ)と光源側と受光側のどちらが高いかということが決められる。
【0036】
この段差形状は、Δzdの絶対値が大きく、もし段差形状が無い場合には信号検出レベルが低下して所望の信号やSN比が得られない、もしくは、そうなる可能性がある場合に適用する。
この段差は、図1、図2、および、図8、図9に示すような平坦な光透過樹脂6の表面形状を切削・加圧による変形・モールド型の修正によるモールディングといった加工により実現することができる。なお、ここに示した以外の加工法や加熱等による加工性向上の手段などを用いても構わない。
【0037】
光透過基板3において、第1格子31は光透過基板3の片側の面ほぼ全面にパターニングされており、第1格子31が光透過基板3のLED側の面になるように配置されている。第1格子31によって、スケール移動方向の出射幅が狭められたスリットが複数並んだ光出射部となっている。
【0038】
第1格子31の有効幅W1は、開口部のうち、第3格子上へのセルフイメージパタン形成に実質的に寄与する部分の幅である。従って、第1格子31の有効幅W1は必ずしも開口部の幅とは一致せず、開口部が大きい場合にはW1は開口部の幅より小さくなる。この場合、有効幅は理論的、または、実験的に求めることが可能である。
【0039】
光透過基板5において、第3格子51は光透過基板5の片側の面をほぼ4等分する形で4つの格子群から成り、各格子群のスケール移動方向の有効幅W3は、光透過基板5のスケール移動方向の幅の約1/2となっている。第3格子51が光透過基板5の光検出器側の面になるように配置されている。
【0040】
電気的な配線については、LED2と光検出器4が基板1と電気的に接続されており、ベアLED2と光検出器4の動作を可能としている。ベアLED2の上面、及び下面に電極が形成されている。上面の電極と基板1上の電極とは導電ワイヤ8にて接続されている。また、下面の電極と基板1の電極間は導電ペーストにて接続されている。光検出器4と基板1との間にも導電ワイヤでの接続があるが、ここでは詳細は省略する。
【0041】
(原理説明)
次に、本発明の光学式エンコーダの測定原理について説明する。以下において、像の拡大倍率の変化と、第3格子を透過して光検出器で検出される光の信号振幅の関係を式を用いて説明する。
【0042】
第1格子31と第2格子71の光学的な距離をz1、第2格子71と第3格子51の光学的な距離をz2、第1格子のピッチをp1、第2格子のピッチをp2、第3格子のピッチをp3、光源の波長をλとする。
【0043】
この場合、以下の条件を満たすときに第3格子51上にピッチp3iの周期を持つ干渉パタンが形成されることが知られている。なお、ここで用いている「光学的な距離」の定義については、式6、式7に示す。
【0044】
【数1】
【0045】
また、干渉パタンのピッチp3iは以下の通りである。
【数2】
【0046】
第3格子51のピッチp3を干渉パタンのピッチp3iに合致させれば、最適な信号検出が行える。
p3=p3i (式3)
【0047】
なお、エンコーダでは複数の位相差信号を検出することが多い。この場合、第3格子51は個々の位相差信号ごとに設けられたり、織り交ぜて配置されたりすることがある。このとき、ピッチp3は1つの位相信号検出に用いられる第3格子51のピッチを指す。
【0048】
ところで、検出ヘッド内の第1格子31と第3格子51の実装配置がずれることによってz1とz2が最適な値から若干ずれた場合、式2より拡大倍率が変化する。その結果、式3の関係が厳密には成り立たなくなり、これによって光検出器4で検出される干渉パタンの強度が変化していく。
【0049】
以下の式に示すように、第1格子31から第2格子71までの光学的な距離z1と第2格子から第3格子51までの光学的な距離z2の差をΔzとすると、
Δz=z2−z1=Δz0+Δzd (式4)
|Δzd|≦Δzt (式5)
ただし、Δz0は設計に基づく差、
Δzdはばらつきにより生じる実際の偏差、
Δztは公差、即ち、最大許容値である。
【0050】
なお、ここで表記されている距離は全て光学的な距離である。
光路が全て大気中の場合にはそのまま実際の距離を用いて良い。また、通常、検出ヘッドはパッケージに入れられることが多く、ガラスや光透過樹脂の中を光が通ることがある。この場合、光学的な距離とは、光路の構成する空間、または、物質ごとに実際の長さを個々の屈折率で割ったものの総和とする。
【0051】
即ち、第1格子31・第2格子間71のi(自然数)番目の物質、または、空間の屈折率ni・厚みtiとし、
