説明

光学式エンコーダ

【課題】スケールと検出部との各々の相対位置における動的なミスアライメントを補正可能で、かつ、大きなミスアライメントにも対応できる光学式エンコーダを提供することである。
【解決手段】光学式エンコーダは、測長光源から出射される光を光学格子を有するスケール部に照射し、スケール部からの反射光をスケール部と相対移動可能に設けられた受光素子311にて検出して被測定物を測長する光学式エンコーダであって、受光素子311を移動及び回動させて受光素子311による検出位置及び検出方向を変更する圧電素子313a〜313lと、測長する際に、受光素子311とスケール部との相対位置に応じたミスアライメント情報に基づいて、圧電素子313a〜313lにより、ミスアライメントをキャンセルするように受光素子311の検出位置及び/又は検出方向を変更させる機能をCPUに実行させる制御プログラムと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スケールと検出部とを対向させて、双方の相対変位により被測定物の測長を行うエンコーダにおいては、スケールと検出部とのミスアライメントが測長誤差の要因となっていた。
【0003】
そこで、上記ミスアライメントを補正するエンコーダとして、例えば、2相以上の位相の異なる受光信号を発信する受光素子をスケールとの相対移動方向に複数有し、各相受光素子の位相軸上の受光面積の重心を一致させると共に、配置角度範囲を等しくすることで、スケールと受光部が正しい位置関係からずれて設置された場合の各位相のばらつきをキャンセルすることにより、組立て誤差に起因した検出誤差を低減できるものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−177672号公報
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のミスアライメントの補正手段は、スケールと検出部とが静止状態にあるときの静的な補正を行うものであり、測長中の動的なミスアライメントを補正することが出来ない。
そこで、測長ストローク全域での姿勢変動の平均値を算出して、上記平均値に基づき動的なミスアライメントを補正する手法が広く用いられている。また、運動の真直度(運動中の姿勢の狂い)の小さい運動系においては、検出部にて検出される検出信号に対する電気的補正を用いることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記平均値に基づく補正を行う場合、各々の相対位置で十分な測長精度を確保することは難しく、また、電気的補正を用いる場合、補正可能なレンジが限定され、大きなミスアライメントに対応しきれないことがある。
【0007】
本発明の課題は、スケールと検出部との各々の相対位置における動的なミスアライメントを補正可能で、かつ、大きなミスアライメントにも対応できる光学式エンコーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、光源から出射される光を光学格子を有するスケールに照射し、前記スケールからの反射光又は前記スケールを透過した光を前記スケールと相対移動可能に設けられた光検出部にて検出して被測定物を測長する光学式エンコーダにおいて、前記光検出部を移動及び回動させて当該光検出部による検出位置及び検出方向を変更する変更手段と、測長する際に、前記光検出部と前記スケールとの相対位置に応じたミスアライメント情報に基づいて、前記変更手段により、ミスアライメントをキャンセルするように前記光検出部の検出位置及び/又は検出方向を変更させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、前記光検出部を載置する載置部を備え、前記変更手段は、前記載置部をピッチング方向とローリング方向に各々回動可能な回動駆動部と、前記載置部を前記光検出部が前記スケールと接離する第1方向、及び当該第1方向と前記光検出部と前記スケールとの相対移動方向と各々直交する第2方向、に移動させる移動駆動部と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光学式エンコーダにおいて、前記変更手段は、前記載置部の下面及び側面の所定位置に配置される複数の圧電素子を有し、前記制御手段は、複数の圧電素子の中で、電圧を印加する圧電素子を指定し、指定した圧電素子に電圧を印加することで前記載置部をピッチング方向とローリング方向に各々回動させ、前記第1方向及び前記第2方向に移動させることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の光学式エンコーダにおいて、前記光検出部の前記スケールとの相対位置に応じたミスアライメント情報を記憶する記憶手段を有し、前記制御手段は、測長する際に、前記記憶手段に記憶されたミスアライメント情報を取得して前記変更手段により前記光検出部の検出位置及び/又は検出方向を変更させることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の光学式エンコーダにおいて、測長する際に、測長される前記相対位置に応じたミスアライメントを検出する検出手段と、前記検出手段により検出されたミスアライメントによりミスアライメント情報を生成するミスアライメント情報生成手段と、を備え、前記制御手段は、前記ミスアライメント情報生成手段により生成されるミスアライメント情報に基づいて、前記変更手段により前記光検出部の検出位置及び/又は検出方向を変更させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、変更手段により光検出部による検出位置及び検出方向が変更可能に構
成されており、測長する際に、制御手段により、相対位置に応じたミスアライメント情報に基づいてミスアライメントをキャンセルするように光検出部の検出位置/検出方向が変更手段で変更される。つまり、本発明は、相対位置に応じて検出位置/検出方向が変更されるので、各々の相対位置における動的なミスアライメントが補正可能であり、かつ、検出信号に対する電気的補正を行うものではないので、補正可能なレンジを拡大することができる。
したがって、本発明は、スケールと検出部との各々の相対位置における動的なミスアライメントを補正可能で、かつ、大きなミスアライメントにも対応できる光学式エンコーダであるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る光学式エンコーダの概略構成図である。
【図2】本発明に係る載置部及び変更手段を説明するための模式図である。
【図3】図2における各々の断面図を示し、(A)がA−A断面図、(B)がC−C断面図、(C)がE−E,G−G断面図(D)がI−I,K−K断面図、である。
【図4】本発明に係る光学式エンコーダの制御構造を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る別の実施形態における光学式エンコーダの制御構造を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「第1の実施形態」
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、発明の範囲は図示例に限定されない。また、以下の説明では、図1における左右方向をX方向、前後方向をY方向、上下方向をZ方向とする。
【0016】
本実施形態の光学式エンコーダ1は、例えば、図1〜図4に示すように、スケール部10(スケール)と、受発光部100と、制御部500と、等を含んで構成される。そして、光学式エンコーダ1は、受発光部100がX方向に移動可能に構成され、スケール部10に対して相対移動するとともに、受発光部100よりスケール部10に向けて出射される光がスケール部10にて反射して、受発光部100で当該反射光を受光することで被測定物の測長を行う。
【0017】
スケール部10は、例えば、光学格子11と、原点用光反射部12と、を含んで構成される。
光学格子11は、入射した光を反射させる光反射部11aを測定軸方向(X方向)に沿って所定間隔で備えた測長用の光学格子であり、被測定物の測長用の光(測長光)を反射させる。
原点用光反射部12は、測定軸方向に沿って光学格子11と平行に配置され、受発光部100から出射される原点位置検出用の検出光を反射させる。
【0018】
受発光部100は、例えば、測長光及び検出光を発光する発光部200と、スケール部10からの反射光を受光する受光部300と、発光部200や受光部300を載置する基板400と、を含んで構成される。
【0019】
発光部200は、測長光を発光する測長用発光部210と、検出光を発光する原点検出用発光部220と、を含んで構成される。
【0020】
測長用発光部210は、例えば、赤色光(波長600〜760nm程度)等の被測定物の測長用の測長光を出射するLED(Light Emitting Diode)等の測長光源211(光源)と、測長光源211より出射される測長光を透過させる測長スリット212と、を含んで構成される。そして、測長光源211より出射され、測長スリット212を透過した測長光が、スケール部10の光学格子11にて反射し、当該反射光が受光部300にて受光されるように、測長光源211の出射位置が調整されている。
【0021】
原点検出用発光部220は、例えば、測長光と波長域が異なる青色光(波長450〜500nm程度)等の原点位置検出用の検出光を出射するLED等の原点検出光源221と、原点検出光源221より出射される検出光を透過させる原点検出スリット222と、を含んで構成される。そして、原点検出光源221より出射され、原点検出スリット222を透過した検出光が、スケール部10の原点用光反射部12にて反射し、当該反射光が受光部300にて受光されるように、原点検出光源221の出射位置が調整されている。