第2格子71・第3格子51間のj(自然数)番目の物質の屈折率nj・厚みtjとしたときに、第1格子31・第2格子71間の光学的な距離をΣti/ni、第2格子・第3格子間の光学的な距離をΣtj/njとする。
【0052】
【数3】
【0053】
従って、式4・式5において、Δzdを光学的な距離ではなく、実際の距離で表現するには、第1格子31の高さの変化により第1格子31・第2格子71間で厚みが変化する部材、または、空間の屈折率をnとして、式4、または、式5で得られたΔzdの結果をn倍すればよいことになる。
以上で、原理の説明を終了する。
【0054】
ここで、第1格子31・第2格子71間、および、第2格子71・第3格子51間に介在する物質、または、空間の厚みと屈折率を説明する。
第1格子31・第2格子71間においては、光透過基板3の屈折率がn1、厚みがt1、光透過樹脂6の屈折率がn2、厚みがt2、ヘッドとスケール7間の空気の屈折率がn3、厚みがt3である。
【0055】
第2格子71・第3格子間51においては、ヘッドとスケール7間の空気の屈折率がn3、厚みがt3、光透過樹脂6の屈折率がn2、厚みがt5、光透過基板5の屈折率がn1、厚みがt4、である。
【0056】
光透過基板3と光透過基板5は共通の素材を用いているため屈折率は約1.5、光透過樹脂6の屈折率は約1.5、空気の屈折率はほぼ1である。光透過基板3、光透過基板5、光透過樹脂の屈折率は、比較的入手しやすい部材の屈折率を適用しているが、これ以外の値をとっても良いし、光透過基板3と光透過基板5に別素材を用いて屈折率に差があっても良い。
【0057】
以上の設定において、z1とz2は以下のように表される。
z1=t1/n1+t2/n2+t3/n3
z2=t4/n1+t5/n2+t3/n3
【0058】
本例では、z1=z2となるような設計を行っている。これは、ヘッド/スケール間のギャップが変化してz1とz2が等しい値だけ変化した場合、式3の拡大倍率(z1+z2)/z1の値が変化せず、検出に有利なためである。このとき、p1=p3となり、式2・式3と併せて、各格子のピッチについては以下の関係が成り立つ。
【0059】
p1=p3=2×p2
【0060】
各格子間の光学的な距離z1とz2については、式6、式7を用いて求める。式4におけるΔzの成分のうち、Δz0の設計値は本例においては0であり、図中のΔzdのみ存在する。なお、Δzdは第1格子31と第3格子51の幾何学的な段差ではなく、光学的な距離であるz1とz2の差である。
【0061】
第3格子51は、4つの格子群からなる。各格子群はピッチp3であるが、格子群ごとにp3/4だけ位相が異なるよう配置されている。
光検出器4には4つの図示しない受光部がある。各受光部は第3格子の各格子群に対応する面に形成されている。
【0062】
光検出器4についても同様な置き換えが可能である。例えば、図3に示すように、第3格子と受光部とを一体化したフォトダイオードアレイ41(以下、適宜「PDアレイ」とする。)を含む光検出器を構成要素に用いても良い。
【0063】
図3、図4に示す例では、フォトダイオードアレイ41(以下PDアレイとする)を有する平行平板状の光検出器4が用いられている。第1格子31と第2格子71とPDアレイの受光面は図中x方向の向きに互いに平行に配置されている。
【0064】
光検出器4において、PDアレイ41は光検出器4のスケール側上面に光検出器4の一部のエリアを占めるように形成されている。図5に示すように、PDアレイ41には、同形状の受光要素PD1、PD2、PD3、PD4がピッチp3/4で並んでいる。そして、これらを4つごとに電気的に接続することで位相がp3/4ずつ異なる4つの位相の異なる信号を生成する。
【0065】
各位相群のピッチはすべてp3であり、スケール移動方向の有効幅W3は、PDアレイ41の長さに等しくなっている。PDアレイ41は光検出器と第3格子を一体化したものであり、「従来の技術」において説明した3重スリットの機能がそのまま成立する。z2の算出に当たっては、第3格子の代わりにPDアレイ41の面からスケール7の第2格子71までの光学的距離を算出すればよい。
【0066】
なお、この発明の実施の形態の各構成要素については、各種の変形、置き換えが可能である。
光源にはベアLED2の例を示したが、面発光レーザ等、回折イメージが形成可能なものであれば、ベアチップタイプでもモールドタイプでもカン封止したタイプでもよい。第1格子31を有する光透過部材3の素材としてガラスが一般的であるが、PETやポリイミド等の樹脂を用いてもよい。第3格子51は検出位相の異なる4つの格子群に個別に受光部を用いた例を示したが、2群、または、1群の格子群を用いたタイプであってもよい。
【0067】
光源側のベアLEDと第1格子31の組合せについては、図6に示すような点光源21、または、線状光源、もしくは、図7に示すような1スリットの第1格子31を用いても良い。この場合、点光源21や線状光源、または、1スリット31の幅W1は所定の値以下であることが必要である。原理説明に用いた式を適用することを可能とするために、本例では、少なくともW1≦p3であることが望ましい。
【0068】
この出射部はスケール移動方向の出射幅が狭められている場合、点光源21や線状光源、または、1スリット31の出射部の位置からスケール7の格子面までの光学的距離をz1とする。
【0069】
PDアレイを用いる場合に関して、図5の例では検出位相の異なる4つの位相群を一カ所に入れ込んだ例を示したが、2群、または、4群のPDアレイ群を用いる構成でもよい。
【0070】
本実施携帯の構成は相対移動量を検出するものであるが、検出ヘッドおよびスケール上に基準位置検出用の部材、特に、光源・検出部・光学パタンなどを追加して配置することも可能である。
【0071】
さらに、本実施形態の第1から第3までの格子、または、この一部を複数配置することで、同一方向の変位を複数の検出系で検出、または、直交する複数の方向の変位を同時に検出する構成にすることも可能である。PDアレイを用いる場合には、本例の第1、第2までの格子とPDアレイ、または、この一部を複数配置することで同様の目的を達成するための構成とすることが可能である。
【0072】
次に、本実施形態の作用について説明する。
光源であるベアLED2から光が出射される。この光は光透過基板3に形成された第1格子31を通り、スケール7上の第2回折格子71に照射される。さらに、光は第2格子71で反射、回折され、光透過基板5に形成された第3格子51上に第2格子の回折イメージが形成される。光検出器4にPDアレイを用いる場合にも、同様にしてPDアレイ41上に第2格子71の回折イメージが形成される。
【0073】
この回折イメージは、第2格子71を2倍に拡大した像であり、第3格子51を通った回折イメージの光は光検出器4の受光部で検出される。スケール7が検出ヘッドに対してx方向に相対移動するとこの回折イメージが第3格子51上でx方向に移動する。このため、光検出器4から周期的な疑似正弦波信号が得られる。
【0074】
光源に点光源・線状光源や1スリットの第1格子31を用いた場合も同様である。光検出器4からは90°位相差の4つの信号が得られる。必要に応じて2組の180°位相差の信号ごとに差分を取り、90°位相差の2信号が得ることができる。
【0075】
光透過樹脂6表面の段差調整が無い場合には、Δzdが変化することによって、第1格子31から第2格子71までの光学的な距離z1と、第2格子71から第3格子51までの光学的な距離z2が最適な値から若干ずれる。これにより、第3格子51上にできる第2格子71のセルフイメージの拡大倍率が変化して光検出器で検出される干渉パタンの強度が変化する。
【0076】
光検出器4がPDアレイであれば、Δzdが変化することによって、第1格子31から第2格子71までの光学的な距離z1と、第2格子71からPDアレイまでの光学的な距離z2が最適な値から若干ずれる。これにより、PDアレイ上にできる第2格子71のセルフイメージの拡大倍率が変化して光検出器で検出される干渉パタンの強度が変化する。
【0077】
次に、信号調整部の作用について説明する。
これに対して、光透過樹脂6表面の段差調整によって拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれる。このことによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
また、効果を説明する。段差を設けなければ信号検出レベルが低下して所望の信号やSN比が得られなかったエンコーダについて、段差による拡大倍率の調整でほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。これによって、不良品の発生率を低下させることができる。
【0078】
さらに、Δzdによる拡大倍率のずれを打ち消すことが出来ることで、設計の自由度が向上し、使用部材の公差の緩いもの、従って通常はコストの安いものや、実装公差の緩い実装機を採用することも可能となる。
【0079】