【0022】
受光部300は、例えば、測長光を受光する測長用受光部310と、検出光の原点用光反射部12による反射光を受光する検出用受光部320と、を含んで構成される。
【0023】
測長用受光部310は、例えば、図2及び図3(A)〜(D)に示すように、測長光の
光学格子11による反射光を検出(受光)する受光素子311(光検出部)と、受光素子311を載置する載置部312と、載置部312を回転/移動させて受光素子311の検出位置及び検出方向を変更する圧電素子313a〜313l(変更手段)と、を含んで構成される。なお、図2は、上面視で基板400の上方に載置部312が配設された状態を模式的に示しており、基板400と載置部312との間に配設される圧電素子313a〜313d,313j〜313lも図示している。
【0024】
受光素子311は、例えば、測長光の光学格子11による反射光を検出する複数の素子アレイで構成される。そして、検出装置(図示省略)が当該受光素子311の受光した反射光に基づいて所定の変位信号を生成して制御部500に出力し、制御部500が所定の演算処理を行うことで被測定物の測長がなされるように構成されている。つまり、スケール部10と受光素子311との間にミスアライメントが存在し、受光素子311が正確な検出方向(図2に示すR1方向又はR2方向)及び検出位置(YZ位置)で上記反射光を検出できなかった場合、上記受光素子311にて検出される反射光の受光感度が低下するため、被測定物の測長誤差が発生する。
【0025】
載置部312は、例えば、図2及び図3(A)〜(D)に示すように、基板400の上方に(基板400の上面からZ方向に所定距離離れた状態で)配設され、圧電素子313a〜313l(変更手段)によって支持される板状の部材である。
【0026】
また、載置部312は、図2に示すように、内側載置部312bと外側載置部312cとで構成される。
内側載置部312bは、外枠312b1と、この外枠の内側に配置された内枠312b2と、この内枠312b2の更に内側に配置された載置板312b3と、外枠312b1と内枠312b2とをローリング方向(R1方向)に回動自在に連結するR1軸312b4と、内枠312b2と載置板312b3とをR1方向に直交するピッチング方向(R2方向)に回動自在に連結するR2軸312b5と、を備えており、ジンバル構造をなしている。
外側載置部312cは、外枠312b1の更に外側を囲むように上面視略ロ字状に形成されている。
上記内側載置部312bと外側載置部312cとは上面視ロ字状の空間部312aにより分離されており、当該分離箇所の一部は、図3(C)に示すように、圧電素子313e〜313hによって連結されている。
【0027】
圧電素子313a〜313lは、例えば、電圧が印加されることにより伸縮し、伸縮方向に伸縮量(電圧値)に応じた力を及ぼすピエゾ素子等である。
【0028】
圧電素子313a及び圧電素子313bは、図2及び図3(A)に示すように、載置板312b3の下面に、圧電素子313dを挟んで対称な位置であって、R1軸312b4を通る直線上に各々配置されている。圧電素子313a及び圧電素子313bの各々一方の端部は接着剤等により基板400の上面に固着され、他方の端部は載置板312b3の下面に固着されている。そして、電圧が印加されていない状態で、載置板312b3及び載置板312b3に載置された受光素子311を基板400に対して平行に支持する。この状態より、圧電素子313a又は圧電素子313bの何れか一方に電圧が印加されると、圧電素子313a又は圧電素子313bがZ軸方向に延伸するため、載置板312b3がR2方向に回転するので、ピッチング方向の検出方向を変更することが出来る。
【0029】
圧電素子313c及び圧電素子313dは、図2及び図3(B)に示すように、内枠312b2の下面に、圧電素子313aを挟んで対称な位置であって、R2軸312b5を通る直線上に各々配置されている。圧電素子313c及び圧電素子313dの各々一方の端部は接着剤等により基板400の上面に固着され、他方の端部は外枠312b1の下面に固着されている。そして、電圧が印加されていない状態で、載置板312b3及び載置板312b3に載置された受光素子311を基板400に対して平行に支持する。この状態より、圧電素子313c又は圧電素子313dの何れか一方に電圧が印加されると、圧電素子313c又は圧電素子313dがZ軸方向に延伸するため、内側載置部312bがR1方向に回転するので、ローリング方向の検出方向を変更することが出来る。
このように、本実施形態において、圧電素子313a〜313dは、回動駆動部を構成する。
【0030】