また、量産時に使用する部材のロットごとのばらつきや部材変更によって発生する平均的なΔzdの値による拡大倍率のずれを打ち消すように段差を設けることで、まとまった数量単位での信号調整が可能となる。
【0080】
上述の効果以外にも、使用部材と構成により、以下のような効果がある。
通常、ベアチップ部品の厚さ公差は高々±20μm程度であり、Δzdの実装公差を小さく抑えることが出来る構成となっている。そのため、W1やW3を大きくとることができ、エンコーダ信号の振幅が大きく取れ、SN比が向上する。
【0081】
また、第1格子31と第3格子51が光透過基板3と光透過基板5の下側になるよう配置されているため、Δzdの実装公差に光透過基板3と光透過基板5の厚み公差はΔzdに影響を与えない。このため、Δzdの実装公差をより小さく抑えることが出来る。
【0082】
光源であるベアLED2上面の光出射部に光透過基板3を直接貼り付け、さらにベアLED上面の光透過基板3が貼られていない部分に通電のための配線を行うことで、第1格子の機能とベアLEDへの電流印可機能をコンパクトな形で実現している。
【0083】
光源、および、受光部にベアチップ部品を用いていることで、実装面積、及び、厚みを抑えることができる。さらにベアLEDを用いることで発光部の光出射部分の長さが数10μm〜200μm程度に小さくすることができ、この上に配置する光透過基板3の面積も小さくすることができる。このため、小型化・薄型化において有利である。
【0084】
ベアLED2の小さな発光部に第1格子31を密着させることで、第1格子31の必要本数を最小限に抑えることができる。このことによって、W1の長さを小さくすることができ、Δzdの実装公差が大きくとれる、または、Δzdの同じ実装公差でもエンコーダの信号振幅の低減が少なく抑えられるという利点が得られる。
また、小型化・薄型化によって樹脂封止における、クラックやワイヤ配線の断線といった点においても信頼性の向上が期待できる。
さらに樹脂で封止したことで大気圧の影響を受けにくくなり、真空中や高圧下での使用が可能となる。
【0085】
本実施形態ではベアLEDを用いているが、モールドLEDを用いることも可能である。この場合、LED上面にワイヤ配線をする必要がなくなり、第1格子を有する光透過基板3を実装することが容易となる。さらに、モールドLEDは封止されているため、ベアLEDに比べると汎用性・信頼性が高い。そのため、エンコーダの実装が容易となるメリットがある。
【0086】
(第1の実施形態の変形例1)
次に、本発明における第1の実施形態の変形例1について説明する。
【0087】
(構成)
図4における光透過樹脂6の形状を変えて、図10に示すように傾斜を設けている。なお、図2の上面に同様の傾斜を持たせた構成でも同様の作用・効果が期待出来る。
【0088】
式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように、その傾斜の大きさ(高さ)と光源側と受光側のどちらが高いかということが求められる。
【0089】
この傾斜形状は、Δzdの絶対値が大きく、もし段差形状が無い場合には信号検出レベルが低下して所望の信号やSN比が得られない、もしくは、そうなる可能性がある場合に適用する。
【0090】
この傾斜は、図8、または、図9に示す平坦な光透過樹脂6の表面形状を切削・加圧による変形・モールド型の修正によるモールディングといった加工により実現することができる。なお、ここに示した以外の加工法や加熱等による加工性向上の手段などを用いても構わない。
【0091】
(作用)
拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0092】
(効果)
本変形例では、上述した第1の実施形態と同様な効果を有する。
【0093】
(第1の実施形態の変形例2)
次に、本発明における第1の実施形態の変形例2について説明する。
図4おける光透過樹脂6のスケール側の表面の段差の代わりに、図11、または、図12に示すように新たな光透過部材61を設けている。なお、図4の光透過樹脂6のスケール側の表面を段差形状から図10の光透過樹脂6に示すような傾斜を持たせた形状に置き換えても同様の作用・効果が期待出来る。
【0094】
式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように、その光透過部材61の厚みと光源側と受光側のどちら側に設けるかということが決められる。
【0095】