圧電素子313e〜313hは、図2に示すように、Y軸方向で対向する外側載置部312cと内側載置部312bの外枠312b1との間の空間部312aであって、受光素子311を挟んで、X軸方向に2つずつ、各々が受光素子311から等距離となる位置に配置されている。圧電素子313e〜313hの各々一方の端部は接着剤等により内側載置部312bの外枠312b1の外壁に固着され、他方の端部は、外側載置部312cの内壁に固着されており、これにより、内側載置部312bと外側載置部312cとが連結される。
そして、図2及び図3(C)に示すように、圧電素子313e及び圧電素子313gの組と、圧電素子313f及び圧電素子313hの組と、に同一電圧値からなる電圧が印加され、一方の組を伸ばすとともに他方の組を縮ませることにより、検出位置(内側載置部312b)を正負のY方向(受光素子311がスケール部10と接離する第1方向と、受光素子311とスケール部10との相対移動方向と、の各々に直交する第2方向)に変更することが出来る。
【0031】
圧電素子313i〜313lは、図2及び図3(D)に示すように、外側載置部312cの四隅部の下面に各々配置されており、電圧が印加されていない状態で、載置部312及び載置部312に載置された受光素子311を水平に支持する。この状態より、圧電素子313a〜313dとともに、圧電素子313i〜313lに同一電圧値からなる電圧が印加されると、圧電素子313a〜313d及び313i〜313lがZ軸方向に同一変形量の伸縮を行い、受光素子311が水平状態を保ったままZ方向(第1方向)に上下動するので、検出位置を変更することが出来る。
このように、本実施形態において、圧電素子313a〜313lは、移動駆動部を構成する。
【0032】
なお、上記各々の圧電素子への電圧印加により検出方向/位置を変更した際、電圧が印加されていない圧電素子も上記変更に応じて変形や相互干渉を行うため、当該変更後検出方向/位置を更に変更する場合、各々の圧電素子に上記変形や相互干渉を打ち消すように電圧を付与する必要がある。
【0033】
検出用受光部320は、例えば、検出光の原点用光反射部12による反射光を受光する受光素子アレイであり、当該反射光を受光することにより所定の原点信号が得られるように構成されている。そのため、受発光部100がスケール部10に対して相対移動した際に、上記原点信号を検出することにより、受発光部100の原点位置合わせが可能となる。
【0034】
制御部500は、例えば、図4に示すように、CPU510と、RAM520と、記憶部530と、等を含み、光学式エンコーダ1の各部構成を統括制御している。そして、制御部500は、システムバスなどを介して、受光部300等と接続している。
【0035】
CPU510は、例えば、記憶部530に記憶される光学式エンコーダ1の備える各種機能を実行するための処理プログラムに従って、各種制御処理を行う。
【0036】
RAM520は、例えば、CPU510によって実行される処理プログラムなどを展開するためのプログラム格納領域や、入力データや処理プログラムが実行される際に生じる処理結果などを格納するデータ格納領域などを備えている。
【0037】
記憶部530は、例えば、光学式エンコーダ1で実行可能なシステムプログラムや、そのシステムプログラムで実行可能な各種処理プログラム、これら各種処理プログラムを実行する際に使用されるデータ、CPU510によって演算処理された各種処理結果のデータなどを記憶する。そして、記憶部530に記憶されるプログラムやデータとしては例えば、ミスアライメントデータ531(記憶手段)や制御プログラム532(制御手段)がある。
【0038】
ミスアライメントデータ531は、ミスアライメント情報として、例えば、測長に先立って、受発光部100をスケール部10に対して相対移動させて、各々の相対位置における事前測長を実行させ、当該実行による測長結果に基づいて、各々の相対位置に応じたミスアライメント量(例えば、受光素子311の検出方向及び検出位置のずれ角/距離)を所定の演算処理を介して導出して記憶したものである。
【0039】
制御プログラム532は、例えば、測長する際に、受光素子311とスケール部10との相対位置に応じたミスアライメントデータ531に基づいて、ミスアライメントをキャンセルするように受光素子311の検出位置及び/又は検出方向を変更させる機能をCPU510に実行させるプログラムである。
具体的には、測長する際にCPU510が制御プログラム532を実行すると、測長時の相対位置に応じたミスアライメント量を上記ミスアライメントデータ531から抽出する。そして、CPU510は、当該ミスアライメント量を打ち消すように、圧電素子313a〜313lの中で電圧を印加する圧電素子を指定し、指定した圧電素子に電圧を印加することで、受光素子311の検出位置及び/又は検出方向を変更させ、ミスアライメントをキャンセルする。
【0040】
次に、上記のように構成された光学式エンコーダ1による被測定物の測長動作について説明する。