光透過部材61は、Δzdの絶対値が大きく、もし段差形状が無い場合には信号検出レベルが低下して所望の信号やSN比が得られない、もしくは、そうなる可能性がある場合に適用する。
【0096】
光透過部材61は、図8、および、図9に示すような平坦な光透過樹脂6の表面に薄膜を実装したり、フォトリソグラフィ技術により形成したりすることにより実現することができる。なお、ここに示した以外の実装・形成方法を用いても構わない。
【0097】
さらに、本例では1つの光透過部材61を光源側と受光側のいずれか一方に設けているが、複数の部材を用いること、または両方に同時に設けること等、所望の拡大倍率の調整が出来さえすれば、その構成は問わない。
【0098】
(作用)
光透過部材61を設けることで、z1とz2の少なくとも一方が調整される。拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0099】
(効果)
本変形例では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
さらに、表面への別部材である光透過部材61の配置で実現可能であることから、以下のような効果も有する。
薄膜の貼付であれば作業が比較的容易である。さらに再調整等のために部材を除去したり、貼り替えたりすることも比較的容易である。
また、薄膜パタンをリソグラフィ技術で形成する場合には、多数のエンコーダを並べて同時に調整できる可能性がある。
【0100】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る光学式エンコーダについて説明する。
図3、図4における光透過樹脂6の表面の段差の代わりに、光透過樹脂6の内部に、図13に示すように光透過部材5を設けている。図1、図2における光透過樹脂6の表面の段差の代わりに光透過樹脂6の内部に、図13に示すように光透過部材5を設けても、同様の作用・効果が期待出来る。
【0101】
式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように、光透過部材5のスケール方向(図中z方向)の厚みと屈折率と光源側か受光側かの配置が決められる。
【0102】
光透過部材5は、Δzdの絶対値が大きく、もし段差形状が無い場合には信号検出レベルが低下して所望の信号やSN比が得られない、もしくは、そうなる可能性がある場合に適用する。
また、本例では光透過部材を用いているが、大気を含めた気体や真空を配置する空間であっても構わない。
【0103】
(作用)
光透過性樹脂6の一部を屈折率の異なる光透過部材5に置き換えることでz1とz2の少なくとも一方が調整される。
拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0104】
(効果)
本実施形態では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
【0105】
(第2の実施形態の変形例1)
本発明における第2の実施形態の変形例1について説明する。
図14に示すように、図3、図4における光透過部材3の第1格子31がスケール側に位置するように配置している。図1、図2における光透過部材3の第1格子31がスケール側に位置するように配置しても、同様の作用・効果が期待出来る。
【0106】
また、光透過部材3のスケール方向(図中z方向)の厚みは、式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように決められる。
【0107】
(作用)
光透過部材3の厚みを変更することでz1が調整される。
拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0108】
(効果)
本変形例では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
【0109】
さらに、この構成によると、第1格子31がスケール側である上側になっている。このため、第1格子31から樹脂表面までの厚みが一定の場合、第1格子31が下側である場合に比べて樹脂厚が厚いため、光透過基板3と樹脂の線膨張係数の違いにより、製造時に高温から低温に下げて樹脂を固めていく際に表面の平坦性がよくなり、その結果光学特性がよくなる。
【0110】
(第2の実施形態の変形例2)
次に、本発明の第2の実施形態の変形例2について説明する。
図15に示すように、図2、図3における光透過部材3を、第1格子を設けた光遮光部材3に置き換えている。図1、図2における光透過部材3を第1格子を設けた光遮光部材3に置き換えても、同様の作用・効果が期待出来る。
【0111】
光遮光部材3のスケール方向(図中z方向)の厚みは、式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように決められる。
【0112】
光遮光部材3の少なくとも表面は導電性を持ち、ベアLED光源の電極と金線ワイヤ8とを電気的に接続する役割を果たす。
本変形例では、第1格子を形成した光遮光部材を用いているが、光透過部材に内部まで光を通さないパタンで第1格子を形成したものを用いても構わない。
【0113】
(作用)
光遮光部材3の厚みを変更することでz1が調整される。
拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0114】
(効果)
本変形例では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
さらに、光遮光部材3が電気的配線の一部となることで、光源2の上に光遮光部材3以外に金線ワイヤ8をボンディングするパッドを設ける必要がなくなる。従って実装が容易となり、小型化も図れる。
【0115】
(第2の実施形態の変形例3)
次に、本発明の第2の実施形態の変形例3について説明する。
図16に示すように、図3、図4における光透過部材5を、第3格子51がスケール側に位置するように配置している。
光透過部材5のスケール方向(図中z方向)の厚みは、式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように決められる。
【0116】
(作用)
光透過部材5の厚みを変更することでz2が調整される。
拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0117】
(効果)
本変形例では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
さらに、この構成によると、第3格子がスケール側である上側になっているため、第3格子から樹脂表面までの厚みが一定の場合、第3格子が下側である場合に比べて樹脂厚が厚くなる。このため、光透過基板5と樹脂の線膨張係数の違いにより、製造時に高温から低温に下げて樹脂を固めていく際に表面の平坦性がよくなり、その結果光学特性がよくなる。
【0118】
(第2の実施形態の変形例4)
次に、本発明の第2の実施形態の変形例4について説明する。
図17に示すように、図3、図4における光透過部材5を、第3格子を設けた光遮光部材5に置き換えている。
光遮光部材5のスケール方向(図中z方向)の厚みは、式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように決められる。
本変形例では、第3格子を形成した光遮光部材を用いているが、光透過部材に内部まで光を通さないパタンで第1格子を形成したものを用いても構わない。
【0119】
(作用)
光遮光部材5の厚みを変更することでz2が調整される。
拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0120】
(効果)
本変形例では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
【0121】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施形態に係る光学式エンコーダについて説明する。
図11では、図3、図4における光源2と基板1の間にスペーサ22を配置し、図19では、図1、図2における光検出器4と基板1の間にスペーサ42を配置している。
【0122】
スペーサ42のスケール方向(図中z方向)の厚みは、式2の(z1+z2)/z1で表される拡大倍率が、式4におけるΔzdによって設計値からずれた分を、元の設計値に合わせ込むように決められる。
本実施形態では、光源側と受光側の一方にスペーサ42を配置しているが、両方に配置しても構わない。また、光源側や光検出側の格子の形状には何を用いても良い。即ち、点光源や第1格子、PDアレイや第3格子には特に制約は無い。
【0123】
(作用)
スペーサ42の厚みを変更することでz1とz2の少なくとも一方が調整される。拡大倍率が設計値にほぼ合わせこまれることによって、ほぼ最適な信号検出ができ、良好なSN比が得られる。
【0124】
(効果)
本実施形態では、第1の実施形態と同様な効果を有する。