測長の際、CPU510が測長時の相対位置に応じたミスアライメント量を記憶部530のミスアライメントデータ531から抽出する。そして、CPU510は、当該ミスアライメント量を打ち消すように、圧電素子313a〜313lの中で電圧を印加する圧電素子を指定し、指定した圧電素子に電圧を印加することで、受光素子311の検出位置及び/又は検出方向を変更させ、ミスアライメントをキャンセルする。そして、当該ミスアライメントのキャンセルされた状態で、測長用発光部210より出射される測長光の、光学格子11による反射光を受光素子311にて検出することで、被測定物の測長を行う。
上記ミスアライメントのキャンセルは、具体的には、CPU510がミスアライメントデータ531によりピッチング方向(R2方向)のミスアライメントが存在すると判断した場合、圧電素子313aと圧電素子313bの何れか一方をミスアライメント量に応じて駆動させる。同様に、CPU510がローリング方向(R1方向)のミスアライメントが存在すると判断した場合、圧電素子313cと圧電素子313dの何れか一方をミスアライメント量に応じて駆動させる。また、CPU510が第2方向のミスアライメントが存在すると判断した場合、圧電素子313e〜313hをミスアライメント量に応じて駆動させる。さらに、CPU510が第1方向のミスアライメントが存在すると判断した場合、圧電素子313a〜313d及び313i〜313lをミスアライメント量に応じて駆動させる。
【0041】
以上により、本実施形態における光学式エンコーダ1は、測長光源211から出射される光を光学格子11を有するスケール部10に照射し、スケール部10からの反射光をスケール部10と相対移動可能に設けられた受光素子311にて検出して被測定物を測長する光学式エンコーダであって、受光素子311を移動及び回動させて受光素子311による検出位置及び検出方向を変更する圧電素子313a〜313lと、測長する際に、受光素子311とスケール部10との相対位置に応じたミスアライメント情報に基づいて、圧電素子313a〜313lにより、ミスアライメントをキャンセルするように受光素子311の検出位置及び/又は検出方向を変更させる機能をCPU510に実行させる制御プログラム532と、を備える。
【0042】
つまり、光学式エンコーダ1は、相対位置に応じて検出位置/検出方向が変更されるので、各々の相対位置における動的なミスアライメントが補正可能であり、かつ、検出信号に対する電気的補正を行うものではないので、補正可能なレンジを拡大させることができる。
したがって、本発明は、スケールと検出部との各々の相対位置における動的なミスアライメントを補正可能で、かつ、大きなミスアライメントにも対応できる光学式エンコーダであるといえる。
さらに、光学式エンコーダ1は、上記のように動的なミスアライメントを補正可能な構成を備えているため、設置する際に、上記ミスアライメントを考慮した厳密な設置位置の調整を行う必要がないため、ユーザの設置負担が軽減される。
【0043】
また、光学式エンコーダ1は、受光素子311を載置する載置部312を備え、圧電素子313a〜313dは、載置部312をピッチング方向とローリング方向に各々回動可能であり、圧電素子313a〜313lは、載置部312を第1方向及び第2方向に移動させる。
つまり、光学式エンコーダ1は、載置部312に載置される受光素子311の、検出位置/検出方向を自在に変更出来る(ピッチング方向/ローリング方向に回転させ、第1方向/第2方向に移動させることが出来る)。
【0044】
また、載置部312の下面及び側面の所定位置に圧電素子313a〜313lが配置され、制御プログラム532は、上記圧電素子の中で、電圧を印加する圧電素子を指定し、指定した圧電素子に電圧を印加することで載置部312をピッチング方向とローリング方向に各々回動させ、第1方向及び第2方向に移動させる。
つまり、圧電素子313a〜313lに電圧を印加することにより、載置部312(受光素子311)を回転/移動させて、容易に受光素子311の検出位置/検出方向を変更して動的なミスアライメントを補正することが出来る。
【0045】
また、受光素子311のスケール部10との相対位置に応じたミスアライメント情報がミスアライメントデータ531として記憶されており、CPU510が制御プログラム532を実行すると、測長する際に、ミスアライメントデータ531を取得して受光素子311の検出位置及び/又は検出方向を変更させることができる。
つまり、事前測長の結果に基づくミスアライメントデータ531を利用して受光素子311の検出位置及び/又は検出方向が変更されるので、上記変更に要する時間が比較的短くて済むため、高速でかつ安定した精密測長を行うことが出来る。
【0046】
「第2の実施形態」