このようにスペーサ42を用いることで、第1格子と第3格子(PDアレイ)の高さ合わせにおいて、ベアLED2と光透過基板3と光検出器4の厚みの調整が可能となる。具体的には、個々の部材の厚みが予め決まっているためにスペーサ無しで第1格子と第3格子(PDアレイ)の高さを合わせることが出来ない場合に有効である。
【0125】
また、部材の厚みが極端にばらついたときや、部材を別の物に交換するときなど、スペーサの厚みを変えることで調整ができるメリットがある。また、スペーサ42は厚み公差が小さいものを用いることにより、z1とz2の差であるΔzdへの影響も極力小さく抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
以上のように、本発明は、小型で量産に向いた光学式エンコーダに有用である。
【符号の説明】
【0127】
2 ベアLED
4 光検出器
5 光透過基板
6 光透過樹脂
7 スケール
31 第1格子
71 第2格子
51 第3格子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動する固定体と移動体の内のいずれか一方に取り付けられた検出ヘッドと、
他方に前記検出ヘッドに対向して取り付けられた、相対移動する方向に所定ピッチの光学パタンを有する格子が設けられたスケールと、を備え、
前記検出ヘッドは、
出射光のスケール移動方向の出射幅が限定された発散光を出射し、前記スケールに所定の光を照射する発光部と、格子機能面と受光部を有する光検出部と、を有し、
前記発光部の限定された出射幅を有する出射面から前記スケールに照射されて前記スケールに設けられた前記格子により反射し、回折した光が前記光検出部の前記格子機能面に形成するイメージの動きを検出するよう配置された前記光検出部が設けられ、前記スケールの相対移動量に応じて前記光検出部から周期的な検出信号が出力されるような光学式エンコーダにおいて、
前記発光部側の発散光の出射幅を限定する位置から前記スケールの前記格子までの光学的距離z1と、
前記受光部側の前記スケールの前記格子から前記光検出部の前記格子機能面までの光学的距離z2と、の少なくとも一方の値を増減させることによって、検出信号の振幅レベルの劣化を低減させる信号劣化低減手段を備えることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
前記信号劣化低減手段は部材、または、空間であり、
前記部材、または、空間の光路上の厚み、または、間隔と屈折率のいずれかを変化させることによって光学的距離を調整することを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項3】
前記信号劣化低減手段は部材、または、空間であり、
前記信号劣化低減手段により、前記発光部側の出射面と、前記光検出部の前記格子機能面との少なくとも一方の位置を移動させることにより光学的距離を調整することを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項4】
前記発光部と、前記光検出部とを一体的に覆う保護部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項5】
前記保護部材は光透過性樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の光学式エンコーダ。
【請求項6】
前記信号劣化低減手段は、前記保護部材のスケール側の表面形状を所定の形に成形してなることを特徴とする請求項4に記載の光学式エンコーダ。
【請求項7】
前記信号劣化低減手段は、前記保護部材のスケール側表面に貼り付ける光透過部材であることを特徴とする請求項4に記載の光学式エンコーダ
【請求項8】
前記信号劣化低減手段は、前記保護部材の表面よりもヘッド内部の光路上に配置されることを特徴とする請求項4に記載の光学式エンコーダ
【請求項9】
前記信号劣化低減手段は、前記保護部材の表面よりもヘッド内部の光路外に配置されることを特徴とする請求項4に記載の光学式エンコーダ
【請求項10】
前記信号劣化低減手段は、光路上に光屈折率の境界面を少なくとも1つ備えるよう配置される部材、または、空間であることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項11】
前記信号劣化低減手段は、発光部、または、光検出器のスケール側の面に(接するように)実装される部材であることを特徴とする請求項10に記載の光学式エンコーダ。