次に、本発明に係る光学式エンコーダの他の実施形態について説明する。第1の実施形態における光学式エンコーダ1では、CPU510が制御プログラム532を実行すると、事前測長を実施した結果によるミスアライメントデータ531に基づいて、ミスアライメントをキャンセルする場合を例示した。しかし、例えば、以下の第2の実施形態における光学式エンコーダ1000で説明するように、測長時に(リアルタイムに)、測長される相対位置に応じたミスアライメント情報を生成し、当該ミスアライメント情報に基づくミスアライメントのキャンセルを実施するように構成しても良い。
以下では、光学式エンコーダ1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略し、相違点について説明する。
【0047】
第2の実施形態における光学式エンコーダ1000は、例えば、図5に示すように、測長用受光部310に検出センサ350(検出手段)と、記憶部530にミスアライメント情報生成プログラム531a(ミスアライメント情報生成手段)と、制御プログラム532a(制御手段)と、を備える。
【0048】
検出センサ350は、例えば、受光素子311と同様に、基板400上で測長光の光学格子11による反射光を入力できる位置に配置され、位置検出センサとしてのPSD(Positional Sensitive Device)を各XYZ方向に対して配置したものや、光電変換機能を有するCCD(Charge Coupled Device)センサ等で構成される。そして、測長が行われ、受光素子311とスケール部10との相対位置が変化する度に、検出センサ350が上記反射光を検出し、当該検出センサ350の出力値(相対位置に応じたミスアライメント)がリサージュ信号等として制御部500に入力されるように構成される。
【0049】
ミスアライメント情報生成プログラム531aは、例えば、検出センサ350の出力値によりミスアライメント情報を生成する機能をCPU510に実行させるプログラムである。
具体的には、検出センサ350より測定時の相対位置における出力値(リサージュ信号等)が入力されると、CPU510はミスアライメント情報生成プログラム531aを実行し、上記リサージュ信号に基づく測定波形からリサージュ曲線を導出する。そして、CPU510は、当該リサージュ曲線の振幅,オフセット,位相差等を考慮して理想波形となるように、受光素子311の検出方向及び検出位置のずれ等のミスアライメント量で構成される、測定時の相対位置に応じたミスアライメント情報を生成する。
【0050】
制御プログラム532aは、例えば、測長する際に、ミスアライメント情報生成プログラム531aの実行により生成されるミスアライメント情報に基づいて、ミスアライメントをキャンセルするように受光素子311の検出位置及び/又は検出方向を変更させる機能をCPU510に実行させるプログラムである。
具体的には、測長する際に、CPU510がミスアライメント情報生成プログラム531aを実行してミスアライメント情報を生成すると、制御プログラム532を実行し、当該ミスアライメント情報のミスアライメント量を打ち消すように、圧電素子313a〜313lの中で電圧を印加する圧電素子を指定し、指定した圧電素子に電圧を印加することで、受光素子311の検出位置及び/又は検出方向を変更させ、ミスアライメントをキャンセルする。
【0051】
以上により、本実施形態における光学式エンコーダ1000は、測長する際に、測長される相対位置に応じたスアライメントを検出する検出センサ350と、検出手段により検出されたミスアライメントによりミスアライメント情報を生成する、CPU510の実行に係るミスアライメント情報生成プログラム531aと、を備え、CPU510が制御プログラム532aを実行することにより、上記生成されるミスアライメント情報に基づいて、受光素子311の検出位置及び/又は検出方向を変更させる。
つまり、光学式エンコーダ1000によると、測長される相対位置に応じたリアルタイムなミスアライメント情報に基づいてミスアライメントのキャンセルを実施することができる。そのため、例えば、測長時にスケール上にゴミが付着する等の汚れが生じた場合でも、リアルタイムなミスアライメントのキャンセルにより、正確な信号を検出することが可能となるので、信号の劣化等を容易に回避することが出来る。
【0052】
なお、本発明の範囲は上記実施形態に限られることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
具体的には、上記実施形態において、内側載置部312bの外枠312b1,内枠3
12b2,載置板312b3は、R1軸312b4及びR2軸312b5により連結されて構成されているが、例えば、上記R1軸312b4及びR2軸312b5を設けることなく、外枠312b1,内枠312b2,載置板312b3を各々分離して独立に駆動させ、受光素子311の検出位置及び検出方向を変更するように構成してもよい。