【請求項12】
前記信号劣化低減手段は、前記発光部側の出射面から前記スケールの格子までの光学的距離と、前記受光部側のスケールの格子から前記光検出部の前記格子機能面までの光学的距離とのいずれか一方の光学的距離のみを調整することを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項1】
相対的に移動する固定体と移動体の内のいずれか一方に取り付けられた検出ヘッドと、
他方に前記検出ヘッドに対向して取り付けられた、相対移動する方向に所定ピッチの光学パタンを有する格子が設けられたスケールと、を備え、
前記検出ヘッドは、
出射光のスケール移動方向の出射幅が限定された発散光を出射し、前記スケールに所定の光を照射する発光部と、格子機能面と受光部を有する光検出部と、を有し、
前記発光部の限定された出射幅を有する出射面から前記スケールに照射されて前記スケールに設けられた前記格子により反射し、回折した光が前記光検出部の前記格子機能面に形成するイメージの動きを検出するよう配置された前記光検出部が設けられ、前記スケールの相対移動量に応じて前記光検出部から周期的な検出信号が出力されるような光学式エンコーダにおいて、
前記発光部側の発散光の出射幅を限定する位置から前記スケールの前記格子までの光学的距離z1と、
前記受光部側の前記スケールの前記格子から前記光検出部の前記格子機能面までの光学的距離z2と、の少なくとも一方の値を増減させることによって、検出信号の振幅レベルの劣化を低減させる信号劣化低減手段を備えることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
前記信号劣化低減手段は部材、または、空間であり、
前記部材、または、空間の光路上の厚み、または、間隔と屈折率のいずれかを変化させることによって光学的距離を調整することを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項3】
前記信号劣化低減手段は部材、または、空間であり、
前記信号劣化低減手段により、前記発光部側の出射面と、前記光検出部の前記格子機能面との少なくとも一方の位置を移動させることにより光学的距離を調整することを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項4】
前記発光部と、前記光検出部とを一体的に覆う保護部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項5】
前記保護部材は光透過性樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の光学式エンコーダ。
【請求項6】
前記信号劣化低減手段は、前記保護部材のスケール側の表面形状を所定の形に成形してなることを特徴とする請求項4に記載の光学式エンコーダ。
【請求項7】
前記信号劣化低減手段は、前記保護部材のスケール側表面に貼り付ける光透過部材であることを特徴とする請求項4に記載の光学式エンコーダ
【請求項8】
前記信号劣化低減手段は、前記保護部材の表面よりもヘッド内部の光路上に配置されることを特徴とする請求項4に記載の光学式エンコーダ
【請求項9】
前記信号劣化低減手段は、前記保護部材の表面よりもヘッド内部の光路外に配置されることを特徴とする請求項4に記載の光学式エンコーダ
【請求項10】
前記信号劣化低減手段は、光路上に光屈折率の境界面を少なくとも1つ備えるよう配置される部材、または、空間であることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項11】
前記信号劣化低減手段は、発光部、または、光検出器のスケール側の面に(接するように)実装される部材であることを特徴とする請求項10に記載の光学式エンコーダ。
【請求項12】
前記信号劣化低減手段は、前記発光部側の出射面から前記スケールの格子までの光学的距離と、前記受光部側のスケールの格子から前記光検出部の前記格子機能面までの光学的距離とのいずれか一方の光学的距離のみを調整することを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−243323(P2010−243323A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91892(P2009−91892)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]