さらに、上記実施形態では、載置部312の下面及び側面の所定位置に圧電素子313a〜313lを配置することにより、載置部312をピッチング方向とローリング方向に各々回動させ、載置部312を第1方向及び第2方向に移動させているが、圧電素子を用いた構成に限定されるものではなく、高精度且つ高分解能なアクチュエータであれば適宜の変更が可能である。具体的には、例えば、静電式のアクチュエータ、磁気式のアクチュエータ、超音波式のアクチュエータ、空気圧式のアクチュエータ、形状記憶合金式のアクチュエータ、等を用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 光学式エンコーダ
10 スケール部(スケール)
11 光学格子
211 測長光源(光源)
311 受光素子(光検出部)
312 載置部
313a〜313d 圧電素子(変更手段、回動駆動部、移動駆動部)
313e〜313l 圧電素子(変更手段、移動駆動部)
500 制御部
510 CPU(制御手段)
531 ミスアライメントデータ(記憶手段)
532 制御プログラム(制御手段)
1000 光学式エンコーダ
350 検出センサ(検出手段)
510 CPU(ミスアライメント情報生成手段、制御手段)
531a ミスアライメント情報生成プログラム(ミスアライメント情報生成手段)
532a 制御プログラム(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射される光を光学格子を有するスケールに照射し、前記スケールからの反射光又は前記スケールを透過した光を前記スケールと相対移動可能に設けられた光検出部にて検出して被測定物を測長する光学式エンコーダにおいて、
前記光検出部を移動及び回動させて当該光検出部による検出位置及び検出方向を変更す
る変更手段と、
測長する際に、前記光検出部と前記スケールとの相対位置に応じたミスアライメント情
報に基づいて、前記変更手段により、ミスアライメントをキャンセルするように前記光検出部の検出位置及び/又は検出方向を変更させる制御手段と、
を備えることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記光検出部を載置する載置部を備え、
前記変更手段は、
前記載置部をピッチング方向とローリング方向に各々回動可能な回動駆動部と、
前記載置部を前記光検出部が前記スケールと接離する第1方向、及び当該第1方向と前記光検出部と前記スケールとの相対移動方向と各々直交する第2方向、に移動させる移動駆動部と、
を有することを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項3】
請求項2に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記変更手段は、
前記載置部の下面及び側面の所定位置に配置される複数の圧電素子を有し、
前記制御手段は、
複数の圧電素子の中で、電圧を印加する圧電素子を指定し、指定した圧電素子に電圧を印加することで前記載置部をピッチング方向とローリング方向に各々回動させ、前記第1方向及び前記第2方向に移動させることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記光検出部の前記スケールとの相対位置に応じたミスアライメント情報を記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、測長する際に、前記記憶手段に記憶されたミスアライメント情報を取
得して前記変更手段により前記光検出部の検出位置及び/又は検出方向を変更させることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか一項に記載の光学式エンコーダにおいて、
測長する際に、測長される前記相対位置に応じたミスアライメントを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたミスアライメントによりミスアライメント情報を生成するミスアライメント情報生成手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記ミスアライメント情報生成手段により生成されるミスアライメント情報に基づいて、前記変更手段により前記光検出部の検出位置及び/又は検出方向を変更させることを特徴とする光学式エンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33368(P2011−33368A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177230(P2009−177230)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】